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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1363390
審判番号 不服2019-6600  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-21 
確定日 2020-06-16 
事件の表示 特願2016-249713「利得切替可能な光増幅器」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月23日出願公開、特開2017- 59857〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1 手続の経緯
本願は、2014(平成26年)12月19日(優先権主張:2013年(平成25年)12月20日)に出願した特願2014-257210号の一部を、2016年(平成28年)12月22日に新たな特許出願とした出願であって、2018年(平成30年)3月2日付けで拒絶理由が通知され、2018年(平成30年)8月13日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、2019年(平成31年)1月8日付けで拒絶査定がされ、これに対して2019年(令和1年)5月21日に審判請求がされると同時に手続補正がされたものである。


2 本願発明
本願発明は、令和1年5月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?17に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項6に係る発明は、特許請求の範囲の請求項6に記載されている事項により特定される以下のとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。
なお、当該請求項6は、上記手続補正により補正されていない。


光増幅器であって、
入力ポートと、
前記入力ポートに光学的に結合されたバークロススイッチと、
前記バークロススイッチの第1のポートと出力ポートとの間に光学的に結合された第1の利得段と、
前記バークロススイッチの第2のポートと第3のポートとの間に光学的に結合された二次利得段であって、前記二次利得段は、アイソレータの周囲に結合された、2つのポンプ波長WDMを含むポンプバイパス構造を具備する、二次利得段と
を備え、
前記第1の利得段は、前記第1のポートと光学的に接続された第1の利得平坦化フィルタ(GFF)を具備し、
前記バークロススイッチのバー状態では、前記二次利得段がバイパスされ、クロス状態では、前記二次利得段および前記第1の利得段が入力光ビームに適用され、
前記バークロススイッチが、後続の利得段の希土類ドープファイバをポンプするために残余ポンプ光が使用され得るように、ポンプ光と光信号の両方を通過させるように構成されていることを特徴とする、光増幅器。」


3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用例1:特開2011-243803号公報
引用例2:国際公開第2005/018065号
周知例3:特開2003-298157号公報

4 引用発明の認定
(1)引用例1:特開2011-243803号公報

(ア)
原査定において引用され、本願の原出願の優先日前に日本国内において頒布された特開2011-243803号公報(以下「引用例1」という。)には、図1、3とともに以下の記載がある。(下線は当審で付加。以下同様。)
「【0002】
1波長の信号光、または複数の波長を多重化した信号光の信号パワーを増幅する装置として、希土類金属のエルビウムを添加したエルビウム添加ファイバ(EDF(Erbium Doped Fiber))(以下、「EDF」と呼ぶ)を用いた光ファイバ増幅装置がある。そして、このEDF内に信号光を増幅可能とするエネルギー状態を形成するため、当該EDFにエネルギーを付与する励起レーザを含む光部品群(以下、「光モジュール」とも呼ぶ)を主体として備えた構成の光ファイバ増幅装置がよく知られている。この光ファイバ増幅装置から出力される信号光の信号パワーの強度は、EDFのファイバ長および励起レーザ(以下、「LD」とも呼ぶ)のパワー強度に大きく依存する。
・・・(中略)・・・
【0004】
ここで、一般的な光ファイバ増幅装置の構成について、図6を参照して説明する。なお、図6に示す光ファイバ増幅装置5の構成は、後述する本発明の光ファイバ増幅装置と基本的な構成部分が同じであるため、ここで、その構成と動作について説明しておく。
図6に示す光ファイバ増幅装置5は、光部品群と励起レーザとで構成され、伝送する信号光を増幅する光モジュール部100Bと、この光モジュール部100Bを制御する電子制御部200Bと、に分類することができる。
【0005】
光モジュール部100Bは、光コネクタ101及び102と、光カプラ111?114と、光検出器であるPD104及び105と、信号光を光直接増幅する媒体であるEDF103と、励起レーザであるLD106及びLD107とで構成される。
この光モジュール部100Bにおいては、光コネクタ101とEDF103の入力端とが光ファイバの伝送路115を通して接続され、また、EDF103の出力端は、光ファイバの伝送路116を通して光コネクタ102に接続される。この光ファイバの伝送路115上には、光検出器であるPD104に信号光を分波するための光カプラ111と、励起レーザであるLD106から出力される励起光を合波するための光カプラ112とが設けられている。また、光ファイバの伝送路116上には、光検出器であるPD105に信号光を分波するための光カプラ114と、励起レーザであるLD107から出力される励起光を合波するための光カプラ113とが設けられている。
【0006】
光カプラ111はPD104と光ファイバにより接続されており、光カプラ111により分波された光信号がPD104に入力される。PD104は、光カプラ111から入力される光信号を検出することにより、光コネクタ101から光モジュール部100Bに入力される光信号のパワー強度を検出する。また、光カプラ114はPD105と光ファイバにより接続されており、光カプラ114により分波された光信号がPD105に入力される。PD105は、光カプラ114から入力される光信号を検出することにより、光コネクタ102から出力される信号光のパワー強度を検出する。
また、光カプラ112はLD106と光ファイバにより接続されており、この光カプラ112を通して、LD106から出力される励起光をEDF103に注入する。また、光カプラ113はLD107と光ファイバにより接続されており、この光カプラ113を通して、LD107から出力される励起光をEDF103に注入する。」
「【0014】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の光ファイバ増幅装置は、入力した信号光を第1のEDFにより増幅する光ファイバ増幅装置に、前記第1のEDFのファイバ長を増大させるための増設用の第2のEDFと、前記信号光の伝送経路を変更するための光スイッチとを追加し、前記光スイッチを制御することにより、前記第1のEDFに前記増設用の第2のEDFを直列に接続して信号光を伝送するか、または、前記増設用の第2のEDFを迂回して信号光を伝送するかを選択することを特徴とする。
本発明の光ファイバ増幅装置においては、増設用の第2のEDFと光スイッチとを追加し、この光スイッチを制御することにより、常時使用される第1のEDF(固定的に使用されるEDF)と増設用の第2のEDFと直列に接続し、この増設用の第2のEDFによりファイバ長を延長して光信号を増幅するか、または、増設用の第2のEDFを迂回し、第1のEDFのみより光信号を増幅するかを選択可能にする。
これにより、運用状態においても信号光を遮断することなく、光ファイバ増幅装置の光増幅強度を増大させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光ファイバ増幅装置においては、第1のEDFに対して、第1のEDFのファイバ長を増大させるための増設用の第2のEDFを直列に接続して光信号を伝送するか、または、増設用の第2のEDFを迂回して信号光を伝送するかを、光スイッチにより選択できるようにしたので、これにより、信号光を遮断することなく光増幅強度を増大できる光ファイバ増幅装置を提供できる。」

「【0017】
以下、本発明の光ファイバ増幅装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係わる光ファイバ増幅装置の構成を示す図である。図1に示す光ファイバ増幅装置1は、本発明の代表的な構成例として、EDFを用いた光直接増幅器の例を示したものである。
図1に示す光ファイバ増幅装置1が、図6に示す一般的な光ファイバ増幅装置5と構成上異なるのは、図6に示す光ファイバ増幅装置5に、図1に示す光スイッチ108と、光スイッチ109と、符号120で示すEDF増設ポートX1とを新たに追加した点である。このEDF増設ポートX1には、符号130で示す増設EDFモジュールZ1が挿入される。他の構成は図6に示す光ファイバ増幅装置4と同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付している。
【0018】
図1に示す光ファイバ増幅装置1において、光モジュール部100では、光コネクタ101から信号光を入力し、EDF103(またはEDF103と増設EDFモジュールZ1内のEDF133)により信号光を増幅し、この増幅された信号光を光コネクタ102から出力する。EDF103とEDF133は信号光を光直接増幅する媒体である。PD104及びPD105は、光モジュール部100の入出力信号(光信号)の信号光パワーを検出するための光検出器である。励起レーザであるLD106及びLD107は、EDF103に励起光を注入すると共に、EDF増設ポートX1(120)に実装される増設EDFモジュールZ1(130)内のEDF133に励起光を注入する。
【0019】
光スイッチ108及び光スイッチ109は、信号光および励起光の伝送方向を切り替えるための光スイッチである。また、光コネクタ121及び光コネクタ122は、EDF増設ポートX1に実装される増設EDFモジュールZ1に対して、光信号を入出力するための光コネクタである。光カプラ111及び光カプラ114は、光ファイバの伝送路115及び116に流れる光信号を分波するための光カプラであり、分波した光信号を光検出器であるPD104及びPD105のそれぞれに対して出力する。また、光カプラ112及び光カプラ113は、LD106及びLD107から出力される励起光を、光ファイバの伝送路115及び116において合波するための光カプラである。
【0020】
また、増設EDFモジュールZ1は、EDF増設ポートX1の光コネクタ121と接続するための光コネクタ131と、EDF増設ポートX1の光コネクタ122と接続するための光コネクタ132とを有している。この増設EDFモジュールZ1は、光増幅強度を増大させるためのEDF133が搭載されており、このEDF133の入力端は光コネクタ131に、出力端は光コネクタ132に接続されている。
【0021】
また、上記光スイッチ108は、1つの入力ポートCMと2つの出力ポートA、Bとを有し、入力ポートCMから入力された信号光を2つの出力ポートA、Bの内のいずれかのポートを選択して出力する、1×2の光インターフェースを有する光スイッチである。また、光スイッチ109は、2つの入力ポートC、Dと1つの出力ポートCMとを有し、2つの入力ポートC、Dの内のいずれかのポートから入力される信号光を選択して1つの出力ポートCMに出力する、2×1の光インターフェースを有する光スイッチである。
(当審注:末尾にある「2×1の光インターフェースを有する光イッチである」は「2×1の光インターフェースを有する光スイッチである」の明らかな誤記であると認められるので、誤記を正した上で認定した。)
【0022】
この光スイッチ108の入力ポートCMにEDF103の出力端が接続され、光スイッチ108の出力ポートAは、光コネクタ120及び光コネクタ131を介して、増設EDFモジュールZ1内のEDF133の入力端に接続される。光スイッチ108の出力ポートBは、光スイッチ109の入力ポートDに接続される。また、光スイッチ109の入力ポートCは、光コネクタ122及び光コネクタ132を介して、増設EDFモジュールZ1内のEDF133の出力端に接続される。光スイッチ109の入力ポートDは、光スイッチ108の出力ポートBに接続される。
【0023】
また、電子制御部200内の変換部201は、光検出器PD104から出力される光電流の信号を数値データ化するための変換回路であり、変換部202は、光検出器PD105から出力される光電流の信号を数値データ化するための変換回路である。LD制御部203は、LD106から出力される励起光パワーを制御するための回路であり、LD制御部204は、LD107から出力される励起光パワーを制御するための回路である。演算制御部211は、変換部201及び変換部202から出力される光信号の数値データを受信し、信号光を増幅するために必要な励起光パワーを算出し、制御線Sを通してLD制御部203及びLD制御部204に制御データを設定するための演算制御部である。また、演算制御部211は、光スイッチ108と制御線S1で接続されており、この制御線S1を通して、光スイッチ108におけるポート切り替えを制御する。同様に、演算制御部211は、光スイッチ109と制御線S2で接続されており、この制御線S2を通して、光スイッチ109におけるポート切り替えを制御する。
【0024】
図1に示す光ファイバ増幅装置1の構成において、光スイッチ108はEDF103から入力される信号光を、EDF増設ポートX1の光コネクタ121に出力するか、またはEDF増設ポートX1を迂回して光スイッチ109のポートDに出力するかを選択する。光スイッチ109は、EDF増設ポートX1の光コネクタ122から入力される信号光、または光スイッチ108のポートBから入力される信号光のいずれか選択し、光コネクタ102から出力する。
【0025】
光ファイバ増幅装置1が、初期の光増幅強度で信号光を増幅している運用状態においては、光スイッチ108のポートB、光スイッチ109のポートDを選択することにより、EDF103だけで増幅された信号光を光コネクタ102から出力される。ここで、光ファイバ増幅装置1の信号光パワーの光増幅強度を増大させる場合、EDF増設ポートX1に増設EDFモジュールZ1を実装し、光スイッチ108のポートA、光スイッチ109のポートCを選択する。これにより、増設EDFモジュールZ1(130)に、信号光と、LD106及びLD107からの励起光パワーとが流入し、EDF103と、増設EDFモジュールZ1内のEDF133の両方で信号光が増幅される。このように、本発明の光ファイバ増幅装置1では、光スイッチ108及び109を制御することにより、運用状態においても信号光を遮断することなく、光ファイバ増幅装置1における光増幅強度を増大させることが可能となる。
・・・(中略)・・・
【0027】
また、LD106及びLD107は、EDF103及び増設EDFモジュールZ1内のEDF133の光増幅強度が大きくない場合、どちらか一方を削除する構成としてよい。そして、LD106を削除する場合は光カプラ112を、LD107を削除する場合は光カプラ113を削除することができる。また、信号光のパワーをモニタする必要が無い場合、PD104およびPD105のいずれか一方、または両方を削除する構成とすることもできる。そして、PD104を削除する場合は光カプラ111を、PD105を削除する場合は光カプラ114を削除することができる。
【0028】
また、図1に示す例では、光スイッチ108及び光スイッチ109は、1×2及び2×1の光インターフェースを有する光スイッチで構成されているが、信号光の伝送方向を切り替えることが可能な構成な光スイッチであれば、どのような構成のものであってもよい。また、光スイッチ108及び109の制御方式については、演算制御部211からのスイッチ切り替え制御が可能な方式であれば、どのような制御方式を用いてもよい。」
「【0032】
また、EDF103及び増設EDFモジュールZ1内のEDF133の前後に、信号光の信号品質を維持するために光利得等化器(GEQ)、光減衰器(VOA)、光利得傾斜器(VASK)、光アイソレータ等の光デバイスを接続する構成とすることもできる。なお、光デバイスを用いた光ファイバ増幅装置の特性、および機能などは当業者にとって良く知られており、また本発明とは直接関係しないので、その詳細は省略する。なお、信号光パワーおよび励起光パワーが低減しないように、光スイッチ108、光スイッチ109、光カプラ111、光カプラ112、光カプラ113、及び光カプラ114の光学的損失は出来るだけ小さい方が良い。同様に、光コネクタ101、光コネクタ102、光コネクタ121、光コネクタ122、光コネクタ131、及び光コネクタ132の光学的損失は出来るだけ小さい方が良い。」
「【0040】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図3は、本発明の第2の実施形態に係わる光ファイバ増幅装置の構成を示す図である。図3に示す光ファイバ増幅装置2の構成は、図1に示す光ファイバ増幅装置1と比較して、基本的な構成は同じであるが、更に、光スイッチ141と、光スイッチ142と、符号150で示すEDF増設ポートX2とを追加した点が異なる。他の構成は図1に示す光ファイバ増幅装置1と同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0041】
この光ファイバ増幅装置2では、EDF増設ポートX2内に、符号160で示す増設EDFモジュールZ2を実装するように構成されている。この光ファイバ増幅装置2においては、EDF増設ポートX2内に増設EDFモジュールZ2を装着し、EDF増設ポートX1内に増設EDFモジュールZ1を装着する。これにより、増設EDFモジュールZ1内のEDF133と、増設EDFモジュールZ2内のEDF163とを直列に接続することにより、信号光の光増幅強度をより増大可能な構成にしている。
【0042】
図3に示す光ファイバ増幅装置2において、EDF増設ポートX2は、EDF増設ポートX1と同等の機能を持つものであり、このEDF増設ポートX2に、光ファイバ増幅装置2の光増幅強度を増大させるための増設EDFモジュールZ2(160)が実装される。このEDF増設ポートX2は、増設EDFモジュールZ2の光コネクタ161と接続するための光コネクタ151と、増設EDFモジュールZ2の光コネクタ162と接続するための光コネクタ152とを備えている。
【0043】
上記光スイッチ141は、1つの入力ポートCMと2つの出力ポートE、Fとを有し、入力ポートCMから入力された信号光を2つの出力ポートE、Fの内のいずれかのポートを選択して出力する、1×2の光インターフェースを有する光スイッチである。この光スイッチ141は、演算制御部211と制御線S3で接続され、演算制御部211からの制御信号により、ポートの切り替えが行われる。また、光スイッチ142は、2つの入力ポートG、Hと1つの出力ポートCMとを有し、2つの入力ポートG、Hの内のいずれかのポートから入力される信号光を選択して1つの出力ポートCMに出力する、2×1の光インターフェースを有する光スイッチである。この光スイッチ142は、演算制御部211と制御線S4で接続され、演算制御部211からの制御信号により、ポートの切り替え行われる。
(当審注:第3文の「2×1の光インターフェースを有する光イッチである」は「2×1の光インターフェースを有する光スイッチである」の明らかな誤記であると認められるので、誤記を正した上で認定した。)
【0044】
この光スイッチ141では、入力ポートCMが、光スイッチ109の出力ポートCMに接続され、光スイッチ141の出力ポートFが、光スイッチ142の入力ポートHに接続され、光スイッチ141のポートEが、EDF増設ポートX2の光コネクタ151に接続されている。また、光スイッチ142の入力ポートGが、EDF増設ポートX2の光コネクタ152と接続され、光スイッチ142の入力ポートHが、光スイッチ141のポートFと接続され、光スイッチ142の出力ポートCMが光カプラ113の入力端に接続されている。
また、増設EDFモジュールZ2は、EDF増設ポートX2に装着された状態において、光コネクタ161がEDF増設ポートX2の光コネクタ151と接続され、光コネクタ162がEDF増設ポートX2の光コネクタ152と接続される。
【0045】
図3に示す光ファイバ増幅装置2では、まず初期構成において演算制御部211により光スイッチ141及び光スイッチ142を制御し、光スイッチ141のポートF、および光スイッチ142のポートHを選択しておく。そして、初期構成の運用状態から、EDF増設ポートX1に増設EDFモジュールZ1を実装して拡張構成の運用状態とした後に、更に光ファイバ増幅装置2の光増幅強度を増大したい場合は、EDF増設ポートX2に増設EDFモジュールZ2を実装する。
そして、演算制御部211から光スイッチ141及び光スイッチ142を制御し、光スイッチ141のポートEおよび光スイッチ142のポートGを選択する。この構成により、EDF103と、EDF133と、EDF163とがあたかも直列に接続される構成となり、これらのEDF103、133、163のそれぞれにLD106及びLD107から励起光を注入することが可能となる。これにより、EDF103と、EDF133と、EDF163とを用いて信号光を増幅することができる。
【0046】
上記構成により、光ファイバ増幅装置2が増設EDFモジュールZ1を用いた拡張構成にて運用状態であっても、更に増設EDFモジュールZ2を増設することが可能となり、信号光を遮断することなく、光増幅強度を増大させることが可能となる。なお、第2の実施形態では、EDF増設ポートX1とEDF増設ポートX2とを2段に直列に接続する構成例を示したが、更に拡張して、EDF増設ポートを多段(3段以上)に直列に接続する構成とすることもできる。この場合、多段のEDF増設ポートに対して、所望の個数の増設EDFモジュールを装着することにより、光ファイバ増幅装置における増幅強度を可変に設定することができる。」

ここで、図1は以下のものである。

また、図3は以下のものである。


(イ)
ここで、図1から、光カプラ113は、光カプラ114を介して光コネクタ102に接続されていることが見て取れる。
図3からも同様の事項が見て取れる。
また、図3から、LD106は光カプラ112を介してEDF103に接続され、LD107は光カプラ113を介して光スイッチ142に接続されることが見て取れる。

(ウ)
a 【0020】の記載及び図3の記載から、「EDF増設ポートX1の光コネクタ121」は「EDF133の入力端」に接続されている。
同様に、【0020】の記載及び図3の記載から、「EDF増設ポートX1の光コネクタ122」は「EDF133の出力端」に接続されている。
b 他方【0024】には
「光スイッチ108はEDF103から入力される信号光を、EDF増設ポートX1の光コネクタ121に出力するか、またはEDF増設ポートX1を迂回して光スイッチ109のポートDに出力するかを選択する。光スイッチ109は、EDF増設ポートX1の光コネクタ122から入力される信号光、または光スイッチ108のポートBから入力される信号光のいずれか選択し、光コネクタ102から出力する。」と記載されているところ、この記載は、光スイッチ108及び光スイッチ109の接続関係をEDF増設ポートX1、光コネクタ121及び光コネクタ122を用いて説明していると解される。
そこで、上記aで認定したEDF増設ポートX1、光コネクタ121及び光コネクタ122とEDF133との関係を用いて、上記【0024】の記載を「EDF増設ポートX1」を用いずに「EDF133」を用いて整理すると、「光スイッチ108はEDF103から入力される信号光を、EDF133の入力端に出力するか、またはEDF133を迂回して光スイッチ109のポートDに出力するかを選択する。光スイッチ109は、EDF133の出力端から入力される信号光、または光スイッチ108のポートBから入力される信号光のいずれか選択し、光コネクタ102から出力する。」となる。

(エ)
「更に、光スイッチ141と、光スイッチ142と、符号150で示すEDF増設ポートX2とを追加し(【0040】)」との記載と、「EDF増設ポートX2内に、符号160で示す増設EDFモジュールZ2を実装し、これにより、増設EDFモジュールZ1内のEDF133と、増設EDFモジュールZ2内のEDF163とを直列に接続し(【0041】)」との記載をまとめると、「更に、光スイッチ141と、光スイッチ142と、EDF163とを追加し」となる。

(オ)
また、
「光スイッチ141では、入力ポートCMが、光スイッチ109の出力ポートCMに接続され、光スイッチ141の出力ポートFが、光スイッチ142の入力ポートHに接続され、光スイッチ141のポートEが、EDF増設ポートX2の光コネクタ151に接続され、光スイッチ142の入力ポートGが、EDF増設ポートX2の光コネクタ152と接続され、光スイッチ142の入力ポートHが、光スイッチ141のポートFと接続され、光スイッチ142の出力ポートCMが光カプラ113の入力端に接続され(【0044】)」との記載において、上記(ウ)bと同様に、EDF増設ポートX2の接続関係をEDF163の接続関係に置き換えると、
「光スイッチ141では、入力ポートCMが、光スイッチ109の出力ポートCMに接続され、光スイッチ141の出力ポートFが、光スイッチ142の入力ポートHに接続され、光スイッチ141のポートEが、EDF163の入力端に接続され、光スイッチ142の入力ポートGが、EDF163の出力端と接続され、光スイッチ142の入力ポートHが、光スイッチ141のポートFと接続され、光スイッチ142の出力ポートCMが光カプラ113の入力端に接続され」となる。



以上の記載から、引用文献1には、図3に示す光ファイバ増幅装置について、以下の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明」という。)。

「光ファイバ増幅装置2であって、(【0040】)

光コネクタ101から信号光を入力し、EDF103(またはEDF103とEDF133)により信号光を増幅し、この増幅された信号光を光コネクタ102から出力し、(【0018】)

EDF103とEDF133は信号光を光直接増幅する媒体であり、(【0018】)
励起レーザであるLD106及びLD107は、EDF103に励起光を注入すると共に、EDF133に励起光を注入し、(【0018】)

光スイッチ108及び光スイッチ109は、信号光および励起光の伝送方向を切り替えるための光スイッチであって、(【0019】)

光スイッチ108は、1つの入力ポートCMと2つの出力ポートA、Bとを有し、入力ポートCMから入力された信号光を2つの出力ポートA、Bの内のいずれかのポートを選択して出力する、1×2の光インターフェースを有する光スイッチであり、また、光スイッチ109は、2つの入力ポートC、Dと1つの出力ポートCMとを有し、2つの入力ポートC、Dの内のいずれかのポートから入力される信号光を選択して1つの出力ポートCMに出力する、2×1の光インターフェースを有する光スイッチであり、(【0021】)

この光スイッチ108の入力ポートCMにEDF103の出力端が接続され、光スイッチ108の出力ポートAは、EDF133の入力端に接続され、光スイッチ108の出力ポートBは、光スイッチ109の入力ポートDに接続され、光スイッチ109の入力ポートCは、EDF133の出力端に接続され、光スイッチ109の入力ポートDは、光スイッチ108の出力ポートBに接続され、(【0022】)

光スイッチ108はEDF103から入力される信号光を、EDF133の入力端に出力するか、またはEDF133を迂回して光スイッチ109のポートDに出力するかを選択し、光スイッチ109は、EDF133の出力端から入力される信号光、または光スイッチ108のポートBから入力される信号光のいずれか選択し、光コネクタ102から出力するものであり、(上記ア(ウ))

更に、光スイッチ141と、光スイッチ142と、EDF163とを追加し、(上記ア(エ))

光スイッチ141では、入力ポートCMが、光スイッチ109の出力ポートCMに接続され、光スイッチ141の出力ポートFが、光スイッチ142の入力ポートHに接続され、光スイッチ141のポートEが、EDF163の入力端に接続され、光スイッチ142の入力ポートGが、EDF163の出力端と接続され、光スイッチ142の入力ポートHが、光スイッチ141のポートFと接続され、光スイッチ142の出力ポートCMが光カプラ113の入力端に接続され、(上記ア(オ))

光カプラ113は光コネクタ102に接続され、(図1及び図3、上記ア(イ))

EDF103と、EDF133と、EDF163とがあたかも直列に接続される構成となり、これらのEDF103、133、163のそれぞれにLD106及びLD107から励起光を注入し、EDF103と、EDF133と、EDF163とを用いて信号光を増幅し、(【0045】)

LD106は光カプラ112を介してEDF103に接続され、LD107は光カプラ113を介して光スイッチ142に接続されるものである(【図3】、上記ア(イ))

光ファイバ増幅装置2。」

(2)引用例2:国際公開第2005/018065号

原査定において引用され、本願の原出願の優先日前に外国において頒布された国際公開第2005/018065号(以下「引用文献2」という。)には、第1図とともに以下の記載がある。

「図1は、本発明の実施形態にかかる光増幅装置1の構成を示す図である。光増幅装置1は、入射した光を増幅して出射する。
光増幅装置1は、第一前置光ファイバ増幅器12、第一前置励起光源14、第一WDMカプラ(第一前置励起光導入手段)16、第一後置光ファイバ増幅器18、第二前置光ファイバ増幅器22、第二前置励起光源24、第二WDMカプラ(第二前置励起光導入手段)26、第二後置光ファイバ増幅器28、後置励起光源34、後置WDMカプラ(後置励起光導入手段)36、光アイソレータ42、44、46、光スイッチ(光接続手段)50を備える。
・・・(中略)・・・
第二前置光ファイバ増幅器22は、端子51と端子54とが接続されている場合に、第一後置光ファイバ増幅器18の出射光を増幅して出射する。第二前置光ファイバ増幅器22は、例えば、Er(Erbium:エルビウム)添加光ファイバである。
・・・(中略)・・・
第二後置光ファイバ増幅器28は、第二前置光ファイバ増幅器22の出射光を増幅して出射する。第二後置光ファイバ増幅器28は、例えば、Er(Erbium:エルビウム)添加光ファイバである。ただし、第二後置光ファイバ増幅器28の励起光は、後置励起光源34(端子52と端子53とが接続されている場合)からもたらされる。
・・・(中略)・・・
光スイッチ50は、(1)端子51と端子52とを接続する、あるいは(2)端子51と端子54とを接続すると共に、端子52と端子53とを接続する。
(1)端子51と端子52とを接続する場合、第一後置光ファイバ増幅器18の出射側と、後置WDMカプラ36とが接続される。
(2)端子51と端子54とを接続すると共に、端子52と端子53とを接続する場合、第一後置光ファイバ増幅器18の出射側と、第二前置光ファイバ増幅器22の入射側とが接続されると共に、後置WDMカプラ36と第二後置光ファイバ増幅器28の出射側とが接続される。
・・・(中略)・・・
後置励起光源34は、第三励起光を生成し、第三励起光は後置WDMカプラ36により、端子52と端子51とを介して、第一後置光ファイバ増幅器18に導入される。これにより、第一後置光ファイバ増幅器18は励起され、第一前置光ファイバ増幅器12の出射光を増幅できる。
・・・(中略)・・・
第二前置励起光源24は、第二前置光ファイバ増幅器22に与える第二励起光を生成する。第二励起光は、第二WDMカプラ26により、第二前置光ファイバ増幅器22に導入される。第二励起光は、第二前置光ファイバ増幅器22の出射側から入射側へと透過していき、さらに端子54と端子51とを介して(この際、光スイッチ50の挿入損失を受ける)、第一後置光ファイバ増幅器18に導入される。これにより、第一後置光ファイバ増幅器18は励起され、第一前置光ファイバ増幅器12の出射光を増幅できる。さらに、第二前置光ファイバ増幅器22は励起され、第一後置光ファイバ増幅器18の出射光を増幅できる。」

ここで、図1は以下のものである。




5 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。

ア 本願発明の「光増幅器であって、」との特定事項について
(ア)引用発明の「光ファイバ増幅装置2」は、本願発明の「光増幅器」に相当する。
(イ)上記(ア)によれば、引用発明は本願発明の「光増幅器であって、」との特定事項を備えることは、明らかである。

イ 本願発明の「入力ポートと」との特定事項について
(ア)引用発明の「光コネクタ101」は本願発明の「入力ポート」に相当する。
(イ)上記(ア)によれば、引用発明は本願発明の「入力ポートと」との特定事項を備えることは、明らかである。

ウ 本願発明の「前記入力ポートに光学的に結合されたバークロススイッチと、」との特定事項について
(ア)引用発明において、「光コネクタ101」は、「EDF103」を介して「光スイッチ108」及び「光スイッチ109」に接続されている。したがって、引用発明において「光スイッチ108」及び「光スイッチ109」は、「光コネクタ101」に光学的に結合されている。
(イ)引用発明の「光スイッチ108」及び「光スイッチ109」は、光信号を「EDF133」に入力する光路と、「EDF133」を迂回する光路とを切り換えるものであるから、光路切換機構である。
(ウ)よって、本願発明と引用発明とは「前記入力ポートに光学的に結合された光路切換機構と、」で一致する。

エ 本願発明の「前記バークロススイッチの第1のポートと出力ポートとの間に光学的に結合された第1の利得段と、」との特定事項について
(ア)引用発明の「光コネクタ102」は本願発明の「出力ポート」に相当する。
(イ)引用発明において、「光スイッチ109の出力ポートCM」と「光コネクタ102」との間には、「光スイッチ141、EDF163、光スイッチ142」が備わっている。ここで、引用発明の「光スイッチ141、EDF163、光スイッチ142」は、本願発明の「第1の利得段」に相当する。したがって、引用発明は、光スイッチ109の出力ポートCMと光コネクタ102との間に、第1の利得段を備える。
(ウ)本願発明の「前記バークロススイッチの第1のポート」は「第1の利得段」を介して「出力ポート」に光学的に接続されている。そして、引用発明の「光スイッチ109の出力ポートCM」も、「光スイッチ141、EDF163、光スイッチ142」(本願発明の「第1の利得段」に相当。)を介して「光コネクタ102」(本願発明の「出力ポート」に相当。)に光学的に接続されている。ここで、「光スイッチ109」は上記ウ(イ)のとおり光路切換機構の一部であり、「光スイッチ109の出力ポートCM」は光路切換機構のポートのうち「第1の利得段」に接続されているポートであるといえる。
(エ)よって、本願発明と引用発明とは「光路切換機構のポートのうち第1の利得段に接続されているポートと出力ポートとの間に光学的に結合された第1の利得段と、」で一致する。

オ 本願発明の「前記バークロススイッチの第2のポートと第3のポートとの間に光学的に結合された二次利得段であって、前記二次利得段は、アイソレータの周囲に結合された、2つのポンプ波長WDMを含むポンプバイパス構造を具備する、二次利得段と、」との特定事項について
(ア)引用発明において、「光スイッチ108のポートA」は、「EDF133の入力端」に接続され、「光スイッチ109のポートC」は、「EDF133の出力端」に接続される。ここで、「光スイッチ108」及び「光スイッチ109」は上記ウ(イ)のとおり光路切換機構である。
(イ)そして、引用発明における「EDF133」は、本願発明の二次利得段に相当するとともに、光路切換機構により、信号光を入力するか、迂回するか選択されている。また、「EDF133の入力端」及び「EDF133の出力端」はいずれも光路切換機構に接続されている。
(ウ)したがって、本願発明と引用発明とは「光路切換機構のポートのうち二次利得段の入力端に接続するポートと二次利得段の出力端に接続するポートとの間に光学的に結合された二次利得段と、」で一致する。

カ 本願発明の「前記第1の利得段は、前記第1のポートと光学的に接続された第1の利得平坦化フィルタ(GFF)を具備し、」との特定事項について
引用発明は上記の特定事項を備えていない。

キ 本願発明の「前記バークロススイッチのバー状態では、前記二次利得段がバイパスされ、クロス状態では、前記二次利得段および前記第1の利得段が入力光ビームに適用され」との特定事項について
(ア)引用発明の光路切換機構(光スイッチ108及び光スイッチ109)は、光スイッチ108が「EDF133を迂回して光スイッチ109のポートDに出力」し、光スイッチ109が「光スイッチ108のポートBから入力される信号」を取得する場合、信号光はEDF133(本願発明の「二次利得段」に相当。)を迂回する状態(以下「第1の状態」という。)となる。
(イ)また、光スイッチ108がEDF133の入力端に入力し、光スイッチ109がEDF133の出力端から入力される信号光を取得する場合、信号光は光スイッチ108、EDF133(二次利得段)、光スイッチ109、光スイッチ141(第1の利得段)に、順に入力される状態(以下「第2の状態」という。)となる。
(ウ)ここで、第2の状態は、本願発明でいう「二次利得段」及び「第1の利得段」が入力光ビームに適用されるものである。
(エ)したがって、本願発明と引用発明とは「光路切換機構が、第1の状態では二次利得段がバイパスされ、第2の状態では二次利得段および第1の利得段が入力光ビームに適用され」で一致する。

ク 本願発明の「前記バークロススイッチが、後続の利得段の希土類ドープファイバをポンプするために残余ポンプ光が使用され得るように、ポンプ光と光信号の両方を通過させるように構成されている」との特定事項について
(ア)引用発明は「EDF103、133、163のそれぞれにLD106及びLD107から励起光を注入し、EDF103と、EDF133と、EDF163とを用いて信号光を増幅する(【0045】)」ものである。そして、EDF103とEDF133とは、光スイッチ108を介して接続されている。また、EDF133とEDF163とは、光スイッチ109と光スイッチ141を介して接続されている。
(イ)そうすると、LD106から出射した励起光がEDF103と、EDF133と、EDF163とに注入されるためには、光スイッチ108、光スイッチ109、光スイッチ141が励起光を通過させる必要があると解するのが自然である。このことは、LD107についても同様である。
(ウ)仮に、上記(イ)の解釈が成り立たないとしても、EDF103、133、163という3つの増幅器に対して、LD106及びLD107という2つの励起光源から励起光を照射しており、増幅器の数は励起光源の数より多いのであるから、少なくともいずれかの増幅器は励起光源を共有しているはずであり、そうであるならば、励起光源を共有している増幅器の一方は、励起光源を共有している増幅器の他方に入力されたポンプ光の残余のポンプ光を使用しているはずということにもなる。そして、その際、光スイッチ108、光スイッチ109、光スイッチ141は、励起光を通過させる必要があると認められる。
(エ)したがって、引用発明において、光スイッチ108、光スイッチ109、光スイッチ141は、励起光(本願発明の「ポンプ光」に相当。)と信号光(本願発明の「光信号」に相当。)の両方を通過させるものである。
(オ)よって、本願発明と引用発明とは、「光路切換機構が、後続の利得段の希土類ドープファイバに残余ポンプ光が使用され得るように、ポンプ光と光信号の両方を通過させるように構成されている」で共通する。



(2)以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。
「光増幅器であって、
入力ポートと、
入力ポートに光学的に結合された光路切換機構と、
光路切換機構の第1のポートと出力ポートとの間に光学的に結合された第1の利得段と、
光路切換機構の第2のポートと第3のポートとの間に光学的に結合された二次利得段と、
光路切換機構が、第1の状態では二次利得段がバイパスされ、第2の状態では二次利得段および第1の利得段が入力光ビームに適用され
光路切換機構が、後続の利得段の希土類ドープファイバをポンプするために残余ポンプ光が使用され得るように、ポンプ光と光信号の両方を通過させるように構成されている
光増幅器。」

(3)一方、両者は以下の各点で相違する。
(相違点1)
「光路切換機構の第1の利得段に接続されているポートと出力ポートとの間に光学的に結合された第1の利得段と」に用いられ、「光路切換機構の二次利得段の入力端に接続するポートと二次利得段の出力端に接続するポートとの間に光学的に結合された二次利得段と」に用いられ、「後続の利得段の希土類ドープファイバをポンプするために残余ポンプ光が使用され得るように、ポンプ光と光信号の両方を通過させるように構成されている」光路切換機構が、本願発明は「バークロススイッチ」であるのに対して、引用発明は光スイッチ108及び光スイッチ109からなる点。

(相違点2)
本願発明は、「前記バークロススイッチのバー状態では、前記二次利得段がバイパスされ、クロス状態では、前記二次利得段および前記第1の利得段が入力光ビームに適用され」るものであるのに対して、引用発明は、「光路切換機構が、第1の状態では二次利得段がバイパスされ、第2の状態では二次利得段および第1の利得段が入力光ビームに適用され」るものの、「バークロススイッチ」の「バー状態」と「クロス状態」となる構成は備えない点。

(相違点3)
本願発明は「前記二次利得段は、アイソレータの周囲に結合された、2つのポンプ波長WDMを含むポンプバイパス構造を具備する」のに対して、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(相違点4)
本願発明は「前記第1の利得段は、前記第1のポートと光学的に接続された第1の利得平坦化フィルタ(GFF)を具備」している一方、引用発明はそのような構成を備えていない点。



6 判断
(1)相違点1、2について、まとめて検討する。
ア 引用例2の「光スイッチ50」について検討する。
(ア)上記4(2)で摘記した引用例2には「光スイッチ50」が開示されており、ここで、「光スイッチ50」は(1)バー状態と(2)クロス状態を切り換えることにより光路の切替を行う光スイッチ(本願発明における「バークロススイッチ」)である。
(イ)そして、(1)バー状態では「(1)端子51と端子52とを接続する場合、第一後置光ファイバ増幅器18の出射側と、後置WDMカプラ36とが接続される。」から、光信号は「第二前置光ファイバ増幅器22及び第二後置光ファイバ増幅器28」からなる増幅段を迂回する。
(ウ)さらに、(2)クロス状態では「(2)端子51と端子54とを接続すると共に、端子52と端子53とを接続する場合、第一後置光ファイバ増幅器18の出射側と、第二前置光ファイバ増幅器22の入射側とが接続されると共に、後置WDMカプラ36と第二後置光ファイバ増幅器28の出射側とが接続される。」から、光信号は「第二前置光ファイバ増幅器22及び第二後置光ファイバ増幅器28」からなる増幅段に入力される。
(エ)したがって、引用例2の「光スイッチ50」は、(1)信号光が増幅段を迂回するバー状態と(2)信号光が増幅段に入力されるクロス状態と、を切り換えるものである。

イ 引用発明の「光路切換機構(光スイッチ108及び光スイッチ109)」を引用例2の「光スイッチ50」に置き換えることを検討する。
(ア)引用例1には、「光スイッチ108及び光スイッチ109は、1×2及び2×1の光インターフェースを有する光スイッチで構成されているが、信号光の伝送方向を切り替えることが可能な構成な光スイッチであれば、どのような構成のものであってもよい」(【0028】)と記載されているから、1×2及び2×1の光インターフェースを有する光スイッチ以外の光スイッチを用い得ることは明らかである。
(イ)そして、引用発明の「光スイッチ(光スイッチ108及び光スイッチ109)」と引用例2の「光スイッチ50」とは、信号光が増幅段を迂回する状態と信号光が増幅段に入力する状態とを切り換えるという共通の機能を有している。
(ウ)したがって、引用発明において「光路切換機構(光スイッチ108及び光スイッチ109)」に換えて、引用例2の「光スイッチ50」を採用することで、相違点1に係る構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得ることである。
(エ)そして、引用例2の光スイッチ50は、上記アのとおり、(1)光信号が増幅段を迂回するバー状態と、(2)光信号が増幅段に入力するクロス状態とを切り換えるものであるから、引用発明において引用例2の光スイッチ50を採用するならば、信号光が二次利得段をバイパスする状態をバー状態、信号光が二次利得段に入力される状態をクロス状態として実現するのが自然である。
(オ)よって、引用発明において引用例2の光スイッチ50を採用することで、相違点2に係る構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得ることである。

ウ 引用発明の「光路切換機構(光スイッチ108及び光スイッチ109)」を引用例2の「光スイッチ50」に置き換えた場合に、光路切換機構(光スイッチ50)をポンプ光が通過するか検討する。
(ア)引用例2には「第二前置励起光源24は、第二前置光ファイバ増幅器22に与える第二励起光を生成する。第二励起光は、第二WDMカプラ26により、第二前置光ファイバ増幅器22に導入される。第二励起光は、第二前置光ファイバ増幅器22の出射側から入射側へと透過していき、さらに端子54と端子51とを介して(この際、光スイッチ50の挿入損失を受ける)、第一後置光ファイバ増幅器18に導入される。これにより、第一後置光ファイバ増幅器18は励起され、第一前置光ファイバ増幅器12の出射光を増幅できる。さらに、第二前置光ファイバ増幅器22は励起され、第一後置光ファイバ増幅器18の出射光を増幅できる。」と記載されている。
(イ)上記(ア)の記載は、第二前置光ファイバ増幅器22の出射側から入射側へと透過した第二励起光(本願発明でいう残余ポンプ光)は、光スイッチ50の内部を通過し、第一後置光ファイバ増幅器18(本願発明でいう後段の利得段)に導入されるという意味である。
(ウ)したがって、引用例2の光スイッチ50は、出射光のみならず第二励起光(本願発明でいうポンプ光)を通過させるものであるから、本願発明でいう「前記バークロススイッチが、後続の利得段の希土類ドープファイバをポンプするために残余ポンプ光が使用され得るように、ポンプ光と光信号の両方を通過させるように構成されている」ものである。
(エ)そして、引用発明もまた、LD106から出射した励起光は光スイッチ108、光スイッチ109、光スイッチ141を通過することでEDF103と、EDF133と、EDF163とに注入されるものであるから(上記5(1)クを参照のこと。)、引用発明の光路切換機構(光スイッチ108及び光スイッチ109)を引用例2の光スイッチ50に置き換えたならば、LD106から出射した励起光がEDF103と、EDF133と、EDF163とに注入されることを維持するために、バークロススイッチである光スイッチ50を励起光が通過するように構成されるべきものである。
(オ)そうすると、引用発明の光路切換機構を、引用例2の光スイッチ50に置き換えた場合は、光スイッチ50を励起光と光信号の両方を通過するよう構成することは、当業者にとって自明な事項である。
(カ)したがって、引用発明に引用例2の光スイッチを採用した場合に、本願発明に係る「前記バークロススイッチが、後続の利得段の希土類ドープファイバをポンプするために残余ポンプ光が使用され得るように、ポンプ光と光信号の両方を通過させるよう」な構成を得ることは、当業者にとって自明な事項である。


(2)相違点3について検討する。
ア 「前段の希土類ドープファイバと後段の希土類ドープファイバとの間にアイソレータを設けることにより、前段の希土類ドープファイバに後段の希土類ドープファイバによって発生した自然放出光を伝搬させないことで、雑音指数を小さくすること」(以下、「アイソレータの周知技術」という。)及び「希土類(エルビウム)ドープファイバを備えた光増幅器において、アイソレータの周囲に結合された、2つのポンプ波長WDMを含むポンプバイパス構造」を備える(以下、「ポンプバイパス構造」の周知技術という。)ことは、いずれも、以下の周知例に記載されているように、当業者に周知の事項である。

(ア)周知例3:特開2003-298157号公報
原査定に引用され、本願の原出願の優先日前に日本国内において頒布された周知例3には、図3とともに以下の記載がある。
「【0018】第2波長選択結合器350は、第1エルビウム添加光ファイバ340から入力される光信号および残余ポンピング光を分離し、分離した分離光信号を第2アイソレータ360に出力し、分離した残余ポンピング光は第3波長選択結合器370に出力する。第2アイソレータ360は、第2波長選択結合器350から入力された光信号をそのまま通過させ、その逆方向から入力される光信号は遮断する。利得平坦化フィルタ500は中間フィルタであって、第2アイソレータ360から入力された光信号の利得を平坦化する。」

ここで、図3は以下のものである。

(イ)周知例A:特開平6-85370号公報
本願の優先日前に日本国内において頒布された周知例Aには、図1とともに以下の記載がある。
「【0017】ところで、信号光入力側の光増幅ファイバ6によって発生した自然放出光は、信号光と同じ波長帯なので、合分波器9、光アイソレータ11および合分波器10を介して信号光出力側の光増幅ファイバ7に伝搬されて信号光とともに増幅されて出力されるが、信号光出力側の光増幅ファイバ7によって発生した自然放出光は、同じく信号光と同じ波長帯なので、合分波器10を通過して光アイソレータ11によって遮断され、信号光入力側の光増幅ファイバ6へは伝搬しない。
【0018】本実施例の光ファイバ増幅器では、信号光入力側の光増幅ファイバ6による増幅と信号光出力側の光増幅ファイバ7による増幅との2段の増幅を行っているので、全体の雑音指数を決定する度合が大きい信号光入力側の光増幅ファイバ6に信号光出力側の光増幅ファイバ7によって発生した自然放出光を伝搬させないことは、全体の雑音指数を小さくする上で大きな役割を果たす。」

ここで、図1は以下のものである。

(ウ)周知例B:米国特許第6424457号明細書
本願の原出願の優先日前に外国において頒布された周知例Bには、FIG.3とともに以下の記載がある。
「A pump coupler such as a wavelength divisionmultiplexing coupler 38 or any other suitable coupler may be used tocouple pump power from pump 36 into coil40 . Residual pump power from coil40 may be separated from the mainfiber path using coupler 42 and provided to coil 50 viabypass fiber 48 and coupler46 . An isolator 44 may be used to prevent backwards-propagatinglight due to spontaneous emission in coil50 from adversely affecting thenoise figure in coil 40 . 」(4欄25?33行)

(日本語訳:ポンプ36からのポンプパワーをコイル40に結合するために、波長分割多重カプラ38などのポンプカプラまたは他の適切なカプラを使用することができる。コイル40からの残留ポンプ電力は、カプラ42を用いて主ファイバ経路から分離され、バイパスファイバ48およびカプラ46を介してコイル50に供給される。コイル50における自然放出による後方伝播光がコイル40におけるノイズ指数に悪影響を及ぼすのを防止するために、アイソレータ44を使用することができる。)

ここで、FIG.3は以下のものである。


イ 引用発明に上記アイソレータの周知技術を採用することを検討する。
(ア)
引用文献1の【0032】には「また、EDF103及び増設EDFモジュールZ1内のEDF133の前後に、信号光の信号品質を維持するために光利得等化器(GEQ)、光減衰器(VOA)、光利得傾斜器(VASK)、光アイソレータ等の光デバイスを接続する構成とすることもできる。」と記載されている。
(イ)
そして、アイソレータの周知技術における、「前段の希土類ドープファイバと後段の希土類ドープファイバ」は、引用発明において、EDF103とEDF133(二次利得段)が当てはまる。
(ウ)
したがって、引用発明において、EDF103と二次利得段との間にアイソレータを設けることにより、EDF103に二次利得段によって発生した自然放出光を伝搬させないことで、雑音指数を小さくすることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。

ウ 引用発明にポンプバイパス構造の周知技術を採用することを検討する。
(ア)
引用発明は、上記5(1)クのとおり、LD106を出射した励起光が、EDF103、EDF133、EDF163と照射されるものであるから、上記イのとおり、EDF103とEDF133(二次利得段)の間にアイソレータを備えた場合には、アイソレータを励起光がバイパスするよう、ポンプバイパス構造の周知技術を採用することは、当業者にとって容易に想到し得たことである。
(イ)
したがって、引用発明において、EDF103と二次利得段との間にアイソレータを設ける際に、ポンプ光がアイソレータをバイパスするために、アイソレータの周囲に結合された、2つのポンプ波長WDMを含むポンプバイパス構造を具備することは、当業者にとって容易に想到し得たことである。


したがって、引用発明において、アイソレータの周知技術及びポンプバイパス構造の周知技術を採用することで、相違点3に係る構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。


(3)相違点4について検討する。

希土類(エルビウム)ドープファイバにおいて、利得平坦化フィルタ(GFF)を具備することは、下記のとおり、周知技術である。

(ア)周知例3:特開2003-298157号公報
周知例3には、上記(2)ア(ア)に加えて、図1とともに以下の記載がある。
「【0004】図1は、従来の利得平坦化された光ファイバ増幅器の構成を示す図であり、図2は、図1の利得平坦化された光ファイバ増幅器に採用された第1利得平坦化フィルタまたは第2利得平坦化フィルタの損失曲線を示すものである。図1に示すように、光ファイバ増幅器は第1?第3アイソレータ110、150、210、第1ポンピング光源120および第2ポンピング光源190、第1波長選択結合器130および第2波長選択結合器200、第1エルビウム添加光ファイバ(Erbium doped optical fiber)140および第2エルビウム添加光ファイバ180、第1利得平坦化フィルタ(GFF:Gain Flattening Filter)160および第2利得平坦化フィルタ170から構成される。」

ここで、図1は以下のものである。


(イ)周知例B:米国特許第6424457号明細書
周知例Bには、上記(2)ア(ウ)に加えて、以下の記載がある。
「Gain equalization filter 56 maybe used to smooth or flatten the gain spectrum of amplifier 18 to compensatefor the natural gain spectrum of coils40 , 50 , and 62 . 」
(日本語訳:利得等価フィルタ56は、コイルの40,50,62の固有利得スペクトルを補償し、増幅器18の利得スペクトルをスムーズ又は平坦にするために用いることができる。)

(ウ)周知例C:特開2003-46174号公報
本願の原出願の優先日前に日本国内において頒布された周知例Cには、以下の記載がある。
「【0017】・・・(中略)・・・図6は、EDFに対して利得等化器41を挿入してEDFAを構成した例である。この例では、利得等化器41を挿入することによって、EDFによる利得を平坦化することができる。」


イ 引用発明に、利得平坦化フィルタ(GFF)を具備することを検討する。

引用例1の【0032】には「また、EDF103及び増設EDFモジュールZ1内のEDF133の前後に、信号光の信号品質を維持するために光利得等化器(GEQ)、光減衰器(VOA)、光利得傾斜器(VASK)、光アイソレータ等の光デバイスを接続する構成とすることもできる。」と記載されているから、引用発明の二次利得段の後に、上記周知技術である利得平坦化フィルタを備えるよう構成することは、当業者にとって容易に想到し得ることである。


したがって、引用発明において、上記周知技術に基づいて、相違点4に係る構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。


(4)以上検討したとおり、引用発明において、相違点1?4に係る構成を備えることは、いずれも当業者にとって容易に想到し得たことである。

したがって、本願発明は、周知技術を勘案して、引用発明及び引用例2に記載された技術並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7 むすび
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-01-16 
結審通知日 2020-01-20 
審決日 2020-02-04 
出願番号 特願2016-249713(P2016-249713)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高椋 健司  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 田中 秀直
山村 浩
発明の名称 利得切替可能な光増幅器  
代理人 阿部 達彦  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  

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