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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1363009
審判番号 不服2019-12354  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-18 
確定日 2020-06-11 
事件の表示 特願2016-511297号「樹脂製キャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月8日国際公開、WO2015/151286〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年4月4日を国際出願日とする出願であって、令和元年6月13日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされた。これに対し、令和元年9月18日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 令和元年9月18日付けの手続補正の補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年9月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1の
「先端の厚みが2mm以上の結晶化されていない樹脂からなる容器口部に使用され、
天板部と、
前記天板部の周縁から垂下する筒部と、
前記天板部の内面に形成され、前記容器口部の外周面と接触するアウターリングと、
前記天板部の内面に形成され、前記容器口部の内周面と接触するインナーリングと、を備える樹脂製キャップであって、
前記アウターリングの内周面は、前記容器口部の先端の外周面に沿った形状である樹脂製キャップ。」を
「先端の厚みが2.2mm以上の結晶化されていない樹脂からなる容器口部に使用され、
天板部と、
前記天板部の周縁から垂下する筒部と、
前記天板部の内面に形成され、前記容器口部の外周面と接触するアウターリングと、
前記天板部の内面に形成され、前記容器口部の内周面と接触するインナーリングと、を備える樹脂製キャップであって、
前記アウターリングの内周面は、前記容器口部の先端の外周面に沿った形状である樹脂製キャップ。」とする補正を含むものである。

そして、上記補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である容器口部の先端の厚みについて、「2mm以上」から「2.2mm以上」にその範囲を狭めるものであり、この補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもないことは明らかである。

よって、本件補正における請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものである。

2 独立特許要件についての検討
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2012-12101号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
二軸延伸ブロー成形されてなるプラスチックボトルであって、キャップにより閉封される結晶化されていない口部を有するプラスチックボトルにおいて、
前記口部は、天面と、当該天面から延びる外周面と、当該天面から延びる内周面と、を有し、
前記外周面には、前記キャップが螺合されるねじ部と、当該ねじ部の下方にビードリングと、が突出形成されており、
少なくとも前記天面から前記ビードリングの上端までの範囲では、前記口部の内径は21mm以上22mm以下であり、且つ、前記口部の外径は25mm以上26mm以下であり、
前記ねじ部は、ねじ山の高さが0.7mm以上1.1mm以下である、プラスチックボトル。」

(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックボトル及びプリフォームの口部構造に関するものである。」

(ウ)「【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、鋭意検討した結果、非結晶タイプの口部を肉厚化するにあたり、口部の内径を小さくするという従来の発想を転換し、口部の外径を大きくするという新しい発想を想起し、既存の口部の強度の観点やキャップとの関係の観点から、後述する構成であれば上記目的を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。

(エ)「【0037】
キャップ6は、キャップ本体30及びタンパーエビデントバンド32を有する。キャップ本体30は、口部2の上方を覆う円盤状の蓋部36と、口部2の側方を覆う円筒部38と、を有する。タンパーエビデントバンド32は、円筒部38の下端に切り離し可能なブリッジ42を介して連結されている。タンパーエビデントバンド32の下部内面には、タブ44が上側内向きに形成されており、タブ44は、ビードリング18とサポートリング20との間で外周面12に係合している。
【0038】
キャップ本体30の円筒部38は、蓋部36の周縁からスカート状に垂下した部分である。円筒部38の内周面には、口部2のねじ部16に螺合するねじ部50が形成される。蓋部36の内面には、アウターリング52と、インナーリング54と、両リングの間に小突起56と、が突出形成される。アウターリング52は、円筒部38の内周面とは僅かな間隔をおいて蓋部36から延び、その断面形状は、任意であるが、ここでは正面視逆台形状に形成される。インナーリング54は、アウターリング52よりも内径側にて且つアウターリング52よりも長く、蓋部36から延びる。インナーリング54は、その断面形状が任意であるが、ここでは蓋部36から外径側に僅かに延びてから内径側へと屈曲して延びる形状で形成される。小突起56は、アウターリング52及びインナーリング54と同様に環状に突出形成されるが、その突出量はアウターリング52及びインナーリング54よりも小さい。
【0039】
図5に示すキャップ6の閉封時では、ねじ部50とねじ部16とが螺子締結され、小突起56が天面11に押し付けられるように接触する。また、アウターリング52は、天面11と外周面12とをつなぐコーナー部分の下側から外周面12のストレート面にかけて接触する。一方、インナーリング54は、上記の屈曲部分が内周面14に接触する。このように、口部2は、その上端部が径方向で挟み込まれるようにして、キャップ6によりシールされる。」

(オ)「【0055】
なお、外周面12側のRを1.2mmに設定したが、この寸法に限るものではない。外周面12側のRは、0.8mm以上2.0mm以下であることが好ましく、その中でもアウターリング52の下端を逃がす作用とアウターリング52に接触してシール性を確保する作用とのバランスを考えると、最も好ましいのが1.2mmということである。逆に、0.8mm未満であると、アウターリング52の下端を逃がす作用が不十分となる一方、2.0mmを超えると、アウターリング52に対する口部2の接触面積が減るため、シール性が不足する可能性がある。」

(カ)「【0066】
また、口部2の内径及び外径は、上記寸法に限られない。特に、口内径及び口外径の寸法は、口部2に要求される強度などの様々な要素を考慮して、互いの寸法が相補的に決定されるものである。例えば、口内径については、本発明に至った経緯に鑑みると、一般的な非結晶タイプの口部(口内径:21.74mm±0.13mm)を包含し、且つ、一般的な結晶化タイプの口部(口内径:20.6mm±0.13mm)よりも大きい必要があるが、大きすぎては軽量化及び既存の製造設備の観点から望ましくない。この点に鑑み、本発明に含まれる口内径の妥当な範囲としては、21mm以上22mm以下となる。
【0067】
一方、口外径については、本発明に至った経緯に鑑みると、一般的な非結晶タイプ及び結晶化タイプの口部(口外径:24.94mm±0.13mm)を超えている必要があるが、その超えている量が小さくては耐熱性のための強度向上にはつながらず、一方で大きすぎては軽量化及びシール性の観点から望ましくない。この点に鑑み、口内径が21mm以上22mm以下の範囲である場合には、本発明に含まれる口外径の妥当な範囲としては25mm以上26mm以下となる。」

(キ)「図4



(ク)「図5



(ケ)「図6



(2)引用例に記載された発明
上記(1)の摘記事項を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「二軸延伸ブロー成形されてなるプラスチックボトルの、結晶化されていない、少なくとも天面から前記ビードリングの上端までの範囲で、内径が21mm以上22mm以下であり、且つ、外径が25mm以上26mm以下である口部を閉止し、
前記口部の上方を覆う円盤状の蓋部と、前記口部の側方を覆う円筒部と、を有し、
前記蓋部の内面には、アウターリングと、インナーリングと、両リングの間に小突起と、が突出形成されるキャップ。」

(3)本願補正発明と引用発明の対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「口部」は、その機能及び構造から、本願補正発明の「容器口部」に相当し、同様に、「円盤状の蓋部」は「天板部」に、「円筒部」は「筒部」にそれぞれ相当する。

(イ)引用発明の「二軸延伸ブロー成形されてなるプラスチックボトル」の「結晶化されていない、」「口部を閉止」することは、口部が樹脂からなることが明らかであるから、本願補正発明の「結晶化されていない樹脂からなる容器口部に使用され」ることに相当する。

(ウ)引用発明の「前記口部の側方を覆う円筒部」は、図5、6を参照すると、円筒部が蓋部の周縁から垂下しているといえるから、本願補正発明の「前記天板部の周縁から垂下する筒部」に相当する。

(エ)引用発明の「前記蓋部の内面」に「突出形成される」「アウターリング」は、【0039】の記載を参酌すると、アウターリングが口部の外周面のストレート面に接触するから、本願補正発明の「前記天板部の内面に形成され、前記容器口部の外周面と接触するアウターリング」に相当する。

(オ)引用発明の「前記蓋部の内面」に「突出形成される」「インナーリング」は、【0039】の記載を参酌すると、アウターリングが口部の内周面に接触するから、本願補正発明の「前記天板部の内面に形成され、前記容器口部の内周面と接触するインナーリング」に相当する。

(カ)引用発明の「キャップ」は、樹脂製であることが明らかであるから、本願補正発明の「樹脂製キャップ」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「結晶化されていない樹脂からなる容器口部に使用され、
天板部と、
前記天板部の周縁から垂下する筒部と、
前記天板部の内面に形成され、前記容器口部の外周面と接触するアウターリングと、
前記天板部の内面に形成され、前記容器口部の内周面と接触するインナーリングと、を備える樹脂製キャップ。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
容器口部が、本願補正発明では、「先端の厚みが2.2mm以上」であるのに対して、引用発明では、内径が21mm以上22mm以下であり、且つ、外径が25mm以上26mm以下である点。
<相違点2>
本願補正発明は、「前記アウターリングの内周面は、前記容器口部の先端の外周面に沿った形状である」のに対して、引用発明は、アウターリングの内周面の形状について、そのように特定されていない点。

イ 当審の判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
引用発明は、「内径が21mm以上22mm以下であり、且つ、外径が25mm以上26mm以下である口部」であるところ、引用例の【0013】の記載からみて、引用発明の「口部」を肉厚化する動機付けがあることから、内径を21mm、外径を26mmと選択し得るものであり、また、引用例の【0067】及び【0068】の記載をみても、内径を21mmとすると共に外径を26mmとすることを排除する記載はない。
そうすると、引用発明において、上記示唆に従い内径が21mm、外径が26mmの口部とすることは、当業者が容易になし得たことであって、その場合、口部の先端の厚みは2.5mmとなるから、口部の先端の厚みを2.2mm以上とすることは、当業者が容易になし得たことであるといえる。

<相違点2について>
本願補正発明の「外周面に沿った形状」とは、本願明細書の【0007】の「キャップのアウターリング内面を容器口部外面の形状に沿った形状にしてアウターリングを容器口部外面にしっかり接触させることで、密封性の向上が可能な新しい思想のキャップ構造を発明するに至った。」の記載および平成30年6月13日の意見書の「請求項1の「前記容器口部の先端の外周面に沿った形状である」との記載は、アウターリングは容器口部の外周面と「接触」することが明確かつ十分に記載されたものであり、」(「(2-2-2)実施可能要件明確性について」の欄)との記載から、外周面にしっかり接触し、密封性を向上する形状であると理解される。

そして、引用例の【0039】には、「アウターリング52は、天面11と外周面12とをつなぐコーナー部分の下側から外周面12のストレート面にかけて接触する。」と記載され、【0055】には、外周面12側のRが「2.0mmを超えると、アウターリング52に対する口部2の接触面積が減るため、シール性が不足する可能性がある。」と記載されている。
また、原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-350094号公報の【0023】には、「アウターリング7の内面が容器口部壁50の外周面に密着すると同時に、この傾斜部22が、容器口部の上端面から外側面にかけての肩部(外側肩部)50aに当接するようになっている。」「しかるに、アウターリング7に形成されている上記のような傾斜部22は、密封性の向上に寄与している。」と記載されており、平成30年4月11日付けで通知した拒絶理由に引用された実願照61?64628号(実開照62-177651号)のマイクロフィルムの7頁1?3行には、「瓶口2の内、外壁面2a,2bに当接するシール壁4,5は面接触の状態となっている。」と記載されている。
そうすると、アウターリングの形状として、口部の外周面に接触し、密封性を向上する形状、すなわち、外周面に沿った形状とすることは、周知であるといえる。
したがって、引用発明はアウターリングと口部とのシール性を確保するものであるから、引用発明において、上記周知の事項を適用し、上記相違点2に係る本願補正発明の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<本願補正発明の効果について>
そして、本願補正発明の奏する効果は、引用発明及び周知の事項から、予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)小括
ゆえに、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件補正発明は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定により違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年9月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 令和元年9月18日付けの手続補正の補正却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及び引用発明については、上記「第2 令和元年9月18日付けの手続補正の補正却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(1)引用例」及び「(2)引用例に記載された発明」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、容器口部の先端の厚みについて、本願補正発明の「2.2mm以上」から「2mm以上」にその範囲を拡張するものである。
そうすると、本願発明を特定するための事項をすべて含み、容器口部の先端の厚みの範囲をより限定した本願補正発明が、前記「第2 令和元年9月18日付けの手続補正の補正却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(3)本願補正発明と引用発明の対比・判断」に記載したとおりの引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができない。
ゆえに、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-03-31 
結審通知日 2020-04-07 
審決日 2020-04-22 
出願番号 特願2016-511297(P2016-511297)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二ッ谷 裕子  
特許庁審判長 高山 芳之
特許庁審判官 佐々木 正章
井上 茂夫
発明の名称 樹脂製キャップ  
代理人 特許業務法人R&C  

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