• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1363391
審判番号 不服2019-11204  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-26 
確定日 2020-06-15 
事件の表示 特願2014- 79661「ブロー成形プラスチックボトル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月12日出願公開、特開2015-199521〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯

本願は、平成26年4月8日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 8月21日付け:拒絶理由通知
平成29年10月20日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年 3月27日付け:拒絶理由通知
平成30年 5月10日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年10月31日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知
平成30年12月25日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 元年 5月27日付け:平成30年12月25日にした手続補正に
ついての補正の却下の決定、その後拒絶査

令和 元年 8月26日 :審判請求書の提出、同時に手続補正書の提

令和 2年 2月 5日付け:拒絶理由通知
令和 2年 3月11日 :意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1及び2に係る発明は、令和2年3月11日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ブロー成形により製造されたプラスチックボトルにおいて、
口部と、
肩部と、
円筒状の胴部と、
底部とを備え、
底部は周縁に位置する周縁部と、中央に位置し上方へ持上げられた持上部と、周縁部と持上部との間に位置する円周状接地部とを有し、
周縁部に接地部に向って半径方向に延び、プラスチックボトルの内側へ引込む凹状の半径方向リブを設け、
底部の各凹状の半径方向リブは、周縁部から接地部直前まで延び、円周状接地部を貫通することなく、底部の持上部に、プラスチックボトルの外側に向かって突出する複数の突部が環状に設けられ、かつ持上部の各突部間に半径方向に延びる凹部が形成され、各半径方向に延びる凹部は持上部から円周状接地部に向かって延び、円周状接地部を貫通することなく、これにより円周状接地部は連続的に円周状に延び、半径方向リブの数は、12個であり、突部間の凹部の数は5個となり、
周縁部の半径方向リブは平面視、細長状に形成され、持上部の突部は平面視、半円状に形成される、ことを特徴とするプラスチックボトル。」

第3 当審が通知した令和2年2月5日付け拒絶理由

当審が通知した令和2年2月5日付け拒絶理由のうち、理由2の概要は以下のとおりである。
理由2.本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



・請求項 1?3
・引用文献 1?5
<引用文献等一覧>
1.特表2010-500242号公報
2.特開2013-209158号公報
3.特開2000-229615号公報
4.意匠登録第1481523号公報
5.意匠登録第1481585号公報

第4 引用文献の記載事項

1 引用文献1の記載事項及び引用発明1
当審の拒絶の理由に引用した引用文献1、すなわち、特表2010-500242号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は理解の便宜のために当審にて付したものである。)

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性材料による中空体、特に、壺または瓶などの容器の技術分野に関する。
【0002】
本発明はさらに特に、熱可塑性材料で注入されるプリフォームの吹き込み成型または引き抜き成型後の吹き込み(注入吹き込み)成型により得られる中空体に関する。」

(2)「【0005】
中空体底の中心には、吹き込み成型または引き抜き吹き込み成型時に微弱にしか引き抜かれないプリフォームの結果として生ずる一部の非常に低い結晶度の「パッチ」と呼ばれる区域が存在する。プリフォームの長手軸は実はその最終的容器のものと一致する。これによって、吹き込み成型または引き抜き吹き込み成型時に、PETの引き抜きは容器底の中心ではほぼ起きないと同時に容器の横仕切壁に近づくにつれて増えることになる。
【0006】
どのような製造方法であっても、熱可塑性容器はその底の強度を十分に示さなくてはならない。
【0007】
2方向性PETは十分な力学的ならびに耐熱上の強度を示す。しかし、上記でも触れたように、容器底は容器本体よりもはるかに引き抜き度合が少ないので、この底の示す力学ならびに耐熱上の強度は本体のものよりも低い。
【0008】
同じ問題が首部についても存在する。首部の熱処理によりその結晶度を上げることができる。しかし、首部(非結晶PET製の)の熱処理により、等温性結晶化に至り、小球状質量状態が形成され、全然半透明ではない熱硬化PETが得られる。比較的厚い瓶の首部が半透明ではないことが許容される場合には、殆ど半透明ではない瓶底では製品を詰めた体裁が悪くなろう。
【0009】
容器の底は、例えば、中身の入った容器の落下時の衝撃に耐えなくてはならない。
【0010】
容器の底は、特に、容器に炭酸飲料が含まれる時の内圧にも耐えなくてはならない。内部過圧により中身が詰まった瓶の貯蔵場所の温度上昇および/またはこれらの瓶プラスチック素材の収縮が生じうるが、この収縮は通常、これらの製造ならびに充填後、2あるいは3週間の間に生ずる。」

(3)「【0037】
ある実施例では、この底には横方向支持面近傍に達する外側縁を有する補強リブが含まれ、これらの補強リブは横方向中央部分に達するもののこの横方向中央部分には届かない内側縁を有し、これらの補強リブは横方向支持面に届くことはない。
【0038】
本発明は、第二局面によると、プリフォームの吹き込み成型あるいは引き抜き吹き込み成型により得られる、特に、PETなどのポリエステルの熱硬化性材料の中空体に関するもので、
これらの中空体は横仕切壁ならびにこの横仕切壁につながる底からなり、前記底は上記で紹介されたようなものである。」

(4)「【0040】
本発明による底からなる瓶は加熱充填時の十分な強度だけでなく高温殺菌時にも十分な強度を示す。中央通風道19は、補強リブ1の存在により特にクリープや撓みに対して十分に補強される。
【0041】
本発明による底からなる瓶は横仕切壁の下部について十分な衝撃強度も示す。刻み目の存在により容器の横仕切壁とその基部との間の接続区域における瓶の塑性変形の危険を減らすことができる。底により完全に衝撃が吸収されると同時に、その変形後にも元の形状に「自然に」回復が可能である。」

(5)[【0043】
示された実施形態では、補強リブ1の数は5本であると同時に、ほぼ一様でかつ等間隔である。その他の実施形態では、補強リブは特に底の直径を考慮するために多少とも数が多い。補強リブは様々な寸法でありえて、最初の組のリブの底仕切壁を第二の組の底仕切壁よりも狭くしても良い。]

(6)「【0047】
底3はその外側縁6の基部側に必ず刻み目2(例では10個の刻み目)を備えると同時に、その中央に放射状リブ1付きの構造が追加できる、横方向支持面5にほぼ垂直な軸4の周りの回転体形状をなす。」

(7)「【0050】
外側縁6と横断方向支持面5との間で、底3は鉛直半径方向断面でほぼ放物線の外形7を示す。外側縁6の近傍でこの外形7は横断方向支持面5のほぼ垂直方向8と接する。横断方向支持面5の近傍ではこの外形7はこの横断方向支持面5にほぼ接する。外形7によりこうして連続性の解決が、容器の横仕切壁(図示されず)と横断方向支持面5の間の曲率を乱すことなく確保される。
【0051】
底3は環状でかつ連続した形状の横方向支持面5をなす。この環状面5から始まると同時に回転軸4の方に向かいながら、底3は横断方向支持面5の幅にほぼ等しい幅(半径方向に測って)の環状の段9をなす。この環状段9により、このような底を備えた中空体内の過圧あるいは真空の作用のもとで蛇腹のような底3の形成が可能となる。
【0052】
この環状段9から始まると同時に回転軸4の方に向かいながら、底3は次に、鉛直半径方向で、ほぼ放物線の外形10をなした後、横断方向中央部分11をなす。
【0053】
横断方向中央部分11は、横断方向支持面5に対してh11の高さに置かれ、この高さh11は外側縁6の高さh6に対していくばかりかである。」

(8)「【0056】
これらの刻み目2は半径方向に拡がる。これらには底の仕切壁20と両横翼21,22が含まれる。各刻み目は鉛直半径方向に対称な平面をなす。これらの刻み目の末端部分23は底3の外側縁6の近傍に達するもののこれ自体には届かない。これらの刻み目はこうして鉛直から近いけれどもつなぎ目から離れた出発点を有する。刻み目の外側基端24部分は基部の近傍に達するもののこの基部内には姿を現さないことが好ましい。これらの刻み目の幅は通常、2から20ミリメートルの間にある。これらの刻み目の深さは瓶の容量に応じて変動すると同時に、通常は、0.5リットル瓶で1.5ミリメートル(1.5リットル瓶で3から4ミリメートル)に等しい。」

(9)「【図1】



(10)「【図2】



(11)「【図3】



(12)【図1】?【図3】から、刻み目2は、外形7を示す部分に横断方向支持面5に向けて半径方向に延び、底3の内側へ引込む凹状に設けられていることが看取できる。
また、【図1】、【図2】から、補強リブ1は、外形10をなす部分に横断方向支持面5に向けて半径方向に延び、底3の内側へ引き込む凹状に設けられていることが看取できる。

(13)上記(1)?(12)の事項をまとめると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
《引用発明1》
「熱可塑性材料で注入されるプリフォームの吹き込み成型または引き抜き吹き込み成型により得られる瓶において、
首部と、
横仕切り壁と、
横仕切り壁につながる中空体底3とを備え、
中空体底3は、外側縁6と横断方向支持面5との間の外形7を示す部分と、横断方向支持面5から始まる環状段9と、環状段9から始まる外形10をなす部分と、横断方向支持面5に対してh11の高さに置かれる横断方向中央部分11と、環状の横断方向支持面5とを有し、
外形7を示す部分に横断方向支持面5に向かって半径方向に延び、中空体底3の内側へ引込む凹状の刻み目2を設け、
中空体底3の各凹状の刻み目2は、外側基端24部分は基部の近傍に達するもののこの基部内には姿を現すことなく、中空体底3の外形10をなす部分に、半径方向に延び、中空体底3の内側へ引込む凹状の補強リブ1が形成され、各半径方向に延びる補強リブ1は外形10をなす部分から横断方向支持面5に向かって延び、横断方向支持面5に届くことなく、円周状接地部は連続的に円周状に延び、刻み目2の数は、10個であり、補強リブ1の数は5本となる、瓶。」

2 引用文献2の記載事項
当審の拒絶の理由に引用した引用文献2、すなわち、特開2013-209158号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0018】
図1乃至図3に示すように、プラスチックボトル10は、口部11と、口部11に連接する首部12と、首部12に連接する肩部13と、肩部13に連接する胴部20と、胴部20に連接する底部30とを備えている。
【0019】
このうち胴部20は略円筒形状からなり、その表面には複数の周方向溝21が設けられている(いわゆる蛇腹構造となっている)。各周方向溝21は、胴部20の周方向全域に形成されており、その水平断面はそれぞれ円又は多角形状からなっている。また、これらの周方向溝21は、上下方向に沿って配置されている。さらに、各周方向溝21間には、それぞれ周方向凸部22a?22dが形成されている。」

(2)「【0031】
また、プラスチックボトル10は、合成樹脂材料を射出成形して作製したプリフォームを二軸延伸ブロー成形することにより作製することができる。なおプリフォームすなわちプラスチックボトル10の主材料としては熱可塑性樹脂、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PLA(ポリ乳酸)等を使用することができる。
【0032】
なお、胴部20の形状は、図1および図2に示す蛇腹構造からなるものに限られない。
例えば、炭酸飲料用ボトルのように、胴部20が全体として平坦な円筒面からなっていてもよい。また、胴部20は、自己陽圧機能が減殺されることを防止するため、圧力吸収構造(例えば圧力吸収パネル)を有さないことが好ましい。ただし、胴部20が小型のパネルを有する場合は自己陽圧機能を発現することも可能である。具体的には、胴部20に、上下方向に延びる小型のパネルを周方向に沿って複数配置し、各パネル内に縦スリットを設けても良い。」

(3)「【図1】



(4)【図2】「



(5)上記(1)?(4)の事項をまとめると、引用文献2には、以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
《引用文献2記載事項》
「プリフォームを二軸延伸ブロー成形することにより作製されるプラスチックボトルが、口部11と、口部11に連接する首部12と、首部12に連接する肩部13と、肩部13に連接する胴部20と、胴部20に連接する底部30とを備えており、胴部20は略円筒形状からなること。」

3 引用文献3の記載事項
当審の拒絶の理由に引用した引用文献3、すなわち、特開2000-229615号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明を2軸延伸ブロー成形で形成されるポリエステル樹脂製のプラスチックボトルに具体化した一実施の形態を図1?図4に従って説明する。図1はプラスチックボトルを逆さにして底部側から見た部分斜視図、図2は底面図である。プラスチックボトル1は横断面が円形状に形成され、その底部2にはプラスチックボトル1の中心を中心としてプラスチックボトル1の内側へ凸となる凹部3が形成されている。」

(2)「【0017】中空リブ6は中央凸部4の周囲から立ち上がる先端壁7aと、先端壁7aの両端から凹部3の周縁に向かって延びる両側壁7bと、両側壁7bと先端壁7aとに連続する下壁7cとから構成されている。側壁7bは上縁及び下縁がほぼ平行に延びる直線状に形成されている。中空リブ6の下壁7cはほぼ直線状に凹部3の周縁まで延びるように形成されている。凹部3の隣接する中空リブ6の側壁7bで挟まれた部分は、中央凸部4寄りの部分が前記下壁7cと平行な平面上に位置するように形成され、側壁7bで挟まれた部分の半分以上が下壁7cと平行な面となるように形成されている。
【0018】図3に示すように、先端壁7aとプラスチックボトル1の中心軸線と直交する平面との成す角度θ1は、型抜き可能な抜きテーパとなる急傾斜に形成されている。角度θ1の値は40度以上で90度未満の範囲で設定される。角度θ1が90度に近いほど耐熱性及び耐荷重性の点で好ましいが、90度に近いと離型性の点で不利になり、88度程度が上限となる。また、型忠実性の点からは角度が小さい方が良いが、あまり小さいと耐熱性及び耐荷重性が不十分となるため、40度以上が好ましい。従って、角度θ1は40度以上90度未満、好ましくは60度?88度となる。さらに、耐荷重性及び耐熱性を十分満足し、かつ型忠実性も確保し易くなる点を考慮すると、より好ましい範囲は70度?85度となる。また、凹部3はその周縁、立ち上がり部分のプラスチックボトル1の中心軸線と直交する平面との成す角度が、従来のものより大きく形成されている。」

(3)「【図1】



(4)「【図2】



(5)「【図3】



(6)「【図4」



(7)【図2】から、8個の中空リブ6が環状に設けられていることが看取できる。
また、【図1】?【図4】から、8個の谷8bが各中空リブ6間に半径方向に延び、各半径方向に延びる谷8bは凹部3から底部2の接地部に向かって、底部2の接地部を貫通することなく伸びていることが看取できる。

(8)上記(1)?(7)の事項をまとめると、引用文献3には、以下の事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。
《引用文献3記載事項》
「2軸延伸ブロー成形により製造されるプラスチックボトルにおいて、底部2のプラスチックボトル1の内側へ凸となる凹部3に、プラスチックボトル1の外側に突出するように複数の中空リブ6が環状に設けられ、かつ隣接する中空リブ6間に本系方向に延びる谷8bが形成され、各半径方向に延びる谷8bは凹部3から底部2の接地部に向かって延び、底部2の接地部を貫通することなく、中空リブ6間の谷8bの数は8個となること。」

4 引用文献4の記載事項
当審の拒絶の理由に引用した引用文献4、すなわち、意匠登録第1481523号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【意匠に係る物品】包装用容器」

(2)「【意匠の説明】赤色に着色した部分以外の部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。各図の表面部全面にあらわされた濃淡は、立体表面の形状を表現するためのものである。」

(3)「【斜視図2】



(4)「【底面図】


(5)【斜視図2】から、包装用容器において、底部に中央に位置し上方へ持上げられた持上部が設けられ、持上部に包装用容器の外側に向かって突出する複数の突部が設けられ、各突部間に凹部が形成されることが看取できる。
また、【底面図】から、複数の突部が環状に設けられ、各突部間の凹部が半径方向に延び、凹部の数は5個であり、突部は平面視、半円状に形成されることが看取できる。

(6)上記(1)?(5)の事項をまとめると、引用文献4には、以下の事項(以下、「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。
《引用文献4記載事項》
「包装用容器において、底部に中央に位置し上方へ持上げられた持上部が設けられ、持上部に包装用容器の外側に向かって突出する複数の突部が環状に設けられ、かつ持上部の各突部間に半径方向に延びる凹部が形成され、突部間の凹部の数は5個であり、持上部の突部は平面視、半円状に形成されること」

5 引用文献5の記載事項
当審の拒絶の理由に引用した引用文献5、すなわち、意匠登録第1481585号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【意匠に係る物品】包装用容器」

(2)「【意匠の説明】各図の表面部全面にあらわされた濃淡は、立体表面の形状を表現するためのものである。」

(3)「【斜視図2】



(4)「【底面図】



(5)【斜視図2】から、包装用容器において、底部に中央に位置し上方へ持上げられた持上部が設けられ、持上部に包装用容器の外側に向かって突出する複数の突部が設けられ、各突部間に凹部が形成されることが看取できる。
また、【底面図】から、複数の突部が環状に設けられ、各突部間の凹部が半径方向に延び、凹部の数は5個であり、突部は平面視、半円状に形成されることが看取できる。

(6)上記(1)?(5)の事項をまとめると、引用文献4には、以下の事項(以下、「引用文献5記載事項」という。)が記載されている。
《引用文献5記載事項》
「包装用容器において、底部に中央に位置し上方へ持上げられた持上部が設けられ、持上部に包装用容器の外側に向かって突出する複数の突部が環状に設けられ、かつ持上部の各突部間に半径方向に延びる凹部が形成され、突部間の凹部の数は5個であり、持上部の突部は平面視、半円状に形成されること」

第5 対比

本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「熱可塑性材料で注入されるプリフォームの吹き込み成型または引き抜き吹き込み成型により得られる瓶」は、本願発明1の「ブロー成形により製造されたプラスチックボトル」に相当する。
また、引用発明1の「横仕切り壁」は、その形状が明らかでない限りにおいて、本願発明1の「円筒状の胴部」に一致し、引用発明1の「中空体底3」は、本願発明1の「底部」に相当する。
また、引用発明1の「外側縁6と横断方向支持面5との間の外形7を示す部分」、「横断方向支持面5から始まる環状段9と、環状段9から始まる外形10をなす部分と、横断方向支持面5に対してh11の高さに置かれる横断方向中央部分11」及び「環状の横断方向支持面5」は、中空体底3におけるそれぞれの形状や配置を考慮すれば、本願発明1の「周縁に位置する周縁部」、「中央に位置し上方へ持上げられた持上部」及び「周縁部と持上部との間に位置する円周状接地部」に相当する。
また、引用発明1の「外形7を示す部分」に設けられる「横断方向支持面5に向かって半径方向に延び、中空体底3の内側へ引込む凹状の刻み目2」は、本願発明1の「周縁部」に設けられる「接地部に向って半径方向に延び、プラスチックボトルの内側へ引込む」「凹状の半径方向リブ」に相当し、引用発明1において、「中空体底3の各凹状の刻み目2」が「外側基端24部分は基部の近傍に達するもののこの基部内には姿を現すことな」い点は、本願発明1において、「底部の各凹状の半径方向リブ」が「周縁部から接地部直前まで延び、円周状接地部を貫通することな」い点に相当する。
また、引用発明1の「中空体底3の外形10をなす部分」に形成される「半径方向に延び、中空体底3の内側へ引込む凹状の補強リブ1」は、それが「底部の持上部」に「環状に設けられ」る「プラスチックボトルの外側に向かって突出する複数の突部」の間に形成されるものであるか否かが明らかでない限りにおいて、本願発明1の「底部の持上部」に形成される「持上部の各突部間に半径方向に延びる凹部」に一致し、引用発明1において、「各半径方向に延びる補強リブ1は外形10をなす部分から横断方向支持面5に向かって延び、横断方向支持面5に届くことなく」、「円周状接地部は連続的に円周状に延び」る点は、本願発明1において、「各半径方向に延びる凹部は持上部から円周状接地部に向かって延び、円周状接地部を貫通することなく」、「これにより円周状接地部は連続的に円周状に延び」る点に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明1との一致点、相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
ブロー成形により製造されたプラスチックボトルにおいて、
底部を備え、
底部は周縁に位置する周縁部と、中央に位置し上方へ持上げられた持上部と、周縁部と持上部との間に位置する円周状接地部とを有し、
周縁部に接地部に向って半径方向に延び、プラスチックボトルの内側へ引込む凹状の半径方向リブを設け、
底部の各凹状の半径方向リブは、周縁部から接地部直前まで延び、円周状接地部を貫通することなく、底部の持上部に、半径方向に延びる凹部が形成され、各半径方向に延びる凹部は持上部から円周状接地部に向かって延び、円周状接地部を貫通することなく、これにより円周状接地部は連続的に円周状に延びる、
プラスチックボトル。」

<相違点1>
本願発明1のプラスチックボトルは、口部と、肩部と、円筒状の胴部とを備えるのに対し、引用発明1の瓶は、首部を備えているものの、口部と肩部とを備えているか否か明らかでなく、横仕切り壁が円筒状であるか否か明らかでない点。

<相違点2>
本願発明1は、底部の持上部に、プラスチックボトルの外側に向かって突出する複数の突部が環状に設けられ、半径方向に延びる凹部は、持上部の各突部間に形成されるものであり、突部間の凹部の数が5個であり、持上部の突部は平面視、半円状に形成されるのに対し、引用発明1は、中空体底3の外形10をなす部分に、容器の外側に向かって突出する複数の突部が環状に設けられるか否か明らかでなく、半径方向に延びる凹状の補強リブ1が、当該突部間に形成されるものであるか否かも明らかでなく、凹状の補強リブ1の数が5本であり、突部の形状が明らかでない点。

<相違点3>
半径方向リブが、本願発明1では数が12個であり、平面視、細長状に形成されているのに対し、引用発明1では数が10個であり、平面視、細長状に形成されているか否か明らかでない点。

第6 判断

上記相違点について検討する。

<相違点1について>
引用発明1の瓶と引用文献2に記載されたプラスチックボトルは、いずれもプリフォームの吹き込み成型またはブロー成形により製造される点で共通するものであり、首部を備えている点においても共通するものであるから、両者は外形上同様の形状を有するものといえる。
そうすると、引用発明1の瓶を、引用文献2記載事項のように、首部に連接する口部と肩部とを備えるものとし、横仕切り壁(胴部)を円筒状とすることで、上記相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
引用発明1の凹状の補強リブ1と引用文献3記載事項における外側に突出する中空リブ6は、いずれも加熱時の容器底部の変形等に対して補強、抑制しようとするものである(引用文献1の段落【0040】、引用文献3の段落【0004】参照)から、引用発明1において、凹状の補強リブ1に代えて、引用文献3記載事項のように、プラスチックボトル1の外側に突出するように複数の中空リブ6を環状に形成し、かつ隣接する中空リブ6間に谷8bを形成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
その際、引用文献3記載事項の中空リブ6及び谷8bは8個であるが、具体的な中空リブ6及び谷8bの数や形状については、容器の大きさ等によって適宜最適化、好適化し得る設計的事項にしか過ぎず、引用発明1においては、凹状の補強リブ1は5本であり、底部の持上部に設けられた突部を平面視、半円状に形成し、突部間の凹部の個数を5個とすることは、引用文献4記載事項、引用文献5記載事項のように従来周知の技術である(以下「周知技術1」という。)から、中空リブ6の形状を平面視、半円状とし、谷8bの数を5個と特定することで、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

<相違点3について>
引用文献1の段落【0047】には「底3はその外側縁6の基部側に必ず刻み目2(例では10個の刻み目)を備える」と記載されており、引用発明1において、刻み目2の数を10個とすることは単なる1例に過ぎず、具体的な刻み目2の数については、容器の大きさ等によって適宜最適化、好適化し得る設計的事項にしか過ぎないから、引用発明1において、例えば刻み目2の数を12個とすることに、格別の困難性は認められない。
また、引用文献1には、刻み目2の幅について、段落【0056】には「これらの刻み目の幅は通常、2から20ミリメートルの間にある。」と記載されており、刻み目2の幅を小さくすればその形状が細長状となることは明らかである。
したがって、引用発明1において、刻み目2の数を12個とし、幅を小さくすることでその形状を細長状とすることで、上記相違点3に係る本願発明1の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

したがって、本願発明1は、引用発明1、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、出願人は令和2年3月11日提出の意見書において、本願発明は
(a)各半径方向に延びる凹部は持上部から円周状接地部に向かって延び、円周状接地部を貫通することなく、これにより円周状接地部は連続的に円周状に延びていること。
(b)円周部に設けられた半径方向リブの数は12個であり、突部間の凹部の数は5個となること。
(c)周縁部の半径方向リブは平面視、細長状に形成され、持上部の突部は平面視、半円状に形成されること。
を特徴としており、上記特徴(a)(b)(c)の組み合わせにより、
・円周状接地部は連続的に円周状に延びることになるため、底部の保護強化を図ることができるとともに、連続的に円周状に延びる円周状接地部を安定して形成することができる。
・円周部に設けられた半径方向リブの数は突部間の凹部の数の2倍以上となっているため、底部において、半径方向外方に設けられた半径方向リブ間の円周角度を、半径方向内方のうち突部間に設けられた凹部間の円周角度に対して1/2以下とすることができ、半径方向外方に設けられた半径方向リブ間の円周角度を小さくして半径方向リブを多数設けることにより、半径方向外方においても、半径方向内方と同様に底部の剛性を高めることができる。
・周縁部の半径方向リブは平面視、細長状に形成され、持上部の突部は平面視、半円状に形成されているため、半径方向リブを平面視、細長状に形成することができ、かつ平面視、半円状の突部間に、半径方向リブに近似する細長状の凹部を形成することができ、半径方向外方においては、細長状の半径方向リブを多数設け、半径方向内方においては、同様に細長状の凹部を半径方向リブの1/2以下の数だけ設けることができ、半径方向内方および半径方向外方において、底部の剛性をバランス良く向上させることができる。
のに対し、引用文献1?5には、本願発明の特徴(a)(b)(c)の組み合わせについては述べられていない旨主張している。
しかし、剛性を高めようとする箇所にリブを形成することは技術常識であり、上記相違点1?3に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは当業者が容易になし得たものであるから、上記請求人が主張する効果は、引用発明1、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項及び周知技術1に基いて、当業者が予測し得た範囲内のものである。

また、出願人は令和2年3月11日提出の意見書において、引用文献4-5には、突部間の凹部の数が5個である旨の記載はなく、持上部の突部は平面視、半円状に形成される旨の記載もない旨の主張もしている。
しかしながら、引用文献4の【斜視図2】、【底面図】、引用文献5の【斜視図2】、【底面図】、の底面部の表面にあらわされた濃淡から、5つの突部間に5つの凹部が形成されていることは明らかであり、本願の【図1】の(c)に図示された5つの突部33の形状と、引用文献4の【底面図】に図示された5つの突部の形状、及び引用文献5の【底面図】に図示された5つの突部の形状は、いずれも同様の形状であるといえる。
したがって、当該出願人の主張も採用できない。

また、出願人は令和元年8月26日提出の審判請求書において、
「(7)面接を希望します
なお、本件出願人は上述のように、補正後の特許請求の範囲により、本願発明は特許すべきものと考える。しかしながら審判官殿が本願の拒絶理由はなお解消していないと判断した場合、本件出願人は本願を面接により対応したいと考えており、更なる補正の用意もあります。
その場合は下記までご連絡下さい。」
と記載していた。
そこで、令和2年2月5日付け拒絶理由通知書において、拒絶理由の通知と合わせて、
「面接等の要望については、下記連絡先までご連絡ください。」
と通知した。
しかしながら、令和2年3月11日提出の意見書においても、その他電話等の連絡手段によっても、面接の要望を申し出てくることはなかった。
したがって、面接は行っていない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願発明2について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-04-10 
結審通知日 2020-04-14 
審決日 2020-04-30 
出願番号 特願2014-79661(P2014-79661)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 佑果永田 勝也長谷川 一郎田口 傑  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 中村 一雄
横溝 顕範
発明の名称 ブロー成形プラスチックボトル  
代理人 中村 行孝  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 朝倉 悟  
代理人 永井 浩之  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ