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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A61K 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61K |
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管理番号 | 1362347 |
異議申立番号 | 異議2019-700103 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-02-07 |
確定日 | 2020-04-03 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6369951号発明「ジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6369951号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4?6〕、〔7、8〕について訂正することを認める。 特許第6369951号の請求項1?8に係る特許を維持する。 |
理由 |
【第1】手続の経緯 特許第6369951号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成28年8月26日(優先権主張平成27年8月26日)に出願され、平成30年7月20日にその特許権の設定登録がなされ、同年8月8日に特許掲載公報が発行された。その後の経緯は以下のとおりである。 (1)平成31年 2月 7日 特許異議申立人 笠原佳代子 (以下「申立人」ということが ある)による特許異議の申立て (2) 同 年 4月22日付け 取消理由の通知(以下「取消理由 通知書1」ということがある) (3)令和 1年 6月25日 特許権者による意見書の提出及び 訂正の請求 (4)令和 1年 9月10日付け 取消理由の通知(決定の予告。 以下「取消理由通知書2」という ことがある) (5)令和 1年11月 7日 特許権者による意見書の提出及び 訂正の請求 なお、(3)の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 また、申立人に上記(3)及び(5)の各訂正の請求に対する意見書提出の機会を与えたが、いずれも応答がなかった。 【第2】訂正請求について 1.訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)1)?4)及び(2)1)?2)のとおりである。[(1)1)?4)及び(2)1)?2)は、この順に訂正請求書の「訂正事項1」?「訂正事項6」に対応する。] (1)訂正前の請求項1,4?6からなる一群の請求項において、次の1)?4)のとおり訂正する。 1)訂正前の請求項1の「前記茶葉タンパク質分解物に、Leu-Tyr及びIle-Proの配列からなるペプチドの1種または2種を含有する」を「該茶葉タンパク質分解物が、茶葉をアルカリ溶液で抽出して調製された茶葉タンパク質を、プロテアーゼで酵素分解することによって調製された、Leu-Tyr及びIle-Proの配列からなるペプチドの1種又は2種を活性成分として含有する茶葉タンパク質分解物である」と訂正し、同じく、訂正前の請求項1の「但し、茶葉タンパク質分解物中の環状ジペプチドを除く」を、「但し、茶葉タンパク質分解物中の環状ジペプチドを除き、かつ、茶葉タンパク質分解物がLeu-Tyr及び/またはIle-ProのみからなるDPP-IV阻害剤を除く」と訂正する。 2) 訂正前の請求項4の ・「請求項1乃至3に記載の」を「請求項2又は3に記載の」と訂正し; かつ、 ・「有効成分として含有するDPP-IV阻害用である飲食品。」を「有効成分として添加されたDPP-IV阻害用飲食品。」と訂正する。 3) 訂正前の請求項5の ・「請求項1乃至3に記載の」を「請求項2又は3に記載の」と訂正し; かつ、 ・「有効成分として含有するDPP-IV阻害用であるサプリメント。」を「有効成分として添加されたDPP-IV阻害用サプリメント。」と訂正する。 4) 訂正前の請求項6の ・「請求項1乃至3に記載の」を「請求項2又は3に記載の」と訂正し; かつ、 ・「有効成分として含有するDPP-IV阻害用である医薬品および/または医薬部外品。」を「有効成分として添加されたDPP-IV阻害用医薬品および/または医薬部外品。」と訂正する。 (2)訂正前の請求項7及び8からなる一群の請求項において、次の1)?2)のとおり訂正する。 1) 訂正前の請求項7の「Val-Ala-Tyr-Proの配列からなる新規テトラペプチド、及びHis-Asp-Tyr又はLeu-Tyr-Asnの配列からなる新規トリペプチド。」を 「Val-Ala-Tyr-Proの配列からなる新規テトラペプチド、又は、His-Asp-Tyr若しくはLeu-Tyr-Asnの配列からなる新規トリペプチド。」と訂正する。 2)訂正前の請求項8の「ペプチドの1種または2種以上を含有する飲食品。」を「ペプチドの1種又は2種以上が添加されたDPP-IV阻害用飲食品。」と訂正する。 本件訂正請求は、一群の請求項〔1,4?6〕、〔7、8〕に対して請求されたものである。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項(1)1)?4)について 1)訂正事項(1)1)について 訂正事項(1)1)は、 訂正前の請求項1における「茶葉タンパク質分解物」を、特許明細書の例えば【0008】の「・・・本発明は、茶葉タンパク質分解物を有効成分とするジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害剤を提供する・・・。例えば・・・(工程1)茶葉にアルカリ溶液を加えて抽出液を得る工程、および、工程2)工程1で得られる抽出液を、プロテアーゼ活性を有する酵素で処理して酵素反応液を得る工程、を含む製造方法により得られる茶葉タンパク質を利用することができる。」との記載に基づき、「茶葉をアルカリ溶液で抽出して調製された茶葉タンパク質をプロテアーゼで酵素分解によって調製された」という特定の処理工程を施してなるものに限定し; かつ、さらに、 訂正前の請求項1におけるDPP-IV阻害剤から「茶葉タンパク質分解物がLeu-Tyr及び/またはIle-ProのみからなるDPP-IV阻害剤」の態様を除外する; ものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 そして、当該(1)1)に係る訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。 2)訂正事項(1)2)について 訂正事項(1)2)は、訂正前の請求項4において、 ・有効成分として引用されていた「請求項1乃至3に記載の剤」から「請求項1」のみを削除して「請求項2又は3に記載の剤」に限定するものであるから、この訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同第4号に規定する引用関係の解消を目的とするものであり; かつ、 ・訂正前の請求項4に係る飲食品として、次のa)及びb): a)当該飲食品が元々、その素材中に引用請求項の剤を含む場合 b)当該飲食品の他の素材と合わせ、引用請求項の剤を添加物として含有させる(添加配合する)場合 の両方の態様が含まれるように規定されていたのを、例えば特許明細書中の「【0040】 また本発明のVAYPを有効成分とするDPP-IV阻害剤・・・を含有する飲食品として用いる場合はどのような形態であってもよく、例えば・・・タブレットなどのサプリメント等の固形状形態であってもよい。また、・・・、飲料、農水産加工品、乳製品、・・・などの食品や健康食品に含有させることができる。」(下線は当審による。以下同様)、「【0050】 また本発明のトリペプチドである・・、TGY、HDY、・・及びLYNのいずれか1種または2種以上を有効成分とするDPP-IV阻害剤・・・を含有する飲食品として用いる場合はどのような形態であってもよく、例えば・・・タブレットなどのサプリメント等の固形状形態であってもよい。また、・・・、飲料、農水産加工品、乳製品、・・などの食品や健康食品に含有させることができる」や、「製造例1:烏龍茶飲料」(【0084】)及び「製造例2:紅茶飲料」(【0085】)における各飲料の調製に際し「・・・本発明のペプチド(VAYP)を・・・添加した。」ことの記載に基づき、b)の添加配合の態様に限定するとともに; 同飲食品の「DPP-IV阻害用」としての用途を明確にする; ものであるから、この訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 そうすると、これらの訂正事項(1)2)に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、同第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」、及び同第4号に規定する引用関係の解消を目的とする訂正である。 そして、当該(1)2)に係る訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。 3)訂正事項(1)3)について 訂正事項(1)3)は、訂正前の請求項5において、 ・有効成分として引用されていた「請求項1乃至3に記載の剤」から「請求項1」のみを削除して「請求項2又は3に記載の剤」に限定するものであるから、この訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同第4号に規定する引用関係の解消を目的とするものであり; かつ、 ・訂正前の請求項5に係るサプリメントとして、次のa’)及びb’): a’) 当該サプリメントが元々その素材中に上記DPP-IV阻害剤を含む場合; b’) 当該サプリメントの他の素材と合わせ、引用請求項の剤を添加物として含有させる(添加配合する)場合; の両方の態様が含まれるように規定されていたのを、例えば特許明細書中の【0040】及び【0050】の記載や、「製造例3:錠剤」(【0086】)における錠剤(タブレット)の調製に際しVAYPを他の各原料と合わせて配合したことの記載に基づき、b’)の添加配合の態様に限定するとともに; ・同サプリメントの「DPP-IV阻害用」としての用途を明確にする; ものであるから、この訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 そうすると、これらの訂正事項(1)3)に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、同第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」、及び同第4号に規定する引用関係の解消を目的とする訂正である。 そして、当該(1)3)に係る訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。 4)訂正事項(1)4)について 訂正事項(1)4)は、訂正前の請求項6において、 ・有効成分として引用されていた「請求項1乃至3に記載の剤」から「請求項1」のみを削除して「請求項2又は3に記載の剤」に限定するものであるから、 この訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同第4号に規定する引用関係の解消を目的とするものであり; かつ、 ・訂正前の請求項6に係る医薬品および/または医薬部外品として、次のa'')及びb''): a'') 当該医薬品および/または医薬部外品が元々その素材中に上記DPP-IV阻害剤を含む場合; b'') 当該医薬品および/または医薬部外品の他の素材と合わせ、引用請求項の剤を添加物として含有させる(添加配合する)場合; の両方の態様が含まれるように規定されていたのを、例えば特許明細書中の「【0038】 本発明のVAYPを有効成分とするのDPP-IV阻害剤・・・を医薬品または医薬部外品として用いる場合は、・・・。製剤形態としては、錠剤、・・・、液剤(ドリンク剤)、健康飲料、ビタミン含有保健剤などが挙げられる。」、「【0048】 本発明のトリペプチドである・・、TGY、HDY、・・及びLYNのいずれか1種または2種以上を有効成分とするDPP-IV阻害剤・・・を医薬品または医薬部外品として用いる場合は、・・・。製剤形態としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、散剤、カプセル剤、トローチ剤、チュアブル剤、液剤(ドリンク剤)、健康飲料、ビタミン含有保健剤などが挙げられる。」、及び、前記【0038】や【0048】の健康飲料や錠剤(タブレット)等に関連する【0040】、【0050】、【0084】?【0086】の記載に基づき、b'')の添加配合の態様に限定するとともに; ・同医薬品および/または医薬部外品の「DPP-IV阻害用」としての用途を明確にする; ものであるから、この訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 そうすると、これらの訂正事項(1)4)に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、同第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」、及び同第4号に規定する引用関係の解消を目的とする訂正である。 そして、当該(1)4)に係る訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。 (2)訂正事項(2)1)?2)について 1)訂正事項(2)1)について 訂正事項(2)1)は、訂正前の請求項7において、「テトラペプチド」と2種の「トリペプチド」のいずれかとがそれぞれ独立した選択肢として並記された各ペプチドそれ自体を規定しているのか、若しくは「テトラペプチド」及び2種の「トリペプチド」のいずれかとからなるものを規定しているのか、について明瞭に把握できなかったのを、それら「テトラペプチド」と2種の「トリペプチド」のいずれかとを独立した選択肢として並列に特定することで、「・・・からなる新規テトラペプチド、又は、・・・若しくは・・・からなる新規トリペプチド。」との規定のどおりの、各ペプチドそれ自体に係る発明であることを明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。 2)訂正事項(2)2)について 訂正事項(2)2)は、訂正前の請求項8において、 ・訂正事項(2)1)の請求項7における「・・・新規テトラペプチド、又は、・・・新規トリペプチド。」との訂正に合わせて、当該請求項7のペプチドの引用箇所を「請求項7に記載のペプチドの1種又は2種・・・」とするものであるから、この訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり; かつ、 ・訂正前の請求項8に係る飲食品として、次のa''')及びb'''): a''')当該飲食品が元々、その素材中に引用請求項7のペプチドの1種または2種以上を含む場合 b''')当該飲食品の他の素材と合わせ、引用請求項7のペプチドの1種又は2種以上を添加物として含有させる(添加配合する)場合 の両方の態様が含まれていたのを、例えば特許明細書中の【0040】、【0050】や【0084】?【0086】の記載に基づき、b''')の添加配合の態様に限定するとともに; ・同飲食品の用途を「DPP-IV阻害用」に限定する; ものであるから、この訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そうすると、これらの訂正事項(2)2)に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。 そして、これら(2)1)?2)に係る訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。 3.小活 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、これを認める。 【第3】訂正後の本件発明 本件訂正後の請求項1?8に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1?8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「 【請求項1】 茶葉タンパク質分解物を有効成分とするジペプチジルペプチダーゼ(DPP)-IV阻害剤であって、該茶葉タンパク質分解物が、茶葉をアルカリ溶液で抽出して調製された茶葉タンパク質を、プロテアーゼで酵素分解することによって調製された、Leu-Tyr及びIle-Proの配列からなるペプチドの1種又は2種を活性成分として含有する茶葉タンパク質分解物であるDPP-IV阻害剤(但し、茶葉タンパク質分解物中の環状ジペプチドを除き、かつ、茶葉タンパク質分解物がジペプチドLeu-Tyr及び/またはIle-ProのみからなるDPP-IV阻害剤を除く)。 【請求項2】 茶葉タンパク質分解物から得られるVal-Ala-Tyr-Proを有効成分とするDPP-IV阻害剤。 【請求項3】 Val-Ala-Tyr-Pro、Thr-Gly-Tyr、His-Asp-Tyr及びLeu-Tyr-Asnの配列からなるペプチドの1種または2種以上を有効成分とするDPP-IV阻害剤。 【請求項4】 請求項2又は3に記載の剤を有効成分として添加されたDPP-IV阻害用飲食品。 【請求項5】 請求項2又は3に記載の剤を有効成分として添加されたDPP-IV阻害用サプリメント。 【請求項6】 請求項2又は3に記載の剤を有効成分として添加されたDPP-IV阻害用医薬品および/または医薬部外品。 【請求項7】 Val-Ala-Tyr-Proの配列からなる新規テトラペプチド、又は、His-Asp-Tyr若しくはLeu-Tyr-Asnの配列からなる新規トリペプチド。 【請求項8】 請求項7に記載のペプチドの1種又は2種以上が添加されたDPP-IV阻害用飲食品。 」 ※合議体注: 1.以下、上記訂正後の請求項1?8に係る発明を、順に「訂正発明1」?「訂正発明8」ということがある(なお、請求項2、3については訂正はされていないが、便宜上、請求項1、4?8と同様に「訂正発明2」、「訂正発明3」ということがある)。 また、訂正前の請求項1?8に係る発明を、順に「特許発明1」?「特許発明8」ということがある。 2.以下、便宜上、訂正発明に規定される各ペプチドを、次のようにアミノ酸1文字表記で記すことがある。 ・Leu-Tyr → LY ・Ile-Pro → IP ・Val-Ala-Tyr-Pro → VAYP ・Thr-Gly-Tyr → TGY ・His-Asp-Tyr → HDY ・Leu-Tyr-Asn → LYN また、他にも、引用甲号証等に記載されたペプチドについて、便宜上アミノ酸1文字表記で記すことがある。 【第4】特許異議申立書の異議申立理由について 申立人は、甲第1号証?甲第18号証を提出し、特許異議申立書において、訂正前の請求項1?8に係る発明(特許発明1?8)に係る特許は、次のA.?C.(以下、順に「申立理由A」?「申立理由C」ということがある)により取り消されるべきものであることを主張している。 A.特許発明1、4、5、6、8は、甲第1号証?甲第9号証のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 B.特許発明1?8は、甲第1号証?甲第11号証及び甲第12号証?甲第17号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 A.及びB.に関し、より具体的には、申立人は概要次の(1)?(8)を主張する。 (1)特許発明1は、 (1-1)甲12?15に記載された出願時の技術常識を踏まえると、甲1、甲2、若しくは甲4?甲9のいずれかに記載された発明と同一である か、又は、 (1-2)仮にそうでなくとも、甲1、甲2、若しくは甲4?甲9のいずれかに記載された発明、及び甲3や甲14?15の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)特許発明2は、 ・甲4?甲10のいずれかに記載された発明、及び甲4?甲10のいずれかの記載に基づいて; 若しくは、 ・甲4?甲10のいずれかに記載された発明、及び、甲16?甲17に記載された技術常識を踏まえつつ甲4?甲10のいずれかに記載された発明に基づいて; 当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)特許発明3は、甲1、2、4?11のいずれかに記載された発明、及び甲1、2、4?11のいずれかの記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4) 特許発明4は、 (4-1) 甲4、5、8のいずれかに記載された発明であるか、又は、 (4-2) 甲4、5、8のいずれかに記載された発明、及び甲4、5、8のいずれかの記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5) 特許発明5は、 (5-1) 甲4、10のいずれかに記載された発明であるか、又は (5-2) 甲4、10のいずれかに記載された発明、及び甲4、10のいずれかの記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6) 特許発明6は、 (6-1) 甲4、8、10のいずれかに記載された発明であるか、又は、 (6-2) 甲4、8、10のいずれかに記載された発明、及び甲4、8、10のいずれかの記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (7) 特許発明7は、甲1、2、4?11のいずれかに記載された発明、及び甲1、2、4?11のいずれかの記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (8) 特許発明8は、 (8-1) 甲4、5、8のいずれかに記載された発明であるか、又は、 (8-2) 甲4、5、8のいずれかに記載された発明、及び甲4、5、8のいずれかの記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 C.請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 [証拠方法] ・甲第1号証:国際公開第2013/125622号 ・甲第2号証:国際公開第2013/133032号 ・甲第3号証:特開2014-3971号公報 ・甲第4号証:特開2013-40111号公報 ・甲第5号証:FOOD CHEMISTRY, (2015) 175 P.66-73 ・甲第6号証:FOOD CHEMISTRY, (2012) 134 P.797-802 ・甲第7号証:JOURNAL OF FUNCTIONAL FOODS, (2012) 4 P.403-422 ・甲第8号証:BIOCHEMICAL AND BIOPHYSICALRESEARCH COMMUNICATIONS, (2013) 430 P.1217-1222 ・甲第9号証:BIOMEDICINE, (2015) 5(3) ARTICLE 2 P.9-15 ・甲第10号証:特開2014-184962号公報 ・甲第11号証:国際公開第2010/001977号 ・甲第12号証:UniProtKBタンパク質配列データベース、タンパク質:Photosystem I P700chlorophyll a apoprotein A2/遺伝子:psaB/生物:Camellia sinensis (Tea)、最後の配列更新:2013年3月6日 <URL:https://www.uniprot.org/uniprot/L0E78> のプリントアウト物 1/6-6/6頁 ・甲第13号証:UniProtKBタンパク質配列データベース、タンパク質:Maturase K/遺伝子:matK/生物:Camellia sinensis (Tea)、最後の配列更新:2002年10月1日 <URL:https://www.uniprot.org/uniprot/Q8MA31> のプリントアウト物 1/4-4/4頁 ・甲第14号証:UniProtKBタンパク質配列データベース、タンパク質:Maturase K/遺伝子:matK/生物:Camellia sinensis (Tea)、最後の配列更新:2002年10月1日 <URL:https://www.uniprot.org/uniprot/Q8MA31> のプリントアウト物 1/5-5/5頁 ・甲第15号証:UniProtKBタンパク質配列データベース、タンパク質:Photosystem II protein D1/遺伝子:psbA/生物:Camellia sinensis (Tea)、最後の配列更新:2004年10月11日 <URL:https://www.uniprot.org/uniprot/Q68NH4> のプリントアウト物 1/7-7/7頁 ・甲第16号証:UniProtKBタンパク質配列データベース、タンパク質:Ribulose bisphosphate carboxylase large chain/遺伝子:rbcl./生物:Camellia sinensis (Tea)、最後の配列更新:2013年7月24日 <URL:https://www.uniprot.org/uniprot/R41715> のプリントアウト物 1/5-5/5 ・甲第17号証:UniProtKBタンパク質配列データベース、タンパク質:Ferredoxin/遺伝子:N/A/生物:Camellia sinensis (Tea)、最後の配列更新:2011年9月21日 <URL:https://www.uniprot.org/uniprot/F8SPG7> のプリントアウト物 1/4-4/4 ・甲第18号証:本件特許出願の審査係属時の 平成30年4月26日付け 拒絶理由通知書 1-4頁、 平成30年6月13日付け 面接記録及び添付書類 1-4頁、 平成30年6月20日付け 手続補正書 1頁、及び 同日付け 意見書 1-6頁 ※合議体注: 以下、申立人による上記甲第1号証?甲第18号証を、順に「甲1」?「甲18」ということがある。 【第5】取消理由通知書に記載した取消理由について 1.取消理由通知書1の取消理由 訂正前の請求項1、4?8に係る特許に対し通知された、取消理由通知書1に記載された取消理由は、概要次の(1)?(3)のとおりである。 ( 以下、(1)(1-1)、(1)(1-2)の理由を順に「取消理由1-1」、「取消理由1-2」ということがあり、同(2)(2-1)、(2)(2-2)の理由を順に「取消理由2-1」、「取消理由2-2」ということがあり、同(3)を「取消理由3」ということがある。) (1)取消理由1(新規性欠如) (1-1) 特許発明1、並びに、特許発明4?6のうち特許発明1のDPP-IV阻害剤を引用する発明の態様は、刊行物1(甲1)、刊行物2(甲2)、刊行物3(甲10)、刊行物4(甲4)、刊行物5(甲5)、刊行物6(甲6)、及び刊行物7(甲8)のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (1-2) 特許発明8は、次の刊行物8:特開2015-100276号公報に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)取消理由2(進歩性欠如) (2-1) 特許発明1、及び、特許発明4?6のうち特許発明1のDPP-IV阻害剤を引用する発明の態様は、刊行物1(甲1)、刊行物2(甲2)、刊行物3(甲10)、刊行物4(甲4)、刊行物5(甲5)、刊行物6(甲6)、及び刊行物7(甲8)のいずれかに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2-2) 特許発明8は、次の刊行物8:特開2015-100276号公報に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3)取消理由3(明確性違反) 請求項7は 「 Val-Ala-Tyr-Proの配列からなる新規テトラペプチド、及びHis-Asp-Tyr又はLeu-Tyr-Asnの配列からなる新規トリペプチド。」 と規定されているところ、上記下線部の「及び」や「又は」の記載は、同請求項に係る発明が「テトラペプチド」と「トリペプチド」がそれぞれ独立した選択肢として並記された、各ペプチドそれ自体に係る化合物発明であるのか、或いは、「テトラペプチド」及び「トリペプチド」の2種のペプチドで構成される組成物の発明であるのか、その解釈を曖昧にするものである。 よって、請求項7の記載は明確ではないから、請求項7に係る本件特許は、特許請求の範囲の記載が法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 2.取消理由通知書2の取消理由 取消理由通知書2に記載された取消理由は、上述のとおり取り下げられたものとみなされる【第1】(3)の訂正請求に係る請求項1の発明に対する、上の取消理由1-1及び1-2である。 【第6】合議体の判断 【6-1】甲1?甲17の記載事項、及び甲1?甲11に記載された発明 1.各甲号証の記載事項 ※合議体注: 甲5?甲9は、英語で記載されていることから、合議体で作成した日本語文にて記す。 また、下線は合議体による。 (1)甲1 ・甲1-1)請求項1 「 [請求項1] Met-Lys-Proからなるペプチドを有効成分として含有するジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害剤。 ・・・ 」 ・甲1-2)3?4頁 [0008] 「 [0008] 本発明者は・・・カゼインを特定の酵素で加水分解して得られたカゼイン加水分解物中に、ジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害作用を有するMet-Lys-Proで表される配列(配列番号1)を有するペプチド(以下、「ペプチドMKP」ともいう)を見出し、本発明を完成するに至った。・・・」 ・甲1-3)16?17頁 [0039]?[0041] 「 [0039] 試験例1:各ペプチドのジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害活性確認試験 表1に示す、製造例1で得たトリペプチドMet-Lys-Pro(MKP:配列番号1)のDPP-4阻害活性確認試験を行った。また、トリペプチドVal-Pro-Pro(以下「VPP」とする:配列番号2)、トリペプチドIle-Pro-Pro(以下「IPP」とする:配列番号3)、ジペプチドLeu-Tyr(以下「LY」とする:配列番号4)のDPP-4阻害活性確認試験を行った。なお、VPP、IPP及びLYは、上述の製造例2:MKPペプチド化学合成に準じて、調製したものである。 [0040] 参考例1:各ペプチドのアンジオテンシン変換酵素阻害活性確認試験 また、表1に示すトリペプチドMKP、トリペプチドVPP、トリペプチドIPP及びジペプチドLYのACE阻害活性確認試験を行った。 [0041][表1] 」 (2)甲2 ・甲2-1)請求項1 「 [請求項1] 下記の(a)?(d)のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドから選ばれる1種又は2種以上のペプチドを有効成分として含有するジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害剤。 (a)Ser-Pro-Ala-Gln(配列番号1) (b)Gly-Pro-Val-Arg(配列番号2) (c)His-Pro-His-Pro-His(配列番号3) (d)Ala-Pro-Lys(配列番号4) 」 ・甲2-2)3?4頁 [0008] 「 [0008] 本発明者は・・・カゼインを特定の酵素で加水分解して得られたカゼイン加水分解物中の、SPAQ(配列番号1)、GPVR(配列番号2)、HPHPH(配列番号3)及びAPK(配列番号4)のアミノ酸残基3?5個からなるペプチド、(以下、「本開示の3?5ペプチド」又は「前記3?5ペプチド」ともいう)に、ジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。・・・」 ・甲2-3)20?21頁 [0044]?[0047] 「 [0044] 製造例2:SPAQ(配列番号1)、GPVR(配列番号2)、HPHPH(配列番号3)、APK(配列番号4)の3?5ペプチドの化学合成 ・・・ [0045] ・・・ また、Val-Pro-Pro(VPP:配列番号5)、Ile-Pro-Pro(IPP:配列番号6)、Leu-Tyr(LY:配列番号7)を化学合成した。 [0046] 試験例1:各ペプチドのジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害活性確認試験 表1に示す、製造例2で得た各ペプチドのジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害活性確認試験を行い、その結果を表1に示した。 [0047] [表1] 」 (3)甲3 ・甲3-1)特許請求の範囲 「 【請求項1】 以下の工程を順次行うことを特徴とするタンパク質分解物の製造方法。 (a)茶葉をアルカリ水溶液で抽出し、抽出残渣を取り除き抽出液を得る工程 (b)抽出液のpHを2から5にすることにより凝集したタンパク質画分を回収する工程 (c)タンパク質画分を、中性エンドペプチダーゼ活性を有する酵素製剤及び酸性エキソペプチダーゼ活性を有する酵素製剤で分解し反応液を得る工程 (d)反応液のpHを2から5に調整して不溶性画分を除去し可溶性画分としてタンパク質分解物を回収する工程 ・・・ 【請求項6】 アミノ酸が乾燥固形中に1重量%以上含有される請求項1乃至5記載の製造方法により得られるタンパク質分解物。 【請求項7】 Ile-Trp、Ile-Tyr、Val-Trpで表されるジペプチドの合計が乾燥固形中に0.1重量%以上含有する請求項6記載のタンパク質分解物。 ・・・ 【請求項13】 請求項6乃至7記載のタンパク質分解物を有効成分として含有するアンジオテンシン変換酵素阻害剤。 」 ・甲3-2)【0071】?【0074】 「 【0071】<タンパク質分解物中のACE阻害活性ジペプチドの同定> ・・・本実施例のタンパク質分解物について・・・Val-Tyr、Ala-Trp、Leu-TyrおよびLeu-TrpをLC-ESI-MSで定量した(表7)。 【0072】 【表7】 表7 サモアーゼPC10F分解物中のスミチームACP-G処理物中の乾燥固形中に含まれるVal-Tyr、Ala-Trp、Leu-TyrおよびLeu-Trpの含量(重量%) 【0073】 また、実施例5および実施例6のタンパク質分解物のACE阻害活性試験を行った(表8)。・・・ 【0074】【表8】 表8 実施例5,6のタンパク質分解物および標品Val-Tyr、Ala-Trp、Leu-Trp、Leu-TyrのACE阻害活性 」 ・甲3-3)【0076】?【0077】 「 【0076】 実施例7:緑茶葉からの茶タンパク質分解物の調製 <茶葉タンパク質からのタンパク質分解物の製造> 実施例6<茶葉タンパク質の調製>で得られた茶葉タンパク質のうち、5gを0.5M水酸化ナトリウム水溶液で加熱溶解させ、1M塩酸でpH7.2に調整し、水を加えて液量を200mLにした後、中性エンドペプチダーゼ活性を有する酵素製剤(サモアーゼPC10F)を5000ユニット添加し、60℃で4時間酵素分解を行った。この酵素反応液を、沸騰水浴中で20分間加熱後、pHを0.1M塩酸でpH4に調整し、酸性エキソペプチダーゼ活性を有する酵素製剤(スミチームACP-G)を2000ユニット加え、50℃で4時間作用させた。反応終了後、0.2M水酸化ナトリウム水溶液でpHを7に調整し、沸騰水浴中で20分間煮沸し、酵素反応を停止させた。 得られた酵素反応液を限外濾過遠心チューブ(Millipore社,Amicon Ultra-15Centrifugal Filter Devices,MWCO;50,000)で3,500×gで15分遠心を行い、透過液を回収した。得られた透過液について、更に限外濾過遠心チューブ(CORNING社,Spin-X UF20, MWCO:10,000)で3,500×gで30分遠心を行い、透過液を回収した。この透過液を、マイクロアシライザーS1(旭化成)を用いて脱塩後、凍結乾燥し、タンパク質分解物(1.26 g)を得た。 <タンパク質分解物中のACE阻害活性ジペプチドの定量> また、得られた分解物を水に溶解させ1 mg/mLに調整した後に、0.45μmPTFEフィルター(アドバンテック(株)製、DISMIC-25HP)濾過を行い、7種類のACE阻害活性ペプチド(Ala-Trp、Ile-Trp、Ile-Tyr、Val-Trp、Val-Tyr、Leu-Trp、Leu-Tyr)をLC-ESI-MSで定量した(表10)。 【0077】 【表10】 表10 実施例7のタンパク質分解物の乾燥固形中に含まれるACE阻害ジペプチド含量(重量%) 」 (4)甲4 ・甲4-1)特許請求の範囲 「 【請求項1】 米糠又は玄米由来のタンパク質を加水分解してなるペプチドを有効成分として含有するジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害剤。 ・・・ 【請求項3】 前記ペプチドが、Ile-Pro及び/又はLeu-Proで示されるジペプチドである請求項1又は2記載のジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害剤。 ・・・ 」 ・甲4-2)【0043】 「 【0043】 (ウマミザイムGによる米糠由来加水分解物中のIle-ProおよびLeu-Proの定量) ・・・ウマミザイムGによる米糠由来加水分解物中1mgあたり、Ile-Proが1.22±0.22μg、Leu-Proが1.69±0.30μg含まれていると見積もられた。 」 ・甲4-3)【0057】?【0059】 「 【0057】 試験例1:(市販ジペプチドによるDPP-IV阻害活性の測定) ・・・ 【0058】 ・・・。表3に結果を示す。表3に示された結果から分かるように、Ile-Proが最も阻害活性が強く、そのIle-ProのレトロペプチドであるPro-IleおよびGly-Proは全く阻害を示さなかった。 【0059】 【表3】 」 (5)甲5 ・甲5-1)標題 「 ヒトDPP-IV阻害剤を同定するためのジペプチドライブラリーの解析 」 ・甲5-2)図1(A) 「 図1.ジペプチドのhDPPIV阻害作用。(A)hDPPIV活性に対する各ジペプチドの阻害率(%)。セルの色は阻害率に対応する。N.T.:試験していない。データは平均±SD(n=3)として示されている。(B)・・・(C)高阻害性・・・並びに低阻害性又は阻害性のない(阻害率<5%)ジペプチドに含まれるアミノ酸残基の・・・頻度解析。(D)・・・ 」 上掲の図1(A)から、 ・IP(Ile-Pro)のhDPP-IVに対する阻害率が「59.8±1.3」%; ・VA(Val-Ala)のhDPP-IVに対する阻害率が「28.9±2.7」%; ・AY(Ala-Tyr)のhDPP-IVに対する阻害率が「29.1±2.1」%; ・YP(Tyr-Pro)のhDPP-IVに対する阻害率が「22.7±4.2」%; ・TG(Thr-Gly)のhDPP-IVに対する阻害率が「39.5±3.6」%; ・GY(Gly-Tyr)のhDPP-IVに対する阻害率が「12.5±2.3」%; ・HD(His-Asp)のhDPP-IVに対する阻害率が「15.3±3.2」%; ・DY(Asp-Tyr)のhDPP-IVに対する阻害率が「<5.0」%; ・LY(Leu-Tyr)のhhDPP-IVに対する阻害率が「<5.0」%; ・YN(Tyr-Asn)のhDPP-IVに対する阻害率が「17.1±4.9」%; あることが読み取れる。 ・甲5-3)表1 表1中のRanking6:「Ile-Pro」」の欄には、Ile-ProのhDPP-IV阻害に係るIC_(50)値(mM)が「0.067±0.015」であったことが記載されている。 (6)甲6 ・甲6-1)標題 「 脱脂米糠からの由来のジペプチジルペプチダーゼIV阻害性ペプチドの生産 」 ・甲6-2)800頁右欄3?11行 「・・・。16種のジペプチド及びジプロティンAのDPP-IV活性に対するIC_(50)(mM)が表2に示されている。・・・Ile-Pro及びVal-ProはジプロティンA及びBのN末端(Ile-Pro-Ile及びVal-Pro-Leu)にそれぞれ一致している。・・・」 ・甲6-3)表2(罫線省略) 「 表2 合成ペプチドのDPP-IV活性に対するIC_(50)(mM)値 ペプチド IC_(50)(mM) 相対値 ジプロティンA 0.21±0.01 0.5 Ile-Pro 0.41±0.07 1.0 ・・・ ・・・ ・・・ Tye-Pro 3.17±0.44 7.7 ・・・ ・・・ ・・・ Gly-Pro 阻害なし - Pro-Ile 阻害なし - 」 (7)甲7 ・甲7-1)標題 「 insilicoアプローチによるジペプチジルペプチダーゼ(DPP)-IV阻害剤前駆体としての食餌性タンパク質の潜在的可能性の評価 」 ・甲7-2)表1(罫線省略) 「 表1-文献中でDPP-IV阻害活性を示すことが報告されているジペプチド ペプチド配列 参照文献 Ki(mM) DPP-IV活性(%) ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ Ile-Pro ・・・(1995) 0.0069^(a) - ・・・(2003) 0.0149^(b,d) - ・・・(2003) 0.0292^(b,e) - ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ Tyr-Pro ・・・(1992) 0.0853^(b) - Val-Ala ・・・(1982) 0.05^(c) - ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 」 (8)甲8 ・甲8-1)標題 「 Saccharomyces cerevisiae発現系により産生されるヒトジペプチジルペプチダーゼIVを用いたジペプチドライブラリーの阻害剤開発のための系統的解析 」 ・甲8-2)1220頁右欄19?26行 「・・・。我々は、ジペプチドIle-Ala、Leu-Ala、Val-Ala、Trp-Ala、Ile-Pro、Lys-Pro、Gln-Pro、Val-Pro、Trp-Pro、及びTyr-ProがhDPP-IV阻害作用を示すことを見出した(阻害率、>50%)。・・・これらのジペプチドのKi値は・・・、Ile-Pro、0.30mM であった(図3B)。・・・」 (9)甲9 ・甲9-1)標題 「 2型糖尿病の管理のためのジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤としての食物タンパク質由来の生理活性ペプチドの開発 」 ・甲9-2)表1(罫線省略) 「 表1-IC_(50)値が強い順のタンパク質由来DPP-IV阻害性ペプチド ペプチド配列 IC_(50)(μM) 参照文献 Ile-Pro-Ile 3.5 [43] ・・・ ・・・ ・・・ Val-Ala 168 [46] ・・・ ・・・ ・・・ Ile-Pro 410 [26] ・・・ ・・・ ・・・ 」 ・甲9-3)14頁 参照文献[26]、[46] 「 ・・・ [26] ・・・脱脂米糠からの由来のジペプチジルペプチダーゼIV阻害性ペプチドの生産.Food Chem 2012; 134:797-802 ・・・ [46] ・・・乳タンパク質由来ジペプチド及び加水分解物のジペプチジルペプチダーゼIV阻害及び抗酸化特性.Peptides 2013; 39:157-63 ・・・ 」 (10)甲10 ・甲10-1)請求項1 「 【請求項1】 下記の(a)?(c)のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドから選ばれる1種又は2種以上のものを有効成分として含有するジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害剤。 (a)Val-Ala(配列番号1) (b)Ile-Ala(配列番号2) (c)Leu-Ala(配列番号3) 」 ・甲10-2)【0008】 「 【0008】 本発明者は・・・乳蛋白を特定の酵素で加水分解して得られた乳蛋白加水分解物中に、ジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害作用を有するジペプチドVA(配列番号1)及びジペプチドIA(配列番号2)、ジペプチドLA(配列番号3)(以下、「本開示のジペプチド」又は「前記ジペプチド」ともいう)を見出し、本発明を完成するに至った。 」 ・甲10-3)【0046】?【0049】 「 【0046】 製造例2:ジペプチドVA/IA/LAの化学合成 ・・・ 【0047】 ・・・ また、Val-Pro-Pro(VPP:配列番号4)、Ile-Pro-Pro(IPP:配列番号5)、Leu-Tyr(LY:配列番号6)を化学合成した。 【0048】 試験例1:各ペプチドのジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害活性確認試験 表1に示す、製造例2で得た各ペプチドのジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害活性確認試験を行い、その結果を表1に示した。 【0049】 【表1】 」 (11)甲11 ・甲11-1)請求の範囲 「 [請求項1] 麹菌培養物、もしくは麹菌培養物と植物由来タンパク質原料を混合したものに、塩水を加えて仕込み、仕込み後10日以内に、諸味液汁中のロイシンアミノペプチダーゼ-I活性を1.0U/ml以下、かつ、ロイシンアミノペプチダーゼ-II活性を0.5U/ml以下に制御することにより得られる発酵調味料。 ・・・ ジペプチドGly-Tyrを40μg/ml以上含有する請求項1?4のいずれか1項に記載の発酵調味料。 ジペプチドSer-Tyrを20μg/ml以上含有する請求項1?5のいずれか1項に記載の発酵調味料。 ・・・ 」 ・甲11-2)[0024]?[0028] 「実施例1 [0024] <ペプチド含有発酵調味料の製造> 加熱変性した大豆と小麦を等量含む固体培地に、麹菌アスペルギルス・ソーヤの胞子を添加して、25?40℃で72時間製麹することにより醤油麹を得た。次に、加熱変性した大豆14kg、醤油麹2kg、水16L、食塩3kgを混合し、45℃、100rpmで攪拌した。10日後に、諸味液汁中のLAP-I活性が1.0U/ml以下、かつ、LAP-II活性が0.5U/ml以下に低下した諸味を得た。次いで、酵母チゴサッカロマイセス・ルーキシーを1.5×10 6個/mlの割合で混合し・・滓成分を含まない上清のみを20L採取した(組成物1;本発明発酵調味料)。また、大豆3.2kg、醤油麹12.8kgを用いて、同様の方法で発酵調味料を調製した。(組成物2;本発明発酵調味料)。さらに、仕込み時に大豆を加えず、醤油麹16kgを用いて、同様の方法で発酵調味料を調製した(組成物3;本発明発酵調味料)。 [0025] 仕込後10日目の諸味をろ過し、得られた液汁の各種ペプチダーゼ活性を測定した。・・・。ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)活性は、Agnes Doumas et al.,Applied and Environmental Microbiology,1998,vol.64,No.12,p.4809-4815に記載の方法で測定した(表1)。・・・ [0026] [表1] 実施例2 [0027] 次に、酵素活性以外の各種分析を行った。・・・ [0028] [表2] 」 (12)甲12?甲17 甲12?甲17には、茶木由来のタンパク質であるPhotosystem I P700chlorophyll a apoprotein A2(甲12)、Maturase K(甲13、甲14)、Photosystem II protein D1(甲15)、Ribulose bisphosphatecarboxylaselarge chain(甲16)、及びFerredoxin(甲17)の各アミノ酸配列が記載されている。 2.甲1?甲11に記載された発明 (1)甲1-3及び甲2-3における、LY及びそのDPP-IV阻害作用に関する記載から、甲1、甲2には、それぞれ次の発明: 「 ジペプチドLY(Leu-Tyr)を有効成分とするDPP-IV阻害剤 」 (以下、「甲1発明」又は「甲2発明」ということがある); 及び 「 DPP-IV阻害活性を有するジペプチドLY(Leu-Tyr) 」 (以下、「甲1ペプチド発明」又は「甲2ペプチド発明」ということがある); が記載されているものと認められる。 (2)甲3-1の方法により製造されてなる茶葉タンパク質分解物及びそのACE阻害作用、並びに、それら茶葉タンパク質分解物中にLYが含まれていることの記載(甲3-2、甲3-3)から、甲3には、次の発明: 「 茶葉をアルカリ水溶液で抽出した後pH2?5としてタンパク質画分を抽出し、これに中性エンドペプチダーゼ製剤及び酸性エキソペプチダーゼ製剤で処理してなる、ジペプチドLY(Leu-Tyr)を含む茶葉タンパク質分解物を有効成分とする、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤 」 (以下、「甲3発明」ということがある); が記載されているものと認められる。 (3)甲4-3中の表3におけるIPやYP、及びそれらのDPP-IV阻害作用に関する記載から、甲4には、次の発明: 「 ジペプチドIP(Ile-Pro)又はYP(Tyr-Pro)を有効成分とするDPP-IV阻害剤 」 (以下、「甲4発明」ということがある); 及び 「 DPP-IV阻害活性を有するジペプチドIP(Ile-Pro)又はYP(Tyr-Pro) 」 (以下、「甲4ペプチド発明」ということがある); が記載されているものと認められる。 (4)甲5-2?甲5-3のジペプチド及びそれらのDPP-IV阻害作用に関する記載から、甲5には、次の発明: 「 ジペプチドIP(Ile-Pro)、VA(Val-Ala)、AY(Ala-Tyr)、YP(Tyr-Pro)、TG(Thr-Gly)、GY(Gly-Tyr)、HD(His-Asp)、DY(Asp-Tyr)、LY(Leu-Tyr)、又はYN(Tyr-Asn)を有効成分とするDPP-IV阻害剤 」 (以下、「甲5発明」ということがある); 及び 「 DPP-IV阻害活性を有するジペプチドIP(Ile-Pro)、VA(Val-Ala)、AY(Ala-Tyr)、YP(Tyr-Pro)、TG(Thr-Gly)、GY(Gly-Tyr)、HD(His-Asp)、DY(Asp-Tyr)、LY(Leu-Tyr)、又はYN(Tyr-Asn) 」 (以下、「甲5ペプチド発明」ということがある); が記載されているものと認められる。 (5)甲6-3のジペプチド及びそれらのDPP-IV阻害作用に関する記載から、甲6には、次の発明: 「 ジペプチドIP(Ile-Pro)又はYP(Tyr-Pro)を有効成分とするDPP-IV阻害剤 」 (以下、「甲6発明」ということがある); 及び 「 DPP-IV阻害活性を有するジペプチドIP(Ile-Pro)又はYP(Tyr-Pro) 」 (以下、「甲6ペプチド発明」ということがある); が記載されているものと認められる。 (6)甲7-2の表1中のジペプチドIPやYP、VA、及びそれらのDPP-IV阻害作用に関する記載から、甲7には 「 ジペプチドIP(Ile-Pro)、YP(Tyr-Pro)又はVA(Val-Ala)を有効成分とするDPP-IV阻害剤 」 (以下、「甲7発明」ということがある); 及び 「 DPP-IV阻害活性を有するジペプチドIP(Ile-Pro)、YP(Tyr-Pro)又はVA(Val-Ala) 」 (以下、「甲7ペプチド発明」ということがある); が記載されているものと認められる。 (7) 甲8-2のジペプチドIPやVA、YP及びそれらのDPP-IV阻害作用に関する記載から、甲8には、次の発明: 「 ジペプチドIP(Ile-Pro)、VA(Val-Ala)又はYP(Tyr-Pro)を有効成分とするDPP-IV阻害剤 」 (以下、「甲8発明」ということがある); 及び 「 DPP-IV阻害活性を有するジペプチドIP(Ile-Pro)、VA(Val-Ala)又はYP(Tyr-Pro)」 (以下、「甲8ペプチド発明」ということがある); が記載されているものと認められる。 (8) 甲9-2における、ジペプチドIPやVA、及びそれらのDPP-IV阻害作用に関する記載から、甲9には、次の発明: 「 ジペプチドIP(Ile-Pro)又はVA(Val-Ala)を有効成分とするDPP-IV阻害剤 」 (以下、「甲9発明」ということがある); 及び 「 DPP-IV阻害活性を有するジペプチドIP(Ile-Pro)又はVA(Val-Ala) 」 (以下、「甲9ペプチド発明」ということがある); が記載されているものと認められる。 (9)甲10-3における、ジペプチドLYやVA、及びそれらのDPP-IV阻害作用に関する記載から、甲10には、次の発明: 「 ジペプチドLY(Leu-Tyr)又はVA(Val-Ala)を有効成分とするDPP-IV阻害剤 」 (以下、「甲10発明」ということがある); 及び 「 DPP-IV阻害活性を有するジペプチドLY(Leu-Tyr)又はVA(Val-Ala) 」 (以下、「甲10ペプチド発明」ということがある); が記載されているものと認められる。 (10)甲11-1?甲11-2のGY(Gly-Tyr)及びSY(Ser-Tyr)含有調味料及びそのDPP-IV阻害作用に関する記載から、甲11には、次の発明: 「 麹菌培養物、もしくは麹菌培養物と植物由来タンパク質原料を混合したものに、塩水を加えて仕込み、仕込み後10日以内に、諸味液汁中のロイシンアミノペプチダーゼ-I活性を1.0U/ml以下、かつ、ロイシンアミノペプチダーゼ-II活性を0.5U/ml以下に制御することにより得られる、ジペプチドGY(Gly-Tyr)を含みDPP-IV阻害活性を有する発酵調味料 」 (以下、「甲11発明」ということがある); 及び 「 ジペプチドGY(Gly-Tyr)又はSY(Ser-Tyr) 」 (以下、「甲11ペプチド発明」ということがある); が記載されているものと認められる。 【6-2】対比・判断 【6-2-1】申立理由A及びBについて 1.訂正発明1(Leu-Tyr及び/又はIle-Proを発明特定事項として含む発明)について ・1-1.甲1?11を主引例とする対比・判断 (1)甲1を主引例とした場合 (1-1)訂正発明1と甲1発明とを対比すると、一致点、及び相違点は、次のようになる。 [一致点] 「 ジペプチド含有成分を有効成分とするDPP-IV阻害剤」 [相違点] 訂正発明1では、「ジペプチド含有成分」が、次の3つの要件: ・「茶葉をアルカリ溶液で抽出して調製された茶葉タンパク質を、プロテアーゼで酵素分解することによって調製され」る; ・「Leu-Tyr及びIle-Proの配列からなるペプチドの1種又は2種を活性成分として含有」する; ・但し、「環状ジペプチドを除き」、かつ、「茶葉タンパク質分解物」がジペプチドLeu-Tyr及び/またはIle-Proのみからなる」場合を除く; を満たす「茶葉タンパク質分解物」であるのに対し、 甲1発明では、「ジペプチド含有成分」は、単なるLeu-Tyrであって、上記3つの要件を併せ満たす「茶葉タンパク質分解物」中の成分であることの限定はない点 (以下、「相違点1」ということがある) (1-2) 以下、上記相違点1について検討する。 (i)ア) 甲1には、甲1発明における有効成分であるLeu-Tyrが、アルカリ抽出茶葉タンパク質のプロテアーゼ処理により製造される茶葉タンパク質分解物中に得られることの記載乃至示唆はない。 また、甲1には、そのような茶葉タンパク質分解物自体、記載乃至示唆されておらず、当該茶葉タンパク質分解物中にLeu-TyrやIle-Pro、及び環状ジペプチド以外の複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分が含まれることや、それらLeu-Tyr及び/又はIle-Proに加え複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分を含む当該茶葉タンパク質分解物成分をDPP-IV阻害のために用いることの記載乃至示唆も見出せない。 イ)イ1) そして、甲2?甲11にも、Leu-Tyrが、アルカリ抽出茶葉タンパク質のプロテアーゼ処理により製造される茶葉タンパク質分解物中に含まれることの記載乃至示唆はなく、また、当該茶葉タンパク質分解物中にLeu-TyrやIle-Pro、及び環状ジペプチド以外の複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分が含まれることや、それらLeu-Tyr及び/又はIle-Proに加え複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分を含む当該茶葉タンパク質分解物成分をDPP-IV阻害のために用いることの記載乃至示唆も見出せない。 イ2) なお、この点に関し、甲3には、アルカリ抽出茶葉タンパク質のプロテアーゼ処理により製造される茶葉タンパク質分解物中にLeu-Tyrが含まれることの記載はあるものの、甲3では、当該Leu-Tyr及びその他の様々なジペプチドを含む茶葉タンパク質分解物中の成分をACE阻害のために用い得ることが記載されているのみであって、それら茶葉タンパク質分解物中にLeu-TyrやIle-Pro、及び環状ジペプチド以外の複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分が含まれることや、かかる複数種のDPP-IV阻害活性ペプチドを含む茶葉タンパク質分解物をDPP-IV阻害のために用いることの記載乃至示唆までは見出せない。 そうすると、甲1に甲3の記載を併せ考慮したところで、甲1発明のLeu-Tyrに代えて、当該Leu-Tyr及び/又はIle-Proに加え環状ジペプチド以外の複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分を併せ含む茶葉タンパク質分解物を、DPP-IV阻害作用をもたらしめることを企図して甲1発明の有効成分として採用することや、その際の茶葉タンパク質分解物の適切な用法・用量等の条件についてまで、当業者が容易に想到し得たということはできない。 イ3) さらに、甲12?甲17には、茶木由来のタンパク質であるPhotosystem I P700chlorophyll a apoprotein A2(甲12)、Maturase K(甲13、甲14)、Photosystem II protein D1(甲15)、Ribulose bisphosphatecarboxylaselarge chain(甲16)、及びFerredoxin(甲17)の各アミノ酸配列が記載され、例えばPhotosystem I P700chlorophyll a apoprotein A2やMaturase Kのアミノ酸配列中にLeu-Tyrの箇所が複数存在することが示されている(甲12、甲13)ものの、これら甲12?甲17は、それらアミノ酸配列中に見出されるLeu-Tyrがアルカリ抽出茶葉タンパク質のプロテアーゼ処理により得られる茶葉タンパク質分解物中に含まれることを記載乃至示唆するものではなく、ましてや、当該Leu-TyrやIle-Pro、及びそれ以外の環状ジペプチドを除く複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分が当該茶葉タンパク質分解物に含まれることや、当該茶葉タンパク質分解物成分をDPP-IV阻害用に用いることを記載乃至示唆するものでもない。 ウ) そうすると、甲1の記載、及び甲2?甲17の記載を併せ踏まえても、甲1発明のLeu-Tyrに代えて、当該Leu-Tyr及び/又はIle-Proに加え環状ジペプチド以外の様々な複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分を併せ含む、アルカリ抽出茶葉タンパク質のプロテアーゼ分解により得られる茶葉タンパク質分解物を、DPP-IV阻害作用をもたらしめることを企図して甲1発明の有効成分として採用することについて、当業者が容易に想到し得たということはできない。 (ii)(訂正発明1の効果について) 本件特許明細書では、訂正発明1に規定される、茶葉をアルカリ溶液で抽出して調製された茶葉タンパク質をプロテアーゼ分解することにより分解により調製された「茶葉タンパク質分解物」が、Leu-TyrやIle-Pro、及びそれらに加え環状ジペプチド以外のDPP-IV阻害活性を有するVal-Ala-Tyr-Pro、Thr-Gly-Tyr、His-Asp-Tyr及びLeu-Tyr-Asn等の様々な複数種のペプチド成分を含むことを新たに見出し、以て、かかる「茶葉タンパク質分解物」をDPP-IV阻害のための有効成分として用いることができることを明らかにしている。 即ち、訂正発明1は、そのようなLeu-Tyr及び/又はIle-Proに加え環状ジペプチド以外の様々な複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分を併せ含む「茶葉タンパク質分解物」を有効成分とする新たなDPP-IV阻害剤の提供、という、甲1?甲17からは予期し得ない、本件特許明細書に記載された優れた効果をもたらすものである。 (1-3) 以上の検討のとおりであるから、訂正発明1は、甲1に記載された発明ではなく; また、甲1に記載された発明に基づいて、若しくは、甲1に記載された発明及び甲1?甲17のいずれか1又は2以上の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)甲2、甲5、甲10のいずれかを主引例とした場合 甲1における甲1発明と同じ 「 ジペプチドLY(Leu-Tyr)を有効成分とするDPP-IV阻害剤 」 を含む発明が記載されている甲2、甲5又は甲10を主引例とした場合についても、訂正発明1と甲2発明、甲5発明又は甲10発明とを対比すると、(1)(1-1)で述べたのと同様の一致点及び相違点1を有しているということができ、甲1を主引例とした場合について(1)で検討したのと同様のことがいえる。 よって、訂正発明1は、甲2、甲5、甲10のいずれかに記載された発明ではなく; また、甲2、甲5、甲10のいずれかに記載された発明、及び甲1?甲17のいずれか1又は2以上の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)甲3を主引例とした場合 (3-1)訂正発明1と甲3発明とを対比すると、一致点、及び相違点は、次のようになる。 [一致点] 「 茶葉タンパク質分解物を有効成分とする剤であって、該茶葉タンパク質分解物が、茶葉をアルカリ溶液で抽出して調製された茶葉タンパク質を、プロテアーゼで酵素分解することによって調製された、Leu-Tyrを活性成分として含有する茶葉タンパク質分解物である剤(但し、茶葉タンパク質分解物中の環状ジペプチドを除き、かつ、茶葉タンパク質分解物がジペプチドLeu-Tyr及び/またはIle-Proのみからなる剤を除く) 」 [相違点] 訂正発明1が「DPP-IV阻害剤」であるのに対し、甲3発明は「アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤」である点 (以下、「相違点2」ということがある) (3-2) 以下、上記相違点2について検討する。 (i) 甲3には、甲3発明に係るACE阻害剤をDPP-IV阻害剤として用いることの記載乃至示唆はない。 また、(1)(1-2)(i)で述べたとおり、甲1、甲2、甲4?甲17のいずれも、甲3発明の有効成分である茶葉タンパク質分解物の中にLeu-TyrやIle-Proに加え環状ジペプチド以外の様々な複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分が含まれることや、そのような茶葉タンパク質分解物をDPP-IV阻害のための有効成分として用いることにについて、何ら記載乃至示唆するものではない。 (ii) そして、訂正発明1は、(1)(1-2)(ii)で述べたとおり、本件特許明細書に記載された、甲1?甲17からは予期し得ない優れた効果をもたらすものである。 (3-3) 以上の検討のとおりであるから、訂正発明1は、甲3に記載された発明ではなく; また、甲3に記載された発明に基づいて、若しくは、甲3に記載された発明及び甲1?甲17のいずれか1又は2以上の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)甲4を主引例とした場合 (4-1)訂正発明1と甲4発明とを対比すると、一致点、及び相違点は、次のようになる。 [一致点] 「 ジペプチド含有成分を有効成分とするDPP-IV阻害剤」 [相違点] 訂正発明1においては、有効成分であるジペプチド含有成分が、次の3つの要件: ・「茶葉をアルカリ溶液で抽出して調製された茶葉タンパク質を、プロテアーゼで酵素分解することによって調製され」る; ・「Leu-Tyr及びIle-Proの配列からなるペプチドの1種又は2種を活性成分として含有」する; ・但し、「環状ジペプチドを除き」、かつ、「茶葉タンパク質分解物」がジペプチドLeu-Tyr及び/またはIle-Proのみからなる」場合を除く; を満たす「茶葉タンパク質分解物」であるのに対し、 甲4発明では、「ジペプチド含有成分」である有効成分は、単なるIle-Proであって、上記3つの要件を併せ満たす「茶葉タンパク質分解物」中の成分であることの限定はない点 (以下、「相違点3」ということがある) (4-2) 以下、上記相違点3について検討する。 (i)ア) 甲4には、甲4発明における有効成分であるIle-Proが、アルカリ抽出茶葉タンパク質のプロテアーゼ処理により製造される茶葉タンパク質分解物中に得られることの記載乃至示唆はない。 また、甲4には、そのような茶葉タンパク質分解物自体、記載乃至示唆されておらず、当該茶葉タンパク質分解物中にIle-ProやLeu-Tyr、及び環状ジペプチド以外の複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分が含まれることや、それらLeu-Tyr及び/又はIle-Proに加え複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分を含む当該茶葉タンパク質分解物成分をDPP-IV阻害のために用いることの記載乃至示唆も見出せない。 イ)1) また、甲1?甲3、甲5?甲11にも、Ile-Proが、アルカリ抽出茶葉タンパク質のプロテアーゼ処理により製造される茶葉タンパク質分解物中に含まれることの記載乃至示唆はなく、また、当該茶葉タンパク質分解物中にIle-ProやLeu-Tyr、及び環状ジペプチド以外の複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分が含まれることや、それらIle-Pro及び/又はLeu-Tyrに加え複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分を含む当該茶葉タンパク質分解物成分をDPP-IV阻害のために用いることの記載乃至示唆も見出せない。 2) さらに、甲12?甲17には、茶木由来のタンパク質であるPhotosystem I P700chlorophyll a apoprotein A2(甲12)、Maturase K(甲13、甲14)、Photosystem II protein D1(甲15)、Ribulose bisphosphatecarboxylaselarge chain(甲16)、及びFerredoxin(甲17)の各アミノ酸配列が記載され、例えばMaturase KやPhotosystem II protein D1のアミノ酸配列中にIle-Proの箇所が複数存在することが示されている(甲14、甲15)ものの、これら甲12?甲17は、それらアミノ酸配列中に見出されるIle-Proがアルカリ抽出茶葉タンパク質のプロテアーゼ処理により得られる茶葉タンパク質分解物中に含まれることを記載乃至示唆するものではなく、ましてや、当該Leu-TyrやIle-Pro、及びそれ以外の環状ジペプチドを除く複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分が当該茶葉タンパク質分解物に含まれることや、当該茶葉タンパク質分解物成分をDPP-IV阻害用に用いることを記載乃至示唆するものでもない。 ウ) そうすると、甲4の記載、及び甲1?甲3、甲5?甲17の記載を併せ踏まえても、甲4発明のIle-Proに代えて、当該Ile-Pro及び/又はLeu-Tyrに加え環状ジペプチド以外の様々な複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分を併せ含む、アルカリ抽出茶葉タンパク質のプロテアーゼ分解により得られる茶葉タンパク質分解物を、DPP-IV阻害作用をもたらしめることを企図して甲4発明の有効成分として採用することについて、当業者が容易に想到し得たということはできない。 (ii) そして、訂正発明1に係るDPP-IV阻害剤は、(1)(1-2)(ii)で述べたとおり、本件特許明細書に記載された、甲1?甲17からは予期し得ない新たな効果をもたらすものである。 (4-3) 以上の検討のとおりであるから、訂正発明1は、甲4に記載された発明ではなく; また、甲4に記載された発明に基づいて、若しくは、甲4に記載された発明及び甲1?甲17のいずれか1又は2以上の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)甲5?甲9のいずれかを主引例とした場合 甲4における甲4発明と同じ 「 ジペプチドIP(Ile-Pro)を有効成分とするDPP-IV阻害剤 」 を含む発明が記載されている甲5?甲9のいずれかを主引例とした場合についても、訂正発明1と甲5発明?甲9発明のいずれかとを対比すると、(4)(4-1)で述べたのと同様の一致点及び相違点3を有しているということができ、甲4を主引例とした場合について(4)で検討したのと同様のことがいえる。 よって、訂正発明1は、甲5?甲9のいずれかに記載された発明ではなく; また、甲5?甲9のいずれかに記載された発明と甲1?甲17のいずれか1又は2以上の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)甲11を主引例とした場合 (i) 訂正発明1と甲11発明とを対比するに、両者は、有効成分及びその用途において異なるものである。 即ち、訂正発明が 「茶葉をアルカリ溶液で抽出して調製された茶葉タンパク質を、プロテアーゼで酵素分解することによって調製された、Leu-Tyr及びIle-Proの配列からなるペプチドの1種又は2種を活性成分として含有する」「茶葉タンパク質分解物」(但し、茶葉タンパク質分解物中の環状ジペプチドを除き、かつ、茶葉タンパク質分解物がジペプチドLeu-Tyr及び/またはIle-Proのみからなる場合を除く); を有効成分とする 「DPP-IV阻害剤」 であるのに対し、 甲11発明は、 「麹菌培養物、もしくは麹菌培養物と植物由来タンパク質原料を混合したものに、塩水を加えて仕込み、仕込み後10日以内に、諸味液汁中のロイシンアミノペプチダーゼ-I活性を1.0U/ml以下、かつ、ロイシンアミノペプチダーゼ-II活性を0.5U/ml以下に制御することにより得られる、ジペプチドGY(Gly-Tyr)又はSY(Ser-Tyr)を含む」もの; を有効成分とする 「DPP-IV阻害活性を有する発酵調味料」 である点において、両者は相違する(以下、相違点4ということがある)。 (ii) そして、上記相違点4に関し、前述のとおり、甲11、及びそれ以外の甲1?甲10、甲12?甲17のいずれも、甲11発明の有効成分に代えて、Leu-Tyr及び/又はIle-Proに加え環状ジペプチド以外の様々な複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分を併せ含む、アルカリ抽出茶葉タンパク質のプロテアーゼ分解により得られる茶葉タンパク質分解物を、DPP-IV阻害作用をもたらしめることを企図して甲11発明の有効成分として採用することについて、何ら記載乃至示唆するものではない。 (iii) また、訂正発明1に係るDPP-IV阻害剤は、(1)(1-2)(ii)で述べたとおり、本件特許明細書に記載された、甲1?甲17からは予期し得ない新たな効果をもたらすものである。 以上の検討のとおりであるから、訂正発明1は、甲11に記載された発明ではなく; また、甲11に記載された発明に基づいて、若しくは、甲11に記載された発明及び甲1?甲17のいずれか1又は2以上の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ・1-2.検討のまとめ 以上の1-1.(1)?(6)での検討をまとめると、訂正発明1は、甲1?11のいずれかに記載された発明ではなく; また、甲1?11のいずれかに記載された発明に基づいて、若しくは、甲1?11のいずれかに記載された発明及び甲1?17のいずれか1又は2以上の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。 ・1-3.申立人の主張について (1) 申立人は、特許異議申立書において、申立理由A及びBに関し、特許発明1について、概要次の(i)及び(ii)のような主張をしている。 (i) Leu-TyrやIle-Proが茶葉タンパク質分解物中に含まれることは、公知のアミノ酸配列(甲12?15)からわかる技術常識であるから、本件発明1は甲1、2、4?9に記載された発明と実質的に同一である。 (ii) 甲3には、Leu-Tyrが茶葉タンパク質分解物中に含まれることが記載されているから、特許発明1は甲1又は2に記載された発明に甲3を組み合わせることにより当業者が容易に想到し得たものである。 (2)しかしながら、例えば1-1.(1)(1-1)(i)イ3)や同(4)(4-2)(i)イ2)で述べたように、甲12?15の各アミノ酸配列情報からは、茶木由来のタンパク質であるPhotosystem I P700chlorophyll a apoprotein A2やMaturase Kのアミノ酸配列中に例えばLeu-Tyrの箇所が複数存在することが把握でき(甲12、甲13)、また、Maturase KやPhotosystem II protein D1のアミノ酸配列中に例えばIle-Proの箇所が複数存在することが把握できる(甲14、甲15)だけで、これら甲12?15のアミノ酸配列情報は、アルカリ抽出茶葉タンパク質のプロテアーゼ処理により得られる茶葉タンパク質分解物中にそれら茶木由来タンパク質中のジペプチドLeu-TyrやIle-Proが含まれることを記載乃至示唆するものではない。ましてや、アルカリ抽出茶葉タンパク質のプロテアーゼ処理により得られる茶葉タンパク質分解物中に含まれる成分がDPP-IV阻害活性を有すること自体、甲1?17のいずれにも記載も示唆もされていないことをも考慮すれば、甲1や甲2等によりLeu-TyrやIle-ProがDPP-IV阻害活性を有することが知られていたとしても、上記茶葉タンパク質分解物中に例えばIle-Proが含まれることは、当業者といえども予期し得なかったというほかはない。 また、1-1.(1)(1-1)(i)イ2)で述べたように、甲3では、当該Leu-Tyr及びその他の様々なジペプチドを含む茶葉タンパク質分解物中の成分をACE阻害のために用い得ることの記載は認められても、当該Leu-Tyr及びその他のジペプチド等を含む当該茶葉タンパク質分解物をDPP-IV阻害のために用いることの記載乃至示唆までは見出せないことから、仮に甲1や甲2に甲3の記載を併せ考慮したところで、甲1や甲2のLeu-Tyrに代えて、当該Leu-Tyr及び/又はIle-Proに加え環状ジペプチド以外の複数種のDPP-IV阻害活性ペプチド成分を併せ含む茶葉タンパク質分解物を、DPP-IV阻害作用をもたらしめることを企図して甲1発明の有効成分として採用すること、及び、その際の茶葉タンパク質分解物の適切な用法・用量等の条件についてまで、当業者が容易に想到し得たということもできない。 よって、申立人による上記(i)及び(ii)の主張は、いずれも採用できない。 2.訂正発明4?6における、特許発明4?6中の特許発明1を引用する発明の態様を対象とする理由について 訂正後の請求項4?6では、訂正前の請求項4?6における請求項1の引用は削除されていることから、申立理由A及び/又はBのうち、特許発明4?6中の特許発明1のDPP-IV阻害剤を引用する飲食品、サプリメント並びに医薬品及び/又は医薬部外品の態様を対象としていた申立理由の部分は、訂正発明4?6においてはもはやその対象が存在せず、理由がないことは明らかである。 3.訂正発明2?8(Val-Ala-Tyr-Pro、His-Asp-Tyr、Leu-Tyr-Asn、Thr-Gly-Tyrのいずれかのペプチドを発明特定事項とする発明)について 訂正発明2は、Val-Ala-Tyr-Proのペプチドを発明特定事項として含み、訂正発明8は、訂正発明7に係る3種のペプチド:Val-Ala-Tyr-Pro、His-Asp-Tyr、及びLeu-Tyr-Asnのいずれかを発明特定事項として含むものである。 また、訂正発明3は、訂正発明7の3種のペプチド(Val-Ala-Tyr-Pro、His-Asp-Tyr、Leu-Tyr-Asn)及びThr-Gly-Tyrの4種のペプチドのいずれかを発明特定事項として含むものである。 そして、訂正発明4?6は、訂正発明2又は3に係るDPP-IV阻害剤の有効成分を発明特定事項として含むものである。 以上の点を考慮し、本項では、まず、訂正発明7、及び、訂正発明7のいずれかのペプチドを発明特定事項とする訂正発明2及び8について先に判断を示したのち、訂正発明3について判断を示し、その後、訂正発明2又は3を引用するび訂正発明4?6について判断を示すこととする。 ・3-1.訂正発明7について (1)訂正発明7と、甲1、2、4?11に記載された各ペプチド発明とを対比する。 訂正発明7と甲1ペプチド発明とは、 「ペプチド」 の点で一致するが、 「ペプチド」が、訂正発明7では Val-Ala-Tyr-Pro、His-Asp-Tyr、Leu-Tyr-Asn のいずれかである のに対し、甲1ペプチド発明は LY(Leu-Tyr)であって、Val-Ala-Tyr-Pro、His-Asp-Tyr、Leu-Tyr-Asn のいずれかではない という点において、相違する。 また、甲2、4?11の各ペプチド発明を訂正発明7と対比しても、それらは甲1ペプチド発明と同様に、 Val-Ala-Tyr-Pro、His-Asp-Tyr、Leu-Tyr-Asn のいずれかではない という点において、訂正発明7と相違する。 (2)そして、(1)の相違点に関し、甲1、2、4?11のどれにも、また、それら以外の甲3、甲12?17のどれにも、 Val-Ala-Tyr-Pro、His-Asp-Tyr、Leu-Tyr-Asn のいずれかの3種のペプチド について、記載も示唆もされていない。 (3) したがって、訂正発明7は、甲1、2、4?11のいずれかに記載された発明ではなく; また、甲1、2、4?11のいずれかに記載された発明に基づいて、若しくは、甲1、2、4?11のいずれかに記載された発明及び甲1?甲17のいずれか1又は2以上の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ・3-2.訂正発明2、8について 訂正発明2に係るDPP-IV阻害剤は、訂正発明7に規定される3種のペプチドのうちVal-Ala-Tyr-Proを有効成分とすることを発明特定事項としている。 また、訂正発明8に係るDPP-IV阻害用飲食品は、訂正発明7に規定される3種のペプチドの1種又は2種以上が添加されてなるものであることを発明特定事項とするものである。 そうすると、これら訂正発明7の3種のペプチドのいずれかを発明特定事項とする訂正発明2、8のいずれもまた、訂正発明7に係るペプチドについて3-1.で述べたのと同様の理由により、甲1、2、4?11のいずれかに記載された発明ではなく; また、甲1、2、4?11のいずれかに記載された発明に基づいて、若しくは、甲1、2、4?11のいずれかに記載された発明及び甲1?17のいずれか1又は2以上の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ・3-3.訂正発明3について (1) 訂正発明3に係るDPP-IV阻害剤に含まれる発明の態様は、次の[1]、[2]のいずれかに区分することができる(以下、順に「態様1」、「態様2」という)。 [1] 有効成分がVal-Ala-Tyr-Pro、His-Asp-Tyr及びLeu-Tyr-Asnから選択されるDPP-IV阻害剤の態様 [2] 有効成分がThr-Gly-Tyrを含むDPP-IV阻害剤の態様 (2) 上の2つの態様について、それぞれ検討する。 (2-1)態様1について 態様1は、訂正発明7に規定される3種のペプチドの1種又は2種以上を有効成分とすることが発明特定事項とされていることから、これら3種のいずれかのペプチドに係る訂正発明7について2-1.で述べたのと同様の理由により、甲1、2、4?11のいずれかに記載された発明ではなく; また、甲1、2、4?11のいずれかに記載された発明に基づいて、若しくは、甲1、2、4?11のいずれかに記載された発明及び甲1?17のいずれか1又は2以上の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2-2)態様2について (i) Thr-Gly-TyrをDPP-IV阻害剤の有効成分とすることは、甲1?甲17のいずれにも記載も示唆もされていない。 (ii) そして、態様2は、Thr-Gly-Tyrを有効成分とする新たなDPP-IV阻害剤の提供という、甲1?甲17からは予期し得ない、本件特許明細書に記載された優れた効果をもたらすものである。 (iii) したがって、態様2もまた、甲1、2、4?11のいずれかに記載された発明ではなく; また、甲1、2、4?11のいずれかに記載された発明に基づいて、若しくは、甲1、2、4?11のいずれかに記載された発明及び甲1?17のいずれか1又は2以上の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ・3-4.訂正発明4?6について 訂正発明4?6に係る飲食品、サプリメント、医薬品および/または医薬部外品は、いずれも、訂正発明2又は3に係るDPP-IV阻害剤が有効成分として添加されてなるDPP-IV阻害用のものであることを発明特定事項としている。 そうすると、これら訂正発明4?6のいずれについてもまた、訂正発明2及び3について3-2.及び3-3.で述べたのと同様の理由により、甲1、2、4?11のいずれかに記載された発明ではなく; また、甲1、2、4?11のいずれかに記載された発明に基づいて、若しくは、甲1、2、4?11のいずれかに記載された発明及び甲1?17のいずれか1又は2以上の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ・3-5.申立人の主張について (1) 申立人は、特許異議申立書において、申立理由A及び/又はBに関し、併せて、訂正発明2?8に規定される4種のテトラペプチド又はトリペプチドについて概要次の(i)及び(ii)のような主張をしている。 (i) 甲5には、Val-Ala-Tyr-Pro(VAYP)の一部を構成するVA、AY、YPや、Thr-Gly-Tyr(TGY)の一部を構成するTG、GYといったジペプチド、及びそれらジペプチドのDPP-IV阻害活性について記載されている。また、甲4、6?10にも、上記4種のテトラペプチド/トリペプチドのいずれかの一部であるジペプチド、及びそのDPP-IV阻害活性について記載されている。これらの記載に基づけば、例えば甲5の上記VA及びYPからテトラペプチドVAYPに想到することは当業者にとり容易である。 (ii) VAYPが茶葉タンパク質分解物に含まれることは、甲16や甲17のアミノ酸配列からわかる技術常識である。 (2) しかしながら、上の甲5や甲1、2、4?10には、それらDPP-IV阻害活性を有するジペプチド同士を結合させたり、さらにアミノ酸を1個付加したりすることで、VAYP、HDYやLYNといったテトラペプチドやトリペプチドを製造することについて、その動機付けとなるような記載乃至示唆は一切見出せない。 また、ある2種のジペプチドと、それらがペプチド結合されてなるテトラペプチドは、化学構造上互いに異なる別異の化学物質であって、その生理活性等においても直ちに同様といえないことは、本件特許出願当時、当業者にとり技術常識として認識されていたことといえるところ、例えば、ある2種のジペプチドがDPP-IV阻害活性を有している場合、両者をペプチド結合させて新規なDPP-IV阻害活性を有するテトラペプチドを作製することが当業者にとり通常行われていた、といったような技術事情が当該分野において存在していたものとも認められない。 さらに、甲16や甲17には、茶木由来の特定のタンパク質であるRibulosebisphosphatecarboxylase large chain(甲16)、及びFerredoxin(甲17)の各アミノ酸配列が記載されているところ、それら各アミノ酸配列中の一部中にVAYPの配列領域が見出されることが把握できるだけであって、甲16や甲17の各アミノ酸配列の記載から、テトラペプチドとしてのVAYPを直ちに認識することはできない。 してみると、例えばそれら甲16及び甲17のアミノ酸配列情報を甲1、2、4?10の記載と併せみても、VAYP、HDYやLYNといったテトラペプチド又はトリペプチドを甲16又は甲17のアミノ酸配列情報から取得することの動機付けは、当業者といえども得ることはできたとはいえない。ましてや、上記テトラペプチド又はトリペプチドをDPP-IV阻害剤の有効成分として使用することが、それら甲1、2、4?10の記載と甲16、17のアミノ酸配列情報との組合せにより動機付けられていた、とはいえないし、上記テトラペプチド又はトリペプチドを甲3におけるような茶葉タンパク質分解物から取得することの動機付けもまた、甲1、2、4?10の記載と甲16、17のアミノ酸配列情報との組合せから容易に得ることができたとも到底考えられない。 よって、申立人による上記(i)及び(ii)の主張は、いずれも各甲号証の記載や技術常識等を踏まえた合理的根拠に基づくものとはいえず、採用できない。 4.小括 以上の1.?3.での検討結果から、訂正発明1?8はいずれも、【第4】(1)?(10)のいずれかの理由により新規性及び/又は進歩性が否定されるものとはいえない。 したがって、訂正発明1、4、5、6、8は、甲第1号証?甲第9号証のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、ということはできず; また、訂正発明1?8は、甲第1号証?甲第11号証及び甲第12号証?甲第17号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということもできない。 よって、無効理由A及びBは、いずれも理由がない。 【6-2-2】申立理由C(明確性違反)について 1.申立人は、特許異議申立書において、申立理由Cの根拠として、 ・甲18の審査経緯にみられるように、特許発明1では、拒絶理由通知書での審査官の指摘を受けて、DPP-IV阻害作用の活性成分をLeu-Tyr及びIle-Proに限定する補正を行っているところ、同特許発明1において、DPP-IV阻害作用の活性成分が Leu-Tyr及びIle-Proの配列からなるペプチドの1種又は2種であるのか、或いは、 Leu-Tyr及びIle-Pro以外の成分も含まれるのか、 が明らかでない; ことを主張しており、また、併せて ・仮に、後者の場合、Leu-Tyr及びIle-Pro以外のどのような成分がDPP-IV阻害作用に寄与しているのかが明らかにされるべきである; ことを述べている。 2.(1) しかしながら、本件訂正後の請求項1では、「茶葉タンパク質分解物がジペプチドLeu-Tyr及び/またはIle-ProのみからなるDPP-IV阻害剤を除く」ことの規定がなされていることから、有効成分である「茶葉タンパク質分解物」としてLeu-Tyr及び/又はIle-Proに加えてそれ以外の「茶葉タンパク質分解物」成分を併せ含むDPP-IV阻害剤の態様に限定されているものと解されることは明らかである。 一方、当該訂正後の請求項1が、「茶葉タンパク質分解物」中に少なくともDPP-IV阻害作用に寄与するLeu-Tyr及び/又はIle-Proを含んでおり、少なくとも当該Leu-Tyr及び/又はIle-Proを含むことを以て「DPP-IV阻害」作用をもたらす剤として規定されているものであることも、その記載から明らかに把握できることである。 加えて、訂正後の請求項1においては、Leu-Tyr及び/又はIle-Pro及びそれ以外の成分を含む当該「茶葉タンパク質分解物」が「茶葉をアルカリ溶液で抽出して調製された茶葉タンパク質を、プロテアーゼで酵素分解することによって調製された」範囲内のものであることが、併せて請求項中で規定されている。 (2) これらのことを併せ踏まえると、「茶葉タンパク質分解物」中のLeu-Tyr及び/又はIle-Pro以外のDPP-IV阻害作用に寄与する成分が特定されていないという点のみを以て、当該「茶葉タンパク質分解物」の範囲が不明確であるということにはならない。 (3) したがって、申立人の1.の主張は採用できず、申立理由Cは理由がない。 3.以上のとおりであるから、申立理由Cは、理由がない。 【6-3】取消理由通知書1及び2の取消理由についての判断 1.取消理由1-1及び2-1(特許発明1、4?6に対する、甲1、2、4?6、8、10のいずれかを主引例とする新規性欠如及び進歩性欠如)について (1) 取消理由1-1及び2-1の概要は、【第5】1.(1)(1-1)及び(2)(2-1)のとおりである。 (2) そして、【6-2】1.で検討し説示したとおり、訂正発明1は、甲1、甲2、甲4?甲6、甲8及び甲10のいずれかに記載された発明ではなく; また、甲1、甲2、甲4?甲6、甲8及び甲10のいずれかに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、訂正発明1に対する取消理由1-1及び2-1は、もはや存在しない。 また、訂正発明4?6では、訂正前の請求項4?6における請求項1の引用関係は解消されていることから、訂正発明4?6に対する取消理由1-1及び2-1もまた、もはや存在しない。 (3) したがって、訂正発明1、4?6についての取消理由通知書1及び2に記載された取消理由1-1及び2-1は、いずれも理由がない。 2.取消理由1-2及び2-2(特許発明8に対する、刊行物8を主引例とする新規性及び進歩性欠如)について (1)刊行物8の記載、及び引用発明 刊行物8には、 ・8ア) 「 以下の工程を順次行うことを特徴とするタンパク質分解物の製造方法。 (a)茶葉にアルカリ溶液を加えて抽出混合物を得る工程。 (f)抽出混合物を、中性エンドペプチダーゼ活性を有する酵素製剤で分解し酵素反応混合物を得る工程。 (d)酵素反応混合物から抽出残渣を除き、酵素反応液を得る工程。 (g)酵素反応液をさらに酸性エキソペプチダーゼ活性を有する酵素製剤で分解する工程。 (h)酵素反応液のpHを2から5に調整することで未反応タンパク質を沈殿させ、沈殿した未反応タンパク質を除き、酵素反応液を得る工程。 ただし、抽出混合物とは少なくとも可溶性画分である抽出液と抽出残渣が混在している状態を示し、酵素反応混合物とは少なくとも酵素反応後の可溶性画分である酵素反応液と抽出残渣が混在している状態を示す。」(請求項2); ならびに、その製造方法から得られるタンパク質分解物(請求項7)、及び当該タンパク質分解物を含有する飲食品(請求項10,11); について記載されており、 ・8イ) 8ア)の方法(請求項2)に相当する方法を用いて茶葉からタンパク質分解物をを得る例として、次の工程 イ-1)?イ-4): ・イ-1)緑茶葉にアルカリ(水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム)を加えて抽出し; その後、 ・イ-2)pHを7.0に調整して中性エンドペプチダーゼ(サモアーゼC160)を加えて酵素反応を行わしめ; さらに、 ・イ-3)pHを3.7?4.3に調整して酸性エキソペプチダーゼ(スミチームACP-G)を加えて酵素反応を行わしめ; ・イ-4)pHを3.1?3.2に調整して不溶物を濾過する; を含む茶葉タンパク質分解物の製造方法、ならびに、同方法により得られてなる茶葉タンパク質分解物の例が記載されており(16頁実施例1、23頁実施例7?8、28頁製造例5); ・8ウ) 8イ)の製法又は類似の方法を用いて得られた茶葉タンパク質分解物を含有する粉末緑茶飲料等の飲食品の具体例についても記載されている(29頁処方例2?4)。 これらの刊行物8の記載からみて、刊行物8には、 「 以下の工程を順次行うことを特徴とするタンパク質分解物の製造方法: (a)茶葉にアルカリ溶液を加えて抽出混合物を得る工程。 (f)抽出混合物を、中性エンドペプチダーゼ活性を有する酵素製剤で分解し酵素反応混合物を得る工程。 (d)酵素反応混合物から抽出残渣を除き、酵素反応液を得る工程。 (g)酵素反応液をさらに酸性エキソペプチダーゼ活性を有する酵素製剤で分解する工程。 (h)酵素反応液のpHを2から5に調整することで未反応タンパク質を沈殿させ、沈殿した未反応タンパク質を除き、酵素反応液を得る工程。 (ただし、抽出混合物とは少なくとも可溶性画分である抽出液と抽出残渣が混在している状態を示し、酵素反応混合物とは少なくとも酵素反応後の可溶性画分である酵素反応液と抽出残渣が混在している状態を示す) の例である、次の工程1-4: 1:緑茶葉にアルカリ(水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム)を加えて抽出し; その後、 2:pHを7.0に調整して中性エンドペプチダーゼ(サモアーゼC160)を加えて酵素反応を行わしめ; さらに、 3:pHを3.7?4.3に調整して酸性エキソペプチダーゼ(スミチームACP-G)を加えて酵素反応を行わしめ; 4:pHを3.1?3.2に調整して不溶物を濾過する; を含む茶葉タンパク質分解物の製造方法、同製造方法により得られてなる茶葉タンパク質分解物、ならびに、当該茶葉タンパク質分解物を含有する飲食品 」 の発明(以下、飲食品に係る発明を単に「引用発明」ということがある)が記載されているものと認められる。 (2)対比・判断 (2-1) 訂正発明8と引用発明とを対比するに、両者は、 「 茶葉タンパク質分解物を含有する飲食品 」 の点で一致するが、 訂正発明8が、「請求項7に記載のペプチド」、即ち、Val-Ala-Tyr-Pro、His-Asp-Tyr及びLeu-Tyr-Asnの1種又は2種以上が「添加され」てなる「DPP-IV阻害用」であるのに対し; 引用発明では、そのような3種のペプチドのいずれか1種又は2種以上が添加されてなるものであることの限定はなく、DPP-IV阻害のために用いるものであることの限定もない; という点で、相違する。 したがって、訂正発明8は、刊行物8に記載された発明であるということはできない。 (2-2) また、上記相違点に関し、刊行物8には、引用発明の茶葉タンパク質分解物中にVal-Ala-Tyr-Pro、His-Asp-Tyr及びLeu-Tyr-Asnのいずれかが含まれることや、それらいずれかのペプチドがDPP-IV阻害作用に寄与する成分として用い得ることについての記載乃至示唆はなく、そもそも引用発明に係る飲食品をDPP-IV阻害作用を付与するために他の飲食品に添加して用いることの記載乃至示唆も見出せない。 そして、訂正発明8は、上記相違点に係る、DPP-IV阻害作用に寄与し得る新規なペプチドVal-Ala-Tyr-Pro、His-Asp-Tyr及びLeu-Tyr-Asnの1種又は2種以上を飲食品に添加することによる、新たなDPP-IV阻害用の飲食品の提供という、刊行物8や甲1?甲17から予期し得ない、本件特許明細書に記載された優れた効果を奏するものである。 したがって、訂正発明8は、刊行物8に記載された発明及び刊行物8の記載に基づくことにより、若しくは、刊行物8に記載された発明、刊行物8の記載及び甲1?17のいずれか1又は2以上の記載の組合せに基づくことにより、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (2-3) よって、訂正発明8に対する取消理由2-1及び2-2は、いずれも理由がない。 3.取消理由3について 訂正後の請求項7は、次の通り: 「 【請求項7】 Val-Ala-Tyr-Proの配列からなる新規テトラペプチド、又は、His-Asp-Tyr若しくはLeu-Tyr-Asnの配列からなる新規トリペプチド。 」 であって、「テトラペプチド」と「トリペプチド」がそれぞれ独立した選択肢として並記されていることから、それら各ペプチドそれ自体に係る化合物発明と解されるものであることは明らかであり、この点明確である。 よって、訂正後の請求項7において、取消理由3は理由がない。 【第7】むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由、及び、申立人による特許異議申立理由によっては、本件訂正後の請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正後の請求項1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 茶葉タンパク質分解物を有効成分とするジペプチジルペプチダーゼ(DPP)-IV阻害剤であって、該茶葉タンパク質分解物が、茶葉をアルカリ溶液で抽出して調製された茶葉タンパク質を、プロテアーゼで酵素分解することによって調製された、Leu-Tyr及びIle-Proの配列からなるペプチドの1種又は2種を活性成分として含有する茶葉タンパク質分解物であるDPP-IV阻害剤(但し、茶葉タンパク質分解物中の環状ジペプチドを除き、かつ、茶葉タンパク質分解物がジペプチドLeu-Tyr及び/またはIle-ProのみからなるDPP-IV阻害剤を除く)。 【請求項2】 茶葉タンパク質分解物から得られるVal-Ala-Tyr-Proを有効成分とするDPP-IV阻害剤。 【請求項3】 Val-Ala-Tyr-Pro、Thr-Gly-Tyr、His-Asp-Tyr及びLeu-Tyr-Asnの配列からなるペプチドの1種または2種以上を有効成分とするDPP-IV阻害剤。 【請求項4】 請求項2又は3に記載の剤を有効成分として添加されたDPP-IV阻害用飲食品。 【請求項5】 請求項2又は3に記載の剤を有効成分として添加されたDPP-IV阻害用サプリメント。 【請求項6】 請求項2又は3に記載の剤を有効成分として添加されたDPP-IV阻害用医薬品および/または医薬部外品。 【請求項7】 Val-Ala-Tyr-Proの配列からなる新規テトラペプチド、又は、His-Asp-Tyr若しくはLeu-Tyr-Asnの配列からなる新規トリペプチド。 【請求項8】 請求項7に記載のペプチドの1種又は2種以上が添加されたDPP-IV阻害用飲食品。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-03-25 |
出願番号 | 特願2016-165848(P2016-165848) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K) P 1 651・ 537- YAA (A61K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 横田 倫子 |
特許庁審判長 |
岡崎 美穂 |
特許庁審判官 |
大久保 元浩 關 政立 |
登録日 | 2018-07-20 |
登録番号 | 特許第6369951号(P6369951) |
権利者 | 三井農林株式会社 |
発明の名称 | ジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害剤 |
代理人 | 小澤 誠次 |
代理人 | 廣田 雅紀 |
代理人 | 小澤 誠次 |
代理人 | 廣田 雅紀 |