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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1362978
審判番号 不服2018-4169  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-27 
確定日 2020-06-11 
事件の表示 特願2017- 20364「動画像符号化データ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月20日出願公開、特開2017- 77036〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)1月6日(優先権主張 平成23年1月12日)を国際出願日とする出願である特願2012-552668号の一部を、平成26年2月10日に特願2014-023385号として新たに特許出願としたものの一部を、平成26年12月22日に特願2014-258945号として新たに出願したものの一部を、平成27年11月10日に特願2015-220296号として新たな特許出願としたものの一部を、平成29年2月7日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年10月30日付け:拒絶理由通知
同年12月21日 :意見書の提出、手続補正
平成30年 1月18日付け:拒絶査定
同年 3月27日 :拒絶査定不服審判請求
令和 1年 7月23日付け:拒絶理由通知(当審)
同年 9月17日 :意見書の提出、手続補正
同年12月25日付け:拒絶理由通知(当審)
令和 2年 3月 2日 :意見書の提出、手続補正

第2 当審拒絶理由の概要
令和1年12月25日付けの当審が通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。

(発明該当性)この出願の請求項1に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。



請求項1の「動画像符号化データ」は、「動画像符号化データ」が有する「データ構造」が、「画像復号装置」と協働して情報処理を実現しているものとはいえない。
よって、請求項1の「動画像符号化データ」は、「データ構造」に基づく情報処理に技術的特徴は認められず、また、「復号処理を生成させる」という用途を提示しているのみであるから、「情報の単なる提示」を行うものに該当する。
以上のとおりであるから、請求項1の「動画像符号化データ」は、「情報の単なる提示」を行うものであるから、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当せず、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」(「自然法則を利用した技術的思想の創作」)に該当しない。

第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年3月2日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。
なお、各構成の符号(A)?(C4)は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成A?構成C4と称する。また、下線は令和2年3月2日の手続補正により補正された箇所を示す。

(本願発明)
(A) 最大サイズの符号化ブロックから階層的に分割される階層数が特定され、上記階層数の上限に至るまで階層的に分割された複数の符号化ブロックの符号化データから構成される動画像符号化データであって、
(B) 上記動画像符号化データは、
(B1) 上記複数の符号化ブロックの符号化データと、上記符号化ブロックの上記最大サイズ及び上記階層数が多重化され、
(B2) 上記符号化データは、上記符号化ブロックに係る符号化データを含み、
(B3) 上記符号化ブロックに対してインター予測処理かイントラ予測処理かを示す符号化モード情報と、
(B4) 上記符号化モード情報がイントラ予測を示す場合にイントラ予測の種類を示すイントラ予測パラメータと、
(B5) 差分画像の圧縮データと、を備え、
(C) 上記動画像符号化データは、
(C1) 動画像復号装置に、処理対象の符号化ブロック毎に上記符号化モード情報を復号させ、
(C2) 復号した上記符号化モード情報がイントラ予測を示す場合、上記動画像復号装置に、処理対象の符号化ブロック毎にイントラ予測の種類を示す上記イントラ予測パラメータを復号させ、復号した上記イントラ予測パラメータを用いて予測処理を実施させ、
(C3) 復号した上記イントラ予測パラメータが平均値予測を示す場合、上記動画像復号装置に、予測処理の単位となるブロックの複数の隣接画素であって該ブロックの隣接ブロックに位置する複数の隣接画素の平均値として規定される中間予測値と、該ブロックの予測対象画素の隣接画素であって該ブロックの隣接ブロックに位置する隣接画素とを用いて、上記符号化ブロックの予測処理の単位となるブロック内の上端と左端に位置する上記予測対象画素に対してフィルタ処理を実施させて、イントラ予測画像を生成させ、
(C4) 上記動画像復号装置に、上記イントラ予測画像と、上記圧縮データを逆変換処理することで生成させた差分画像と、に基づいて復号画像を生成させる
(A) ことを特徴とする動画像符号化データ。

第4 判断
1.本願発明の「画像符号化データ」の発明特定事項について
(1)「画像符号化データ」の構成
本願発明の「動画像符号化データ」は、「最大サイズの符号化ブロックから階層的に分割される階層数が特定され」、「上記階層数の上限に至るまで階層的に分割された複数の符号化ブロックの符号化データ」から構成される「動画像符号化データ」(構成A)である。
そして、当該「動画像符号化データ」(構成B)は、「複数の符号化ブロックの符号化データ」と、「符号化ブロック」の「最大サイズ」と「階層数」が多重化され(構成B1)、「上記符号化ブロックに対してインター予測処理かイントラ予測処理かを示す符号化モード情報」(構成B3)と、「上記符号化モード情報がイントラ予測を示す場合にイントラ予測の種類を示すイントラ予測パラメータ」(構成B4)と、「差分画像の圧縮データ」(構成B5)と、を備えており、上記「符号化ブロックの符号化データ」は、「符号化ブロックに係る符号化データ」を含む(構成B2)。

(2)「画像符号化データ」に基づき実行される情報処理
本願発明の「動画像符号化データ」は、「動画像復号装置」において、構成C1から構成C4の処理に用いられるものである。
構成C1の情報処理は、「処理対象の符号化ブロック毎に」、構成B3の「符号化モード情報」を復号させる情報処理である。
構成C2の情報処理は、「復号した上記符号化モード情報がイントラ予測を示す場合」、「処理対象の符号化ブロック毎に」、構成B4の「イントラ予測パラメータ」を復号させ、復号した上記「イントラ予測パラメータ」を用いて予測処理を実施させる情報処理である。
構成C3の情報処理は、「復号した上記イントラ予測パラメータが平均値予測を示す場合」、「予測処理の単位となるブロックの複数の隣接画素であって該ブロックの隣接ブロックに位置する複数の隣接画素の平均値として規定される中間予測値」と、「該ブロックの予測対象画素の隣接画素であって該ブロックの隣接ブロックに位置する複数の隣接画素」とを用いて、「符号化ブロックの予測処理の単位となるブロック内の上端と左端に位置する上記予測対象画素に対してフィルタ処理を実施させ」て、イントラ予測画像を生成させる情報処理である。
構成C4の情報処理は、「上記イントラ予測画像」と、構成B5の「差分画像の圧縮データ」を逆変換処理することで生成させた「差分画像」と、に基づいて復号画像を生成させる情報処理である。

2.発明該当性についての判断
(1)「画像符号化データ」の「データ構造」について
ア.構成Aの「動画像符号化データ」について検討する。
構成Aは、「動画像符号化データ」が「最大サイズの符号化ブロックから階層的に分割される階層数が特定され」、「上記階層数の上限に至るまで階層的に分割された複数の符号化ブロックの符号化データ」という、「符号化ブロック」の「符号化データ」が備えるサイズ(大きさ)についての性質、論理的階層を有するという性質、及び該動画像符号化データが、複数の当該符号化ブロックの符号化データから構成されること、を特定しているといえる。

イ.構成Bの「動画像符号化データ」について検討する。
構成Bの「動画像符号化データ」は、「上記複数の符号化ブロックの符号化データ」と、「上記符号化ブロックの上記最大サイズ及び上記階層数」が多重化され(構成B1)、
「符号化ブロックに係る符号化データ」を含み(構成B2)、
「符号化ブロックに対してインター予測処理かイントラ予測処理を示す符号化モード情報」(構成B3)、
「イントラ予測の種類を示すイントラ予測パラメータ」(構成B4)、
「差分画像の圧縮データ」(構成B5)を備えることを特定している。

すなわち、「動画像符号化データ」が、「符号化ブロック」ごとに「符号化データ」及び「符号化ブロック」の「最大サイズ」と「階層数」が多重化され、「符号化ブロック」に対して「符号化データ」、「符号化モード情報」、「イントラ予測パラメータ」、「差分画像の圧縮データ」が含まれることが特定されている。

ウ.上記ア、イによると、請求項1の「動画像符号化データ」は、「符号化ブロック」ごとに「最大サイズ」、「階層数」、「符号化データ」、「符号化モード情報」、「イントラ予測パラメータ」、「差分画像の圧縮データ」が配置されており、複数の当該符号化ブロックがあるという、データの並びを規定する「データ構造」を有するものといえる。

(2)「データ構造に基づく情報処理を具体的に行うもの」について
本願発明の「動画像符号化データ」に基づき実行される情報処理は、上記1(2)のとおりである。

(2-1) 構成C1及び構成C2の情報処理は、「処理対象の符号化ブロック毎に」「符号化モード情報を復号」し、「イントラ予測パラメータを復号」し、予測処理を行う情報処理であるから、構成C1及び構成C2の情報処理は、単に動画像符号化データが備える「情報」に対する情報処理を特定しているに過ぎず、動画像符号化データの「データ構造」に基づく情報処理を具体的に特定しているとはいえない。

(2-2) 構成C3の情報処理は、「中間予測値」と「隣接画素」を用いて、「予測対象画素に対してフィルタ処理を実施させて、イントラ予測画像を生成させ」る情報処理であって、
当該「中間予測値」は「予測処理の単位となるブロック」の「隣接ブロックに位置する複数の隣接画素の平均値として規定される」ものであり、
当該「隣接画素」は「予測処理の単位となるブロックの予測対象画素」の「隣接ブロックに位置する隣接画素」であるから、
「予測処理の単位となるブロック内に位置する予測対象画素」を「該ブロックの隣接ブロックに位置する隣接画素」を用いて処理するものであるといえる。
そうすると、構成C3の情報処理は、「予測対象の単位となるブロック内に位置する予測対象画素」と、「隣接ブロックに位置する隣接画素」という、画面上の位置関係が特定されたデータに関する処理であることを特定しているに過ぎない。

よって、構成C3の情報処理において、情報処理の対象となるデータ要素間の関係は、画素が属するブロックが隣接していることで、「符号化ブロックの予測処理の単位となるブロック内の上端と左端に位置する予測対象画素に対するフィルタ処理」が実行されることを定めるものではないから、該フィルタ処理という情報処理を具体的に特定しているとはいえない。

したがって、構成Bの「動画像符号化データ」のデータ構造は、予測処理の単位となるブロック内に位置する予測対象画素と該ブロックの隣接ブロックに位置する隣接画素が、構成C3の情報処理における「符号化ブロックの予測処理の単位となるブロック内の上端と左端に位置する予測対象画素に対するフィルタ処理」が実行されることを特定するものではなく、「データ構造」に基づく情報処理を具体的に特定しているとはいえない。

(2-3) 構成C4の情報処理は、「イントラ予測画像」と「差分画像」に基づき復号画像を生成させるという情報処理を特定しているにすぎず、動画像符号化データの「データ構造」に基づく情報処理を具体的に特定しているとはいえない。

(2-4) 以上のことから、本願発明の「画像符号化データ」は、「データ構造」に基づく情報処理を具体的に特定するものではない。

そうすると、本願発明の「画像符号化データ」は、予測処理、予測対象画素に対するフィルタ処理、イントラ予測画像の生成、復号画像の生成といった復号処理に用いられるという用途を提示しているのみであり、「情報の単なる提示」を行うものにすぎず、特許法第2条第1項における「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではないから、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」に該当しない。

3.意見書の主張について
請求人は、令和2年3月2日の意見書の3において、
「拒絶理由通知書には、上記拒絶理由に関し、本願の請求項1に特定される「処理は、「符号化ブロック」ごとに備えられる「符号化データ」、「符号化モード情報」、「イントラ予測パラメータ」、及び「差分画像の圧縮データ」のみの内容に従って「動画像復号装置」が実行する復号処理であり、「動画像符号化データ」の「データ構造」に基づく情報処理ではない。」「したがって、請求項1の「動画像符号化データ」は、「動画像符号化データ」が有する「データ構造」が、「画像復号装置」と協働して情報処理を実現しているものとはいえない。」「よって、請求項1の「動画像符号化データ」は、「データ構造」に基づく情報処理に技術的特徴は認められず、また、「復号処理を生成させる」という用途を提示しているのみであるから、「情報の単なる提示」を行うものに該当する。」と記載されております。

しかしながら、本願の請求項1に係る「動画像符号化データ」が「動画像復号装置」に実行させる処理において、「処理対象の符号化ブロック」の「予測対象画素」は、当該「符号化ブロック」の「差分画像の圧縮データ」に基づく画素の値で示されるものであるのに対し、当該「予測対象画素」に対する「フィルタ処理」に用いられる「隣接画素」は、当該「符号化ブロック」以外のブロックである「隣接ブロック」の「差分画像の圧縮データ」に基づく画素の値で示されるものであります。
すなわち、本願の請求項1に係る「動画像符号化データ」が「動画像復号装置」に実行させる処理は、本願の請求項1に示される複数の異なる符号化ブロックにまたがるデータを用いた処理であって、本願の請求項1に示されるデータ構造に基づく情報処理であります。
してみれば、本願の請求項1に係る「動画像符号化データ」が「動画像復号装置」に実行させる処理は、本願の請求項1に係る「動画像符号化データ」のデータ構造に基づく情報処理であって、本願の請求項1に係る「動画像符号化データ」は、「動画像符号化データ」が有するデータ構造が「動画像復号装置」と協働して情報処理を実現するものです。
したがいまして、本願の請求項1に係る「動画像符号化データ」は、「情報の単なる提示」に該当するものではなく、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するものですので、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」に該当するものであると思料いたします。」
と主張している。

しかしながら、上記2.(2)において判断したとおり、本願の請求項1において、予測処理の単位となる符号化ブロックと該ブロックに隣接する隣接ブロックに基づく情報処理を行うことは、「予測対象の単位となるブロックに位置する予測対象画素」と、「隣接ブロックに位置する隣接画素」という、画面上の位置関係が特定されたデータを用いた処理であることを特定しているものの、予測処理の単位となるブロックに位置する予測対象画素と隣接ブロックに位置する隣接画素が、「符号化ブロックの予測処理の単位となるブロック内の上端と左端に位置する予測対象画素に対するフィルタ処理」を行うことを特定するデータ構造を含むものではなく、「データ構造」に基づく情報処理を具体的に特定するとはいえない。

したがって、請求人の意見書による上記主張は、採用することができない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、本願請求項1の「動画像符号化データ」は、「情報の単なる提示」を行うものであるから、特許法第2条第1項における「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではなく、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」に該当しない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-03-31 
結審通知日 2020-04-07 
審決日 2020-04-23 
出願番号 特願2017-20364(P2017-20364)
審決分類 P 1 8・ 1- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩井 健二  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 川崎 優
鳥居 稔
発明の名称 動画像符号化データ  
代理人 井上 和真  
代理人 田澤 英昭  
代理人 坂元 辰哉  
代理人 辻岡 将昭  
代理人 濱田 初音  
代理人 中島 成  

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