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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  A63F
管理番号 1362971
審判番号 不服2019-12855  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-27 
確定日 2020-07-02 
事件の表示 特願2017- 87965号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月20日出願公開、特開2017-124328号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年3月28日に出願された特願2013-70629号の一部を平成29年4月27日に新たな特許出願としたものであって、平成30年3月9日に手続補正書及び上申書が提出され、同年4月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月24日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月4日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成31年1月8日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和1年6月27日付けで、平成31年1月8日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、令和1年9月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 原審における補正の却下の決定の当否について
審判請求人は、審判請求書の請求の趣旨において、「令和1年6月27日になされた補正却下の決定並びに原査定を取り消す。本願発明は特許すべきものとする、との審決を求める。」としているので、令和1年6月27日付けの補正の却下の決定の当否について検討する。

[補正の却下の決定の当否の結論]
令和1年6月27日付け補正の却下の決定を取り消す。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲
平成31年1月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は次のとおり補正された(下線部は補正箇所であり、当審で付した。)。

「【請求項1】
所定の遊技領域内に設けられており、遊技球が通過可能なゲート部材、および、可動部材の作動により遊技球の入賞が容易な状態と困難な状態とに切り替えられる始動口と、
前記始動口への遊技球の入賞に基づいて抽選を行う抽選手段と、
所定の演出が行われる演出手段と、
待機位置から演出位置に動作可能な役物構造体と、
前記抽選手段による抽選結果に基づき前記演出手段にて前記所定の演出を伴う変動表示ゲームの実行を制御する演出制御手段と、
前記抽選結果に基づいて大当たり遊技を実行可能な大当たり遊技実行手段と、
前記大当たり遊技が実行されたのち、通常遊技状態よりも遊技者に有利な有利遊技状態に制御可能な有利遊技状態制御手段と、
前記有利遊技状態中に前記有利遊技状態に制御されている旨を遊技者が把握できるように示した外部有利状態に制御する外部有利状態報知手段と、
前記有利遊技状態において、遊技球が前記ゲート部材を通過したことに基づき前記始動口へ遊技球が入賞容易となるように前記可動部材の制御を実行可能な可動制御手段と、
を備え、
前記演出制御手段により行われる前記変動表示ゲームの実行時間は、前記抽選結果に応じて参照されている変動パターンテーブルから決定され、
前記変動パターンテーブルは、前記有利遊技状態の制御が開始されてからの変動回数によって変更されえるように構成され、前記抽選が高速消化されるように前記有利遊技状態に制御されてから予め定められた規定回数まで高速変動パターンテーブルが参照されるように設定されており、前記規定回数まで設定された前記高速変動パターンテーブルを参照し前記抽選結果の導出を高速で実行可能な高速抽選消化手段を有し、
前記高速変動パターンテーブルが前記規定回数参照された後の前記有利遊技状態において前記高速変動パターンテーブルが参照される場合よりも前記抽選結果の導出が相対的に長く設定されている通速変動パターンテーブルが参照されるように前記変動パターンテーブルの変更が行われ、
前記通速変動パターンテーブルは、前記高速変動パターンテーブルが参照される前記規定回数よりも多い特定回数参照されるようにされており、
前記高速抽選消化手段により前記抽選が高速消化される間において、複数回の抽選が消化される期間にわたって一連の表示演出を実行可能な回数演出手段を有し、
前記外部有利状態報知手段により示される前記外部有利状態は、前記高速抽選消化手段による前記高速消化が終了したのち、一定回数の前記抽選が消化されたことをもってにより終了するものであり、
前記高速抽選消化手段により行われる前記抽選結果の導出中は、前記役物構造体を動作可能にされており、前記大当たり遊技が実行される場合においては前記役物構造体を前記演出位置に動作させることで前記大当たり遊技が実行されることを遊技者に報知するとともに、前記大当たり遊技が実行されることがない場合においては、前記役物構造体が前記待機位置から前記演出位置まで動作しないものの、前記待機位置から前記演出位置まで動作するか否かを煽る演出を実行可能にしている
ことを特徴とする遊技機。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年4月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
所定の遊技領域内に設けられており、遊技球が通過可能なゲート部材、および、可動部材の作動により遊技球の入賞が容易な状態と困難な状態とに切り替えられる始動口と、
前記始動口への遊技球の入賞に基づいて抽選を行う抽選手段と、
所定の演出が行われる演出手段と、
待機位置から演出位置に動作可能な役物構造体と、
前記抽選手段による抽選結果に基づき前記演出手段にて前記所定の演出を伴う変動表示ゲームの実行を制御する演出制御手段と、
前記抽選結果に基づいて大当たり遊技を実行可能な大当たり遊技実行手段と、
前記大当たり遊技が実行されたのち、通常遊技状態よりも遊技者に有利な有利遊技状態に制御可能な有利遊技状態制御手段と、
前記有利遊技状態中に前記有利遊技状態に制御されている旨を遊技者が把握できるように示した外部有利状態に制御する外部有利状態報知手段と、
前記有利遊技状態において、遊技球が前記ゲート部材を通過したことに基づき前記始動口へ遊技球が入賞容易となるように前記可動部材の制御を実行可能な可動制御手段と、
を備え、
前記演出制御手段により行われる前記変動表示ゲームの実行時間は、前記抽選結果に応じて参照されている変動パターンテーブルから決定され、
前記変動パターンテーブルは、前記有利遊技状態の制御が開始されてからの変動回数によって変更されえるように構成され、前記抽選が高速消化されるように前記有利遊技状態に制御されてから予め定められた規定回数まで高速変動パターンテーブルが参照されるように設定されており、前記規定回数まで設定された前記高速変動パターンテーブルを参照し前記抽選結果の導出を高速で実行可能な高速抽選消化手段を有し、
前記高速変動パターンテーブルが前記規定回数参照された後の前記有利遊技状態において前記高速変動パターンテーブルが参照される場合よりも前記抽選結果の導出が相対的に長く設定されている通速変動パターンテーブルが参照されるように前記変動パターンテーブルの変更が行われ、
前記通速変動パターンテーブルは、前記高速変動パターンテーブルが参照される前記規定回数よりも多い特定回数参照されるようにされており、
前記高速抽選消化手段により前記抽選が高速消化される間において、複数回の抽選が消化される期間にわたって一連の表示演出を実行可能な回数演出手段を有し、
前記外部有利状態報知手段により示される前記外部有利状態は、前記高速抽選消化手段による前記高速消化が終了したのち、一定回数の前記抽選が消化されたことをもってにより終了するものであり、
前記高速抽選消化手段により行われる前記抽選結果の導出中は、前記役物構造体を動作可能にされており、前記大当たり遊技が実行される場合においては前記役物構造体を前記演出位置に動作させることで前記大当たり遊技が実行されることを遊技者に報知する
ことを特徴とする遊技機。」

2 本件補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「待機位置から演出位置に動作可能な役物構造体」に関して、「前記大当たり遊技が実行されることがない場合においては、前記役物構造体が前記待機位置から前記演出位置まで動作しないものの、前記待機位置から前記演出位置まで動作するか否かを煽る演出を実行可能にしている」ものに限定することを含むものである。
そして、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書の段落【0957】?【0959】、図137及び図138等の記載からみて、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「1 補正の内容」「(1)本件補正後の特許請求の範囲」においても示した次のとおりのものである(A?Qは、当審で分説して付与した。)。

(本願補正発明)
「【請求項1】
A 所定の遊技領域内に設けられており、遊技球が通過可能なゲート部材、および、可動部材の作動により遊技球の入賞が容易な状態と困難な状態とに切り替えられる始動口と、
B 前記始動口への遊技球の入賞に基づいて抽選を行う抽選手段と、
C 所定の演出が行われる演出手段と、
D 待機位置から演出位置に動作可能な役物構造体と、
E 前記抽選手段による抽選結果に基づき前記演出手段にて前記所定の演出を伴う変動表示ゲームの実行を制御する演出制御手段と、
F 前記抽選結果に基づいて大当たり遊技を実行可能な大当たり遊技実行手段と、
G 前記大当たり遊技が実行されたのち、通常遊技状態よりも遊技者に有利な有利遊技状態に制御可能な有利遊技状態制御手段と、
H 前記有利遊技状態中に前記有利遊技状態に制御されている旨を遊技者が把握できるように示した外部有利状態に制御する外部有利状態報知手段と、
I 前記有利遊技状態において、遊技球が前記ゲート部材を通過したことに基づき前記始動口へ遊技球が入賞容易となるように前記可動部材の制御を実行可能な可動制御手段と、
を備え、
J 前記演出制御手段により行われる前記変動表示ゲームの実行時間は、前記抽選結果に応じて参照されている変動パターンテーブルから決定され、
K 前記変動パターンテーブルは、前記有利遊技状態の制御が開始されてからの変動回数によって変更されえるように構成され、前記抽選が高速消化されるように前記有利遊技状態に制御されてから予め定められた規定回数まで高速変動パターンテーブルが参照されるように設定されており、前記規定回数まで設定された前記高速変動パターンテーブルを参照し前記抽選結果の導出を高速で実行可能な高速抽選消化手段を有し、
L 前記高速変動パターンテーブルが前記規定回数参照された後の前記有利遊技状態において前記高速変動パターンテーブルが参照される場合よりも前記抽選結果の導出が相対的に長く設定されている通速変動パターンテーブルが参照されるように前記変動パターンテーブルの変更が行われ、
M 前記通速変動パターンテーブルは、前記高速変動パターンテーブルが参照される前記規定回数よりも多い特定回数参照されるようにされており、
N 前記高速抽選消化手段により前記抽選が高速消化される間において、複数回の抽選が消化される期間にわたって一連の表示演出を実行可能な回数演出手段を有し、
O 前記外部有利状態報知手段により示される前記外部有利状態は、前記高速抽選消化手段による前記高速消化が終了したのち、一定回数の前記抽選が消化されたことをもってにより終了するものであり、
P 前記高速抽選消化手段により行われる前記抽選結果の導出中は、前記役物構造体を動作可能にされており、前記大当たり遊技が実行される場合においては前記役物構造体を前記演出位置に動作させることで前記大当たり遊技が実行されることを遊技者に報知するとともに、前記大当たり遊技が実行されることがない場合においては、前記役物構造体が前記待機位置から前記演出位置まで動作しないものの、前記待機位置から前記演出位置まで動作するか否かを煽る演出を実行可能にしている
Q ことを特徴とする遊技機。」

(2) 引用文献に記載された事項
ア 引用文献1(特開2012-10774号公報)
これに対して、令和1年6月27日付けの補正の却下の決定の理由で引用され、本願のもとの特許出願前に公知となった特開2012-10774号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「遊技機」の発明に関し、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した)。

(ア)「【0019】
[第1実施形態]
まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機1の全体の構成について説明する。図1はパチンコ遊技機1を正面からみた正面図である。図2は、大当りおよび小当りを含む当り種別の制御の特徴を表形式で説明する図である。
【0020】
パチンコ遊技機1は、縦長の方形状に形成された外枠(図示せず)と、外枠の内側に開閉可能に取付けられた遊技枠とで構成される。また、パチンコ遊技機1は、遊技枠に開閉可能に設けられている額縁状に形成されたガラス扉枠2を有する。遊技枠は、外枠に対して開閉自在に設置される前面枠(図示せず)と、機構部品等が取付けられる機構板(図示せず)と、それらに取付けられる種々の部品(後述する遊技盤6を除く)とを含む構造体である。
【0021】
ガラス扉枠2の下部表面には打球供給皿(上皿)3がある。打球供給皿3の下部には、打球供給皿3に収容しきれない遊技媒体としての遊技球を貯留する余剰球受皿4や、打球(遊技球)を発射する打球操作ハンドル(操作ノブ)5が設けられている。また、ガラス扉枠2の背面には、遊技盤6が着脱可能に取付けられている。なお、遊技盤6は、それを構成する板状体と、その板状体に取付けられた種々の部品とを含む構造体である。また、遊技盤6の前面には、打込まれた遊技球が流下可能な遊技領域7が形成されている。遊技領域7には、遊技球を誘導するための多数の釘が植設されている。
【0022】
遊技領域7の中央付近には、液晶表示装置(LCD)で構成された演出表示装置9が設けられている。演出表示装置9では、第1特別図柄または第2特別図柄の変動表示に同期した演出図柄(飾り図柄)の変動表示(可変表示、更新表示、または、巡回表示ともいう)が行なわれる。よって、演出表示装置9は、各々を識別可能な複数種類の識別情報としての演出図柄(飾り図柄)の変動表示を行なう変動表示装置に相当する。演出表示装置9では、表示画面上で演出図柄を表示する演出図柄表示領域が設けられており、当該演出図柄表示領域に、たとえば「左」,「中」,「右」の3つ(複数)の演出図柄を変動表示する表示領域としての図柄表示エリアがある。これら3つの演出図柄のそれぞれは、各々を識別可能な複数種類の識別情報としての演出図柄である。演出表示装置9は、演出制御基板に搭載されている演出制御用マイクロコンピュータによって制御される。演出制御用マイクロコンピュータが、第1特別図柄表示器8aで第1特別図柄の変動表示が実行されているときに、その変動表示に伴って演出表示装置9で演出表示を実行させ、第2特別図柄表示器8bで第2特別図柄の変動表示が実行されているときに、その変動表示に伴って演出表示装置で演出表示を実行させるので、遊技の進行状況を把握しやすくすることができる。」

(イ)「【0026】
第1特別図柄または第2特別図柄の変動表示は、変動表示の実行条件である第1始動条件または第2始動条件が成立(たとえば、遊技球が第1始動入賞口13または第2始動入賞口14に入賞したこと)した後、変動表示の開始条件(たとえば、保留記憶数が0でない場合であって、第1特別図柄および第2特別図柄の変動表示が実行されていない状態であり、かつ、大当り遊技が実行されていない状態)が成立したことに基づいて開始され、変動表示時間(変動時間)が経過すると表示結果(停止図柄)を導出表示する。なお、入賞とは、入賞口等の予め入賞領域として定められている領域に遊技球が入ったことである。また、表示結果を導出表示するとは、図柄(識別情報の例)を最終的に停止表示させることである。以下の説明においては、第1始動入賞口13に入賞したことを第1始動入賞と呼ぶ場合があり、第2始動入賞口14に入賞したことを第2始動入賞と呼ぶ場合がある。始動条件は成立しているが開始条件が成立していない変動表示に関するデータは、開始条件が成立するまで特別図柄の変動表示を行なう権利である保留記憶データとして保留して記憶される。具体的に、保留記憶データは、後述する遊技制御用マイクロコンピュータ560のRAM55の所定領域に記憶される。
【0027】
演出表示装置9は、第1特別図柄表示器8aでの第1特別図柄の変動表示時間中、および第2特別図柄表示器8bでの第2特別図柄の変動表示時間中に、装飾用(演出用)の図柄としての演出図柄(飾り図柄)の変動表示を行なう。第1特別図柄表示器8aにおける第1特別図柄の変動表示と、演出表示装置9における演出図柄の変動表示とは同期している。また、第2特別図柄表示器8bにおける第2特別図柄の変動表示と、演出表示装置9における演出図柄の変動表示とは同期している。同期とは、変動表示の開始時点および終了時点がほぼ同じ(全く同じでもよい。)であって、変動表示の期間がほぼ同じ(全く同じでもよい。)であることをいう。また、第1特別図柄表示器8aにおいて大当り図柄が停止表示されるときと、第2特別図柄表示器8bにおいて大当り図柄が停止表示されるときには、演出表示装置9において大当りを想起させるような演出図柄の組合せが停止表示される。前述した第1特別図柄表示器8a、第2特別図柄表示器8b、および、演出表示装置9は、識別情報の変動表示を行ない表示結果を導出表示する変動表示装置であり、変動表示部として用いられる。
【0028】
演出表示装置9の下方には、第1始動入賞口13を有する入賞装置が設けられている。第1始動入賞口13に入賞した遊技球は、遊技盤6の背面に導かれ、第1始動口スイッチ13aによって検出される。
【0029】
また、第1始動入賞口(第1始動口)13を有する入賞装置の下方には、遊技球が入賞可能な第2始動入賞口14(第2始動口)を有する可変入賞球装置15が設けられている。第2始動入賞口14に入賞した遊技球は、遊技盤6の背面に導かれ、第2始動口スイッチ14aによって検出される。可変入賞球装置15は、ソレノイド16によって開状態とされる。可変入賞球装置15が開状態になることによって、遊技球が第2始動入賞口14に入賞可能になり(始動入賞し易くなり)、遊技者にとって有利な状態になる。可変入賞球装置15が開状態になっている状態では、第1始動入賞口13よりも、第2始動入賞口14に遊技球が入賞しやすい。また、可変入賞球装置15が閉状態になっている状態では、遊技球は第2始動入賞口14に入賞しない。なお、可変入賞球装置15が閉状態になっている状態において、入賞はしづらいものの、入賞することは可能である(すなわち、遊技球が入賞しにくい)ように構成されていてもよい。」

(ウ)「【0040】
図2においては、大当りおよび小当りにおける当りの種別ごとに、大当り遊技状態または小当り遊技状態の終了後の大当り確率、大当り遊技状態または小当り遊技状態の終了後のベース、大当り遊技状態または小当り遊技状態の終了後の変動時間、大当りにおける開放回数(ラウンド数)、および、各ラウンドの開放時間が示されている。図2に示すように、ラウンド数が異なる大当り遊技状態としては、16ラウンドの大当り遊技状態と2ラウンドの大当り遊技状態との複数種類の大当り遊技状態が設けられている。小当りにおいては、2ラウンドの大当り遊技状態と同様の開放回数および開放時間の小当り遊技状態となる。
・・・
【0046】
「大当り」のうち、16ラウンドまたは2ラウンドの大当り遊技状態に制御された後、特別遊技状態として、通常状態(確変状態でない通常の遊技状態)に比べて大当りとすることに決定される確率が高い状態である確変状態(確率変動状態の略語であり、高確率状態ともいう)に移行する大当りの種類(種別)は、「確変大当り」と呼ばれる。また、特別遊技状態としては、確変状態に付随して、または、独立して、特別図柄や演出図柄の変動時間(変動表示期間)が通常状態(非時短状態)よりも短縮される時短状態に制御される場合もある。このように時短状態に移行したときには、特別図柄や演出図柄の変動時間が短縮されるので、有効な始動入賞が発生しやすくなり大当り遊技が行なわれる可能性が高まる。
【0047】
この実施の形態においては、時短状態として、標準時短状態と、当該標準時短状態よりもさらに変動時間が短縮される超時短状態との複数種類の時短状態が含まれている。したがって、以下の説明において、単に「時短状態」と示す場合は、「標準時短状態」と「超時短状態」との両方を包含した時短状態の総称としての意味を持つこととする。
・・・
【0051】
図2に示すように、16ラウンドの大当りとしては、16R(Rはラウンドを示す記号)通常大当りA?Cと、16R確変大当りA?Hとを含む複数種類の大当りが設けられている。また、2ラウンドの大当りとしては、2R確変大当りという1種類の大当りが設けられている。なお、2ラウンドの大当りとしては、大当り遊技状態後の制御状態が異なる複数種類の大当りを設けてもよい。
・・・
【0055】
16R確変大当りHは、大当り遊技状態の終了後に、確変状態、時短状態、および、電チューサポート制御状態に移行する制御が行なわれ、これらの制御状態が、次回の大当りが発生するまでの期間継続する大当りである。16R確変大当りHの大当り遊技状態の終了後には、時短状態として、標準時短状態よりも平均的な変動時間が短くされる超時短状態に制御される。
・・・
【0060】
また、16R確変大当りA?D,F,H、および、2R確変大当りにおける特別遊技状態としての確変状態および時短状態は、特別図柄の変動表示が予め定められた回数(たとえば、100回)実行されるまで継続可能とする、所謂回数切りとなるようにしてもよい。ただし、その場合は、変動表示回数が予め定められた回数に達する前に次回の大当りが発生したときには確変状態および時短状態が終了する。つまり、その場合は、変動表示が所定回数実行されるまでという条件、または、次回の大当りが発生するまでという条件のうちいずれか早い方の条件が成立するまでの期間に亘り確変状態および時短状態が継続する。そのような場合においては、時短状態が継続する回数(特別図柄および演出図柄の変動表示回数)は、固定的に定められているものであってもよく、または、大当りが発生するごとに複数種類の回数から選択(ランダムに選択、予め定められた順序で選択)されるものであってもよい。また、確変状態と時短状態とは、終了タイミングが異なるようにしてもよい。たとえば、確変状態を次回の大当り発生まで継続させ、時短状態を回数切りとなるようにしてもよく、その逆となるようにしてもよい。また、16R確変大当りE,Gにおける特別遊技状態としての確変状態は、特別図柄の変動表示が予め定められた回数(たとえば、100回)実行されるまで継続可能とする、所謂回数切りとなるようにしてもよい。」

(エ)「【0066】
遊技球がゲート32を通過しゲートスイッチ32aで検出されると、普通図柄表示器10の表示の変動表示が開始される。この実施の形態では、左右のランプ(点灯時に図柄が視認可能になる)が交互に点灯することによって変動表示が行なわれ、たとえば、変動表示の終了時に左側のランプが点灯すれば当りとなる。そして、普通図柄表示器10における停止図柄が所定の図柄(当り図柄「○」)である場合に、可変入賞球装置15が所定回数、所定時間だけ開状態になる。すなわち、可変入賞球装置15の状態は、普通図柄の停止図柄が当り図柄である場合に、遊技者にとって不利な状態から有利な状態(第2始動入賞口14に遊技球が入賞可能な状態)に変化する。
・・・
【0068】
前述した16R通常大当りA?C、16R確変大当りA?D,F,H、または、2R確変大当りによる大当り遊技状態に制御された後には、電チューサポート制御として、普通図柄の変動時間(変動表示開始時から表示結果の導出表示時までの時間)を短縮して早期に表示結果を導出表示させる制御(普通図柄短縮制御)、普通図柄の停止図柄が当り図柄になる確率を高める制御(普通図柄確変制御)、可変入賞球装置15の開放時間を長くする制御(開放時間延長制御)、および、可変入賞球装置15の開放回数を増加させる制御(開放回数増加制御)が行なわれる。このような制御が行なわれると、当該制御が行なわれていないときと比べて、可変入賞球装置15が開状態となっている時間比率が高くなるので、第2始動入賞口14への入賞頻度が高まり、遊技球が始動入賞しやすくなる(特別図柄表示器8a,8bや演出表示装置9における変動表示の実行条件が成立しやすくなる)。また、このような制御によって第2始動入賞口14への入賞頻度が高まることにより、第2始動条件の成立頻度および/または第2特別図柄の変動表示の実行頻度が高まる遊技状態となる。」

(オ)「【0077】
図3は、主基板(遊技制御基板)31における回路構成の一例を示すブロック図である。なお、図3には、払出制御基板37および演出制御基板80等も示されている。主基板31には、プログラムにしたがってパチンコ遊技機1を制御する遊技制御用マイクロコンピュータ(遊技制御手段に相当)560が搭載されている。遊技制御用マイクロコンピュータ560は、ゲーム制御(遊技進行制御)用のプログラム等を記憶するROM54、ワークメモリとして使用される記憶手段としてのRAM55、プログラムにしたがって制御動作を行なうCPU56およびI/Oポート部57を含む。この実施の形態では、ROM54およびRAM55は遊技制御用マイクロコンピュータ560に内蔵されている。すなわち、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、1チップマイクロコンピュータである。1チップマイクロコンピュータには、少なくともCPU56のほかRAM55が内蔵されていればよく、ROM54は外付けであっても内蔵されていてもよい。また、I/Oポート部57は、外付けであってもよい。遊技制御用マイクロコンピュータ560には、さらに、ハードウェア乱数(ハードウェア回路が発生する乱数)を発生する乱数回路503が内蔵されている。
・・・
【0082】
遊技制御用マイクロコンピュータ560は、第1始動口スイッチ13aまたは第2始動口スイッチ14aへの始動入賞が生じたときに乱数回路503から数値データをランダムRとして読出し、特別図柄および演出図柄の変動開始時にランダムRに基づいて特定の表示結果としての大当り表示結果にするか否か、すなわち、大当りとするか否かを決定する。そして、大当りとすると決定したときに、遊技状態を遊技者にとって有利な特定遊技状態としての大当り遊技状態に移行させる。」

(カ)「【0154】
また、時短状態のうち、超時短状態であるときには、標準時短状態であるときと比べて、変動時間が短い変動パターンが選択される割合が高くなる。」

(キ)「【0164】
CPU56は、所定の時期に、乱数回路503のカウント値を抽出して抽出値を大当り判定用乱数(ランダムR)の値と比較するのであるが、大当り判定用乱数値が図13(A)に示すいずれかの大当り判定値に一致すると、特別図柄に関して大当り(16R通常大当りA?C、16R確変大当りA?H、または、2R確変大当り)にすることに決定する。なお、図13(A)に示す「確率」は、大当りになる確率(割合)を示す。また、大当りにするか否か決定するということは、大当り遊技状態に移行させるか否か決定するということであるが、第1特別図柄表示器8aまたは第2特別図柄表示器8bにおける停止図柄を大当り図柄にするか否か決定するということでもある。
・・・
【0189】
図16および図17は、遊技制御用マイクロコンピュータ560が送信する演出制御コマンドの内容の一例を示す説明図である。図16に示す例において、コマンド80XX(H)は、特別図柄の変動表示に対応して演出表示装置9において変動表示される演出図柄の変動パターンを指定する演出制御コマンド(変動パターンコマンド)である(それぞれ変動パターンXXに対応)。つまり、使用され得る変動パターンのそれぞれに対して一意な番号を付した場合に、その番号で特定される変動パターンのそれぞれに対応する変動パターンコマンドがある。なお、「(H)」は16進数であることを示す。また、変動パターンを指定する演出制御コマンドは、変動開始を指定するためのコマンドでもある。したがって、演出制御用マイクロコンピュータ100は、コマンド80XX(H)を受信すると、演出表示装置9において演出図柄の変動表示を開始するように制御する。」

(ク)「【0209】
S300?S310の処理は、以下のような処理である。
特別図柄通常処理(S300):特別図柄プロセスフラグの値が0であるときに実行される。遊技制御用マイクロコンピュータ560は、特別図柄の変動表示が開始できる状態になると、変動表示を開始する特別図柄に対応する保留記憶バッファ(図20の第1保留記憶バッファまたは第2保留記憶バッファ)に記憶される数値データの記憶数(保留記憶数)を確認する。保留記憶バッファに記憶される数値データの記憶数は保留記憶数カウンタのカウント値により確認できる。また、保留記憶数カウンタのカウント値が0でなければ、第1特別図柄または第2特別図柄の変動表示の表示結果を大当りとするか否かを決定する。大当りとする場合には、大当り種別を決定する。また、大当りとしない場合には、小当りとするか否か(はずれとするか)を決定する。大当りとする場合には大当りフラグをセットする。小当りとする場合には小当りフラグをセットする。そして、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をS301に応じた値(この例では1)に更新する。なお、大当りフラグは、大当り遊技が終了するときにリセットされる。
【0210】
変動パターン設定処理(S301):特別図柄プロセスフラグの値が1であるときに実行される。また、変動パターンを決定し、その変動パターンにおける変動時間(変動表示時間:変動表示を開始してから表示結果を導出表示(停止表示)するまでの時間)を特別図柄の変動表示の変動時間とすることに決定する。また、特別図柄の変動時間を計測する変動時間タイマをスタートさせる。そして、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をS302に対応した値(この例では2)に更新する。」

(ケ)「【0231】
次に、図21?図26を用いて、遊技制御用マイクロコンピュータ560において、特別図柄および演出図柄の変動パターンを選択決定するために用いる変動パターンテーブルについて説明する。図21?図26は、変動パターンを決定するために用いるデータテーブルを表形式で示す図である。
【0232】
変動パターンテーブルとしては、ROM54に、通常状態はずれ時第1判定テーブル、通常状態はずれ時第2判定テーブル、標準時短状態はずれ時第1判定テーブル、標準時短状態はずれ時第2判定テーブル、標準時短状態はずれ時第3判定テーブル、超時短状態はずれ時第1判定テーブル、超時短状態はずれ時第2判定テーブル、超時短状態はずれ時第3判定テーブル、通常状態16R大当り時判定テーブル、標準時短状態16R大当り時判定テーブル、超時短状態16R大当り時判定テーブル、通常状態2R大当り時判定テーブル、標準時短状態2R大当り時判定テーブル、超時短状態2R大当り時判定テーブル、通常状態小当り時判定テーブル、標準時短状態小当り時判定テーブル、および、超時短状態小当り時判定テーブルが記憶されており、遊技状態に応じて選択的に用いられる。」

(コ)「【0355】
また、変動表示回数(たとえば100回)で超時短状態の継続期間を制限するときには、所定回数の変動表示が行なわれた後は、超時短状態から標準時短状態に移行するように制御をしてもよい。
・・・
【0398】
前述したように、時短状態となるときに、時短状態の種類を特定可能に標準時短状態指定コマンドと超時短状態指定コマンドとのいずれかを送信することにより、演出制御用マイクロコンピュータ100において、時短状態が、標準時短状態、および、超時短状態のうちどの種別の時短状態であるかを認識することができるので、たとえば、時短状態の種別に応じて異なる演出を行なうことができる。具体的に、時短状態の種別に応じて異なるキャラクタを表示する演出を行なうようにしてもよく、また、超時短状態のときに演出図柄を画面端部に移動させて変動表示させ、キャラクタを用いた演出等の所定の演出を複数回の変動表示にまたがる態様で実行し、大当りとなるときに、このような所定演出の結果として、大当りを連想させるような特定の演出を行なうようにしてもよい。また、標準時短状態と超時短状態とを含む時短状態となるときに、時短状態の種類を特定せずに、時短状態であることを示す状態指定コマンドを送信してもよい。その場合であっても、演出制御用マイクロコンピュータ100において、時短状態であるかを認識することができるので、たとえば、時短状態に応じて、通常状態と異なる演出を行なうことができる。
・・・
【0405】
図37は、図11のS27において実行される普通図柄プロセス処理の一例を示すフローチャートである。この普通図柄プロセス処理において、CPU56は、まず、ゲート32に設けられたゲートスイッチ32aからの検出信号がオン状態であるか否かをチェックすることにより、ゲート32を通過した遊技球が検出されたか否かの判定を行なう(S501)。S501では、遊技球がゲート32を通過してゲートスイッチ32aからの検出信号が所定期間オン状態となった場合に、遊技球のゲート通過(通過球)の検出があったものと判断して、ゲート通過時処理を実行する(S502)。
・・・
【0410】
S511の普通図柄判定処理は、普通図柄プロセスフラグの値が「1」のときに実行される。この普通図柄判定処理では、標準時短フラグまたは超時短フラグがセットされているか否かに基づいて、電チューサポート制御状態であるか否かを認識し、普図保留記憶部の先頭順番に格納された普図保留記憶データ(普通図柄の表示結果決定用のランダム4を示す数値データ)に基づき、図36に示す普通図柄表示結果決定テーブルを参照して、普通図柄の変動表示における表示結果を、「当り」とするか「はずれ」とするかの決定等が行なわれる。」

(サ) 図1より、遊技領域7にゲート32が設けられた態様を看て取ることができる。

そして、上記記載事項(ア)?(コ)及び図面に記載の事項(サ)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?qは、本願補正発明のA?Qに対応させて当審にて付与した。また、丸括弧内に示された段落番号は、引用文献における引用箇所を示す。)。

(引用発明)
「a ガラス扉枠2を有し(【0020】)、
ガラス扉枠2の背面には、遊技盤6が取付けられ、遊技盤6の前面には、打込まれた遊技球が流下可能な遊技領域7が形成され(【0021】)、
遊技領域7の中央付近には、演出表示装置9が設けられ(【0022】)、
演出表示装置9の下方には、第1始動入賞口13を有する入賞装置が設けられ(【0028】)、
第1始動入賞口(第1始動口)13を有する入賞装置の下方には、遊技球が入賞可能な第2始動入賞口14(第2始動口)を有する可変入賞球装置15が設けられ、可変入賞球装置15は、ソレノイド16によって開状態とされ、可変入賞球装置15が開状態になることによって、遊技球が第2始動入賞口14に入賞し易くなり、可変入賞球装置15が閉状態になっている状態では、遊技球は第2始動入賞口14に入賞しにくいように構成され(【0029】)、
遊技領域7にはゲート32が設けられ、遊技球がゲート32を通過するとゲートスイッチ32aで検出され(【0066】、【図1】)、

b 第1始動入賞口13に入賞した遊技球は、第1始動口スイッチ13aによって検出され(【0028】)、
第2始動入賞口14に入賞した遊技球は、始動口スイッチ14aによって検出され(【0029】)、
主基板31には、遊技制御用マイクロコンピュータ560が搭載され(【0077】)、
遊技制御用マイクロコンピュータ560は、CPU56を含み(【0077】)、
遊技制御用マイクロコンピュータ560には、さらに、ハードウェア乱数を発生する乱数回路503が内蔵され(【0077】)、
遊技制御用マイクロコンピュータ560は、第1始動口スイッチ13aまたは第2始動口スイッチ14aへの始動入賞が生じたときに乱数回路503から数値データをランダムRとして読出し、ランダムRに基づいて大当りとするか否かを決定し(【0082】)、
大当りにするか否か決定するということは、第1特別図柄表示器8aまたは第2特別図柄表示器8bにおける停止図柄を大当り図柄にするか否か決定するということであり(【0164】)、

c 遊技領域7の中央付近には、演出表示装置9が設けられ、演出表示装置9では、演出図柄(飾り図柄)の変動表示が行なわれ(【0022】)、

e 第1特別図柄または第2特別図柄の変動表示は、遊技球が第1始動入賞口13または第2始動入賞口14に入賞したことに基づいて開始され(【0026】)、
演出表示装置9は、演出制御基板に搭載されている演出制御用マイクロコンピュータによって制御され(【0022】)、
演出制御用マイクロコンピュータが、第1特別図柄の変動表示が実行されているときに、その変動表示に伴って演出表示装置9で演出表示を実行させ、
第2特別図柄の変動表示が実行されているときに、その変動表示に伴って演出表示装置で演出表示を実行させ(【0022】)、
大当り図柄が停止表示されるときには、演出表示装置9において大当りを想起させるような演出図柄の組合せが停止表示され(【0027】)、

fg 大当り遊技状態としては、16ラウンドの大当り遊技状態と2ラウンドの大当り遊技状態との複数種類の大当り遊技状態が設けられ(【0040】)、
16ラウンドの大当りとしては、16R確変大当りHとを含む複数種類の大当りが設けられ(【0051】)、
16R確変大当りHは、大当り遊技状態の終了後に、確変状態、時短状態、および、電チューサポート制御状態に移行する制御が行なわれ(【0055】)、
特別図柄や演出図柄の変動時間(変動表示期間)が通常状態(非時短状態)よりも短縮される時短状態に移行したときには、特別図柄や演出図柄の変動時間が短縮されるので、有効な始動入賞が発生しやすくなり大当り遊技が行なわれる可能性が高まり(【0046】)、
主基板31には、プログラムにしたがってパチンコ遊技機1を制御する遊技制御用マイクロコンピュータ560が搭載され、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、プログラムにしたがって制御動作を行なうCPU56を含み(【0077】)、
CPU56は、特別図柄に関して大当り(16R通常大当りA?C、16R確変大当りA?H、または、2R確変大当り)にすることに決定し(【0164】)、

h 演出制御用マイクロコンピュータ100において、時短状態が、標準時短状態、および、超時短状態のうちどの種別の時短状態であるかを認識し、時短状態に応じて、通常状態と異なる演出を行ない(【0398】)、

i 遊技球がゲート32を通過しゲートスイッチ32aで検出されると、普通図柄表示器10の表示の変動表示が開始され、普通図柄の停止図柄が当り図柄である場合に、可変入賞球装置15の状態は、第2始動入賞口14に遊技球が入賞可能な状態に変化し(【0066】)、
16R確変大当りHによる大当り遊技状態に制御された後には、電チューサポート制御として、普通図柄の変動時間(変動表示開始時から表示結果の導出表示時までの時間)を短縮して早期に表示結果を導出表示させる制御(普通図柄短縮制御)、普通図柄の停止図柄が当り図柄になる確率を高める制御(普通図柄確変制御)、可変入賞球装置15の開放時間を長くする制御(開放時間延長制御)、および、可変入賞球装置15の開放回数を増加させる制御(開放回数増加制御)が行なわれ、第2始動入賞口14への入賞頻度が高まり、遊技球が始動入賞しやすくなり(特別図柄表示器8a,8bや演出表示装置9における変動表示の実行条件が成立しやすくなる)(【0068】)、
普通図柄プロセス処理において、CPU56は(【0405】)、
電チューサポート制御状態であるか否かを認識し、普通図柄の変動表示における表示結果を、「当り」とするか「はずれ」とするかの決定等が行なわれ(【0410】)、

j 遊技制御用マイクロコンピュータ560が送信する演出制御コマンドは、特別図柄の変動表示に対応して演出表示装置9において変動表示される演出図柄の変動パターンを指定する演出制御コマンド(変動パターンコマンド)であり、演出制御用マイクロコンピュータ100は、コマンドを受信し(【0189】)、
遊技制御用マイクロコンピュータ560は、第1特別図柄または第2特別図柄の変動表示の表示結果を大当りとするか否かを決定し、大当りとする場合には、大当り種別を決定し(【0209】)、
変動パターン設定処理(S301)で、変動パターンを決定し、その変動パターンにおける変動時間を特別図柄の変動表示の変動時間とすることに決定し(【0210】)、
遊技制御用マイクロコンピュータ560において、特別図柄および演出図柄の変動パターンを選択決定するために変動パターンテーブルを用い(【0231】)、
変動パターンテーブルとしては、ROM54に、通常状態はずれ時第1判定テーブル、通常状態はずれ時第2判定テーブル、標準時短状態はずれ時第1判定テーブル、標準時短状態はずれ時第2判定テーブル、標準時短状態はずれ時第3判定テーブル、超時短状態はずれ時第1判定テーブル、超時短状態はずれ時第2判定テーブル、超時短状態はずれ時第3判定テーブル、通常状態16R大当り時判定テーブル、標準時短状態16R大当り時判定テーブル、超時短状態16R大当り時判定テーブル、通常状態2R大当り時判定テーブル、標準時短状態2R大当り時判定テーブル、超時短状態2R大当り時判定テーブル、通常状態小当り時判定テーブル、標準時短状態小当り時判定テーブル、および、超時短状態小当り時判定テーブルが記憶されており、遊技状態に応じて選択的に用いられ(【0232】)、

klo 時短状態として、標準時短状態と、当該標準時短状態よりもさらに変動時間が短縮される超時短状態との複数種類の時短状態が含まれ(【0047】)、
16R確変大当りHは、大当り遊技状態の終了後に、確変状態、時短状態、および、電チューサポート制御状態に移行する制御が行なわれ、16R確変大当りHの大当り遊技状態の終了後には、時短状態として、標準時短状態よりも平均的な変動時間が短くされる超時短状態に制御され(【0055】)、
16R確変大当りHにおける特別遊技状態としての確変状態および時短状態は、特別図柄の変動表示が予め定められた回数(100回)実行されるまで継続可能とする、所謂回数切りとなるようにし(【0060】)、
変動表示回数(100回)で超時短状態の継続期間を制限するときには、所定回数の変動表示が行なわれた後は、超時短状態から標準時短状態に移行するように制御をし(【0355】)、
時短状態のうち、超時短状態であるときには、標準時短状態であるときと比べて、変動時間が短い変動パターンが選択される割合が高くなる(【0154】)、

q パチンコ遊技機1(【0019】)。」

イ 引用文献2
引用文献1と同じく令和1年6月27日付けの補正の却下の決定の理由で引用され、本願のもとの特許出願前に公知となった「パチンコ必勝ガイド 2013年 1.20/2.3合併号,株式会社ガイドワークス」(以下、「引用文献2」という。)のp.24-27には、「CRスーパーマン・リターンズ?正義のヒーロー?」に関し、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した)。

(ア) 「CRスーパーマン・リターンズ?正義のヒーロー? daiichi」(24ページ右)
「ゲームフローチャート」「95回転の三段階スーパーST」「図柄揃い大当り後は必ず95回転の確変に突入する、オーソドックスなST機。」(24ページ左下)

(イ) 「95回転のスーパーSTはゲーム性の違う三段階に分かれている」「加速装置を搭載したことで、驚異的な高速消化を可能にした95回転のスーパーST。回転数に応じてゲーム性が変化し、その時々で違った期待感を味わうことができる。どのモードも最終的にスーパーSシャッターが閉まれば大当りとなる。」
「1?20回転」「超速モード」「1回転0.168秒という驚異的な速さ。あまりの速さで予告を見逃す可能性も・・・。」(25ページ中段)
「21?90回転」「レスキューモード」「ST中のメインとなるモード。様々な予告やリーチ(次ページ参照)が発生する。」(25ページ中段)
「91?95回転」「ファイナルリベンジチャンス」「毎回転図柄あおりが発生し、キャラで期待度が変化。」(25ページ中段)

(ウ) 「スーパーST超速モードでは最速0.168秒で」「スーパーSシャッターがガッシャーン!!すれば大当り!」(24ページ左上、25ページ右上)

(エ) 24ページ右上にはパチンコ遊技機の遊技盤を看て取ることができる。

そして、上記記載事項(ア)?(エ)を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる(k?n、qは、本願補正発明のK?N、Qに対応させて当審にて付与した。また、丸括弧内は、引用文献2における引用箇所を示す。)。

(引用発明2)
「klmn′図柄揃い大当り後は必ず95回転の確変(「95回転の三段階スーパーST」)に突入し、(24ページ左下)
95回転のスーパーSTはゲーム性の違う三段階に分かれ、
1?20回転は、「超速モード」で、1回転0.168秒という驚異的な速さであり、あまりの速さで予告を見逃す可能性もあり、
21?90回転は、「レスキューモード」で、ST中のメインとなるモードであり、様々な予告やリーチが発生し、
91?95回転は、「ファイナルリベンジチャンス」で、毎回転図柄あおりが発生し、キャラで期待度が変化し(25ページ中段)、

dp′どのモードも最終的にスーパーSシャッターが閉まれば大当りとなる(25ページ中段)、

q パチンコ遊技機。」

(3) 対比
本願補正発明と引用発明とを、分説に従い対比する(対比の見出しとしての(a)?(q)は、引用発明の分説構成と対応させた。)。

(a) 引用発明の構成aの「遊技領域7」、「遊技球が」「通過するとゲートスイッチ32aで検出され」る「ゲート32」、「可変入賞球装置15」「第2始動入賞口14」は、それぞれ本願補正発明の、
「所定の遊技領域」、「遊技球が通過可能なゲート部材」、「可動部材」「始動口」に相当する。
また、引用発明の構成aの「可変入賞球装置15は、ソレノイド16によって開状態とされ、可変入賞球装置15が開状態になることによって、遊技球が」「入賞し易くなり、可変入賞球装置15が閉状態になっている状態では、遊技球は」「入賞しにくいように構成され」ることは、本願補正発明の構成Aの「可動部材の作動により遊技球の入賞が容易な状態と困難な状態とに切り替えられる」ことに相当する。
また、引用発明の構成aの「ゲート32」(ゲート部材)が「遊技領域7」に「設けられ」ることは、本願補正発明の構成Aの「ゲート部材」が「所定の遊技領域内に設けられて」いることに相当する。
また、引用発明の構成aの、「遊技領域7の中央付近には、演出表示装置9が設けられ、演出表示装置9の下方には、第1始動入賞口13を有する入賞装置が設けられ、第1始動入賞口(第1始動口)13を有する入賞装置の下方には、遊技球が入賞可能な第2始動入賞口14(第2始動口)を有する可変入賞球装置15が設けられ」との構成によれば、「第2始動入賞口14(第2始動口)」(始動口)は、「遊技領域7」に設けられたものであり、引用発明の当該構成は、本願補正発明の「始動口」が「所定の遊技領域内に設けられて」いることに相当する。
してみると、引用発明の構成aは、本願補正発明の構成Aを備えるものである。

(b) 引用発明の構成bの「第2始動口スイッチ14aへの始動入賞が生じたときに乱数回路503から数値データをランダムRとして読出し、ランダムRに基づいて大当りとするか否かを決定」すること、「遊技制御用マイクロコンピュータ560」は、それぞれ本願補正発明の構成Bの
「前記始動口への遊技球の入賞に基づいて抽選を行う」こと、「抽選手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成bは、本願補正発明の構成Bを備えるものである。

(c) 引用発明の構成cの「演出図柄(飾り図柄)の変動表示」、「演出表示装置9」は、それぞれ本願補正発明の構成Cの「所定の演出」、「演出手段」に相当し、引用発明の構成cの「演出図柄(飾り図柄)の変動表示が行なわれ」る「演出表示装置9」は、本願補正発明の構成Cの「所定の演出が行われる演出手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成cは、本願補正発明の構成Cを備えるものである。

(e) 引用発明の構成eの「第2特別図柄の変動表示が実行されているときに、その変動表示に伴って演出表示装置で演出表示を実行させ、
大当り図柄が停止表示されるときには、演出表示装置9において大当りを想起させるような演出図柄の組合せが停止表示され」ることは、本願補正発明の構成Eの、「前記抽選手段による抽選結果に基づき前記演出手段にて前記所定の演出を伴う変動表示ゲームの実行を」することに相当する。
そして、引用発明の構成eの「演出表示装置9」(演出手段)は、「演出制御基板に搭載されている演出制御用マイクロコンピュータによって制御され」るのだから、引用発明の構成eの「演出制御用マイクロコンピュータ」は、本願補正発明の構成Eの「演出制御手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成eは、本願補正発明の構成Eを備えるものである。

(f) 引用発明の構成fgの「特別図柄に関して大当り(16R通常大当りA?C、16R確変大当りA?H、または、2R確変大当り)にすることに決定」する「CPU56」「を含」む「遊技制御用マイクロコンピュータ560」は、本願補正発明の構成Fの「抽選結果に基づいて大当たり遊技を実行可能な大当たり遊技実行手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成fgは、本願補正発明の構成Fを備えるものである。

(g) 引用発明の構成fgの「大当り遊技状態の終了後」は、本願補正発明の構成Gの「大当たり遊技が実行されたのち」に相当する。
また、引用発明の構成fgの「16R確変大当りH」は「時短状態」「に移行する制御が行なわれ」、当該「時短状態」は、「特別図柄や演出図柄の変動時間が短縮されるので、有効な始動入賞が発生しやすくなり大当り遊技が行なわれる可能性が高まる」のだから、引用発明の構成fgの「16R確変大当りH」「大当り遊技状態の終了後」は、本願補正発明の構成Gの「通常遊技状態よりも遊技者に有利な有利遊技状態」に相当する。
そして、引用発明の構成fgの「遊技制御用マイクロコンピュータ560」が「含」む「CPU56」は、「特別図柄に関して大当り(16R通常大当りA?C、16R確変大当りA?H、または、2R確変大当り)にすることに決定」をするのだから、引用発明の構成fgの「遊技制御用マイクロコンピュータ560」は、本願補正発明の構成Gの「通常遊技状態よりも遊技者に有利な有利遊技状態に制御可能な有利遊技状態制御手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成fgは、本願補正発明の構成Gを備えるものである。

(h) 引用発明の構成hにおける「時短状態に応じて」「行な」う「通常状態と異なる演出」は、本願補正発明の構成Hの「前記有利遊技状態に制御されている旨を遊技者が把握できるように示した外部有利状態」に相当し、引用発明の構成hにおける「時短状態に応じて、通常状態と異なる演出を行な」う「演出制御用マイクロコンピュータ100」は、本願補正発明の構成Hの「前記有利遊技状態に制御されている旨を遊技者が把握できるように示した外部有利状態に制御する外部有利状態報知手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成hは、本願補正発明の構成Hを備えるものである。

(i) 引用発明の構成iの「16R確変大当りA?D,F,H」「による大当り遊技状態に制御された後」は、上記(g)にて説示のとおり、本願補正発明の「前記有利遊技状態」に相当する。
また、引用発明の構成iの
「遊技球がゲート32を通過しゲートスイッチ32aで検出されると、普通図柄表示器10の表示の変動表示が開始され、普通図柄の停止図柄が当り図柄である場合に、可変入賞球装置15の状態は、第2始動入賞口14に遊技球が入賞可能な状態に変化し、」
「電チューサポート制御として、普通図柄の変動時間(変動表示開始時から表示結果の導出表示時までの時間)を短縮して早期に表示結果を導出表示させる制御(普通図柄短縮制御)、普通図柄の停止図柄が当り図柄になる確率を高める制御(普通図柄確変制御)、可変入賞球装置15の開放時間を長くする制御(開放時間延長制御)、および、可変入賞球装置15の開放回数を増加させる制御(開放回数増加制御)が行なわれ、第2始動入賞口14への入賞頻度が高まり、遊技球が始動入賞しやすくな」ることは、本願補正発明の構成Iの
「遊技球が前記ゲート部材を通過したことに基づき前記始動口へ遊技球が入賞容易となるように前記可動部材の制御を実行」することに相当する。
そうすると、引用発明の構成iにおいて、「16R確変大当りH」「大当りによる大当り遊技状態に制御された後には、電チューサポート制御として「制御」「が行なわれ」ることは、本願補正発明の構成Iの
「前記有利遊技状態において、遊技球が前記ゲート部材を通過したことに基づき前記始動口へ遊技球が入賞容易となるように前記可動部材の制御を実行」することに相当する。
そして、引用発明の構成iでは、「CPU56」で「普通図柄の変動表示における表示結果を、「当り」とするか「はずれ」とするかの決定等が行なわれ」、「普通図柄の停止図柄が当り図柄である場合に、可変入賞球装置15の状態は、第2始動入賞口14に遊技球が入賞可能な状態に変化」す
るのだから、引用発明の構成iの「CPU56」は、本願補正発明の構成Iの「可動制御手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成iは、本願補正発明の構成Iを備えるものである。

(j) 引用発明の構成jの、「通常状態はずれ時第1判定テーブル、通常状態はずれ時第2判定テーブル、標準時短状態はずれ時第1判定テーブル、標準時短状態はずれ時第2判定テーブル、標準時短状態はずれ時第3判定テーブル、超時短状態はずれ時第1判定テーブル、超時短状態はずれ時第2判定テーブル、超時短状態はずれ時第3判定テーブル、通常状態16R大当り時判定テーブル、標準時短状態16R大当り時判定テーブル、超時短状態16R大当り時判定テーブル、通常状態2R大当り時判定テーブル、標準時短状態2R大当り時判定テーブル、超時短状態2R大当り時判定テーブル、通常状態小当り時判定テーブル、標準時短状態小当り時判定テーブル、および、超時短状態小当り時判定テーブルが記憶されており、遊技状態に応じて選択的に用いられ」る「変動パターンテーブル」は、本願補正発明の構成Jの「抽選結果に応じて参照されている変動パターンテーブル」に相当する。
また、引用発明の構成jにおいて、「変動パターンを選択決定するために変動パターンテーブルを用い「その変動パターンにおける変動時間を特別図柄の変動表示の変動時間とすることに決定」することは、本願補正発明の構成Jの
「演出制御手段により行われる前記変動表示ゲームの実行時間」が「変動パターンテーブルから決定され」ることに相当する。
してみると、引用発明の構成jは、本願補正発明の構成Jを備えるものである。

(k)
ア 引用発明の構成kloの「標準時短状態よりも平均的な変動時間が短くされる超時短状態」は、本願補正発明の構成Kの「抽選結果の導出を高速で実行」することに相当する。

イ また、引用発明の構成kloの「所定回数」は、本願補正発明の構成Kの「規定回数」に相当するとともに、引用発明の構成kloの「16R確変大当りHにおける特別遊技状態としての確変状態および時短状態は、特別図柄の変動表示が予め定められた回数(100回)実行されるまで継続可能とする、所謂回数切りとなるようにし、変動表示回数で超時短状態の継続期間を制限し、所定回数の変動表示が行なわれ」る期間は、本願補正発明の構成Kの
「前記抽選が高速消化されるように前記有利遊技状態に制御されてから予め定められた規定回数まで」の期間に相当する。

ウ また、引用発明の構成kloの「超時短状態であるときに」「選択される」「変動時間が短い変動パターン」は、本願補正発明の構成Kの「高速変動パターンテーブル」に相当する。

エ そうすると、上記ア?ウより、引用発明の構成kloの
「16R確変大当りHにおける特別遊技状態としての確変状態および時短状態は、特別図柄の変動表示が予め定められた回数(100回)実行されるまで継続可能とする、所謂回数切りとなるようにし、」
「超時短状態であるときには、標準時短状態であるときと比べて、変動時間が短い変動パターンが選択され」、
「変動表示回数で超時短状態の継続期間を制限し、所定回数の変動表示が行なわれた後は、超時短状態から標準時短状態に移行する」
ことは、本願補正発明の構成Kの
「変動パターンテーブルは、前記有利遊技状態の制御が開始されてからの変動回数によって変更されえるように構成され、前記抽選が高速消化されるように前記有利遊技状態に制御されてから予め定められた規定回数まで高速変動パターンテーブルが参照されるように設定されており、前記規定回数まで設定された前記高速変動パターンテーブルを参照し前記抽選結果の導出を高速で実行」することに相当する。
そして、引用発明の構成jにおいて、「変動パターンを選択決定するために変動パターンテーブルを用い」「変動表示の表示結果を大当りとするか否かを決定し」「変動パターンを決定」する「遊技制御用マイクロコンピュータ560」は、本願補正発明の構成Kにおける、「抽選結果の導出を高速で実行可能な高速抽選消化手段」に相当するものである。
してみると、引用発明の構成j、kloは、本願補正発明の構成Kを備えるものである。

(l) 引用発明の構成kloの「標準時短状態であるとき」の「変動パターン」は、本願補正発明の構成Lの「通速変動パターン」に相当する。
また、引用発明の構成kloの
「16R確変大当りHにおける特別遊技状態としての確変状態および時短状態は、特別図柄の変動表示が予め定められた回数(100回)実行されるまで継続可能とする、所謂回数切りとなるようにし、
変動表示回数で超時短状態の継続期間を制限し、所定回数の変動表示が行なわれた後は、超時短状態から標準時短状態に移行するように制御を」することは、上記(k)ア?ウをふまえると、本願補正発明の構成Lの
「前記高速変動パターンテーブルが前記規定回数参照された後の前記有利遊技状態において前記高速変動パターンテーブルが参照される場合よりも前記抽選結果の導出が相対的に長く設定されている通速変動パターンテーブルが参照されるように前記変動パターンテーブルの変更が行われ」ることに相当する。
してみると、引用発明の構成kloは、本願補正発明の構成Lを備えるものである。

(o)
ア 引用発明の構成kloの
「16R確変大当りHの大当り遊技状態の終了後には、時短状態として、標準時短状態よりも平均的な変動時間が短くされる超時短状態に制御され、」
「16R確変大当りHにおける特別遊技状態としての確変状態および時短状態は、特別図柄の変動表示が予め定められた回数(100回)実行されるまで継続可能とする、所謂回数切りとなるようにし、」
「変動表示回数で超時短状態の継続期間を制限し、所定回数の変動表示が行なわれた後は、超時短状態から標準時短状態に移行するように制御」
するにおける、「所定回数の変動表示が行なわれた後」「変動表示が予め定められた回数(100回)実行されるまで継続」し終了することは、本願補正発明の構成Oの「前記高速消化が終了したのち、一定回数の前記抽選が消化されたこと」に相当する。

イ 一方、引用発明の構成hにおける「時短状態に応じて」「行な」う「通常状態と異なる演出」(前記有利遊技状態に制御されている旨を遊技者が把握できるように示した外部有利状態)は、「時短状態に応じて」「行な」うものなのだから、「時短状態」が終了する「特別図柄の変動表示が予め定められた回数(100回)」の終了以降には、「時短状態に応じて」「行な」う「通常状態と異なる演出」(外部有利状態)も終了するものといえる。

ウ してみると、引用発明の構成hの
「演出制御用マイクロコンピュータ100において、時短状態が、標準時短状態、および、超時短状態のうちどの種別の時短状態であるかを認識し、時短状態に応じて、通常状態と異なる演出を行な」うこと、
及び、引用発明の構成kloの
「16R確変大当りHの大当り遊技状態の終了後には、時短状態として、標準時短状態よりも平均的な変動時間が短くされる超時短状態に制御され、
16R確変大当りHにおける特別遊技状態としての確変状態および時短状態は、特別図柄の変動表示が予め定められた回数(100回)実行されるまで継続可能とする、所謂回数切りとなるようにし、
変動表示回数で超時短状態の継続期間を制限し、所定回数の変動表示が行なわれた後は、超時短状態から標準時短状態に移行するように制御を」することは、本願補正発明の構成Oの
「前記外部有利状態報知手段により示される前記外部有利状態は、前記高速抽選消化手段による前記高速消化が終了したのち、一定回数の前記抽選が消化されたことをもってにより終了する」ことに相当する。

(q) 引用発明の構成qの「パチンコ遊技機1」は、本願補正発明の構成Qの「遊技機」に相当する。

そうすると、本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。

(一致点)
「A 所定の遊技領域内に設けられており、遊技球が通過可能なゲート部材、および、可動部材の作動により遊技球の入賞が容易な状態と困難な状態とに切り替えられる始動口と、
B 前記始動口への遊技球の入賞に基づいて抽選を行う抽選手段と、
C 所定の演出が行われる演出手段と、
E 前記抽選手段による抽選結果に基づき前記演出手段にて前記所定の演出を伴う変動表示ゲームの実行を制御する演出制御手段と、
F 前記抽選結果に基づいて大当たり遊技を実行可能な大当たり遊技実行手段と、
G 前記大当たり遊技が実行されたのち、通常遊技状態よりも遊技者に有利な有利遊技状態に制御可能な有利遊技状態制御手段と、
H 前記有利遊技状態中に前記有利遊技状態に制御されている旨を遊技者が把握できるように示した外部有利状態に制御する外部有利状態報知手段と、
I 前記有利遊技状態において、遊技球が前記ゲート部材を通過したことに基づき前記始動口へ遊技球が入賞容易となるように前記可動部材の制御を実行可能な可動制御手段と、
を備え、
J 前記演出制御手段により行われる前記変動表示ゲームの実行時間は、前記抽選結果に応じて参照されている変動パターンテーブルから決定され、
K 前記変動パターンテーブルは、前記有利遊技状態の制御が開始されてからの変動回数によって変更されえるように構成され、前記抽選が高速消化されるように前記有利遊技状態に制御されてから予め定められた規定回数まで高速変動パターンテーブルが参照されるように設定されており、前記規定回数まで設定された前記高速変動パターンテーブルを参照し前記抽選結果の導出を高速で実行可能な高速抽選消化手段を有し、
L 前記高速変動パターンテーブルが前記規定回数参照された後の前記有利遊技状態において前記高速変動パターンテーブルが参照される場合よりも前記抽選結果の導出が相対的に長く設定されている通速変動パターンテーブルが参照されるように前記変動パターンテーブルの変更が行われ、
O 前記外部有利状態報知手段により示される前記外部有利状態は、前記高速抽選消化手段による前記高速消化が終了したのち、一定回数の前記抽選が消化されたことをもってにより終了するものである、
Q 遊技機。」

(相違点1)
構成Mについて、本願補正発明は、
「前記通速変動パターンテーブルは、前記高速変動パターンテーブルが参照される前記規定回数よりも多い特定回数参照されるようにされて」いるのに対し、引用発明の構成kloの「標準時短状態であるとき」の「変動パターン」(通速変動パターン)はそのようなものであるか否か定かでない点。

(相違点2)
構成D、Pについて、本願補正発明は、
「待機位置から演出位置に動作可能な役物構造体」「を備え」、
「前記高速抽選消化手段により行われる前記抽選結果の導出中は、前記役物構造体を動作可能にされており、前記大当たり遊技が実行される場合においては前記役物構造体を前記演出位置に動作させることで前記大当たり遊技が実行されることを遊技者に報知するとともに、前記大当たり遊技が実行されることがない場合においては、前記役物構造体が前記待機位置から前記演出位置まで動作しないものの、前記待機位置から前記演出位置まで動作するか否かを煽る演出を実行可能にしている」
のに対し、引用発明はそのような構成を有しない点。

(相違点3)
構成Nについて、本願補正発明は、
「前記高速抽選消化手段により前記抽選が高速消化される間において、複数回の抽選が消化される期間にわたって一連の表示演出を実行可能な回数演出手段を有」するのに対し、引用発明はそのような構成を有しない点。

(4) 相違点の検討
上記各相違点について検討する。

(相違点1について)(構成M)
引用発明2については、前記「(2) 引用文献に記載された事項」「イ 引用文献2」に示したとおりである。
引用発明2の「パチンコ遊技機」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。
また、引用発明2の
「95回転の確変(「95回転の三段階スーパーST」)」、
「1?20回転は、「超速モード」で、1回転0.168秒という驚異的な速さであ」ること、
「21?90回転は、「レスキューモード」で、ST中のメインとなるモードであり、様々な予告やリーチが発生」すること、
は、それぞれ本願補正発明の構成Kの
「有利遊技状態」
「抽選が高速消化されるように前記有利遊技状態に制御されてから予め定められた規定回数まで」「設定され」ること、
「前記規定回数」「後の前記有利遊技状態において」「抽選結果の導出が相対的に長く設定されている」ことに相当する。

また、引用発明2の、「ST中のメインとなるモードであり、様々な予告やリーチが発生」する「レスキューモード」は、「1回転0.168秒という驚異的な速さ」の「超速モード」より抽選結果の導出が相対的に長いといえるから、本願補正発明の構成Lの「前記抽選結果の導出が相対的に長く設定されている通速変動パターン」に相当する。

また、引用発明2の「21?90回転」の回転数(70回)は、「1?20回転」の回転数(20回)(本願補正発明の「規定回数」に相当)
よりも多いことから、本願補正発明の構成Mの「規定回数よりも多い特定回数」に相当する。

そして、引用発明と引用発明2は、
「抽選が高速消化されるように前記有利遊技状態に制御されてから予め定められた規定回数まで高速変動パターン」「に設定され」、
「前記規定回数まで」「前記抽選結果の導出を高速で実行可能」
であり(構成K)、
「高速変動パターン」「が前記規定回数参照された後の前記有利遊技状態において」「前記抽選結果の導出が相対的に長く設定されている通速変動パターン」に「変更が行われ」る(構成L)
「遊技機」(構成Q)
である点で共通するのだから、引用発明において、「回転数に応じてゲーム性が変化し、その時々で違った期待感を味わうことができる」(引用文献2、25ページ中段)ようにするために、引用発明2の上記構成を適用し、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することである。

(相違点2について)(構成D、P)
遊技機において、待機位置から演出位置に動作可能な役物構造体が、何らの例示をするまでもなく周知の構成であることを踏まえると、引用発明2における、「閉ま」る「スーパーSシャッター」は、本願補正発明の「待機位置から演出位置に動作可能な役物構造体」に相当するものといえる。
また、引用発明2は「超速モード」を含めた「どのモードも最終的にスーパーSシャッターが閉まれば大当りとなる」ことから、引用発明2の「超速モード」で「スーパーSシャッターが閉ま」ることは、本願補正発明の構成Pの、
「前記高速抽選消化手段により行われる前記抽選結果の導出中は、前記役物構造体を動作可能にされており、前記大当たり遊技が実行される場合においては前記役物構造体を前記演出位置に動作させることで前記大当たり遊技が実行されることを遊技者に報知する」ことに相当する。
しかし、引用発明及び引用発明2には、いずれも、
「前記大当たり遊技が実行されることがない場合においては、前記役物構造体が前記待機位置から前記演出位置まで動作しないものの、前記待機位置から前記演出位置まで動作するか否かを煽る演出を実行可能にしている」構成を有さず、引用発明に引用発明2を適用してみても、当該構成に至るものでもなく、さらに本願のもとの出願の出願時において、当該構成が周知の事項であるとする事情もない。

そして、本願補正発明は当該構成により、興趣の低下を抑制する(本願の明細書【0008】等を参照)との課題を解決しているものといえる。

(相違点3について)(構成N)
引用発明2における「超速モード」(抽選が高速消化される間)では「1回転0.168秒という驚異的な速さであり、あまりの速さで予告を見逃す可能性もあ」るのだから、表示演出の変化を見逃し、結果として、表示演出が「複数回の抽選が消化される期間にわたって一連の表示演出」に見えてしまう可能性がないとはいえない。
しかし、引用発明2においては、「複数回の抽選が消化される期間にわたって一連の表示演出を実行」する構成を有さず、引用文献2において当該構成を示唆する記載もない。さらに本願のもとの出願の出願時において、当該構成が周知の事項であるとする事情もない。

そして、本願補正発明は当該構成により、「20回の抽選において大当たりに当選した場合には、大当たり遊技終了後の1回の抽選(1回転目)で大当たりに当選したかのような印象を与えることができ、遊技者に対して大当たりの連荘感を与えることができる。」(本願の明細書【0962】参照)との作用を奏しているといえる。

したがって、相違点2及び3において、本件補正発明は、引用発明及び引用発明2から、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)まとめ
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定によって、特許出願の際独立して特許を受けることができないものではなく、他に特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由もない。

よって、本件補正後の請求項1に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項(独立特許要件)に適合する。

3 むすび
以上のとおりであるので、令和1年6月27日付け補正の却下の決定は取り消す。


第3 本願の請求項に係る発明について判断
以上のとおり、令和1年6月27日付け補正の却下の決定は取り消されたから、本願の請求項1に係る発明は平成31年1月8日に提出の手続補正書により補正がされた特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

そして、本願の請求項1に係る発明については、原査定の拒絶の理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり、審決する。

 
審決日 2020-06-17 
出願番号 特願2017-87965(P2017-87965)
審決分類 P 1 8・ 121- WYA (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡辺 剛史  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 赤坂 祐樹
石井 哲
発明の名称 遊技機  

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