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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1362927
審判番号 不服2019-5798  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-07 
確定日 2020-06-24 
事件の表示 特願2015-552731「クラスタ境界にわたるサービス移行」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月17日国際公開、WO2014/110062、平成28年 3月17日国内公表、特表2016-508349、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成26年1月8日の出願であって、平成29年9月29日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年12月27日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、平成30年5月9日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年8月16日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、平成30年12月27日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和元年5月7日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和元年5月23日付で審判請求書の請求の理由が補正され、令和元年6月13日に前置報告がされ、令和元年10月25日に審判請求人から前置報告に対する上申がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年12月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし9に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.小川大地,「第1回 Hyper-V 2.0のライブ・マイグレーションの基礎知識 (5/5)」,[オンライン],2009年12月16日,[検索日 2018.05.09],インターネット:
2.Kejiang Ye, et al.,VC-Migration: Live Migration of Virtual Clusters in the Cloud,2012 ACM/IEEE 13th International Conference on Grid Computing,2012年 9月20日,pp.209-218

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1に「前記コピーしたアーティファクトが少なくとも証明書を含む」という事項(以下、「追加事項」という。)を追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、追加事項は、当初明細書の段落【0013】に記載されているから、当該補正は新規事項を追加するものではない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし9に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、令和元年5月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は、以下のとおりの発明である。

「 コンピュータ実装方法であって、
ネットワーク上のコンピューティング環境において第1クラスタで起動しているサービスの第1インスタンスからアーティファクトをコピーするステップであって、
前記第1クラスタが、前記サービスの第1インスタンスを起動するために第1グループの仮想マシンを含み、
前記サービスの第1インスタンスを起動するための第1グループの仮想マシンが、起動状態にある複数の第1部分を含み、IPアドレスに関連付けられる、
ステップと、
前記サービスの第1インスタンスからコピーされた前記アーティファクトを用いて、前記ネットワーク上の前記コンピューティング環境の第2クラスタにおいて、前記サービスの第2インスタンスを、第2クラスタにおける1つ以上のノードを選択し、且つ前記サービスの第2インスタンスを起動するために第2グループの仮想マシンを構成することによって、生成するステップであって、
前記サービスの第2インスタンスを起動するための第2グループの仮想マシンが、起動していない状態にある複数の第2部分を含み、
該複数の第2部分のそれぞれが、前記複数の第1部分の内1つに対応して、前記IPアドレスにも関連付けられる、ステップと、
前記第1クラスタにおける前記サービスの第1インスタンスに対し、前記複数の第1部分の内の1つの第1部分を停止するステップであって、その結果、該複数の第1部分の内の該1つの第1部分が前記起動していない状態となる、ステップと、
前記第2クラスタにおける前記サービスの第2インスタンスに対し、前記複数の第2部分の内の対応する部分を開始するステップであって、その結果、該複数の第2部分の内の該対応する部分が前記起動状態となる、ステップと、
前記起動状態にある前記複数の第1部分および前記複数の第2部分の内の前記部分のみへのアクセスを提供するために、前記ネットワークを更新するステップと、
前記複数の第1部分の内の全ての部分が前記起動していない状態となるまで、且つ、前記複数の第2部分の内の全ての対応する部分が前記起動状態となるまで、前記停止するステップ、前記開始するステップ、および前記更新するステップを2回以上実行するステップと、
前記第1クラスタにおいて前記サービスの第1インスタンスを削除するステップと、
を含み、
前記コピーしたアーティファクトが少なくとも証明書を含む、方法。」

本願発明2ないし6は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明7は、本願発明1に記載の方法をシステムとした発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願請求項8、9は、本願発明7を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「ライブ・マイグレーションの動作
1. 構成要件のチェック
ライブ・マイグレーションを指示すると、最初にライブ・マイグレーション可能な構成であるかどうか、以下のような構成チェックが行われる。要件に満たない場合は、ここでエラー終了となる。

・ライブ・マイグレーション用のネットワークが設定されているか
・移動元と移動先それぞれのホストのプロセッサに互換性があるか
・対象の仮想マシンを稼働させるのに必要な空きメモリが移動先ホストにあるか
・など」

「2. 移動先ホストで仮想マシンを構成
移動先ホストにおいて、仮想マシンの枠組みを構成する。具体的には、仮想マシンのメモリ領域を確保し、メモリ内容の転送を受け入れる準備などが行われる。」

「3. メモリ内容のコピー
移動対象となる仮想マシンのメモリ内容を移動先ホストへネットワーク経由でコピーする。

ただし、仮想マシンはまだ動作中であるため、この間もメモリ内容は随時変更されてしまう。コピー中に変更が行われたブロックについては、一通りのコピーが完了した後に差分ブロックを再転送する。そして、またこの間に変更が行われた場合はそのブロックを再転送するといったように、移動元と移動先が同期するまでブロック単位のコピーを繰り返していく。」

「4. 仮想マシンのサスペンド
メモリ内容が同期すると、即座に仮想マシンのフリーズを行う。これにより、仮想マシンの動作が止まり、VHDファイルへのディスクI/Oも停止する。」

「5. 仮想マシンのリジューム
メモリ内容の受け取りが完了し、VHDファイルも引き継げる状態となったため、移動先のホストで仮想マシンを再開する。CSVを利用しているため、クイック・マイグレーションのような共有ディスクの所有権変更は行わない。

また、同時にネットワーク・スイッチに対してMACアドレス・テーブルの更新を促す。これにより、仮想マシンのMACアドレスをあて先とするパケットは、きちんと移動先ホストへ向かうようになるのだ。ライブ・マイグレーションではIPアドレスはもちろん、仮想マシンのMACアドレスも引き継がれるため、クライアント側であて先変更などの作業は一切必要ない。」

「6. 移動元ホスト上で仮想マシンを削除する
ネットワーク・パケットが正しく移動先ホストに届くようになれば、クライアントとの通信も再開される。移動元ホストに残った、仮想マシンのメモリ・データを削除して、ライブ・マイグレーションは完了だ。」

「ライブ・マイグレーションのダウンタイム
前述したライブ・マイグレーションの動作では、処理中に仮想マシンのサスペンドとリジュームが行われると説明した。つまり、ライブ・マイグレーションであってもダウンタイムは生じるということになる。」









したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 共通のVHDファイルにアクセス可能な移動元ホストから移動先ホストへ仮想マシンをライブ・マイグレーションする方法であって、
ライブ・マイグレーションを指示すると、ライブ・マイグレーション可能な構成であるかどうか、移動先ホストのネットワーク設定、プロセッサの互換性、空きメモリ容量について構成チェックを行うステップ1と、
移動先ホストにおいて、仮想マシンのメモリ領域を確保し、メモリ内容の転送を受け入れる準備など、仮想マシンの枠組みを構成するステップ2と、
移動対象となる仮想マシンのメモリ内容を移動先ホストへネットワーク経由でコピーするステップ3と、
メモリ内容が同期すると、即座に仮想マシンのフリーズを行い、これにより、仮想マシンの動作が止まり、VHDファイルへのディスクI/Oも停止する、仮想マシンをサスペンドするステップ4、
移動先ホストの仮想マシンを開始し、同時にネットワーク・スイッチのMACアドレス・テーブルを更新し、これにより、仮想マシンのMACアドレスをあて先とするパケットは、きちんと移動先ホストへ向かうようになる、仮想マシンをレジュームするステップ5、
移動元ホストに残った、仮想マシンのメモリ・データを削除するステップ6、
とから構成され、
ステップ4と5の間、ダウンタイムが生じ、
IPアドレスとMACアドレスが引き継がれるため、クライアント側であて先変更などの作業は一切必要ない、
方法。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2のII. VC-MIGRATIONFRAMEWORK - B. VC Migration Strategies 1) Concurrent Migration with VariousGranularity」、「IV. DYNAMIC MIGR
ATION STRATEGIES OF VIRTUAL CLUSTER - C.Concurrent Migration with Various Granularity」、Figure2(a)、Figure 6の記載からみて、当該引用文献2には、
「 クラウド上の仮想クラスタ間で仮想マシンをライブ・マイグレーションする技術の一つである、仮想クラスタ全体を同時的にマイグレートする並列マイグレーション(concurrent migration)において、粒度(granularity)が16、すなわち、同時的にマイグレーションする仮想マシンの数が16に達すると、ネットワークのバンド幅に対する負荷及び仮想マシン間メッセージ送信の同期遅延により、HPL(High Performance Linpack)性能が著しく減少すること。」
という技術的事項が記載されていると認められる。

3.その他の文献について
前置報告書において周知技術を示す文献として引用された引用文献3(3.安納順一 ,「Windows Azure Platform 運用設計 第1.1 版」,[オンライン],日本マイクロソフト株式会社,2011年 6月27日,[検索日 2019.05.12],インターネット:)のページ21及び65には、GuestVMを構成するパッケージファイルの各種設定には「証明書」が含まれることが記載されている。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 仮想マシンのライブ・マイグレーションが、当該仮想マシンが実装されているコンピュータに実装されたハードウェア又は/及びソフトウェアにより実行されるものであることは技術常識であることを踏まえれば、引用発明の「共通のVHDファイルにアクセス可能な移動元ホストから移動先ホストへ仮想マシンをライブ・マイグレーションする方法」は、本願発明1の「コンピュータ実装方法」に相当することは自明である。
イ 引用発明は、移動元ホストから移動先ホストへ、メモリ内容をネットワーク経由でコピーするものである。ここで、前記メモリ内容は、各ホスト上に実装される仮想マシンを実現するためのものであることは技術常識である。
また、ホストがクライアントに対して何らかのサービスを提供することは技術常識であるところ、引用発明においては、クライアント側のあて先となる移動元ホスト又は移動先ホストは、クライアントに対して何らかのサービスを提供していることは自明であるから、前記メモリ内容は、本願発明1の「サービスのインスタンス」に相当するものであり、さらに、コピーされる「メモリ内容」の個々のデータは、以下の相違点を除いて「アーティファクト」と言い得るものである。
また、引用発明の移動先ホスト及び移動先ホストは、いずれも「ネットワーク上のコンピューティング環境」にあるものであって、サービスが起動される主体(サービス起動主体)である点において、本願発明1の「クラスタ」と共通する。なお、本願発明1と同様に、移動(コピー)元に関するものを「第1」、移動(コピー)先に関するものと「第2」と称することは任意である。
以上より、本願発明1と引用発明とは「ネットワーク上のコンピューティング環境において第1サービス起動主体で起動しているサービスの第1インスタンスからアーティファクトをコピーするステップ」を備える点において共通する。
ウ 前記イに関連して、本願発明1と引用発明とは、「前記第1サービス起動主体が、前記サービスの第1インスタンスを起動するために第1の仮想マシンを含み、」を備える点において共通する。
エ また、引用発明は、ステップ1ないし3の間は、移動元ホストの仮想マシンの少なくとも一部分が起動状態にあるが、起動状態にあるホストがIPアドレスに関連づけられていることを前提にクライアントが当該IPアドレスを用いてホストにアクセスすることによりホストからサービス提供を受けることができることは技術常識であるところ、引用発明において、起動状態にある移動元ホストに、クライアントからアクセスし得るIPアドレスが関連づけられていることは明らかであるから、本願発明1とは、「前記サービスの第1インスタンスを起動するための第1の仮想マシンが、起動状態にある部分を含み、IPアドレスに関連付けられる」を備える点において共通する。
オ 仮想マシンなどのサービス主体を生成するにあたり、当該仮想マシンに必要なリソースを選択することは技術常識であるところ、引用発明のステップ1及び2において、移動先ホストにおける仮想マシン(すなわちサービスのインスタンス)は、少なくとも、互換性のあるプロセッサ、空き容量のあるメモリが選択されて構成されることは明らかであり、これらを「ノード」と称することは任意である。また、仮想マシンの生成には、メモリに記憶されたプログラム及びデータ等を使用することは技術常識であるところ、引用発明において、移動先ホストにおける仮想マシン(すなわちサービスのインスタンス)の生成には、コピーされたメモリ内容が用いられることは自明である。
よって、本願発明1と引用発明とは、「前記サービスの第1インスタンスからコピーされた前記アーティファクトを用いて、前記ネットワーク上の前記コンピューティング環境の第2サービス提供主体において、前記サービスの第2インスタンスを、第2クラスタにおける1つ以上のノードを選択し、且つ前記サービスの第2インスタンスを起動するために第2グループの仮想マシンを構成することによって、生成するステップ」を備える点において共通する。
カ 引用発明において、起動先ホストにおいて生成された仮想マシン(サービスのインスタンス)は、ステップ5において再開すなわち起動されるが、起動状態にあるものを起動することはあり得ないから、生成当初は、起動されていない状態であることは自明である。
よって、本願発明1と引用発明とは、「前記サービスの第2インスタンスを起動するための第2の仮想マシンが、起動していない状態にある部分を含み、」を備える点において共通する。
キ 本願発明1は、「該複数の第2部分のそれぞれが、前記複数の第1部分の内1つに対応して、前記IPアドレスにも関連付けられる」は、「複数の第2部」は、「第2グループの仮想マシン」を構成するものであるから、結局、「第2グループの仮想マシン」に「前記IPアドレス」が関連づけられることを意味する。
一方、引用発明において、移動先ホストの仮想マシンは、移動元ホストの仮想マシンがサスペンドした後にレジュームされるため、移動ホストの仮想マシンから移動先ホストの仮想マシンへのIPアドレスの引き継ぎは、MACアドレス・テーブルの更新(MACアドレスの引き継ぎ)と同じタイミングでなされると解される。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「最終的には、第2サービス提供主体の仮想マシンにも前記IPアドレスが関連づけられる」点において共通する。
ク 引用発明において、移動元ホストの仮想マシンをフリーズ及びサスペンドするステップ4と、当該仮想マシンのメモリ・データを削除するステップ6は、移動元ホストの仮想マシンによって提供されるサービスのインスタンスを削除することに相当する。
よって、本願発明1と引用発明とは、「前記第1サービス提供主体において前記サービスの第1インスタンスを削除するステップ」を備える点において共通する。

(2)一致点・相違点
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
「 コンピュータ実装方法であって、
ネットワーク上のコンピューティング環境において第1サービス起動主体で起動しているサービスの第1インスタンスからアーティファクトをコピーするステップであって、
前記第1サービス起動主体が、前記サービスの第1インスタンスを起動するために第1の仮想マシンを含み、
前記サービスの第1インスタンスを起動するための第1の仮想マシンが、起動状態にある部分を含み、IPアドレスに関連付けられる、
ステップと、
前記サービスの第1インスタンスからコピーされた前記アーティファクトを用いて、前記ネットワーク上の前記コンピューティング環境の第2サービス提供主体において、前記サービスの第2インスタンスを、第2クラスタにおける1つ以上のノードを選択し、且つ前記サービスの第2インスタンスを起動するために第2グループの仮想マシンを構成することによって、生成するステップ
前記第1サービス提供主体において前記サービスの第1インスタンスを削除するステップと、
を含み、
最終的には、第2サービス提供主体の仮想マシンにも前記IPアドレスが関連づけられる、
方法。」

[相違点]
<相違点1>
「サービス提供主体」が、本願発明1は、「クラスタ」であるのに対し、引用発明は、単に「ホスト」である点。
<相違点2>
「仮想マシン」が、本願発明1は「グループ」を構成するのに対し、引用発明は、そのような構成を備えない点。
<相違点3>
本願発明1は、
「仮想マシン」が、複数の「部分」を有し、「第1クラスタ」の「第1グループの仮想マシン」の「複数の第1部分」の各「部分」と、「第2クラスタ」の「第2グループの仮想マシン」の「複数の第2部分」の各「部分」とは対応しており、
当初は、「複数の第1部分」は「起動状態」にあり、「複数の第2部分」が「起動していない状態」にあり、両者に「IPアドレス」が関連づけられ、その後、
「複数の第1部分」の内の1つの部分を「起動していない状態」にして停止するステップと
「複数の第2部分」の内の1つの部分を「起動状態」にして開始するステップと、
「複数の第1部分」と「複数の第2部分」とのそれぞれの「起動状態」にある部分のみへのアクセスを提供するために、ネットワークを更新するステップとを、
「複数の第1部分」の全ての部分が「起動していない状態」となるまで、且つ、「複数の第2部分」の全ての部分が「起動状態」となるまで、2回以上繰り返すステップ、を備えるのに対し、
引用発明は、
「仮想マシン」が複数の「部分」を有して構成されておらず、
移動元ホストのメモリ内容と移動先ホストのメモリ内容とが同期した後で、移動元ホストの仮想マシンをフリーズし、移動先ホストの仮想マシンを開始すると同時に、IPアドレスを移動元ホストの仮想マシンから移動先ホストの仮想マシンに引き継ぐように構成されている点。
<相違点4>
本願発明1は、コピーする「アーティファクト」が少なくとも「証明書」を含むのに対し、引用発明は、コピーする「メモリ内容」の具体的な内容が明らかとされていない点。

(3)相違点についての判断
ア 相違点1及び相違点2について
引用文献2には、クラウド上の仮想クラスタ間で仮想マシンをライブ・マイグレーションする技術が記載されている。引用発明と引用文献2に記載された技術とは、仮想マシンのライブ・マイグレーションに関する技術である点において共通している。
よって、引用発明に引用文献2に記載された技術を適用することにより、引用発明の「仮想マシン」を「クラスタ」に実装することは当業者が容易に想到し得たことである。また、「クラスタ」は「グループ」ともいえるから、引用発明の「仮想マシン」を「グループ」として構成することも当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、相違点1及び2に係る本願発明1の構成は、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用することにより当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点3について
引用文献2には、仮想クラスタが複数の仮想マシンで構成され、複数の仮想マシンを所定の「粒度」単位で同時的にマイグレーション(移行)する技術が記載されており、この「粒度」単位は、移行元と移行先とで「対応」していることは明らかであるから、本願発明1の「複数の部分」の内の「1つの部分」に対応しているといえなくもない。
しかしながら、引用文献2には、前記「粒度」単位のすべてを移行先の仮想クラスタに移行した後に、移行元クラスタの仮想マシンに関連づけたIPアドレスを、移行先の仮想クラスタに関連づけること、及び、移行元クラスタにおいて、「粒度」単位ごとに「停止」したり、移行先クラスタにおいて、「粒度」単位ごとに「起動」したりすることについては記載されていない。
また、当該相違点3に係る本願発明1の構成により、本願発明1は、「サービスが両方のクラスタ上で停止される期間はない。したがって、サービスは、常に休止時間なしでユーザに利用可能となる。」(本願明細書【0028】)という格別な効果を奏することができる。

したがって、引用文献2に記載された技術的事項を勘案しても、当業者が相違点3に係る本願発明1の構成を想到することはできない。

ウ 相違点4について
引用文献3には、周知技術として、GuestVMを構成するパッケージファイルの各種設定には「証明書」が含まれることが記載されているが、この「証明書」がマイグレーションの際に「コピー」の対象になることは記載されていない。
一方、引用発明は、移動元ホストと移動先ホストは共通のVHDファイルにアクセスできるように構成されており、移動先ホストが開始されると、当該移動先ホストはVHDファイルにアクセスできるようになるから、VHDファイルに格納されたデータはコピーの対象とならないことは明らかである。
ここで、仮に、引用発明に引用文献3に記載された周知技術を適用した場合に、「証明書」が、コピーの対象となるメモリに記憶されるのか、あるいは、コピーの対象とならないVHDファイルに格納されるのかが明らかではなく、かつ、前者を採用すべき理由もない。

よって、引用文献3に記載された周知技術を勘案したとしても、当業者が相違点4に係る本願発明1の構成を想到することはできない。

以上より、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし6について
本願発明2-6も、相違点3及び相違点4に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明7ないし9について
本願発明7は、本願発明1に対応するシステムの発明であり、相違点3及び相違点4に係る本願発明1の構成を備えるものであり、本願発明7を引用する本願発明8及び9も、相違点3及び相違点4に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-9は、「(サービスの第1インスタンスからコピーされたアーティファクトであって、サービスの第2インスタンスを、生成するステップで用いられる)前記コピーしたアーティファクトが少なくとも証明書を含む」ものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1及び2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-06-09 
出願番号 特願2015-552731(P2015-552731)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 玉木 宏治松崎 孝大中川 幸洋速水 雄太  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 太田 龍一
林 毅
発明の名称 クラスタ境界にわたるサービス移行  
代理人 宮前 徹  
代理人 山本 修  
代理人 中西 基晴  
代理人 小野 新次郎  
代理人 末松 亮太  
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