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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E06B
管理番号 1364848
審判番号 不服2019-13375  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-07 
確定日 2020-08-06 
事件の表示 特願2015-193755「複合建具」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月 6日出願公開、特開2017- 66747〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月30日の出願であって、手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年11月21日付け:拒絶理由通知
平成31年 1月23日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年 7月 8日付け:拒絶査定
令和 1年10月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 令和1年10月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年10月7日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所である。)
「枠体内に開閉可能な障子を納めた複合建具であって、
前記枠体の下枠に設けていて前記障子を案内する第一レールおよび第二レールを備え、
前記第一レールは、
前記下枠に設けた金属製の第一基部と、
前記障子を案内する金属製の第一レール部と、
前記第一基部と前記第一レール部との間に設けられ、前記第一基部と前記第一レール部との間を絶縁する樹脂製の仲介部材と、を備え、
前記第二レールは、
前記下枠に設けた金属製の第二基部と、
前記障子を案内する金属製の第二レール部と、を備え、
前記第二レールは、前記第二基部上に直接前記第二レール部が配置されており、
前記第一レールと前記第二レールは、互いに同一の長手方向に沿って配設されていることを特徴とする複合建具。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成31年1月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「枠体内に開閉可能な障子を納めた複合建具であって、
前記枠体の下枠に設けていて前記障子を案内する第一レールは、
前記下枠に設けた金属製の基部と、
前記障子を案内する金属製のレール部と、
前記基部及びレール部の間に設けた樹脂製の仲介部材と、
を備え、
前記第一レールの延長上に第二レールが連設され、
前記第二レールは、前記基部上に直接前記レール部が配置されていることを特徴とする複合建具。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である複合建具について、第一レールに加えて第二レールを備えるものとした上で、第一レールの仲介部材を、第一基部と第一レール部との間を絶縁するとの限定を付加し、第二レールの構成を、下枠に設けた金属製の第二基部と、障子を案内する金属製の第二レール部と、を備えるとの限定を付加し、さらに、第一レールと第二レールとの関係について、同一の長手方向に沿って配設されているとの限定を付加し、また、補正前の基部及びレール部について、第一レールに備える第一基部及び第一レール部と、第二レールに備える第二基部及び第二レール部とに分ける限定を付加する補正である。そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-303509号公報(以下「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】この発明は、内障子と外障子を引き違いに備えた断熱サッシに関する。なお、障子の移動方向は水平方向に限らず、上下方向もある。
【0002】
【従来の技術】引き違い障子、上げ下げ障子など、サッシ枠内で内障子と外障子が引き違いに移動するサッシでは、障子の移動を案内するガイド突条を備えることが多い。ガイド突条はレールのように、1本でその上を戸車が転動するものと、移動経路の両側に位置してガイド溝を構成するものとがある。また、断熱サッシでは、サッシ枠を構成する枠材や障子を構成する枠材(框材)をすべて室内側形材と室外側形材に分離し、これらを断熱ブリッジなどで熱の伝達を遮断して結合している。この場合に、形材と断熱ブリッジは色合いが異なったり、カシメ跡が見えたりするので、また、断熱材が直射日光や外気に直接に曝されて早期に劣化してしまうのを防止するために、通常、断熱結合部分を隠す別部材45(図1)を用いている。
【0003】また、引き違い障子を備えた断熱サッシの下枠では、ガイド突条を備えた枠材を室内側形材と室外側形材に分離して断熱ブリッジで結合することになる。この時に、熱の伝達を遮断することからすれば、内障子のガイド突条と外障子のガイド突条とを、室内外の形材とともに室内側と室外側に分離するのが好ましい。このため、実開昭62-110492号公報や特開平6-341275号公報、特開平7-26843号公報などが開示する断熱サッシの、室内側形材と室外側形材に分離した下枠あるいは上枠では、内障子のガイド突条を室内側形材に、外障子のガイド突条を室外側形材に設けている。
【0004】このようにすると、断熱効果はともかく、室内側形材も室外側形材も障子の荷重に耐える構造とする必要があり、いずれの形材も中空構造にしたり肉厚を大きくするなど、材料的(肉圧など)にも構造的にも頑丈にする必要がある。また、構造上の強度を増すために、中空部を形成するなど断面構造を複雑にすると成形に必要な押出し金型の作成に多くの手間と費用を要し、経済的ではない。加えて、断熱材で室内側形材と室外側形材を結合した断熱枠は、室内側形材に作用する力と室外側形材に作用する力に、方向や大きさで差があると、構造的に断熱材による結合箇所が弱い。そのため、本来、内障子のガイド突条と外障子のガイド突条を断熱材を挟んだ両側に配置することは好ましくない。
【0005】一方、図1のように、断熱サッシ1の下枠2において、室内側形材2aと室外側形材2bを断熱ブリッジ3で熱的に遮断して結合し、その室外側形材2bに内障子5と外障子6用のガイド突条4a,4bを配置したのでは、外気温度が低いと内障子5のガイド突条4aとその付近が冷却され、外障子6の室内側で結露する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】断熱サッシを構成している断熱枠の室内側形材と室外側形材間を結合している断熱材の早期劣化を防止するとともに、この断熱材が外部から見えず、また、断熱サッシを構成する各形材の断面構成が簡素であるとともに、内障子のガイド突条と外障子のガイド突条から受ける力を、室内側あるいは室外側形材のいずれか一方の形材でまとめて受け止める断熱枠を備えた断熱サッシの提供。
【0007】
【課題を解決するための手段】室外側形材と室内側形材を断熱材で連結して断熱枠とし、これに第1、第2の補助形材を組み合わせる。これらの形材はアルミニウム合金の押出し形材であり、外障子のガイド突条は、室外側形材に設ける。内障子のガイド突条は、第1、第2の補助形材のそれぞれに設け、連続するようにする。第1、第2の補助形材は、また、それぞれ、内障子のガイド突条から室内側形材に到達するカバー部を室内側に向けて延出して一体に設ける。第1、第2の補助形材は、第1の補助形材を内障子の開き位置に、第2の補助形材を内障子の閉じ位置に配置し、端部どうしを、間に断熱性のシール材を用いて突き合わせて連結し、さらに、第1の補助形材は、カバー部の室内側縁と室内側形材との間に断熱材を用いて取付け、第2の補助形材は、室外側形材との間に断熱材を用いて取付ける。」

イ 「【0009】
【発明の実施の形態】図2、図3は、サッシ枠7に、内障子5と外障子6を引き違いに装着した断熱サッシ1の縦断面と横断面を示している。サッシ枠7は、上下の横枠材8、9、と左右の竪枠材10,11を矩形に組み付け構造であり、同様に、内障子5は上下の横框材12,13と左右の竪框材14,15を矩形に組み付け、外障子6は上下の横框材16,17と左右の竪框材18,19を矩形に組み付け、それぞれにガラス(図示を省略)を装着した構造となっている。サッシ枠7は、断熱タイプで、サッシ枠7を構成する各枠材(8?11)はそれぞれ室内側形材(8a?11a)と室外側形材(8b?11b)に分離し、双方を断熱ブリッジ20?23で結合してある。断熱ブリッジ20?23は硬質のナイロン製で長尺な板状に成形してあり、断面において一端を室内側形材に、他端を室外側形材にカシメ付けて固定することにより、室内側形材と室外側形材をそれぞれに結合している。なお、下横枠材9では断熱ブリッジ21を2枚平行に用いている。
【0010】内障子5及び外障子6も、断熱タイプで、これらの障子5,6を構成する各框材(12?15,16?19)はそれぞれ室内側框材(12a?15a、16a?19a)と室外側框材(12b?15b,16b?19b)に分離し、双方を断熱ブリッジ(24?27,28?31)で結合してある。断熱ブリッジ24?31はやはり硬質のナイロン製で長尺な板状に成形してあり、断面において一端を室内側形材に、他端を室外側形材にカシメ付けて固定することにより、室内側框材と室外側框材をそれぞれに結合している。なお、框材の場合、いずれも断熱ブリッジを2枚平行に用いている。以上のように、断熱サッシ1を構成する各枠材(框材を含む)はすべて室内側と室外側に分離され、断熱ブリッジで結合した構造であるから、サッシ全体が室内側と室外側で熱の伝達を遮断した構成となっている。
【0011】そして、この構成において、下横枠材9は、図4?図8に示すように、断熱枠32と第1の補助形材33、第2の補助形材34及び断熱材の成形品であるシールピース35(断熱結合部材)からなる。図5、図6は図4におけるA-A線、及びB-B線箇所を矢印方向に見た一部断面の透視図である。断熱枠32は、室内側形材32aと室外側形材32bを断熱材21で結合してあり、室外側形材32bには室外側ガイド突条4bだけを設けてある。室内側形材32aは、図1(従来例)で示した下横枠材9の室内側形材9aと実質的に同じ構造となっている。なお、この実施例において室内側形材32aは室内側に立上がり壁36を有し、また、室外側形材32bも室内側に立上がり部37を有する。
【0012】第1の補助形材33は閉じた内障子5が位置する側に、内障子5の左右寸法に相当する長さを有し、室内側形材32aの立上がり壁36から室外側形材32bの立上がり部37にわたる幅寸法で配置してある。第2の補助形材34は内障子5を開けた時に位置する側に、内障子5の左右寸法に相当する長さを有し、室内側形材32aの立上がり壁36から室外側形材32bの立上がり部37を越えて、外障子6の室内側面に近接する位置にわたる幅寸法で配置してある。第1,第2の補助形材33,34はいずれも、上面に内障子5のガイド突条4aを備え、このガイド突条4aから室内側へ延出した部分がカバー部46となっており、また、室外側に下方へ突出する取付け部38、39を備えている。第1、第2の補助形材33,34におけるそれぞれの内障子用ガイド突条4aは取付け部38,39から室内側へ等しい距離の位置に設けてある。
【0013】シールピース35(図7)は、硬質の合成樹脂製で断熱性能があり、左右の両側に切り込みを備え、第1の補助形材33、第2の補助形材34の水平部分と内障子用ガイド突条4aの立上がり部を差し込むことができるようになっている。つまり、両側の第1、第2の補助形材33,34をこのシールピース35で連結する。結合された第1、第2の補助形材33,34では、両側の内障子用ガイド突条4aが1条に整列し、また、内障子用ガイド突条4aと補助形材33,34間の空間がシールピース35の側面によって遮蔽される。
【0014】第1、第2の補助形材33,34は、次のようにしてサッシ枠7の下横枠材9に取付ける。第1の補助形材33の室外側を、室外側形材32bの立上がり部36(当審注:「立上がり部36」は「立上がり部37」の誤記と認める。)の上面に載置する一方、室内側のカバー部46を室内側形材32aの立上がり部35(当審注:「立上がり部35」は「立上がり壁36」の誤記と認める。)の基部に断熱材40を用いて載置する。ついで、第1の補助形材33の室外側縁で下方へ突出した取付け部38を立上がり部36(当審注:「立上がり部36」は「立上がり部37」の誤記と認める。)の室外側面に当て付けてビス41で固定する。これにより、第1の補助形材33を室外側形材32bに取付けるとともに、内障子用ガイド突条4aに作用する力(内障子5の荷重など)を室外側形材32bに負担させることができる。シールピース35を既に取付けた第1の補助形材33の中央側端部にはめ込む。
【0015】第2の補助形材34の室外側を、室外側形材32bの立上がり部36(当審注:「立上がり部36」は「立上がり部37」の誤記と認める。)の上面に載置する一方、室内側のカバー部46を室内側形材32aの立上がり部35(当審注:「立上がり部35」は「立上がり壁36」の誤記と認める。)の基部に断熱材42を用いて載置する(図6)(当審注:「図6」は「図5」の誤記と認める。)。そして、第2の補助形材34の中央側端部をシールピース35の空いている側の側面に差し込み、また、第2の補助形材34の室外側縁で下方へ突出した取付け部39を、断熱材43を用いて立上がり部36(当審注:「立上がり部36」は「立上がり部37」の誤記と認める。)の室外側面に当て付けてビス44で固定する。断熱材43は、第2の補助形材34が立上がり部36(当審注:「立上がり部36」は「立上がり部37」の誤記と認める。)と接する箇所に位置する部分と取付け部39をぐるりと取り囲んだ断面U字形の部分および第2の補助形材34の取付け部39から室外側へ延出している部分の裏面を覆う部分からなっている。この場合も第1の補助形材33の場合と同様に、内障子用ガイド突条4aに作用する力を室外側形材32bに負担させることができる。
【0016】以上の構成であって、断熱サッシ1は、これを構成している枠材をすべて室内側と室外側に分離し、断熱材で結合した構造であるから、断熱性能が高い。特に、障子を閉じたとき外障子5の室内側となる第2の補助形材34を、断熱材44(当審注:「断熱材44」は「断熱材43」の誤記と認める。)によって、低温となる室外側形材32bから熱的に遮断し、同時に、シールピース35によって、召し合わせ部から室内側に侵入する外気から遮断している。室外側形材32bには外障子用ガイド突条4bだけを設け、また、室内側形材32aには内障子用ガイド突条4aがないので、共に断面構成を簡単にすることができる。また、第1、第2の補助形材33,34に設けた内障子用ガイド突条4aに作用する力を外障子用形材32bに支持させているので、外障子用ガイド突条4bを備えた頑丈に設計された室外側形材32bの構造を有効に利用できる。これにより、全体として断熱サッシの製造コストを低減することができる。さらに、従来と同様に、室外側形材32bに内障子5と外障子6の荷重を集中させるので、室内側と室外側の形材32a,32b間の断熱材による結合部分に変位を起こすことが少い。第1、第2の補助形材33,34及びシールピース35に設けたカバー部46は室内側と室外側の形材32a,32b間を連結している断熱材の上部を覆い、断熱材を直射日光と外気から遮断する。以上、実施形態としてサッシの下横枠を中心に説明したが、この発明はサッシの上横枠や障子をガイドするガイド突条を備えた竪枠などにも適用することができる。ガイド突条はその頂面を戸車が転動するようなレールタイプでもよいし、2条のガイド突条の間に障子を案内するタイプであっても良い。室内側形材と室外側形材の連結は、断熱的に行えば良く、断熱結合部材は必ずしも必要としない。例えば、室内側形材と室外側形材の端部どうしを、間に断熱性のシール材を挟んで突き合わせて連結することもできる。この場合、内障子と外障子の召し合わせ部の気密は従来のように障子とともに移動して、障子を閉じたとき嵌まり合う気密ブロックにより達成する。」

ウ 図5、図6、図8は以下のとおり。
【図5】


【図6】


【図8】


エ 上記ア【0007】の室外側形材、室内側形材、第1、第2の補助形材は、それぞれ上記イ【0011】の室外側形材32b、室内側形材32a、第1の補助形材33、第2の補助形材34と同じものであるから、上記アないしウからみて、引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「上下の横枠材8、9、と左右の竪枠材10,11を矩形に組み付け構造のサッシ枠7に、内障子5と外障子6を引き違いに装着した断熱サッシ1であって、
下横枠材9は、断熱枠32と、アルミニウム合金の押出し形材である第1の補助形材33、第2の補助形材34、及び断熱材の成形品であるシールピース35からなり、
断熱枠32は、アルミニウム合金の押出し形材である室内側形材32aと室外側形材32bを断熱材21で結合してあって、
室内側形材32aは室内側に立上がり壁36を有し、また、室外側形材32bも室内側に立上がり部37を有し、
第1の補助形材33は閉じた内障子5が位置する側に、室内側形材32aの立上がり壁36から室外側形材32bの立上がり部37にわたる幅寸法で配置してあり、
第2の補助形材34は内障子5を開けた時に位置する側に、室内側形材32aの立上がり壁36から室外側形材32bの立上がり部37を越えて、外障子6の室内側面に近接する位置にわたる幅寸法で配置してあり、
第1,第2の補助形材33,34はいずれも、その頂面を戸車が転動するレールである内障子5のガイド突条4aを上面に備え、このガイド突条4aから室内側へ延出した部分がカバー部46となっており、また、室外側に下方へ突出する取付け部38、39を備え、
シールピース35は、左右の両側に切り込みを備え、第1の補助形材33、第2の補助形材34の水平部分と内障子用ガイド突条4aの立上がり部を差し込んで連結して、両側の内障子用ガイド突条4aが1条に整列し、
第1の補助形材33の室外側を、室外側形材32bの立上がり部37の上面に載置し、取付け部38を立上がり部37の室外側面に当て付けてビス41で固定し、
第2の補助形材34の室外側を、室外側形材32bの立上がり部37の上面に載置し、取付け部39を、断熱材43を用いて立上がり部37の室外側面に当て付けてビス44で固定し、
断熱材43は、第2の補助形材34が立上がり部37と接する箇所に位置する部分と取付け部39をぐるりと取り囲んだ断面U字形の部分および第2の補助形材34の取付け部39から室外側へ延出している部分の裏面を覆う部分からなっている、
断熱サッシ1。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「サッシ枠7」、「引き違いに装着した」「内障子5と外障子6」は、それぞれ本願補正発明の「枠体」、「開閉可能な障子」に相当する。
引用発明の「断熱サッシ1」は、その「サッシ枠7」の「下横枠材9は、断熱枠32と第1の補助形材33、第2の補助形材34」からなり、該「断熱枠32は、室外側形材32aと室外側形材32bを断熱材21で結合してあ」ることからみて、断熱性能の異なる複数の材料から構成されるから、本願補正発明の「複合建具」に相当する。
よって、引用発明の「サッシ枠7に、内障子5と外障子6を引き違いに装着した断熱サッシ1」は、本願補正発明の「枠体内に開閉可能な障子を納めた複合建具」に相当する。

イ 引用発明の「下横枠材9」の「アルミニウム合金の押出し形材である」「屋外側形材32b」の「室内側に」「有する」「立上がり部37」は、内障子5を空けた時に位置する側と、閉じた内障子5が位置する側とに分けると、それぞれ、本願補正発明の「下枠に設けた金属製の第二基部」または「下枠に設けた金属製の第一基部」に相当する。

ウ 引用発明において、「ガイド突条4a」は、「その頂面を戸車が転動するレールとなる」ことから、「障子を案内する」ものといえるので、引用発明の「上面にガイド突条4aを備え」た「アルミニウム合金の押出し形材である[KM1]第1の補助形材33、第2の補助形材34」は、それぞれ本願補正発明の「障子を案内する金属製の第二レール部」,「障子を案内する金属製の第一レール部」に相当する。

エ 引用発明において、「第2の補助形材34の室外側を、室外側形材32bの立上がり部37の上面に載置し、取付け部39を、断熱材43を用いて立上がり部37の室外側面に当て付けてビス44で固定し」たときに、「断熱材43は、第2の補助形材34が立上がり部37と接する箇所に位置する部分と取付け部39をぐるりと取り囲んだ断面U字形の部分」「からなっている」ことからみて、断熱材43は、立上がり部37と第2の補助形材34との間に設けられた仲介部材ということができる。また、断熱材は熱伝導を絶縁するものであることは自明な事項である。よって、引用発明の「第2の補助形材34が立上がり部37と接する箇所に位置する部分と取付け部39をぐるりと取り囲んだ断面U字形の部分」「からなっている」「断熱材43」と、本願補正発明の「前記第一基部と前記第一レール部との間に設けられ、前記第一基部と前記第一レール部との間を絶縁する樹脂製の仲介部材」とは、「前記第一基部と前記第一レール部との間に設けられ、前記第一基部と前記第一レール部との間を絶縁する仲介部材」で共通する。

オ 上記イないしエからみて、引用発明の「立上がり部37」と「第2の補助形材34」と「断熱材43」を合わせて、本願補正発明の「第一レール」に相当する。

カ 上記イ及びウからみて、引用発明の「立上がり部37」と「第1の補助形材33」を合わせて、本願補正発明の「第二レール」に相当する。

キ 引用発明の「第1補助形材33の室内側縁で下方へ突出した取付け部38を立上がり部37の室外側面に当て付けてビス41で固定する」ことは、本願補正発明の「第二基部上に直接第二レール部が配設されて」いることに相当する。

ク 引用発明の「シールピース35は、左右の両側に切り込みを備え、第1の補助形材33、第2の補助形材34の水平部分と内障子用ガイド突条4aの立上がり部を差し込んで連結して、両側の内障子用ガイド突条4aが1条に整列」することは、本願補正発明の「前記第一レールと前記第二レールは、互いに同一の長手方向に沿って配設されていること」に相当する。

ケ 上記アないしクからみて、本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
【一致点】枠体内に開閉可能な障子を納めた複合建具であって、
前記枠体の下枠に設けていて前記障子を案内する第一レールおよび第二レールを備え、
前記第一レールは、
前記下枠に設けた金属製の第一基部と、
前記障子を案内する金属製の第一レール部と、
前記第一基部と前記第一レール部との間に設けられ、前記第一基部と前記第一レール部との間を絶縁する仲介部材と、を備え、
前記第二レールは、
前記下枠に設けた金属製の第二基部と、
前記障子を案内する金属製の第二レール部と、を備え、
前記第二レールは、前記第二基部上に直接前記第二レール部が配置されており、
前記第一レールと前記第二レールは、互いに同一の長手方向に沿って配設されていることを特徴とする複合建具。

【相違点】仲介部材について、本願補正発明は、樹脂製であるのに対し、引用発明は、断熱材であるものの、その材質の特定はない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
断熱サッシを構成する断熱材の材質について、樹脂製とすることは、ごく一般的なことである。
また、引用文献には、「断熱ブリッジ20?23は硬質のナイロン製」(上記(1)イの【0009】)及び「シールピース35(図7)は、硬質の合成樹脂製で断熱性能があり」(上記(1)イの【0013】)と記載されているように、断熱性能のある部材について、樹脂製とすることが示唆されているといえる。
したがって、引用発明の断熱材43を樹脂製とすることにより、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、この相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
令和1年10月7日にされた手続補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成31年1月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献3:特開平11-303509号公報


3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、上記第2の2に記載した限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-06-01 
結審通知日 2020-06-02 
審決日 2020-06-19 
出願番号 特願2015-193755(P2015-193755)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 斉昭  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 住田 秀弘
秋田 将行
発明の名称 複合建具  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 川渕 健一  
代理人 清水 雄一郎  

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