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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A61K 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する A61K 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する A61K |
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管理番号 | 1365211 |
審判番号 | 訂正2020-390030 |
総通号数 | 250 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-10-30 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2020-04-14 |
確定日 | 2020-07-20 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5362294号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第5362294号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第5362294号の請求項1?2に係る特許についての出願は、平成20年8月29日に特許出願され、平成25年9月13日にその特許権の設定登録がされ、その後、令和2年4月14日に本件訂正審判が請求されたものである。 第2 請求の趣旨及び訂正事項 本件審判の請求の趣旨は、特許第5362294号の明細書および特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。 請求人が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線部が訂正箇所。)。 1.訂正事項1 本件特許の願書に添付した明細書および特許請求の範囲(以下、「本件明細書等」という。)の特許請求の範囲の請求項1における 「(a)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物、」 との記載を 「(a)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(但し、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物を除く)、」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。 2.訂正事項2 本件明細書等の特許請求の範囲の請求項1における 「(c)ラジカル重合開始材を含む人工爪組成物であって、 該酸性リン化合物(b)は、2 - メタクリロキシエチルフォスフェート(2-MEP)、ジ(2-メタクリロキシエチル)- フォスフェート(Di-MEP)および6-メタクリロキシヘキシルホスホノアセテート(6-MHPA)より選択される少なくとも1種である」 との記載を 「(c)ラジカル重合開始材を含む人工爪組成物であって、 該酸性リン化合物(b)は、2 - メタクリロキシエチルフォスフェート(2-MEP)、ビス(2-メタクリロキシエチル)- フォスフェート(Di-MEP)および6-メタクリロキシヘキシルホスホノアセテート(6-MHPA)より選択される少なくとも1種であり、」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。 3.訂正事項3 本件明細書等の特許請求の範囲の請求項1における 「該人工爪組成物。」 との記載を 「該ラジカル重合開始材(c)は、光重合開始材である該人工爪組成物。」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。 4.訂正事項4 本件明細書等の明細書の段落【0029】における 「【化2】 (式中、R_(1)は水素原子またはメチル基を示し、およびR_(2)は置換基を有していてもよい炭素原子数1?20のアルキレン基を示す。)」 との記載を削除する。 5.訂正事項5 本件明細書等の明細書の段落【0029】及び【0039】にそれぞれ 「ジ(2-メタクリロキシエチル)- フォスフェート」 と記載されているのを 「ビス(2-メタクリロキシエチル)- フォスフェート」 に訂正する。 第3 当審の判断 1.一群の請求項について 訂正前の請求項1?2について、請求項2は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1?3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?2に対応する訂正後の請求項1?2は、特許法第126条第3項に規定する一群の請求項であり、本件訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。 2.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無について (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、化合物(a)をさらに限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 本件明細書等の請求項1における 「(a)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物、 (b)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物 、および (c)ラジカル重合開始材を含む」 との記載は、(a)に(b)が含まれると認識されるものであるところ、本件明細書等の明細書の段落【0020】?【0022】に記載されている化合物(a)の具体例中に、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物は含まれていないこと、および本件明細書等の実施例において化合物(a)として該酸性リン化合物ではないものが使用されていることから、(a)から(b)を除くことにより、新たな事項が追加されるものでもなく、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無 上記アで説示したとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するだけのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、特許法第126条第6項に規定する要件に適合するものである。 (2)訂正事項2、5について ア 訂正の目的 化合物の命名法において、倍数接頭語に関し、同じ単純基または母体化合物が2つあることを示す際には「ジ」を用い、同じ複合基が2つあることを示す際には「ビス」を用いるのが、本件特許の出願時の当業者の技術常識であるから(審判請求書に添付された甲第1号証(化学新シリーズ 化合物命名法、2009年8月25日第2版2刷発行、株式会社 裳華房、第109?110頁)を参照。)、複合基である2-メタクリロキシエチル基が2つあることを示す際には「ジ」ではなく「ビス」を用いるべきであることは明らかである。 したがって、訂正事項2、5は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 「ジ(2-メタクリロキシエチル)」なる記載と「ビス(2-メタクリロキシエチル)」なる記載がともに、2-メタクリロキシエチル基が2つあることを意味することは、当業者にとって自明の事項である。 そうすると、当業者は「ジ(2-メタクリロキシエチル)- フォスフェート」なる記載と「ビス(2-メタクリロキシエチル)- フォスフェート」なる記載とで、当然に同一の化合物を認識するから、訂正事項2、5は、願書に最初に添付した明細書および特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無 上記イで説示したとおり、当業者は「ジ(2-メタクリロキシエチル)- フォスフェート」なる記載と「ビス(2-メタクリロキシエチル)- フォスフェート」なる記載とで、当然に同一の化合物を認識するから、訂正事項2、5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、特許法第126条第6項に規定する要件に適合するものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3は、ラジカル重合開始材(c)を光重合開始材に限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 本件明細書等の段落【0031】に「ラジカル重合開始材としては、公知の熱重合開始材及び、光重合開始材が使用できる。」との記載があるから、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無 上記アで説示したとおり、訂正事項3は、特許請求の範囲を減縮するだけのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、特許法第126条第6項に規定する要件に適合するものである。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的 訂正事項4は、本件明細書等の段落【0029】における【化2】の構造式を削除して、該段落【0029】の「代表的な化合物としてジ(2-メタクリロキシエチル)- フォスフェート(Di-MEP)がある。」なる記載との関係において生じていた不合理を解消するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項4は、本件明細書等の段落【0029】における【化2】の構造式を削除するものにすぎないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項4は、特許法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。 3.独立特許要件について 訂正事項1、3は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正事項2、5は誤記の訂正を目的とするものであるから、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができることが要件となるところ、当該訂正後における特許請求の範囲の請求項1?2に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由を発見しないから、訂正事項1?3、5に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。 第4 むすび 以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1?3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第5?7項の規定に適合するものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 接着性の改善された人工爪組成物 【技術分野】 【0001】 本発明は、接着性の改善された人工爪組成物、さらに詳しくは、天然爪上に形成される人工爪組成物であって、天然爪表面に塗布した後、重合し、または、天然爪表面に塗布した後、形態形成や積層による色調調製などの工程により、特別な美的外観、さらには、補助医療目的で脆弱な天然爪の強度付与や、変形変色した爪の再生、保護の目的で用いる人工爪組成物に関する。また、天然爪と人工爪との接着性を改善し、積層された人工爪の剥離を抑制することができる人工爪組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 ネイルアートとは、手足の爪に施す化粧や装飾の事である。ネイルアートを施してくれる店をネイルサロン、その技術者をネイリストと言う。さまざまなネイルアート用品が市販されており、個人でプロ顔負けのネイルアートを行っている女性も多い。 【0003】 古くは、紀元前3000?4000年ごろの古代エジプトには、すでに爪に着色をする文化があったことがミイラなどで確認できる。ヘナなどの植物性の染料を用い、位の高い人間ほど濃い色で着彩されていたとみられる。 【0004】 18世紀頃のヨーロッパで現在のようなネイルアートが広まったとされている。中国では唐の時代に楊貴妃が爪に染色を行っていた。日本には平安時代に伝来し、ホウセンカやベニバナの花の汁を用いて爪に色をつけていた。江戸時代には遊女が行っていた事が知られている。 【0005】 19世紀にアメリカで自動車用のラッカー塗料が発明され、この技術を応用して現在使われているマニキュアが開発された。 【0006】 さらに、ネイルアートは施術に時間が掛かる反面、取り扱うのが手の先のみで、水を必要としないためネイルサロンは省スペースで開店できる。そのため専門店のほかに、美容室、ドラッグストア、化粧品店、ファッションビル、美容系の専門学校、個人宅等のような施設の一角を使って営業され、一般にネイルアートが普及した。 【0007】 しかし、ラッカー塗料を応用したマニキュアは、現在広く普及しているが、天然爪との接着性に乏しく、施術後短期間で剥離、離脱することが問題であった。このため、歯科用常温重合レジンを応用した人工爪材料が開発された。 【0008】 また、最近では、歯科用常温重合レジンを応用した人工爪材料の臭気刺激性や施術操作性を改善した、ジェルネイルが市場の中心となっている。 【0009】 しかし、ラッカー塗料を応用したマニキュアにおいて問題であった、人工爪材料の天然爪に対する接着性の改善は十分ではない。 【0010】 さらに、天然爪と人工爪との低い接着性による剥離、積層された人工爪間の剥離等は、美的不快感を与えるだけでなく、衛生的問題を含み、人工爪被施術者の感染症の主たる原因であると考えられ、高い接着性を有する人工爪材料の開発が求められている。 【0011】 特開平2-1779号公報には、タンパク質基体への接着剤、被覆、複合体の少なくとも1つの付着を強める前処理組成物およびタンパク質基体への接着剤、被覆、複合体の少なくとも1つの付着を促進する組成物を製造する方法が開示されている。該公報では、水に混和可能な溶媒と不飽和カルボキシル酸化合物を含有する組成物がケラチン質構造に対する接着性に有効であることが開示されているが、接着性が十分ではないという問題があった。 【特許文献1】特開平2-1779号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0012】 本発明の目的は、人工爪組成物において、天然爪と人工爪との接着性を改善し、剥離や脱離を抑制することにある。さらに、人工爪と人工爪との積層構造体の剥離や脱離を抑制することにある。また、接着性付与を目的としたプライマーまたは、接着剤が不要な、人工爪組成物を提供し、さらに、接着性付与を目的としたプライマーまたは、接着剤組成物を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0013】 本発明は、(1)(a)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物、(b)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物、および(c)ラジカル重合開始材を含む人工爪組成物を提供する。 【0014】 また、本発明は、(2)(a)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物、0.1?98.5重量部、(b)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物、0.1?98.5重量部、および(c)ラジカル重合開始材、0.01?10重量部を含む前記(1)記載の人工爪組成物を提供する。 【0015】 また、本発明は、(3)(b)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物が、P-OH結合を有する前記(1)または(2)記載の人工爪組成物を提供する。 【0016】 また、本発明は、(4)(b)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物が、リン酸モノエステル基、リン酸ジエステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸モノエステル基、亜リン酸モノエステル基、ホスフィン酸基、およびピロリン酸基よりなる群から選択される少なくとも1種である前記(1)ないし(3)いずれか1記載の人工爪組成物を提供する。 【発明の効果】 【0017】 本発明により、人工爪組成物において、天然爪と人工爪との接着性を改善し、剥離や脱離を抑制し、さらに人工爪と人工爪との積層構造体の剥離や脱離を抑制し、長期にわたり特別な美的外観を持続するだけでなく、人工爪被施術者の衛生的問題を解決することができる。 【0018】 また、接着性付与を目的としたプライマーまたは接着剤が不要な人工爪組成物を提供することにより、人工爪施術者および、被施術者の時間的浪費を抑制することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0019】 本発明における(a)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物とは、公知の単官能性および多官能性の重合性単量体のうちから使用することができる。一般に好適に使用される代表的なものを例示すれば、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を有する重合性単量体である。なお、本発明においては、(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリロイルをもってアクリロイル基含有重合性単量体とメタクリロイル基含有重合性単量体の両者を包括的に表記する。 【0020】 具体的に例示すれば次の通りである。 単官能性単量体:メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサフタル酸、ステアリル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート 【0021】 二官能性単量体:1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート 【0022】 三官能以上の単量体:トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート 【0023】 上記(メタ)アクリレート系重合性単量体以外に、人工爪組成物の目的に応じて、他の重合性単量体、例えば分子内に少なくとも1個以上の重合性基を有する単量体のオリゴマーまたはポリマーを用いても何等制限はない。また、酸性基やフルオロ基等の置換基を同一分子内に有していても何等問題はない。 【0024】 本発明において、(a)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物とは、単一成分の場合のみならず、複数の重合性単量体からなる重合性単量体の混合物も含む。また、重合性単量体の粘性が室温で極めて高い場合、または重合性単量体が固体である場合は、低粘度の重合性単量体と組み合わせて重合性単量体の混合物として使用するのが好ましい。この組合せは2種類に限らず、3種類以上であってもよい。 【0025】 本発明における(a)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物の配合割合としては、0.1?98.5重量部であり、コーティング、築盛、もしくは接着材用人工爪組成物として、好ましくは、0.5?90.0重量部であり、プライマー用人工爪組成物として、好ましくは、0.1?30重量部である。 【0026】 本発明における(b)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物について、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する官能基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、シアノアクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等があるが、特に(メタ)アクリロイル基とビニル基が好ましい。 【0027】 さらに、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物が、P-OH結合を有する化合物としては、リン酸モノエステル基、リン酸ジエステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸モノエステル基、亜リン酸モノエステル基、ホスフィン酸基、およびピロリン酸基から選択される少なくとも1種を有する化合物であるが、特にリン酸モノエステル基、リン酸ジエステル基や、ホスホン酸基を有する化合物が好ましい。具体例としては、 【0028】 【化1】 (式中、R_(1)は水素原子またはメチル基を示し、およびR_(2)は置換基を有していてもよい炭素原子数1?20のアルキレン基を示す。)。代表的な化合物として2-メタクリロキシエチルフォスフェート(2-MEP)がある。 【0029】 代表的な化合物としてビス(2-メタクリロキシエチル)-フォスフェート(Di-MEP)がある。 【0030】 【化3】 (式中、R_(1)は水素原子またはメチル基を示し、R_(2)は炭素原子数5?10のアルキレン基を示し、R_(3)は炭素原子数1?6のアルキレン基を示す)。代表的な化合物として6-メタクリロキシヘキシルホスホノアセテート(6-MHPA)が挙げられる。 【0031】 本発明における(c)ラジカル重合開始材としては、0.01?10重量部の配合割合において使用でき、好ましくは0.1?5重量部である。ラジカル重合開始材としては、公知の熱重合開始材及び、光重合開始材が使用できる。光重合開始材の例としては、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、α-ジアルコキシアセトフェノン類、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、α-アミノアルキルフェノン、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、チタノセン類等が挙げられ、好ましくは、2-ヒドロキシー2-メチルプロピオフェノンである。 【0032】 また、上記ラジカル重合開始材に光重合促進剤を組み合わせて用いることも好ましい。特に第三級アミン類を光重合促進剤として用いる場合には、芳香族基に直接窒素原子が置換した化合物を用いることがより好ましい。かかる光重合促進剤としては、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジ-n-ブチルアニリン、N,N-ジベンジルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリン、m-クロロ-N,N-ジメチルアニリン、p-ジメチルアミノベンズアルデヒド、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノベンゾイックアシッド、p-ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル、p-ジメチルアミノベンゾイックアシッドアミノエステル、N,N-ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン、p-ジメチルアミノフェニルアルコール、p-ジメチルアミノスチレン、N,N-ジメチル-3,5-キシリジン、4-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチル-α-ナフチルアミン、N,N-ジメチル-β-ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルヘキシルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ジメチルステアリルアミン、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2’-(n-ブチルイミノ)ジエタノール等の第三級アミン類、また、5-ブチルバルビツール酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類および、そのナトリウム塩、カルシウム塩などの金属塩類、さらに、ジブチル-錫-ジアセテート、ジブチル-錫-ジマレエート、ジオクチル-錫-ジマレエート、ジオクチル-錫-ジラウレート、ジブチル-錫-ジラウレート、ジオクチル-錫-ジバーサテート、ジオクチル-錫-S,S’-ビス-イソオクチルメルカプトアセテート、テトラメチル-1,3-ジアセトキシジスタノキサン等の錫化合物類等も使用できる。これらの光重合促進剤のうち少なくとも1種を選んで用いることができ、さらに2種以上を混合して用いることもできる。上記開始剤および促進剤の添加量は適宜決定することができる。 【0033】 さらに、光重合促進能の向上のために、第三級アミンに加えて、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸、α-オキシイソ酪酸、2-ヒドロキシプロパン酸、3-ヒドロキシプロパン酸、3-ヒドロキシブタン酸、4-ヒドロキシブタン酸、ジメチロールプロピオン酸等のオキシカルボン酸類の添加が効果的である。 【0034】 熱重合開始剤として具体的に例示すると、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエード等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物類が好適に使用される。 【0035】 また、上記有機過酸化物とアミン化合物を組み合わせて用いることにより重合を常温で行うこともできる。このようなアミン化合物としては、アミン基がアリール基に結合した第二級または第三級アミンが、硬化促進の観点より好適に用いられる。例えば、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-β-ヒドロキシエチル-アニリン、N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)-アニリン、N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N-メチル-アニリン、N-メチル-p-トルイジンが好ましい。 【0036】 上記有機過酸化物とアミン化合物の組合せに、さらにスルフィン酸塩またはボライドを組み合わせることも好適である。かかるスルフィン酸塩類としては、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p-トルエンスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。ボライドとしてはトリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p-フロロフェニル)ホウ素(アルキル基はn-ブチル基、n-オクチル基、n-ドデシル基等)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などが挙げられる。また、酸素や水との反応によりラジカルを発生するトリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物等の有機ホウ素化合物類は有機金属型の重合開始剤としても使用することができる。 【0037】 本発明の人工爪組成物には、必要に応じて、公知の各種添加剤を配合することができる。かかる添加剤の例としては、重合禁止剤、着色剤、変色防止剤、蛍光剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、揮発性有機溶媒等が挙げられる。 【実施例】 【0038】 次に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。 【0039】 実施例に示した略称(化学名) (a)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物 9PG:ノナプロピレングリコールジメタクリレート Bis-EMA:エトキシ化プロピレングリコールジメタクリレート(平均エチレンオキサイド付加モル数=17) (b)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物 2-MEP:2-メタクリロキシエチルフォスフェート Di-MEP:ビス(2-メタクリロキシエチル)-フォスフェート 6-MHPA:6-メタクリロキシヘキシルホスホノアセテート (c)ラジカル重合開始材 2HMPP:2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン その他添加物 R972:超微粒子シリカ(粘度調整材) 【0040】 実験に使用した装置 インストロン万能試験機[インストロン社製] 【0041】 人工爪組成物の調製 表1の調製割合に従い、人工爪組成物の各成分を計量し、大気圧下23℃にて15時間混合して、実施例1?12、および比較例1?4の均一液状の人工爪組成物を得た。 【0042】 【表1】 【0043】 人工爪組成物のケラチン基質に対する接着試験 天然爪に代えてケラチン基質を使用した。ケラチン基質は、エポキシ樹脂包埋して使用した。包埋ケラチン基質は、注水下#1200番のSiC研磨紙を使用して研磨し、平滑面を得た後、超音波洗浄およびエアー乾燥を行い被着体とした。 【0044】 研磨した接着面に直径4mmの穴を開けた両面テープを貼り付けて接着面を規定した。その後、直径4mm、高さ2mmのプラスティックモールドを接着規定面枠に固定し、モールド内に調製した人工爪組成物を填入した。次いで、カバーガラスで空気を遮断し、市販ジェルネイル用UVライト(36W)で180秒間紫外線照射を行い、人工爪組成物を硬化させた。 【0045】 各人工爪組成物に対する接着実験の繰り返し数は6回とした。接着試験は、23℃大気圧下保管から24時間後に実施した。 【0046】 接着強さの測定には、万能試験機(インストロン5550型)を使用し、クロスヘッドスピード1mm/minの条件でせん断接着強さを測定した。測定結果を表1に併せて示す。 【0047】 表1から分かるように、本発明の人工爪組成物は比較例の人工爪組成物を比較して、ケラチン基質に対するせん断接着強度に優れている。 【0048】 人工爪組成物の接着耐久性評価のためのモニター調査 本発明の人工爪組成物の接着耐久性を評価するために、実施例1、実施例4、実施例8、実施例10、実施例11および比較例1、さらに、市販製品の「AKZENTZ」(滝川株式会社製)、「NOBILITY」(有限会社LUNERS製)の人工爪組成物を、それぞれ3名の被験者に施術し、施術後の人工爪の維持耐久性を評価した。なお、施術者として、日本ネイリスト協会認定者が行い、施術方法として、ナチュラルネイルオーバーレイ(天然爪のクリアコート)を選択した。施術後、人工爪としての美観、機能を著しく低下させる現象を確認するまでの経過日数、および該現象の詳細を表2に記載する。また、調査期間は、施術後14日間とした。 【0049】 【表2】 【0050】 表2から分かるように、本発明の人工爪組成物は接着耐久性に優れている。 【産業上の利用可能性】 【0051】 本発明により、天然爪の強度付与や、変形変色した爪の再生、保護の目的で使用できる、接着性の改善された人工爪組成物が提供される。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (a)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(但し、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物を除く)、 (b)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物、および (c)ラジカル重合開始材を含む人工爪組成物であって、 該酸性リン化合物(b)は、2-メタクリロキシエチルフォスフェート(2-MEP)、ビス(2-メタクリロキシエチル)-フォスフェート(Di-MEP)および6-メタクリロキシヘキシルホスホノアセテート(6-MHPA)より選択される少なくとも1種であり、 該ラジカル重合開始材(c)は、光重合開始材である該人工爪組成物。 【請求項2】 (a)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物、0.1?98.5重量部、 (b)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物、0.1?98.5重量部、および (c)ラジカル重合開始材、0.01?10重量部を含む請求項1記載の人工爪組成物。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2020-06-24 |
結審通知日 | 2020-06-29 |
審決日 | 2020-07-10 |
出願番号 | 特願2008-221249(P2008-221249) |
審決分類 |
P
1
41・
851-
Y
(A61K)
P 1 41・ 852- Y (A61K) P 1 41・ 853- Y (A61K) |
最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
岡崎 美穂 |
特許庁審判官 |
山内 達人 冨永 みどり |
登録日 | 2013-09-13 |
登録番号 | 特許第5362294号(P5362294) |
発明の名称 | 接着性の改善された人工爪組成物 |
代理人 | 田中 順也 |
代理人 | 水谷 馨也 |
代理人 | 柴田 和彦 |
代理人 | 田中 順也 |
代理人 | 迫田 恭子 |
代理人 | 山田 威一郎 |
代理人 | 山田 威一郎 |
代理人 | 水谷 馨也 |
代理人 | 迫田 恭子 |
代理人 | 柴田 和彦 |