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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B |
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管理番号 | 1362627 |
審判番号 | 不服2019-3328 |
総通号数 | 247 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-03-11 |
確定日 | 2020-05-21 |
事件の表示 | 特願2014-250152「抽出プログラム、方法、及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年6月20日出願公開、特開2016-107001〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年12月10日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 5月21日付け:拒絶理由通知書 同年 7月30日 :意見書、手続補正書の提出 同年 8月27日付け:拒絶理由通知書(最後) 同年10月11日 :意見書、手続補正書の提出 同年11月20日付け:補正の却下の決定、拒絶査定 平成31年 3月11日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 平成31年3月11日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成31年3月11日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、平成30年7月30日付け手続補正により補正された請求項5(以下、「補正前の請求項5」という。)を、以下の請求項4(以下、「補正後の請求項4」という。)とする補正事項を含むものである。 なお、下線は補正箇所である。また、符号A?C3は説明のため当審で付与したものであり、以下、構成A?構成C3と称する。各請求項において同じ記載内容の構成には同じ符号を付し、本件補正により補正された構成の符号には「’」を付した。 (補正前の請求項5) 「【請求項5】 (A)コンピュータに、 (C1)野球の試合の撮影映像に付加された、得点時にホームインするランナーに合わせて、カウント表示とは別に表示される得点があったことを示す表示が消えた後、 (C2)所定回数カットが切り替わった箇所を、 (C3)打席の終わりとして抽出する (B)ことを含む処理を実行させることを特徴とする抽出方法。」 (補正後の請求項4) 「【請求項4】 (A)コンピュータに、 (C1’)野球の試合の撮影映像に付加された、得点時にホームインするランナーに合わせて、カウント表示とは別に表示される得点があったことを示すテロップが表示され、 (C2’)複数回数カットが切り替わって前記テロップが消えた後の箇所を、 (C3)打席の終わりとして抽出する (B)ことを含む処理を実行させることを特徴とする抽出方法。」 2 本件補正の適否 (1)本件補正の補正事項 本件補正における請求項4に係る補正事項は、以下のとおりである(以下、「補正事項ア」?「補正事項ウ」という。)。 (補正事項ア) 構成C1の「表示が」を構成C1’の「テロップが」とする補正 (補正事項イ) 構成C1の「消えた後」を構成C1’の「表示され」とする補正 (補正事項ウ) 構成C2の「所定回数カットが切り替わった箇所」を、構成C2’の「複数回数カットが切り替わって前記テロップが消えた後の箇所」とする補正 (2)補正の目的 補正事項アの補正は、構成C1の得点があったことを示す「表示」について、表示内容を「テロップ」に限定するものである。 補正事項イ及び補正事項ウの補正は、 得点があったことを示す「表示」について、カットの切り替わりの特定がないものから、「複数回数カットが切り替わって」と限定するものである。 また、得点があったことを示す「表示」が消えた後の「箇所」について、「所定回数カットが切り替わった箇所」と所定回数のカットの切り替わりを特定していたものを、「消えた後の箇所」と最初のカットの切り替わりと限定するものである。 よって、補正事項ア?補正事項ウは、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正といえ、特許法第17条の2第5項第2号の規定に該当する。 (3)新規事項、発明の特別な技術的特徴の変更 補正事項ア?補正事項ウは、願書に最初に添付した明細書の段落【0070】及び段落【0071】に記載されているから、補正事項ア?補正事項ウは、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、新たな技術事項を導入するものでないといえるから、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合するものである。 (4)独立特許要件 上記(2)のとおり本件補正のうち請求項4に係る補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、補正後の請求項4に係る発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。 (4-1)補正発明 本件補正後の請求項4に係る発明(以下「補正発明」という。)は、上記1(補正後の請求項4)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (4-2)引用文献の記載事項、引用発明 (4-2-1)引用文献 原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用されたものは、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の文献である(以下、「引用文献」という。)。 (引用文献) 谷治隆史、両角聡、向井信彦、小杉信、「投球シーンの解析とテロップ情報を用いた野球中継ダイジェスト版の自動生成法」、電子情報通信学会技術研究報告〔画像工学〕、2004年11月19日、第104巻、第465号、IE2004-91、第27?30頁 (4-2-2)引用文献の記載事項 引用文献には、図面とともに次の記載がある。 なお、以下の下線は、強調のために当審で付したものである。 ア 「あらまし 野球中継映像の中からユーザが所望するシーンを高速に検索するためには,対象となる映像の内容を索引として付加することが有効である.これにより,短時間で映像の内容を把握できるダイジェスト版を作成することができる.本研究では,索引付加およびダイジェスト版生成の全自動化を試みた.」 (27頁上欄1?3行) イ 「そこで本稿では,野球中継映像のシーンおよびテロップを解析して,索引付加およびダイジェスト版生成の全自動化について述べる.」 (28頁左欄4?6行) ウ 「2.研究手法 本研究の処理フローを,図1に示す.まず,野球中継映像からシーンの切れ目となるカット点を検出し,検出されたカット点直後のシーンが投球シーン候補であるかどうかを判別する.ここで投球シーン候補とは,バックスタンドに設置してあるカメラから撮影されたシーンにおいて,投手が打者に対して投球を行うシーンの候補である.カメラはほぼ固定されているために,投手や打者の位置は安定している.この性質を利用して,投球シーンの判別を行う.しかし,検出されたシーンが投球シーン候補であっても,投手は打者に対して投球するのではなく,ランナーに対して牽制球を投げることもある.そこで,投球前後における投手の高さ情報から真の投球動作を検出する. 次に,投球シーン候補はリプレイシーンにも現われるため,リプレイシーンには出現しない得点などを示すテロップ表示の有無を検出する. 検出されたシーンが投球シーン候補であり,投球動作を行っており,かつ,テロップ表示が有れば,真の投球シーンであると判断し,テロップ情報の認識を行う[6,7,8]. 最後に,認識したテロップ情報や投球動作と判断されたフレーム番号などを索引として付加し,索引情報を基にダイジェスト版の作成を行う.」 (28頁左欄7?29行) エ 「 」 オ 「3.索引付加 3.1 テロップによる索引情報 野球中継映像には,視聴者に情報を伝える種々のテロップが表示される.その中から図2のような試合の情報を伝えるテロップを用いて索引付加を行う. (略) 但し,テロップ情報の変化だけでは詳しい打席結果を推定できない場合が多い.例えば「0アウトランナー無し」から「0アウトランナー1塁」となった場合に,その時の打者は1塁に出塁したことは分かるが,ヒットによって出塁したのか,四死球などによって出塁したのかは分からない.テロップ情報から推定可能な打席結果を以下に示す. ●追加得点の有無および追加点数. ●ランナー進塁の有無. ●増加したアウトカウント. ●打者出塁の有無および出塁数. 上記の情報を打席結果として索引に付加する.また,ホームランはテロップ情報の変化から推定が可能なので,ホームランの有無も索引に付加する. このようにテロップ情報の変化のみを見るだけで様々な情報を推定することが可能である.また,得られた索引情報から,得点の入ったシーンや出塁した打者のシーンが映像のどこにあるかを把握でき,これらのシーンのみを集めたダイジェスト版を作成することも可能である.」 (28頁左欄30行?右欄34行) カ 「 」 キ 「3.2 テロップ以外による索引情報 野球中継映像を解析して得られる索引情報としては,テロップから推定される情報以外に以下のものがある, ●カット点を検出したフレーム番号 ●投球シーンの開始フレームとなるカット点のフレーム番号 ●投球動作を検出したフレーム番号 さらに,得点が変化を示す図4のようなテロップを検出したフレーム番号も索引に付加する.」 (28頁右欄35行?29頁左欄6行) ク 「 」 ケ 「4.野球中継ダイジェスト版の生成 4.1 ダイジェスト版の内容 野球中継映像には様々なシーンが存在するが,その中から重要度の高いシーンを集約したものがダイジェスト版となる.シーンの重要度はユーザによって異なるが,一般的には投球やバッティングなどのプレイ時の映像と,選手の表情などを捉えた非プレイ時の映像では,プレイ時の映像の方が重要度は高いと思われる.そのため,ダイジェスト版には,投手がモーションに入ってから,ボールが捕手のミットに収まるまでを捉えたシーン(投球要約シーン)と打者の打った打球を追うなどを捉えたシーン(打席結果シーン)のみ集めればよい.この要約映像を全打者分つなぎ合わせることで,対象とする野球中継映像全体のダイジェスト版を作成することが可能となる.」 (29頁左欄9?23行) コ 「4.2 ダイジェスト版の編集ルール ダイジェスト版を自動作成するためには,再生すべきフレームの番号を索引情報から抽出する必要がある.以下に,必要なフレーム番号を自動的に抽出するための編集ルールを示す. (1)要約映像の開始フレーム番号 要約映像の開始フレーム番号は,投球要約シーンの開始フレーム番号とする.投球要約シーンの開始フレーム番号は,投球動作を検出したフレーム番号の40フレーム前とする.何故なら,投手の個人差による投球動作検出フレーム番号のずれが存在し,検出フレーム前20フレームとすると途中で投球シーンが切れてしまうことがある.また,30フレームでも投球動作を十分反映したとは言えないからである.但し,検出フレーム前40フレームと投球動作検出フレーム番号の間にカット点を挟む場合には,そのカット点を投球要約シーンの開始フレーム番号とする.」 (29頁左欄24?40行) サ 「(2)要約映像の終了フレーム番号 要約映像の終了フレーム番号は,その後に発生するイベントによって異なる.以下にその詳細を示す. (a)投球要約シーンの終了フレーム番号と一致する場合 各打者に対する要約映像の終了フレーム番号が投球要約シーンの終了フレーム番号と一致する場合は,投球動作を検出したフレーム番号の40フレーム後とする.理由は投球要約シーン開始フレーム番号と同様である.但し,投球要約シーン開始フレーム番号と同様に,投球動作検出フレーム番号と検出フレーム後40フレームの間にカット点を挟む場合には,そのカット点を投球要約シーンの終了フレーム番号とする. (b)投球要約シーンの終了フレーム番号と一致しない場合 各打者に対する要約映像の終了フレーム番号が投球要約シーンの終了フレーム番号と一致しない場合は,投球要約シーンと打席結果シーンはつながっているので,要約映像の終了フレーム番号を投球動作検出フレーム番号の後40フレームとすると映像が切れてしまう可能性がある.そこで,得点シーンの場合は,図7のような得点の変化を示すテロップ出現後のカット点を終了フレーム番号とする. また,ヒットや四死球などのランナーが出塁するような得点シーン以外の場合は,得点の変化を示すテロップが表示されないため,その打者に対する最後の投球において,投球動作を検出したフレーム番号の一定フレーム後付近のカット点を終了フレーム番号とする. これにより,投球要約シーンと打席結果シーンを合わせて抽出することができる.」 (29頁右欄1行?30頁左欄5行) シ 「4.3 ダイジェスト版の自動生成 ダイジェスト版自動生成の流れを説明する.まず,野球中継映像を解析して得られた索引情報から4.2の編集ルールを基に,ダイジェスト版を構成する各要約映像の開始フレームおよび終了フレームの番号を記述した索引を作成する.その索引に記述されたフレーム番号を基に各要約映像を連続的に再生することで,ダイジェスト版を作成することが可能となる.」 (30頁左欄6?13行) (4-2-3)引用発明 上記(4-2-2)に摘記した記載事項から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 なお、符号a?g7は説明のため当審で付与したものであり、以下、構成a?構成g7と称する。 (引用発明) (a)野球中継映像のシーンおよびテロップを解析して、索引付加およびダイジェスト版生成の全自動化を行う方法であって、 (b)野球中継映像からシーンの切れ目となるカット点を検出し、 (c)検出されたカット点直後のシーンが投球シーン候補であるかどうかを判別し、 (d)検出されたシーンが投球シーン候補であり、投球動作を行っており、かつ、テロップ表示が有れば、真の投球シーンであると判断し、 (e)テロップ情報の認識を行い、 (f)認識したテロップ情報や投球動作と判断されたフレーム番号などを索引として付加し、 (g)索引情報を基にダイジェスト版の作成を行い、 (f1)野球中継映像には、視聴者に情報を伝える種々のテロップが表示され、その中から図2のような試合の情報を伝えるテロップを用いて索引付加を行い、 このテロップから、イニング、表か裏の種別(攻撃側チーム)、得点、ランナー、ストライクカウント、ボールカウント、アウトカウントの情報が得られ、 (f2)テロップ情報から推定可能な打席結果は以下であり、 ●追加得点の有無および追加点数 ●ランナー進塁の有無 ●増加したアウトカウント ●打者出塁の有無および出塁数 上記の情報を打席結果として索引に付加し、また、ホームランはテロップ情報の変化から推定が可能なので、ホームランの有無も索引に付加し、 (f3)野球中継映像を解析して得られる索引情報としては,テロップから推定される情報以外に以下のものがあり、 ●カット点を検出したフレーム番号 ●投球シーンの開始フレームとなるカット点のフレーム番号 ●投球動作を検出したフレーム番号 さらに,得点が変化を示す図4のようなテロップ(得点の変化を示すテロップ)を検出したフレーム番号も索引に付加し、 (g1)野球中継映像には様々なシーンが存在するが,その中から重要度の高いシーンを集約したものがダイジェスト版となり、 (g2)シーンの重要度はユーザによって異なるが、一般的には投球やバッティングなどのプレイ時の映像と、選手の表情などを捉えた非プレイ時の映像では、プレイ時の映像の方が重要度は高く、 (g3)そのため、ダイジェスト版には、投手がモーションに入ってから、ボールが捕手のミットに収まるまでを捉えたシーン(投球要約シーン)と打者の打った打球を追うなどを捉えたシーン(打席結果シーン)のみ集めればよく、 (g4)この要約映像を全打者分つなぎ合わせることで、対象とする野球中継映像全体のダイジェスト版を作成することが可能となり、 (g5)ダイジェスト版を自動生成するためには、再生すべきフレームの番号を索引情報から抽出する必要があり、必要なフレーム番号を自動的に抽出するための編集ルールは、以下であり、 (g51)要約映像の開始フレーム番号は、投球要約シーンの開始フレーム番号とし、投球要約シーンの開始フレーム番号は、投球動作を検出したフレーム番号の40フレーム前とし、但し、検出フレーム前40フレームと投球動作検出フレーム番号の間にカット点を挟む場合には、そのカット点を投球要約シーンの開始フレーム番号とし、 (g52)要約映像の終了フレーム番号は、その後に発生するイベントによって異なり、 (g53)各打者に対する要約映像の終了フレーム番号が投球要約シーンの終了フレーム番号と一致する場合は、投球動作を検出したフレーム番号の40フレーム後とし、但し、投球動作検出フレーム番号と検出フレーム後40フレームの間にカット点を挟む場合には、そのカット点を投球要約シーンの終了フレーム番号とし、 (g54)各打者に対する要約映像の終了フレーム番号が投球要約シーンの終了フレーム番号と一致しない場合は、投球要約シーンと打席結果シーンはつながっているので、要約映像の終了フレーム番号を投球動作検出フレーム番号の後40フレームとすると映像が切れてしまう可能性があり、 (g55)そこで、得点シーンの場合は、得点の変化を示すテロップ出現後のカット点を終了フレーム番号とし、 (g56)また,ヒットや四死球などのランナーが出塁するような得点シーン以外の場合は、得点の変化を示すテロップが表示されないため、その打者に対する最後の投球において、投球動作を検出したフレーム番号の一定フレーム後付近のカット点を終了フレーム番号とし、 (g6)野球中継映像を解析して得られた索引情報から前記編集ルールを基に、ダイジェスト版を構成する各要約映像の開始フレームおよび終了フレームの番号を記述した索引を作成し、 (g7)その索引に記述されたフレーム番号を基に各要約映像を連続的に再生することで、ダイジェスト版を作成することが可能となる (a)方法 (4-3)対比 補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「野球中継映像」は、構成C1’の「野球の試合の撮影映像」に相当する。 構成f1の「試合の情報を伝えるテロップ」は、野球中継映像に表示されるものであって、図2のようにストライクカウント、ボールカウント、アウトカウントの情報が得られるから、構成C1’の「野球の試合の撮影映像に付加された、」「カウント表示」に相当する。 構成f3の「図4のようなテロップ(得点の変化を示すテロップ)」、構成g55及び構成g56の「得点の変化を示すテロップ」は、野球中継映像に表示されるものであって、得点の変化を示すものであり、図2のテロップとは別に表示されるものであるから、構成C1’の「野球の試合の撮影映像に付加された、」「カウント表示とは別に表示される得点があったことを示すテロップ」と共通するといえる。 しかしながら、「カウント表示とは別に表示される得点があったことを示すテロップ」について、補正発明は、「得点時にホームインするランナーに合わせて表示される」(構成C1’)ものであるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点で相違する。 イ 構成g53?構成g56の「各打者に対する要約映像の終了フレーム番号」における「各打者に対する要約映像」は、構成g3によれば「投手がモーションに入ってから、ボールが捕手のミットに収まるまでを捉えたシーン(投球要約シーン)と打者の打った打球を追うなどを捉えたシーン(打席結果シーン)のみ」集約したものであるから、前記「各打者に対する要約映像の終了フレーム番号」は、打席の終わりを示すフレーム番号といえる。 よって、構成g53の「投球動作を検出したフレーム番号の40フレーム後」或いは「投球動作検出フレーム番号と検出フレーム後40フレームの間のカット点」を終了フレーム番号とすること、及び、構成g54の「得点シーンの場合は、得点の変化を示すテロップ出現後のカット点」或いは「投球動作を検出したフレーム番号の一定フレーム後付近のカット点」を終了フレーム番号とすることは、「打席の終わり」のフレーム番号を自動的に抽出するための編集ルールといえる。 ウ 構成g6は、構成g53及び構成g54の「打席の終わりのフレーム番号を自動的に抽出するための編集ルール」を基に、「各要約映像の」「終了フレームの番号を記述した索引を作成」するから、コンピュータに「打席の終わり」のフレーム番号を自動的に抽出することを含む処理を実行させる方法といえる。 よって、引用発明は、構成A、構成C3及び構成Bを備える点で、補正発明と一致する。 エ 構成C2’の「打席の終わりとして抽出する」箇所について検討する。 構成g55の「得点の変化を示すテロップ出現後のカット点」は、得点の変化を示すテロップが表示された後のカット点であるから、得点の変化を示すテロップが表示された後の箇所といえる。 そうすると、「打席の終わりとして抽出する」箇所について、上記アの相違点を除き、構成g55と構成C2’とは、「野球の試合の撮影映像に付加された、カウント表示とは別に表示される得点があったことを示すテロップが表示され」た後の箇所である点で共通するといえる。 しかしながら、「打席の終わりとして抽出する」箇所について、補正発明は、「前記複数回数カットが切り替わって前記テロップが消えた後の箇所」(構成C2’)であるのに対し、引用発明は、「得点の変化を示すテロップ出現後のカット点」(構成g55)である点で、両者は相違する。 オ.一致点、相違点について 以上のことから、補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) コンピュータに、 野球の試合の撮影映像に付加された、カウント表示とは別に表示される得点があったことを示すテロップが表示された後の箇所を、打席の終わりとして抽出する ことを含む処理を実行させる抽出方法。 (相違点1) 「カウント表示とは別に表示される得点があったことを示すテロップ」について、補正発明は、「得点時にホームインするランナーに合わせて表示される」ものであるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。 (相違点2) 「打席の終わりとして抽出する」箇所について、補正発明は、「前記複数回数カットが切り替わって前記テロップが消えた後の箇所」であるのに対し、引用発明は、「得点の変化を示すテロップ出現後のカット点」である点。 (4-4)判断 上記相違点について、以下、検討する。 ア 相違点1について 野球中継映像において、「得点の変化を示すテロップ」を表示するか否かを判断すること、即ち、「得点の変化を示すテロップ」を表示するタイミングを制御することは、野球中継映像の作成者が適宜行うことであって、他方、得点シーンとして様々なシーンが存在する中で、「得点の変化を示すテロップ」が「得点時にホームインするランナーに合わせて表示される」ことも野球中継映像の視聴者によく知られている事実である。 そうすると、引用発明の「編集ルール」において、得点シーンの場合とする「得点の変化を示すテロップ」を「ホームインするランナーに合わせて表示される」ものとすることは、当業者が容易になし得たものといえる。 したがって、引用発明において、「カウント表示とは別に表示される得点があったことを示すテロップ」について、「得点時にホームインするランナーに合わせて表示される」ものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について 引用発明は、シーンの重要度はユーザによって異なるが、一般的にはプレイ時の映像と非プレイ時の映像では、プレイ時の映像の方が重要度は高い(構成g2)として、編集ルール(構成g5)を設定したものである。 引用発明にあるように、シーンの重要度はユーザによって異なるから、「非プレイ時の映像」のうちプレイ時の映像に続く関連部分の重要度を高く設定することは、ユーザが嗜好や必要性に応じて適宜なし得ることであって、「非プレイ時の映像」である「得点の変化を示すテロップ出現後」から「得点の変化を示すテロップ」が出現している間のシーンの重要度を高く設定することもユーザが適宜なし得ることといえる。 そうすると、引用発明において、「打席結果シーンの終了フレーム番号」を抽出する編集ルールを、得点シーンの場合は、「得点の変化を示すテロップ出現後のカット点を終了フレーム番号」とするルールから、「得点の変化を示すテロップ出現後」の「得点の変化を示すテロップ」が出現している間のフレームの後のカット点を終了フレーム番号」とするルールにすることは、当業者が容易になし得ることである。 そして、相違点1についての検討と同様に、野球中継映像において、「得点の変化を示すテロップ」を表示するタイミングをどのように制御するか、即ち、「得点の変化を示すテロップ」の表示を「カットが切り替わって」以降も表示し続けるかは、野球中継映像の作成者が適宜判断することであって、他方、「得点の変化を示すテロップ」が「複数回数カットが切り替わって」も表示されることも野球中継映像の視聴者によく知られている事実である。 よって、引用発明の「編集ルール」において、「打席結果シーンの終了フレーム番号」を抽出する編集ルールを、「得点の変化を示すテロップ出現後」の「得点の変化を示すテロップ」が出現している間のフレームのカット点を終了フレーム番号」とするものであって、「複数回数カットが切り替わって」も「得点の変化を示すテロップ」が出現している間のフレームの後のカット点を「終了フレーム番号」として抽出するルールとすることは、当業者が容易になし得ることである。 したがって、引用発明において、「複数回数カットが切り替わって前記テロップが消えた後の箇所」を打席の終わりとして抽出するようにすることは、当業者が容易に想到し得えたことである。 ウ 効果について そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ まとめ したがって、補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成31年3月11日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年7月30日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1において「補正前の請求項5」として記載したとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 本願発明に係る原査定の拒絶の理由(平成30年8月27日付け拒絶理由通知に記載した理由)は、本願の請求項5に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3 引用文献、引用発明 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2(4-2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記第2[理由]2(1)のとおり、補正発明の構成C1’の補正事項ア及び補正事項イ並びに構成C2’の補正事項ウ に係る限定を除いた発明特定事項からなる発明である。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を限定した補正発明が、上記第2[理由]2(4)のとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-03-23 |
結審通知日 | 2020-03-24 |
審決日 | 2020-04-06 |
出願番号 | 特願2014-250152(P2014-250152) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63B)
P 1 8・ 575- Z (A63B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石原 豊、田辺 正樹、藤井 達也 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
樫本 剛 渡辺 努 |
発明の名称 | 抽出プログラム、方法、及び装置 |
代理人 | 中島 淳 |
代理人 | 福田 浩志 |
代理人 | 加藤 和詳 |