• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1363726
審判番号 不服2018-13880  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-18 
確定日 2020-06-30 
事件の表示 特願2017- 12461「携帯端末でクリップボード機能提供方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月15日出願公開、特開2017-107585〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯

本願は,2012年(平成24年)3月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年3月21日,韓国)を国際出願日とする出願である特願2014-500998号の一部を平成29年1月26日に新たな特許出願としたものであって,平成30年1月30日付けで拒絶理由が通知され,平成30年5月9日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたが,平成30年6月14日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成30年10月18日に審判の請求がなされ,同時に手続補正がなされたものである。

2 平成30年10月18日にされた手続補正(本件補正)について

(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により,特許請求の範囲の請求項19の記載は,次のとおり補正された。(下線は補正箇所である。)

「【請求項19】
携帯端末のクリップデータを提供する方法において,
表示部にデータを表示する動作と,
前記表示されたデータのうち,一つを選択する第1入力を受信する動作と,
前記選択されたデータをクリップデータとしてコピーするための第2入力を受信する動作と,
前記第2入力の受信に応答し,前記選択されたデータを前記クリップデータとして保存する動作と,
クリップデータ呼び出しイベントに応答し,複数のクリップデータをプレビューデータとして表示するクリップデータウィンドウを表示する動作と,
前記クリップデータウィンドウから選択されたクリップデータをペーストする動作を含み,
前記クリップデータとして保存する動作は,前記選択されたデータがリンク情報(link information)を含む,ウェブ基盤データ(web based data)の場合,前記ウェブ基盤データのコンテンツ及び前記ウェブ基盤データに相応するリンクアドレスのうち,一つを前記クリップデータとして保存するように選択する動作を含み,
前記リンクアドレスを前記クリップデータとして保存するように選択された場合,前記選択されたデータは,前記ウェブ基盤データの前記リンクアドレスを含む前記クリップデータとして保存され,
前記クリップデータウィンドウを表示する動作は,前記リンクアドレスを前記クリップデータとして保存するように選択された場合,前記クリップデータ呼び出しイベントに応答し,前記ウェブ基盤データの前記リンクアドレスを前記複数のクリップデータのうち,一つとして表示する動作を含み,
前記クリップデータウィンドウは,使用者の命令に対応する画面を表示するディスプレイ領域の少なくとも一部とオーバレイされた
ことを特徴とする携帯端末のクリップデータを提供する方法。」

(2) 本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の,平成30年5月9日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項19の記載は次のとおりである。

「【請求項19】
携帯端末のクリップデータを提供する方法において,
表示部にデータを表示する動作と,
前記表示されたデータのうち,一つを選択する第1入力を受信する動作と,
前記選択されたデータをクリップデータとして,コピーするための第2入力を受信する動作と,
前記第2入力を受信することで応答し,前記選択されたデータを前記クリップデータに保存する動作と,
クリップデータ呼び出しイベントに応答し,複数のクリップデータをプレビューデータとして表示するクリップデータウィンドウを表示する動作と,
前記クリップデータウィンドウから選択されたクリップデータをペーストする動作を含み,
前記クリップデータに保存する動作は,前記選択されたデータがリンク情報(link information)を含む,ウェブ基盤データ(web based data)の場合,前記ウェブ基盤データのコンテンツ及び前記ウェブ基盤データに相応するリンクアドレス(link address)のうち,一つを前記クリップデータに保存するように選択する動作を含み,
前記リンクアドレスを前記クリップデータに保存するように選択された場合,前記選択されたデータは,前記ウェブ基盤データの前記リンクアドレスを含む前記クリップデータに保存され,
前記クリップデータウィンドウを表示する動作は,前記リンクアドレスを前記クリップデータに保存するように選択された場合,前記クリップデータ呼び出しイベントに応答し,前記ウェブ基盤データの前記リンクアドレスを前記複数のクリップデータのうち,一つに表示する動作を含み,
前記表示部は,使用者の命令に対応する画面を表示するディスプレー領域と前記ディスプレー領域に少なくとも一部がオーバレイされたクリップボードウィンドウとを有する
ことを特徴とする携帯端末のクリップデータを提供する方法。」

(3) 補正の適否

ア 本件補正前の「前記選択されたデータをクリップデータとして、コピーするための第2入力を受信する動作」は,本件補正により,「前記選択されたデータをクリップデータとしてコピーするための第2入力を受信する動作」と補正された。

本件補正前の,「クリップデータとして」が「受信する動作」に係る旨解釈され得た本願明細書の記載と整合しない記述を,本願明細書の記載に整合するよう,「クリップデータとして」が「コピー」に係るように補正したものであり,上記補正箇所は,誤記の訂正と認められる。

イ 本件補正前の「前記第2入力を受信することで応答し、前記選択されたデータを前記クリップデータに保存する動作」は,本件補正により,「前記第2入力の受信に応答し、前記選択されたデータを前記クリップデータとして保存する動作」と補正された。

本件補正前の,「第2入力を受信すること」が「応答」の内容である旨解釈され得た本願明細書の記載と整合しない記述を,「第2入力の受信に応答し」と補正し,また,本件補正前の,「選択されたデータ」が「クリップデータ」の一部として保存される旨解釈され得た本願明細書の記載と整合しない記述を,「選択されたデータ」が「クリップデータとして保存」される旨補正し,本願明細書の記載に整合する記述としたものであるから,上記補正箇所は,誤記の訂正と認められる。

ウ 本件補正前の「前記クリップデータに保存する動作は、前記選択されたデータがリンク情報(link information)を含む、ウェブ基盤データ(web based data)の場合、前記ウェブ基盤データのコンテンツ及び前記ウェブ基盤データに相応するリンクアドレス(link address)のうち、一つを前記クリップデータに保存するように選択する動作を含み」は,本件補正により,「前記クリップデータとして保存する動作は、前記選択されたデータがリンク情報(link information)を含む、ウェブ基盤データ(web based data)の場合、前記ウェブ基盤データのコンテンツ及び前記ウェブ基盤データに相応するリンクアドレスのうち、一つを前記クリップデータとして保存するように選択する動作を含み」と補正された。

本件補正前の,「選択されたデータ」が「クリップデータ」の一部として保存される旨解釈され得た本願明細書の記載と整合しない記述を,(選択されたデータが)「クリップデータとして保存」される旨,本願明細書の記載に整合する記述に補正したものであるから,上記補正箇所は,誤記の訂正と認められる。

エ 本件補正前の「前記リンクアドレスを前記クリップデータに保存するように選択された場合、前記選択されたデータは、前記ウェブ基盤データの前記リンクアドレスを含む前記クリップデータに保存され」は,本件補正により,「前記リンクアドレスを前記クリップデータとして保存するように選択された場合、前記選択されたデータは、前記ウェブ基盤データの前記リンクアドレスを含む前記クリップデータとして保存され」と補正された。

上記補正箇所も,上記ウの補正箇所と同様に,誤記の訂正と認められる。

オ 本件補正前の「前記クリップデータウィンドウを表示する動作は、前記リンクアドレスを前記クリップデータに保存するように選択された場合、前記クリップデータ呼び出しイベントに応答し、前記ウェブ基盤データの前記リンクアドレスを前記複数のクリップデータのうち、一つに表示する動作を含み」は,本件補正により,「前記クリップデータウィンドウを表示する動作は、前記リンクアドレスを前記クリップデータとして保存するように選択された場合、前記クリップデータ呼び出しイベントに応答し、前記ウェブ基盤データの前記リンクアドレスを前記複数のクリップデータのうち、一つとして表示する動作を含み」と補正された。

上記補正箇所も,上記ウおよびエの補正箇所と同様に,誤記の訂正と認められる。

カ 本件補正前の「前記表示部は、使用者の命令に対応する画面を表示するディスプレー領域と前記ディスプレー領域に少なくとも一部がオーバレイされたクリップボードウィンドウとを有する」は,本件補正により,「前記クリップデータウィンドウは、使用者の命令に対応する画面を表示するディスプレイ領域の少なくとも一部とオーバレイされた」と補正された。

本件補正前の「クリップボードウィンドウ」は,「クリップデータウィンドウ」の誤記であるから,上記補正箇所も,誤記の訂正と認められる。

キ 本件補正は,上記ア?カのとおり,いずれも,誤記を訂正しているものであるから,特許法第17条の2第5項第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。

ク また,特許法第17条の2第3項,第4項に違反するところはない。

ケ 小活

したがって,少なくとも,請求項19に係る本件補正は適法になされたものである。

3 本願発明

平成30年10月18日にされた手続補正のうち,請求項19に係る本件補正は上記のとおり適法であるから,本願の請求項19に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成30年10月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項19に記載された事項により特定される,前記2(1)に記載のとおりのものである。

4 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1ないし20に係る発明は,本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明(以下,「引用発明」という)および引用文献2に例示された周知技術に基づいて,その優先日にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1:特開2003-132055号公報
引用文献2:"知ってた?Firefoxのツールバーカスタマイズ機能:
教えて君.net",[online],2009年4月29日,
[2018年1月30日検索],インターネット,
-kun.net/archives/2009/03/_firefox_1.html >(周知技術を示す文献)

5 引用発明

(1) 引用文献1の記載事項および引用発明

原査定の拒絶の理由で引用された,上記引用文献1には,図面(特に,図1,3,4-7,9)と共に,次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,データ編集装置及び携帯電話機及び携帯通信機器に関する。詳しくは,データのコピー(又はカット)&ペーストの操作を効率的に行うことができるデータ編集装置及び携帯電話機及び携帯通信機器に関する。」

イ 「【0019】図1に示す電子機器は,本発明に係るデータ編集装置及び携帯電話機及び携帯通信機器の実施の形態の一例であり,インターネットなどに接続してウェブサイトを閲覧する機能や電子メールなどを作成して送受信する機能等を備えた折り畳み型携帯電話機100である。
【0020】図1(a)は携帯電話機100の使用時の外観図であり,メイン表示部122を有する表示部120と,サブ表示部142を設けたヒンジ部140と,データ入力などの操作を行う操作部160とから構成されている。」

ウ 「【0037】このような構成による携帯電話機100において,所望のデータをカット&ペースト又はコピー&ペーストする場合の動作について図3のフローを参照しながら説明する。
【0038】図3(a)は,所望のデータを「コピー」又は「カット」する操作についてのフローであり,まず,携帯電話機100の操作部160の入力/通話キーや操作キー164を使ってウェブサイトに接続したり,電話帳データや既存の電子メールなどを呼び出してメイン表示部122に表示させ,閲覧(検索)する(ST110)。続いて,閲覧しているデータの中に所望のデータがあった場合,コピー(カット)するか否かを操作部160の操作キー164により選択する(ST111)。
【0039】コピー(カット)する場合は,操作部160の操作キー164でコピー(カット)する選択範囲を指定し,コピー(カット)を実行する(ST111→112)。コピー(カット)が実行されると,指定された選択範囲のデータがRAM116のクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)される。(ST113)。続いて,データのコピー(カット)操作を継続するか否かを操作部160の操作キー164により選択する(ST114)。継続する場合は,ウェブサイトや電話帳データや既存の電子メールなどをメイン表示部122に表示させて閲覧(検索)を続け,所望のデータのコピー(カット)を繰り返す。(ST114→ST110?ST113)。操作を継続しない場合は,操作部160の所定のキー操作により操作終了とする(ST114→ST115)。このようにして,所望のデータを順次クリップボードに保存(スタック)する。」

エ 「【0041】続いて,クリップボードに保存(スタック)されている所望のデータを「ペースト」操作する場合の動作について図3(b)のフローを参照しながら説明する。
【0042】まず,データをペーストする電子メール作成画面などのデータ編集画面をメイン表示部122に表示する。次に,ペーストデータの有無を確認し,データがある場合はペーストがデータをサブ表示部142に表示する(ST210,211)。続いて,メイン表示部122で電子メールの作成(データ編集)を行う(212)。そして,データをペーストしたい箇所となったとき,ペースト操作を実行するか否かを操作部160の操作キー164で選択する(ST213)。
【0043】ペースト操作を実行する場合は,サブ表示部142がアクティブとなり,続いて,現在サブ表示部142に表示されているデータをペーストするか否かを操作部160の操作キー164で選択する(ST213→ST214,ST215)。
【0044】そして,データのペーストを選択すると,メイン表示部122がアクティブとなり,サブ表示部142に表示されているデータがメイン表示部122にペーストされる(ST215→ST218,ST219)。
【0045】データのペーストをキャンセルすると,サブ表示部142の表示が切り換わってクリップボードに保存(スタック)されている次のデータが表示されるので,この表示されたデータを選択するか否かを判断する(ST215→ST216,ST217)。
【0046】このデータを選択した場合,引き続いてデータのペーストする否かを選択する(ST217→ST215)。データのペーストを選択すると,メイン表示部122がアクティブとなり,サブ表示部142に表示されているデータがメイン表示部122にペーストされる(ST215→ST218,ST219)。データのペーストをキャンセルした場合には,データ編集を継続するか否かを操作部160の操作キー164により選択する(ST220)。そして,データ編集を継続する場合は,再度,ペーストデータの有無を確認し,データがある場合はサブ表示部142に表示されてデータ編集が継続される(ST220→ST210?・・・)。データ編集を継続しない場合は,操作部160の所定のキー操作により操作終了とする(ST220→ST221)。
【0047】一方,ペースト操作の実行をしない場合,データ編集を継続するか否かを操作部160の操作キー164により選択する(ST213→ST220)。データ編集を継続する場合は,再度,ペーストデータの有無が確認され,データがある場合はサブ表示部142に表示され,データ編集が継続される(ST220→ST210?・・・)。データ編集を継続しない場合は,操作部160の所定のキー操作により操作終了とする(ST220→ST221)。」

オ 「【0048】上述のような場合の具体的な例として,ウェブサイトのデータと携帯電話機100が有している電子アドレス帳のデータを利用して電子メールを作成する場合について図4に示すフローチャートに沿って図5?8を参照しながら説明する。
【0049】表示部120と操作部160とがヒンジ部140を介して折り畳まれて閉じた状態の携帯電話機100を操作可能な状態に開くとメイン表示部122とサブ表示部142は同時に閲覧可能な状態(図1(a)参照)となる(開始待ち受け状態)。そして,操作部160の入力/通話キー162や操作キー164で所定の操作を行いインターネットなどにアクセスするとメイン表示部122に所望のウェブサイト画面が表示される(図5(a)参照)。この時,サブ表示部142は,クリップボード(記憶領域)に保存(スタック)されているデータがない場合は何も表示されず,データがある場合は一番古い又は最新のデータが表示される。また,複数のデータを表示するようにしても良い。
【0050】また,保存(スタック)データが文字(テキスト)ではなく,画像や音声のようなデータである場合(特にサブ表示部142が小さい場合)には,所定のアイコンを用いて表示したり,保存した日付データを付加して表示するなど識別できような方法で表示する。
【0051】まず,メイン表示部122に表示されているウェブページのデータの中から電話番号データをコピーするため,操作部160の操作キー164でコピー(カット)する選択範囲”03-4432-XXXX”を指定し,コピー(カット)を実行する。コピー(カット)が実行されると,指定した選択範囲の電話番号データ123aがRAM116のクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)されると共に,”コピーデータ選択 No.01”としてサブ表示部142に表示(図5(a)参照)される(ST310)。
【0052】続いて,メイン表示部122に表示されているウェブページのデータの中から地図画像が表示されるURL(アドレス)データをコピーするため,操作部160の操作キー164等でURL(アドレス)データをメイン表示部122に表示し,URL(アドレス)データである”http://www.co.jp/map/map.gif”を選択範囲として指定し,コピー(カット)を実行する。コピー(カット)が実行されると,指定した選択範囲のURL(アドレス)データ123bがRAM116のクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)されると共に,”コピーデータ選択 No.02”としてサブ表示部142に表示(図5(b)参照)される(ST311)。
【0053】更に,電子アドレス帳の電話番号データをコピーする。まず,現在アクセスしている(メイン表示部122に表示されている)ウェブページを終了,若しくは操作キー164で選択子画面(図示せず)等を表示し,電子アドレス帳を呼び出してメイン表示部122に表示する(図5(c)参照)。そして,所望の住所録データ検索し,住所録データの中の電話番号データ”090-XXXX-XXXX”を選択範囲として指定し,コピー(カット)を実行する。コピー(カット)が実行されると,指定した選択範囲の電話番号データ123cがRAM116のクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)されると共に,”コピーデータ選択 No.03”としてサブ表示部142に表示(図5(c)参照)される(ST312)。
【0054】このようにしてウェブサイト,電子アドレス帳,既存の電子メールなどから所望のデータ123a?123c・・・をコピー(カット)してクリップボード(記憶領域)に順次保存(スタック)していく。
【0055】続いて,現在アクセスしている(メイン表示部122に表示されている)ウェブページを終了,若しくは操作キー164で選択子画面(図示せず)等を表示し,図6に示すような電子メールの作成画面を起動し,メイン表示部122にメール作成画面124を表示する(ST320)。
【0056】まず,メール作成画面124でメール本文の作成を行い,作成途中の文中の所定箇所の文字列”電話:”に続いてクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)してある電話番号データ123aをペーストする場合,操作部160の操作キー164でサブ表示部142をアクティブにする(ST321)。
【0057】サブ表示部142には,クリップボード(記憶領域)に保存(スタック)してあるデータが表示され,操作部160の操作キー164でスクロールするなどの操作によってペーストしたいデータを検索して所望のデータ”貼付データ選択No.1”の電話番号データ123a’”03-4432-XXXX”を選択し,ペースト操作を実行する(図6(a)参照)。データのペースト操作を実行すると,メイン表示部122がアクティブとなり,”電話:”の文字列に続いて電話番号データ123a’”03-4432-XXXX”がペースト(図6(b)参照)される(ST322,ST323)。
【0058】次に,”お店の地図:”の文字列に続いてクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)してあるアドレス(URL)データ(図5(b)参照)をペーストする場合も上述と同様に,操作部160の操作キー164でサブ表示部142をアクティブにすると,サブ表示部142にはクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)してあるデータが表示され,操作部160の操作キー164でスクロールするなどの操作によってペーストしたいデータを検索して所望のデータ”貼付データ選択 No.2”のURL(アドレス)データ123b’”http://www.co.jp/map/map.gif”を選択してペースト操作を実行する(図7(a)参照)。データのペースト操作を実行すると,メイン表示部122がアクティブとなり,文字列”お店の地図:”に続いてURL(アドレス)データ123b’”http://www.co.jp/map/map.gif”がペースト(図7(b)参照)される(ST324→ST321?323)。
【0059】更に,文字列”幹事TEL:”に続いてクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)してある電話番号データ123c(図5(c)参照)をペーストするために,操作部160の操作キー164でサブ表示部142をアクティブにし,サブ表示部142にクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)してあるデータが表示させて操作部160の操作キー164でスクロールするなどの操作によってペーストしたいデータを検索して所望のデータ”貼付データ選択 No.3”の電話番号データ123c’”090-XXXX-XXXX”を選択し,ペースト操作を実行する(図8(a))。データのペースト操作を実行すると,メイン表示部122がアクティブとなり,文字列”幹事TEL:”に続いて電話番号データ123c’”090-XXXX-XXXX”データがペースト(図8(b)参照)される(ST324→ST321?323)。
【0060】このようにしてメイン表示部122に表示されている電子メールの所望の位置に対してクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)してある所望のデータ123a’?123c’・・・をペーストしてメール本文を作成する。」

カ 「【0061】なお,表示部120に表示される表示画面(領域)をメイン表示エリアとサブ表示エリアに分けて表示するようにしてもよい。例えば,図9(a)に示すように表示部120Aにおいてメイン表示エリア122Aを上,サブ表示エリア142Aを下にするように表示してもよく,又は,図9(b)に示すように表示部120Bにおいてサブ表示エリア142Bを上,メイン表示部122エリアを下に表示するようにしてもよい。尚,メイン表示エリアとサブ表示エリアを左右に配置したり適宜切り替えて表示したり,これ以外の方法でもよいことは勿論である。
【0062】更に,メイン表示エリアとサブ表示エリアの表示領域の広さ(大きさ)についても任意に設定することが可能であり,サブ表示エリアに表示するデータについても上述したようにように1つのデータを表示する表示方法だけでなく,複数個のデータを一度に表示し,選択できるようにすることが可能であるの勿論のことである。
【0063】また,クリップボード(記憶領域)に保存(スタック)するデータは,テキストデータ,動画,静止画,音などのデータであり,機器によって保存できるデータの種類や容量を選択したり制限することが可能であり,すべての種類を保存できるようにすることも可能である。
【0064】従って,上述したメイン表示部122とサブ表示部142とを別の表示画面として具備した折り畳み型携帯電話機100以外の携帯電話機において,画面表示部が1つしかない場合には,図9の示すようにメイン表示エリアとサブ表示エリアを分割して表示し,同時に閲覧できるようにすることで上述してきたコピー(又はカット)&ペースト操作と同等の機能を実現することが可能である。」

キ 上記アないしカから,引用文献1には,次のような引用発明が記載されていると認められる。

「データのコピー&ペーストの操作を効率的に行うことができる携帯電話機であって,
インターネットなどに接続してウェブサイトを閲覧する機能や電子メールなどを作成して送受信する機能等を備えた折り畳み型携帯電話機100であり,
携帯電話機100は,メイン表示部122を有する表示部120と,サブ表示部142を設けたヒンジ部140と,データ入力などの操作を行う操作部160とから構成されており,
このような構成による携帯電話機100において,所望のデータをコピー&ペーストする場合の動作フローであって,
携帯電話機100の操作部160の入力/通話キーや操作キー164を使ってウェブサイトに接続したり,電話帳データや既存の電子メールなどを呼び出してメイン表示部122に表示させ,閲覧(検索)し,
閲覧しているデータの中に所望のデータがあった場合,コピーするか否かを操作部160の操作キー164により選択し,コピーする場合は,操作部160の操作キー164でコピーする選択範囲を指定してコピーを実行し,
コピーが実行されると,指定された選択範囲のデータがRAM116のクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)され,
続いて,データのコピー操作を継続するか否かを操作部160の操作キー164により選択し,継続する場合は,ウェブサイトや電話帳データや既存の電子メールなどをメイン表示部122に表示させて閲覧(検索)を続け,所望のデータのコピーを繰り返し,所望のデータを順次クリップボードに保存(スタック)し,
クリップボードに保存(スタック)されている所望のデータを「ペースト」操作する場合に,ペーストデータの有無を確認し,データがある場合はペーストデータをサブ表示部142に表示し,
ペースト操作を実行する場合は,サブ表示部142がアクティブとなり,続いて,現在サブ表示部142に表示されているデータをペーストするか否かを操作部160の操作キー164で選択し,
データのペーストを選択すると,メイン表示部122がアクティブとなり,サブ表示部142に表示されているデータがメイン表示部122にペーストされ,
データのペーストをキャンセルすると,サブ表示部142の表示が切り換わってクリップボードに保存(スタック)されている次のデータが表示されるので,この表示されたデータを選択するか否かを判断し,このデータを選択した場合,引き続いてデータのペーストする否かを選択し,データのペーストを選択すると,メイン表示部122がアクティブとなり,サブ表示部142に表示されているデータがメイン表示部122にペーストされる動作フローであって,
具体的な例として,ウェブサイトのデータを利用して電子メールを作成する場合,
メイン表示部122に表示されているウェブページのデータの中から電話番号データをコピーするため,操作部160の操作キー164でコピー(カット)する選択範囲”03-4432-XXXX”を指定し,コピー(カット)を実行し,コピー(カット)が実行されると,指定した選択範囲の電話番号データ123aがRAM116のクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)されると共に,”コピーデータ選択 No.01”としてサブ表示部142に表示され,
メイン表示部122に表示されているウェブページのデータの中から地図画像が表示されるURL(アドレス)データをコピーするため,操作部160の操作キー164等でURL(アドレス)データをメイン表示部122に表示し,URL(アドレス)データである”http://www.co.jp/map/map.gif”を選択範囲として指定し,コピー(カット)を実行し,コピー(カット)が実行されると,指定した選択範囲のURL(アドレス)データ123bがRAM116のクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)されると共に,”コピーデータ選択 No.02”としてサブ表示部142に表示され,
メール作成画面124でメール本文の作成を行い,作成途中の文中の所定箇所の文字列”電話:”に続いてクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)してある電話番号データ123aをペーストする場合,操作部160の操作キー164でサブ表示部142をアクティブにすると,サブ表示部142には,クリップボード(記憶領域)に保存(スタック)してあるデータが表示され,操作部160の操作キー164でスクロールするなどの操作によってペーストしたいデータを検索して所望のデータ”貼付データ選択No.1”の電話番号データ123a’”03-4432-XXXX”を選択し,ペースト操作を実行すると,メイン表示部122がアクティブとなり,”電話:”の文字列に続いて電話番号データ123a’”03-4432-XXXX”がペーストされ,
次に,”お店の地図:”の文字列に続いてクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)してあるアドレス(URL)データをペーストする場合も同様に,操作部160の操作キー164でサブ表示部142をアクティブにすると,サブ表示部142にはクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)してあるデータが表示され,操作部160の操作キー164でスクロールするなどの操作によってペーストしたいデータを検索して所望のデータ”貼付データ選択 No.2”のURL(アドレス)データ123b’”http://www.co.jp/map/map.gif”を選択してペースト操作を実行すると,メイン表示部122がアクティブとなり,文字列”お店の地図:”に続いてURL(アドレス)データ123b’”http://www.co.jp/map/map.gif”がペーストされる
携帯電話機100において,データをコピー&ペーストする場合の動作フロー。」

6 対比

ア 本願発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の携帯電話機100は,インターネットなどに接続してウェブサイトを閲覧する機能や電子メールなどを作成して送受信する機能等を備えているため,携帯型のウェブ端末ないしメール端末であるといえるから,引用発明の携帯電話機100は,本願発明の携帯端末に対応する。
また,引用発明の携帯電話機100のコピー&ペーストする場合の動作フローは,クリップボードに保存されたデータを提供しているから,引用発明の携帯電話機100のコピー&ペーストする場合の動作フローは,本願発明の携帯端末のクリップデータを提供する方法に対応する。

(イ)引用発明の動作フローは,ウェブサイトに接続したり,電話帳データや既存の電子メールなどを呼び出したりして表示部120にデータを表示させているから,本願発明と同様に,表示部にデータを表示する動作を備えているといえる。

(ウ)引用発明の動作フローは,閲覧しているデータの中に所望のデータがあった場合,コピーするか否かを操作部160の操作キー164により選択し,コピーする場合は,操作部160の操作キー164でコピーする選択範囲を指定してコピーを実行しているから,引用発明と,本願発明とは,表示されたデータのうち,一つをクリップデータとしてコピーするため選択する入力を受信する動作を備えている点で共通しているといえる。

(エ)引用発明の動作フローは,コピーが実行されると,指定された選択範囲のデータをRAM116のクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)している。ここで,引用発明の「クリップボード(記憶領域)に保存(スタック)」されたデータは,本願発明の「クリップデータ」に相当する。 よって,引用発明と,本願発明とは,選択されたデータをクリップデータとして保存する動作を備えている点で共通しているといえる。

(オ)引用発明の携帯電話機100のコピー&ペーストする場合の動作フローにおいて,ペーストする場合,操作部160の操作キー164でサブ表示部142をアクティブにし,サブ表示部142には,クリップボード(記憶領域)に保存(スタック)してあるデータが表示される。
ここで,引用発明の動作フローにおいて,「ペーストする場合,操作部160の操作キー164でサブ表示部142をアクティブに」することが,本願発明の「クリップデータ呼び出しイベント」に対応する。
また,引用発明の動作フローにおいて,クリップボード(記憶領域)に保存(スタック)してあるデータをサブ表示部142に表示させて,操作部160の操作キー164でスクロールするなどの操作によってペーストしたいデータを検索しているから,サブ表示部142におけるデータの表示は,ペーストするデータを選択するためのプレビュー表示であるといえるから,引用発明の動作フローは,複数のクリップデータをプレビューデータとして表示しているといえる。
したがって,引用発明と,本願発明とは,クリップデータ呼び出しイベントに応答し,複数のクリップデータをプレビューデータとして表示する動作を備えている点で共通しているといえる。

(カ)引用発明の動作フローは,クリップボード(記憶領域)に保存(スタック)してあるデータをサブ表示部142に表示させて,ペーストしたいデータを検索して,ペーストしているから,本願発明と同様に,プレビューデータ表示から選択されたクリップデータをペーストする動作を含んでいるといえる。

(キ)引用発明の動作フローにおいては,メイン表示部122に表示されているウェブページのデータの中から電話番号データや,地図画像が表示されるURL(アドレス)データをコピーしている。
ここで,引用発明における「地図画像が表示されるURL(アドレス)データ」は,本願発明の「リンク情報(link information)」に対応する。
そして,引用発明の「ウェブページ」は,ウェブベース言語であるHTMLで記述されているから,本願発明の「リンク情報(link information)を含む,ウェブ基盤データ(web based data)」に相当する。
また,引用発明における「電話番号データ」は,本願発明の「ウェブ基盤データのコンテンツ」に相当する。
さらに,引用発明の動作フローは,メイン表示部122に表示されているウェブページのデータの中から地図画像が表示されるURL(アドレス)データをコピーするため,操作部160の操作キー164等でURL(アドレス)データをメイン表示部122に表示し,URL(アドレス)データである”http://www.co.jp/map/map.gif”を選択範囲として指定し,コピー(カット)を実行し,コピー(カット)が実行されると,指定した選択範囲のURL(アドレス)データ123bがRAM116のクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)されている。
ここで,引用発明における「地図画像が表示されるURL(アドレス)データ」は,本願発明の「ウェブ基盤データに相応するリンクアドレス」に相当する。

したがって,引用発明と,本願発明とは,クリップデータとして保存する動作は,選択されたデータがリンク情報(link information)を含む,ウェブ基盤データ(web based data)の場合,前記ウェブ基盤データのコンテンツ及び前記ウェブ基盤データに相応するリンクアドレスのうち,一つを前記クリップデータとして保存する動作を含む点で共通しているといえる。

また,引用発明と,本願発明とは,リンクアドレスをクリップデータとして保存するように選択された場合,前記選択されたデータは,ウェブ基盤データの前記リンクアドレスを含む前記クリップデータとして保存される点でも共通しているといえる。

(ク)引用発明の動作フローにおいては,操作部160の操作キー164でサブ表示部142をアクティブにすると,サブ表示部142にはクリップボード(記憶領域)に保存(スタック)してあるデータが表示され,操作部160の操作キー164でスクロールするなどの操作によってペーストしたいデータを検索して所望のデータ”貼付データ選択 No.2”のURL(アドレス)データ123b’”http://www.co.jp/map/map.gif”を選択している。

したがって,引用発明と,本願発明とは,クリップデータを表示する動作が,リンクアドレスを前記クリップデータとして保存するように選択された場合,前記クリップデータ呼び出しイベントに応答し,ウェブ基盤データの前記リンクアドレスを前記複数のクリップデータのうち,一つとして表示する動作を含む点で共通しているといえる。

イ 一致点・相違点

上記アより,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。

[一致点]

「携帯端末のクリップデータを提供する方法において,
表示部にデータを表示する動作と,
前記表示されたデータのうち,一つをクリップデータとしてコピーするため選択する入力を受信する動作と,
前記選択されたデータを前記クリップデータとして保存する動作と,
クリップデータ呼び出しイベントに応答し,複数のクリップデータをプレビューデータとして表示する動作と,
プレビューデータ表示から選択されたクリップデータをペーストする動作を含み,
前記クリップデータとして保存する動作は,前記選択されたデータがリンク情報(link information)を含む,ウェブ基盤データ(web based data)の場合,前記ウェブ基盤データのコンテンツ及び前記ウェブ基盤データに相応するリンクアドレスのうち,一つを前記クリップデータとして保存する動作を含み,
前記リンクアドレスを前記クリップデータとして保存するように選択された場合,前記選択されたデータは,前記ウェブ基盤データの前記リンクアドレスを含む前記クリップデータとして保存され,
前記クリップデータを表示する動作は,前記リンクアドレスを前記クリップデータとして保存するように選択された場合,前記クリップデータ呼び出しイベントに応答し,前記ウェブ基盤データの前記リンクアドレスを前記複数のクリップデータのうち,一つとして表示する動作を含み,
携帯端末のクリップデータを提供する方法。」

[相違点1]

本願発明では,クリップデータとしてコピーするために表示されたデータの一部を選択する際に,選択する入力を受信してからコピーする入力を受信しているのに対し,引用発明では,コピーする入力を受信してから選択する入力を受信している点。

[相違点2]

本願発明では,クリップデータをプレビュー表示する際に,使用者の命令に対応する画面を表示するディスプレイ領域の少なくとも一部とオーバレイされたクリップデータウィンドウに表示しているのに対し,引用発明では,サブ表示部に表示している点。

[相違点3]

本願発明では,リンク情報(link information)を含む,ウェブ基盤データ(web based data)をクリップデータとして保存する際に,前記ウェブ基盤データのコンテンツ及び前記ウェブ基盤データに相応するリンクアドレスのうち,一つを選択しているのに対し,引用発明では,ウェブ基盤データのコンテンツやウェブ基盤データに相応するリンクアドレスのいずれかを選択しているか否か特定されていない点。

7 判断

ア [相違点1]について

ウェブ基盤データ(web based data)であるウェブデータを表示する携帯端末のウェブブラウザの技術分野において,表示されたデータの一部を選択してクリップデータとして保存する際に,選択指示を入力してから,コピー/カット指示を入力する技術は,本願優先日前に周知の技術に過ぎない(例えば,特開2005-250896号公報の段落0029-0032,図4のD2およびD3などを参照されたい。)。

よって,引用発明において,表示されたデータの一部を選択してクリップデータとして保存する際に,コピーを指示してからデータ選択する構成に代えて,上記周知技術を採用することによって,データの一部を選択する入力を受信してからコピーする入力を受信する構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。

イ [相違点2]について

引用文献1には,さらに,段落0061-0064において,サブ表示画面に,クリップボードデータを表示する構成に代えて,表示画面をメイン表示エリアとサブ表示エリアに分けて表示してもよい旨記載されている。これは,分割ウィンドウにクリップボードデータを表示することを示唆しているといえる。

また,携帯端末の技術分野において,クリップボードデータをプレピュー表示する際に,データ表示画面の一部とオーバレイされたクリップボードウィンドウ(いわゆるオーバーラップウィンドウ)に表示することも,本願の優先日前に周知の技術に過ぎない(例えば,上記アで参照した特開2005-250896号公報の図4のD4の43などを参照されたい。なお,当該図では,複数のクリップボードデータをクリップボードウィンドウにおいてプレピュー表示する際に,5件超の表示しきれないデータをスクロール可能なようにウィンドウ右側にスクロールバーを備えていることが認められるから,本願の請求項20に対応する構成も本願の優先日前に周知であったといえる。)。

さらに,ペーストしたいデータをプレビュー表示する際に,分割ウィンドウに表示するか,オーバーラップウィンドウに表示するかは,当業者が適宜選択すべき設計的事項に過ぎない。

よって,引用発明において,クリップボードデータをプレピュー表示する際に,サブ表示部に表示する構成に代えて,上記周知技術を採用することによって,データ表示画面の一部とオーバレイされたクリップボードウィンドウに表示する構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。

ウ [相違点3]について

引用発明では,ウェブページの地図画像「map.gif」をクリップボードに保存する際に,当該地図画像のURL(アドレス)データ「http://www.co.jp/map/map.gif」を保存しているが,ファイルの名の拡張子から明らかなようにgifデータ形式の画像データである地図画像データ「map.gif」自体をクリップボードに保存することは特定されていない。
しかし,引用文献1の段落0063において,クリップボードに保存するデータは,テキストデータだけでなく,動画,静止画(gifデータ形式の画像データも含まれる),音などのデータである旨記載されているから,引用発明においても,地図画像データ「map.gif」自体をクリップボードに保存可能であることが示唆されているといえる。

また,ウェブ基盤データ(web based data)であるウェブページを表示するウェブブラウザの技術分野において,画面表示された画像データを選択してクリップデータとして保存する際に,画像データそのものをクリップボードにコピーするか,画像データが格納されているURL(アドレス)データをコピーするかを選択可能な構成は,本願の優先日前に周知の技術に過ぎない(例えば,原査定で周知技術を示すものとして提示された引用文献2の2ページ下部にはブラウザのメニュー項目が一覧表示されており,「画像をコピー」,「画像のURLをコピー」とのメニュー項目が記載されている。ここで,「画像をコピー」が画像データそのものをクリップボードにコピーするためのメニュー項目であり,「画像のURLをコピー」とのメニュー項目が画像データが格納されているURL(アドレス)データをコピーするためのメニュー項目であることは,当業者にとって明らかである。)
よって,引用発明において,ウェブ基盤データ(web based data)であるウェブページを表示するブラウザ表示画面において,画面表示された画像データを選択してクリップデータとして保存する際に,上記周知技術を採用することによって,画像データそのものをクリップボードにコピーするか,画像データが格納されているURL(アドレス)データをコピーするかを選択可能な構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。

エ 本願発明の作用効果について

そして,本願発明の奏する作用効果は,当業者であれば,引用発明及び周知技術から予測できる範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

オ 小活

したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

8 むすび

以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について論及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-01-27 
結審通知日 2020-02-03 
審決日 2020-02-14 
出願番号 特願2017-12461(P2017-12461)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩島 豪滝谷 亮一  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 野崎 大進
岩田 玲彦
発明の名称 携帯端末でクリップボード機能提供方法及び装置  
代理人 阿部 達彦  
代理人 木内 敬二  
代理人 崔 允辰  
代理人 実広 信哉  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ