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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B29C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C |
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管理番号 | 1364649 |
審判番号 | 不服2019-3559 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-03-14 |
確定日 | 2020-07-27 |
事件の表示 | 特願2014-262682「複合容器およびその製造方法、複合プリフォームならびにプラスチック製部材」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月 7日出願公開、特開2016-120681〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年12月25日の出願であって、平成30年8月31日付けで拒絶理由が通知され、同年10月31日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月11日付けで拒絶査定がされ、平成31年3月14日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。 第2 平成31年3月14日に提出された手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成31年3月14日に提出された手続補正書による手続補正を却下する。 [理由] 1 平成31年3月14日に提出された手続補正書による手続補正の内容 平成31年3月14日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項8について、本件補正により補正される前の(すなわち、平成30年10月31日に提出された手続補正書により補正された)下記(1)に示す特許請求の範囲の請求項8の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項8の記載へ補正する事項を含むものである。 なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項8 「【請求項8】 複合プリフォームにおいて、 プラスチック材料製のプリフォームと、 前記プリフォームの外側を取り囲むように設けられたプラスチック製部材とを備え、 前記プラスチック製部材は、前記プリフォームの外側に密着されており、その表面に印刷領域が設けられていることを特徴とする複合プリフォーム。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項8 「【請求項8】 複合プリフォームにおいて、 プラスチック材料製のプリフォームと、 前記プリフォームの外側を取り囲むように設けられたプラスチック製部材とを備え、 前記プラスチック製部材は、前記プリフォームの外側に密着されており、その表面に印刷領域が設けられており、 前記プラスチック製部材が、前記プリフォームに接着されることなく、密着して設けられており、 前記プラスチック製部材が、前記プリフォームに対して収縮する作用を有し、 前記プリフォームが多層構造を有し、中間層が、ガスバリア性樹脂を含むことを特徴とする複合プリフォーム。」 2 本件補正の適否 (1)本件補正の目的 本件補正の特許請求の範囲の請求項8についての補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項8に係る発明の発明特定事項である「プラスチック製部材」及び「プリフォーム」をさらに限定するものであり、しかも、本件補正前の特許請求の範囲の請求項8に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項8に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (2)独立特許要件の検討 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項8に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、検討する。 ア 引用文献に記載された事項等 (ア)引用文献2に記載された事項等 a 引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用され、本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2006-281630号公報(以下、「引用文献2」という。)には、合成樹脂製容器に利用されるプリフォーム及びプリフォームに接着される合成樹脂製フィルムに関して、図面とともにおおむね次の記載がある。なお、下線は当審において付したものである。他の文献についても同様。 ・「【請求項1】 少なくとも胴部外表面の一部をフィルム層により剥離可能に被覆した延伸ブロー成形による容器本体において、前記フィルム層が、プリフォームに予めインモールドで接着された合成樹脂製のフィルムを前記延伸ブロー成形時にプリフォームと共に延伸して形成したものであることを特徴とする合成樹脂製の合成樹脂製容器。 【請求項2】 容器本体の胴部外表面の全周、および略全高さに亘ってフィルム層で被覆した請求項1記載の合成樹脂製容器。 【請求項3】 プリフォームとフィルムを相互に異なる系統の合成樹脂製として容器本体とフィルム層を剥離可能とした請求項1または2記載の合成樹脂製容器。 【請求項4】 射出成形でのプリフォーム成形時の樹脂圧力、金型温度を調整してプリフォームへのフィルムの接着状態を適宜制御する構成とした請求項1、2または3記載の合成樹脂製容器。 【請求項5】 プリフォームをポリエチレンテレフタレート系樹脂製とし、フィルムをポリエステル系フィルムとした請求項1、2、3または4記載の合成樹脂製容器。 【請求項6】 フィルムを、ポリエチレンテレフタレート系樹脂製の延伸フィルムとした請求項5載の合成樹脂製容器。 【請求項7】 フィルム層で容器を加飾する構成とした請求項1、2、3、4、5または6記載の合成樹脂製容器。 【請求項8】 フィルム層で容器のガスバリア性を向上させる構成とした請求項1、2、3、4、5、6または7記載の合成樹脂製容器。」 ・「【0001】 本発明は、外表面を合成樹脂製フィルムで密着状に被覆した合成樹脂製容器に関するものである。 【背景技術】 【0002】 ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド等の樹脂製の延伸ブロー成形品はその強靭性、剛性、透明性、軽量性等の長所により、壜体等の容器として広い分野で使用されている。 【0003】 また、延伸ブロー成形した容器は、一般に加飾の目的で商品名、模様等を印刷したシュリンクフィルムで胴部をカバーしたり、ラベルを胴部に貼付したりして使用されている。」 ・「【0010】 請求項1の上記構成によりプリフォームの延伸ブロー時に、このプリフォームと共に延伸して形成された合成樹脂製のフィルム層が容器本体を被覆するので、容器本体の凹凸構造、把手機能部等の突設物等によって被覆範囲を限定されることなく、皺、弛み、隙間、斑等が無く、壜本体の形状に沿って密着状にフィルム層を被覆した合成樹脂製容器を提供することができると共に、使用後にはフィルム層を剥離して分別回収することができる。 【0011】 インモールド成形法を用いればプリフォームを射出成形法等で成形すると同時にフィルムをプリフォームの胴部に容易に接着することができ、またインモールドの場合、溶融樹脂圧でフィルムを全領域に亘って略均一に押圧するので、皺の発生、ブリスターの発生のない状態で接着でき、延伸ブロー成形時における共延伸をスムーズに達成することができる。 【0012】 また、壜体の延伸ブロー成形では一般的にプリフォームは円筒状の胴部を有した試験管状であり、プリフォームの胴部の略全高さ、そして全周に亘ってインモールドでフィルムを皺無く接着することができ、壜体の口部、あるいは底部を除いた肩部から胴部に亘る略全領域を容易に被覆することが可能である。 なお、プリフォームの成形は射出成形の他にも、ダイレクトブロー成形で成形することもできる。 【0013】 そして、フィルムを印刷等による加飾性を有するもの、あるいはガスバリア性、耐衝撃性、遮光性、紫外線吸収等の機能を有する構成とすることにより、加飾性や各種の機能を容易に、効果的に容器に付与することが可能となる。 【0014】 プリフォームには、ポリオレフィン系樹、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の従来の延伸ブロー成形容器に使用されている合成樹脂を使用することができる。 【0015】 一方フィルムには、プリフォームの延伸ブロー時にこのプリフォームと共に延伸されてフィルム層を形成するので、インモールド成形法によりプリフォームへの接着が可能であり、かつプリフォームの延伸ブロー成形温度領域で良好な延伸性を有する合成樹脂を選択する。 【0016】 ここで、フィルムをプリフォームと接着して共延伸可能としながら、フィルム層を容器本体から剥離可能とするためには、接着状態の制御が必要である。 プリフォームとフィルムを相互に異なる系統の合成樹脂製のもので組み合わせる場合には、異なる系統の樹脂の組み合わせでは相互に相溶性が低いので、両樹脂が界面で相互に浸透混合した所謂熱融着状の接着には至らないが、プリフォームの成形の際における溶融樹脂圧によりフィルムを熱圧着状にプリフォームに接着させることができ、延伸ブロー成形の際、プリフォームを再加熱して両者をガラス転移温度以上で軟化することにより、プリフォームの膨張変形による支持もあり、共延伸を可能とすることができる。 また、接着力が若干不足する場合でも延伸ブロー工程での縦延伸倍率を小さめに設定して、共延伸をより確実に達成することができる。 そして、延伸ブロー成形後に冷却することによりフィルム層を容器本体から剥離可能とすることができる。 【0017】 プリフォームとフィルムを相互に同じ系統の合成樹脂製のもので組み合わせる場合には、相互に相溶性が高いので、両樹脂が界面で相互に浸透混合した熱融着状の接着となり、フィルム層の容器本体からの剥離は困難となるが、両者で共重合成分比を変えて相溶性を低めにする、一方に異種成分をブレンドする、フィルムを延伸フィルムとする、プリフォーム成形時の金型温度を低くする、溶融樹脂圧力を小さくする等の方法により上記した熱融着を抑えて接着状態を制御して、フィルム層を剥離可能とすることができる。」 ・「【0054】 次に上記、壜体1の一実施例の製造方法を説明する。 ポリエステル系のフィルム25としてイーストマンケミカル社製の非晶性ポリエステル樹脂PETGからなるフィルムを使用する。このフィルムはテレフタル酸からなる酸成分と、エチレングリコールとCHDMを主成分として、そのモル比が70/30であるジオール成分からなる非晶性のフィルムである。 【0055】 図3および図4に、図1に示した壜体1用のプリフォームの半縦断正面図および平断面図を示す。 壜本体2の成形は、有底、円筒状の形状であり、底部21、胴部22、口部23から構成される、プリフォーム20をPET樹脂により射出成形する工程と、このプリフォーム20を延伸ブロー成形する工程からなる。 【0056】 インモールドでのフィルム25のプリフォーム20への接着は、プリフォーム20の射出成形工程において、射出成形金型30のキャビティー型32における、胴部22の外周面に対応する位置に、フィルム25を胴部22の外径と高さに略等しい外径と、高さとを有した円筒状になるようにして設置、次にコア型31をキャビティー型32内に侵入させ、PET樹脂をゲート33からキャビティー34に射出して成形することにより実施する。(図5、図6参照) 【0057】 このプリフォームの射出成形は通常のPET樹脂製プリフォームの成形と同様270?300℃程度の樹脂温度で実施するが、フィルム25とプリフォーム20の熱融着が十分進行しない程度に留めて、壜本体2からフィルム層11が剥離できるように、樹脂圧力を25MPa程度の低圧に、金型温度を20℃程度の低温に設定する。 【0058】 このように、予備実験をしてプリフォーム20の延伸ブロー成形においてフィルム25の共延伸がスムーズに進行する範囲で、樹脂圧力、あるいは金型温度等の条件を適宜に決めることにより、フィルム25の共延伸性とフィルム層11の剥離性を両立させることができる。因みに、本実施例の場合で樹脂圧力をプリフォームの通常の成形条件である500MPa、金型温度を70℃程度にすると、フィルム層11の剥離はできなくなる。 【0059】 延伸ブロー成形は、インモールドで、胴部22の外表面にフィルム25を接着したプリフォーム20(図3、図4参照)を、延伸ブロー成形機の金型内に口部23を金型の上部に固定しながらセット、PET樹脂製壜体の通常の成形条件で実施するが、樹脂温度は85?135℃程度の範囲であり、胴部22の外表面に接着したフィルム25をプリフォーム20と共に延伸する。 【0060】 以上の製造法より、フィルム層11が、胴部4に数多く設された凹凸形状に関わらず、皺、弛み、隙間、斑等が無く、胴部4の全域、および肩部5の大部分の領域に、壜本体2の形状に沿って壜本体2を被覆してた壜体1を得ることができた。 【0061】 壜体1は透明性の斑も無く、表面光沢も良好であり、胴部4にある大きな凹部8においても皺、弛み、隙間の発生は見られなかった。そして、このようにフィルム層11は、壜体1を密着状に被覆しているが、端部にカッタナイフ等で部分的に切れ目を入れることにより、フィルム層11をこの切れ目から引き剥がすようにして取り外し、分別回収することができる。 【0062】 上記第1実施例では、ポリエステル系フィルムとして延伸性の良好な非晶性のPETGを用い、プリフォーム成形時の樹脂圧、金型温度を低く設定することにより接着状態を制御してフィルム層が剥離できるようにしたが、このような成形条件だけでなく、たとえばCHDMの成分比をさらに大きくしてPET樹脂との相溶性を低くする等の手段も合わせて用いることもできる。 また、PET系樹脂製の延伸フィルムを使用することによって、その延伸の程度によりPET樹脂との接着状態を制御することもできる。 【0063】 図7は、本発明の合成樹脂製容器の第2実施例である壜体1の半縦断正面図を示すものであり、壜本体2はPET樹脂製の延伸ブロー成形品で、中間高さ位置に大きく凹んだ凹部8が周設された胴部4を有し、肩部5を介して短円筒形状の口部6を一体に立設したものである。 【0064】 壜本体2の口部6および底部3を除いた、肩部5を含む胴部4の略全領域に亘る外表面は、プリフォームを延伸ブローする際に、プリフォームと共に延伸して形成された、壜本体2と異なる系統の合成樹脂であるランダムPP樹脂製のフィルム層11により、凹部8も含めて壜本体2の形状に沿って密着状に被覆されている。 【0065】 そして本実施例の壜体1はこのフィルム層11により加飾性を付与しようとするものであり、延伸変形により図案化した”ABC”なる印刷文字が変形して表現されており、今までにない独特な加飾が施されている。 なお、図7および後述する図8は半縦断正面図であるが、図案化された文字”ABC”が良く判るように縦断部分にも2点鎖線でその形を示した。 【0066】 そして壜体1は、図8に示す、予め表面に”ABC”なる図案化した文字を印刷したランダムPP樹脂製の無延伸のフィルム25をインモールドで接着したPET樹脂製のプリフォーム20を延伸ブロー成形したものである。 【0067】 このランダムPP樹脂製の無延伸のフィルム25は、PET樹脂製のプリフォーム20とは異なる系統の合成樹脂製であるので、インモールドで熱融着しないものの、熱圧着状にプリフォーム20に接着しており、またPET樹脂製プリフォーム20の延伸ブロー成形温度領域で極めて良好な延伸性を有し、共延伸をスムーズに達成することができた。 【0068】 図7に見られるように、壜体1のフィルム層11では、フィルム25に印刷した図案化した文字”ABC”が延伸により変形した形となり、今までにない独特な装飾効果が発揮される。勿論文字を図案化したものに限らず、様々な模様を延伸変形させ、胴部4全体に広げたような効果も出すこともできる。そして、元々PET樹脂とPP系樹脂は相溶性が低いのでフィルム層11を容易に剥離して分別回収することができる。」 b 引用発明2 引用文献2に記載された事項を、特に請求項1ないし7に関して整理すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。 「インモールドでプリフォームにプリフォームとは異なる系統の合成樹脂製で加飾するためのフィルムが接着されたプリフォームであって、当該フィルムが接着されたプリフォームは延伸ブロー成形された容器本体からフィルム層を剥離可能としているものである当該フィルムが接着されたプリフォーム。」 (イ)引用文献5に記載された事項等 a 引用文献5に記載された事項 本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開昭59-91038号公報(原査定のなお書きにおいて引用された参考文献2である。以下、「引用文献5」という。)には、ボトルの製造方法に利用される有底パリソンに関して、図面とともにおおむね次の記載がある。 ・「第1図において1はポリエチレンテレフタレートよりなる有底パリソンであって、通常射出成形によって形成される。2はガスバリヤー性プラスチックフィルム(例えば厚さ10?50μmのポリ塩化ビニリデン系フィルム;単位厚さの炭酸ガス、酸素ガス等に対するバリヤー性がポリエチレンテレフタレートの夫より大きいプラスチックのフィルム)よりなるチューブであって、例えばインフレーション法によって形成された継目無しの長尺チューブを、パリソン1の胴壁部1aの高さにほぼ等しい長さに切断したものである。その内径は胴壁部1aの外径より若干大きい。 第1図はチューブ2を倒立したパリソン1の胴壁部1aの外面側に緩挿し、ネックリング1b上に載置した状態を示す。次にこのパリソン1を延伸-吹込成形のため約80?100℃の範囲内の所定温度に、赤外線照射あるいはオーブン通過等によって加熱する。このさいチューブ2は熱収縮して、第2図に示すように、パリソン1の胴壁部1aの外面に密着する。次いで常法により、このチューブ2が密着したパリソン1を2軸延伸-吹込成形を行なって、第3図に示すようなボトル3を形成する。」(第2ページ左上欄第14行ないし右上欄第16行) ・「 」 b 引用発明5 引用文献5に記載された事項を整理すると、引用文献5には、次の発明(以下、「引用発明5」という。)が記載されていると認める。 「ポリエチレンテレフタレートよりなる有底パリソン1と、 ガスバリヤー性プラスチックフィルム(例えば厚さ10?50μmのポリ塩化ビニリデン系フィルム;単位厚さの炭酸ガス、酸素ガス等に対するバリヤー性がポリエチレンテレフタレートの夫より大きいプラスチックのフィルム)よりなるチューブ2を備え、 前記チューブ2を倒立した前記有底パリソン1の胴壁部1aの外面側に緩挿し、次にこの有底パリソン1を延伸-吹込成形のため約80?100℃の範囲内の所定温度に、赤外線照射あるいはオーブン通過等によって加熱し、このさい前記チューブ2は熱収縮して、前記有底パリソン1の胴壁部1aの外面に密着したもの。」 (ウ)引用文献6に記載された事項 本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2008-120076号公報(以下、「引用文献6」という。)には、バリア性に優れた多層パリソンに関して、おおむね次の記載がある。 ・「【0005】 本発明は、射出成形から得られる容器における以上のような課題を解決し、バリア性、外観、耐剥離性及び耐熱性等に優れた多層射出成形体を提供しようとするものである。」 ・「【0029】 本発明の多層射出成形体を作製する一例として、2つの射出シリンダーを有する射出成形機を使用して、熱可塑性樹脂とバリア性樹脂組成物とをスキン側、コア側それぞれの射出シリンダーから金型ホットランナーを通して金型キャビティー内に射出して得られた多層射出成形体を得る方法が挙げられ、さらに該多層射出成形体を2軸延伸ブロー成形することにより多層延伸射出成形体が得られる。多層射出成形体のブロー成形は従来公知の方法で行えばよく、例えば、多層射出成形体の表面を120?170℃に加熱した後にブロー成形する方法が採用される。ブロー圧は、通常、1?4MPaである。 【0030】 上記方法では、スキン側射出シリンダーから最内層および最外層を構成するポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂を射出し、コア側射出シリンダーからバリア性樹脂組成物層を構成するバリア性樹脂組成物を射出する工程で、先ず、熱可塑性樹脂を射出し、次いでバリア性樹脂組成物を射出し、次に熱可塑性樹脂を必要量射出して金型キャビティーを満たすことにより3層構造(熱可塑性樹脂/バリア性樹脂組成物/熱可塑性樹脂)の多層射出成形体が製造できる。なお、多層パリソンを製造する方法は、このような方法だけに限定されるものではない。」 (エ)引用文献7に記載された事項 本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2013-107212号公報(以下、「引用文献7」という。)には、プリフォームの射出成形装置、射出成形方法、及びプリフォームに関して、図面とともにおおむね次の記載がある。 ・「【請求項5】 主体を形成する主材層(101a)中に中間層として第2の樹脂層(101b)を積層した2軸延伸ブロー成形用の試験管状のプリフォーム(101) の射出成形方法であって、請求項1、2、3または4に記載のある射出成形装置を使用し、主材樹脂(Ra)を外側流路(15a)と内側流路(15c)から合流路(19)に所定の供給速度で所定時間供給し、前記、主材樹脂(Ra)が供給される所定時間範囲内の一定時間、同時に第2の樹脂(Rb)を中流路(15b)から合流路(19)に所定の供給速度で供給し、前記、第2の樹脂(Rb)が供給される前から、あるいは供給開始から所定時間後から少なくとも該第2の樹脂(Rb)の供給が終了するまでの間、シャットオフピン(20)を摺動させて該シャットオフピン(20)の先端(20p)を内側流路(15c)の合流路(19)への開口端部(17c)近傍の所定位置に配置させて、該開口端部(17c)の開度を調整し、内側流路(15c)から合流路(19)への主材樹脂(Ra)の供給速度を所定の速度まで小さくすることを特徴とする射出成形方法。 ・・・(略)・・・ 【請求項8】 第2の樹脂(Rb)をガスバリア性に優れた合成樹脂とし、第2の樹脂層(101b)をガスバリア層とした請求項5、6または7記載の射出成形方法。 【請求項9】 主体を形成する主材層(101a)中に中間層として第2の樹脂層(101b)を積層した2軸延伸ブロー成形用の試験管状のプリフォームであって、 該プリフォームの底面で、前記第2の樹脂層(101b)の終端縁(TE)が、底部(106)の底面の中央に形成される円形のゲート痕(107)の外周縁の外側から胴部(105)の内周面(105p)に相当する周縁までの範囲内に位置することを特徴とするプリフォーム。」 ・「【図1】 」 (オ)引用文献8に記載された事項 本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である実願昭57-33313号(実開昭58-136317号)のマイクロフィルム(原査定のなお書きにおいて引用された参考文献1である。以下、「引用文献8」という。)には、美装インサートチユーブを外層体として成形した装飾ブロー容器に用いる有底パリソンに被覆するチユーブに関して、図面とともにおおむね次の記載がある。 ・「つぎに本考案容器を図示した実施例に基いて説明すれば,第1,2図の装飾ブロー容器1は,容器主体2の外面に美装インサートチユーブ3による外層体5が被覆されて構成されている。 容器主体2は有底パリソンをインジエクシヨン成形し,これをブロー成形して成形するものであるからその容器形状は如何なるものでもできる。本考案にあっては胴部2aから口部2dにかけて肩部2bを有するものであれば全体形状の限定はなく,如何様の変形体であってもよい。 美装インサートチユーブ3は熱収縮性のある軟質の薄肉筒体であつて,予め所定の寸法にインジエクシヨン成形するか,あるいは押出し成形した長尺チユーブを定寸切断したものを用いる。そしてこれの表面にホツトスタンプ,ホツトトランスフア,シルクスクリーン等の適宜な印刷手段により所要の模様や色彩若しくは文字等による装飾模様4,4’を施しておくもので,同一の装飾模様を有するチユーブを予め生産しておく。」 イ 独立特許要件1(引用文献2を主引用文献とする進歩性) (ア)対比 本願補正発明と引用発明2を対比する。 引用発明2における「フィルム」が接着される前の「プリフォーム」は本願補正発明における「プラスチック材料製のプリフォーム」に相当する。 引用発明2における「プリフォームとは異なる系統の合成樹脂製で加飾するためのフィルム」は、引用発明2の認定の根拠である【請求項1】及び【請求項2】によると、合成樹脂製容器の容器本体の胴部外表面の全周に亘って被覆されるフィルム層を形成するものであるから、本願補正発明における「前記プリフォームの外側を取り囲むように設けられ」、「前記プリフォームの外側に密着され」た「プラスチック製部材」に相当する。 引用発明2における「フィルム」は「加飾」するためのものであり、その「加飾」は引用文献2の【0013】によると、印刷等によるものであるから、引用発明2における「フィルム」は「その表面に印刷領域が設けられて」いるものであるといえる。 引用発明2における「インモールドでプリフォームにプリフォームとは異なる系統の合成樹脂製で加飾するためのフィルムが接着されたプリフォーム」は本願補正発明における「複合プリフォーム」に相当する。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「複合プリフォームにおいて、 プラスチック材料製のプリフォームと、 前記プリフォームの外側を取り囲むように設けられたプラスチック製部材とを備え、 前記プラスチック製部材は、前記プリフォームの外側に密着されており、その表面に印刷領域が設けられている複合プリフォーム。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点2-1> 「プラスチック製部材」と「プリフォーム」の関係について、本願補正発明においては、「接着されることなく」と特定されているのに対し、引用発明2においては、「接着され」とされている点。 <相違点2-2> 本願補正発明においては、「前記プラスチック製部材が、前記プリフォームに対して収縮する作用を有し」と特定されるのに対し、引用発明2においては、そのようには特定されていない点。 <相違点2-3> 本願補正発明においては、「前記プリフォーム」が「多層構造を有し、中間層が、ガスバリア性樹脂を含む」と特定されるのに対し、引用発明2においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 そこで、相違点2-1ないし2-3について、検討する。 a 相違点2-1について 引用文献2の【0016】の「プリフォームとフィルムを相互に異なる系統の合成樹脂製のもので組み合わせる場合には、異なる系統の樹脂の組み合わせでは相互に相溶性が低いので、両樹脂が界面で相互に浸透混合した所謂熱融着状の接着には至らないが、プリフォームの成形の際における溶融樹脂圧によりフィルムを熱圧着状にプリフォームに接着させることができ」及び【0017】の「上記した熱融着を抑えて接着状態を制御して、フィルム層を剥離可能とすることができる」という記載によると、引用発明2においては、「フィルム」と「プリフォーム」は「熱融着状」の「接着」ではなく、「フィルム層を剥離可能」とすることができる「熱圧着状」の「接着」で接着していて、「フィルム層」が「プリフォーム」から剥離可能なものであるといえる。 他方、本願明細書の【0043】の「プラスチック製部材40は容器本体10の外面に接着されることなく取付けられており、容器本体10に対して移動又は回転しないほどに密着されている。」及び【0046】の「一方、プラスチック製部材40は、容器本体10に対して溶着ないし接着されていないため、容器本体10から剥離して除去することができる。」という記載によると、本願補正発明における「前記プラスチック製部材が、前記プリフォームに接着されることなく、密着」とは「プラスチック製部材」が「容器本体に対して移動又は回転しない」が「容器本体から剥離」はすることができるものである。 したがって、引用発明2における「接着」は本願補正発明における「接着されることなく、密着」と部材間の接触の状態及び作用・効果の点で変わるものではない。 すなわち、相違点2-1は実質的な相違点とはいえない。 仮に、相違点2-1が実質的な相違点であるとしても、引用文献2の【0017】の上記記載からみて、引用発明2において、接着状態を制御して、相違点2-1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 b 相違点2-2について 引用文献2の【0062】に「延伸フィルムを使用する」ことが記載されている。 そして、延伸フィルムが収縮する作用を有することは技術常識である。 したがって、引用発明2において、「フィルム」として収縮する作用を有する「延伸フィルム」を使用して、相違点2-2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 c 相違点2-3について 引用文献2の【請求項8】の「容器のガスバリア性を向上させる」という記載によると、引用発明2において、ガスバリア性を高める動機付けはある。 また、プリフォームとして、多層構造を有し、中間層が、ガスバリア性樹脂を含むものは、引用文献6及び7に記載されているように、周知(以下、「周知技術1」という。)である。 したがって、引用発明2において、ガスバリア性をより高めるために、周知技術1を適用し、相違点2-3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 d 効果について そして、本願補正発明を全体としてみても、本願補正発明は、引用発明2及び周知技術1からみて格別顕著な効果を奏するものであるとはいえない。 (ウ)まとめ したがって、本願補正発明は、引用発明2及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 ウ 独立特許要件2(引用文献5を主引用文献とする進歩性) (ア)対比 本願補正発明と引用発明5を対比する。 引用発明5における「ポリエチレンテレフタレートよりなる有底パリソン1」は本願補正発明における「プラスチック材料製のプリフォーム」に相当する。 引用発明5における「ガスバリヤー性プラスチックフィルム(例えば厚さ10?50μmのポリ塩化ビニリデン系フィルム;単位厚さの炭酸ガス、酸素ガス等に対するバリヤー性がポリエチレンテレフタレートの夫より大きいプラスチックのフィルム)よりなるチューブ2」は「倒立した前記有底パリソン1の胴壁部1aの外面側に緩挿し、次にこの有底パリソン1を延伸-吹込成形のため約80?100℃の範囲内の所定温度に、赤外線照射あるいはオーブン通過等によって加熱」され「熱収縮して、前記有底パリソン1の胴壁部1aの外面に密着」したものであるから、本願補正発明における「前記プリフォームの外側を取り囲むように設けられ」、「前記プリフォームの外側に密着され」、「前記プリフォームに接着されることなく、密着して設けられ」及び「前記プリフォームに対して収縮する作用を有」する「プラスチック製部材」に相当する。 引用発明5における「前記チューブ2は熱収縮して、前記有底パリソン1の胴壁部1aの外面に密着したもの」は本願補正発明における「複合プリフォーム」に相当する。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「複合プリフォームにおいて、 プラスチック材料製のプリフォームと、 前記プリフォームの外側を取り囲むように設けられたプラスチック製部材とを備え、 前記プラスチック製部材は、前記プリフォームの外側に密着されており、 前記プラスチック製部材が、前記プリフォームに接着されることなく、密着して設けられており、 前記プラスチック製部材が、前記プリフォームに対して収縮する作用を有する複合プリフォーム。」 そして、両者は以下の点で相違する。 <相違点5-1> 本願補正発明においては、「前記プラスチック製部材」は「その表面に印刷領域が設けられており」と特定されるのに対し、引用発明5においては、「前記プラスチック製部材」に相当する「チューブ2」は「その表面に印刷領域が設けられており」とは特定されていない点。 <相違点5-2> 本願補正発明においては、「前記プリフォーム」が「多層構造を有し、中間層が、ガスバリア性樹脂を含む」と特定されるのに対し、引用発明5においては、「前記プリフォーム」に相当する「有底パリソン1」が「多層構造を有し、中間層が、ガスバリア性樹脂を含む」とは特定されていない点。 (イ)判断 そこで、相違点5-1及び5-2について、検討する。 a 相違点5-1について あらかじめプリフォームの外面に被覆するフィルムに適宜な印刷手段により所要の模様や色彩若しくは文字等による装飾模様を施しておくことは、引用文献2及び8に記載されているように、周知(以下、「周知技術2」という。)である。 したがって、引用発明5において、ボトルに求められる外観を考慮して、周知技術2を適用し、相違点5-1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 b 相違点5-2について 引用発明5は、「ガスバリヤー性プラスチックフィルム(例えば厚さ10?50μmのポリ塩化ビニリデン系フィルム;単位厚さの炭酸ガス、酸素ガス等に対するバリヤー性がポリエチレンテレフタレートの夫より大きいプラスチックのフィルム)よりなるチューブ2」をその発明特定事項とするものであるから、引用発明5において、ガスバリヤー性を高める動機付けはある。 また、プリフォームとして、多層構造を有し、中間層が、ガスバリア性樹脂を含むものは、周知技術1として示したように、周知である。 したがって、引用発明5において、ガスバリヤー性をより高めるために、周知技術1を適用し、相違点5-2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 c 効果について そして、本願補正発明を全体としてみても、本願補正発明は、引用発明5並びに周知技術1及び2からみて格別顕著な効果を奏するものであるとはいえない。 (ウ)まとめ したがって、本願補正発明は、引用発明5並びに周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるので、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成31年3月14日に提出された手続補正書による手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし15に係る発明は、平成30年10月31日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項8に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項8に係る発明は、本願の出願前に日本国内において、頒布された引用文献2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3項に該当し特許を受けることができないものであるか又は該発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。 3 引用文献2に記載された事項等 引用文献2に記載された事項及び引用発明2は、上記第2[理由]2(2)ア(ア)のとおりである。 4 対比・判断 上記第2[理由]1及び2(1)のとおり、本願補正発明は本願発明の発明特定事項である「プラスチック製部材」について、「前記プリフォームに接着されることなく、密着して設けられており、」及び「前記プリフォームに対して収縮する作用を有し、」という限定を加え、「プリフォーム」について、「多層構造を有し、中間層が、ガスバリア性樹脂を含む」という限定を加えたものである。すなわち、本願発明は、本願補正発明から上記限定を削除したものである。 そうすると、本願発明と引用発明2を対比するに、両者は、上記第2[理由]2(2)イ(ア)において、一致点とした点で一致し、相違点はない。 したがって、本願発明は引用発明2である。 また、本願発明と引用発明2の間に何らかの相違点があったとしても、本願発明は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび したがって、本願発明は引用発明2であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は該発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第4 結語 上記第3のとおり、本願発明、すなわち請求項8に係る発明は、特許法第29条の規定により特許を受けることができないものであるので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-05-22 |
結審通知日 | 2020-05-26 |
審決日 | 2020-06-08 |
出願番号 | 特願2014-262682(P2014-262682) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B29C)
P 1 8・ 113- Z (B29C) P 1 8・ 575- Z (B29C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中山 基志 |
特許庁審判長 |
大島 祥吾 |
特許庁審判官 |
植前 充司 加藤 友也 |
発明の名称 | 複合容器およびその製造方法、複合プリフォームならびにプラスチック製部材 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 末盛 崇明 |
代理人 | 浅野 真理 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 中村 行孝 |