• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1364665
審判番号 不服2019-11031  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-21 
確定日 2020-07-27 
事件の表示 特願2018- 33974号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月 7日出願公開、特開2018- 86447号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年2月27日の出願であって、同年10月15日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月20日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年2月5日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年4月8日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和1年5月20日付け(謄本送達日:同年同月28日)で、平成31年4月8日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、令和1年8月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和1年8月21に提出された手続補正書による補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和1年8月21に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、平成30年12月20日に提出された手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「 複数種類の表示演出を実行可能な表示手段を備える遊技機であって、
遊技者の操作を受け付けることが可能な操作手段を備え、
前記表示手段は、第1の表示手段と、前記第1の表示手段とは異なる第2の表示手段とを備え、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第1の表示演出をおこなう場合があり、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第2の表示演出をおこなう場合があり、
前記第1の表示演出は、リーチ演出であり、
前記第2の表示演出は、複数の楽曲情報を表示する楽曲表示演出であり、
前記第1の表示演出は、前記第1の表示手段と前記第2の表示手段とを用いておこなわれる場合があり、
前記第2の表示演出は、前記第1の表示手段と前記第2の表示手段とを用いておこなわれる場合があり、
前記第2の表示演出は、大当たり遊技中において、前記複数の楽曲情報を前記第1の表示手段に表示し、その後、前記複数の楽曲情報のうち、遊技者により前記操作手段の操作に基づいて選択された楽曲情報を前記第2の表示手段に表示する、
ことを特徴とする遊技機。」とあったものを、

「 複数種類の表示演出を実行可能な表示手段を備える遊技機であって、
遊技者の操作を受け付けることが可能な操作手段を備え、
前記表示手段は、第1の表示手段と、前記第1の表示手段とは異なる表示手段であって可動式の第2の表示手段とを備え、
前記第1の表示手段と前記第2の表示手段とは、前記第1の表示手段に対して前記第2の表示手段が第1の位置に配置される第1の態様となる場合と、前記第1の表示手段に対して前記第2の表示手段が前記第1の位置とは異なる第2の位置に配置される第2の態様となる場合とがあり、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第1の表示演出をおこなう場合があり、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第2の表示演出をおこなう場合があり、
前記第1の表示演出は、リーチ演出であり、
前記第2の表示演出は、複数の楽曲情報を表示する楽曲表示演出であり、
前記第1の表示演出は、前記第1の表示手段と前記第2の表示手段とを用いておこなわれる場合があり、
前記第2の表示演出は、前記第1の表示手段と前記第2の表示手段とを用いておこなわれる場合があり、
前記第2の表示演出は、大当たり遊技中において、前記第1の表示手段と前記第2の表示手段を可動させることで前記第1の態様から前記第2の態様に変化させて、前記複数の楽曲情報を前記第1の表示手段に表示し、その後、前記複数の楽曲情報のうち、遊技者により前記操作手段の操作に基づいて選択された楽曲情報を前記第2の表示手段に表示する、
ことを特徴とする遊技機。」とする補正を含むものである(下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次の補正事項からなる。
(ア)本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記第1の表示手段とは異なる」「第2の表示手段」に関して、「表示手段であって可動式の」を付加する補正。

(イ)本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「第1の表示手段」及び「第2の表示手段」に関して、「前記第1の表示手段と前記第2の表示手段とは、前記第1の表示手段に対して前記第2の表示手段が第1の位置に配置される第1の態様となる場合と、前記第1の表示手段に対して前記第2の表示手段が前記第1の位置とは異なる第2の位置に配置される第2の態様となる場合とがあり、」を付加する補正。

(ウ)本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「大当たり遊技中にお」ける「第2の表示演出」に関して、「前記第1の表示手段と前記第2の表示手段を可動させることで前記第1の態様から前記第2の態様に変化させて、」を付加する補正。

2 本件補正の目的、新規事項追加の有無
(1)(ア)上記1(2)(ア)の補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)の【0180】、図46?48等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「前記第1の表示手段とは異なる第2の表示手段」が、「表示手段であって可動式の」ものに限定するものである。

(イ)上記1(2)(イ)の補正は、当初明細書等の【0180】、図46?48等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「第1の表示手段」及び「第2の表示手段」が、「前記第1の表示手段と前記第2の表示手段とは、前記第1の表示手段に対して前記第2の表示手段が第1の位置に配置される第1の態様となる場合と、前記第1の表示手段に対して前記第2の表示手段が前記第1の位置とは異なる第2の位置に配置される第2の態様となる場合とがあ」るものに限定するものである。

(ウ)上記1(2)(ウ)の補正は、当初明細書等の【0362】、【0629】、【0632】、【0708】、図113?116等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「大当たり遊技中にお」ける「第2の表示演出」が、「前記第1の表示手段と前記第2の表示手段を可動させることで前記第1の態様から前記第2の態様に変化させ」るものに限定するものである。

(2)以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。また、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである。なお、記号AないしLは、分説するため合議体が付した。

「A 複数種類の表示演出を実行可能な表示手段を備える遊技機であって、
B 遊技者の操作を受け付けることが可能な操作手段を備え、
C 前記表示手段は、第1の表示手段と、前記第1の表示手段とは異なる表示手段であって可動式の第2の表示手段とを備え、
D 前記第1の表示手段と前記第2の表示手段とは、前記第1の表示手段に対して前記第2の表示手段が第1の位置に配置される第1の態様となる場合と、前記第1の表示手段に対して前記第2の表示手段が前記第1の位置とは異なる第2の位置に配置される第2の態様となる場合とがあり、
E 前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第1の表示演出をおこなう場合があり、
F 前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第2の表示演出をおこなう場合があり、
G 前記第1の表示演出は、リーチ演出であり、
H 前記第2の表示演出は、複数の楽曲情報を表示する楽曲表示演出であり、
I 前記第1の表示演出は、前記第1の表示手段と前記第2の表示手段とを用いておこなわれる場合があり、
J 前記第2の表示演出は、前記第1の表示手段と前記第2の表示手段とを用いておこなわれる場合があり、
K 前記第2の表示演出は、大当たり遊技中において、前記第1の表示手段と前記第2の表示手段を可動させることで前記第1の態様から前記第2の態様に変化させて、前記複数の楽曲情報を前記第1の表示手段に表示し、その後、前記複数の楽曲情報のうち、遊技者により前記操作手段の操作に基づいて選択された楽曲情報を前記第2の表示手段に表示する、
L ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用例
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-16012号公報(平成27年1月29日出願公開、以下「引用例1」という。)には、「遊技機」に関し、次の事項が図とともに記載されている(下線は引用発明の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様。)。
(ア)
「【0020】
図1に示すように、ガラス扉枠102の下方に取り付けられた下扉枠103の前面上部には、遊技球(遊技媒体)を貯留可能な遊技球貯留部としての打球供給皿(上皿とも言う)3が上面に形成された上皿部3aが、パチンコ機1の前方(パチンコ機1の前面方向)に向けて突設されている。また、この上皿部3aの下方には、後述する操作レバー600が揺動自在に軸支されるとともに、上面に余剰球貯留皿(下皿とも言う)4が形成された下皿部4a(突出部)が、パチンコ機1の前方(パチンコ機1の前面方向)に向けて突設されている。その右側方には、遊技球を発射する打球操作ハンドル(操作ノブ)5が設けられている。
【0021】
操作レバー600は、遊技者が把持する操作桿を含み、操作桿の所定位置(例えば遊技者が操作桿を把持したときに操作手の人差し指が掛かる位置など)には、トリガースイッチが内設されたトリガボタンが設けられている。トリガボタンは、遊技者が操作レバー600の操作桿を操作手(例えば左手など)で把持した状態において、所定の操作指(例えば人差し指など)で押引操作することなどにより所定の指示操作ができるように構成されていればよい。操作レバー600の下部における下皿4aの本体内部などには、操作桿に対する傾倒操作を検知するために四方向に配置されたレバースイッチ510a?510dが設けられていればよい。
【0022】
また、上皿3を形成する部材には、例えば上皿3本体の上面における手前側の所定位置(例えば操作レバー600の上方)などに、遊技者が押下操作などにより所定の指示操作を可能な操作ボタン516が設けられている。操作ボタン516は、遊技者からの押下操作などによる所定の指示操作を、機械的、電気的、あるいは、電磁的に、検出できるように構成されていればよい。操作ボタン516の設置位置における上皿の本体内部などには、操作ボタン516に対してなされた遊技者の操作行為を検知するボタンスイッチ516a(図2を参照)が設けられていればよい。」

(イ)
「【0025】
遊技領域7の中央付近には、それぞれが演出用の演出図柄(飾り図柄ともいう)を変動表示(可変表示ともいう)する複数の変動表示領域を含む第1演出表示装置9と、この第1演出表示装置9と同一形状の第2演出表示装置10、第1演出表示装置9及び第2演出表示装置10よりも小型な第3演出表示装置11が、透明な遊技盤6を透して目視できるように、該遊技盤6の背面に設けられている(図24参照)。第1演出表示装置9は、後述するVDP262から出力された信号に応じて画像を表示する第1液晶パネル9’と、該液晶パネル9’の周囲を囲繞するように配置された周囲LED9’’と、を備えている。同様に、第2演出表示装置10は、後述するVDP262から出力された信号に応じて画像を表示する第2液晶パネル10’と、該液晶パネル10’の周囲を囲繞するように配置された周囲LED10’’と、を備え、第3演出表示装置11は、後述するVDP262から出力された信号に応じて画像を表示する第3液晶パネル11’と、該液晶パネル11’の周囲を囲繞するように配置された周囲LED11’’と、を備えている(図3参照)。これら周囲LED9’’,10’’,11’’は、液晶パネル9’,10’,11’を枠上に囲む枠部9a,10a,11a(図21(A)参照)を形成している。
・・・
【0028】
また、本実施例では、第3演出表示装置11が第1演出表示装置9,第2演出表示装置10よりも下方位置に配置されているとともに、第1演出表示装置9、第2演出表示装置10及び第3演出表示装置11は前後方向においては同一位置(同一平面)に配置されている(図24(A)参照)。このように本実施例では、第1演出表示装置9、第2演出表示装置10及び第3演出表示装置11を同一平面上に配置した形態を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第3演出表示装置11が第1演出表示装置9や第2演出表示装置10と一部が重なるように移動可能に設け、これら重なった第3演出表示装置11と第1演出表示装置9や第2演出表示装置10とが1つの表示領域を形成するようにしても良い。
【0029】
更に、本実施例では、第1演出表示装置9の背面側には該第1演出表示装置9を上下方向と左右方向に移動させるため及び回転させるための第1移動ユニット59a、第2演出表示装置10の背面側には該第2演出表示装置10を上下方向と左右方向に移動させるため及び回転させるための第2移動ユニット59b、第3演出表示装置11の背面側には該第3演出表示装置11を上下方向と左右方向に移動させるため及び回転させるための第3移動ユニット59cがそれぞれ設けられている。そして、これら移動ユニット59a,59b,59cを駆動させることで、第1?第3演出表示装置9,10,11を、図22(A)に示す初期位置の状態から、第1?第3演出表示装置9,10,11の全てが離間している離間位置(図23の配置パターンA)や、第1?第3演出表示装置9,10,11のうちの少なくとも2つが近接している状態(図23の配置パターンB?E)に、配置位置を変更できるようになっている。つまり、第1?第3演出表示装置9,10,11のうちの少なくとも2つを、離間した位置と近接した位置とに配置位置を切り替えることができるようになっている。
・・・
【0031】
第1?第3演出表示装置9,10,11は、通常時は第1演出表示装置9と第2演出表示装置10が左右に隣接し、且つ第3演出表示装置11が第1演出表示装置9と第2演出表示装置10の下方に位置した状態を初期位置として配置されている(図1及び図21(A)参照)。また、図21(A)に示すように、初期位置に配置されている第1演出表示装置9の下部には、第1始動口15aを遊技球が通過(進入)することによる始動入賞に基づいて発生した保留記憶数を表示する第1保留記憶表示エリアH1が表示されている。」

(ウ)
「【0173】
また、本実施例の第1?第3演出表示装置9,10,11は、それぞれ個別の画像データを表示できるとともに、それぞれの第1?第3演出表示装置9,10,11に表示される画像中のキャラクタ等が連携する連携画像データを表示できる。尚、図26の紙面左側は、第1?第3演出表示装置9,10,11が互いに近接配置される配置パターンDにあるときの第1?第3演出表示装置9,10,11の表示態様を示し、図26の紙面右側は、第1?第3演出表示装置9,10,11が互いに近接配置される配置パターンD(図23参照)にあるときのフレームバッファ領域の描画態様を示している。
・・・
【0177】
また、第1?第3演出表示装置9,10,11に表示される連携画像データの例としては、第1?第3演出表示装置9,10,11の少なくともいずれか2つに亘って描画される1つの画像であってもよいし、第1?第3演出表示装置9,10,11の少なくともいずれか2つに亘って描画されるキャラクタ(エフェクト映像)等でもよいし、第1?第3演出表示装置9,10,11の少なくともいずれか2つの間でキャラクタが移動する動画であっても良い。
【0178】
また、連携画像データは、予告演出におけるカウントダウンに関する画像であっても良いし、操作予告演出における期待度が異なるキャラクタ表示等の画像であっても良い。また、これら予告演出ではなく、予告に関係しない画像、たとえば、非稼動状態にあるときに実行されるデモ演出の画像や、遊技方法の説明画像であっても良いし、近年において提案されている携帯電話連動型の遊技機であれば、これら携帯電話に記憶されたデータや携帯電話を介してサーバに記憶されたデータを用いた連動遊技に関する説明画像であっても良いし、これら連動遊技において遊技者が獲得したレベルや称号等の画像であっても良い。」

(エ)
「【0267】
また、予告パターンE(配置パターンE)は、第1演出表示装置9が正面視で時計回り方向に90度回転された状態で配置され、第2演出表示装置10が正面視で時計回り方向に90度回転された状態で第1演出表示装置9に対して下方から近接配置され、第3演出表示装置11が第2演出表示装置10に対して下方から近接配置された状態で、第2演出表示装置10、第3演出表示装置11に亘って連続する画像が表示される演出である。」

(オ)
「【0276】
図21(C)に示すように、予告パターンA(配置パターンA)に応じた位置に第1?第3演出表示装置9,10,11が移動した後は、第1?第3演出表示装置9,10,11の全ての周囲LED9’’,10’’,11’’が点灯することで、周囲LED9’’,10’’,11’’がそれぞれ1つの枠を形成する。そして、第1演出表示装置9にキャラクタA、第2演出表示装置10にキャラクタB、第3演出表示装置11にキャラクタCがそれぞれ表示され、変動中予告演出またはスーパーリーチ演出の一部としてこれらキャラクタA?Cが表示されている第1?第3演出表示装置9,10,11においてそれぞれ異なる演出が実行される。」

(カ)
「【0305】
このように、本実施例では、第1?第3演出表示装置9,10,11を図23に示す各配置パターンに移動させる演出を、予告演出として実施する形態を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら第1?第3演出表示装置9,10,11を図23に示す各配置パターンに移動させる演出を、例えば、大当り遊技中や大当り終了時において実行される確変昇格演出や、始動入賞時における大当りとなるか否かの判定結果に基づいて、当該判定の対象となった始動入賞による変動表示が開始される前において実行される先読み予告演出等の、その他の演出において実行するようにしても良い。」

(キ)
「【0340】
次に、本実施例における第1?第3演出表示装置9,10,11の動きについて図28?図31に基づいて説明する。尚、図28?図29においては、変動表示中演出時の予告パターン(配置パターン)として予告パターンB(配置パターンB)が決定された場合を例に説明し、図30?図31においては、スーパーリーチ演出時の配置パターンとして配置パターンEが決定された場合を例に説明する。
・・・
【0349】
尚、変動中予告演出が実行されなかった場合は、図30(A)に示すように、第1?第3演出表示装置9,10,11が初期位置に配置されている状態において変動表示領域Vの「左」と「右」に同一の図柄が停止し、スーパーリーチ演出の実行タイミングとなると、図30(B)に示すように、周囲LED9’’,10’’,11’’の点滅点灯が開始され、遊技者に対して第1?第3演出表示装置9,10,11がいずれかの配置パターンに応じた位置に移動する旨が報知される。
【0350】
そして、周囲LED9’’,10’’,11’’の点滅点灯が終了すると、これら周囲LED9’’,10’’,11’’が全て消灯され、図30(C)に示すように、移動ユニット59a,59bを駆動することで第1?第2演出表示装置9,10を配置パターンE応じた位置に移動させる。
・・・
【0352】
また、本実施例では、第1?第3演出表示装置9,10,11が初期位置に配置されている状態において第1?第2演出表示装置9,10を移動させることで、第1?第3演出表示装置9?11を配置パターンEに応じた配置としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1?第3演出表示装置9,10,11が初期位置に配置されている状態において第1?第2演出表示装置9,10に加えて第3演出表示装置11を移動させることで、第1?第3演出表示装置9?11を配置パターンEに応じた配置としても良い。
【0353】
次いで第1?第2演出表示装置9,10が配置パターンEに応じた位置に移動すると、図30(D)に示すように、第1演出表示装置9の正面視で下部の周囲LED9’’が消灯する一方、第1演出表示装置9における他の周囲LED9’’が点灯する。更に、第2演出表示装置10の正面視で上部及び下部の周囲LED9’’が消灯する一方、第1演出表示装置9における他の周囲LED9’’が点灯する。そして、更に、第3演出表示装置11の正面視で上部の周囲LED11’’が消灯する一方、第3演出表示装置11における他の周囲LED11’’が点灯する。このため、第1?第3演出表示装置9,10,11においては、周囲LED9’’,10’’,11’’が1つの枠を形成するように点灯(枠状に点灯)する。
【0354】
そして、図30(E)に示すように、第1演出表示装置9にキャラクタA、第2演出表示装置10にキャラクタB、第3演出表示装置11にキャラクタCがそれぞれ表示され、スーパーリーチ演出の一部として、キャラクタA、キャラクタB、キャラクタCが3つの第1?第3演出表示装置9,10,11に亘って連携する演出(図29(A)ではキャラクタAとキャラクタBとキャラクタCとが戦うバトル演出)が実行される。
【0355】
次いで、図31(A)に示すように、スーパーリーチ演出において大当りまたはハズレとなった後は、図31(B)及び図31(C)に示すように、周囲LED9’’,10’’,11’’を全て消灯した後、移動ユニット59a,59bを駆動することで、第1?第2演出表示装置9,10を配置パターンEに応じた位置から初期位置に移動させる。具体的には、第1演出表示装置9及び第2演出表示装置10を正面視で反時計回りに回転させるとともに、第1演出表示装置9を正面視で下方に所定距離移動させ、第2演出表示装置10を正面視で上方に所定距離移動させる。このとき、移動ユニット59cは駆動されないため、第3演出表示装置11は初期位置における位置を維持する(移動せず)。以後は、図28(A)に示すように周囲LED9’’,10’’,11’’を枠状に点灯させた後、変動表示結果が大当りであれば大当り遊技に移行し、変動表示結果がハズレであれば再び保留記憶に基づいて変動表示を実行する。」

(ク)
「【0367】
例えば、前記実施例では、遊技機としてパチンコ機1を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、遊技媒体としてメダルを使用して遊技を行うスロットマシンに本発明を適用してもよい。尚、遊技機をスロットマシンとする場合にあっては、例えば、内部抽選にてボーナスフラグがセットされている場合において、ボーナスフラグがセットされていることを示唆する予告演出として確演出表示装置9を初期位置から予告パターンに応じた位置に移動させるようにすれば良い。」

(ケ)
「【図22】


(コ)
「【図23】



(サ)
「【図29】



(シ)
「【図30】



(ス)
「【図31】



(セ)認定事項ア
図23には、第1?第3演出表示装置9,10,11が、配置パターンA?配置パターンEに配置されることが図示されている。

(ソ)上記(ア)ないし(セ)からみて、引用例1には、実施形態として、次の発明が記載されている。なお、aないしlについては本願補正発明のAないしLに対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a、c、d 遊技領域7の中央付近に設けられた第1演出表示装置9と、この第1演出表示装置9と同一形状の第2演出表示装置10、第1演出表示装置9及び第2演出表示装置10よりも小型な第3演出表示装置11であって(【0025】)、第1演出表示装置9を上下方向と左右方向に移動させるため及び回転させるための第1移動ユニット59a、第2演出表示装置10を上下方向と左右方向に移動させるため及び回転させるための第2移動ユニット59b、第3演出表示装置11を上下方向と左右方向に移動させるため及び回転させるための第3移動ユニット59cがそれぞれ設けられ、これら移動ユニット59a,59b,59cを駆動させることで、第1?第3演出表示装置9,10,11を、初期位置の状態から、第1?第3演出表示装置9,10,11の全てが離間している配置パターンAや、第1?第3演出表示装置9,10,11のうちの少なくとも2つが近接している配置パターンB?Eに、配置位置を変更できるようになっている、第1演出表示装置9、第2演出表示装置10及び第3演出表示装置11が設けられたパチンコ機1において(【0029】、【0367】、図22、図23)、
b 遊技者が把持する操作桿及び操作桿の所定位置に設けられ、遊技者が押引操作することにより所定の指示操作ができるように構成されたトリガボタンが設けられた操作レバー600(【0021】)、及び、遊技者が押下操作などにより所定の指示操作を可能な操作ボタン516が設けられ(【0022】)、
e、g、i 第1?第3演出表示装置9,10,11は、それぞれ個別の画像データを表示できるとともに、それぞれの第1?第3演出表示装置9,10,11に表示される画像中のキャラクタ等が連携する連携画像データを表示でき、連携画像データは、第1?第3演出表示装置9,10,11の少なくともいずれか2つに亘って描画される1つの画像であって、操作予告演出における期待度が異なるキャラクタ表示等の画像であっても良く、デモ演出の画像や、遊技方法の説明画像など予告に関係しない画像であっても良く(【0173】、【0177】?【0178】)、
変動中予告演出またはスーパーリーチ演出の一部としてキャラクタA?Cが表示されている第1?第3演出表示装置9,10,11においてそれぞれ異なる演出が実行され(【0276】、図29、図30)、
スーパーリーチ演出時の配置パターンとして配置パターンEが決定された場合(【0340】)、スーパーリーチ演出の実行タイミングとなると(【0349】)、第1演出表示装置9と第2演出表示装置10が左右に隣接し、且つ第3演出表示装置11が第1演出表示装置9と第2演出表示装置10の下方に位置した(【0031】)初期位置に配置されている状態において、第1?第2演出表示装置9,10に加えて第3演出表示装置11を移動させることで、第1?第3演出表示装置9?11を、第1演出表示装置9が正面視で時計回り方向に90度回転された状態で配置され、第2演出表示装置10が正面視で時計回り方向に90度回転された状態で第1演出表示装置9に対して下方から近接配置され、第3演出表示装置11が第2演出表示装置10に対して下方から近接配置された配置パターンEに応じた配置とし(【0267】、【0352】、図30)、第1演出表示装置9にキャラクタA、第2演出表示装置10にキャラクタB、第3演出表示装置11にキャラクタCがそれぞれ表示され、スーパーリーチ演出の一部として、キャラクタA、キャラクタB、キャラクタCが3つの第1?第3演出表示装置9,10,11に亘って連携する演出が実行され(【0354】、図30)、
f、j、k’ スーパーリーチ演出において大当りとなった後、第1?第2演出表示装置9,10を配置パターンEに応じた位置から初期位置に移動させて大当り遊技に移行し(【0355】、図31)、第1?第3演出表示装置9,10,11を配置パターンA?配置パターンEの各配置パターンに移動させる演出を、大当り遊技中において実行される確変昇格演出において実行する(【0029】、【0305】、認定事項(ア))、
l パチンコ機1(【0367】)。」(以下「引用発明」という。)

イ 引用例2
原査定の拒絶の理由に引用文献5として引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-73731号公報(平成27年4月10日出願公開、以下「引用例2」という。)には、「遊技機」に関し、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機などの遊技機に関する。」

(イ)
「【0006】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、遊技興趣の低下を防止することができる遊技機の提供を目的とする。」

(ウ)
「【0018】 以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態におけるパチンコ遊技機の正面図であり、主要部材の配置レイアウトを示す。パチンコ遊技機(遊技機)1は、大別して、遊技盤面を構成する遊技盤(ゲージ盤)2と、遊技盤2を支持固定する遊技機用枠(台枠)3とから構成されている。遊技盤2には、ガイドレールによって囲まれた、ほぼ円形状の遊技領域が形成されている。この遊技領域には、遊技媒体としての遊技球が、所定の打球発射装置から発射されて打ち込まれる。」

(エ)
「【0326】
次に、演出制御基板12における動作を説明する。演出制御基板12では、電源基板10から電源電圧の供給を受けると、演出制御用マイクロコンピュータ120が起動して、CPU120Aによって図33のフローチャートに示すような演出制御メイン処理が実行される。
・・・
【0330】
ステップS74にてコマンド解析処理を実行した後には、演出制御プロセス処理を実行する(ステップS75)。ステップS75の演出制御プロセス処理では、例えば画像表示装置5の画面上における演出画像の表示動作、スピーカ8L、8Rからの音声出力動作、遊技効果ランプ9及び装飾用LEDといった発光体における点灯動作といった、各種の演出装置を用いた演出動作の制御内容について、主基板11から送信された演出制御コマンド等に応じた判定や決定、設定などが行われる。
・・・
【0332】
図34は、演出制御プロセス処理として、図33のステップS75にて実行される処理の一例を示すフローチャートである。この演出制御プロセス処理において、演出制御用マイクロコンピュータ120のCPU120Aは、例えば演出制御用RAMの所定領域に設けられた演出プロセスフラグの値に応じて、以下のようなステップS180?S187の処理のいずれかを選択して実行する。
・・・
【0335】
ステップS182の可変表示中演出処理は、演出プロセスフラグの値が“2”のときに実行される処理である。この可変表示中演出処理において、CPU120Aは、所定の演出制御プロセスタイマにおけるタイマ値に対応して、演出制御パターンから表示制御データ、音声制御データ、ランプ制御データ、演出用模型制御データといった演出制御実行データを読み出す。このとき読み出された演出制御実行データに従って、例えばVDP121へと伝送する表示制御信号の決定や、音声制御基板13やランプ制御基板14へと伝送する各種指令の決定などが行われる。これらの決定結果に基づく各種信号の出力により、画像表示装置5やスピーカ8L、8R、遊技効果ランプ9や装飾用LEDといった各種の演出装置を用いて、特図ゲームの実行中における各種の演出制御が行われる。そして、演出制御パターンから終了コードが読み出されると、所定の表示制御信号をVDP121に対して送信することなどにより、飾り図柄の可変表示結果となる確定飾り図柄を表示させたり、特図ゲームの終了に対応した演出画像を表示させたりする。
【0336】
ステップS183の特図当り待ち処理は、演出プロセスフラグの値が“3”のときに実行される処理である。この特図当り待ち処理において、CPU120Aは、主基板11から送信された大当り開始指定コマンドや小当り開始指定コマンドの受信があったか否かを判定する。大当り開始指定コマンドを受信したきには、演出プロセスフラグの値を大当り中演出処理に対応した値である“6”に更新する。これに対して、小当り開始指定コマンドを受信したときには、演出プロセスフラグの値を小当り中演出処理に対応した値である“4”に更新する。また、大当り開始指定コマンドや小当り開始指定コマンドを受信せずに、演出制御プロセスタイマがタイムアウトしたときには、特図ゲームにおける特図表示結果が「ハズレ」であったと判断して、演出プロセスフラグの値を初期値である“0”に更新する。また、特図当り待ち処理では、連荘大当りの回数をカウントする処理が行われるとともに、演出画像を表示することによって遊技者に遊技球を右遊技領域2Bに発射すべきことを報知する処理と、大当り遊技状態時に出力する楽曲を選曲表示する処理が行われる。」

(オ)
「【0351】
ステップS610の処理を実行した後は、遊技者による選曲操作が行われたか、または、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS611)。遊技者による選曲操作が行われたか否かは、操作ボタン30の操作を検知したことにより判定すればよい。また、所定期間経過したか否かは、操作有効期間が経過したか否かをタイマにより判定すればよい。遊技者による選曲操作が行われず、かつ、所定時間経過していない場合には(ステップS611;No)、遊技者による選曲操作が行われるか、または、所定時間が経過するまで待機する(ステップS611の処理を繰り返す)。遊技者による選曲操作が行われるか、または、所定時間が経過した場合には(ステップS611;Yes)、大当り遊技状態中の演出として出力する楽曲を設定する(ステップS612)。ステップS612の処理では、例えば、遊技者による選曲操作が行われた場合には、選曲された楽曲を、大当り遊技状態中に出力する楽曲として設定する。一方、遊技者による選曲操作が行われず所定時間経過した場合には、例えば、楽曲Aを大当り遊技状態中に出力する楽曲として設定する。なお、遊技者による選曲操作が行われず所定時間経過した場合、追加楽曲記憶一覧に記憶されている「未追加」に対応する楽曲以外の楽曲からランダムに選択して大当り遊技状態中に出力する楽曲として設定してもよい。」

(カ)
「【0357】
このように、連荘大当りとなった場合、上記の特図当り待ち処理が繰り返し行われることによって、選択可能な楽曲が追加されるとともに、選曲表示が行われ、かつ、右打ち表示が行われる。
【0358】
続いて、楽曲が追加され、選曲表示や右打ち表示が行われる場合の主な演出動作例を、図38および図39を参照して説明する。まず、図38(a)に示すように大当り(確変)となると、図35のステップS610の処理により、図38(b)に示すように、選曲表示と右打ち表示が行われる。図38(b)に示す例では、1回目の大当りの例を示しており、すなわち、連荘カウント値が「1」である場合の例を示しており、この場合には、追加楽曲記憶一覧に初期時から追加されている楽曲Aが選択可能に表示されることとなる(それ以外の楽曲は、図示するように「?????」として選択不可能に表示される)。そして、遊技者の操作により楽曲Aが選択されると、図35のステップS612の処理により楽曲Aが設定され、図38(c)および(d)に示すように、図34のステップS186により楽曲Aが出力される。そして、図34のステップS187の処理により、図38(e)に示すように、ラウンド大当り状態の終了となる。ここまでが、1回の大当りである。なお、右打ち表示については、図34のステップS186の処理にて継続して表示される。この場合、図示するように、ラウンド大当り状態(すなわち、特別可変入賞球装置7が第1状態の場合)における右打ち表示は、図38(b)に示す態様(図39(b)も同様)(すなわち、特別可変入賞球装置7が第1状態となる前の態様)と異なる態様(図38(b)や図39(b)よりも小さな態様)であればよい。これによれば、遊技媒体の打込み先を明確に示しつつ実行中の演出の妨げとなることを防止することができる。
【0359】
その後、図38(f)に示すように再度飾り図柄の変動が開始され、図38(g)に示すように、再度大当り(2回目の大当り)となると(図38(g)に示す例では「非確変大当り」)、図35のステップS605の処理により、連荘カウント値が「2」となり(連荘大当り開始)、図36のステップS633の処理により前回追加曲を確認し、図38(h)に示すように、楽曲Dが追加される。図示する例では、過去に連荘大当りとなっていない場合の例を示しているので、前回追加曲には何も記憶されておらず、ランダムに決定された追加楽曲が選択可能に追加されることとなる。そして、遊技者の操作により楽曲Dが選択されると、図35のステップS612の処理により楽曲Dが設定され、図34のステップS186により楽曲Dが出力される。また、図35のステップS613にて、確変大当りでないと判定され(連荘終了条件が成立して)、ステップS614の処理にて連荘カウント値がクリアされ、ステップS615の処理にて楽曲Dが前回追加曲として記憶されることとなる。」

(キ)
「【図38】


(ク)認定事項イ
上記【0358】には、「選曲表示」において、「楽曲Aが選択可能に表示され」、「遊技者の操作により楽曲Aが選択されると、」「図38(c)および(d)に示すように」、「楽曲Aが出力される」ことが記載され、上記【0359】には、「2回目の大当り」「となると」、「図38(h)に示すように、楽曲Dが追加される」ことが記載され、図38(h)には、画像表示装置5の左側に、楽曲A及び楽曲Dが表示されることが図示され、図38(d)には、楽曲Aが右下に表示されることが図示されるとともに、「(h)を経由した場合には楽曲D」と記載されていることから、引用例2には、「2回目の大当りとなると、選曲表示において、画像表示装置5の左側に楽曲A及び楽曲Dが選択可能に表示され、遊技者の操作により楽曲Dが選択されると、楽曲Dが右下に表示されること」が開示されていると認められる。

(ケ)上記(ア)ないし(ク)からみて、引用例2には、次の事項が記載されている。なお、引用箇所の段落番号等を併記した。
「パチンコ遊技機1において(【0018】)、
演出制御用マイクロコンピュータ120のCPU120Aは、演出制御プロセス処理のステップS183の特図当り待ち処理において、画像表示装置5に演出画像を表示することによって遊技者に遊技球を右遊技領域2Bに発射すべきことを報知する処理と、大当り遊技状態時に出力する楽曲を選曲表示する処理を行い(【0330】、【0332】、【0335】?【0336】)、
2回目の大当りとなると、選曲表示において、画像表示装置5の左側に楽曲A及び楽曲Dが選択可能に表示され、遊技者の操作ボタン30の操作により楽曲Dが選択されると、楽曲Dが画像表示装置5の右下に表示され、楽曲Dが出力されること(【0351】、【0358】?【0359】、図38、認定事項(イ))。」(以下「引用例2の記載事項」という。)

(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(l)は、本願補正発明のAないしLに対応させている。

(a)引用発明の構成e、g、i及びf、j、k’の「スーパーリーチ演出」と「大当り遊技中」「において実行される確変昇格演出」は、それぞれ異なる演出であって、どちらも、「第1?第3演出表示装置9?11」を「移動」させる演出であることから、本願補正発明の構成Aの「複数種類の表示演出」に相当する。
よって、上記構成e、g、i及びf、j、k’も踏まえると、引用発明の、「第1?第3演出表示装置9?11」を「移動」させる演出である、「スーパーリーチ演出」と「大当り遊技中」「において実行される確変昇格演出」を実行する「第1?第3演出表示装置9,10,11」は、本願補正発明の構成Aの「複数種類の表示演出を実行可能な表示手段」に相当する。

(b)引用発明の「操作レバー600」が、「遊技者が」「押引操作などすることにより所定の指示操作ができるように構成され」た「トリガボタン」を備えることは、操作レバー600が、遊技者の操作を受け付けることが可能であるといえる。また、引用発明の「操作ボタン516」が、「遊技者が押下操作などにより所定の指示操作を可能」であることは、同様に、操作ボタン516が、遊技者の操作を受け付けることが可能であるといえる。
よって、引用発明の「遊技者が」「押引操作などすることにより所定の指示操作ができるように構成され」た「トリガボタン」を備えた「操作レバー600」及び「遊技者が押下操作などにより所定の指示操作を可能」な「操作ボタン516」は、本願補正発明の構成Bの「遊技者の操作を受け付けることが可能な操作手段」に相当する。

(c)引用発明の「第1演出表示装置9」及び「第2演出表示装置10」は、それぞれの表示装置を移動させるための「第1移動ユニット59a」及び「第2移動ユニット59b」を備えていることから、第1演出表示装置9及び第2演出表示装置10は、可動式であるといえる。
すると、引用発明の「第1演出表示装置9」及び「第2演出表示装置10」のいずれか一方及び他方は、それぞれ、本願補正発明の構成Cの「第1の表示手段」及び「第1の表示手段とは異なる」「可動式の」「第2の表示手段」に相当する。

(d)引用発明の構成e、g、iの「第1演出表示装置9と第2演出表示装置10が左右に隣接」する「初期位置」に配置されることは、本願補正発明の構成Dの「前記第1の表示手段に対して前記第2の表示手段が第1の位置に配置される第1の態様となる場合」に相当し、同「第1演出表示装置9が正面視で時計回り方向に90度回転された状態で配置され、第2演出表示装置10が正面視で時計回り方向に90度回転された状態で第1演出表示装置9に対して下方から近接配置され」る「配置パターンE」に配置されることは、図23も合わせ見ると、第1及び第2演出表示装置9?10の位置が、それぞれ初期位置と異なる位置に配置されているから、本願補正発明の構成Dの「前記第1の表示手段に対して前記第2の表示手段が前記第1の位置とは異なる第2の位置に配置される第2の態様となる場合」に相当する。

(e)(f)(g)引用発明の「スーパーリーチ演出」は、本願補正発明の構成E及びGの「リーチ演出」である「第1の表示演出」に相当する。
また、引用発明の「大当り遊技中」「において実行される確変昇格演出」は、上記(a)で説示のとおりスーパーリーチ演出とは異なる表示演出であるから、本願補正発明の構成Fの「第2の表示演出」に相当する。
すると、引用発明の「スーパーリーチ演出」又は「大当り遊技中」「において実行される確変昇格演出」が実行されることは、本願発明の構成E、F、Gに相当する。

(i)引用発明の「スーパーリーチ演出」において、「第1?第3演出表示装置9?11を」「初期位置」から「配置パターンEに応じた配置とし」、「キャラクタA、キャラクタB、キャラクタCが3つの第1?第3演出表示装置9,10,11に亘って連携する」ことは、第1及び第2演出表示装置9?10を用いてスーパーリーチ演出を行っているといえるから、上記(c)及び(e)(g)の説示内容を踏まえると、本願補正発明の構成Iの「前記第1の表示演出」が、「前記第1の表示手段と前記第2の表示手段とを用いておこなわれる」ことに相当する。

(j)引用発明の「大当り遊技中」「において実行される確変昇格演出」において、「第1?第3演出表示装置9?11を」「初期位置」から「第1?第3演出表示装置9,10,11を配置パターンA?配置パターンEの各配置パターンに移動させる演出」を行うことは、配置パターンA?配置パターンEの各配置パターンのいずれかの配置パターンに移動した第1及び第2演出表示装置9?10を用いて、大当り遊技中において実行される確変昇格演出を行っているといえるから、上記(c)及び(f)の説示内容を踏まえると、本願補正発明の構成Jの「前記第2の表示演出」が、「前記第1の表示手段と前記第2の表示手段とを用いておこなわれる」ことに相当する。

(k’) 引用発明において、「配置パターンE」の「配置パターンに移動させる」ことは、上記(c)及び(d)で説示のとおり、引用発明において、第1及び第2演出表示装置9?10が、「初期位置」から「表示パターンE」に移動しているから、第1及び第2演出表示装置9?10を可動させているといえる。
よって、上記(c)、(d)及び(f)の説示内容を踏まえると、引用発明の、「大当り遊技中」「において実行される確変昇格演出」において、「第1?第2演出表示装置9,10」が「初期位置」から「表示パターンE」に移動することは、本願補正発明の構成Kと、「前記第2の表示演出は、大当たり遊技中において、前記第1の表示手段と前記第2の表示手段を可動させることで前記第1の態様から前記第2の態様に変化させ」る点で共通する。

(a)(l)引用発明の「パチンコ機1」は、本願補正発明の構成A及びLの「遊技機」に相当する。

イ したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「A 複数種類の表示演出を実行可能な表示手段を備える遊技機であって、
B 遊技者の操作を受け付けることが可能な操作手段を備え、
C 前記表示手段は、第1の表示手段と、前記第1の表示手段とは異なる表示手段であって可動式の第2の表示手段とを備え、
D 前記第1の表示手段と前記第2の表示手段とは、前記第1の表示手段に対して前記第2の表示手段が第1の位置に配置される第1の態様となる場合と、前記第1の表示手段に対して前記第2の表示手段が前記第1の位置とは異なる第2の位置に配置される第2の態様となる場合とがあり、
E 前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第1の表示演出をおこなう場合があり、
F 前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第2の表示演出をおこなう場合があり、
G 前記第1の表示演出は、リーチ演出であり、
I 前記第1の表示演出は、前記第1の表示手段と前記第2の表示手段とを用いておこなわれる場合があり、
J 前記第2の表示演出は、前記第1の表示手段と前記第2の表示手段とを用いておこなわれる場合があり、
K’ 前記第2の表示演出は、大当たり遊技中において、前記第1の表示手段と前記第2の表示手段を可動させることで前記第1の態様から前記第2の態様に変化させる、
L ことを特徴とする遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点1(特定事項H)
「第2の表示演出」に関し、
本願補正発明では、「複数の楽曲情報を表示する楽曲表示演出」であるのに対し、
引用発明では、「大当り遊技中において実行される確変昇格演出」である点。

・相違点2(特定事項K)
「第2の表示演出」に関し、
本願補正発明では、「前記複数の楽曲情報を前記第1の表示手段に表示し、その後、前記複数の楽曲情報のうち、遊技者により前記操作手段の操作に基づいて選択された楽曲情報を前記第2の表示手段に表示する」のに対し、
引用発明では、そのような特定がない点。

(5)判断
ア 上記相違点1?2は、共に、第2の表示演出として複数の楽曲情報を表示する構成で関連しているので、まとめて検討する。

(ア)まず、本願補正発明の「前記第1の表示手段と前記第2の表示手段を可動させることで前記第1の態様から前記第2の態様に変化させて、前記複数の楽曲情報を前記第1の表示手段に表示し、その後、前記複数の楽曲情報のうち、遊技者により前記操作手段の操作に基づいて選択された楽曲情報を前記第2の表示手段に表示する」(特定事項K)が示す技術事項について検討する。
令和元年8月21日に提出された審判請求書及び平成31年4月8日に提出された意見書において、明細書の【0629】、図113?116が本願補正発明の上記特定事項の根拠として示されている。そして、図113?114、116には、複数の楽曲選択画像B5D及び遊技者により選択された楽曲画像B5Eが、第1画像表示装置7Aと第2画像表示装置7Bにまたがって表示されることが図示されている。
図113?114、116を参酌すれば、本願補正発明の上記特定事項は、図115に図示されるように複数の楽曲表示を第1の表示手段のみに表示し、その後、遊技者により選択された楽曲情報を第2の表示手段のみに表示させるなどと限定して解するべきではなく、図113?114、116に図示されるように、複数の楽曲情報及び遊技者により選択された楽曲情報が、2つの表示手段にまたがって表示することも、上記特定事項に含まれると解するべきである。

(イ)引用例2の記載事項の「画像表示装置5」、「選曲表示において」「画像表示装置5の左側に」「選択可能に表示され」る「楽曲A」及び「楽曲D」及び「遊技者の」「操作ボタン30の操作」「により」「選択され」、「画像表示装置5の右下に表示される」「楽曲D」は、本願補正発明の「表示装置」、「複数の楽曲情報」及び「遊技者により前記操作手段の操作に基づいて選択された楽曲情報」に相当する。

(ウ)遊技機において、大当たり遊技中に楽曲を出力することは、上記引用例2の記載事項にもみられるように技術常識である。当該技術常識を考慮すれば、引用例1に、大当たり遊技中に楽曲を出力することに関する記載はないものの、引用発明の遊技機においても、大当たり遊技中に楽曲を出力することは自明である。
そうすると、引用発明の、大当り遊技中において第1?第3演出表示装置9,10,11で実行される確変昇格演出と、上記引用例2に記載の大当り遊技は共に、大当たり遊技中に楽曲を出力することで共通する。
よって、引用発明の大当り遊技中で実行される確変昇格演出において、遊技者の興趣の低下を防止するために上記引用例2の記載事項を適用し、第1?第3演出表示装置9,10,11に複数の楽曲情報を選択可能に表示し、遊技者の操作レバー600または操作ボタン516の操作により楽曲が選択されると、当該選択された楽曲情報を第1?第3演出表示装置9,10,11に表示する事項を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(エ)そして、引用発明は、デモ演出の画像や遊技方法の説明画像といった、予告に関係しない画像に対しても、それぞれの第1?第3演出表示装置9,10,11の少なくともいずれか2つに亘って描画される1つの画像の連携画像データを表示するのであるから、引用発明に上記引用例2の記載事項を適用する際、引用例2の選曲表示画像についても、デモ演出の画像等と同様、それぞれの第1?第3演出表示装置9,10,11の少なくともいずれか2つに亘って描画される連携画像データとして表示することに、何らの困難性も見当たらない。また、連携画像データとして表示する際、どの演出表示装置にどのような情報を表示するかは、当業者が適宜決め得る設計的事項にすぎず、複数の楽曲からなる選曲表示画像及び遊技者の操作により選択された楽曲の画像を、共に第1?第3演出表示装置9,10,11のいずれか1つに表示することも、共に第1?第3演出表示装置9,10,11のいずれか2つにまたがって表示させることも、さらには、それぞれの画像を第1?第3演出表示装置9,10,11のいずれか2つに分けて表示することも、適宜なし得ることにすぎない。

(オ)上記(ア)?(エ)より、引用発明における、大当り遊技中の確変昇格演出において、上記引用例2の記載事項を適用する際、複数の楽曲からなる選曲表示画像及び遊技者の操作により選択された楽曲の画像を、共に第1?第3演出表示装置9,10,11のいずれか2つにまたがって表示させるか、または、それぞれの画像を第1?第3演出表示装置9,10,11のいずれか2つに分けて表示させる、すなわち、相違点1及び相違点2に係る本願補正発明の特定事項となすことは、上記引用例2の記載事項に基づいて当業者が容易になし得たことである。

(カ)仮に、本願発明の「前記第1の表示手段と前記第2の表示手段を可動させることで前記第1の態様から前記第2の態様に変化させて、前記複数の楽曲情報を前記第1の表示手段に表示し、その後、前記複数の楽曲情報のうち、遊技者により前記操作手段の操作に基づいて選択された楽曲情報を前記第2の表示手段に表示する」が示す技術事項を、図115に図示されるように、複数の楽曲表示を第1の表示手段のみに表示し、その後、遊技者により選択された楽曲情報を第2の表示手段のみに表示させると解したとしても、上記(エ)で説示のとおり、複数の楽曲からなる選曲表示画像及び遊技者の操作により選択された楽曲の画像を、第1?第3演出表示装置9,10,11のいずれか2つに分けて表示することは、適宜なし得ることにすぎず、当業者に想到容易である。

(キ)上記(カ)に加えてさらに、上記引用例2の記載事項は、楽曲A及び楽曲Dの選曲表示が表示装置の左側、遊技者の操作により選択された楽曲Dの表示が表示装置の右下というように、楽曲A及び楽曲Dの選曲表示の画像と、遊技者の操作により選択された楽曲Dの画像が、異なる表示位置に配置されているのであるから、引用例2の記載事項を引用発明に適用する際、楽曲A及び楽曲Dの選曲表示の画像と、遊技者の操作により選択された楽曲Dの画像を異なる表示位置に配置し、その際、楽曲A及び楽曲Dの選曲表示画像を、第1?第3演出表示装置9,10,11のうち、選択された楽曲Dの表示が表示される表示装置とは異なる方の表示装置に表示させることは、引用例2の記載事項に照らしてむしろ自然なことであり、当業者に想到容易である。

イ 本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び引用例2の記載事項の奏する効果から、予測することができた程度のものである。

(6)独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が、引用例1に記載された発明、引用例2の記載事項及び技術常識に基いて、容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年12月20日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、この出願の平成30年12月20に提出された手続補正書により補正された請求項1に係る発明が、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


引用文献1.特開2015-198682号公報
引用文献2.特開2015-16012号公報
引用文献3.特開2013-123602号公報
引用文献4.特開2017-108807号公報
引用文献5.特開2015-73731号公報
引用文献6.特開2017-108897号公報

本願の請求項1に係る発明は、引用文献1?引用文献3のいずれかに記載された発明に、引用文献4記載の技術思想若しくは引用文献5?引用文献6に見られる技術思想または周知技術を採用することにより当業者が容易に推考できたものである。

3 引用例
引用例1(引用文献2)及び引用例2(引用文献5)は、上記第2〔理由〕3(2)ア及びイに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明(上記第2〔理由〕1(1))は、本願補正発明(上記第2〔理由〕3(1))から、(ア)構成Cより、第2の表示手段が、「表示手段であって可動式の」との限定事項、(イ)構成Dの「前記第1の表示手段と前記第2の表示手段とは、前記第1の表示手段に対して前記第2の表示手段が第1の位置に配置される第1の態様となる場合と、前記第1の表示手段に対して前記第2の表示手段が前記第1の位置とは異なる第2の位置に配置される第2の態様となる場合とがあり、」との限定事項及び(ウ)構成Kより、前記第2の表示演出は、大当たり遊技中において、「前記第1の表示手段と前記第2の表示手段を可動させることで前記第1の態様から前記第2の態様に変化させて、」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記相違点1及び相違点2で相違するから、本願発明も上記第2〔理由〕3(5)ア及びイで示した理由と同様の理由により、当業者が、引用例1に記載された発明及び引用例2の記載事項及び技術常識に基いて、容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が、引用例1及び引用例2に記載された発明及び技術常識に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-04-28 
結審通知日 2020-05-12 
審決日 2020-06-02 
出願番号 特願2018-33974(P2018-33974)
審決分類 P 1 8・ 55- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 下村 輝秋  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 石井 哲
赤坂 祐樹
発明の名称 遊技機  
代理人 田邊 淳也  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ