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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01F
管理番号 1362826
審判番号 不服2019-10435  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-07 
確定日 2020-06-22 
事件の表示 特願2018-99004号「対象物検出センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年8月16日出願公開、特開2018-128471号、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年12月27日にされた特許出願(特願2016-252322号)の一部を平成30年5月23日に新たな特許出願としたものであって、同日に手続補正書が提出されたものである。
そして、平成31年3月15日付けの拒絶理由通知に対し、同年4月19日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和元年7月12日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ(原査定の謄本の送達日:同年7月22日)、これに対して、令和元年8月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1?16に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明16」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
なお、本願発明1の各構成については、当審が符号A、B等を用いて分説した。

「【請求項1】
A 所望の周波数の矩形発振信号を出力する発振回路と、
B 前記矩形発振信号に結合され、測定対象物の有無によって共振周波数が変化する共振回路と、
C 前記矩形発振信号を与えた時の共振回路の出力信号を、直接または間接的に取り出し、その振幅に基づいて測定対象物の有無を検出する検出回路と、
D 測定対象物が無い状態または有る状態において初期設定を行う際に、前記矩形発振信号の周波数を変化させてスイープし、検出回路によって検出される検出信号の振幅が最大または最小となるように前記矩形発振信号の周波数を選択して設定する周波数設定手段とを
備え、
D-1 前記周波数設定手段は、i)検出信号がしきい値を超えなければ第1の速度で発振信号の周波数を変化させ、検出信号がしきい値を超えると前記第1の速度よりも遅い第2の速度で発振信号の周波数を変化させてスイープし、検出信号の振幅が最大となるように発振信号の周波数を選択し、またはii)検出信号がしきい値を下まわらなければ第1の速度で発振信号の周波数を変化させ、検出信号がしきい値を下まわると前記第1の速度よりも遅い第2の速度で発振信号の周波数を変化させてスイープし、検出信号の振幅が最小となるように発振信号の周波数を選択し、
D-2 前記周波数設定手段は、前記初期設定の際に、高い周波数から低い周波数へとスイープさせることで、高調波の影響を排除して周波数を設定することを特徴とする
E 対象物検出センサ。
【請求項2】
請求項1の対象物検出センサにおいて、
前記周波数設定手段は、スイープ開始周波数からスイープ終了周波数まで前記矩形発振信号の周波数を離散的に変化させ、スイープを複数回実行し、所定回数連続して検出信号の振幅が最大または最小となる周波数が同一であった場合に、当該周波数を選択して設定周波数とすることを特徴とする対象物検出センサ。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかの対象物検出センサにおいて、
前記周波数設定手段は、周波数ごとに検出信号を複数回取得し、その振幅の平均値を検出信号の振幅とすることを特徴とする対象物検出センサ。
【請求項4】
請求項1?3のいずれかの対象物検出センサにおいて、
検出信号のレベルを表示するための連続して配置された発光部によって動作モードの少なくとも一部を表示することを特徴とする対象物検出センサ。
【請求項5】
請求項4の対象物検出センサにおいて、
前記連続して配置された発光部において、前記検出信号のレベルと異なる表示形態にて、検出回路の出力をオンとするしきい値を併せて表示するようにしたことを特徴とする対象物検出センサ。
【請求項6】
請求項5の対象物検出センサにおいて、
前記検出信号のレベルは連続点灯によって表示し、前記しきい値は点滅によって表示することを特徴とする対象物検出センサ。
【請求項7】
請求項1?6のいずれかの対象物検出センサにおいて、
温度変化による前記共振回路の共振周波数の変動に追従するように、前記共振回路近傍の温度を検出する温度検出器による検出温度に対応して、前記発振回路の前記矩形発振信号の周波数を変化させる補償手段を有することを特徴とする対象物検出センサ。
【請求項8】
請求項7の対象物検出センサにおいて、
前記検出回路は、温度補償用のコンデンサを有しており、
前記補償手段は、温度補償用コンデンサによる温度補償のずれを補うために、温度変化に対して所定の関係にて前記矩形発振信号の周波数を変化させ、
前記所定の関係は、共振周波数に応じて設定されることを特徴とする対象物検出センサ。
【請求項9】
所望の周波数の矩形発振信号を出力する発振回路と、前記矩形発振信号に結合され、測定対象物の有無によって共振周波数が変化する共振回路に前記矩形発振信号を与えた時の出力信号を、直接または間接的に取り出し、その振幅に基づいて測定対象物の有無を検出する検出回路とをCPUによって制御して対象物検出センサを実現するためのセンサプログラムであって、CPUを、
測定対象物が無い状態または有る状態において初期設定を行う際に、前記矩形発振信号の周波数を変化させてスイープし、検出回路によって検出される検出信号の振幅が最大または最小となるように前記矩形発振信号の周波数を選択して設定する周波数設定手段として機能させるセンサプログラムであって、
前記周波数設定手段は、i)検出信号がしきい値を超えなければ第1の速度で発振信号の周波数を変化させ、検出信号がしきい値を超えると前記第1の速度よりも遅い第2の速度で発振信号の周波数を変化させてスイープし、検出信号の振幅が最大となるように発振信号の周波数を選択し、またはii)検出信号がしきい値を下まわらなければ第1の速度で発振信号の周波数を変化させ、検出信号がしきい値を下まわると前記第1の速度よりも遅い第2の速度で発振信号の周波数を変化させてスイープし、検出信号の振幅が最小となるように発振信号の周波数を選択し、
前記周波数設定手段は、前記初期設定の際に、高い周波数から低い周波数へとスイープさせることで、高調波の影響を排除して周波数を設定することを特徴とするセンサプログラム。
【請求項10】
請求項9のセンサプログラムにおいて、
前記周波数設定手段は、スイープ開始周波数からスイープ終了周波数まで前記矩形発振信号の周波数を離散的に変化させ、スイープを複数回実行し、所定回数連続して検出信号の振幅が最大または最小となる周波数が同一であった場合に、当該周波数を選択して設定周波数とすることを特徴とするセンサプログラム。
【請求項11】
請求項9または10のいずれかのセンサプログラムにおいて、
前記周波数設定手段は、周波数ごとに検出信号を複数回取得し、その振幅の平均値を検出信号の振幅とすることを特徴とするセンサプログラム。
【請求項12】
請求項9?11のいずれかのセンサプログラムにおいて、
検出信号のレベルを表示するための連続して配置された発光部によって動作モードの少なくとも一部を表示することを特徴とするセンサプログラム。
【請求項13】
請求項12のセンサプログラムにおいて、
前記連続して配置された発光部において、前記検出信号のレベルと異なる表示形態にて、検出回路の出力をオンとするしきい値を併せて表示するようにしたことを特徴とするセンサプログラム。
【請求項14】
請求項13のセンサプログラムにおいて、
前記検出信号のレベルは連続点灯によって表示し、前記しきい値は点滅によって表示することを特徴とするセンサプログラム。
【請求項15】
請求項9?14のいずれかのセンサプログラムにおいて、CPUをさらに、
温度変化による前記共振回路の共振周波数の変動に追従するように、前記共振回路近傍の温度を検出する温度検出器による検出温度に対応して、前記発振回路の前記矩形発振信号の周波数を変化させる補償手段として機能させることを特徴とするセンサプログラム。
【請求項16】
請求項15のセンサプログラムにおいて、
前記検出回路は、温度補償用のコンデンサを有しており、
前記補償手段は、温度補償用コンデンサによる温度補償のずれを補うために、温度変化に対して所定の関係にて前記矩形発振信号の周波数を変化させ、
前記所定の関係は、共振周波数に応じて設定されることを特徴とするセンサプログラム。」


第3 原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

本件補正前の請求項1?16に係る発明は、下記の引用文献1?8に記載された発明に基づいて、本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:特開2001-194207号公報
引用文献2:実願昭63-104154号(実開平2-25830号)のマイクロフィルム
引用文献3:特表2008-545119号公報
引用文献4:特開2003-57097号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2000-146670号公報
引用文献6:特開平2-276912号公報
引用文献7:特開2013-152131号公報
引用文献8:特開2006-322770号公報


第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は静電容量式検知装置に関し、たとえば気体または粉粒体などの容器に収容された被検出物を、その被検出物が持つ誘電率を静電容量値としてとらえ、近接もしくは接触で検出する静電容量式検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、被検出物のレベルなどを検知する必要がある場合は、検知できる被検出物が液体や粉体や液中の堆積物や水と油などのように適用範囲が広く、設置が簡便で可動部がないことなどから、静電容量式検知装置が使用されている。」

「【0021】
【発明の実施の形態】まず、この発明の実施形態について説明する前にこの発明に用いられる共振回路について説明する。
【0022】図3は共振回路の等価回路図であり、図4は共振回路の周波数対振幅特性および周波数対位相特性を示す図である。
【0023】共振回路は図3に示すように、電極板により形成されるコンデンサ成分Cxと共振トランスのインダクタンス成分Laの並列回路から構成される。共振回路の共振周波数は次式で示される。
【0024】fa=1/{2π√(LaCx)}
この式から明らかなように、共振周波数は抵抗成分Rxに依存しない。また、図4(a)に示すように、低周波数域ではインピーダンスが低いため、静電容量に対して低インピーダンスであるという特性を持つ。
【0025】図4(a),(b)より、共振回路の周波数と位相は、相関関係を持ち、共振周波数を入力したとき位相差が発生せず、共振周波数より低い周波数が入力されるに伴って位相差は90°に近づき、共振周波数より高い周波数が入力されるに伴い-90°に近づき、位相の変化の度合いは共振周波数近傍で急峻となる。図4のfaは、電極体が空気中にあるときの共振周波数を示し、frは被検出物が電極体に近接または接触したときの共振周波数である。被検出物の移動により共振回路の共振周波数が変化すると同時に位相角の値も変化する。
【0026】以下、実施形態について具体的に説明する。図2はこの発明の一実施形態の静電容量式検知装置の外観図である。図2において、円柱状の下部測定電極21は、筒状の上部測定電極22と接触しないように筒状の絶縁物で隔離されかつ上部測定電極21と絶縁物23とが同軸上に配置される。上部電極22の一端は取付具24を介して保護枠25に取付けられている。保護枠25内には後述の図1,図5などに示す回路部26が設けられていて、回路部26内には共振トランスも内蔵されている。
【0027】図1はこの発明の一実施形態のブロック図である。図1において、共振回路1は電極体により形成される容量成分Cxと共振トランスLとの並列回路からなる。共振トランスLは1次コイルのインダクタンス成分Laと2次コイルのインダクタンス成分Lbとを含む。
【0028】共振回路1の共振トランスLの2次コイルLbの出力は、変換回路2により、次段に適する信号に変換され、位相比較回路3の第1の入力端に与えられる。位相比較回路3は共振回路1からの出力信号と基準信号との位相を比較し、位相差に応じた位相差信号を出力する。この位相差信号は制御回路4と状態判別回路8とに与えられる。制御回路4は位相差信号に応じて共振回路1の出力信号と共振信号との位相差をなくすように制御信号を可変周波数発生回路5と検出回路7とに与える。
【0029】可変周波数発生回路5はその制御信号に応じた発振周波数の発振信号を発生し、基準信号として位相比較回路3と駆動回路6とに与える。駆動回路6はその発振信号により共振回路1を駆動する。
【0030】状態判別回路8は位相比較回路3の第2の入力端から与えられる位相差信号に基づいて、共振回路1の共振周波数と可変周波数発生回路5の発振周波数との間の位相差の有無を判別し、位相差が生じた場合に、その判別信号を位相比較回路3の第2の入力端と検出回路7とに与える。また、検出回路7には基準設定回路9から基準値が与えられる。検出回路7は制御回路4からの制御信号と基準設定回路によって設定された基準値とを比較して検出信号を出力する。出力回路10は検出回路7からの検出信号に応じて表示のための信号を出力する。
【0031】図5はこの発明のより具体的な実施形態のブロック図である。この図5に示した実施形態は、以下の点を除いて図1と同じである。すなわち、可変周波数発生回路5として電圧制御発振回路(VCO)50が用いられる。電圧制御発振回路50は自走周波数fminから最高周波数fmaxまでの間の周波数で発振可能になっている。図1の制御回路4に代えてループフィルタ40が用いられる。状態判別回路8はリセット回路81とロック不良検出回路82とから構成されている。リセット回路81は積分回路83とスイッチ回路84と電圧比較回路85とを含む。
【0032】積分回路83はループフィルタ40と同一回路で構成され、位相比較回路3から出力された位相差信号PCを直流電圧に変換して電圧比較回路85の第1の入力端に与える。電圧比較回路85の第2の入力端には電圧制御発振回路50の最高周波数fmaxに対応する直流電圧Vmaxよりわずかに低い周波数fsに対応した直流電圧Vsに設定された基準電圧が入力される。
電圧比較回路85は積分回路83の出力の直流電圧が基準電圧Vsを上回ると、スイッチ回路84を導通させる。スイッチ回路84が導通すると、位相比較回路3の第1の入力端を短絡させる。ロック不良検出回路82は位相比較回路3から出力される非ロック信号LDに応じて検出回路7から検出信号を出力させる。
【0033】図6は位相比較回路の動作を説明するためのタイムチャートであり、図7は制御電圧の時間変化を示す図であり、図8は共振回路の共振周波数が変化した場合の発振周波数と制御信号の関係を示す図であり、図9は共振回路の共振周波数が可変周波数発生回路の可変周波数範囲を上回った場合の共振周波数の変化を時間的推移により示したグラフである。
【0034】次に、図5?図9を参照して、この発明のより具体的な実施形態の動作について説明する。被検出物がない状態でこの発明の静電容量式検知装置を容器などに設置し、電源を投入すると電源投入直後にはループフィルタ40は制御信号を発生しておらず、電圧制御発振回路50は共振回路1の共振周波数faに関係なく、自らの持つ自走周波数fminで発振を開始し、図6(b)に示すような発振信号を位相比較回路3の第2の入力端と駆動回路6とに与える。駆動回路6は共振回路1を駆動するのに十分なように発振信号を電力増幅し、増幅後の発振信号を共振回路1に供給する。
【0035】共振回路1は駆動回路6により電圧制御発振回路50の自走周波数fminで発振する発振信号が入力されると、共振周波数faとの周波数差に対応して発振信号の位相をずらせて変換回路2に出力する。変換回路2は被検出物の誘電率が抵抗成分における振幅電圧に関係しないように位相成分のみを次段の位相比較回路3で扱うことができるように信号を変換し、図6(a)に示す信号を位相比較回路3の第1の入力端に与える。
位相比較回路3は電圧制御発振回路50から駆動回路6を介して共振回路1に与えられ、変換回路2から第1の入力端に与えられる周波数fminの信号と、第2の入力端に電圧制御発振回路50から直接与えられている周波数fminの信号の位相を比較し、その位相差に対した図6(c)に示す位相差信号PCをループフィルタ40に出力する。
【0036】ループフィルタ40は位相差信号PCを積分して直流の制御信号に変換し、電圧制御発振回路50と検出回路7に出力する。以後、この動作を繰返し、位相差がなくなったとき、つまり電圧制御発振回路50の発振信号が共振回路1の共振周波数faと一致したとき、制御信号が図7に示すように一定電圧Vaとなり、その状態を保持する。したがって、校正に必要な作業をすることなく、電源投入により動作し、この状態となるまでの時間は瞬時であり、即座に完了する。
【0037】上述の状態で、被検出物が電極体に接近または接触した場合などにおいて、共振回路1の共振周波数が電圧制御発振回路50が追従できる範囲(キャプチャレンジ)内の周波数frに変化した場合、電圧制御発振回路50の発振信号の周波数はfaであるため、共振回路1により周波数差に対応して位相がずれる。この位相ずれを位相比較回路3が検出し、ループフィルタ40の制御信号を応動させ、出力電圧を図7に示すようにVaからVrとすることにより、電圧制御発振回路50の発振信号の周波数をfrに一致させる。
【0038】検出回路7はこの制御信号の電圧Vrを基準設定回路9の基準値Vcと比較し、Vr<Vcとなったとき、出力回路10に検知信号を出力する。出力回路10は検知信号により被検出物の検知を外部に出力または表示させる。」

「【図2】



「【図4】




「【図5】




「【図6】



「【図7】



「【図8】



上記記載内容及び上記図示内容を総合すると、上記引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「電極体により形成される容量成分Cxと共振トランスLとの並列回路からなる共振回路1と、(【0027】)

前記共振回路1を発振信号により駆動する駆動回路6と、(【0029】)

前記共振回路1の共振トランスLの2次コイルLbの出力が変換回路2を介して与えられ、前記共振回路1からの出力信号と基準信号との位相を比較し、位相差に応じた位相差信号を出力する位相比較回路3と、(【0028】)

自走周波数fminから最高周波数fmaxまでの間の周波数で発振可能な電圧制御発振回路50と、(【0031】)

前記位相差信号に応じて前記共振回路1の出力信号と共振信号との位相差をなくすように制御信号を出力するループフィルタ40と、
(【0028】、【0031】)

前記位相差信号に基づいて、前記共振回路1の共振周波数と前記電圧制御発振回路50の発振周波数との間の位相差の有無を判別し、位相差が生じた場合に、その判別信号を出力する状態判別回路8と、(【0030】)

前記ループフィルタ40からの制御信号と基準設定回路9によって設定された基準値とを比較して検出信号を出力する検出回路7と、
(【0030】?【0031】)

を回路部26に備え、(【0026】)

気体または粉粒体などの容器に収容された被検出物が持つ誘電率を静電容量値としてとらえ、前記電極体が空気中にあるときの共振周波数をfa、前記被検出物が前記電極体に近接または接触したときの共振周波数をfrとした場合、前記被検出物の移動により共振回路の共振周波数が変化すると同時に位相角の値も変化することにより、前記被検出物のレベルなどを、近接もしくは接触で検出する静電容量式検知装置において、
(【0001】?【0002】、【0025】)

被検出物がない状態で前記静電容量式検知装置を容器などに設置し、電源を投入すると電源投入直後には前記ループフィルタ40は前記制御信号を発生しておらず、前記電圧制御発振回路50は前記共振回路1の共振周波数faに関係なく、自らの持つ自走周波数fminで発振を開始し、矩形波パルス状の発振信号を前記位相比較回路3の第2の入力端と前記駆動回路6とに与え、(【0034】、【図6】(b))

前記共振回路1は、前記駆動回路6により前記電圧制御発振回路50の自走周波数fminで発振する発振信号が入力されると、共振周波数faとの周波数差に対応して発振信号の位相をずらせて前記変換回路2に出力し、
前記変換回路2は、被検出物の誘電率が抵抗成分における振幅電圧に関係しないように位相成分のみを次段の前記位相比較回路3で扱うことができるように変換した矩形波パルス状の信号を前記位相比較回路3の第1の入力端に与え、
前記位相比較回路3は、前記電圧制御発振回路50から前記駆動回路6を介して前記共振回路1に与えられ、前記変換回路2から第1の入力端に与えられる周波数fminの信号と、第2の入力端に前記電圧制御発振回路50から直接与えられている周波数fminの信号の位相を比較し、その位相差に対した位相差信号PCを前記ループフィルタ40に出力し、
(【0035】、【図6】(a)(c))

前記ループフィルタ40は前記位相差信号PCを積分して直流の制御信号に変換して、前記電圧制御発振回路50と前記検出回路7に出力し、以後、この動作を繰返し、位相差がなくなったとき、つまり前記電圧制御発振回路50の発振信号が前記共振回路1の上記共振周波数faと一致したとき、前記制御信号が一定電圧Vaとなり、その状態を保持することにより、校正に必要な作業をすることなく、電源投入により動作し、上記状態となるまでの時間は瞬時であり、即座に完了し、(【0036】、【図7】)

この状態で、前記被検出物が前記電極体に接近または接触した場合、前記共振回路1の共振周波数が、前記電圧制御発振回路50が追従できる範囲(キャプチャレンジ)内の周波数frに変化すると、前記電圧制御発振回路50の発振信号の周波数faとの周波数差に対応した位相のずれを前記位相比較回路3が検出し、前記ループフィルタ40の制御信号の電圧を応動させてVaからVrとすることにより、前記電圧制御発振回路50の発振信号の周波数をfrに一致させ、前記検出回路7はこの制御信号の電圧Vrを前記基準設定回路9の基準値Vcと比較し、Vr<Vcとなったとき、出力回路10に検知信号を出力する、(【0037】?【0038】、【図7】、【図8】)

静電容量式検知装置。」


2 引用文献2
上記引用文献2の第2?5頁、図面第5図Aには、次の技術事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[引用文献2記載事項]
「タンク4の側壁に取り付けられるセンサ2の先端部が、前記タンク4と絶縁された検出電極2bとなっており、
前記検出電極2bと前記タンク4の間に形成された静電容量C_(0)と、これに並列に接続されたインダクタンスLとから、共振周波数f_(0)の並列共振回路が形成され、
前記並列共振回路には高周波信号源8が接続され、共振周波数f_(0)において、前記検出電極2bの電位が最大となり、
前記タンク4に投入される測定対象物6が、前記検出電極2bに接すると、前記測定対象物6の静電容量C_(x)、コンダクタンスR_(x)が並列に接続された状態となって、前記静電容量C_(x)により共振状態がくずれて、前記検出電極2bの電位が大きく低下し、この電圧の変化に基づいて、前記測定対象物6が所定のレベルに達したか否かを測定する、前記タンク4内に投入した液体・粉体等のレベルを検出するレベル検出装置において、
前記検出電極2bを前記タンクに取り付けた後に、トリマVCを回転して、前記トリマVCの回転角と出力電圧V_(0)との関係が第5図Aの曲線αに示すような状態にあるとき、同調点aをさがすことにより、前記高周波信号源8の発信周波数を前記並列共振回路の共振周波数f_(0)に合致させること」




3 引用文献3
上記引用文献3の【0012】?【0014】、【0020】?【0025】には、次の技術事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[引用文献3記載事項]
「共振回路が燃料タンク15の内部に取り付けられ、前記燃料タンク15内の燃料レベルの変化により生じる前記共振回路の負荷における変化を表すパラメータを測定する液体測定システム10において、
コントローラ30が、全動作温度幅(-40から+80℃)を通じて線形の傾きでシステムが動作するように、1回目の電源投入の後(又は要求により)共振回路の共振周波数(fc)を検知し、RF生成器35の動作周波数が、fcをわずかに上回るように、周波数を調整するにあたり、
前記コントローラ30は、共振回路の共振周波数fcを発見するために(周波数を低から高に又は高から低に走査して)動作周波数を最低周波数から最高周波数まで変化させ、
前記コントローラ30はその後、周波数応答曲線の略線形部分におけるある点に動作周波数を調整及び固定すること。」

4 引用文献4
上記引用文献4の段落【0021】?【0022】には、次の技術事項(以下、「引用文献4記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[引用文献4記載事項]
「燃料タンク1内の燃料の液位が変化すると、測定電極2A,2B間のインピーダンス(静電容量)Zが変化し、この変化に伴って、測定電極2A,2B間に流れる電流値が変化し、この変化に応じてインピーダンスZとコンデンサC1との接続点の電圧が変化し、交流増幅器5の増幅された交流信号の振幅も変化し、これにより同期検波部6で同期検波され、直流増幅器7で直流増幅された信号のレベルも変化し、この変化する信号レベルから演算処理部8が現在の液位を判定検知する技術において、
液面の揺れなどを考慮して前記演算処理部8に入力する信号レベルを平均化する手段を設けること。」

5 引用文献5
上記引用文献5の【0002】?【0004】には、次の技術事項(以下、「引用文献5記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[引用文献5記載事項]
「上下方向に配列された10個のセグメントS1?S10を有する燃料表示制御装置の表示ユニット7において、
燃料タンク内の燃料を、セグメントS1?S10に対応させて表示する通常表示モード(A)と、セグメントS1?S8に対応させて表示する拡大表示モード(B)とで、燃料残量表示を行い、
液面センサにより検出される燃料タンク内の燃料残量が、満タンから通常表示モードにおけるセグメントS1?S4を表示させるべき残量に対応する場合には、通常表示モード(A)で表示を行い、
通常表示モード(A)においてセグメントS4を消灯させてセグメントS1?S3のみを点灯させるべき所定の燃料残量である所定値になると、拡大表示モード(B)に移行して、通常表示モードではS3以下のセグメントで表示される燃料残量を、S1?S8までの8個のセグメントで表示すること。」

6 引用文献6
上記引用文献6の第1頁右下欄第10?11行、第2頁左上欄第13行?第3頁左上欄第4行には、次の技術事項(以下、「引用文献6記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[引用文献6記載事項]
「下水処理場の沈澱池の水位を計測する場合などに使用され、測定値の表示部分12と上限、下限警報設定値の表示部分13、14とをバーグラフの表示部10、11においてセグメントが点灯表示されることにより表示する表示方式において、上記測定値の表示部分12と上記上限、下限警報設定値の表示部分13、14とを同じバーグラフの表示部10、11に表示させると共に、表示の重なる部分はその部分の1セグメントのみを消灯させて反転表示させること。」

7 引用文献7
上記引用文献7の【0021】?【0025】、【0046】?【0051】には、次の技術事項(以下、「引用文献7記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[引用文献7記載事項]
「タンク2と、前記タンク2の外壁側面に接着され、且つ、膜状又はシート状の2つの電極11a、bが同一平面上に間隔を設けて配置された静電容量センサ1とを備え、前記静電容量センサ1により測定された静電容量に基づき、内容物が所定量以上存在するか否かを判定する、タンク2内の内容物管理システムにおいて、
前記静電容量センサ1の変換部12が、測定した静電容量をLC発振回路により周波数に変換して出力するものであり、
前記変換部12が温度センサを内蔵し、前記温度センサにより測定された温度、及び、周波数の温度依存性(一次近似式)に基づいて、周波数の補正を行うこと。」

8 引用文献8
上記引用文献8の【0014】?【0018】、【0031】?【0032】には、次の技術事項(以下、「引用文献8記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[引用文献8記載事項]
「 タンクV内の収納物Mのレベル位置を静電容量の変化に基づいて検知して検知信号を出力する静電容量式レベル検出装置であって、
前記タンクV内に突出するように取り付けられて、前記タンクV内の静電容量を検知し、検知した静電容量(計測静電容量C)に逆比例した周波数fで発振する発振周波数を出力する電極部Aと、
前記電極部Aから出力された発振周波数fから発振周期Tを得て、この検知した静電容量Cに比例する発振周期Tに基づき収納物Mのレベル位置に応じた検知信号を出力させる制御を行う制御部Bと、
を備えた静電容量式レベル検出装置において、
前記電極部A内に計測静電容量Cをもつコンデンサとは別に基準静電容量C0をもつ温度補償用コンデンサを前記タンクVの外壁に取り付け、
前記制御部Bは、前記温度補償用コンデンサからの周囲温度の変化による静電容量の変化に基づく発振周期の変化に基づいて、計測時の収納物Mのレベル位置での発振周期を補正して、検出レベル値の温度補償を行う、
静電容量式レベル検出装置。」


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
なお、対比の見出しは、本願発明1の構成の符号A、B等に対応させた記号(a)、(b)等を用いている。

(a)引用発明の「電圧制御発振回路50」は、「自走周波数fminから最高周波数fmaxまでの間の周波数で発振可能」であり、「矩形波パルス状の発振信号」を「駆動回路6」に与えるものであるところ、この「自走周波数fminから最高周波数fmaxまでの間の周波数」及び「矩形波パルス状の発振信号」が、それぞれ本願発明1の構成Aの「所望の周波数」及び「矩形発振信号」に相当する。
したがって、引用発明の「電圧制御発振回路50」は、本願発明1の構成Aの「所望の周波数の矩形発振信号を出力する発振回路」に相当する。

(b)引用発明の「共振回路1」は、「駆動回路6」からの「発振信号により駆動する」ものであり、上記(a)において述べたとおり、「電圧制御発振回路50」からの「矩形波パルス状の発振信号」が「駆動回路6」に与えられるから、「駆動回路6」からの「発振信号」も「電圧制御発振回路50」からの「矩形波パルス状の発振信号」に由来するものであるといえる。
そうすると、このような「矩形波パルス状の発振信号」に由来する「発振信号により駆動する」「共振回路1」は、本願発明1の構成Bの「前記矩形発振信号に結合され」る「共振回路」に相当する。
また、引用発明の「共振回路1」は、「電極体により形成される容量成分Cxと共振トランスLとの並列回路からな」り、「前記電極体が空気中にあるときの共振周波数をfa、前記被検出物が前記電極体に近接または接触したときの共振周波数をfrとした場合、前記被検出物の移動により共振回路の共振周波数が変化する」から、引用発明の「共振回路1」は、本願発明1の構成Bの「測定対象物の有無によって共振周波数が変化する共振回路」に相当する。
したがって、引用発明の「共振回路1」は、本願発明の構成Bの「前記矩形発振信号に結合され、測定対象物の有無によって共振周波数が変化する共振回路」に相当する。

(c)引用発明では、「被検出物が前記電極体に接近または接触した場合、前記共振回路1の共振周波数が、前記電圧制御発振回路50が追従できる範囲(キャプチャレンジ)内の周波数frに変化すると」、「前記位相比較回路3」は、「前記電圧制御発振回路50の発振信号の周波数faとの周波数差に対応した位相のずれ」を「検出」しており、この「共振回路1の共振周波数」の「変化」による「周波数差に対応した位相のずれ」が、本願発明1の構成Cの「間接的に取り出」された「前記矩形発振信号を与えた時の共振回路の出力信号」に相当する。
そして、引用発明では、上記「位相のずれ」に「応動」して「ループフィルタ40の制御信号の電圧」を「VaからVr」とし、「前記電圧制御発振回路50の発振信号の周波数をfrに一致させ」、「検出回路7」が、「制御信号の電圧Vrを前記基準設定回路9の基準値Vcと比較し、Vr<Vcとなったとき、出力回路10に検知信号を出力する」から、引用発明の「前記位相比較回路3」、「ループフィルタ40」、「基準設定回路9」及び「検出回路7」が、本願発明1の構成Cの「前記矩形発振信号を与えた時の共振回路の出力信号を、」「間接的に取り出し、」「測定対象物の有無を検出する検出回路」に相当する。

(d)引用発明において、「被検出物がない状態で前記静電容量式検知装置を容器などに設置」し、「電源投入により動作」させて、「前記電圧制御発振回路50の発振信号が前記共振回路1の上記共振周波数faと一致」すると、「前記制御信号が一定電圧Vaとなり、その状態を保持すること」は、本願発明1の構成Dの「測定対象物が無い状態」「において初期設定を行う」ことに相当する。
また、「位相比較回路3」から「出力」される「位相差信号PC」を「制御信号に変換して、前記電圧制御発振回路50と前記検出回路7に出力し、以後、この動作を繰返し、位相差がなくなったとき、つまり前記電圧制御発振回路50の発振信号が前記共振回路1の上記共振周波数faと一致したとき、前記制御信号が一定電圧Vaとなり、その状態を保持する」「ループフィルタ40」は、本願発明1の構成Dの「前記矩形発振信号の周波数を変化させて」、「前記矩形発振信号の周波数を選択して設定する周波数設定手段」に相当する。

(e)引用発明の「静電容量式検知装置」は、「気体または粉粒体などの容器に収容された被検出物」の「レベルなどを、近接もしくは接触で検出する」ものであるから、本願発明1の構成Eの「対象物検出センサ」に相当する。

以上より、本願発明1と引用発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点1及び2で相違する。

[一致点]
「 A 所望の周波数の矩形発振信号を出力する発振回路と、
B 前記矩形発振信号に結合され、測定対象物の有無によって共振周波数が変化する共振回路と、
C’ 前記矩形発振信号を与えた時の共振回路の出力信号を、間接的に取り出し、測定対象物の有無を検出する検出回路と、
D’ 測定対象物が無い状態において初期設定を行う際に、前記矩形発振信号の周波数を変化させて、前記矩形発振信号の周波数を選択して設定する周波数設定手段とを備える、
E 対象物検出センサ。」

[相違点1]
「測定対象物の有無を検出する検出回路」が、本願発明1では、「前記矩形発振信号を与えた時の共振回路の出力信号」の「振幅に基づいて」検出を行うものである(構成C)のに対して、引用発明では、「共振回路1の共振周波数」の「変化」による「周波数差に対応した位相のずれ」に基づいて検出を行うものである点。

[相違点2]
「測定対象物が無い状態において初期設定を行う際に」用いられる「周波数設定手段」が、本願発明1では、「矩形発振信号の周波数を変化させてスイープし、検出回路によって検出される検出信号の振幅が最大または最小となるように前記矩形発振信号の周波数を選択して設定する」ものであり(構成D)、「i)検出信号がしきい値を超えなければ第1の速度で発振信号の周波数を変化させ、検出信号がしきい値を超えると前記第1の速度よりも遅い第2の速度で発振信号の周波数を変化させてスイープし、検出信号の振幅が最大となるように発振信号の周波数を選択し、またはii)検出信号がしきい値を下まわらなければ第1の速度で発振信号の周波数を変化させ、検出信号がしきい値を下まわると前記第1の速度よりも遅い第2の速度で発振信号の周波数を変化させてスイープし、検出信号の振幅が最小となるように発振信号の周波数を選択」するものであり(構成D-1)、「前記初期設定の際に、高い周波数から低い周波数へとスイープさせることで、高調波の影響を排除して周波数を設定する」ものである(構成D-2)のに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。

(2)判断
事案に鑑み、まず上記相違点2について、検討する。

ア 上記「(1)対比」の(d)において検討したとおり、引用発明の「ループフィルタ40」は、本願発明1の「周波数設定手段」に相当するところ、この「ループフィルタ40」は、「位相比較回路3」から「出力」される「位相差信号PC」を「制御信号に変換して、前記電圧制御発振回路50と前記検出回路7に出力し、以後、この動作を繰返し、位相差がなくなったとき、つまり前記電圧制御発振回路50の発振信号が前記共振回路1の上記共振周波数faと一致したとき、前記制御信号が一定電圧Vaとなり、その状態を保持することにより、校正に必要な作業をすることなく、電源投入により動作し、上記状態となるまでの時間は瞬時であり、即座に完了」するものである。

イ すなわち、引用発明の初期設定では、「電圧制御発振回路50の発振信号」(本願発明1の「発振回路」から「出力」される「矩形発振信号」に相当)の周波数を変化させてはいるものの、その変化の態様は、【図7】のAに図示されているように、制御電圧を0からVaまで単調に増加させ、【図8】の下図に図示されているように、それに応じて発振信号の周波数を変化させ、「共振回路1」の「共振周波数fa」に「一致」すると、【図7】のBに示されているように、制御電圧をVaのまま一定とし、以後は周波数を変化させないようにして、その初期設定を完了することになる。
要するに、引用発明の初期設定は、共振回路1の共振周波数に電圧制御発振回路50の発振信号の周波数を追随させるものであって、本願発明1の初期設定のように、「スイープ」(すなわち、本願の図面【図13】及び【図14】に開示されているように、周波数軸上のある始点(スイープ開始周波数)から終点(スイープ終了周波数)まで一方向に連続して周波数を変化させること)して、その途中にある共振回路の共振周波数を探すものではない。

ウ そして、引用発明では、上述のとおり、周波数軸上の始点(スイープ開始周波数)から終点(スイープ終了周波数)まで一方向に連続して周波数を変化させ、その途中にある共振回路の共振周波数を探すものではないから、例えば、「自走周波数fmin」をスイープ開始周波数とし、「最高周波数fmax」をスイープ終了周波数として、「自走周波数fmin」から「最高周波数fmax」まで一方向に連続して周波数を変化させる必要はなく、引用発明における「電圧制御発振回路50の発振信号」の周波数の変化を「スイープ」により実行する契機を見いだせない。

エ そうすると、引用文献3記載事項において、「共振回路の共振周波数fcを発見するために(周波数を低から高に又は高から低に走査して)動作周波数を最低周波数から最高周波数まで変化させ」ることが開示されているとしても、上述のような契機を欠く引用発明に上記引用文献3記載事項を適用して上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることは当業者といえども困難であるというべきである。

オ また、上記引用文献2や上記引用文献4?8の開示内容(上記引用文献2、4?8記載事項)に照らしても、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることができるとはいえない。

カ そうすると、引用発明に上記引用文献2?8記載事項を如何に適用しても、上記相違点2に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえないから、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2?8について
本願発明2?8も、上記相違点2に係る本願発明1の構成を含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明9?16について
本願発明9?16も、上記相違点2に係る本願発明1の構成と実質的に同じ構成を含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 小括
上記1?3において検討したとおりであるから、本願発明1?16は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

第6 原査定について
原査定は、本件補正前の請求項1?16に係る発明が、引用文献1?8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとしている。 特に、本審決における上記相違点2に関連して、原査定は次のように判断している。

「引用文献1の段落0054に「位相差がある場合は立下がりのパルス信号を発生させ、マイクロプロセッサ10に出力し、マイクロプロセッサ10はパルス信号が存在する間、分周比を順次変化、たとえば下限値から上限値まで単調増加を繰返すように変化させ、発振信号の周波数を増加させる」と記載されているように、引用文献1に記載の発明において、発振信号の周波数を順次変化させるに際して、増加させることは一例として挙げているものであって、他にも周波数を順次変化させる例があることがうかがえる。
すなわち、引用文献1に記載の発明において、発振信号の周波数を順次変化させるに際して、その変化の方法は当業者が適宜設計できることである。」

しかしながら、引用文献1の上記記載は、「位相差がある場合」に発生する「パルス信号が存在する間、分周比を順次変化」させて、「発振信号の周波数を増加させる」ものであって、位相差がなくなるとパルス信号は存在しなくなるから、その時点で発振信号の周波数の増加は終了することになる。
そうすると、引用文献1の上記記載によっても、その初期設定は、共振回路1の共振周波数に電圧制御発振回路50の発振信号の周波数を追随させるものであることに変わりはなく、本願発明1?16のように、周波数軸上の始点(スイープ開始周波数)から終点(スイープ終了周波数)まで一方向に連続して周波数を変化させ、その途中にある共振回路の共振周波数を探すものではない。
したがって、上記第5の4において述べたとおり、本願発明1?16は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから、原査定の拒絶の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。


 
審決日 2020-06-01 
出願番号 特願2018-99004(P2018-99004)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大森 努  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 濱野 隆
中澤 真吾
発明の名称 対象物検出センサ  
代理人 古谷 栄男  

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