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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1363394
審判番号 不服2018-16071  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-03 
確定日 2020-06-18 
事件の表示 特願2017-117203「印刷装置、印刷方法、及び印刷用プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月 9日出願公開、特開2017-200767〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成19年1月9日に出願された特願2007-1731号(優先権主張 平成18年3月2日)の一部を,平成23年8月8日に特願2011-173460号として出願したものの一部を,平成25年10月10日に特願2013-213148号として出願したものの一部を,平成26年12月8日に特願2014-248380号として出願したものの一部を,平成28年4月18日に特願2016-82957号として出願したものの一部を,平成29年6月14日に特願2017-117203号として出願したものであって,その後の手続は以下のとおりである。
平成29年 6月30日 上申書の提出
平成30年 2月13日 上申書の提出
平成30年 2月13日 手続補正書の提出
平成30年 3月12日 拒絶理由の通知
平成30年 5月21日 意見書の提出
平成30年 5月25日 拒絶理由の通知
平成30年 8月 1日 意見書及び手続補正書の提出
平成30年 8月27日 拒絶査定(平成30年5月25日付けの拒絶理由通知により通知された理由(以下,「原査定の理由」という。)により査定)
平成30年12月 3日 審判請求,手続補正書及び上申書の提出

第2 平成30年12月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年12月3日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容について
(1)本件補正は,特許請求の範囲及び明細書について補正するものであり,その補正の一部には,本件補正前の請求項1の記載を本件補正後の請求項1のとおりに補正する補正事項(以下,「本件補正事項」という。)を含むものである。
ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
ファイルを格納可能な外部装置とネットワークを介して接続可能な印刷装置であって,
操作部と,
印刷設定の入力を受け付ける印刷設定画面を前記操作部に表示させる第1表示制御手段と,
前記操作部に対して所定の操作がされたことに応じて,前記印刷設定画面に対して入力された印刷設定に基づいて画像データを印刷させる第1印刷制御手段と,
前記操作部に対して入力されたユーザ情報を取得する取得手段と,
前記ユーザ情報を用いてユーザの認証を行う認証手段と,
前記外部装置に格納されたファイルのうち,認証された前記ユーザがアクセス可能なファイルから印刷対象とするファイルの選択を受け付ける選択画面を前記操作部に表示させる第2表示制御手段と,
前記選択画面においてファイルの選択を受け付けた後,前記選択画面に含まれる選択完了ボタンが操作されたことに応じて,前記操作部の表示を前記選択画面から前記印刷設定画面に切り替える第3表示制御手段と,
前記外部装置に格納されたファイルのうち前記選択画面において選択されたファイルを,前記印刷設定画面に対して入力された印刷設定に基づいて印刷させる第2印刷制御手段と,
を有することを特徴とする印刷装置。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
ファイルを格納可能な外部装置とネットワークを介して接続可能な印刷装置であって,
操作部と,
コピー機能の設定に係る印刷設定を含む入力を受け付け,前記外部装置に格納されたファイルを閲覧する閲覧ボタンを含む印刷設定画面を前記操作部に表示させる第1表示制御手段と,
前記操作部に対して所定の操作がされたことに応じて,前記印刷設定画面に対して入力された印刷設定に基づいて画像データを印刷させる第1印刷制御手段と,
前記閲覧ボタンが操作されたことに応じて,ユーザ情報を入力するための認証画面を前記操作部に表示させ,前記認証画面に対して入力されたユーザ情報を取得する取得手段と,
前記ユーザ情報を用いてユーザの認証を行う認証手段と,
前記ユーザの認証が成功した場合,前記外部装置に格納されたファイルのうち,認証された前記ユーザがアクセス可能なファイルから印刷対象とするファイルの選択を受け付ける選択画面を前記操作部に表示させる第2表示制御手段と,
前記選択画面においてファイルの選択を受け付けた後,前記選択画面に含まれる選択完了ボタンが操作されたことに応じて,前記操作部の表示を前記選択画面から前記印刷設定画面に切り替える第3表示制御手段と,
前記操作部に対して所定の操作がされたことに応じて,前記外部装置に格納されたファイルのうち前記選択画面において選択されたファイルを,前記印刷設定画面に対して入力された印刷設定に基づいて印刷させる第2印刷制御手段と,
を有することを特徴とする印刷装置。」(下線は,当審で付加したものである。下線については,以下同じである。)

(2)本件補正の目的について
本件補正事項は,本件補正前の請求項1において,印刷設定が「コピー機能の設定」を含むことを特定するものを含んでいる。
ここで、印刷設定が「コピー機能の設定」を含むことは、「印刷装置」が、「コピー機能を有する印刷装置」であることを意味するところ、本件補正前の請求項1における印刷装置において、コピー機能を有することについて、何ら特定されておらず、印刷装置にコピー機能を付加する本件補正事項は、補正前の請求項における発明特定事項を、概念的に、より下位の発明特定事項としたものでないから、いわゆる外的付加に相当することは明らかである。
また、本件補正後の請求項1の印刷装置は、コピー機能を付加されたことで、本件補正前の請求項1において特定された「印刷装置」とは異なる「印刷装置」となったことは明らかであるから、「産業上の利用分野」及び「解決しようとする課題」が、変更されることとなったともいえる。
したがって,本件補正事項の目的は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものとはいえない。
また,当該補正事項が誤記の訂正や明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当しないことは明らかである。
してみると、本件補正事項による補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反してされたものというほかないから,同法第159条第1項において読み替えて適用される同法第53条の規定により却下すべきものである。

2 独立特許要件についての検討
上記のとおり,本件補正事項により追加された点は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当するものではないものの,印刷設定の入力を受け付ける印刷設定画面において「コピー機能の設定に係る印刷設定を含む」こと,「外部装置に格納されたファイルを閲覧する閲覧ボタンを含む」こと,ユーザ情報を取得する取得手段が「閲覧ボタンが操作されたことに応じて」,「操作部に表示させ」た,「認証画面」に対して入力されたユーザー情報を取得することを限定するものであるとして,念のため,本件補正事項の目的がいわゆる限定的減縮に該当するものであると仮定し,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は,上記1(1)イにおいて摘示したとおりの発明特定事項により特定されるものである。

(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由の引用文献1として引用され,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-205355号公報(以下,「引用文献1」という。)には,つぎの事項が記載されている。
(ア)「【0010】
【発明の実施の形態】以下,本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。図1は,本実施形態のネットワークのブロック図である。図1において,パーソナルコンピュータ1,ファイルサーバー2,モノクロプリンタ3,複合機4が,ローカルエリアネットワーク(以下,LANという)に,接続されている。このLANは,任意の機器間でデータの交換を可能にするネットワークである。なお,LAN上には,他のコンピュータ,プリンタ,ファクシミリ装置なども接続することができる。
【0011】パーソナルコンピュータ1は,ワープロソフトや図形ソフトなどアプリケーションによって,文書や図形などドキュメントを作成,修正,表示を行うものである。ファイルサーバー2は,LANを介してパーソナルコンピュータ1で作成,修正されたドキュメントを画像データとして受信し,記憶する大容量の記憶装置である。なお,パーソナルコンピュータ1とファイルサーバー2との間の画像データの送受信については,後段において詳述する。
【0012】モノクロプリンタ3は,その制御を司る中央演算処理装置であるCPU31,画像メモリ等に使用されるランダムアクセスメモリ(以下,RAMという)32,プログラム,フォント,データなどを記憶する記憶媒体であるリードオンリーメモリ(以下,ROMという)33,特定のプリント制御言語の画像データをイメージ情報に変換して展開するフォーマッタ34,LANに接続するためのインターフェースであるネットワークI/F35,画像データに基づいて転写紙上に画像形成を行うプリンタエンジン36,LANに接続されている他の周辺機器(本実施形態においては複合機4)のプリンタドライバを格納(記憶)するハードディスク(以下,HDDという)37を有しており,これらは互いに内部バス(符号なし)を介して接続されている。
【0013】このモノクロプリンタ3によって画像形成をする場合には,パーソナルコンピュータ1で作成・修正されたドキュメントの画像データを,パーソナルコンピュータ1或いはファイルサーバー2に格納されているプリンタドライバのプログラムをCPUが実行することにより,モノクロプリンタ3に合わせた画像データにされた後,LANを介して,パーソナルコンピュータ1或いはファイルサーバー2から送信される。そして,モノクロプリンタ3では,該画像データを受信し,フォーマッタ34によってイメージ情報に変換してから,プリンタエンジン36へと供され,画像データに基づいて画像形成がなされる。この詳細な構成及び動作等については,公知の技術を用いることができるので,その説明は省略する。
【0014】さらに,このモノクロプリンタ3は,自らがパーソナルコンピュータ1の記憶装置やファイルサーバー2に格納されている画像データを読み出して,この読み出した画像信号に基づいて画像形成ができる,所謂,PULL型プリンタの機能をも備えている。なお,この詳細については,後段において詳述する。」

(イ)「【0015】複合機4は,プリンタ,コピー,スキャナ,ファクシミリの機能を備えた周辺機器であり,その制御を司る中央演算処理装置であるCPU41,画像メモリ等に使用されるランダムアクセスメモリ(以下,RAMという)42,プログラム,フォント,データなどを記憶する記憶媒体であるリードオンリーメモリ(以下,ROMという)43,特定のプリント制御言語の画像データをイメージ情報に変換して展開するフォーマッタ44,LANに接続するためのインターフェースであるネットワークI/F45,画像データに基づいて転写紙上に画像形成を行うプリンタエンジン46,原稿の画像を読み取るためのスキャナ48,ファックスの送受信をするためのモデム(以下,Faxという)49を有しており,これらは互いに内部バス(符号なし)を介して接続されている。」

(ウ)「【0019】パーソナルコンピュータ1では,ワープロソフトや図形ソフトなどアプリケーションによって,文書や図形などドキュメントの作成,修正を行い,これをプリントアウトするに際しては,ファイルサーバー2にその画像データを登録する。そのために,まず,作成したドキュメント(画像データ)のプリントジョブを認識するためのIDを入力する(S11)。このIDは,少なくともファイルサーバー2に既に格納(登録)されている画像データに付されたIDと異なるデータである。
【0020】次に,処理モードを入力する(S12)。この処理モードは,プリントアウトする部数,用紙サイズなどであり,プリンタがソータやステープル機能を有する場合にはその機能の設定などであってもよい。」

(エ)「【0023】次に,PULL型プリンタであるモノクロプリンタ3の動作(ファイルサーバー2から画像データを読み出し,プリントを行う或いはプリントを行わせる動作)について,フローチャート図である図4に基づいて説明する。なお,このフローチャートに関するプログラムは,モノクロプリンタ3のROM33に格納されており,このプログラムをCPU31が読み出し,これに基づいて制御を行う。
【0024】CPU31は,モノクロプリンタ3の操作部(不図示)に設けられた入力キー(不図示)からID或いはファイルサーバー2にログインする情報が入力されたかどうかを監視している(S21)。そして,ユーザーが,S21において,登録データをファイルサーバー2に登録する際に入力したID(図2のS11で入力したID)を,入力キーから入力すると,モノクロプリンタ3は,LANを介して,ファイルサーバー2にアクセスし,S21で入力されたIDを検索する(S22)。そして,ファイルサーバー2に格納された登録データのうち,該当するIDを有する登録データがあるか否かを判断する(S23)。判断の結果,該当するIDがファイルサーバー2上になければ終了する。
【0025】一方,S21において,ユーザーが,ファイルサーバー2にログインする情報を入力キーから入力すると,モノクロプリンタ3は,LANを介して,ファイルサーバー2にアクセスし,ファイルサーバー2に記憶(登録)されている登録データのうち,全ての登録データのインデックス情報を,読み出して取得し,操作部の表示手段(不図示)に一覧として表示する(S24)。なお,このS24における一覧の取得・表示に際しては,画像データに基づいたプレビューの表示を行わせるようにしてもよい。そして,ユーザーは,表示された情報を見て,印刷(プリントアウト)しようとする登録データ(インデックス情報)を選択する(S25)。
【0026】S23の判断の結果,該当するIDがファイルサーバー2上にある場合,若しくは,S25において印刷しようとする登録データを選択した場合,次に,モノクロプリンタ3は,自身が印刷可能な状態かどうかを判断する(S26)。例えば,モノクロプリンタ3において,用紙切れやトナーなどの色材切れのような動作不可能な状態,或いは,モノクロプリンタ3全体の寿命や感光体など装置の一部の寿命を越えて使用を継続しており,画質として十分な画像が得られないなどの理由により,印刷ができない状態になっていないか等を判断する(S26)。
【0027】S26において,モノクロプリンタ3が印刷可能であると判断すると,このモノクロプリンタ3で選択した登録データに基づく画像を印刷してよいのかどうかの判断を,ユーザーに仰ぐ(S27)。例えば,表示手段に「このプリンタで選択ファイルのプリントアウトを行います。いいですか?」との表示を行い,ユーザーは入力キーにより,モノクロプリンタ3で印刷するか否かの判断結果を入力する。
【0028】S27において,ユーザーがモノクロプリンタ3でよいと判断されると,モノクロプリンタ3は,ファイルサーバー2にアクセスし,データの読み出しを行う(S28)。なお,このとき読み出されるデータは,モノクロプリンタ3に合わされたデータであり,また,上述の登録データのうち少なくとも処理モード及び画像データに関するデータである。
【0029】また,この読み出しに際しては,まず,モノクロプリンタ3は,ファイルサーバー2に対して,S23或いはS25で選択されたデータの送信指示を,LANを介して送信する。そして,この送信指示をファイルサーバー2が受信すると,ファイルサーバー2は該当するデータを,LANを介して,モノクロプリンタ3へ送信する。このファイルサーバー2から送信されたデータを,モノクロプリンタ2が受信する。このようにして,モノクロプリンタ3はファイルサーバー2からデータを読み出す。
【0030】S28においてモノクロプリンタ3がデータを読み出すと,上述したように,フォーマッタ34によってイメージ情報に変換してから,プリンタエンジン36へと供して,画像データに基づいて画像形成を行う(S29)。」

上記摘記事項(ア)ないし(エ)から,引用文献1には以下の事項(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「パーソナルコンピュータ1,ファイルサーバー2,複合機4と,ローカルエリアネットワークによって接続されている,モノクロプリンタ3であって,
パーソナルコンピュータ1は,ワープロソフトや図形ソフトなどアプリケーションによって,文書や図形などドキュメントの作成,修正を行い,ファイルサーバー2にその画像データを登録するために,作成したドキュメント(画像データ)のプリントジョブを認識するためのIDを入力し,プリントアウトする部数,用紙サイズ,プリンタのソータやステープル機能の設定などの処理モードを入力し,
ファイルサーバー2は,LANを介してパーソナルコンピュータ1で作成,修正されたドキュメントを画像データとして受信し,記憶する大容量の記憶装置であり,
複合機4は,プリンタ,コピー,スキャナ,ファクシミリの機能を備えた周辺機器であり,
PULL型プリンタであるモノクロプリンタ3は,ファイルサーバー2から画像データを読み出し,プリントを行うものであって,
モノクロプリンタ3の制御を司る中央演算処理装置であるCPU31は,モノクロプリンタ3の操作部に設けられた入力キーからファイルサーバー2にログインする情報が入力されたかどうかを監視し,ユーザーが,ファイルサーバー2にログインする情報を入力キーから入力すると,モノクロプリンタ3は,LANを介して,ファイルサーバー2にアクセスし,ファイルサーバー2に記憶(登録)されている登録データのうち,全ての登録データのインデックス情報を,読み出して取得し,操作部の表示手段に一覧として表示し,
ユーザーは,表示された情報を見て,印刷(プリントアウト)しようとする登録データ(インデックス情報)を選択し,
印刷しようとする登録データを選択した場合,モノクロプリンタ3は,自身が印刷可能な状態かどうかを判断し,
モノクロプリンタ3が印刷可能であると判断すると,このモノクロプリンタ3で選択した登録データに基づく画像を印刷してよいのかどうかの判断を,ユーザーに仰ぎ,
ユーザーがモノクロプリンタ3でよいと判断されると,モノクロプリンタ3は,ファイルサーバー2にアクセスし,データの読み出しを行い,
モノクロプリンタ3がデータを読み出すと,フォーマッタ34によってイメージ情報に変換してから,プリンタエンジン36へと供して,画像データに基づいて画像形成を行うモノクロプリンタ3。」

イ 原査定の拒絶の理由の引用文献2として引用され,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-208598号公報(以下,「引用文献2」という。)には,つぎの事項が記載されている。
(ア)「【0038】〈第1の実施の形態例〉図1は本発明の第1の実施の形態例の構成を示すブロック図である。この図において,1は少なくとも後述する登録ユーザ20や画像形成装置100などが接続されてデータ通信を行えるネットワークである。なお,このネットワーク1は,LAN,WAN,イントラネット,インターネットなどの各種のネットワークを含むものとする。
【0039】20はネットワーク1を介した画像形成装置100の管理者あるいは使用者として登録されている登録ユーザである。なお,ここで,「登録ユーザ」と言った場合には,実際には,「登録ユーザが使用するコンピュータ」を意味している。なお,この登録ユーザとして複数存在することがあり,その具体例として,登録ユーザ21,登録ユーザ22,登録ユーザ23を示している。なお,この登録20は,画像形成装置100の外部に存在しているので,外部機器として機能している。
【0040】100はネットワーク1を介してコンピュータから得た画像データあるいは内蔵するスキャナで読み取った画像データについて画像形成による出力(プリント出力)を行う機能を有すると共に,前記画像データについてのサムネイル画像を生成し,該サムネイル画像を外部機器から閲覧可能にし,外部機器で閲覧されているサムネイル画像の選択を受けて,該サムネイル画像に対応する画像データの画像形成を実行する機能を有する画像形成装置である。この機能は制御手段としてのCPU101が有する。
【0041】また,画像形成装置100において,101は各部を制御する制御手段としてのCPU,102はネットワーク1あるいはケーブルを介した通信を行う通信手段としてのインタフェース(I/F),103は装置の各種操作の入力がなされると共に各種表示を行う操作表示部,104は原稿画像を読み取って画像データを生成するスキャナ,105は画像形成装置100の各種データや設定値を蓄積しておくためのテーブルとしての不揮発性メモリ,106は画像データを含む各種データが格納されるハードディスクドライブ,107は画像形成する際の画像データの展開やプログラムの実行を行うための半導体メモリなどで構成されたメモリ,108は画像を記録紙上に形成して出力するプリントエンジン,109は画像形成装置100の状態や蓄積している画像データをウェブページとして閲覧させるための閲覧サービスを提供するウェブサーバである。
【0042】また,このウェブサーバ109によって,画像形成装置が蓄積する画像データのプリント出力,削除といった画像データの管理をネットワーク1上のコンピュータから行うこともできる。」

(イ)「【0060】登録ユーザ20から適切なパスワードの入力があれば(図3S2でYES),CPU101はウェブサーバ109によって,該当する登録ユーザのディレクトリ(ここでは,表示画像\tanaka\)内に格納されているサムネイル画像(ここでは,JobA.jpg,JobB.jpg,JobC.jpg,…)を登録ユーザ20のコンピュータに対して,図4(c)のように表示する(図3S3)。
【0061】ここで,適切なパスワードとは,この実施の形態例の場合,ユーザ名に基づいて定められたディレクトリ名(tanaka,ijima,samejimaなど)が該当するが,他の定め方をしてもかまわない。
【0062】また,以上のサムネイル画像の表示において,各ユーザの出力用の画像データ(図2(a))とサムネイル画像(図2(b))とを関連づけて管理しているため,サムネイル画像の表示に際して,もとの画像データが属するジョブの情報をヘッダ情報Headなどから取得して,画像の枚数や日付情報などを併せて表示することも可能である。図4(c)の例では,サムネイル画像の下に,ジョブ名,枚数,日付情報を表示した場合を示している。なお,ジョブ名は,サムネイル画像のファイル名と一致しているので,サムネイル画像のファイル名から取得することができる。
【0063】また,図4(c)のように登録ユーザ20のコンピュータに一覧表示されたサムネイル画像のいずれかについて選択がなされると,その選択されたサムネイル画像は図5(a)に示す反転表示状態となり,その選択情報がCPU101に伝達される。
【0064】サムネイル画像にていずれかが選択されたとの選択情報を受けたCPU101は,ウェブサーバ109によって,画像管理メニュー画面(図5(b))をユーザのコンピュータに対して表示する。この図5(b)では,選択されたサムネイル画像が表示されており,その脇に,画像形成出力(片面,両面,部数),画像削除の各選択項目についてチェックボタンが表示されている。
【0065】すなわち,ユーザのコンピュータ上で,この画像管理メニュー画面を介して,選択した画像の画像形成出力(片面,両面,部数)や画像削除の指示を画像形成装置100に与えることが可能になっている。すなわち,この画面において,画像出力条件の設定や変更が可能である。なお,図5(b)の表示画面例では,画像形成出力,片面出力,1部出力をユーザのコンピュータから指示した様子を示している。
【0066】このようにして,登録ユーザ20からプリントの指示がなされた場合(図3S4でYES,図5(b)),CPU101は選択されたサムネイル画像の元になるジョブの出力画像をプリントエンジン108から画像形成して出力する(図3S5)。」

上記摘記事項(ア)及び(イ)から,引用文献2には以下の事項(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「外部機器として機能する登録ユーザ20とネットワーク1に接続されてデータ通信を行える画像形成装置100であって,
画像形成装置100はネットワーク1を介してコンピュータから得た画像データあるいは内蔵するスキャナで読み取った画像データについて画像形成による出力(プリント出力)を行う機能を有し,各部を制御する制御手段としてのCPU101と,画像を記録紙上に形成して出力するプリントエンジン108を備え,
登録ユーザ20から適切なパスワードの入力があれば,該当する登録ユーザのディレクトリ内に格納されているサムネイル画像を登録ユーザ20のコンピュータに対して表示し,
登録ユーザ20のコンピュータに一覧表示されたサムネイル画像のいずれかについて選択がなされると,その選択されたサムネイル画像は反転表示状態となり,サムネイル画像にていずれかが選択されたとの選択情報を受けたCPU101は,画像形成出力(片面,両面,部数)や画像削除の指示を画像形成装置100に与えることが可能な画像管理メニュー画面をユーザのコンピュータに対して表示し,
登録ユーザ20からプリントの指示がなされた場合,CPU101は選択されたサムネイル画像の元になるジョブの出力画像をプリントエンジン108から画像形成して出力する画像形成装置100。」

(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「ファイルサーバー2」は,ドキュメントを画像データとして受信し,記憶する大容量の記憶装置であって,「ファイルサーバー2」という名称を踏まえると,画像データの「ファイル」が格納されていることは自明であるから,本願補正発明の「ファイルを格納可能な外部装置」に相当する。
(イ)引用発明1の「ローカルエリアネットワーク」は,本願補正発明の「ネットワーク」に相当する。
(ウ)引用発明1の「モノクロプリンタ3」は,本願補正発明の「印刷装置」に相当する。
(エ)引用発明1の「モノクロプリンタ3の操作部」は,本願補正発明の「操作部」に相当する。
(オ)引用発明1の「ファイルサーバー2にログインする情報」は,モノクロプリンタ3の操作部に設けられた入力キーからユーザーによって入力されるものであり,モノクロプリンタ3がファイルサーバー2に記憶(登録)されている登録データのうち,全ての登録データのインデックス情報を,読み出して取得し,操作部の表示手段に一覧として表示するためのものであって,全ての登録データのインデックス情報が表示手段に一覧として表示される際に,「ファイルサーバー2にログインする情報」を用いて認証が行われていることは自明である。
したがって,引用発明1の「ファイルサーバー2にログインする情報」と,本願補正発明の「ユーザ情報」とは,ユーザの認証を行うための「情報」である点において共通する。
(カ)引用発明1の「モノクロプリンタ3」は,モノクロプリンタ3の操作部に設けられた入力キーからユーザーによって「ファイルサーバー2にログインする情報」が入力されるものであるから,引用発明1の「モノクロプリンタ3」には,「ファイルサーバー2にログインする情報」を取得する取得手段として機能する手段が備えられていることは自明である。
したがって,引用発明1の「モノクロプリンタ3」と,本願補正発明の「印刷装置」とは,「入力されたユーザ情報を取得する取得手段」を有する点において共通する。
(キ)引用発明1の「モノクロプリンタ3」は,モノクロプリンタ3がファイルサーバー2に記憶(登録)されている登録データのうち,全ての登録データのインデックス情報を,読み出して取得し,操作部の表示手段に一覧として表示するものであって,表示されることは,ユーザーの認証が成功した場合に他ならないから,引用発明1の「モノクロプリンタ3」には,「ユーザの認証を行う」を取得する認証手段として機能する手段が備えられていることは自明である。
したがって,引用発明1の「モノクロプリンタ3」と,本願補正発明の「印刷装置」とは,「ユーザの認証を行う認証手段」を有する点において共通する。
(ク)引用発明1の「モノクロプリンタ3」は,「LANを介して,ファイルサーバー2にアクセスし,ファイルサーバー2に記憶(登録)されている登録データのうち,全ての登録データのインデックス情報を,読み出して取得し,操作部の表示手段に一覧として表示し,ユーザーは,表示された情報を見て,印刷(プリントアウト)しようとする登録データ(インデックス情報)を選択」しており,「操作部の表示手段に一覧として表示」される「全ての登録データのインデックス情報」は,印刷対象とするファイルの選択を受け付ける選択画面であるといえるから,引用発明1の「モノクロプリンタ3」には,「選択画面」を表示する表示制御手段として機能する手段が備えられていることは自明である。
そして,全ての登録データのインデックス情報を,読み出して取得し,操作部の表示手段に一覧として表示するのは,ユーザーの認証が成功した場合であることは,上述のとおりであるから,引用発明1の「モノクロプリンタ3」と,本願補正発明の「印刷装置」とは,「ユーザの認証が成功した場合,外部装置に格納されたファイルから印刷対象とするファイルの選択を受け付ける選択画面を前記操作部に表示させる表示制御手段」を有する点において共通する。
(ケ)引用発明1の「モノクロプリンタ3」は,「(ユーザーが)印刷しようとする登録データを選択した場合,…このモノクロプリンタ3で選択した登録データに基づく画像を…ファイルサーバー2にアクセスし,データの読み出しを行い,…画像データに基づいて画像形成を行う」から,引用発明1の「モノクロプリンタ3」には,「画像形成」を行う印刷制御手段として機能する手段が備えられていることは自明である。
したがって,引用発明1の「モノクロプリンタ3」と,本願補正発明の「印刷装置」とは,「外部装置に格納されたファイルのうち前記選択画面において選択されたファイルを,印刷させる印刷制御手段」を有する点において共通する。

イ 一致点及び相違点
上記アの対比を踏まえると,本願補正発明と引用発明1とは,つぎの一致点において一致し,つぎの各相違点で相違する。
<一致点>
「ファイルを格納可能な外部装置とネットワークを介して接続可能な印刷装置であって,
操作部と,
入力されたユーザ情報を取得する取得手段と,
前記ユーザ情報を用いてユーザの認証を行う認証手段と,
前記ユーザの認証が成功した場合,前記外部装置に格納されたファイルから印刷対象とするファイルの選択を受け付ける選択画面を前記操作部に表示させる表示制御手段と,
前記操作部に対して所定の操作がされたことに応じて,前記外部装置に格納されたファイルのうち前記選択画面において選択されたファイルを,印刷させる印刷制御手段と,
を有する印刷装置。」

<相違点1>
本願補正発明が「コピー機能の設定に係る印刷設定を含む入力を受け付け,前記外部装置に格納されたファイルを閲覧する閲覧ボタンを含む印刷設定画面を前記操作部に表示させる第1表示制御手段」と「前記操作部に対して所定の操作がされたことに応じて,前記印刷設定画面に対して入力された印刷設定に基づいて画像データを印刷させる第1印刷制御手段」を有するものであるのに対して,引用発明1は,コピー機能を備えるものではなく,本願補正発明のような「第1表示制御手段」及び「第1印刷制御手段」を有するものではない点。
<相違点2>
本願補正発明の取得手段は「閲覧ボタンが操作されたことに応じて,ユーザ情報を入力するための認証画面を前記操作部に表示させ,前記認証画面に対して入力されたユーザ情報」を取得するのに対して,引用発明1の取得手段は,「操作部に設けられた入力キー」から取得するものであって,本願補正発明のような「認証画面」から取得するものではない点。
<相違点3>
「ユーザの認証が成功した場合」に「操作部に表示させる選択画面」に関して,本願補正発明においては「外部装置に格納されたファイルのうち,認証された前記ユーザがアクセス可能なファイル」を表示しているのに対して,引用発明1のモノクロプリンタ3は「ファイルサーバー2に記憶(登録)されている登録データのうち,全ての登録データのインデックス情報を,読み出して取得し,操作部の表示手段に一覧として表示」しているものの,当該登録データが,認証されたユーザがアクセス可能なファイルであるかについて不明である点。
<相違点4>
本願補正発明が「選択画面においてファイルの選択を受け付けた後,前記選択画面に含まれる選択完了ボタンが操作されたことに応じて,前記操作部の表示を前記選択画面から前記印刷設定画面に切り替える第3表示制御手段」を有するものであるのに対して,引用発明1は,本願補正発明のような「第3表示制御手段」を有するものではない点。
<相違点5>
選択画面において選択されたファイルの印刷に関して,本願補正発明は「印刷設定画面に対して入力された印刷設定に基づいて」印刷させるものであるのに対して,引用発明1は,本願補正発明のような「印刷設定」に基づいて印刷させるものであるか不明な点。

(4)相違点についての検討
ア 相違点1について
コピー機能を有する印刷装置は周知の装置にすぎず,このようなコピー機能を有する印刷装置の印刷設定画面においては,コピー機能に係る印刷設定が含まれることは当然のことであるから,コピー機能を有する印刷装置に,コピー機能の設定に係る印刷設定を含む入力を受け付ける印刷設定画面を前記操作部に表示し,入力された印刷設定に基づいて画像データを印刷することは,例をあげるまでもなく周知技術(以下,これらをまとめて「周知技術1」という。)である。
さらに,操作部に外部装置に格納されたファイルを閲覧する「閲覧ボタン」を表示することも周知技術(以下,「周知技術2」という。)であって,該「閲覧ボタン」を,どの状態を表示する画面において表示するかは,当業者が適宜選択する程度の技術的事項に過ぎない。
そして,本願補正発明において,相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を備えることによる格別な作用効果について何ら認めることができず,引用発明1に周知技術1及び2を用いて,相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得るものである。
なお,周知技術2として,必要であれば以下の文献を参照されたい。
周知技術文献1:特開2003-167705号公報,特に段落【0089】,【図24】
周知技術文献2:特開2003-94774号公報,特に段落【0068】,【図2】
周知技術文献3:特開2004-234339号公報,特に段落【0047】,【図8】

イ 相違点2について
認証のためのユーザ情報を入力するための認証画面を表示して,当該画面を用いてユーザ情報を入力することは例をあげるまでもない周知技術(以下,「周知技術3」という。)であり,引用発明1のように操作部に設けられた入力キーから認証のためのユーザ入力を行うことに代えて,本願補正発明のように認証画面から入力するようにすることは,当業者が適宜選択する程度の設計的事項に過ぎない。
さらに,「認証画面」を,どのユーザ操作を契機として表示するかについても,当業者が適宜定める程度の設計的事項に過ぎない。
したがって,相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は,当業者にとって設計的事項程度のことすぎないというべきである。
してみると,引用発明1及び周知技術3から,相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得るものである。

ウ 相違点3について
引用発明1において「ユーザーが,ファイルサーバー2にログインする情報を入力キーから入力すると,モノクロプリンタ3は,LANを介して,ファイルサーバー2にアクセスし,ファイルサーバー2に記憶(登録)されている登録データのうち,全ての登録データのインデックス情報を,読み出して取得し,操作部の表示手段に一覧として表示」しており,「全ての登録データ」が一覧として表示された場合における,「ファイルサーバー2にログインする情報を入力キーから入力」した「ユーザー」は,「認証されたユーザー」のことであり,当該「全ての登録データ」は,「ユーザーがアクセス可能なファイル」であるといえるから,引用発明1は,相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項である「(認証された)ユーザがアクセス可能なファイル」を備えているといえ,相違点3は,実質的に相違点ではない。
しかしながら,本願補正発明における「ユーザがアクセス可能なファイル」という文言が,「認証に成功したユーザーのみがアクセス可能なファイル」との解釈も成り立つので,この解釈を前提として相違点3について検討する。
ネットワークを介してファイルを格納可能な外部装置と接続状態にある印刷装置において,ユーザ情報を用いてユーザ認証を行い,そのユーザ認証が成功した場合において,外部装置に格納されたファイルのうち,当該ユーザのみがアクセス可能なファイルを表示することは周知技術(以下,「周知技術3」という。)である。
そして,本願補正発明において,相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項を備えることによる格別な作用効果について何ら認めることができず,引用発明1に周知技術3を用いて,相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得るものである。
なお,周知技術3として,必要であれば以下の文献を参照されたい。
周知技術文献4:特開2002-240398号公報,特に段落【0027】-【0028】,【図4】
周知技術文献5:特開2002-183091号公報,特に段落【0060】-【0061】,【図13】
周知技術文献6:特開2006-27275号公報,特に段落【0113】-【0114】,【図20】

エ 相違点4について
外部機器とネットワークに接続されてデータ通信を行える画像形成装置である引用発明2は,「一覧表示されたサムネイル画像のいずれかについて選択がなされると,その選択されたサムネイル画像は反転表示状態となり,サムネイル画像にていずれかが選択されたとの選択情報を受けたCPU101は,画像形成出力(片面,両面,部数)や画像削除の指示を画像形成装置100に与えることが可能な画像管理メニュー画面をユーザのコンピュータに対して表示」する点を備えているものである。
ここで,引用発明2の「一覧表示されたサムネイル画像」は本願補正発明の「選択画面」に相当し,以下同様に「画像管理メニュー画面」は「印刷設定画面」に相当する。
また,引用発明2の「サムネイル画像のいずれかについて選択がなされると,その選択されたサムネイル画像は反転表示状態」となることは,反転表示状態となった後に,「画像形成出力(片面,両面,部数)や画像削除の指示を画像形成装置100に与えることが可能な画像管理メニュー画面」が表示されるから,選択が完了した状態であるといえる。
さらに,選択画面においてファイルの選択を受け付けた後,選択が完了したことに応じて,前記選択画面から前記印刷設定画面に切り替えているといえるから,引用発明2の「画像形成装置100」には,「一覧表示されたサムネイル画像」から「画像管理メニュー画面」に切り替える表示制御手段として機能する手段が備えられていることは自明である。
したがって,引用発明2の「画像形成装置100」と,本願補正発明の「印刷装置」とは,「選択画面においてファイルの選択を受け付けた後,選択が完了したことに応じて,前記操作部の表示を前記選択画面から前記印刷設定画面に切り替える表示制御手段」を有する点において共通する。
したがって,相違点4に係る本願補正発明の発明特定事項は引用発明2に記載されているといえる。
そして,引用発明1も引用発明2も,外部装置とネットワークを介して接続可能な印刷装置である点で共通する技術分野に属し,印刷装置において,設定事項の入力の容易化は当業者にとって自明な課題にすぎず,引用発明1に引用発明2を適用することは当業者にとって容易になし得たものであり,その結果,格別な作用効果が生じたとも認められない。
してみると,引用発明1及び2から,相違点4に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得るものである。

オ 相違点5について
印刷設定をするための印刷設定画面を有する印刷装置は周知の装置にすぎず,このような印刷設定画面を有する印刷装置においては,印刷設定画面に対して入力された印刷設定に基づいて印刷することは当然のことであるから,選択画面において選択されたファイルの印刷に関して,印刷設定画面に対して入力された印刷設定に基づいて印刷することは,例をあげるまでもなく周知技術(以下,「周知技術4」という。)である。
そして,本願補正発明において,相違点5に係る本願補正発明の発明特定事項を備えることによる格別な作用効果について何ら認めることができず,引用発明1に周知技術4を用いて,相違点5に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得るものである。

また,本願補正発明の発明特定事項全体によって奏される作用効果も,引用発明1及び周知技術1ないし3から,当業者が予測しうる程度のものである。
したがって,本願補正発明は,引用発明1及び周知技術1ないし3から当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)独立特許要件の検討に関する小括
以上検討したように,本願補正発明は,引用発明1及び周知技術1ないし4から当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,本願補正発明は,特許出願の際,独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。

3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり,本件補正は,上記「1(2)」において検討したように,本件補正事項の目的が特許法第17条の2第5項各号に規定するいずれにも該当しないことから,同項の規定に違反してされたものであり,また,仮に本件補正事項の目的が同項第2号に該当するとしても,本願補正発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから,本件補正は,同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は,上記第2のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし10に係る発明は,平成30年8月10日にされた手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであって,そのうち請求項1に係る発明は,上記第2の1(1)アにおいて説示したとおりのものである。(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2 原査定の拒絶の理由の概要
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は,概略次の理由を含んでいる。
本願発明は,その優先権主張の日より前に日本国内において,頒布された刊行物に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をしたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
前記査定理由で引用された引用例は,次のとおりである。
引用文献1:特開平11-205355号公報
引用文献2:特開2003-208598号公報

3 引用例及びその記載事項
原査定で引用された引用文献1及び2に記載の事項及び引用発明1及び2は,それぞれ,上記「第2 2(2)」において説示し,認定したとおりである。

4 本願発明と引用発明との対比・判断
(1)一致点及び相違点
上記「第2 2 (3) ア」の対比を踏まえると,本願発明と引用発明1とは,つぎの一致点において一致し,つぎの各相違点で相違する。
<一致点>
「ファイルを格納可能な外部装置とネットワークを介して接続可能な印刷装置であって,
操作部と,
前記操作部に対して入力されたユーザ情報を取得する取得手段と,
前記ユーザ情報を用いてユーザの認証を行う認証手段と,
前記外部装置に格納されたファイルのうち,認証された前記ユーザがアクセス可能なファイルから印刷対象とするファイルの選択を受け付ける選択画面を前記操作部に表示させる表示制御手段と,
前記外部装置に格納されたファイルのうち前記選択画面において選択されたファイルを,印刷させる印刷制御手段と,
を有する印刷装置。」

<相違点6>
本願発明が「印刷設定の入力を受け付ける印刷設定画面を前記操作部に表示させる第1表示制御手段」と「前記操作部に対して所定の操作がされたことに応じて,前記印刷設定画面に対して入力された印刷設定に基づいて画像データを印刷させる第1印刷制御手段」を有するものであるのに対して,引用発明1は,本願発明のような「第1表示制御手段」及び「第1印刷制御手段」を有するものではない点。
<相違点7>
本願発明が「選択画面においてファイルの選択を受け付けた後,前記選択画面に含まれる選択完了ボタンが操作されたことに応じて,前記操作部の表示を前記選択画面から前記印刷設定画面に切り替える第3表示制御手段」を有するものであるのに対して,引用発明1は,本願発明のような「第3表示制御手段」を有するものではない点。
<相違点8>
選択画面において選択されたファイルの印刷に関して,本願発明は「印刷設定画面に対して入力された印刷設定に基づいて」印刷させるものであるのに対して,引用発明1は,本願発明のような「印刷設定」に基づいて印刷させるものであるか不明な点。

(2)相違点についての検討
ア 相違点6について
相違点6は,上記相違点1から「コピー機能」に係る発明特定事項を除いたものである。
そして,上記相違点1で検討したように,印刷装置が印刷設定画面を操作部に表示し,入力された印刷設定に基づいて画像データを印刷することは,例をあげるまでもなく周知技術1である。
したがって,本願発明において,相違点6に係る本願発明の発明特定事項を備えることによる格別な作用効果について何ら認めることができず,引用発明1に周知技術1を用いて,相違点6に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得るものである。

イ 相違点7について
相違点7は,上記相違点4である。
そして,上記相違点4で検討したように,相違点7に係る本願発明の発明特定事項は引用発明2に記載されているといえ,引用発明1も引用発明2も,外部装置とネットワークを介して接続可能な印刷装置である点で共通する技術分野に属し,印刷装置において,設定事項の入力の容易化は当業者にとって自明な課題にすぎず,引用発明1に引用発明2を適用することは当業者にとって容易になし得たものであり,その結果,格別な作用効果が生じたとも認められない。
したがって,引用発明1及び2から,相違点7に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得るものである。

ウ 相違点8について
相違点8は,上記相違点5である。
そして,上記相違点5で検討したように,印刷設定をするための印刷設定画面を有する印刷装置は周知の装置にすぎず,このような印刷設定画面を有する印刷装置においては,印刷設定画面に対して入力された印刷設定に基づいて印刷することは当然のことであるから,選択画面において選択されたファイルの印刷に関して,印刷設定画面に対して入力された印刷設定に基づいて印刷することは,例をあげるまでもなく周知技術4である。
したがって,本願発明において,相違点8に係る本願発明の発明特定事項を備えることによる格別な作用効果について何ら認めることができず,引用発明1に周知技術4を用いて,相違点8に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得るものである。

以上のことからすれば,本願発明は,引用発明1,2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
上記で検討したとおり,本願発明は,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明(引用発明1),引用文献2に記載された発明(引用発明2)及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,上記結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-04-01 
結審通知日 2020-04-07 
審決日 2020-04-24 
出願番号 特願2017-117203(P2017-117203)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 572- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小宮山 文男  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 吉村 尚
清水 康司
発明の名称 印刷装置、印刷方法、及び印刷用プログラム  
代理人 酒井 宏明  

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