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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B01D
審判 一部申し立て 2項進歩性  B01D
審判 一部申し立て 発明同一  B01D
管理番号 1363968
異議申立番号 異議2019-700716  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-09 
確定日 2020-05-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6480464号発明「中空筒状フィルタ、及び製造装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6480464号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?9、11?16〕について訂正することを認める。 特許第6480464号の請求項2、6、7に係る特許を維持する。 特許第6480464号の請求項1、3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6480464号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、2015年(平成27年)10月29日(優先権主張 平成26年10月30日 日本国(JP))を国際出願日として特許出願され、平成31年 2月15日にその請求項1?10に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年 3月13日に特許掲載公報が発行され、その後、請求項1?3、6及び7に係る特許に対して、令和 1年 9月 9日付けで特許異議申立人松本 征二(以下、「申立人」という。)により、甲第1?5号証を添付して特許異議の申立てがされ、同年12月 3日付けで当審より取消理由が通知され、その指定期間内である令和 2年 2月 3日付けで、特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、これに対し、申立人に意見を求めたが、期間内に何らの応答もなされなかったものである。

第2 本件訂正請求による訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、以下の訂正事項からなる(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に
「各線材層を構成する前記金属線材は、長手方向と交差する方向に繰り返す凹所を有すると共に、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、
隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、」
と記載されているのを、
「各線材層を構成する前記金属線材は、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、
隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成されて、長手方向に対して傾斜する方向に延びると共に該長手方向と交差する方向に繰り返す凹所とを有しており、」
と訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4に
「前記凹所は、長手方向に沿って繰り返す凹所であることを特徴とする請求項3に記載の中空筒状フィルタ。」
と記載されているのを、
「金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された長手方向に沿って繰り返す凹所とを有すると共に、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、
隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。」
と訂正する(請求項4を直接的または間接的に引用する請求項6?9も同様に訂正する。)。

(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項5に
「前記金属線材は、長手方向に沿って繰り返す厚肉の細幅部と薄肉の幅広部とを有することを特徴とする請求項3又は4に記載の中空筒状フィルタ。」
と記載されているのを、
「金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された凹所とを有し、更に前記金属線材は、長手方向に沿って繰り返す厚肉の細幅部と薄肉の幅広部とを有して、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、
隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。」
と訂正する(請求項5を直接的または間接的に引用する請求項6?9も同様に訂正する。)。

(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項6に
「請求項1乃至5の何れか一項に記載の中空筒状フィルタ。」
と記載されているのを、
「請求項4又は5に記載の中空筒状フィルタ。」
と訂正する(請求項6を直接的または間接的に引用する請求項8、9も同様に訂正する。)。

(7)訂正事項7
本件訂正前の請求項7に
「請求項1乃至5の何れか一項に記載の中空筒状フィルタ。」
と記載されているのを、
「請求項4又は5に記載の中空筒状フィルタ。」
と訂正する(請求項7を直接的または間接的に引用する請求項8、9も同様に訂正する。)。

(8)訂正事項8
本件訂正前の請求項8に
「請求項1乃至7の何れか一項に記載の中空筒状フィルタ。」
と記載されているのを、
「請求項4乃至7の何れか一項に記載の中空筒状フィルタ。」
と訂正する(請求項8を引用する請求項9も同様に訂正する。)。

(9)訂正事項9
新たに下記請求項11を追加する。
「【請求項11】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された長手方向に沿って繰り返す凹所とを有し、更に前記金属線材は、長手方向に沿って繰り返す厚肉の細幅部と薄肉の幅広部とを有して、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、
隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。」

(10)訂正事項10
新たに下記請求項12を追加する。
「【請求項12】
前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分に前記凹所が形成されていることを特徴とする請求項11に記載の中空筒状フィルタ。」

(11)訂正事項11
新たに下記請求項13を追加する。
「【請求項13】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分は、長手方向に沿って形成される凹所を有しており、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。」

(12)訂正事項12
新たに下記請求項14を追加する。
「【請求項14】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分は、長手方向と交差する方向に繰り返す凹所を有しており、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。」

(13)訂正事項13
新たに下記請求項15を追加する。
「【請求項15】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された凹所とを有しており、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。」

(14-1)訂正事項14-1
訂正事項1?8による訂正に伴って、本件訂正前の請求項9が請求項8を介して請求項1?7を引用していたのを、本件訂正後の請求項9が請求項8を介して請求項4?7を引用するものに訂正する。

(14-2)訂正事項14-2
新たに下記請求項16を追加する。
「【請求項16】
請求項12乃至15の何れか一項に記載の中空筒状フィルタの製造装置であって、
対向配置された一対の圧延ローラを有し、金属素線を間に挟んで所定の断面形状の金属線材を形成する圧延装置と、該圧延装置によって形成された前記金属線材を心棒に巻付けて中空筒状体を形成する巻付装置と、を備え、
前記一対の圧延ローラは、軸方向の異なる位置に、前記第一の金属線材部分を形成する第一金属線材形成部と、前記第二の金属線材部分を形成する第二金属線材形成部と、を備え、
前記圧延装置は、前記一対の圧延ローラの軸方向に沿って進退して前記金属素線を前記第一金属線材形成部又は前記第二金属線材形成部に案内するガイド手段を備えたことを特徴とする中空筒状フィルタの製造装置。」

(15)訂正事項15
訂正前の明細書の【0005】に
「上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、各線材層を構成する前記金属線材は、長手方向に沿って形成される凹所を有すると共に、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする。」
と記載されているのを、
「上記の課題を解決するために、本発明は、金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、各線材層を構成する前記金属線材は、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする。
第一の発明において、前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成されて、長手方向に対して傾斜する方向に延びると共に該長手方向と交差する方向に繰り返す凹所とを有することを特徴とする。
第二の発明において、前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された長手方向に沿って繰り返す凹所とを有することを特徴とする。
第三の発明において、前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された凹所とを有し、更に前記金属線材は、長手方向に沿って繰り返す厚肉の細幅部と薄肉の幅広部とを有することを特徴とする。
第四の発明においては、前記凹所が、濾過する流体の上流側を向くように前記金属線材が配置されていることを特徴とする。
第五の発明においては、前記凹所が、濾過する流体の下流側を向くように前記金属線材が配置されていることを特徴とする。
第六の発明において、前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された長手方向に沿って繰り返す凹所とを有し、更に前記金属線材は、長手方向に沿って繰り返す厚肉の細幅部と薄肉の幅広部とを有することを特徴とする。」
と訂正する。

(16)訂正事項16
訂正前の明細書の【0006】に
「請求項2に記載の発明は、金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、各線材層を構成する前記金属線材は、長手方向と交差する方向に繰り返す凹所を有すると共に、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、各線材層を構成する前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された凹所とを有すると共に、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、前記凹所は、長手方向に沿って繰り返す凹所であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、前記金属線材は、長手方向に沿って繰り返す厚肉の細幅部と薄肉の幅広部とを有することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、前記凹所が、濾過する流体の上流側を向くように前記金属線材を配置したことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、前記凹所が、濾過する流体の下流側を向くように前記金属線材を配置したことを特徴とする。」
と記載されているのを、
「第七の発明において、前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分に前記凹所が形成されていることを特徴とする。
第八の発明は、前記一方の金属線材部分に替えて、長手方向に沿って形成される凹所を有する金属線材部分を備えることを特徴とする。
第九の発明は、前記一方の金属線材部分に替えて、長手方向と交差する方向に繰り返す凹所を有する金属線材部分を備えることを特徴とする。
第十の発明は、前記一方の金属線材部分に替えて、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された凹所とを有する金属線材部分を備えることを特徴とする。」
と訂正する。

(17)訂正事項17
訂正前の明細書の【0007】に
「請求項8に記載の発明は、前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分に前記凹所が形成されていることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の中空筒状フィルタの製造装置であって、対向配置された一対の圧延ローラを有し、金属素線を間に挟んで所定の断面形状の金属線材を形成する圧延装置と、該圧延装置によって形成された前記金属線材を心棒に巻付けて中空筒状体を形成する巻付装置と、を備え、前記一対の圧延ローラは、軸方向の異なる位置に、前記第一の金属線材部分を形成する第一金属線材形成部と、前記第二の金属線材部分を形成する第二金属線材形成部と、を備え、前記圧延装置は、前記一対の圧延ローラの軸方向に沿って進退して前記金属素線を前記第一金属線材形成部又は前記第二金属線材形成部に案内するガイド手段を備えたことを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタの製造装置であって、前記中空筒状フィルタは、各線材層を構成する前記金属線材が、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されており、前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分に前記凹所が形成されており、前記中空筒状フィルタの製造装置は、対向配置された一対の圧延ローラを有し、金属素線を間に挟んで所定の断面形状の金属線材を形成する圧延装置と、該圧延装置によって形成された前記金属線材を心棒に巻付けて中空筒状体を形成する巻付装置と、を備え、前記一対の圧延ローラは、軸方向の異なる位置に、前記第一の金属線材部分を形成する第一金属線材形成部と、前記第二の金属線材部分を形成する第二金属線材形成部と、を備え、前記圧延装置は、前記一対の圧延ローラの軸方向に沿って進退して前記金属素線を前記第一金属線材形成部又は前記第二金属線材形成部に案内するガイド手段を備えたことを特徴とする。」
と記載されているのを、
「第十一の発明は、金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタの製造装置であって、前記中空筒状フィルタは、各線材層を構成する前記金属線材が、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されており、前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分に前記凹所が形成されており、前記中空筒状フィルタの製造装置は、対向配置された一対の圧延ローラを有し、金属素線を間に挟んで所定の断面形状の金属線材を形成する圧延装置と、該圧延装置によって形成された前記金属線材を心棒に巻付けて中空筒状体を形成する巻付装置と、を備え、前記一対の圧延ローラは、軸方向の異なる位置に、前記第一の金属線材部分を形成する第一金属線材形成部と、前記第二の金属線材部分を形成する第二金属線材形成部と、を備え、前記圧延装置は、前記一対の圧延ローラの軸方向に沿って進退して前記金属素線を前記第一金属線材形成部又は前記第二金属線材形成部に案内するガイド手段を備えたことを特徴とする。」
と訂正する。

なお、本件訂正前の請求項1?3はいずれも独立請求項であり、請求項4、5は直接的又は間接的に請求項3を引用し、請求項6?9は直接的又は間接的に請求項1?3のいずれかを引用するものであるから、本件訂正前の請求項1?9は特許法120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
また、訂正事項9による訂正は、本件訂正前の請求項5の一部を新たな請求項11として独立請求項とするものであり、訂正事項10による訂正は、本件訂正前の請求項8の一部を、請求項11を引用する新たな請求項12とするものであり、訂正事項11?13による訂正は、それぞれ、本件訂正前の請求項8の一部を新たな請求項13?15として独立請求項とするものであり、訂正事項14による訂正は、本件訂正前の請求項9の一部を、請求項12?15を引用する新たな請求項16とするものであって、本件訂正前の請求項1?9は特許法120条の5第4項に規定される一群の請求項であることは前記のとおりであるから、結局、訂正後の請求項1?9、11?16は一群の請求項である。
更に、訂正事項15?17に係る訂正は、願書に添付した明細書を訂正するものであるが、このうち訂正事項15及び16は、本件訂正前の請求項1?9に対応する訂正後の請求項1?9、11?16に関係する訂正であり、訂正事項17は、訂正事項15及び16の訂正にともなって願書に添付した明細書を訂正するものである。
そうすると、本件訂正は、願書に添付した明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項1?9、11?16について行われるものであり、特許法第120条の5第4項及び同法同条第9項で準用する同法第126条第4項の規定に従ってなされたものということができる。

2 訂正の目的の適否、新規事項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1及び3について
訂正事項1及び3による訂正は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1、3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項を追加するものではないこと、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(2)訂正事項2について
(ア)訂正事項2による訂正は、「金属線材」の構成を、「平坦面と、該平坦面の裏側に形成されて、長手方向に対して傾斜する方向に延びると共に該長手方向と交差する方向に繰り返す凹所とを有」するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)また、願書に添付した明細書の【0035】には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
「【0035】
〔変形実施形態〕
第二の実施形態の変形例について説明する。
図14(a)、(b)は、変形例に係る金属線材を示す斜視図である。金属線材の一方の側に凹所を、他方の側に平坦面を形成する場合、凹所形成側は任意の形態とすることができる。・・・また、図14(b)に示すように金属線材207の一方の側には、長手方向に対して傾斜する方向に延びる複数の凹所221及び凸所222を形成してもよい。
金属線材の一方の側に凹凸を形成し、他方の面を平坦面としたので、金属線材間の焼結接点を確保でき、フィルタ強度を向上させることができる。」

(ウ)前記(イ)によれば、願書に添付した明細書には、「金属線材」が、「平坦面と、該平坦面の裏側に形成されて、長手方向に対して傾斜する方向に延びると共に該長手方向と交差する方向に繰り返す凹所とを有」することが記載されているといえるから、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(3)訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、本件訂正前の請求項4が請求項3を引用する記載であったのを、引用関係を解消して独立形式に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、新規事項を追加するものではないこと、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(4)訂正事項5、9について
訂正事項5による訂正は、本件訂正前の請求項5が請求項3又は4を引用する記載であったのを、請求項4との引用関係を解消して独立形式に改めるものであり、訂正事項9による訂正は、本件訂正前の請求項5が請求項3又は4を引用する記載であったのを、請求項3との引用関係を解消して独立形式に改めて新たに請求項11とするものであるから、全体として、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。
そして、訂正事項5及び9による訂正が、いずれも、新規事項を追加するものではないこと、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(5)訂正事項6、7について
訂正事項6、7による訂正は、それぞれ、請求項6、7において、選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではないこと、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(6)訂正事項8、10?13について
訂正事項8、10?13は、本件訂正前の請求項8(請求項1?7を引用)に関する訂正であるところ、当該訂正事項8、10?13は、その引用関係を解消し、独立請求項とするなどして、新たな請求項に書き下すとともに、その選択的引用請求項の一部を削除するもの(例えば、請求項1を引用する請求項6を引用する請求項8を「8-6-1」などと呼称すると、本件訂正前の請求項8のうち、「8-6-1」、「8-6-2」、「8-6-3」、「8-6-5-4-3」、「8-7-1」、「8-7-2」、「8-7-3」、「8-7-5-4-3」は削除されている。なお、上記(5)に係る新たな請求項6、7においても、「6-5-4-3」、「7-5-4-3」は削除されている。)であるから、これらの訂正事項は、全体として、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する請求項間の引用関係の解消及び同第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項8、10?13による訂正が、新規事項を追加するものではないこと、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(7)訂正事項14-1、14-2について
訂正事項14-1による訂正は、訂正事項1?8による訂正に伴って、本件訂正前の請求項9が請求項8を介して請求項1?7を引用していたのを、本件訂正後の請求項9が請求項8を介して請求項4?7を引用するものに訂正するものであり、14-2による訂正は、訂正事項11?13による訂正に伴って、本件訂正前の請求項9の一部を、請求項12?15を引用する新たな請求項16とするものである。
そして、訂正事項14-1、14-2による訂正は、全体として、選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項14による訂正が、新規事項を追加するものではないこと、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(8)訂正事項15?17について
訂正事項15、16による訂正は、それぞれ、訂正事項1?14-2による訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と本件特許明細書の記載を合致させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項17による訂正は、訂正事項15、16による訂正に伴って、本件特許明細書の記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項15?17による訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 独立特許要件について
(ア)本件特許異議の申立てにおいては、本件訂正前の請求項1?3、6、7に係る発明の特許に対して特許異議の申立がされているので、前記請求項1?3、6、7に対応する本件訂正後の請求項2、6、7については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。

(イ)本件特許異議の申立てにおいて、本件訂正前の請求項4、5に対しては特許異議の申立てはされていないが、本件訂正前の請求項4、5の訂正に係る訂正事項4、5、9は、いずれも、 特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、同第1号、第2号に規定する事項を目的とするものではないので、訂正事項4、5、9による本件訂正後の請求項4、5については、前記特許法第126条第7項の規定は適用されない。

(ウ)本件特許異議の申立てにおいて、本件訂正前の請求項8、9に対して特許異議の申立てはされておらず、本件訂正前の請求項8に係る訂正事項8、10?13及び本件訂正前の請求項 9の訂正に係る訂正事項14-1、14-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮をも目的とするものであるので、訂正事項8、10?13による本件訂正後の新たな請求項8、12?15及び訂正事項14-1、14-2による本件訂正後の新たな請求項9、16については、前記特許法第126条第7項の規定が適用される。
そこで、本件訂正後の請求項8、9、12?16に係る発明が前記特許法第126条第7項の規定に適合するか否かについて検討すると、本件訂正後の請求項8、9、12?16に係る発明は、いずれも、本件訂正前の請求項8又は9の発明特定事項を有するものである。
そして、本件訂正前の請求項8又は9に係る発明は、拒絶理由を有しないものとして特許され、当該特許を取り消すべき理由も発見しないから、本件訂正前の請求項8又は9の発明特定事項を有する本件訂正後の請求項8、9、12?16に係る発明が、特許出願時に独立して特許を受けることができるものであることは明らかであるので、本件訂正後の請求項8、9、12?16に係る発明は、前記特許法第126条第7項の規定に適合する。

4 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項及び第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?9、11?16〕について訂正することを認める。
なお、本件訂正により生じた独立請求項に関し、別の訂正単位とする求めはなされていない。

第3 本件特許発明
本件訂正が認められることは上記第2に記載のとおりであるので、本件特許の請求項2、4?16に係る発明(以下、「本件発明2」、「本件発明4」?「本件発明16」といい、まとめて「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項2、4?16に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、
隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成されて、長手方向に対して傾斜する方向に延びると共に該長手方向と交差する方向に繰り返す凹所とを有しており、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する
前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された長手方向に沿って繰り返す凹所とを有すると共に、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、
隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。
【請求項5】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された凹所とを有し、更に前記金属線材は、長手方向に沿って繰り返す厚肉の細幅部と薄肉の幅広部とを有して、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、
隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。
【請求項6】
前記凹所が、濾過する流体の上流側を向くように前記金属線材を配置したことを特徴とする請求項4又は5の何れか一項に記載の中空筒状フィルタ。
【請求項7】
前記凹所が、濾過する流体の下流側を向くように前記金属線材を配置したことを特徴とする請求項4又は5の何れか一項に記載の中空筒状フィルタ。
【請求項8】
前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分に前記凹所が形成されていることを特徴とする請求項4乃至7の何れか一項に記載の中空筒状フィルタ。
【請求項9】
請求項8に記載の中空筒状フィルタの製造装置であって、
対向配置された一対の圧延ローラを有し、金属素線を間に挟んで所定の断面形状の金属線材を形成する圧延装置と、該圧延装置によって形成された前記金属線材を心棒に巻付けて中空筒状体を形成する巻付装置と、を備え、
前記一対の圧延ローラは、軸方向の異なる位置に、前記第一の金属線材部分を形成する第一金属線材形成部と、前記第二の金属線材部分を形成する第二金属線材形成部と、を備え、
前記圧延装置は、前記一対の圧延ローラの軸方向に沿って進退して前記金属素線を前記第一金属線材形成部又は前記第二金属線材形成部に案内するガイド手段を備えたことを特徴とする中空筒状フィルタの製造装置。
【請求項10】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタの製造装置であって、
前記中空筒状フィルタは、
各線材層を構成する前記金属線材が、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、
隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されており、
前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分に前記凹所が形成されており、
前記中空筒状フィルタの製造装置は、
対向配置された一対の圧延ローラを有し、金属素線を間に挟んで所定の断面形状の金属線材を形成する圧延装置と、該圧延装置によって形成された前記金属線材を心棒に巻付けて中空筒状体を形成する巻付装置と、を備え、
前記一対の圧延ローラは、軸方向の異なる位置に、前記第一の金属線材部分を形成する第一金属線材形成部と、前記第二の金属線材部分を形成する第二金属線材形成部と、を備え、
前記圧延装置は、前記一対の圧延ローラの軸方向に沿って進退して前記金属素線を前記第一金属線材形成部又は前記第二金属線材形成部に案内するガイド手段を備えたことを特徴とする中空筒状フィルタの製造装置。
【請求項11】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された長手方向に沿って繰り返す凹所とを有し、更に前記金属線材は、長手方向に沿って繰り返す厚肉の細幅部と薄肉の幅広部とを有して、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、
隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。
【請求項12】
前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分に前記凹所が形成されていることを特徴とする請求項11に記載の中空筒状フィルタ。
【請求項13】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分は、長手方向に沿って形成される凹所を有しており、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。
【請求項14】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分は、長手方向と交差する方向に繰り返す凹所を有しており、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。
【請求項15】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された凹所とを有しており、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。
【請求項16】
請求項12乃至15の何れか一項に記載の中空筒状フィルタの製造装置であって、
対向配置された一対の圧延ローラを有し、金属素線を間に挟んで所定の断面形状の金属線材を形成する圧延装置と、該圧延装置によって形成された前記金属線材を心棒に巻付けて中空筒状体を形成する巻付装置と、を備え、
前記一対の圧延ローラは、軸方向の異なる位置に、前記第一の金属線材部分を形成する第一金属線材形成部と、前記第二の金属線材部分を形成する第二金属線材形成部と、を備え、
前記圧延装置は、前記一対の圧延ローラの軸方向に沿って進退して前記金属素線を前記第一金属線材形成部又は前記第二金属線材形成部に案内するガイド手段を備えたことを特徴とする中空筒状フィルタの製造装置。」

第4 異議申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1?5号証を提出し、以下の異議申立理由によって、本件訂正前の請求項1?3、6、7に係る発明の特許は取り消すべきものである旨を主張している。

甲第1号証:特開2009-190656号公報
甲第2号証:特願2013-121080(特開2014-237389号公報)
甲第3号証:特開2002-301317号公報
甲第4号証:特開2001-171472号公報
甲第5号証:特開2005-193762号公報

1 特許法第29条第1項について
本件訂正前の請求項1、2、6、7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、本件訂正前の請求項1、2、6、7に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

2 特許法第29条の2について
本件訂正前の請求項1?3、6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と同一であるから、本件訂正前の請求項1?3、6に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

3 特許法第29条第2項について
本件訂正前の請求項2、6、7に係る発明は、甲第3号証に記載された発明及び甲第1、4、5号証に記載される周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項2、6、7に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

第5 取消理由の概要
令和 1年12月 3日付け取消理由通知による取消理由の概要は、以下のとおりである。
1 特許法第29条第1項、第2項について
本件訂正前の請求項1、2、6、7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1、2、6、7に係る発明の特許は、特許法第29条第1項または第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

2 特許法第29条の2について
本件訂正前の請求項1?3、6、7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と同一であるから、本件訂正前の請求項1?3、6、7に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

第6 取消理由についての判断
1 特許法第29条第1項、第2項について
(1)甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載される発明
甲第1号証には以下(1a)?(1f)の記載がある。
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本又は複数本の金属線材が組み合わされてなるフィルタ用成形体であり、前記金属線材が表面に凹凸を有しているものである、フィルタ用成形体。」

(1b)「【0020】
<フィルタ用成形体を構成する金属線材>
図1により、一実施形態の金属線材を説明する。(a)は金属線材の端部を含む斜視図、(b)は(a)の断面図である。
【0021】
金属線材30は、鉄又はステンレス製のものである。線材本体部31の表面には、放射状にかつ円周方向に等間隔に5つの突起(凸部)32が形成されており、各突起32間は凹部33となっている。突起32の数は3?8にすることができる。
【0022】
5つの突起32は、それぞれ長さ方向に連続して形成されており、凹部33は長さ方向に連続した溝になっている。」

(1c)「【0030】
<金属線材30を用いたフィルタ用成形体及びその製造方法>
図3はエアバッグ用ガス発生器の縦断面図であるが、ハウジング3の内部には筒状のフィルタ7が配置されている。この筒状のフィルタ7は、上記した(I)?(III)の方法を適用して製造することができる。以下、より詳細に説明する。
・・・
【0033】
(III)の方法
金属線材30を芯材に対して多数回巻き付けて円筒状に成形した後、前記芯材を引き抜く方法であり、特開2001-171472号公報に記載の方法も適用できる。このとき、巻き方向は何度か変えても良い。」

(1d)「【0044】
筒状のフィルタ7は、表面に放射状の連続突起32(及び連続溝33)を有する金属線材30からなるものであるため、表面が平滑な金属線材を用いて製造されたものと比べると、前記連続突起32(及び連続溝33)の存在により、内部の空隙構造が複雑になり、内部の表面積が増大される。このため、筒状のフィルタ7を燃焼ガスが通過するとき、金属線材30と燃焼ガスとの接触面積が増大されることになり、冷却効果及び濾過効果が向上される。」

(1e)「



(1f)「



(ア)前記(1a)によれば、甲第1号証には「フィルタ用成形体」が記載されており、当該「フィルタ用成形体」は、1本又は複数本の金属線材が組み合わされてなるフィルタ用成形体であり、前記金属線材が表面に凹凸を有しているものである。
具体的には、前記(1b)?(1f)によれば、金属線材30の線材本体部31の表面には、放射状にかつ円周方向に等間隔に5つの突起(凸部)32が形成され、各突起32間は凹部33となっており、前記5つの突起32は、それぞれ長さ方向に連続して形成されており、前記凹部33は長さ方向に連続した溝になっているものであって、前記フィルタ用成形体は、筒状のフィルタ7であり、金属線材30を芯材に対して多数回巻き付けて円筒状に成形した後、前記芯材を引き抜く、特開2001-171472号公報に記載の方法で製造されるものであり、連続突起32(及び連続溝33)の存在により、内部の空隙構造が複雑になり、内部の表面積が増大されるものである。

(イ)前記(ア)によれば、甲第1号証には、
「1本又は複数本の金属線材が組み合わされてなるフィルタ用成形体であり、前記金属線材が表面に凹凸を有しているフィルタ用成形体であって、
金属線材の線材本体部の表面には、放射状にかつ円周方向に等間隔に5つの突起が形成され、各突起間は凹部となっており、前記5つの突起は、それぞれ長さ方向に連続して形成されており、前記凹部は長さ方向に連続した溝になっており、
前記フィルタ用成形体は、筒状のフィルタであり、金属線材を芯材に対して多数回巻き付けて円筒状に成形した後、前記芯材を引き抜く、特開2001-171472号公報に記載の方法で製造され、
連続突起及び連続溝の存在により、内部の空隙構造が複雑になる、フィルタ用成形体。」
の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

(2)対比・判断
(2-1)本件発明2について
ア 対比
(ア)本件発明2と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「筒状のフィルタであり、金属線材を芯材に対して多数回巻き付けて円筒状に成形した後、前記芯材を引き抜く方法」「で製造される」「フィルタ用成形体」は、本件発明2における「金属線材を」「巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタ」に相当し、甲1発明における「凹部」は、「金属線材」の円周方向に繰り返すものといえ、「金属線材」の円周方向は「長手方向と交差する方向」といえるから、本件発明2における「長手方向と交差する方向に繰り返す凹所」に相当する。

(イ)前記(ア)によれば、本件発明2と甲1発明とは、
「金属線材を巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、前記金属線材は、長手方向と交差する方向に繰り返す凹所を有する、中空筒状フィルタ。」
である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。

相違点1:本件発明2に係る「中空筒状フィルタ」は、「金属線材」が、「平坦面と、該平坦面の裏側に形成されて、長手方向に対して傾斜する方向に延び」る「凹所」「とを有」する、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、「金属線材の線材本体部の表面」に、「放射状にかつ円周方向に等間隔に5つの突起が形成され、各突起間が凹部となって」おり、「前記凹部は長さ方向に連続した溝になって」いる点。

イ 判断
(ア)甲1発明における「凹部」は「長さ方向に連続した溝になって」いるものであり、「長手方向に対して傾斜する方向に延び」る「凹所」とはいえないことは明らかであって、前記ア(イ)の相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明2が甲1発明であるとはいえない。

(イ)更に、前記相違点1について検討すると、下記第7の1(1)(1-2)(4a)?(4b)によれば、甲第4号証には「エアバッグインフレーター用フィルターの製造方法」に関する技術的事項が記載されているものの、「中空筒状フィルタ」の「金属線材」を、「平坦面と、該平坦面の裏側に形成されて、長手方向に対して傾斜する方向に延び」る「凹所」「とを有」するものとすることが記載も示唆もされていないから、甲1発明において、「中空筒状フィルタ」の「金属線材」を、「平坦面と、該平坦面の裏側に形成されて、長手方向に対して傾斜する方向に延び」る「凹所」「とを有」する、との前記相違点1に係る本件発明2の発明特定事項を有するものとすることを、甲第4号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえない。

(ウ)したがって、本件発明2を、甲1発明及び甲第4号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2-2)本件発明6、7について
本件発明6、7は、いずれも、異議申立てがされておらず、取消理由も通知されていない本件訂正前の請求項4、5の発明特定事項を有する本件発明4又は5を引用するものであり、本件発明6、7が甲1発明であるとはいえないこと、及び、甲1発明及び甲第4号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことは明らかである。

(2-3)小括
したがって、前記第5の1の取消理由は理由がない。

2 特許法第29条の2について
(1)甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載される発明
甲第2号証には以下(2a)?(2e)の記載がある。
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線材の巻回体または編組体にて構成された中空筒状のガス発生器用フィルタであって、
前記金属線材は、当該金属線材の延在方向における任意の位置の断面形状が相互に一致する長尺状の部材からなり、
前記金属線材の表面には、前記延在方向に沿って延びる溝部が設けられ、
前記溝部の深さ方向に沿った前記金属線材の最大外形寸法が、前記溝部の幅方向に沿った前記金属線材の最大外形寸法よりも小さく、
前記溝部が、当該ガス発生器用フィルタの中空部側を向いている、ガス発生器用フィルタ。」

(2b)「【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるガス発生器の概略図である。まず、この図1を参照して、本実施の形態におけるガス発生器1について説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1は、軸方向の両端が閉塞された短尺略円筒状のハウジングを有しており、このハウジングの内部に設けられた収容空間に、内部構成部品としての保持部30、点火器40、カップ状部材50、伝火薬56、ガス発生剤61、下側保持部材62、上側保持部材63、クッション材64およびフィルタ70A等が収容されることで構成されている。・・・」

(2c)「【0063】
図2は、図1において示した本実施の形態におけるガス発生器用フィルタの概略斜視図であり、図3は、図2に示すガス発生器用フィルタを構成する金属線材の形状を示す図である。次に、これら図2および図3を参照して、本実施の形態におけるガス発生器用フィルタについて詳説する。
【0064】
図2に示すように、フィルタ70Aは、所定の形状を有する金属線材71を巻回することによって製作された中空円筒状の巻回体にて構成されている。フィルタ70Aは、軸方向に沿って貫通する中空部73を有しており、当該中空部73が、ガス発生剤61が収容される燃焼室60を構成することになる(図1参照)。
【0065】
フィルタ70Aを構成する金属線材71は、フィルタ70Aの径方向に沿って幾重にも巻回されている。これにより、フィルタ70Aは、その径方向に沿って金属線材71が層状に積み重ねられた構造を有している。また、金属線材71は、フィルタ70Aの周方向および軸方向のいずれにも交差して延在することとなるように斜め方向に向けて巻回されており、軸方向の一端部および他端部においてその巻回方向が折り返されることにより、網目状の形状を形成している。
・・・
【0067】
図3に示すように、金属線材71は、その延在方向における任意の位置の断面形状が相互に一致する長尺状の部材にて構成されており、その表面には、当該延在方向に沿って連続して延びる溝部72が設けられている。
【0068】
より詳細には、本実施の形態におけるフィルタ70Aにあっては、金属線材71が、当該金属線材71の延在方向に沿って延びる平板状の基部71aと、この平板状の基部71aの両端から立設されることで当該金属線材71の延在方向に沿って延びる一対の平板状の突出部71bとを含んでおり、これら基部71aと一対の突出部71bとによって上述した溝部72が構成されている。
・・・
【0072】
ここで、図2に示すように、フィルタ70Aにおいては、上述した金属線材71の表面に設けられた溝部72が、当該フィルタ70Aの中空部73側を向くように構成されている。すなわち、上述した金属線材71の溝部72が形成された方の幅広の主面が、フィルタ70Aの径方向内側を向くように配置されているとともに、上述した金属線材71の溝部72が形成されていない方の幅広の主面が、フィルタ70Aの径方向外側を向くように配置されている。
・・・
【0074】
図4は、図2に示すガス発生器用フィルタを通過するガスの流れを模式的に示す図であり、図5は、図4に示すガスの流れをより詳細に示す模式図である。次に、これら図4および図5を参照して、本実施の形態におけるガス発生器の作動時におけるガスの流れについて詳説する。
【0075】
上述したように、ガス発生器1の作動時においては、燃焼室60にて発生したガスが、フィルタ70Aの内部を通過してガス噴出口23に至る(図1参照)。その際、図4に示すように、燃焼室60にて発生したガスは、フィルタ70Aの中空部73側からフィルタ70Aの内部に侵入し(図中に示す矢印AR1参照)、概ねフィルタ70Aの径方向に沿って移動した後に、フィルタ70Aの外部へと向けて放出される(図中に示す矢印AR2参照)。
【0076】
ここで、上述したように、本実施の形態におけるガス発生器1においては、フィルタ70Aを構成する金属線材71の表面に設けられた溝部72が上記中空部73側(すなわち燃焼室60側)を向いている。そのため、フィルタ70Aの内部においてガスが通過することとなる流路が複雑化することによってフィルタ70Aのガスに対する接触面積が増加するばかりでなく、図5に示すように、溝部72に吹き付けられたガス(図中においては、当該ガスの流れを模式的に矢印AR11で示している)が、当該溝部72内において向きを変える際に微小な渦流を発生させることでガスの流れが大幅に掻き乱される(図中においては、掻き乱されたガスの流れを模式的に矢印AR12,AR13で示している)ことになり、これらが相まって高い冷却性能が得られることになる。」

(2d)「



(2e)「



(ア)前記(2a)によれば、甲第2号証には、「ガス発生器用フィルタ」が記載されており、当該「ガス発生器用フィルタ」は、金属線材の巻回体または編組体にて構成された中空筒状のガス発生器用フィルタであって、前記金属線材は、当該金属線材の延在方向における任意の位置の断面形状が相互に一致する長尺状の部材からなり、前記金属線材の表面には、前記延在方向に沿って延びる溝部が設けられ、前記溝部の深さ方向に沿った前記金属線材の最大外形寸法が、前記溝部の幅方向に沿った前記金属線材の最大外形寸法よりも小さく、前記溝部が、当該ガス発生器用フィルタの中空部側を向いているものである。
具体的には、前記(2b)?(2e)によれば、所定の形状を有する金属線材71を巻回することによって製作された中空円筒状の巻回体にて構成されるものであり、前記金属線材71は、フィルタ70Aの径方向に沿って幾重にも巻回されていて、これにより、フィルタ70Aは、その径方向に沿って金属線材71が層状に積み重ねられた構造を有しているものであり、また、金属線材71は、フィルタ70Aの周方向および軸方向のいずれにも交差して延在することとなるように斜め方向に向けて巻回されており、軸方向の一端部および他端部においてその巻回方向が折り返されることにより、網目状の形状を形成しているものである。
更に、金属線材71の表面には、当該延在方向に沿って連続して延びる溝部72が設けられているものであり、より詳細には、金属線材71が、当該金属線材71の延在方向に沿って延びる平板状の基部71aと、この平板状の基部71aの両端から立設されることで当該金属線材71の延在方向に沿って延びる一対の平板状の突出部71bとを含んでおり、これら基部71aと一対の突出部71bとによって上述した溝部72が構成されているものであり、フィルタ70Aにおいては、金属線材71の表面に設けられた溝部72が、当該フィルタ70Aの中空部73側を向くように構成されているものである。
そして、前記「ガス発生器用フィルタ」は、ガス発生器1の作動時においては、燃焼室60にて発生したガスが、フィルタ70Aの内部を通過してガス噴出口23に至るが、フィルタ70Aを構成する金属線材71の表面に設けられた溝部72が上記中空部73側を向いているため、フィルタ70Aの内部においてガスが通過することとなる流路が複雑化することで、フィルタ70Aのガスに対する接触面積が増加するばかりでなく、溝部72に吹き付けられたガスが、当該溝部72内において向きを変える際に微小な渦流を発生させることでガスの流れが矢印AR12、AR13のように大幅に掻き乱されることになり、これらが相まって高い冷却性能が得られるものである。

(イ)前記(ア)によれば、甲第2号証には、
「金属線材の巻回体または編組体にて構成された中空筒状のガス発生器用フィルタであって、前記金属線材は、当該金属線材の延在方向における任意の位置の断面形状が相互に一致する長尺状の部材からなり、前記金属線材の表面には、前記延在方向に沿って延びる溝部が設けられ、前記溝部が、当該ガス発生器用フィルタの中空部側を向いているガス発生器用フィルタであり、
所定の形状を有する金属線材を巻回することによって製作された中空円筒状の巻回体にて構成され、前記金属線材は、フィルタの径方向に沿って幾重にも巻回されていて、これにより、フィルタは、その径方向に沿って金属線材が層状に積み重ねられた構造を有しているものであり、また、金属線材は、フィルタの周方向および軸方向のいずれにも交差して延在することとなるように斜め方向に向けて巻回されており、軸方向の一端部および他端部においてその巻回方向が折り返されることにより、網目状の形状を形成しており、
金属線材は、当該金属線材の延在方向に沿って延びる平板状の基部と、この平板状の基部の両端から立設されることで当該金属線材の延在方向に沿って延びる一対の平板状の突出部とを含んでおり、これら基部と一対の突出部とによって、金属線材の表面には、当該延在方向に沿って連続して延びる溝部が構成され、
ガス発生器の作動時においては、燃焼室にて発生したガスが、フィルタの内部を通過してガス噴出口に至るが、フィルタを構成する金属線材の表面に設けられた溝部が中空部側を向いているため、フィルタの内部においてガスが通過することとなる流路が複雑化することで、フィルタのガスに対する接触面積が増加するばかりでなく、溝部に吹き付けられたガスが、当該溝部内において向きを変える際に微小な渦流を発生させることでガスの流れが大幅に掻き乱されることになり、これらが相まって高い冷却性能が得られる、ガス発生器用フィルタ。」
の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

(2)対比・判断
(2-1)本件発明2について
ア 対比
(ア)本件発明2と甲2発明とを対比すると、甲2発明において、「金属線材の巻回体または編組体にて構成された中空筒状のガス発生器用フィルタであって、前記金属線材は、当該金属線材の延在方向における任意の位置の断面形状が相互に一致する長尺状の部材からなり、前記金属線材の表面には、前記延在方向に沿って延びる溝部が設けられ、前記溝部が、当該ガス発生器用フィルタの中空部側を向いているガス発生器用フィルタであり、所定の形状を有する金属線材を巻回することによって製作された中空円筒状の巻回体にて構成され、前記金属線材は、フィルタの径方向に沿って幾重にも巻回されていて、これにより、フィルタは、その径方向に沿って金属線材が層状に積み重ねられた構造を有しているものであり、また、金属線材は、フィルタの周方向および軸方向のいずれにも交差して延在することとなるように斜め方向に向けて巻回されており、軸方向の一端部および他端部においてその巻回方向が折り返されることにより、網目状の形状を形成して」いることは、本件発明2において、「金属線材を、螺旋状、かつ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、各線材層を構成する前記金属線材は、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成」することに相当する。
また、甲2発明において、「金属線材は、当該金属線材の延在方向に沿って延びる平板状の基部と、この平板状の基部の両端から立設されることで当該金属線材の延在方向に沿って延びる一対の平板状の突出部とを含んでおり、これら基部と一対の突出部とによって、金属線材の表面には、当該延在方向に沿って連続して延びる溝部が構成され」ることは、前記「平板状の基部」は「平坦面」といえ、「溝部」は「平坦面の裏側に形成され」る「凹所」といえるから、本件発明2において、「前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成され」る「凹所とを有」していることに相当する。
更に、甲2発明において、「ガス発生器の作動時においては、燃焼室にて発生したガスが、フィルタの内部を通過してガス噴出口に至るが、フィルタを構成する金属線材の表面に設けられた溝部が中空部側を向いているため、フィルタの内部においてガスが通過することとなる流路が複雑化することで、フィルタのガスに対する接触面積が増加するばかりでなく、溝部に吹き付けられたガスが、当該溝部内において向きを変える際に微少な渦流を発生させることでガスの流れが大幅に掻き乱されることになり、これらが相まって高い冷却性能が得られる」ことは、本件発明2において、「一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成される前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成される」ことに相当する。

(イ)前記(ア)によれば、本件発明2と甲2発明とは、
「金属線材を、螺旋状、かつ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、各線材層を構成する前記金属線材は、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成される凹所とを有しており、一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成される前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成される、中空筒状フィルタ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点2:本件発明2は、「凹所」が、「長手方向に対して傾斜する方向に延びると共に該長手方向と交差する方向に繰り返す」ものであるのに対して、甲2発明は、「延在方向に沿って連続して延びる」ものである点。

イ 判断
(ア)甲2発明における「溝部」は「長さ方向に連続した溝になって」いるものであり、「長手方向に対して傾斜する方向に延び」る「凹所」とはいえないことは明らかであって、前記ア(イ)の相違点2は実質的な相違点であるから、本件発明2が甲2発明と同一であるとはいえない。

(2-2)本件発明6、7について
本件発明6、7は、いずれも、異議申立てがされておらず、取消理由も通知されていない本件訂正前の請求項4、5の発明特定事項を有する本件発明4又は5を引用するものであり、本件発明6、7が甲2発明と同一であるとはいえないことは明らかである。

(2-3)小括
したがって、前記第5の2の取消理由は理由がない。

第7 取消理由通知で採用しなかった異議申立理由についての判断
前記第4の1、2の異議申立理由は、前記第5の1、2の取消理由と実質的に同旨であって、前記第6の1、2で検討したのと同様の理由により理由がないので、前記第4の3の異議申立理由について検討する。
1 特許法第29条第2項について
(1)各甲号証の記載事項
(1-1)甲第3号証の記載事項及び甲第3号証に記載される発明
甲第3号証には以下(3a)?(3e)の記載がある。
(3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガスを濾過するためのフィルタであって、金属線の編体又はメッシュよりなるフィルタにおいて、
該金属線は易屈曲化処理が施されたものであることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】 請求項1において、前記易屈曲化処理は、該金属線に間隔をおいて凹部を設ける処理であることを特徴とするフィルタ。」

(3b)「【0018】
【発明の実施の形態】以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
・・・
【0020】この実施の形態では、フィルタ56用の金属線51として、従来のものよりも太い例えば線径0.6mm以上好ましくは0.6?2mmとりわけ1?1.5mmの金属線51が使用される。この金属線の材質に特に制限はなく、例えば従来のフィルタに使用されているステンレス等が使用される。
【0021】この金属線51は、2対の歯車52,53及び54,55の間隙を通すことにより、凹部が形成される。
【0022】1対の歯車52,53は上下方向に並べて配置されており、金属線51がこの歯車52,53の間隙に通される。このとき、金属線51は歯車52の歯52aと歯車53の歯53aとの間で強く挟まれることにより、上面側及び下面側に凹部51aが所定間隔をおいて形成される。なお、図2の符号51cは、凹部51a同士の間の円柱部を示す。
【0023】このようにして凹部51aが設けられた金属線51は、その後もう1対の歯車54,55の間隙に通される。歯車54,55は水平方向に並べて配置されており、金属線51が歯車54,55の間隙を通る際に歯車54の歯54aと歯車55の歯55aによって強く挟まれ、左側面及び右側面に凹部51bが形成される。この凹部51bは金属線51のうち凹部51a同士の間の円柱部51cに形成される。
・・・
【0026】このようにして凹部51a,51bが設けられた金属線51を織製してメッシュや編体とし、これをプレス型等を用いて押し固めて所定形状、例えば図4(a)に示す円筒状のフィルタ56が製造される。」

(3c)「【図1】



(3d)「【図2】



(3e)「【図4】



(ア)前記(3a)によれば、甲第3号証には、「フィルタ」が記載されており、当該「フィルタ」は、ガスを濾過するためのフィルタであって、金属線の編体又はメッシュよりなるフィルタにおいて、該金属線は易屈曲化処理が施されたものであり、前記易屈曲化処理は、該金属線に間隔をおいて凹部を設ける処理であるものである。
具体的には、前記(3b)?(3e)によれば、金属線51を歯車52、53の間隔を通すことにより、金属線の上面側及び下面側に凹部51aが所定間隔をおいて形成され、歯車54、55の間隔を通すことにより、金属線の左面側及び右面側に凹部52bが所定間隔をおいて形成され、このようにして凹部51a、51bが設けられた金属線51を織製してメッシュや編体とし、これをプレス型等を用いて押し固めて円筒状のフィルタ56が製造されるものである。

(イ)前記(ア)によれば、甲第3号証には、
「ガスを濾過するためのフィルタであって、金属線の編体又はメッシュよりなるフィルタにおいて、該金属線は易屈曲化処理が施されたものであり、前記易屈曲化処理は、該金属線に間隔をおいて凹部を設ける処理であるものであり、
金属線を歯車の間隔を通すことにより、金属線の上面側及び下面側、左面側及び右面側に凹部が所定間隔をおいて形成され、このようにして凹部が設けられた金属線を織製してメッシュや編体とし、これをプレス型等を用いて押し固めて円筒状のフィルタとされる、フィルタ。」
の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。

(1-2)甲第4号証の記載事項
甲第4号証には以下(4a)?(4b)の記載がある。
(4a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 エアバッグインフレーター用フィルターを製造するにあたり、厚さが0.20?0.40mm、幅が0.50?1.0mmの断面長方形状の金属線を少なくとも1本を、治具に2?5kgfの張力で300?5000回巻き付け編み上げて円筒体とし、この円筒体から前記治具を抜き取ることを特徴とする、エアバッグインフレーター用フィルターの製造方法。」

(4b)「【0013】エアバッグインフレーター用フィルターを製造するには、上記金属線を少なくとも1本用意し、この金属線の一端を治具の適所に係止させ、長さ方向に直角に切断した断面が円形の治具に2?5kgfの張力で300?5000回巻き付けて編み上げ、金属線の端部を溶接などによって適所に接合して円筒体とする。巻き付ける回数は、フィルターを通過するガスに著しい圧力損失を生じさせない範囲で決めるのが好ましい。治具に巻き付ける際の特に好ましい張力は2.5?3.5kgfであり、巻き付ける際の特に好ましい回数は400?500回である。上記治具は、断面となる円形の直径を変えることができる構造とすると、この治具の表面に上記金属線の巻き付けが完了した後に、その直径を小さくして金属線から抜き取り可能となるので、好ましい。この治具の材料は、ステンレス鋼、銅合金、アルミニウム合金などの金属とするのが一般的である。
【0014】金属線を上記治具に巻き付け、編み上げる際には、金属線の太さ、編み上げパターン、巻き付け回数などを種々変えることにより、ガス発生剤の爆発的な燃焼によってフィルター内部で発生したガスの圧力損失を適切な値に制御することができる。この編み上げ方法の例としては、一本の金属線を用意し、この金属線を案内具によって案内させて、製造するフィルターの長さの範囲内でこの案内具を往復運動させながら治具を回転させ、金属線を治具の表面の所定の位置に巻き付け、編み上げるという方法を挙げることができる。上記案内具の往復運動により、金属線を、治具の中心軸に対して一定の角度(以下、「巻き付け角度」という)で治具に巻き付けることができる。
【0015】上記巻き付け角度と、巻き付けられた際に相互に隣接する金属線の幅方向端部同士の間隔(以下、「ピッチ」という)とを種々変えることによって、金属線の編み上げパターン、巻き付け密度などを多様なものとすることができる。これら巻き付け角度およびピッチは、金属線の幅などに応じて、案内具の往復の際の移動速度と治具の回転速度との比を適宜調節することにより、種々変えることができる。
【0016】上記の巻き付け、編み上げを完了したら、前記のとおり金属線の端部を接合し、得られた円筒体から治具を抜き取り、中空円筒体状のエアバッグインフレーター用フィルターとする。円筒体から治具を抜き取った後には、そのままフィルターとして使用することができるが、高温で焼結するのが好ましい。・・・。」

(1-3)甲第5号証の記載事項
甲第5号証には以下(5a)?(5b)の記載がある。
(5a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面積が0.03?0.8mm2の線材を螺旋状に巻いて形成され、径方向上下に重なる線材同士のピッチ角が相互に対称である第1層と、
この第1層の径方向外側に存在し、濾過粒度が第1層より細かく形成された第2層とを含んで構成されたエアバッグガス発生器用フィルタ。」

(5b)「【0010】
上記課題を解決する為、本発明のエアバッグガス発生器用フィルタは、ガス発生剤の燃焼により生じたガスに最初に接する部分、一般的には円筒状に形成した場合における内面に、断面積が0.03?0.8mm^(2)の線材を螺旋状に巻いて形成した第1層を設け、この第1層を通過したガスが到達する個所、多くの場合は第1層の外側に、第1層よりも燃焼残渣の捕集能力の高い第2層を設けている。ここでいう断面積とは線材を径方向に切断した時の径方向断面積をいう。
【0011】
即ち、本発明に係るエアバッグガス発生器用フィルタは、断面積が0.03?0.8mm^(2)(真円の場合、線径が0.2mmから1mm)の線材、望ましくは0.05?0.5mm^(2)(真円の場合、線径が0.25mmから0.8mm)の線材を螺旋状に巻いて形成され、径方向上下に重なる線材同士のピッチ角が相互に対称である第1層と、この第1層の径方向外側に存在し、濾過粒度が第1層より細かく形成された第2層とを含んで構成される。
【0012】
上記フィルタにおける第1層は、径方向上下に重なる線材同士のピッチ角αが相互に対称に形成される。即ち、径方向下側に位置する線材がピッチ角(螺旋の中心軸Zと螺旋との間の角:後述の図1に記載)+αで巻かれている場合、これに重なる線材はピッチ角-αで巻かれることになる。
【0013】
かかる本発明のエアバッグガス発生器用フィルタは、特に円柱状のフィルタとする際には、断面積が0.03?0.8mm^(2)の1本の金属製の線材をフィルタの一端部から他端部に向けて巻きながら、更に一端部に戻して巻く往復工程を、フィルタの回転に伴って、フィルタの軸方向へ複数回行うことで当該金属線を複数回巻き回し、隣接する線材同士が互いに略平行になるように形成した第1層と、この第1層の外側で、第1層よりも濾過粒度が細かく、或いは開口率が小さな第2層とからなるエアバッグガス発生器用フィルタとして製造することができる。・・・」

(2)対比・判断
(2-1)本件発明2について
ア 対比
(ア)本件発明2と甲3発明とを対比すると、甲3発明における「ガスを濾過するためのフィルタであって、金属線の編体又はメッシュよりなるフィルタ」である「円筒状のフィルタ」は、本件発明2における「金属線材」「により形成される中空筒状フィルタ」に相当し、甲3発明において、「金属線を歯車の間隔を通すことにより、金属線の上面側及び下面側、左面側及び右面側に」「所定間隔をおいて形成され」た「凹部」は、本件発明2において、「金属線材」が「繰り返す凹所」「を有する」ことに相当する。

(イ)前記(ア)によれば、本件発明2と甲3発明とは、
「金属線材により形成される中空筒状フィルタであって、前記金属線材が繰り返す凹所を有する、中空筒状フィルタ。」
である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。
相違点3:本件発明2に係る「中空筒状フィルタ」は、「金属線材」が、「平坦面と、該平坦面の裏側に形成されて、長手方向に対して傾斜する方向に延びると共に該長手方向と交差する方向に繰り返す凹所とを有」する、との発明特定事項を有するのに対して、甲3発明は、「凹部」が、「金属線の上面側及び下面側、左面側及び右面側に凹部が所定間隔をおいて形成され」るものである点。

イ 判断
(ア)以下、前記ア(イ)の相違点3について検討すると、前記第6の1(2)(2-1)イ(ア)のとおり、甲第1号証には、「中空筒状フィルタ」の「金属線材」を、「平坦面と、該平坦面の裏側に形成されて、長手方向に対して傾斜する方向に延びると共に該長手方向と交差する方向に繰り返す凹所とを有」するものとすることが記載も示唆もされておらず、同様に、前記(1)(1-2)(4a)?(4b)、同(1-3)(5a)?(5b)によれば、甲第4、5号証にはそれぞれ「エアバッグインフレーター用フィルターの製造方法」及び「エアバッグガス発生器用フィルタ」に関する技術的事項が記載されているものの、前記の事項については記載も示唆もされていないから、甲3発明において、「中空筒状フィルタ」の「金属線材」を、「平坦面と、該平坦面の裏側に形成されて、長手方向に対して傾斜する方向に延びると共に該長手方向と交差する方向に繰り返す凹所とを有」する、との前記相違点3に係る本件発明2の発明特定事項を有するものとすることを、甲第1、4、5号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえない。

(イ)したがって、本件発明2を、甲3発明及び甲第1、4、5号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2-2)本件発明6、7について
本件発明6、7は、いずれも、異議申立てがされておらず、取消理由も通知されていない本件訂正前の請求項4、5の発明特定事項を有する本件発明4又は5を引用するものであり、本件発明6、7を、甲3発明及び甲第1、4、5号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことは明らかである。

(2-3)小括
したがって、前記第4の3の異議申立理由は理由がない。

第8 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明2、6、7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明2、6、7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件発明1、3に係る特許に対する特許異議の申立てについては、本件訂正により対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
中空筒状フィルタ、及び製造装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属線材を螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタに関し、特に異形圧延した金属線材を用いて作製される中空筒状フィルタ、及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属線材を螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタは、各種の流体から異物を除去するフィルタとして各方面において使用されている。例えば特許文献1には、中空筒状フィルタの一例として自動車のエアバッグインフレーター用フィルタが記載されている。
エアバッグインフレーター用フィルタは、ガス発生剤を点火させて爆発、燃焼させることにより発生した高温で固体残渣を有するガスを濾過し、場合によっては同時に冷却するという機能を果たす。
特許文献1に記載のエアバッグインフレーター用フィルタは、断面が真円形状の金属線を圧延して、断面長方形状に加工した金属線材を所定の角度、及び所定のピッチにて螺旋状、且つ多層状に巻き付け、任意で焼結をすることにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-171472公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで特許文献1に記載のフィルタは、内径側から外径側にガスを通過させる過程で固体残渣を濾過するが、フィルタを構成する金属線材の断面形状が長方形状であるので、ガスは主としてフィルタの径方向に移動し、ガスを軸方向や周方向へ移動させることは困難である。
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、軸方向や径方向や周方向を含む複雑な流路をフィルタ内に形成することにより、効率的に異物を除去可能な中空筒状フィルタ、及びその製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、各線材層を構成する前記金属線材は、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする。
第一の発明において、前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成されて、長手方向に対して傾斜する方向に延びると共に該長手方向と交差する方向に繰り返す凹所とを有することを特徴とする。
第二の発明において、前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された長手方向に沿って繰り返す凹所とを有することを特徴とする。
第三の発明において、前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された凹所とを有し、更に前記金属線材は、長手方向に沿って繰り返す厚肉の細幅部と薄肉の幅広部とを有することを特徴とする。
第四の発明においては、前記凹所が、濾過する流体の上流側を向くように前記金属線材が配置されていることを特徴とする。
第五の発明においては、前記凹所が、濾過する流体の下流側を向くように前記金属線材が配置されていることを特徴とする。
第六の発明において、前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された長手方向に沿って繰り返す凹所とを有し、更に前記金属線材は、長手方向に沿って繰り返す厚肉の細幅部と薄肉の幅広部とを有することを特徴とする。
【0006】
第七の発明において、前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分に前記凹所が形成されていることを特徴とする。
第八の発明は、前記一方の金属線材部分に替えて、長手方向に沿って形成される凹所を有する金属線材部分を備えることを特徴とする。
第九の発明は、前記一方の金属線材部分に替えて、長手方向と交差する方向に繰り返す凹所を有する金属線材部分を備えることを特徴とする。
第十の発明は、前記一方の金属線材部分に替えて、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された凹所とを有する金属線材部分を備えることを特徴とする。
【0007】
第十一の発明は、金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタの製造装置であって、前記中空筒状フィルタは、各線材層を構成する前記金属線材が、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されており、前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分に前記凹所が形成されており、前記中空筒状フィルタの製造装置は、対向配置された一対の圧延ローラを有し、金属素線を間に挟んで所定の断面形状の金属線材を形成する圧延装置と、該圧延装置によって形成された前記金属線材を心棒に巻付けて中空筒状体を形成する巻付装置と、を備え、前記一対の圧延ローラは、軸方向の異なる位置に、前記第一の金属線材部分を形成する第一金属線材形成部と、前記第二の金属線材部分を形成する第二金属線材形成部と、を備え、前記圧延装置は、前記一対の圧延ローラの軸方向に沿って進退して前記金属素線を前記第一金属線材形成部又は前記第二金属線材形成部に案内するガイド手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属線材の凹所と金属線材との間に形成された空間によって、連通路間を軸方向や径方向や周方向に連通することができるので、フィルタ内で複雑な流路を形成することができ、効率的に異物を除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るフィルタの模式的斜視図である。
【図2】フィルタの製造装置の一例を示す模式図である。
【図3】フィルタの製造装置の他の例を示す模式図である。
【図4】(a)、(b)は、金属素線に対して2回の圧延を実施する場合に得られる金属線材の例を示す断面図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に係るフィルタを形成する金属線材を示す斜視図である。
【図6】図5に示す金属線材を作製する圧延ローラの一例を示す断面図である。
【図7】フィルタ内で金属線材が交差する部分を拡大して示した模式図であり、(a)は本発明の第一の実施形態に係る断面W字状の金属線材の例を示し、(b)は従来の断面矩形状の金属線材の例を示す図である。
【図8】フィルタ内における流体の通過状況を説明する模式図であり、(a)は本発明の第一の実施形態に係る断面W字状の金属線材を用いたフィルタの例を示し、(b)は従来例を示す図である。
【図9】(a)、(b)は、変形例に係る金属線材を示す斜視図である。
【図10】本発明の第二の実施形態に係る金属線材を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は側面写真であり(c)は上面写真である。
【図11】本発明の第二の実施形態に係る金属線材を製造する圧延ローラの模式図である。
【図12】フィルタ内で金属線材が交差する部分を拡大して示した模式図である。
【図13】(a)は図10に示した金属線材を用いた試作例に係るフィルタの断面写真で示す図あり、(b)は断面矩形状の金属線材を用いた比較例に係るフィルタの断面写真で示す図ある。
【図14】(a)、(b)は、変形例に係る金属線材を示す斜視図である。
【図15】(a)?(c)は、他の変形例に係る金属線材を示す斜視図である。
【図16】本発明の第三の実施形態に係る金属線材、及び金属線材を製造する圧延ローラの斜視図である。
【図17】本発明の第四の実施形態に係る中空筒状フィルタを説明する図であり、(a)は中空筒状フィルタを構成する金属線材の模式図であり、(b)は中空筒状フィルタの断面図である。
【図18】(a)はフィルタの製造装置の一例を示す模式図であり、(b)は圧延装置の模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0011】
〔フィルタの形状〕
図1は、本発明の一実施形態に係るフィルタの模式的斜視図である。
本発明の実施形態に係る中空筒状のフィルタ(以下、フィルタ、という)10は、少なくとも一本の金属線材20を、軸方向(図中上下方向)に対して一定の傾斜角度を有して螺旋状に、且つ多層状に巻き付けることにより形成される。ここで同じ方向に巻き付けられている個々の層を線材層L1、L2、L3・・・と称する。各線材層L1、L2、L3・・・を構成する金属線材は、正面視で中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜した同一方向へ延びており、また隣接する各線材層を構成する金属線材は互いに交差する方向に延びている(平行していない)。
【0012】
図1中における最外層の線材層Lnを構成する線材20A(厚みを図示省略)の延びる方向は実線矢印で示した方向であり、その直ぐ内側の線材層Ln-1を構成する線材20Bの延びる方向は破線矢印で示した方向である。
即ちフィルタ10は、金属線材20を軸方向に対して一定の傾斜角度にて螺旋状に巻付けることにより形成した一つの線材層(例えば、線材層L1)と、一つの線材層L1の外周側に重ねて、且つ該一つの線材層L1を構成する金属線材とは異なる傾斜角度にて螺旋状に金属線材を巻付けることにより形成される他の線材層(例えば、線材層L2)と、を有する。一つの線材層L1とこれと隣接する他の線材層L2を夫々構成する金属線材同士は軸方向とは非平行であり、且つ互いに交差するように構成されている。
なお、線材層を構成する金属線材の軸方向に対する傾斜角度が一つの線材層中で変化するように構成してもよい。
【0013】
このフィルタ10は、液体や気体等の各種流体中から不要な物質等を除去し、また用途によっては同時にフィルタを通過する流体を冷却するために用いられる。また、このフィルタは、第一に、線材層が重なり合う方向(厚さ方向)、即ち、フィルタの径方向に流体が通過する流路を形成するように構成される。流体は、フィルタの内径側から外径側に通過させても、外径側から内径側に通過させてもよい。ここで径方向とは厳密な意味の直径方向(半径方向)ではなく、軸方向、周方向に対して、概ね径方向という意味である。
フィルタの大きさ(軸方向寸法、直径、厚さ等)は、フィルタが装備される濾過装置の構造や大きさに応じて適宜決定される。
このフィルタの材料となる金属の種類としては、鉄、軟鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、銅合金などを挙げることができ、中でもオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)が好適である。
【0014】
また、フィルタに使用される金属線材の太さ及び断面形状は、フィルタの大きさ、フィルタが除去する物質、圧力損失等に応じて適宜決定される。
フィルタには、例えば断面が真円形状の金属素線が異形となるように圧延(以下、異形圧延、と称する)することにより、所定の断面形状としたものが使用される。金属線材の形状については後述する。
なお、異形とは一般に、「普通とは違う怪しい形・姿をしていること」と定義されるが、ここで異形とは、断面形状が全長に亘って円形、楕円形、多角形等の規則的な形状を有している金属線材に対して、線材の断面形状が長手方向全長に亘って不規則な形状、例えば後述するW字状、U字状、J字状、L字状、X字状、?状等々を有したものを広く含むものである。また、線材の断面形状、外形が、線材の長手方向全長に亘って一定でなく、長手方向の位置によって異なる断面形状、外形を有している構成も異形に含むものである。
【0015】
〔フィルタの製造装置及び製造方法〕
図2は、フィルタの製造装置の一例を示す模式図である。この装置は金属線材から中空筒状体を作製するものである。
製造装置100Aは、不図示のボビンから供給される金属素線21を圧延する圧延装置110と、圧延により断面形状が変形した後の金属素線(以下「金属線材20」という)に対して長手方向へ所定の張力を与えるテンションユニット120と、金属線材20を心棒131に巻付けて中空筒状体を形成する巻付装置130と、を概略備える。また、金属線材20の搬送経路上には、金属線材をガイドしつつ搬送する複数の搬送ローラ140が配置されている。
圧延装置110は対向配置されて回転する2つの円柱状の圧延ローラ111a、111bを備える。圧延ローラ111aと圧延ローラ111bの表面(対向面)同士が接触する部分は、金属素線21を間に挟んで所望の形状に変形させる加圧部112を構成している。圧延装置110は所定の温度及び圧力下で金属素線21を加圧部112にて塑性変形させることにより、所定の断面形状を有する金属線材20を得る。圧延は冷間圧延でも熱間圧延でもよい。
【0016】
圧延ローラ111a、111bの何れか一方、又は双方の表面には、金属素線を所望の断面形状に圧延加工するための凸部、又は/及び、凹部が形成されており、加圧部112を金属素線が通過する際にこれらの凸部や凹部により圧延されて塑性変形して異形の断面形状を備えた金属線材に加工される。
テンションユニット120は、所定位置に回転自在な状態で固定配置された固定ローラ121と、固定ローラ121に対して接近又は離間移動し、且つ回転自在な可動ローラ122とを有する。固定ローラ121に対して可動ローラ122を接近また離間移動させることにより、固定ローラ121及び可動ローラ122に巻き掛けられて搬送される金属線材20に対して所定の張力を与える。
巻付装置130は、一定方向に所定速度にて回転する心棒131と、心棒131の軸方向(図中紙面と直交する方向)に所定速度にて往復移動して金属線材20をガイドするガイド部材132と、を備える。心棒131は概略円柱状又は円筒状であり、一般的にステンレス鋼、銅合金、アルミニウム合金などの金属から形成される。
【0017】
中空筒状体を作製するには、心棒131の適所に金属線材20の一端を係止し、金属線材20に対してテンションユニット120にて所定の張力を与えた状態にて、心棒131を一定方向に回転させると共に、ガイド部材132によって金属線材20を心棒131の軸方向に往復移動させる。この動作により、金属線材20は心棒131の外周に螺旋状、且つ多層状に巻付けられる。また、隣接する線材層を構成する金属線材同士が互いに交差して網目を形成する。
例えば、心棒131の外周に直接巻き付けられる第1の金属線材層では、各線材が図1において心棒の軸方向に対して所定角度θだけ時計回り方向へ傾斜しているとすると、第1の金属線材層の外周に巻き付けられる第2の金属線材層を構成する線材は、心棒の軸方向に対して所定角度θだけ反時計回り方向に傾斜する。
【0018】
金属線材20を所定回数(所定階層数)巻付けた後、金属線材20を切断し、切断された端部をスポット溶接等により巻付けを完了した線材の適所に接合して心棒131から取り外すことにより、中空筒状体を得る。
心棒131の軸方向に対する金属線材20の角度(巻付け角度)、及び軸方向に隣接する金属線材20同士の間隔(ピッチ)は、心棒131の回転速度とガイド部材132の移動速度との比率を適宜調節することにより変更することができる。金属線材の太さ、巻付け角度、ピッチ、巻付け回数を適宜変更することにより、フィルタを通過する流体の圧力損失を適切な値に制御することができる。
【0019】
製造装置100Aにより製造された中空筒状体は、そのままの状態でフィルタとして使用することもできるが、高温で焼結することが好ましい。焼結する際の温度は、金属線の種類、太さ、巻付け回数、ピッチ、巻き付け角度などにより異なるが、500?1500度(℃)の範囲で行うものとする。この中でも1100?1201度の範囲が好適である。
焼結は、圧延の際に生じた金属線材の内部歪を緩和し、かつ、金属線材の重なり合う部分を接合することを目的として行う。焼結は所定温度に設定された電気炉内で実施するのが好ましく、焼結時間は、金属線材の種類、太さ、巻き付け回数、巻き付け密度、ピッチ、焼結温度により変わるが、30?80分の範囲で選ぶのが好ましい。焼結は空気中で行うこともできるが、真空中や金属線材を脆化させたり化学反応を生起するおそれのない不活性ガス中で行うのが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンなどをあげることができるが、中でも窒素ガスが好適である。
【0020】
図3は、フィルタの製造装置100Bの他の構成例を示す模式図である。製造装置100Bは、金属素線21の搬送経路上に複数の圧延装置110(110A、110B)を備え、金属素線21に対して複数回の圧延を実施することができる。
製造装置100B内に複数の圧延装置を配置する場合、圧延装置110A、110B間に、任意でバッファユニット150を挿入してもよい。バッファユニット150は、所定位置に回転自在な状態で軸心を位置固定された固定ローラ151と、固定ローラ151に対して接近又は離間移動する回転自在な可動ローラ152とを有する。固定ローラ151と可動ローラ152には、前段の圧延装置110Aにより圧延された後の金属素線が巻き掛けられる。固定ローラ151に対して可動ローラ152を接近また離間移動させることにより、バッファユニット150は圧延装置110Aと巻付装置130との間の同期を取り、或いは圧延装置110A、110B間の加工速度差を吸収する。
複数回の圧延を実施する場合、各圧延装置110A、110Bによる金属素線21の圧延方向は、同一方向としてもよいし、異なる方向としてもよい。
【0021】
図4(a)、(b)は、金属素線に対して2回の圧延を実施する場合に得られる金属線材の例を示す断面図である。金属素線に対して複数回の圧延を実施する場合、圧延1回の場合よりも更に複雑な外面形状の金属線材を得ることができる。また、複数回の圧延を実施することにより、金属線材の形状を安定させることができるという効果も得られる。
【0022】
〔金属線材〕
以下、フィルタを形成する金属線材の形状について具体的に説明する。本発明に係るフィルタは、異形圧延により外側面に凹所(又は凸所)が形成された金属線材から作製される点に特徴がある。特に金属線材は、長手方向の全長に渡って連続的に形成された凹所、又は長手方向に沿って繰り返す凹所を有している点に特徴がある。
なお、ここで「繰り返す」とは、凹所が断続的(非連続的)に離間して配置されている状態をいう。即ち、金属線材の長手方向に沿って凹所が形成されている部分と形成されていない部分とが交互に存在し、凹所が金属線材の長手方向に非連続的であることを意味する。なお、凹所のピッチは一定(又は規則的)であってもよいし、不規則的であってもよい。
【0023】
〔第一の実施形態〕
図5は、本発明の第一の実施形態に係るフィルタを形成する金属線材を示す斜視図である。金属線材201(20)は、長手方向の全長に渡って連続的に延びる凹所221を有する。金属線材201の長手方向と直交する方向における断面形状は概略W字状であり、長手方向と交差する金属線材201の一方の側(面)には2つの凹所221と1つの凸所222が、他方の側(面)には1つの凹所221と2つの凸所222が形成されている。
【0024】
図6は、図5に示す金属線材を作製する圧延ローラの一例を示す断面図である。図6は、圧延ローラを、ローラの中心軸を含む平面にて切断した様子を示す。圧延ローラ111aは、外面に周方向の全周に渡ってV字状に突出した2つの凸部113aを有した成形部113を備え、圧延ローラ111bは、外面に周方向の全周に渡ってV字状に凹陥した2つの凹部114aを有した成形部114を備える。成形部113と成形部114は一対一で対応する関係にあり、凸部113aと凹部114aは両圧延ローラのニップ部において嵌合する。成形部113と成形部114とによって形成される加圧部112内に金属素線21を挿入して挟圧することにより、図5に示す金属線材201が得られる。
【0025】
図7は、フィルタ内で金属線材が交差する部分を拡大して示した模式図であり、(a)は本発明の第一の実施形態に係る断面W字状の金属線材の例を示し、(b)は従来の断面矩形状の金属線材の例を示す図である。
図7(b)に示す従来のフィルタ300では、隣接する各線材層L1、L2、L3・・を構成する金属線材301A、301B、301C・・・が互いに交差する方向に延びることにより、一つの線材層L1を構成する金属線材301A間に螺旋状に形成される螺旋空間S1と、一の線材層と隣接する他の線材層L2を構成する金属線材301B間に螺旋状に形成される螺旋空間S2とが形成される。また、各螺旋空間同士を連通させる複数の連通路302が各線材層の重なる方向(フィルタの内外径方向)へ形成されている。連通路302は網目状に形成され、主として各線材層が重なる方向に流体を通過させる。
【0026】
従来のフィルタ300においては、金属線材301Aと金属線材301Bとの交差部303が密着しているため、流体は交差部において線材を跨がって移動できない。このため、流体は主としてフィルタの径方向に流れ、周方向及び軸方向には殆ど流れなかった。
図7(a)に示す本実施形態に係るフィルタ10には、従来のフィルタ300と同様に、隣接する各線材層を構成する金属線材201が互いに交差する方向に延びることにより、主として各線材層が重なる方向(フィルタの径方向)へ流体を通過させる複数の連通路(重なり方向への連通路)22が形成されている。
本実施形態に係るフィルタ10においては、一の線材層L1を構成する金属線材201Aと一の線材層L1と隣接する他の線材層L2を構成する金属線材201Bとの交差部(図中斜線部分)に、金属線材201Aと金属線材201Bの凹所221とによって流体が通過しうる交差部空間23が形成される。この交差部空間23は、各線材層が重なる方向へ延びる複数の連通路22間を連通させる空間である。交差部空間23は、交差部において流体が金属線材201Aをその長手方向と交差する方向に移動すること、即ち流体がフィルタの周方向及び軸方向に、一の線材層内で移動することを許容する。
このため、本実施形態に係るフィルタ10においては、交差部空間23と連通路22とによって、流体をフィルタの周方向及び軸方向、その他の多様な方向(多重方向)に拡散移動させながら径方向に通過させることができる。
【0027】
図8は、フィルタ内における流体の通過状況を説明する模式図であり、(a)は本発明の第一の実施形態に係る断面W字状の金属線材を用いたフィルタの例を示し、(b)は従来例を示す図である。
フィルタ装置30は、フィルタ10、300を収容する筐体31を備え、筐体31には筐体の内外空間を連通させると共に、フィルタ10、300を通過した流体を外部に流出させる貫通孔32が形成されている。筐体31は、流体の圧力が非常に高い場合には補強材として機能する。
フィルタの外周部の面積に対して、流体の出口となる貫通孔32の大きさが制限されている場合、図7(b)に示すような断面矩形状の金属線材を使用した従来のフィルタ300では、流体がフィルタ300の軸方向に殆ど流れないため、流体はフィルタ300の内径側空間35から外径側に、直線的に貫通孔32に向かって流れることとなり、異物を捕捉するのにフィルタ300の一部のみしか活用されていないことになる(図8(b))。
これに対して本実施形態のフィルタ10では、図7(a)に示したように、流体は凹所221により形成される交差部空間23内を流れるため、流体はフィルタ10の肉厚内部を周方向、軸方向、その他の多様な方向にも流れる。その結果、流体はフィルタ10の内径側空間35から、フィルタの周方向及び軸方向にも移動しつつ複雑な経路を通って貫通孔32に向かって流れる。従来に比べてフィルタの広い範囲が異物の濾過に使用されることで、流体との接触面積が格段に増大し、異物の捕捉、及び流体とフィルタとの間における熱交換が効率的に行われる(図8(a))。
【0028】
<効果>
本実施形態に係るフィルタにおいては、重なり合う金属線材間に流体が通過する凹状空間が形成されるため、流体を多様な方向に通過させることができる。金属線材を螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状のフィルタにおいては、金属線材間に網目状に形成される複数の連通路によって、流体を確実に内外径方向に通過させる。上記従来の中空筒状のフィルタでは、隣接する線材層を構成する金属線材同士が交差部で密着しているため、内外径方向以外の方向へ流体をスムーズに移動させることは困難であった。
本実施形態によれば、複数の金属線材によって網目状に形成された複数の連通路の他に、金属線材とこれに重なる金属線材の凹所とによって形成される空間が連通路同士を連絡するので、フィルタ内に、径方向、周方向、軸方向を含む複雑且つ不規則的な流路を3次元的に形成することができる。この結果、流体と金属線材との接触面積が格段に増大し、流体がフィルタの広い範囲を通過することとなり、異物の捕捉率や濾過効率の向上を図ることができる。
なお、フィルタは、図7(a)中、上から下に流体を流すように使用してもよいし、下から上に流体を流すように使用してもよい。何れの場合も金属線材の凹所はフィルタを通過する流体中の異物を捕捉するポケットとして機能し、効果的に異物を除去できる。特に後者の場合は、金属線材の凸所を越えて金属線材の反対面へと移動した流体は金属線材の凹所部分で渦流を形成するため、局所的に流体の速度が低下し、効果的に異物を除去できる。
【0029】
また、本実施形態に係るフィルタにおいては、金属線材に長手方向に沿った凹所を形成して金属線材の単位重量、又は単位体積あたりの表面積を増大させたので、フィルタの小型化、軽量化を図れる。また、中空度が増大するので圧力損失値が向上する。
また、金属線材に凹所を形成したことで、フィルタとフィルタを通過する流体との接触面積が増大するので、フィルタと流体との間における熱交換を効率的に行える。また、一の線材層を構成する金属線材と、一の線材層と隣接する他の線材層を構成する金属線材との間に流体が通過する空間が形成されるため、フィルタを通過する流体と、フィルタを構成する金属線材との接触面積が更に増大し、フィルタと、フィルタを通過する流体との間における熱交換が効率的に行われる。
また、金属線材に凹所を形成したので、流体が通過する際に発生する騒音を効果的に低減することができる。
【0030】
〔変形実施形態〕
第一の実施形態の変形例について説明する。図9(a)、(b)は、変形例に係る金属線材を示す斜視図である。図9(a)に示すように金属線材202は、長手方向と直交する方向における断面形状が概略N字状(Z字状、S字状)であり、夫々長手方向の全長に渡って連続的に延びる凹所221及び凸所222を備える。凹所221と凸所222は、金属線材の長手方向と交差(直交)する方向に波状に形成されている。このように金属線材は、様々な断面形状とすることができる。この他にも、U字状、J字状、L字状、X字状、等としてもよい。
或いは図9(b)に示すように金属線材204は、線材の長手方向に対して傾斜する方向に延びる凹所221及び凸所222を備えてもよい。長手方向に対して傾斜した凹所221及び凸所222は、長手方向に沿って、又は長手方向と交差(或いは直交)する方向に繰り返される。
本実施形態も、第一の実施形態と同様の作用・効果を奏することができる。
【0031】
〔第二の実施形態〕
図10は、本発明の第二の実施形態に係る金属線材を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は側面写真であり(c)は上面写真である。図11は、本発明の第二の実施形態に係る金属線材を製造する圧延ローラの模式図である。
図10に示すように金属線材205は、一方の側(第一面)の長手方向に沿って所定のピッチで繰り返す凹所221及び凸所222を有し、他方の側(第一面の反対面、第二面)に平坦面223を有する。本例において平坦面は金属線材の長手方向に全長に渡って形成されている。
図11に示すように圧延装置は、周方向に沿って所定のピッチで凸部113及び凹部114が形成された歯車状の圧延ローラ111aと、円柱状の圧延ローラ111bとを備える。凹所221及び凸所222は圧延ローラ111aによって、平坦面223は圧延ローラ111bによって形成される。凹所221は圧延ローラ111aの凸部113によって押しつぶされることにより凸所222に比べて薄肉且つ幅広に形成される。逆に凸所222は、凹所221に比べて厚肉且つ細幅に形成される。
【0032】
図12は、フィルタ内で金属線材が交差する部分を拡大して示した模式図である。フィルタ10においては、一の線材層L1を構成する金属線材205Aと一の線材層L1と隣接する他の線材層L2を構成する金属線材205Bとの交差部(図中斜線部分)には、金属線材205Aの凹所221と金属線材205Bの平坦面223との間に流体が通過しうる交差部空間23が形成される。この交差部空間23は、交差部において流体が金属線材205Aをその長手方向と交差(又は直交)する方向に跨がって移動することを許容する。また、交差部空間23は各線材層の重なり方向へ延びる複数の連通路22間を連通させる。このため、本実施形態に係るフィルタ10においては、交差部空間23と連通路22とによって、流体をフィルタの周方向及び軸方向に拡散移動させながら径方向に通過させることができる。なお、図においては平坦面223側を濾過する流体の上流側とし、凹所221及び凸所222側を下流側としているが、逆向きに配置しても同様の効果を得られる。
【0033】
図13(a)は図10に示した金属線材を用いた試作例に係るフィルタの断面写真で示す図あり、(b)は断面矩形状の金属線材を用いた比較例に係るフィルタの断面写真で示す図ある。図中上下方向がフィルタの軸方向、左方がフィルタの内径側、右方が外径側である。
試作例のフィルタは、平坦面223が内径側、凹所221及び凸所222側が外径側となるように作製したものである。写真中、左右方向に薄肉に現れる部分が凹所221部分であり、左右方向に厚肉に現れる部分が凸所222部分である。比較例のフィルタに用いた金属線材は、断面が真円形の金属素線を表面がフラットな円柱形状の2つの圧延ローラにて挟圧して、断面矩形状としたものである。試作例のフィルタは、比較例に係る従来の断面矩形状の金属線材を用いたフィルタに比べて中空度が増大し、圧力損失値が向上する。
このように本実施形態においては第一の実施形態と同様に、フィルタ内に、径方向、周方向、軸方向を含む複雑且つ不規則的な流路を3次元的に形成することができ、異物の捕捉率や濾過効率の向上を図ることができる。また、金属線材の表面積を増大させたので、フィルタの軽量化、熱交換効率の向上、及び騒音の低減を図ることができる。さらに、本実施形態においては、図13に示す交差部空間23を形成する凹所221部分は圧延加工により幅広に形成したため、交差部空間23を通過する流体との接触面積を増大し、熱交換効率を高める。
【0034】
また、金属線材の凹所側が通過流体の上流側となるように配置した場合は凹所が流体中の異物を捕捉するポケットとして機能し、逆向きに配置した場合は、流体が線材を通過する際に凹所部分で渦流が発生して局所的に流体の速度が低下し、効果的に異物を除去できる。
また、金属線材の一方の側に凹凸を形成し、他方の面を平坦面としたので、金属線材間の焼結接点を確保でき、フィルタ強度を向上させることができる。
【0035】
〔変形実施形態〕
第二の実施形態の変形例について説明する。
図14(a)、(b)は、変形例に係る金属線材を示す斜視図である。金属線材の一方の側に凹所を、他方の側に平坦面を形成する場合、凹所形成側は任意の形態とすることができる。図14(a)に示すように金属線材の206一方の側には、長手方向の全長に渡って連続的に延びる一つの凹所221、及び2つの凸所222を形成できる。また、図14(b)に示すように金属線材207の一方の側には、長手方向に対して傾斜する方向に延びる複数の凹所221及び凸所222を形成してもよい。
金属線材の一方の側に凹凸を形成し、他方の面を平坦面としたので、金属線材間の焼結接点を確保でき、フィルタ強度を向上させることができる。
【0036】
図15(a)?(c)は、他の変形例に係る金属線材を示す斜視図である。金属線材に所定のピッチで繰り返す凹所221及び凸所222を形成する場合、図15(a)に示すように金属線材208の厚さが略一定となるように、金属線材の双方の側に凹所221及び凸所222を交互に形成してもよい。即ち、図15(a)は、断面形状が略長方形の金属線材の正面形状がジグザグ状となるようにしたものである。
また図15(b)に示すように、金属線材209の一方の側に凹所221及び凸所222を交互に連続形成し、他方の側に平坦面223を形成してもよい。
さらに図15(c)に示すように、金属線材210の厚さが増減する構成、即ち厚肉部と薄肉部が繰り返す構成としてもよい。凹所及び凸所は図示するように波状に形成してもよい。
図15に示す例では、金属線材の長手方向に沿って凹凸又は薄肉部と厚肉部が繰り返す構成であるが、金属線材の長手方向と交差(直交)する方向に凹凸又は薄肉部と厚肉部が繰り返す構成としてもよい。
【0037】
〔第三の実施形態〕
図16は、本発明の第三の実施形態に係る金属線材、及び金属線材を製造する圧延ローラの斜視図である。
中空筒状フィルタを形成する金属線材は、表面(面内)に複数の凹所及び凸所が形成された帯状の線材とすることができる。図示する金属線材211は、一面に凹所221及び凸所222を有し、他面が平坦面223であるが、金属線材は両面に凹所及び凸所を有していてもよい。
上記金属線材211は、外周面に凸部113及び凹部114が形成された圧延ローラ111aと、円柱状の圧延ローラ111bとによって帯状の金属線材211を押圧することにより作製できる。なお、帯状の金属線材211は図4(a)に示すように断面が真円形状の金属素線を圧延することにより得られる。
金属線材211を用いて図1に示すような中空筒状フィルタを作製する場合、凹所及び凸所が形成された面を内径側又は外径側とする。
本実施形態係る金属線材を用いて中空筒状フィルタを作製した場合、第一の実施形態と同様に、複雑な或いは不規則的な連通路を3次元的に形成することができ、異物の捕捉率や濾過効率の向上を図ることができる。また、金属線材の単位重量あたりの表面積を増大させることができるので、フィルタの小型化、軽量化、熱交換効率の向上、及び騒音の低減を図ることができる。また、金属線材に平坦面を形成する場合、金属線材間の焼結接点を確保できるので、フィルタ強度を向上させることができる。
【0038】
〔第四の実施形態〕
図17は、本発明の第四の実施形態に係るフィルタを説明する図であり、(a)はフィルタを構成する金属線材の模式図であり、(b)はフィルタの断面図である。本実施形態に係るフィルタは、一つのフィルタを形成する一本の金属線材中に、外形状又は断面形状が異なる複数の金属線材部分を有する点に特徴がある。
フィルタ10を構成する金属線材20は、長手方向に延びる第一金属線材部分20cと、第一の金属線材部分20cとは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状又は断面形状が異なる第二金属線材部分20dと、を備える。例えば、図17に示す金属線材20は、第一金属線材部分20cと第二金属線材部分20dとによって長手方向に二分割された構成を有する。第一金属線材部分20cの長手方向と直交する方向における断面形状は概略W字状であり、図5に示した金属線材201と同様の形状である。第二金属線材部分20dの長手方向と直交する方向における断面形状は概略矩形状であり、図7(b)に示した従来例に係る金属線材301と同様の形状である。即ち、金属線材20を構成する金属線材部分の少なくとも一方の金属線材部分(ここでは第一金属線材部分20c)には、凹所221(図5参照)が形成されている。
また、金属線材20を長手方向に三以上に分割し、第一の金属線材部分20cと第二金属線材部分20dとが交互に繰り返す構成としてもよい。この場合、第一の金属線材部分20cと第二金属線材部分20dの長さは、フィルタに求められる性能や効果に基づいて適宜決定される。
【0039】
図17(b)に示すフィルタ10は、第一金属線材部分20cにて形成された内層10cと、第二金属線材部分20dにて形成された外層10dとを備えている。即ち、フィルタ10の巻き始めから所定数の線材層を第一金属線材部分20cによって形成した後、巻き終わりまでの所定数の線材層を第二金属線材部分20dによって形成したものである。ここで、内層10cと外層10dは、夫々単数又は複数の線材層を含んで構成される。
フィルタ10の内層10cと外層10dは、当該層内に含む金属線材部分の形状に応じた作用及び効果を奏する。即ち、フィルタ10の内層10cは、これを構成する第一金属線材部分20cによって、第一の実施形態に記載したような通気性の向上、熱交換率の向上、軽量化等を図ることができる。
また外層10dを構成する第二金属線材部分20dは、フィルタの内径側と外径側に平坦面を備えているため、隣接する線材層を構成する各金属線材との接触面積を大きくすることができる。このため、フィルタ10を焼結した場合の金属線材間の焼結接点を確保できるので、フィルタ強度、特に、フィルタの軸方向における強度を向上させることができる。また、第二金属線材部分20dは、第一金属線材部分20cのような異形状の線材と比べて内外径方向の厚さが薄いため、フィルタの薄型化を図ることができる。
【0040】
このように、1つのフィルタ10に断面形状又は外形状が異なる複数種類の金属線材部分を含めることで、フィルタ10は各金属線材部分が奏する効果を複合的に発揮することができる。
なお、一本の金属線材に含む金属線材部分は、3以上としてもよい。つまり、第三金属線材部分以降があってもよい。また、金属線材部分の中には金属素線を変形させていない部分(例えば丸線)を含んでもよい。金属線材部分は、金属線材が3以上の金属線材部分を含む場合、同一の外形状の金属線材部分を含んでもよいし、全ての金属線材部分が互いに異なる外形状となるように形成してもよい。
また、各金属線材部分によって形成される線材層の数量や、各金属線材部分によって形成される線材層の径方向の厚さの割合等は、フィルタに求められる性能や効果に基づいて適宜決定される。
また、フィルタの軸方向一端寄りを第一金属線材部分のみにて形成し、他端寄りを第二金属線材部分のみにて形成するようにしてもよい。即ち、フィルタを軸方向に複数に分割した各分割部分を夫々の金属線材部分にて形成してもよい。つまり、一つの線材層中に第一金属線材部分と第二金属線材部分が軸方向位置を異ならせて併存するようにしてもよい。
【0041】
<フィルタの製造装置及び製造方法?2>
本発明の第四の実施形態に係る中空筒状フィルタの製造装置について図18に基づいて説明する。図18(a)はフィルタの製造装置の一例を示す模式図であり、(b)は圧延装置の模式的斜視図である。なお、図2と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
製造装置100Cを構成する圧延装置110は、対向配置された一対の圧延ローラ111a、111bを有する。一対の圧延ローラ111a、111bは、加圧部112として軸方向の異なる位置に、第一金属線材部分20cを形成する第一金属線材形成部115cと、第二金属線材部分20dを形成する第二金属線材形成部115dと、を備える。更に圧延装置110は、一対の圧延ローラ111a、111bの軸方向に沿って進退して、金属素線21を第一金属線材形成部115c又は第二金属線材形成部115dに案内するガイドノズル116(ガイド手段)を備えている。
夫々の金属線材形成部115c、115dは、作製する金属線材部分の外形状に応じた形状を有する。例えば、第一金属線材形成部115cは図6に示した加圧部112と同様の形状を有する。また、第二金属線材形成部115dは、2つの円柱状のローラが第二金属線材部分20dの厚さに相当する距離だけ離間して配置されることにより形成されている。
【0042】
製造装置100Cの動作について説明する。例えば、図17に示すフィルタ10は、以下のように形成される。
まず、金属素線21が第一金属線材形成部115cに案内される位置にガイドノズル116を移動させる。圧延ローラ111a、111bの第一金属線材形成部115cは金属素線21を圧延して第一金属線材部分20cを形成する。走行方向下流側において第一金属線材部分20cは、心棒131に巻付けられて内層10cを形成する。
続いて、第一金属線材部分20cが所望の数の線材層の形成を終了するタイミングを図って、金属素線21を第二金属線材形成部115dに案内する位置にガイドノズル116を移動させる。圧延ローラ111a、111bの第二金属線材形成部115dは金属素線21を圧延して第二金属線材部分20dを形成する。金属線材20の走行方向下流側において第二金属線材部分20dは、心棒131に巻付けられて外層10dを形成する。
第二金属線材部分20dによって所望の数の線材層を形成した後、金属線材20を切断し、切断された端部をスポット溶接等により巻付けを完了した線材の適所に接合して心棒131から取り外すことにより、中空筒状体を得る。中空筒状体をそのままフィルタとしてもよいし、更に焼結処理を施してもよい。
以上説明した圧延装置は、中空筒状フィルタに含ませる金属線材部分の数に応じて3以上の金属線材形成部を備えてもよい。また、金属線材形成部の一つには金属素線を変形させずに通過させる金属線材形成部を含んでもよい。
このように、複数の金属線材形成部を備えた圧延ローラに対して、金属素線を繰り出すガイドノズルを圧延ローラの軸方向に進退させることにより、一対の圧延ローラにて異なる外形状又は断面形状の金属線材部分を作製することができる。また、中空筒状フィルタが複数種類の金属線材部分を含む場合であっても、中空筒状フィルタを一本の連続した金属素線から作成することができるので、製造工程が複雑にならない。
【0043】
〔本発明の作用、効果のまとめ〕
以上、各実施形態に基づいて本発明を説明したが、線材に形成する凹所は金属線材の長手方向位置に応じて周方向位置が変化するように形成されてもよい。また、上記各実施形態は、矛盾しない限り相互に組み合わせて実施してもよい。例えば、第一の実施形態に示したような長手方向の全長に渡って連続的に延びる凹所を金属線材の一方の側に形成し、第二の実施形態に示したような長手方向に沿って繰り返す凹所及び凸所を金属線材の他方の側に形成してもよい。
【0044】
<第一の実施態様>
本態様は、長手方向の全長に渡って形成されるか、又は長手方向に沿って繰り返す(断続的に配置された)凹所221を有した金属線材20を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタ10であって、各線材層を構成する金属線材は、中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する各線材層を構成する金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、主として各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路22を形成し、一の線材層を構成する金属線材の凹所と一の線材層と隣接する他の線材層を構成する金属線材との間には、複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする。
金属線材に凹所を形成したので、一の線材層を構成する金属線材の凹所と一の線材層と隣接する他の線材層を構成する金属線材との間に交差部空間23を形成することができる。この空間によって、主として各線材層が重なる方向へ連通させる連通路を軸方向や径方向に連絡させたので、フィルタ内で複雑な流路を形成することができ、効率的に異物を除去できる。また、金属線材に凹所を形成したので、金属線材の単位重量あたりの表面積が増大し、フィルタの小型化、軽量化、及び熱交換率の向上、フィルタを通過する流体により発生する騒音の低減効果が得られる。
【0045】
<第二の実施態様>
本態様に係るフィルタ10において金属線材20は、金属線材の長手方向と交差する方向に波状に形成された凹所221と凸所222を有することを特徴とする。
本態様においても、一の線材層を構成する金属線材の凹所と一の線材層と隣接する他の線材層を構成する金属線材との間に形成される交差部空間23によって、フィルタ内で複雑な流路を形成することができ、効率的に異物を除去できる。また、金属線材に凹所を形成したので、金属線材の単位重量あたりの表面積が増大し、フィルタの小型化、軽量化、及び熱交換率の向上、フィルタを通過する流体により発生する騒音の低減効果が得られる。
【0046】
<第三の実施態様>
本態様に係るフィルタ10において金属線材20は、長手方向に沿って繰り返す(断続的に配置された)厚肉の細幅部と薄肉の幅広部とを有することを特徴とする。
薄肉の幅広部において流体との接触面積が増大させたので、熱交換効率を高めることができる。
<第四の実施態様>
本態様に係るフィルタ10において、凹所221が形成された金属線材20の裏側は、平坦面223であることを特徴とする。
金属線材間の焼結接点を確保でき、フィルタ強度を向上させることができる。
【0047】
<第五の実施態様>
本態様に係るフィルタ10は、凹所221が、濾過する流体の上流側を向くように金属線材20を配置したことを特徴とする。
凹所を上流側に配置したことで、凹所が流体中の異物を捕捉するポケットとして機能し、効果的に異物を除去できる。
<第六の実施態様>
本態様に係るフィルタ10は、凹所221が、濾過する流体の下流側を向くように金属線材20を配置したことを特徴とする。
凹所を下流側に配置したことで、流体が線材を通過する際に凹所部分で渦流が発生して局所的に流体の速度が低下し、効果的に異物を除去できる。
【0048】
<第七の実施態様>
本態様は、金属線材20を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタ10であって、各線材層を構成する金属線材は、中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する各線材層を構成する金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路22を形成し、一の線材層を構成する金属線材と一の線材層と隣接する他の線材層を構成する金属線材との間には、少なくとも一方の線材層を構成する金属線材に形成された凹所221によって複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする。
本態様は、第一の実施態様と同様の作用、効果を奏する。
<第八の実施態様>
本態様に係るフィルタ10において金属線材20は、長手方向に沿って形成される凹所221を有することを特徴とする。
本態様は、第一の実施態様と同様の作用、効果を奏する。
【0049】
<第九の実施態様>
本態様に係るフィルタ10において金属線材20は、長手方向に沿って繰り返す(断続的に配置された)凹所221を有することを特徴とする。
本態様は、第一の実施態様と同様の作用、効果を奏する。
<第十の実施態様>
本態様に係るフィルタ10において金属線材20は、長手方向に延びる第一金属線材部分20cと、該第一の金属線材とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二金属線材部分20dと、を有し、少なくとも一方の金属線材部分に凹所221が形成されていることを特徴とする。
本態様によれば、1つの中空筒状フィルタ内に外形状が異なる複数種類の金属線材部分を含むので、中空筒状フィルタは、各形状の金属線材部分が生じさせる作用効果を複合的に発揮することができる。
なお、凹所によって形成される複数の連通路間を連通させる空間は、凹所を有する金属線材部分によって形成される線材層と、凹所を有さない金属線材部分によって形成される線材層との間に形成される空間であってもよい。
【0050】
<第十一の実施態様>
第十の実施態様に記載の中空筒状フィルタの製造装置100Cであって、対向配置された一対の圧延ローラ111a、111bを有し、金属素線21を間に挟んで所定の断面形状の金属線材を形成する圧延装置110と、圧延装置によって形成された金属線材20を心棒131に巻付けて中空筒状体を形成する巻付装置130と、を備え、一対の圧延ローラは、軸方向の異なる位置に、第一金属線材部分20cを形成する第一金属線材形成部115cと、第二金属線材部分20dを形成する第二金属線材形成部115dと、を備え、圧延装置は、一対の圧延ローラの軸方向に沿って進退して金属素線を第一金属線材形成部又は第二金属線材形成部に案内するガイド手段(ガイドノズル116)を備えたことを特徴とする。
本態様によれば、複数の金属線材形成部を備えた圧延ローラに対して、金属素線を繰り出すガイドノズルを圧延ローラの軸方向に進退させることにより、一対の圧延ローラにて異なる外形状又は断面形状の金属線材部分を作製することができる。また、中空筒状フィルタが複数種類の金属線材部分を含む場合であっても、中空筒状フィルタを一本の連続した金属素線から作成することができるので、製造工程が複雑にならない。
【符号の説明】
【0051】
10…中空筒状フィルタ、10c…内層、10d…外層、20…金属線材、20c…第一金属線材部分、20d…第二金属線材部分、21…金属素線、22…連通路、23…交差部空間、201?211…金属線材、221…凹所、222…凸所、223…平坦面、100…製造装置、110…圧延装置、111a、111b…圧延ローラ、112…加圧部、113、114…成形部、115c、115d…金属線材形成部、116…ガイドノズル(ガイド手段)、120…テンションユニット、121…固定ローラ、122…可動ローラ、130…巻付装置、131…心棒、132…ガイド部材、140…搬送ローラ、150…バッファユニット、151…固定ローラ、152…可動ローラ、30…フィルタ装置、31…筐体、32…貫通孔、35…内径側空間、300…フィルタ、301…金属線材、302…連通路、303…交差部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、
隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成されて、長手方向に対して傾斜する方向に延びると共に該長手方向と交差する方向に繰り返す凹所とを有しており、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。
【請求項3】(削除)
【請求項4】 金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された長手方向に沿って繰り返す凹所とを有すると共に、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、
隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。
【請求項5】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された凹所とを有し、更に前記金属線材は、長手方向に沿って繰り返す厚肉の細幅部と薄肉の幅広部とを有して、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、
隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。
【請求項6】
前記凹所が、濾過する流体の上流側を向くように前記金属線材を配置したことを特徴とする請求項4又は5に記載の中空筒状フィルタ。
【請求項7】
前記凹所が、濾過する流体の下流側を向くように前記金属線材を配置したことを特徴とする請求項4又は5に記載の中空筒状フィルタ。
【請求項8】
前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分に前記凹所が形成されていることを特徴とする請求項4乃至7の何れか一項に記載の中空筒状フィルタ。
【請求項9】
請求項8に記載の中空筒状フィルタの製造装置であって、
対向配置された一対の圧延ローラを有し、金属素線を間に挟んで所定の断面形状の金属線材を形成する圧延装置と、該圧延装置によって形成された前記金属線材を心棒に巻付けて中空筒状体を形成する巻付装置と、を備え、
前記一対の圧延ローラは、軸方向の異なる位置に、前記第一の金属線材部分を形成する第一金属線材形成部と、前記第二の金属線材部分を形成する第二金属線材形成部と、を備え、
前記圧延装置は、前記一対の圧延ローラの軸方向に沿って進退して前記金属素線を前記第一金属線材形成部又は前記第二金属線材形成部に案内するガイド手段を備えたことを特徴とする中空筒状フィルタの製造装置。
【請求項10】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタの製造装置であって、
前記中空筒状フィルタは、
各線材層を構成する前記金属線材が、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、
隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されており、
前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分に前記凹所が形成されており、
前記中空筒状フィルタの製造装置は、
対向配置された一対の圧延ローラを有し、金属素線を間に挟んで所定の断面形状の金属線材を形成する圧延装置と、該圧延装置によって形成された前記金属線材を心棒に巻付けて中空筒状体を形成する巻付装置と、を備え、
前記一対の圧延ローラは、軸方向の異なる位置に、前記第一の金属線材部分を形成する第一金属線材形成部と、前記第二の金属線材部分を形成する第二金属線材形成部と、を備え、
前記圧延装置は、前記一対の圧延ローラの軸方向に沿って進退して前記金属素線を前記第一金属線材形成部又は前記第二金属線材形成部に案内するガイド手段を備えたことを特徴とする中空筒状フィルタの製造装置。
【請求項11】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された長手方向に沿って繰り返す凹所とを有し、更に前記金属線材は、長手方向に沿って繰り返す厚肉の細幅部と薄肉の幅広部とを有して、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、
隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。
【請求項12】
前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分に前記凹所が形成されていることを特徴とする請求項11に記載の中空筒状フィルタ。
【請求項13】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分は、長手方向に沿って形成される凹所を有しており、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。
【請求項14】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分は、長手方向と交差する方向に繰り返す凹所を有しており
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。
【請求項15】
金属線材を、螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより形成される中空筒状フィルタであって、
各線材層を構成する前記金属線材は、前記中空筒状フィルタの軸方向に対して傾斜する方向へ延びており、隣接する前記各線材層を構成する前記金属線材は互いに交差する方向に延びることにより、前記各線材層が重なる方向へ連通する複数の連通路を形成し、
前記金属線材は、長手方向に延びる第一の金属線材部分と、該第一の金属線材部分とは異なった長手方向位置に配置され、且つ外形状が異なる第二の金属線材部分と、を有し、少なくとも一方の前記金属線材部分は、平坦面と、該平坦面の裏側に形成された凹所とを有しており、
一の線材層を構成する前記金属線材と前記一の線材層と隣接する他の線材層を構成する前記金属線材との間には、少なくとも一方の前記線材層を構成する前記金属線材に形成された前記凹所によって前記複数の連通路間を連通させる空間が形成されることを特徴とする中空筒状フィルタ。
【請求項16】
請求項12乃至15の何れか一項に記載の中空筒状フィルタの製造装置であって、
対向配置された一対の圧延ローラを有し、金属素線を間に挟んで所定の断面形状の金属線材を形成する圧延装置と、該圧延装置によって形成された前記金属線材を心棒に巻付けて中空筒状体を形成する巻付装置と、を備え、
前記一対の圧延ローラは、軸方向の異なる位置に、前記第一の金属線材部分を形成する第一金属線材形成部と、前記第二の金属線材部分を形成する第二金属線材形成部と、を備え、
前記圧延装置は、前記一対の圧延ローラの軸方向に沿って進退して前記金属素線を前記第一金属線材形成部又は前記第二金属線材形成部に案内するガイド手段を備えたことを特徴とする中空筒状フィルタの製造装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-05-12 
出願番号 特願2016-556634(P2016-556634)
審決分類 P 1 652・ 161- YAA (B01D)
P 1 652・ 121- YAA (B01D)
P 1 652・ 113- YAA (B01D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 目代 博茂  
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 金 公彦
櫛引 明佳
登録日 2019-02-15 
登録番号 特許第6480464号(P6480464)
権利者 富士フィルター工業株式会社
発明の名称 中空筒状フィルタ、及び製造装置  
代理人 鈴木 均  
代理人 小川 弥生  
代理人 小川 弥生  
代理人 鈴木 均  

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