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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
管理番号 1364925
異議申立番号 異議2019-700565  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-22 
確定日 2020-07-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6455614号発明「エクステリア用化粧部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6455614号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。 特許第6455614号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6455614号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成24年3月23日に出願した特願2012-68166号の一部を、平成28年1月14日に新たな特許出願とした特願2016-5082号の一部を、平成29年5月8日に新たな特許出願とした特願2017-92293号の一部を、平成30年2月21日に新たな特許出願(特願2018-28859号)としたものであって、平成30年12月28日に特許権の設定登録がされ、平成31年1月23日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和元年7月22日:特許異議申立人古郡裕介(以下「申立人」という。)よる特許異議の申立て
令和元年9月27日付け:取消理由通知書
令和元年11月28日:特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
令和元年12月17日:申立人による意見書の提出
令和2年1月20日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和2年3月19日:特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
令和2年4月28日:申立人による意見書の提出

第2 訂正の請求についての判断
1 訂正の内容
令和2年3月19日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6455614号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?2について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。

(訂正事項)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「筒状の金属基材の外周に、接着剤層を介して化粧シートを有するエクステリア用化粧部材であって、
(1)前記金属基材の厚みが50mm以下であり、
(2)前記接着剤層の厚みが80μm以下であり、
(3)前記化粧シートの厚みが40?150μmであり、
(4)前記化粧シートが重ね押さえ部分を備えており、前記重ね押さえ部分の幅が12mm以下であり、
(5)ISO5660-1に準拠する発熱性試験にて不燃認定取得可能要件を満たし、
(6)JIS Z0237の試験方法に従って測定した接着強度が20N/inch以上である、
ことを特徴とする、筒状のエクステリア用化粧部材。」とあるのを、
「筒状の金属基材の外周に、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤及びウレタン系接着剤の1種又は2種以上からなる接着剤層のみを介して化粧シートを有するエクステリア用化粧部材であって、
(1)前記金属基材はアルミニウムを含み、その厚みが50mm以下であり、
(2)前記接着剤層の厚みが80μm以下であり、
(3)前記化粧シートの厚みが40?150μmであり、
(4)前記化粧シートが重ね押さえ部分を備えており、前記重ね押さえ部分の幅が5?12mm以下であり、
(5)ISO5660-1に準拠する発熱性試験にて不燃認定取得可能要件を満たし、
(6)JIS Z0237の試験方法に従って測定した接着強度が20N/inch以上であり、
(7)前記化粧シートは、基材シート上に絵柄模様層、透明性樹脂層及びアクリレート樹脂を含む表面保護層を順に有し、前記基材シート及び前記透明性樹脂層がポリオレフィンを含有し、
(8)前記接着剤層及び前記化粧シートは、難燃剤を含有しない、
ことを特徴とする、筒状のエクステリア用化粧部材。 」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2についても同様に訂正する。)

ここで、訂正前の請求項1及び2は、請求項2が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1、2〕について請求されている。

なお、令和元年11月28日の訂正請求書による訂正の請求は、令和2年3月19日に新たな訂正の請求がされたことにより、特許法第120条の5第7項の規定によって、取り下げられたものとみなす。

2 訂正の適否
(1)訂正の目的
上記訂正事項は、「接着剤層」について「ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤及びウレタン系接着剤の1種又は2種以上からなる」もの、「金属基材」について「アルミニウムを含」むものに限定し、「金属基材」と「化粧シート」との間が「接着剤層」のみであること、「化粧シート」について「基材シート上に絵柄模様層、透明性樹脂層及びアクリレート樹脂を含む表面保護層を順に有し、前記基材シート及び前記透明性樹脂層がポリオレフィンを含有し、(8)前記接着剤層及び前記化粧シートは、難燃剤を含有しない」ことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項は、上記(1)のとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項は、本件特許明細書の【0015】、【0019】、【0025】、【0026】、【0034】、【0044】、【0059】、【0060】、【0066】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。


第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1及び2」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
筒状の金属基材の外周に、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤及びウレタン系接着剤の1種又は2種以上からなる接着剤層のみを介して化粧シートを有するエクステリア用化粧部材であって、
(1)前記金属基材はアルミニウムを含み、その厚みが50mm以下であり、
(2)前記接着剤層の厚みが80μm以下であり、
(3)前記化粧シートの厚みが40?150μmであり、
(4)前記化粧シートが重ね押さえ部分を備えており、前記重ね押さえ部分の幅が5?12mm以下であり、
(5)ISO5660-1に準拠する発熱性試験にて不燃認定取得可能要件を満たし、
(6)JIS Z0237の試験方法に従って測定した接着強度が20N/inch以上であり、
(7)前記化粧シートは、基材シート上に絵柄模様層、透明性樹脂層及びアクリレート樹脂を含む表面保護層を順に有し、前記基材シート及び前記透明性樹脂層がポリオレフィンを含有し、
(8)前記接着剤層及び前記化粧シートは、難燃剤を含有しない、
ことを特徴とする、筒状のエクステリア用化粧部材。
【請求項2】
前記金属基材の厚みが1.5?50mmである、請求項1に記載のエクステリア用化粧部材。」

第4 当審の判断
1 取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正前の請求項1及び2に対して通知した、令和2年1月20日付け取消理由通知(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。

(1)(進歩性)請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。


<刊行物>
甲第1号証:特開2009-83269号公報
甲第2号証:特開2012-56146号公報
甲第3号証:株式会社タカショーの「PROEX タカショープロガーデンエクステリア総合カタログ 2011?2012上期」、2011年5月1日、p.254-257、294-295
甲第4号証:特開2001-31926号公報
甲第5号証:特開平4-348939号公

(2)サポート要件について
ア 本件発明の課題は、「不燃認定取得可能要件(上記(i)?(iii)の要件)を満たす化粧板であって、且つ、接着強度及び耐候性に優れた化粧板を提供すること」(【0006】)である。
イ そして、本件特許明細書において、具体的に本件発明の課題を解決することが示されているのは、参考例1?5及び実施例6?9のみである。
また、当該参考例及び実施例は、同じ成分からなる金属基材、接着材層及び化粧シートを使用したものであり、金属基材、接着材層及び化粧シートの成分が異なると、耐候性が異なることは技術常識である。
ウ そうすると、参考例1?5及び実施例6?9と成分が異なる本件発明1のエクステリア用化粧部材の全てが、耐候性について、参考例1?5及び実施例6?9と同程度であるとはいえないから、参考例1?5及び実施例6?9と成分が異なる本件発明1のエクステリア用化粧部材の全てが、本件発明の課題を解決できるとは、理解できない。
特に、本件発明1は、比較例5を含んでいるところ、【表1】を参照すると、「耐候性」が「C」であり本件発明の課題を解決しないことは明らかである。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。
また、本件発明2も同様である。

2 当審の判断
(1)本件発明1の進歩性について
ア 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、以下の記載がある。(「・・・」は省略を意味する。下線は当審で付した。)
(ア)「【請求項1】
基材上に接着層、アクリル樹脂層、及びフッ素樹脂層をこの順に有し、該アクリル樹脂層がアクリルゴム及びアクリル樹脂を含み、該アクリルゴムと該アクリル樹脂との質量比が20:80?85:15であり、総厚が200μm以下である不燃性化粧シート。
・・・
【請求項6】
請求項1?5のいずれかに記載の不燃性化粧シートと鋼板とを貼着してなる不燃性化粧鋼板。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性化粧シート及びこれを用いた不燃性化粧鋼板に関する。」
(ウ)「【0011】
[不燃性化粧シート]
本発明の不燃性化粧シートは、基材上に接着層、アクリル樹脂層、及びフッ素樹脂層をこの順に有し、該アクリル樹脂層がアクリルゴム及びアクリル樹脂を含み、該アクリルゴムと該アクリル樹脂との質量比が20:80?85:15であり、総厚が200μm以下であるという構成を有する化粧シートである。
以下、図1を参照しつつ、本発明の不燃性化粧シートの構成について詳細に説明する。図1に示される本発明の不燃性化粧シート10は、基材11上に接着層12、アクリル樹脂層13、及びフッ素樹脂層14をこの順に有している。
【0012】
《不燃性》
本発明の不燃性化粧シート及び不燃性化粧鋼板が有する不燃性は、人的災害などの発生を抑制する見地から望まれるものである。ここで、「不燃性」とは、ISO5660-1の規定に基づき、不燃材料の規定に適合するものであり、具体的には、本発明の不燃性化粧板1に対して、ISO5660-1に準拠したコーンカロリ燃焼試験により、前記不燃性化粧板1の時間に対する総発熱量及び時間に対する発熱速度を求めた際に、(i)加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m^(2)以下であり、(ii)加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m^(2)を超えず、かつ(iii)加熱開始後20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないこと、である。」
(エ)「【0031】
《表面保護層》
本発明の不燃性化粧シートにおいては、所望により、フッ素樹脂層14の上に表面保護層を設けることができる(図示せず)。表面保護層を設けることで、本発明の不燃性化粧シートに耐擦傷性などを付与することができる。該表面保護層は、フッ素樹脂層14の上に直接又は他の層を介して、硬化性樹脂を含有する樹脂組成物、好ましくは、さらにフッ素樹脂を含有する樹脂組成物を塗工し、これを架橋硬化したもので構成されることが好ましい。架橋硬化された硬化性樹脂を含有することで、化粧シートの表面特性を向上させることができ、かつフッ素樹脂を含有することで、フッ素樹脂層との高い層間密着性が得られる。
【0032】
表面保護層で用いられるフッ素樹脂としては、上述したフッ素樹脂層で用いられるものと同様のものを用いることができる。また、硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂や2液硬化性樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられ、これらを複数用いる、例えば、電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を併用する、いわゆるハイブリッドタイプであってもよい。
これらのうち、表面保護層を形成する樹脂の架橋密度を高め、表面の耐摩耗性や耐擦傷性を向上させ得るとの観点から、電離放射線硬化性樹脂が好ましく、また、無溶媒で塗工することができ、取り扱いが容易との観点から、電子線硬化性樹脂がさらに好ましい。
また、硬化性樹脂の数平均分子量(GPC法で測定したポリスチレン換算の数平均分子量)が、1000?10000であることが好ましく、2000?10000がより好ましい。数平均分子量が上記範囲内であれば、加工性に優れ、コーティング剤組成物が適度なチクソ性が得られるので、表面保護層の形成が容易となる。」
(オ)「【0049】
《絵柄層》
本発明の不燃性化粧シートには、装飾性を付与する目的で、所望により、基材11と接着層12の間に絵柄層を設けてもよい(図示せず)。該絵柄層は、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)などの岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様などがあり、これらを複合した寄木、パッチワークなどの模様もある。」
(カ)「【0051】
《化粧シートの厚さ》
上記した構成を有する本発明の不燃性化粧シートの厚さは、200μm以下であることを要する。不燃性化粧シートの厚さは、好ましくは140?200μmであり、より好ましくは150?200μmである。不燃性化粧シートの厚さが上記範囲内であると、優れた耐候性と折り曲げ加工性だけでなく、不燃性をも得られる。
【0052】
[不燃性化粧板]
本発明の不燃性化粧シートは、各種基板に必要に応じて接着剤を介して貼着して不燃性化粧板として使用することができる。被着体となる基板は、特に限定されず、鋼板、木材などの木質系の板、窯業系素材などを用途に応じて適宜選択することができる。本発明の不燃性化粧シートは、白化の原因となる微細なクラックが入りにくく、折り曲げ加工に適しているため、特に鋼板を基材として不燃性化粧板とすることが好ましい。
鋼板としては、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス鋼、又は銅などからなるものを用いることができ、またこれらの金属をめっきなどによって施したものを使用することもできる。
【0053】
接着剤はスプレー、スプレッダー、バーコーターなどの塗布装置を用いて塗布する。この接着剤には、酢酸ビニル樹脂系、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、イソシアネート系などの接着剤を、単独であるいは任意混合した混合型接着剤として用いられる。接着剤には、必要に応じてタルク、炭酸カルシウム、クレー、チタン白などの無機質粉末、小麦粉、木粉、プラスチック粉、着色剤、防虫剤、防カビ剤などを添加混合して用いることができる。一般に、接着剤は固形分を35?80質量%とし、塗布量30?300g/m^(2)の範囲で基板表面に塗布される。」
(キ)「【0055】
実施例1
基材11として、着色ポリプロピレン樹脂(厚さ:80μm)からなる樹脂シートを準備した。この表面及び裏面にコロナ放電処理を施した後、表面にウレタン系印刷インキを用いて、グラビア印刷により木目柄を形成し、絵柄層(厚さ:2μm)を得た。一方、裏面には、下記組成の裏面プライマー層用塗工液を用いて、裏面プライマー層(厚さ:2μm)をグラビア印刷により形成した。
次いで、ポリフッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂層形成用混合物をTダイで溶融して、押し出し、フッ素樹脂層14とアクリル樹脂層13からなる積層体(フッ素樹脂層厚さ:5μm,アクリル樹脂層厚さ:45μm,以下「積層体A」と称する。)を形成した。上記絵柄層の上に2液硬化性ウレタン樹脂からなる塗液を塗工して接着層12(乾燥状態での厚さ:10μm)を形成した上に、該積層体Aをドライラミネート法により積層させて、総厚:144μmの化粧シートを得た。得られた化粧シートについて、上記評価方法にて評価した結果を第1表に示す。
【0056】
(裏面プライマー層用塗工液)
二液硬化型ポリエステルウレタン(ポリエステルポリオールとポリイソシアネートを100:5(質量比)の割合で混合):100質量部
希釈溶剤(酢酸エチルとメチルイソブチルケトンの1:1(質量比)の割合で混合した混合溶剤):20質量部
(アクリル樹脂層形成用混合物)
アクリル樹脂(構成単位:メタクリル酸メチル):20質量部
アクリルゴム(「SA-FW001(商品名)」,株式会社クラレ製,メタクリル樹脂,構成単位:メタクリル酸メチル,粒子状,平均粒子径:100nm):80質量部
【0057】
比較例1
実施例1において、フッ素樹脂層を設けず、アクリル樹脂層厚さを50μmとした以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0058】
比較例2
実施例1において、フッ素樹脂層の厚さを5μmとし、アクリル樹脂層厚さを120μmとし(積層体Aの厚さ:125μm)、総厚:219μmとした以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0059】
比較例3
実施例1において、アクリル樹脂層形成用混合物においてアクリルゴムを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0060】
比較例4
実施例1において、アクリル樹脂層形成用混合物におけるアクリル樹脂を10質量部、アクリルゴムを90質量部とした以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0061】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、優れた耐候性と折り曲げ加工性を有し、かつ不燃性を有する不燃性化粧シートを提供することができる。該不燃性化粧シートは、折り曲げ加工しても白化の原因となる微細なクラックが入りにくいという、優れた折り曲げ加工性を有するため、折り曲げ加工を行って用いることが多い、化粧鋼板用の化粧シートとしての使用が好適である。本発明の不燃性化粧シートを用いた不燃性化粧鋼板は、優れた耐候性と折り曲げ加工性を有し、かつ不燃性を有するものであり、住宅などの外装材である窓枠、玄関などの部材に好ましく用いられる。」

甲第2号証の上記記載を総合すると、甲第2号証には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。

「鋼板に、不燃性化粧シートを接着剤を介して貼着した不燃性化粧板であって、
接着剤は固形分を35?80質量%とし、塗布量30?300g/m^(2)の範囲で基板表面に塗布され、
不燃性化粧シートの厚さは、200μm以下であり、
不燃性化粧シートは、基材上に絵柄層、接着層、アクリル樹脂層、及びフッ素樹脂層をこの順に有し、フッ素樹脂層の上に表面保護層を設け、前記表面保護層は、電離放射線硬化性樹脂や2液硬化性樹脂などの熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物が用いられる、
外装材に用いる不燃性化粧板。」

イ 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「鋼板」は、本件発明1の「金属基材」に相当する。
(イ)甲2発明の「接着剤」は、本件発明1の「接着剤層」に相当する。
(ウ)甲2発明の「不燃性化粧シート」は、本件発明1の「化粧シート」に相当する。
(エ)甲2発明の「外装材に用いる不燃性化粧板」は、本件発明1の「エクステリア用化粧部材」に相当する。
(オ)甲2発明の「鋼板に、不燃性化粧シートを接着剤を介して貼着した不燃性化粧板」と、本件発明1の「筒状の金属基材の外周に、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤及びウレタン系接着剤の1種又は2種以上からなる接着剤層のみを介して化粧シートを有するエクステリア用化粧部材」とは、「金属基材の外周に、接着剤層のみを介して化粧シートを有するエクステリア用化粧部材」の限りで一致する。
(カ)甲2発明の「不燃性化粧板」は、甲第2号証の【0012】を参酌すると、ISO5660-1に準拠する発熱性試験にて不燃認定取得可能要件を満たしているといえるから、本件発明1の「ISO5660-1に準拠する発熱性試験にて不燃認定取得可能要件を満た」している「エクステリア用化粧部材」に相当する。
(キ)甲2発明の「基材」は、その作用及び構造から、本件発明1の「基材シート」に相当し、同様に、「絵柄層」は「絵柄模様層」に、「表面保護層」は「表面保護層」に相当する。
また、甲2発明の「絵柄層」を有する「化粧シート」において、絵柄層より外側の層である「アクリル樹脂層、及びフッ素樹脂層」が、透明性を有することは明らかであるから、甲2発明の「アクリル樹脂層、及びフッ素樹脂層」は、本件発明1の「透明性樹脂層」に相当する。
そして、甲2発明の「不燃性化粧シートは、基材上に絵柄層、接着層、アクリル樹脂層、及びフッ素樹脂層をこの順に有し」たことと本件発明1の「前記化粧シートは、基材シート上に絵柄模様層、透明性樹脂層及びアクリレート樹脂を含む表面保護層を順に有し」たこととは、前記化粧シートは、基材シート上に絵柄模様層、透明性樹脂層及び表面保護層を順に有した限りで一致する。

そうすると、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「金属基材の外周に、接着剤層のみを介して化粧シートを有するエクステリア用化粧部材であって、
ISO5660-1に準拠する発熱性試験にて不燃認定取得可能要件を満たし、
前記化粧シートは、基材シート上に絵柄模様層、透明性樹脂層及び表面保護層を順に有した、
ことを特徴とする、エクステリア用化粧部材。」

<相違点1>
金属基材について、本件発明1は、「筒状」であって、化粧シートを「外周」に接着し、「前記化粧シートが重ね押さえ部分を備えており、前記重ね押さえ部分の幅が12mm以下」であるのに対して、甲2発明は、鋼板に不燃性化粧シートを貼着したものである点。
<相違点2>
接着剤層について、本願発明1は、「ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤及びウレタン系接着剤の1種又は2種以上からなる」のに対して、甲2発明は、接着剤について具体的に特定されていない点。
<相違点3>
本件発明1は、「前記金属基材はアルミニウムを含み、その厚みが50mm以下であ」るのに対して、甲2発明は、鋼板であって、その厚さが不明である点。
<相違点4>
接着材層の厚みについて、本件発明1は、「80μm以下」であるのに対して、甲2発明は、固形分を35?80質量%の接着剤を、塗布量30?300g/m^(2)の範囲で塗布したものであるが、その厚みが不明である点。
<相違点5>
本件発明1は、「前記化粧シートの厚みが40?150μmであ」るのに対して、甲2発明は、200μm以下である点。
<相違点6>
本件発明1は、「JIS Z0237の試験方法に従って測定した接着強度が20N/inch以上である」のに対して、甲2発明は、密着性が2.8?3.5kg/25mm幅である点。
<相違点7>
本件発明1は、表面保護層が「アクリレート樹脂を含」み、「前記基材シート及び前記透明性樹脂層がポリオレフィンを含有」するのに対して、甲2発明は、基材及び表面保護層の材質が具体的に特定されておらず、透明樹脂層に相当するアクリル樹脂層及びフッ素樹脂層を有するものの、ポリオレフィン樹脂を含有しているか不明であるである点。
<相違点8>
本件発明1は、「前記接着剤層及び前記化粧シートは、難燃剤を含有しない」のに対して、甲2発明は、そのように特定されていない点。

ウ 検討
まず、相違点7について検討する。
<相違点7について>
相違点7は、本件発明1が、「絵柄層」と「表面保護層」との間にポリオレフィンを含有する透明性樹脂層を有しているのに対して、甲2発明が、「絵柄層」と「表面保護層」との間に「アクリル樹脂層、及びフッ素樹脂層」を有しているものの、ポリオレフィンを含有する層を有するとは特定されていない点を含んでいる。
当該相違点について検討する。
甲2発明の「アクリル樹脂層、及びフッ素樹脂層」が、ポリオレフィンを含有しているとの技術常識はない。また、「アクリル樹脂層、及びフッ素樹脂層」に、ポリオレフィンを含有させる動機付けは、甲第1号証?甲第5号証を参照しても存在しない。
申立人は、ポリオレフィンを含有する透明樹脂層は、周知(例えば、特開2008-62452号公報の【0019】、【0022】、【0026】、特開2004-291588号公報の【0059】、図1、特開2001ー219501号公報の【0015】、【0042】、図1?図3)であるから、甲2発明において、周知であるポリオレフィンを含有する透明樹脂層を追加することは当業者が容易に想到し得たことである旨主張する。
しかし、ポリオレフィンを含有する透明樹脂層自体は周知であったとしても、甲2発明において、そのような透明樹脂層を、絵柄層と表面保護層との間に追加する動機付けはないから、申立人の主張には理由がない。
なお、令和2年4月28日の申立人の意見書における「第2の甲2発明」及び「第3の甲2発明」と対比しても同様である。

エ 小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲第1号証?甲第5号証記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明2の進歩性について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付加した発明であるから、上記(1)で検討したのと同じ理由で、本件発明2は、甲2発明及び甲第1号証?甲第5号証記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)サポート要件について
本件発明1は、本件補正により、「表面保護層」が「アクリレート樹脂を含」み、「前記基材シート及び前記透明性樹脂層がポリオレフィンを含有し、」「前記接着剤層及び前記化粧シートは、難燃剤を含有しない」ことが特定されたことにより、サポート要件に関する取消理由は解消した。
また、本件発明2も同様である。

令和2年4月28日の意見書において、申立人は、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤及びウレタン系接着剤は、それぞれ異なる物質であるから、耐候性が異なることが技術常識である旨主張する。
しかし、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤及びウレタン系接着剤は、それぞれ通常用いられている接着剤でしかなく、耐候性が悪いとの証拠はないのであるから、いずれの接着剤を用いても、耐候性について問題のない結果が期待できると理解される。
そうすると、実施例で確認したウレタン系接着剤に換えて、ポリエステル系接着剤又はアクリル系接着剤を用いても、同様に本件発明の課題を解決すると理解されるから、申立人の当該主張は採用できない。

3 取消理由(決定の予告)に採用されなかった取消理由について
(1)甲第1号証を主引用発明とした進歩性について
甲第1号証記載の発明(以下「甲1発明」という。)と本件発明1とを対比すると、少なくとも以下の点で、相違する。
<相違点9>
本件発明1は、「(7)前記化粧シートは、基材シート上に絵柄模様層、透明性樹脂層及びアクリレート樹脂を含む表面保護層を順に有し、前記基材シート及び前記透明性樹脂層がポリオレフィンを含有し」ているのに対して、甲1発明は、「ポリプロピレン樹脂フィルム(厚さ120μm)の化粧シート5」である点。

上記相違点9について検討するに、甲1発明の化粧シート5に代えて、甲2号証に記載された不燃性化粧シートを適用したとしても、上記2(1)ウで検討したのと同じ理由で、本件発明1は、甲1発明及び甲第1号証?甲第5号証記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
本件発明2も同様である。

(2)実施可能要件について
申立人は、本件特許発明に含まれる比較例1は、不燃認定取得可能要件を満たしておらず、また比較例5は、耐候性に劣るから、本件特許発明を実施できない。また、樹脂により発熱量が異なり、金属基材の表面状態により接着強度が異なり、接着剤層の厚みにより接着強度が異なるから、本件発明の課題を解決する本件発明を実施するには、過度の試行錯誤を要する旨主張する。
しかし、本件特許明細書には、実施例6?8として、本件発明の課題を解決できる化粧部材が記載されており、当該実施例は、樹脂の種類、金属基材及び接着剤の厚さが記載されており、当業者が実施できる程度に記載されている。

(3)明確性要件について
申立人は、接着層の厚みが薄くなれば接着強度が弱くなることは明らかであるから、接着剤層の厚みの下限が規定されていないこと、並びに「ISO5660-1に準拠する発熱性試験にて不燃認定取得可能要件を満た」す、及び「JIS Z0237の試験方法に従って測定した接着強度が20N/inch以上であ」るの記載が複雑な特性パラメータによる規定であることは、本件発明を不明確としている旨主張する。
しかし、本件発明は、「JIS Z0237の試験方法に従って測定した接着強度が20N/inch以上であ」ると接着強度の下限を明確に規定しているから、接着剤層の厚みの下限を特定していなくとも、明確である。
また、「ISO5660-1に準拠する発熱性試験にて不燃認定取得可能要件を満た」すとは、ISO5660-1に準拠する発熱性試験にて不燃認定取得可能要件が明確であって、本件発明の発明特定事項との関係で、エクステリア用化粧部材としての構造も明確でないとまではいえないから、申立人の当該主張は採用できない。
さらに、「JIS Z0237の試験方法に従って測定した接着強度が20N/inch以上であ」るとは、その接着強度の検出方法は明確であり、接着強度に関係する事項も技術常識であるから、当該事項は明確である。


第5 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人の主張する特許異議申立理由によっては、本件発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。



 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の金属基材の外周に、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤及びウレタン系接着剤の1種又は2種以上からなる接着剤層のみを介して化粧シートを有するエクステリア用化粧部材であって、
(1)前記金属基材はアルミニウムを含み、その厚みが50mm以下であり、
(2)前記接着剤層の厚みが80μm以下であり、
(3)前記化粧シートの厚みが40?150μmであり、
(4)前記化粧シートが重ね押さえ部分を備えており、前記重ね押さえ部分の幅が5?12mmであり、
(5)ISO5660-1に準拠する発熱性試験にて不燃認定取得可能要件を満たし、
(6)JIS Z0237の試験方法に従って測定した接着強度が20N/inch以上であり、
(7)前記化粧シートは、基材シート上に絵柄模様層、透明性樹脂層及びアクリレート樹脂を含む表面保護層を順に有し、前記基材シート及び前記透明性樹脂層がポリオレフィンを含有し、
(8)前記接着剤層及び前記化粧シートは、難燃剤を含有しない、
ことを特徴とする、筒状のエクステリア用化粧部材。
【請求項2】
前記金属基材の厚みが1.5?50mmである、請求項1に記載のエクステリア用化粧部材。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-06-23 
出願番号 特願2018-28859(P2018-28859)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (B32B)
P 1 651・ 537- YAA (B32B)
P 1 651・ 121- YAA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松岡 美和  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 佐々木 正章
高山 芳之
登録日 2018-12-28 
登録番号 特許第6455614号(P6455614)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 エクステリア用化粧部材  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
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