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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01J
管理番号 1362617
審判番号 不服2019-3151  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-06 
確定日 2020-05-19 
事件の表示 特願2016-516216「精製用リアクター及び/又は石油化学リアクターに固体粒子を充填するディスペンス装置への固体粒子の供給」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月 4日国際公開、WO2014/191652、平成28年 8月18日国内公表、特表2016-524527〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)5月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年(平成25年)5月30日、フランス(FR))を国際出願日とする出願であって、平成30年2月8日付けで拒絶理由が通知され、同年7月9日に手続補正がされるとともに意見書が提出され、同年10月30日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成31年3月6日に拒絶査定不服の審判請求がされ、同時に、手続補正がされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?8に係る発明は、平成31年3月6日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「精製用リアクター及び/又は石油化学リアクターに固体粒子を充填するためのディスペンス装置に固体粒子を供給する供給システムを制御する方法であって、
ディスペンス装置が、固体粒子の充填を均質化し及び/又は均一化するように構成され、
第一に固体粒子のリザーブに接続され、第二にディスペンス装置に接続され、概して上部から下部へ固体粒子を内側に流すことができる可撓性スリーブを、供給システムが含み、
可撓性スリーブの有効断面積を減じるように、可撓性スリーブの壁部を移動させるように構成された、可撓性スリーブの中を流れる固体粒子をブロックするブロック装置の遠隔的な作動を命令するステップ(417)を含むことを特徴とする、供給システムの制御方法。」

3.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の平成31年3月6日付けの手続補正前の請求項1?10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1?5に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。なお、本願発明は、補正前の請求項9に係る発明であり、平成31年3月6日付けの手続補正によって補正はなされていない。

(1)特開平10-66858号公報(以下、「引用文献1」という。)
(2)実願昭52-155709号(実開昭54-80132号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)
(3)米国特許第5105981号明細書
(4)特開昭50-21326号公報
(5)実願平1-143109号(実開平3-85768号)のマイクロフィルム

4.引用文献の記載(下線は当審が付与した。)
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、「触媒充填装置および方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
(引1ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、触媒充填装置および触媒充填方法に関し、石油精製及び石油化学プラント等で使用される反応塔の内部に粒状の触媒を充填する際に利用できる。」
(引1イ)「【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。図1は、前記実施形態に係る触媒充填方法および装置の適用状況を示す概略図である。この図1において、反応塔10は、内部に触媒11が充填される有底円筒状の大型反応塔であり、その上面中央には開口12が設けられ、底部は基礎13に固定支持されている。反応塔10の上部には図示しない架台が組まれ、この架台内には本発明に基づく触媒充填装置20の上部構造が配置されている。
【0011】触媒充填装置20は、反応塔10内に吊り下げ導入されて触媒11の回転散布を行う触媒放出器30と、この触媒放出器30を吊り下げるチェン等の吊り具24およびこの吊り具24を巻き上げて触媒放出器30を昇降させる吊り具巻き上げ機構23を有する吊り下げ機構22と、散布すべき触媒11を供給するホッパ25と、このホッパ25からの触媒11を触媒放出器30に供給するホース28を巻き上げるホース巻き上げ機構50とを備えている。この際、ホース28は、例えば長手方向に沿って複数枚に分割された帯状のものを、図示しないジッパー(ナイロンファスナー)で互いに連結されてホース状としたものである。そして、分割されたホース28は、各ホース巻き上げ機構50に巻き上げられる構造となっている。また、触媒放出器30は、反応塔10内に配置された触媒放出器30の分散ロータ機構40を回転駆動する正、逆両方向へ回転可能な回転駆動機構35を備えており、触媒充填装置20は、この回転駆動機構35の回転数を変動制御する制御手段70を備えている。
【0012】触媒放出器30は、回転することにより、ホース28から供給された触媒11を所定の初速度で放出して散布するものである。また、触媒放出器30は、反応塔10の径方向に延びる三本の保持アーム36を備え、その中心を反応塔10の中心に保持されている。各保持アーム36は、パンタグラフ式の伸縮機構を有し、その先端部が反応塔10の内面に当接可能かつローラにより上下方向に転動自在であり、触媒放出器30は保持アーム36の伸長により反応塔10の中心に保持され、その状態で自由に昇降可能である。触媒放出器30の触媒入口には、すなわち、ホース28の下端には、触媒11の通路を開閉する開閉機構であるボールバルブ37が設けられている。このボールバルブ37は、図示しないアクチュエータやバルブポジショナを有する遠隔操作可能なものであり、制御手段70からの制御信号により、任意の開度に設定可能となっており、これにより、触媒11の流通量が調節されるようになっている。
【0013】制御手段70は、外部入力される指令や充填条件設定等に基づいて吊り下げ機構22や触媒放出器30の回転駆動機構35の回転速度の制御を行うことにより、触媒放出器30の反応塔10内への導入や取り出しおよび触媒11の充填作業が所望の状態で行われるように制御するものである。このため、制御手段70は、コンピュータ等から構成され、図示しないが、触媒11の充填条件等の入力用のキーボードおよび各種表示を行うディスプレイ等からなる操作部と、操作部での設定条件に応じて触媒放出器30から放出される触媒11の量および放出時の回転数等を所定の式により演算するとともに制御する放出制御部と、操作部での設定条件に応じて吊り具巻き上げ機構23を制御して触媒放出器30の吊り下げ高さを調整するための吊り下げ高さ制御部等を備えている。
【0014】・・・(略)・・・
【0015】この回転数の最大値Nmax は、触媒放出器30の分散ロータ41を当該最大回転数Nmax で回転させたとき、最上段の分散ロータ41から放出される触媒11が丁度、反応塔10の内壁の位置に着弾する値とされる。一方、最小値Nmin は、分散ロータ41が最大回転数Nmax で回転されたとき、上から2段目の分散ロータ41から放出される触媒11が着弾する位置に、最上段の分散ロータ41から放出される触媒11が着弾するような回転数となっている。すなわち、回転数Nmin の時の遠心力で最上段の分散ロータ41から放出される触媒11の着弾位置と、回転数Nmax の時の遠心力で2段目の分散ロータ41から放出される触媒11の着弾位置とが等しくなるように設定されている。また、3段目以降の各分散ロータ41の直径は、上述の考え方と同様に、互いに上下に隣接する各分散ロータ41について、触媒放出器30の最小回転数Nmin での運転時における上段の分散ロータ41から放出される触媒11の着弾位置と、最大回転数Nmax での運転時における下段の分散ロータ41から放出される触媒11の着弾位置とがそれぞれほぼ一致するような寸法に設定されている。これにより、触媒放出器30から放出された触媒11は、堆積表面が均一な高さに(平らに)となって堆積するようになっている。
【0016】・・・(略)・・・
【0017】張力制御手段71は、ローラ52の回転軸52A に取付けられた荷重センサ55により、ホース28に加わる荷重を検出し、この荷重に応じてエアモータ54の出力トルクを調節するものである。例えば、ホース28内を通る触媒11の流通量が増大すると、ホース28に加わる荷重も増大し、この増大した荷重によりドラム51からホース28がさらに繰り出され、繰り出されたホース28の全長が触媒放出器30までの距離よりも長くなり、そのままでは、ホース28が途中で折れ曲がってしまうこととなる。・・・(略)・・・
【0018】このような本実施形態においては、次のような手順で反応塔10内に触媒11の散布を行う。まず、触媒放出器30を反応塔10内に入れるとともに、ホッパ25の近傍に触媒放出器30を配置する。この状態で、図3に示されるように、ボールバルブ37を閉じておき、ホッパ25に注入しておいた触媒11をホース28の内部へ導入し、ボールバルブ37まで到達させた後、触媒放出器30を徐々に(例えば、1m/分程度の降下速度で)降下させる。ここで、図4に示されるように、触媒放出器30が降下し、ホース28が繰り出されて行く途中においても、ホッパ25から触媒11を徐々にホース28の内部へ導入させ、繰り出されたホース28の全長に渡り触媒11が充満した状態を維持する。そして、触媒放出器30が、通常の触媒放出位置よりも低く、触媒11が破砕されない程度の落下距離となる触媒放出位置Aまで降下したら、図5に示されるように、触媒放出器30を作動させる。この後、触媒放出器30が所定の回転数に到達したら、ボールバルブ37を開け、触媒放出器30からの触媒11の散布を開始し、触媒11を反応塔10の内部に多重同心円状に散布する。
【0019】ここで、予め操作部で所望の充填密度に応じた散布高さを設定しておけば、適切な散布高さが自動的に維持され、この散布高さとなるように触媒放出器30の吊り下げ高さが調整される。すなわち、散布が進むと、反応塔10内の触媒11の表面位置が上昇するので、この上昇量が所定量を超える毎に、吊り具巻き上げ機構23により触媒放出器30を上昇させ、設定された散布高さが維持されるように制御する。このような所定高さからの触媒散布および触媒放出器30の高さ調整を繰り返し、触媒放出器30が反応塔10内の上昇限度に達したら、触媒11の表面上昇による散布高さの減少に応じて触媒散布の回転数を高めて散布領域を確保し、触媒11の表面が所定高さに達したら散布作業を完了する。なお、散布作業時に、反応塔10内に、配管、その他の障害物がある場合には、回転駆動機構35のモータを所定のインターバルで正転、逆転にきりかえる。これにより、障害物の周囲にも均等に触媒11が散布されることとなる。」
(引1ウ)「【0029】なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成する範囲において、以下に示すような変形等をも含むものである。すなわち、触媒放出器30、特に分散ロータ機構40の段数は、前記実施形態の段数に限らず、反応塔の形状、触媒の種類や粒度、散布回転数や散布量などの他の条件に応じて適宜決定すればよい。
【0030】さらに、開閉機構としては、ボールバルブに限らず、粉体プロセスで用いられるスライドバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブ、ダイアフラムバルブおよびバタフライバルブ等の他の形式のバルブでもよく、さらに、触媒の通路内に設けられたダンパや、図6(A),(B)に示されるように、触媒11の通路28A 内に設けられるとともに、圧搾空気等により傘のように開閉可能とされた円錐状部材37A でもよく、実施にあたり、その形状や構造は適宜選択できる。また、開閉機構の取付位置としては、触媒放出器の触媒入口に限らず、触媒放出器の内部、あるいは、触媒放出器の触媒出口でもよい。触媒放出器の触媒出口に設ける場合には、例えば、分散ロータの周縁に回動可能となったストッパを設け、触媒が流通する通路の一部である触媒放出器の触媒出口を前述のストッパで開閉すればよい。なお、本発明は、触媒放出機構が反応塔の内部を昇降可能に設けられた昇降式の触媒充填装置に限らず、反応塔の所定高さ位置に触媒放出機構が固定される固定式の触媒充填装置にも適用できる。」
(引1エ)

(引1オ)

(引1カ)


(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、「ピンチバルブ」(考案の名称)について、次の記載がある。
(引2ア)「本考案は液体,粉粒体等の流体用の複数本の流路の途中とか流体用タンクの流出部に装着し,上記複数本の流路を同時に開閉するピンチバルブに関するものである。」(明細書1頁11?14行)
(引2イ)「本考案はこのような従来のピンチバルブの欠点を解消しようとするもので,先ず流路の途中に固定する場合の実施例を第一図及び第二図に基いて説明すると,金属製,合成樹脂等の中空のバルブケーシング1の内側面に内面が孤状の左右一対の突縁2.2を設け,この突縁2.2に対応させてバルブケーシング1内に左右一対の孤状の可動片3.3の一端を枢着し,他端はスプリング4により互に連結すると共にこの可動片3.3を突縁2.2に対し進退させる回動操作部材Aを連係している。この回動操作部材Aはバルブケーシング1の側壁を貫通したカム軸5の外端にハンドル6を,内端にカム板7を設け,該カム板7の左右両外側を前記可動片3.3の他端に対応させたものである。また突縁2.2と可動片3.3との間にはそれぞれバルブケーシング1を縦に貫通した弾性パイプ製の流路8.8を挿入している。
上記実施例に於て流路7.7に異種の流体を通過させるに際し,回動操作部材Aのハンドル6を操作してカム板7を鎖線で示す状態に回動させるときは,左右一対の可動片3.3は流路8.8の弾力及びスプリング4の復帰力により鎖線の位置まで後退して流路8.8を開口するので流体は流路8.8内を通過する。またこの開口状態に於てハンドル6を操作してカム板7を実線の位置まで回動させるときは,可動片3.3はそれぞれ実線の位置まで前進して流路8.8を閉鎖するので流体の流れは停止するのである。
尚上記実施例に於てはハンドル6によりカム板7を回動させる回動操作部材Aを示したが,カム板7をモータ等により電気的に回動させる回動操作部材Aでもよく,また流路8.8はバルブケーシング1内のみを弾性パイプ製とし,バルブケーシング1外を硬質のパイプ製としてもよい。更にまた突縁2.2と可動片3.3の間にそれぞれ複数本の流路8を貫通させることも可能である。」(明細書2頁4行?4頁1行)
(引2ウ)

(引2エ)


(3)周知文献
本願の優先日前に国内において頒布された実願昭61-36931号(実開昭62-149678号)のマイクロフィルム(以下、「周知文献」という。)には、「粉粒物の取り出しゲート」(考案の名称)について、次の記載がある。
(周ア)「〔産業上の利用分野〕
本考案は、粉粒物を貯留しているホッパーやタンク等の、内容物取出部に設けるゲートに関する。」(明細書1頁20行?2頁2行)
(周イ)「〔問題点を解決するための手段〕
本考案は、粉粒物を貯留したホッパー、タンク等の貯留槽の取り出しゲートであって、貯留槽の取出部7に接合された柔軟な材料で作られたスリーブ5、スリーブ5に当接しあるいは隙間を置いて外周に同心円状に配した上部環状体1及び下部環状体2、上部環状体及び下部環状体の円周に沿って等間隔に軸方向に配され、その両端は上部環状体及び下部環状体に固定され、且引張り伸びの小さい材質で作られた、上部環状体及び下部環状体を結合する同じ長さよりなる複数本数のロープ群3、ロープ群3を常に引張り緊張状態に保持するための緊張力付加装置4、上部環状体又は下部環状体の何れかを中心を軸として回転させる回転装置6よりなる粉粒物の取り出しゲートである。
以下、実施例について本考案を説明する。第1図Aは本考案のゲートの全体を示す縦断面図で第1図Bは矢視イ-イ図である。以下第1図によって本考案を更に詳しく説明する。スリーブ5は貯留槽の取出部7に接合されるが、接合部は粉粒物が隙間から噴き出さないように密に接合する。スリーブ5の材質は布、ナイロン、ゴム等の柔軟な材料で作られる。ロープ3の材質はワイヤロープ等の引張応力を受けても伸びが小さい柔軟なものが適当であり、その本数は粉粒物の性質やスリーブ5の材質によっても変るが5?20本が通常は望ましい。緊張力付加装置は上部環状態につけてもよく、又下部環状態に付けてもよい。又緊張力はスプリングによる方法や重錘により与えることができる。回転装置6は人力によるものでもよいが、外部動力によって同転させるのも適当である。
〔作用〕
本考案の作用を説明する。第2図は本考案のゲートの作動の状態を示す図で、図中Aはゲートを開いた状態、Bは上部環状体を回転させてスリーブ5をロープ3で絞り、開孔部を小さくした状態、Cは上部環状体を更に回転しスリーブ5の開孔部を更に絞りゲートを閉めた状態を示している。尚図中A-2,B-2,C-2は、A,B,Cの状態のスリーブのロ-ロ矢視図である。第2図のゲートで下部環状体2はロープ3を常に緊張状態に保ち軸方向に上下動は可能で、軸を中心とした円周回転動は行えないように保持されているが、上部環状体を回転させると、ロープ群が形成する面はB-1に示した鼓状となり、従ってスリーブもロープ群が形成する形状に拘束され鼓状となる。この際ロープ群には緊張力付加装置により、常に引張り力が作用しているため、各ロープは斜に真直ぐに張られた状態となり、従ってスリーブは粉粒物の移動がスムーズな円錐面を形成して開孔部が絞られ、竹の節状に絞られる事はない。又粉粒物による絞り部への圧力が充分な際は、開孔部の広さは、上部環状体の回転量に応じた大きさに常に制御され、従って粉粒物の通過量を定量的に調節できる。上部環状体を更に回転するとC図の如くスリーブの開化部は閉塞の状態となるが、この際も緊張力付加装置により閉塞は完全に行うことができ、ゆるむ事はない。尚バルブの開閉の調節は上部環状体の回転角の制御によっても行えるが、開閉の状況に併せて下部環状体軸方向の移動量をリミット機構等を設けて制御すると良い。」(明細書4頁13行?7頁1.行)
(周ウ)

(周エ)


4.引用文献1に記載された発明(引用発明)
(1)引用文献1には、次のア?ケの事項が記載されていると認められる。
ア 石油精製及び石油化学プラント等で使用される反応塔の内部に粒状の触媒を充填する触媒充填装置による触媒充填方法が記載されている((引1ア)【0001】)。
イ 図1において、触媒充填装置20は、反応塔10内に吊り下げ導入されて触媒11の回転散布を行う触媒放出器30と、散布すべき触媒11を供給するホッパ25と、このホッパ25からの触媒11を触媒放出器30に供給するホース28とを備えている((引1イ)【0011】)。
ウ ホース28は、長手方向に沿って複数枚に分割された帯状のものを、ジッパー(ナイロンファスナー)で互いに連結されてホース状としたものである((引1イ)【0011】)。
エ 触媒放出器30は、回転することにより、ホース28から供給された触媒11を所定の初速度で放出して散布するものである((引1イ)【0012】)。
オ 触媒放出器30の触媒入口には、すなわち、ホース28の下端には、触媒11の通路を開閉する開閉機構であるボールバルブ37が設けられ、このボールバルブ37は、遠隔操作可能なものであり、制御手段70からの制御信号により、触媒11の流通量が調節されるようになっている。((引1イ)【0012】)
カ 制御手段70は、外部入力される指令や充填条件設定等に基づいて、触媒放出器30の反応塔10内への導入や取り出しおよび触媒11の充填作業が所望の状態で行われるように制御するものであり、制御手段70は、コンピュータ等から構成され、操作部での設定条件に応じて触媒放出器30から放出される触媒11の量を制御する放出制御部を備えている((引1イ)【0013】)。
キ 触媒放出器30から放出された触媒11は、堆積表面が均一な高さに(平らに)となって堆積するようになっている((引1イ)【0015】)。
ク 触媒11の散布は、まず、ボールバルブ37を閉じておき、触媒放出器30が、触媒放出位置Aまで降下したら、触媒放出器30を作動させ、ボールバルブ37を開け、触媒放出器30からの触媒11の散布を開始し、触媒11を反応塔10の内部に多重同心円状に散布する((引1イ)【0018】)。
ケ 触媒11の表面が所定高さに達したら散布作業を完了する((引1イ)【0019】)。

(2)上記(1)ア?ケから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「石油精製及び石油化学プラント等で使用される反応塔の内部に粒状の触媒を充填する触媒充填装置20による触媒充填方法であって、
触媒充填装置20は、反応塔10内に吊り下げ導入されて触媒11の回転散布を行う触媒放出器30と、散布すべき触媒11を供給するホッパ25と、このホッパ25からの触媒11を触媒放出器30に供給するホース28とを備え、
ホース28は、長手方向に沿って複数枚に分割された帯状のものを、ジッパー(ナイロンファスナー)で互いに連結されてホース状としたものであり、
触媒放出器30は、回転することにより、ホース28から供給された触媒11を所定の初速度で放出して散布するものであり、
触媒放出器30の触媒入口には、すなわち、ホース28の下端には、触媒11の通路を開閉する開閉機構であるボールバルブ37が設けられ、このボールバルブ37は、遠隔操作可能なものであり、制御手段70からの制御信号により、触媒11の流通量が調節されるようになっていて、
制御手段70は、外部入力される指令や充填条件設定等に基づいて、触媒放出器30の反応塔10内への導入や取り出しおよび触媒11の充填作業が所望の状態で行われるように制御するものであり、
制御手段70は、コンピュータ等から構成され、触媒放出器30から放出される触媒11の量を制御する放出制御部を備えており、
触媒放出器30から放出された触媒11は、堆積表面が均一な高さに(平らに)となって堆積するようになっていて、
触媒11の散布は、まず、ボールバルブ37を閉じておき、触媒放出器30が、触媒放出位置Aまで降下したら、触媒放出器30を作動させ、ボールバルブ37を開け、触媒放出器30からの触媒11の散布を開始し、触媒11を反応塔10の内部に多重同心円状に散布し、
触媒11の表面が所定高さに達したら散布作業を完了するものである触媒充填方法」

5.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「石油精製及び石油化学プラント等で使用される反応塔」、「粒状の触媒」及び「散布すべき触媒11を供給するホッパ25」は、本願発明の「精製用リアクター及び/又は石油化学リアクター」、「固体粒子」及び「固体粒子のリザーブ」にそれぞれ相当する。
イ 引用発明の「ホース28」は、「長手方向に沿って複数枚に分割された帯状のものを、ジッパー(ナイロンファスナー)で互いに連結されてホース状としたもの」であり、引用文献1には、「ホース28が途中で折れ曲がってしまうこととなる」(3.(1)(引1イ)【0018】)と記載されていることから、可撓性であることは明らかである。
そして、前記「ホース28」は、「このホッパ25からの触媒11を触媒放出器30に供給するホース28」であるから、「ホッパ25」に接続するものであって、上部から下部へ触媒11をその内側に流すことができるものであることは明らかである。
また、引用発明では、「触媒放出器30は、回転することにより、ホース28から供給された触媒11を所定の初速度で放出して散布するもの」であるから、前記「ホース28」は「触媒放出器30」に接続するものであることも明らかである。
そうすると、引用発明の「ホース28」は、本願発明の「第一に固体粒子のリザーブに接続され、第二にディスペンス装置に接続され、概して上部から下部へ固体粒子を内側に流すことができる可撓性スリーブ」に相当する。
また、引用発明は「ホース28の下端には、触媒11の通路を開閉する開閉機構であるボールバルブ37が設けられ」たものであるから、引用発明の「ボールバルブ37」は、本願発明の「可撓性スリーブの中を流れる固体粒子をブロックするブロック装置」に相当する。
ウ 引用発明の「触媒放出器30」は、「回転することにより、ホース28から供給された触媒11を所定の初速度で放出して散布するものであり」、「触媒放出器30から放出された触媒11は、堆積表面が均一な高さに(平らに)となって堆積するようになってい」ることから、本願発明の「固体粒子の充填を均質化し及び/又は均一化するように構成され」た「ディスペンス装置」に相当する。
エ 引用発明の「触媒充填装置20」は、ホッパ25からの触媒11を触媒放出器30に供給するホース28、コンピュータ等から構成される制御手段70、及び、触媒放出器30から放出される触媒11の量を調節する放出制御部を備えた、制御手段70からの制御信号により遠隔操作される、ホース28の下端に設けられた触媒11の通路を開閉する開閉機構であるボールバルブ37を有しており、このうち、「ホッパ25」、「ホース28」、「放出制御部」、「コンピュータ等から構成される制御手段70」及び「ボールバルブ37」からなるものは、本願発明の「ディスペンス装置に固体粒子を供給する供給システム」に相当する。
オ 引用発明の「ボールバルブ37は、遠隔操作可能なものであり、制御手段70からの制御信号により、触媒11の流通量が調節されるようになってい」る構成は、本願発明1の「ブロック装置の遠隔的な作動を命令する」構成に相当する。
また、引用発明の「触媒充填方法」では、「ボールバルブ37」が遠隔操作されることを含むことから、本願発明の「ディスペンス装置に固体粒子を供給する供給システムの制御方法」に相当する。
カ 上記ア?オより、本願発明と引用発明とは、
「精製用リアクター及び/又は石油化学リアクターに固体粒子を充填するためのディスペンス装置に固体粒子を供給する供給システムを制御する方法であって、
ディスペンス装置が、固体粒子の充填を均質化し及び/又は均一化するように構成され、
第一に固体粒子のリザーブに接続され、第二にディスペンス装置に接続され、概して上部から下部へ固体粒子を内側に流すことができる可撓性スリーブを、供給システムが含み、
可撓性スリーブの中を流れる固体粒子をブロックするブロック装置の遠隔的な作動を命令することを含む供給システムの制御方法。」である点で一致し、次の相違点1、2で相違が認められる。

(相違点1)
ブロック装置について、本願発明は「可撓性スリーブの有効断面積を減じるように、可撓性スリーブの壁部を移動させるように構成された」ものであるのに対し、引用発明は「ボールバルブ37」である点。
(相違点2)
「ブロック装置の遠隔的な作動を命令すること」について、本願発明は「ステップ(417)を含む」のに対し、引用発明においては、「ボールバルブ37」の「遠隔操作」において、当該ステップを含むかどうかは不明な点。

(2)判断
相違点1、2について検討する。
(相違点1について)
引用文献1には、「開閉機構としては、ボールバルブに限らず、粉体プロセスで用いられるスライドバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブ、ダイアフラムバルブおよびバタフライバルブ等の他の形式のバルブでもよく」(3.(1)(引1ウ)【0030】)と記載されており、「ボールバルブ37」以外にも、粉体プロセスで用いられるバルブであれば使用可能である旨記載されている。

一方、引用文献2には、粉粒体等の流体用の流路の途中に装着したピンチバルブが、突縁2.2と可動片3.3とを備え、その間に弾性パイプ製の流路8.8を挿入して、左右一対の可動片3.3によって、弾性パイプ製の流路8.8を開口したり閉鎖したりすることが記載されている。なお、可動片によって弾性パイプ製の流路を開口したり閉鎖したりするもの自体は、従来より、ピンチバルブとして当業者にとってよく知られている。
また、周知文献には、粉粒物を貯留したホッパー、タンク等の貯留槽の取り出しゲートについて、貯留槽の取出部7に接合された柔軟な材料で作られたスリーブ5を、ロープ3で絞ることで、ゲートを開いたり、閉めたりすることが記載されている。
そうすると、「粉体プロセスで用いられるバルブ」として、「可撓性スリーブの有効断面積を減じるように、可撓性スリーブの壁部を移動させるように構成された」ものは従来より周知であるといえる。

そして、引用発明の「ボールバルブ37」は「ホース28の下端に設けられた開閉機構」であり、「開閉機構」としての機能を備えたものであれば、どのようなものであっても採用することができることは明らかであり、上記の従来より周知の技術を適用することを妨げる特段の事情も窺えないことから、引用発明の「ボールバルブ37」に替えて、上記周知技術を適用することは、当業者にとって容易に想到し得たことと認められる。

また、引用発明において、「ボールバルブ37」と、上記の従来より周知の技術とは、開閉手段として等価なものであり、本願発明が引用発明に比較して、格別顕著な作用効果を奏するものとは認められない。

(相違点2について)
本願発明における「ステップ(417)」について、本願の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
「図4は、コンピュータ(作動装置350)によって実行可能な方法の一例を示す。」(【0084】)
「反対に、停止が短いことを示すデータをユーザーが入力した場合、つまり、テスト413がポジティブであった場合、システム(作動装置350)は、ステップ417において、スリーブ140を閉じるメッセージを遠隔制御コンソール351へ送信する。」(【0090】)
また、図4のフローチャートの「417」が付与された長方形の中には、「送信 クローズ 140」と記載されている。
そうすると、本願発明における「ステップ(417)」とは、コンピュータ(作動装置350)によって実行される一つの工程を規定するものを含むと解される。

一方、引用発明では、「ボールバルブ37」の「遠隔操作」は、コンピュータ等の制御手段70によって行われるものであるから、コンピュータによって実行される工程のひとつといえ、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。

(まとめ)
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項又は周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、本願発明は、本願の請求項1に係る発明と同様な理由から進歩性を有している旨を主張している。

しかしながら、請求人の本願の請求項1に係る発明についての主張は、上記請求項1に係る発明の発明特定事項である「ブロック装置(310)が、気体供給パイプ(312)に空圧的に接続されたバルーン要素(311)を含み、バルーン要素(311)が、ブロック装置に隣接した一部分(141)のところで可撓性スリーブが通過する硬質の又は半硬質の延長パイプ(114)に対して可撓性スリーブ(140)の壁部を押し付けるように構成され」た点に基づくものであり、本願発明は、そのような「ブロック装置(310)」を備えたものではないことから、請求人の主張は採用することはできない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項又は周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-12-02 
結審通知日 2019-12-10 
審決日 2019-12-23 
出願番号 特願2016-516216(P2016-516216)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神田 和輝  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 日比野 隆治
川端 修
発明の名称 精製用リアクター及び/又は石油化学リアクターに固体粒子を充填するディスペンス装置への固体粒子の供給  
代理人 武田 明広  

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