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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65G
管理番号 1363155
異議申立番号 異議2019-700022  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-01-17 
確定日 2020-04-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6359981号発明「長尺重量物の吊上げ装置、長尺重量物の吊上げ用台車および長尺重量物の吊上げ方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6359981号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、〔3ないし5〕、6及び7について訂正することを認める。 特許第6359981号の請求項1ないし7に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6359981号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成27年1月29日に出願され、平成30年6月29日にその特許権の設定登録がされ、平成30年7月18日に特許掲載公報が発行された。
その後、平成31年1月17日に特許異議申立人滝沢玉恵(以下「特許異議申立人」という。)により請求項1ないし7に係る特許に対して特許異議の申立てがなされ、平成31年4月15日付け(発送日:平成31年4月19日)で取消理由が通知され、令和元年6月17日に特許権者により意見書及び訂正請求書が提出され、令和元年8月9日に特許異議申立人により意見書が提出され、令和元年9月27日付け(発送日:令和元年10月3日)で取消理由(決定の予告)が通知され、令和元年12月2日に特許権者により意見書及び訂正請求書が提出され(以下、当該訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」という。)、令和2年1月22日に特許異議申立人により意見書が提出された。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容(下線は、訂正箇所を示すために特許権者が付した。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に記載の「この保管箱の係合部に係脱自在の被係合部および床面上を自転により走行可能な走行手段を有し、前記保管箱が搬入された建屋の搬入階の床面において前記被係合部が前記保管箱の係合部に係合される、前記保管箱より短尺な台車」を、「この保管箱の係合部に係脱自在の被係合部および床面上を走行可能なキャスタを有し、前記保管箱が搬入された建屋の搬入階の床面において前記被係合部が前記保管箱の前記係合部に係合される、前記保管箱より短尺な台車」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に記載の「前記保管箱を、前記寸法よりも小さい有効開口寸法を持ち前記搬入階から目的階までの階床を貫通する床穴を通して前記目的階の床面上へ吊上げる吊上げ機構と、を備え、」を、「前記保管箱を吊上げる吊上げ機構と、を備え、前記保管箱を、前記寸法より小さい有効開口寸法を持ち前記搬入階から目的階までの階床を貫通する床穴を通して前記目的階の床面上へ吊上げる長尺重量物の吊上げ装置であって、」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に記載の「この吊上げ機構は、前記保管箱を長尺方向の他端側を上にして起立傾動させ、この保管箱の起立傾動に伴う重力荷重の移動により前記台車を自走させ、その後の前記保管箱を吊上げる過程で前記係合部および前記台車の被係合部の係合を解くことによって前記台車を分離して前記保管箱を揚重し、前記保管箱を前記目的階の床面上に水平に載置することを特徴とする長尺重量物の吊上げ装置。」を、「前記吊上げ機構は、前記保管箱を前記長尺方向の複数箇所で係止して前記保管箱を前記長尺方向の他端側を上にして起立傾動させ、この保管箱の起立傾動に伴う前記係合部から前記被係合部への水平方向の荷重により前記台車を前記床面上を前記他端側に移動させ、前記保管箱を直立を除く斜め吊りの状態で吊上げるとともに、前記保管箱を吊上げる過程で前記係合部および前記台車の被係合部の係合を解くことによって前記台車を分離して前記保管箱を揚重し、前記保管箱を前記目的階の床面上に水平に載置することを特徴とする長尺重量物の吊上げ装置。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2に記載の「前記被運搬物の一端部に設けられた係合手段」を、「前記被運搬物の長尺方向の一端部に設けられた係合手段」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2に記載の「床面上を自転により走行可能に形成されるとともに前記係合手段と係脱自在に係合する被係合手段を有する、前記被運搬物より短尺な台車」を、「床面上を走行可能に形成されるとともに前記係合手段と係脱自在に係合する被係合手段を有する、前記被運搬物より短尺な台車」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項2に記載の「前記被運搬物の他端部側を上にした傾斜状態で前記被運搬物を吊上げる吊上げ手段と、を具備し、」を、「前記被運搬物の前記長尺方向の複数箇所を係止して、前記長尺方向の他端部側を上にした直立を除く斜め吊りの状態で前記被運搬物を吊上げる吊上げ手段と、を具備した長尺重量物の吊上げ装置であって、」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項2に記載の「前記台車は、前記吊上げ手段で前記被運搬物を吊上げる過程において、前記被運搬物が所定の傾斜角度に至る以前には被運搬物の一端部に係合された状態で、前記被運搬物の重力荷重の移動により床面上を自走し、所定角度になって更に吊上げる際に前記被係合手段が前記係合手段から離脱されるものであることを特徴とする長尺重量物の吊上げ装置。」を、「前記台車は、前記吊上げ手段で前記被運搬物を吊上げる過程において、前記被運搬物が所定の傾斜角度に至る以前には前記被運搬物の前記一端部の前記係合手段に前記被係合手段が係合された状態で、前記被運搬物の起立傾動に伴う前記係合手段から前記被係合手段への水平方向の荷重により床面上を前記他端部側に移動し、所定角度になって前記被運搬物を吊上げる際に前記被係合手段が前記係合手段から離脱されるものであることを特徴とする長尺重量物の吊上げ装置。」と訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項3に記載の「長尺重量物を収納し前記長尺重量物よりも長尺な寸法を有する保管箱の長尺方向の一端側に設けられる、前記保管箱及び前記長尺重量物の何れよりも短尺な台車本体と、」を「長尺重量物を収納し前記長尺重量物よりも長尺な寸法を有し長尺方向の一端側に軸体を有する保管箱の前記一端側に設けられる、前記保管箱及び前記長尺重量物の何れよりも短尺な台車本体と、」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4及び5も同様に訂正する)。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項3に記載の「前記保管箱の一端部側と係脱自在に形成され、かつ、前記台車本体に対して前記保管箱の長尺部分を前記一端側を中心として回動させる軸受け」を、「前記保管箱の前記軸体と係脱自在に形成され、かつ、前記台車本体に対して前記保管箱を前記一端側を中心として回動させる軸受け」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4及び5も同様に訂正する)。


(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項3に記載の「前記台車本体に設けられた床面上を自転により走行可能なキャスタ」を、「前記台車本体に設けられた床面上を走行可能なキャスタと、を備えた長尺重量物の吊上げ用台車であって、」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4及び5も同様に訂正する)。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項3に記載の「前記保管箱が他端部を上にして吊上げられて前記床面に対する所定の傾斜角度に至る以前には前記保管箱の一端部側に係合された状態で、前記保管箱の重力荷重の移動により床面上を自走し、所定角度になって更に吊上げられる際に前記軸受けが前記保管箱の一端部側から離脱されるものであることを特徴とする長尺重量物の吊上げ用台車。」を、「この長尺重量物の吊上げ用台車は、前記保管箱が前記長尺方向の複数箇所での係止によって他端側を上にして吊上げられて前記床面に対する所定の傾斜角度に至る以前には前記保管箱の前記軸体に前記軸受けが係合された状態で、前記保管箱の起立傾動に伴う前記軸体から前記軸受けへの水平方向の荷重により前記保管箱が搬入された建屋の搬入階の床面上を前記他端側に移動し、前記保管箱が直立を除く斜め吊りの状態で吊上げられる所定角度になって更に吊上げられる際に前記軸受けが前記軸体から離脱されるものであることを特徴とする長尺重量物の吊上げ用台車。」と訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4及び5も同様に訂正する)。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項6に記載の「長尺重量物を収納し前記長尺重量物よりも長尺な寸法を有する保管箱の一端側に係脱自在に係合する前記保管箱より短尺で自転により走行可能な台車を、建屋の搬入階の床面において前記保管箱の一端側に係合し、」を「長長尺重量物を収納し前記長尺重量物よりも長尺な寸法を有する保管箱の一端側に係脱自在に係合する前記保管箱より短尺で床面上を走行可能なキャスタを有する台車を、建屋の搬入階の床面において前記保管箱の一端側に係合し、」に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項6に記載の「前記保管箱をその他端側を上にして傾動させるとともに前記台車を前記保管箱の一端側に係合した状態で、前記保管箱の起立傾動に伴う重力荷重の移動により床面を自走させ、」を、「前記保管箱を前記長尺方向の複数箇所で係止して前記保管箱をその他端側を上にして傾動させるとともに前記台車を前記保管箱の一端側に係合した状態で、前記保管箱の起立傾動に伴う前記一端側から前記台車への水平方向の荷重により前記台車を床面上を前記他端側に移動させ、」に訂正する。


(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項6に記載の「前記寸法よりも小さい有効開口寸法を持ち前記搬入階から目的階までの階床を貫通する床穴を通して前記搬入階から前記目的階の床面上へ前記保管箱を、他端側を前記一端側に対して更に起立傾動させ、前記台車を分離して前記保管箱を吊上げし、」を、「前記保管箱を直立を除く斜め吊りの状態で吊上げるとともに、前記寸法よりも小さい有効開口寸法を持ち前記搬入階から目的階までの階床を貫通する床穴を通して前記搬入階から前記目的階の床面上へ前記保管箱を、前記他端側を前記一端側に対して更に起立傾動させ、前記台車を分離して前記保管箱を吊上げし、」に訂正する。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項7に記載の「一端部に係合手段を有する長尺重量な被運搬物を吊上げ手段によって前記被運搬物の他端部側を上にした傾斜状態で吊上げ可能とし、」を、「長尺方向の一端部に係合手段を有する長尺重量な被運搬物を吊上げ手段によって前記被運搬物を前記長尺方向の複数箇所で係止して前記被運搬物の他端部側を上にした傾斜状態で吊上げ可能とし、」に訂正する。

(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項7に記載の「床面上を自転により走行可能に形成されるとともに前記係合手段と係脱自在に係合する被係合手段を有する前記被運搬物より短尺な台車の前記被係合手段を前記係合手段に係合させ、」を「床面上を走行可能なキャスタおよび前記係合手段と係脱自在に係合する被係合手段を有する前記被運搬物より短尺な台車の前記被係合手段を前記係合手段に係合させ、」に訂正する。

(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項7に記載の「前記吊上げ手段で前記被運搬物を吊上げる際に、前記被運搬物が所定の傾斜角度に至る以前には前記台車を被運搬物の一端部に係合した状態で、前記被運搬物の重力荷重の移動により床面上を自走させ、所定角度になって更に前記被運搬物を吊上げるときに前記被係合手段を前記係合手段から離脱させる、ことを特徴とする長尺重量物の吊上げ方法。」を、「前記吊上げ手段で前記被運搬物を吊上げる際に、前記被運搬物が所定の傾斜角度に至る以前には前記台車の前記被係合手段を前記被運搬物の前記係合手段に係合した状態で、前記被運搬物の起立傾動に伴う前記係合手段から前記被係合手段への水平方向の荷重により前記台車を床面上を前記他端部側に移動させ、前記吊上げ手段が前記被運搬物を直立を除く斜め吊りの状態で吊上げる所定角度になって前記被運搬物を吊上げるときに前記被係合手段を前記係合手段から離脱させる、ことを特徴とする長尺重量物の吊上げ方法。」に訂正する。

2 一群の請求項について
上記訂正事項8ないし11に係る訂正前の請求項3ないし5について、請求項4及び5は、請求項3を引用しているものであって、訂正事項8ないし11によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものである。
したがって、請求項3ないし5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は「自転により」との記載が不明確であったものを削除して明確化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、「走行手段」を「キャスタ」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1は、特許明細書の段落【0022】、【0023】及び【0025】並びに特許図面の図1及び4に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は「前記保管箱を、前記寸法よりも小さい有効開口寸法を持ち前記搬入階から目的階までの階床を貫通する床穴を通して前記目的階の床面上へ吊上げる吊上げ機構」との記載により、吊上げ機構の構成が不明確となっていたものを、「前記保管箱を吊上げる吊上げ機構」と訂正して明確化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、「長尺重量物の吊上げ装置」について、「前記保管箱を、前記寸法よりも小さい有効開口寸法を持ち前記搬入階から目的階までの階床を貫通する床穴を通して前記目的階の床面上へ吊上げる」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2は、特許明細書の段落【0016】、【0026】及び【0037】並びに特許図面の図1及び6に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は「吊上げ機構」について「前記保管箱を前記長尺方向の複数箇所で係止して」「前記保管箱を直立を除く斜め吊りの状態で吊上げる」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「起立傾動に伴う重力荷重の移動により前記台車を自走させ」との記載が不明確であったものを、「起立傾動に伴う前記係合部から前記被係合部への水平方向の荷重により前記台車を前記床面上を前記他端側に移動させ」と訂正することにより明確化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項3は、特許明細書の段落【0021】、【0031】及び【0033】並びに特許図面の図1及び6に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は「被運搬物の一端部」について「長尺方向の」一端部と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項4は、特許明細書の段落【0016】及び【0019】並びに特許図面の図1ないし3に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は「自転により」との記載が不明確であったものを、「自転により」を削除して明確化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項5は、特許明細書の段落【0033】及び特許図面の図6に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項6について
訂正事項6は「前記被運搬物の他端部側を上にした傾斜状態で前記被運搬物を吊上げる吊上げ手段」との記載を「前記被運搬物の前記長尺方向の複数箇所を係止して、前記長尺方向の他端部側を上にした直立を除く斜め吊りの状態で」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項6は、特許明細書の段落【0021】、【0031】及び【0033】並びに特許図面の図1及び6に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)訂正事項7について
訂正事項7は、「被運搬物の一端部に係合された状態で」との記載を「前記被運搬物の前記一端部の前記係合手段に前記被係合手段が係合された状態で」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「前記被運搬物の重力荷重の移動により床面上を自走し」との記載が不明確であったものを、「前記被運搬物の起立傾動に伴う前記係合手段から前記被係合手段への水平方向の荷重により床面上を前記他端部側に移動し」と訂正して明確化し、「所定角度になって更に吊上げる際に」との記載を「所定角度になって前記被運搬物を吊上げる際に」と訂正して明確化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項7は、特許明細書の段落【0021】及び【0033】並びに特許図面の図1及び6に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(8)訂正事項8について
訂正事項8は、保管箱について「長尺方向の一端側に軸体を有する」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項8は、特許明細書の段落【0019】並びに特許図面の図1及び2に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(9)訂正事項9について
訂正事項9は「前記保管箱の一端部側と係脱自在」との記載を「前記保管箱の前記軸体と係脱自在」と訂正することで、「一端部側」を「前記軸体」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「保管箱の長尺部分を」との記載が不明確であったものを「保管箱を」と訂正することにより明確化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項9は、特許明細書の段落【0025】及び特許図面の図4に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(10)訂正事項10について
訂正事項10は「自転により」との記載が不明確であったものを、「自転により」を削除して明確化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項10は、特許明細書の段落【0033】及び特許図面の図6に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(11)訂正事項11について
訂正事項11は「保管箱」について「前記保管箱が前記長尺方向の複数箇所での係止によって」、「前記保管箱が直立を除く斜め吊りの状態で吊上げられる」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「吊上げ用台車」について、「前記保管箱の一端部側に係合された状態で」を「保管箱の前記軸体に前記軸受けが係合された状態で」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、「前記保管箱の重力荷重の移動により床面上を自走し」との記載が不明確であったものを、「起立傾動に伴う前記軸体から前記軸受けへの水平方向の荷重により保管箱が搬入された建屋の搬入階の床面上を前記他端側に移動し」と訂正することにより明確化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項11は、特許明細書の段落【0021】、【0031】及び【0033】並びに特許図面の図1及び6に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(12)訂正事項12について
訂正事項12は「自転により」との記載が不明確であったものを、「自転により」を削除して明確化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、「走行手段」を「キャスタ」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項12は、特許明細書の段落【0022】、【0023】、【0025】及び【0033】並びに特許図面の図1及び4に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項12は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(13)訂正事項13について
訂正事項13は「前記保管箱を前記長尺方向の複数箇所で係止して」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「起立傾動に伴う重力荷重の移動により床面を自走させ」との記載が不明確であったものを、「起立傾動に伴う前記一端側から前記台車への水平方向の荷重により前記台車を床面上を前記他端側に移動させ」と訂正することにより明確化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項13は、特許明細書の段落【0021】及び【0033】並びに特許図面の図1及び6に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項13は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(14)訂正事項14について
訂正事項14は、保管箱の吊上げに関して「直立を除く斜め吊りの状態で」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項14は、特許明細書の段落【0021】及び【0033】並びに特許図面の図1及び6に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項14は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(15)訂正事項15について
訂正事項15は、「一端部に係合手段を有する長尺重量な被運搬物」との記載を「長尺方向の一端部に係合手段を有する長尺重量な被運搬物」と限定するとともに、被運搬物の吊上げに関して、「前記被運搬物を前記長尺方向の複数箇所で係止して」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項15は、特許明細書の段落【0021】、【0031】及び【0033】並びに特許図面の図1及び6に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項15は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(16)訂正事項16について
訂正事項16は「自転により」との記載が不明確であったものを、「自転により」を削除して明確化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、「走行手段」を「キャスタ」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項16は、特許明細書の段落【0022】、【0023】、【0025】及び【0033】並びに特許図面の図1及び4に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項16は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(17)訂正事項17について
訂正事項17は「被運搬物の重力荷重の移動により床面を自走させ」との記載が不明確であったものを、「起立傾動に伴う前記係合手段から前記被係合手段への水平方向の荷重により前記台車を床面上を前記他端部側に移動させ」と訂正することにより明確化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、被運搬物の吊上げに関して「前記吊上げ手段が前記被運搬物を直立を除く斜め吊りの状態で吊上げる」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項17は、特許明細書の段落【0021】及び【0033】並びに特許図面の図1及び6に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項17は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、令和2年1月22日の意見書の「3.a)及びb)」において次のように述べている。
「一般に、『係止』とは、『係わり合って止まる』ような二者の関係を示す特許用語として、特許明細書で使用される(甲10の47頁)。
然るに、本件明細書および図面を参照しても、『吊上げ機構』及び『吊上げ手段』が保管箱(被運搬物)を『係止』した構成は記載されていない。
『吊上げ機構』及び『吊上げ手段』に相当する吊上げ機構20は【0026】及び図1において、ガントリ40、クラブ41,フック42、デッキ43、ドラム44及びモータ45を備える天井クレーンであると説明されており、LPRM保管箱13の複数の吊りピース27と吊上げ機構20(天井クレーン)とは直接的な結合関係を有していないのであるから、『吊上げ機構』及び『吊上げ手段』が保管箱(被運搬物)を『係止』することなど不可能である。
(『吊り具、チェーンブロック37やシャックルにより、ワイヤ34と、LPRM保管箱と間が連結される。作業員は吊り具の長さを調整する。』(【0031】)の記載から明らかなように、吊上げ機構20(天井クレーン)とLPRM保管箱13との間には、吊り具、チェーンブロック37、シャックル、ワイヤ34等が介在している。)
よって、保管箱(被運搬物)の複数箇所における『係止』について特定する訂正事項3-1、訂正事項6、訂正事項11-1、訂正事項13-1、訂正事項15は、何れも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲を超える訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に違反するものである。」
「仮に、上述の訂正が適法であったとしても、本件明細書には『係止』に関して直接的な説明がないし、本件明細書で説明された吊上げ機構20とLPRM保管箱13との相互の関係から『係止』状態を導き出すこともできないから、訂正後の請求項1、2、3、6及び7における『係止』がどのような状態を指すのか不明であり、請求項1乃至7に係る発明は明確ではない。
よって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」
しかしながら、天井クレーンのような吊上げ機構により吊上げ対象物を吊上げる際に、吊り具、チェーンブロック、シャックル、ワイヤなどを介して吊上げ対象物を吊上げることは一般的に行われていることを踏まえると、吊り具、チェーンブロック、シャックル、ワイヤなどは、吊上げ機構の一部と理解できる。してみると、吊り具、チェーンブロック、シャックル、ワイヤなどと吊上げ対象物との関係は、実質的に、吊上げ機構と吊上げ対象物との関係ということができる。
そうすると、本件明細書に記載された吊上げ機構(天井クレーン)と保管箱(被運搬物)とは、実質的に吊上げ機構(天井クレーン)と保管箱(被運搬物)の二者が「係わり合って止まる」状態となっているということができる。
したがって、訂正事項3、訂正事項6、訂正事項11、訂正事項13及び訂正事項15が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲を超える訂正であるとはいえない。
また、段落【0031】の記載及び図1の図示内容から、「係止」がどのような状態を指すのかも明確であるから、訂正後の請求項1乃至7に係る発明は明確ではないとはいえない。
よって、特許異議申立人の意見は採用できない。

4 小括
本件訂正請求による訂正事項1ないし17は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合する。
よって、訂正後の請求項1、2、〔3ないし5〕、6及び7について訂正を認める。

第3 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし7に係る特許に対して、当審が令和元年9月27日付け取消理由通知書により通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

1 請求項1ないし7に係る発明は、引用文献1、2及び3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号により取り消されるべきものである。

2 本件特許出願は、特許請求の範囲の記載が不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

引用文献1:実願平5-31475号(実願平7-1195号)のCD -ROM(甲第1号証)
引用文献2:特開平11-11685号公報
引用文献3:特開2012-166878号公報(甲第9号証)

第4 当審の判断
1 訂正発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「訂正発明1」ないし「訂正発明7」という。)は、令和元年12月2日の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
長尺重量物を収納し前記長尺重量物よりも長尺な寸法を有し、長尺方向の一端側に係合部を有する保管箱と、
この保管箱の係合部に係脱自在の被係合部および床面上を走行可能なキャスタを有し、前記保管箱が搬入された建屋の搬入階の床面において前記被係合部が前記保管箱の前記係合部に係合される、前記保管箱より短尺な台車と、
前記保管箱を吊上げる吊上げ機構と、を備え、前記保管箱を、前記寸法より小さい有効開口寸法を持ち前記搬入階から目的階までの階床を貫通する床穴を通して前記目的階の床面上へ吊上げる長尺重量物の吊上げ装置であって、
前記吊上げ機構は、前記保管箱を前記長尺方向の複数箇所で係止して前記保管箱を前記長尺方向の他端側を上にして起立傾動させ、この保管箱の起立傾動に伴う前記係合部から前記被係合部への水平方向の荷重により前記台車を前記床面上を前記他端側に移動させ、前記保管箱を直立を除く斜め吊りの状態で吊上げるとともに、前記保管箱を吊上げる過程で前記係合部および前記台車の被係合部の係合を解くことによって前記台車を分離して前記保管箱を揚重し、前記保管箱を前記目的階の床面上に水平に載置することを特徴とする長尺重量物の吊上げ装置。
【請求項2】
長尺重量な被運搬物と、
前記被運搬物の長尺方向の一端部に設けられた係合手段と、
床面上を走行可能に形成されるとともに前記係合手段と係脱自在に係合する被係合手段を有する、前記被運搬物より短尺な台車と、
前記被運搬物の前記長尺方向の複数箇所を係止して、前記長尺方向の他端部側を上にした直立を除く斜め吊りの状態で前記被運搬物を吊上げる吊上げ手段と、を具備した長尺重量物の吊上げ装置であって、
前記台車は、前記吊上げ手段で前記被運搬物を吊上げる過程において、前記被運搬物が所定の傾斜角度に至る以前には前記被運搬物の前記一端部の前記係合手段に前記被係合手段が係合された状態で、前記被運搬物の起立傾動に伴う前記係合手段から前記被係合手段への水平方向の荷重により床面上を前記他端部側に移動し、所定角度になって前記被運搬物を吊上げる際に前記被係合手段が前記係合手段から離脱されるものであることを特徴とする長尺重量物の吊上げ装置。
【請求項3】
長尺重量物を収納し前記長尺重量物よりも長尺な寸法を有し長尺方向の一端側に軸体を有する保管箱の前記一端側に設けられる、前記保管箱及び前記長尺重量物の何れよりも短尺な台車本体と、
前記保管箱の前記軸体と係脱自在に形成され、かつ、前記台車本体に対して前記保管箱を前記一端側を中心として回動させる軸受けと、
前記台車本体に設けられた床面上を走行可能なキャスタと、を備えた長尺重量物の吊上げ用台車であって、
この長尺重量物の吊上げ用台車は、前記保管箱が前記長尺方向の複数箇所での係止によって他端側を上にして吊上げられて前記床面に対する所定の傾斜角度に至る以前には前記保管箱の前記軸体に前記軸受けが係合された状態で、前記保管箱の起立傾動に伴う前記軸体から前記軸受けへの水平方向の荷重により前記保管箱が搬入された建屋の搬入階の床面上を前記他端側に移動し、前記保管箱が直立を除く斜め吊りの状態で吊上げられる所定角度になって更に吊上げられる際に前記軸受けが前記軸体から離脱されるものであることを特徴とする長尺重量物の吊上げ用台車。
【請求項4】
前記一端側に対する起立傾動による前記保管箱の前記床面に対する傾斜角度を検知する角度センサを更に備えたことを特徴とする請求項3記載の長尺重量物の吊上げ用台車。
【請求項5】
前記軸受けの前記床面に対する枢支高さを調節する高さ調節機構を更に備えたことを特徴とする請求項3又は請求項4記載の長尺重量物の吊上げ用台車。
【請求項6】
長尺重量物を収納し前記長尺重量物よりも長尺な寸法を有する保管箱の一端側に係脱自在に係合する前記保管箱より短尺で床面上を走行可能なキャスタを有する台車を、建屋の搬入階の床面において前記保管箱の一端側に係合し、
前記保管箱を前記長尺方向の複数箇所で係止して前記保管箱をその他端側を上にして傾動させるとともに前記台車を前記保管箱の一端側に係合した状態で、前記保管箱の起立傾動に伴う前記一端側から前記台車への水平方向の荷重により前記台車を床面上を前記他端側に移動させ、
前記保管箱を直立を除く斜め吊りの状態で吊上げるとともに、前記寸法よりも小さい有効開口寸法を持ち前記搬入階から目的階までの階床を貫通する床穴を通して前記搬入階から前記目的階の床面上へ前記保管箱を、前記他端側を前記一端側に対して更に起立傾動させ、前記台車を分離して前記保管箱を吊上げし、
前記目的階の床面上に前記保管箱を水平に載置することを特徴とする長尺重量物の吊上げ方法。
【請求項7】
長尺方向の一端部に係合手段を有する長尺重量な被運搬物を吊上げ手段によって前記被運搬物を前記長尺方向の複数箇所で係止して前記被運搬物の他端部側を上にした傾斜状態で吊上げ可能とし、
床面上を走行可能なキャスタおよび前記係合手段と係脱自在に係合する被係合手段を有する前記被運搬物より短尺な台車の前記被係合手段を前記係合手段に係合させ、
前記吊上げ手段で前記被運搬物を吊上げる際に、前記被運搬物が所定の傾斜角度に至る以前には前記台車の前記被係合手段を前記被運搬物の前記係合手段に係合した状態で、前記被運搬物の起立傾動に伴う前記係合手段から前記被係合手段への水平方向の荷重により前記台車を床面上を前記他端部側に移動させ、前記吊上げ手段が前記被運搬物を直立を除く斜め吊りの状態で吊上げる所定角度になって前記被運搬物を吊上げるときに前記被係合手段を前記係合手段から離脱させる、
ことを特徴とする長尺重量物の吊上げ方法。」

2 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1について
令和元年9月27日付け取消理由通知において引用され、本件特許に係る出願前に頒布された引用文献1(実願平5-31475号(実願平7-1195号)のCD-ROM)には「鉄骨建方装置」に関して、図面(特に、図1ないし6)とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

ア 「【0004】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来の建方装置1には、以下のような問題が存在する。
まず、鉄骨柱2を起立させるときに、シャフト4を回動軸として鉄骨柱2が縦回動するので、これを吊り上げるクレーンやホイストを、鉄骨柱2の先端部がシャフト4を中心とした円弧を描くように、鉛直方向および水平方向の2方向に移動させなければならない。
さて、近年、中高層のビルなどを建築する際に、下面にホイスト等を備えた架設ユニットを用い、これを上昇させつつ、この下方でビルを構築していく方法が、開発・実現されている。このような方法においては、ビルの各施工階において立設すべき鉄骨柱の位置が一定であるため、架設ユニットの所定位置にホイストを固定しておき、このホイストで鉄骨柱を建方することが考えられる。このような場合に前記建方装置1を適用しようとすると、鉄骨柱2を吊り上げるホイストが固定されており、水平方向に移動不可能であるため、この建方装置1では鉄骨柱2を起立させることができないという問題がある。
【0005】
また、建方装置1では、連結部材3に鉄骨柱2の基端部2aをボルトなどで固定する構成となっているため、ボルトなどの着脱作業に手間がかかる。
さらには、例えば建方装置1で起立させる鉄骨柱が、その内部にコンクリートを打設するボックス柱である場合などにおいては、コンクリートを打設する際に、連結部材3に固定するために鉄骨柱に形成したボルト穴を塞ぐ必要があり、手間がかかるという問題がある。
本考案は、以上のような点を考慮してなされたもので、クレーンやホイスト等を上下方向に移動させるのみで、容易に鉄骨柱の建方作業を行うことのできる鉄骨建方装置を提供することを目的とする。」

イ 「【0008】
【実施例】
以下、本考案を図面に示す一実施例を参照して説明する。ここでは、例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造の躯体を、ホイスト等を備えた架設ユニットを用い、この架設ユニットを上昇させつつこの下方で順次躯体を構築していくとともに、躯体を構成するボックス柱を、架設ユニットに固定されて水平方向に移動不可能なホイストを用いて建方する場合の実施例を用いて説明する。
図1および図2は、本考案に係る建方装置(鉄骨建方装置)10の一例を示すものである。
これらの図に示すように、建方装置10は、台車11と、建方すべきボックス柱(鉄骨柱)12の基端部12aを支持するための支持部材13とを備えてなっている。
【0009】
台車11は、基台14に車輪15,15,…が回転自在に取り付けられて、一方向に進退自在な構造とされている。
図2に示すように、この台車11の基台14には、鉛直上方に延びる一対の側板16,16が形成されている。この側板16,16には、水平方向に位置するシャフト17が固定されている。
【0010】
図1に示したように、前記支持部材13は、H鋼材を外観略L字状に組み立てたものであり、建方すべきボックス柱12の基端部12aの側面を支持する側部支持面(第1の支持面)18と、基端部12aの下面を支持する下部支持面(第2の支持面)19とを備えた構成とされている。
図2に示したように、側部支持面18の、支持すべきボックス柱12の延在する方向に沿った両側部には、支持部材13上にボックス柱12を載置するときにこれをガイドするため、図2に示した状態において、上方が開いた形状のガイド板20,20が設けられている。
このような構造の支持部材13は、前記シャフト17に回動自在に軸支されており、これにより、支持部材13は、台車11上で縦回動自在な構造とされている。ここで、シャフト17の立設面5からの高さ寸法は、支持部材13が縦回動したときに、支持部材13の角部13aが立設面5に接触しないように設定されている。
【0011】
次に、上記のような構成からなる建方装置10を用いて、ボックス柱12を建方する方法について、図1ないし図6を参照して説明する。
ここで、構築すべき躯体(図示なし)は、図3に示すように、ホイスト23等を備えた架設ユニット24を用い、この架設ユニット24をリフタ等で上昇させつつ、この下方で順次躯体(図示なし)を構築していく。
また、ボックス柱12の建方作業は、架設ユニット24の下面の、ボックス柱12を建方すべき所定位置に固定したホイスト23で行う。
さらに、前記建方装置10を用いてボックス柱12を建方するに際しては、図4に示すように、横臥状態のボックス柱12の先端部12bを支持するために支持台車25を用いる。この支持台車25は、台車26上に支持台27を備えるとともに、一方向に進退自在な構造とされている。
【0012】
まず、建方すべきボックス柱12は、立設面5の、ボックス柱12を立設すべき所定の位置の鉛直上方に固定されたホイスト23の下方に、クレーン(図示なし)などで運び込んでおく。このときボックス柱12のブレース12cは上向きにする。
次いで、ボックス柱12を、ホイスト23のワイヤ29を玉掛けして吊り上げた状態で、このボックス柱12の基端部12aの下方には建方装置10を配置し、先端部12bの下方には支持台車25を配置する。
そして、ボックス柱12を降下させ、建方装置10および支持台車25上に載置する(図3参照)。このとき、図2に示したように、建方装置10の支持部材13にはガイド板20,20が設けられているので、ボックス柱12の基端部12aを容易に支持部材13上に載置することができる。また、ボックス柱12の基端部12aは建方装置10の支持部材13の側部支持面18で支持され(図1参照)、先端部12bは支持台車25の支持台27で支持されることになる(図4参照)。
【0013】
次いで、図5に示すように、立設面5上で建方装置10および支持台車25を水平方向に移動させ、ホイスト23の略鉛直下方にボックス柱12の先端部12bを位置させる。このとき、建方装置10,支持台車25は、それぞれ台車11,26を備えているので、容易に移動させることができる。
【0014】
そして、ホイスト23のワイヤ29をボックス柱12の先端部12bに玉掛けし、これを鉛直上方に吊り上げる。
すると、図6に示すように、ボックス柱12の基端部12aを支持する支持部材13がシャフト17(図1参照)を中心として縦回動しつつ、台車11がボックス柱12の先端部12bの位置していた方向、すなわちホイスト23の鉛直下方に向けて引き寄せられて移動する。これにより、ボックス柱12が基端部12aを略中心として縦回動して起立していく。
そして、ボックス柱12が鉛直に起立した時点で、ホイスト23による吊り上げを停止させる。ボックス柱12が起立した状態においては、ボックス柱12は、建方装置10の支持部材13の下部支持面19(図1参照)で支持されたことになる。
【0015】
この後は、ホイスト23でボックス柱12をさらに上方に吊り上げて建方装置10を取り除いてから、ボックス柱12を立設面5上に降下させ、固定その他の作業を行うとともにワイヤ29の玉外しを行えば、所定の位置へのボックス柱12の建方作業が完了する。
この建方作業を、当該施工階の各ボックス柱12に対し、同様にして行う。そして、この他図示しない梁等の施工を行った後、架設ユニット24を上昇させ、上階の施工を上記と同様にして行い、これを繰り返すことにより、躯体(図示なし)の構築が完了する。」

ウ 図3及び5の図示内容から、台車11は、ボックス柱12よりも短尺であることが看取できる。

エ 上記イ(段落【0012】の「ボックス柱12の基端部12aは建方装置10の支持部材13の側部支持面18で支持され(図1参照)、先端部12bは支持台車25の支持台27で支持されることになる(図4参照)。」を参照。)並びに図1、3及び5から、台車11はボックス柱12の基端部12a側に設けられることがわかる。

上記アないしエ及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の事項(以下「引用文献1記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献1記載事項〕
「立設面上を走行可能であり、ボックス柱12の基端部12aを支持する支持部材13を有し、前記ボックス柱12よりも短尺な台車11を前記ボックス柱12の基端部12a側に設け、前記台車11の前記支持部材13により前記ボックス柱12の前記基端部12aを支持した状態で前記ボックス柱12の先端部12bを吊り上げることにより、前記支持部材13が縦回動しつつ、前記台車11をボックス柱12の前記先端部12bの位置していた方向に移動させること。」

(2)引用文献2について
令和元年9月27日付け取消理由通知において引用され、本件特許に係る出願前に頒布された引用文献2(特開平11-11685号公報)には、図面(特に、図2ないし4)とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の運搬台車51を用いた輸送容器55の積み降ろし動作での輸送容器55の立て起こし作業は、上述したように建屋クレーン61はフック62を引き上げると同時にD1 方向、すなわち、輸送容器55の底部側軸56側の方向に移動させる必要がある。さらに、床開口73のD1 方向の長さA1 は、上記輸送容器55の立て起こしのために十分な長さを必要とする。一般的に輸送容器55の長さが長くなる程、また、建屋の下部階81の階高が低い程、上部階床開口73の長さは、長くなる。
【0006】上述のように、従来の運搬台車51上の輸送容器55の引き上げを行う場合、建屋クレーンのフックは引き上げ動作と同時に輸送容器軸方向の移動が必要であり、操作が困難であった。また、建屋に大きな床開口73を設ける必要があり、建築設計上、また、建屋内の配置計画上でも大きな制約となっていた。また、上部階82での作業性を損なうことにもなっていた。なお、上述の説明は、輸送容器の積み降ろし動作について説明したが、輸送容器の積み上げ動作についても同様のことがいえる。
【0007】本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、輸送容器を運搬する運搬台車、または、運搬台車駆動システムにおいて、輸送容器の吊り上げ、または、吊り降ろし操作時にクレーン等を輸送容器の軸方向に移動させる必要がなく、さらに、輸送容器を通過させる床開口寸法を小さくすることができ、建築設計、配置設計上の制約を大きく緩和することが可能な運搬台車、または、運搬台車駆動システムを提供することを目的とする。」

イ 「【0012】
【発明の実施の形態】以下、図を用いて本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態を示す運搬台車駆動システム1のブロック構成図である。本実施の形態を示す運搬台車駆動システム1は、主に本システム1の全体の駆動を制御する駆動制御手段である駆動制御部2と、例えば、原子力施設に於ける使用済み燃料輸送容器等の大型輸送容器である輸送容器55を搭載し、下部階に搬入する運搬台車5と、上記運搬台車5に搭載された輸送容器55を上部階に吊り上げる建屋クレーン61と、上記駆動制御部2により制御されて上記クレーン61を駆動するクレーン駆動手段であるクレーン駆動部3と、上記駆動制御部2により制御され、上記クレーンの吊り上げ駆動に連動させて上記運搬台車5を移動せしめる台車駆動手段である台車駆動部4とで構成されている。なお、以下の本駆動システム1の説明において、適用される建屋,建屋クレーン,輸送容器の符号は、前記図5での従来例に用いたものと同一符号を付して説明する。
【0013】図2は、運搬台車5と台車駆動部4の輸送容器頂部側から見た正面図であり、図3は、上記運搬台車5と台車駆動部4の側面図である。運搬台車5は、台車本体5aと、車輪軸12aにより支持される車輪12とを有しており、下部床面71に設けられた軌道であるレール75上を搬送方向Dに移動可能である。そして、台車本体5aには、円筒状の輸送容器55がその軸方向を搬送方向Dと一致させた水平姿勢で搭載され、支持されている。その支持構造は、輸送容器55の搬送方向Dに沿って、幅方向に対向して設けられている4つの底部側軸56,頂部側軸57を台車本体5aの上方から嵌込させ、離脱可能な軸受け部13,14により支持するものである。但し、上記軸受け部13側では底部側軸56が回動自在であり、その軸受け部13に支持された底部側軸56の軸心は、輸送容器軸方向、したがって、搬送方向Dと直交している。さらに、台車本体5aには、上記軸受け部13,14の下方外側位置に搬送方向Dに沿って延出する被駆動手段を構成する上面歯部を有するラック15が固設されている。
【0014】台車駆動部4は、駆動軸17に固着され、上記運搬台車5のラック15と噛合可能な台車駆動ピニオン18と、上記駆動軸17を回転駆動する駆動源を内蔵し、下部階床71に適切な間隔で配設された支柱ブロック16とで構成されており、駆動制御部2の制御に基づき、輸送容器55の吊り上げに同期させ、運搬台車5を輸送容器頂部側のD2 方向に駆動する。支柱ブロック16は、運搬台車5がいかなる位置にあっても駆動ピニオン18とラック15が常に片側2箇所以上、両側で4箇所以上で噛み合う用に配設する。
【0015】上記駆動ピニオン18は、運搬台車5搬入時点でラック15に対して上方側から噛合するものとする。上記駆動ピニオン18の回転量は、ギヤ駆動であることから正確にラック15を介して台車車輪12に伝達され、台車本体5aをレール75に沿ってD2 方向に移動させる。また、上述のようにラック15に対して駆動ピニオン15が上方側から噛合しているので、台車本体5aの上方への浮き上がりが抑えられることになる。
【0016】なお、この台車駆動部4の支柱ブロック16は、駆動制御部2により駆動制御され、任意の正逆転制御が可能である。したがって、運搬台車5には動力源は設けられていない。また、上記駆動ピニオン18と支柱ブロック16は、運搬台車5がいかなる位置にあっても少なくとも片側2箇所、合計4箇所配設されているが、支柱ブロック16内蔵の駆動源は、少なくとも2組のブロックに内蔵されていれば、台車本体5aの駆動は可能である。」

ウ 「【0017】次に、以上のように構成された本実施の形態の運搬台車駆動システム1を適用した建屋クレーン61による輸送容器55の吊り上げ動作を図4の輸送容器吊り上げ動作状態図を用いて説明する。まず、輸送容器55を水平姿勢で搭載した運搬台車5をレール75に沿ってD方向に下部階81に搬入する。そして、輸送容器55の吊り耳58が上部階床72の床開口部74の略中央位置に位置するように、運搬台車5を初期位置P1 に位置決めする。また、建屋クレーン61を床開口部74の中央上方に位置させる。
【0018】続いて、建屋クレーン61のフック62を降ろし、吊り具63を吊り耳58に懸架する。この状態で駆動制御部2によりクレーン駆動部3を介して、建屋クレーン61の吊り上げ駆動を行う。同時に、台車駆動部4により運搬台車5を輸送容器吊り耳58側の方向、すなわち、D2 方向にラック15を介して初期位置P1 かから最終位置P4 まで移動させる。そのとき、輸送容器55の吊り上げ姿勢の変化は、図4に示すように水平姿勢P11から直立姿勢P14まで変化する。すなわち、吊り耳58が建屋クレーン61のワイヤの軸線上を伝って持ち上がって行くように吊り上げられる。
【0019】上述の姿勢の経過で輸送容器55を吊り上げるためには、建屋クレーン61の吊り上げ量の変化に対して運搬台車5を同期駆動する必要がある。すなわち、輸送容器55の底部側軸56と吊り耳58間の寸法をL0 として、建屋クレーン61のワイヤ巻き上げによる水平姿勢P11での吊り耳58の位置を基準とした引き上げ高さをH、運搬台車5の初期位置P1 からの移動量をSとした場合、上記駆動制御部2によって上記高さHと上記移動量Sが次式、すなわち、
H^(2) =2×S×L0 -S^(2) ………(1)
の関係を略保つように同期駆動を行う必要がある。
【0020】上記引き上げ高さHが底部側軸56と吊り耳58間の寸法L0 に一致した時点で、輸送容器55は、床開口74の中心の垂線上に直立姿勢P14で立ち上がった状態になる。その後は、駆動制御部2による台車駆動部の駆動は停止され、建屋クレーン61のワイヤの引き上げ駆動のみがクレーン駆動部3を介してなされ、輸送容器55は、床開口74を通過し、上部階82に持ち上げられる。さらに、建屋クレーン61を移動し、上部階82の所定の格納場所に運ばれる。
【0021】上述の本実施の形態の運搬台車駆動システム1によれば、搬入された輸送容器55を立ち上げる際に、輸送容器55の吊り耳58の位置が床開口72のほぼ中心の垂線上を立ち上がるので、建屋クレーン61を搬送方向のD方向に移動させる必要がなく、駆動制御部2の制御が容易となる。同時に、床開口72の搬送方向の開口長さA2 が輸送容器55および吊り具63に対して最小限に近い寸法でも通過可能となることから、建屋の建築設計や建屋内の配置計画上での制約が少なくなる。
【0022】なお、輸送容器55が立ち上がるに従って、運搬台車5と輸送容器55の重心は平面的に見たとき、次第に運搬台車の底部側軸56の後方へ移動し、前方の車輪12側が担う荷重と後方の車輪12が担う荷重が同等でなくなる。このような状態では、車輪12の前輪と後輪の輪圧が不均一になり、操作の状況によっては運搬台車5が上下方向にぶれるか、浮き上がるような不安定動作を示すおそれがある。しかし、本実施の形態による運搬台車駆動システム1の場合は、万一、前方の車輪12の浮き上がる事象、または、その傾向が生じたとしても、運搬台車5は、適度な間隔で配置された上記駆動ピニオン18により運搬台車5側のラック15を介して常に浮き上がりが抑えられているので、上述のような浮き上がりによる不安定動作は防止される。このように建屋クレーン61による輸送容器55の立て起こしの動きに追随した安全な吊り上げが実行される。
【0023】なお、上述の実施の形態の運搬台車駆動システム1の動作説明は、輸送容器55の吊り上げ動作について説明したが、吊り降ろし動作の場合についても同様の動作を行わせることが可能である。但し、この場合、初期状態で運搬台車5の底部側軸用の軸受け部13側を床開口74の中心下方に位置させる。そして、輸送容器5の吊り降ろしに連動させて、運搬台車5を底部軸受け部13側であるD3方向に移動させることになる。
【0024】また、上記実施の形態の運搬台車駆動システム1では、輸送容器55の吊り上げに連動して駆動制御部2により台車駆動部4を介して運搬台車5を上記自動的に移動させるようにしたが、上記運搬台車5の駆動は、手動、または、動力を用いても駆動できるような切り換え可能なシステムとしてもよい。」

エ 「【0027】本発明の請求項3記載の運搬台車駆動システムによれば、運搬台車上の輸送容器を底部側軸中心に回動させることによって、水平姿勢で搭載された状態から立ち上げ姿勢に吊り上げるか、または、立ち上げ状態から水平姿勢に吊り降ろされ、そのとき、上記回動動作に関連して上上記輸送容器軸方向に上記運搬台車を移動させて、輸送容器の移動量を少なくすることができ、請求項2記載の運搬台車の場合と同様の効果を奏することができる。」

オ 上記ア及びウ(特に、段落【0021】)並びに図4の図示内容から、床開口74は、輸送容器55の長さ方向の寸法より小さい有効開口寸法を持つものといえる。

上記記載事項、認定事項及び図面の図示内容を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、それぞれ「引用発明2A」ないし「引用発明2E」という。)が記載されている。

〔引用発明2A〕
「使用済み燃料を収納し前記使用済み燃料よりも長い寸法を有し、底部側に底部側軸56を有する輸送容器55と、
この輸送容器55の底部側軸56に離脱可能な軸受け部13および床面上を走行可能な車輪12を有し、前記輸送容器55が搬入された建屋の下部階81の床面において前記軸受け部13が前記輸送容器55の前記底部側軸56に係合される、前記輸送容器55より長い運搬台車5と、
前記輸送容器55を吊上げる建屋クレーン61と、を備え、前記輸送容器55を、前記寸法より小さい有効開口寸法を持ち前記下部階81から上部階82までの階床を貫通する床開口74を通して前記上部階82の床面上へ吊上げる使用済み燃料の吊上げ装置であって、
前記建屋クレーン61は、吊り具63を輸送容器55の吊り耳58に懸架して前記輸送容器55を頂部側を上にして立ち上げさせ、台車駆動部4により建屋クレーン61の吊り上げ量の変化に対して運搬台車5を同期駆動して移動させ、前記輸送容器55を直立姿勢で吊上げるとともに、前記輸送容器55を吊上げる過程で前記底部側軸56および前記運搬台車5の軸受け部13の係合を解くことによって前記運搬台車5を分離して前記輸送容器55を吊り上げ、前記輸送容器55を前記上部階82の床面上に載置する使用済み燃料の吊上げ装置。」

〔引用発明2B〕
「輸送容器55と、
前記輸送容器55の底部側に設けられた底部側軸56と、
床面上を走行可能に形成されるとともに前記底部側軸56と離脱可能に係合する軸受け部13を有する、前記輸送容器55より長い運搬台車5と、
吊り具63を輸送容器55の吊り耳58に懸架して、頂部側を上にした直立姿勢で前記輸送容器55を吊上げる建屋クレーン61と、を具備した輸送容器の吊上げ装置であって、
前記運搬台車5は、前記建屋クレーン61で前記輸送容器55を吊上げる過程において、前記輸送容器55が直立姿勢で立ち上がる以前には前記輸送容器55の前記底部側軸56に前記軸受け部13が係合された状態で、台車駆動部4により建屋クレーン61の吊り上げ量の変化に対して同期駆動されて床面上を前記頂部側に移動し、直立姿勢になって前記輸送容器55を吊上げる際に前記軸受け部13が前記底部側軸56から離脱されるものである輸送容器の吊上げ装置。」

〔引用発明2C〕
「使用済み燃料を収納し前記使用済み燃料よりも長い寸法を有し底部側に底部側軸56を有する輸送容器55の下側に設けられる、前記輸送容器55及び前記使用済み燃料長い台車本体5aと、
前記輸送容器55の前記底部側軸56と離脱可能に形成され、かつ、前記台車本体5aに対して前記輸送容器55を前記底部側軸56を中心として回動させる軸受け部13と、
前記台車本体5aに設けられた床面上を走行可能な車輪12と、を備えた使用済み燃料の運搬台車5であって、
この使用済み燃料の運搬台車5は、前記輸送容器55が吊り耳58への吊り具63の懸架によって頂部側を上にして吊上げられて直立姿勢で立ち上がる以前には前記輸送容器55の前記底部側軸56に前記軸受け部13が係合された状態で、台車駆動部4により建屋クレーン61の吊り上げ量の変化に対して同期駆動されて前記輸送容器55が搬入された建屋の下部階81の床面上を前記頂部側に移動し、前記輸送容器55が直立姿勢になって更に吊上げられる際に前記軸受け部13が前記底部側軸56から離脱されるものである使用済み燃料の運搬台車5。」

〔引用発明2D〕
「使用済み燃料を収納し前記使用済み燃料よりも長い寸法を有する輸送容器55の底部側軸56に離脱可能に係合する前記輸送容器55より長尺で床面上を走行可能な車輪12を有する運搬台車5を、建屋の下部階81の床面において前記輸送容器55の底部側軸56に係合し、
前記輸送容器55を吊り耳58に吊り具63を懸架して前記輸送容器55をその頂部側を上にして傾動させるとともに前記運搬台車5を前記輸送容器55の底部側軸56に係合した状態で、台車駆動部4により輸送容器55の傾動に対して同期駆動して前記運搬台車5を床面上を前記頂部側に移動させ、
前記輸送容器55を直立姿勢で吊上げるとともに、前記寸法よりも小さい有効開口寸法を持ち前記搬入階から目的階までの階床を貫通する床開口74を通して前記下部階81から前記上部階82の床面上へ前記輸送容器55を、前記頂部側を前記底部側軸56に対して更に起立傾動させ、前記運搬台車5を分離して前記輸送容器55を吊上げし、
前記上部階82の床面上に前記輸送容器55を載置する使用済み燃料の吊上げ方法。」

〔引用発明2E〕
「底部側に底部側軸56を有する輸送容器55を建屋クレーン61によって前記輸送容器55を吊り耳58に吊り具63を懸架して前記輸送容器55の頂部側を上にした直立姿勢で吊上げ可能とし、
床面上を走行可能な車輪12および前記底部側軸56と離脱可能に係合する軸受け部13を有する前記輸送容器55より長い運搬台車5の前記軸受け部13を前記底部側軸56に係合させ、
前記建屋クレーン61で前記輸送容器55を吊上げる際に、前記輸送容器55が直立姿勢に至る以前には前記運搬台車5の前記軸受け部13を前記輸送容器55の前記底部側軸56に係合した状態で、台車駆動部4により建屋クレーン61の吊り上げ量の変化に対して同期駆動して前記運搬台車5を床面上を前記頂部側に移動させ、前記建屋クレーン61が前記輸送容器55を直立姿勢で吊上げるときに前記軸受け部13を前記底部側軸56から離脱させる、
輸送容器55の吊上げ方法。」

(3)引用文献3について
本件特許に係る出願前に頒布された特開平10-45373号公報(特許異議申立人が提出した甲第2号証。以下「引用文献3」という。)には、図面(特に、図1及び2)とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0008】地上部の水平床部aに長尺資材9が輪木10を介して水平に置かれており、その中央付近の2箇所に第1ワイヤー11を巻いて絞り、その先端を前記反転機4に設けた索条5の両端のフック5aに掛ける。なお本実施例では、第1ワイヤー11はその両端に輪部を有する台付けワイヤーを使用し、第1ワイヤー11の一方の端部を長尺資材9に巻いて他方の輪部11bに通して絞り、その先端の輪部11aをフック5aに掛けるようにした。また、2本の第1ワイヤー11を、第2ワイヤー12で連結する。第2ワイヤー12は例えば台付けワイヤーで形成され、その両端に設けた係止金具14(例えばシャックル)を、2本の第1ワイヤー11にそれぞれ係止させることで連結する。
【0009】さらに長尺資材9の一端に、箱形状の落下防止籠15を挿入させ、その落下防止籠15の開口部の両側面に両端が連結された第3ワイヤー13の中央部を第2ワイヤー12の一方の係止金具14に貫通させて、長尺資材9の傾倒時にホイスト1の吊り上げ力が第3ワイヤー13に作用するようにする。落下防止籠15は、フレームで略直方体に形成され、6面体の相対する2つの面のうち一方が底板面153に形成され、他方が開口部154に形成されている。前記では、第3ワイヤー13を係止金具14に貫通させたが、第3ワイヤーの中央部に係止金具を移動可能に設けておいて、その係止金具を第1ワイヤー11と第2ワイヤー12の連結部(第1ワイヤーのみを含む)に係止させるようにしてもよい。そして、ホイスト1の操作により、反転機4と索条5と第1ワイヤー11を介して長尺資材9を水平に吊り上げ、水平移動して床に設けた仮設開口部16の上に移動させる。その位置で制御盤7を手元スイッチ7aで操作して反転機4を操作し、索条5を回動して両端フック5a、5aの高さに差が生じるようにする。その場合、落下防止籠側のフック5aの位置が他方のフック5aより低くなるようにし、その差により、落下防止籠15を挿入した長尺資材9の端部が下となるように傾倒する(図2参照)。
【0010】次に、ホイスト1を操作して長尺資材9を傾倒させたまま下降して、昇降路としての仮設開口部16を通過させ、地下Hの地下床bに長尺資材9の下端すなわち落下防止籠15の底板面153に設けた固定キャスター17が当たると、それが水平面上を転動し、さらに開口側の自在キャスター18も転動して長尺資材9を地下床bの上の輪木10の上に水平に降ろすことができる。なお前記では、長尺資材9を下方に吊り降ろす場合であったが、上方に吊り上げて搬送する場合も同様に反転機4の操作で長尺資材9を傾斜させて仮設開口部16を貫通させて吊り上げ、前記同様に水平面上に降ろす。」

上記ア及び図面の図示内容からみて、引用文献3には、次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献3記載事項〕
「ホイスト1に長尺資材9を長尺方向の2箇所で係止して、長尺資材9を傾倒させたままの状態で吊上げること。」

(4)引用文献4について
本件特許に係る出願前に頒布された実願平2-12394号(実開平3-102575号)のマイクロフィルム(特許異議申立人が提出した甲第3号証。以下「引用文献4」という。)には、図面(特に、第1、2、4及び6図)とともに次の事項が記載されている。

ア 「台枠上に載置した長尺材料を、チルホール、レバーブロック等を使用して台枠に緊縛した状態で、吊ワイヤをクレーン等で吊り上げると、台枠の長手方向両端側に連結された吊ワイヤの長さが互いに異なるため、先ず、短い側の吊ワイヤで台枠の長手方向両端に連結された吊ワイヤの長さが互いに異なるため、先ず、短い側の吊ワイヤで台枠の一端側が持ち上げられ、次いで、他端側が長い側の吊ワイヤで持ち上げられることになる。そして、両吊ワイヤが伸びきった状態では、台枠は、端部規制板のある側を下方にした所定の傾斜姿勢となる。」(明細書第6ページ第7行ないし第16行)

イ 「台枠1の幅方向両端部には、端部規制板2の補強板を兼ねる孔あきプレート3a、孔あきプレート3b、Uボルト3c等より成る係止部3・・・が、台枠1長手方向適当間隔おきに複数個ずつ対称をなすように設けられている。」(明細書第8ページ第2行ないし第6行)

ウ 「前記係止部3・・・のうち、台枠1長手方向両端側に位置する係止部3・・・には、夫々、台枠1を前記前輪4,4が傾斜下端に位置する傾斜姿勢で吊り上げるための長短2種類の吊ワイヤ5a・・・,5b・・・が連結されている。吊ワイヤ5a・・・,5b・・・の長さは一定であるが、これを連結する係止部3は任意に選択可能である。」(明細書第8ページ第13行ないし第19行)

エ 「次に、上記の吊荷用治具Aを用いた長尺材料Bの荷降ろし作業と荷揚げ作業について説明する。
例えば、第4図に示すように、山止め壁7と切梁8・・・が構築された地下構造物の地下階に、長尺材料Bの荷降ろしを行う場合、先ず、地上階の床9上に吊荷用治具Aを水平上に設置して、その台枠1上に長尺材料Bを、その一端が前記端部規制板2に当設した状態に載置し、この状態で緊縛する。
吊荷用治具Aの吊ワイヤ5a・・・5b・・・をクレーンC等で吊り上げると、先ず、短い側の吊ワイヤ5b・・・で台枠1の一端側が持ち上げされ、次いで、他端側が長い側の吊ワイヤ5a・・・で持ち上がることになる。台枠1の端部規制板2側に車輪4があるので、台枠1の一端側が短い側の吊ワイヤ5b・・・で持ち上げられるにつれて、車輪4 が床9上を転動する。
そして、両吊ワイヤ5a・・・,5b・・・が伸びきった状態では、第4図に仮想線イで示すように、吊荷用治具Aの台枠1は、端部規制板2のある側を下方にした所定の傾斜状態となる。」(明細書第9ページ第16行ないし第10ページ第16行)

オ 「吊荷用治具Aを用いた長尺材料Bの荷揚げ作業は、次のとおりである。
先ず、第6図(イ)に示すように、長尺材料Bの緊縛された吊荷用治具AをクレーンC等で吊り上げ、第6図(ロ)に示すように、吊荷用治具Aの傾斜下端側を建物側面の開口から建物内部に挿入する。」(明細書第12ページ第2行ないし第8行)

カ 台枠1とそれに緊縛された長尺材料Bを合わせて、長尺物ということができる。

上記アないしカ及び図面の図示内容からみて、引用文献4には、次の事項(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献4記載事項〕
「クレーンに長尺物を長尺方向の2箇所で係止して、長尺物を傾倒状態で吊上げること。」

3 対比・判断
(1)訂正発明1について
訂正発明1と引用発明2Aとを対比すると、引用発明2Aにおける「長い」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、訂正発明1における「長尺な」に相当し、以下同様に、「底部側」は「長尺方向の一端側」に、「底部側軸56」は「係合部」に、「輸送容器55」は「保管箱」に、「離脱可能な」は「係脱自在の」に、「軸受け部13」は「軸受け」に、「車輪12」は「キャスタ」に、「下部階81」は「搬入階」に、「運搬台車5」は「台車」に、「建屋クレーン61」は「吊上げ機構」に、「床開口74」は「床穴」に、「上部階82」は「目的階」に、「頂部側」は「長尺方向の他端側」に、「立ち上げ」は「起立傾動させ」に、「吊り上げ」は「揚重し」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明2Aにおける「使用済み燃料」と、訂正発明1における「長尺重量物」とは、「吊上げ対象物」という限りにおいて一致しており、以下同様に、「吊り具63を輸送容器55の吊り耳58に懸架して」と「保管箱を前記長尺方向の複数箇所で係止して」とは、「保管箱を係止して」という限りにおいて一致しており、「台車駆動部4により建屋クレーン61の吊り上げ量の変化に対して運搬台車5を同期駆動して前記床面上を前記頂部側へ移動させ」と「この保管箱の起立傾動に伴う前記軸体から前記軸受けへの水平方向の荷重により前記台車を前記床面上を前記他端側に移動させ」とは、「この保管箱の起立傾動に伴って前記台車を前記床面上を前記他端側に移動させ」という限りにおいて一致しており、「輸送容器55を直立姿勢で吊り上げる」と「保管箱を直立を除く斜め吊りの状態で吊上げる」とは、「保管箱を吊り上げる」という限りにおいて一致している。

そうすると、訂正発明1と引用発明2Aとの一致点、相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
「吊上げ対象物を収納し前記吊上げ対象物よりも長尺な寸法を有し、長尺方向の一端側に係合部を有する保管箱と、
この保管箱の係合部に係脱自在の被係合部および床面上を走行可能なキャスタを有し、前記保管箱が搬入された建屋の搬入階の床面において前記被係合部が前記保管箱の前記係合部に係合される、台車と、
前記保管箱を吊上げる吊上げ機構と、を備え、前記保管箱を、前記寸法より小さい有効開口寸法を持ち前記搬入階から目的階までの階床を貫通する床穴を通して前記目的階の床面上へ吊上げる吊上げ対象物の吊上げ装置であって、
前記吊上げ機構は、前記保管箱を係止して前記保管箱を前記長尺方向の他端側を上にして起立傾動させ、この保管箱の起立傾動に伴って前記台車を前記床面上を前記他端側に移動させ、前記保管箱を吊上げるとともに、前記保管箱を吊上げる過程で前記係合部および前記台車の被係合部の係合を解くことによって前記台車を分離して前記保管箱を揚重し、前記保管箱を前記目的階の床面上に載置する吊上げ対象物の吊上げ装置。」

〔相違点1a〕
「吊上げ対象物」が、訂正発明1においては「長尺重量物」であるのに対して、引用発明2Aにおいては「使用済み燃料」である点。

〔相違点1b〕
「台車」に関して、訂正発明1においては、保管箱より「短尺」であるのに対して、引用発明2Aにおいては、輸送容器55より長い点。

〔相違点1c〕
「保管箱を係止して」、「保管箱を吊り上げる」に関して、訂正発明1においては、保管箱を長尺方向の「複数箇所で係止」して、「直立を除く斜め吊りの状態」で吊上げるのに対して、引用発明2Aにおいては、吊り具63を輸送容器55の吊り耳58に懸架して、直立姿勢で吊り上げる点。

〔相違点1d〕
「この保管箱の起立傾動に伴って前記台車を前記床面上を前記他端側に移動させ」に関して、訂正発明1においては、この保管箱の起立傾動に伴う「前記軸体から前記軸受けへの水平方向の荷重により」前記台車を前記床面上を前記他端側に移動させるものであるのに対して、引用発明2Aにおいては、台車駆動部4により建屋クレーン61の吊り上げ量の変化に対して運搬台車5を同期駆動して前記床面上を前記頂部側へ移動させるものである点。

〔相違点1e〕
訂正発明1においては、保管箱を目的階の床面上に「水平に」載置するものであるのに対して、引用発明2Aにおいては、輸送容器55を上部階82の床面上に載置するものであるが、「水平に」載置するか否か不明な点。

上記相違点1aについて検討する。
本件特許明細書には、「長尺重量物」について明確な定義はないから、長尺で重量があるとみなし得るものは全て含まれるといえる。
一方、引用発明2Aにおける「(原子力施設に於ける)使用済み燃料」(段落【0012】)は、一般に、長尺で重量があるものを含んでいる。
そうすると、引用発明2Aにおける「使用済み燃料」は「長尺重量物」といえるから、上記相違点1aは実質的な相違点ではない。

上記相違点1bについて検討する。
引用発明2Aにおいて、運搬台車5と輸送容器55の長さの関係をどのように設定するかは、使用する場所、輸送の対象となるものの形状等を踏まえて適宜決定し得ることである。
そうすると、引用発明2Aにおいて、運搬台車5を輸送容器55より短尺として、上記相違点1bに係る訂正発明1の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

上記相違点1cについて検討する。
引用文献3記載事項は上記のとおり「ホイスト1に長尺資材9を長尺方向の2箇所で係止して、長尺資材9を傾倒させたままの状態で吊上げること。」というものであり、引用文献4記載事項は上記のとおり「クレーンに長尺物を長尺方向の2箇所で係止して、長尺物を傾倒状態で吊上げること。」というものである。
これらの記載事項から、「吊上げ機構に長尺物を長尺方向の複数箇所で係止して、直立を除く斜め吊りの状態で吊上げること。」は、本件特許に係る出願前に周知の技術(以下「周知技術」という。)であったといえる。
そうすると、引用発明2Aにおいて周知技術を参酌し、輸送容器を長尺方向の複数箇所で係止して直立を除く斜め吊りの状態で吊上げるように構成することは、輸送容器の長尺方向の寸法とそれと直交する方向の寸法の関係、下部階及び上部階それぞれにおける床面と天井面との間の距離及び床開口の寸法等に応じて、当業者であれば容易になし得たことである。
したがって、引用発明2Aにおいて周知技術を参酌し、上記相違点1cに係る訂正発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

上記相違点1dについて検討する。
引用文献1記載事項は上記のとおり「立設面上を走行可能であり、ボックス柱12の基端部12aを支持する支持部材13を有し、前記ボックス柱12よりも短尺な台車11を前記ボックス柱12の基端部12a側に設け、前記台車11の前記支持部材13により前記ボックス柱12の前記基端部12aを支持した状態で前記ボックス柱12の先端部12bを吊り上げることにより、前記支持部材13が縦回動しつつ、前記台車11をボックス柱12の前記先端部12bの位置していた方向に移動させること。」というものである。
引用発明2Aと引用文献1記載事項は、吊り上げ対象物の一端側を台車で支持し、他端側を上にして吊り上げる際の起立傾動に伴って台車を移動させるという点で、共通の作用をなすものである。
また、引用発明2Aは「運搬台車51上の輸送容器55の引き上げを行う場合、建屋クレーンのフックは引き上げ動作と同時に輸送容器軸方向の移動が必要であり、操作が困難であった。」(引用文献2の段落【0006】を参照。)という課題を解決しようとするものであり、引用文献1記載事項は「鉄骨柱2を起立させるときに、シャフト4を回動軸として鉄骨柱2が縦回動するので、これを吊り上げるクレーンやホイストを、鉄骨柱2の先端部がシャフト4を中心とした円弧を描くように、鉛直方向および水平方向の2方向に移動させなければならない。」(引用文献1の段落【0004】を参照。)という課題を解決しようとするものであるから、クレーンを二方向に操作する必要性を解消するという点において、解決しようとする課題も共通している。
そうすると、引用発明2Aに引用文献1記載事項を適用する動機付けは存在する。
そして、引用発明2Aにおいて引用文献1記載事項を適用した場合に、底部側軸56(係合部)から軸受け13(被係合部)へ水平方向の荷重が作用しそれにより台車が移動させられることは、当業者が容易に理解できたことである。
したがって、引用発明2Aにおいて引用文献1記載事項を適用し、上記相違点1dに係る訂正発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

上記相違点1eについて検討する。
引用発明2Aにおいて、輸送容器55を上部階82の床面上にどのような姿勢で載置するかは、当業者が適宜決定し得ることである。また、水平に載置することは、引用文献2の段落【0027】の「・・・立ち上げ状態から水平姿勢に吊り降ろされ、」に示唆されている。
したがって、引用発明2Aにおいて、輸送容器55を上部階82の床面上に水平に載置し、上記相違点1eに係る訂正発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、全体としてみても、訂正発明1が奏する作用効果は、引用発明2A、引用文献1記載事項及び周知技術から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものではない。

したがって、訂正発明1は、引用発明2A、引用文献1記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)訂正発明2について
訂正発明2と引用発明2Bとを対比すると、引用発明2Bにおける「輸送容器55」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、訂正発明2における「被運搬物」に相当し、以下同様に、「底部側」は「長尺方向の一端部」に、「底部側軸56」は「係合手段」に、「離脱可能」は「係脱自在」に、「軸受け部13」は「被係合手段」に、「運搬台車5」は「台車」に、「頂部側」は「前記長尺方向の他端部側」に、「建屋クレーン61」は「吊上げ手段」に、「直立姿勢で立ち上がる」は「所定の傾斜角度に至る」に、「直立姿勢になって」は「所定角度になって」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明2Bにおける「吊り具63を輸送容器55の吊り耳58に懸架して」と、訂正発明2における「被運搬物の前記長尺方向の複数箇所を係止して」とは、「被運搬物を係止して」という限りにおいて一致しており、以下同様に、「頂部側を上にした直立姿勢で」と「前記長尺方向の他端部側を上にした直立を除く斜め吊りの状態で」とは、「前記長尺方向の他端部側を上にした状態で」という限りにおいて一致しており、「台車駆動部4により建屋クレーン61の吊り上げ量の変化に対して同期駆動されて」と「前記被運搬物の起立傾動に伴う前記係合手段から前記被係合手段への水平方向の荷重により」とは、「前記被運搬物の起立傾動に伴って」という限りにおいて一致している。

そうすると、訂正発明2と引用発明2Bとの一致点、相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
「被運搬物と、
前記被運搬物の長尺方向の一端部に設けられた係合手段と、
床面上を走行可能に形成されるとともに前記係合手段と係脱自在に係合する被係合手段を有する、台車と、
前記被運搬物を係止して、前記長尺方向の他端部側を上にした状態で前記被運搬物を吊上げる吊上げ手段と、を具備した長尺重量物の吊上げ装置であって、
前記台車は、前記吊上げ手段で前記被運搬物を吊上げる過程において、前記被運搬物が所定の傾斜角度に至る以前には前記被運搬物の前記一端部の前記係合手段に前記被係合手段が係合された状態で、前記被運搬物の起立傾動に伴って床面上を前記他端部側に移動し、所定角度になって前記被運搬物を吊上げる際に前記被係合手段が前記係合手段から離脱されるものである被運搬物の吊上げ装置。」

〔相違点2a〕
「被運搬物」及び「吊上げ装置」に関して、訂正発明2においては「長尺重量な」被運搬物及び「長尺重量物」の吊上げ装置であるのに対して、引用発明2Bにおいては、輸送容器55及び輸送容器55の吊上げ装置である点。

〔相違点2b〕
「台車」に関して、訂正発明2においては、被運搬物より「短尺」であるのに対して、引用発明2Bにおいては、輸送容器55より長い点。

〔相違点2c〕
「前記被運搬物を係止して、前記長尺方向の他端部側を上にした状態で前記被運搬物を吊上げる」に関して、訂正発明2においては、被運搬物の前記長尺方向の「複数箇所を係止」して、前記長尺方向の他端部側を上にした「直立を除く斜め吊りの状態で」被運搬物を吊上げるのに対して、引用発明2Bにおいては、吊り具63を輸送容器55の吊り耳58に懸架して、直立姿勢で輸送容器55を吊上げる点。

〔相違点2d〕
「前記被運搬物の起立傾動に伴」う台車の移動に関して、訂正発明2においては「前記被運搬物の起立傾動に伴う前記係合手段から前記被係合手段への水平方向の荷重により」床面上を前記他端部側に移動するのに対して、引用発明2Bにおいては、台車駆動部4により建屋クレーン61の吊り上げ量の変化に対して同期駆動されて床面上を前記頂部側に移動する点。

上記相違点2aについて検討する。
本件特許明細書には、「長尺重量」及び「長尺重量物」について明確な定義はないから、長尺で重量があるとみなし得るものは全て含まれるといえる。
一方、引用発明2Bにおける「(原子力施設に於ける)使用済み燃料輸送容器」(段落【0012】)は、一般に、長尺で重量があるものを含んでいる。
そうすると、引用発明2Bにおける「輸送容器」は「長尺重量な被運搬物」及び「長尺重量物」といえるから、上記相違点2aは実質的な相違点ではない。

上記相違点2bについて検討する。
引用発明2Bにおいて、運搬台車5と輸送容器55の長さをどのように設定するかは、使用する場所、輸送の対象となるものの形状等を踏まえて適宜決定し得ることである。
そうすると、引用発明2Bにおいて、運搬台車5を輸送容器55より短尺として、上記相違点2bに係る訂正発明2の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

上記相違点2cについて検討する。
上記相違点2cは、上記相違点1cと実質的に同じである。
したがって、上記相違点1cについての検討で述べたのと同様に、上記相違点2cに係る訂正発明2の発明特定事項とすることは、引用発明2Bにおいて周知技術を参酌することにより、当業者が容易になし得たことである。

上記相違点2dについて検討する。
上記相違点2dは、上記相違点1dと実質的に同じである。
したがって、上記相違点1dについての検討で述べたのと同様に、上記相違点2dに係る訂正発明2の発明特定事項とすることは、引用発明2Bにおいて引用文献1記載事項を適用することにより、当業者が容易になし得たことである。

そして、全体としてみても、訂正発明2が奏する作用効果は、引用発明2B、引用文献1記載事項及び周知技術から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものではない。

したがって、訂正発明2は、引用発明2B、引用文献1記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)訂正発明3について
訂正発明3と引用発明2Cとを対比すると、引用発明2Cにおける「底部側」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、訂正発明3における「長尺方向の一端側」に相当し、以下同様に、「底部側軸56」は「軸体」に、「輸送容器55」は「保管箱」に、「台車本体5a」は「台車本体」に、「離脱可能」は「係脱自在」に、「軸受け部13」は「軸受け」に、「車輪12」は「キャスタ」に、「運搬台車5」は「吊上げ用台車」に、「頂部側」は「他端側」に、「直立姿勢で立ち上がる」は「前記床面に対する所定の傾斜角度に至る」に、「下部階81」は「搬入階」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明2Cにおける「使用済み燃料」と、訂正発明3における「長尺重量物」とは、「吊上げ対象物」という限りにおいて一致しており、以下同様に、「輸送容器55の下側に設けられる」と「保管箱の前記一端側に設けられる」とは、「保管箱の付近に設けられる」という限りにおいて一致しており、「輸送容器55が吊り耳58への吊り具63の懸架によって」と「保管箱が前記長尺方向の複数箇所での係止によって」とは、「保管箱が係止によって」という限りにおいて一致しており、「台車駆動部4により建屋クレーン61の吊り上げ量の変化に対して運搬台車5を同期駆動されて」と「この保管箱の起立傾動に伴う前記軸体から前記軸受けへの水平方向の荷重により」とは、「この保管箱の起立傾動に伴って」という限りにおいて一致しており、「輸送容器55が直立姿勢になって」と「保管箱が直立を除く斜め吊りの状態で吊上げられる所定角度になって」とは、「保管箱が吊上げられる所定角度になって」という限りにおいて一致している。

そうすると、訂正発明3と引用発明2Cとの一致点、相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
「吊上げ対象物を収納し前記吊上げ対象物よりも長尺な寸法を有し長尺方向の一端側に軸体を有する保管箱の付近に設けられる台車本体と、
前記保管箱の前記軸体と係脱自在に形成され、かつ、前記台車本体に対して前記保管箱を前記一端側を中心として回動させる軸受けと、
前記台車本体に設けられた床面上を走行可能なキャスタと、を備えた吊上げ対象物の吊上げ用台車であって、
この吊上げ対象物の吊上げ用台車は、前記保管箱が係止によって他端側を上にして吊上げられて前記床面に対する所定の傾斜角度に至る以前には前記保管箱の前記軸体に前記軸受けが係合された状態で、この保管箱の起立傾動に伴って保管箱が搬入された建屋の搬入階の床面上を前記他端側に移動し、前記保管箱が吊上げられる所定角度になって更に吊上げられる際に前記軸受けが前記軸体から離脱されるものである吊上げ対象物の吊上げ用台車。」

〔相違点3a〕
「吊上げ対象物」が、訂正発明3においては「長尺重量物」であるのに対して、引用発明2Cにおいては「使用済み燃料」である点。

〔相違点3b〕
「吊上げ用台車」及び「台車本体」が設けられる位置に関して、訂正発明3においては、保管箱の「長尺方向の一端側」であるのに対して、引用発明3Cにおいては、輸送容器55の下側である点。

〔相違点3c〕
「台車本体」に関して、訂正発明3においては「前記保管箱及び前記長尺重量物の何れよりも短尺」であるのに対して、引用発明3Cにおいては、前記輸送容器55及び前記使用済み燃料の何れよりも長い点。

〔相違点3d〕
「保管箱が係止によって他端側を上にして吊上げられて前記床面に対する所定の傾斜角度に至る」及び「保管箱が吊上げられる所定角度」に関して、訂正発明3においては、保管箱が前記長尺方向の「複数箇所」での係止によって他端側を上にして吊上げられて前記床面に対する「所定の傾斜角度」に至る、及び、保管箱が「直立を除く斜め吊りの状態で」吊上げられる所定角度、であるのに対して、引用発明2Cにおいては、輸送容器55が吊り耳58への吊り具63の懸架によって頂部側を上にして吊上げられて直立姿勢で立ち上がる、及び、輸送容器55が直立姿勢、である点。

〔相違点3e〕
「被運搬物の起立傾動に伴う」吊上げ用台車の移動に関して、訂正発明3においては「被運搬物の起立傾動に伴う前記係合手段から前記被係合手段への水平方向の荷重により」移動するのに対して、引用発明2Cにおいては、台車駆動部4により建屋クレーン61の吊り上げ量の変化に対して同期駆動されて移動する点。

上記相違点3aについて検討する。
上記相違点3aは、上記相違点1aと実質的に同じである。
したがって、上記相違点1aについての検討で述べたのと同様に、上記相違点3aは実質的な相違点ではない。

上記相違点3b及び3cについて検討する。
先ず、上記相違点3cについて検討すると、運搬台車5と輸送容器55及び使用済み燃料の長さをどのように設定するかは、使用する場所、輸送の対象となるものの形状等を踏まえて適宜決定し得ることである。
そうすると、引用発明2Cにおいて、運搬台車5を輸送容器55及び使用済み燃料より短尺とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
そして、このことを前提とした場合、運搬台車5の軸受け部13を輸送容器55の底部側軸56に係合させるために、運搬台車5を輸送容器55の底部側軸56がある側(底部側)に設けることは、当業者が当然に行うことといえる。
したがって、上記相違点3b及び3cに係る訂正発明3の発明特定事項とすることは、引用発明2Cにおいて、当業者が容易になし得たことである。

上記相違点3dについて検討する。
上記相違点3dは、上記相違点1cと実質的に同じである。
したがって、上記相違点1cについての検討で述べたのと同様に、上記相違点3dに係る訂正発明3の発明特定事項とすることは、引用発明2Cにおいて周知技術を参酌することにより、当業者が容易になし得たことである。

上記相違点3eについて検討する。
上記相違点3eは、上記相違点1dと実質的に同じである。
したがって、上記相違点1dについての検討で述べたのと同様に、上記相違点3eに係る訂正発明3の発明特定事項とすることは、引用発明2Cにおいて引用文献1記載事項を適用することにより、当業者が容易になし得たことである。

そして、全体としてみても、訂正発明3が奏する作用効果は、引用発明2C、引用文献1記載事項及び周知技術から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものではない。

したがって、訂正発明3は、引用発明2C、引用文献1記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)訂正発明4について
保管箱の床面に対する傾斜角度を検知する角度センサを備えることは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。
したがって、訂正発明4は、引用発明2C、引用文献1記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)訂正発明5について
軸受けの床面に対する枢支高さを調節する高さ調節機構を備えることは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。
したがって、訂正発明5は、引用発明2C、引用文献1記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)訂正発明6について
訂正発明6と引用発明2Dとを対比すると、引用発明2Dにおける「長い」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、訂正発明6における「長尺な」に相当し、以下同様に、「輸送容器55」は「保管箱」に、「底部側軸56」は「一端側」に、「離脱可能」は「係脱自在」に、「軸受け部13」は「軸受け」に、「車輪12」は「キャスタ」に、「運搬台車5」は「台車」に、「下部階81」は「搬入階」に、「頂部側」は「他端側」に、「上部階82」は「目的階」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明2Dにおける「使用済み燃料」と、訂正発明6における「長尺重量物」とは、「吊り上げ対象物」という限りにおいて一致しており、以下同様に、「前記輸送容器55を吊り耳58に吊り具63を懸架して」と「前記保管箱を前記長尺方向の複数箇所で係止して」とは、「前記保管箱を係止して」という限りにおいて一致しており、「台車駆動部4により輸送容器55の傾動に対して同期駆動して前記運搬台車5を床面上を前記頂部側に移動させ」と「前記保管箱の起立傾動に伴う前記一端側から前記台車への水平方向の荷重により前記台車を前記床面上を前記他端側に移動させ」とは、「この保管箱の起立傾動に伴って前記台車を前記床面上を前記他端側に移動させ」という限りにおいて一致している。

そうすると、訂正発明6と引用発明2Dとの一致点、相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
「吊上げ対象物を収納し前記吊り上げ対象物よりも長尺な寸法を有する保管箱の一端側に係脱自在に係合する床面上を走行可能なキャスタを有する台車を、建屋の搬入階の床面において前記保管箱の一端側に係合し、
前記保管箱を係止して前記保管箱をその他端側を上にして傾動させるとともに前記台車を前記保管箱の一端側に係合した状態で、前記保管箱の起立傾動に伴って前記台車を床面上を前記他端側に移動させ、
前記保管箱を吊上げるとともに、前記寸法よりも小さい有効開口寸法を持ち前記搬入階から目的階までの階床を貫通する床穴を通して前記搬入階から前記目的階の床面上へ前記保管箱を、前記他端側を前記一端側に対して更に起立傾動させ、前記台車を分離して前記保管箱を吊上げし、
前記目的階の床面上に前記保管箱を載置する吊上げ対象物の吊上げ方法。」

〔相違点6a〕
吊上げ対象物が、訂正発明6においては「長尺重量物」であるのに対して、引用発明2Dにおいては「使用済み燃料」である点。

〔相違点6b〕
台車が、訂正発明6においては、保管箱より「短尺」であるのに対して、引用発明2Dにおいては、輸送容器55より長い点。

〔相違点6c〕
「保管箱を係止して」、「保管箱を吊上げる」に関して、訂正発明6においては、保管箱を長尺方向の「複数箇所で」係止して、「直立を除く斜め吊りの状態で」吊上げるのに対して、引用発明2Dにおいては、輸送容器55を吊り耳58に吊り具63を懸架して、直立状態で吊上げる点。

〔相違点6d〕
「前記保管箱の起立傾動に伴って前記台車を前記床面上を前記他端側に移動させ」に関して、訂正発明6においては、前記保管箱の起立傾動に伴う「前記一端側から前記台車への水平方向の荷重により」前記台車を床面上を前記他端側に移動させるのに対して、引用発明2Dにおいては、台車駆動部4により輸送容器55の傾動に対して同期駆動して前記運搬台車5を床面上を前記頂部側に移動させる点。

〔相違点6e〕
訂正発明6においては、目的階の床面上に保管箱を「水平」に載置するのに対して、引用発明2Dにおいては、上部階82の床面上に輸送容器55を載置するものであるが、「水平に」載置するか否か不明な点。

上記相違点6aについて検討する。
上記相違点6aは、上記相違点1aと実質的に同じである。
したがって、上記相違点1aについての検討で述べたのと同様に、上記相違点6aは実質的な相違点ではない。

上記相違点6bについて検討する。
上記相違点6bは、上記相違点1bと実質的に同じである。
したがって、上記相違点1bについての検討で述べたのと同様に、上記相違点6bに係る訂正発明6の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

上記相違点6cについて検討する。
上記相違点6cは、上記相違点1cと実質的に同じである。
したがって、上記相違点1cについての検討で述べたのと同様に、上記相違点6cに係る訂正発明6の発明特定事項とすることは、引用発明2Dにおいて周知技術を参酌することにより、当業者が容易になし得たことである。

上記相違点6dについて検討する。
上記相違点6dは、上記相違点1dと実質的に同じである。
したがって、上記相違点1dについての検討で述べたのと同様に、上記相違点6dに係る訂正発明6の発明特定事項とすることは、引用発明2Dにおいて引用文献1記載事項を適用することにより、当業者が容易になし得たことである。

上記相違点6eについて検討する。
上記相違点6eは、上記相違点1eと実質的に同じである。
したがって、上記相違点1eについての検討で述べたのと同様に、上記相違点6eに係る訂正発明6の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、全体としてみても、訂正発明6が奏する作用効果は、引用発明2D、引用文献1記載事項及び周知技術から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものではない。

したがって、訂正発明6は、引用発明2D、引用文献1記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)訂正発明7について
訂正発明7と引用発明2Eとを対比すると、引用発明2Eにおける「底部側」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、訂正発明6における「長尺方向の一端部」に相当し、以下同様に、「底部側軸56」は「係合手段」に、「建屋クレーン61」は「吊上げ手段」に、「輸送容器55」は「被運搬物」に、「頂部側」は「他端部側」に、「車輪12」は「キャスタ」に、「離脱可能」は「係脱自在」に、「軸受け部13」は「被係合手段」に、「運搬台車5」は「台車」に、「直立姿勢に至る」は「所定の傾斜角度に至る」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明2Eにおける「前記輸送容器55を吊り耳58に吊り具63を懸架して前記輸送容器55の頂部側を上にした直立姿勢で吊上げ可能とし」と訂正発明7における「前記被運搬物を前記長尺方向の複数箇所で係止して前記被運搬物の他端部側を上にした傾斜状態で吊上げ可能とし」とは、「前記被運搬物を係止して前記被運搬物の他端部側を上にした状態で吊上げ可能とし」という限りにおいて一致しており、以下同様に、「台車駆動部4により建屋クレーン61の吊り上げ量の変化に対して同期駆動して前記運搬台車5を床面上を前記頂部側に移動させ」と「前記被運搬物の起立傾動に伴う前記係合手段から前記被係合手段への水平方向の荷重により前記台車を床面上を前記他端部側に移動させ」とは、「前記被運搬物の起立傾動に伴って前記台車を床面上を前記他端部側に移動させ」という限りにおいて一致しており、「前記輸送容器55を直立姿勢で吊上げるときに」と「前記被運搬物を直立を除く斜め吊りの状態で吊上げる所定角度になって前記被運搬物を吊上げるときに」とは、「前記被運搬物を所定角度になって吊上げるときに」という限りにおいて一致しており、「輸送容器55の吊上げ方法」と「長尺重量物の吊上げ方法」とは、「被運搬物の吊上げ方法」という限りにおいて一致している。

そうすると、訂正発明7と引用発明2Eとの一致点、相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
「長尺方向の一端部に係合手段を有する被運搬物を吊上げ手段によって前記被運搬物を係止して前記被運搬物の他端部側を上にした状態で吊上げ可能とし、
床面上を走行可能なキャスタおよび前記係合手段と係脱自在に係合する被係合手段を有する台車の前記被係合手段を前記係合手段に係合させ、
前記吊上げ手段で前記被運搬物を吊上げる際に、前記被運搬物が所定の傾斜角度に至る以前には前記台車の前記被係合手段を前記被運搬物の前記係合手段に係合した状態で、前記被運搬物の起立傾動に伴って前記台車を床面上を前記他端部側に移動させ、前記吊上げ手段が前記被運搬物を所定角度になって吊上げるときに前記被係合手段を前記係合手段から離脱させる、
被運搬物の吊上げ方法。」

〔相違点7a〕
「被運搬物」及び「被運搬物の吊上げ方法」に関して、訂正発明7においては「長尺重量な被運搬物」及び「長尺重量物の吊上げ方法」であるのに対して、引用発明2Eにおいては、輸送容器55及び輸送容器55の吊上げ方法である点。

〔相違点7b〕
「前記被運搬物を前記長尺方向の複数箇所で係止して前記被運搬物の他端部側を上にした傾斜状態で吊上げ可能とし」、「前記被運搬物を所定角度になって吊上げるときに」に関して、訂正発明7においては、前記被運搬物を前記長尺方向の「複数箇所で」係止して前記被運搬物の他端部側を上にした傾斜状態で吊上げ可能とし、前記被運搬物を「直立を除く斜め吊りの状態で」吊上げる所定角度になって前記被運搬物を吊上げるときに、であるのに対して、引用発明2Eにおいては、前記輸送容器55を吊り耳58に吊り具63を懸架して前記輸送容器55の頂部側を上にした直立姿勢で吊上げ可能とし、前記輸送容器55を直立姿勢で吊上げるときに、である点。

〔相違点7c〕
「台車」に関して、訂正発明7においては、被運搬物より「短尺」であるのに対して、引用発明2Eにおいては、輸送容器55より長い点。

〔相違点7d〕
「前記被運搬物の起立傾動に伴って前記台車を床面上を前記他端部側に移動させ」るに関して、訂正発明7においては、「前記被運搬物の起立傾動に伴う前記係合手段から前記被係合手段への水平方向の荷重により」前記台車を床面上を前記他端部側に移動させ」るのにに対して、引用発明2Eにおいては、台車駆動部4により建屋クレーン61の吊り上げ量の変化に対して同期駆動して前記運搬台車5を床面上を前記頂部側に移動させる点。

上記相違点7aについて検討する。
本件特許明細書には、「長尺重量」及び「長尺重量物」について明確な定義はないから、長尺で重量があるとみなし得るものは全て含まれるといえる。
一方、引用発明2Eにおける「(原子力施設に於ける)使用済み燃料輸送容器」(段落【0012】)は、一般に、長尺で重量があるものを含んでいる。
そうすると、引用発明2Eにおける「輸送容器」は「長尺重量な被運搬物」ということができ、「輸送容器55の吊上げ方法」は「長尺重量物の吊上げ方法」といえるから、上記相違点7aは実質的な相違点ではない。

上記相違点7bについて検討する。
上記相違点7bは、上記相違点1cと実質的に同じである。
したがって、上記相違点1cについての検討で述べたのと同様に、上記相違点7bに係る訂正発明7の発明特定事項とすることは、引用発明2Eにおいて周知技術を参酌することにより、当業者が容易になし得たことである。

上記相違点7cについて検討する。
上記相違点7cは、上記相違点2bと実質的に同じである。
したがって、上記相違点2bについての検討で述べたのと同様に、上記相違点7cに係る訂正発明7の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

上記相違点7dについて検討する。
上記相違点7dは、上記相違点1dと実質的に同じである。
したがって、上記相違点1dについての検討で述べたのと同様に、上記相違点7dに係る訂正発明7の発明特定事項とすることは、引用発明2Eにおいて引用文献1記載事項を適用することにより、当業者が容易になし得たことである。

そして、全体としてみても、訂正発明7が奏する作用効果は、引用発明2E、引用文献1記載事項及び周知技術から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものではない。

したがって、訂正発明7は、引用発明2E、引用文献1記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、請求項1ないし7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号により取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺重量物を収納し前記長尺重量物よりも長尺な寸法を有し、長尺方向の一端側に係合部を有する保管箱と、
この保管箱の係合部に係脱自在の被係合部および床面上を走行可能なキャスタを有し、前記保管箱が搬入された建屋の搬入階の床面において前記被係合部が前記保管箱の前記係合部に係合される、前記保管箱より短尺な台車と、
前記保管箱を吊上げる吊上げ機構と、を備え、前記保管箱を、前記寸法より小さい有効開口寸法を持ち前記搬入階から目的階までの階床を貫通する床穴を通して前記目的階の床面上へ吊上げる長尺重量物の吊上げ装置であって、
前記吊上げ機構は、前記保管箱を前記長尺方向の複数箇所で係止して前記保管箱を前記長尺方向の他端側を上にして起立傾動させ、この保管箱の起立傾動に伴う前記係合部から前記被係合部への水平方向の荷重により前記台車を前記床面上を前記他端側に移動させ、前記保管箱を直立を除く斜め吊りの状態で吊上げるとともに、前記保管箱を吊上げる過程で前記係合部および前記台車の被係合部の係合を解くことによって前記台車を分離して前記保管箱を揚重し、前記保管箱を前記目的階の床面上に水平に載置することを特徴とする長尺重量物の吊上げ装置。
【請求項2】
長尺重量な被運搬物と、
前記被運搬物の長尺方向の一端部に設けられた係合手段と、
床面上を走行可能に形成されるとともに前記係合手段と係脱自在に係合する被係合手段を有する、前記被運搬物より短尺な台車と、
前記被運搬物の前記長尺方向の複数箇所を係止して、前記長尺方向の他端部側を上にした直立を除く斜め吊りの状態で前記被運搬物を吊上げる吊上げ手段と、を具備した長尺重量物の吊上げ装置であって、
前記台車は、前記吊上げ手段で前記被運搬物を吊上げる過程において、前記被運搬物が所定の傾斜角度に至る以前には前記被運搬物の前記一端部の前記係合手段に前記被係合手段が係合された状態で、前記被運搬物の起立傾動に伴う前記係合手段から前記被係合手段への水平方向の荷重により床面上を前記他端部側に移動し、所定角度になって前記被運搬物を吊上げる際に前記被係合手段が前記係合手段から離脱されるものであることを特徴とする長尺重量物の吊上げ装置。
【請求項3】
長尺重量物を収納し前記長尺重量物よりも長尺な寸法を有し長尺方向の一端側に軸体を有する保管箱の前記一端側に設けられる、前記保管箱及び前記長尺重量物の何れよりも短尺な台車本体と、
前記保管箱の前記軸体と係脱自在に形成され、かつ、前記台車本体に対して前記保管箱を前記一端側を中心として回動させる軸受けと、
前記台車本体に設けられた床面上を走行可能なキャスタと、を備えた長尺重量物の吊上げ用台車であって、
この長尺重量物の吊上げ用台車は、前記保管箱が前記長尺方向の複数箇所での係止によって他端側を上にして吊上げられて前記床面に対する所定の傾斜角度に至る以前には前記保管箱の前記軸体に前記軸受けが係合された状態で、前記保管箱の起立傾動に伴う前記軸体から前記軸受けへの水平方向の荷重により前記保管箱が搬入された建屋の搬入階の床面上を前記他端側に移動し、前記保管箱が直立を除く斜め吊りの状態で吊上げられる所定角度になって更に吊上げられる際に前記軸受けが前記軸体から離脱されるものであることを特徴とする長尺重量物の吊上げ用台車。
【請求項4】
前記一端側に対する起立傾動による前記保管箱の前記床面に対する傾斜角度を検知する角度センサを更に備えたことを特徴とする請求項3記載の長尺重量物の吊上げ用台車。
【請求項5】
前記軸受けの前記床面に対する枢支高さを調節する高さ調節機構を更に備えたことを特徴とする請求項3又は請求項4記載の長尺重量物の吊上げ用台車。
【請求項6】
長尺重量物を収納し前記長尺重量物よりも長尺な寸法を有する保管箱の一端側に係脱自在に係合する前記保管箱より短尺で床面上を走行可能なキャスタを有する台車を、建屋の搬入階の床面において前記保管箱の一端側に係合し、
前記保管箱を前記長尺方向の複数箇所で係止して前記保管箱をその他端側を上にして傾動させるとともに前記台車を前記保管箱の一端側に係合した状態で、前記保管箱の起立傾動に伴う前記一端側から前記台車への水平方向の荷重により前記台車を床面上を前記他端側に移動させ、
前記保管箱を直立を除く斜め吊りの状態で吊上げるとともに、前記寸法よりも小さい有効開口寸法を持ち前記搬入階から目的階までの階床を貫通する床穴を通して前記搬入階から前記目的階の床面上へ前記保管箱を、前記他端側を前記一端側に対して更に起立傾動させ、前記台車を分離して前記保管箱を吊上げし、
前記目的階の床面上に前記保管箱を水平に載置することを特徴とする長尺重量物の吊上げ方法。
【請求項7】
長尺方向の一端部に係合手段を有する長尺重量な被運搬物を吊上げ手段によって前記被運搬物を前記長尺方向の複数箇所で係止して前記被運搬物の他端部側を上にした傾斜状態で吊上げ可能とし、
床面上を走行可能なキャスタおよび前記係合手段と係脱自在に係合する被係合手段を有する前記被運搬物より短尺な台車の前記被係合手段を前記係合手段に係合させ、
前記吊上げ手段で前記被運搬物を吊上げる際に、前記被運搬物が所定の傾斜角度に至る以前には前記台車の前記被係合手段を前記被運搬物の前記係合手段に係合した状態で、前記被運搬物の起立傾動に伴う前記係合手段から前記被係合手段への水平方向の荷重により前記台車を床面上を前記他端部側に移動させ、前記吊上げ手段が前記被運搬物を直立を除く斜め吊りの状態で吊上げる所定角度になって前記被運搬物を吊上げるときに前記被係合手段を前記係合手段から離脱させる、
ことを特徴とする長尺重量物の吊上げ方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-02-26 
出願番号 特願2015-15699(P2015-15699)
審決分類 P 1 651・ 121- ZAA (B65G)
最終処分 取消  
前審関与審査官 岡崎 克彦土田 嘉一  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 水野 治彦
鈴木 充
登録日 2018-06-29 
登録番号 特許第6359981号(P6359981)
権利者 東芝プラントシステム株式会社
発明の名称 長尺重量物の吊上げ装置、長尺重量物の吊上げ用台車および長尺重量物の吊上げ方法  
代理人 特許業務法人天城国際特許事務所  
代理人 特許業務法人 天城国際特許事務所  
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