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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01V 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01V |
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管理番号 | 1362974 |
審判番号 | 不服2019-7883 |
総通号数 | 247 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-06-12 |
確定日 | 2020-06-10 |
事件の表示 | 特願2018- 19043「利用者位置測定方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月22日出願公開、特開2019-138645〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年2月6日の出願であって、同年12月12日付けで拒絶理由が通知され、平成31年2月5日に意見書及び手続補正書が提出され、同年3月14日付けで拒絶査定されたところ、令和元年6月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において令和2年1月16日付けで拒絶理由が通知され、同年3月16日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-4に係る発明は、令和2年3月16日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「複数のICタグからICタグリーダが識別情報を取得するステップと、 所定の時間範囲において、前記複数のICタグの全てについて前記識別情報の取得の有無を前記ICタグリーダのメモリに保存するステップと、 前記識別情報を取得しなかった前記ICタグと前記識別情報を取得した前記ICタグとに基づいて、空間における利用者の位置を判定装置が判定するステップと、を有する、 利用者位置測定方法。」 第3 当審の拒絶理由 令和2年1月16日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。 理由1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 理由2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由1及び理由2 ・請求項 1 ・引用文献等 1 <引用文献等一覧> 1.特開2013-73590号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献、引用発明 拒絶理由で引用された引用文献1(特開2013-73590号公報)には、次の事項が記載されている。 (引1a)「【0023】 (第1実施形態) 本発明の第1実施形態では、人が出入り可能でかつ閉じた環境の一例である部屋に対して、天井にタグリーダを設置し、床に位置情報を記録させた位置タグを配置することによって、部屋に出入りする人が、人物IDを示す人物タグを所持しているか否かを判別した上で、人の位置を検出している。 【0024】 図1A及び図1Bは、本発明の第1実施形態に係る物体位置推定システムの構成及び物体位置判断部の構成を示す図である。 【0025】 本発明の第1実施形態に係る物体位置推定システム90は、タグリーダ101と、物体位置推定装置91とで構成されている。物体位置推定装置91は、人物タグデータベース102と、位置タグデータベース103と、定常時可読位置タグデータベース104と、物体位置推定部105とを備えるように構成されている。 【0026】 タグリーダ101は、所定の観測周期(例えば100msなど)毎に、部屋201内の観測エリア内を観測し、位置情報が記録されたタグ(位置タグ)と、人203が所持するタグ(人物タグ)の検出を行う。 【0027】 人物タグデータベース102には、人203を示す人物IDと、当該人203が所持するタグID(タグ固有の識別ID)とが紐付けされて記録されている。 【0028】 位置タグデータベース103には、部屋201の例えば床面の多数の位置タグ205(205A?205Cなど)が配置されている位置情報と、それぞれの位置タグ205のタグID(タグ固有の識別ID)とが紐付けされて記録されている。 【0029】 定常時可読位置タグデータベース104には、人が部屋201内に存在しない状況(定常時)において、前記位置タグ205の中で検出できる位置タグ205と検出できない位置タグ205のタグIDが分別して記録されている。 【0030】 物体位置推定部105は、タグリーダ101が、定常時可読位置タグデータベース104に検出可能と記録されている位置タグ205を検出しなかったときに、人物タグデータベース102に記録されている人物タグ204が検出されているか否かを確認し、人物タグ204が検出されていないときには、前記位置タグ205の位置に不審物体が存在すると判断し、人物タグ204が検出されているときには、前記位置タグ205の位置には、前記人物タグ204に記録された人物IDが示す人203が存在すると判断する。 【0031】 図2に、本発明の第一実施形態に係る物体位置推定システムの構成要素であるタグリーダ101を備えた、環境の一例である部屋201を示す。部屋201の四角形の天井の中央付近には、真下に向けられたタグリーダ101が設置されているが、部屋201の床に配置されたタグ205を検出できるのであれば、タグリーダ101を壁又は天井の隅に配置しても構わない。部屋201内には、人物タグ204を所持した人203が出入り可能であり、図2の状態では、人203が部屋201内に存在していると仮定する。部屋201の床には、位置情報を記録した位置タグ205(205A,205B,205C,・・)が多数個配置されている。尚、前記位置タグ205には、個々に配置されている部屋201中の位置情報が記録されているものとし、任意の一つの位置タグを示す場合には、この任意のタグをタグ205として説明を行う。そして、部屋201内には、家具としての棚202が設置され、棚202により一部のタグ205(例えば、205B,205C)が覆われている。 【0032】 以下、図3のフローチャートに対応させながら、各構成要素について説明する。尚、図3は、前記物体位置推定システムの全体処理を示すフローチャートである。各ステップの処理を説明しながら、関連する構成についても説明する。 【0033】 <タグリーダの説明> まず、ステップS301の処理において、タグリーダ101は、所定の観測周期(例えば100msなど)毎に、部屋201内を観測し、部屋201内に存在する人203の所持する人物タグ204の検出と、部屋201に配置されている位置タグ205の検出とを行う。図4に、図2に示された部屋201内を、タグリーダ101で観測したときの観測データの一例を示す。タグリーダ101で観測したときの観測データは、タグリーダ101の内部記憶部又は物体位置推定部105の内部記憶部などで記録しておく。図4に示す観測データには、人物タグID:PSN_001が示す人物タグ204と、位置タグID:POS_002, POS_003, POS_013が示す位置タグ205以外の全ての位置タグ205が検出されている。 【0034】 <人物タグ、および、人物タグデータベース102の説明> 人物タグ204とは、部屋201内に進入することが許可されている人203に付与されるタグであり、人物タグデータベース102には、人203を示す人物IDと人203が所持するタグIDとが紐付けて記録されている。尚、前記人物IDは、前記人物タグ204の内部記憶に記録しておいても良い。図5に人物タグデータベース102の一例を示す。図5の人物タグデータベース102には、人物タグ204毎に固有に割り当てられるタグID(人物タグID)と、人203を示す人物ID(例えば、人物の名前)とが記録されている。例えば、人物タグID:PSN_001が記録されている人物タグ204は、山田太郎という人物が所持している人物タグ204であることを示す。尚、人物IDには、名前以外に管理番号などを用いても良い(会社であれば社員番号など)。 【0035】 <位置タグ、および、位置タグデータベース103の説明> 位置タグ205とは、部屋201内の床に配置されているタグであり、位置タグデータベース103には、位置タグ205のタグIDと、位置タグ205が配置されている位置情報とが紐付けて記録されている。尚、前記位置情報は、前記位置タグ205の内部記憶に記録しておいても良い。図6に位置タグデータベース103の一例を示す。図6の位置タグデータベース103には、位置タグ205毎に固有に割り当てられるタグID(位置タグID)と、位置タグ205が配置されている位置の情報(例えば位置座標)とが記録されている。例えば、位置タグID:POS_001が示す位置タグ205は、部屋201内における座標(50,50)の位置の配置されていることを示す。 【0036】 ステップS301に次いで、ステップS302の処理において、物体位置推定部105は、定常時可読位置タグデータベース104に検出可能と記録されている位置タグ205が全て検出されているか否かを判断する。位置タグ205が全て検出されていたと物体位置推定部105が判断する場合はステップS301の処理に戻り、位置タグ205が全て検出されていなかったと物体位置推定部105が判断する場合はステップS303の処理に進む。 【0037】 図7の定常時可読位置タグデータベース104を参照すると、定常時には位置タグID:POS_013が示す位置タグ205が検出可能であるのに対し、図4の観測データには前記位置タグID:POS_013が示す位置タグ205が検出されておらず、この図4のケースにおいては、ステップS303の処理に進むこととなる。前記位置タグ205が検出されなかった理由としては、タグリーダ101と前記位置タグ205の間に存在する人203の保有する水分により、タグリーダ101の出力する電波が減衰され、前記位置タグ205まで前記電波が到達できなかったためと考えられる。 【0038】 <定常時可読位置タグデータベースの説明> 定常時可読位置タグデータベース104には、定常時(人が部屋201内に存在しない状況)において、検出可能な位置タグ205と、検出不可能な位置タグ205とが分別して記録されている。定常時位置タグデータベース104は、定常時(人203が存在していない状況)において、タグリーダ101を動作させ、各位置タグ205の検出可否を予め記録させておくものである。つまり、家具等の障害物の影響で検出されない位置タグ205、又は、位置タグ205自体が故障してしまっているため検出されない位置タグ205は、検出不可能な位置タグ205として分別されて、定常時可読位置タグデータベース104に記録されている。図7に定常時可読位置タグデータベース104の一例を示す。図7の定常時可読位置タグデータベース104には、位置タグ205のタグIDと、定常時における位置タグ205の可読判定(すなわち、「可」又は「不可」)とが記録されている。例えば、位置タグID:POS_001が示す位置タグ205Aは、「可」と記録されて、定常時に検出が可能であることを示し、位置タグID:POS_002が示す位置タグ205Bは、「不可」と記録されて、定常時でも検出が不可能であることを示している。これは、位置タグ205Bの配置されている位置(座標(150,50))に、棚202が設置されているためであり、タグリーダ101から出力される電波が位置タグ205Bまで届かないためである。 【0039】 ステップS303の処理において、物体位置推定部105は、人物タグデータベース102に記録されている人物タグ204が検出されているか否かを判断する。人物タグ204が検出されていたと物体位置推定部105が判断した場合はステップS304の処理に進み、人物タグ204が検出されていなかったと物体位置推定部105が判断した場合はステップS305の処理に進む。図4の観測データには、人物タグID:PSN_001が示す人物タグ204が検出されているため、この図4のケースにおいては、ステップS304の処理に進むこととなる。 【0040】 ステップS304の処理において、物体位置推定部105は、ステップS302の処理において検出されなかった位置タグ205の配置位置を、位置タグデータベース103を参照することにより取得し、更に、ステップS303の処理において検出された人物タグ204を所持する人203を、人物タグデータベース102を参照することにより物体位置推定部105で取得し、前記配置位置に、人物タグIDが示す人203が存在すると物体位置推定部105で判断する。その後、ステップS301に戻る。 【0041】 ステップS302の処理において検出されなかった位置タグ205(位置タグID:POS_013)の配置位置は、図6の位置タグデータベース103を参照することにより、座標(250,250)であることが物体位置推定部105で分かる。更に、ステップS303の処理において検出された人物タグ204(人物タグID:PSN_001)が示す人203は、図5の人物タグデータベース102を参照することにより、山田太郎さんであることが物体位置推定部105で分かる。 【0042】 以上から、部屋201の座標(250,250)の位置に、正規人物である山田太郎さんが存在すると物体位置推定部105で判断することができる。 【0043】 ステップS305の処理において、物体位置推定部105は、ステップS302の処理において検出されなかった位置タグ205の配置位置を、位置タグデータベース103を参照することにより取得し、前記配置位置に、人物タグ204を所持しない不審物体が存在すると物体位置推定部105で判断する。例えば、図2の人203が人物タグ204を所持していなかったとする。すると、ステップS302の処理において検出されなかった位置タグ205(位置タグID:POS_013)の配置位置は、図6の位置タグデータベース103を参照することにより座標(250,250)であることが物体位置推定部105で分かる。更に、ステップS303の処理において人物タグ204が検出されていないことが物体位置推定部105で分かる。その後、ステップS301に戻る。 【0044】 以上の図3の処理から、部屋201の座標(250,250)の位置に、不審者、あるいは、不審物体が存在すると物体位置推定部105で判断することができる。 【0045】 ここで、物体位置推定部105の詳細な動作について説明する。 【0046】 物体位置推定部105は、図1Bに示すように、未検出位置タグ判断手段(未検出位置タグ判断部)106と、未検出位置タグ位置判断手段(未検出位置タグ位置判断部)107と、人物タグ判断手段(人物タグ判断部)108と、物体位置判断手段(物体位置判断部)109とを備えて構成されている。 【0047】 未検出位置タグ判断手段106は、タグリーダ101のタグIDの検出結果と、定常時可読位置タグデータベース104を参照し、定常時可読位置タグデータベース104の可読判定に「可」と記録されている位置タグ205のタグIDの中から、タグリーダ101が検出したタグID以外のタグIDを抽出し、抽出したタグIDを持つ位置タグ205をタグリーダ101で検出できなかった位置タグ205であると判断する。未検出位置タグ判断手段106の判断結果は、未検出位置タグ位置判断手段107に出力する。 【0048】 以下、未検出位置タグ位置判断手段107と、人物タグ判断手段108と、物体位置判断手段109との説明は、タグリーダ101で検出できなかった位置タグ205は1個であった場合を例として説明する。尚、タグリーダ101で検出できなかった位置タグ205が2個以上であった場合に関しては後述する。 【0049】 未検出位置タグ位置判断手段107は、位置タグデータベース103に記録されている、タグIDに紐付けられた位置タグ205の配置座標を参照することにより、タグリーダ101で検出できなかった位置タグ205が配置されている座標を判断する。未検出位置タグ位置判断手段107の判断結果は、物体位置判断手段109に出力する。 【0050】 人物タグ判断手段108は、タグリーダ101のタグIDの検出結果と、人物タグデータベース102を参照し、人物タグデータベース102に記録されている人物タグ204のタグIDの中から、タグリーダ101が検出したタグIDを抽出し、抽出したタグIDを持つ人物タグ204を、タグリーダ101で検出した人物タグ204であると判断する。人物タグ判断手段108の判断結果は、物体位置判断手段109に出力する。 【0051】 物体位置判断手段109は、タグリーダ101で検出された人物タグ204が存在した場合、タグリーダ101で検出できなかった位置タグ205が配置されている座標に、タグリーダ101で検出された人物タグ204を所持する人物が存在すると判断し、タグリーダ101で検出された人物タグ204が存在しなかった場合、タグリーダ101で検出できなかった位置タグ205が配置されている座標に、人物タグ204を所持しない人物(不審物体)が存在すると判断する。 【0052】 このようにして、第1実施形態によれば、観測装置としてタグリーダ101のみを用いた構成により、タグ所持者の検出のみならず、タグを所持しない不審物体の検出を行うことができる。」 (引1c)【図2】には、次の図面が記載されている。 (引1d)引用文献1の【図4】には、次の図面が記載されている。 【図4】と【0033】の記載より、部屋201内をタグリーダ101で観測したデータは、位置タグが検出されたタグIDの番号であることが見て取れる。 (引1e)引用文献1の【図7】には、次の図面が記載されている。 以上の摘記(引1a)?(引1e)より、引用文献1には、特に実施の形態1として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「 物体位置推定システム90は、タグリーダ101と、物体位置推定装置91とで構成され、物体位置推定装置91は、人物タグデータベース102と、位置タグデータベース103と、定常時可読位置タグデータベース104と、物体位置推定部105とを備えるように構成され、 部屋201の床面に多数の位置タグ205(205A?205Cなど)が配置されており、 タグリーダ101は、所定の観測周期(例えば100msなど)毎に、部屋201内を観測し、部屋201内に存在する人203の所持する人物タグ204の検出と、部屋201に配置されている位置タグ205の検出とを行い、 タグリーダ101で観測したときの観測データは、タグリーダ101の内部記憶部で記録しておき、タグリーダ101で観測したときの観測データは、位置タグが検出されたタグIDの番号であり、 物体位置推定部105は、定常時可読位置タグデータベース104に検出可能と記録されている位置タグ205が全て検出されているか否かを判断し、位置タグ205が全て検出されていなかったと物体位置推定部105が判断する場合、物体位置推定部105は、人物タグデータベース102に記録されている人物タグ204が検出されているか否かを判断し、 人物タグ204が検出されていたと物体位置推定部105が判断した場合は、物体位置推定部105は、ステップS302の処理において検出されなかった位置タグ205の配置位置を、位置タグデータベース103を参照することにより取得し、更に、ステップS303の処理において検出された人物タグ204を所持する人203を、人物タグデータベース102を参照することにより物体位置推定部105で取得し、前記配置位置に、人物タグIDが示す人203が存在すると物体位置推定部105で判断し、 人物タグ204が検出されていなかったと物体位置推定部105が判断した場合は、物体位置推定部105は、ステップS302の処理において検出されなかった位置タグ205の配置位置を、位置タグデータベース103を参照することにより取得し、前記配置位置に、人物タグ204を所持しない不審物体が存在すると物体位置推定部105で判断する、 物体位置推定方法。」 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「部屋201の床面に配置される」「多数の位置タグ205(205A?205Cなど)」は、本願発明の「複数のICタグ」に相当し、引用発明の「タグリーダ101」は、本願発明の「ICタグリーダ」に相当する。したがって、引用発明の「タグリーダ101」が「部屋201に配置されている」「位置タグ205の検出を行う」ことは、本願発明の「複数のICタグからICタグリーダが識別情報を取得するステップ」に相当する。 (2)引用発明の「タグリーダ101の内部記憶部」は、本願発明の「前記ICタグリーダのメモリ」に相当し、引用発明の「所定の観測周期(例えば100msなど)」は、本願発明の「所定の時間範囲」に相当する。 次に、引用発明の「部屋201内を観測し」、「部屋201内に配置されている位置タグ205の検出」「を行う」ことは、本願発明の「前記複数のICタグの全て」について「前記識別情報」を「取得」することに相当する。 また、引用発明の「位置タグが検出されたタグIDの番号」は、「タグリーダ101で」「部屋201内を観測し」、「部屋201内に配置されている位置タグ205の検出とを行った」「観測データ」であるから、「識別情報の取得に関する情報」であるといえる。すると、引用発明の「位置タグが検出されたタグIDの番号」と、本願発明の「前記識別情報の取得の有無」とは、「前記識別情報の取得に関する情報」である点で共通する。 以上より、引用発明の「所定の観測周期(例えば100msなど)」で「タグリーダ101で観測したときの」「位置タグが検出されたタグIDの番号であ」る「観測データ」を「タグリーダ101の内部記憶部で記録してお」くことと、本願発明の「所定の時間範囲において、前記複数のICタグの全てについて前記識別情報の取得の有無を前記ICタグリーダのメモリに保存するステップ」とは、「所定の時間範囲において、前記複数のICタグの全てについて、ICタグリーダが取得した前記識別情報の取得に関する情報を前記ICタグリーダのメモリに保存するステップ」である点で共通する。 (3)引用発明の「人物タグIDが示す人203」及び「不審物体」の各々は、本願発明の「空間における利用者」に相当する。また、引用発明の「物体位置推定部105」は、本願発明の「判定装置」に相当する。 そして、引用発明の「物体位置推定部105」は、「定常時可読位置タグデータベース104に検出可能と記録されている位置タグ205が全て検出されているか否かを判断」するため、定常時可読位置タグデータベース104に検出可能と記録されている「ICタグ」のうち「識別情報を取得しなかった」ものと、定常時可読位置タグデータベース104に検出可能と記録されている「ICタグ」のうち「識別情報を取得したもの」「に基づいて」「判定」しているといえる。 以上より、引用発明の「物体位置推定部105は、定常時可読位置タグデータベース104に検出可能と記録されている位置タグ205が全て検出されているか否かを判断」し、「位置タグ205が全て検出されていなかったと物体位置推定部105が判断する場合」、「検出されなかった位置タグ205の配置位置」に「人物タグIDが示す人203」又は「不審物体」が「存在すると」「判断する」ことと、本願発明の「判定装置が」「前記識別情報を取得しなかった前記ICタグと前記識別情報を取得した前記ICタグとに基づいて、空間における利用者の位置を」「判定するステップ」とは、「判定装置」が「少なくとも一部の前記識別情報を取得しなかったICタグと、少なくとも一部の前記識別情報を取得したICタグに基づいて」「判定するステップ」で共通する。 (4)引用発明の「物体位置推定方法」は、「人物タグIDが示す人203」又は「不審物体」の位置を推定しているから、本願発明の「利用者位置測定方法」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。 (一致点) 「 複数のICタグからICタグリーダが識別情報を取得するステップと、 所定の時間範囲において、前記複数のICタグの全てについて、ICタグリーダが取得した前記識別情報の取得に関する情報を前記ICタグリーダのメモリに保存するステップと、 少なくとも一部の前記識別情報を取得しなかったICタグと少なくとも一部の前記識別情報を取得した前記ICタグとに基づいて、空間における利用者の位置を判定装置が判定するステップと、を有する、 利用者位置測定方法。」 また、本願発明と引用発明とは、次の各点で一応相違する。 (相違点1) 「前記ICタグリーダのメモリに保存する」「前記識別情報の取得に関する情報」が、本願発明では「前記識別情報の取得の有無」であるのに対して、引用発明では「位置タグが検出されたタグIDの番号」である点。 (相違点2) 「空間における利用者の位置」の「判定」を行うための「前記識別情報を取得しなかった前記ICタグ」及び「前記識別情報を取得した前記ICタグ」が、本願発明は、「ICタグリーダが識別情報を取得する」ステップを行った「全て」の「ICタグ」であるのに対して、引用発明は、「定常時可読位置タグデータベース104に検出可能と記録されている位置タグ205」 である点。 第6 判断 1 相違点1 相違点1について検討する。 引用文献1の【0037】には、「定常時には位置タグID:POS_013が示す位置タグ205が検出可能であるのに対し、図4の観測データには前記位置タグID:POS_013が示す位置タグ205が検出されておらず」と記載されている。そして、検出されていない「位置タグ205」の位置から人の位置を検出していることからすれば、当業者であれば、タグリーダ101のメモリに、「図4の観測データ」に加えて「位置タグ205が検出されていない」という情報が保存されていると理解することができる。したがって、「図4の観測データ」(「位置タグが検出されたタグIDの番号」の例)には、実質的に、検出されたタグIDの番号のみならず、位置タグが検出されていない(あるいは、検出されている)という「識別情報の取得の有無」の情報が含まれているといえる。したがって、引用発明の「位置タグが検出されたタグIDの番号」は、実質的に本願発明の「前記識別情報の取得の有無」に相当する。 また、仮に引用発明の「位置タグが検出されたタグIDの番号」が本願発明の「前記識別情報の取得の有無」に相当するとまではいえないとしても、引用文献1の【0036】の「物体位置推定部105」が「定常時可読位置タグデータベース104に記録されている位置タグ205が全て検出されているか否か」を計算機で判断するためには、「位置タグが検出されたタグIDの番号」の情報に加えて、「位置タグが検出されなかったタグIDの番号」の情報が必要になることは、当業者に明らかである。したがって、引用発明において、「位置タグが検出されたタグIDの番号」から「位置タグが検出されなかったタグIDの番号」を導出し、その両者を「ICタグリーダのメモリにおいて、保存しておく」ようにすることは、当業者であれば容易になし得たことである。そして、「位置タグが検出されたタグIDの番号」と「位置タグが検出されなかったタグIDの番号」の両方の情報を合わせたものは、本願発明の「前記識別情報の有無」に相当するといえる。 したがって、相違点1は、実質的な相違点ではない。また、実質的な相違点であったとしても、当業者が容易に想到し得る事項である。 2 相違点2 相違点2について検討する。 引用文献1の【0038】には、「定常時可読位置タグデータベース104には、定常時(人が部屋201内に存在しない状況)において、検出可能な位置タグ205と、検出不可能な位置タグ205とが分別して記録されている。」ことが記載されているから、引用発明の「定常時可読位置タグデータベース104に検出可能と記録されている位置タグ205」は、人が部屋に存在しない状況において検出可能な位置タグである。 そして、本願明細書の【図2】?【図14】を参酌すると、本願発明の「ICタグリーダが識別情報を取得する」「複数のICタグ」も、人が部屋に存在しない状況において検出可能なICタグをいうものと解釈できる。 したがって、引用発明の「定常時可読位置タグデータベース104に検出可能と記録されている位置タグ205」は、本願発明の「ICタグリーダが識別情報を取得する」ステップを行った「複数のICタグの全て」と、実質的に差異はないといえる。 また、仮に、実質的な差異があるとしても、「空間における利用者の位置」の「判定」を行うための「識別情報を取得しなかったICタグ」及び「識別情報を取得したICタグ」として、定常的に検出不可能なICタグを含む全てのもので判定する場合と、定常時に検出可能なICタグのみで判定する場合とで、結果に差が出ないことは、当業者であれば容易に理解することである。したがって、引用発明において、「定常時可読位置タグデータベース104に検出可能と記録されている」ICタグで判定することに替えて、「ICタグリーダが識別情報を取得する」ステップを行った「複数のICタグの全て」で判定するようにすることは、当業者であれば容易になし得ることである。 したがって、相違点2は、実質的な相違点ではない。また、実質的な相違点であったとしても、当業者が容易に想到し得る事項である。 3 本願発明の効果 本願発明の効果は、引用文献1の記載から当業者が予測可能なものであり、格別顕著なものであるとはいえない。 4 請求人の主張について (1)請求人は、令和2年3月16日の意見書にて、 「引用文献1に記載された観測データは、図4から明らかなように、タグIDのみを含んでおり、タグIDの取得の有無、つまり、タグIDを取得したこととタグIDを取得しなかったことについて、観測データには含まれておりません。よって、引用文献1におけるタグリーダ101の内部記憶部には、タグIDの取得の有無は記録されないので、引用文献1に記載された「タグリーダ101で観測したときの観測データは、タグリーダ101の内部記憶部で記録してお」くことが、本願発明の「所定の時間範囲において、各ICタグの前記識別情報の取得の有無を前記ICタグリーダのメモリに保存するステップ」に相当する、とは到底認められません。」 と主張している。 しかしながら、「1 相違点1」にて前述したとおり、「図4の観測データ」(「位置タグが検出されたタグIDの番号」の例)には、位置タグが検出されていない(あるいは、検出されている)という情報が実質的に含まれているといえるから、請求人の主張するように、引用文献1におけるタグリーダ101の内部記憶部には、タグIDの取得の有無は記録されない」とはいえない。したがって、請求人の主張は採用することができない。 また、引用文献1の【0036】の「物体位置推定部105」が「定常時可読位置タグデータベース104に記録されている位置タグ205が全て検出されているか否か」を判断するには、「位置タグが検出されたタグIDの番号」に加えて、「位置タグが検出されなかったタグIDの番号」が必要になることは、当業者に明らかであるから、引用発明において、「位置タグが検出されたタグIDの番号」から「位置タグが検出されなかったタグIDの番号」を導出し、その両者を「ICタグリーダのメモリにおいて、保存しておく」ようにすることは、当業者であれば容易になし得たことである。したがって、仮に、請求人が主張するとおりであったとしても、引用文献1におけるタグリーダ101の内部記憶部に、「位置タグが検出されたタグIDの番号」に加えて、後の判断に必要となる「位置タグが検出されなかったタグIDの番号」を記憶するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。 よって、請求人の主張どおりであったとしても、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。 (2)請求人は、上記意見書にて、 「また、引用文献1は、段落[0031]、[0033]及び図4に、観測データには一部の位置タグ205のタグIDが含まれることが記載され、段落[0047]に、タグリーダ101が観測したタグIDの検出結果と定常時可読位置タグデータベース104を参照し、定常時可読位置タグデータベース104の可読判定に「可」と記録されている位置タグ205のタグIDの中から、タグリーダ101が検出したタグID以外のタグIDを抽出し、抽出したタグIDを持つ位置タグ205をタグリーダ101で検出できなかった位置タグ205であると判断することが記載されております。すなわち、引用文献1に記載された発明は、タグリーダ101の内部記憶部に記録される観測データのタグIDと、定常時可読位置タグデータベース104の可読判定に「可」と記録されているタグIDとを比較(対比)することで、初めて、タグリーダ101で検出できなかった位置タグ205を特定することができるものであります。 これに対し、本発明は、明細書の段落[0031]-[0036]及び図3から図14に記載しているように、トイレ70に設置された全てのICタグ20について、ID情報の読み取りの「〇」と「×」、つまり、IDの取得の有無をICタグリーダ30のメモリ40に保存しているので、ICタグリーダ30単体でID情報を取得できなかったICタグ20を特定することができるものであります。このように、物体位置推定装置91の定常時可読位置タグデータベース104を必要とする引用文献1の発明と本発明とは、根本的に全く異なるものであります。」 と主張している。 しかしながら、「1 相違点1」にて前述したとおり、「図4の観測データ」(「位置タグが検出されたタグIDの番号」の例)には、位置タグが検出されていない(あるいは、検出されている)という情報が実質的に含まれているといえる。また、引用文献1の【0036】の「物体位置推定部105」が「定常時可読位置タグデータベース104に記録されている位置タグ205が全て検出されているか否か」を判断するには、「位置タグが検出されたタグIDの番号」に加えて、「位置タグが検出されなかったタグIDの番号」が必要になることは、当業者に明らかであるから、引用発明において、「位置タグが検出されたタグIDの番号」から「位置タグが検出されなかったタグIDの番号」を導出し、その両者を「ICタグリーダのメモリにおいて、保存しておく」ようにすることは、当業者であれば容易になし得たことである。 ここで、請求人は、「引用文献1に記載された発明は、タグリーダ101の内部記憶部に記録される観測データのタグIDと、定常時可読位置タグデータベース104の可読判定に「可」と記録されているタグIDとを比較(対比)することで、初めて、タグリーダ101で検出できなかった位置タグ205を特定することができるもの」と主張する。しかしながら、引用文献1の【0037】の「図7の定常時可読位置タグデータベース104を参照すると、定常時には位置タグID:POS_013が示す位置タグ205が検出可能であるのに対し、図4の観測データには前記位置タグID:POS_013が示す位置タグ205が検出されておらず、」(下線は当審にて付与した。)と記載されていることからすると、図7の定常時可読位置タグデータベース104と照らし合わせる前に、図4の観測データから直接位置タグ205が検出されているかどうかを判断できることが見てとれる。よって、請求人の主張するように、「タグリーダ101の内部記憶部に記録される観測データのタグIDと、定常時可読位置タグデータベース104の可読判定に「可」と記録されているタグIDとを比較(対比)することで、初めて、タグリーダ101で検出できなかった位置タグ205を特定することができる」というものでないといえる。 また、請求人は、「本発明は」「ICタグリーダ30単体でID情報を取得できなかったICタグ20を特定することができるもの」とも主張するが、ICタグリーダがID情報を取得できなかったICタグを特定するとの構成は請求項に記載されておらず、請求項の記載に基づかない主張である。 よって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。 5 小括 したがって、本願発明は引用発明であり、また、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得る発明である。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-04-06 |
結審通知日 | 2020-04-07 |
審決日 | 2020-04-21 |
出願番号 | 特願2018-19043(P2018-19043) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(G01V)
P 1 8・ 121- WZ (G01V) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福田 裕司 |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
東松 修太郎 福島 浩司 |
発明の名称 | 利用者位置測定方法 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 江口 昭彦 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 稲葉 良幸 |