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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1364730 |
審判番号 | 不服2019-3979 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-03-26 |
確定日 | 2020-08-18 |
事件の表示 | 特願2017- 42941「受動光学構成要素の製造方法および受動光学構成要素を備えるデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月21日出願公開、特開2017-167533、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、2012年(平成24年)7月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年(平成23年)7月19日 米国)を国際出願日とする出願である、特願2014-520486号の一部を、平成29年3月7日に新たな特許出願としたものであって、同年3月31日に手続補正がなされ、同年12月28日付けで拒絶理由が通知され、平成30年6月12日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年11月16日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、平成31年3月26日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。 その後、令和2年2月27日付けで拒絶理由が通知され、同年5月27日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされた。 2 本件発明 本願の請求項1?8に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明8」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される、次のとおりの発明である。 「 【請求項1】 少なくとも1つの受動光学構成要素と、少なくとも1つの能動光学構成要素とを備える光電子デバイスの製造方法であって、前記方法は、 a)少なくとも1つの阻止部と多数の透明素子とを備えるウェハを設けるステップを備え、 前記多数の透明素子の各々は、透明材料と呼ばれる、少なくとも特定のスペクトル範囲の光に対して透過性を有する1つ以上の材料でできており、前記少なくとも1つの阻止部は、非透明材料と呼ばれる、前記特定のスペクトル範囲の光に対して透過性をもたない1つ以上の材料でできており、 c)前記少なくとも1つの受動光学構成要素を備える多数の別々の受動光学構成要素を備える、光学ウェハと呼ばれるウェハを製造するステップを備え、 ステップc)は、 c1)前記多数の透明素子の各々の上に、複製加工を用いて他の光学構造と分離した少なくとも1つの光学構造を生成することによって、前記多数の別々の受動光学構成要素を生成するステップを備え、これにより、前記光学構造の各々は、前記多数の透明素子のそれぞれの1つに割り当てられ、前記光学構造の各々は、対応する前記透明素子と同じまたはより小さい横方向長さを有し、 A) 前記多数の透明素子の各々の垂直方向の広がりは、前記少なくとも1つの阻止部の垂直方向の広がりに等しく、前記少なくとも1つの阻止部は、前記透明素子とともに、固体板状形状を示し、前記透明素子の各々は、平坦な2つの対向する側面を有し、 および/または、 B) 前記透明素子の各々は、垂直方向に直交する2つの対向する平坦な面を有し、前記2つの対向する平坦な面は、前記垂直方向に沿って測定される前記少なくとも1つの阻止部の厚みに等しい距離に配置され、 前記透明素子および前記受動光学構成要素の各々は、それぞれ、前記能動光学構成要素の各々に割り当てられ、 第1の前記能動光学構成要素は発光要素であり、第2の前記能動光学構成要素は光検知要素である、方法。 【請求項2】 d)前記ウェハを製造するステップを備え、 ステップd)は、 d1)前記透明素子が位置することになる場所に開口を有する、前記非透明材料でできた前駆体ウェハを設けるステップと、 d2)前記開口を前記透明材料のうちの少なくとも1つで少なくとも部分的に充填するステップとを備える、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 e)前記光学ウェハと1以上のさらなるウェハとを備えるウェハ積層体を準備するステップと、 f)前記ウェハ積層体を切離すことによって、各々が前記多数の受動光学構成要素のうちの少なくとも1つを備える多数の別々のモジュールを得るステップとを備える、請求項1または請求項2に記載の方法。 【請求項4】 少なくとも2つの透明素子と少なくとも1つの阻止部とを備える光学部材を備える光電子デバイスであって、前記透明素子は、透明材料と呼ばれる、少なくとも特定のスペクトル範囲の光に対して透過性を有する1つ以上の材料でできており、前記少なくとも1つの阻止部は、非透明材料と呼ばれる、前記特定のスペクトル範囲の光に対して透過性をもたない1つ以上の材料でできており、前記透明素子は、少なくとも1つの受動光学構成要素と、少なくとも1つの能動光学構成要素とを備え、前記受動光学構成要素は、互いに分離しており、前記受動光学構成要素の各々は、 垂直方向に直交する2つの対向する平坦な面を有する前記透明素子と、 それぞれの前記透明素子に取り付けられる1以上の光学構造とを含み、前記光学構造の各々は、対応する前記透明素子と同じまたはより小さい横方向長さを有し、 前記光学構造は、互いに分離しており、 A’) 前記透明素子の垂直方向の広がりは、前記少なくとも1つの阻止部の垂直方向の広がりに等しく、前記少なくとも1つの阻止部は、前記透明素子とともに、固体板状形状を示し、 および/または、 B’) 前記2つの対向する平坦な面は、前記垂直方向に沿って測定される前記少なくとも1つの阻止部の厚みに等しい距離に配置され、 前記透明素子および前記受動光学構成要素の各々は、それぞれ、前記能動光学構成要素の各々に割り当てられ、 第1の前記能動光学構成要素は発光要素であり、第2の前記能動光学構成要素は光検知要素である、デバイス。 【請求項5】 前記少なくとも1つの阻止部、前記透明素子、および少なくとも1つの前記光学構造は、硬化性材料の硬化物でできている、請求項4に記載のデバイス。 【請求項6】 前記光学構造の各々は、レンズ素子を備える、請求項4または5に記載のデバイス。 【請求項7】 前記受動光学構成要素とスペーサ部材によって設けられる機械的止め具との間に明確に規定された垂直方向距離を設けるように構造化され構成されたスペーサ部材であるさらなる部材を備える、請求項4に記載のデバイス。 【請求項8】 前記デバイスは手持ち式の通信装置である、請求項4から7のいずれか1項に記載のデバイス。」 3 原査定の概要 原査定の拒絶理由の概要は、この出願の請求項1?27に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 なお、原査定の拒絶理由に引用された文献は以下のとおりであり、引用文献Aを主引用発明が記載された文献として引用し、その他の文献は周知技術を示す文献として引用した。 引用文献A:特開昭55-90909号公報(特に、第15頁右下欄第4行?第19頁左下欄第11行、第21図?第24図参照。) 引用文献B:国際公開第2011/055654号 (周知技術) 引用文献C:米国特許出願公開第2008/0290435号明細書 (周知技術) 引用文献D:特開2010-204631号公報 (周知技術) 引用文献E:特表2011-508253号公報 (周知技術) 引用文献F:特開2011-97294号公報 (周知技術) 引用文献G:特開2011-104811号公報 (周知技術) 引用文献H:国際公開第2010/055801号 (周知技術) 4 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。 (1)理由1(新規事項) 平成31年3月26日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 (2)理由2(実施可能要件) 本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 (3)理由3(サポート要件) 本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (4)理由4(明確性) 本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (5)理由5(進歩性) 本願の請求項1?10に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 なお、当審拒絶理由に引用された文献は以下のとおりであり、引用文献1を主引用発明が記載された文献として引用し、その他の文献は周知技術を示す文献として引用した。 引用文献1:特開2005-72662号公報 引用文献2:特開2005-37884号公報 (周知技術) 引用文献3:特開2009-86041号公報 (周知技術) 引用文献4:国際公開第2010/140419号 (周知技術) 引用文献5:特開平4-234702号公報 (周知技術) 引用文献6:特開昭55-90909号公報 (引用文献A・周知技術) 引用文献7:特開2011-90263号公報 (周知技術) 引用文献8:特開2011-84060号公報 (周知技術) 引用文献9:米国特許出願公開第2008/0290435号明細書 (引用文献C・周知技術) 引用文献10:特開2004-227940号公報 (周知技術) 5 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明 (1)引用文献A ア 引用文献Aの記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張の日前の昭和55年7月10日に頒布された刊行物である特開昭55-90909号公報(以下、「引用文献A」という。)には、図面とともに、以下の記載事項がある。なお、合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。 (ア)「2.特許請求の範囲 (1)所定方向にほぼ一定の間隔で配列された遮光用膜の間の空間部に、透明体を挿入して硬化させて前記遮光用膜と前記透明体を一体化したブロックを形成する段階と、前記遮光用膜と同じ間隔で、レンズ曲面を形成する為の曲面部が複数個配列されて、成形用型によって、前記ブロックの表面を押圧して複数個のバーレンズ曲面を形成する段階とからなる事を特徴とする複眼レンズ装置の製法。」(第1頁右下欄第4?13行) (イ)「3.発明の詳細な説明 本発明は光学的な投影装置、特に物体の鏡像を投影面上に形成する投影装置の構成要素である複眼レンズ装置の製法に関するものである。」(第1頁右下欄第1?4行) (ウ)「 そのような投影光学系に対して本出願人より投影像の明るさを減少させる事なく、要素レンズ系を構成するレンズの個数を少なくした投影光学系が特開昭53-122426号により開示されているが、本発明はそれとともに新たに提案される投影光学系をも含んで構成される新規で改良された投影装置を提供するものである。」(第2頁右上欄第11行?同頁左下欄第1行) (エ)「作成方法7 第24図(a)において作成方法4のようにアクリル棒をレンズ支持体126の貫通孔に挿入して固定するか、又は作成方法5のようにレンズ支持体126の貫通孔にアクリル樹脂を注入して固化させたブロックの、上下面に突出しているアクリル樹脂を取り除き研摩する。また別にコンプレッション成形により作成した、1端面にバーレンズ端面の曲率を有する凸球面が配列されたセンベイレンズ128、129を、各凸球面部と貫通孔巾のアクリル部とが1つにバーレンズを形成するように前述のブロックの上下面に貼り合せる。その際センベイレンズとブロックとの貼り合せ面間に増透の反射防止膜を設け、貼り合せ面での光反射を防止して、第24図(b)のような複眼レンズ装置を形成する。 この作成方法を用いれば量産性が高いとともにコンプレッション成形の失敗を、センベイレンズの段階で点検でき成形失敗による損失を軽くする事ができる。」(第18頁左下欄第14行?第19頁左上欄第1行) 合議体注:図24は以下のとおりのものである。 (オ)「 今まで述べてきたような本発明の作成方法を用いれば複眼レンズ装置が非常に量産性の高く、またコストの低い方法で作成可能で、また精度の高い複眼レンズ装置が得られる。従がってこの作成方法で得られた複眼レンズ装置を用いて形成された投影装置は質の高い画像を投影する事ができるものである。」(第21頁右上欄第1?7行) イ 引用文献Aに記載された発明 引用文献Aの記載事項(エ)に基づけば、引用文献Aには、作成方法7として、次の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。 「レンズ支持体126の貫通孔にアクリル樹脂を注入して固化させたブロックの、上下面に突出しているアクリル樹脂を取り除き研摩し、また別にコンプレッション成形により作成した、1端面にバーレンズ端面の曲率を有する凸球面が配列されたセンベイレンズ128、129を、各凸球面部と貫通孔巾のアクリル部とが1つにバーレンズを形成するように前述のブロックの上下面に貼り合せ、その際センベイレンズとブロックとの貼り合せ面間に増透の反射防止膜を設け、貼り合せ面での光反射を防止する、複眼レンズ装置の作成方法。」 (2)引用文献1 ア 引用文献1の記載事項 当審拒絶理由に引用され、本願優先権主張の日前の平成17年3月17日に頒布された刊行物である特開2005-72662号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の記載事項がある。なお、合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、例えば、複眼光学系の画像入力装置に好適に使用できる透光板および透光板の製造方法、並びに透光板を用いた画像入力装置に関するものである。 (中略) 【0011】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、従来の遮光壁(隔壁)には開口部が設けられているため、当該遮光壁を画像入力装置に使用する場合には、温度変化等の周囲の環境変化に伴って、画像入力装置のマイクロレンズや受光素子の上記開口部に対向する面に結露(曇り)が発生しやすいという問題がある。 (中略) 【0015】 本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、結露を防止することができる透光板、および、アスペクト比の大きい遮光壁を備える透光板の製造方法、並びに、上記透光板を用いた画像入力装置を提供することにある。 【0016】 【課題を解決するための手段】 本発明の透光板は、上記の課題を解決するために、或る一定の間隔を有するように配列された光を透過させる光重合性樹脂からなる複数の透光部と、上記複数の透光部の側面に隣接してなる遮光壁とを有することを特徴としている。 【0017】 上記の構成によれば、遮光壁間に透光部が当該遮光壁と隣接した状態で配置されているため、温度変化等の周囲の環境変化によって遮光壁の側面に結露等が発生することがない。また、上記透光板を例えば画像入力装置に用いた場合に、画像入力装置に備えられたマイクロレンズや受光素子の透光板に対向する面に結露(曇り)が発生することがない。なお、上記透光部を構成している材料には、例えば、透明な光重合性樹脂等を用いればよい。 【0018】 本発明の透光板は、上記遮光壁は、黒色顔料を含有する樹脂からなることを特徴としている。 【0019】 上記の構成によれば、遮光壁が黒色顔料を含有する樹脂から構成されることにより、遮光壁は黒色となり光吸収性を持つため、遮光壁に入射された光が、反射して迷光となることを防ぐことができる。また、遮光壁の黒化処理を行うことが不要になる。これにより、画像入力装置に本発明の透光板を用いた場合、光信号の混信を防ぐことができるため、解像度の高い画像入力装置を得ることができる。」 (イ)「【0034】 【発明の実施の形態】 本発明の実施の一形態について図1?図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。 (中略) 【0069】 次に、本発明の透光板を用いる画像入力装置について、図2に基づいて説明すれば、以下のとおりである。 【0070】 図2は、本発明の透光板を用いる複眼光学系の画像入力装置の概略構成を示す部分断面図である。 【0071】 本発明の画像入力装置50は、縦横に配列された受光素子41を備える受光素子アレイ40と、透明絶縁層43と、透光板22と、マイクロレンズアレイ44とを備えている。図2に示すように、透光板22の一方の面にマイクロレンズアレイ44が配置され、透光板22の他方の面には、透明絶縁層43を介して受光素子アレイ40が配置されている。 【0072】 受光素子アレイ40には、受光素子41として各画素にフォトダイオードやフォトトランジスタが備えられたCCD(Charge Coupled Device :電荷結合素子)イメージャやCMOSイメージャ、あるいはTFT(薄膜トランジスタ)イメージャ等を用いることができる。受光素子アレイ40の受光素子41が形成された面には、受光素子アレイ40の保護層として透明絶縁層43が形成されている。透明絶縁層43として、スパッタやCVD法(化学的気相成長法)で成膜されるSiO_(2)膜やSOG(スピンオングラス)法で成膜される各種酸化膜、あるいはエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの透明樹脂膜などを用いることができるが、これに限定されるものではなく、光を透過し電気的絶縁が可能な膜を用いればよい。 【0073】 そして、マイクロレンズアレイ44の各マイクロレンズに対して、透光板22の各透光部26と、透光部26の下に位置する複数の受光素41とが対応しており、1つのユニット(信号処理単位)を構成している。なお、画像入力装置50に対し、マイクロレンズアレイ44面側を上方、受光素子アレイ40面側を下方とする。 【0074】 そして、例えば、図2に示すように上記構成の画像入力装置50には、図示しない被写体からの反射光が、ユニット毎に、マイクロレンズアレイ44のマイクロレンズ、透光板22の透光部26、透明絶縁層43を順次透過するようになっている。そして、透明絶縁層43を透過した光は、受光素子アレイ40の受光素子41に受光されるようになっている。つまり、ユニット毎に得られた複数の画像情報は、受光素子41で検出され、画像信号に変換される。そして取得された画像信号は、画像再構成アルゴリズムにより、1つの画像に合成される。 【0075】 また、本発明の透光板22は、受光素子アレイ40と透明絶縁層43とからなる受光素子アレイ基板上に直接形成されているので、受光素子アレイ40に対して高精度に遮光壁を形成することができる。これにより、受光素子アレイ40に備えられた受光素子41に入射する光信号の混信を確実に防止することが可能になる。 (中略) 【0077】 また、透光部26および遮光壁25のマイクロレンズアレイ44または受光素子アレイ40に接する面をラッピング処理などによって平坦化することが好ましい。これにより、透光部26の表面に余分な遮光性樹脂が付着した場合でも、付着した余分な遮光性樹脂を除去することができるため、透光部26における光の透過が妨げられるおそれがなくなる。 【0078】 さらに、透光部26および遮光壁25のマイクロレンズアレイ44または受光素子アレイ40に接する面を平坦化することにより、マイクロレンズアレイ44と透光板22との境界面に空間が生じることがなくなるため、マイクロレンズアレイ44や受光素子41に結露や曇りが発生することを確実に防止することができる。 【0079】 使用するマイクロレンズアレイ44としては、イオン拡散方式で形成されたマイクロレンズアレイを用いることができるが、これに限定されるものではなく、その他ガラスなどの透明基材のエッチング、2P法、射出成型法、或いはディスペンサーを用いたレンズ形成法などにより形成される各種マイクロレンズアレイを適宜用いることができる。 (中略) 【0082】 以上のように、本発明の画像入力装置50は、受光素子41を複数備える受光素子アレイ40と、マイクロレンズアレイ44と、透光板22とを備える構成である。 【0083】 上記の構成によれば、本発明の画像入力装置50に用いられている透光板45は、光重合性樹脂からなる透光部26が遮光壁25に接するように配置されているため、本発明の画像入力装置50では、マイクロレンズアレイ44のマイクロレンズや、受光素子41に結露(曇り)が発生しにくい。これにより、外部からの環境変化の影響を受けることの少ない高品質な画像入力装置50を提供することが可能になる。 【0084】 また、上記画像入力装置50は、従来よりも、アスペクト比が大きい遮光壁を備え、かつ側面の平坦性に優れた透光板22を備えることにより、受光素子41に入光される光信号の混信を防止することできる。したがって、良好な画像信号を得ることのできる、解像度に優れた画像入力装置50を提供することが可能である。 【0085】 さらに、生産性に優れた透光板22を用いることができるため、画像入力装置50を安価に提供することが可能になる。」 合議体注:図2は以下のとおりのものである。 (ウ)「【0088】 図3は、本発明の透光板を用いる画像入力装置の他の一例の概略構成を示す部分断面図である。 【0089】 図3に示すように、画像入力装置50は、透光板22の透光部26に対して受光素子41が1:1で対応するように配置されている点と、ベース基材44aとレベリング材44bとから構成されたマイクロレンズアレイ44を用いる点を除けば、図2に示した画像入力装置と同様の構成を有している。」 合議体注:図3は以下のとおりのものである。 (エ)「【0092】 次に、本実施の形態にかかる画像入力装置のさらに他の一例について、図4を用いて以下に説明する。ここでは主に、図2で説明した画像入力装置との相違点について説明するものとする。なお、説明の便宜上、図2で説明した画像入力装置における構成要素と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。 【0093】 図4は、本発明の透光板を用いた画像入力装置のさらに他の一例の概略構成を示す部分断面図である。図4では2次元の画像入力装置に本発明の透光板を用いる場合について説明する。 【0094】 図4に示すように、画像入力装置50は、当該画像入力装置50と被写体52との間に、被写体を照明する平面光源51(フロントライト)が備えられている。平面光源51は、アクリル樹脂からなる透明な導光板53と、導光板53の端部に配置されたLED(Light Emitting Diode)54とを備えている。また、導光板53の下面側(画像入力装置側)には、微小なプリズムが形成されている。平面光源51のLED54から発せられた光は導光板53のプリズムで反射/屈折され被写体52を照明する。照明された被写体52からの反射光は、平面光源51の導光板53を通過して、画像入力装置50の受光素子41に到達する。被写体52からの反射光は、被写体52が例えば一般的な紙である場合には等方散乱特性を示すが、画像入力装置50には透光板22が備えられているため、マイクロレンズアレイ44と透光板22とによって制限された範囲内の入射角の反射光のみが受光素子41に到達する。これにより、隣接ユニット間での光の混信を防ぐことができる。したがって、上記平面光源51と画像入力装置50とから構成される解像度に優れた2次元の密着型画像入力装置を実現することができる。ここで、密着型画像入力装置とは、被写体52に画像入力装置を密着させて画像を取得する画像入力装置を指すものとする。 (中略) 【0096】 上記画像入力装置は、受光素子41を複数備える受光素子アレイ40と、マイクロレンズアレイ44と、透光板22とを備えるとともに、マイクロレンズアレイ44と被写体52の間に、被写体52を照明する平面光源51を備える構成を有している。 【0097】 上記の構成によれば、マイクロレンズアレイ44と被写体52の間に平面光源51を備えるため、平面光源により被写体を照明し、被写体52からの反射光のうち、透光板22により制限された範囲内の入射角を持つ光のみを受光素子41に到達させることができる。これにより、受光素41子に入光する光信号の混信を防ぐことができるため、さらに解像度に優れた2次元の密着型画像入力装置を実現することができる。また、上記の構成によれば、画像入力装置の小型化を図ることが可能である。」 合議体注:図4は以下のとおりのものである。 (オ)「【0098】 上記実施の形態では、本発明の透光板を画像入力装置に用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複写機やプリンター、ファクシミリなど、光信号の混信を防ぐ必要のある光学系を含む種々の電子写真方式の画像形成装置(電子写真装置)に好適に用いることができる。」 イ 引用文献1に記載された発明 (ア)引用装置発明 引用文献1の記載事項(イ)の段落【0071】、【0073】、【0077】、【0079】、【0084】及び図2の記載に基づけば、引用文献1には、2P法、射出成型法、或いはディスペンサーを用いたレンズ形成法などにより形成される各種マイクロレンズアレイを用いた画像入力装置として、次の発明(以下、「引用装置発明」という。)が記載されていると認められる。なお、段落【0073】の「受光素41」は「受光素子41」の誤記と認められる。 「縦横に配列された受光素子41を備える受光素子アレイ40と、透明絶縁層43と、透光板22と、マイクロレンズアレイ44とを備えており、透光板22の一方の面にマイクロレンズアレイ44が配置され、透光板22の他方の面には、透明絶縁層43を介して受光素子アレイ40が配置されている画像入力装置50であって、 マイクロレンズアレイ44の各マイクロレンズに対して、透光板22の各透光部26と、透光部26の下に位置する複数の受光素子41とが対応しており、透光部26および遮光壁25のマイクロレンズアレイ44または受光素子アレイ40に接する面がラッピング処理などによって平坦化され、使用するマイクロレンズアレイ44は、2P法、射出成型法、或いはディスペンサーを用いたレンズ形成法などにより形成される各種マイクロレンズアレイであり、アスペクト比が大きい遮光壁を備え、かつ側面の平坦性に優れた透光板22を備えることにより、受光素子41に入光される光信号の混信を防止することができる、 画像入力装置50。」 (イ)引用方法発明 また、引用文献1の上記記載に基づけば、引用文献1には、画像入力装置の製造方法として、次の発明(以下、「引用方法発明」という。)が記載されていると認められる。 「縦横に配列された受光素子41を備える受光素子アレイ40と、透明絶縁層43と、透光板22と、マイクロレンズアレイ44とを備えており、透光板22の一方の面にマイクロレンズアレイ44が配置され、透光板22の他方の面には、透明絶縁層43を介して受光素子アレイ40が配置されている画像入力装置50の製造方法であって、 マイクロレンズアレイ44の各マイクロレンズに対して、透光板22の各透光部26と、透光部26の下に位置する複数の受光素子41とが対応しており、透光部26および遮光壁25のマイクロレンズアレイ44または受光素子アレイ40に接する面がラッピング処理などによって平坦化されており、アスペクト比が大きい遮光壁を備え、かつ側面の平坦性に優れた透光板22を備えることにより、受光素子41に入光される光信号の混信を防止することができ、 使用するマイクロレンズアレイ44を、2P法、射出成型法、或いはディスペンサーを用いたレンズ形成法などにより形成する、 画像入力装置50の製造方法。」 6 対比・判断 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と引用方法発明とを対比する。 (ア)デバイスの製造方法 引用方法発明の「画像入力装置50」は、「透光板22」と「マイクロレンズアレイ44」とを備えるものである。そして、引用方法発明の「透光板22」の「透光部26」と、「マイクロレンズアレイ44」の「各マイクロレンズ」とは、技術的にみて、本件発明1の「受動光学構成要素」を構成するといえる。また、引用方法発明の「受光素子41」は、技術的にみて、本件発明1の「能動光学構成要素」に相当する。 そうすると、引用方法発明の「画像入力装置50」は、本件発明1の「光電子デバイス」に相当する。また、引用方法発明の「画像入力装置50」は、本件発明1の「少なくとも1つの受動光学構成要素と、少なくとも1つの能動光学構成要素とを備える」とする要件を満たしている。 さらに、引用方法発明の「画像入力装置50の製造方法」は、本件発明の「光電子デバイスの製造方法」に相当する。 (イ)ステップa) 引用方法発明の「透光板22」は、「遮光壁25」と複数の「透光部26」とを備えている。ここで、引用方法発明の「遮光壁25」と「透光部26」とは、それぞれ、本件発明1の「阻止部」と「透明素子」とに相当する。そうすると、引用方法発明の「透光板22」は、技術的にみて、本件発明1の「少なくとも1つの阻止部と多数の透明素子とを備えるウェハ」に相当する。 そして、引用方法発明は、「透光板22」を備えた画像入力装置50の製造方法であるから、引用方法発明は、本件発明1における、「a)少なくとも1つの阻止部と多数の透明素子とを備えるウェハを設けるステップ」を備えているといえる。 また、引用方法発明の「遮光壁25」と「透光部26」とは、技術的にみて、本件発明1の「前記多数の透明素子の各々は、透明材料と呼ばれる、少なくとも特定のスペクトル範囲の光に対して透過性を有する1つ以上の材料でできており、前記少なくとも1つの阻止部は、非透明材料と呼ばれる、前記特定のスペクトル範囲の光に対して透過性をもたない1つ以上の材料でできており」とする要件を満たしている。 (ウ)ステップc) 引用方法発明は、「マイクロレンズアレイ44」を「2P法、射出成型法、或いはディスペンサーを用いたレンズ形成法などにより形成する」工程を備えるものである。そうすると、引用方法発明は、本件発明1の「c)前記少なくとも1つの受動光学構成要素を備える多数の別々の受動光学構成要素を備える、光学ウェハと呼ばれるウェハを製造するステップ」を備えるといえる。 そして、引用方法発明は、「マイクロレンズアレイ44の各マイクロレンズに対して、透光板22の各透光部26と、透光部26の下に位置する複数の受光素子41とが対応」するように「マイクロレンズアレイ44」を形成していることから、引用方法発明は、本件発明1の「多数の透明素子の各々の上」に、「少なくとも1つの光学構造を生成することによって、前記多数の別々の受動光学構成要素を生成するステップを備え、これにより、前記光学構造の各々は、前記多数の透明素子のそれぞれの1つに割り当てられ」るとする要件を満たしている。 (エ)透明素子 引用方法発明の「透光部26」は、「遮光壁25」とともに「マイクロレンズアレイ44または受光素子アレイ40に接する面をラッピング処理などによって平坦化」されている。そうすると、引用方法発明の「透光部26」は、本件発明1の「A) 前記多数の透明素子の各々の垂直方向の広がりは、前記少なくとも1つの阻止部の垂直方向の広がりに等しく、前記少なくとも1つの阻止部は、前記透明素子とともに、固体板状形状を示し、前記透明素子の各々は、平坦な2つの対向する側面を有し」及び「B) 前記透明素子の各々は、垂直方向に直交する2つの対向する平坦な面を有し、前記2つの対向する平坦な面は、前記垂直方向に沿って測定される前記少なくとも1つの阻止部の厚みに等しい距離に配置され」とするの要件を満たしている。 (オ)一致点及び相違点 以上より、本件発明と引用発明とは、 「 少なくとも1つの受動光学構成要素と、少なくとも1つの能動光学構成要素とを備える光電子デバイスの製造方法であって、前記方法は、 a)少なくとも1つの阻止部と多数の透明素子とを備えるウェハを設けるステップを備え、 前記多数の透明素子の各々は、透明材料と呼ばれる、少なくとも特定のスペクトル範囲の光に対して透過性を有する1つ以上の材料でできており、前記少なくとも1つの阻止部は、非透明材料と呼ばれる、前記特定のスペクトル範囲の光に対して透過性をもたない1つ以上の材料でできており、 c)前記少なくとも1つの受動光学構成要素を備える多数の別々の受動光学構成要素を備える、光学ウェハと呼ばれるウェハを製造するステップを備え、 ステップc)は、 c1)前記多数の透明素子の各々の上に、少なくとも1つの光学構造を生成することによって、前記多数の別々の受動光学構成要素を生成するステップを備え、これにより、前記光学構造の各々は、前記多数の透明素子のそれぞれの1つに割り当てられ、 A) 前記多数の透明素子の各々の垂直方向の広がりは、前記少なくとも1つの阻止部の垂直方向の広がりに等しく、前記少なくとも1つの阻止部は、前記透明素子とともに、固体板状形状を示し、前記透明素子の各々は、平坦な2つの対向する側面を有し、 および/または、 B) 前記透明素子の各々は、垂直方向に直交する2つの対向する平坦な面を有し、前記2つの対向する平坦な面は、前記垂直方向に沿って測定される前記少なくとも1つの阻止部の厚みに等しい距離に配置される、方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1-1]光学構造を生成するステップが、本件発明1は「複製加工」を用いるのに対し、引用方法発明は「2P法、射出成型法、或いはディスペンサーを用いたレンズ形成法」を用いる点。 [相違点1-2]光学構造が、本件発明1は「他の光学構造と分離」しており、「対応する前記透明素子と同じまたはより小さい横方向長さ」を有するのに対し、引用方法発明は各マイクロレンズが他のマイクロレンズと分離し、対応する透光部と同じまたはより小さい横方向長さを有するものではない点。 [相違点1-3]透明素子及び受動光学構成要素の各々が、本件発明1は、能動光学構成要素の「各々」に割り当てられるのに対し、引用方法発明は、各マイクロレンズに「複数」の受光素子41が対応している点。 [相違点1-4]能動光学構成要素が、本件発明1は、「第1の前記能動光学構成要素は発光要素であり、第2の前記能動光学構成要素は光検知要素である」のに対し、引用方法発明は、「受光素子41」である点。 イ 判断 事案に鑑みて、[相違点1-3]及び[相違点1-4]について検討する。 引用文献1には、記載事項(エ)に「画像入力装置50は、当該画像入力装置50と被写体52との間に、被写体を照明する平面光源51(フロントライト)が備えられている。平面光源51は、アクリル樹脂からなる透明な導光板53と、導光板53の端部に配置されたLED(Light Emitting Diode)54とを備えている。」(段落【0094】)と記載されている。上記「LED(Light Emitting Diode)54」は「発光要素」といえる。 しかしながら、上記「LED(Light Emitting Diode)54」は、「平面光源51」を構成するものであって、被写体を平面状に照明するものであるから、各マイクロレンズに割り当てられるよう構成することができない。また、引用文献1には、他の「発光要素」を、各マイクロレンズに割り当てられるよう配置することについて、何ら記載も示唆もない。 また、平面光源として、いわゆる、直下型のものが本願優先日前に知られているから、引用方法発明において、「発光要素」を、受光素子41とともに配列するような設計変更が考えられる。しかしながら、引用文献1には、記載事項(イ)に「画像入力装置50は、」「アスペクト比が大きい遮光壁を備え、かつ側面の平坦性に優れた透光板22を備えることにより、受光素子41に入光される光信号の混信を防止することができる。したがって、良好な画像信号を得ることができる、解像度に優れた画像入力装置50を提供することが可能である。」(段落【0084】)と記載されていることから、当業者は、解像度の低下をもたらす上記設計変更は控えるといえる。 さらに、引用文献1の図3には、画像入力装置の他の一例として、透光板22の透光部26に対して受光素子41が1:1で対応するように配置されているものが開示されているが、この例から、引用発明を認定したとしても、判断は同様である。 なお、特開平6-153097号公報には、「構造が簡単で、小型で且つ暗い所を撮像することができ、電子内視鏡に用いるのに好適な固体撮像素子」(段落【0001】)について、「半導体基板4内に形成した発光素子3の表面に平坦化膜21を介して光指向性部材20となるオンチップマイクロレンズ22を形成する。この発光素子3上のオンチップマイクロレンズ22は、撮像部11側のセンサ2上に設けるオンチップマイクロレンズ23と同時に形成することができる。」(段落【0025】)と記載されている。しかしながら、引用文献1の記載事項(オ)に「本発明はこれに限定されるものではなく、複写機やプリンター、ファクシミリなど、光信号の混信を防ぐ必要のある光学系を含む種々の電子写真方式の画像形成装置(電子写真装置)に好適に用いることができる。」と記載されているように、引用方法発明の「画像入力装置」が電子写真方式の画像形成装置に用いることを予定しているのに対し、特開平6-153097号公報に記載された「固体撮像素子」は電子内視鏡に好適に用いるものである。画像入力装置として共通するとしても、画像入力装置の形状や照明の仕方が共通するとはいえないから、引用方法発明に設ける発光要素として、特開平6-153097号公報に記載された固体撮像素子の「発光素子3」を採用することが、当業者にとって容易になし得たということはできない。また、仮に、特開平6-153097号公報に記載された固体撮像素子を主引用発明とすると、本件発明1の構成に至るには、引用方法発明の透明絶縁層43と、透光板22と、マイクロレンズアレイ44とを採用した上に、さらに、上記[相違点1-1]及び[相違点1-2]について変更することが必要となるが、そのような変更を重ねる動機付けが存在するということができない。 さらに、引用文献2?10及び引用文献B、D?Hにも、透明素子及び受光光学要素の各々に対し、各発光要素を割り当てることについて、記載も示唆もない。そうすると、引用方法発明に、他の引用文献に記載された技術事項を組み合わせたとしても、本件発明1の構成に到達しない。 したがって、当業者であっても、引用方法発明において、本件発明1の上記[相違点1-3]及び[相違点1-4]に係る構成とすることは、容易になし得たということができない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても、引用文献1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものではない。 (2)本件発明2、3について 本件発明2及び本件発明3は、本件発明1と同じ、「前記透明素子および前記受動光学構成要素の各々は、それぞれ、前記能動光学構成要素の各々に割り当てられ、」及び「第1の前記能動光学構成要素は発光要素であり、第2の前記能動光学構成要素は光検知要素である」という要件を具備している。そうすると、本件発明2及び本件発明3も、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものではない。 (3)引用発明4について ア 対比 本件発明4と引用装置発明とを対比する。 (ア)光学部材 引用装置発明の「透光板22」は、複数の「透光部26」と「遮光壁25」とを備えている。ここで、引用装置発明の「透光部26」と「遮光壁25」とは、それぞれ、本件発明4の「透明素子」と「阻止部」とに相当し、技術的にみて、本件発明4の「前記透明素子は、透明材料と呼ばれる、少なくとも特定のスペクトル範囲の光に対して透過性を有する1つ以上の材料でできており、前記少なくとも1つの阻止部は、非透明材料と呼ばれる、前記特定のスペクトル範囲の光に対して透過性をもたない1つ以上の材料でできており」とする要件を満たしている。 また、引用装置発明の「透光板22」は、本件発明4の「光学部材」に相当し、「少なくとも2つの透明素子と少なくとも1つの阻止部とを備える」とする要件を満たしている。 (イ)受動光学構成要素 引用装置発明の「透光部26」は、「遮光壁25」とともに「マイクロレンズアレイ44または受光素子アレイ40に接する面をラッピング処理などによって平坦化され」たものである。そうすると、引用装置発明の「透光部26」は、本件発明4の「垂直方向に直交する2つの対向する平坦な面を有する透明素子」にも相当するといえるものであり、本件発明4の「A’) 前記透明素子の垂直方向の広がりは、前記少なくとも1つの阻止部の垂直方向の広がりに等しく、前記少なくとも1つの阻止部は、前記透明素子とともに、固体板状形状を示し」及び「B’) 前記2つの対向する平坦な面は、前記垂直方向に沿って測定される前記少なくとも1つの阻止部の厚みに等しい距離に配置され」るとする要件を満たしている。 また、引用装置発明の「マイクロレンズアレイ44の各マイクロレンズ」は、技術的にみて、本件発明4の「1以上の光学構造」に相当する。そして、引用装置発明は、「マイクロレンズアレイ44の各マイクロレンズに対して、透光板22の各透光部26と、透光部26の下に位置する複数の受光素41とが対応して」いることから、引用装置発明の「マイクロレンズ」は、本件発明4の「それぞれの前記透明素子に取り付けられる1以上の光学構造」であるとする要件を満たしている。 そして、引用装置発明の「透光部26」及び「マイクロレンズアレイ44の各マイクロレンズ」は、本件発明4の「受動光学構成要素」に相当し、引用装置発明の「透光部26」は、本件発明4の「前記透明素子は、少なくとも1つの受動光学構成要素」を備えるとする要件を満たしている。 (ウ)能動光学構成要素 引用装置発明の「透光板22」の「他方の面には、透明絶縁層43を介して受光素子アレイ40が配置」されており、「透光板22の各透光部26と、透光部26の下に位置する複数の受光素子41とが対応」するように配置されている。そうすると、引用装置装置発明の「受光素子41」は、技術的にみて、本件発明4の「能動光学構成要素」に相当するといえる。そして、引用装置発明の「透光部26」は、本件発明4の「少なくとも1つの能動光学構成要素とを備え」るとする要件を満たしている。 (エ)光電子デバイス 引用装置発明の「画像入力装置50」は、「透光板22」と「受光素子アレイ40」と「マイクロレンズアレイ44」とを備えるものである。そうすると、引用装置発明の「画像入力装置50」は、本件発明4の「光電子デバイス」に相当する。 (オ)一致点及び相違点 以上より、本件発明4と引用装置発明とは、 「少なくとも2つの透明素子と少なくとも1つの阻止部とを備える光学部材を備える光電子デバイスであって、前記透明素子は、透明材料と呼ばれる、少なくとも特定のスペクトル範囲の光に対して透過性を有する1つ以上の材料でできており、前記少なくとも1つの阻止部は、非透明材料と呼ばれる、前記特定のスペクトル範囲の光に対して透過性をもたない1つ以上の材料でできており、前記透明素子は、少なくとも1つの受動光学構成要素と、少なくとも1つの能動光学構成要素とを備え、前記受動光学構成要素の各々は、 垂直方向に直交する2つの対向する平坦な面を有する前記透明素子と、 それぞれの前記透明素子に取り付けられる1以上の光学構造とを含み、 A’) 前記透明素子の垂直方向の広がりは、前記少なくとも1つの阻止部の垂直方向の広がりに等しく、前記少なくとも1つの阻止部は、前記透明素子とともに、固体板状形状を示し、 および/または、 B’) 前記2つの対向する平坦な面は、前記垂直方向に沿って測定される前記少なくとも1つの阻止部の厚みに等しい距離に配置される、デバイス。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点4-1]本件発明4は、受動光学構成要素が「互いに分離」しており、光学構造が「対応する前記透明素子と同じまたはより小さい横方向長さ」を有するとともに「互いに分離」しているのに対し、引用装置発明は、透光部26及びマイクロレンズが他の透光部26及びマイクロレンズと分離するとしておらず、マイクロレンズが対応する透光部と同じまたはより小さい横方向長さを有するとしていない点。 [相違点4-2]透明素子及び受光光学要素の各々が、本件発明4は、能動光学構成要素の「各々」に割り当てられるのに対し、引用装置発明は、各マイクロレンズに「複数」の受光素子41が対応している点。 [相違点4-3]能動光学構成要素が、本件発明4は、「第1の前記能動光学構成要素は発光要素であり、第2の前記能動光学構成要素は光検知要素である」のに対し、引用装置発明は、「受光素子41」である点。 イ 判断 事案に鑑みて、[相違点4-2]及び[相違点4-3]について検討すると、上記[相違点4-2]及び[相違点4-3]は、前記(1)ア(オ)に記載した[相違点1-3]及び[相違点1-4]と実質的に同じ相違点である。そして、前記(1)イに記載した理由と同じ理由により、当業者であっても、引用装置発明において、本件発明4の上記[相違点4-2]及び[相違点4-3]に係る構成とすることは、容易になし得たということができない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、当業者であっても、引用文献1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものではない。 (4)本件発明5?8について 本件発明5?8は、本件発明4と同じ、「前記透明素子および前記受動光学構成要素の各々は、それぞれ、前記能動光学構成要素の各々に割り当てられ、」及び「第1の前記能動光学構成要素は発光要素であり、第2の前記能動光学構成要素は光検知要素である」という要件を具備している。そうすると、本件発明5?8も、本件発明4と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものではない。 7 原査定についての判断 本件補正によって、本件発明1?8は、いずれも、「前記透明素子および前記受動光学構成要素の各々は、それぞれ、前記能動光学構成要素の各々に割り当てられ、」及び「第1の前記能動光学構成要素は発光要素であり、第2の前記能動光学構成要素は光検知要素である」という要件を具備することとなった。 一方、引用発明Aは、前記5(1)イに記載したとおりの発明であって、発光要素及び光検知要素を有していない。また、前記6(1)イに記載したとおり、引用文献6(引用文献A)には、透明素子及び受光光学要素の各々に対し、各発光要素を割り当てることについて、記載も示唆もなく、他に、複眼レンズ装置において、「前記透明素子および前記受動光学構成要素の各々は、それぞれ、前記能動光学構成要素の各々に割り当てられ、」及び「第1の前記能動光学構成要素は発光要素であり、第2の前記能動光学構成要素は光検知要素である」という要件を具備することが、知られていたとする根拠も見いだせない。そうすると、引用発明Aに、他の引用文献に記載された技術事項を組み合わせたとしても、本件発明1?8の構成に到達しない。 したがって、本件発明1?8は、当業者であっても、引用文献Aに記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではないから、原査定を維持することはできない。 8 当審拒絶理由についての判断 (1)理由1(新規事項) 本件補正によって、当審拒絶理由の理由1は解消された。 (2)理由2(実施可能要件) 本件補正によって、当審拒絶理由の理由2は解消された。 (3)理由3(サポート要件) 本件補正によって、当審拒絶理由の理由3は解消された。 (4)理由4(明確性) 本件補正によって、当審拒絶理由の理由4は解消された。 (5)理由5(進歩性) 前記6に記載したとおり、本件補正後の請求項1?8に係る発明が進歩性を有することは明らかである。 9 むすび 以上のとおり、原査定の拒絶理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-07-27 |
出願番号 | 特願2017-42941(P2017-42941) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G02B)
P 1 8・ 55- WY (G02B) P 1 8・ 536- WY (G02B) P 1 8・ 121- WY (G02B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 後藤 亮治 |
特許庁審判長 |
里村 利光 |
特許庁審判官 |
井口 猶二 宮澤 浩 |
発明の名称 | 受動光学構成要素の製造方法および受動光学構成要素を備えるデバイス |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |