ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L |
---|---|
管理番号 | 1364379 |
審判番号 | 不服2019-3385 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-03-11 |
確定日 | 2020-08-04 |
事件の表示 | 特願2016- 46354「ネットワークシステム、通信装置、および、通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月14日出願公開、特開2017-163361、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、平成28年3月9日の出願であって、平成30年2月15日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年4月20日付けで手続補正がされ、平成30年7月12日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年11月16日付けで手続補正がされ、平成30年11月27日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成31年3月11日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成30年11月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献1-2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.福井 雅人 他、「異種無線ネットワーク相互通信方式の結合ポイント選定シミュレーション」、電子情報通信学会技術研究報告(信学技報)、第107巻、第378号、2007年12月6日、pp.61-66(IN2007-109) 2.伊藤 将志 他、「シームレスハンドオーバを実現する無線メッシュネットワークの提案とシミュレーション評価」、マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO 2007)シンポジウム 発表資料[オンライン]、2007年、[検索日 2017.05.19],インターネット: なお、原査定の備考欄では、上記引用文献2とともに、「WAPLにおいて代理応答を行うこと」を示す文献として、下記<先行文献1>も参照されている。 <先行文献1> 1.加藤 佳之 他、「無線アクセスポイントリンク”WAPL”の提案と評価」、マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO 2007)シンポジウム 発表資料[オンライン]、2007年、[検索日 2018.11.27],インターネット: 第3 本願発明 本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、平成30年11月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 送信元の通信装置と、送信先の通信装置と、中間の通信装置とを少なくとも有し、前記中間の通信装置は、前記送信元の通信装置が属する第1経路構築プロトコルで通信経路を構築する第1サブネットワークと、前記送信先の通信装置が属する前記第1経路構築プロトコルとは異なる第2経路構築プロトコルで通信経路を構築する第2サブネットワークと、を相互に接続する機能を有するネットワークシステムにおいて、 前記中間の通信装置は、 前記送信先の通信装置を宛先とするパケットを前記送信元の通信装置から受信した場合には、前記送信先の通信装置との間で前記第2経路構築プロトコルに対応する経路探索パケットを送信して経路を確立する経路確立手段と、 前記経路確立手段によって前記第2経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットが受信されて経路が確立された場合に、前記送信元の通信装置に対して、前記送信先の通信装置に代わって前記第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットを送信することで代理応答する代理応答手段と、を有し、 前記代理応答手段は、前記経路確立手段によって経路が確立されるまで、前記第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットの送信を保留する、 ことを特徴とするネットワークシステム。 【請求項2】 前記第1経路構築プロトコルは、AODV(Ad hoc On Demand Distance Vector)およびDSR(Dynamic Source Routing)のいずれか一方であり、前記第2経路構築プロトコルは、AODVおよびDSRのいずれか他方であることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。 【請求項3】 送信元の通信装置と、送信先の通信装置と、中間の通信装置とを少なくとも有し、前記中間の通信装置は、前記送信元の通信装置が属する第1経路構築プロトコルで通信経路を構築する第1サブネットワークと、前記送信先の通信装置が属する前記第1経路構築プロトコルとは異なる第2経路構築プロトコルで通信経路を構築する第2サブネットワークと、を相互に接続する機能を有するネットワークシステムに用いられる通信装置において、 前記中間の通信装置は、 前記送信先の通信装置を宛先とするパケットを前記送信元の通信装置から受信した場合には、前記送信先の通信装置との間で前記第2経路構築プロトコルに対応する経路探索パケットを送信して経路を確立する経路確立手段と、 前記経路確立手段によって前記第2経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットが受信されて経路が確立された場合に、前記送信元の通信装置に対して、前記送信先の通信装置に代わって前記第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットを送信することで代理応答する代理応答手段と、を有し、 前記代理応答手段は、前記経路確立手段によって経路が確立されるまで、前記第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットの送信を保留する、 ことを特徴とする通信装置。 【請求項4】 送信元の通信装置と、送信先の通信装置と、中間の通信装置とを少なくとも有し、前記中間の通信装置は、前記送信元の通信装置が属する第1経路構築プロトコルで通信経路を構築する第1サブネットワークと、前記送信先の通信装置が属する前記第1経路構築プロトコルとは異なる第2経路構築プロトコルで通信経路を構築する第2サブネットワークと、を相互に接続する機能を有するネットワークシステムの通信方法において、 前記中間の通信装置が前記送信先の通信装置を宛先とするパケットを前記送信元の通信装置から受信した場合には、前記送信先の通信装置との間で前記第2経路構築プロトコルに対応する経路探索パケットを送信して経路を確立する経路確立ステップと、 前記経路確立ステップにおいて前記第2経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットが受信されて経路が確立された場合に、前記送信元の通信装置に対して、前記送信先の通信装置に代わって前記第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットを送信することで代理応答する代理応答ステップと、を有し、 前記代理応答ステップは、前記経路確立ステップにおいて経路が確立されるまで、前記第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットの送信を保留する、 ことを特徴とする通信方法。」 第4 引用例、引用発明 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)第62頁右欄9行目-32行目 「3.2.1.HPNet 特性の相違に加えて,地理的な距離による通信の可否を考慮した1つのネットワークをHPNetと呼ぶ.HPNetは固有のIDであるHPID h(h=1,2,3,…)を有し,HPIDがhであるHPNetをHPNet_(h)と表す.また,ノードは帰属するHPNetに依存しない固有のID n(n=1,2,3, …)を有し,IDがnであるノードをN_(n),N_(n)がHPNet_(h)に帰属するときN_(n,h)と表す. 図1において,モバイルPCのネットワークの特性は{M_(1),P_(1)},センサーのネットワークの特性は{M_(2),P_(2)}であるとする.HPNet_(1)およびHPNet_(3)はモバイルPC,HPNet_(2)はセンサーによって構成されている.HPNet_(1)とHPNet_(2)は異なる特性の端末によって構成されており,相互に通信ができない.またHPNet_(1)とHPNet_(3)は同じ特性の端末から構成されているが,地理的に離れており直接通信ができない距離にある.このように2つのHPNetが通信できないときは別々のHPNetとし,ノードは基本的に1つのHPNetだけに帰属する.HPNetへの参加・脱退は特性が同じであれば自由にできる.HPNet内でのルーティングは各HPNetの特性のものを用い,ここでは扱わない. 図1において説明の便宜上ネットワークの特性が2種類しかないが,いくつかのHPNetが重なり合うネットワークを想定している。」 (2)第64頁左欄9行目-右欄15行目 「3.3.2.パケットのリレー 上位中継時に結合ポイントはプロトコル,あるいは無線MACを変更してHPNetからHPNetヘパケットのリレーをする. 図5に例を示す.N_(1),N_(2)はHPNet_(1)に,N_(4),N_(5)はHPNet_(2)に帰属し,CP_(1,2)はHPNet_(1)とHPNet_(2)を繋ぐ結合ポイントである.また,N_(1,1)はN_(5,2)へCP_(1,2)を経由してパケットを送信する.このネットワークはアドホックネットワークで構成されており,HPNet_(1)ではOLSR,HPNet_(2)ではAODVにを用いてルーティングを行う。 N_(1)からN_(5)ヘパケットを送信するには,まずN_(1)からN_(2)を経由してCP_(1,2)へパケットが送られる.このときN_(2)はHPNet Protocolを意識することなくOLSRによりルーティングし中継する.CP_(1,2)は受信したパケットをN_(4)を経由してN_(5)に送信する。N_(4)もN_(2)と同様HPNet Protocolを意識することなく中継するだけでよい.CP_(1,2)は上位中継をするときに第4.3.3.項に示すパケットのカプセル化の処理を行い,ルーティングプロトコルやMACの変更を行う.複数の結合ポイントを経由する場合は,上位中継のたびに無線MAC,あるいはルーティンプロトコルを変更し隣接する結合ポイントへ送信する.」 (3)引用発明 したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「HPNetは固有のIDであるHPID h(h=1,2,3,…)を有し,HPIDがhであるHPNetをHPNet_(h)と表し, また,ノードは帰属するHPNetに依存しない固有のID n(n=1,2,3, …)を有し,IDがnであるノードをN_(n),N_(n)がHPNet_(h)に帰属するときN_(n,h)と表し, ノードN_(1),N_(2)は特性の相違に加えて、地理的な距離による通信の可否を考慮したネットワークHPNet_(1)に,ノードN_(4),N_(5)はネットワークHPNet_(2)に帰属し,CP_(1,2)はHPNet_(1)とHPNet_(2)を繋ぐ結合ポイントであり, このネットワークはアドホックネットワークで構成されており,HPNet_(1)ではOLSR,HPNet_(2)ではAODVを用いてルーティングを行い, N_(1)からN_(5)ヘパケットを送信するには,まずN_(1)からN_(2)を経由してCP_(1,2)へパケットが送られ, このときN_(2)はHPNet Protocolを意識することなくOLSRによりルーティングし中継し, CP_(1,2)は受信したパケットをN_(4)を経由してN_(5)に送信する, ネットワーク。」 2.引用文献2について また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1) 「3.1 WAPLの基本動作」(3ページ左欄下から8行目?同ページ右欄下から8行目) 「3.1 WAPLの基本動作 WAPLでは無線化したAPをWAP(Wireless Access Point)と呼ぶ.WAPLでは通信開始時にWAP・端末マッピング情報を生成するオンデマンドな方式を採用する.無線メッシュネットワーク環境では,通信をせずにWAPに接続しているだけの端末が多く存在することが想定できるため,WAPLで採用するオンデマンド方式はトラヒックの削減効果がある.WAP間の経路生成はアドホックルーティングプロトコルをそのまま採用する.WAPLにおけるWAP・端末マッピング情報は,ルーティングテーブルとは独立させ,LT(Link Table)と呼ぶ独自のテーブルとして保持する.LTは端末が通信を開始する際のARP処理をトリガとして更新される.LTの生成シーケンスを図2に示す.WAPは端末からのARP要求を受信すると,他のWAPへLT生成要求メッセージをフラッディングにより広告する.これはアドホックルーティングとは独立しており,LT生成モジュールによりブロードキャストを繰り返すことにより実現する.LT生成要求メッセージには探索端末のIPアドレスと送信元端末のIPアドレスとMACアドレスが記載されている.LT生成要求メッセージを受信した全てのWAPは自身のLTに送信元端末とWAPのIPアドレスの対応関係を記述する.配下に目的の端末が存在することを検出したWAPは,ユニキャストで送信元WAPにLT応答メッセージを返す.LT応答メッセージには探索端末と送信元端末のIPアドレスとMACアドレスが記載されており,LT生成要求メッセージの送信元WAPはLT応答メッセージを受信すると宛先端末とWAPのアドレスの関係をLTに記述する.以上の動作により互いのWAPに相手端末へのマッピング情報が生成され,以後のデータパケットはWAP間のアドレスによりIPカプセリングされて中継される.通信がなくなれば一定時間後にLTの内容は削除される.」 (2)スライド10 「WAPLにおける端末情報の通知 ・端末/APマッピング情報を交換するのは通信開始時とハンドオーバ時のみ 通信開始時 AP間の経路生成プロセスとは独立したプロセス ・WAPはARP要求を受けると,その情報をフラッディングする ・フラッディングを受けたWAPはAへの経路表を作り,端末側へARP要求を流す ・ARP応答を受けるとWAPはユニキャストで応答を返す ・AのWAPはBへの経路表を作り端末側へ代理ARPを流す →オンデマンドにすることで端末の数に影響を受けない」 3.先行文献1について また、原査定の拒絶の理由に参照された上記先行文献1の第3頁左欄36行目-第4頁左欄10行目には、図面とともに次の事項が記載されている。 「3.2通信方式 WAPの端末側インタフェースはプロミスキャスモードで配下端末の送信するフレームを全て受信する.受信フレームからIPパケットを取り出しカプセル化を行う.カプセル化の際にWAPはリンクテーブル(以下LT)と呼称する独自に定義したテーブルを参照する.LTは端末マッピングに使用するテーブルで相手端末のIPアドレスおよびMACアドレスとその端末が接続しているWAPのMANET側のIPアドレスの対応関係を示したものである.LT生成のトリガにはIPIPパケットおよびARP Requestが用いられる.図2をもとにLTの生成方法を示す.端末STA1からのARP Requestを受け取ったWAP1はアソシエーションテーブル(AT)を確認する.ATは配下端末の存在把握およびネットワーク中へ送信されるARPメッセージの削減を目的に使用するテーブルでWAPにアソシエートしている端末のMACアドレスとIPアドレスの情報を登録している.ATのMACアドレス部は端末がアソシエートすると直ちに作成されるがIPアドレス部の無い不完全なエントリとなっている.端末からARP Requestを受信した時点でIPアドレス部にARP Requestから得た端末のIPアドレスが登録されエントリが完成する.WAP1はLTを参照し,宛先端末STA2に関する対応情報が有るかどうかを調べる.対応情報がない場合,LT生成要求メッセージを送信する.LT要求メッセージはLTフラッディングされて全WAPに送信される.LTフラッディングとはアプリケーションレベルで実現するフラッディングでアドホックルーティングプロトコルとは独立している.WAPLはメッシュ機能のみを担っており,アドホックルーティングプロトコルとは階層化されているためである.これを受け取った他のWAPはWAP1とSTA1のAP端末マッピングを自身のLTに記録した後,配下にSTA2が存在するかどうかをATにより確認する.STA2のIPアドレスをキーにATを検索した結果,STA2のエントリが存在しない場合はWAPが代理でARP Requestを送信する.これにより,STA2はARP ReplyをWAP2に送信し,STA2に関わるATが完成する.ATエントリが完成した端末については以後の代理ARP Requestの動作が不要となる.WAP2はその後LT生成応答メッセージの送信に移る.LT生成応答メッセージはWAP1ヘユニキャストで返信する.この際,WAP2は生成済みのLTを参照してWAP1のアドレスを求める.LT生成応答メッセージを受け取ったWAP1は自身のLTを更新する.同時にWAP1はARP Replyを接続先端末の代理として返信する.この際の応答のMACアドレスはWAP1とする.端末は以後,WAP1のMACアドレスを宛先MACアドレスとしてIPパケットを送信する.以降の通信はLTを参照してWAP間でIPカプセル化することにより可能となる.通信が無くなれば一定時間経過後にLTの内容は削除される.」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 ア 引用発明のノード「N_(1)」、「N_(5)」、結合ポイント「CP_(1,2)」、ネットワーク「HPNet_(1)」、「HPNet_(2)」、プロトコル「OLSR」、「AODV」は、それぞれ本願発明1の「送信元の通信装置」、「送信先の通信装置」、「中間の通信装置」、「第1サブネットワーク」、「第2サブネットワーク」、「第1経路構築プロトコル」、「第2経路構築プロトコル」に相当する。 よって引用発明のネットワークHPNet_(1)とHPNet_(2)からなる「ネットワーク」は、本願発明1の「送信元の通信装置と、送信先の通信装置と、中間の通信装置とを少なくとも有し、前記中間の通信装置は、前記送信元の通信装置が属する第1経路構築プロトコルで通信経路を構築する第1サブネットワークと、前記送信先の通信装置が属する前記第1経路構築プロトコルとは異なる第2経路構築プロトコルで通信経路を構築する第2サブネットワークと、を相互に接続する機能を有するネットワークシステム」に相当する。 イ 引用発明の結合ポイント「CP_(1,2)」は、ノード「N_(1)」から「N_(5)」へ送られた「パケット」を受信すると、「受信したパケットをN_(4)を経由してN_(5)に送信」している。すなわち「HPNet_(2)」において、「CP_(1,2)」から「N_(4)」を経由して「N_(5)」に届くパケットの経路を確立していることになるので、本願発明1の「前記送信先の通信装置を宛先とするパケットを前記送信元の通信装置から受信した場合には、前記送信先の通信装置との間で前記第2経路構築プロトコルに対応する経路探索パケットを送信して経路を確立する経路確立手段」と、「前記送信先の通信装置を宛先とするパケットを前記送信元の通信装置から受信した場合には、前記送信先の通信装置との間で経路を確立する経路確立手段」という点で共通するといえる。 したがって、本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「送信元の通信装置と、送信先の通信装置と、中間の通信装置とを少なくとも有し、前記中間の通信装置は、前記送信元の通信装置が属する第1経路構築プロトコルで通信経路を構築する第1サブネットワークと、前記送信先の通信装置が属する前記第1経路構築プロトコルとは異なる第2経路構築プロトコルで通信経路を構築する第2サブネットワークと、を相互に接続する機能を有するネットワークシステムにおいて、 前記中間の通信装置は、 前記送信先の通信装置を宛先とするパケットを前記送信元の通信装置から受信した場合には、前記送信先の通信装置との間で経路を確立する経路確立手段と、を有する、 ことを特徴とするネットワークシステム。」 [相違点1] 本願発明1は「前記第2経路構築プロトコルに対応する経路探索パケットを送信して」経路を確立しているのに対し、引用発明では、どのように「N_(5)」まで経路を確立したのか、特定されていない点。 [相違点2] 本願発明1の「中間の通信装置」は、「前記経路確立手段によって前記第2経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットが受信されて経路が確立された場合に、前記送信元の通信装置に対して、前記送信先の通信装置に代わって前記第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットを送信することで代理応答する代理応答手段と、を有し」ているのに対し、引用発明の「CP_(1,2)」には、「N_(1)」への「代理応答」をすることが特定されていない点。 [相違点3] 本願発明1の「代理応答手段」は、「前記経路確立手段によって経路が確立されるまで、前記第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットの送信を保留する」のに対し、引用発明の「CP_(1,2)」には、「代理応答手段」について特定されていないので、当然「第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットの送信」の「保留」についても特定されていない点。 (2)判断 事案に鑑みて、上記[相違点2]及び[相違点3]について、先に検討する。 ア 相違点2について (ア)引用文献2及び先行文献1には、WAPLというネットワークにおいて、送信元の無線のアクセスポイント(AP)である「WAP」が、送信先の「通信装置」までの通信経路を確立した後に、送信元の「通信装置」へ「代理ARP応答」を送信する技術、が記載されている。 ここで、ARPとは、あるノードの「IPアドレス」に対応する「MACアドレス」を調べる「アドレス解決」のために用いられるプロトコルであり、代理ARP応答とは送信先の通信装置に代わってアドレス情報の通知を行う通信のことを指すものであることは周知である(必要ならば、上記「第4」の「2(1)」の下線部を参照。)。 よって、引用文献2の送信先の「通信装置」とWAP間のアドレス解決のためのARPプロトコルを、本願発明1のルーティングのための「第1経路構築プロトコル」と同視することはできない。そして、引用文献2及び先行文献1の「代理ARP応答」と、本願発明1の「前記第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケット」とは異なる信号である。 したがって、引用文献2及び先行文献1には、「前記経路確立手段によって前記第2経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットが受信されて経路が確立された場合に、前記送信元の通信装置に対して、前記送信先の通信装置に代わって前記第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットを送信することで代理応答する代理応答手段」についての記載や示唆はない。 (イ)また、「前記経路確立手段によって前記第2経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットが受信されて経路が確立された場合に、前記送信元の通信装置に対して、前記送信先の通信装置に代わって前記第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットを送信することで代理応答する代理応答手段」が周知技術であるとも認められない。 (ウ)よって、当業者といえども、引用発明及び、引用文献2及び先行文献1に記載された技術的事項に基づいて、相違点2に係る本願発明1の「前記経路確立手段によって前記第2経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットが受信されて経路が確立された場合に、前記送信元の通信装置に対して、前記送信先の通信装置に代わって前記第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットを送信することで代理応答する代理応答手段」という構成を容易に想到することはできない。 イ 相違点3について (ア)上記アに記載したように、引用文献2及び先行文献1には、「第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットの送信」について記載されていないため、当然に「第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットの送信」の「保留」についても記載されていない。 また、仮に「代理ARP」が「第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケット」に相当するとみなすことができたとしても、引用文献2及び先行文献1には、送信元のWAPが、送信先の通信装置との通信経路を確立した後に「代理ARP」を送信する旨の記載はあるが、引用文献2及び先行文献1の「代理ARP応答」は、送信先の端末から(送信先のMACアドレスを知らせる)「LT生成応答メッセージを受け取ったWAP1は自身のLTを更新する.同時にWAP1はARP Replyを接続先端末の代理として返信する」(先行文献1を参照)というものであって、要するに、送信先の通信装置のアドレスが解決された時点で(MACアドレスが判明したときに)、単に、「同時に」、代理ARP応答を返すものであって、「代理ARP」の「送信」を「保留」する点については記載されていない。 したがって、引用文献2及び先行文献1には、上記[相違点3]に係る「前記代理応答手段は、前記経路確立手段によって経路が確立されるまで、前記第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットの送信を保留する」点についての記載や示唆はない。 (イ)また、「前記代理応答手段は、前記経路確立手段によって経路が確立されるまで、前記第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットの送信を保留する」点が周知技術であるとも認められない。 (ウ)よって、当業者といえども、引用発明及び、引用文献2及び先行文献1に記載された技術的事項に基づいて、相違点3に係る本願発明1の「前記代理応答手段は、前記経路確立手段によって経路が確立されるまで、前記第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットの送信を保留する」構成を容易に想到することはできない。 ウ 判断についてのまとめ したがって、本願発明1は、[相違点1]について検討するまでもなく、当業者であっても引用発明及び、引用文献2及び先行文献1に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-4について 本願発明2は、本願発明1を減縮した発明であって、本願発明3-4も、本願発明1の上記相違点2及び3に係る「前記経路確立手段によって前記第2経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットが受信されて経路が確立された場合に、前記送信元の通信装置に対して、前記送信先の通信装置に代わって前記第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットを送信することで代理応答する代理応答手段」の構成及び「前記代理応答手段は、前記経路確立手段によって経路が確立されるまで、前記第1経路構築プロトコルに対応する経路応答パケットの送信を保留する」構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2及び先行文献1に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-07-13 |
出願番号 | 特願2016-46354(P2016-46354) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04L)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 玉木 宏治、速水 雄太 |
特許庁審判長 |
稲葉 和生 |
特許庁審判官 |
小田 浩 岩田 玲彦 |
発明の名称 | ネットワークシステム、通信装置、および、通信方法 |
代理人 | 齋藤 拓也 |
代理人 | 来間 清志 |
代理人 | 江村 美彦 |