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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
管理番号 1363725
審判番号 不服2018-12880  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-27 
確定日 2020-06-29 
事件の表示 特願2015-537270「ナビゲーション装置を使用して情報を提供する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月24日国際公開、WO2014/060559、平成27年12月24日国内公表、特表2015-537199〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2013年(平成25年)10月17日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2012年10月17日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成27年6月18日に手続補正書が提出され、平成28年10月14日に手続補正書が提出され、平成29年9月11日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年12月15日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年5月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年9月27日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、当審において令和元年7月12日付けで拒絶の理由が通知され、令和元年10月15日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
この出願の各請求項に係る発明は、令和元年10月15日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「ナビゲーション装置を用いて移動中のパスに関する情報を提供する方法であって、
前記ナビゲーション装置の表示ウィンドウに、2D又は3Dナビゲーションマップと、該2D又は3Dナビゲーション上での前記移動中のパスと、該移動中のパスの少なくとも一部分を示すパスバーを表示する工程と、
前記ナビゲーション装置の現在の位置が、前記パス上で所定の位置から所定の距離以内であるかを判定する工程と、
前記現在の位置が前記所定の位置から前記所定の距離以内であると判定されると、前記所定の位置を含む前記表示されたパスバーの一部分を拡大して表示するように、表示された前記パスバーのスケールを自動的に拡大する工程と、
前記所定の位置を通過すると、表示された前記パスバーの前記スケールを自動的に縮小する工程と
を含み、
前記方法は、
前記パスバーのスケールを自動的に拡大する前記工程の前に、前記パスバーに表示されるパスに沿って前記所定の位置を表す情報を表示する工程と、
前記パスバーのスケールを自動的に拡大する前記工程の後に、前記所定の位置に関する追加情報を前記パスバーの表示領域に表示する工程と
をさらに含むことを特徴とする方法。」

第3 拒絶の理由
令和元年7月12日付けで当審が通知した拒絶の理由のうちの理由3(進歩性)の概要は、次のとおりである。
この出願の請求項1,2,11,12に係る発明は、この出願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
この出願の請求項3,4に係る発明は、この出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明、並びに引用文献3及び引用文献4に記載されたような周知の事項に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
この出願の請求項5,6に係る発明は、この出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明、引用文献3及び引用文献4に記載されたような周知の事項並びに引用文献5に記載されたような周知の事項に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
この出願の請求項7?10,13に係る発明は、この出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明、引用文献3及び引用文献4に記載されたような周知の事項、引用文献5に記載されたような周知の事項並びに引用文献3に記載されたような周知の事項に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開平8-261780号公報(本審決における「引用文献1」。)
引用文献2:特開2012-8147号公報
引用文献3:特開2003-302224号公報(本審決における「引用文献3」。)
引用文献4:特開2003-148972号公報
引用文献5:特開2008-46059号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献1の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載
当審が通知した前記拒絶の理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付与した。以下、同様。)。

ア.「【0017】
【実施例】以下本発明をGPSを利用した自動車用ナビゲーション装置に適用した場合の一実施例について図面を参照して説明する。図1は本装置全体の回路構成を示すもので、車体のルーフ上に設置されたアンテナ1と、このアンテナ1が受信した衛星からのL1帯( 1.57542GHz)のC/Aコードを逆拡散LSIにより復調、解読して現在地の緯度、経度等を割出すGPSブロック2とを有している。
【0018】GPSブロック2はグラフィックブロック3に接続されており、このグラフィックブロック3には、主として後に詳述するリモコンユニット20で構成されるKEYブロック4、地図データや高速道路の情報を記録した記録媒体であるCD-ROMが装着されたCDブロック5、CRTやLCDパネルで構成される表示装置を有するモニタブロック6がそれぞれ接続されている。
【0019】グラフィックブロック3には、ROM7に格納された動作プログラム及びRAM8に記憶された種々データに基づいて装置全体を制御するCPU9が設けられている。またROM7には、動作プログラムの他に、後述する複数の定型の高速道路背景パターンが固定記憶されている。」

イ.「【0029】次に図3により上記CDブロック5に装着されるCD-ROMに記録された情報について述べる。図示する如く本実施例に係るCD-ROMには、一般地図データ、高速道路データ、インタチェンジ名称と緯度経度データ、サービスエリア名称と緯度経度データ、サービスエリア内容データ、料金データの各データが少なくとも記録される。
【0030】一般地図データは、従来一般のナビゲーション装置で用いられているものと同様の、道路データと地名データとを有する2次元画像によるデータである。高速道路データは、上記一般地図データと同一のエリアに存在する、自動車専用道路を含む各高速道路の名称とその高速道路内の各インタチェンジ、サービスエリア、パーキングエリアの区間距離のデータを有すると共に、他の高速道路あるいは支線との分岐点(ジャンクション)における名称、合流/分岐状況、最寄りのインタチェンジ、サービスエリアまたはパーキングエリアとの区間距離のデータ等からなる分岐点データをも有するコード化されたデータである。」

ウ.「【0038】その後、計算した表示エリアの緯度経度によりCDブロック5をアクセスし、CD-ROMの一般地図データから該当する表示エリア内の道路データ及び地名データを全て読出し、ビデオRAM11に展開すると共に、その一部、例えば現在位置の緯度経度データから緯度データで「±0°00′23″」、経度データで「±0°00′30″」のエリア(東西方向約1.8km×南北方向約1.35km)をモニタブロック6で表示出力させる(ステップS3)。
【0039】その後、リモコンユニット20のMENUキー27とそれに続くアイコン指定のためのカーソルキー28及びENTERキー29の操作により一般地図から高速道路の地図に表示を切換える指定がなされたか否か、あるいは自動モードで高速道路に入ったか否か、具体的には現在位置が一般地図上の高速道路上に沿って移動しているか否かにより、高速道路の地図(図では「高速マップ」と示す)に表示を切換えるか否かを繰返し判断する(ステップS4,S5)。
【0040】そして、これらステップS4,S5のいずれかで表示を高速道路の地図に切換えると判断すると、次に現在位置と現在の進行方向とに応じて上記CDブロック5のCD-ROMより、現在位置から先の高速情報、すなわち高速道路データと分岐点データ、インタチェンジ名称と緯度経度データ、サービスエリア名称と緯度経度データ、サービスエリア内容データ及び料金データを読出す(ステップS6)。
【0041】次いで、読出した上記高速道路データと分岐点データとにより上記ROM7から合流/分岐状態の合致する定型の高速道路背景パターンを読出し、ビデオRAM11上でこのパターンの上に上記インタチェンジ名称及びサービスエリア名称を展開して高速道路地図の表示データを作成し、モニタブロック6で表示出力させる(ステップS7)。」

エ.「【0048】図6は以上の処理によりモニタブロック6で表示される高速道路の地図を例示するものである。図中、41が表示画面、42がモード表示部、43が道路名称表示部、44が受信状態表示部、45が表示画面41の中央大部分を用いた高速道路地図表示部、46が平均速度表示部、47が手動ページ戻しアイコン、48が手動ページ送りアイコン、49が一般地図切換アイコン、50が指示の取消しアイコンである。」

オ.「【0050】受信状態表示部44は、同右上端に位置し、受信状態、具体的には電波を受信しているGPS衛星の数を衛星のシンボルの数により視覚的に表現する。高速道路地図表示部45は、表示画面41の中央大部分を用いて高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化して示すものである。
【0051】ここでは走行方向を左から右へと固定するものとし、ジャンクションのない直線状の高速道路上で現在位置が「秦野中井インタチェンジ(IC)」と「厚木インタチェンジ(IC)」の間にあり、さらに「厚木インタチェンジ(IC)」の先に「海老名サービスエリア(SA)」と「横浜インタチェンジ(IC)」があることを示している。
【0052】この場合、インタチェンジは縦長の矩形ブロック、パーキングエリアを含むサービスエリアは縦長の楕円ブロックで示しており、これらインタチェンジ及びサービスエリアの各ポイント間にそれぞれ長円ブロックによる区間距離51,51,…を表示すると共に、現在位置から先に位置する各ポイント全てに対して、上記ステップS8の処理で矩形ブロックによる到着予想時刻52,52,…を表示するものとする。
【0053】また、この高速道路に入ったインタチェンジに対応する位置には図中に示す如く当該インタチェンジの矩形ブロックの方向に向いた矢印による入口シンボル53を、さらに目的とするインタチェンジに対応する位置には当該インタチェンジの矩形ブロックの反対方向に向いた矢印による出口シンボル54を表示するものとする。」

カ.「【0055】手動ページ戻しアイコン47は現在高速道路地図表示部45に表示されているエリアより手前側のエリアに画面をスクロールするためのアイコン、手動ページ送りアイコン48は現在高速道路地図表示部45に表示されているエリアより先のエリアに画面をスクロールするためのアイコン、一般地図切換アイコン49は現在の高速道路モードから通常の一般地図モードへの画面の切換えを指示するためのアイコン、取消しアイコン50は直前の指示操作を解除するためのアイコンである。」

キ.「【0066】このようにして高速道路の地図の表示モードを行なっている状態で、上記図4及び図5の処理においては、現在位置から先の方向で一定の距離、例えば2km以内にサービスエリアまたはパーキングエリアがあるか否かを判断する(ステップS9)。
【0067】サービスエリアまたはパーキングエリアがあると判断した場合にのみ、上記ステップS6でCDブロック5のCD-ROMから読出したサービスエリア内容データにより該当するサービスエリアまたはパーキングエリアの設備内容のデータを読出す。そして、ROM7から1つのサービスエリアまたはパーキングエリアのブロックのみが記載された高速道路背景パターンを読出し、ビデオRAM11でこのパターン上に上記読出した設備内容のデータに対応したシンボルを展開することで、それまでの表示画面からサービスエリアまたはパーキングエリアの設備を示す表示に切換える(ステップS10)。
【0068】図8はこのようなサービスエリアの設備を示す表示画面を例示するものであり、楕円ブロック中に「赤城高原サービスエリア(SA)の文字を表示すると共に、その設備内容として「修理」「ガソリンスタンド」「レストラン」及び「お手洗い」があることをシンボル61?64で表示している。
【0069】この図8に示したようなサービスエリアまたはパーキングエリアの設備内容の表示画面は、サービスエリアまたはパーキングエリアを利用しないで通過した時点、あるいは利用するためにサービスエリアまたはパーキングエリア内に入った時点で解除され、元の高速道路モードでの表示画面に復帰する。」

ク.「【0073】その後、現在位置から先の方向で一定の距離、例えば2km以内に出る予定のインタチェンジがあるか否かを判断する(ステップS13)。出る予定のインタチェンジがあると判断した場合にのみ、今度はその出る予定のインタチェンジの緯度経度データを用いて上記ステップS2,S3と同様の処理を実行し、インタチェンジを中心とする予め設定されたエリアの一般地図データをCDブロック5のCD-ROMから読出し、ビデオRAM11に展開してその一部をモニタブロック6で表示出力させる(ステップS14)。
【0074】図10はこの高速道路の地図から一般地図への表示の切換状態を例示するものである。図10(1)に示すように高速道路の地図を表示した状態で、現在位置が、出る予定の設定がなされ、出口シンボル54が表示された「横浜インタチェンジ(IC)」から一定距離だけ手前の範囲内にあると判断されると、直ちに図10(2)に示す如く一般地図に表示画面が切換えられる。」

ケ.記載事項ア.エ.及びオ.によると、自動車用ナビゲーション装置のモニタブロック6に、高速道路の地図として、高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化して示す高速道路地図表示部45が表示されているから、自動車用ナビゲーション装置のモニタブロック6に、高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化した高速道路の地図を表示する方法が示されているといえる。

コ.記載事項ウ.エ.オ.及び図6の図示内容によると、定型の高速道路背景パターンは、インタチェンジ及びサービスエリアをつないで左右に延びるバー状のパターンを備えているといえる。また、高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化して示す高速道路地図表示部45は、表示画面41の中央大部分を用いて示されており、さらに、定型の高速道路背景パターンの上にインタチェンジ名称及びサービスエリア名称を展開した表示データにより表示されているといえる。そして、記載事項イ.ウ.カ.及びク.によると、表示画面41に、道路データと地名データとを有する2次元画像による一般地図データから一般地図を表示し、この一般地図と切換えて、高速道路の地図を表示しているといえる。
すると、自動車用ナビゲーション装置のモニタブロック6における表示画面41に、2次元画像による一般地図データから一般地図を表示し、この一般地図と切換えて、左右に延びるバー状のパターンを備えた定型の高速道路背景パターンの上にインタチェンジ名称及びサービスエリア名称を展開した表示データにより高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化した高速道路の地図を表示しているといえる。

サ.記載事項キ.及び図8の図示内容によると、1つのサービスエリアのブロックのみが記載された高速道路背景パターンは、サービスエリアの左右に延びるバー状のパターンを備えているといえる。すると、現在位置から先の方向で一定の距離以内にサービスエリアがあるか否かを判断し、一定の距離以内にサービスエリアがあると判断した場合、左右に延びるバー状のパターンを備え、1つのサービスエリアのブロックのみが記載された高速道路背景パターン上に、一定の距離以内にあると判断されたサービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボルを展開することで、それまでの高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換えているといえる。

シ.記載事項キ.によると、サービスエリアを利用しないで通過した時点で、サービスエリアの設備を示す表示を、元の高速道路の地図の表示に復帰させているといえる。

(2)引用発明
引用文献1の記載事項ア.?シ.及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「自動車用ナビゲーション装置のモニタブロック6に、高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化した高速道路の地図を表示する方法であって、
前記自動車用ナビゲーション装置の前記モニタブロック6における表示画面41に、2次元画像による一般地図データから一般地図を表示し、この一般地図と切換えて、左右に延びるバー状のパターンを備えた定型の高速道路背景パターンの上にインタチェンジ名称及びサービスエリア名称を展開した表示データにより高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化した前記高速道路の地図を表示し、
現在位置から先の方向で一定の距離以内にサービスエリアがあるか否かを判断し、
一定の距離以内にサービスエリアがあると判断した場合、左右に延びるバー状のパターンを備え、1つのサービスエリアのブロックのみが記載された高速道路背景パターン上に、一定の距離以内にあると判断されたサービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボルを展開することで、それまでの前記高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え、
サービスエリアを利用しないで通過した時点で、前記サービスエリアの設備を示す表示を、元の前記高速道路の地図の表示に復帰させる方法。」

2.引用文献3の記載
当審が通知した前記拒絶の理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、引用文献3には、図面とともに、次の記載がある。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カーナビゲーション装置等の情報提供センタとの通信機能を有する車載装置と、情報提供センタに関する。」

(2)「【0029】・・・予め地図を2画面表示する設定が成されている時には、画面1004のように表示される。画面1004については、図11を用いて説明する。画面1101では、左半分に1画面表示のときと同様、地図上の予め探索されていた経路1106に沿う形で、進行方向の交通情報1107が混雑状況に応じて色分け乃至は線種を変えて表示される。また、表示しているルート上交通情報を取得した情報取得時刻1108も合わせて表示している。画面右半分には、誘導経路上の先にある誘導ポイントの位置や誘導案内内容(1102,1104)とともに、渋滞箇所(渋滞終端)の位置とその渋滞の増減傾向が渋滞情報(1103,1105)として表示される。この右半分の表示1101をルート上交通情報簡略表示と呼ぶ。」

第5 対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「自動車用ナビゲーション装置」は、本願発明の「ナビゲーション装置」に相当する。また、引用発明の「高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化した高速道路の地図」は、現在位置から前方に進む経路上に存在するインタチェンジ及びサービスエリアの位置等の情報を使用者に提供するものであって、ナビゲーション装置を搭載した自動車が進む経路についての情報を提供しているといえるから、本願発明の「移動中のパスに関する情報」に相当する。すると、引用発明の「自動車用ナビゲーション装置のモニタブロック6に、高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化した高速道路の地図を表示する方法」は、本願発明の「ナビゲーション装置を用いて移動中のパスに関する情報を提供する方法」に相当する。
引用発明の「前記自動車用ナビゲーション装置の前記モニタブロック6における表示画面41」は、本願発明の「前記ナビゲーション装置の表示ウィンドウ」に相当する。引用発明の「左右に延びるバー状のパターンを備えた定型の高速道路背景パターンの上にインタチェンジ名称及びサービスエリア名称を展開した表示データにより高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化した前記高速道路の地図を表示」するという事項において、この「左右に延びるバー状のパターン」は、インタチェンジ及びサービスエリアをつないで延びていることから、ナビゲーション装置を搭載した自動車が進む経路を示しているといえる。すると、引用発明の「左右に延びるバー状のパターンを備えた定型の高速道路背景パターンの上にインタチェンジ名称及びサービスエリア名称を展開した表示データにより」表示される「高速道路の地図」は、本願発明の「移動中のパスの少なくとも一部分を示すパスバー」に相当する。したがって、引用発明の「前記自動車用ナビゲーション装置の前記モニタブロック6における表示画面41に、2次元画像による一般地図データから一般地図を表示し、この一般地図と切換えて、左右に延びるバー状のパターンを備えた定型の高速道路背景パターンの上にインタチェンジ名称及びサービスエリア名称を展開した表示データにより高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化した前記高速道路の地図を表示」するという事項は、本願発明の「前記ナビゲーション装置の表示ウィンドウに、2D又は3Dナビゲーションマップと、該2D又は3Dナビゲーション上での前記移動中のパスと、該移動中のパスの少なくとも一部分を示すパスバーを表示する工程」と、「前記ナビゲーション装置の表示ウィンドウに、移動中のパスの少なくとも一部分を示すパスバーを表示する工程」である点で共通している。
引用発明の「サービスエリアがある」位置は、本願発明の「所定の位置」に相当し、引用発明の「現在位置から先の方向で一定の距離以内にサービスエリアがあるか否かを判断」するという事項は、本願発明の「前記ナビゲーション装置の現在の位置が、前記パス上で所定の位置から所定の距離以内であるかを判定する工程」に相当する。
引用発明の「一定の距離以内にサービスエリアがあると判断した場合」は、本願発明の「前記現在の位置が前記所定の位置から前記所定の距離以内であると判定されると」という事項に相当する。
引用発明の「左右に延びるバー状のパターンを備え、1つのサービスエリアのブロックのみが記載された高速道路背景パターン上に、一定の距離以内にあると判断されたサービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボルを展開することで、それまでの前記高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え」るという事項は、それまでに「高速道路の地図」で「定型の高速道路背景パターン」、「インタチェンジ名称及びサービスエリア名称」等を表示していたものを、「サービスエリアの設備を示す表示」に自動的に切換え、「左右に延びるバー状のパターンを備え、1つのサービスエリアのブロックのみが記載された高速道路背景パターン」等を表示するものである。そして、この切換え後の「サービスエリアの設備を示す表示」における「左右に延びるバー状のパターン」は、前記定型の高速道路背景パターンの「左右に延びるバー状のパターン」を踏まえれば、ナビゲーション装置を搭載した自動車が進む経路を示しているといえる。すると、引用発明の「サービスエリアの設備を示す表示」は、切換え前の「高速道路の地図」で表示していたインタチェンジ及びサービスエリアから、一定の距離以内にあると判断された1つのサービスエリアを抽出した上で、経路を示すバー状のパターンとともに表示するものといえる。そうすると、引用発明の「左右に延びるバー状のパターンを備え、1つのサービスエリアのブロックのみが記載された高速道路背景パターン上に、一定の距離以内にあると判断されたサービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボルを展開することで、それまでの前記高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え」るという事項は、本願発明の「前記所定の位置を含む前記表示されたパスバーの一部分を拡大して表示するように、表示された前記パスバーのスケールを自動的に拡大する工程」と、「前記所定の位置を含む前記表示されたパスバーの一部分を抽出して表示するように、表示された前記パスバーの一部分が抽出されたパスバーを自動的に表示する工程」である点で共通している。
また、引用発明は、「一定の距離以内にサービスエリアがあると判断した場合、左右に延びるバー状のパターンを備え、1つのサービスエリアのブロックのみが記載された高速道路背景パターン上に、一定の距離以内にあると判断されたサービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボルを展開することで、それまでの前記高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え」るものであって、前記高速道路の地図は、「左右に延びるバー状のパターンを備えた定型の高速道路背景パターンの上にインタチェンジ名称及びサービスエリア名称を展開した表示データにより高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化した」ものであるから、前記切換えの前において、一定の距離以内にあるか判断されるサービスエリアのある位置は、「左右に延びるバー状のパターン」に沿って表示されているといえる。すると、引用発明の「左右に延びるバー状のパターンを備えた定型の高速道路背景パターンの上にインタチェンジ名称及びサービスエリア名称を展開した表示データにより高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化した前記高速道路の地図を表示」するという事項は、本願発明の「前記パスバーのスケールを自動的に拡大する前記工程の前に、前記パスバーに表示されるパスに沿って前記所定の位置を表す情報を表示する工程」とも、「前記パスバーの一部分が抽出されたパスバーを自動的に表示する前記工程の前に、前記パスバーに表示されるパスに沿って前記所定の位置を表す情報を表示する工程」である点で共通している。
さらに、引用発明の「左右に延びるバー状のパターンを備え、1つのサービスエリアのブロックのみが記載された高速道路背景パターン上に、一定の距離以内にあると判断されたサービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボルを展開することで、それまでの前記高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え」るという事項は、その切換えの後の「サービスエリアの設備を示す表示」において、「サービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボル」を表示しているといえる。そして、前記シンボルは、サービスエリアに関する情報であること、及び前記シンボルは、前記した高速道路の地図では表示されておらず、サービスエリアの設備を示す表示では表示されていることを考慮すると、引用発明の「サービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボル」は、本願発明の「前記所定の位置に関する追加情報」に相当する。すると、引用発明の「左右に延びるバー状のパターンを備え、1つのサービスエリアのブロックのみが記載された高速道路背景パターン上に、一定の距離以内にあると判断されたサービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボルを展開することで、それまでの前記高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え」るという事項は、本願発明の「前記パスバーのスケールを自動的に拡大する前記工程の後に、前記所定の位置に関する追加情報を前記パスバーの表示領域に表示する工程」とも、「前記所定の位置に関する追加情報を前記パスバーの表示領域に表示する工程」である点で共通している。
引用発明の「サービスエリアを利用しないで通過した時点で」という事項は、本願発明の「前記所定の位置を通過すると」という事項に相当する。引用発明の「前記サービスエリアの設備を示す表示を、元の前記高速道路の地図の表示に復帰させる」という事項は、本願発明の「表示された前記パスバーの前記スケールを自動的に縮小する工程」と、「表示された前記パスバーの表示を自動的に元の表示に復帰させる工程」である点で共通している。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「ナビゲーション装置を用いて移動中のパスに関する情報を提供する方法であって、
前記ナビゲーション装置の表示ウィンドウに、移動中のパスの少なくとも一部分を示すパスバーを表示する工程と、
前記ナビゲーション装置の現在の位置が、前記パス上で所定の位置から所定の距離以内であるかを判定する工程と、
前記現在の位置が前記所定の位置から前記所定の距離以内であると判定されると、前記所定の位置を含む前記表示されたパスバーの一部分を抽出して表示するように、表示された前記パスバーの一部分が抽出されたパスバーを自動的に表示する工程と、
前記所定の位置を通過すると、表示された前記パスバーの表示を自動的に元の表示に復帰させる工程と、
を含み、
前記方法は、
前記パスバーの一部分が抽出されたパスバーを自動的に表示する前記工程の前に、前記パスバーに表示されるパスに沿って前記所定の位置を表す情報を表示する工程と、
前記所定の位置に関する追加情報を前記パスバーの表示領域に表示する工程と
を含む方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
パスバーを表示する工程について、本願発明は、「2D又は3Dナビゲーションマップと、該2D又は3Dナビゲーション上での前記移動中のパスと、該移動中のパス」の少なくとも一部分を示すパスバーを表示するのに対し、引用発明は、高速道路の地図の表示に切換える前に、2次元画像による一般地図データから一般地図を表示しているものの、高速道路の地図を表示する際、一般地図と、一般地図上での移動中のパスと、該移動中のパスを示す高速道路の地図を同時に表示しているとはいえない点。

[相違点2]
パスバーの一部分が抽出されたパスバーを自動的に表示する工程、及び自動的に元の表示に復帰させる工程について、本願発明は、パスバーの一部分を「拡大」して表示するように、表示されたパスバーの「スケール」を「拡大」し、所定の位置を通過すると、パスバーの「スケール」を「縮小」するのに対し、引用発明は、左右に延びるバー状のパターンを備え、1つのサービスエリアのブロックのみが記載された高速道路背景パターンにより、サービスエリアの設備を示す表示を行い、サービスエリアを利用しないで通過した時点で、元の高速道路の地図の表示に復帰させているものの、サービスエリアの設備を示す表示が、高速道路の地図のスケールを拡大したものであるかや、その後、縮小しているかが明確でない点。

[相違点3]
パスバーに表示されるパスに沿って所定の位置を表す情報を表示する工程について、本願発明が、「パスバーを表示する工程」、「判定する工程」、「拡大する工程」及び「縮小する工程」を含み、「さらに」「前記パスバーのスケールを自動的に拡大する前記工程の前に、前記パスバーに表示されるパスに沿って前記所定の位置を表す情報を表示する工程」を含むのに対し、引用発明は、「左右に延びるバー状のパターンを備えた定型の高速道路背景パターンの上にインタチェンジ名称及びサービスエリア名称を展開した表示データにより高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化した前記高速道路の地図を表示」するという事項が、「高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化した前記高速道路の地図を表示」する工程と、一定の距離以内にあるか否かが判断されるサービスエリアのある位置を「前記高速道路の地図」で表示する工程の機能を備えており、前者の工程と別の後者の工程を「さらに」含んでいるとはいえない点。

[相違点4]
所定の位置に関する追加情報をパスバーの表示領域に表示する工程について、本願発明が、「パスバーを表示する工程」、「判定する工程」、「拡大する工程」及び「縮小する工程」を含み、「さらに」「前記パスバーのスケールを自動的に拡大する前記工程の後に、前記所定の位置に関する追加情報を前記パスバーの表示領域に表示する工程」を含むのに対し、引用発明は、「一定の距離以内にサービスエリアがあると判断した場合、左右に延びるバー状のパターンを備え、1つのサービスエリアのブロックのみが記載された高速道路背景パターン上に、一定の距離以内にあると判断されたサービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボルを展開することで、それまでの前記高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え」るという事項が、「それまでの前記高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え」る工程と、「サービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボル」を表示する工程の機能を備えており、前者の工程と別の後者の工程を「さらに」含んでいるとはいえず、また、前者の工程の「後」に、後者の工程が実行されるともいえない点。

第6 判断
(1)相違点について
以下、前記相違点について判断する。
[相違点1]について
ナビゲーション装置の表示画面に移動経路を表示させる方法において、表示画面を2つに分け、一方の画面に、2次元等の地図を移動経路とともに表示し、他方の画面に、この移動経路で通過する地点がバー状のパターンで接続された簡略的な表示をすることは、例えば、引用文献3の段落【0029】(前記第4 2.(2)参照。)及び図11に示されている他、特開2004-333253号公報の段落【0030】及び図7、特開2012-18019号公報の段落【0007】及び図15(c)に示されているように、この出願の優先日前から周知の事項である。
そして、引用発明と、前記周知の事項とは、ともにナビゲーション装置の表示画面に移動経路を表示させるものであり、技術分野が共通している上、一般的な地図の表示と、バー状のパターンで通過地点が接続された簡略的な表示とが可能である点で作用、機能が共通している。
また、引用発明において、高速道路の走行中であっても、高速道路の地図から得られるインタチェンジ及びサービスエリアに関する情報や、サービスエリアの設備を示す表示から得られるサービスエリアの設備内容に関する情報のみならず、一般地図から得られる詳細な自車位置についての情報等が必要になることは、当然、あり得るといえる。そうすると、引用発明において、より多くの情報をナビゲーション装置の使用者に提示すべく、前記周知の事項を適用し、高速道路の走行中に表示される高速道路の地図又はサービスエリアの設備を示す表示と、これらに対応する移動経路が示された一般地図とを2画面で同時に表示させ、本願発明の相違点1に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2]について
引用発明の「高速道路の地図」が図示された引用文献1の図6と、「サービスエリアの設備を示す表示」が図示された引用文献1の図8をみても、「高速道路の地図」のインタチェンジ及びサービスエリアを示すブロックや、インタチェンジ及びサービスエリアをつないで左右に延びるバー状のパターンに比べて、「サービスエリアの設備を示す表示」のサービスエリアを示すブロックや、サービスエリアの左右に延びるバー状のパターンのスケールが拡大しているかは明確ではないが、後者の表示は、表示するサービスエリア等の数が1つのみである他、前者において表示画面41の上部及び下部に表示されているモード表示部42、取消しアイコン50等が表示されておらず、表示画面41に表示される情報の量は、前者の表示に比べて、明らかに少なくなっている。すると、引用発明の「高速道路の地図」と、「サービスエリアの設備を示す表示」とにおいて、これらが表示される表示画面41の面積は変わらずに、後者の情報の量が前者の情報の量よりも少なくなっていることを考慮すると、後者で表示されるサービスエリアを示すブロックや、サービスエリアの左右に延びるバー状のパターンは、前者で表示されるサービスエリアを示すブロックや、左右に延びるバー状のパターンに比べて、スケールが拡大していると考えるのが自然である。また、逆に、前者の表示は、後者の表示に比べて、これらのスケールが縮小していると考えるのが自然である。
そうすると、この相違点2は実質的な相違点とはいえない。

仮に、この相違点2が、実質的な相違点であるとしても、前記第5で示したように、引用発明の「サービスエリアの設備を示す表示」は、切換え前の「高速道路の地図」で表示していたインタチェンジ及びサービスエリアから、一定の距離以内にあると判断された1つのサービスエリアを抽出した上で、経路を示すバー状のパターンとともに表示するものであって、一定の距離以内にあると判断されたサービスエリアについての情報を、より有用な情報であるとして、ナビゲーション装置の使用者に提示するものである。そして、使用者に有用な情報を提示する際、当該情報についての表示を、見易く、また目立つように拡大することは、この出願の優先日前から慣用されている事項であるから、引用発明において、「高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え」る際、「高速道路の地図」で表示されているサービスエリアを示すブロックや、左右に延びるバー状のパターンのスケールを拡大することに格別の困難性はなく、また、「サービスエリアの設備を示す表示を、元の前記高速道路の地図の表示に復帰させる」際、「サービスエリアの設備を示す表示」で表示されているサービスエリアを示すブロックや、左右に延びるバー状のパターンのスケールを縮小することに格別の困難性はない。
そうすると、引用発明において、本願発明の相違点2に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点3]について
引用発明の「左右に延びるバー状のパターンを備えた定型の高速道路背景パターンの上にインタチェンジ名称及びサービスエリア名称を展開した表示データにより高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化した前記高速道路の地図を表示」するという事項は、「高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化した前記高速道路の地図を表示」する工程と、一定の距離以内にあるか否かが判断されるサービスエリアのある位置を「前記高速道路の地図」で表示する工程の機能を備えるものであるが、引用発明の「左右に延びるバー状のパターンを備えた定型の高速道路背景パターンの上にインタチェンジ名称及びサービスエリア名称を展開した表示データにより高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化した前記高速道路の地図を表示」するという事項に内在する複数の機能を分離して、「高速道路上の現在位置と各インタチェンジ及びサービスエリアとの位置関係を簡略化した前記高速道路の地図を表示」する工程と、一定の距離以内にあるか否かが判断されるサービスエリアのある位置を「前記高速道路の地図」で表示する工程とに分けて表現することも可能といえる。
そうすると、相違点3は、単なる表現上の違いであるといえ、実質的な相違点とはいえない。

[相違点4]について
引用発明の「一定の距離以内にサービスエリアがあると判断した場合、左右に延びるバー状のパターンを備え、1つのサービスエリアのブロックのみが記載された高速道路背景パターン上に、一定の距離以内にあると判断されたサービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボルを展開することで、それまでの前記高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え」るという事項は、「それまでの前記高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え」る工程と、「サービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボル」を表示する工程の機能を備え、両工程を同時に実行するものといえるが、引用発明の「一定の距離以内にサービスエリアがあると判断した場合、左右に延びるバー状のパターンを備え、1つのサービスエリアのブロックのみが記載された高速道路背景パターン上に、一定の距離以内にあると判断されたサービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボルを展開することで、それまでの前記高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え」するという事項に内在する複数の機能を分離して、「それまでの前記高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え」る工程と、「サービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボル」を表示する工程とに分けて表現することも可能といえる。その際、引用発明において、「サービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボル」は、「それまでの前記高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え」た後に表示される(切換える前は表示されない)ものであるから、「サービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボル」を表示する工程は、「それまでの前記高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え」る工程の後に実行されると表現することや、逆に「それまでの前記高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え」る工程の後に「サービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボル」を表示する工程を実行すると表現することも可能といえる。
そうすると、相違点4は、単なる表現上の違いであるといえ、実質的な相違点とはいえない。

仮に、この相違点4が、実質的な相違点であるとしても、引用発明において「それまでの前記高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え」る際、「左右に延びるバー状のパターンを備え、1つのサービスエリアのブロックのみが記載された高速道路背景パターン」に切換ることと、「一定の距離以内にあると判断されたサービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボル」を表示することとを同時に実行するか、前者の切換えの後に後者の表示を実行するかは、自動車用ナビゲーション装置の処理速度等を考慮の上、当業者が選択し得る事項である。
そうすると、引用発明において「それまでの前記高速道路の地図の表示からサービスエリアの設備を示す表示に切換え」る際、「左右に延びるバー状のパターンを備え、1つのサービスエリアのブロックのみが記載された高速道路背景パターン」に切換えた後、「一定の距離以内にあると判断されたサービスエリアの設備内容のデータに対応したシンボル」を表示し、本願発明の相違点4に係る発明特定事項とすることに格別の困難性はない。

(2)請求人の主張について
請求人は、令和元年10月15日に提出した意見書において、本願発明は、「通常の走行時において、マップ及びマップ上のパスに加えて、当該パスの一部分を含むパスバーを表示して」おり、「マップ自体を拡大して表示しているのではなく、既にマップ上の一部を表示していたパスバーをさらに拡大して表示」するものであるのに対し、引用文献1は、「通常のマップ(高速道路の地図)を表示中に、所定位置に近づくと、詳細な情報を表示する画面に切り替わることを開示するだけであ」る旨、主張しているが、引用発明の「高速道路の地図」は、前記第5に示したように、本願発明の「移動中のパスの少なくとも一部分を示すパスバー」に相当するものであり、また、前記(1)の[相違点2]についてで検討したように、引用発明において、一定の距離以内にサービスエリアがあると判断した場合、高速道路の地図のスケールを拡大させていると考えるのが自然であり、又は高速道路の地図のスケールを拡大することに格別の困難性はないといえる。そして、前記(1)の[相違点1]についてで検討したように、引用発明において、より多くの情報をナビゲーション装置の使用者に提示すべく、前記周知の事項を適用し、高速道路の走行中に表示される高速道路の地図又はサービスエリアの設備を示す表示と、これらに対応する移動経路が示された一般地図とを2画面で同時に表示させることは当業者が容易に想到し得たものである。
これらの検討を踏まえると、請求人の主張は採用することができない。

(3)本願発明の作用効果について
本願発明の作用効果については、引用発明及び前記周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。

第7 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び前記周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含するこの出願は、この出願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-01-30 
結審通知日 2020-02-03 
審決日 2020-02-14 
出願番号 特願2015-537270(P2015-537270)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01C)
P 1 8・ 537- WZ (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 倉橋 紀夫落合 弘之高田 元樹  
特許庁審判長 久保 竜一
特許庁審判官 柿崎 拓
佐々木 芳枝
発明の名称 ナビゲーション装置を使用して情報を提供する方法及び装置  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康徳  
代理人 下山 治  
代理人 永川 行光  
代理人 大塚 康弘  
代理人 木村 秀二  

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