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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07D
管理番号 1364352
審判番号 不服2017-19071  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-22 
確定日 2020-07-14 
事件の表示 特願2015-503847「CCR3阻害薬の使用」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月10日国際公開、WO2013/149986、平成27年 4月27日国内公表、特表2015-512432〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年4月2日(パリ条約による優先権主張 2012年4月3日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とするものであり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
・平成28年10月17日付け:拒絶理由通知
・平成29年 3月21日 :意見書及び手続補正書の提出
・平成29年 4月13日付け:拒絶理由通知
・平成29年 7月18日 :意見書の提出
・平成29年 8月17日付け:拒絶査定
・平成29年12月22日 :審判請求書及び手続補正書の提出
・平成30年 1月17日付け:前置報告書
・平成30年 5月24日 :上申書の提出
・平成30年11月28日付け:拒絶理由通知
・平成31年 4月23日 :意見書の提出
・令和 1年 7月 5日付け:拒絶理由通知
・令和 2年 1月 7日 :意見書の提出
第2 本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明は、平成29年12月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
鼻ポリープ症、好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎、好酸球増加症候群及びチャーグ・ストラウス症候群から選択される疾患の治療用の医薬組成物であって、下記式1

(式中
R^(1)はメチルであり;
R^(2)はメチルであり;
Xはクロライドであり;
jは2である)
の化合物を含有する、医薬組成物。」
第3 拒絶の理由
当審において令和1年7月5日付けで通知した拒絶理由である理由1の概略は、以下のとおりである。
「(理由1)
本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項1?3について
引用文献1:国際公開第2010/115836号
引用文献2:Journal of Pharmaceutical Sciences, 1977, Vol.66, p.1-19
引用文献3:アレルギーの臨床,2006,Vol.26 No.4,p.17-22
引用文献4:臨床免疫・アレルギー科,2010,Vol.54 No.4,p.459-464
引用文献5:現代医療,1988,Vol.20 No.12,p.129-135
引用文献6:皮膚アレルギーフロンティア,2011,Vol.9 No.2,p.23-27 」
第4 引用文献に記載された事項、及び引用発明
1 引用文献1(国際公開第2010/115836号)に記載された事項、及び引用発明(引用文献1に記載された発明)
(1)引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、外国語による記載は日本語訳を記載した。また、下線は当審合議体が付した。
摘記(1a)
「【請求項1】式1の化合物。

・・中略・・・
【請求項8】
式1の化合物がR-鏡像体R-1の形態で存在する、請求項1から6のいずれか1項記載の一般式1の化合物。

【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載の式1の一種以上の化合物を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項10】
薬物としての請求項1から8のいずれか1項記載の式1の化合物。
【請求項11】
CCR3活性インヒビターが治療上の利益を有する疾患の予防及び/又は治療のための薬物の調製のための請求項1から8のいずれか1項記載の式1の化合物の使用。」(【請求項1】?【請求項11】)
摘記(1b)
「ケモカイン受容体は炎症性、感染性、及び免疫調節の障害及び疾患(喘息及びアレルギー性疾患だけでなく、自己免疫疾患、例えば、慢性関節リウマチ、グレーブ病、慢性閉塞性肺疾患、及びアテローム硬化症を含む)の重要な媒介物質であると示されていた。例えば、ケモカイン受容体CCR3はとりわけ好酸球、好塩基性細胞、TH_(2)細胞、肺胞マクロファージ、マスト細胞、上皮細胞、小グリア細胞、星状細胞及び繊維芽細胞で発現される。CCR3は好酸球をアレルギー性炎症の部位に吸引し、続いてこれらの細胞を活性化するのに重要な役割を果たす。CCR3のケモカインリガンドが細胞内カルシウム濃度の迅速な増大、Gタンパク質の増大されたGTP 交換、増大されたERK リン酸化、増進された受容体内在化、好酸球形状変化、細胞付着分子の増大された発現、細胞脱顆粒、及び移動の促進を誘発する。従って、ケモカイン受容体を抑制する薬剤はこのような障害及び疾患に有益であろう。加えて、ケモカイン受容体を抑制する薬剤はまた、例えば、HIVによるCCR3発現細胞の感染をブロックすることにより感染性疾患に有益であり、又はサイトメガロウイルスの如きウイルスによる免疫細胞応答の操作を防止するのに有益であろう。
それ故、CCR3は重要な標的であり、CCR3の拮抗作用はおそらく炎症性、好酸球性、免疫調節及び感染性の障害及び疾患の治療に有効である (Wegmann, Am J Respir Cell Mol Biol., 36(1):61-67 (2007); Fryer J Clin Invest., 116(1):228-236 (2006); De Lucca, Curr Opin Drug Discov Devel., 9(4):516-524 (2006))。
本件出願の化合物はCCR3-受容体の活性が関係する疾患の予防及び/又は治療のための薬物を製造するのに有益である。呼吸系の病気又は胃腸の病気の多種の炎症性、感染性、及び免疫調節の障害及び疾患だけでなく、関節の炎症性疾患並びに鼻咽頭、眼、及び皮膚のアレルギー性疾患(喘息及びアレルギー性疾患を含む)、好酸球性疾患、病原性微生物(定義により、ウイルスを含む)による感染症だけでなく、自己免疫疾患、例えば、慢性関節リウマチ及びアテローム硬化症の予防及び/又は治療のための薬物の製造が好ましい。」(2頁28行?3頁6行)
摘記(1c)
「本明細書に開示された化合物は治療上許される塩として存在し得る。本発明は酸付加塩を含む、塩の形態の先にリストされた化合物を含む。好適な塩として、有機酸及び無機酸の両方で生成された塩が挙げられる。このような酸付加塩は通常医薬上許されるであろう。しかしながら、医薬上許されない塩の塩が当該化合物の調製及び精製に利用し得る。塩基付加塩がまた生成されてもよく、医薬上許されるかもしれない。塩の調製及び選択の更に完全な説明につき、Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use (Stahl, P. Heinrich. Wiley- VCHA, Zurich, Switzerland, 2002)を参考のこと。
本明細書に使用される“治療上許される塩”という用語は、水溶性もしくは油溶性又は水分散性もしくは油分散性であり、かつ本明細書に定義されたように治療上許される本明細書に開示された化合物の塩又は双性イオン形態を表す。塩は化合物の最後の単離及び精製中に、又は遊離塩基の形態の適当な化合物を好適な酸と反応させることにより別々に調製し得る。代表的な酸付加塩として、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、L-アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシレート)、硫酸水素塩、酪酸塩、ショウノウ塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ゲンチジン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオネート)、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、DL-マンデル酸塩、メチシレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ホスホン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ピログルタミン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、L-酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩(p-トシレート)、及びウンデカン酸塩が挙げられる。また、本明細書に開示された化合物中の塩基性基がメチル、エチル、プロピル、及びブチルクロリド、ブロミド及びヨージド;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル、及び硫酸ジアミル;デシル、ラウリル、ミリスチル、及びステリルクロリド、ブロミド、及びヨージド;並びに臭化ベンジル及び臭化フェネチルで四級化し得る。治療上許される付加塩を生成するのに使用し得る酸の例として、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸、並びに有機酸、例えば、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、及びクエン酸が挙げられる。塩はまたアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンによる化合物の配位により生成し得る。それ故、本発明は本明細書に開示された化合物のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、及びカルシウム塩などを意図している。」(46頁13?45行)
摘記(1d)
「S.実施例についての一般合成操作
下記の一般スキームに従って、本発明の実施例を合成する。

この場合、“ビルディングブロック”及び“反応パートナー”は以下の操作A-Gについて定義され、その中でA、R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は先に定義されたとおりである。ビルディングブロック又は反応パートナーが商業上入手し得ない場合には、その合成が市販の物質から開始して、必要な場合には一種以上の中間体“I”を伴って、以下に記載される。
“リンカー”という用語はその定義がR^(1)の定義に限定される化学部分を意味するのに使用され、その操作の反応を受けるために述べられた特別な官能基を有することができる。
・・・中略・・・
操作 B:

」(50頁8行?51頁9行)
摘記(1e)
「S.4.2 操作 Bによる実施例(例132 - 191)の合成
例132 の合成

室温のDMF(2ml)中のビルディングブロック B1(120mg)の撹拌溶液に、DIPEA(0.2ml)、HATU(175mg)を添加した。20分後、ピロリジン(49mg)を添加し、その混合物を更に1.5時間撹拌した。数滴の水及びTFAを添加し、その混合物を逆相HPLCにより分離した。所望の画分を集め、合わせ、凍結乾燥して例132(30mg)をそのTFA塩として得た。HPLC: Rt = 1.29分(方法D)
下記の例を例132と同様にしてビルディングブロック B1?B18から合成した。


・・・中略・・・

・・・以下省略・・・」(104頁1行?最下行)
(当審合議体による注釈;「TFA」は、引用文献1の53頁下から2行?1行における「trifluoroacetic acid(20ml,TFA)」という記載からみて、「トリフルオロ酢酸」を意味する。)
摘記(1f)
「薬理学的パート
別の局面において、本発明はGタンパク質共役受容体の推定の特別なアゴニスト又はアンタゴニストを評価するのに使用し得る。本発明はケモカイン受容体の活性を変調する化合物についてのスクリーニングアッセイの準備及び実行におけるこれらの化合物の使用に関する。
・・・中略・・・
CCR3受容体結合試験はヒトケモカイン受容体CCR3(hCCR3-C1細胞)でトランスフェクトされたK562細胞系(骨髄性白血病芽細胞)に基づく。
・・・中略・・・
試験化合物のアフィニティーの測定を所定の化合物濃度における完全結合(Bo)又は試験化合物の存在下の結合(B)からの非特異的結合 (NSB) の引き算により計算した。NSB 値を100抑制%に設定した。Bo-NSB 値を0抑制%に設定した。
抑制%値を特定の化合物濃度、例えば、1μMで得、試験化合物の抑制%を式100-((B-NSB)^(*)100/(Bo-NSB)) により計算した。100%より上の抑制%がアッセイ変動により見られる。
解離定数Kiを質量作用に基づくプログラムの法則"easy sys" (Schittkowski, Num Math 68, 129-142(1994)) を使用して0.1?10000nM の用量範囲にわたって幾つかの化合物濃度で得られた実験データの反復フィッティングにより計算した。
ケモカイン受容体活性のインヒビターとしての本発明の化合物の実用性は当業界で知られている方法、例えば、Ponath ら, J. Exp. Med., 183, 2437-2448(1996)及びUguccioni ら, J. Clin. Invest.,100,11371143(1997)により開示された、CCR3リガンド結合のためのアッセイにより実証し得る。・・・中略・・・特に、本発明の化合物は上記アッセイでCCR3受容体に結合する活性を有し、エオタキシン-1、エオタキシン-2、エオタキシン-3、MCP-2、MCP-3、MCP-4又はRANTESを含む、CCR3リガンドによるCCR3の活性化を抑制する。
本明細書に使用される“活性”は上記アッセイで測定される場合の抑制で1μMで50%以上の抑制を示す化合物を意味することが意図されている。このような結果がCCR3受容体活性のインヒビターとしての化合物の固有の活性を示す。
抑制%及びKi 値は以下のとおりである (ヒトCCR3-受容体におけるヒトエオタキシン-1):

・・・中略・・・

・・・以下省略」(119頁28行?122頁右欄最下行)
(2)引用発明(引用文献1に記載された発明)
引用文献1には、請求項1を引用する請求項8を引用する請求項9において、請求項1の式1で表される化合物の「R-鏡像体R-1」(以下、「式1のR-鏡像体」という。)を含む医薬組成物が記載され、請求項1を引用する請求項8を引用する請求項11において、「式1のR-鏡像体」をCCR3活性インヒビターが治療上の利益を有する疾患の予防及び/又は治療のための薬物の調製に使用することが記載されている(摘記(1a))。
そして、引用文献1には、「式1のR-鏡像体」に該当する化合物の具体例として、実施例135で「例135」と称される化合物(以下、「化合物135」という。)を製造したことが記載されている(摘記(1d)及び(1e))。
また、引用文献1の「薬理学的パート」の項目には、ヒトケモカイン受容体CCR3に対するCCR3リガンドであるヒトエオタキシン-1を用いた結合アッセイで測定された、化合物135の「1μMにおけるCCR3抑制%」及び解離定数Ki(nM)がぞれぞれ「101%」及び「3nM」であったことが記載されているので(摘記(1f))、化合物135は、CCR3リガンドによるCCR3の活性化を抑制する「CCR3活性インヒビター」であるといえる。
以上の記載から、引用文献1には、「CCR3活性インヒビターが治療上の利益を有する疾患の治療用の医薬組成物であって、化合物135を含有する、医薬組成物。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
2 引用文献2(Journal of Pharmaceutical Sciences, 1977, Vol.66, p.1-19)に記載された事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。なお、外国語による記載は日本語訳を記載した。また、下線は当審合議体が付した。
摘記(2a)
「総説論文
薬剤の塩
・・・中略・・・
薬剤の化学的、生物学的、物理的、および経済的な特性は操作することが可能であり、塩の形態に変換することによって最適化される場合が多い。しかし、それぞれの塩が親化合物に固有の特性を付与するため、適切な塩を選択することは、非常に困難な場合がある。
塩形成剤は、経験をもとに選択されることが多い。合成された多くの塩の好ましい形態は、主に実用的な基礎、すなわち原材料のコスト、結晶化の容易さ、および収率に基づいて製剤化学者が選択する。その他の基本的な考慮事項には、得られるバルク薬物の安定性、吸湿性、および流動性が含まれる。残念ながら、親化合物の挙動に及ぼす特定の塩種の影響を予測できる信頼性の高い方法はない。さらに、同じ基本薬剤の多くの塩が調製された後でも、望まれる薬物動態、溶解度、および製剤設計プロファイルを示す可能性が最も高い塩の選択を容易にするための効率的なスクリーニング技術は存在しない。
しかし、塩の性能を予測する支援のために、いくつかの意思決定モデルが開発されている。例えば、WalkingとAppino(1)は、二つの技法、「決定分析」および「潜在的な問題分析」を記述し、それらを使って錠剤開発に最適な有機酸の誘導体を選択した。考慮された誘導体は、遊離酸とカリウム、ナトリウムおよびカルシウム塩であった。どちらの技術も、これらの特定の誘導体の化学的、物理的、および生物学的特性に基づいており、最適な塩の形態を開発するための有望な手段を提供する。
塩に関する情報は、薬学文献の全般にわたって散在しており、その多くは活性成分の放出を持続させるための塩形成の利用についてであり、それによって様々な望ましくない薬物特性を排除することができる(2?6)。本総説は、過去25年間の文献を調査し、同じ化合物の様々な塩の形態間で特性を比較することに重点を置いた。また、潜在的に有用な塩の形態についての議論も行った。我々の二つの目的は、新薬候補を選ぶことが可能な様々な塩の概要を示し、学生および実践者に、適した塩の形態を選択するための合理的根拠を提供するデータを収集し整理することである。」(1頁左欄のタイトル?2頁左欄3行)
摘記(2b)
「潜在的に有用な塩
塩形成は、陽子移動または中和反応のいずれかが関わる酸-塩基反応であり、したがってこのような反応に影響する要因によって制御される。理論的には、酸または塩基の特性を示す全ての化合物が、塩形成に関与し得る。特に重要なことは、酸または塩基の相対強度、すなわち関与する化学種の酸性度定数および塩基性度定数である。これらの要因は、形成の有無を決定し、形成された塩の安定性の尺度となる。
化学者が利用できる塩の形態は数多くあり、特許文献の調査では、毎年多くの新しい塩が合成されることが示されている。同じ化合物の様々な塩は、親化合物に物理的、化学的、および熱力学的特性を与えるため、まったく異なった作用をすることが多い。例えば、塩の疎水性と高い結晶格子エネルギーは、溶解速度に影響を与え、生体利用効率に影響を及ぼし得る。理想的には、塩形成が薬剤の特性に及ぼす影響を予測できることが好ましい。
表IおよびIIは、1974年までに市販された全ての塩を列挙している。このリストは、「マーチンデールの特別薬局方(Martindale The Extra Pharmacopoeia)」第26版(7)に列挙されているすべての薬剤をもとにまとめた。表Iは、食品医薬品局(FDA:Food Drug Administration)によって承認された全ての塩の形態を分類しており、表IIは、FDAによって承認されていないが他の国で使用されているものを列挙している。(ほとんどの薬剤は有機物質であるため、有機化合物の塩のみが考慮されている。)それぞれの種類の塩が使用された相対頻度は、1974年までに使用された陰イオン性塩または陽イオン性塩の合計数に基づく百分率として計算されている。入手の容易さと生理学的な理由から、陰イオン性塩形成基の中では、一塩基性の塩酸塩が、圧倒的に頻繁に選択されており、ほぼ6対1で硫酸塩の数を上回る。同様の理由で、ナトリウムが最も優勢な陽イオンである。」(2頁左欄4行?同頁右欄13行)
摘記(2c)




」(2頁の表1)
3 引用文献3(アレルギーの臨床,2006,Vol.26 No.4,p.17-22)に記載された事項
引用文献3には以下の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体が付した。
摘記(3a)
「鼻ポリープ形成のメカニズム」(17頁の文献タイトル)
摘記(3b)
「2.サイトカイン・ケモカインの産生
鼻ポリープ形成においては細菌やウイルスの感染は最初のステップである。これら感染に対しては宿主側はToll Like receptor(TLR)を介した自然免疫によって対応する。鼻粘膜上皮や繊維芽細胞にもTLRは存在し、それぞれのリガンドと呼ばれる微生物由来の遺伝子、糖蛋白、糖脂質と反応する。
・・・中略・・・
TLR3、TLR4、TLR9が刺激を受けとると鼻粘膜上皮や繊維芽細胞からはIL-1βやTNFαといった炎症性サイトカインが産生される(図2)。同時に好酸球遊走因子であるEotaxinやRANTESと好酸球の生存に関与するGM-CSFも産生される。一方で好中球遊走因子であるIL-8も産生される。IL-1βとTNFαは、Eotaxin、RANTES、IL-8の産生を著しく増強させ^(7?9))、血管の接着因子VCAM-1や上皮の接着因子ICAM-1の発現も増強させる。これらの作用によって、細胞浸潤は加速され、多くの好酸球や好中球が浸潤する。さらにアレルギーなどが存在してTh2型サイトカインが優位になっているとIL-4もしくはIL-13の作用で大量のEotaxinが産生されリンパ球や単球の浸潤に貢献する^(8))。
サイトカインやケモカインは、特定の環境下で様々な作用を有している。RANTESは、二本鎖RNAによって鼻ポリープ由来線維芽細胞や鼻粘膜上皮から大量に産生されるが、鼻ポリープ由来線維芽細胞はRANTESの受容体であるCCR3の発現を認め、自分自身の産生するRANTESで増殖を亢進させる(藤枝、未発表)。」(18頁左欄下から5行?19頁左欄16行)
4 引用文献4(臨床免疫・アレルギー科,2010,Vol.54 No.4,p.459-464)に記載された事項
引用文献4には以下の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体が付した。
摘記(4a)
「好酸球性胃腸炎-好酸球性消化管疾患(eosinophilic gastrointestinal disorders;EGID)について-
・・・中略・・・
はじめに
好酸球性消化管疾患(eosinophilic gastrointestinal disorders;EGID)は好酸球の消化管局所への異常な集積による炎症性疾患である。一次性EGIDではアレルギーが主な原因とされている。EGIDには好酸球性食道炎(eosinophilic esophagitis;EE)、好酸球性胃炎、好酸球性胃腸炎(eosinophilic gastroenteritis;EGE)、好酸球性腸炎(eosinophilic colitis;EC)が存在する。」
(459頁の文献タイトル?左欄9行)
摘記(4b)
「 EGID
EGIDは原因と病態、部位により分類される(図2)。原因と病態に基づいて分類する場合は、一次性、二次性に分かれる。一次性として最も多いものはアレルギー性である。二次性で特に重要なものは好酸球増多症(HES)の一臓器症状としてのEGIDである。」(459頁右欄下から9行?3行)
摘記(4c)
「1.EE
EEは本来、好酸球の存在しない食道粘膜での好酸球性炎症である。炎症により食道狭窄、機能不全をきたす。EEは欧米では1,000?1,500人に一人が発症するともいわれている^(4)12))。しかしながら、本邦では少数の報告のみである。成人のEE/EGE研究班の報告では過去5年間で36例を確認している。この報告では、末梢血好酸球増多は30%の患者でしか認めず、初発症状は60%が嚥下障害であった。また、アレルギー疾患の合併は、なんらかのアレルギー疾患が44%、喘息が22%であった^(7))。EEは小児科においても重要な疾患であり、本年度からわれわれは小児好酸球性食道炎研究班で検討をはじめている。小児では年齢によって主要症状が異なる。乳幼児では哺乳障害、幼児から学童では嘔吐、学童から10代前半では腹痛、嚥下障害、さらに10代から若年成人では嚥下障害に加え食物圧入が主要症状である。IL-5、IL-13といったTh2サイトカイン、thymic stromal lymphopoietin(TSLP)^(3))、好酸球遊走性ケモカインであるeotaxin-3の病態への関与がいわれている^(13))。さらに、mRNAレベルでperiostinの発現の増強、Filaggrinの発現低下が患者組織で認められ、実験系でその効果はIL-13誘導性であることが知られている^(4))。鑑別診断としては胃食道逆流症が重要である。難治性胃食道逆流症患者の10%程度がEEともいわれており、pHモニタリングが正常であること、若年男性に多く、アトピー素因が関与していることなどから本症を疑い、生検にて好酸球が15?30程度以上/HPFあり(一定の基準はまだない)、基底細胞の増殖が著明な場合に診断される。また、複数箇所の生検にて診断率が上昇する^(4)12))。」(461頁左欄7行?同頁右欄15行)
摘記(4d)
「2.EGE
Talleyらは、寄生虫など好酸球増多を示す他疾患の除外された上で、消化器症状が存在し、消化管の1か所以上に生検で好酸球の浸潤が証明されるか、あるいは末梢血好酸球増多と特徴的なX線所見がみられるものとしている^(14))。粘膜主体型、筋層主体型、漿膜下主体型の3型に分類される^(15))。粘膜浸潤型はEGEの中では最多であり、食物アレルギーの関連が強い。嘔吐、下痢、吸収不全をきたし低蛋白血症や鉄欠乏性貧血を起こす。筋層浸潤型は腸壁の肥厚があり腸塞症状をきたす。漿膜浸潤型は腹水があり、末梢血好酸球増多が著明といわれている。しかしながら、多くの場合はこれらが混在している。また、IgE型のアレルギー反応の関与がある。本邦では、過去5年で149例が確認されている。90%に末梢血好酸球増多を伴っていた。初発症状は腹痛と下痢を同時に認めた例が40%であった。また、アレルギー疾患の合併は、なんらかのアレルギー疾患が46%、喘息が27%であった^(7))。ほとんどの症例で末梢血好酸球増多を伴っていたことからHESの有無の検索を並行して行うことが望ましいと考えている。治療はステロイド剤を必要とすることが多い^(7))。」(461頁右欄16行?462頁左欄16行)
5 引用文献5(現代医療,1988,Vol.20 No.12,p.129-135)に記載された事項
引用文献5には以下の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体が付した。
摘記(5a)
「HES(Hyper Eosinophilic Syndrome)
・・・中略・・・
I.定義
1968年 Hardyら^(1))によって硬度、長期間持続する好酸球増多病態が詳細に検討され、共通な臨床像を基本として、好酸球増多症候群(Hyper Eosinophilic Syndrome,HES)の概念が提唱されるに至った。」(129頁の文献タイトル?4行)
摘記(5b)
「 II.病態生理(図1)
病態の中心的要因はあくまでも増加好酸球である。T cell 由来の諸因子^(3?5))により好酸球産生が亢進し、
(1) 好酸球自体の浸潤によって、体内諸臓器(心、中枢神経、肺、消化器、腎など)に障害が出現する^(6))。
(2) 浸潤好酸球は
a) Granule basic protein^(6))を分泌し、心筋障害などを起こしてくる
b) Cationic protein^(6,7))を分泌し、thromboembolism が出現、体内諸臓器に障害が出現してくる
c) Neurotoxin^(8))を分泌して、中枢神経組織のdemyelination を呈したり、あるいは更にPurkinje cell の脱落を惹起させるなど、その障害は複雑である。
体内では、これらの各種の病的機転が進展し、複雑な病像を招来し、とくに心、中枢神経系を中心に高頻度に、重篤な障害の発生をみている^(6,9,10))。」(129頁下から3行?130頁右欄6行)
(当審合議体による注釈;「(1)」及び「(2)」は、それぞれ「1」の丸囲い及び「2」の丸囲いの略である。)
6 引用文献6(皮膚アレルギーフロンティア,2011,Vol.9 No.2,p.23-27)に記載された事項
引用文献6には以下の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体が付した。
摘記(6a)
「アレルギーと血管炎?チャーグ・ストラウス症候群を中心に?
Allergy and Vasculitis?especially Churg-Strauss syndrome?」
(23頁の文献タイトル)
摘記(6b)
「1 チャーグ・ストラウス症候群とは
先行する気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎を背景として血管炎が発症し、血中あるいは病理組織中に多数の好酸球を認める原発性血管炎(症候群)である。抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic antibody;ANCA)が陽性になる症例が約半数にみられることから、顕微鏡的多発血管炎、Wegener肉芽腫症とともにANCA関連血管炎の一角を担う、実はANCA発見以前より、すでにチャーグ・ストラウス症候群は、気管支喘息と好酸球といった特徴的臨床像から、血管炎のなかでその疾患概念を確立していた。」
(24頁左欄20?30行)
摘記(6c)
「5 チャーグ・ストラウス症候群とI型アレルギー
先行する成人発症の気管支喘息やアレルギー性鼻炎が、本症の前提にある。したがって、ほとんどのチャーグ・ストラウス症候群で、気管支喘息のメカニズムがまず存在することになる。すなわち、I型アレルギーの関与がチャーグ・ストラウス症候群の背景に存在する。その主役は、好酸球とIgEである。実際、ほとんどのチャーグ・ストラウス症候群の病初期、未治療症例で、血中好酸球増多と血中IgE高値がみられる。
気道がなんらかの抗原の刺激を受けると、気道粘膜のマスト細胞などから、ケモカインであるエオタキシンが産生される。これにより好酸球の活性化がもたらされる。その活性化好酸球から、好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)、好酸球由来神経毒蛋白質(EDN)、血小板活性化因子(PAF)、主要塩基性蛋白質(MBP)、好酸球陽イオン蛋白質(ECP)などが分泌され、局所組織を障害する。こうした好酸球の活性化と産生サイトカインがチャーグ・ストラウス症候群へと導く。」(26頁左欄下から6行?同頁右欄13行)
第5 対比・判断
1 本願発明と引用発明との対比
上記「第4 1(2)」で説示したように、引用発明は「CCR3活性インヒビターが治療上の利益を有する疾患の治療用の医薬組成物であって、化合物135を含有する、医薬組成物。」である。
そして、引用発明の化合物135の構造は、下記の一般式で、

置換基XがCl(クロライド)であり、置換基R^(1)が下記式で表されるとおりのものであるので(摘記(1e))、

本願発明の「式1の化合物」で「^(*)(HX)_(j)」の部分を除いた、遊離塩基を構成する部分の構造(以下、「式1の塩基構造」という。)に相当する。
また、本願発明の「式1の化合物」の「^(*)(HX)_(j)」は、「Xはクロライドであり;jは2である」という定義からみて「^(*)(HCl)_(2)」であるので、本願発明の「式1の化合物」は、式1の塩基構造の「二塩酸塩」である。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「式1の塩基構造を有する化合物を含む、医薬組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)本願発明では、式1の塩基構造を有する化合物が、式1の塩基構造の「二塩酸塩」であることが特定されているのに対し、引用発明では、式1の塩基構造を有する化合物が、式1の塩基構造の「二塩酸塩」であることは特定されていない点。
(相違点2)本願発明の医薬組成物は「鼻ポリープ症、好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎、好酸球増加症候群及びチャーグ・ストラウス症候群から選択される疾患の治療用」であるのに対し、引用発明の医薬組成物は「CCR3活性インヒビターが治療上の利益を有する疾患の治療用」である点。
2 相違点についての判断
(1)相違点1について
ア 引用文献1には、引用発明の化合物135は、実施例135で「例132」の化合物と同様にして製造されたものであり、上記「例132」の化合物は、実施例132で「数滴の水及びTFAを添加し、その混合物を逆相HPLCにより分離した。所望の画分を集め、合わせ、凍結乾燥して例132(30mg)をそのTFA塩として」得られたことが記載されているので(摘記(1e))、実施例135では、上記「例132」の化合物と同様に、化合物135のTFA塩(トリフルオロ酢酸塩)が製造されたと解される。
そして、引用文献1には「本明細書に開示された化合物は治療上許される塩として存在し得る」こと、「塩は化合物の最後の単離及び精製中に、又は遊離塩基の形態の適当な化合物を好適な酸と反応させることにより別々に調製し得る」こと、及び、「代表的な酸付加塩」や「治療上許される付加塩の生成に使用し得る無機酸」の具体例が記載されているので(摘記(1c))、当業者は、摘記(1c)に記載のいずれかの「酸」を使用して、化合物135の好適な「治療上許される塩」を生成することを自然に想起するといえるところ、いずれの「酸」を使用するかを決める指標としては、通常、引用文献1に記載された事項(摘記(1c))に加えて、本願優先日当時の従来技術(以下、「従来技術」という。)も参考にするのが常套手段である。
イ 「薬剤の塩」に関する従来技術を示す引用文献2には、「薬剤の化学的、生物学的、物理的、および経済的な特性は操作することが可能であり、塩の形態に変換することによって最適化される場合が多い」こと、「それぞれの塩が親化合物に固有の特性を付与するため、適切な塩を選択することは、非常に困難な場合がある」こと、及び「塩形成剤は、経験をもとに選択されることが多い」こと(摘記(2a))を踏まえた上で、表Iにおいて、食品医薬品局(FDA)に承認され、1974年までに市販された全ての陰イオン性塩または陽イオン性塩について、それぞれの種類の塩が使用された相対頻度のリストが記載されている(摘記(2b)及び(2c))。
上記表Iには、薬剤の陰イオン性塩のうち、塩酸塩及び二塩酸塩の相対頻度の合計が43.49%(42.98%+0.51%)であったことが記載されているので、従来技術として、薬剤の陰イオン性塩を生成するための最も代表的な「酸」として「塩酸」が圧倒的に高い頻度で使用されていたといえる。
そして、引用文献2は「新薬候補を選ぶことが可能な様々な塩の概要を示し、学生および実践者に、適した塩の形態を選択するための合理的根拠を提供するデータを収集し整理すること」を目的とする総説論文であるから(摘記(2a))、当業者は、上記の従来技術を、薬剤の好適な塩の形態を選択するための合理的な根拠の一つとして、参考にするといえる。
ウ そうすると、引用文献1で、治療上許される付加塩の生成に使用し得る無機酸の例の筆頭に「塩酸」が挙げられていること(摘記(1c))に加えて、上記イの従来技術も参考にして、引用発明の化合物135の好適な「治療上許される塩」を生成するために「塩酸」を使用し、そして、化合物135はピリジン構造及びピペリジン構造を有するので、酸と反応させた場合に酸が1個または2個付加した塩が生成し得ることを考慮して、化合物135の「二塩酸塩」を生成することに、当業者が格別の創意工夫を要したとはいえない。
(2)相違点2について
ア 引用文献1には、引用発明の「CCR3活性インヒビターが治療上の利益を有する疾患」について、「CCR3は重要な標的であり、CCR3の拮抗作用はおそらく炎症性、好酸球性、免疫調節及び感染性の障害及び疾患の治療に有効である」こと(摘記(1b))、及び「ケモカイン受容体CCR3はとりわけ好酸球、好塩基性細胞、TH_(2)細胞、肺胞マクロファージ、マスト細胞、上皮細胞、小グリア細胞、星状細胞及び繊維芽細胞で発現される。CCR3は好酸球をアレルギー性炎症の部位に吸引し、続いてこれらの細胞を活性化するのに重要な役割を果たす」こと(摘記(1b))が記載され、さらに、CCR3活性インヒビターが「CCR3受容体に結合する活性を有し、エオタキシン-1、エオタキシン-2、エオタキシン-3、MCP-2、MCP-3、MCP-4又はRANTESを含む、CCR3リガンドによるCCR3の活性化を抑制する」こと(摘記(1f))が記載されている。
これらの記載から、CCR3活性インヒビターの使用が、炎症性、好酸球性、免疫調節及び感染性の障害及び疾患の治療に有効であり、CCR3受容体の活性が関係する疾患の予防及び/又は治療に適用できる可能性があるといえる主要な作用機序として、CCR3活性インヒビターが、エオタキシン-1、エオタキシン-2、エオタキシン-3、MCP-2、MCP-3、MCP-4又はRANTESを含む「CCR3リガンド」のCCR3受容体への結合を阻害して、CCR3が発現している好酸球等の細胞の活性化を阻害する、という作用機序があることを、当業者は理解できるといえる。
そして、当業者は、上記の作用機序を考慮しつつ、さらに、引用文献1にCCR3受容体の活性が関係する疾患の例として「呼吸系の病気又は胃腸の病気の多種の炎症性、感染性、及び免疫調節の障害及び疾患だけでなく、関節の炎症性疾患並びに鼻咽頭、眼、及び皮膚のアレルギー性疾患(喘息及びアレルギー性疾患を含む)、好酸球性疾患、病原性微生物(定義により、ウイルスを含む)による感染症だけでなく、自己免疫疾患、例えば、慢性関節リウマチ及びアテローム硬化症」(摘記(1b))が記載されていることを参考にして、引用発明の「CCR3活性インヒビターが治療上の利益を有する疾患」として具体的に適用できる可能性がある疾患を選択するといえる。

イ 引用文献3には、鼻ポリープの形成において、最初のステップは「細菌やウイルスの感染」であり、鼻粘膜上皮や繊維芽細胞からIL-1βやTNFαといった「炎症性サイトカイン」が産生され、同時に好酸球遊走因子である「Eotaxin」や「RANTES」と、好酸球の生存に関与するGM-CSFも産生され、多くの好酸球や好中球が浸潤すること、鼻ポリープ由来線維芽細胞や鼻粘膜上皮から「RANTES」が大量に産生されること、及び、鼻ポリープ由来線維芽細胞は「RANTES」の受容体であるCCR3の発現を認め、自分自身の産生する「RANTES」で増殖を亢進させることが記載されている(摘記(3b))。
これらの記載から、鼻ポリープ症は、引用文献1に記載の「CCR3-受容体の活性が関係する疾患」の例である、炎症性、感染性、及び好酸球性疾患(引用文献1の摘記(1b))に該当するといえること、及び、上記「Eotaxin」(エオタキシン)及び「RANTES」はいずれもCCR3リガンドであること(引用文献1の摘記(1f))を考慮すると、CCR3活性インヒビターの使用により、CCR3リガンドのCCR3受容体への結合が阻害された結果、好酸球の活性化や鼻ポリープ由来線維芽細胞の増殖が阻害されて、鼻ポリープ症の治療に有益な効果が得られる可能性があることを、当業者は推認できるといえる。

ウ 引用文献4には、好酸球性消化管疾患(EGID)は好酸球の消化管局所への異常な集積による炎症性疾患であり、好酸球性食道炎(EE)及び好酸球性胃腸炎(EGE)が含まれること、一次性EGIDとして最も多いのはアレルギー性であり、二次性EGIDで特に重要なものは好酸球増多症(HES)の一臓器症状としてのEGIDであること(摘記(4a)及び(4b))、好酸球性食道炎(EE)には好酸球遊走性ケモカインであるeotaxin-3の病態への関与があるといわれており(摘記(4c))、好酸球性胃腸炎(EGE)には好酸球の浸潤があり(摘記(4d))、及び、好酸球性食道炎(EE)及び好酸球性胃腸炎(EGE)にはアレルギー疾患を合併している場合があること(摘記(4a)及び(4b))が記載されている。
引用文献5には、好酸球増多症候群(Hyper Eosinophilic Syndrome,HES)の病態の中心的要因は増加好酸球であること、及び、当該疾患では好酸球産生が亢進し、好酸球自体の浸潤によって体内諸臓器に障害が出現することが記載されている(摘記(5b))。
ここで、引用文献4に記載の「好酸球増多症(HES)」及び引用文献5に記載の「好酸球増多症候群(Hyper Eosinophilic Syndrome,HESは、いずれも本願発明の「好酸球増加症候群」と同義である(要すれば、本願明細書の原文である国際公開第2013/149986号の特許請求の範囲の請求項1における「hyper eosinophilic syndrome」という記載を参照。)。
そして、上記引用文献4及び引用文献5の記載から、好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎、及び好酸球増加症候群は、いずれも、引用文献1に記載の「CCR3-受容体の活性が関係する疾患」の例である好酸球性疾患(引用文献1の摘記(1b))に該当するといえること、好酸球性食道炎及び好酸球性胃腸炎で合併している場合があるアレルギー疾患も、引用文献1に記載の「CCR3-受容体の活性が関係する疾患」の例の一つであること(引用文献1の摘記(1b))、及び、上記「eotaxin-3」(エオタキシン-3)はCCR3リガンドであること(引用文献1の摘記(1f))を考慮すると、CCR3活性インヒビターの使用により、CCR3リガンドのCCR3受容体への結合が阻害された結果、好酸球の活性化が阻害されて、好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎、及び好酸球増多症候群(好酸球増加症候群)の治療に有益な効果が得られる可能性があることを、当業者は推認できるといえる。
エ 引用文献6には、チャーグ・ストラウス症候群は、先行する気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎を背景として血管炎が発症し、血中あるいは病理組織中に多数の好酸球を認める原発性血管炎(症候群)であること(摘記(6b))、I型アレルギーの関与がチャーグ・ストラウス症候群の背景に存在し、その主役は好酸球とIgEであること(摘記(6c))、気道がなんらかの抗原の刺激を受けると、気道粘膜のマスト細胞などから、ケモカインであるエオタキシンが産生され、これにより好酸球の活性化がもたらされ、その活性化好酸球から、好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)、好酸球由来神経毒蛋白質(EDN)、血小板活性化因子(PAF)、主要塩基性蛋白質(MBP)、好酸球陽イオン蛋白質(ECP)などが分泌され、局所組織を障害すること(摘記(6c))、こうした好酸球の活性化と産生サイトカインがチャーグ・ストラウス症候群へと導くこと(摘記(6c))が記載されている。
これらの記載から、チャーグ・ストラウス症候群は、引用文献1に記載の「CCR3-受容体の活性が関係する疾患」の例である好酸球性疾患(引用文献1の摘記(1b))に該当するといえること、チャーグ・ストラウス症候群の背景となる疾患である気管支喘息やアレルギー性鼻炎は、引用文献1に記載の「CCR3-受容体の活性が関係する疾患」の例である喘息あるいはアレルギー性疾患(引用文献1の摘記(1b))に該当するといえること、及び、上記「エオタキシン」はCCR3リガンドであること(引用文献1の摘記(f))を考慮すると、CCR3活性インヒビターの使用により、CCR3リガンドのCCR3受容体への結合が阻害された結果、好酸球の活性化が阻害されて、チャーグ・ストラウス症候群の治療に有益な効果が得られる可能性があることを、当業者は推認できるといえる。
オ 以上イ?エのように、鼻ポリープ症、好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎、好酸球増加症候群、及びチャーグ・ストラウス症候群は、いずれも、CCR3活性インヒビターの使用により治療に有益な効果が得られる可能性があることを当業者が推認できる疾患であるから、当業者は、引用発明の「CCR3活性インヒビターが治療上の利益を有する疾患」として、これらの疾患を選択することを容易に想到しえたといえる。
(3)上記(1)及び(2)のとおりであるから、当業者は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献1?6に記載された事項から、本願発明の構成を得ることを容易に想到しえたといえる。
(4)本願発明による効果について
ア 本願明細書の実施例には、本願発明による効果について、以下の記載がある。
「式1の化合物のKi値(ヒトCCR3受容体におけるヒトエオタキシン-1)を下表に示す。
本明細書では、「活性」は、上記アッセイで測定したときに阻害における1μM以上で50%の阻害を示す化合物を意味するものとする。該結果は、CCR3受容体活性の阻害薬としての本化合物の固有活性を示している。
式1の化合物の実施例は、参照によってその内容をここに援用するWO2010115836の記載に従って調製することができる。HClを含有する溶液から遊離塩基を結晶化することによって、これらの実施例の塩を形成することができる。好ましくは実施例1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10は二塩酸塩の形態である。」(段落【0018】)
(当審合議体による注釈;段落【0018】で引用された「WO2010115836」は引用文献1に該当する文献である。)
また、段落【0019】の【化3】には、下記に示すように、実施例2の化合物のCCR3受容体に対するKi値(hCCR3 Ki)が「3,2nM」であったことが記載されている。


・・・中略・・・


イ 本願明細書の段落【0019】の【化3】の実施例2の項目に記載されている化合物の構造は、本願発明の「式1の塩基構造」及び引用発明の化合物135の構造と同一であるので、実施例2の化合物の「二塩酸塩」は、本願発明の「式1の化合物」に相当する。
そして、本願明細書の実施例には、「HClを含有する溶液から遊離塩基を結晶化することによって、これらの実施例の塩を形成することができる。好ましくは実施例1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10は二塩酸塩の形態である。」と記載されているが(段落【0018】)、HClを含有する溶液から各実施例の遊離塩基を結晶化して「二塩酸塩」を形成するに至る具体的な製造工程は記載されておらず、「二塩酸塩」の形態が好ましいといえる具体的な根拠も記載されていない。

ウ 本願明細書の段落【0019】の【化3】の実施例2の項目には、実施例2の化合物の「二塩酸塩」(本願発明の「式1の化合物」)の構造は記載されていないので、上記アで説示した「3,2nM」というKi値が、実施例2の化合物の「二塩酸塩」(本願発明の「式1の化合物」)のKi値であるのか否かは不明である。
仮に、本願明細書に記載の実施例2の化合物の「二塩酸塩」(すなわち本願発明の「式1の化合物」)のKi値が「3,2nM」であったとしても、引用文献1の実施例135では、引用発明の化合物135のTFA塩が製造されており(上記「(1)ア」)、引用文献1の「薬理学的パート」(摘記(1f))には、引用発明の化合物135のTFA塩のKi値が「3nM」であったことが記載されているので、上記「3,2nM」というKi値は、引用発明の化合物135のTFA塩のKi値と同程度の数値にすぎない。
また、引用文献1の「薬理学的パート」(摘記(1f))には、引用発明の化合物135のTFA塩の「1μMにおけるCCR3抑制%」が「101%」であったことが記載されているが、本願明細書には、実施例2の化合物の「二塩酸塩」(本願発明の「式1の化合物」)の「1μMにおけるCCR3抑制%」は測定されておらず不明である。
そうすると、本願明細書に記載の実施例2の化合物の「二塩酸塩」(本願発明の「式1の化合物」)が、引用発明の化合物135のTFA塩よりも、当業者が予測できないほどに優れたCCR阻害活性を有するとはいえない。
エ また、本願明細書には、実施例2の化合物の「二塩酸塩」(すなわち本願発明の「式1の化合物」)を含む医薬組成物を、実際に、鼻ポリープ症、好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎、好酸球増加症候群及びチャーグ・ストラウス症候群のいずれかを患う患者に投与して、その治療効果の程度を検証した薬理試験結果は記載されておらず、これらの疾患のいずれかを患う患者に対し、本願発明の「式1の化合物」を投与した場合に得られる治療効果と、引用発明の化合物135のTFA塩を投与した場合に得られる治療効果とを比較することはできないので、本願発明の「式1の化合物」を投与した場合に、当業者が予測できないほどに優れた治療効果が得られるとはいえない。
オ 以上ア?エのとおりであるから、本願発明により、引用文献1に記載された発明、及び引用文献1?6に記載された事項から、当業者が予測できない格別顕著な効果が得られたとはいえない。
3 小括
上記1及び2で説示したとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献1?6に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 請求人の主張について
請求人は、令和2年1月7日付け意見書において、以下の(1)?(3)の趣旨の主張をしているが、下記に説示するように、これらの主張はいずれも認められない。
[主張(1)]
引用文献1につき、引用文献1に開示された可能性のある化合物は非常に数が多く、いずれを選択するべきか理解することは困難であり、特定の化合物の特定の塩(例えば化合物135)を選択することは容易に想到し得ない。当業者は、200以上もある引用文献1に記載された全ての化合物の中から、化合物135を選択する必要があり、さらに、引用文献1に記載の50を超える付加塩の中から二塩酸塩を選択しなければいけない。引用文献1にはそのように、まず式1の化合物(例えば、化合物135)を選択し、さらに本願請求項のような式1の二塩酸塩を選択することについて、なんらの動機付けも示されていない。
そこで、上記主張(1)について検討する。
引用文献1には、例1?例214の化合物について「1μMにおけるCCR3抑制%」及び解離定数Ki(nM)を測定した値のリストが記載されているが(121?124頁)、当該リストに記載された化合物のうち「1μMにおけるCCR3抑制%」が100%以上の化合物は26個しかないのであるから、当業者が、上記「抑制%」が101%でありCCR3阻害活性が非常に高いといえる「化合物135」を選択することに、格別の困難性があったとはいえない。
そして、上記「第5 2(1)」で説示したように、引用文献1で、治療上許される付加塩の生成に使用し得る無機酸の例の筆頭に「塩酸」が挙げられていること(摘記(1c))に加えて、引用文献2に記載の従来技術も参考にして、引用発明の化合物135の好適な「治療上許される塩」を生成するために「塩酸」を使用し、そして、化合物135はピリジン構造及びピペリジン構造を有するので、酸と反応させた場合に酸が1個または2個付加した塩が生成し得ることを考慮して、化合物135の「二塩酸塩」を生成することに、当業者が格別の創意工夫を要したとはいえない。
よって、請求人の上記主張(1)は認められない。
[主張(2)]
ピリジル部分とピペリジニル部分の双方を有する多くの医薬化合物が一塩酸塩として存在するものとして知られている。
例えば、ピリジン及びピペリジンのアルカロイド(タバコアルカロイド)である、以下の構造を有するアナバシン(Anabasine)が一塩酸塩として上市されている。
[アナバシン一塩酸塩(CAS 15251-47-5)]

また、ピリジル部分とピペリジニル部分の双方を有する下記の構造の抗癌剤クリゾチニブも一塩酸塩として上市されている。クリゾチニブ塩酸塩の結晶形態は、国際公開WO2013/181251A1の実施例20には、クリゾチニブの遊離塩形態からクリニチニブ塩酸塩を得る工程が開示されている。
[クリゾチニブ一塩酸塩(CAS 1415560-69-8)]

引用文献2のTable Iは、50以上の候補対イオンのリストに含まれるオプションとして、「塩酸塩」と「二塩酸塩」の双方を含む塩のリストを示しているが、「二塩酸塩」はわずか0.51%であり、最も一般的でない付加塩として開示されているのみである。従って、塩酸塩と二塩酸塩とは、必然的に交換可能である付加塩とは全く言い得ない。
さらに、上記においてピリジル部分とピペリジニル部分の双方を含む公知化合物を例示したように、当業者であっても、ピリジル部分とピペリジニル部分の双方を含む特定の化合物から二塩酸塩を形成できるか否かを容易に想到し得ない。
そこで、上記主張(2)について検討する。
請求人が提示した、アナバシン一塩酸塩(CAS 15251-47-5)及びクリゾチニブ一塩酸塩(CAS 1415560-69-8)のように、ピリジル部分とピペリジニル部分の両方を有する化合物が一塩酸塩を形成した例であるからといって、直ちに、引用発明の化合物135の「二塩酸塩」を形成することが困難であるとはいえない。
上記「第5 2(1)イ」で説示したように、引用文献2の表Iには、従来技術として、薬剤の陰イオン性塩を生成するための最も代表的な「酸」として「塩酸」が圧倒的に高い頻度で使用されていたといえることが記載されており、当業者は、上記の従来技術を、薬剤の好適な塩の形態を選択するための合理的な根拠の一つとして、参考にするといえる。
そして、薬剤の遊離塩基の構造によっては、一塩酸塩は形成し得るが二塩酸塩を形成する可能性が非常に低いことが明らかである場合があることを考慮すると、引用文献2の表Iに記載の「二塩酸塩」の相対頻度が「0.51%」であるからといって、直ちに、ある薬剤の遊離塩基が一塩酸塩及び二塩酸塩の両方を形成し得る構造を有する場合であっても、一塩酸塩の形成の方が優先して行われていたとまではいえない。
また、上記表Iには「二塩酸塩」の0.51%よりも相対頻度が低い陰イオンが多種類記載されているので、請求人による「『二塩酸塩』はわずか0.51%であり、最も一般的でない付加塩として開示されているのみである」という主張は誤りである。
例えば、ピリジル部分とピペリジル部分の両方の構造を有する化合物であるドルソモルフィンは、下記に示すように、ドルソモルフィン二塩酸塩を形成する。なお、ドルソモルフィン二塩酸塩はAMPキナーゼシグナル伝達回路の阻害因子であることが知られている(要すれば、国際公開第2011/008640号の13頁23行?14頁11行、14頁の「Structural Formula I」、及び15頁20行の「dihydrochloride」という記載を参照。)。
[ドルソモルフィン二塩酸塩;CAS 1219168-18-9]

また、下記に示すように、E-4031(二塩酸塩)は、ピリジル部分とピペリジル部分の両方の構造を有する化合物の「二塩酸塩」である。なお、E-4031(二塩酸塩)は抗不整脈剤であることが知られている(要すれば、特表2005-531301号公報の【請求項6】の記載を参照。)。
[E-4031(二塩酸塩);CAS 113559-13-0]

このように、ピリジル部分とピペリジル部分の両方の構造を有する薬剤のの塩として、一塩酸塩の例だけでなく「二塩酸塩」の例も知られているのであるから、上記「第5 2(1)」で説示したように、塩酸を使用して、引用発明の化合物135の「二塩酸塩」を生成することに、当業者が格別の創意工夫を要したとはいえない。
よって、請求人による上記主張(2)は認められない。
[主張(3)]
審判官合議体は、請求項に記載された疾患のいずれもが、CCR3活性インヒビターが治療上の利益を有する疾患として公知であったとしているが、引用文献1は、CCR3阻害に関する疾病の治療について広く開示し(請求項11)、広範なカテゴリーの疾病、例えば、炎症性疾病、好酸球性疾病(請求項12)、及び加齢性黄斑変性を開示しているだけで、引用文献1は、本願請求項に記載されているような特定の疾病を一切明示していない。
引用文献3?6は、鼻ポリープ症、好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎、好酸球増加症候群及びチャーグ・ストラウス症候群から選択される疾患等を開示しているようであるが、引用文献3?6は、根本的な分子生物学及び疾病の特徴といった側面を開示するのみで、特定のCCR3インヒビターの特定の塩形態がインビボで治療的効果を有するという合理的な予測を提供するものではない。

そこで、上記主張(3)について検討する。
上記「第5 2(2)ア」で説示したように、引用文献1の摘記(1b)及び(1f)の記載から、CCR3活性インヒビターの使用が、炎症性、好酸球性、免疫調節及び感染性の障害及び疾患の治療に有効であり、CCR3受容体の活性が関係する疾患の予防及び/又は治療に適用できる可能性があるといえる主要な作用機序として、CCR3活性インヒビターが、エオタキシン-1、エオタキシン-2、エオタキシン-3、MCP-2、MCP-3、MCP-4又はRANTESを含む「CCR3リガンド」のCCR3受容体への結合を阻害して、CCR3が発現している好酸球等の細胞の活性化を阻害する、という作用機序があることを、当業者は理解できるといえる。
そして、上記「第5 2(2)」の「イ」?「エ」で説示したように、引用文献1の記載から理解できる上記の作用機序を考慮しつつ、引用文献1に記載されている「CCR3受容体の活性が関係する疾患」の例(摘記(1b))を参考にすると、引用文献3?6の記載から、鼻ポリープ症、好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎、好酸球増加症候群、及びチャーグ・ストラウス症候群は、いずれも、CCR3活性インヒビターの使用により治療に有益な効果が得られる可能性があることを当業者が推認できる疾患であるといえるのであるから、当業者は、引用発明の「CCR3活性インヒビターが治療上の利益を有する疾患」として、これらの疾患を選択することを容易に想到しえたといえる。
また、上記「第5 2(4)ウ」で説示したように、本願発明の「式1の化合物」が、引用発明の化合物135のTFA塩よりも、当業者が予測できないほどに優れたCCR阻害活性を有するとはいえず、上記「第5 2(4)エ」で説示したように、本願明細書には、本願発明の「式1の化合物」を含む医薬組成物を、実際に、鼻ポリープ症、好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎、好酸球増加症候群及びチャーグ・ストラウス症候群のいずれかを患う患者に投与して、その治療効果の程度を検証した薬理試験結果、すなわち「インビボ」の実験結果は記載されておらず、これらの疾患のいずれかを患う患者に対し、本願発明の「式1の化合物」を投与した場合に得られる治療効果と、引用発明の化合物135のTFA塩を投与した場合に得られる治療効果とをを比較することはできないので、本願発明により、引用文献1に記載された発明、及び引用文献1?6に記載された事項から、当業者が予測できない格別顕著な効果が得られたとはいえない。
よって、請求人による上記主張(3)は認められない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献1?6に記載された事項に基いて、本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-02-13 
結審通知日 2020-02-17 
審決日 2020-03-02 
出願番号 特願2015-503847(P2015-503847)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
P 1 8・ 121- WZ (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 裕之  
特許庁審判長 滝口 尚良
特許庁審判官 前田 佳与子
渡邊 吉喜
発明の名称 CCR3阻害薬の使用  
代理人 浅井 賢治  
代理人 箱田 篤  
代理人 弟子丸 健  
代理人 ▲吉▼田 和彦  
代理人 山崎 一夫  
代理人 市川 さつき  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 服部 博信  
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