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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C12G 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C12G |
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管理番号 | 1363138 |
異議申立番号 | 異議2018-700882 |
総通号数 | 247 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-07-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-11-05 |
確定日 | 2020-04-01 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6338854号発明「レモン風味飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6338854号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり〔1-4〕、5について訂正することを認める。 特許第6338854号の請求項1?5に係る特許を取り消す。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6338854号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成25年12月26日を出願日とする出願であって、平成30年5月18日付けでその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:同年6月6日)がされた。 その後、同年30年11月5日に特許異議申立人中島由貴(以下、「申立人」という。)より全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、その後の手続の経緯は、概略次のとおりである。 平成31年 3月 7日付け:取消理由通知 令和 元年 5月 9日提出:意見書(特許権者),訂正請求書 同年 6月 3日提出:意見書(申立人) 同年 7月 4日付け:訂正拒絶理由通知 同年 8月 7日提出:意見書(特許権者),手続補正書 同年 9月30日付け:訂正拒絶理由通知 同年10月30日提出:意見書(特許権者),手続補正書 同年11月19日付け:取消理由通知(決定の予告) なお、上記取消理由通知(決定の予告)において、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正請求書の手続補正書による補正の適否 令和元年10月30日提出の手続補正書による令和元年5月9日提出の訂正請求書の補正は、訂正請求書の請求項1及び5それぞれについての訂正事項2?4を削除するものである。 よって、当該手続補正書による補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第131条の2第1項の規定に適合するので上記補正を認める。 2.訂正の内容 令和元年10月30日提出の手続補正書によって補正された令和元年5月9日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりのものである(下線は訂正箇所を示す。)。 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1及び5における「該飲料中のリモネンと」との記載を、「缶に入れた該飲料中のリモネンと」に訂正する。 3.訂正の適否 上記訂正事項1は、訂正前の請求項1及び5では、リモネンと、γ-テルピネンと、α-テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)と、レモン風味飲料の製造後の経過日数(日)(X)との関係が、レモン風味飲料の「飲料中」とされていたものを、「缶に入れた」との限定を付して「缶に入れた該飲料中」とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件明細書の段落【0036】には、「調製したレモン風味飲料(調合品1?5)を、350mL容アルミ缶に入れ、50℃で4日間保管した後に下記の官能評価を行った。保管後のシトラール、リモネン、γ-テルピネン、およびα-テルピノレンの飲料(F品1?5)中の含有量および含有量比は、下記表3に記載の通りであった。また、50℃で4日間保管は、レモン風味飲料を通常の流通過程(常温)で流通させた場合の90日間に相当し、レモン風味飲料を通常の流通過程で流通させた場合の製造(調製)後の経過日数(日)(X)と、飲料中のリモネンと、γ-テルピネンと、α-テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)との関係を示せば、図1の通りであった。」と記載されており、リモネンと、γ-テルピネンと、α-テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)と、レモン風味飲料の製造後の経過日数(日)(X)との関係は、缶に入れた飲料中で求められているから、当該訂正事項1は、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。 また、本件訂正前の請求項2?4は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正事項1によって訂正される請求項1と一群の請求項であり、本件訂正は一群の請求項毎に請求されたものである。 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1-4],5について訂正を認める。 第3 本件発明 上記のとおり本件訂正は認められるので、本件請求項1ないし5に係る発明は、次のとおりのものである。 【請求項1】 シトラール、リモネン、γ-テルピネン、およびα-テルピノレンを含む、レモン風味飲料であって、缶に入れた該飲料中のリモネンと、γ-テルピネンと、α-テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)と、レモン風味飲料の製造後の経過日数(日)(X)との関係が、X≧0およびY≧0であり、かつ-0.0047X+0.89≦Y≦-0.021X+10.35であり、シトラールの飲料中の含有量が0.07?0.82ppmであり、リモネンとα-テルピノレンとの飲料中の含有量比が5.52?6.33:1であり、かつγ-テルピネンとα-テルピノレンとの飲料中の含有量比が0.48?1.67:1である、飲料。 【請求項2】 飲料中のリモネンと、γ-テルピネンと、α-テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)が、0.46?8.4ppmである、請求項1に記載の飲料。 【請求項3】 リモネンの飲料中の含有量が0.33?7.2ppmであり、γ-テルピネンの飲料中の含有量が0.08?0.26ppmであり、かつα-テルピノレンの飲料中の含有量が0.05?0.96ppmである、請求項1または2に記載の飲料。 【請求項4】 飲料のpHが2.5?4である、請求項1?3のいずれか一項に記載の飲料。 【請求項5】 シトラール、リモネン、γ-テルピネン、およびα-テルピノレンを含むレモン風味飲料の柑橘系香味劣化抑制方法であって、缶に入れた該飲料中のリモネンと、γ-テルピネンと、α-テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)と、レモン風味飲料の製造後の経過日数(日)(X)との関係が、X≧0およびY≧0であり、かつ-0.0047X+0.89≦Y≦-0.021X+10.35となるように調整し、シトラールの飲料中の含有量が0.07?0.82ppmとなるように調整し、リモネンとα-テルピノレンとの飲料中の含有量比が5.52?6.33:1となるように調整し、かつγ-テルピネンとα-テルピノレンとの飲料中の含有量比が0.48?1.67:1となるように調整する、方法。 第4 当審の判断 1.取消理由の概要 本件特許に対し、令和元年11月19日付けで通知した取消理由通知(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。 (1)取消理由1(実施可能要件) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記ア?ウの点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ア.保存中や保存後に請求項1及び5記載の「飲料中のリモネンと、γ-テルピネンと、α-テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)と、レモン風味飲料の製造後の経過日数(日)(X)との関係が、X≧0およびY≧0であり、かつ-0.0047X+0.89≦Y≦-0.021X+10.35」という構成要件を満足するように製造時において成分の含有量を調整することは、缶に入れた状態の温度条件が特定されていない状況では、過度の試行錯誤が必要であるから、本件明細書の発明の詳細な説明には、請求項1?5に係る発明を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものとは認められない。 イ.本件明細書に記載された実施例では、50℃、4日の条件が常温、90日の条件に相当するとされているが、そのような条件の関係を示す根拠はなく、請求項1?5に記載された関係式についての説明が不十分であるから、本件明細書の発明の詳細な説明には、請求項1?5に係る発明を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものとは認められない。 ウ.本件明細書に記載されているのは缶に入れられた飲料が50℃、4日間保存された場合の傾向にすぎず、他の温度条件で保存されたときも同様の関係式となるかについて何ら記載も示唆もされていない。さらに、実施例から得られるとしている上記傾向も単なる推定にすぎず、同じ条件で試験を実施してもリモネン、γ-テルピネン、α-テルピノレンが直線的に減少することは技術常識とは考えられないから、本件明細書の発明の詳細な説明には、請求項1?5に係る発明を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものとは認められない。 (2)取消理由2(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記ア?ウの点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ア.本件明細書にはレモン風味飲料を、調整した時及びアルミ缶に入れて50℃で4日間保管した時のシトラール,リモネン,γ-テルピネン及びα-テルピノレンの含有量についての評価結果についての記載しかないが、リモネン,γ-テルピネン及びα-テルピノレンの含有量は、時間の経過と共に直線的に減少するものではないから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を、請求項1?5に記載された範囲まで拡張ないし一般化することはできない。 イ.本件発明の課題は、柑橘系香味の劣化が抑制されたレモン風味飲料を提供することにあるが、シトラールの味覚閾値は5ppmであるから、請求項1?5に記載された発明特定事項を備えるのみではシトラールの味覚閾値を満たさない。 もっとも、レモン風味を感じるためには、シトラール以外にも酢酸ネリルや酢酸ゲラニルが知られており、請求項1?5に係る発明が、レモン風味飲料に係る発明であるためには、シトラール以外の酢酸ネリルや酢酸ゲラニル等の何らかのレモン風味成分を含有する必要があるが、本件明細書の発明の詳細な説明には、上記したようなシトラール以外の他のレモン風味成分を含有する実施例についての開示はないから、請求項1?5に係る発明が発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。 ウ.本件発明の課題は、柑橘系香味の劣化が抑制されたレモン風味飲料を提供することにあるが、食品の品質には温度が影響することは技術常識であり、このことは柑橘系香味の劣化にも当てはまるものと認められ、本件発明の課題を解決するためには温度条件も影響するものと認められるが、本件明細書の発明の詳細な説明には、アルミ缶内に入れ、50℃で4日間保管した場合の評価結果の記載しかなく、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を、請求項1?5に記載された範囲まで拡張ないし一般化することはできない。 (3)取消理由3(明確性) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 請求項1及び5には、シトラールの含有量、リモネンとα-テルピノレンの含有量比及びγ-テルピネンとα-テルピノレンの含有量比の範囲が規定されているが、当該含有量及び含有比がどの時点におけるものであるか明らかでなく、不明確である。 <甲号証一覧> 甲第1号証:稲波治、「飲料におけるフレーバーの劣化防止について」、ソフト・ドリンク技術資料2002年2号、p.81-95 甲第2号証:下田満哉、筬島豊、「温州ミカンの貯蔵臭に関する研究(第3報)」、日本農芸化学会誌55巻4号1981年、p.319-324 甲第3号証:太田英明他5名、「ヘッドスペース,殺菌条件および貯蔵条件が温州ミカン缶詰果汁の品質に及ぼす影響」、日本食品工業学会誌第30巻第4号、1983年4月、p.200-208 甲第4号証:山崎勝利、朝田仁、「賞味期限設定・延長のための各試験・評価法ノウハウ」、2018年4月16日、p.36,46,47 甲第5号証:Burdock George A.、「Fenaroli's handbookof flavor ingredients 6 edition」、2010、p.307-308 甲第6号証:長谷川香料株式会社、「香料の科学」、2013年4月10日、p.62-63 <乙号証一覧> 乙第1号証:菅原美佳他6名、「味覚閾値、風味の感受性に及ぼす鼻閉の影響」、小児歯科学雑誌33(2):360、1995年、p.360 乙第2号証:島田淳子、「調理と味」、栄養学雑誌Vol.50 No.3、1992年、p.113-126 乙第3号証:兵神装備株式会社、「匂いの閾値」、THE ENGENEER’S BOOK vol.19、p.245 2.判断 (1)取消理由1のア.について 缶に入れた状態の飲料は光による影響を排除できるとしても、リモネン,γ-テルピネン及びα-テルピノレンは温度によっても、経時的な含有量は変化するものと認められ(甲第2号証のTableI及びIIの記載参照。)、保存中や保存後に請求項1及び5記載の「飲料中のリモネンと、γ-テルピネンと、α-テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)と、レモン風味飲料の製造後の経過日数(日)(X)との関係が、X≧0およびY≧0であり、かつ-0.0047X+0.89≦Y≦-0.021X+10.35」という構成要件を満足するように製造時において成分の含有量を調整するには、缶に入れた状態のときの温度条件が特定されていない状況では過度の試行錯誤が必要であるものと認められる。 よって、本件訂正によっても、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正後の請求項1?5に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 (2)取消理由1のイ.について 本件明細書に記載された実施例では、50℃で4日間保管の条件が、常温で90日流通の条件に相当するとされている(段落【0036】の記載参照。)が、そのような条件の関係を示す根拠は何ら示されておらず(令和元年5月9日付け意見書においても示されていない。)、本件訂正後の請求項1?5に記載された関係式についての説明が十分でないから、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件訂正後の請求項1?5に係る発明を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものとは認められない。 (3)取消理由1のウ.について 本件明細書に記載されているのは、缶に入れられたレモン風味飲料を50℃で4日間保管した場合の傾向にすぎず、本件訂正を考慮しても、温度条件が変化した場合に同様の関係式となるかについて何ら記載や示唆はなされていない。 さらに、実施例から得られるとしている上記傾向も単なる推定にすぎず(すなわち、本件明細書添付の図1は、レモン風味飲料を50℃で4日保管したものが、常温で90日流通したものに相当することを前提に、保管前のリモネン、γ-テルピネン及びα-テルピノレンの合計含有量と50℃で4日保管後のこれらの合計含有量が、常温で90日流通した場合のこれらの合計含有量と同じになるとして、両者を直線で結んだにすぎない。)、同じ条件で試験を実施してもリモネン、γ-テルピネン及びα-テルピノレンの合計含有量が、本件明細書添付の図1に記載された様に直線的に減少するとはいえないし、技術常識に照らしてもそのようになるとは認められない(甲第2号証のTableI及びIIの記載参照。)。 よって、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件訂正後の請求項1?5に係る発明を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものとは認められない。 (4)取消理由2のア.について 本件明細書にはレモン風味飲料を、調整した時及びアルミ缶に入れて50℃で4日間保管した時のシトラール,リモネン,γ-テルピネン及びα-テルピノレンの含有量についての評価結果についての記載しかない(段落【0035】?【0042】及び図1の記載参照。)。 そして、特許請求の範囲に特定された数式は、当該評価結果より、シトラール,リモネン,γ-テルピネン及びα-テルピノレンの含有量が直線的に減少するとの前提で決定されたものと認められる。 一方、特に甲第2号証のTableI及びIIの記載に照らせば、リモネン,γ-テルピネン及びα-テルピノレンの含有量は、時間の経過と共に直線的に減少するものではない。そうすると、上記数式は根拠のないものであるから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を、本件訂正後の請求項1ないし5に記載された範囲まで拡張ないし一般化することはできない。 よって、本件訂正後の請求項1?5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (5)取消理由2のイ.について 本件発明の課題は、柑橘系香味の劣化が抑制されたレモン風味飲料を提供することにある(段落【0005】の記載参照。)。 ここで、レモン風味には、シトラール,リモネン,γ-テルピネン及びα-テルピノレン(以下、「シトラール等」という。)以外にも酢酸ネリルや酢酸ゲラニル等も影響することが知られており(甲第6号証)、本件訂正後の請求項1?5に係る発明が発明の課題を解決できるといえるためには、これらシトラール等以外の成分についての条件を一定にした上で、シトラール等のレモン風味への影響を検討することが必要であるものと認められる。 しかし、本件明細書の実施例(段落【0035】?【0042】の記載参照。)では、レモン果汁や香料の含有割合を変化させているから、上記酢酸ネリルや酢酸ゲラニル等といったレモン風味に影響を与える物質についての条件を一定にした上での評価はなされていない。 そうすると、本件発明の課題解決に寄与しているのは本件発明で特定された物質以外の物質である可能性もあるから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、本件訂正後の請求項1?5に記載された数値範囲を採用することにより、柑橘系香味の劣化が抑制されたレモン風味飲料が提供できることを当業者が理解できるとはいえない。 よって、本件訂正後の請求項1?5に係る発明が、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない。 (6)取消理由2のウ.について 本件発明の課題は、柑橘系香味の劣化が抑制されたレモン風味飲料を提供することにある(段落【0005】の記載参照。)が、食品の品質には温度が影響することは技術常識であり(必要であれば、甲第4号証参照。)、このことは柑橘系香味の劣化にも当てはまるものと認められる。 してみれば、本件発明の課題を解決するためには温度条件も影響するものと認められるが、本件明細書の発明の詳細な説明には、アルミ缶内に入れ、50℃で4日間保管した場合の評価結果の記載しかなく、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を、温度が特定されていない本件訂正後の請求項1ないし5に記載された範囲まで拡張ないし一般化することはできない。 よって、本件訂正後の請求項1?5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (7)取消理由3について 本件訂正後の請求項1及び5には、シトラールの含有量、リモネンとα-テルピノレンの含有量比及びγ-テルピネンとα-テルピノレンの含有量比の範囲が規定されているが、当該含有量及び含有比がどの時点におけるものであるか明らかでなく、発明の内容を特定できず不明確である。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 また、本件特許は、特許請求の範囲の請求項1?5の記載が、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 したがって、本件請求項1?5に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 シトラール、リモネン、γ-テルピネン、およびα-テルピノレンを含む、レモン風味飲料であって、缶に入れた該飲料中のリモネンと、γ-テルピネンと、α-テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)と、レモン風味飲料の製造後の経過日数(日)(X)との関係が、X≧0およびY≧0であり、かつ-0.0047X+0.89≦Y≦-0.021X+10.35であり、シトラールの飲料中の含有量が0.07?0.82ppmであり、リモネンとα-テルピノレンとの飲料中の含有量比が5.52?6.33:1であり、かつγ-テルピネンとα-テルピノレンとの飲料中の含有量比が0.48?1.67:1である、飲料。 【請求項2】 飲料中のリモネンと、γ-テルピネンと、α-テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)が、0.46?8.4ppmである、請求項1に記載の飲料。 【請求項3】 リモネンの飲料中の含有量が0.33?7.2ppmであり、γ-テルピネンの飲料中の含有量が0.08?0.26ppmであり、かつα-テルピノレンの飲料中の含有量が0.05?0.96ppmである、請求項1または2に記載の飲料。 【請求項4】 飲料のpHが2.5?4である、請求項1?3のいずれか一項に記載の飲料。 【請求項5】 シトラール、リモネン、γ-テルピネン、およびα-テルピノレンを含むレモン風味飲料の柑橘系香味劣化抑制方法であって、缶に入れた該飲料中のリモネンと、γ-テルピネンと、α-テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)と、レモン風味飲料の製造後の経過日数(日)(X)との関係が、X≧0およびY≧0であり、かつ-0.0047X+0.89≦Y≦-0.021X+10.35となるように調整し、シトラールの飲料中の含有量が0.07?0.82ppmとなるように調整し、リモネンとα-テルピノレンとの飲料中の含有量比が5.52?6.33:1となるように調整し、かつγ-テルピネンとα-テルピノレンとの飲料中の含有量比が0.48?1.67:1となるように調整する、方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-02-21 |
出願番号 | 特願2013-269921(P2013-269921) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
ZAA
(C12G)
P 1 651・ 536- ZAA (C12G) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 藤井 美穂 |
特許庁審判長 |
山崎 勝司 |
特許庁審判官 |
井上 哲男 紀本 孝 |
登録日 | 2018-05-18 |
登録番号 | 特許第6338854号(P6338854) |
権利者 | キリンホールディングス株式会社 |
発明の名称 | レモン風味飲料 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 佐藤 泰和 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 佐藤 泰和 |