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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1363646
審判番号 不服2018-15574  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-26 
確定日 2020-06-24 
事件の表示 特願2013-112637「固体電解コンデンサのためのノッチ付きリード」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日出願公開、特開2013-251543〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年5月29日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2012年5月30日、米国(US)、2012年5月30日、米国(US))の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年 3月29日付け:拒絶理由通知
同 年 8月31日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 2月26日付け:拒絶理由通知
同 年 6月 7日 :意見書の提出
同 年 7月23日付け:拒絶査定
同 年11月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成31年 1月 9日 :手続補正書(方式)の提出
令和 1年10月31日 :上申書の提出

第2 平成30年11月26日になされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成30年11月26日にされた手続補正を却下する。

[理由]

1.平成30年11月26日にされた手続補正の内容について

平成30年11月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1については、

「【請求項1】
コンデンサ素子を備える固体電解コンデンサであって、前記コンデンサ素子は、
或る幅及び高さを有する焼結多孔質アノード体と、
アノードリードと、
を備え、
前記アノードリードは、前記アノード体内に位置決めされる第1の部分と、前記アノード体の表面から長手方向に延びる第2の部分とを有し、前記第2の部分は、ノッチが配置される、ノッチのある領域を有し、前記アノードリードは、前記ノッチを除いて均一な厚さを有しており、直立部分と平面部分とを有するアノード端子は、前記アノードリードに電気的に接続されており、前記アノードリードは、前記ノッチにおいて前記アノード端子の前記直立部分に溶接され、
前記コンデンサ素子は、更に、
前記焼結多孔質アノード体の上に重なる誘電体層と、
前記誘電体層の上に重なり、固体電解質を含むカソードと、
を備える、固体電解コンデンサ。」

とあったものが、

「【請求項1】
コンデンサ素子を備える固体電解コンデンサであって、前記コンデンサ素子は、
或る幅及び高さを有する焼結多孔質アノード体と、
アノードリードと、
を備え、
前記アノードリードは、前記アノード体内に位置決めされる第1の部分と、前記アノード体の表面から長手方向に延びる第2の部分とを有し、前記第2の部分は、ノッチが配置される、ノッチのある領域を有し、前記アノードリードは、前記ノッチを除いて前記アノード体の高さ及び/又は幅の20%から90%の均一な厚さを有しており、直立部分と平面部分とを有するアノード端子は、前記アノードリードに電気的に接続されており、前記アノードリードは、前記ノッチにおいて前記アノード端子の前記直立部分に溶接され、
前記コンデンサ素子は、更に、
前記焼結多孔質アノード体の上に重なる誘電体層と、
前記誘電体層の上に重なり、固体電解質を含むカソードと、
を備える、固体電解コンデンサ。」

と補正された。ただし、下線は補正された箇所を示す。

上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項のうち、アノードリードの厚さについて、アノード体の高さ及び/又は幅の20%から90%である旨限定するものである。

2.本願明細書(翻訳文)に記載された事項

本願において、願書に添付された外国語書面の翻訳文には、アノードリードの厚さとアノード体の高さ及び/又は幅との関係について、以下の記載がある。ただし、下線は当審で付与したものである。

(1)「【0010】
例えば、アノードリード線の形態の場合、アノードリード線の厚さは、多孔質アノード体の高さの約10%から約95%とすることができる。他の実施形態では、アノードリード線の厚さは、多孔質アノード体の高さの約20%から約90%とすることができ、更に他の実施形態では、アノードリード線の厚さは、多孔質アノード体の高さの約30%から約85%とすることができる。更に、アノードリード線の厚さは、多孔質アノード体の幅の約5%から約65%とすることができる。他の実施形態では、リード線の厚さは、多孔質アノード体の幅の約10%から60%とすることができ、更に他の実施形態では、アノードリード線の厚さは、多孔質アノード体の幅の約15%から約55%とすることができる。
【0011】
一方で、アノードリードテープの形態の場合、アノードリードテープの厚さ(例えば、高さ)は、多孔質アノード体の高さの約5%から約70%とすることができる。他の実施形態では、アノードリードテープの厚さは、多孔質アノード体の高さの約10%から約65%とすることができ、更に他の実施形態では、アノードリードテープの厚さは、多孔質アノード体の高さの約15%から約60%とすることができる。更に、アノードリードテープの幅は、多孔質アノード体の幅の約20%から約75%とすることができる。他の実施形態では、アノードリードテープの幅は、多孔質アノード体の幅の約25%から約70%とすることができ、更に他の実施形態では、アノードリードテープの幅は、多孔質アノード体の幅の約30%から約65%とすることができる。」

(2)「【0013】
ここで図1を参照すると、多孔質アノード体33及びアノードリード線34から形成されたコンデンサ素子100の1つの特定の実施形態が示されている。一般的に、図1は、アノードリード線34の周りに形成された多孔質アノード体33の斜視図であり、多孔質アノード体33及びアノードリード線34の実施形態を示す。コンデンサ素子1100の別の実施形態は図11に示され、ここでも同様にコンデンサ素子1100は多孔質アノード体から形成されるが、図1のアノードリード線34の代わりにアノードリードテープ84を含む。一般的に、図11は、アノードリードテープ84の周りに形成された多孔質アノード体33の斜視図であり、多孔質アノード体33及びアノードリード線84の寸法を示す。図1及び図11の両方では、多孔質アノード体33は、第1の側面31、第2の側面32、前面36、後面37、上面38、及び下面39を有することができる。また、多孔質アノード体33は、例えば、前面36の幅に言及することができる幅Wと、例えば、前面36の高さ又は厚さに言及することができる高さHとを有することができる。多孔質アノード体33の前面36の幅Wは、約400マイクロメートルから約6000マイクロメートル、一部の実施形態では、約800マイクロメートルから4500マイクロメートル、及び一部の実施形態では、約1200マイクロメートルから約3000マイクロメートルの範囲とすることができる。更に、多孔質アノード体33の前面36の高さHは、約200マイクロメートルから約4000マイクロメートル、一部の実施形態では、約400マイクロメートルから約3000マイクロメートル、及び一部の実施形態では、約600マイクロメートルから約2000マイクロメートルの範囲とすることができる。」

(3)「【0018】
前述のように、アノードリード線34は、第1の部分M及び第2の部分Lに沿って厚さDを有する。厚さDは、厚さD’を有するノッチ領域Nを除いてアノードリード線全体にわたって均一である。厚さDは、多孔質アノード体33の前面36の高さHの少なくとも約10%とすることができる。例えば、厚さDは、一般的に、多孔質アノード体33の前面36の高さHの約10%から約95%とすることができる。更に、厚さDは、多孔質アノード体33の前面36の幅Wの約5%から約65%とすることができる。例えば、厚さDは、約20マイクロメートルから約3800マイクロメートル、一部の実施形態では、約40マイクロメートルから約2850マイクロメートル、及び一部の実施形態では、約60マイクロメートルから約1900マイクロメートルの範囲とすることができる。更に他の実施形態では、厚さDは、多孔質アノード体33の前面36の高さHの約30%から約85%といった、多孔質アノード体33の前面36の高さHの約20%から約90%とすることができる。また、更に他の実施形態では、厚さDは、多孔質アノード体33の前面36の幅Wの約15%から約55%といった、多孔質アノード体の前面36の幅Wの約10%から約60%とすることができる。」

(4)「【0023】
前述のように、アノードリードテープ84は、第1の部分M及び第2の部分Lに沿って幅W’を有する。幅W’は、幅Eを有するノッチ領域N以外はアノードリードテープ全体にわたって均一である。幅W’は、一般的に、多孔質アノード体33の前面36の幅Wの約20%から約75%とすることができる。例えば、アノードリードテープ84の幅W’は、約80マイクロメートルから約4500マイクロメートル、一部の実施形態では、約160マイクロメートルから約3500マイクロメートル、及び一部の実施形態では、約240マイクロメートルから約2500マイクロメートルの範囲とすることができる。更に他の実施形態では、アノードリードテープ84の幅W’は、多孔質アノード体33の前面36の幅Wの約30%から約65%といった、多孔質アノード体33の前面36の幅Wの約25%から約75%とすることができる。」

(5)「【0025】
更に、図11に示しかつ説明したように、一部の実施形態では、アノードリードテープ84のノッチ領域Nの幅Eは、ノッチ領域Nに沿ってアノードリードテープ84から材料を除去して少なくとも1つのノッチ50を形成することにより、アノードリードテープ84の幅W’よりも小さくなる。アノードリードテープ84の幅Eは、アノードリードテープ84の幅W’の約20%から90%とすることができる。例えば、ノッチ領域Nにおける幅Eは、約16マイクロメートルから約4050マイクロメートル、一部の実施形態では、約32マイクロメートルから約3375マイクロメートル、及び一部の実施形態では、約48マイクロメートルから約2700マイクロメートルの範囲とすることができる。他の実施形態では、ノッチ領域Nの幅Eは、幅W’の約40%から約70%といった、幅W’の約30%から約80%とすることができる。」

3.当審の判断

上記(1)及び(3)によれば、アノードリードの厚さは、多孔質アノード体の「高さ」の約20%から約90%とすることができる旨の記載が認められる。そして、アノードリードの厚さが、多孔質アノード体の「幅」の約20%から約75%とすることができる旨の記載も認められる。このように、多孔質アノード体の「高さ」と「幅」に関して別々に記載されており、上記(2)にも「幅W」と「高さH」が明確に定義されている。ここで、上記(3)及び(4)によれば、アノードリードの厚さは、ノッチ領域を除いてアノードリード全体にわたって均一である。
してみれば、本願明細書等には、請求項1の「前記アノードリードは、前記ノッチを除いて前記アノード体の高さ」「の20%から90%の均一な厚さを有して」いる点は記載されているものの、「前記アノード体の」「幅の20%から90%の均一な厚さを有して」いる点は記載されていない。
なお、上記(5)によれば、幅に関して「約20%から90%」とする旨の記載が認められるが、アノードリードの幅と該アノードリードのノッチ領域の幅との比であるから、請求項1に係る構成(アノード体の幅の20%から90%)とは関係はない。
したがって、本件補正は、翻訳文の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであって、翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

4.むすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1.本願発明

平成30年11月26日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし18に係る発明は、平成29年8月31日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
コンデンサ素子を備える固体電解コンデンサであって、前記コンデンサ素子は、
或る幅及び高さを有する焼結多孔質アノード体と、
アノードリードと、
を備え、
前記アノードリードは、前記アノード体内に位置決めされる第1の部分と、前記アノード体の表面から長手方向に延びる第2の部分とを有し、前記第2の部分は、ノッチが配置される、ノッチのある領域を有し、前記アノードリードは、前記ノッチを除いて均一な厚さを有しており、直立部分と平面部分とを有するアノード端子は、前記アノードリードに電気的に接続されており、前記アノードリードは、前記ノッチにおいて前記アノード端子の前記直立部分に溶接され、
前記コンデンサ素子は、更に、
前記焼結多孔質アノード体の上に重なる誘電体層と、
前記誘電体層の上に重なり、固体電解質を含むカソードと、
を備える、固体電解コンデンサ。」

2.原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
この出願の請求項1ないし8、11ないし18に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献5に記載された発明及び下記の引用文献3、4、6に記載された周知の技術事項に基づいて、また、請求項9ないし10に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献5に記載された発明、下記の引用文献2に記載された技術事項、及び引用文献3、4、6に記載された周知の技術事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献2.特開2003-163137号公報
引用文献3.特開平9-108874号公報
引用文献4.実願昭58-44061号(実開昭59-149625号)のマイクロフィルム
引用文献5.特開2011-243952号公報
引用文献6.特開2008-294187号公報

3.引用文献5の記載について

原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献5には、「固体電解コンデンサ」について次の事項が記載されている。ただし、下線は当審で付与したものである。

(1)「【0055】
[第1実施形態]
図1?図12を用いて本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態にかかる固体電解コンデンサを示す断面図である。図2は、図1のII方向矢視図である。図3(a)は、図1の領域α1の部分拡大図であり、同図(b)は、図1の領域β1の部分拡大図である。なお、図3は、理解の便宜上、模式的に示している。
【0056】
これらの図に示す固体電解コンデンサA1は、コンデンサ素子1と、導電性接着層2と、樹脂パッケージ3と、枕電極4と、陽極実装端子51と、陰極実装端子52とを備える。固体電解コンデンサA1は、たとえば回路基板S1aに面実装された状態で用いられる。固体電解コンデンサA1は、図1の上下方向の寸法がたとえば0.8mmであり、図1の左右方向の寸法がたとえば1.6mmであり、図1の紙面奥行き方向の寸法がたとえば0.85mmである。
【0057】
コンデンサ素子1は、多孔質焼結体11と、陽極ワイヤ12と、誘電体層13(図3参照)と、絶縁膜14と、固体電解質層15と、導電層16とを含む。多孔質焼結体11は、直方体形状であり、タンタルもしくはニオブなどの弁作用金属よりなる。図3(a),(b)に示すように、多孔質焼結体11には多数の細孔18が形成されている。多孔質焼結体11は、方向xを向く面11aと、方向xの反対側を向く面11cと、面11aおよび面11cとつながる4つの面11b(図1にて2つのみ示す)とを有する。面11a,11b,11cはそれぞれ、矩形状である。陽極ワイヤ12は、タンタルもしくはニオブなどの弁作用金属よりなる。陽極ワイヤ12は、多孔質焼結体11の面11aから、方向xに向かって突出している。陽極ワイヤ12の直径は、たとえば0.15mmである。」

(2)「【0058】
図3(a),(b)に示すように、誘電体層13は、多孔質焼結体11に積層されている。誘電体層13は、多孔質焼結体11を構成する弁作用金属の酸化物よりなる。このような弁作用金属の酸化物としては、五酸化タンタルや五酸化ニオブなどが挙げられる。」

(3)「【0062】
図3(b)に示すように、固体電解質層15は、誘電体層13に積層されている。固体電解質層15の一部は、細孔18に形成されている。図1に示すように、固体電解質層15の一部は、多孔質焼結体11の面11a,11b,11cに形成されている。固体電解質層15は、面11aにおいて、陽極ワイヤ12寄りの部位には形成されておらず、面11aの端縁の近傍にのみ形成されている。固体電解質層15は、第1膜状部141と密着している。図2に示すように、面11a上にて固体電解質層15は、第1膜状部141を囲む形状となっている。
・・・(中略)・・・
【0064】
導電層16は、固体電解質層15を覆っている。導電層16は、固体電解質層15と導通している。導電層16は、たとえばグラファイト層と銀層とからなる積層構造を有する。」

(4)「【0066】
枕電極4は、コンデンサ素子1に後述の陽極実装端子51および陰極実装端子52を取り付ける際に、陽極ワイヤ12を支持するためのものである。枕電極4は、方向xと交差する方向に延びており、本実施形態では、図1の上下方向に延びている。枕電極4は、陽極ワイヤ12のうち第2膜状部142から離間した部位に接合され、且つ、陽極ワイヤ12と導通している。枕電極4は、たとえば、銅メッキが施された、42アロイなどのNi-Fe合金よりなる。」

(5)「【0071】
陰極実装端子52は、導電性接着層2および導電層16を介して固体電解質層15と導通している。陰極実装端子52の一部は、樹脂パッケージ3から露出している。陰極実装端子52において樹脂パッケージ3から露出している面は、固体電解コンデンサA1を回路基板S1aに実装するための実装面523となっている。実装面523がハンダ89によって回路基板S1aに対し接着されることにより、固体電解コンデンサA1は回路基板S1aに対し実装される。実装面523の面積と実装面513の面積とが同一であるならば、セルフアライメントに効果的である。陰極実装端子52の方向xの反対側の部分には、陽極実装端子51と同様に、フィレット部52aが形成されている。陰極実装端子52にて実装面523と反対側に位置する面は、等価直列抵抗(ESR)を向上させる観点から、大きい方が好ましい。」

(6)「【0089】
次に、導電性接着層2を介して、導電層16と陰極実装端子52を接合する。また、たとえば溶接をすることにより、陽極ワイヤ12に枕電極4および陽極実装端子51を接合する。そして、コンデンサ素子1を覆うように樹脂パッケージ3をモールド成形する。以上の工程を経ることにより、図1に示す固体電解コンデンサA1を製造することができる。」

(7)「【0133】
[第4実施形態]
図27?図29を用いて本発明の第4実施形態について説明する。図27は、本実施形態にかかる固体電解コンデンサを示す断面図である。図28は、図27のXXVIII方向矢視図である。図29は、図27に示した固体電解コンデンサの底面図である。
【0134】
これらの図に示す固体電解コンデンサA4は、枕電極4を備えておらず、且つ、陽極実装端子51と陰極実装端子52との断面がL字状である点において、固体電解コンデンサA1と主に相違する。」

・上記(1)によれば、コンデンサ素子1と、導電性接着層2と、樹脂パッケージ3と、枕電極4と、陽極実装端子51と、陰極実装端子52とを備えた固体電解コンデンサA1であって、コンデンサ素子1は、弁作用金属よりなる直方体形状の多孔質焼結体11と、陽極ワイヤ12と、誘電体層13と、絶縁膜14と、固体電解質層15と、導電層16とを含むものが記載されている。

・上記(5)及び(6)によれば、陰極実装端子52は、導電性接着層2を介して導電層16と接合され、導電性接着層2および導電層16を介して固体電解質層15と導通している。

・上記(2)によれば、誘電体層13は、多孔質焼結体11に積層されている。

・上記(3)によれば、固体電解質層15は、誘電体層13に積層され、導電層16は、固体電解質層15を覆って、固体電解質層15と導通している。

・上記(7)によれば、枕電極4の代わりに陽極実装端子51を断面L字状とし、また、陰極実装端子52についても断面L字状とした固体電解コンデンサが記載されている。そして、「固体電解コンデンサA1と主に相違する」と記載されているところ、固体電解コンデンサA1と固体電解コンデンサA4との間において、枕電極と陽極実装端子及び陰極実装端子の相違以外はないものと解される。また、図27によれば、L字状の陽極実装端子51は直立部分と平面部分とを有するものである。

・図27によれば、陽極ワイヤ12は、多孔質焼結体11内に位置決めされている第1の部分と、多孔質焼結体11の表面から延びる第2の部分とを有するものである。また、多孔質焼結体11の長手方向は図27における左右方向と認められ、陽極ワイヤ12は長手方向に延びているものである。

・上記(4)及び(6)及び図1によれば、固体電解コンデンサA1において、枕電極4は、溶接をすることにより陽極ワイヤ12の第2の部分に接合され、且つ、陽極ワイヤ12と導通するものである。
そして、固体電解コンデンサA4(図27)の陽極実装端子51の直立部分が固体電解コンデンサA1(図1)の枕電極4に対応するから、固体電解コンデンサA4(図27)においても、陽極実装端子51の直立部分が溶接をすることにより陽極ワイヤ12の第2の部分に接合され、陽極ワイヤ12と導通することが記載されているといえる。

上記摘示事項および図面を総合勘案すると、引用文献5の第4実施形態である固体電解コンデンサA4について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「コンデンサ素子1と、導電性接着層2と、樹脂パッケージ3と、陽極実装端子51と、陰極実装端子52とを備えた固体電解コンデンサA4であって、コンデンサ素子1は、弁作用金属よりなる直方体形状の多孔質焼結体11と、陽極ワイヤ12と、誘電体層13と、絶縁膜14と、固体電解質層15と、導電層16とを含み、
陽極実装端子51は、直立部分と平面部分とを有するL字状であり、
陽極ワイヤ12は、多孔質焼結体11内に位置決めされている第1の部分と、多孔質焼結体11の表面から長手方向に延びる第2の部分とを有し、陽極実装端子51の直立部分が、溶接をすることにより陽極ワイヤ12の第2の部分に接合され、陽極ワイヤ12と導通し、
陰極実装端子52は、導電性接着層2を介して導電層16と接合され、導電性接着層2および導電層16を介して固体電解質層15と導通し、
誘電体層13は、多孔質焼結体11に積層され、
固体電解質層15は、誘電体層13に積層され、導電層16は、固体電解質層15を覆って、固体電解質層15と導通している、
固体電解コンデンサA4。」

4.対比

そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「コンデンサ素子1と、導電性接着層2と、樹脂パッケージ3と、陽極実装端子51と、陰極実装端子52とを備えた固体電解コンデンサA4」は、本願発明の「コンデンサ素子を備える固体電解コンデンサ」に相当する。

(2)引用発明の「多孔質焼結体11」は、弁作用金属よりなるものであるから「アノード体」と認められる。また、引用発明の「多孔質焼結体11」は、直方体形状であることから、本願発明の「焼結多孔質アノード体」と同様に「或る幅及び高さ」を有している。
したがって、引用発明の「コンデンサ素子1は、弁作用金属よりなる直方体形状の多孔質焼結体11」を含むことは、本願発明の「前記コンデンサ素子は、或る幅及び高さを有する焼結多孔質アノード体」を備えることに相当する。

(3)引用発明における「陽極ワイヤ12」は、「アノード」に用いられ、しかも、陽極実装端子51に導通しているから「リード」と認められる。
したがって、引用発明における「陽極ワイヤ12」は、本願発明の「アノードリード」に相当する。

(4)引用発明の「陽極ワイヤ12は、多孔質焼結体11内に位置決めされている第1の部分と、多孔質焼結体11の表面から長手方向に延びる第2の部分とを有」することは、本願発明の「前記アノードリードは、前記アノード体内に位置決めされる第1の部分と、前記アノード体の表面から長手方向に延びる第2の部分とを有」することに相当する。

(5)引用発明の「陽極実装端子51」は本願発明の「アノード端子」に相当し、引用発明の「陽極実装端子51は、直立部分と平面部分とを有するL字状」であることは、本願発明の「直立部分と平面部分とを有するアノード端子」に相当する。

(6)ワイヤは通常均一な厚さを有するものであるから、特に断りのない引用発明の陽極ワイヤ12も均一な厚さを有していると認められる。よって、引用発明の「陽極ワイヤ12」は、本願発明の「アノードリードは、均一な厚さを有して」いることに相当する。

(7)引用発明の「陽極実装端子51の直立部分が、溶接をすることにより陽極ワイヤ12の第2の部分に接合され、陽極ワイヤ12と導通」することは、本願発明の「直立部分と平面部分とを有するアノード端子は、前記アノードリードに電気的に接続されており、前記アノードリードは、前記アノード端子の前記直立部分に溶接され」ることに相当する。

(8)アノードリードについて、本願発明では、「前記第2の部分は、ノッチが配置される、ノッチのある領域を有し」、「前記ノッチを除いて」均一な厚さを有しており、アノード端子との溶接が「ノッチにおいて」行われるのに対して、引用発明ではその旨特定されていない。

(9)引用発明の「誘電体層13は、多孔質焼結体11に積層され」ていることは、本願発明の「前記焼結多孔質アノード体の上に重なる誘電体層」に相当する。

(10)引用発明の「固体電解質層15は、誘電体層13に積層され、導電層16は、固体電解質層15を覆って、固体電解質層15と導通している」こと、「陰極実装端子52は、導電性接着層2を介して導電層16と接合され、導電性接着層2および導電層16を介して固体電解質層15と導通し」ていることは、誘電体層13に「固体電解質層15」と「導電層16」が積層され、陰極実装端子52に導通しているから、本願発明の「前記誘電体層の上に重なり、固体電解質を含むカソード」の構成を備えている。

そうすると、本願発明と引用発明とは
「コンデンサ素子を備える固体電解コンデンサであって、前記コンデンサ素子は、
或る幅及び高さを有する焼結多孔質アノード体と、
アノードリードと、
を備え、
前記アノードリードは、前記アノード体内に位置決めされる第1の部分と、前記アノード体の表面から長手方向に延びる第2の部分とを有し、前記アノードリードは、均一な厚さを有しており、直立部分と平面部分とを有するアノード端子は、前記アノードリードに電気的に接続されており、前記アノードリードは、前記アノード端子の前記直立部分に溶接され、
前記コンデンサ素子は、更に、
前記焼結多孔質アノード体の上に重なる誘電体層と、
前記誘電体層の上に重なり、固体電解質を含むカソードと、
を備える、固体電解コンデンサ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
アノードリードについて、本願発明では、「前記第2の部分は、ノッチが配置される、ノッチのある領域を有し」、「前記ノッチを除いて」均一な厚さを有しており、アノード端子との溶接が「ノッチにおいて」行われるのに対して、引用発明ではその旨特定されていない点。

5.当審の判断

固体電解コンデンサのアノードリードにノッチを形成し、アノード端子との溶接をノッチにおいて行うようにすることは、たとえば、原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献4(第7ページ第10行?第12行及び第4図を参照。陽極リード2には板状の第1の外部リード部材6が、ノッチ部4が第1の外部リード部材6に接触するように溶接される点。)、同じく引用文献6(段落【0007】及び【0008】並びに図1を参照。陽極リードの陽極リードフレームとの抵抗溶接部の接合面に1以上の凹溝(「ノッチ」に相当)を形成する点。)、また他にも、特開2009-218502号公報(段落【0011】【0015】を参照。陽極リードフレーム1と溶接等により接続する陽極引出部31a,31bは、陽極リードフレーム1と接続する部分が水平面となるように面取り(「ノッチ」に相当)する態様が、接触面積を大きくし、ESRを低減できる点。)に記載されているように周知の技術事項である。
よって、引用発明の陽極ワイヤ12(本願発明のアノードリードに相当)に、当該周知の技術事項を採用して上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、溶接部分においてノッチが設けられれば、加熱対象が少なくなって溶接し易くなることは、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3の段落【0004】に、溶接部材のレーザー光照射部位に予め凹部を形成することにより、凹部によりレーザー光の照射部位が薄肉とすることができて、厚板の部材を溶接する場合にも恰も薄板の如くして容易に溶接することができることが記載されているように、当業者にとって自明な効果であり、周知の技術事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎない。

この点について、審判請求人は審判請求書(平成31年1月9日提出の手続補正書(方式)の第3ページ(4)参照)において、概略「引用文献5は、アノードワイヤに対する効率的な接合を有するように枕電極4が(リードワイヤに隣接する)上部において幅狭となっていることを教示」「([0103])」しているところ、「枕電極4がアノードワイヤ及びアノードを支持するので、アノードワイヤが幅狭な枕電極に接触する場合に、アノードワイヤ及び枕電極は引用文献5により必要とされるものとして教示される安定性を提供し損なうことにな」るため、「アノードワイヤの部分においてノッチを提供するように動機付けられない」「(図2及び16等ご参照)」こと、すなわち、「引用文献5は、枕電極及びアノードワイヤがキャパシタアセンブリを支持し、樹脂パッケージの外側の良好な接触を維持するように形成されているので、当業者は、引用文献5において必要なものとして教示される支持及び安定性を提供し損ねることになるので、引用文献5のリードワイヤにおいてノッチを配置するように動機づけられない」と主張している。また、審判請求人は、令和1年10月31日提出の上申書においても同様の主張をしている。

しかしながら、審判請求人が摘示している引用文献5の段落【0103】をみると、同段落には概略「固体電解コンデンサA14は、枕電極4が陽極ワイヤ12に近づくにつれ幅狭となる台形状である」ところ、「このような構成によると、陽極ワイヤ12と枕電極4とを溶接により接合する際、枕電極4の幅狭となっている部分は多くの電流が流れるため、発熱しやすい」から、「枕電極4のうち陽極ワイヤ12の近傍の部分を溶融させやすい」こととなり、「溶接によって陽極ワイヤ12と枕電極4とを接合しやすくなる」こと、すなわち、枕電極4を上部で幅狭とするのは、枕電極4を溶融させやすくして溶接による接合をしやすくするためであることが記載されている。
一方、引用発明に対して組み合わせた上記周知の技術事項は、アノードリード(陽極ワイヤ)にノッチを設け、アノード端子(陽極実装端子、枕電極)との溶接をノッチにおいて行う技術であるから、引用文献5の段落【0103】の記載内容から「引用文献5のリードワイヤにおいてノッチを配置するように動機づけられない」とは認められない。
なお、審判請求人の上記主張が枕電極を幅狭にすると陽極ワイヤにノッチを設けることで溶接ができなくなるとの趣旨の主張であれば、引用文献5において枕電極に陽極ワイヤが設置される以上、ノッチを設けたとしても溶接することは可能であるから、そのような主張は認められない。そして、このことは枕電極に代えて陽極実装端子をL字状とした引用発明においても異なるところはない。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。

よって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-01-24 
結審通知日 2020-01-27 
審決日 2020-02-07 
出願番号 特願2013-112637(P2013-112637)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H01G)
P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 多賀 和宏多田 幸司  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 山田 正文
石坂 博明
発明の名称 固体電解コンデンサのためのノッチ付きリード  
代理人 上杉 浩  
代理人 西島 孝喜  
代理人 弟子丸 健  
代理人 須田 洋之  
代理人 近藤 直樹  
代理人 大塚 文昭  
代理人 鈴木 信彦  
代理人 那須 威夫  
代理人 田中 伸一郎  
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