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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61J
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61J
管理番号 1364946
異議申立番号 異議2020-700304  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-04-28 
確定日 2020-08-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6601686号発明「薬剤払出し装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6601686号の請求項に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6601686号(以下「本件特許」という。)の請求項1?7に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)3月17日(優先権主張 平成26年3月18日 日本国)を国際出願日とする出願であって、令和1年10月18日にその特許権の設定登録がされ(特許掲載公報の発行日:令和1年11月6日)、その後、その特許に対し、令和2年4月28日に特許異議申立人松本征二(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。


第2 本件発明
本件特許の請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ請求項に対応して「本件発明1」などという。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、請求項1に関し、便宜上、申立人の分説に倣って符号A?Eを付した(以下、各符号に対応して「構成A」のようにいう。)。
「【請求項1】
A それぞれ別体の本体装置と、薬剤秤量装置と、薬剤容器とを備えた薬剤払出し装置であって、
B 前記薬剤秤量装置は、薬剤の重量を検知する重量検知手段と、調剤に関連する情報を読み込む調剤情報読み込み手段と、情報書き込み手段及び/又は秤量装置側情報読み取り手段を有し、
C 前記本体装置は、前記薬剤容器を載置して振動させる容器振動台と、散薬を所定量に区分して複数に分割する薬剤分配装置と、本体側情報読み取り手段を有し、
D 薬剤容器は、薬剤排出部と、情報記録部材及び/又は容器識別部材とを有し、調剤に関連する情報が、薬剤容器に関連付けて本体装置に送られ、
E 前記薬剤容器は、薬剤容器に薬剤が投入され、前記重量検知手段で薬剤の秤量が行われ、薬剤が薬剤容器に入れられたままの状態で、薬剤容器が本体装置の容器振動台に載置され、容器振動台で薬剤容器が振動され、薬剤排出部から薬剤分配装置に薬剤が排出されるものであることを特徴とする薬剤払出し装置。
【請求項2】
薬剤容器は、薬剤が一時的に溜め置かれる薬剤溜め置き部を有し、
薬剤秤量装置の重量検知手段は、前記薬剤容器を載置する容器載置部を有し、重量検知手段は、薬剤投入部から薬剤容器の薬剤溜め置き部に導入された薬剤の重量を検知するものであり、薬剤容器は、前記薬剤秤量装置の容器載置部に載置された際に上方に開口する薬剤投入部を有することを特徴とする請求項1に記載の薬剤払出し装置。
【請求項3】
薬剤容器は情報記録部材を有し、当該情報記録部材は、情報の書き換えが可能であり、薬剤秤量装置は、情報書き込み手段を有し、前記情報書き込み手段によって調剤に関連する情報が前記情報記録部材に記録され、情報記録部材に記録された情報が本体側情報読み取り手段で読み取られることによって調剤に関連する情報が、薬剤容器に関連付けて本体装置に送られることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤払出し装置。
【請求項4】
本体側情報読み取り手段は信号を受信する受信手段であり、薬剤容器は容器識別部材を有し、薬剤秤量装置は、秤量装置側情報読み取り手段を有し、前記秤量装置側情報読み取り手段によって薬剤容器を特定する情報が読み取られ、調剤に関連する情報と薬剤容器を特定する情報が薬剤秤量装置から発信され、当該情報が直接的にまたは間接的に本体装置に送信され、本体側情報読み取り手段で受信されることによって調剤に関連する情報が、薬剤容器に関連付けて本体装置に送られることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤払出し装置。
【請求項5】
薬剤容器に関連付けて本体装置に送られる調剤に関連する情報には、重量検知手段で検知された薬剤の重量に関する情報が含まれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の薬剤払出し装置。
【請求項6】
本体装置は、薬剤を包装する包装装置と、印刷手段を有し、処方に関連する情報が印刷手段で印刷されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の薬剤払出し装置。
【請求項7】
本体装置は表示手段を有し、薬剤容器に関連付けて本体装置に送られた調剤に関連する情報を前記表示手段に表示することが可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の薬剤払出し装置。」


第3 申立ての理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証?甲第5号証(以下、甲各号証を付された数字に対応してそれぞれ「甲1」などという。)を提出し、本件特許を取り消すべき理由として次の理由1A?3を主張している。
(理由1A)
本件発明1?7は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明1?7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(理由1B)
本件発明1?7は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明1?7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(理由1C)
本件発明1?7は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明及び甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明1?7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(理由1D)
本件発明1?7は、甲1に記載された発明及び甲3?4に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明1?7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(理由1E)
本件発明1?7は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明及び甲3?4に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明1?7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(理由2A)
本件発明4は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明及び甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(理由2B)
本件発明4は、甲1に記載された発明、甲3に記載された発明及び甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(理由2C)
本件発明4は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明、甲3に記載された発明及び甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(理由2D)
本件発明4は、甲1に記載された発明、甲3?4に記載された周知技術及び甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(理由2E)
本件発明4は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明、甲3?4に記載された周知技術及び甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(理由3)
本件発明1?7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

[証拠方法]
甲1:国際公開第2013/154202号
甲2:特開2008-154783号公報
甲3:特開平4-286526号公報
甲4:特開平7-132135号公報
甲5:特開昭63-55001号公報


第4 当審の判断1(理由3について)
事案に鑑み、理由3をまず検討する。
1 申立人の主張
申立人は、理由3につき、次のように主張している。
(1)主張1
「構成Dは、「調剤に関連する情報が、薬剤容器に関連付けて本体装置に送られ」との発明特定事項を含むが、その動作の主体が特定されていない。また調剤に関連する情報が、どこから本体装置に送られるのか、も特定されていない。・・・すなわち、薬剤払出し装置という裝置において、構成Dで特定された「調剤に関連する情報が、薬剤容器に関連付けて本体装置に送られ」との発明特定事項によって、装置としてどのような構成が特定されているのか不明である。したがって請求項1から7の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合しない」(特許異議申立書第32?33頁「(ア)構成Dについて」欄)。
(2)主張2
「構成Eは、「薬剤が薬剤容器に入れられたままの状態で、薬剤容器が本体装置の容器振動台に載置され」との発明特定事項を含む。・・・特に図24に示された手動で薬剤容器を容器振動台に載置する場合に、上記発明特定事項によって薬剤払出し装置としてどのような構成が特定されているのか依然として不明である。したがって請求項1から7の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合しないものである」(特許異議申立書第33頁「(イ)構成Eについて」欄)。

2 判断
(1)主張1について
「調剤に関連する情報」につき、請求項1では、構成Dの「調剤に関連する情報が、薬剤容器に関連付けて本体装置に送られ」なる記載に先行して、「薬剤秤量装置は、薬剤の重量を検知する重量検知手段と、調剤に関連する情報を読み込む調剤情報読み込み手段と、情報書き込み手段及び/又は秤量装置側情報読み取り手段を有し」(構成B)と記載されていること、また、構成Eの「薬剤容器に薬剤が投入され、前記重量検知手段で薬剤の秤量が行われ、薬剤が薬剤容器に入れられたままの状態で、薬剤容器が本体装置の容器振動台に載置され、・・・」の記載から、本件発明1の本体装置は、薬剤秤量装置が作動した後に作動する装置であることを踏まえると、構成Dにおける「調剤に関連する情報」は、構成Bにおける「調剤に関連する情報」、即ち、薬剤秤量装置において、調剤情報読み込み手段によって読み込まれた情報に対応するものと解するのが合理的である。
そうすると、構成Dの「調剤に関連する情報」を本体装置に向けて送る主体が、薬剤秤量装置であること、同「調剤に関連する情報」が本体装置に向けて薬剤秤量装置から送られることは、いずれも当業者であれば普通に理解できるところであり、さらに、構成Dにおける「調剤に関連する情報が、薬剤容器に関連付けて本体装置に送られ」との特定により、本件発明1の「薬剤払出し装置」が、「調剤に関連する情報」を薬剤秤量装置から「薬剤容器に関連付けて本体装置に送」るという機能を備えた「装置」であることも、当業者であれば普通に認識できるものといえる。
よって、本件発明1は主張1に基づいて明確でないとはいえない。同様に、請求項1を引用する本件発明2?7も、主張1に基づいて明確でないとはいえない。
(2)主張2について
構成Eの「薬剤容器に薬剤が投入され、前記重量検知手段で薬剤の秤量が行われ、薬剤が薬剤容器に入れられたままの状態で、薬剤容器が本体装置の容器振動台に載置され」の記載によれば、薬剤容器に薬剤が投入されて、重量検知手段で薬剤の秤量が薬剤容器とともに行われること、次いで、薬剤の秤量に用いた当該薬剤容器が、薬剤を入れたままの状態で本体装置の容器振動台に載置されることが、明らかであるから、構成Eにおける「薬剤が薬剤容器に入れられたままの状態で、薬剤容器が本体装置の容器振動台に載置され」との特定により、本件発明1の「薬剤払出し装置」が、薬剤の秤量に用いた薬剤容器と振動台に載置される薬剤容器とを同じ容器とした「装置」であるものと、把握できる。
よって、本件発明1は主張2に基づいて明確でないとはいえない。同様に、請求項1を引用する本件発明2?7も、主張2に基づいて明確でないとはいえない。

3 小括
以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできず、理由3によっては、本件発明1?7に係る特許を取り消すことはできない。


第5 当審の判断2(理由1A?2Eについて)
上記「第4」で示したとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載に不備はないので、続いて理由1A?2Eについて、以下検討する。
1 甲1?甲4の記載事項
(1)甲1及び甲1発明
甲1には、[0014]、[0017]、[0019]、[0020]、[0022]、[0027]、[0045]、[0047]、[0128]、[0172]の記載があり、[図1]、[図2]、[図4]の図示がある。
これらの記載及び図示を参照すれば、次の事項を認めることができる。
ア)薬品秤量システム1は、薬品包装装置20と、薬品秤量装置10と、薬剤シート30とを備える([0014]、[図1])。また、これらの薬品包装装置20、薬品秤量装置10、薬剤シート30は、それぞれ別体となっている([図1]、[図2]、[図4])。
イ)薬品秤量装置10は、天秤ユニット12、バーコードリーダー17、RFIDリーダライタ14を有する([0017])。天秤ユニット12は、薬品を秤量する([0019]、[0020])。バーコードリーダー17は、処方箋情報を読み取る([0027])。
ウ)薬品包装装置20は、振動フィーダを有し、散薬を振動フィーダによって回転する環状分配皿に均等に配分した後、前記環状分配皿を所定角度ずつ回転させながら掻き出しユニットにて前記包装ユニット22に定量排出する動作を行う([0047])。また、薬品包装装置20は、RFIDリーダライタ24を有する([0045])。
エ)薬剤シート30は、図示された形状からみて、上方に、薬品を投入又は排出可能な開放部を有する(図1)。また、薬剤シート30は、RFIDタグ31を有する([0022])。
オ)[0172]の「薬品包装装置20は、ハードディスク又はSSDなどのデータ記憶部26と、・・・を備える。・・・薬品秤量装置10各々では、前記制御部11が、前記データ記憶部26の前記共有フォルダに、前記処方箋情報、前記秤量結果、及び前記調剤シート30に割り当てられる後述のトレイ番号などの情報を記憶させることが可能である。」の記載から、処方箋情報は、薬品包装装置20に送られるものといえる。
加えて、[0172]の「制御部21は、例えば前記薬剤シート30の前記RFIDタグ31から前記トレイ番号を読み取り、前記トレイ番号に基づいて前記薬剤シート30に対応する前記処方箋情報及び前記秤量結果を前記データ記憶部26から読み出す」の記載を併せみれば、処方箋情報は、トレイ番号に紐付けて薬品包装装置20に送られるものといえる。
カ)薬剤シート30は、薬剤シート30に薬剤が投入され、天秤ユニット12で薬品の秤量が行われる([0019]、[0020])。また、薬剤のみが、薬品包装装置20のホッパーに投入される([0047]、[0128])。

以上によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「それぞれ別体の薬品包装装置20と、薬品秤量装置10と、薬剤シート30とを備えた薬品秤量システム1であって、
前記薬品秤量装置10は、薬品を秤量する天秤ユニット12と、処方箋情報を読み込むバーコードリーダー17と、RFIDリーダライタ14を有し、
前記薬品包装装置20は、振動フィーダと、RFIDリーダライタ24を有し、散薬を振動フィーダによって回転する環状分配皿に均等に配分した後、前記環状分配皿を所定角度ずつ回転させながら掻き出しユニットにて前記包装ユニット22に定量排出する動作を行い、
薬剤シート30は、薬品を排出可能な開放部と、RFIDタグ31とを有し、処方箋情報が、トレイ番号に紐付けて薬品包装装置20に送られ、
薬剤シート30は、薬剤シート30に薬剤が投入され、天秤ユニット12で薬品の秤量が行われ、薬剤のみが、薬品包装装置20のホッパーに投入される薬品秤量システム1。」


(2)甲2
甲2には、次の事項が記載されている(下線は当審で付したものである。以下、同じ。)。
甲2a:「【0003】
このような従来の散薬分包機10について、図面を引用しながら本発明の説明に役立つ事項を掻い摘んで説明する。図2は、(a)が散薬分包機10の正面模式図、(b)が散薬分包機10の外観斜視図、(c),(d)が散薬分包機10の右側面模式図、(e)が散薬フィーダ40の概要ブロック図、(f)が散薬収容器42及び散薬送出部43の斜視図である。
【0004】
散薬分包機10には、それぞれが散薬フィーダ40(散薬供給装置)を実装した2台の散薬分配分割装置12?14が左右に並んで設置されている。
散薬フィーダ40は、振動することで散薬を等速で少しずつ送出する振動式が一般的であり、送出を待っている散薬を一時貯留しておく散薬収容器42と、この散薬収容器42の排出口42aから排出された散薬に振動を与えながら一定経路を流下させることで排出量・流量を安定させるトラフ状の散薬送出部43と、その振動強度を可変制御しうる振動源としての振動発生部材45及び駆動回路41とを具えている。
【0005】
散薬分配分割装置12?14は、必要量だけ秤量された散薬を分包単位で均等に分割するために、上記の散薬フィーダ40に加えて、回転しながらその散薬を溝に受けることで円環状に均す環状テーブル13(R円盤)と、これを回転させるテーブル駆動部14と、環状テーブル13の溝から散薬を所定量ずつ切り出す切り出し装置12とを具えている。
両散薬分配分割装置12?14の中間位置には、共通ホッパー15が設置されており、これによって、切り出された散薬が包装装置本体20へ導かれるようになっている。
【0006】
包装装置本体20は、散薬分配分割装置12?14にて分割され共通ホッパー15にて落下案内された散薬を分包帯(分包紙)にて区分包装するために、分包帯の送り経路に沿って順に、分包帯のロールを保持するとともに適度なテンションを付与して先端から順に送り出す包装帯送給部と、分包帯に印刷を行うプリンタ(プリントヘッド)と、縦に延びた発熱体を具有し分包帯の縦シール部を加熱して融着させる縦シール部材(ヒートシール)と、上下動して分包内に先端を挿抜する投入ホッパー24と、横に延びた発熱体を具有し分包帯の横シール部を加熱して融着させる横シール部材と、分包帯を引っ張るローラ部と、分包帯にミシン目を入れたり切断したりするカッターとが設けられている。
【0007】
このような散薬分包機10の筐体内で空いているところには制御装置19(コントローラ)が設置されており、その制御によって、散薬フィーダ40の散薬供給動作や,散薬分配分割装置12?14の分配分割動作,包装装置本体20の区分包装動作が適切に連動して遂行されるようになっているので、作業者が分包しようとする散薬を必要量だけ秤量して散薬フィーダ40の散薬収容器へ投入して、散薬分包機10を作動させると、後は自動で散薬が分包される。・・・」

甲2b:「【0011】
散薬収容器42や散薬送出部43は、プラスチックの射出成形等にて一体成形されることもあれば、別体で作られることもあるが、何れにしても協動する状態で振動発生部材45の上に又はフィーダベース46の上に装着されるようになっている。その装着に際しては、散薬収容器42側より散薬送出部43側が少し低くなるように傾斜がつけられるとともに、着脱可能なように更には着脱容易または着脱自在なように、ネジ等による締結や、フック等による掛止・係止、クランパやクリップ等による挟持などで取り付けられる。それらに加えて駆動回路41も搭載したフィーダベース46は、適宜なダンパー等を介して散薬分包機10の支持枠等に取り付けられている。」

(3)甲3
甲3には、次の事項が記載されている。
甲3a:「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は振動供給装置に関するもので、詳しくは、医薬品のような粉粒材料等を供給するのに好適な振動供給装置に関するものである。」

甲3b「【0010】
【問題点を解決するための手段】上記目的は振動駆動源と、少なくとも一つの開口を有する容器と、該容器を前記振動駆動源に移送するための容器移送手段と、前記容器の姿勢を変更させる姿勢変更手段と、前記容器を前記振動駆動源に固定させるためのロック機構とから成り、第1の姿勢をとる前記容器内に供給すべき粉粒状材料を収容させて、前記容器移送手段により前記振動駆動源へと移送し、前記姿勢変更手段により前記容器の姿勢を第2の姿勢に変更させ、次いで前記ロック機構により該容器を前記振動駆動源に対し固定し、該振動駆動源の加振力により前記容器を振動させてその前記開口から収容する粉粒状材料を排出するようにしたことを特徴とする振動供給装置、によって達成される。
【0011】
【作用】上記構成によれば、容器移送手段により振動駆動源に移送された容器は、姿勢変更手段により第2の姿勢に変更される。第2の姿勢となった容器はロック機構により振動駆動源に固定され、該振動駆動源の加振力で振動されて容器内の粉粒状材料が排出される。こうした一連の手段の開始及び停止は、シーケンス制御により容易に行なうことができ、自動化が達成される。」

甲3c:「【0035】容器Tが第2の姿勢にロックされて振動駆動部2が駆動開始され、これから振動力を受けると、容器T内で搬送されこの開口76から医薬品S等の粉粒状材料が徐々に下方に落下する。従って、開口76の下方に秤衡等を配置することにより、所定量の粉粒状材料を計量することができる。」

(4)甲4
甲4には、次の事項が記載されている。
甲4a:「【0014】計量装置61は、たとえば、秤量器と秤量皿とからなる秤量装置として構成することができるものであるが、その場合、計量時には、供給位置40に位置するカセット21の前方において、その排出部23の正面出口から排出される散薬を受け取るために、排出部23の正面出口の真下に計量中心が位置するように配置される必要がある。すなわち、計量装置61は、作動装置51のようにつねにカセット21群の昇降領域および循環領域を避けて配置することはできず、計量時にはカセット21の移動領域内に侵入しなければならない。そのため、シフト機構62が設けられ、このシフト機構62が、計量装置61を、その計量中心がカセット21の排出部23の正面出口の真下に位置する計量位置(図2のA)と、計量し終わった散薬を配分/分割装置3に配分する配分位置(図2のB)と、さらには、配分が終わった汚れを除去する清掃位置(図2のC)との間をシフトさせることによって、計量時にのみカセット21の移動領域内に侵入させ、それ以外はカセット21の移動領域から外方へ退避させるように構成されている。そして、計量装置61は、清掃が終わったのち、つぎの散薬計量のため計量位置へシフトされるまでの間、清掃位置で待機するようになっている。また、計量装置61には、配分位置において、配分/分割装置3に対する散薬の配分動作を円滑に行わせるため、散薬を徐々に供給する振動フィーダ63が設けられている。すなわち、振動フィーダ63のトラフ64を、カセット21から受け取る散薬を載せる秤量皿として構成し、このトラフ64を含む振動フィーダ63を秤量器65で支えることによって、計量装置61が構成されている。」

甲4b:「【0019】つぎに、上記のように構成された散薬供給装置を採用した散薬分包機の作用について説明する。散薬収納庫20に収納されている所定の散薬を、所定の量だけ処方して、これを所定の包数に分包する場合、つぎのようにして行う。
【0020】まず、その散薬を収容したカセット21が装着されている(はずの)支持体43を、移動機構41に設けられたすべての支持体43の中から見つける。つぎに、その支持体43のアドレスに基づいて、その支持体43が供給位置40に来るように、移動機構41を作動させて、必要な循環、昇降を行わせる。このとき、他の段の無端条帯42は、必要に応じて循環させることができる。
【0021】支持体43が供給位置40に到達したら、その位置に設けられたリーダライタ81が、その支持体43に装着されているカセット21のデータキャリア80からアドレスおよび薬品名を読み取り、それによって、そのカセット21が所定のものに間違いないことを、散薬供給に先立って確認する。つぎに、散薬フィーダ50を作動させて、そのカセット21から散薬を排出させながら、それを計量位置にある計量装置61によって計量して、その量が所定の量に達したら、散薬フィーダ50の作動を終わらせる。この間も、必要に応じて、他の段の無端条帯42は循環させることができる。また、供給位置40a、40bの間隔が、カセット21のピッチの整数倍となるように配置されているから、散薬を排出させるべき2つのカセット21の間隔が、たまたま供給位置40a、40bの間隔に一致している場合は、散薬フィーダ50a、50bを並行して作動させて、両カセット21から並行して散薬を排出させることかできる。さらに、取出位置90と供給位置40a、40bそれぞれとの間隔も、カセット21のピッチの整数倍となるように配置されているから、散薬フィーダ50の作動中に、並行して、取出位置90にあるカセット21の取出、補充、再装着を行うことができる。
【0022】つぎに、シフト機構62を作動させて、計量装置61を配分位置へシフトさせる。この位置で、計量装置61の振動フイーダ63を作動させるとともに、駆動装置7によって配分/分割装置3の凹溝6を定速回転させ、それにより、振動フィーダ63のトラフ64内にある散薬を、凹溝6の全周にわたって実質的に均等に配分する。計量装置61を配分位置へシフトさせたら、つぎに排出させるべき散薬を収容したカセット21が供給位置40に来るように、移動機構41を作動させて、必要な循環、昇降を行わせることができる。また、必要な循環、昇降の結果、そのカセット21が他方の供給位置40に到達したら、リーダライタ81によるデータキャリア80の読み取りを行うことができるし、その供給位置40の散薬フィーダ50を作動させることもできる。
【0023】配分が終了したら、駆動装置7を切り換えて、配分/分割装置3の凹溝6を、所定の包数に相当する分割数に応じた角度ずつ回動させながら、駆動装置9によって切出装置8を1回転ずつ繰り返し回転させ、それにより、凹溝6内の散薬を1包相当分ずつ切り出して、包装装置5のホッパ4に順次導入する。包装装置5はこれを受けて、その散薬を1包分ずつ分包する。・・・」

2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1(前者)と甲1発明(後者)を対比する。
後者の「薬品秤量システム1」は、その機能、形状等からみて、前者の「薬剤払い出し装置」に相当し、以下同様に、「薬品包装装置20」は「本体装置」に、「薬品秤量装置10」は「薬剤秤量装置」に、「薬剤シート30」は「薬剤容器」に、「薬品を秤量する天秤ユニット12」は、「薬剤の重量を検知する重量検知手段」に、「処方箋情報」は「調剤に関連する情報」に、「バーコードリーダー17」は「調剤情報読み込み手段」に、「RFIDリーダライタ14」は「情報書き込み手段」に、それぞれ相当する。
後者の「振動フィーダ」は、散薬を振動により供給する部材であるから、“振動手段”である点で、前者の「容器振動台」と共通する。
また、後者は、「散薬を振動フィーダによって回転する環状分配皿に均等に配分した後、前記環状分配皿を所定角度ずつ回転させながら掻き出しユニットにて前記包装ユニット22に定量排出する動作を行」う以上、当該動作を行うための手段を具備することは明らかであるから、当該手段が、前者の「散薬を所定量に区分して複数に分割する薬剤分配装置」に相当する。
さらに、後者の「RFIDリーダライタ24」は、その機能、形状等からみて、前者の「本体側情報読み取り手段」に相当し、以下同様に、「薬品を排出可能な開放部」は「薬剤排出部」に、「RFIDタグ31」は「情報記録部材」に、「トレイ番号に紐付けて」は「薬剤容器に関連付けて」に、「薬品の秤量」は「薬剤の秤量」に、それぞれ相当する。

してみると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
それぞれ別体の本体装置と、薬剤秤量装置と、薬剤容器とを備えた薬剤払出し装置であって、
前記薬剤秤量装置は、薬剤の重量を検知する重量検知手段と、調剤に関連する情報を読み込む調剤情報読み込み手段と、情報書き込み手段及び/又は秤量装置側情報読み取り手段を有し、
前記本体装置は、振動手段と、散薬を所定量に区分して複数に分割する薬剤分配装置と、本体側情報読み取り手段を有し、
薬剤容器は、薬剤排出部と、情報記録部材及び/又は容器識別部材とを有し、調剤に関連する情報が、薬剤容器に関連付けて本体装置に送られ、
前記薬剤容器は、薬剤容器に薬剤が投入され、前記重量検知手段で薬剤の秤量が行われる薬剤払出し装置。

<相違点>
前者では、振動手段が「薬剤容器を載置して振動させる容器振動台」であり、また、「薬剤容器に投入され」かつ「秤量が行われ」た「薬剤が薬剤容器に入れられたままの状態で、薬剤容器が本体装置の容器振動台に載置され、容器振動台で薬剤容器が振動され、薬剤排出部から薬剤分配装置に薬剤が排出されるもの」であるのに対し、後者では、振動フィーダに薬剤のみが投入されるのであるから、振動手段は「薬剤容器を載置して振動させる容器振動台」ではなく、また、「薬剤容器に投入され」かつ「秤量が行われ」た「薬剤が薬剤容器に入れられたままの状態で、薬剤容器が本体装置の容器振動台に載置され、容器振動台で薬剤容器が振動され、薬剤排出部から薬剤分配装置に薬剤が排出されるもの」でもない点。

(2)相違点についての判断
甲2?甲4について検討する。
甲2における上記摘記事項甲2a?2bの記載によれば、甲2には、「散薬分包機10であって、散薬収容器42は振動発生部材45の上に装着され、作業者が分包しようとする散薬を必要量だけ秤量して散薬フィーダ40の散薬収容器42へ投入して、散薬分包機10を作動させると、後は自動で散薬が分包される、散薬分包機10。」(以下「甲2事項」という。)が記載されているが、散薬収容器42は、秤量後の散薬が投入されるものであって、秤量された薬剤が入れられたままの状態で振動発生部材45の上に載置されるものではない。
甲3における上記摘記事項甲3a?3cの記載によれば、甲3には、「振動駆動源と、少なくとも一つの開口を有する容器と、該容器を前記振動駆動源に移送するための容器移送手段と、前記容器の姿勢を変更させる姿勢変更手段と、前記容器を前記振動駆動源に固定させるためのロック機構とから成り、第1の姿勢をとる前記容器内に供給すべき粉粒状材料を収容させて、前記容器移送手段により前記振動駆動源へと移送し、前記姿勢変更手段により前記容器の姿勢を第2の姿勢に変更させ、次いで前記ロック機構により該容器を前記振動駆動源に対し固定し、該振動駆動源の加振力により前記容器を振動させてその前記開口から収容する粉粒状材料を排出するようにした振動供給装置であって、この開口から医薬品等の粉粒状材料が徐々に下方に落下し、開口の下方に秤衡等を配置することにより、所定量の粉粒状材料を計量することができる、振動供給装置。」(以下「甲3事項」という。)が記載されているが、この容器は、秤量された医薬品等が入れられたままの状態で振動駆動源の上に載置されるものではなく、また、医薬品等を開口から薬剤分配装置へと排出するものでもない。
甲4における上記摘記事項甲4a?4bの記載によれば、甲4には、「散薬分包機であって、振動フィーダ63のトラフ64を、カセット21から受け取る散薬を載せる秤量皿として構成し、このトラフ64を含む振動フィーダ63を秤量器65で支えることによって、計量装置61が構成され、散薬フィーダ50を作動させて、そのカセット21から散薬を排出させながら、それを計量位置にある計量装置61によって計量して、その量が所定の量に達したら、散薬フィーダ50の作動を終わらせ、つぎに、シフト機構62を作動させて、計量装置61を配分位置へシフトさせ、この位置で、計量装置61の振動フイーダ63を作動させるとともに、駆動装置7によって配分/分割装置3の凹溝6を定速回転させ、それにより、振動フィーダ63のトラフ64内にある散薬を、凹溝6の全周にわたって実質的に均等に配分する、散薬分包機。」(以下「甲4事項」という。)が記載されているが、散薬を受け取るトラフ64は、振動フィーダ63のトラフ64であって、計量位置で計量された後に、散薬が入れられたままの状態で振動フィーダ63に載置されるものではない。
以上によれば、甲2?4のいずれにも、上記相違点において前者を特定するための事項である「薬剤容器に投入され」かつ「秤量が行われ」た「薬剤が薬剤容器に入れられたままの状態で、薬剤容器が本体装置の容器振動台に載置され」る事項について、記載も示唆もない。
また、当該事項が、当業者が適宜なし得る設計事項に該当するともいえないし、甲3事項及び甲4事項に基づいて従来周知の技術であったともいえない。
そうすると、甲1発明に甲2?4事項のいずれを適用しても、本件発明1には至らないのであるから、本件発明1は、甲1発明、甲2事項及び甲3事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとも、甲1発明、甲2事項並びに甲3及び甲4記載の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
そして、本件発明1は、相違点に係る「薬剤容器に投入され」かつ「秤量が行われ」た「薬剤が薬剤容器に入れられたままの状態で、薬剤容器が本体装置の容器振動台に載置され、容器振動台で薬剤容器が振動され、薬剤排出部から薬剤分配装置に薬剤が排出される」という事項を具備することにより、薬剤払出し装置において、秤量を行うための容器と薬剤分配装置に薬剤を排出するための容器とを共通化することができると共に、本体装置側で、薬剤を受け入れるための容器やホッパが不要になる、という格別の効果を期待できるものである。

3 本件発明2?7について
本件発明2?7は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1について示した理由と同様の理由により、甲1発明、甲2事項及び甲3事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとも、甲1発明、甲2事項並びに甲3及び甲4記載の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
また、申立人は、理由2A?2Eに関し、甲5には、本件発明4の「前記秤量装置側情報読み取り手段によって薬剤容器を特定する情報が読み取られ、調剤に関連する情報と薬剤容器を特定する情報が薬剤秤量装置から発信され、当該情報が直接的にまたは間接的に本体装置に送信され、本体側情報読み取り手段で受信されることによって調剤に関連する情報が、薬剤容器に関連付けて本体装置に送られること」に相当する事項(以下「甲5事項」という。)が記載されている旨主張している。
しかしながら、仮に、甲5に上記甲5事項が記載されていたとしても、当該事項は、上記相違点に係る前者の事項に相当する事項ではない。
そうすると、甲1?甲4に加え、甲5を参照しても、本件発明4は、甲1発明、甲2事項、甲3事項及び甲5事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとも、甲1発明、甲2事項、甲3及び甲4記載の周知技術並びに甲5事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

4 小括
以上のとおり、本件発明1?7は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく、理由1A?2Eによっては、本件発明1?7に係る特許を取り消すことはできない。


第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。




 
異議決定日 2020-07-27 
出願番号 特願2016-508729(P2016-508729)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A61J)
P 1 651・ 121- Y (A61J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 段 吉享立花 啓  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 関谷 一夫
和田 将彦
登録日 2019-10-18 
登録番号 特許第6601686号(P6601686)
権利者 株式会社湯山製作所
発明の名称 薬剤払出し装置  
代理人 藤田 隆  
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