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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
管理番号 1362354
異議申立番号 異議2019-700575  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-06-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-23 
確定日 2020-04-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6457384号発明「ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6457384号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11、16-18〕、〔12、13〕、14、15について訂正することを認める。 特許第6457384号の請求項1-18に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6457384号(請求項の数18。以下、「本件特許」という。)は、平成26年9月22日(優先権主張:平成25年12月10日)を国際出願日とする特許出願(特願2015-508914号)に係るものであって、平成30年12月28日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、平成31年1月23日である。)。
その後、令和1年7月23日に、本件特許の全請求項(請求項1?18)に係る特許に対して、特許異議申立人である林法子(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。

令和 1年10月24日付け 取消理由通知書(特許権者に対して)
令和 1年12月27日 意見書、訂正請求書(特許権者)
令和 2年 1月23日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知)
令和 2年 2月26日 意見書(申立人)

第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
令和1年12月27日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、本件明細書及び特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?18について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下である」とあるのを、
「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9に、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下である」とあるのを、
「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項12に、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下である」とあるのを、
「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項14に、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下である」とあるのを、
「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項15に、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下である」とあるのを、
「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である」に訂正する。

(6)訂正事項6
明細書の段落【0005】において、「1.下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、
前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)のポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%?40%である、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化1】

[式中、R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基又は炭素数1?6のアルコキシ基、Xは、単結合、炭素数1?8のアルキレン基、炭素数2?8のアルキリデン基、炭素数5?15のシクロアルキレン基、炭素数5?15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7?15のアリールアルキレン基、炭素数7?15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-O-又は-CO-、R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示し、a及びbは、それぞれ独立に0?4の整数を示す。]」とあるのを、
「1.下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、
前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)のポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%?40%(但し、8.5±0.3%を除く)である、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化1】

[式中、R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基又は炭素数1?6のアルコキシ基、Xは、単結合、炭素数1?8のアルキレン基、炭素数2?8のアルキリデン基、炭素数5?15のシクロアルキレン基、炭素数5?15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7?15のアリールアルキレン基、炭素数7?15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-O-又は-CO-、R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示し、a及びbは、それぞれ独立に0?4の整数を示す。]」に訂正する。

(7)訂正事項7
明細書の段落【0005】において、「9.1?7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法であって、下記一般式(ii)または(iii)
【化2】

[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR_(8)、-COOH又は-SHを示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
で表されるポリオルガノシロキサンを原料として用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。
前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下である。」とあるのを、
「9.1?7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法であって、下記一般式(ii)または(iii)
【化2】

[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR_(8)、-COOH又は-SHを示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
で表されるポリオルガノシロキサンを原料として用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。
前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。」に訂正する。

(8)訂正事項8
明細書の段落【0005】において、「12.下記一般式(ii)または(iii)で表され、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリオルガノシロキサン。
【化3】

[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR^(8)、-COOH又は-SHを示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となる。
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下である。」とあるのを、
「12.下記一般式(ii)または(iii)で表され、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリオルガノシロキサン。
【化3】

[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR^(8)、-COOH又は-SHを示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となる。
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。」に訂正する。

(9)訂正事項9
明細書の段落【0021】において、「<ポリオルガノシロキサン>
本発明のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を構成する一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)は、上記ポリオルガノシロキサンブロック(B)のポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下である
ことを特徴とする。」とあるのを、
「<ポリオルガノシロキサン>
本発明のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を構成する一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)は、上記ポリオルガノシロキサンブロック(B)のポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である
ことを特徴とする。」に訂正する。

(10)訂正事項10
明細書の段落【0032】において、「本発明においては、(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%?40%であり、好ましくは6.5%?30%である。上記割合が6%未満であると、低温耐衝撃性に劣る結果となり、40%を超えると透明性が低下する傾向にある。ここで、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値の、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対する割合は、PDMSの分子量分布において、log(M)が4.0?4.5である成分がPDMS全体に対して存在する割合を示すものである。」とあるのを、
「本発明においては、(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%?40%であり、好ましくは6.5%?30%である(但し、8.5±0.3%を除く)。上記割合が6%未満であると、低温耐衝撃性に劣る結果となり、40%を超えると透明性が低下する傾向にある。ここで、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値の、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対する割合は、PDMSの分子量分布において、log(M)が4.0?4.5である成分がPDMS全体に対して存在する割合を示すものである。」に訂正する。

(11)訂正事項11
明細書の段落【0046】において、「ポリオルガノシロキサンとしては、上述した通り、ポリスチレンを換算基準としたGPC法による測定結果から得られる微分分子量分布曲線において、縦軸をdw/dlog(M)、横軸をlog(M)(wは濃度分率、Mは分子量である)としたとき、(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、(2)上記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%?40%である、式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサンを用いる。」とあるのを、
「ポリオルガノシロキサンとしては、上述した通り、ポリスチレンを換算基準としたGPC法による測定結果から得られる微分分子量分布曲線において、縦軸をdw/dlog(M)、横軸をlog(M)(wは濃度分率、Mは分子量である)としたとき、(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、(2)上記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%?40%(但し、8.5±0.3%を除く)である、式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサンを用いる。」に訂正する。

(12)一群の請求項について
ア 訂正事項1に係る訂正前の請求項1について、請求項2?11、16?18はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1?11、16?18に対応する訂正後の請求項1?11、16?18は,一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求がなされたものである。

イ 訂正事項3に係る訂正前の請求項12について、請求項13は請求項12を直接的に引用するものであって、訂正事項3によって記載が訂正される請求項12に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項12、13に対応する訂正後の請求項12、13は、一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求がなされたものである。

(13)明細書の訂正に係る請求項について
ア 明細書に係る訂正事項6及び7は、請求項1?11、16?18について請求されたものである。
よって、本件訂正は、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行われたものである。

イ 明細書に係る訂正事項8、9、10は、請求項12、13について請求されたものである。
よって、本件訂正は、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行われたものである。

ウ 明細書に係る訂正事項11は、請求項14について請求されたものである。
よって、本件訂正は、明細書の訂正に係る請求項を含む請求項の全てについて行われたものである。

エ よって、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1-11、16-18〕、〔12、13〕、14について行われたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されたポリオルガノシロキサンブロック(B)のポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、「8.5±0.3%」を除くものである。してみると、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。

そして、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されたポリオルガノシロキサンブロック(B)のポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、その範囲の一部として「8.5±0.3%」を除くことを特定するものであり、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項9に記載された原料ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、「8.5±0.3%」を除くものである。してみると、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。

そして、訂正事項2は、訂正前の請求項9に記載された原料ポリオルガノシロキサンののポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、その範囲の一部として「8.5±0.3%」を除くことを特定するものであり、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項12に記載されたポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、「8.5±0.3%」を除くものである。してみると、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。

そして、訂正事項3は、訂正前の請求項12に記載されたポリオルガノシロキサンののポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、その範囲の一部として「8.5±0.3%」を除くことを特定するものであり、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項14に記載された原料ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、「8.5±0.3%」を除くものである。してみると、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。

そして、訂正事項4は、訂正前の請求項14に記載された原料ポリオルガノシロキサンののポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、その範囲の一部として「8.5±0.3%」を除くことを特定するものであり、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項15に記載された原料ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、「8.5±0.3%」を除くものである。してみると、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。

そして、訂正事項5は、訂正前の請求項15に記載された原料ポリオルガノシロキサンののポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、その範囲の一部として「8.5±0.3%」を除くことを特定するものであり、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(6)訂正事項6?11について
訂正事項6?11は、訂正事項1?5において請求項1、9、12、14及び15を訂正したことに伴い、明細書の段落【0005】、【0021】、【0032】、【0046】を訂正するものである。してみると、この訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであると認められる。

そして、訂正事項6?11は、訂正事項1?5における請求項1、9、12、14、15の訂正に伴い、明細書の該当段落の記載を訂正したものであり、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 本件訂正後の請求項1?18に係る発明
上記第2で述べたように、本件訂正は認められるので、本件訂正により訂正された請求項1?18に係る発明(以下「本件訂正発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?18に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである(以下、本件訂正後の明細書を「本件明細書」という。)

「【請求項1】
下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、
前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)のポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化1】

[式中、R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基又は炭素数1?6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1?8のアルキレン基、炭素数2?8のアルキリデン基、炭素数5?15のシクロアルキレン基、炭素数5?15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7?15のアリールアルキレン基、炭素数7?15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-O-又は-CO-を示す。R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0?4の整数を示す。]
【請求項2】
前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)の平均鎖長が20?85である、請求項1に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)の含有量が、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の0.5質量%?20.0質量%である、請求項1または2に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項4】
粘度平均分子量が12000?40000である、請求項1?3のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項5】
前記一般式(I)おけるaおよびbが0であり、Xが単結合または炭素数1?8のアルキレン基である、請求項1?4のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項6】
前記一般式(I)におけるaおよびbが0であり、Xが炭素数3のアルキレン基である、請求項1?5のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項7】
前記一般式(II)におけるR^(3)およびR^(4)がメチル基である、請求項1?6のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項8】
請求項1?7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を成形してなる成形体。
【請求項9】
請求項1?7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法であって、下記一般式(ii)または(iii)
【化2】


[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR^(8)、-COOH又は-SHを示し、
R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
で表されるポリオルガノシロキサンを原料として用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。
前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。
【請求項10】
前記一般式(ii)または(iii)における平均鎖長nが20?85である、請求項9に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。
【請求項11】
前記一般式(ii)または(iii)におけるR^(3)およびR^(4)がメチル基である、請求項9または10に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。
【請求項12】
下記一般式(ii)または(iii)で表され、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリオルガノシロキサン。
【化3】

[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR^(8)、-COOH又は-SHを示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。
【請求項13】
前記一般式(ii)または(iii)における平均鎖長nが20?85である、請求項12に記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項14】
下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、前記共重合体の原料として下記一般式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサンを用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体:
前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。
【化4】

[式中、R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基又は炭素数1?6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1?8のアルキレン基、炭素数2?8のアルキリデン基、炭素数5?15のシクロアルキレン基、炭素数5?15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7?15のアリールアルキレン基、炭素数7?15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-O-又は-CO-を示す。R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0?4の整数を示す。]
【化5】

[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR^(8)、-COOH又は-SHを示し、
R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
【請求項15】
下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法であって、下記一般式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサンを原料として用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法:
前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。
【化6】

[式中、R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基又は炭素数1?6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1?8のアルキレン基、炭素数2?8のアルキリデン基、炭素数5?15のシクロアルキレン基、炭素数5?15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7?15のアリールアルキレン基、炭素数7?15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-O-又は-CO-を示す。R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0?4の整数を示す。]
【化7】


[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR^(8)、-COOH又は-SHを示し、
R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
【請求項16】
ISO13468に基づいて測定した、厚み3mm試験片の全光線透過率が80.20以上である、請求項1?7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項17】
ISO14782に基づいて測定した、厚み3mm試験片のヘーズ値が6.2以下である、請求項1?7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項18】
ASTM規格D-256に準拠して、-40℃において測定した厚み3mm試験片のノッチ付きアイゾット衝撃強度が46KJ/m^(2)以上である、請求項1?7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。」

第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議の申立書に記載した特許異議の申立の理由
本件特許の請求項1?18に係る特許は、下記(1)?(6)のとおり、特許法第113条第2号、及び同法第113条第4号に該当する。証拠方法として、下記(7)の甲第1号証、甲第2号証(以下、単に「甲1」等という。)を提出する。

(1)申立理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1?18に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1?18に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)申立理由2(進歩性)
本件訂正前の請求項1?18に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1?18に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)証拠方法
申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
・甲1:特開2012-153824号公報
・甲2:特願2014-73411号の審査において、本件の特許権者である出光興産株式会社が平成30年3月5日に提出した意見書

2 取消理由通知書に記載した取消理由
取消理由1(新規性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。



1 取消理由1(新規性)について
・請求項1?6、8、11?13、15
・引用文献等 甲1、甲2

第5 当審の判断
以下に述べるように、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件訂正発明1?18に係る特許を取り消すことはできない。
以下、詳述する。

1 取消理由通知書に記載した取消理由
(1)取消理由1(新規性)について
以下、詳述する。なお、事案に鑑み、まず本件訂正発明12、13から審理を行い、次に本件訂正発明9?11、15、14、1?8、16?18の順に審理を行う。

ア 甲1に記載された事項及び記載された発明
(ア)甲1に記載された事項
(ア-1)「【0001】
本発明は、透明性、耐候性、耐熱老化性、水垢付着防止性に優れ、さらに高度な靭性を備えた樹脂組成物およびその成形品に関する。さらに詳しくは、特定の凝集構造を形成する良好な透明性を有するポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を含有する樹脂組成物及び成形品に関する。」

(イ-1)「【0050】
(式[3]のポリジオルガノシロキサンブロック)
ポリジオルガノシロキサンブロックは、下記式[3]で表される。
【化6】

【0051】
上記式[3]において、R^(3)、R^(4)、R^(5)、R^(6)、R^(7)およびR^(8)は夫々独立に、水素原子、炭素数1?12のアルキル基または炭素数6?12の置換若しくは無置換のアリール基である。
炭素数1?12のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられる。好ましくは炭素原子数1?6のアルキル基である。炭素数6?12の置換若しくは無置換のアリール基として、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。置換基としてメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの炭素数1?12のアルキル基が挙げられる。R^(3)、R^(4)、R^(5)、R^(6)、R^(7)、R^(8)がメチル基であることが好ましい。
【0052】
R^(9)およびR^(10)は夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1?10のアルキル基、炭素原子数1?10のアルコキシ基である。
ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。炭素原子数1?10のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられる。好ましくは炭素原子数1?6のアルキル基である。炭素原子数1?10のアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、へプトキシ基、オクトキシ基、等が挙げられる。好ましくは炭素原子数1?6のアルキルコキシ基である。
【0053】
pは自然数であり、qは0または自然数であり、p+qは30?70の自然数である。pは好ましくは5?70、より好ましくは30?60である。qは好ましくは0?65、より好ましくは0?50である。p+qは好ましくは30?60、より好ましくは35?55、特に好ましくは35?50である。
【0054】
Xは、炭素数2?8の二価脂肪族基である。二価脂肪族基として、炭素数2?8のアルキレン基が挙げられる。アルキレン基としてエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。
【0055】
式[3]で表されるポリジオルガノシロキサンブロックが(2-アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサン、もしくは(2-メトキシ-4-アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサンより誘導されたブロックであることが好ましい。即ち、式[3]においてXがトリメチレン基でR^(9)およびR^(10)が水素原子であるか、もしくはXがトリメチレン基でR^(9)およびR^(10)がメトキシ基であることが好ましい。
【0056】
式[3]で表されるポリジオルガノシロキサンブロックの含有量は、共重合樹脂の全重量を基準にして、好ましくは0.1?50重量%、より好ましくは0.5?30重量%、さらに好ましくは1.0?20重量%である。
【0057】
共重合樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは5.0×10^(3)?5.0×10^(4)、より好ましくは1.0×10^(4)?4.0×10^(4)、更に好ましくは1.5×10^(4)?3.5×10^(4)、特に好ましくは1.7×10^(4)?2.5×10^(4)である。共重合樹脂の粘度平均分子量が5.0×10^(3)未満では、多くの分野において実用上の機械的強度が得られにくく、5.0×10^(4)を超えると、溶融粘度が高く、概して高い成形加工温度を必要とするため、樹脂の熱劣化などの不具合を生じやすい。」

(ウ-1)「【0075】
工程(i)では、水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中において、二価フェノール(I)と、ホスゲンや二価フェノール(I)のクロロホルメート等のクロロホルメート形成性化合物との反応により、二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーであって末端クロロホーメート基を有するオリゴマーを含有する溶液を調製する。
カーボネートオリゴマーの重合度は、好ましくは1.0?10.0、より好ましくは2.0?8.0、さらに好ましくは1.5?4.0である。」

(エ-1)「【0132】
本発明の共重合樹脂組成物は、前記の如く製造されたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。更にペレットを経由することなく、押出機で溶融混練された樹脂を直接シート、フィルム、異型押出成形品、ダイレクトブロー成形品、および射出成形品にすることも可能である。
・・・
【0136】
更に本発明の共重合樹脂組成物からなる成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。ここでいう表面処理とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着など)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、塗装、コーティング、印刷などの樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させるものであり、通常のポリカーボネート樹脂に用いられる方法が適用できる。表面処理としては、具体的には、ハードコート、撥水・撥油コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理が例示される。」
・・・
【0138】
(1)粘度平均分子量(Mv)
次式にて算出される比粘度(η_(SP))を20℃で塩化メチレン100mlに共重合樹脂組成物0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(η_(SP))=(t-t_(0))/t_(0)
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(η_(SP))から次の数式により粘度平均分子量(Mv)を算出する。
η_(SP)/c=[η]+0.45×[η]^(2)c
(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10^(-4) Mv^(0.83)
c=0.7
【0139】
(2)ポリジオルガノシロキサン成分含有量
日本電子株式会社製JNM-AL400を用い、共重合樹脂組成物の^(1)H-NMRスペクトルを測定し、二価フェノール(I)由来のピークの積分比とヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)由来のピークの積分比を比較することにより算出した。
【0140】
(3)全光線透過率およびヘイズ
共重合樹脂、及びポリカーボネート樹脂をベント式二軸押出機(テクノベル(株)製,KZW15-25MG)によって、温度260℃で紫外線吸収剤及びリン系安定剤を添加混錬し、ペレット化した。得られたペレットを120℃で5時間熱風乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所(株)製,JSW J-75EIII)を用いて、成形温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒にて幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3.0mm(長さ20mm)、2.0mm(長さ45mm)、1.0mm(長さ25mm)であり、算術平均粗さ(Ra)が0.03μmである3段型プレートを成形した。
かかる3段型プレートの厚み2.0mm部における全光線透過率とヘイズを日本電飾工業(株)製 Haze Meter NDH 2000を用い、ASTM D1003に準拠し測定した。
・・・
【0145】
(8)耐熱老化性試験
(3)で作成したペレットを120℃で5時間熱風乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所(株)製、JSW J-75EIII)を用いて、成形温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒にて長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの試験片を成形した。かかる試験片にISO179に準拠してノッチを施し、ノッチ面を露光面としてサンシャイン・ウェザー・メーター(スガ試験機(株)製:WEL-SUN-HCH-B)を使用しブラックパネル温度63℃、湿度50%、18分間水噴霧と102分間噴霧無しの計120分サイクルで360時間処理した後、ISO179に準拠してノッチ付シャルピー衝撃強度を測定した。試験片10本で測定を行い、その平均値を表1に記載した。」

(オ-1)「【0146】
(9)耐水垢付着性試験
(7)で処理した3段型プレート表面に付着した水垢の程度を目視にて判定した。
○:水垢付着なし、もしくは軽度
×:水垢付着が激しい
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
A-1:ビスフェノールA及び末端停止剤としてp-tert-ブチルフェノール、並びにホスゲンから界面重縮合法で合成した直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL-1225WX(商品名)、粘度平均分子量 19,700)
(B)ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂
【0147】
製造例1(B-1)
(工程(i))
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水21592部、48.5%水酸化ナトリウム水溶液3675部を入れ、式[4]で表される二価フェノール(I)として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)3897部(17.07モル)、およびハイドロサルファイト7.6部を溶解した後、塩化メチレン14565部(二価フェノール(I)1モルに対して10モル)を加え、撹拌下22?30℃でホスゲン1900部を60分要して吹き込んだ。
【0148】
(工程(ii))
48.5%水酸化ナトリウム水溶液1131部、p-tert-ブチルフェノール108部を塩化メチレン800部に溶解した溶液を加え、攪拌しながら式[5]で表される二価フェノール(II)として下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)430部(0.1405モル)を塩化メチレン1600部に溶解した溶液を、二価フェノール(II)が二価フェノール(I)の量1モルあたり0.0004モル/minとなる速度で加えて乳化状態とした後、再度激しく撹拌した。かかる攪拌下、反応液が26℃の状態でトリエチルアミン4.3部を加えて温度26?31℃において1時間撹拌を続けて反応を終了した。(式[7])
【化10】

【0149】
(分離、精製)
反応終了後、有機相を分離し、塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら塩化メチレンを蒸発し、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂のパウダーを得た。
得られた共重合樹脂の粘度平均分子量、ポリジオルガノシロキサン成分含有量、ならびに共重合樹脂組成物成形品の全光線透過率、ヘイズ、ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズ、ポリジオルガノシロキサンドメインサイズの規格化分散を測定した。小角エックス線散乱プロファイル(a)、粒径分布(b)を図1に示す。滞留試験によるヘイズの変化(Δヘイズ)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0150】
製造例2(B-2)
式[5]で表される二価フェノール(II)(信越化学工業(株)製 X-22-1821)215部用いた以外は、実施例1と同様にした。工程(i)における平均オリゴマー重合度は1.88であった。測定結果を表1に併記する。
【0151】
製造例3(B-3)
式[5]で表される二価フェノール(II)(信越化学工業(株)製 X-22-1822E)215部用いた以外は、実施例1と同様にした。(式[8])
測定結果を表1に併記する。
【0152】
【化11】

【0153】
製造例4(B-4)
式[5]で表される二価フェノール(II)として、下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1875)を215部用いた以外は、実施例1と同様にした。(式[9])
測定結果を表1に併記する。
【0154】
【化12】



(カ-1)「【0155】
実施例1?5、比較例1?8(樹脂組成物)
表1記載の各成分を各配合量で配合し、ブレンダーにて混合した後、ベント式二軸押出機(テクノベル(株)製,KZW15-25MG)によって溶融混錬してペレットを得た。押出条件は、吐出量2.5kg/h、スクリュー回転数250rpmであり、押出温度は第1供給口からダイス部分まで260℃とした。得られたペレットを使用して評価した
結果を表1に示す。
【0156】
表1中に記号で表記した各成分の内容は以下の通りである。
(A成分)
A-1:ビスフェノールAおよび末端停止剤としてp-tert-ブチルフェノール、並びにホスゲンから界面重縮合法で合成した直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL-1225WX(商品名)、粘度平均分子量19,700)
(B成分)
B-1:製造例1にて合成したポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂
B-2:製造例2にて合成したポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂
B-3:製造例3にて合成したポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂
B-4:製造例4にて合成したポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂
(C成分)
(C)ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤
UV-1:2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(ケミプロ化成(株)製:ケミソーブ79(商品名)/融点:104℃)
(D成分)リン系安定剤
P-1:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製:イルガフォス168)
【0157】
【表1】



(イ)甲1に記載された発明
甲1の摘記(オ-1)には、製造例1(B-1)で使用する原料の二価フェノール(II)として、

が記載されている。
また、甲1の摘記(オ-1)には、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造例として、製造例1(B-1)及び製造例2(B-2)が記載されている。
したがって、摘記(オ-1)から、甲1には、製造例(B-1)、製造例2(B-2)、製造例1(B-1)で製造されたPC-PS共重合体(B-1)、製造例2(B-2)で製造されたPC-PS共重合体(B-2)について、次の発明が記載されているといえる。

(ア)ポリジオルガノシロキサン
「下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)

」(以下「甲1発明1」、「X-22-1821」という。)

(イ)PC-PS共重合体の製造方法
a 「以下の工程のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法であって、
(工程(i))
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水21592部、48.5%水酸化ナトリウム水溶液3675部を入れ、式[4]で表される二価フェノール(I)として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)3897部(17.07モル)、およびハイドロサルファイト7.6部を溶解した後、塩化メチレン14565部(二価フェノール(I)1モルに対して10モル)を加え、撹拌下22?30℃でホスゲン1900部を60分要して吹き込んだ。
(工程(ii))
48.5%水酸化ナトリウム水溶液1131部、p-tert-ブチルフェノール108部を塩化メチレン800部に溶解した溶液を加え、攪拌しながら式[5]で表される二価フェノール(II)として下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)430部(0.1405モル)を塩化メチレン1600部に溶解した溶液を、二価フェノール(II)が二価フェノール(I)の量1モルあたり0.0004モル/minとなる速度で加えて乳化状態とした後、再度激しく撹拌した。かかる攪拌下、反応液が26℃の状態でトリエチルアミン4.3部を加えて温度26?31℃において1時間撹拌を続けて反応を終了した。(式[7])
【化10】

(分離、精製)
反応終了後、有機相を分離し、塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら塩化メチレンを蒸発し、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂のパウダーを得る、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の粘度平均分子量が20,100、ポリジオルガノシロキサン重合度が37、ポリジオルガノシロキサン含有量が8.4重量%である、製造方法。」(以下、「甲1発明2」という。)

b 製造例2は製造例1(原文では実施例1と記載されているが、「製造例1」の誤記であることは明らかである。)を引用して記載されているが、書き下すと以下の発明が記載されていると認められる。

「以下の工程のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法であって、
(工程(i))
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水21592部、48.5%水酸化ナトリウム水溶液3675部を入れ、式[4]で表される二価フェノール(I)として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)3897部(17.07モル)、およびハイドロサルファイト7.6部を溶解した後、塩化メチレン14565部(二価フェノール(I)1モルに対して10モル)を加え、撹拌下22?30℃でホスゲン1900部を60分要して吹き込んだ。
(工程(ii))
48.5%水酸化ナトリウム水溶液1131部、p-tert-ブチルフェノール108部を塩化メチレン800部に溶解した溶液を加え、攪拌しながら式[5]で表される二価フェノール(II)として下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)215部を塩化メチレン1600部に溶解した溶液を、二価フェノール(II)が二価フェノール(I)の量1モルあたり0.0004モル/minとなる速度で加えて乳化状態とした後、再度激しく撹拌した。かかる攪拌下、反応液が26℃の状態でトリエチルアミン4.3部を加えて温度26?31℃において1時間撹拌を続けて反応を終了した。(式[7])
【化10】

(分離、精製)
反応終了後、有機相を分離し、塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら塩化メチレンを蒸発し、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂のパウダーを得る、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の粘度平均分子量が19,400、ポリジオルガノシロキサン重合度が37、ポリジオルガノシロキサン含有量が4.2重量%である、製造方法。」(以下、「甲1発明3」という。)

イ 甲2に記載された事項
(ア-2)
「・さらに追試を行うことにより、上記差異を確認しました。拒絶理由においてご指摘を受けた引例3の製造例1で用いられているポリオルガノシロキサン原料:X-22-1821についてポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定を行い、本願と同様の縦軸・横軸を有する微分分子量分布曲線を以下のように得ました。なお、再現性確認のため、2回の実験を行っています。
【図1】

・グラフからわかる通り、横軸log(M)が2.5≦log(M)≦3.1の範囲の立ち上がりがブロードになっており、「横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、2.5≦log(M)≦3.1の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」が表に記載の通り14.9%となり、本願クレーム範囲外となることを確認いたしました。」(第3頁1行?下から2行)

ウ 対比・判断
(ア)本件訂正発明12について
a 対比
本件訂正発明12と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)

」は、
本件訂正発明12の「下記一般式(ii)で表されるポリオルガノシロキサン

」 において、
「m」が「0」、「n」(平均繰り返し数)が「38」、「R^(3)?R^(6)」がメチル基であることから「炭素数1のアルキル基」、「Y」は「脂肪族を含む有機残基であって、SiとZに結合している有機残基」、「Z」は「-R^(7)OH」であって「R^(7)は置換されていてもよいアリーレン基」であるものに相当する。

そうすると、本件訂正発明12と甲1発明1は、
「下記一般式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサン。
【化3】

[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR^(8)、-COOH又は-SHを示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]」の点で一致する。

そして、本件訂正発明12と甲1発明1は、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件訂正発明12では、「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。」との特定があるのに対し、甲1発明1ではこの特定がない点。

b 判断
上記相違点1について検討する。
甲2は、特願2014-73411号の審査において、本件の特許権者である出光興産株式会社が平成30年3月5日に提出した意見書である。甲2には、本件特許権者である出光興産株式会社が、甲1発明1(甲2における「引例3の製造例1」に対応する。)のポリジオルガノシロキサンである「X-22-1821」の分子量分布曲線について、ポリスチレン換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定を行い、dw/dlogMを縦軸、logMを横軸とする微分分子量曲線【図1】を得て、次のように示している。(摘記(ア-2))
【図1】

そうすると、上記【図1】の「X-22-1821」の「dw/dlog(M)の最大となるdlog(M)」は、表中の記載から「3.6」であると認められるから、「X-22-1821」は、本件訂正発明12の「3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大」の要件を満たす。
これに対して、特許異議申立書には、【図1】に示された、「X-22-1821」の微分分子量分布曲線に基づき、次の「<解析手法>」により4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対する割合(%)を求めたところ、「8.5%」となることが記載されており、この解析手法は適切であるから、「X-22-1821」は、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」が、「log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して」、「8.5%」であると認められる。

「<解析手法>
1)上記【図1】の微分分子量分布曲線をA4用紙に拡大(300%)して印刷した。
2)はさみを用いて、上記の印刷物から、微分分子量分布曲線の全範囲のスペクトル部分(「log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」に対応)を切り出し、その紙片の重量を電子天秤を用いて計量した。
3)上記2)で用いた紙片から、微分分子量分布曲線の4.0≦log(M)≦4.5の範囲スペクトル部分(「4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」に対応)を切り出し、その紙片の重量を電子天秤を用いて計量した。
4)上記2)の紙片の重量は「0.1872g」であり、上記3)の紙片の重量は「0.0160g」であることから、X-22-1821の微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値は、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して「8.5%」[0.0160(g)÷0.1872(g)×100]であるといえる。」

そうすると、甲1発明1の「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線」における「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」は、「log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して」、「8.5%」であるから、本件訂正発明12における「6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)」とその値の範囲が重複するものとはいえない。

以上によれば、相違点1は実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明12は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

c 小括
よって、本件訂正発明12は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(イ)本件訂正発明13について
本件訂正発明13は、本件訂正発明12を直接引用するものであるが、上記(ア)で述べたとおり、本件訂正発明12が甲1に記載された発明であるとはいえない以上、本件訂正発明13においても同様に、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(ウ)本件訂正発明9について
a 甲1発明2との対比
本件訂正発明9は「請求項1?7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリシロキサン共重合体の製造方法」であるから、これらをふまえて本件訂正発明1を引用する本件訂正発明9と甲1発明2を対比する。
甲1発明2は、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法であって、製造例1(B-1)の工程(i)にて、「式[4]で表される二価フェノール(I)」である「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」とホスゲンを用いて反応させており、該反応は、甲1発明2の摘記イ(【0075】)の「水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中において、二価フェノール(I)と、ホスゲンや二価フェノール(I)のクロロホルメート等のクロロホルメート形成性化合物との反応により、二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーであって末端クロロホーメート基を有するオリゴマーを含有する溶液を調製する」との記載からみて、「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」単位に由来する繰り返し単位を有する末端クロロホーメート基含有ポリカーボネートオリゴマーが得られたものと解される。その後、工程(ii)において、工程(i)の溶液に「下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)


を反応させ、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を得ていると解される。

そうすると、甲1発明2の工程(i)にて得られた「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」単位に由来する繰り返し単位を有する末端クロロホーメート基含有ポリカーボネートオリゴマーは、ビスフェノールAに由来する繰り返し単位、即ちブロックを有するものであるから、該ビスフェノールAに由来するブロックは、本件訂正発明9が引用する本件訂正発明1の「下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)

」において、「X」が「炭素数3のアルキレン基」、「a」及び「b」が共に「0」であり、「R^(1)」及び「R^(2)」が存在しない単位を有するブロックに相当する。
そして、甲1発明2の「式[5]で表される二価フェノール(II)」である「下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)」は、

の構造式を有するものであって、該X-22-1821の()_(p)で表される繰り返し単位、即ちブロックは、本件訂正発明9の「下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)

」のR^(3)、R^(4)がそれぞれ「炭素数1のアルキル基」を有する原料であって、かつ、上記ア(ア)の対比と同様に、「下記一般式(ii)で表されるポリオルガノシロキサン」 において、「m」が「0」、「n」(平均繰り返し数)が「38」、「R^(3)?R^(6)」がメチル基であることから「炭素数1のアルキル基」、「Y」は「脂肪族を含む有機残基であって、SiとZに結合している有機残基」、「Z」は「-R^(7)OH」であって「R^(7)は置換されていてもよいアリーレン基」に相当する。
その他の点については、上記(ア)で本件訂正発明12と甲1発明1との対比について述べたとおりである。

そうすると、本件訂正発明9と甲1発明2は、
「請求項1?7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法であって、下記一般式(ii)または(iii)
【化2】

[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR^(8)、-COOH又は-SHを示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
表されるポリオルガノシロキサンを原料として用いる、ポリカーボネート-ポリシロキサン共重合体の製造方法。」で一致する。

そして、本件訂正発明9と甲1発明2は、以下の点で相違する。

<相違点1’>
本件訂正発明9では、「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。」との特定があるのに対し、甲1発明2ではこの特定がない点。

b 甲1発明2の判断
上記相違点1’について検討する。
相違点1’については、上記(ア)aの相違点1と同じであって、その判断についても同様である。
以上によれば、相違点1’は実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明9は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

c 甲1発明3との対比と判断
甲1発明3は、甲1発明2と対比すると、式[5]で表される二価フェノール(II)(信越化学工業(株)製 X-22-1821)の使用量を430部から215部とした発明であるから、本件訂正発明9と甲1発明3とを対比・判断すると、上記a、bで対比・判断した甲1発明2と同様である。
したがって、本件訂正発明9は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

d 小括
よって、本件訂正発明9は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(エ)本件訂正発明10、11、15について
本件訂正発明10、11は、本件訂正発明9を直接または間接的に引用するものであるが、上記(ウ)で述べたとおり、本件訂正発明9が甲1に記載された発明であるとはいえない以上、本件訂正発明10、11においても同様に、甲1に記載された発明であるとはいえない。
そして、本件訂正発明15は、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明12と同様の特定事項に係る発明である。してみると、本件訂正発明15は、本件訂正発明12と同様に、甲1に記載された発明であるとはいえない。

したがって、本件訂正発明10、11、15は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(オ)本件訂正発明14について
a 甲1発明2との対比
本件訂正発明14は、「下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、前記共重合体の原料として下記一般式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサンを用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体 。

」であり、原料ポリオルガノシロキサンは、「下記(1)及び(2)(省略)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体」と特定されている。

一方、甲1発明2は、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法であって、製造例1(B-1)の工程(i)にて、「式[4]で表される二価フェノール(I)」である「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」とホスゲンを用いて反応させており、該反応は、甲1発明2の摘記イ(【0075】)の「水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中において、二価フェノール(I)と、ホスゲンや二価フェノール(I)のクロロホルメート等のクロロホルメート形成性化合物との反応により、二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーであって末端クロロホーメート基を有するオリゴマーを含有する溶液を調製する」との記載からみて、「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」単位に由来する繰り返し単位を有する末端クロロホーメート基含有ポリカーボネートオリゴマーが得られたものと解される。その後、工程(ii)において、工程(i)の溶液に「下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)


を加えて反応させ、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を得るものである。

以下では、甲1発明2の工程(i)にて得られたポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の化学構造を本件訂正発明14と対比しながら検討する。
甲1発明2の工程(i)にて得られた「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」単位に由来する繰り返し単位を有する末端クロロホーメート基含有ポリカーボネートオリゴマーは、ビスフェノールAに由来する繰り返し単位、即ちブロックを有するものであるから、該ビスフェノールAに由来するブロックは、本件訂正発明14が引用する本件訂正発明1の「下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)

」において、「X」が「炭素数3のアルキレン基」、「a」及び「b」が共に「0」であり、「R^(1)」及び「R^(2)」が存在しない単位を有するブロックに相当する。
そして、甲1発明2の「式[5]で表される二価フェノール(II)」である「下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)」は、

の構造式を有するものであって、該X-22-1821の()_(p)で表される繰り返し単位、即ちブロックは、本件訂正発明14の「下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)

」の「R^(3)」、「R^(4)」がそれぞれ「炭素数1のアルキル基」を有する原料であって、かつ、上記ア(ア)の対比と同様に、「下記一般式(ii)で表されるポリオルガノシロキサン」 において、「m」が「0」、「n」(平均繰り返し数)が「38」、「R^(3)?R^(6)」がメチル基であることから「炭素数1のアルキル基」、「Y」は「脂肪族を含む有機残基であって、SiとZに結合している有機残基」、「Z」は「-R^(7)OH」であって「R^(7)は置換されていてもよいアリーレン基」に相当する。
その他の点については、上記(ア)で本件訂正発明12と甲1発明1との対比について述べたとおりである。

そうすると、本件訂正発明14と甲1発明2は、
「下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、前記共重合体の原料として下記一般式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサンを用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体:
【化4】

[式中、R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基又は炭素数1?6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1?8のアルキレン基、炭素数2?8のアルキリデン基、炭素数5?15のシクロアルキレン基、炭素数5?15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7?15のアリールアルキレン基、炭素数7?15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-O-又は-CO-を示す。R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0?4の整数を示す。]

【化5】

[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR^(8)、-COOH又は-SHを示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]」で一致する。

そして、本件訂正発明14と甲1発明2は、以下の点で相違する。

<相違点1’’>
本件訂正発明14では、「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。」との特定があるのに対し、甲1発明2ではこの特定がない点。

<相違点2>
本件訂正発明14は「ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体」の発明であるのに対し、 甲1発明2は「ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法」である点。

b 甲1発明2の判断
上記相違点1’’について検討する。
相違点1’’については、上記(ア)aの相違点1と同じである。
以上によれば、相違点1’’は実質的な相違点である。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件訂正発明14は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

c 甲1発明3との対比と判断
甲1発明3は、甲1発明2と対比すると、式[5]で表される二価フェノール(II)(信越化学工業(株)製 X-22-1821)の使用量を430部から215部とした発明であるから、本件訂正発明14と甲1発明3とを対比・判断すると、上記a、bで対比・判断した甲1発明2と同様であり、本件訂正発明14は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

d 小括
よって、本件訂正発明14は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(カ)本件訂正発明1について
a 甲1発明2との対比
本件訂正発明1は、「下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)は、(1)、(2)(省略)を満たすポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。

」である。

一方、甲1発明2は、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法であって、製造例1(B-1)の工程(i)にて、「式[4]で表される二価フェノール(I)」である「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」とホスゲンを用いて反応させており、該反応は、甲1発明2の摘記イ(【0075】)の「水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中において、二価フェノール(I)と、ホスゲンや二価フェノール(I)のクロロホルメート等のクロロホルメート形成性化合物との反応により、二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーであって末端クロロホーメート基を有するオリゴマーを含有する溶液を調製する」との記載からみて、「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」単位に由来する繰り返し単位を有する末端クロロホーメート基含有ポリカーボネートオリゴマーが得られたものと解される。その後、工程(ii)において、工程(i)の溶液に「下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)


を反応させ、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を得るものである。

以下では、甲1発明2で得られたポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の化学構造を本件訂正発明1と対比しながら検討する。
甲1発明2の工程(i)にて得られた「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」単位に由来する繰り返し単位を有する末端クロロホーメート基含有ポリカーボネートオリゴマーは、ビスフェノールAに由来する繰り返し単位、即ちブロックを有するものであるから、該ビスフェノールAに由来するブロックは、本件訂正発明1の「下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)

」において、「X」が「炭素数3のアルキレン基」、「a」及び「b」が共に「0」であり、「R^(1)」及び「R^(2)」が存在しない単位を有するブロックに相当する。
そして、甲1発明2の「式[5]で表される二価フェノール(II)」である「下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)」は、

の構造式を有するものであって、該X-22-1821の()_(p)で表される繰り返し単位、即ちブロックは、本件訂正発明1の「下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)

」の「R^(3)」、「R^(4) 」がそれぞれ「炭素数1のアルキル基」を有する原料であって、かつ、上記(ア)aの対比と同様に、「下記一般式(ii)で表されるポリオルガノシロキサン」 において、「m」が「0」、「n」(平均繰り返し数)が「38」、「R^(3)?R^(6)」がメチル基であることから「炭素数1のアルキル基」、「Y」は「脂肪族を含む有機残基であって、SiとZに結合している有機残基」、「Z」は「-R^(7)OH」であって「R^(7)は置換されていてもよいアリーレン基」に相当する。
その他の点については、上記(ア)で本件訂正発明12と甲1発明1との対比について述べたとおりである。

そうすると、本件訂正発明1と甲1発明2は、
「下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、
【化4】

[式中、R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基又は炭素数1?6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1?8のアルキレン基、炭素数2?8のアルキリデン基、炭素数5?15のシクロアルキレン基、炭素数5?15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7?15のアリールアルキレン基、炭素数7?15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-O-又は-CO-を示す。R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0?4の整数を示す。]

【化5】

[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR^(8)、-COOH又は-SHを示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]」で一致する。

そして、本件訂正発明1と甲1発明2は、以下の点で相違する。

<相違点1’’’>
本件訂正発明1では、「ポリオルガノシロキサンブロックのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。」との特定があるのに対し、甲1発明2ではこの特定がない点。

<相違点2’>
本件訂正発明1は「ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体」の発明であるのに対し、 甲1発明2は「ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法」である点。

b 甲1発明2の判断
上記相違点1’’’について検討する。
相違点1’’’については、甲1発明2の「ポリオルガノシロキサンブロック」の性質は、原料である「ポリオルガノシロキサン」とほぼ同等と解されることからすると、上記(ア)aの相違点1と同じであって、その判断についても同様である。
以上によれば、相違点1’’’は実質的な相違点である。
したがって、相違点2’について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

c 甲1発明3との対比と判断
甲1発明3は、甲1発明2と対比すると、式[5]で表される二価フェノール(II)(信越化学工業(株)製 X-22-1821)の使用量を430部から215部とした発明であるから、本件訂正発明1と甲1発明3とを対比・判断すると、上記a、bで対比・判断した甲1発明2と同様であり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

d 小括
よって、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(キ)本件訂正発明2?8、16?18について
本件訂正発明2?8、16?18は、本件訂正発明1を直接または間接的に引用するものであるが、上記(カ)で述べたとおり、本件訂正発明1が甲1に記載された発明であるとはいえない以上、本件訂正発明2?8、16?18においても同様に、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(ク)まとめ
よって、取消理由1(新規性)については理由がなく、本件訂正発明1?18に係る特許は、特許法第113号第2号に該当せず、取り消すべきものではない。

2 取消理由で採用しなかった申立理由
(1)申立理由2(進歩性)について
以下、詳述する。なお、事案に鑑み、まず本件訂正発明12、13から審理を行い、次に本件訂正発明9?11、15、14、1?8、16?18の順に審理を行う。

ア 甲1に記載された事項及び記載された発明
(ア)甲1に記載された事項
甲1の記載については、上記第5の1(1)ア(ア)に示したとおりである。

(イ)甲1に記載された発明
甲1に記載された発明については、上記第5の1(1)ア(イ)に示したとおりである。

イ 甲2に記載された事項
甲2の記載については、上記第5の1(1)イに示したとおりである。

ウ 対比・判断
(ア)本件訂正発明12について
a 対比
本件訂正発明12と甲1発明1とを対比する。
一致点及び相違点については、上記第5の1(1)ウ(ア)aで述べたのと同様であり、相違点として相違点1が挙げられる。

b 判断
次に、相違点1の容易想到性について検討する。
甲1には、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂のポリジオルガノシロキサンブロックが式[3]で表されるものであって、

好ましいポリジオルガノシロキサンブロックとして(2-アリルフェノール)末端ジオルガノシロキサン、もしくは(2-メトキシ4-アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサンより誘導されたブロックであることが好ましいことが記載されている(【0050】?【0057】)。
甲1の実施例には、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造例として製造例1(B-1)?製造例4(B-4)が記載されており、該ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の原料であるポリジオルガノシロキサン化合物として「信越化学工業社(株)製 X-22-1821」(製造例1(B-1)、製造例2(B-2))、「信越化学工業社(株)製 X-22-1822E」(製造例3(B-3))、「信越化学工業社(株)製 X-22-1875」(製造例4(B-4))を用いた例が記載されている。
そして、甲1の実施例のうち、製造例1(B-1)、製造例2(B-2)の「X-22-1821」は、甲1発明1であって、本件訂正発明12の「一般式(ii)(式省略)で表されるシロキサン」に化学構造上は相当することは前に述べたとおり(第5の1(1)ウ)であり、「X-22-1821」の「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線」における「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」は、甲2の記載から算出すると「log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して」「8.5%」(第5の1(1)ウ、甲2)である。
しかしながら、甲1には、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を製造する際に用いる原料のポリジオルガノシロキサン化合物として、「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線」における「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」が、「log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)」であることについては、明記していない。
そして、甲1の実施例で用いたポリジオルガノシロキサン化合物である「信越化学工業社(株)製 X-22-1821」(製造例1(B-1)、製造例2(B-2))以外である「信越化学工業社(株)製 X-22-1822E」(製造例3(B-3))、「信越化学工業社(株)製 X-22-1875」(製造例4(B-4))の、「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線」における「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」が、「log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)」であることについても、明らかではない。
また、甲2には、「X-22-1821」の「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線」における「(1)dw/dlog(M)の値」が3.6であり、「(2)前記微分分子量分布曲線において、2.5≦log(M)≦3.1の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」が「14.9%」であることが記載されている。
しかしながら、甲2においては、(2)前記微分分子量分布曲線において、「2.5≦log(M)≦3.1の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」を算出するものであって、甲1発明1の「4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」を算出するものではない。
してみると、甲1発明1において、たとえ甲2の記載を参照しても、ポリジオルガノシロキサン化合物として、「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線」における「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」が、「log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)」であるように調節したものを当業者が用いる動機付けがあるとはいえない。

したがって、本件訂正発明12は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

c 小括
以上のとおり、本件訂正発明12は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本件訂正発明13について
本件訂正発明13は、本件訂正発明12を直接引用するものであるが、上記(ア)で述べたとおり、本件訂正発明12が甲1及び甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明13においても同様に、甲1及び甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)本件訂正発明9について
a 甲1発明2との対比
本件訂正発明9と甲1発明2とを対比する。
一致点及び相違点については、上記第5の1(1)ウ(ウ)aで述べたのと同様であり、相違点として相違点1’が挙げられる。

b 判断
次に、相違点1の容易想到性について検討する。
相違点1’については、上記(ア)aの相違点1と同じであって、その判断についても同様である。
したがって、本件訂正発明9は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

c 甲1発明3との対比と判断
甲1発明3は、甲1発明2と対比すると、式[5]で表される二価フェノール(II)(信越化学工業(株)製 X-22-1821)の使用量を430部から215部とした発明であるから、本件訂正発明9と甲1発明3とを対比・判断すると、上記(ア)、(イ)で対比・判断した甲1発明2と同様である。
したがって、本件訂正発明9は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

d 小括
以上のとおり、本件訂正発明9は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)本件訂正発明10、11、15について
本件訂正発明10、11は、本件訂正発明9を直接または間接的に引用するものであるが、上記(ウ)で述べたとおり、本件訂正発明9が甲1及び甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明10、11においても同様に、甲1及び甲2に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
そして、本件訂正発明15は、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明12と同様の特定事項に係る発明である。してみると、本件訂正発明15は、本件訂正発明12と同様に、甲1及び甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、本件訂正発明10、11、15は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(オ)本件訂正発明14について
a 甲1発明2との対比
本件訂正発明14と甲1発明2とを対比する。
一致点及び相違点については、上記第5の1(1)ウ(オ)aで述べたのと同様であり、相違点として相違点1’ ’、相違点2が挙げられる。

b 判断
次に、相違点1’ ’の容易想到性について検討する。
相違点1’ ’については、上記ア(ア)の相違点1と同じであって、その判断についても同様である。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件訂正発明14は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

c 甲1発明3との対比と判断
甲1発明3は、甲1発明2と対比すると、式[5]で表される二価フェノール(II)(信越化学工業(株)製 X-22-1821)の使用量を430部から215部とした発明であるから、本件訂正発明14と甲1発明3とを対比・判断すると、上記a、bで対比・判断した甲1発明2と同様である。
したがって、本件訂正発明14は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

d 小括
以上のとおり、本件訂正発明14は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(カ)本件訂正発明1について
a 甲1発明2との対比
本件訂正発明1と甲1発明2とを対比する。
一致点及び相違点については、上記第5の1(1)ウ(カ)aで述べたのと同様であり、相違点として相違点1’’’、相違点2’が挙げられる。

b 判断
次に、相違点1’’’の容易想到性について検討する。
相違点1’’’については、上記(ア)aの相違点1と同じであって、その判断についても同様である。
したがって、相違点2’について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

c 甲1発明3との対比と判断
甲1発明3は、甲1発明2と対比すると、式[5]で表される二価フェノール(II)(信越化学工業(株)製 X-22-1821)の使用量を430部から215部とした発明であるから、本件訂正発明1と甲1発明3とを対比・判断すると、上記a、bで対比・判断した甲1発明2と同様である。
したがって、本件訂正発明1は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

d 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(キ)本件訂正発明2?8、16?18について
本件訂正発明2?8、16?18は、本件訂正発明1を直接または間接的に引用するものであるが、上記(カ)で述べたとおり、本件訂正発明1が甲1及び甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明2?8、16?18においても同様に、甲1及び甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ク)まとめ
よって、申立理由2(進歩性)については理由がなく、本件訂正発明1?18に係る特許は、特許法第113号第2号に該当せず、取り消すべきものではない。

3 令和2年2月26日提出の意見書における申立人の主張について
(1)申立人の主張
申立人は令和2年2月26日付けで提出した意見書において、訂正請求に付随して生じた理由としてサポート要件及び実施可能要件を主張する。
申立人のするこれらの主張は、時機に遅れた新たな主張であるから直接採用することはできないが、念のため以下に検討をしておく。

ア サポート要件
申立人は、本件訂正により、本件明細書に記載された実施例8及び9は、本件訂正発明の具体例でなくなったので、本件訂正発明はサポートされていない旨を主張する。
しかしながら、本件明細書に記載された実施例1?7、10?15は、本件訂正発明の具体例であるといえ、本件明細書の他の記載や技術常識を勘案すれば、本件訂正発明はサポートされているということができる。

実施可能要件
申立人は、本件訂正により、「6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)」という2つに分断された積分比率範囲は、過度の試行錯誤を要する旨を主張する。
しかしながら、上記したとおり、本件明細書に記載された実施例1?7、10?15は、分断された積分比率範囲を満足する具体例であるといえ、本件明細書の他の記載や技術常識を勘案すれば、過度の試行錯誤を要せず、当業者が作ることができるといえる。

ウ まとめ
よって、申立人のするこれらの主張は、いずれも採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1?18に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1?18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体及びその製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性に優れ、且つ低温耐衝撃性を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン重合体(以下、「PC-POS」と略記することがある)は、その高い耐衝撃性、耐薬品性、及び難燃性等の優れた性質から注目されている。そのため、電気・電子機器分野、自動車分野等の様々な分野において幅広く利用が期待されている。特に、携帯電話、モバイルパソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、電動工具などの筐体、及びその他の日用品への利用が広がっている。
通常、代表的なポリカーボネートとしては、原料の二価フェノールとして、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノールA〕を用いたホモポリカーボネートが一般的に使用されている。このホモポリカーボネートの難燃性や耐衝撃性等の物性を改良するために、ポリオルガノシロキサンを共重合モノマーとして用いたポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体が知られている(特許文献1?3参照)。
ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の耐衝撃性、特に低温下での耐衝撃性を改善する場合には、特許文献3に開示されるように、鎖長の長いポリオルガノシロキサンを用いる方法が知られている。しかし、この方法では、透明性が低下するという問題があった。
逆に、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の透明性をより改善するためには、比較的鎖長の短いポリオルガノシロキサンを用いる方法が知られている(特許文献4,5参照)。しかし、この方法では、耐衝撃性が低下するという問題があった。
また、特許文献6では、光線透過率の相違する2種類のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の配合によって、優れた耐衝撃性を維持しつつ透明性を向上させる試みがなされているが、その透明性は十分とは言えないものであった。このように、これまでのポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体において、優れた透明性と優れた耐衝撃性、特に低温下での耐衝撃性を両立させることは困難であった。
【0003】
【特許文献1】特許第2662310号公報
【特許文献2】特開2011-21127号公報
【特許文献3】特開2012-246430号公報
【特許文献4】特開平8-81620号公報
【特許文献5】特開2011-46911号公報
【特許文献6】特表2006-523243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、透明性と、優れた耐衝撃性、特に低温下での耐衝撃性とを有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中のポリオルガノシロキサンの分子量分布を制御することにより、上記課題が達成されることを見出した。
すなわち本発明は、下記1?13に関する。
1.下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、
前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)のポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%?40%(但し、8.5±0.3%を除く)である、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化1】

[式中、R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基又は炭素数1?6のアルコキシ基、Xは、単結合、炭素数1?8のアルキレン基、炭素数2?8のアルキリデン基、炭素数5?15のシクロアルキレン基、炭素数5?15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7?15のアリールアルキレン基、炭素数7?15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-O-又は-CO-、R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示し、a及びbは、それぞれ独立に0?4の整数を示す。]
2.前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)の平均鎖長が20?85である、1に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
3.前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)の含有量が、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の0.5質量%?20.0質量%である、1または2に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
4.粘度平均分子量が12000?40000である、1?3のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
5.前記一般式(I)におけるaおよびbが0であり、Xが単結合または炭素数1?8のアルキレン基である、1?4のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
6.前記一般式(I)におけるaおよびbが0であり、Xが炭素数3のアルキレン基である、1?5のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
7.前記一般式(II)におけるR^(3)およびR^(4)がメチル基である、1?6のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
8.1?7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を成形してなる成形体。
9.1?7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法であって、下記一般式(ii)または(iii)
【化2】

[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR^(8)、-COOH又は-SHを示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
で表されるポリオルガノシロキサンを原料として用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。
前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。
10.前記一般式(ii)または(iii)における平均鎖長nが20?85である、9に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。
11.前記一般式(ii)または(iii)におけるR^(3)およびR^(4)がメチル基である、9または10に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。
12.下記一般式(ii)または(iii)で表され、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリオルガノシロキサン。
【化3】

[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR^(8)、-COOH又は-SHを示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となる。
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。
13.前記一般式(ii)または(iii)における平均鎖長nが20?85である、12に記載のポリオルガノシロキサン。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中のポリオルガノシロキサンの分子量分布を制御することにより、ポリカーボネートと低分子量ポリオルガノシロキサンとの共重合体と同じレベルの透明性を維持しつつ、ポリカーボネートと高分子量ポリオルガノシロキサンとの共重合体に匹敵する低温耐衝撃性を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明において原料として用いられるポリオルガノシロキサンの微分分子量分布曲線の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(以下、PC-POS共重合体と略することがある)は、下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含む:
【0009】
【化4】

【0010】
上記一般式(I)中、R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基又は炭素数1?6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1?8のアルキレン基、炭素数2?8のアルキリデン基、炭素数5?15のシクロアルキレン基、炭素数5?15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7?15のアリールアルキレン基、炭素数7?15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-O-又は-CO-を示す。a及びbは、それぞれ独立に、0?4の整数を示す。
上記一般式(II)中、R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。a及びbはそれぞれ独立に0?4の整数を示す。
【0011】
上記一般式(I)中、R^(1)及びR^(2)がそれぞれ独立して示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
R^(1)及びR^(2)がそれぞれ独立して示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基(「各種」とは、直鎖状及びあらゆる分岐鎖状のものを含むことを示し、以下、同様である。)、各種ペンチル基、及び各種ヘキシル基が挙げられる。R^(1)及びR^(2)がそれぞれ独立して示すアルコキシ基としては、アルキル基部位が前記アルキル基である場合が挙げられる。
Xが表すアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられ、炭素数1?5のアルキレン基が好ましい。Xが表すアルキリデン基としては、エチリデン基、イソプロピリデン基等が挙げられる。Xが表すシクロアルキレン基としては、シクロペンタンジイル基やシクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基等が挙げられ、炭素数5?10のシクロアルキレン基が好ましい。Xが表すシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロヘキシリデン基、3,5,5-トリメチルシクロヘキシリデン基、2-アダマンチリデン基等が挙げられ、炭素数5?10のシクロアルキリデン基が好ましく、炭素数5?8のシクロアルキリデン基がより好ましい。Xが表すアリールアルキレン基のアリール部位としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基などの環形成炭素数6?14のアリール基が挙げられる。Xが表すアリールアルキリデン基のアリール部位としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基などの環形成炭素数6?14のアリール基が挙げられる。
a及びbは、それぞれ独立に0?4の整数を示し、好ましくは0?2、より好ましくは0又は1である。
中でも、aおよびbが0であり、Xが単結合または炭素数1?8のアルキレン基であるもの、またはaおよびbが0であり、Xが炭素数3のアルキレン基、特にイソプロピリデン基であるものが好適である。
【0012】
上記一般式(II)中、R^(3)又はR^(4)で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。R^(3)又はR^(4)で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基(「各種」とは、直鎖状及びあらゆる分岐鎖状のものを含むことを示し、以下、同様である。)、各種ペンチル基、及び各種ヘキシル基が挙げられる。R^(3)又はR^(4)示されるアルコキシ基としては、アルキル基部位が前記アルキル基である場合が挙げられる。R^(3)又はR^(4)で示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
なお、R^(3)及びR^(4)としては、いずれも、好ましくは、水素原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基であり、いずれもメチル基であることがより好ましい。
【0013】
本発明のPC-POS共重合体における一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)の含有量は、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の好ましくは0.5?20質量%、より好ましくは1.5?15質量%である。ポリオルガノシロキサンブロック(B)の含有量が0.5質量%未満であると、低温耐衝撃性が十分に得られず、20質量%を超えると耐熱性の低下がみられる。
【0014】
本発明のPC-POS共重合体における上記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)は、好ましくは下記一般式(II’)で表される。
【化5】

【0015】
[式中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。Yは単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。]
【0016】
R^(3)及びR^(4)は上述したとおりであり、R^(5)及びR^(6)はR^(3)及びR^(4)と同様である。R^(3)?R^(6)としては、いずれも、好ましくは、水素原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基であり、いずれもメチル基であることがより好ましい。Yとしては、好ましくはアルキル基を有するフェノール系化合物の残基であり、アリルフェノール由来の有機残基やオイゲノール由来の有機残基がより好ましい。なお、単結合であるYとは、Yに隣接する基を結ぶ結合を意味する。
【0017】
本発明のPC-POS共重合体における上記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)が、下記一般式(II’’)で表される構造であることも好ましい。
【0018】
【化6】

【0019】
上記式(II’’)中、R^(3)?R^(6)及びnは、前記一般式(II’)中のものと同様であり、好ましいものも同じである。Y’は一般式(II’)中のYと同様であり、好ましいものも同じである。mは、0又は1を示す。Z’は、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。
また、βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。該ジイソシアネート化合物由来の2価の基及びジカルボン酸由来の2価の基の具体例については後述する。
【0020】
本発明のPC-POS共重合におけるポリオルガノシロキサンブロック(B)の平均鎖長nは、好ましくは20?85、より好ましくは20?75、さらに好ましくは20?60である。該平均鎖長は核磁気共鳴(NMR)測定により算出される。平均鎖長nが20以上であれば低温における耐衝撃性が十分に得られる。また、平均鎖長nが85以下であれば、透明性に優れる共重合体を得ることができる。
【0021】
<ポリオルガノシロキサン>
本発明のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を構成する一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)は、上記ポリオルガノシロキサンブロック(B)のポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である
ことを特徴とする。
【0022】
本発明のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を構成するポリオルガノシロキサンブロック(B)が当該特徴を有するには、原料に用いられる下記一般式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサンが上記(1)及び(2)の特徴を有することを要する。
【0023】
【化7】

【0024】
[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR^(8)、-COOH又は-SHを示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
なお、Z又はZ’におけるアリーレンアルキル置換アリール基とは、後述する一般式(1-6)及び(1-11)に記載するようにZの2つのアリール基のうち末端アリール基が水酸基OHと結合していることを意味する。
【0025】
R^(3)及びR^(4)は上述したとおりであり、R^(5)及びR^(6)はR^(3)及びR^(4)と同様である。R^(3)?R^(6)としては、いずれも、好ましくは、水素原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基であり、いずれもメチル基であることがより好ましい。
YおよびY’としては、好ましくはアルキル基を有するフェノール系化合物の残基であり、アリルフェノール由来の有機残基やオイゲノール由来の有機残基がより好ましい。なお、単結合であるYおよびY’とは、YおよびY’に隣接する基を結ぶ結合を意味する。
また、βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示し、例えば、以下の一般式(3-1)?(3-5)で表される2価の基が挙げられる。
【0026】
【化8】

【0027】
上記で掲げたものの他、特表2013-523938号公報、特開平4-225059号公報、特表2006-518803号公報、及び国際公開公報WO2013/115604等に記載されているポリオルガノシロキサン化合物も好適に用いることができる。
【0028】
上記一般式(ii)または(iii)で示されるポリオルガノシロキサンの平均鎖長nは、好ましくは20?85、より好ましくは20?75、さらに好ましくは20?60である。該平均鎖長は核磁気共鳴(NMR)測定により算出される。平均鎖長nが20以上であれば低温における耐衝撃性が十分に得られる。また、平均鎖長nが85以下であれば、透明性に優れる共重合体を得ることができる。
【0029】
一般式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサンの分子量・分子量分布測定値を得るためのGPC装置には特に制限はなく、一般に市販されている高温型GPC装置、例えば、東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC測定機、「HLC-8200」を利用することが可能である。具体的には、GPCカラムとして、東ソー株式会社製、「TSK-GEL G4000HXL」と「TSK-GEL G2000HXL」とを連結させたものを用いる。カラム温度は40℃に設定し、溶離液にはテトラヒドロフラン(THF)を用い、流速1.0ml/分にて測定する。検量線の作製には、東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用いる。このようにして得られる分子量の対数値を、対数分子量(log(M))と称する。
【0030】
GPC装置の示差屈折(RI)検出計において検出される強度分布の時間曲線(一般に、溶出曲線と呼ぶ)を、分子量既知の物質から得た較正曲線を用いて溶出時間を分子量に換算する。ここで、RI検出強度は成分濃度とは比例関係にあるので、溶出曲線の全面積を100%としたときの強度面積を求め、それぞれの溶出時間の濃度分率を求める。濃度分率を順次積算し、横軸に分子量の対数値(log(M))、縦軸に濃度分率(w)の積算値をプロットすることにより積分分子量分布曲線を得ることができる。
続いて、各分子量の対数値における曲線の微分値(すなわち、積分分子量曲線の傾き)を求め、横軸に分子量の対数値(log(M))、縦軸に上記微分値(dw/dlog(M))をプロットして微分分子量分布曲線を得ることができる。従って、微分分子量分布とは、濃度分率(w)を分子量の対数値(log(M))で微分した値、すなわち「dw/dlog(M)」を意味する。この微分分子量分布曲線から、特定のlog(M)における微分分子量分布dw/dlog(M)を読み取ることができる。なお、複数のポリオルガノシロキサンを配合したポリオルガノシロキサン配合物についても、ポリオルガノシロキサン配合物をGPC法により測定した後、同じ手法により微分分子量分布曲線を得ることができる。
【0031】
本発明においては、(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で、好ましくは3.5≦log(M)≦3.8の範囲で最大となる。微分分子量分布dw/dlog(M)の最大値とは、微分分子量曲線におけるピークトップを指す。(1)の値が3.4未満であると低温耐衝撃性に劣る結果となり、4.0を超えると透明性が低下する傾向にある。
【0032】
本発明においては、(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%?40%であり、好ましくは6.5%?30%である(但し、8.5±0.3%を除く)。上記割合が6%未満であると、低温耐衝撃性に劣る結果となり、40%を超えると透明性が低下する傾向にある。ここで、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値の、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対する割合は、PDMSの分子量分布において、log(M)が4.0?4.5である成分がPDMS全体に対して存在する割合を示すものである。
【0033】
一般式(ii)で示されるポリオルガノシロキサンを以下に例示する。
【0034】
【化9】

【0035】
上記一般式(1-2)?(1-11)中、R^(3)?R^(6)及びnは上記の通りであり、好ましいものも同じである。また、R^(9)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、cは正の整数を示し、通常1?6の整数である。また、R^(9)としては、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基である。
これらの中でも、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を製造する際の重合の容易さの観点においては、上記一般式(1-2)で表されるフェノール変性ポリオルガノシロキサンが好ましい。また、入手の容易さの観点においては、上記一般式(1-3)で表される化合物中の一種であるα,ω-ビス[3-(o-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、上記一般式(1-4)で表される化合物中の一種であるα,ω-ビス[3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0036】
本発明に用いられる粗ポリオルガノシロキサンの製造方法は特に限定されない。例えば、特開平11-217390号公報に記載の方法によれば、シクロトリシロキサンとジシロキサンとを酸性触媒存在下で反応させて、α,ω-ジハイドロジェンオルガノペンタシロキサンを合成し、次いで、ヒドロシリル化反応用触媒の存在下に、該α,ω-ジハイドロジェンオルガノペンタシロキサンにフェノール性化合物(例えば2-アリルフェノール、4-アリルフェノール、オイゲノール、2-プロペニルフェノール等)等を付加反応させることで、粗ポリオルガノシロキサンを得ることができる。また、特許第2662310号公報に記載の方法によれば、オクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラメチルジシロキサンとを硫酸(酸性触媒)の存在化で反応させ、得られたα,ω-ジハイドロジェンオルガノポリシロキサンを上記と同様に、ヒドロシリル化反応用触媒の存在下にフェノール性化合物等を付加反応させることで、粗ポリオルガノシロキサンを得ることができる。なお、α,ω-ジハイドロジェンオルガノポリシロキサンは、その重合条件によりその鎖長nを適宜調整して用いることもできるし、市販のα,ω-ジハイドロジェンオルガノポリシロキサンを用いてもよい。
【0037】
上記ヒドロシリル化反応用触媒としては、遷移金属系触媒が挙げられるが、中でも反応速度及び選択性の点から白金系触媒が好ましく用いられる。白金系触媒の具体例としては、塩化白金酸,塩化白金酸のアルコール溶液,白金のオレフィン錯体,白金とビニル基含有シロキサンとの錯体,白金担持シリカ,白金担持活性炭等が挙げられる。
【0038】
粗ポリオルガノシロキサンを吸着剤と接触させることにより、粗ポリオルガノシロキサン中に含まれる、上記ヒドロシリル化反応用触媒として使用された遷移金属系触媒に由来する遷移金属を、吸着剤に吸着させて除去することが好ましい。
吸着剤としては、例えば、1000Å以下の平均細孔直径を有するものを用いることができる。平均細孔直径が1000Å以下であれば、粗ポリオルガノシロキサン中の遷移金属を効率的に除去することができる。このような観点から、吸着剤の平均細孔直径は、好ましくは500Å以下、より好ましくは200Å以下、更に好ましくは150Å以下、より更に好ましくは100Å以下である。また同様の観点から、吸着剤は多孔性吸着剤であることが好ましい。
【0039】
吸着剤としては、上記の平均細孔直径を有するものであれば特に限定されないが、例えば活性白土、酸性白土、活性炭、合成ゼオライト、天然ゼオライト、活性アルミナ、シリカ、シリカ-マグネシア系吸着剤、珪藻土、セルロース等を用いることができ、活性白土、酸性白土、活性炭、合成ゼオライト、天然ゼオライト、活性アルミナ、シリカ及びシリカ-マグネシア系吸着剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0040】
粗ポリオルガノシロキサン中に含まれる遷移金属を吸着剤に吸着させた後、吸着剤は任意の分離手段によってポリオルガノシロキサンから分離することができる。ポリオルガノシロキサンから吸着剤を分離する手段としては、例えばフィルタや遠心分離等が挙げられる。フィルタを用いる場合は、メンブランフィルタ、焼結金属フィルタ、ガラス繊維フィルタ等のフィルタを用いることができるが、特にメンブランフィルタを用いることが好ましい。
遷移金属の吸着後に吸着剤をポリオルガノシロキサンから分離する観点から、吸着剤の平均粒子径は、通常1μm?4mm、好ましくは1?100μmである。
【0041】
本発明において吸着剤を使用する場合には、その使用量は特に限定されない。粗ポリオルガノシロキサン100質量部に対して、好ましくは1?30質量部、より好ましくは2?20質量部の範囲の量の多孔性吸着剤を使用することができる。
【0042】
なお、処理する粗ポリオルガノシロキサンの分子量が高いために液体状態でない場合は、吸着剤による吸着及び吸着剤の分離を行う際に、ポリオルガノシロキサンが液体状態となるような温度に加熱してもよい。または、塩化メチレンやヘキサン等の溶剤に溶かして行ってもよい。
【0043】
所望の分子量分布のポリオルガノシロキサンは、例えば、複数のポリオルガノシロキサンを配合することにより分子量分布を調節して得られる。配合は、複数のα、ω-ジハイドロジェンオルガノポリシロキサンを配合したあと、ヒドロシリル化反応用触媒の存在下にフェノール化合物等を付加反応させることで所望の分子量分布となる粗ポリオルガノシロキサンを得ることもできる。また、複数の粗ポリオルガノシロキサンを配合したのち、ヒドロシリル化反応触媒を除去させるなどの精製を行ってもよい。精製後の複数のポリオルガノシロキサンを配合してもよい。また、ポリオルガノシロキサン製造時の重合条件により適宜調整することもできる。また、既存のポリオルガノシロキサンから各種分離等の手段によって一部のみを分取する事で得ることも出来る。
【0044】
<ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体>
本発明のPC-POS共重合体を製造する方法としては、界面重合法(ホスゲン法)、ピリジン法、エステル交換法等の公知の製造方法を用いることができる。特に界面重合法の場合に、PC-POS共重合体を含む有機相と未反応物や触媒残渣等を含む水相との分離工程が容易となり、アルカリ洗浄、酸洗浄、純水洗浄による各洗浄工程におけるPC-POS共重合体を含む有機相と水相との分離が容易となり、効率よくPC-POS共重合体が得られる。
【0045】
PC-POS共重合体の製造方法に特に制限はなく、公知のPC-POS共重合体の製造方法、例えば、特開2010-241943号公報等に記載の方法を参照して製造することができる。
具体的には、予め製造された芳香族ポリカーボネートオリゴマーと、上記ポリオルガノシロキサンとを、非水溶性有機溶媒(塩化メチレン等)に溶解させ、二価フェノール系化合物(ビスフェノールA等)のアルカリ性化合物水溶液(水酸化ナトリウム水溶液等)を加え、重合触媒として第三級アミン(トリエチルアミン等)や第四級アンモニウム塩(トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等)を用い、末端停止剤(p-t-ブチルフェノール等の1価フェノール)の存在下、界面重縮合反応させることにより製造できる。また、PC-POS共重合体は、ポリオルガノシロキサンと、二価フェノールと、ホスゲン、炭酸エステル又はクロロホーメートとを共重合させることによっても製造できる。
【0046】
ポリオルガノシロキサンとしては、上述した通り、ポリスチレンを換算基準としたGPC法による測定結果から得られる微分分子量分布曲線において、縦軸をdw/dlog(M)、横軸をlog(M)(wは濃度分率、Mは分子量である)としたとき、(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、(2)上記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%?40%(但し、8.5±0.3%を除く)である、式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサンを用いる。
【0047】
ポリカーボネートオリゴマーは、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等の有機溶剤中で、二価フェノールとホスゲンやトリホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応によって製造することができる。なお、エステル交換法を用いてポリカーボネートオリゴマーを製造する際には、二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体との反応によって製造することもできる。
二価フェノールとしては、下記一般式(i)で表される二価フェノールを用いることが好ましい。
【0048】
【化10】

【0049】
式中、R^(1)、R^(2)、a、b及びXは上述した通りである。
【0050】
上記一般式(i)で表される二価フェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。これらの二価フェノールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系二価フェノールが好ましく、ビスフェノールAがより好ましい。二価フェノールとしてビスフェノールAを用いた場合、上記一般式(i)において、Xがイソプロピリデン基であり、且つa=b=0のPC-POS共重合体となる。
【0051】
ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えば、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、ジヒドロキシアリールエーテル類、ジヒドロキシジアリールスルフィド類、ジヒドロキシジアリールスルホキシド類、ジヒドロキシジアリールスルホン類、ジヒドロキシジフェニル類、ジヒドロキシジアリールフルオレン類、ジヒドロキシジアリールアダマンタン類等が挙げられる。これらの二価フェノールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類としては、例えばビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0053】
ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類としては、例えば1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン等が挙げられる。ジヒドロキシアリールエーテル類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0054】
ジヒドロキシジアリールスルフィド類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールスルホキシド類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールスルホン類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0055】
ジヒドロキシジフェニル類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールフルオレン類としては、例えば9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールアダマンタン類としては、例えば1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン等が挙げられる。
【0056】
上記以外の二価フェノールとしては、例えば4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスフェノール、10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-9-アントロン、1,5-ビス(4-ヒドロキシフェニルチオ)-2,3-ジオキサペンタン等が挙げられる。
【0057】
得られるPC-POS共重合体の分子量を調整するために、末端停止剤を使用することができる。末端停止剤としては、例えば、フェノール、p-クレゾール、p-tert-ブチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール、p-クミルフェノール、p-ノニルフェノール、m-ペンタデシルフェノール及びp-tert-アミルフェノール等の一価フェノールを挙げることができる。これら一価フェノールは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
上記界面重縮合反応後、適宜静置して水相と有機溶媒相とに分離し[分離工程]、有機溶媒相を洗浄(好ましくは塩基性水溶液、酸性水溶液、水の順に洗浄)し[洗浄工程]、得られた有機相を濃縮[濃縮工程]、及び乾燥する[乾燥工程]ことによって、PC-POS共重合体を得ることができる。
【0059】
本発明のPC-POS共重合体の粘度平均分子量は、使用される用途や製品により、適宜、目的の分子量となるように分子量調整剤等を用いることにより製造することができる。通常は、12,000?40,000、好ましくは15,000?30,000程度の範囲として製造される。粘度平均分子量が12,000未満であると成形品の強度が十分とならない。また、粘度平均分子量が40,000を超えると共重合体の粘度が大きくなるため、射出成形や押出成形時の温度を高くする必要があり、熱劣化により透明性が低下し易くなる。
また、成形温度を上げることによりPC-POS共重合体の粘度を下げることも可能であるが、その場合、成形サイクルが長くなり経済性に劣るほか、温度を上げすぎるとPC-POS共重合体の熱劣化により透明性が低下する傾向がある。
なお、粘度平均分子量(Mv)は、20℃における塩化メチレン溶液の極限粘度〔η〕を測定し、Schnellの式(〔η〕=1.23×10^(-5)×Mv^(0.83))より算出した値である。
【0060】
本発明のPC-POS共重合体には、所望に応じて、ポリカーボネート樹脂組成物に公知の種々の添加剤類が配合可能であり、これらとしては補強材、充填剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、染料、顔料、その他の難燃剤や耐衝撃性改良用のエラストマーなどが挙げられる。
【0061】
本発明のPC-POS共重合体に必要に応じて公知の添加剤類を配合し、混練することによってPC樹脂組成物とすることができる。
上記配合、混練は、通常、用いられている方法、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等を用いる方法により行うことができる。
なお、混練に際しての加熱温度は、通常、250?320℃の範囲で選ばれる。
【0062】
得られたPC樹脂組成物の成形には、従来公知の各種成形方法、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法及び発泡成形法などを用いることができるが、金型温度60℃以上、好ましくは80?120℃で射出成形することが好ましい。
この際、射出成形における樹脂温度は、通常、280?360℃程度、好ましくは280?330℃である。
【実施例】
【0063】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。なお、各例における特性値、評価結果は、以下の要領に従って求めた。
【0064】
(1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
ポリオルガノシロキサンのGPC測定は以下の条件で行った。
試験機器:TOSOH HLC 8220
測定条件:TOSOH TSK-GEL GHXL-L,G4000HXL,G2000HXL
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
カラム温度:40℃
流速:1.0ml/分
検出器:RI
注入濃度:0.2w/v%
注入量:0.1ml
検量線の作製には、東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用いた。
なお、ポリカーボネート-ポリジメチルシロキサン(PC-PDMS)中のポリオルガノシロキサンの分子量分布測定は以下の通りに行った。得られたPC-PDMS共重合体のフレーク3.9gをメチレンクロライドに10質量%溶液となるように加え、フレークを完全に溶解した。マグネチックスターラーで撹拌しながら、48wt%の水酸化ナトリウムメタノール水溶液30mlを加え、3時間撹拌した。その後、メチレンクロライドを30ml追加したのち、析出した結晶(主成分:ビスフェノールA)をひだ折りろ紙にてろ過し、結晶をメチレンクロライドで洗浄した。ろ液のメチレンクロライド溶液を15容積%の0.03mol/LのNaOH水溶液で二度洗浄した後、15容積%の0.2NのHClで洗浄後、15容積%の純水で洗浄した。得られたメチレンクロライド溶液を乾燥機にて乾燥し、得られた粘調な液体(主成分:PDMS)をGPCにて測定し、用いたポリオルガノシロキサンと同様の分子量分布であることを確認した。
【0065】
微分分子量分布曲線は、次のような方法で得ることが出来る。まず、RI検出計において検出される強度分布の時間曲線(溶出曲線)を、検量線を用いて分子量の対数値(log(M))に対する分子量分布曲線とした。次に、分布曲線の全面積を100%とした場合のlog(M)に対する積分分子量分布曲線を得た後、この積分分子量分布曲線をlog(M)で、微分することによってlog(M)に対する微分分子量分布曲線を得ることが出来る。なお、微分分子量分布曲線を得るまでの一連の操作は、通常、GPC測定装置に内蔵の解析ソフトウェアを用いて行うことが出来る。図1は、得られる微分分布曲線の一例を示すグラフであり、dw/log(M)の値が最大値のlog(M)の値及びdw/dlog(M)について、4.0≦log(M)≦4.5の範囲で積分した値を斜線部分で示したものである。
【0066】
(2)ポリジメチルシロキサン含有量
NMR測定によって、ポリジメチルシロキサンのメチル基の積分値比により算出した。
【0067】
(3)ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の粘度平均分子量
粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求め、次式(Schnell式)にて算出した。
[η]=1.23×10^(-5)×Mv^(0.83)
【0068】
<ポリカーボネートオリゴマーの製造>
製造例
5.6質量%の水酸化ナトリウム水溶液に、ビスフェノールA(BPA)(後から溶解する)に対して2000ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加えた。これにBPA濃度が13.5質量%となるようにBPAを溶解し、BPAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。このBPAの水酸化ナトリウム水溶液を40L/hr、塩化メチレンを15L/hr、及びホスゲンを4.0kg/hrの流量で内径6mm、管長30mの管型反応器に連続的に通した。管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。管型反応器を出た反応液を、後退翼を備えた内容積40Lのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入し、ここにさらにBPAの水酸化ナトリウム水溶液を2.8L/hr、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を0.07L/hr、水を17L/hr、1質量%のトリエチルアミン水溶液を0.64L/hrの流量で添加して反応を行なった。槽型反応器から溢れ出る反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取した。
このようにして得られたポリカーボネートオリゴマーは濃度321g/L、クロロホーメート基濃度0.73mol/Lであった。
【0069】
実施例1
邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた50L槽型反応器に上記の通り製造したポリカーボネートオリゴマー溶液15L、塩化メチレン8.3L、[平均鎖長n=75;dw/dlog(M)が最大値となるlog(M)が3.8;log(M)4.0?4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して(以下、実施例においてはlog(M)4.0?4.5の割合と呼ぶことがある)24.4%(平均鎖長n=34,dw/dlog(M)が最大値となるlog(M)が3.6,log(M)4.0?4.5の割合が5.4%のアリルフェノール末端変性PDMSと、平均鎖長n=92,dw/dlog(M)が最大値となるlog(M)が4.1,log(M)4.0?4.5の割合が34.5%のアリルフェノール末端変性PDMSとを質量比3:7で配合したもの)]であるアリルフェノール末端変性ポリジメチルシロキサン(PDMS)393g、及びトリエチルアミン5.8mLを仕込み、攪拌下でここに6.4質量%の水酸化ナトリウム水溶液1496gを加え、10分間ポリカーボネートオリゴマーとアリルフェノール末端変性PDMSの反応を行った。
この重合液に、p-t-ブチルフェノール(PTBP)の塩化メチレン溶液(PTBP70gを塩化メチレン0.3Lに溶解したもの)、BPAの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH648gと亜二チオン酸ナトリウム2.0gとを水9.5Lに溶解した水溶液にBPA1099gを溶解させたもの)を添加し50分間重合反応を実施した。
希釈のため塩化メチレン10Lを加え10分間攪拌した後、ポリカーボネートを含む有機相と過剰のBPA及びNaOHを含む水相に分離し、有機相を単離した。
こうして得られたPC-PDMSの塩化メチレン溶液を、その溶液に対して、15容積%の0.03mol/LNaOH水溶液、0.2N塩酸で順次洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が0.01μS/m以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。
洗浄により得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液を濃縮・粉砕し、得られたフレークを減圧下120℃で乾燥した。PDMS量は6.5質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は47.4、粘度平均分子量Mv=17,700であった。
得られたPC-PDMS共重合体のフレーク100質量部、酸化防止剤としてIRGAFOS168(商品名:ADEKA株式会社製)を0.1重量部混合し、ベント式単軸押出成形機に供給し、樹脂温度280℃にて溶融混練し、評価用ペレットサンプルを得た。この評価用ペレットサンプルを120℃で8時間乾燥させた後、射出成形機を用いて、成形樹脂温度280℃、金型温度80℃にて、射出成形して各試験を行うための試験片を作成し、以下の試験を行った。
また、PC-PDMS中のPDMSのGPC測定により、用いたPDMSと同様の分子量分布であることを確認した。
【0070】
[全光線透過率及びヘーズ値]
厚み3mmの試験片について、全光線透過率についてはISO13468に基づいて3回測定し、ヘーズ値についてはISO14782に基づいて3回測定し、それぞれその平均を求めた。結果を表1に示す。
[アイゾット衝撃強度]
射出成形機で作製した厚さ3mm(約1/8インチ)の試験片を用いて、ASTM規格D-256に準拠して、測定温度-40℃におけるノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
また、後述する実施例2?9についても各実施例で得られたPC-PDMS共重合体のフレークを用いて同様に試験片を作成し、全光線透過率、ヘーズ値及びアイゾット衝撃強度についても測定した。結果を表1に共に示す。
【0071】
実施例2
実施例1において用いたアリルフェノール末端変性PDMSを、[平均鎖長n=46;dw/dlog(M)が最大値となるときのlogMが3.7;log(M)4.0?4.5の割合が10.3%(平均鎖長n=34,dw/dlog(M)が最大値となるときのlog(M)が3.6,log(M)4.0?4.5の割合が5.4%のアリルフェノール末端変性PDMSと、平均鎖長n=92,dw/dlog(M)が最大値となるときのlog(M)が4.1,log(M)4.0?4.5の割合が34.5%のアリルフェノール末端変性PDMSとを質量比8:2で配合したもの)]のアリルフェノール末端変性PDMSに変えた以外は実施例1と同様に行った。得られたフレークのPDMS量は6.7質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は47.4、粘度平均分子量Mv=17,700であった。
【0072】
実施例3
実施例1において用いたアリルフェノール末端変性PDMSを、[平均鎖長n=57;dw/dlog(M)が最大値を取るときのlogMが3.6;log(M)4.0?4.5の割合が11.2%(平均鎖長n=34,dw/dlog(M)が最大値を取るときのlog(M)が3.6,log(M)4.0?4.5の割合が5.4%のアリルフェノール末端変性PDMSと、平均鎖長n=143,dw/dlog(M)が最大値を取るときのlog(M)が4.3,log(M)4.0?4.5の割合が42.9%のアリルフェノール末端変性PDMSとを質量比8:2で配合したもの)]のアリルフェノール末端変性PDMSに変え、PTBPを50g用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたフレークのPDMS量は6.9質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は53.3、粘度平均分子量は20,300であった。
【0073】
実施例4
実施例3において用いたPTBPを70gに変えた以外は実施例3と同様に行った。得られたフレークのPDMS量は6.8質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は47.4、粘度平均分子量は17,700であった。
【0074】
実施例5
実施例4において用いたアリルフェノール末端変性PDMSを262gに変えた以外は実施例4と同様に行った。得られたフレークのPDMS量は4.4質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は47.2、粘度平均分子量は17,600であった。
【0075】
実施例6
実施例4において用いたPDMSを、[平均鎖長n=67;dw/dlog(M)が最大値を取るときのlog(M)が3.7;log(M)4.0?4.5の割合が14.4%(平均鎖長n=34,dw/dlog(M)が最大値を取るときのlog(M)が3.6,log(M)4.0?4.5の割合が5.4%のアリルフェノール末端変性PDMSと、平均鎖長n=143,dw/dlog(M)が最大値を取るときのlog(M)が4.3,log(M)4.0?4.5の割合が42.9%のアリルフェノール末端変性PDMSとを質量比7:3で配合したもの)]のアリルフェノール末端変性PDMSに、PTBPを50gに変えた以外は実施例4と同様に行った。得られたフレークのPDMS量は6.6質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は53.3、粘度平均分子量は20,300であった。
【0076】
実施例7
実施例4において用いたアリルフェノール末端変性PDMSを、[平均鎖長n=40;dw/dlog(M)が最大値を取るときのlog(M)が3.6;log(M)4.0?4.5の割合が6.8%(平均鎖長n=34,dw/dlog(M)が最大値を取るときのlog(M)が3.6,log(M)4.0?4.5の割合が5.4%のアリルフェノール末端変性PDMSと、平均鎖長n=143,dw/dlog(M)が最大値を取るときのlog(M)が4.3,log(M)4.0?4.5の割合が42.9%のアリルフェノール末端変性PDMSとを質量比9.5:0.5で配合したもの)]のアリルフェノール末端変性PDMSに、PTBPを51gに変えた以外は実施例4と同様に行った。得られたフレークのPDMS量は6.7質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は52.0、粘度平均分子量は19,700であった。
【0077】
実施例8
実施例4において用いたアリルフェノール末端変性PDMSを、[平均鎖長n=46;dw/dlog(M)が最大値を取るときのlog(M)が3.6;log(M)4.0?4.5の割合が8.3%(平均鎖長n=34,dw/dlog(M)が最大値を取るときのlog(M)が3.6,logM4.0?4.5の割合が5.4%のアリルフェノール末端変性PDMSと、平均鎖長n=143,dw/dlog(M)が最大値を取るときのlog(M)が4.3,log(M)4.0?4.5の割合が42.9%のアリルフェノール末端変性PDMSとを質量比9:1で配合したもの)]のアリルフェノール末端変性PDMSに変えた以外は実施例4と同様に行った。得られたフレークのPDMS量は6.7質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は52.6、粘度平均分子量は20,000であった。
【0078】
実施例9
実施例8において、PTBPを70gに変えた以外は実施例8と同様に行った。得られたフレークのPDMS量は6.8質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は46.8、粘度平均分子量は17,400であった。
【0079】
実施例10
実施例1において用いたアリルフェノール末端変性PDMSを、[平均鎖長n=64;dw/dlog(M)が最大値となるlog(M)が3.8;log(M)4.0?4.5の割合が18.4%(平均鎖長n=34,dw/dlog(M)が最大値となるlog(M)が3.6,log(M)4.0?4.5の割合が5.4%のアリルフェノール末端変性PDMSと、平均鎖長n=92,dw/dlog(M)が最大値となるlog(M)が4.1,log(M)4.0?4.5の割合が34.5%のアリルフェノール末端変性PDMSとを質量比5:5で配合したもの)]のアリルフェノール末端変性PDMSに変えた以外は実施例1と同様に行った。得られたPDMS量は6.3質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は46.7、粘度平均分子量Mv=17,300であった。
【0080】
実施例11
実施例1において用いたアリルフェノール末端変性PDMSを、[平均鎖長n=69;dw/dlog(M)が最大値となるときのlogMが3.8;log(M)4.0?4.5の割合が21.3%(平均鎖長n=34,dw/dlog(M)が最大値となるときのlog(M)が3.6,log(M)4.0?4.5の割合が5.4%のアリルフェノール末端変性PDMSと、平均鎖長n=92,dw/dlog(M)が最大値となるときのlog(M)が4.1,log(M)4.0?4.5の割合が34.5%のアリルフェノール末端変性PDMSとを質量比4:6で配合したもの)]のアリルフェノール末端変性PDMSに変えた以外は実施例1と同様に行った。得られたフレークのPDMS量は6.1質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は46.5、粘度平均分子量Mv=17,300であった。
【0081】
実施例12
実施例1において用いたアリルフェノール末端変性PDMSを、[平均鎖長n=64;dw/dlog(M)が最大値となるときのlogMが3.8;log(M)4.0?4.5の割合が21.2%]のアリルフェノール末端変性PDMSに変えた以外は実施例1と同様に行った。得られたフレークのPDMS量は6.3質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は46.5、粘度平均分子量Mv=17,300であった。
【0082】
実施例13
実施例10において、ポリカーボネートオリゴマー溶液とともに仕込む塩化メチレンの量を12.1Lとした他は、実施例10と同様に行った。得られたフレークのPDMS量は6.2質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は46.3、粘度平均分子量Mv=17,200であった。
【0083】
実施例14
実施例11において、ポリカーボネートオリゴマー溶液とともに仕込む塩化メチレンの量を14.2Lとした他は、実施例11と同様に行った。得られたフレークのPDMS量は5.8質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は48.3、粘度平均分子量Mv=18,000であった。
【0084】
実施例15
実施例12において、ポリカーボネートオリゴマー溶液とともに仕込む塩化メチレンの量を14.5Lとした他は、実施例12と同様に行った。得られたフレークのPDMS量は6.4質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は46.1、粘度平均分子量Mv=17,100であった。
【0085】
【表1】

【表2】

【0086】
比較例1
実施例1において用いたアリルフェノール末端変性PDMSを、平均鎖長n=88,dw/dlog(M)が最大値を取るときのlog(M)が4.1,log(M)4.0?4.5の割合が34.5%のアリルフェノール末端変性PDMSに変えた以外は実施例1と同様に行った。得られたフレークのPDMS量は6.0質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は45.3、粘度平均分子量は16,700であった。また、得られたPC-PDMS共重合体のフレークを用いて、実施例1と同様に試験片を作成し、全光線透過度、ヘーズ値及びアイゾット衝撃度を測定した。結果を表2に共に示す。また、後述する比較例2?4についても各比較例で得られたPC-PDMS共重合体のフレークを用いて実施例1と同様に試験片を作成し、全光線透過度、ヘーズ値及びアイゾット衝撃度を測定した。結果を表2に共に示す。
【0087】
比較例2
比較例1において用いたアリルフェノール末端変性PDMSを、平均鎖長n=40,dw/dlog(M)が最大値を取るときのlog(M)が3.6,log(M)4.0?4.5の割合が5.4%のアリルフェノール末端変性PDMSに変えた以外は比較例1と同様に行った。得られたフレークのPDMS量は5.9質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は47.3、粘度平均分子量は17,500であった。
【0088】
比較例3
比較例1において用いたアリルフェノール末端変性PDMSを、[平均鎖長n=46,dw/dlog(M)が最大値を取るときのlog(M)が3.3,log(M)4.0?4.5の割合が6.5%(平均鎖長n=22,dw/dlog(M)が最大値を取るときのlog(M)が4.26,log(M)4.0?4.5の割合が0.32%のアリルフェノール末端変性PDMSと、平均鎖長n=143,dw/dlog(M)が最大値を取るときのlog(M)が3.3,log(M)4.0?4.5の割合が42.9%のアリルフェノール末端変性PDMSとを質量比8:2で配合したもの)]のアリルフェノール末端変性PDMSに変えた以外は比較例1と同様に行った。得られたフレークのPDMS量は6.6質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は47.4、粘度平均分子量は17,600であった。
【0089】
比較例4
比較例1で得られたPC-PDMS共重合体と比較例2で得られたPC-PDMS共重合体とを質量比7:3で配合したものを用いた。このPC-PDMS共重合体のフレーク100質量部に、酸化防止剤としてIRGAFOS168(商品名、(株)ADEKA製)を0.1重量部混合し、ベント式単軸押出成形機に供給し、樹脂温度280℃にて溶融混練し、評価用ペレットサンプルを得た。この評価用ペレットサンプルを120℃で8時間乾燥させた後、射出成形機を用いて、成形樹脂温度280℃、金型温度80℃にて、射出成形して各試験を行うための試験片を作成し、実施例1と同様に全光線透過度、ヘーズ値及びアイゾット衝撃度を測定した。結果を表2に共に示す。
【0090】
比較例5
実施例1において用いたアリルフェノール末端変性PDMSを、平均鎖長n=153,dw/dlog(M)が最大値となるときのlog(M)が4.3,log(M)4.0?4.5の割合が42.9%のアリルフェノール末端変性PDMS151gに変えた以外は実施例1と同様に行った。得られたフレークのPDMS量は2.5質量%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は47.3、粘度平均分子量は17,500であった。
【0091】
【表3】

【0092】
表から明らかなように、PDMSの分子量分布において、log(M)が4.0?4.5の成分がPDMS全体の6%以上存在するようなPDMSを用いることで、低温での耐衝撃性が発現し、濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分した(dw/dlog(M))が最大となるときのlog(M)が4以下のPDMSを用いることで、成形品の透明性が向上する。
このような効果は、POS原料同士を配合することで得られる特別の効果である。PC-POS共重合体同士を配合することにより上記POSの分子量分布とした場合には、本発明の効果である低温での耐衝撃性と透明性の両立を図ることは出来ない。これはPOS原料同士をポリカーボネートとの重合に先立って配合することにより、PC-POS共重合体同士を配合した場合と比べて、透明性を低下させるシロキサンドメインの形成を抑えることができるため、または形成されるシロキサンドメインのサイズを低減できるためであると考えられる。
また、ポリオルガノシロキサン共重合体は水酸化ナトリウムのメタノール溶液のような強アルカリ性の水溶液を用いることによって、ポリオルガノシロキサンのみ取り出すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、低分子量及び高分子量のポリオルガノシロキサンの両方を含んだポリオルガノシロキサンを用いる事で、ポリカーボネートと低分子量ポリオルガノシロキサンとの共重合体と同じレベルの透明性を維持しつつ、ポリカーボネートと高分子量ポリオルガノシロキサンとの共重合体に匹敵する低温耐衝撃性を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を得ることが出来る。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、
前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)のポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化1】

[式中、R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基又は炭素数1?6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1?8のアルキレン基、炭素数2?8のアルキリデン基、炭素数5?15のシクロアルキレン基、炭素数5?15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7?15のアリールアルキレン基、炭素数7?15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-O-又は-CO-を示す。R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0?4の整数を示す。]
【請求項2】
前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)の平均鎖長が20?85である、請求項1に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)の含有量が、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の0.5質量%?20.0質量%である、請求項1または2に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項4】
粘度平均分子量が12000?40000である、請求項1?3のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項5】
前記一般式(I)おけるaおよびbが0であり、Xが単結合または炭素数1?8のアルキレン基である、請求項1?4のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項6】
前記一般式(I)におけるaおよびbが0であり、Xが炭素数3のアルキレン基である、請求項1?5のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項7】
前記一般式(II)におけるR^(3)およびR^(4)がメチル基である、請求項1?6のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項8】
請求項1?7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を成形してなる成形体。
【請求項9】
請求項1?7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法であって、下記一般式(ii)または(iii)
【化2】

[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR^(8)、-COOH又は-SHを示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
で表されるポリオルガノシロキサンを原料として用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。
前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。
【請求項10】
前記一般式(ii)または(iii)における平均鎖長nが20?85である、請求項9に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。
【請求項11】
前記一般式(ii)または(iii)におけるR^(3)およびR^(4)がメチル基である、請求項9または10に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。
【請求項12】
下記一般式(ii)または(iii)で表され、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリオルガノシロキサン。
【化3】

[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR^(8)、-COOH又は-SHを示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。
【請求項13】
前記一般式(ii)または(iii)における平均鎖長nが20?85である、請求項12に記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項14】
下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、前記共重合体の原料として下記一般式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサンを用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体:
前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。
【化4】

[式中、R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基又は炭素数1?6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1?8のアルキレン基、炭素数2?8のアルキリデン基、炭素数5?15のシクロアルキレン基、炭素数5?15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7?15のアリールアルキレン基、炭素数7?15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-O-又は-CO-を示す。R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0?4の整数を示す。]
【化5】

[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR^(8)、-COOH又は-SHを示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
【請求項15】
下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法であって、下記一般式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサンを原料として用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法:
前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。
【化6】

[式中、R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基又は炭素数1?6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1?8のアルキレン基、炭素数2?8のアルキリデン基、炭素数5?15のシクロアルキレン基、炭素数5?15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7?15のアリールアルキレン基、炭素数7?15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-O-又は-CO-を示す。R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0?4の整数を示す。]
【化7】

[式(ii)及び(iii)中、R^(3)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又は炭素数6?12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R^(7)OH、-R^(7)COOH、-R^(7)NH_(2)、-R^(7)NHR^(8)、-COOH又は-SHを示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R^(8)はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R^(7)O-、-R^(7)COO-、-R^(7)NH-、-COO-又は-S-を示し、R^(7)は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
【請求項16】
ISO 13468に基づいて測定した、厚み3mm試験片の全光線透過率が80.20以上である、請求項1?7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項17】
ISO 14782に基づいて測定した、厚み3mm試験片のヘーズ値が6.2以下である、請求項1?7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項18】
ASTM規格D-256に準拠して、-40℃において測定した厚み3mm試験片のノッチ付きアイゾット衝撃強度が46KJ/m^(2)以上である、請求項1?7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-27 
出願番号 特願2015-508914(P2015-508914)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C08G)
P 1 651・ 536- YAA (C08G)
P 1 651・ 121- YAA (C08G)
P 1 651・ 537- YAA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三原 健治  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 大▲わき▼ 弘子
井上 猛
登録日 2018-12-28 
登録番号 特許第6457384号(P6457384)
権利者 出光興産株式会社
発明の名称 ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体及びその製造方法  
代理人 大谷 保  
代理人 大谷 保  

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