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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 E02F 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 E02F 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 E02F 審判 全部申し立て 2項進歩性 E02F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 E02F |
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管理番号 | 1364906 |
異議申立番号 | 異議2019-700541 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-07-09 |
確定日 | 2020-07-06 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6462794号発明「ショベル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6462794号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6462794号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6462794号は、平成25年3月6日に出願された特願2013-44534号の一部として平成29年8月3日に新たな特許出願がされたものであり、平成31年1月11日にその特許権の設定登録がされ、平成31年1月30日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許について、令和1年7月9日に特許異議申立人 清水すみ子(以下、「申立人」という。)より、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、請求項1ないし5に対して特許異議の申立てがされた。 その後の経緯は、以下のとおりである。 令和 1年 9月30日(発送日): 取消理由通知 令和 1年11月29日: 意見書の提出 令和 2年 1月 6日(発送日): 取消理由通知(決定の予告) 令和 2年 3月 6日: 意見書の提出及び訂正の請求 なお、申立人に対して、令和2年3月6日付け訂正請求があった旨を通知(令和2年3月23日発送)したところ、指定期間内に申立人による意見書の提出はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和2年3月6日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、該上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントを含んで構成されるショベルであって、前記上部旋回体に備えられ、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する人検知手段と、前記ショベルに搭載され、前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定する判定手段と、を有し、前記ショベルの油圧アクチュエータと該油圧アクチュエータを操作する操作部との間が油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知した場合、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しないことを特徴とするショベル。」と記載されているのを、「下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、該上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、それぞれが油圧ポンプからのパイロット圧を油圧回路が送り込むことで動作する切削用、旋回用、及び前後進用の油圧アクチュエータと、を含み、前記上部旋回体に備えられるエンジン、前記上部旋回体に備えられるキャブ、前記キャブ内に設けられる前記エンジンのキースイッチ、前記上部旋回体に備えられるカメラ、及び、前記エンジンを前記キースイッチの選択位置に基づいて制御するコントローラを有する、ショベルであって、前記アクチュエータを操作する操作レバーをオペレーターが操作しても対応する前記油圧アクチュエータが動作しない油圧ロック状態を選択可能な油圧ロックレバーを有し、前記油圧ロック状態とは、前記操作レバーの操作に伴い前記油圧アクチュエータを動作させるためのパイロット圧を生成する油圧回路が遮断された状態であり、前記コントローラは、前記カメラからの入力画像に画像処理を行い前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する人検知手段と、前記人検知手段が人を検知するか否かを判定する判定手段と、を有するとともに、前記コントローラは、前記人検知手段より前記カメラからの入力画像に画像処理を行い、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知し、前記エンジンの始動許可判定時に、前記判定手段より前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定し、前記エンジンの始動許可判定時には前記油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知する場合がある、ショベル。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する訂正後請求項2、3、4、及び5も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 願書に添付した明細書の段落【0006】に「本発明の実施形態に係るショベルは、下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、該上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントを含んで構成されるショベルであって、前記上部旋回体に備えられ、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する人検知手段と、前記ショベルに搭載され、前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定する判定手段と、を有し、前記ショベルの油圧アクチュエータと該油圧アクチュエータを操作する操作部との間が油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知した場合、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない。」と記載されているのを、「本発明の実施形態に係るショベルは、下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、該上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、それぞれが油圧ポンプからのパイロット圧を油圧回路が送り込むことで動作する切削用、旋回用、及び前後進用の油圧アクチュエータと、を含み、前記上部旋回体に備えられるエンジン、前記上部旋回体に備えられるキャブ、前記キャブ内に設けられる前記エンジンのキースイッチ、前記上部旋回体に備えられるカメラ、及び、前記エンジンを前記キースイッチの選択位置に基づいて制御するコントローラを有する、ショベルであって、前記アクチュエータを操作する操作レバーをオペレーターが操作しても対応する前記油圧アクチュエータが動作しない油圧ロック状態を選択可能な油圧ロックレバーを有し、前記油圧ロック状態とは、前記操作レバーの操作に伴い前記油圧アクチュエータを動作させるためのパイロット圧を生成する油圧回路が遮断された状態であり、前記コントローラは、前記カメラからの入力画像に画像処理を行い前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する人検知手段と、前記人検知手段が人を検知するか否かを判定する判定手段と、を有するとともに、前記コントローラは、前記人検知手段より前記カメラからの入力画像に画像処理を行い、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知し、前記エンジンの始動許可判定時に、前記判定手段より前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定し、前記エンジンの始動許可判定時には前記油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知する場合がある。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正目的、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (ア)「油圧アクチュエータ」についての特定の付加 訂正事項1のうち、請求項1における「油圧アクチュエータ」について、訂正前においては特段の付加的特定がなかったところ、「それぞれが油圧ポンプからのパイロット圧を油圧回路が送り込むことで動作する切削用、旋回用、及び前後進用の油圧アクチュエータ」と訂正した点は、訂正前の請求項1に係る発明を限定したものと認めることができる。 (イ)「ショベル」が有する構成の付加 訂正事項1のうち、請求項1における「ショベル」について、「前記上部旋回体に備えられるエンジン、前記上部旋回体に備えられるキャブ、前記キャブ内に設けられる前記エンジンのキースイッチ、前記上部旋回体に備えられるカメラ、及び、前記エンジンを前記キースイッチの選択位置に基づいて制御するコントローラを有する、」との特定を付加した点は、訂正前の請求項1に係る発明を限定したものと認めることができる。 (ウ)「油圧ロック状態」についての特定の具体化 訂正事項1のうち、請求項1における「油圧ロック状態」について、訂正前には「油圧アクチュエータと該油圧アクチュエータを操作する操作部との間が油圧ロック状態」と記載されていたところ、「前記アクチュエータを操作する操作レバーをオペレーターが操作しても対応する前記油圧アクチュエータが動作しない油圧ロック状態を選択可能な油圧ロックレバーを有し、前記油圧ロック状態とは、前記操作レバーの操作に伴い前記油圧アクチュエータを動作させるためのパイロット圧を生成する油圧回路が遮断された状態であり、」との記載に訂正した点は、訂正前の請求項1に係る発明を限定したものと認めることができる。 (エ)「人検知手段」についての特定の付加 訂正事項1のうち、請求項1における「前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する人検知手段」について、「前記コントローラ」が有するものとしたうえで、「前記カメラからの入力画像に画像処理を行い」との記載を加えた点は、訂正前の請求項1に係る発明を限定したものと認めることができる。 (オ)「判定手段」についての特定の付加 訂正事項1のうち、請求項1における「前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定する判定手段」について、「前記コントローラ」が有するものとしたうえで、判定の動作について、「前記コントローラは、前記人検知手段より前記カメラからの入力画像に画像処理を行い、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知し、前記エンジンの始動許可判定時に、前記判定手段より前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定」すると具体的に特定した点は、訂正前の請求項1に係る発明を限定したものと認めることができる。 (カ)「油圧ロック状態」と「判定手段が人を検知」との関係の整理、及び各々についての特定の付加 訂正事項1のうち、請求項1において、「油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知した場合、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」との記載を、上記(ウ)において「油圧ロック状態」を具体的に特定したうえで、「前記油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知する場合がある」と整理するとともに、「油圧ロック状態」で「判定手段」が「人を検知」する場合があるのは、「前記エンジンの始動許可判定時」であるとの特定を追加した点は、訂正前の請求項1に係る発明を限定するとともに、訂正前において明瞭でなかった記載を釈明することを目的としたものと、認めることができる。 (キ)小括 訂正事項1は、訂正前の請求項1における上記(カ)の明瞭でなかった記載を明瞭とするとともに、上記(ア)ないし(カ)の点で訂正前の請求項1に係る発明を限定するものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び同条同項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定にも適合するものである。 イ 新規事項の有無 (ア)「油圧アクチュエータ」についての特定の付加 訂正事項1のうち、「油圧アクチュエータ」についての特定の付加に関して、明細書の段落【0018】には、「この図示しない油圧ポンプは、ショベル60が含む周知の油圧回路においてパイロット圧を生成している。キャビン64内の運転室に備えられる複数の操作レバー(操作部)がオペレーターにより操作されると、対応する複数の切削用、旋回用、前後進用の油圧アクチュエータのそれぞれにパイロット圧が送り込まれて動作される。つまり、ショベル60における切削、旋回、前後進の動作が適宜、オペレーターにより選択される。」と記載されている。 当該段落【0018】の記載より、訂正事項1において、「油圧アクチュエータ」について「それぞれが油圧ポンプからのパイロット圧を油圧回路が送り込むことで動作する切削用、旋回用、及び前後進用の油圧アクチュエータ」と訂正した点は、明細書に記載されていたものと認められる。 (イ)「ショベル」が有する構成の付加 訂正事項1のうち、ショベルが有する構成の付加に関して、明細書の段落【0013】-【0016】には、次の記載がある。 「【0013】 本実施例1のショベルの始動許可装置1は、図2に示すように、ショベル60(建設機械)に適用される。ショベル60は、クローラ式の下部走行体61の上に、旋回機構62を介して、上部旋回体63を旋回軸PVの周りで旋回自在に搭載している。 【0014】 また、上部旋回体63は、その前方左側部にキャビン(運転室)64を備え、その前方中央部に掘削アタッチメントE(ブーム、アーム、バケット)を備えている。さらに、上部旋回体63は、その左側面、右側面及び後面にそれぞれ対応する上述したカメラ2(カメラ2L、カメラ2R、カメラ2B)を備えている。 【0015】 図1に示したエンジン3は、上部旋回体63内部のいずれかの箇所に設置される。また、キースイッチ4は、キャビン64内のオペレーター(操作者)の操作可能な位置に設置される。キースイッチ4の選択位置はスタート、オン、オフの三つであり、選択位置がスタートである場合に、周知の始動回路に基づいて、コントローラ5に始動信号が出力される。 【0016】 なお、キースイッチ4の選択位置がオフの場合は、エンジン3を停止する停止指令をコントローラ5がエンジン3に出力するとともに、ショベル60内の電源をオフとする。また、キースイッチ4の選択位置がオンの場合は、スタートを経由している場合は、エンジン3の駆動が継続され、オフを経由している場合は、エンジン3は停止したままショベル60内の電源はオンとされる。なお、本実施例1のキースイッチ4は一例であり、上述した三つの選択位置の他に選択位置(例えば、エンジン3のグロープラグ予熱位置やアクセサリ電源位置等)を備えるものであってもよい。」 上記段落【0013】-【0016】の記載より、訂正事項1において、「ショベル」が「前記上部旋回体に備えられるエンジン、前記上部旋回体に備えられるキャブ、前記キャブ内に設けられる前記エンジンのキースイッチ、前記上部旋回体に備えられるカメラ、及び、前記エンジンを前記キースイッチの選択位置に基づいて制御するコントローラを有する」との特定を付加した点は、明細書に記載されていたものと認められる。 (ウ)「油圧ロック状態」についての特定の具体化 訂正事項1のうち、「油圧ロック状態」についての特定の具体化に関して、明細書の段落【0032】には、次の記載がある。 「【0032】 ここで図5に示すように、キャビン64内の座席Sの左方には通常、油圧ロックレバー6が設置されている。この油圧ロックレバー6を手前側に引き図5中「L」で示す位置まで移動させると「油圧ロック状態」が選択される。「油圧ロック状態」においては、ショベル60内の油圧回路内に設けられたシャット弁が、キャビン64内の操作レバーと油圧アクチュエータとの間の油圧回路を遮断する。つまり、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する油圧アクチュエータが動作しない。」 上記段落【0032】の記載より、訂正事項1において、「油圧ロック状態」について「前記アクチュエータを操作する操作レバーをオペレーターが操作しても対応する前記油圧アクチュエータが動作しない油圧ロック状態を選択可能な油圧ロックレバーを有し、前記油圧ロック状態とは、前記操作レバーの操作に伴い前記油圧アクチュエータを動作させるためのパイロット圧を生成する油圧回路が遮断された状態であり、」との記載を付加した点は、明細書に記載されていたものと認められる。 (エ)「人検知手段」についての特定の付加 訂正事項1のうち、上記ア(エ)の点に関して、明細書の段落【0021】には、「コントローラ5の人検知手段5aは、三つのカメラ2からの入力画像について、周知の画像処理により例えばオプティカルフローを求めて、ショベル60周辺の所定範囲CL、CR、CB内の人を検知する。コントローラ5の始動手段5bは、キースイッチ4の選択位置がスタートであって、本実施例1の判定手段5cによる許可条件を満たす場合に、エンジン3を始動する始動信号をエンジン3に対して出力する。」と記載されているから、訂正事項1のうち、「前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する人検知手段」について、「前記コントローラ」が有するものとしたうえで、「前記カメラからの入力画像に画像処理を行い」との記載を加えた点は、明細書に記載されていたものと認められる。 (オ)「判定手段」と「油圧ロック状態」との関係の整理、及び各々についての特定の付加 訂正事項1のうち、「判定手段」と「油圧ロック状態」との関係の整理、及び各々についての特定の付加に関して、明細書の段落【0023】-【0025】及び【0035】-【0039】には、次の記載がある。 「【0023】 以下に本実施例1のショベルの始動許可装置1の制御内容について図4に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。ステップS1に示すように、コントローラ5の判定手段5cは、キースイッチ4の選択位置がスタートであるか否かを判定し、肯定であればステップS2にすすみ、否定であればENDにすすむ。 【0024】 ステップS2において、コントローラ5の人検知手段5aは、三つのカメラ2からの入力画像を上述した所定の画像処理を行って、所定範囲CL、CR、CBのいずれかに位置する人を検出する。つづいて、ステップS3において、コントローラ5の判定手段5cは、人検知手段5aにより人が検出されて「人有り?」の状態であるか否かを判定する。 【0025】 ステップS3において、判定手段5cにより否定と判定される場合、つまり、所定範囲CL、CR、CBに人がいない場合には、ステップS4にすすむ。ステップS4において、コントローラ5の許可手段5dはエンジン3の始動を許可する。この許可に基づいて、コントローラ5の始動手段5bは、エンジン3に対して始動信号を出力し、エンジン3が始動される。」 「【0035】 そこで本実施例2のショベルの始動許可装置11では、図5に示すように、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」か「油圧ロック解除状態」のいずれであるかを、例えばポテンショメータなどの位置検出スイッチを用いてコントローラ5に入力する構成とする。 【0036】 コントローラ5の許可手段5dは、実施例1で述べたものと同様の所定範囲CL、CR、CBに人がおらず、キースイッチ4の選択位置がスタートとされ、かつ、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」である許可条件にて、エンジン3の始動を許可する。 【0037】 つまり本実施例2のショベルの始動許可装置11が含むコントローラ5の制御内容は、図7に示すように、図4に示したフローチャートに比べて、ステップS6が追加される。ステップS3にて、判定手段5cにより所定範囲CL、CR、CBに人がいないと判定され、かつ、ステップS6において、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」である場合に、ステップS4にすすんで、許可手段5dにより、エンジン3の始動が許可される。 【0038】 ステップS3において、判定手段5cにより、所定範囲CL、CR、CBに人がいないと判定され、ステップS6にて、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」でないと判定される場合には、ステップS5にすすむ。ステップS5において、許可手段5dが、エンジン3の始動を不許可とする。 【0039】 なお、本実施例2においても、ステップS3において、所定範囲CL、CR、CBに人がいると判定手段5cにより判定される場合には、ステップS5にすすんで、許可手段5dにより、エンジン3の始動は不許可とされる。図7に示したフローチャートもコントローラ5の制御周期毎に繰り返し実行され、本発明のショベルの始動許可方法が実行される。」 上記【0023】-【0025】及び【0035】-【0039】の記載より、訂正事項1において、「判定手段」を「コントローラ」が有するものとした点、判定の動作について、「前記コントローラは、前記人検知手段より前記カメラからの入力画像に画像処理を行い、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知し、前記エンジンの始動許可判定時に、前記判定手段より前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定」するとした点、及び、「油圧ロック状態」で「判定手段」が「人を検知」する場合があるのは、「前記エンジンの始動許可判定時」であるとの特定を追加した点は、いずれも明細書に記載されていたものと認められる。 (カ)小括 したがって、訂正事項1は、明細書及び図面に記載された事項の範囲内で、訂正前の請求項1に係る発明の明瞭化及び限定を行う訂正事項であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の請求項1の記載と、明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。この訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定にも適合するものである。 (3)一群の請求項、及び独立特許要件について 訂正前の請求項1?5について、請求項2?5はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正がされるものである。そのため、請求項1?5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。 訂正事項1は、一群の請求項である訂正前の請求項1?5について、明瞭でない記載の釈明を行うとともに限定を行い、訂正後の請求項1?5とするものである。 また、訂正事項2は、訂正事項1による訂正がなされた請求項1?5について、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるものである。 すなわち、訂正事項1ないし2の訂正は、一群の請求項[1?5]に対して請求されたものである。 そして、本件においては、訂正前の請求項1?5について特許異議の申立てがされているから、訂正事項1ないし2の訂正は、いずれも特許異議の申立てがされている請求項に係る訂正であり、訂正事項1により特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正後の請求項1ないし5に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (4)申立人の主張 本件訂正請求があった旨を申立人に通知したところ、指定期間内に申立人からの応答はなく、申立人による本件訂正請求に対する意見の主張はなされていない。 3 小括 以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5ただし書第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1?5]について訂正を認める。 第3 本件訂正発明 本件訂正請求により訂正された請求項1ないし5に係る発明(以下、各々を「本件訂正発明1」等といい、請求項1ないし5に係る発明をまとめて「本件訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 本件訂正発明1 「【請求項1】 下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、該上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、それぞれが油圧ポンプからのパイロット圧を油圧回路が送り込むことで動作する切削用、旋回用、及び前後進用の油圧アクチュエータと、を含み、 前記上部旋回体に備えられるエンジン、前記上部旋回体に備えられるキャブ、前記キャブ内に設けられる前記エンジンのキースイッチ、前記上部旋回体に備えられるカメラ、及び、前記エンジンを前記キースイッチの選択位置に基づいて制御するコントローラを有する、ショベルであって、 前記アクチュエータを操作する操作レバーをオペレーターが操作しても対応する前記油圧アクチュエータが動作しない油圧ロック状態を選択可能な油圧ロックレバーを有し、 前記油圧ロック状態とは、前記操作レバーの操作に伴い前記油圧アクチュエータを動作させるためのパイロット圧を生成する油圧回路が遮断された状態であり、 前記コントローラは、前記カメラからの入力画像に画像処理を行い前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する人検知手段と、前記人検知手段が人を検知するか否かを判定する判定手段と、を有するとともに、 前記コントローラは、前記人検知手段より前記カメラからの入力画像に画像処理を行い、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知し、前記エンジンの始動許可判定時に、前記判定手段より前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定し、 前記エンジンの始動許可判定時には前記油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知する場合がある、 ショベル。」 本件訂正発明2 「【請求項2】 前記動作しない油圧アクチュエータは、旋回モータである、 請求項1記載のショベル。」 本件訂正発明3 「【請求項3】 前記動作しない油圧アクチュエータは、走行モータである、 請求項1又は2に記載のショベル。」 本件訂正発明4 「【請求項4】 前記人検知手段は、前記上部旋回体に設けられるステレオカメラに基づいて人を検知する、 請求項1乃至3の何れかに記載のショベル。」 本件訂正発明5 「【請求項5】 前記ステレオカメラは、前記上部旋回体に2つ以上設けられる、 請求項4記載のショベル。」 第4 証拠一覧、異議申立理由の概要、及び取消理由の概要、及び証拠の記載 1 証拠一覧 (1)申立書とともに提出された証拠は、以下のとおりである。 甲第1号証; 特開2010-198519号公報 (平成22年9月9日公開) 甲第2号証; 特開2005-307491号公報 (平成17年11月4日公開) 甲第3号証; 特開2010-71425号公報 (平成22年4月2日公開) 甲第4号証; 実願昭63-51427号(実開平1-156256号) のマイクロフィルム (平成1年10月26日公開) 甲第5号証; 特開2005-233639号公報 (平成17年9月2日公開) 甲第6号証; 特開2006-31101号公報 (平成18年2月2日公開) (2)当審が職権で探知した証拠は、次のとおりである。 文献1; 特開2014-173258号公報 (本件原出願の公開公報、平成26年9月22日公開) 文献2; 国際公開第2012/161062号 (2012年11月29日国際公開) 2 異議申立理由、及び取消理由の要旨 (1)申立人による異議申立理由 申立人による異議申立理由の要旨は、次のとおりである。 ア(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明が有する、「前記ショベルの油圧アクチュエータと該油圧アクチュエータを操作する操作部との間が油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知した場合、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」との構成について、発明の詳細な説明には、当業者がその実施をすることができる程度の明確かつ十分な記載がされていない。 そのため、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件特許の請求項1ないし5に係る発明について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 イ(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明が有する、「前記ショベルの油圧アクチュエータと該油圧アクチュエータを操作する操作部との間が油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知した場合、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」という事項は、本件明細書及び図面に記載も示唆もされていない。 そのため、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 ウ(明確性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明が有する、「前記ショベルの油圧アクチュエータと該油圧アクチュエータを操作する操作部との間が油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知した場合、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」という事項は、不明確である。 そのため、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 エ(甲第1号証を主たる引用例とした進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第6号証にも示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 オ(甲第2号証を主たる引用例とした進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第2号証に記載された発明、及び甲第1号証に記載された発明、並びに甲第3号証ないし甲第6号証にも示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)令和2年1月6日発送の取消理由(決定の予告) 当審が令和2年1月6日(発送日)に特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 ア(明確性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、「前記ショベルの油圧アクチュエータと該油圧アクチュエータを操作する操作部との間が油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知した場合、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」という事項について、下記(ア)及び(イ)のいずれの趣旨であるのか、明確でない。 (ア)「判定手段が人を検知した」ことを、「油圧ロック状態」であることと同様に、「操作レバーをオペレータが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」という結果に至るか否かに影響するものとする趣旨。 (イ)「油圧ロック状態」であれば「判定手段が人を検知」することとは無関係に必ず「操作レバーをオペレータが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」状態となるところ、単に「油圧ロック状態」において「判定手段が人を検知」する場合があることを付記した趣旨。 そのため、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、それらの発明に係る特許は取り消すべきものである。 イ(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明が有する、「前記ショベルの油圧アクチュエータと該油圧アクチュエータを操作する操作部との間が油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知した場合、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」という事項は、上記アのとおり不明確であるところ、上記ア(ア)のとおり、「判定手段が人を検知した」ことを、「油圧ロック状態」であることと同様に、「操作レバーをオペレータが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」という結果に至るか否かに影響するものとする趣旨とすれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、油圧ロックレバーを「油圧ロック状態」とするだけで「操作レバーをオペレーターが操作しても対応する油圧アクチュエータが動作しない」状態になるショベルにおいて、「判定手段が人を検知した」ことを「操作レバーをオペレータが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」という状態に至るためのさらなる条件とする改変を行うために、いかなる技術的処理を加えればよいのか、何ら説明されていない。 そのため、本件明細書の発明の詳細な説明は、請求項1ないし5に係る発明について、当業者が実施できる程度の明確かつ十分な説明を記載しておらず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、それらの発明に係る特許は取り消すべきものである。 ウ(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明が有する、「人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定する」との事項、及び、当該「判定」を含む処理の全体について、本件明細書には、ショベルのエンジンの始動許可において実行される制御フローとしての開示しかなく、当該処理をエンジンの始動許可時を離れて実施することは記載も示唆もされていない。 また、本件特許の請求項1ないし5に係る発明が有する、「前記ショベルの油圧アクチュエータと該油圧アクチュエータを操作する操作部との間が油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知した場合、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」という事項は、上記アのとおり不明確であるところ、上記ア(ア)のとおり、「判定手段が人を検知した」ことを、「油圧ロック状態」であることと同様に、「操作レバーをオペレータが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」という結果に至るか否かに影響するものとする趣旨とすれば、本件明細書には、油圧ロックレバーを「油圧ロック状態」とするだけで「操作レバーをオペレーターが操作しても対応する油圧アクチュエータが動作しない」状態になるショベルにおいて、「判定手段が人を検知した」ことを「操作レバーをオペレータが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」という状態に至るためのさらなる条件とすることは、記載も示唆もされていない。 そのため、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、それらの発明に係る特許は取り消すべきものである。 エ(分割不適、及び文献1を主たる引用例とした新規性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、原出願の当初明細書等に記載された発明の一部を新たな特許出願としたものということができず、本件特許の出願日は実際に分割出願を行った日となる。 そして、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 オ(分割不適、及び文献1を主たる引用例とした進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、原出願の当初明細書等に記載された発明の一部を新たな特許出願としたものということができず、本件特許の出願日は実際に分割出願を行った日となる。 そして、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 カ(甲第2号証を主たる引用例とした進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前かつ原出願の出願前に頒布された甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明、若しくは甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明並びに文献2に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 キ(甲第4号証を主たる引用例とした進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前かつ原出願の出願前に頒布された甲第4号証及び甲第2号証に記載された発明、若しくは甲第4号証及び甲第2号証に記載された発明並びに文献2に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 3 証拠の記載 事案に鑑み、(1)文献1、(2)甲第2号証、(3)甲第4号証、(4)甲第1号証、(5)文献2、(6)甲第3号証、(7)甲第5号証の順に、証拠の記載を確認すると、各証拠の記載は以下のとおりである。 (1)文献1(特開2014-173258号公報) ア 記載事項 原出願の公開公報であり、本件特許の分割出願日より前に頒布された刊行物である、文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下、同様。)。 (ア)背景技術、課題を解決するための手段 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、建設機械において、エンジンの始動時の安全性を確保する建設機械の始動許可装置、建設機械の始動許可方法に関する。 【背景技術】 【0002】 ショベル等の建設機械として例えば特許文献1に記載のものがある。この技術においては、機械と周囲の作業員等の障害物との接触を防止するため、障害物との距離や建設機械の切削や旋回などの動作に対応させて危険である場合に警報を行うことが提案されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開2010-198519号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 ところが、上述した特許文献1に記載の従来技術においては、建設機械のエンジンの始動時において、建設機械の周辺の作業員の安全を確保する技術については開示されていない。 【0005】 本発明においては、より確実にエンジン始動時の周辺の作業員の安全を確保することができる建設機械の始動許可装置、建設機械の始動許可方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記の問題を解決するため、本発明による建設機械の始動許可装置は、建設機械の周辺の所定範囲内の人を検知する人検知手段と、前記建設機械のエンジンを始動させる始動手段と、前記人検知手段が前記人を検知するか否かを判定する判定手段と、当該判定手段が否定と判定する場合に前記エンジンの前記始動手段による始動を許可する許可手段を含むことを特徴とする。ここで、前記建設機械の油圧アクチュエータと当該油圧アクチュエータを操作する操作部との間を油圧ロック状態において遮断する油圧ロックレバーを含み、当該油圧ロックレバーが前記油圧ロック状態である場合に、前記許可手段が前記始動を許可することとしてもよい。 【0007】 上記の問題を解決するため、本発明による建設機械の始動許可方法は、建設機械の周辺の所定範囲内の人を検知する人検知ステップと、前記人検知ステップにおいて前記人を検知するか否かを判定する判定ステップと、当該判定ステップにおいて否定と判定される場合に前記建設機械のエンジンの始動を許可する許可ステップを含むことを特徴とする。 【発明の効果】 【0008】 本発明によれば、周辺に人(特に作業員)が存在する場合には、エンジンの始動を許可しないものとして、周辺の人(作業員)の安全をより確実に確保することができる。」 (イ)実施例1 「【実施例1】 【0011】 本実施例1の建設機械の始動許可装置1は、図1に示すように、カメラ2と、エンジン3をキースイッチ4の選択位置(スタート、オン、オフ)に基づいて制御するコントローラ5とを含んで構成される。 【0012】 コントローラ5は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)及びこれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェース等を備えたコンピュータである。 【0013】 本実施例1のコントローラ5は、例えば、本発明の始動許可方法を実行するプログラムをROMやNVRAMに記憶している。コントローラ5は、一時記憶領域としてRAMを利用しながら対応する処理をCPUに実行させることで、人検知手段5a、始動手段5b、判定手段5c、許可手段5dを構成する。 【0014】 本実施例1の建設機械の始動許可装置1は、図2に示すように、ショベル60(建設機械)に適用される。ショベル60は、クローラ式の下部走行体61の上に、旋回機構62を介して、上部旋回体63を旋回軸PVの周りで旋回自在に搭載している。 【0015】 また、上部旋回体63は、その前方左側部にキャブ(運転室)64を備え、その前方中央部に掘削アタッチメントE(ブーム、アーム、バケット)を備えている。さらに、上部旋回体63は、その左側面、右側面及び後面にそれぞれ対応する上述したカメラ2(カメラ2L、カメラ2R、カメラ2B)を備えている。 【0016】 図1に示したエンジン3は、上部旋回体63内部のいずれかの箇所に設置される。また、キースイッチ4は、キャブ64内のオペレーター(操作者)の操作可能な位置に設置される。キースイッチ4の選択位置はスタート、オン、オフの三つであり、選択位置がスタートである場合に、周知の始動回路に基づいて、コントローラ5に始動信号が出力される。 【0017】 なお、キースイッチ4の選択位置がオフの場合は、エンジン3を停止する停止指令をコントローラ5がエンジン3に出力するとともに、ショベル60内の電源をオフとする。また、キースイッチ4の選択位置がオンの場合は、スタートを経由している場合は、エンジン3の駆動が継続され、オフを経由している場合は、エンジン3は停止したままショベル60内の電源はオンとされる。なお、本実施例1のキースイッチ4は一例であり、上述した三つの選択位置の他に選択位置(例えば、エンジン3のグロープラグ予熱位置やアクセサリ電源位置等)を備えるものであってもよい。 【0018】 本実施例1の建設機械の始動許可装置1においては、上述したキースイッチ4の選択位置がスタートとされ、かつ、以下に述べる実施例1の許可条件が成立した場合に、始動手段5bがエンジン3に対して始動指令を出力する。エンジン3はこの始動指令に基づいて始動されて、エンジン3の駆動軸に連結された図示しない油圧ポンプが駆動される。 【0019】 この図示しない油圧ポンプは、ショベル60が含む周知の油圧回路においてパイロット圧を生成している。キャブ64内の運転室に備えられる複数の操作レバー(操作部)がオペレーターにより操作されると、対応する複数の切削用、旋回用、前後進用の油圧アクチュエータのそれぞれにパイロット圧が送り込まれて動作される。つまり、ショベル60における掘削、旋回、前後進の動作が適宜、オペレーターにより選択される。 【0020】 カメラ2は、図1に示したように、ショベル60の周囲を映し出す入力画像を取得するための装置である。ここで、カメラ2は単眼タイプであり、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を備える。実施例1におけるカメラ2は、図3に示すオペレーターの死角となりやすい所定範囲CL、CR、CBをそれぞれ撮像する。 【0021】 カメラ2Lは左側面の一点鎖線で示す扇形状の所定範囲CLを撮像し、カメラ2Rは右側面の一点鎖線で示す扇形状の所定範囲CRを撮像し、カメラ2Bは後面の一点鎖線で示す扇形状の所定範囲CBを撮像する。なお、カメラ2の設置箇所は上述した三箇所に限られるものではなく、オペレーターの死角となる範囲をカバーできるものであればよい。例えばカメラ2は、上部旋回体63の右側面及び後面のみ、又は前面と右側面、後面と左側面の全てに取り付けられていてもよい。カメラ2は、撮像により取得した入力画像をコントローラ5に対して出力する。 【0022】 コントローラ5の人検知手段5aは、三つのカメラ2からの入力画像について、周知の画像処理により例えばオプティカルフローを求めて、ショベル60周辺の所定範囲CL、CR、CB内の人を検知する。コントローラ5の始動手段5bは、キースイッチ4の選択位置がスタートであって、本実施例1の判定手段5cによる許可条件を満たす場合に、エンジン3を始動する始動信号をエンジン3に対して出力する。 【0023】 本実施例1の許可条件は以下の通りである。つまり、コントローラ5の判定手段5cは、キースイッチ4の選択位置がスタートである場合に、人検知手段5aが人を検知するか否かを判定し、この判定手段5cが否定と判定する場合にエンジン3の始動手段5bによる始動を許可する。 【0024】 以下に本実施例1の建設機械の始動許可装置1の制御内容について図4に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。ステップS1に示すように、コントローラ5の判定手段5cは、キースイッチ4の選択位置がスタートであるか否かを判定し、肯定であればステップS2にすすみ、否定であればENDにすすむ。 【0025】 ステップS2において、コントローラ5の人検知手段5aは、三つのカメラ2からの入力画像を上述した所定の画像処理を行って、所定範囲CL、CR、CBのいずれかに位置する人を検出する。つづいて、ステップS3において、コントローラ5の判定手段5cは、人検知手段5aにより人が検出されて「人有り?」の状態であるか否かを判定する。 【0026】 ステップS3において、判定手段5cにより否定と判定される場合、つまり、所定範囲CL、CR、CBに人がいない場合には、ステップS4にすすむ。ステップS4において、コントローラ5の許可手段5dはエンジン3の始動を許可する。この許可に基づいて、コントローラ5の始動手段5bは、エンジン3に対して始動信号を出力し、エンジン3が始動される。 【0027】 ステップS3において、判定手段5cにより肯定と判定される場合、すなわち、所定範囲CL、CR、CBに人がいる場合には、ステップS5にすすんで、コントローラ5の許可手段5dは、エンジン3の始動を不許可とする。この不許可に基づいて、コントローラ5の始動手段5bは、ステップS1において、キースイッチ4の選択位置がオペレーターによりスタートとされた条件でも、始動信号をエンジン3に対して出力しない。図4に示したフローチャートはコントローラ5の制御周期毎に繰り返し実行されて、本発明の建設機械の始動許可方法が実行される。 【0028】 上述した本実施例1に示した建設機械の始動許可装置1は、ショベル60の周辺の所定範囲CL、CR、CBにおいて人が存在する場合には、キースイッチ4の選択位置がオペレーターによりスタートとされた条件でも、エンジン3の始動を不許可とすることができる。 【0029】 つまり本実施例1は、キースイッチ4の選択位置がスタートであって人がショベル60の周辺に存在する条件を、エンジン3の始動の不許可条件とすることができる。これとともに本実施例1は、キースイッチ4の選択位置がスタートであって人がショベル60の周辺に存在しない条件を、エンジン3の始動の許可条件とすることができる。 【0030】 本実施例1は、この不許可条件と許可条件の切り分けにより、ショベル60に人が存在する場合にはエンジン3の始動を禁止して、人特に作業者の安全を確保することができる。特にオペレーターがキャビン64に乗り込む前の周囲の目視確認と乗り込んだ後の警笛による警報を失念した場合でも、本実施例1によれば安全を確保できる。これとともに、本実施例1は、ショベル60の周辺に人が存在しない場合には、キースイッチ4の選択位置がスタートであることに基づいて速やかにエンジン3の始動を行うことができる。」 (ウ)実施例2 「【実施例2】 【0031】 上述した実施例1の許可条件については、オペレーターの実際の操作手順に併せて適宜変更することが可能である。以下それについての本実施例2の建設機械の始動許可装置11について述べる。既述した実施例1で示した建設機械の始動許可装置1と共通する構成については同一の符号を付し、以下、相違点を主に説明する。 【0032】 通常、ショベル60等の建設機械のエンジン3の始動の前には、オペレーターはキャビン64に乗り込む前に周囲を目視確認し、キャビン64に乗り込んだ後、警笛を鳴らして周囲に人がいる場合には退避を促してからエンジン3を始動させる。 【0033】 ここで図5に示すように、キャビン64内の座席Sの左方には通常、油圧ロックレバー6が設置されている。この油圧ロックレバー6を手前側に引き図5中「L」で示す位置まで移動させると「油圧ロック状態」が選択される。「油圧ロック状態」においては、ショベル60内の油圧回路内に設けられたシャット弁が、キャビン64内の操作レバーと油圧アクチュエータとの間の油圧回路を遮断する。つまり、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する油圧アクチュエータが動作しない。 【0034】 油圧ロックレバー6を前方側に倒して図5中「U」で示す位置まで移動させると「油圧ロック解除状態」が選択される。「油圧ロック解除状態」においては、シャット弁はキャビン64内の操作レバーと油圧アクチュエータとの間の油圧回路を連通させる。つまり、操作レバーをオペレーターが操作した場合に対応する油圧アクチュエータは動作される。 【0035】 ここでオペレーターがキャビン64に乗り込むときには、図5に示す油圧ロックレバー6は位置「L」に位置している。オペレーター自身がキャビン64に乗り込み、座席Sに座ったときに、油圧ロックレバー6を位置「L」そのままとして「油圧ロック状態」を保持した後、キースイッチ4の選択位置を操作して、適宜エンジン3の始動を行う。始動を行った後は、油圧ロックレバー6を位置「U」とし「油圧ロック解除状態」として、操作レバーによる油圧アクチュエータの動作を可能とする。 【0036】 そこで本実施例2の建設機械の始動許可装置11では、図5に示すように、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」か「油圧ロック解除状態」のいずれであるかを、例えばポテンショメータなどの位置検出スイッチを用いてコントローラ5に入力する構成とする。 【0037】 コントローラ5の許可手段5dは、実施例1で述べたものと同様の所定範囲CL、CR、CBに人がおらず、キースイッチ4の選択位置がスタートとされ、かつ、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」である許可条件にて、エンジン3の始動を許可する。 【0038】 つまり本実施例2の建設機械の始動許可装置11が含むコントローラ5の制御内容は、図7に示すように、図4に示したフローチャートに比べて、ステップS6が追加される。ステップS3にて、判定手段5cにより所定範囲CL、CR、CBに人がいないと判定され、かつ、ステップS6において、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」である場合に、ステップS4にすすんで、許可手段5dにより、エンジン3の始動が許可される。 【0039】 ステップS3において、判定手段5cにより、所定範囲CL、CR、CBに人がいないと判定され、ステップS6にて、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」でないと判定される場合には、ステップS5にすすむ。ステップS5において、許可手段5dが、エンジン3の始動を不許可とする。 【0040】 なお、本実施例2においても、ステップS3において、所定範囲CL、CR、CBに人がいると判定手段5cにより判定される場合には、ステップS5にすすんで、許可手段5dにより、エンジン3の始動は不許可とされる。図7に示したフローチャートもコントローラ5の制御周期毎に繰り返し実行され、本発明の建設機械の始動許可方法が実行される。 【0041】 上述した本実施例2に示した建設機械の始動許可装置11においても、建設機械であるショベル60の周辺の所定範囲CL、CR、CBにおいて、人が存在する場合には、キースイッチ4の選択位置がオペレーターによりスタートとされた条件でも、エンジン3の始動を不許可とすることができる。 【0042】 さらに本実施例2は、キースイッチ4の選択位置がスタートであって人がショベル60の周辺に存在する場合、又は、人がショベル60に存在せずかつ油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」でない場合の双方を、エンジン3の始動の不許可条件とする。また、本実施例2は、キースイッチ4の選択位置がスタートであって人がショベル60の周辺に存在せず、かつ、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」である場合を、エンジン3の始動の許可条件とする。 【0043】 本実施例2は、この不許可条件と許可条件の切り分けにより、ショベル60に人が存在する場合にはエンジン3の始動を禁止して、人特に作業者の安全を確保することができる。 これとともに、本実施例2は、ショベル60の周辺に人が存在しない場合には、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」であることを追加条件として、キースイッチ4の選択位置がスタートであることに基づいて速やかにエンジン3の始動を行うことができる。 【0044】 本実施例2では特に、万一オペレーターが操作レバーに触れた状態で、キースイッチ4の選択位置をスタートとした場合でも、意図しないショベル60の掘削、旋回、前後進の動作を禁止できる。加えて、本実施例2ではエンジン3の始動直後の、ショベル60の掘削、旋回、前後進の急激な動作を禁止できる。これにより本実施例2では、周囲の人の安全を確保できる。 【0045】 以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。 【0046】 例えば上述した実施例では、所定範囲の入力画像から人検知手段5aが人を検知するにあたり画像処理を用いることを例示したが人を検知する手法はこれに限られない。つまり、パターンマッチングによる手法や、ステレオカメラを用いた立体物検出の手法を用いることも可能である。また、アクティブ型の赤外線センサやパッシブ型の赤外線センサ(例えば焦電型赤外線センサ)を用いてもよく、レーザレーダや超音波センサを用いてもよい。」 (エ)産業上の利用可能性 「【産業上の利用可能性】 【0047】 本発明の建設機械の始動許可装置、建設機械の始動許可方法は、建設機械の周辺の所定範囲に人が検知される場合には、エンジンの始動を不許可とすることで、特に作業員の安全を確実に確保することができる。このため、種々の建設機械に適用して好適なものである。」 (オ)図4、図7 図4及び図7には、それぞれ以下の図示がある。 イ 記載された発明 上記アより、文献1には、次の発明(以下、「文献1発明」という。)が記載されている。 「下部走行体61と、該下部走行体61に旋回自在に搭載される上部旋回体63と、該上部旋回体63の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントEと、それぞれが油圧ポンプからのパイロット圧を油圧回路が送り込むことで動作する切削用、旋回用、及び前後進用の油圧アクチュエータを含み、 前記上部旋回体63に備えられるエンジン3、前記上部旋回体63に備えられるキャブ64、前記キャブ64内に設けられるエンジンのキースイッチ4、前記上部旋回体63に備えられる3つのカメラ2、及びエンジン3をキースイッチ4の選択位置(スタート、オン、オフ)に基づいて制御するコントローラ5を有する、ショベル60であって、 コントローラ5は、カメラ2からの入力画像に画像処理を行い、前記ショベル60の周辺の所定範囲内の人を検知する、人検知手段5aと、エンジン3の始動許可判定時に、前記人検知手段5aが人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定する判定手段5cと、を有し、 前記ショベル60の油圧アクチュエータと該油圧アクチュエータを操作する操作レバーとの間の油圧回路を遮断する油圧ロック状態を選択可能な油圧ロックレバー6を有し、エンジン3の始動許可判定時には油圧ロック状態で前記判定手段5cが人を検知する場合があり、油圧ロック状態で操作レバーをオペレーターが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作せず、 人検知手段5aによる人の検知にはステレオカメラを用いた立体物検出の手法を用いてもよい、 ショベル60。」 (2)甲第2号証(特開2005-307491号公報) ア 記載事項 申立人によって提出され、本件特許の分割出願日及び原出願の出願日より前に頒布された刊行物である、甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)背景技術、発明が解決しようとする課題、及び課題解決手段 「【技術分野】 【0001】 本発明は、バックホー等の作業車に備えられ、作業機を作動操作するアクチュエーターを作動不可能な状態とすると、所定時間後に自動的にエンジンを停止させ、同時にキースイッチもOFF位置にさせる技術に関する。 【背景技術】 【0002】 従来から、掘削作業機を搭載したバックホーやローダ等の作業機械においては、運転席の近傍に作業機の駆動や走行等を操作するための操作レバーが配置され、運転席への乗降口にゲートレバー(ロックレバー)が配置されている。オペレーターは作業途中において、作業機の作業位置を確かめたり、作業機の装着具合を点検したりするために、一時的に座席を離れる場合がある。この場合ロックレバーを上げて降車し、このロックレバーの操作から所定時間までの間にロックレバーを下降させて着座しないとエンジンが停止するようにして、無駄なエネルギーの消費を抑えるようにしていた。そして更に、オペレーターが運転席に戻らず所定時間が経過してエンジンが停止すると、そのエンジン停止後に所定時間が経過すると、電源を遮断するようにした技術がある(例えば、特許文献1参照)。 【0003】 【特許文献1】特開2003-307142号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかし、前記特許文献1の技術では、エンジンが停止して所定時間を過ぎると電源が遮断されて、放電等を防いでバッテリーの消費が抑えられるようにし、乗降検知手段がオペレーターを検知すると電源を接続するように構成しているが、乗降検知手段は電気的に検知するものであるから、放電は避けられない。そして、電源スイッチがキースイッチと別に設けられているため、電源スイッチと制御回路が余分に必要となるためコストアップとなってしまう。また、オペレーターが乗車すると再始動方法を案内するため、操作する意志のない人の乗車時には無駄であるし、操作する人は殆ど限られているため、操作が慣れると無駄な案内がエンジン停止後の再始動時に予報されることになる。 そこで本発明は、ロックレバーを「作動不可」位置として所定時間後にエンジンを停止させると、同時に、キースイッチもOFFの位置まで回動して、電源を切れるようにし、再始動するときには通常の始動と同じ操作でできるようにしようとする。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。 【0006】 即ち、請求項1においては、作業機を駆動するアクチュエーターの「作動可能」と「作動不可」のいずれかに切り換える切換手段を、操作するロックレバーを備え、始動後に「作動不可」位置に操作すると遅延手段により所定時間後にエンジンを停止させるエンジン停止手段を備えた作業車であって、エンジン停止手段の停止動作に連動して、キースイッチをOFF位置にさせる手段を設けたものである。」 (イ)実施の形態 「【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 次に、発明の実施の形態を説明する。 図1は発明の作業車用誤操作防止装置を有する旋回作業車を示す側面図、図2は運転操作部の平面図、図3は作業車用誤操作防止装置の油圧回路図と電気回路図、図4は同じくエンジン始動時の油圧回路図と電気回路図、図5は作業途中でロックレバーを「作動不可」とした場合の油圧回路図と電気回路図、図6はロックレバーが「作動不可」位置で所定時間が経過した場合の油圧回路図と電気回路図、図7はキースイッチの側面断面図、図8はキースイッチの背面図である。 【0014】 まず、本発明の油圧操作装置を有する作業車としてバックホーを実施例として説明する。図1において、バックホーは、本機の前部に作業機7を装着しており、本機はクローラ式走行装置1の上部中央に旋回台軸受17を介して旋回フレーム2を左右旋回可能に支持しており、該クローラ式走行装置1の前後一側には、ブレード3を上下回動自在に配設している。旋回フレーム2の上部にはエンジン13等を被覆するボンネット14が配設され、該ボンネット14上に運転席16を配置し、該運転席16の近傍に油圧操作レバー21・22やロックレバー23・24等を配置し、運転席16前方に走行レバー25やペダル等を配置して運転操作部15を構成している。該運転操作部15の上方にはキャノピー8が配設されている。 【0015】 また、旋回フレーム2の前端部にはブームブラケット12が左右回動自在に取り付けられ、該ブームブラケット12にはブーム6の下端部が上下回動自在に支持されている。ブーム6は途中部で前方に屈曲して略「く」字状に形成されており、該ブーム6の上端部にはアーム5が回動自在に支持され、該アーム5の先端部には作業用アタッチメントであるバケット4が回動自在に支持されている。これらのブーム6、アーム5、及びバケット4等により作業機7が構成されている。 【0016】 そして、前記ブーム6はブームシリンダ11により回動動作され、アーム5はアームシリンダ10により回動動作され、バケット4はバケットシリンダ9により回動動作される。またクローラ式走行装置1は前後一側に駆動スプロケット41が配置され、他側に従動スプロケット42が配置され、該駆動スプロケット41と従動スプロケット42の間に履帯43が巻回されている。そして、該駆動スプロケット41は油圧モータによって駆動される。また、前記旋回フレーム2と旋回台軸受17の間には旋回モータが配置され、該旋回モータにより旋回フレーム2を旋回可能としている。 【0017】 前記ブームシリンダ11、アームシリンダ10、及びバケットシリンダ9は油圧シリンダにより構成され、各シリンダ9・10・11および旋回モータ45および走行油圧モータ44等の油圧機器を油圧アクチュエーターと称している。図2に示すように、運転操作部15に配設される油圧操作レバー21・22や走行レバー25やペダル等の回動操作によりパイロットバルブが切り換えられて、該パイロットバルブから主バルブ(方向制御バルブ)を切り換えて、旋回台2のボンネット14内に配設される油圧ポンプから油圧ホースを通じて圧油が供給されることにより伸縮駆動や回転駆動される。 【0018】 前記運転席16の左右両側には、作業機7を操作するパイロット操作装置となる油圧操作レバー21・22がそれぞれ配設され、該油圧操作レバー21・22はレバースタンド28・29に一体的に取り付けられ、該レバースタンド28・29からは、油圧操作レバー21・22による作業機7の操作を入・切(作動・非作動)するためのロックレバー23・24が前方へ延出されている。 【0019】 該ロックレバー23・24は上下回動可能に構成されており、該ロックレバー23・24を下方回動操作すると油圧操作レバー21・22の操作による作業機7の作動が可能となる状態となり、ロックレバー23・24を上方回動操作すると油圧操作レバー21・22を操作しても作業機7が作動しなくなるロック状態(作動不可)にロックされるように構成されている。このように、左右のロックレバー23・24を上下回動操作することで、油圧操作レバー21・22による作業機7の作動をロックするロック機構を構成しているのである。 【0020】 さらに、ロックレバー23・24が下方回動されて油圧操作レバー22により作業機7が作動可能となっている場合には、該ロックレバー23・24が前方へ傾倒した姿勢となって左右の乗降口19・19を塞ぎ、作業者の乗降ができないようになっており、該ロックレバー23・24を上方回動すると乗降口19・19のスペースが広がり乗降可能に構成されている。但し、左右一側のみ乗降口を設ける構成とすることも可能であり、この場合ロックレバーは乗降口を設ける側のみ配置される。 【0021】 次に、本発明のエンジンの始動・停止及び操作レバーの操作によるロック機構について図3より説明する。エンジン13の出力軸上に油圧源となる油圧ポンプ30・33が連設されて駆動され、該油圧ポンプ30から吐出された圧油が方向切換バルブを介して油圧アクチュエーター(油圧シリンダ9・10・11、油圧モータ)に送油可能にそれぞれ接続されている。油圧シリンダ9・10・11、油圧モータはそれぞれ方向制御バルブ(切換バルブ)と接続され、油圧操作レバーの操作でパイロットバルブを切り換えて前記各方向制御バルブを制御する構成となっており、これら各方向制御バルブと油圧アクチュエーターの作動は略同様の作用となるので、ブームシリンダ11と該ブームシリンダ11を伸縮制御する方向制御バルブや開閉弁の作動について説明する。 【0022】 ブームシリンダ11のボトム側とロッド側にそれぞれ油圧配管を介して方向制御バルブ31と接続され、該方向制御バルブ31はパイロット操作式の切換バルブで構成され、それぞれのパイロット油路は油圧操作レバー21の基部に設けたパイロットバルブ(リモコンバルブ)32と接続されている。該パイロットバルブ32は油圧操作レバー21の操作により切り換えられ、前記エンジン13に連設された油圧ポンプ33からの圧油が開閉弁34を介してパイロットバルブ32に送油され、該パイロットバルブ32の切り換えによりパイロット油を方向制御バルブ31のパイロット操作部に送油可能としている。該方向制御バルブ31の切り換えによりブームシリンダ11を伸縮できるようにしている。但し、方向制御バルブ31は電磁バルブで構成して、操作レバーにスイッチ等を設けて電磁バルブのソレノイドを作動させて切り換えるように構成することもできる。この場合、開閉弁34は方向制御バルブ31と油圧ポンプ30の間に介装される。 【0023】 前記開閉弁34は2位置切換の電磁バルブで構成され、該開閉弁34のソレノイド34aは後述するロックレバー23の操作を検知する手段となるスイッチ35と接続されている。該ソレノイド34aの作動により油圧ポンプ33からの圧油をパイロットバルブ32への送油と、パイロットバルブ32の圧油をドレンする方向に切り換えことにより、該開閉弁34がアクチュエーターとなるブームシリンダ11の「作動可能」と「作動不可」を切り換える切換手段となっている。 【0024】 こうして、ロックレバー23が「作動可能」位置にある時は、ソレノイド34aが作動されて開閉弁34が切り換えられて、油圧ポンプ30からの圧油がパイロットバルブ32を操作したときに方向制御バルブ31のパイロット操作部に送油されて、切り換えられるのである。そして、油圧ポンプ30からの圧油が方向制御バルブ31を介してアクチュエーター(ブームシリンダ11)に送油されて作動することができる。逆に、ロックレバー23を「作動不可」位置に回動すると、ソレノイド34aは作動されず、開閉弁34は油圧ポンプ33からの圧油をパイロットバルブ32に送油することができず、油圧操作レバー21(22)を操作しても方向制御バルブ31を切り換えることができず、アクチュエーターを作動することができないのである。 【0025】 次に電気回路を説明する。図3において、キースイッチ36にはOFF端子36a、ON端子36b、START端子36c、共通の端子36dの各端子が設けられて、キーを回動することにより共通の端子36dとOFF端子36aまたはON端子36bまたはSTART端子36cのいずれかと接続可能とされ、該共通の端子36dは電源となるバッテリー37と接続されている。 そして、キースイッチ36の構造は、図7、図8に示すように、ケース36e内に回転体36fが収納され、該ケース36eが機体に固設され、前記回転体36の一端の中心にキー孔が開口されてキーを挿入して回動できるようにしている。回転体36fの他端には前記各接点が設けられ、該回転体36の外周から突起36gがケース36eから突出されている。該突起36gの側方に後述するソレノイド51が配置され、ソレノイド51の作動により摺動体51aが摺動して突起36gが押されてOFF方向に回動できるように配置している。 【0026】 そして、前記ON端子36bにはロックレバー23(24)の回動位置を検知するスイッチ35の二つの端子のうちの一方(電力供給のON/OFF手段側)の端子35aに接続され、前記START端子36cはスイッチ35の他方(始動制限手段側)の端子35bに接続されている。該スイッチ35は二極反転型スイッチで一体的に構成されており、接点35dがバネ35cの付勢力により常時端子35bに当接して閉じるように付勢しており、ロックレバー23が「作動可能」位置に回動したときに、ロックレバー23の基部に設けた突片23aが接点35dを押して端子35aが閉じる。逆に、ロックレバー23が「作動不可」位置に回動すると端子35bが閉じるようにしている。 【0027】 該ロックレバー23と接点35dと端子35bが始動制限手段となっており、ロックレバー23の回動により端子35bを開くことでキースイッチ36をスタート位置としてもスタート(始動)できないようにしている。また、該ロックレバー23と接点35dと端子35aが前記切換手段(開閉弁34)の操作部(ソレノイド34a)への電力の供給のON/OFF手段となっており、ロックレバー23が「作動可能」位置では、接点35aがロックレバー23の回動により閉じられ(ONし)て、電力を開閉弁34に供給して作動させ、圧油を送油可能とする。「作動不可」位置では接点35aが開き(OFF)、ソレノイド34aに電力が供給されず、開閉弁34は作動させることがなく圧油をパイロットバルブ32に送油させることがない。 【0028】 前記端子35aは一次側をキースイッチ36のON端子36bと接続し、二次側は遅延手段となるタイマ38の第一入力端子38aと前記開閉弁34のソレノイド34aに接続され、タイマ38はバッテリー37より電力が供給され、変更手段49により遅延時間(後述する第一遅延時間と第二遅延時間)を設定変更可能に構成されるとともに、出力側にはエンジン停止手段40の停止入力と、キースイッチ35をOFF位置に復帰させる手段となるソレノイド51とが接続されている。但し、キースイッチ35をOFFさせる手段はソレノイドに限定するものではなく、電動シリンダやモータ等であってもよく限定するものではない。 従って、キースイッチ36がON位置で、ロックレバー23が「作動可能」位置に回動された状態では、端子35aが閉じて開閉弁34が作動されて油圧操作レバー21・22の操作でアクチュエーターを作動可能としている。ロックレバー23が「作動不可」位置では端子35aは開いて開閉弁34は作動されず、パイロットバルブ32・33に圧油が送油されず、油圧操作レバー21・22を回動してもアクチュエーターは作動することはできないのである。 【0029】 また、タイマ38はロックレバー23を「作動可能」位置に回動して端子35aが閉じられて電力が第一入力端子38aにON信号が入力されるとリセットされる。ロックレバー23の「作動不可」位置への回動により電源が断たれて、OFF信号が第一入力端子38aに入力されるとタイマ38が作動して、設定時間(第一遅延時間)後にエンジン停止手段40に停止信号を出力して、エンジン13を停止させる。同時に前記ソレノイド51によりキースイッチ36をOFFとする。つまり、タイマ38は前記第一入力端子38aと第二入力端子38bを有し、第一入力端子38aにON信号の入力があるとリセットされ、OFF信号の入力があるとタイマが作動して、第一遅延時間後に出力端子よりエンジン停止手段40に出力してエンジン13を停止し、同時にソレノイド51を作動して摺動体51aが突起36gを押して、キースイッチ36をON位置からOFF位置へ移動(回動)させる。第一遅延時間内にON信号があるとリセットされ、エンジン13は作動したままとなる。 【0030】 前記端子35bの二次側にはタイマ38の第二入力端子38bと、エンジン始動回路(セルモータ作動回路や点火回路等も含む)となるリレー39のソレノイド39aに接続されている。該リレー39はソレノイド39aと接点39bを有し、該接点39bはバッテリー37とセルモータ44の間に接続されている。該セルモータ44の出力軸にはピニオン45が固設され、該ピニオン45はエンジン13のフライホイルに固設した始動ギヤ46と噛合させている。そして、前記接点39bは常時「開」とされ、ソレノイド39aが作動されると「閉」となるようにしている。つまり、ロックレバー23が「作動不可」位置でキースイッチ36をSTART位置に回動するとソレノイド39aに電流が流れて、接点39bを閉じてセルモータ44を駆動し、フライホイルを回転させてエンジン13を始動させるのである。 【0031】 前記タイマ38の第二入力端子38bはOFF信号の入力があるとタイマが作動し、第二遅延時間後に出力端子よりエンジン停止手段40に出力してエンジン13を停止させ、第二遅延時間内に第一入力端子38aにON信号が入力されるとリセットされ、エンジン13は作動したままとなる。つまり、キースイッチ36をSTART位置に回動すると、ロックレバー23が「作動不可」位置では端子35aが閉じておりON信号が第二入力端子38bに入力され、同時に、セルモータ44が駆動される。こうしてエンジン13が始動されると、キースイッチ36はSTART位置からON位置となり、第二入力端子38bにはOFF信号が入力され、タイマ38が作動する。 【0032】 第二遅延時間が経過すると、タイマ38の出力端子よりエンジン停止手段40に出力してエンジン13を停止させ、第二遅延時間内にロックレバー23が「作動不可」位置から「作動可能」位置に回動すると、端子35aが閉じて第一入力端子38aにON信号が入力され、タイマ38がリセットされてエンジン13は作動状態を維持できる。 【0033】 また、前記タイマ38の第二入力端子38bにON信号が入力されると、タイマ38からの停止出力を解除するようにし、このON信号をエンジン停止手段40の解除信号としている。つまり、ロックレバー23を「作動不可」位置に回動したまま本機を離れて、第一遅延時間が経過した後はタイマ38の出力は、エンジン停止手段40を停止させる状態となっている。一方、エンジン13を始動させるにはロックレバー23が「作動不可」位置に回動した状態でキースイッチ36をSTART位置に回動するが、タイマ38はON信号を入力しないとリセットされないので、エンジン停止手段40は停止状態のままとなっており、キースイッチ36をSTART位置に回動しただけではエンジン13は始動できない。そこで、ロックレバー23を「作動不可」位置でキースイッチ36をSTART位置に回動したときに、エンジン停止手段40の停止を解除するように、START位置に回動したときのON信号を停止解除入力信号としてタイマ38の第二入力端子38bに入力して、タイマ38のエンジン停止手段40への停止出力を解除するのである。よって、キースイッチ36のSTART位置への回動とロックレバー23(24)の「作動不可」位置への回動が停止解除手段となる。 【0034】 以上のような構成において作用を説明する。 まず、オペレーターが作業車に乗り着座した状態では、ロックレバー23・24の両方が、「作動不可」位置に回動されている。つまり、ロックレバー23・23は後方へ回動して乗降口19から通行できるように回動されている。この状態では、図4に示すように、スイッチ35の端子35bが閉じており、キースイッチ36をSTART端子36c位置に回動すると、始動電源となるバッテリー37と接続されて、タイマ38の第二入力端子38bに停止解除信号が出力され、エンジン停止手段40の停止が解除されてエンジン13は作動可能状態なる。そして同時に、リレー39のソレノイド39aが作動されて、接点39bが閉じ、セルモータ44に電力が供給されてフライホイルを回動し始動することができるのである。 【0035】 なお、このとき、ロックレバー23・24のいずれか一方または両方が、「作動可能」位置に回動されていると、リレー39が作動せず、接点39bは開かれてセルモータ44を駆動できず、エンジン13を始動させることはできない。よって、エンジン13を始動するときに、油圧操作レバー21・22に誤って触れた場合であっても、開閉弁34がブロック状態であるため、方向制御弁31が作動されることがなく、アクチュエーターが作動することもなく安全である。 【0036】 エンジン13が始動すると、キースイッチ36はON位置に回動され、セルモータ44は停止され、OFF信号が第二入力端子38bに入力されてタイマ38が作動する。そして、図3に示すように、作業を行う場合には、ロックレバー23・24を前方へ回動して「作動可能」位置とする。 但し、エンジン始動後からロックレバーを「作動不可」位置から「作動可能」位置に回動するまでの時間が、第二設定時間以内に操作されないと、タイマ38から停止信号が出力されてエンジン13を停止し、キースイッチ36もOFF位置まで回動される。こうして無駄なエンジン13の駆動を防止し、燃料の消費を抑え、バッテリーの放電も防止されるようにしている。 【0037】 そして、ロックレバー23・24の「作動可能」位置への回動により、スイッチ35の端子35aが閉となり、タイマ38の第一入力端子38aにON信号が入力されてタイマ(第二遅延時間)はリセットされる。同時に、開閉弁34のソレノイド34aに電力が供給されてONとなり、油圧操作レバー21・22のパイロットバルブ32に圧油が送油され、油圧操作レバー21・22の操作により方向制御バルブ31のパイロット操作部に送油して、方向制御バルブ31を切り換え可能となる。こうして、油圧操作レバー21・22の操作によりアクチュエーターを駆動して作業機7を作動させることができる。 【0038】 そして、作業途中で、運転操作部15から一時的に離れて点検や確認等を行う場合、ロックレバー23または24を持ち上げて「作動不可」位置に回動すると、図5に示すように、スイッチ35は端子35aが開となり、開閉弁34はブロック位置に切り換えられ、油圧操作レバー21・22を操作しても方向制御バルブ31は切り換えられないようになる。つまり、誤って油圧操作レバー21・22に触れてもアクチュエーターは作動しない。そして、タイマ38の第一入力端子38aにOFF信号が入力されることにより、タイマ38が作動し第一遅延時間のカウントを開始する。このときエンジン13は作動したままとなっている。 【0039】 前記タイマ38において設定された第一遅延時間以内にオペレーターが運転操縦部15に戻り、ロックレバー23・24を「作動可能」位置に回動すると、スイッチ35の端子35aが閉じられ、タイマ38の第一入力端子38aにON信号が入力されタイマ(第一遅延時間)はリセットされ、エンジン停止手段40は作動されず、エンジン13は作動したままとなり、作業は続行できる。このように第一入力端子38aにON信号が入力されると、タイマ38の第一遅延時間も第二遅延時間もリセットすることができ、リセットするための構成を簡略化することができる。 【0040】 また、オペレーターが運転操縦部15に戻ることができずタイマ38に設定した第一遅延時間が経過すると、タイマ38からエンジン停止手段40に停止信号を送り、エンジン13を停止する。そして同時にソレノイド51を作動してキースイッチ36をON位置からOFF位置に回動する。こうして無駄な燃料の消費を抑えることができるのである。このとき、ロックレバー23または24は「作動不可」位置にあり、油圧操作レバー21・22を誤って操作してもアクチュエーターは作動することがなく安全である。 エンジン停止状態から再び作業を行う場合には、前述のように、ロックレバー23・24を「作動不可」位置に回動したままで、キースイッチ36を回動してエンジン13を始動させることができ、エンジン停止解除のための操作は不要である。」 イ 記載された発明 上記アより、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。 「本機の前部に作業機7を装着しており、本機はクローラ式走行装置1の上部中央に旋回台軸受17を介して旋回フレーム2を左右旋回可能に支持しており、 旋回フレーム2の前端部にはブームブラケット12に支持されたブーム6、該ブーム6の上端部に支持されたアーム5、アーム5の先端部に支持された作業用アタッチメントであるバケット4から構成される作業機7が設けられており、 旋回フレーム2の上部にはエンジン13等を被覆するボンネット14が配設され、該ボンネット14上に運転席16を配置し、該運転席16の近傍に油圧操作レバー21・22やロックレバー23・24等を配置し、運転席16前方に走行レバー25やペダル等を配置して運転操作部15を構成し、該運転操作部15の上方にはキャノピー8が配設されており、オペレーターが作業車に乗り着座した状態で、キースイッチ36をSTART端子36c位置に回動すると、エンジン停止手段40の停止が解除されてエンジン13は作動可能状態なる、 油圧操作装置を有するバックホーであって、 ブーム6、アーム5及びバケット4をそれぞれ回動動作する油圧シリンダ9・10・11および旋回モータ45および走行油圧モータ44等の油圧アクチュエーターを備え、 油圧アクチュエータである油圧シリンダ9・10・11及び油圧モータは、それぞれ方向制御バルブ(切換バルブ)と接続され、油圧操作レバーの操作でパイロットバルブを切り換えて前記各方向制御バルブを制御することで、油圧ポンプ30から吐出された圧油が方向切換バルブを介して供給されることにより駆動される構成であり、 各方向制御バルブと油圧アクチュエーターの作動は略同様の作用となっており、 ブームシリンダ11に接続された方向制御バルブ31と油圧ポンプ30との間には開閉弁34が介装されており、ロックレバー23または24を持ち上げて「作動不可」位置に回動すると、開閉弁34がブロック位置に切り換えられ、油圧操作レバー21・22を操作しても方向制御バルブ31は切り換えられず、誤って油圧操作レバー21・22に触れてもアクチュエーターは作動しないようになっており、 エンジン13を始動するときに、ロックレバー23・24のいずれか一方または両方が「作動可能」位置に回動されていると、エンジン13を始動させることができず、エンジン13の始動後に、「作動不可」位置のロックレバー23・24を「作動可能」位置に回動するまでの時間が第二設定時間を超えると、エンジン13が停止する一方、エンジン13の始動後第二遅延時間内が経過するまでにロックレバー23・24を「作動可能」位置に回動することにより、油圧操作レバー21・22の操作によりアクチュエーターを駆動することができるようになり、 作業途中で、ロックレバー23または24を持ち上げて「作動不可」位置に回動すると、誤って油圧操作レバー21・22に触れてもアクチュエーターは作動せず、第一遅延時間が経過するまではエンジン13は作動したままとなっている、 バックホー。」 (3)甲第4号証(実願昭63-51427号(実開平1-156256号)のマイクロフィルム) ア 記載事項 申立人によって提出され、本件特許の分割出願日及び原出願の出願日より前に頒布された刊行物である、甲第4号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)実用新案登録請求の範囲 「2.実用新案登録請求の範囲 下部走行体と上部旋回体とからなり、その上部旋回体左右側部にそれぞれ障害物センサを配置し、上部旋回体の周囲に障害物が存在するか否かを監視し、その検出信号をコントローラ部に出力させることにより警報装置を作動可能にした建設機械の旋回範囲内立入警報装置において、上部旋回体の外周部および運転室内にそれぞれ警報器を設け、またエンジンのキースイッチを投入したときに上記警報装置の電気回路を通電可能とするとともに、上記障害物センサの検出信号範囲内に障害物が存在するとき上部旋回体外周部および運転室内の、すべての警報器より警報を発生可能に設定して構成したことを特徴とする建設機械の安全装置。」 (イ)従来の技術、解決すべき問題点、及び課題解決手段 「 産業上の利用分野 この考案は、障害物センサおよび警報器をそなえた建設機械の安全装置に関する。 従来の技術 第3図は、建設機械のうち、油圧ショベルの側面図である。図において、1は下部走行体、2は上部旋回体、3は上部旋回体2の運転室、4は運転室3内に設けられた警報器である。第4図は、従来技術警報装置をそなえた油圧ショベルの平面視図である。図において、5,6は上部旋回体2の左右側部に取付けられた障害物センサ、0は旋回中心である。 従来技術の警報装置(図示なし)では、上部旋回体左右側部にそれぞれ障害物センサを取付け、油圧ショベルの旋回作業時に上記障害物センサによる検出信号を制御装置に出力して、運転室3内の警報器(ブザーなど)4より警報を発生するようにしている。 この考案の解決すべき問題点 従来技術の警報装置では、油圧ショベルが旋回作業を行っているときに障害物センサが人、動物などの障害物を検知すると、運転室内に設けた警報を発生する。そのために、油圧ショベルが旋回作業以外の作業を行っているときに他の人や動物などが作業範囲内に立入りしてきた。また、上記立入りしてきた他の人や動物に対して、積極的に警報を確認させることができないので危険であった。 この考案は上記の課題を解決し、建設機械用エンジンにキースイッチを投入している間には信号範囲内立入警報装置の作動を可能とし、その状態のときに信号範囲内に立入った人,動物に対して警報を発する安全装置を提供することを目的とする。 課題を解決するための手段 前記課題を解決するために講じたこの考案の手段は、 イ.上部旋回体の外周部および運転室内にそれぞれ警報器を設け、 ロ.また、エンジンのキースイッチを投入したときに警報装置の電気回路を通電可能とするとともに、 ハ.障害物センサの検出信号範囲内に障害物が存在するとき上部旋回体および運転室内の、すべての警報器より警報を発生可能に設定して、構成した。 作用 イ.エンジンのキースイッチを投入したときに警報装置の電気回路を通電可能としたので、建設機械が旋回作業を行っているときだけでなく、キースイッチを投入している間には警報装置の作動が可能である。 ロ.上部旋回体の外周部および運転室内にそれぞれ警報器を設けたので、上記イ項の状態のときに人,動物などが信号範囲内に立入ると、運転者に対しては運転室内の警報器が、また立入った人,動物などに対しては上部旋回体外周部に設けた警報器がそれぞれ警報器を発生する。 ハ.上記ロ項により、運転者は障害物の信号範囲内立入を認知し、また立入った人,動物などは信号範囲内からの立退きを促される。」 (ウ)実施例、及び効果 「 実施例 以下、この考案にかかる安全装置を図面に基いて詳細に説明する。第1図は、この考案にかかる安全装置7を装備した油圧ショベルの平面視図である。図において、8は上部旋回体、9,10は上部旋回体8の左側部に取付けたそれぞれ障害物センサ、11,12は右側部に取付けた障害物センサ、14は運転室13内に設けた警報器、15,16は上部旋回体8外周部に設けたそれぞれ警報器、17はエンジン、イ,ロ,ハ,ニは障害物センサ9,10,11,12のそれぞれ信号範囲(検出信号範囲のこと)、Rは上部旋回体8の後端旋回半径である。第2図は、この考案にかかる安全装置7の警報装置18用電気回路図である。図において、19はキースイッチ、20は電源、21はコントローラ部である。 次に、この考案にかかる安全装置7の構成を第1図および第2図について述べる。上部旋回体8の外周部および運転室13内にそれぞれ警報器15,16および14を設けた。また、エンジン17のキースイッチ19を投入したときに警報装置18の電気回路を通電可能とするとともに、障害物センサ9,10,11,12の検出信号範囲イ,ロ,ハ,ニ内に障害物が存在するとき上部旋回体8および運転室13内の、すべて警報器15,16,14より警報を発生可能に設定して、構成した。 次に、この考案にかかる安全装置7の作動機能について述べる。エンジン17のキースイッチ19を投入したときに警報装置18の電気回路を通電可能としたので、油圧ショベルが旋回作業を行っているときでなく、キースイッチ19を投入している間には警報装置18の作動が可能である。キースイッチ19を投入した状態のときに、障害物センサ9,?,12の信号範囲イ,?,ニ内に人,動物などの障害物が立入ると、障害物センサ9,?,12のうちいずれかがその障害物を検知する。検知した障害物センサからの検出信号がコントローラ部21に出力する。そこで上記検出信号に基づき、コントローラ部21に接続されている警報器14,15,16はすべて警報を発生する。それにより、運転室13内の運転者は警報器14の警報により障害物の信号範囲内立入を認知し、また立入った人,動物などは警報器15,16の警報により信号範囲内からの立退きを促される。 考案の効果 従来技術の警報装置では、油圧ショベルが旋回作業を行っているときに障害物センサが人,動物などの障害物を検知すると、運転室内に設けた警報を発生する。そのために、油圧ショベルが旋回作業以外の作業を行っているときに他の人や動物などが作業範囲内に立入りしてきた。また、上記立入りしてきた他の人や動物に対して、積極的に警報を確認させることができないので危険であった。 しかし、この考案にかかる安全装置では、上部旋回体の外周部および運転室内にそれぞれ警報器を設け、またエンジンのキースイッチを投入したときに上記警報装置の電気回路を通電可能とするとともに、上記障害物センサの検出信号範囲内に障害物が存在するとき上部旋回体外周部および運転室内の、すべての警報器より警報を発生するように構成した。 したがって、この考案にかかる安全装置では、エンジンのキースイッチを投入状態にしておくと、障害物が障害物センサの信号範囲内に立入ったときに、運転者は運転室内の警報器の警報により障害物立入を認知し、また立入った人,動物などは上部旋回体外周部に設けた警報器の警報により退出を促がされる。上記のようにして、建設機械の安全機能が向上する。」 (エ)図面の簡単な説明 「4.図面の簡単な説明 第1図はこの考案にかかる安全装置を装備した油圧ショベルの平面視図、第2図はこの考案にかかる安全装置の警報装置用電気回路図、第3図は建設機械のうち油圧ショベルの側面図、第4図は従来技術警報装置をそなえた油圧ショベルの平面視図である。」 (オ)図面 第1図及び第3図には、それぞれ次の図示がある。 第1図より、平面視で運転室13の上に途中まで示されている部材は、第3図の側面視で見た油圧ショベルのブーム状部材であると理解でき、ブーム状部材は油圧ショベルの上部旋回体8の前方中央部に設けられている様子が看て取れる。 第3図より、油圧ショベルは、側面視で運転室3の上部に、ブーム状部材及びアーム状部材を有し、アーム状部材の先端にはバケット状部材が備えられている様子が、看て取れる。 第1図及び第3図より、運転室13、エンジン17は、油圧ショベルの上部旋回体8に備えられている様子が看て取れる。 イ 記載された発明 上記アより、甲第4号証には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。 「下部走行体、上部旋回体8、上部旋回体8の前方中央部に設けられたブーム状部材及びアーム状部材並びにアーム状部材の先端に取り付けられたバケット状部材を有し、 上部旋回体8に運転室13及びエンジン17を備えた油圧ショベルであって、 上部旋回体8の左側部及び右側部に設けられ、それぞれの検出信号範囲に人、動物などの障害物が立ち入ると検知信号をコントローラ部21に出力する、障害物センサ9,10,11,12と、 障害物センサ9,10,11,12からの検出信号に基づき、コントローラ部21に接続された警報器15,16,14より警報を発生可能なコントローラ部21とを有し、 油圧ショベルが旋回作業を行っているときだけでなく、エンジン17のキースイッチ19を投入した状態のときに障害物センサ9,10,11,12の信号範囲内に人,動物などの障害物が立入ると、コントローラ部21に接続されている警報器14,15,16はすべて警報を発生するように設定された、 油圧ショベル。」 (4)甲第1号証(特開2010-198519号公報) ア 記載事項 本件特許の分割出願日及び原出願の出願日より前に公知となった、甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)実施例1 「【実施例1】 【0021】 作業機械の一例である油圧ショベルの概観を図1に示す。油圧ショベルは、垂直方向にそれぞれ回動するブーム1a,アーム1b及びバケット1cからなる多関節型のフロント作業機1Aと、上部旋回体1d及び下部走行体1eからなる車体1Bとで構成される。上部旋回体1dには、運転室1fが備えられている。フロント作業機1Aのブーム1aの基端は上部旋回体1dの前部に支持されている。ブーム1a,アーム1b,バケット1c,上部旋回体1d及び下部走行体1eはそれぞれブームシリンダ3a,アームシリンダ3b,バケットシリンダ3c,旋回モータ3d(図1には図示しない)及び左右の走行モータ3e,3f(図示しない)の各アクチュエータによりそれぞれ駆動される。また、ブーム1a,アーム1b,バケット1c,上部旋回体1dは、それぞれの回動角を検出する角度検出器8a,8b,8c,8dを備える。更に、機械の後方にカメラ13aを設置して後方シーンを撮影し、ミリ波レーダ(距離センサ)14aを設置して機械後方から障害物までの距離を計測する。また、機械の右側方にカメラ13bを設置して右側方シーンを撮影し、距離センサ14b(図示しない)を設置して機械右側方から障害物までの距離を計測する。 【0022】 図2は、作業機械の一例である油圧ショベルの作業における動作と処理の流れの手順例を示す説明図である。図2の説明例では距離センサとしてカメラ13aとミリ波レーダ14aを用いた例である。 【0023】 ある時間1701において、カメラ13aはシーンを撮影し、機械が掘削を開始1702すると障害物検知手段600が撮影したシーンを用いて画像処理1706を行い、掘削作業中1703の障害物の有無を検知する。一方、ミリ波レーダ14aは、機械の作業中は常時センシング1712を行っている。そこで、掘削作業中1703は、画像処理した結果1706である障害物有無と障害物の種別(人物か人物以外)、及び、ミリ波レーダ14aの障害物の距離データを統合(フュージョン)して、障害物有無と種別と障害物までの距離データの結果を出力1707する。運転員は、この結果をモニタや音声で確認し、操作変更時(後進や旋回等)に変更方向の周囲の危険度を確認しながら機械の操作を行う。 【0024】 いま、右側方の動作位置範囲内に人物が存在してフロント作業機を右旋回1704(フロント作業機1Aの信号1708、及び、カメラ画像を用いたオプティカルフロー1709で確認)した場合、人物と接触する可能性が高いので、接触を回避する制御1710としてフロント作業機を停止して、人物の安全を確保することを行う。また、右側方の動作位置範囲内に物体が存在した場合、接触を回避する制御1710としてフロント作業機1Aをゆっくり操作する。この時、接触回避制御の後は、カメラ13aの撮影シーンを用いた障害物検知手段600も停止させ、掘削開始時に再開してもよい。 【0025】 一方、後方の移動動範囲内に人物が存在して下部走行体が後進1705した場合、人物と接触する可能性が高いので、接触を回避する制御1711として下部走行体の移動を停止して、人物の安全を確保することを行う。 【0026】 ここで、カメラ13aでの検知は掘削中のみの例で示したが、機械の作業中は常時センシングを行ってもよい。」 (イ)図1 上記図1より、カメラ13a及びカメラ13bは、いずれも上部旋回体1dに設置されることが、看て取れる。 (ウ)図2 イ 記載された発明 上記アより、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 「垂直方向にそれぞれ回動するブーム1a,アーム1b及びバケット1cからなる多関節型のフロント作業機1Aと、上部旋回体1d及び下部走行体1eからなる車体1Bとで構成され、フロント作業機1Aのブーム1aの基端は上部旋回体1dの前部に支持され、ブーム1a,アーム1b,バケット1c,上部旋回体1d及び下部走行体1eはそれぞれブームシリンダ3a,アームシリンダ3b,バケットシリンダ3c,旋回モータ3d及び左右の走行モータ3e,3fの各アクチュエータによりそれぞれ駆動され、 上部旋回体1dには、運転室1fが備えられた、油圧ショベルにおいて、 機械の上部旋回体1dの後方にカメラ13aを設置して後方シーンを撮影し、機械の上部旋回体1dの右側方にカメラ13bを設置して右側方シーンを撮影し、機械が掘削を開始1702すると撮影したシーンを用いて画像処理1706を行い、掘削作業中1703の障害物の有無を検知し、 右側方の動作位置範囲内に人物が存在してフロント作業機を右旋回1704した場合、人物と接触する可能性が高いので、接触を回避する制御1710としてフロント作業機を停止し、 機械の作業中は常時センシングを行ってもよい、 油圧ショベル。」 (5)文献2(国際公開第2012/161062号) 本件特許の分割出願日及び原出願の出願日より前に公知となった、文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0009】 [実施例1] 図1に、実施例1による電動式旋回装置の平面図を示す。実施例1では、一例として、電動式旋回装置を備えたショベルを取り上げているが、この実施例は、ショベル以外の旋回動作可能な建設機械に適用することも可能である。 【0010】 基体1に旋回体2が搭載されている。基体1は、例えばクローラ等を含む走行体である。旋回体2は、旋回中心3を中心として、基体1に対して旋回する。旋回体2にアタッチメント4が取り付けられている。アタッチメント4は、旋回体2と共に、旋回中心3を中心として旋回する。電動式旋回装置がショベルの場合には、アタッチメント4は、例えば、ブーム、アーム、及びバケットで構成される。 ・・・・(中略)・・・・ 【0033】 旋回体2に、複数、例えば4個の障害物検知器7が取り付けられている。障害物検知器7は、旋回体2の周囲の障害物を検知する。障害物の一例として、作業者、ダンプトラック等が挙げられる。例えば、作業者のヘルメット10に、発信器11が取り付けられている。発信器11には、例えば全方位マーカ発光器が用いられる。障害物検知器7には、例えば、発信器11の画像を取得するCCDカメラが用いられる。複数の障害物検知器7で1つの発信器11を撮像することにより、発信器11の位置を算出することができる。障害物検知器7は旋回体2に取り付けられているため、旋回体2を基準とした発信器11の相対的な位置、すなわち障害物の相対的な位置が算出される。」 (6)甲第3号証(特開2010-71425号公報) 本件特許の分割出願日及び原出願の出願日より前に公知となった、甲第3号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0036】 図4は本実施の形態の油圧駆動装置が搭載される油圧ショベルの外観を示す図である。油圧ショベルは、下部走行体101、この下部走行体101上に旋回可能に搭載された上部旋回体102と、この上部旋回体102の先端部分にスイングポスト103を介して上下及び左右方向に回動可能に連結されたフロント作業機104とを備えている。下部走行体101はクローラ式であり、トラックフレーム105の前方側には上下動可能に排土用のブレード106が設けられている。上部旋回体102は基礎下部構造をなす旋回台107と、旋回台107上に設けられたキャノピタイプの運転室108とを備えている。フロント作業機104はブーム111と、アーム112と、バケット113とを備え、ブームの基端はスイングポスト103にピン結合され、ブーム111の先端はアーム112の基端にピン結合され、アーム112の先端はバケット113にピン結合されている。 【0037】 ブーム111及びアーム112は図1に示したブームシリンダ5a及びアームシリンダ5bを伸縮することにより回動し、上部旋回体102は図1に示した旋回モータ5cを回転させることにより旋回する。バケット113はバケットシリンダ117を伸縮することにより回動し、ブレード106はブレードシリンダ(図示せず)を伸縮することにより上下動し、下部走行体101は左右の走行モータ118a,118bを回転させることにより走行し、スイングポスト103はスイングシリンダ119を伸縮することにより回転する。図1の油圧回路図ではバケットシリンダ117、走行モータ118a、118b、スイングシリンダ119等のアクチュエータの図示を省略している。 【0038】 運転室108には、オペレータが着座する運転席121が設けられ、運転席121の右左両側にバケット・ブーム用の操作レバー装置122と旋回・アーム用の操作レバー装置123とが設けられ、運転席121の入り口部分にゲートロックレバー24が設けられている。図示の実線位置は運転室121への乗員の乗降を妨げるロック解除位置を示し、破線位置は運転室121への乗員の乗降を許容するロック位置を示す。操作レバー装置122,123には、図1?図3に示すパイロット油路3bに接続されたリモコン弁が内蔵されている。 ?動作? 次に、本実施の形態の動作を説明する。 【0039】 一日の作業終了時、オペレータは図示しないエンジンキースイッチをオフにしてエンジン1を停止させる。この際オペレータは、安全性確保のため、ゲートロックレバー24をロック位置に操作してゲートロック弁23を流量制御弁の操作不能位置(パイロット油路3bをタンクTに連通させる位置)に切り換える。また、エンジン1が停止すると、油圧ポンプ2は圧油を吐出しないため、油圧ポンプ2はトルク傾転制御部30aのばね31bの作用により最大傾転となる。このため翌日等の一日の作業開始時には、ゲートロックレバー24はロック位置にあり、かつ油圧ポンプ2の傾転(容量)は最大となっている。 【0040】 一日の作業の開始時、オペレータは図示しないエンジンキースイッチを操作してエンジン1を始動する。このとき、上記のようにゲートロックレバー24はロック位置にあり、ゲートロック弁23はパイロット油路3bをタンクTに連通させる位置にある。 【0041】 エンジン1の始動直後、LS制御弁32において、受圧部32a,32bに対向して導かれた油圧ポンプ2の吐出圧力と信号圧油路7の圧力との差圧(LS差圧)がばね34により設定された目標LS差圧に等しくなるように油圧ポンプ2の傾転(容量)が制御される(ロードセンシング制御)。このとき、操作レバーが操作されず、流量制御弁42a?42cは中立位置にあるため、信号圧油路7の圧力はタンク圧であり、油圧ポンプ2の傾転は上記作業開始前の最大傾転から最小傾転へと制御され、油圧ポンプ2の吐出流量は最少となるよう制御される。操作レバーが操作されず、流量制御弁42a?42cが中立位置にあるときでも油圧ポンプ2の吐出流量をゼロではなく、最少に制御するのは、操作レバーを操作して流量制御弁42a?42cを中立位置から操作したときのアクチュエータの初期の応答性を確保するためである。この油圧ポンプ2の吐出油は全てアンロード弁9を介してタンクTに戻る。 【0042】 この状態で、ゲートロックレバー24はロック位置にあり、ゲートロック弁23はパイロット油路3bをタンクTに連通させるため、アンロード弁9及び油圧ピストン装置20は図3に示す状態にある。この状態では、油圧ピストン装置20の油室20bはタンクTに連通し、油室20bに位置するピストン26の受圧部28による油圧力は発生せず、アンロード弁9はばね27の力で全開状態に切り換えられている。この状態で油圧ポンプ2の吐出圧力はタンク圧程度の圧力に低減されている。 【0043】 その後、オペレータがゲートロックレバー24をロック解除位置に操作すると、ゲートロック弁23はパイロットポンプ3の吐出油路3aをパイロット油路3bに連通させるため、油圧ピストン装置20の油室20bにパイロットポンプ3の吐出油が導入され、ピストン26の受圧部28に発生する油圧力によりアンロード弁9のバルブスプール51を強制的に開方向に押すばね27の力は解除され、その結果、アンロード弁9は図2に示す状態となる。このとき、操作レバーが操作されず、流量制御弁42a?42cが中立位置にあるときは、信号圧油路7の圧力がタンク圧となり、油圧ポンプ2の吐出圧力はアンロード弁9のばね9cの設定とアンロード弁9のオーバライド特性とに応じた圧力Pun(目標アンロード差圧相当の圧力)に制御される。この圧力Punは、回路のリリーフ圧であるメインリリーフ弁13のリリーフ圧Prよりはるかに低い値に設定されている(Pun<0.15Pr)。アンロード弁9のオーバライド特性とは、アンロード弁9の通過流量が増大するにしたがってばね9cの設定(ばね力)が増加し、アンロード弁9の制御圧力(目標アンロード差圧)が増加する特性である。」 (7)甲第5号証(特開2005-233639号公報) 本件特許の分割出願日及び原出願の出願日より前に公知となった、甲第5号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0012】 実施の形態1. 図1は、本発明に係る実施の形態1のキャリブレーション方法を行う本発明に係るステレオカメラシステム(以下、単にカメラシステムという。)を示す概略構成図である。このカメラシステム2は、概略、所定の範囲を視野内に捉える第1および第2のステレオカメラ6(6A,6B)と、観察場所で各ステレオカメラ6が捉えた人物Pの三次元位置の計測などを行うホストコンピュータ8とを備える。各ステレオカメラ6は一対のカメラ(左右カメラ)を備えている。本願では、左右カメラ同士のキャリブレーションは正確に行われているものとする。 【0013】 ホストコンピュータ8の制御部10には、ステレオカメラ6Aで撮像した第1のステレオ画像(左右カメラでそれぞれ撮像した一対の画像)の時系列データを記憶するための画像メモリ12A、ステレオカメラ6Bで撮像した第2のステレオ画像の時系列データを記憶するための画像メモリ12B、予め決められたステレオカメラ6A,6B(の左右カメラ)の三次元位置・姿勢などの情報(位置に関して3つ、姿勢に関して3つ合計6つのパラメータ)を管理するためのカメラ情報管理部14、ステレオカメラ6Aで撮像したステレオ画像を基に人物Pの第1の三次元位置を算出するとともに、ステレオカメラ6Bで撮像したステレオ画像を基に人物Pの第2の三次元位置を算出するための三次元位置算出部16、該算出部16で算出した第1および第2の三次元位置に基づいて、ステレオ画像内に捉えられた人物を床面(地平面)に投影した投影像に相関する第1および第2の「投影人物領域」を含む第1および第2の画像を作成する投影人物領域算出部18、人物Pにより隠蔽されるステレオカメラの死角に対応する「隠蔽領域」を算出する隠蔽領域算出部20、ステレオカメラ6A,6B同士のキャリブレーションに誤差があったときに該キャリブレーションの補正を行うキャリブレーション補正部21等が接続されている。本実施形態では、後述するように、各ステレオカメラ6A,6Bで一人が観察されている場合に、ステレオカメラ6A,6B同士のキャリブレーションの補正を行う。なお、観察場所としては、人の往来が少なく観察場所には人が存在していても一人の可能性が高い場所が選択されるのが好ましい。」 (8)甲第6号証(特開2006-31101号公報) 本件特許の分割出願日及び原出願の出願日より前に公知となった、甲第6号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0028】 図3はステレオカメラユニット12を車両に搭載した構成を示す図である。図示のように、被写体の遠近に応じてステレオカメラユニットの撮像手段の視点の切り替えをなすように構成している。ステレオカメラユニット12は自車両1のリアにそれぞれ2台並列に設置している。この場合、前述のようにステレオカメラユニット12A,12B間の配置距離がステレオカメラユニット12単体における基線長より長くなるように設置している。 【0029】 同図(1)のように、ステレオカメラユニット12の撮像領域は、画角と基線長から算出される測拒精度の限界から撮像装置の遠方が区切られ、測距可能な撮像領域として有効な範囲として、近距離の撮像領域となる。図中40はステレオカメラユニット12A,12Bの基線長e(近距離時基線長)による近距離時使用画像の撮像領域を示す。 【0030】 一方、同図(2)のように、ステレオカメラユニット対の12AL-12BLあるいは12AR-12BRの組み合わせによる撮像領域は遠距離の撮像領域となる。図中42はステレオカメラユニット間の基線長f(遠距離時基線長)による遠距離時使用画像の撮像領域を示す。ステレオカメラユニット間の基線長fは、ステレオカメラユニット12の基線長eよりも長く、ステレオカメラユニット12の基線長eでは困難であった遠距離の測距に有効な領域の撮像を基にした測距が可能となる。」 第5 判断 上記第3のとおり、本件訂正請求による訂正は全て認められたので、以下では、本件訂正発明1ないし5について、判断する。 1 先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について (1)明確性 本件訂正前の請求項1に存在した、「前記ショベルの油圧アクチュエータと該油圧アクチュエータを操作する操作部との間が油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知した場合、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」、という記載は、本件訂正により改められた。 本件訂正後の請求項1における、「前記アクチュエータを操作する操作レバーをオペレーターが操作しても対応する前記油圧アクチュエータが動作しない油圧ロック状態を選択可能な油圧ロックレバーを有し、前記油圧ロック状態とは、前記操作レバーの操作に伴い前記油圧アクチュエータを動作させるためのパイロット圧を生成する油圧回路が遮断された状態であり、」との記載、及び、「前記エンジンの始動許可判定時には前記油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知する場合がある」との記載により、本件訂正発明1ないし5においては、「油圧ロックレバー」の操作により「アクチュエータを操作する操作レバーをオペレーターが操作しても対応する前記油圧アクチュエータが動作しない油圧ロック状態」となることが明確となるとともに、「油圧ロック状態」と「判定手段が人を検知する」こととの関係は、「油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知する場合がある」という関係であることが、明確とされた。 したがって、本件訂正発明1ないし5は、先の取消理由(決定の予告)において、本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明について通知した点で、不明確なものではなく、当該明確性違反の取消理由によって取り消されるべきものではない。 (2)実施可能要件 本件訂正前の請求項1に存在した、「前記ショベルの油圧アクチュエータと該油圧アクチュエータを操作する操作部との間が油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知した場合、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」、という記載は、本件訂正により改められた。 そして、本件訂正発明1ないし5が有する、「前記アクチュエータを操作する操作レバーをオペレーターが操作しても対応する前記油圧アクチュエータが動作しない油圧ロック状態を選択可能な油圧ロックレバーを有し、前記油圧ロック状態とは、前記操作レバーの操作に伴い前記油圧アクチュエータを動作させるためのパイロット圧を生成する油圧回路が遮断された状態であり、」という事項は、明細書の段落【0032】における次の記載により、当業者であれば適宜実施可能な程度の説明がなされている。 「【0032】 ここで図5に示すように、キャビン64内の座席Sの左方には通常、油圧ロックレバー6が設置されている。この油圧ロックレバー6を手前側に引き図5中「L」で示す位置まで移動させると「油圧ロック状態」が選択される。「油圧ロック状態」においては、ショベル60内の油圧回路内に設けられたシャット弁が、キャビン64内の操作レバーと油圧アクチュエータとの間の油圧回路を遮断する。つまり、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する油圧アクチュエータが動作しない。」 また、本件訂正発明1ないし5が有する、「前記エンジンの始動許可判定時には前記油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知する場合がある」という事項も、明細書の段落【0035】-【0039】における次の記載により、当業者であれば適宜実施可能な程度の説明がなされている。 「【0035】 そこで本実施例2のショベルの始動許可装置11では、図5に示すように、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」か「油圧ロック解除状態」のいずれであるかを、例えばポテンショメータなどの位置検出スイッチを用いてコントローラ5に入力する構成とする。 【0036】 コントローラ5の許可手段5dは、実施例1で述べたものと同様の所定範囲CL、CR、CBに人がおらず、キースイッチ4の選択位置がスタートとされ、かつ、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」である許可条件にて、エンジン3の始動を許可する。 【0037】 つまり本実施例2のショベルの始動許可装置11が含むコントローラ5の制御内容は、図7に示すように、図4に示したフローチャートに比べて、ステップS6が追加される。ステップS3にて、判定手段5cにより所定範囲CL、CR、CBに人がいないと判定され、かつ、ステップS6において、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」である場合に、ステップS4にすすんで、許可手段5dにより、エンジン3の始動が許可される。 【0038】 ステップS3において、判定手段5cにより、所定範囲CL、CR、CBに人がいないと判定され、ステップS6にて、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」でないと判定される場合には、ステップS5にすすむ。ステップS5において、許可手段5dが、エンジン3の始動を不許可とする。 【0039】 なお、本実施例2においても、ステップS3において、所定範囲CL、CR、CBに人がいると判定手段5cにより判定される場合には、ステップS5にすすんで、許可手段5dにより、エンジン3の始動は不許可とされる。図7に示したフローチャートもコントローラ5の制御周期毎に繰り返し実行され、本発明のショベルの始動許可方法が実行される。」 したがって、本件明細書における発明の詳細な説明の記載は、本件訂正発明1ないし5について、先の取消理由(決定の予告)において通知した実施可能要件の不備を有するものではなく、本件訂正発明1ないし5は、当該実施可能要件に関する取消理由によって取り消されるべきものではない。 (3)サポート要件 本件訂正前の請求項1に存在した、「人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定する」との記載、及び、「前記ショベルの油圧アクチュエータと該油圧アクチュエータを操作する操作部との間が油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知した場合、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」、という記載は、本件訂正により改められた。 本件訂正発明1ないし5においては、「前記判定手段より前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定」すること、及び、「前記油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知する場合がある」のは、いずれも「エンジンの始動許可判定時」であることが特定された。また「油圧ロック状態」自体については、「前記アクチュエータを操作する操作レバーをオペレーターが操作しても対応する前記油圧アクチュエータが動作しない油圧ロック状態を選択可能な油圧ロックレバー」を有したうえで、「前記油圧ロック状態とは、前記操作レバーの操作に伴い前記油圧アクチュエータを動作させるためのパイロット圧を生成する油圧回路が遮断された状態」であることが特定された。 そして、本件訂正発明1ないし5における上記の事項は、上記(2)において摘記した明細書の段落【0035】-【0039】の記載、及び段落【0032】の記載から、いずれも明細書に記載され支持されているということができる。 したがって、本件訂正発明1ないし5は、先の取消理由(決定の予告)において、本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明について通知した点で、明細書に記載されていないものではなく、当該サポート要件違反の取消理由によって取り消されるべきものではない。 (4)分割不適、及び文献1を主たる引用例とした新規性 ア 分割の適否 本件特許の原出願である、特願2013-44534号(以下、「原出願」という。)の当初明細書及び図面には、上記第4の3(1)に摘記した文献1と同じ記載がある。 原出願当初明細書の記載は、上記第4の3(1)ア(イ)及び同(ウ)の摘記が示す実施例1及び実施例2について、具体例を「ショベル」とする「建設機械」のエンジンの「始動許可」に関するものであり、また上記第4の3(1)ア(ア)の摘記が示す発明が解決しようとする課題、並びに上記第4の3(1)ア(エ)の摘記が示す産業上の利用可能性も、建設機械のエンジンの「始動許可」に関する記載として完結していた。 そして、原出願の当初明細書及び図面において、「判定手段5c」が「人検知手段5aが人を検知するか否かを判定」することを含む図4あるいは図7のフローチャートについて、「コントローラ5の制御周期毎に繰り返し実行され」ることが記載されてはいるものの、当該図4及び図7のフローチャートはショベルのエンジンの「始動許可方法」として実行されるものであり、エンジンのキースイッチを「スタート」とするか否かに関わらず図4あるいは図7のフローチャートを実施することは、原出願の当初明細書等には記載されていなかった。また、原出願の当初明細書及び図面において、上記第4の3(1)ア(ウ)に摘記した段落【0033】の記載に示されるように、「油圧ロックレバー6」を「油圧ロック状態」とするだけで「操作レバーをオペレーターが操作しても対応する油圧アクチュエータが動作しない」状態となることが記載されている一方、「判定手段が人を検知」したことを「操作レバーをオペレーターが操作しても対応する油圧アクチュエータが動作しない」状態となるか否かに影響させる技術的処理は一切記載されていなかった。 これに対して、本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明では、「判定手段」が「人検知手段が人を検知するか否か」を「所定の制御周期毎に判定する」という動作、及び当該「判定手段」の判定を含む全体動作について、エンジンの「キースイッチ」が「スタート」とされた際のエンジン始動処理という要件を問わず拡張されており、原出願の当初明細書及び図面に記載された事項の範囲を超えていた。また、本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明では、「前記ショベルの油圧アクチュエータと該油圧アクチュエータを操作する操作部との間が油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知した場合、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」との発明特定事項について、上記第4の2(2)アに示したとおり不明確であったところ、仮に当該発明特定事項が、「判定手段が人を検知した」ことを、「油圧ロック状態」であることと同様に、「操作レバーをオペレータが操作しても対応する該油圧アクチュエータが動作しない」という結果に至るか否かに影響するものとする趣旨であった場合には、原出願の当初明細書及び図面には、「判定手段が人を検知」したことを「操作レバーをオペレーターが操作しても対応する油圧アクチュエータが動作しない」状態となるか否かに影響させる技術的処理は一切記載されていなかったことから、この点でも原出願の当初明細書及び図面に記載された事項の範囲を超えていた。 しかしながら、本件訂正発明1ないし5においては、「判定手段」が「人検知手段が人を検知するか否か」を「所定の制御周期毎に判定する」という動作について、「エンジンの始動許可判定時」であることが特定されるとともに、「油圧ロック状態」自体については、「前記アクチュエータを操作する操作レバーをオペレーターが操作しても対応する前記油圧アクチュエータが動作しない油圧ロック状態を選択可能な油圧ロックレバー」を有したうえで、「前記油圧ロック状態とは、前記操作レバーの操作に伴い前記油圧アクチュエータを動作させるためのパイロット圧を生成する油圧回路が遮断された状態」であることが特定された。また、「油圧ロック状態」と「判定手段が人を検知する」こととの関係も、「エンジンの始動許可判定時には、前記油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知する場合がある」という関係であることが明確とされた。 そのため、本件訂正発明1ないし5は、原出願の当初明細書等に記載された発明の一部を新たな特許出願としたものということができ、先の取消理由通知(決定の予告)において指摘した分割不適の不備はない。 したがって、本件特許出願は、原出願の時にしたものとみなされる。 イ 文献1を主たる引用例とした新規性 上記アのとおり、本件特許出願は、原出願の時にしたものとみなされるから、本件訂正発明1ないし5は、当該原出願の時より後に公開された文献1によって、新規性が否定されるものではない。 したがって、本件訂正発明1ないし5は、先の取消理由(決定の予告)において、本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明について通知した、文献1を主たる引用例とした新規性欠如の取消理由によって、取り消されるべきものではない。 (5)分割不適、及び文献1を主たる引用例とした進歩性 上記(4)アのとおり、本件特許出願は、原出願の時にしたものとみなされるから、本件訂正発明1ないし5は、当該原出願の時より後に公開された文献1を主たる引用例として、進歩性が否定されるものではない。 したがって、本件訂正発明1ないし5は、先の取消理由(決定の予告)において、本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明について通知した、文献1を主たる引用例とした進歩性欠如の取消理由によって、取り消されるべきものではない。 (6)甲第2号証を主たる引用例とした進歩性 ア 本件訂正発明1 (ア)対比 甲2発明と本件訂正発明1とを対比する。 甲2発明における「バックホー」が備える「ブーム6、アーム5及びバケット4」から構成される「作業機7」は、本件明細書の段落【0014】に「掘削アタッチメントE(ブーム、アーム、バケット)」と記載されていることを勘案すると、本件訂正発明1の「ショベル」が備える「掘削アタッチメント」に相当する。そして甲2発明における「バックホー」は、本件訂正発明1における「ショベル」に相当する。 甲2発明における「クローラ式走行装置1」は、本件訂正発明1における「下部走行体」に相当し、甲2発明において「クローラ式走行装置1の上部中央に旋回台軸受17を介して・・・左右旋回可能に支持」された「旋回フレーム2」は、本件訂正発明1における「下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体」に相当する。 甲2発明における「ブームブラケット12に支持されたブーム6、該ブーム6の上端部に支持されたアーム5、アーム5の先端部に支持された作業用アタッチメントであるバケット4から構成される作業機7」は、本件明細書の段落【0014】において「掘削アタッチメントE」に「(ブーム、アーム、バケット)」との付記がされていることを勘案すると、本件訂正発明1における「掘削アタッチメント」に相当する。また、甲2発明において「作業機7」が「旋回フレーム2の前端部」に設けられている構成と、本件訂正発明1において「掘削アタッチメント」が「上部旋回体の前方中央部に備えられ」ている構成とは、「上部旋回体」の「前方」に「掘削アタッチメント」が備えられているという点で、共通する。 甲2発明における「ブーム6、アーム5及びバケット4をそれぞれ回動動作する油圧シリンダ9・10・11および旋回モータ45および走行油圧モータ44等の油圧アクチュエーター」は、「それぞれ方向制御バルブ(切換バルブ)と接続され、油圧操作レバーの操作でパイロットバルブを切り換えて前記各方向制御バルブを制御することで、油圧ポンプ30から吐出された圧油が方向切換バルブを介して供給されることにより駆動される構成」であることを踏まえると、本件訂正発明1における「それぞれが油圧ポンプからのパイロット圧を油圧回路が送り込むことで動作する切削用、旋回用、及び前後進用の油圧アクチュエータ」に相当する。 甲2発明において、「旋回フレーム2の上部にはエンジン13等を被覆するボンネット14が配設され」ている構成は、エンジン13が旋回フレーム2に設けられることとなるから、本件訂正発明1において「前記上部旋回体」に「エンジン」が備えられる構成に相当する。甲2発明において、「旋回フレーム2の上部」に配設した「ボンネット14上に運転席16を配置し、該運転席16の近傍に油圧操作レバー21・22やロックレバー23・24等を配置し、運転席16前方に走行レバー25やペダル等を配置して運転操作部15を構成し、該運転操作部15の上方にはキャノピー8が配設され」た構成は、本件訂正発明1において「前記上部旋回体」に「キャブ」を備えた構成に相当する。また甲2発明において、「オペレーターが作業車に乗り着座した状態で、キースイッチ36をSTART端子36c位置に回動すると、エンジン停止手段40の停止が解除されてエンジン13は作動可能状態なる」構成は、「エンジン13」を「作動可能状態」とする「キースイッチ36」が「運転席16」の「運転操作部15」近傍にあると解されることを踏まえると、本件訂正発明1において、「前記キャブ内」に「前記エンジンのキースイッチ」を設けた構成に相当する。 甲2発明において、「ブームシリンダ11に接続された方向制御バルブ31と油圧ポンプ30との間には開閉弁34が介装されており、ロックレバー23または24を持ち上げて「作動不可」位置に回動すると、開閉弁34がブロック位置に切り換えられ、油圧操作レバー21・22を操作しても方向制御バルブ31は切り換えられず、誤って油圧操作レバー21・22に触れてもアクチュエーターは作動しないようになって」いるとともに、「各方向制御バルブと油圧アクチュエーターの作動は略同様の作用となって」いる構成は、本件訂正発明1において、「前記アクチュエータを操作する操作レバーをオペレーターが操作しても対応する前記油圧アクチュエータが動作しない油圧ロック状態を選択可能な油圧ロックレバーを有し、前記油圧ロック状態とは、前記操作レバーの操作に伴い前記油圧アクチュエータを動作させるためのパイロット圧を生成する油圧回路が遮断された状態」である構成に相当する。 以上より、甲2発明と本件訂正発明1とは、 「下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、該上部旋回体の前方に備えられる掘削アタッチメントと、それぞれが油圧ポンプからのパイロット圧を油圧回路が送り込むことで動作する切削用、旋回用、及び前後進用の油圧アクチュエータと、を含み、 前記上部旋回体に備えられるエンジン、前記上部旋回体に備えられるキャブ、前記キャブ内に設けられる前記エンジンのキースイッチを有する、ショベルであって、 前記アクチュエータを操作する操作レバーをオペレーターが操作しても対応する前記油圧アクチュエータが動作しない油圧ロック状態を選択可能な油圧ロックレバーを有し、 前記油圧ロック状態とは、前記操作レバーの操作に伴い前記油圧アクチュエータを動作させるためのパイロット圧を生成する油圧回路が遮断された状態である、 ショベル。」 という点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 掘削アタッチメントの上部旋回体に対する設置位置に関し、 本件訂正発明1では、「前方中央部」と特定されているのに対し、 甲2発明では、前後方向において「前端」ではあるものの、幅方向において「中央部」とまでは特定されていない点。 <相違点2> 本件訂正発明1においては、「前記上部旋回体に備えられるカメラ、及び、前記エンジンを前記キースイッチの選択位置に基づいて制御するコントローラ」を有し、「前記コントローラ」が、「前記カメラからの入力画像に画像処理を行い前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する人検知手段と、前記人検知手段が人を検知するか否かを判定する判定手段と」を有したうえで、当該コントローラが、「前記人検知手段より前記カメラからの入力画像に画像処理を行い、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知し、前記エンジンの始動許可判定時に、前記判定手段より前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定」するとともに、「前記エンジンの始動許可判定時には前記油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知する場合がある」のに対し、 甲2発明では、「エンジン13を始動するときに、ロックレバー23・24のいずれか一方または両方が「作動可能」位置に回動されていると、エンジン13を始動させることができず、エンジン13の始動後に、「作動不可」位置のロックレバー23・24を「作動可能」位置に回動するまでの時間が第二設定時間を超えると、エンジン13が停止する」ものではあっても、「カメラ」及び「エンジンを前記キースイッチの選択位置に基づいて制御するコントローラ」を有さず、「コントローラ」と「カメラ」とにより「前記人検知手段より前記カメラからの入力画像に画像処理を行い、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知し、前記エンジンの始動許可判定時に、前記判定手段より前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定」するという「エンジンの始動許可判定」を行っておらず、「エンジンの始動許可判定時」に「油圧ロック状態」で「判定手段が人を検知する場合がある」制御を行っていない点。 (イ)判断 事案に鑑み、上記相違点2について判断する。 甲第4号証には、上記第4の3(3)イに認定した甲4発明が記載されており、甲4発明は「油圧ショベル」において、「上部旋回体8の左側部及び右側部に設けられ、それぞれの検出信号範囲に人、動物などの障害物が立ち入ると検知信号をコントローラ部21に出力する、障害物センサ9,10,11,12と、障害物センサ9,10,11,12からの検出信号に基づき、コントローラ部21に接続された警報器15,16,14より警報を発生可能なコントローラ部21と」を設けたうえで、「油圧ショベルが旋回作業を行っているときだけでなく、エンジン17のキースイッチ19を投入した状態のときに障害物センサ9,10,11,12の信号範囲内に人,動物などの障害物が立入ると、コントローラ部21に接続されている警報器14,15,16はすべて警報を発生するように設定」する構成を有している。 しかしながら、甲4発明の上記構成においては、「エンジン17のキースイッチ19を投入した状態のとき」に、「検出信号範囲に人、動物などの障害物が立ち入る」と、「警報を発生」しているにとどまり、障害物センサとコントローラとを用いてエンジンの始動許可判定を行うものではない。そのため、甲2発明に甲4発明の上記構成を組み合わせても、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成に至るものではない。 また、甲第1号証には、上記第4の3(4)イに認定した甲1発明が記載されており、甲1発明は、「油圧ショベル」に「カメラ」を設けたうえで、「機械の作業中は常時センシング」を行う構成を有しているものの、「エンジンの始動許可判定時」において「油圧ロック状態」で「判定手段より前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定」する上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成を示すものではない。甲第3号証には、上記第4の3(6)に摘記した事項が記載され、油圧ショベルのエンジンキースイッチをオフにする時には、オペレータがゲートロックレバー24をロック位置に操作し、オペレータがエンジン1を始動するときには、ゲートロックレバー24はロック位置にあることが示されているが、「エンジンの始動許可判定時」において「油圧ロック状態」で「判定手段より前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定」する、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成を示すものではない。文献2、甲第5号証、及び甲第6号証には、上記第4の3(5)、(7)及び(8)にそれぞれ摘記した事項が記載されているが、複数のカメラあるいはステレオカメラの使用が示されているにとどまり、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成を示すものではない。 そして、甲2発明においては、エンジンの始動時の安全確保について、「エンジン13を始動するときに、ロックレバー23・24のいずれか一方または両方が「作動可能」位置に回動されていると、エンジン13を始動させることができず」という構成を有しているところ、エンジンの始動を許可するためにさらにセンサとコントローラとを用いた複雑な制御を追加する動機付けはなく、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第6号証、並びに文献2に記載される事項を考慮しても、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成に至ることが、当業者にとって容易であったということはできない。 なお、文献1は、上記(4)に示したとおり、本件訂正発明1の進歩性を判断するうえでの先行技術とすることはできない。 したがって、甲2発明において、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成に至ることは、甲4発明、甲1発明、及び甲第3号証、甲第5号証ないし甲第6号証並びに文献2に示される事項を考慮しても、当業者が容易になし得たものではない。 そして、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成に至ることが想到容易でないから、相違点1について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2発明を主たる引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件訂正発明2ないし5 本件訂正発明2ないし5は、いずれも本件訂正発明1が有する構成を全て有し、さらに限定を加えたものである。 そして、本件訂正発明1が、上記アのとおり、甲2発明を主たる引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明2ないし5も、甲2発明を主たる引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 上記のとおりであるから、本件訂正発明1ないし5は、先の取消理由(決定の予告)において、本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明について通知した、甲第2号証を主たる引用例とした進歩性欠如の取消理由によって、取り消されるべきものではない。 (7)甲第4号証を主たる引用例とした進歩性 ア 本件訂正発明1 (ア)対比 甲4発明と本件訂正発明1とを対比する。 甲4発明における「下部走行体」は、本件訂正発明1における「下部走行体」に相当する。 甲4発明における「上部旋回体8」は、下部走行体の上で旋回自在自在であることが明らかであることを考慮すると、本件訂正発明1における「下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体」に相当する。 甲4発明における「ブーム状部材及びアーム状部材並びにアーム状部材の先端に取り付けられたバケット状部材」は、本件明細書の段落【0014】に「掘削アタッチメントE(ブーム、アーム、バケット)」と記載されていることを勘案すると、本件訂正発明1の「ショベル」が備える「掘削アタッチメント」に相当する。また、甲4発明における「ブーム状部材及びアーム状部材並びにアーム状部材の先端に取り付けられたバケット状部材」が、「上部旋回体8の前方中央部」に設けられている構成は、本件訂正発明1における「掘削アタッチメント」が「上部旋回体の前方中央部」に備えられる構成に相当する。 甲4発明における「油圧ショベル」が、「上部旋回体8に運転室13及びエンジン17を備えた」構成は、本件訂正発明1における「ショベル」が、「前記上部旋回体に備えられるエンジン、前記上部旋回体に備えられるキャブ」を有する構成に相当する。 甲4発明における「エンジン17のキースイッチ19」は、「運転室13」内に設けられることが明らかであることを勘案すると、本件訂正発明1における「前記キャブ内に設けられる前記エンジンのキースイッチ」に相当する。 甲4発明における「上部旋回体8の左側部及び右側部に設けられ、それぞれの検出信号範囲に人、動物などの障害物が立ち入ると検知信号をコントローラ部21に出力する、障害物センサ9,10,11,12」と、本件訂正発明1における「前記上部旋回体に備えられるカメラ」とは、「前記上部旋回体に備えられるセンサ」という点で共通する。 甲4発明において、「障害物センサ9,10,11,12からの検出信号に基づき、コントローラ部21に接続された警報器15,16,14より警報を発生可能なコントローラ部21とを有し、油圧ショベルが旋回作業を行っているときだけでなく、エンジン17のキースイッチ19を投入した状態のときに障害物センサ9,10,11,12の信号範囲内に人,動物などの障害物が立入ると、コントローラ部21に接続されている警報器14,15,16はすべて警報を発生するように設定された」構成は、警報を発生する際には信号範囲内で障害物が検知されたか否かの判定が行われていると解されることを勘案すると、本件訂正発明1において、「前記エンジンを前記キースイッチの選択位置に基づいて制御するコントローラを有」し、「前記コントローラは、前記カメラからの入力画像に画像処理を行い前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する人検知手段と、前記人検知手段が人を検知するか否かを判定する判定手段と、を有するとともに、前記コントローラは、前記人検知手段より前記カメラからの入力画像に画像処理を行い、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知し、前記エンジンの始動許可判定時に、前記判定手段より前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定し、前記エンジンの始動許可判定時には前記油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知する場合がある」構成とは、「コントローラ」を有し、「センサに基づき所定範囲内の障害物を検知されたか否かを判定する」という点で、共通する。 以上より、甲4発明と本件訂正発明1とは、 「下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、該上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントとを含み 前記上部旋回体に備えられるエンジン、前記上部旋回体に備えられるキャブ、前記キャブ内に設けられる前記エンジンのキースイッチ、前記上部旋回体に備えられるセンサ、及び、コントローラを有する、ショベルであって、 センサに基づき所定範囲内の障害物を検知されたか否かを判定する、 ショベル。」 という点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3> 油圧アクチュエータ、及びロック状態に関し、 本件訂正発明1においては、「それぞれが油圧ポンプからのパイロット圧を油圧回路が送り込むことで動作する切削用、旋回用、及び前後進用の油圧アクチュエータ」を有することが特定されたうえで、「前記アクチュエータを操作する操作レバーをオペレーターが操作しても対応する前記油圧アクチュエータが動作しない油圧ロック状態を選択可能な油圧ロックレバーを有し、前記油圧ロック状態とは、前記操作レバーの操作に伴い前記油圧アクチュエータを動作させるためのパイロット圧を生成する油圧回路が遮断された状態」であると特定されているのに対し、 甲4発明においては、「油圧ショベル」であることから油圧アクチュエータは存在すると解されるものの、油圧アクチュエータの詳細、及び油圧ロックレバーの存否、油圧ロック状態について、特定されていない点。 <相違点4> センサに関し、 本件訂正発明1においては、「カメラ」と特定されているのに対し、 甲4発明においては、「障害物センサ9,10,11,12」が「カメラ」とは特定されていない点。 <相違点5> コントローラに関し、 本件訂正発明1においては、「コントローラ」が、 ・「前記エンジンを前記キースイッチの選択位置に基づいて制御するコントローラ」であり、 ・「前記カメラからの入力画像に画像処理を行い前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する人検知手段と、前記人検知手段が人を検知するか否かを判定する判定手段と」を有し、 ・「前記人検知手段より前記カメラからの入力画像に画像処理を行い、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知し、前記エンジンの始動許可判定時に、前記判定手段より前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定」する、という動作を行うものであり、 ・「前記エンジンの始動許可判定時には前記油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知する場合がある」、と特定されているのに対し、 甲4発明においては、「コントローラ部21」は、「障害物センサ9,10,11,12からの検出信号」に基づき、「接続された警報器15,16,14より警報を発生可能」なものであり、「エンジン17のキースイッチ19を投入した状態のときに、「エンジン17のキースイッチ19を投入した状態のときに障害物センサ9,10,11,12の信号範囲内に人,動物などの障害物が立入ると、コントローラ部21に接続されている警報器14,15,16はすべて警報を発生するように設定」されている点。 (イ)判断 事案に鑑み、上記相違点5について判断する。 甲第2号証には、上記4の3(2)イに認定した甲2発明が記載されており、甲2発明は、「キースイッチ36をSTART端子36c位置に回動すると、エンジン停止手段40の停止が解除されてエンジン13は作動可能状態」となる「バックホー」において、「エンジン13を始動するときに、ロックレバー23・24のいずれか一方または両方が「作動可能」位置に回動されていると、エンジン13を始動させることができ」ないものとする構成を有している。 しかしながら、甲2発明の上記構成は、上記相違点5に係る本件訂正発明1の構成のうち、「コントローラ」により、「エンジンの始動許可判定時」に、「人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定する」という構成を、示すものではない。 また、甲第1号証には、上記第4の3(4)イに認定した甲1発明が記載されており、甲1発明は、「油圧ショベル」に「カメラ」を設けたうえで、「機械の作業中は常時センシング」を行う構成を有しているものの、「コントローラ」により、「エンジンの始動許可判定時」に、「人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定する」という、上記相違点5に係る本件訂正発明1の構成に含まれる構成を、示すものではない。甲第3号証には、上記第4の3(6)に摘記した事項が記載され、油圧ショベルのエンジンキースイッチをオフにする時には、オペレータがゲートロックレバー24をロック位置に操作し、オペレータがエンジン1を始動するときには、ゲートロックレバー24はロック位置にあることが示されているが、「コントローラ」により、「エンジンの始動許可判定時」に、「人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定する」という、上記相違点5に係る本件訂正発明1の構成に含まれる構成を、示すものではない。文献2、甲第5号証、及び甲第6号証には、上記第4の3(5)、(7)及び(8)にそれぞれ摘記した事項が記載されているが、複数のカメラあるいはステレオカメラの使用が示されているにとどまり、カメラの使用という点以外について、上記相違点5に係る本件訂正発明1の構成を示すものではない。 そして、甲4発明に戻れば、甲4発明においては、「コントローラ部21」は、「エンジン17のキースイッチ19を投入した状態のとき」に、「検出信号範囲に人、動物などの障害物が立ち入る」と、「警報を発生」しているにとどまり、コントローラ部21により、障害物センサの信号を用いてエンジンの始動許可判定を行うことに関する示唆はなく、かような改変を行う動機付けもない。 なお、文献1は、上記(4)に示したとおり、本件訂正発明1の進歩性を判断するうえでの先行技術とすることはできない。 したがって、甲4発明において、上記相違点5に係る本件訂正発明1の構成に至ることは、甲2発明、甲1発明、及び甲第3号証、甲第5ないし第6号証並びに文献2に示される事項を考慮しても、当業者が容易になし得たものではない。 そして、上記相違点5に係る本件訂正発明1の構成に至ることが想到容易でないから、相違点3及び4について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲4発明を主たる引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件訂正発明2ないし5 本件訂正発明2ないし5は、いずれも本件訂正発明1が有する構成を全て有し、さらに限定を加えたものである。 そして、本件訂正発明1が、上記アのとおり、甲4発明を主たる引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明2ないし5も、甲4発明を主たる引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 上記のとおりであるから、本件訂正発明1ないし5は、先の取消理由(決定の予告)において、本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明について通知した、甲第4号証を主たる引用例とした進歩性欠如の取消理由によって、取り消されるべきものではない。 2 先の取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった異議申立理由について 申立人は申立書において、本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第6号証にも示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨を申し立てていた。 上記第3のとおり、本件訂正は全て認められたので、本件訂正発明1ないし5について、当該申立理由により取り消されるべきものか否かを判断する。 (1)本件訂正発明1 ア 対比 甲1発明と本件訂正発明1とを対比する。 甲1発明における「下部走行体1e」は、本件訂正発明1における「下部走行体」に相当する。甲1発明における「上部旋回体1d」は、本件訂正発明1における「上部旋回体」に相当する。甲1発明において、「上部旋回体1d」が「旋回モータ3d」により「駆動」されるからには、「上部旋回体1d」は「下部走行体1e」の上で旋回可能であることが明らかであり、甲1発明における当該構成は、本件訂正発明1において「上部旋回体」が「下部走行体に旋回自在に搭載される」構成に相当する。 甲1発明において、「垂直方向にそれぞれ回動するブーム1a,アーム1b及びバケット1cからなる多関節型のフロント作業機1A」は、「掘削作業」が行われることを勘案すると、本件訂正発明1における「掘削アタッチメント」に相当する。甲1発明において、「フロント作業機1Aのブーム1aの基端」が「上部旋回体1dの前部に支持」されている構成と、本件訂正発明1において、「掘削アタッチメント」が「上部旋回体の前方中央部に備えられる」構成とは、「掘削アタッチメント」が「上部旋回体の前方に備えられる」構成という点で、共通する。 甲1発明において、「ブーム1a,アーム1b,バケット1c,上部旋 回体1d及び下部走行体1eはそれぞれブームシリンダ3a,アームシリンダ3b,バケットシリンダ3c,旋回モータ3d及び左右の走行モータ3e,3fの各アクチュエータによりそれぞれ駆動され」る構成は、甲1発明が「油圧ショベル」であり各アクチュエータは油圧アクチュエータであると解されること、及び、油圧アクチュエータは油圧ポンプからのパイロット圧を油圧回路が送り込むことで動作することが技術常識であることを勘案すると、本件訂正発明1において、「それぞれが油圧ポンプからのパイロット圧を油圧回路が送り込むことで動作する切削用、旋回用、及び前後進用の油圧アクチュエータ」を含む構成に相当する。 甲1発明において、「上部旋回体1dには、運転室1fが備えられた」構成は、本件訂正発明1において、「上部旋回体に備えられるキャブ」に相当する。 甲1発明において、「機械の上部旋回体1dの後方にカメラ13aを設置」し、「機械の上部旋回体1dの右側方にカメラ13bを設置」した構成は、本件訂正発明1において、「上部旋回体に備えられるカメラ」を有する構成に相当する。 甲1発明における「油圧ショベル」は、本件訂正発明1における「ショベル」に相当する。 甲1発明において、「カメラ13a」及び「カメラ13b」が「撮影したシーンを用いて画像処理1706を行」う構成は、本件訂正発明1において、「カメラからの入力画像に画像処理を行」う構成に相当する。甲1発明において、「画像処理1706を行い、掘削作業中1703の障害物の有無を検知し、右側方の動作位置範囲内に人物が存在してフロント作業機を右旋回1704した場合、人物と接触する可能性が高いので、接触を回避する制御1710としてフロント作業機を停止」する構成は、本件訂正発明1において、「ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知」する構成に相当する。 以上より、甲1発明と本件訂正発明1とは、 「下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、該上部旋回体の前方に備えられる掘削アタッチメントと、それぞれが油圧ポンプからのパイロット圧を油圧回路が送り込むことで動作する切削用、旋回用、及び前後進用の油圧アクチュエータと、を含み、 前記上部旋回体に備えられるキャブ、前記上部旋回体に備えられるカメラ、を有する、ショベルであって、 前記カメラからの入力画像に画像処理を行い、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する、 ショベル。」 という点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点6> 掘削アタッチメントの上部旋回体に対する設置位置に関し、 本件訂正発明1では、「前方中央部」と特定されているのに対し、 甲1発明では、前後方向において「前方」ではあるものの、幅方向において「中央部」とまでは特定されていない点。 <相違点7> 油圧ロックレバー、及び油圧ロック状態に関し、 本件訂正発明1においては、「前記アクチュエータを操作する操作レバーをオペレーターが操作しても対応する前記油圧アクチュエータが動作しない油圧ロック状態を選択可能な油圧ロックレバーを有し、前記油圧ロック状態とは、前記操作レバーの操作に伴い前記油圧アクチュエータを動作させるためのパイロット圧を生成する油圧回路が遮断された状態」であると特定されているのに対し、 甲1発明においては、油圧ロックレバーの存否、及び油圧ロック状態について、特定されていない点。 <相違点8> エンジン、及びエンジンの制御に関し、 本件訂正発明1においては、「上部旋回体に備えられるエンジン」及び「前記キャブ内に設けられる前記エンジンのキースイッチ」を備えたうえで、「前記エンジンを前記キースイッチの選択位置に基づいて制御するコントローラ」を有しており、当該「コントローラ」が、 ・前記カメラからの入力画像に画像処理を行い前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する人検知手段と、前記人検知手段が人を検知するか否かを判定する判定手段と」を有し、 ・「前記人検知手段より前記カメラからの入力画像に画像処理を行い、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知し、前記エンジンの始動許可判定時に、前記判定手段より前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定」する、という動作を行うものであり、 ・「前記エンジンの始動許可判定時には前記油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知する場合がある」、と特定されているのに対し、 甲1発明においては、「エンジン」及び「エンジンのキースイッチ」の存在が特定されていないとともに、「エンジンを前記キースイッチの選択位置に基づいて制御するコントローラ」を有しておらず、 また当該「コントローラ」が、「前記カメラからの入力画像に画像処理を行い前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する人検知手段と、前記人検知手段が人を検知するか否かを判定する判定手段と」を有したうえで、「エンジンの始動許可判定時に、前記判定手段より前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定」するという処理が行われるものではなく、「前記エンジンの始動許可判定時には前記油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知する場合がある」ものでもない点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点8について判断する。 甲第2号証には、上記4の3(2)イに認定した甲2発明が記載されており、甲2発明は、「キースイッチ36をSTART端子36c位置に回動すると、エンジン停止手段40の停止が解除されてエンジン13は作動可能状態」となる「バックホー」において、「エンジン13を始動するときに、ロックレバー23・24のいずれか一方または両方が「作動可能」位置に回動されていると、エンジン13を始動させることができ」ないものとする構成を有している。 しかしながら、甲2発明の上記構成は、上記相違点8に係る本件訂正発明1の構成のうち、「コントローラ」により、「エンジンの始動許可判定時」に、「人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定する」という構成を、示すものではない。 甲第4号証には、上記第4の3(3)イに認定した甲4発明が記載されており、甲4発明は「油圧ショベル」において、「上部旋回体8の左側部及び右側部に設けられ、それぞれの検出信号範囲に人、動物などの障害物が立ち入ると検知信号をコントローラ部21に出力する、障害物センサ9,10,11,12と、障害物センサ9,10,11,12からの検出信号に基づき、コントローラ部21に接続された警報器15,16,14より警報を発生可能なコントローラ部21と」を設けたうえで、「油圧ショベルが旋回作業を行っているときだけでなく、エンジン17のキースイッチ19を投入した状態のときに障害物センサ9,10,11,12の信号範囲内に人,動物などの障害物が立入ると、コントローラ部21に接続されている警報器14,15,16はすべて警報を発生するように設定」する構成を有している。 しかしながら、甲4発明の上記構成においては、「エンジン17のキースイッチ19を投入した状態のとき」に、「検出信号範囲に人、動物などの障害物が立ち入る」と、「警報を発生」しているにとどまり、障害物センサとコントローラとを用いてエンジンの始動許可判定を行うものではない。そのため、甲4発明の上記構成も、上記相違点8に係る本件訂正発明1の構成のうち、「コントローラ」により、「エンジンの始動許可判定時」に、「人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定する」という構成を、示すものではない。 甲第3号証には、上記第4の3(6)に摘記した事項が記載され、油圧ショベルのエンジンキースイッチをオフにする時には、オペレータがゲートロックレバー24をロック位置に操作することが示されているが、「コントローラ」により、「エンジンの始動許可判定時」に、「人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定する」という、上記相違点8に係る本件訂正発明1の構成に含まれる構成を、示すものではない。文献2、甲第5号証、及び甲第6号証には、上記第4の3(5)、(7)及び(8)にそれぞれ摘記した事項が記載されているが、上記相違点8に係る本件訂正発明1の構成を示すものではない。 そして、甲1発明に戻れば、甲1発明においては、「コントローラ部21」は、「エンジン17のキースイッチ19を投入した状態のとき」に、「検出信号範囲に人、動物などの障害物が立ち入る」と、「警報を発生」しているにとどまり、コントローラ部21により、障害物センサの信号を用いてエンジンの始動許可判定を行うことに関する示唆はなく、かような改変を行う動機付けもない。 なお、文献1は、上記1(4)に示したとおり、本件訂正発明1の進歩性を判断するうえでの先行技術とすることはできない。 したがって、甲1発明において、上記相違点8に係る本件訂正発明1の構成に至ることは、甲2発明、甲4発明、及び甲第3号証、甲第5ないし第6号証並びに文献2に示される事項を考慮しても、当業者が容易になし得たものではない。 そして、上記相違点8に係る本件訂正発明1の構成に至ることが想到容易でないから、相違点6及び7について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明を主たる引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件訂正発明2ないし5 本件訂正発明2ないし5は、いずれも本件訂正発明1が有する構成を全て有し、さらに限定を加えたものである。 そして、本件訂正発明1が、上記(1)のとおり、甲1発明を主たる引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明2ないし5も、甲1発明を主たる引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)小括 上記のとおりであるから、本件訂正発明1ないし5は、申立書において申立人が申し立てる、甲第1号証を主たる引用例とした進歩性欠如の理由によって、取り消されるべきものではない。 3 申立人の主張について 申立人は、本件訂正前の本件特許の請求項1ないし5に係る発明について、申立書に記載した異議申立理由により特許を取り消すべきと主張していたが、本件訂正請求があった旨の通知に対して意見書等の提出はしておらず、本件訂正発明1ないし5について特段の主張はされていない。 第6 むすび 以上のとおり、本件訂正は全て認められるとともに、本件訂正発明1ないし5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に本件訂正発明1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ショベル 【技術分野】 【0001】 本発明は、安全性を確保するショベルに関する。 【背景技術】 【0002】 ショベル等の建設機械として例えば特許文献1に記載のものがある。この技術においては、機械と周囲の作業員等の障害物との接触を防止するため、障害物との距離や建設機械の切削や旋回などの動作に対応させて危険である場合に警報を行うことが提案されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開2010-198519号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 ところが、上述した特許文献1に記載の従来技術においては、建設機械の周辺の作業員の安全を確保する技術については開示されていない。 【0005】 本発明においては、より確実に周辺の作業員の安全を確保することができるショベルを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明の実施形態に係るショベルは、下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、該上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、それぞれが油圧ポンプからのパイロット圧を油圧回路が送り込むことで動作する切削用、旋回用、及び前後進用の油圧アクチュエータと、を含み、前記上部旋回体に備えられるエンジン、前記上部旋回体に備えられるキャブ、前記キャブ内に設けられる前記エンジンのキースイッチ、前記上部旋回体に備えられるカメラ、及び、前記エンジンを前記キースイッチの選択位置に基づいて制御するコントローラを有する、ショベルであって、前記アクチュエータを操作する操作レバーをオペレーターが操作しても対応する前記油圧アクチュエータが動作しない油圧ロック状態を選択可能な油圧ロックレバーを有し、前記油圧ロック状態とは、前記操作レバーの操作に伴い前記油圧アクチュエータを動作させるためのパイロット圧を生成する油圧回路が遮断された状態であり、前記コントローラは、前記カメラからの入力画像に画像処理を行い前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する人検知手段と、前記人検知手段が人を検知するか否かを判定する判定手段と、を有するとともに、前記コントローラは、前記人検知手段より前記カメラからの入力画像に画像処理を行い、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知し、前記エンジンの始動許可判定時に、前記判定手段より前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定し、前記エンジンの始動許可判定時には前記油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知する場合がある。 【発明の効果】 【0007】 上述の手段により、より確実に周辺の作業員の安全を確保することができるショベルを提供することができる。 【図面の簡単な説明】 【0008】 【図1】本発明に係る実施例1のショベルの始動許可装置1のカメラ2を含む概略構成を示す模式ブロック図である。 【図2】実施例1のショベルの始動許可装置1が適用されるショベル60の一実施形態について示す模式図である。 【図3】実施例1のショベルの始動許可装置1のカメラ2の設置位置と検出範囲の一実施形態について示す模式図である。 【図4】実施例1のショベルの始動許可装置1のコントローラ5の制御内容の詳細を示すフローチャートである。 【図5】本発明に係る実施例2のショベルの始動許可装置11の含む油圧ロックレバー6の概略構成を示す模式図である。 【図6】実施例2のショベルの始動許可装置11のカメラ2を含む概略構成を示す模式ブロック図である。 【図7】実施例2のショベルの始動許可装置11のコントローラ5の制御内容の詳細を示すフローチャートである。 【発明を実施するための形態】 【0009】 以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら説明する。 【実施例1】 【0010】 本実施例1のショベルは、始動許可装置1を有し、図1に示すように、カメラ2と、エンジン3をキースイッチ4の選択位置(スタート、オン、オフ)に基づいて制御するコントローラ5とを含んで構成される。 【0011】 コントローラ5は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)及びこれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェース等を備えたコンピュータである。 【0012】 本実施例1のコントローラ5は、例えば、本発明の始動許可方法を実行するプログラムをROMやNVRAMに記憶している。コントローラ5は、一時記憶領域としてRAMを利用しながら対応する処理をCPUに実行させることで、人検知手段5a、始動手段5b、判定手段5c、許可手段5dを構成する。 【0013】 本実施例1のショベルの始動許可装置1は、図2に示すように、ショベル60(建設機械)に適用される。ショベル60は、クローラ式の下部走行体61の上に、旋回機構62を介して、上部旋回体63を旋回軸PVの周りで旋回自在に搭載している。 【0014】 また、上部旋回体63は、その前方左側部にキャビン(運転室)64を備え、その前方中央部に掘削アタッチメントE(ブーム、アーム、バケット)を備えている。さらに、上部旋回体63は、その左側面、右側面及び後面にそれぞれ対応する上述したカメラ2(カメラ2L、カメラ2R、カメラ2B)を備えている。 【0015】 図1に示したエンジン3は、上部旋回体63内部のいずれかの箇所に設置される。また、キースイッチ4は、キャビン64内のオペレーター(操作者)の操作可能な位置に設置される。キースイッチ4の選択位置はスタート、オン、オフの三つであり、選択位置がスタートである場合に、周知の始動回路に基づいて、コントローラ5に始動信号が出力される。 【0016】 なお、キースイッチ4の選択位置がオフの場合は、エンジン3を停止する停止指令をコントローラ5がエンジン3に出力するとともに、ショベル60内の電源をオフとする。また、キースイッチ4の選択位置がオンの場合は、スタートを経由している場合は、エンジン3の駆動が継続され、オフを経由している場合は、エンジン3は停止したままショベル60内の電源はオンとされる。なお、本実施例1のキースイッチ4は一例であり、上述した三つの選択位置の他に選択位置(例えば、エンジン3のグロープラグ予熱位置やアクセサリ電源位置等)を備えるものであってもよい。 【0017】 本実施例1のショベルの始動許可装置1においては、上述したキースイッチ4の選択位置がスタートとされ、かつ、以下に述べる実施例1の許可条件が成立した場合に、始動手段5bがエンジン3に対して始動指令を出力する。エンジン3はこの始動指令に基づいて始動されて、エンジン3の駆動軸に連結された図示しない油圧ポンプが駆動される。 【0018】 この図示しない油圧ポンプは、ショベル60が含む周知の油圧回路においてパイロット圧を生成している。キャビン64内の運転室に備えられる複数の操作レバー(操作部)がオペレーターにより操作されると、対応する複数の切削用、旋回用、前後進用の油圧アクチュエータのそれぞれにパイロット圧が送り込まれて動作される。つまり、ショベル60における掘削、旋回、前後進の動作が適宜、オペレーターにより選択される。 【0019】 カメラ2は、図1に示したように、ショベル60の周囲を映し出す入力画像を取得するための装置である。ここで、カメラ2は単眼タイプであり、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を備える。実施例1におけるカメラ2は、図3に示すオペレーターの死角となりやすい所定範囲CL、CR、CBをそれぞれ撮像する。 【0020】 カメラ2Lは左側面の一点鎖線で示す扇形状の所定範囲CLを撮像し、カメラ2Rは右側面の一点鎖線で示す扇形状の所定範囲CRを撮像し、カメラ2Bは後面の一点鎖線で示す扇形状の所定範囲CBを撮像する。なお、カメラ2の設置箇所は上述した三箇所に限られるものではなく、オペレーターの死角となる範囲をカバーできるものであればよい。例えばカメラ2は、上部旋回体63の右側面及び後面のみ、又は前面と右側面、後面と左側面の全てに取り付けられていてもよい。カメラ2は、撮像により取得した入力画像をコントローラ5に対して出力する。 【0021】 コントローラ5の人検知手段5aは、三つのカメラ2からの入力画像について、周知の画像処理により例えばオプティカルフローを求めて、ショベル60周辺の所定範囲CL、CR、CB内の人を検知する。コントローラ5の始動手段5bは、キースイッチ4の選択位置がスタートであって、本実施例1の判定手段5cによる許可条件を満たす場合に、エンジン3を始動する始動信号をエンジン3に対して出力する。 【0022】 本実施例1の許可条件は以下の通りである。つまり、コントローラ5の判定手段5cは、キースイッチ4の選択位置がスタートである場合に、人検知手段5aが人を検知するか否かを判定し、この判定手段5cが否定と判定する場合にエンジン3の始動手段5bによる始動を許可する。 【0023】 以下に本実施例1のショベルの始動許可装置1の制御内容について図4に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。ステップS1に示すように、コントローラ5の判定手段5cは、キースイッチ4の選択位置がスタートであるか否かを判定し、肯定であればステップS2にすすみ、否定であればENDにすすむ。 【0024】 ステップS2において、コントローラ5の人検知手段5aは、三つのカメラ2からの入力画像を上述した所定の画像処理を行って、所定範囲CL、CR、CBのいずれかに位置する人を検出する。つづいて、ステップS3において、コントローラ5の判定手段5cは、人検知手段5aにより人が検出されて「人有り?」の状態であるか否かを判定する。 【0025】 ステップS3において、判定手段5cにより否定と判定される場合、つまり、所定範囲CL、CR、CBに人がいない場合には、ステップS4にすすむ。ステップS4において、コントローラ5の許可手段5dはエンジン3の始動を許可する。この許可に基づいて、コントローラ5の始動手段5bは、エンジン3に対して始動信号を出力し、エンジン3が始動される。 【0026】 ステップS3において、判定手段5cにより肯定と判定される場合、すなわち、所定範囲CL、CR、CBに人がいる場合には、ステップS5にすすんで、コントローラ5の許可手段5dは、エンジン3の始動を不許可とする。この不許可に基づいて、コントローラ5の始動手段5bは、ステップS1において、キースイッチ4の選択位置がオペレーターによりスタートとされた条件でも、始動信号をエンジン3に対して出力しない。図4に示したフローチャートはコントローラ5の制御周期毎に繰り返し実行されて、本発明のショベルの始動許可方法が実行される。 【0027】 上述した本実施例1に示したショベルの始動許可装置1は、ショベル60の周辺の所定範囲CL、CR、CBにおいて人が存在する場合には、キースイッチ4の選択位置がオペレーターによりスタートとされた条件でも、エンジン3の始動を不許可とすることができる。 【0028】 つまり本実施例1は、キースイッチ4の選択位置がスタートであって人がショベル60の周辺に存在する条件を、エンジン3の始動の不許可条件とすることができる。これとともに本実施例1は、キースイッチ4の選択位置がスタートであって人がショベル60の周辺に存在しない条件を、エンジン3の始動の許可条件とすることができる。 【0029】 本実施例1は、この不許可条件と許可条件の切り分けにより、ショベル60に人が存在する場合にはエンジン3の始動を禁止して、人特に作業者の安全を確保することができる。特にオペレーターがキャビン64に乗り込む前の周囲の目視確認と乗り込んだ後の警笛による警報を失念した場合でも、本実施例1によれば安全を確保できる。これとともに、本実施例1は、ショベル60の周辺に人が存在しない場合には、キースイッチ4の選択位置がスタートであることに基づいて速やかにエンジン3の始動を行うことができる。 【実施例2】 【0030】 上述した実施例1の許可条件については、オペレーターの実際の操作手順に併せて適宜変更することが可能である。以下それについての本実施例2のショベルの始動許可装置11について述べる。既述した実施例1で示したショベルの始動許可装置1と共通する構成については同一の符号を付し、以下、相違点を主に説明する。 【0031】 通常、ショベル60等の建設機械のエンジン3の始動の前には、オペレーターはキャビン64に乗り込む前に周囲を目視確認し、キャビン64に乗り込んだ後、警笛を鳴らして周囲に人がいる場合には退避を促してからエンジン3を始動させる。 【0032】 ここで図5に示すように、キャビン64内の座席Sの左方には通常、油圧ロックレバー6が設置されている。この油圧ロックレバー6を手前側に引き図5中「L」で示す位置まで移動させると「油圧ロック状態」が選択される。「油圧ロック状態」においては、ショベル60内の油圧回路内に設けられたシャット弁が、キャビン64内の操作レバーと油圧アクチュエータとの間の油圧回路を遮断する。つまり、操作レバーをオペレーターが操作しても対応する油圧アクチュエータが動作しない。 【0033】 油圧ロックレバー6を前方側に倒して図5中「U」で示す位置まで移動させると「油圧ロック解除状態」が選択される。「油圧ロック解除状態」においては、シャット弁はキャビン64内の操作レバーと油圧アクチュエータとの間の油圧回路を連通させる。つまり、操作レバーをオペレーターが操作した場合に対応する油圧アクチュエータは動作される。 【0034】 ここでオペレーターがキャビン64に乗り込むときには、図5に示す油圧ロックレバー6は位置「L」に位置している。オペレーター自身がキャビン64に乗り込み、座席Sに座ったときに、油圧ロックレバー6を位置「L」そのままとして「油圧ロック状態」を保持した後、キースイッチ4の選択位置を操作して、適宜エンジン3の始動を行う。始動を行った後は、油圧ロックレバー6を位置「U」とし「油圧ロック解除状態」として、操作レバーによる油圧アクチュエータの動作を可能とする。 【0035】 そこで本実施例2のショベルの始動許可装置11では、図5に示すように、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」か「油圧ロック解除状態」のいずれであるかを、例えばポテンショメータなどの位置検出スイッチを用いてコントローラ5に入力する構成とする。 【0036】 コントローラ5の許可手段5dは、実施例1で述べたものと同様の所定範囲CL、CR、CBに人がおらず、キースイッチ4の選択位置がスタートとされ、かつ、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」である許可条件にて、エンジン3の始動を許可する。 【0037】 つまり本実施例2のショベルの始動許可装置11が含むコントローラ5の制御内容は、図7に示すように、図4に示したフローチャートに比べて、ステップS6が追加される。ステップS3にて、判定手段5cにより所定範囲CL、CR、CBに人がいないと判定され、かつ、ステップS6において、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」である場合に、ステップS4にすすんで、許可手段5dにより、エンジン3の始動が許可される。 【0038】 ステップS3において、判定手段5cにより、所定範囲CL、CR、CBに人がいないと判定され、ステップS6にて、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」でないと判定される場合には、ステップS5にすすむ。ステップS5において、許可手段5dが、エンジン3の始動を不許可とする。 【0039】 なお、本実施例2においても、ステップS3において、所定範囲CL、CR、CBに人がいると判定手段5cにより判定される場合には、ステップS5にすすんで、許可手段5dにより、エンジン3の始動は不許可とされる。図7に示したフローチャートもコントローラ5の制御周期毎に繰り返し実行され、本発明のショベルの始動許可方法が実行される。 【0040】 上述した本実施例2に示したショベルの始動許可装置11においても、建設機械であるショベル60の周辺の所定範囲CL、CR、CBにおいて、人が存在する場合には、キースイッチ4の選択位置がオペレーターによりスタートとされた条件でも、エンジン3の始動を不許可とすることができる。 【0041】 さらに本実施例2は、キースイッチ4の選択位置がスタートであって人がショベル60の周辺に存在する場合、又は、人がショベル60に存在せずかつ油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」でない場合の双方を、エンジン3の始動の不許可条件とする。また、本実施例2は、キースイッチ4の選択位置がスタートであって人がショベル60の周辺に存在せず、かつ、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」である場合を、エンジン3の始動の許可条件とする。 【0042】 本実施例2は、この不許可条件と許可条件の切り分けにより、ショベル60の周辺に人が存在する場合にはエンジン3の始動を禁止して、人特に作業者の安全を確保することができる。 これとともに、本実施例2は、ショベル60の周辺に人が存在しない場合には、油圧ロックレバー6が「油圧ロック状態」であることを追加条件として、キースイッチ4の選択位置がスタートであることに基づいて速やかにエンジン3の始動を行うことができる。 【0043】 本実施例2では特に、万一オペレーターが操作レバーに触れた状態で、キースイッチ4の選択位置をスタートとした場合でも、意図しないショベル60の掘削、旋回、前後進の動作を禁止できる。加えて、本実施例2ではエンジン3の始動直後の、ショベル60の掘削、旋回、前後進の急激な動作を禁止できる。これにより本実施例2では、周囲の人の安全を確保できる。 【0044】 以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。 【0045】 例えば上述した実施例では、所定範囲の入力画像から人検知手段5aが人を検知するにあたり画像処理を用いることを例示したが人を検知する手法はこれに限られない。つまり、パターンマッチングによる手法や、ステレオカメラを用いた立体物検出の手法を用いることも可能である。また、アクティブ型の赤外線センサやパッシブ型の赤外線センサ(例えば焦電型赤外線センサ)を用いてもよく、レーザレーダや超音波センサを用いてもよい。 【産業上の利用可能性】 【0046】 本発明のショベルの始動許可装置、ショベルの始動許可方法は、ショベルの周辺の所定範囲に人が検知される場合には、エンジンの始動を不許可とすることで、特に作業員の安全を確実に確保することができる。このため、種々の建設機械に適用して好適なものである。 【符号の説明】 【0047】 1 ショベルの始動許可装置 2L カメラ(左) 2R カメラ(右) 2B カメラ(後) 3 エンジン 4 キースイッチ 5 コントローラ 5a 人検知手段 5b 始動手段 5c 判定手段 5d 許可手段 11 ショベルの始動許可装置 6 油圧ロックレバー 60 ショベル(建設機械) (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、該上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、それぞれが油圧ポンプからのパイロット圧を油圧回路が送り込むことで動作する切削用、旋回用、及び前後進用の油圧アクチュエータと、を含み、 前記上部旋回体に備えられるエンジン、前記上部旋回体に備えられるキャブ、前記キャブ内に設けられる前記エンジンのキースイッチ、前記上部旋回体に備えられるカメラ、及び、前記エンジンを前記キースイッチの選択位置に基づいて制御するコントローラを有する、ショベルであって、 前記アクチュエータを操作する操作レバーをオペレーターが操作しても対応する前記油圧アクチュエータが動作しない油圧ロック状態を選択可能な油圧ロックレバーを有し、 前記油圧ロック状態とは、前記操作レバーの操作に伴い前記油圧アクチュエータを動作させるためのパイロット圧を生成する油圧回路が遮断された状態であり、 前記コントローラは、前記カメラからの入力画像に画像処理を行い前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知する人検知手段と、前記人検知手段が人を検知するか否かを判定する判定手段と、を有するとともに、 前記コントローラは、前記人検知手段より前記カメラからの入力画像に画像処理を行い、前記ショベルの周辺の所定範囲内の人を検知し、前記エンジンの始動許可判定時に、前記判定手段より前記人検知手段が人を検知するか否かを所定の制御周期毎に判定し、 前記エンジンの始動許可判定時には前記油圧ロック状態で前記判定手段が人を検知する場合がある、 ショベル。 【請求項2】 前記動作しない油圧アクチュエータは、旋回モータである、 請求項1記載のショベル。 【請求項3】 前記動作しない油圧アクチュエータは、走行モータである、 請求項1又は2に記載のショベル。 【請求項4】 前記人検知手段は、前記上部旋回体に設けられるステレオカメラに基づいて人を検知する、 請求項1乃至3の何れかに記載のショベル。 【請求項5】 前記ステレオカメラは、前記上部旋回体に2つ以上設けられる、 請求項4記載のショベル。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-06-22 |
出願番号 | 特願2017-150739(P2017-150739) |
審決分類 |
P
1
651・
851-
YAA
(E02F)
P 1 651・ 536- YAA (E02F) P 1 651・ 113- YAA (E02F) P 1 651・ 537- YAA (E02F) P 1 651・ 121- YAA (E02F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 苗村 康造 |
特許庁審判長 |
秋田 将行 |
特許庁審判官 |
有家 秀郎 西田 秀彦 |
登録日 | 2019-01-11 |
登録番号 | 特許第6462794号(P6462794) |
権利者 | 住友建機株式会社 |
発明の名称 | ショベル |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠彦 |