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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A24D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A24D
管理番号 1362622
審判番号 不服2018-14200  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-26 
確定日 2020-05-21 
事件の表示 特願2016-564976号「喫煙材を加熱するための装置と使用するためのエアロゾル冷却部材および構造体」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月5日国際公開、WO2015/166245、平成29年7月6日国内公表、特表2017-518041号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)4月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年4月30日 英国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年10月10日付け:拒絶理由通知書
平成30年1月16日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年6月21日付け :拒絶査定
平成30年10月26日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成30年10月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年10月26日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)

「【請求項1】
第1および第2端部を有し、第1および第2端部の間を延びる複数の貫通孔を含むモノリシックロッドである喫煙材を加熱するための装置と使用するためのエアロゾル冷却部材であり、多孔度が60%?75%の範囲内にあるエアロゾル冷却部材。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の平成30年1月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
第1および第2端部を有し、第1および第2端部の間を延びる複数の貫通孔を含むモノリシックロッドである喫煙材を加熱するための装置と使用するためのエアロゾル冷却部材。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「エアロゾル冷却部材」について、「多孔度が60%?75%の範囲内にある」ことの限定を付加する補正であって、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許請求の範囲の請求項1に関する本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

そこで、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
原査定の理由に引用され、本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例である国際公開第2013/120565号には、図面とともに以下の記載がある(訳は、引用例1のパテントファミリーである特表2015-508676号公報の記載に基づいて当審が作成したものである。また、下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。

(ア)引用文献1の記載
1a)"1 . An aerosol-generating article (10) comprising a plurality of elements assembled in the form of a rod (11), ... has a porosity of between 50% and 90% in the longitudinal direction."(17ページ2ないし6行)
(訳:エアロゾル発生物品(10)であって、ロッド(11)の形態に組み立てられ、エアロゾル形成基材(20)と、該ロッド(11)内で該エアロゾル形成基材(20)の下流に位置付けられたエアロゾル冷却要素(40)とを含む複数の要素、を含み、前記エアロゾル冷却要素(40)は、複数の縦方向延在チャネルを含み、かつ該縦方向に50%と90%の間の多孔率を有することを特徴とするエアロゾル発生物品(10)。)

1b)"In one embodiment an aerosol-generating article comprising a plurality of elements assembled in the form of a rod is provided. ... as described further herein."(1ページ30ないし36行)
(訳:一実施形態において、ロッドの形態に組み立てられた複数の要素を含むエアロゾル発生物品を提供する。複数の要素は、エアロゾル形成基材と、ロッド内でエアロゾル形成基材の下流に位置付けられたエアロゾル冷却要素とを含む。エアロゾル冷却要素は、複数の縦方向延在チャネルを含み、かつ縦方向に50%と90%の間の多孔率を有する。エアロゾル冷却要素は、これに代えて、本明細書で更に説明するようにその機能に基づいて熱交換器と呼ぶことができる。)

1c)"As used herein, an 'aerosol-generating device' relates to a device that ... The heater is preferably used to heat an aerosol-forming substrate of an aerosol-generating article to generate an aerosol."(2ページ26ないし33行)
(訳:本明細書で用いる時に、「エアロゾル発生デバイス」は、エアロゾル形成基材と相互作用してエアロゾルを発生するデバイスに関する。エアロゾル形成基材は、例えば、喫煙物品の一部であるエアロゾル発生物品の一部を形成することができる。エアロゾル発生デバイスは、電源からエアロゾル形成基材へエネルギを供給してエアロゾルを発生するのに使用する1つ又はそれよりも多くの構成要素を含むことができる。エアロゾル発生デバイスは、加熱器を含むエアロゾル発生デバイスである加熱式エアロゾル発生デバイスとして説明することができる。加熱器は、好ましくは、エアロゾル発生物品のエアロゾル形成基材を加熱してエアロゾルを発生させるのに使用する。)

1d)"As used herein, 'aerosol-cooling element' refers to a component of an aerosol- generating article located downstream of the aerosol-forming substrate such that, ... Alternatively, the plurality of longitudinally extending channels may be defined by multiple sheets that have been crimped, pleated, gathered or folded to form multiple channels."(3ページ4ないし21行)
(訳:本明細書で用いる時に、「エアロゾル冷却要素」は、使用時にエアロゾル形成基材から放出される揮発性化合物によって形成されたエアロゾルが、ユーザによって吸入される前にエアロゾル冷却要素を通過し、かつそれによって冷却されるようなエアロゾル形成基材の下流に位置付けられたエアロゾル発生物品の構成要素を指す。好ましくは、エアロゾル冷却要素は、エアロゾル形成基材とマウスピースの間に配置される。エアロゾル冷却要素の表面積は大きいが、発生する圧力低下は小さい。大きい圧力低下を生成するフィルタ及び他のマウスピース、例えば、繊維の束から形成されたフィルタは、エアロゾル冷却要素とは見なさない。エアロゾル発生物品内のチャンバ及び空洞は、エアロゾル冷却要素とは見なさない。本明細書で用いる時に、用語「ロッド」は、実質的に円形、長円形、又は楕円形断面のほぼ円筒形の要素を表すのに使用される。複数の縦方向延在チャネルは、これらのチャネルを形成するためにしわ付け、ひだ付け、ギャザー付け、又は折り畳まれたシート材料によって定めることができる。複数の縦方向延在チャネルは、複数のチャネルを形成するためにひだ付け、ギャザー付け、又は折り畳まれた単一シートによって定めることができる。シートはまた、しわ付けされたものとすることができる。これに代えて、複数の縦方向延在チャネルは、複数のチャネルを形成するためにしわ付け、ひだ付け、ギャザー付け、又は折り畳まれた複数のシートによって定めることができる。)

1e)"As used herein, the term 'longitudinal direction' refers to a direction extending along, or parallel to, the cylindrical axis of a rod."(3ページ24及び25行)
(訳:本明細書で用いる時に、用語「縦方向」は、ロッドの縦軸線に沿って又はこれと平行に延びる方向を指す。)

1f)"The aerosol-cooling element preferably offers a low resistance to the passage of air through the rod. ... at the portion containing the aerosol-cooling element."(3ページ37行ないし4ページ11行)
(訳:エアロゾル冷却要素がロッドを通過する空気に与える抵抗は小さいことが好ましい。好ましくは、エアロゾル冷却要素は、エアロゾル発生物品の吸引抵抗に実質的に影響しない。吸込に対する抵抗(RTD)は、22℃及び101kPa(760トル)での17.5ml/秒の流量の試験の下で物体の全長に空気を押し通すのに必要な圧力である。RTDは、一般的にmmH_(2)Oの単位で表され、ISO 6565:2011に従って測定される。従って、エアロゾル冷却要素の上流端からエアロゾル冷却要素の下流端までの圧力低下量は小さいことが好ましい。これを達成するために、縦方向の多孔率は50%よりも大きく、かつエアロゾル冷却要素を通る空気流経路は、相対的に制約されないことが好ましい。エアロゾル冷却要素の縦方向多孔率は、エアロゾル冷却要素を収容する部分でのエアロゾル冷却要素を形成する材料の断面積とエアロゾル発生物品の内部断面積との比によって定めることができる。)

1g)"The aerosol-cooling element may act to lower the perceived temperature of a stream of aerosol drawn through the element by causing condensation of components such as water vapour from the aerosol stream. ... in a user's mouth may be closer to the feeling provided by the smoke stream of a conventional cigarette."(6ページ2ないし10行)
(訳:エアロゾル冷却要素は、要素を通って吸い込まれるエアロゾル流れの知覚温度を水蒸気のような成分をエアロゾルの流れから凝縮させることによって低下させるように作用することができる。凝縮により、エアロゾル流れは、エアロゾル冷却要素を通過した後はより乾燥することができる。一部の実施形態において、エアロゾル冷却要素を通って吸い込まれるエアロゾル流れの水蒸気含有量は、20%から90%低下することができる。ユーザは、このエアロゾルの温度が同じ実温度の水分エアロゾルよりも乾燥していると知覚することができる。従って、ユーザの口腔内のエアロゾルの感覚を従来のシガレットの煙の流れが与える感覚により近くすることができる。)

1h)"As noted above, the aerosol-cooling element may be formed from a sheet of suitable material that has been crimped, ... For example, an aerosol-cooling element may have a diameter of about 7 mm."(6ページ30行ないし7ページ11行)
(訳:上述したように、エアロゾル冷却要素は、しわ付け、ひだ付け、ギャザー付け、又は折り畳まれた適切な材料のシートから複数の縦方向延在チャネルを形成する要素へと形成することができる。そのような要素の断面プロフィールは、ランダムに向いたチャネルを示す場合がある。エアロゾル冷却要素は、他の手段によって形成することができる。例えば、エアロゾル冷却要素は、縦方向延在チューブの束から形成することができる。エアロゾル冷却要素は、適切な材料の押出し、成形、積層化、射出、又は細断によって形成することができる。エアロゾル冷却要素は、縦方向延在チャネルを収容するか又は位置付ける外側チューブ又はラッパーを含むことができる。例えば、ひだ付け、ギャザー付け、又は折り畳まれたシート材料を例えばプラグラッパーであるラッパー材料内に包んでエアロゾル冷却要素を形成することができる。一部の実施形態において、エアロゾル冷却要素は、ロッド形状にギャザー付けされ、かつラッパー、例えば、濾紙のラッパーによって結び付けられたしわ付き材料のシートを含むことができる。一部の実施形態において、エアロゾル冷却要素は、長さが約7ミリメートル(mm)から約28ミリメートル(mm)のロッド形状に形成することができる。例えば、エアロゾル冷却要素の長さは約18mmとすることができる。一部の実施形態において、エアロゾル冷却要素は、断面が実質的に円形であり、直径が約5mmから約10mmとすることができる。例えば、エアロゾル冷却要素の直径は、約7mmとすることができる。)

1i)"The aerosol-generating article may be substantially cylindrical in shape. ... The aerosol- cooling element may be substantially elongate."(8ページ17ないし25行)
(訳:好ましい実施形態において、エアロゾル発生物品の形状は、実質的に円柱とすることができる。エアロゾル発生物品は、実質的に細長くすることができる。エアロゾル発生物品は、長さと、長さと実質的に垂直な周囲とを有することができる。エアロゾル形成基材の形状は、実質的に円柱とすることができる。エアロゾル形成基材は、実質的に細長くすることができる。また、エアロゾル形成基材は、長さと、長さと実質的に垂直な周囲とを有することができる。エアロゾル形成基材は、エアロゾル形成基材の長さがエアロゾル発生デバイス内の空気流の方向と実質的に平行であるようにエアロゾル発生デバイスに受け入れることができる。エアロゾル冷却要素は、実質的に細長くすることができる。)

1j)"In one embodiment, a method of using a aerosol-generating article comprising ... The aerosol is inhaled through the aerosol-cooling element and is reduced in temperature prior to being inhaled."(9ページ13ないし18行)
(訳:一実施形態において、ロッドの形態に組み立てられた複数の要素を含むエアロゾル発生物品を使用する方法を提供する。複数の要素は、エアロゾル形成基材と、ロッド内でエアロゾル形成基材の下流に位置付けられたエアロゾル冷却要素とを含む。本方法は、エアロゾルを放出するためにエアロゾル形成基材を加熱してエアロゾルを吸入する段階を含む。エアロゾルは、エアロゾル冷却要素を通って吸入され、吸入される前にその温度が低下する。)

1k)"The aerosol-cooling element 40 has a length of about 18 mm, ... The crimped and gathered sheet of polylactic acid is wrapped within a filter paper 41 to form the aerosol-cooling element 40."(10ページ30行ないし11ページ33行)
(訳:エアロゾル冷却要素40は、長さが約18mm、外径が約7.12mm、内径が約6.9mmである。一実施形態において、エアロゾル冷却要素40は、厚みが50mm±2mmのポリ乳酸のシートから形成される。ポリ乳酸のシートは、エアロゾル冷却要素40の長さに沿って延びる複数のチャネルを形成するようにしわが付けられかつギャザー付けされる。エアロゾル冷却要素の全表面積は、8000mm^(2)から9000mm^(2)であり、これは、エアロゾル冷却要素40のmm長さ当たり約500mm^(2)と同等である。エアロゾル冷却要素40は、比表面積が約2.5mm^(2)/mgであり、多孔率が縦方向で60%から90%である。使用中に、ポリ乳酸は、160℃又はそれよりも低く保たれる。本明細書では、多孔率は、本明細書に説明するものと矛盾しないエアロゾル冷却要素を含むロッドにおいて詰まっていない空間の尺度として定められる。例えば、ロッド11の直径の50%が要素40によって詰まっていなければ、多孔率は50%になる。同様に、ロッドの多孔率は、内径が全く詰まっていなければ100%になり、完全に詰まっていれば0%になる。多孔率は、公知の方法を用いて計算することができる。多孔率をどのように計算するかを示す典型例は、本明細書に説明され、かつ図11A、図11B、及び図11Cに例示されている。厚み(t)及び幅(w)を有するシート材料1110からエアロゾル冷却要素40を形成する時に、シート材料1110の縁部1100によって表される断面積は、幅と厚みの積で与えられる。厚みが50マイクロメートル(±2マイクロメートル)で幅が230ミリメートルであるシート材料の特定の実施形態において、断面積は、約1.15×10^(-5)m^(2)である(これは第1の面積で表すことができる)。図11Aに例示された典型的なしわ付き材料は、図示の厚み及び幅を有する。また、例示された典型的なロッド1200は、直径(d)を有する。ロッドの内側面積1210は、式(d/2)2πによって与えられる。材料を最終的に封入するロッドの内径を6.9mmと仮定すれば、詰まっていない空間の面積は、約3.74×10^(-5)m^(2)として計算することができる(これは第2の面積で表すことができる)。エアロゾル冷却要素40を含むしわ付き又はしわなし材料は、次に、ギャザー付けされるか又は折り畳まれてロッドの内径の内部に閉じ込められる(図11B)。第1の面積と第2の面積の比は、上述の例によれば約0.308である。この比に100を掛けて百分率を100%から引けば多孔率が得られ、多孔率は、本明細書に示す具体的な形状において約69%である。シート材料の厚み及び幅を変更することができることは明らかである。同様に、ロッドの内径も変更することができる。当業者には、ロッドの内径に加えて材料の厚み及び幅が既知である場合に、多孔率は上記手法で計算することができることは自明である。従って、シート材料が、既知の厚み及び幅を有し、長さに沿ってしわ付け及びギャザー付けされていれば、材料を詰める空間を決定することができる。詰めない空間は、例えば、ロッドの内径を考慮して計算することができる。ロッド内の多孔率又は詰めない空間は、従って、これらの計算からロッド内の全空間面積の百分率として計算することができる。ポリ乳酸のしわ付け及びギャザー付けされたシートは、エアロゾル冷却要素40を形成するために濾紙41の内部に包まれる。)

1l)「【図1】

【図2】

【図11B】



1m)"An aerosol-generating article as illustrated in Figure 1 is designed to engage with an aerosol-generating device (not shown) in order to be consumed. ... that is inserted into the aerosol-forming substrate 20."(12ページ6ないし11行)
(訳:図1に例示したエアロゾル発生物品は、消費するためにエアロゾル発生デバイス(図示しない)と係合するように設計される。そのようなエアロゾル発生デバイスは、エアロゾル形成基材20をエアロゾルを形成するのに十分な温度まで加熱するための手段を含む。一般的に、エアロゾル発生デバイスは、エアロゾル形成基材20に隣接してエアロゾル発生物品を取り囲む加熱要素、又はエアロゾル形成基材20内に挿入される加熱要素を含むことができる。)

1n)図1及び図2には、エアロゾル冷却要素40が、エアロゾル形成基材20側の端部及びフィルタ50側の端部を有することが図示されている。

(イ)上記(ア)及び図面の記載から分かること
1o)図1及び図2並びに上記(ア)1a)、1h)及び1k)から、エアロゾル冷却要素40は、エアロゾル形成基材20側の端部及びフィルタ50側の端部の間に沿って延在する複数の縦方向延在チャネルを含んでおり、しわが付けられかつギャザー付けされたシートがロッドの内径の内部に閉じ込められて形成されたものであることが分かる。

1p)図1及び図2並びに上記(ア)1h)及び1k)から、エアロゾル冷却要素40は、シートと濾紙41からなることが分かる。

1q)図1及び図2並びに上記(ア)1c)及び1m)から、エアロゾル冷却要素40は、エアロゾル形成基材20を加熱する加熱器とともに使用することが分かる。

1r)上記(ア)1k)から、エアロゾル冷却要素40の多孔率は約69%であることが分かる。

(ウ) 引用発明
上記(ア)、(イ)及び図面の記載からみて、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「エアロゾル形成基材20側の端部及びフィルタ50側の端部を有し、エアロゾル形成基材20側の端部及びフィルタ50側の端部の間に延在する複数の縦方向延在チャネルを形成する、しわが付けられかつギャザー付けされたものでありロッドの内径の内部に閉じ込められて形成されたシートと濾紙41からなり、エアロゾル形成基材20を加熱する加熱器と使用するためのエアロゾル冷却要素40であり、多孔率が約69%であるエアロゾル冷却要素40。」

イ 引用例2
原査定の理由に引用され、本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例である国際公開第2012/168699号には、図面とともに以下の記載がある(訳は、引用例2のパテントファミリーである特表2014-515937号公報の記載に基づいて当審が作成したものである。また、下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。なお、引用箇所は、空行も1行として数えた。)。

(ア)引用文献2の記載
2a)"1. A smoking article filter comprising a monolith, wherein the monolith comprises carbonised sintered resin.
2. A smoking article filter as claimed in claim 1, wherein the monolith is free from a binder.
3. A smoking article filter comprising a monolith, wherein the monolith comprises a plurality of cells, each cell comprising a channel that extends throughout the monolith, and wherein the combined cross sectional surface area of the channels comprises 30-40% of the total cross sectional surface area of the monolith."(41ページ3ないし13行)
(訳:1.炭化焼結樹脂を含む一体構造体を含む喫煙品用フィルター。
2.前記一体構造体は結合剤を含まないことを特徴とする請求項1に記載の喫煙品用フィルター。
3.一体構造体を含む喫煙品用フィルターであって、前記一体構造体は複数のセルを含み、各セルは前記一体構造体の中を延びる流路を備え、複数の前記流路の総断面積は前記一体構造体の総断面積の30?40%を占める、喫煙品用フィルター。)

2b)"According to a first aspect there is provided a smoking article filter comprising a monolith. The monolith comprises carbonised sintered resin."(2ページ30及び31行)
(訳:第1の態様によれば、一体構造体を含む喫煙品用フィルターが提供される。この一体構造体は炭化焼結樹脂を含む。)

2c)"The monolith may comprise a number of channels, which extend throughout the monolith, for example longitudinally, and may be visible to the naked eye. ... A cell is defined as the distance between the centres of the two opposite walls of a longitudinal channel when viewed in transverse cross section."(3ページ31行ないし4ページ10行)
(訳:一体構造体は複数の流路を含んでもよく、これらは一体構造体の例えば長手方向に延び、裸眼で見えてもよい。流路は一体構造体の内部でもよく、つまり一体構造体の材料で長手方向に完全に囲まれていてもよい。その場合、流路は任意の所望の断面でもよい。例えば、流路の断面は四角、円、三角、六角、またはもっと複雑な形状でもよく、規則的な形状でも不規則な形状でもよい。内部の流路は一体構造体内を全体に互いに隣り合わせに一般的には長手方向に延びているため、各流路の横断面は一体構造体の「セル(小室)」のように見える。セルを横断面で見た場合、セルは長手方向流路の2つの対向する壁の中心間の距離として定義される。)

2d)"According to a second aspect there is provided a smoking article filter comprising a monolith. ... The combined cross sectional surface area of the channels may comprise about 35% of the total cross sectional surface area of the monolith."(4ページ26行ないし5ページ2行)
(訳:第2の態様によれば、一体構造体を備える喫煙品用フィルターが提供される。一体構造体は複数のセルを含み、各セルは一体構造体内を延びる流路を備え、例えば各セルは一体構造体の長さ全体に延びる長手方向流路を備える。複数の流路の断面表面積を合計すると、一体構造体の総断面積の30?60%、より具体的には30?40%、さらに具体的には32?38%、例えば35%を占める。)

3 対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「エアロゾル形成基材20側の端部」は本願補正発明における「第1の端部」に相当し、以下同様に、「フィルタ50側の端部」は「第2の端部」に、「間に延在する」は「間を延びる」に、「エアロゾル形成基材20」は「喫煙材」に、「エアロゾル形成基材20を加熱する加熱器」は「喫煙材を加熱するための装置」に、「エアロゾル冷却要素40」は「エアロゾル冷却部材」に、「多孔率」は「多孔度」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「エアロゾル冷却要素40」の「多孔率が約69%である」ことは、本願補正発明における「エアロゾル冷却部材」の「多孔度が60%?75%の範囲内」であることに相当する。
また、引用発明における「複数の縦方向延在チャネルを形成する、しわが付けられかつギャザー付けされたものでありロッドの内径の内部に閉じ込められて形成されたシートと濾紙41」と、本願補正発明における「複数の貫通孔を含むモノリシックロッド」とは、「複数の長手方向に延在する流路を形成する部材」という限りにおいて一致する。

したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「第1および第2端部を有し、第1および第2端部の間を延びる複数の長手方向に延在する流路を形成する部材である喫煙材を加熱するための装置と使用するためのエアロゾル冷却部材であり、多孔度が60%?75%の範囲内にあるエアロゾル冷却部材。」

[相違点]
「複数の長手方向に延在する流路を形成する部材」に関して、本願補正発明においては「複数の貫通孔を含むモノリシックロッド」であるのに対して、引用発明においては「複数の縦方向延在チャネルを形成する、しわが付けられかつギャザー付けされたものでありロッドの内径の内部に閉じ込められて形成されたシートと濾紙41」である点(以下、「相違点」という。)。

以下、相違点について検討する。

[相違点について]
引用例2には、「一体構造体(モノリス)を含む喫煙用フィルターであって、一体構造体(モノリス)は複数のセルを含み、各セルは一体構造体(モノリス)の中を延びる長手方向流路を備えること。」(以下、「引用例2記載事項」という。)が記載されており、この記載は、高温の喫煙成分が通過する部分における複数の貫通孔を含む長手方向流路を形成する部材として、一体構造体(モノリス)を採用することを示すものである。
なお、引用例2には、一体構造体(モノリス)の冷却作用についての明示はないが、一体構造体(モノリス)は、流路の内表面において熱交換を行うことにより、高温の気体が流路を通過する際に熱を奪って冷却する機能を有することは技術常識から明らかである。この点は、例えば特表2013-532953号公報(段落【0026】、【0045】、【0108】ないし【0114】、図19及び図20等の「冷却要素16」に関する記載参照。)にも示されている。
そうすると、引用発明における「複数の縦方向延在チャネルを形成する、しわが付けられかつギャザー付けされたものでありロッドの内径の内部に閉じ込められて形成されたシートと濾紙41」と、引用文献2記載事項の「一体構造体(モノリス)」とは、複数の長手方向流路を形成するものであって、高温の流体が当該流路を通過する際に冷却される点において構造や機能が共通する。
よって、引用発明の上記「シートと濾紙41」を、引用例2記載事項における複数の貫通孔を含む長手方向流路を形成する「一体構造体(モノリス)」とすることにより、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願補正発明は、全体としてみても、引用発明、引用例2記載事項から予測される範囲内であって、格別顕著なものではない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1(2)に記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし19に係る発明は、本願の優先日日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用例1及び引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

・請求項1ないし19に対し、引用文献1及び2

<引用例一覧>
1.国際公開第2013/120565号
2.国際公開第2012/168699号

3 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及び引用例2並びにその記載事項は、前記第2 2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2 2で検討した本願補正発明から「エアロゾル冷却部材」についての「多孔度が60%?75%の範囲内にある」ことの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2 3に記載したとおり、引用発明及び引用例2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用例2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-11-01 
結審通知日 2019-11-26 
審決日 2019-12-09 
出願番号 特願2016-564976(P2016-564976)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A24D)
P 1 8・ 575- Z (A24D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 正志  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 松下 聡
紀本 孝
発明の名称 喫煙材を加熱するための装置と使用するためのエアロゾル冷却部材および構造体  
代理人 森田 順之  
代理人 轟木 哲  

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