ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01C 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01C |
---|---|
管理番号 | 1364586 |
審判番号 | 不服2019-10084 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-07-31 |
確定日 | 2020-07-30 |
事件の表示 | 特願2016-514692「チップ抵抗器およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月29日国際公開、WO2015/162858〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2015年3月30日(優先権主張 2014年4月24日)を国際出願日とする出願であって、平成28年8月4日付けで手続補正がなされ、平成31年2月7日付け拒絶理由通知に対応する応答時、同年3月22日付けで手続補正がなされたが、令和1年6月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月31日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。 2.令和1年7月31日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和1年7月31日付けの手続補正を却下する。 [理 由] (1)補正後の本願発明 令和1年7月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1については、 「【請求項1】 上面と端面とを有する絶縁基板と、 前記絶縁基板の前記上面に形成された抵抗体と、 前記抵抗体の前記上面の一部を露出するように前記抵抗体の前記上面の両端部にそれぞれ形成された一対の上面電極と、 前記抵抗体の前記一部を覆いかつ前記一対の上面電極は覆わないように形成された保護層と、 を備え、 前記一対の上面電極は、露出する上面と、露出する端面とを有し、 前記一対の上面電極の前記端面は前記絶縁基板の前記端面から外方に突出しておらず、 前記一対の上面電極の前記上面と前記保護層の上面が面一となっている、 チップ抵抗器。」 とあったものが、 「【請求項1】 上面と端面とを有する絶縁基板と、 前記絶縁基板の前記上面に形成された抵抗体と、 前記抵抗体の前記上面の一部を露出するように前記抵抗体の前記上面の両端部にそれぞれ形成された一対の上面電極と、 前記抵抗体の前記一部を覆いかつ前記一対の上面電極は覆わないように形成された保護層と、 を備え、 前記一対の上面電極は、露出する上面と、露出する端面と、互いに対向する面を有し、 前記一対の上面電極の前記端面は前記絶縁基板の前記端面から外方に突出しておらず、 前記一対の上面電極の前記上面と前記保護層の上面が面一であり、 前記一対の上面電極の前記互いに対向する面が前記保護層で覆われて前記保護層から露出しない、 チップ抵抗器。」 と補正された(下線部は補正箇所を示す。)。 上記補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「一対の上面電極」について、「互いに対向する面」を有し、「前記互いに対向する面が前記保護層で覆われて前記保護層から露出しない」旨の限定を付加するものである。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-19323号公報(以下、「引用例」という。)には、「チップ抵抗器」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 ア.「【請求項2】 絶縁基板の上面に配置された抵抗体と、該抵抗体の両端部に配置された電極と、少なくとも前記抵抗体の主要部を被覆する保護膜と、前記電極上に形成されためっき電極とを備えるチップ抵抗器であって、 前記抵抗体は銅・マンガン・ゲルマニウム(Cu-Mn-Ge)合金薄膜からなることを特徴とするチップ抵抗器。」 イ.「【0013】 以下、本発明に係る一発明の実施の形態例について添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る一発明の実施の形態例の角形薄膜チップ抵抗器の構造を示す図である。 【0014】 本実施の形態例のチップ抵抗器は、アルミナ等の絶縁材料で形成される絶縁基板、例えば角形絶縁基板11の表面に銅(Cu)・マンガン(Mn)・ゲルマニウム(Ge)合金薄膜からなる抵抗体膜12を備えている。 ・・・・・(中 略)・・・・・ 【0018】 また、抵抗体12の両端部近傍には、銅めっき膜等で表面電極13,13が形成されている。そして、抵抗体12の表面電極部以外の部分には、例えばガラスまたは樹脂製の保護膜15が形成されている。保護膜15は、例えば下層がガラス膜からなり、上層が樹脂膜からなる二層膜としてもよい。 ・・・・・(中 略)・・・・・ 【0021】 表面電極13,裏面電極16、端面電極17の表面上には、更に、例えばニッケルめっき及びはんだ(すず)メッキ層からなるメッキ電極(外部電極)18が形成されている。なお、このめっき電極は抵抗値が1Ωより低い場合には、ニッケル-銅-ニッケル-はんだ(すず)の4層めっきとしてもよい。」 ウ.「【図1】 」 ・上記引用例に記載の「チップ抵抗器」は、上記「ア.」、「イ.」の記載事項、及び上記「ウ.」(図1)によれば、角形絶縁基板11の上面に配置された抵抗体12と、抵抗体12の表面の両端部に配置された一対の表面電極13,13と、抵抗体12の一対の表面電極13,13が形成された部分以外の部分を被覆する保護膜15と、一対の表面電極13,13の表面上に形成されたメッキ電極18とを備えるチップ抵抗器である。 ・上記「ウ.」(図1)によれば、一対の表面電極13,13の上面よりも保護膜15の上面が上方に位置している。また、一対の表面電極13,13の互いに対向する面はすべて保護膜15で覆われ、その他の面は保護膜15から露出している。 ・上記「ウ.」(図1)によれば、一対の表面電極13,13の側面は、角形絶縁基板11の側面と面一である。 したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「角形絶縁基板と、 前記角形絶縁基板の上面に配置された抵抗体と、 前記抵抗体の表面の両端部に配置された一対の表面電極と、 前記抵抗体の前記一対の表面電極が形成された部分以外の部分を被覆する保護膜と、 前記一対の表面電極の表面上に形成されたメッキ電極とを備え、 前記一対の表面電極の互いに対向する面はすべて前記保護膜で被覆され、その他の面は前記保護膜から露出しており、 前記一対の表面電極の側面は前記角形絶縁基板の側面と面一であり、 前記一対の表面電極の上面よりも前記保護膜の上面が上方に位置している、チップ抵抗器。」 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。 ア.引用発明における「角形絶縁基板と」によれば、 当該「角形絶縁基板」にあっても、上面や側面(端面)を有することは自明であり、本願補正発明でいう「絶縁基板」に相当する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「上面と端面とを有する絶縁基板と」を備えるものである点で一致する。 イ.引用発明における「前記角形絶縁基板の上面に配置された抵抗体と」によれば、 当該「抵抗体」は、角形絶縁基板の上面に配置されるものであり、本願補正発明でいう「抵抗体」に相当する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記絶縁基板の前記上面に形成された抵抗体と」を備えるものである点で一致する。 ウ.引用発明における「前記抵抗体の表面の両端部に配置された一対の表面電極と」によれば、 当該「一対の表面電極」は、抵抗体の表面(角形絶縁基板側の面とは反対側の面であり、本願補正発明でいう「上面」に相当)の両端部に配置されてなるものであり、本願補正発明でいう「一対の上面電極」に相当し、そして、引用発明にあっても、抵抗体の表面の両端部以外の部分(中央部分)は一対の表面電極で覆われずに露出してなるものであるといえる。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記抵抗体の前記上面の一部を露出するように前記抵抗体の前記上面の両端部にそれぞれ形成された一対の上面電極と」を備えるものである点で一致する。 エ.引用発明における「前記抵抗体の前記一対の表面電極が形成された部分以外の部分を被覆する保護膜と」によれば、 当該「保護膜」は、抵抗体の一対の表面電極が形成された部分以外の部分を被覆するものであって、当然、一対の表面電極の上面は被覆しないものであり、本願補正発明でいう「保護層」に相当する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記抵抗体の前記一部を覆いかつ前記一対の上面電極は覆わないように形成された保護層と」を備えるものである点で一致する。 オ.引用発明における「前記一対の表面電極の表面上に形成されたメッキ電極とを備え、前記一対の表面電極の互いに対向する面はすべて前記保護膜で被覆され、その他の面は前記保護膜から露出しており」によれば、 当該「一対の表面電極」の互いに対向する面のみすべて保護膜で被覆されてなるものであり、互いに対向する面は保護膜から露出しておらず、その他の上面や側面(端面)は保護膜から露出してなるものであるといえる。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記一対の上面電極は、露出する上面と、露出する端面と、互いに対向する面」を有する点、及び「前記一対の上面電極の前記互いに対向する面が前記保護層で覆われて前記保護層から露出しない」ものである点で一致する。 カ.引用発明における「前記一対の表面電極の側面は前記角形絶縁基板の側面と面一であり」によれば、 当該「一対の表面電極」の側面(端面)は、角形絶縁基板の側面(端面)と面一なのであるから、当該角形絶縁基板の側面(端面)から外方に突出していないことは明らかである。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記一対の上面電極の前記端面は前記絶縁基板の前記端面から外方に突出しておらず」という点で一致する。 キ.引用発明における「前記一対の表面電極の上面よりも前記保護膜の上面が上方に位置している」によれば、 一対の上面電極の上面と保護層の上面との位置関係について、本願補正発明では、「面一」である旨特定するのに対し、引用発明では、保護膜の上面の方が上方に位置している点で相違するといえる。 よって、本願補正発明と引用発明とは、 「上面と端面とを有する絶縁基板と、 前記絶縁基板の前記上面に形成された抵抗体と、 前記抵抗体の前記上面の一部を露出するように前記抵抗体の前記上面の両端部にそれぞれ形成された一対の上面電極と、 前記抵抗体の前記一部を覆いかつ前記一対の上面電極は覆わないように形成された保護層と、 を備え、 前記一対の上面電極は、露出する上面と、露出する端面と、互いに対向する面を有し、 前記一対の上面電極の前記端面は前記絶縁基板の前記端面から外方に突出しておらず、 前記一対の上面電極の前記互いに対向する面が前記保護層で覆われて前記保護層から露出しない、チップ抵抗器。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 一対の上面電極の上面と保護層の上面との位置関係について、本願補正発明では、「面一」である旨特定するのに対し、引用発明では、保護膜の上面の方が上方に位置している点。 (4)判断 上記の相違点について検討する。 例えば原査定において提示した特開平8-330102号公報(特に段落【0050】?【0051】、図2、図7を参照)、さらには特開2002-246206号公報(特に【請求項1】、段落【0006】?【0007】、【0017】?【0018】、図1を参照)に記載のように、いわゆるフェイスダウン方式による表面実装でも安定して実装ができるように一対の上面電極の上面と保護層の上面とを面一とすることは周知の技術事項である。そして、表面実装方式としてはいわゆるフェイスアップ方式とフェイスダウン方式のいずれを採用するかや、あるいは両方式を採用するようにするかは当業者が適宜定め得る設計的事項であり、引用発明においても、いわゆるフェイスアップ方式による実装に代えてフェイスダウン方式による実装が安定して行えるように、あるいはフェイスアップ方式による実装のみならずフェイスダウン方式による実装も安定して行えるように上記周知の技術事項を採用し、相違点に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。 なお、請求人は審判請求書において、「引用文献1では、・・・保護膜15の角が丸くなってしまいます(図1、図2参照)。この引用文献1の一対の上面電極13の上面を、引用文献4-6のように保護膜15の上面と面一にすれば、保護膜15の角の丸みによってそこに隙間が生じてしまいます。そうすると、この隙間によって保護膜と一対の上面電極との密着性が悪化したり、隙間から水分などが内部に侵入して長期信頼性が悪化したりする可能性があります。」などと主張している。 しかしながら、一対の上面電極の上面と保護層の上面とを面一とする上記周知の技術事項のものには保護膜の角の丸みはないから、引用発明において上記周知の技術事項を採用したものは必ずしも請求人の主張するようなものとはならないといえ、当該主張を採用することはできない。 (5)本件補正についてのむすび 以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 令和1年7月31日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成31年3月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 上面と端面とを有する絶縁基板と、 前記絶縁基板の前記上面に形成された抵抗体と、 前記抵抗体の前記上面の一部を露出するように前記抵抗体の前記上面の両端部にそれぞれ形成された一対の上面電極と、 前記抵抗体の前記一部を覆いかつ前記一対の上面電極は覆わないように形成された保護層と、 を備え、 前記一対の上面電極は、露出する上面と、露出する端面とを有し、 前記一対の上面電極の前記端面は前記絶縁基板の前記端面から外方に突出しておらず、 前記一対の上面電極の前記上面と前記保護層の上面が面一となっている、 チップ抵抗器。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項である「一対の上面電極」について、「互いに対向する面」を有し、「前記互いに対向する面が前記保護層で覆われて前記保護層から露出しない」旨の限定を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-05-19 |
結審通知日 | 2020-05-26 |
審決日 | 2020-06-09 |
出願番号 | 特願2016-514692(P2016-514692) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01C)
P 1 8・ 575- Z (H01C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 多田 幸司 |
特許庁審判長 |
山田 正文 |
特許庁審判官 |
山本 章裕 井上 信一 |
発明の名称 | チップ抵抗器およびその製造方法 |
代理人 | 野村 幸一 |
代理人 | 鎌田 健司 |