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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G06Q
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06Q
審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  G06Q
管理番号 1365213
審判番号 無効2017-800060  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-04-28 
確定日 2020-07-22 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5826909号「金融商品取引管理装置、金融商品取引管理システムおよびプログラム」の特許無効審判事件についてされた平成31年 1月 7日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成31年(行ケ)第10021号、令和 2年 1月29日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第5826909号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?5,7〕,〔6〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

本件の特許第5826909号についての手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成26年11月13日 本件特許出願(特願2014-230868号)
(平成25年 3月 7日 原出願(特願2013-45238号)
なお,当該原出願も特願2008-332599号(平成20年12月26日)の分割出願である。)
平成27年10月23日 設定登録
平成29年 4月28日 本件無効審判請求
平成29年 7月28日 審判事件答弁書提出
平成29年 8月 9日 上申書(被請求人)
平成29年10月 2日 審理事項通知書
平成29年11月 7日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成29年11月 9日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成29年11月21日 口頭審理
平成30年 2月26日 審決の予告
平成30年 5月 7日 訂正請求書
(なお,請求人にこの訂正請求に対する意見を求めたが,弁駁書の提出はされなかった。)
平成30年10月22日 訂正拒絶理由通知書
平成30年10月22日 職権審理結果通知書
(なお,請求人にこの訂正拒絶理由に対する意見を求めたが,意見書の提出はされなかった。)
平成30年11月26日 意見書
平成30年11月26日 補正書(補正対象書類名:全文訂正明細書)
平成31年 1月 7日 審決
平成31年 2月18日 知財高裁出訴
令和 2年 1月29日 平成31年(行ケ)第10021号判決言渡(審決取消)


第2 請求人の主張の概要

請求人は,特許第5826909号の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項7に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求めている。
その無効理由の概要と証拠方法は,次のとおりである。

1 無効理由1について
(1)特許第5826909号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」といい,その他の請求項に係る発明も同様に称し,本件発明1ないし本件発明7を総称して「本件発明」という。)ないし本件発明7は,平成14年12月19日に公開された甲第1号証(米国特許公開第2002/0194106号公報)に記載された発明(以下「甲1発明」という。)及び平成14年6月28日に公開された甲第2号証(特開2002-183446号公報)に記載された発明(以下「甲2発明」という。)に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,本件発明及び本件発明に係る特許は,第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきものである。

(2)特に本件発明1についての主張
ア 「(3)本件発明
本件発明1ないし本件発明7は,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲に記載されたとおりである。
ア 本件発明1
本件発明1を分説すると,以下のとおりである。
1A 金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって,
1B 前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,
1C 該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,
1D 該注文情報生成手段は,
1E 一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,
1F 売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文を有効とし,
1G 前記成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記指値注文を有効とし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる
1H ことを特徴とする金融商品取引管理装置。」
(審判請求書第6頁第26行?第7頁第25行)

イ 「(5)無効理由1(甲1発明及び甲2発明に基づく進歩性欠如)
ア 本件発明1及び本件発明6と甲1発明との対比
・・・(途中省略)・・・
(エ)構成1E及び構成6Eに関する対比
・・・(途中省略)・・・
d 前記aないし前記cをまとめると,甲1号証の1には,LOCK注文に基づき,パート1で成行注文又は指値注文によって株式を売り又は買い,当該株式をパート2で指値注文によって買い又は売るというLOCK処理を複数回繰り返す構成が開示されている。そして,前記(ア)で述べたとおり,LOCK注文は,「売買注文申込情報」に相当する情報を含み,株式は「金融商品」に相当し,パート1の注文に係る注文情報は「第一注文情報」に相当し,パート2の注文に係る注文情報は「第二注文情報」に相当するから,甲1発明は,「一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,」を備える。
もっとも,甲1発明は,「前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報」を備えない点で本件発明1及び本件発明6と相違(以下「相違点1」という。)する。」
(審判請求書第30頁第1行?第37頁第23行)

ウ 「(カ)構成1G及び構成6Gに関する対比
・・・(途中省略)・・・
b また,甲第1号証の1の[0085]の「1株あたり50ドルでXYZを100株(1ドルのロック価格で)買い,1株あたり51ドルで売り,50ドルで買い戻し,51ドルで再び売ることを意味するであろう。」という記載の例は,パート1で成行注文が採用された場合,成行注文の約定価格が1株あたり50ドルであることを意味する。
そして,甲第1号証の1の[0085]の「・・・50ドルで買い戻し・・・」という記載は,先行する成行注文の約定価格(1株あたり50ドル)と同じ指値価格で買い戻すという意味に他ならない。このことは,パート2における指値注文の指値価格は,パート1の約定価格に基づいて決定されることから明らかなとおり,LOCK注文においては,(1回目の)パート1の約定価格がその後の注文の基礎となることからみて,明らかである。
仮に,当該例において,2サイクル目のパート1の買い注文で1サイクル目のパート1の買い注文と同じ成行注文を繰り返すのであれば,2サイクル目のパート1の成行注文の約定価格は,1サイクル目のパート2の指値注文の約定価格(1ドルあたり51ドル)と同じになってしまう。すなわち,2サイクル目のパート1の成行注文は,1サイクル目のパート2の指値注文で売った価格ですぐに買い戻すことになり,投資として意味がない行為であることから明らかである。また,そもそも「『50ドル』で買い戻し」という値段を指定した注文をしていることからみて,当該注文は,指値注文であることが明らかである。
c 以上から,甲第1号証の1には,LOCK注文において,最初のLOCK注文に関し,パート1の成行注文に続くパート2の指値注文が約定すると,次のLOCK注文のパート1及びパート2の注文に関する注文情報が生成され,パート1に関し,成行注文の約定価格と同じ指値価格の次の指値注文を有効にし,当該次の指値注文が約定すると,パート2に関し,成行注文に続く指値注文の指値価格と同じ指値価格の指値注文を有効にして,当該指値注文が約定するという注文を繰り返す点が開示されている。
ここで,前記(エ)で述べたとおり,パート1の注文に係る注文情報は「第一注文情報」に相当し,パート2の注文に係る注文情報は「第二注文情報」に相当するから,甲第1号証の1には,「前記成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記指値注文を有効とし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」が開示されている。
したがって,甲1発明は,構成1G及び構成6Gを備える。
(キ)構成1H及び構成6Hに関する対比
・・・(途中省略)・・・
前記(ア)で述べたとおり,甲1発明は,構成1H及び構成6Hを備える。」
(審判請求書第38頁第22行?第43頁第7行)

エ 「(ク)相違点の検討(相違点1)
a はじめに
相違点1に係る本件発明1及び本件発明6の構成は,当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎないので,当業者が容易に想到し得たものである。また,仮にそうでないとしても,相違点1に係る本件発明1及び本件発明6の構成は,甲1発明及び甲2発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。
b 相違点1に係る発明は,設計的事項であること
先行する売り又は買った金融商品を指値注文によって買い又は売ることに加え,損切り目的のために逆指値注文によって買い又は売ることは,金融商品の分野において,例示するまでもなく周知・慣用の技術に過ぎない。また,甲1発明では,次の注文情報群の第一注文情報に基づく指値注文の価格を先行する成行注文の約定価格と一致させることに本質がある。そうすると,甲1発明において,当該指値注文によって売り又は買った金融商品をどのように買い又は売るのかは,本質的な事項ではない。
以上から,甲1発明において,注文情報群に「前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報」を含めるか否かは,損切に係る注文を含めるのか否かを考慮して,当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎない。したがって,相違点1に係る本件発明1及び本件発明6の構成は,甲1発明及び前記周知・慣用の技術に基づいて,当業者が適宜なし得るものに過ぎないので,当業者が容易に想到し得たものである。また,本件発明1及び本件発明6が奏する効果は,甲1発明及び前記周知・慣用の技術から当業者が予測可能なものであって,格別なものではない。
c 仮に,相違点1に係る構成が設計的事項ではないとしても,相違点1に係る構成は,甲1発明及び甲2発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであること
・・・(途中省略)・・・
以上より,甲第2号証には,受託者側のシステムにおいて,委託者が入力した注文に必要な情報に基づいて,金融商品の売り注文又は買い注文の一方を成行又は指値で行う新規注文のための情報と,この金融商品の売り注文又は買い注文の他方を指値で行う仕切注文に係る情報と,この金融商品の売り注文又は買い注文の他方を逆指値で行う仕切注文に係る情報を含む情報群を生成する構成が開示されている。したがって,甲2発明には,「一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,」が開示されている。
甲1発明は,株等の証券について,売り注文又は買い注文をするパート1注文及びこれと反対の買い注文又は売り注文をするパート2注文の2つのパートからなるイフダン注文を自動で繰り返し行うシステム発明であるところ,甲2発明は,甲1発明と同じくイフダン注文を自動で行うシステム発明である。したがって,甲1発明及び甲2発明は,共に,金融商品取引に関するシステム発明の中でも,限定的な特定の分野に属する発明であり,共通の技術分野に属している。とりわけ,甲1発明は,イフダン注文を自動で繰り返す点に技術的意義があり,イフダン注文の注文情報を細かく規定する甲2発明と極めて強い接着性があるといえる。また,甲1発明及び甲2発明の課題は,イフダン取引を自動で行うことで,いかに顧客が自動で利益を上げられるかという点にあり,共通の課題を有する発明であるので,甲1発明及び甲2発明を組み合わせることに何らの格別の工夫も必要でないため,甲1発明及び甲2発明を組み合わせる動機付けがあるといえる。
したがって,相違点1に係る本件発明1及び本件発明6の構成は,甲1発明及び甲2発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。また,本件発明1及び本件発明6が奏する効果は,甲1発明及び甲2発明から当業者が予測可能なものであって,格別なものではない。」
(審判請求書第43頁第8行?第47頁第23行)

2 無効理由2について
(1)本件特許に係る特許出願は,そもそも分割要件違反(第44条第2項)であるので,出願日が原出願の出願日に遡及しないため,本件発明は,平成25年7月11日に公開された甲第3号証(特開2013-137802号公報)に記載された発明(以下「甲3発明」という。)と同一であるので,特許法第29条第1項第3号の規定により,特許を受けることができないものである。
したがって,本件発明及び本件発明に係る特許は,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきものである。

(2)「(6)無効理由2(分割要件違反及び甲3発明に基づく新規性欠如及び進歩性欠如)
ア 本件特許に係る特許出願は,分割要件違反(第44条第2項)であるので,出願日が原出願の出願日に遡及しないこと
分割出願の出願日が原出願の出願日へ遡及するためには,※1分割出願の明細書等に記載された事項が原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること及び※2分割出願の明細書等に記載された事項が原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であることが必要である。
ここで,構成1E(審決注:1Gの誤記。以下同様。)は,「前記成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記指値注文を有効とし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」と規定される。これに対し,本件特許に係る特許出願の原出願である甲3発明に係る特許出願(特願2013-45238号。以下「本件原出願」という。)の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件原発明」という。)において,構成1Eに対応する構成は,「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定とを繰り返し行わせる」である(甲第3号証)。特に,構成1Eの「前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記指値注文を有効とし,」に対応する本件原出願の構成は,「次の注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」である。
すなわち,構成1Eは,本件原出願の「次の注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」という構成の傍点の箇所(審決注:該構成中「成行注文の価格と同じ前記価格の」の箇所。)を削除したものである。そうすると,構成1Eの「前記指値注文」は,その価格についての限定が何らない結果,任意の指値価格をその指値価格とする指値注文でありさえすればよいということになる。これは,本件原出願の「次の注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」という構成を上位概念化したものであるということになる。
本件原出願に係る公開特許公報である甲第3号証の【0005】ないし【0008】の記載からみて,本件原発明は,従来技術の課題として,取引開始直後の注文が成行注文のイフダンオーダーをすることができなかったこと及びイフダンオーダーを繰り返し行えなかったことを技術課題として設定している。この課題を解決する手段として,甲第3号証には,取引開始直後に約定する成行注文の約定価格を基準として,注文情報群を生成し,これに基づいて,決済注文である指値注文及び逆指値注文を行い,当該指値注文が約定すると,新たな注文情報群を生成させ,これに基づいて,先行する成行注文の約定価格と同一の価格の指値注文を行い,当該指値注文が約定すると,当該新たな注文情報群に基づいて,当該指値注文の決済注文であって,先行する決済注文である指値注文及び逆指値注文と同一の価格の指値注文及び逆指値注文を行うことが開示されている。
すなわち,甲第3号証の【0044】では,「・・・成行リピートイフダンでは,一回目のイフダンでは,第一注文で買い注文または売り注文の一方を成行で行ったのち,第二注文で買い注文または売り注文の他方を指値で行う。・・・この第二注文の約定の後,指値の第一注文(このときの指値価格は一回目の成行注文での約定価格とする)と指値の第二注文とからなるイフダンが,複数回繰り返される。」と記載され,【0062】では,「ここで,本実施形態の第一注文は,一回目は成行注文で行われるが,二回目以降は指値注文で行われる。このため,約定情報生成部14は,当該成行注文の約定価格を,二回目以降の第一注文の指値価格に設定する。」と記載されているところ,【図7】において,2回目以降の指値の第一注文の価格を1回目の成行注文の約定価格とする旨の記載がある。そして,甲第3号証の【0044】,【0062】及び【図7】の記載は,出願当初の明細書等から補正がされていないので,本件原出願の出願当初明細書等の記載と一致する。
そこで,構成1Eの「前記指値注文」の構成と甲第3号証の記載とを比較すると,甲第3号証には,2回目以降の指値の第一注文の価格を1回目の成行注文の約定価格とすることしか開示されておらず,2回目以降の指値の第一注文の価格を任意の価格にできるといった記載はない。また,2回目以降の指値の第一注文の価格をどのような価格にするのか,すなわち,1回目の成行注文の約定価格以外のどのような価格に設定するのかといった方法等は,一切開示されていない。そうすると,本件原出願の出願当初及び分割直前の明細書等には,その技術課題及び課題を解決するための手段からみて,2回目以降の指値の第一注文の価格を任意の価格に設定できることが形式的にも実質的にも記載されていない。
したがって,構成1Eは,分割出願の出願日が原出願の出願日へ遡及するための要件である,前記※1及び前記※2の要件のいずれも充足しないから,本件発明1に係る特許出願には,第44条第2項の適用がない結果,分割要件違反となる。また,本件発明2ないし本件発明7は,いずれも本件発明1を引用するものであるから,同様に,本件発明2ないし本件発明7に係る特許出願には,第44条第2項の適用がない結果,分割要件違反となる。
以上から,本件発明に係る特許出願の出願日は,原出願の出願日まで遡及せず,現実の出願日である平成26年11月13日となる。

イ 本件発明は,甲3発明と同一であるから,新規性及び進歩性がないこと
甲3発明は,【請求項1】ないし【請求項7】に記載されたとおりのものであるところ,本件発明と甲3発明とを対比すると,本件発明は,甲3発明を上位概念化したものであり,逆にいえば,甲3発明は,本件発明を下位概念化したものである。したがって,本件発明の新規性が甲3発明によって否定されることは,明らかであるし,仮に,本件発明及び甲3発明との間に相違点が存在したとしても,当該相違点に係る構成は,甲3発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たことが明らかである。

ウ 小括
以上から,本件発明は,第29条第1項第3号及び第29条第2項により特許を受けることができないものであるから,第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。
以上のことは,本件発明1についての無効理由が争点となった裁判において,その判決で認められたところでもある(甲第4号証)。」(なお,※1及び※2は,丸付き数字を示す。)
(審判請求書第59頁第11行?第62頁第20行)

(3)「(3)通知書「3.争点について」・「(2)無効理由2及び無効理由3について」・「a.請求人に対して」・「(a-1)」に対して
本件特許に係る明細書等の【0005】及び【0007】には,「【発明が解決しようとする課題】」として,「これに対して,特許文献1のシステムには,イフダンオーダーの指値注文に対応できないという問題がある。また,特許文献1のシステムには,利用客が複数のイフダンオーダーを並行して行いたい場合には,それぞれのイフダンオーダーを個別に注文していかなければならず,顧客の注文手続が煩雑になるという問題がある。」及び「さらに,特許文献1のシステムには,成行注文でイフダンオーダーを行いたい場合に対応できないという問題もある。」と記載されている。すなわち,本件発明の課題は,本件特許に係る明細書等の【0005】が専ら指値注文を問題にしていることからみて,成行注文に関していえば,従来存在しなかった「成行注文でイフダンオーダーを行」うことに尽きることが明らかである。
ここで,本件特許に係る明細書等の【0042】では,「ここで,成行リピートイフダンとは,リピートイフダンを成行注文に適用した注文方法である。即ち,通常のリピートイフダンでは,イフダンオーダー(第一注文として指値買い注文または指値売り注文の一方を行ったのち,第二注文として指値買い注文または指値売り注文の他方を行う取引方法)を,自動的に複数回繰り返す。」と記載されていることからみても,本件特許に係る明細書等の【0005】が専ら指値注文を問題にしていることは,明らかである。しかし,本件特許に係る明細書等の【0042】では,「これに対して,成行リピートイフダンでは,一回目のイフダンでは,第一注文で買い注文または売り注文の一方を成行で行ったのち,第二注文で買い注文または売り注文の他方を指値で行う。・・・この第二注文の約定の後,指値の第一注文(このときの指値価格は一回目の成行注文での約定価格とする)と指値の第二注文とからなるイフダンが,複数回繰り返される。」と記載されている。これは,前述した「成行注文でイフダンオーダーを行」うことに加え,成行注文が介在する余地がなかった「リピートイフダン」に対し,成行注文を介在させることによって,新たな「成行リピートイフダン」という注文方法を一義的に定義したものに他ならない。
これについて,仮に,新たな「成行リピートイフダン」という注文方法を一義的に定義したものではないとしても,「リピートイフダン」とは,指値注文のみからなることからみて,「イフダン」を「リピート」,すなわち,1回目の指値注文の「イフダン」を指値注文で繰り返す結果,1回目の特定の価格での売買が繰り返されるものである。したがって,これらの記載に接した当業者が「リピートイフダン」を成行注文に応用するとしたら,※11回目の成行注文及び指値注文を2回目以降も繰り返し,2回目以降も成行注文及び指値注文を繰り返すか,※21回目の特定の価格での売買が繰り返すという「リピートイフダン」の作用効果を1回目の注文に成行注文が介在した場合にも応用し,2回目以降の注文は,1回目の成行注文の約定価格を指値価格とする指値注文及び1回目の指値注文の組み合わせを繰り返すよりほかない。そして,本件特許に係る明細書等の【0042】は,後者を選択したものであって,前述したとおり,「成行注文でイフダンオーダーを行」うことが全く存在しなかったのであるから,これらの記載に接した当業者といえども,前記※2以外のものを導き出すことができなかったので,本件特許に係る明細書等には,前記※2以外のものが記載されているに等しいとはいえない。仮に,これらの記載に接した当業者が前記※2以外のものを導き出すことができたとしても,それは,前記※1に他ならず,これは,そもそも本件特許発明ではない。」(なお,※1及び※2は,丸付き数字を示す。)
(口頭審理陳述要領書第4頁第14行?第6頁第7行)

3 無効理由3について
(1)本件発明は,サポート要件を充たさないから,特許法第36条第6項第1号の規定により,特許を受けることができないものである。
したがって,本件発明及び本件発明に係る特許は,第123条第1項第4号に該当し,無効とされるべきものである。

(2)「(7) 無効理由3(サポート要件違反)
前記(6)・アで述べたとおり,構成1Eの「前記指値注文」は,その価格についての限定が何らない結果,任意の指値価格をその指値価格とする指値注文でありさえすればよいという構成である。そして,前述した本件原出願の出願当初明細書等の記載と一致するところの甲第3号証の【0044】,【0062】及び【図7】の記載は,本件特許に係る明細書等の【0044】,【0062】及び【図7】の記載と一致するところ,これらの記載からみて,2回目以降の指値の第一注文の価格を任意の価格に設定できることが形式的にも実質的にも記載されていない。
したがって,当業者において,本件発明の解決手段その他当業者が当該発明を理解するために必要な技術的事項が本件特許に係る明細書等の発明の詳細な説明に記載されていなので,本件発明は,サポート要件(第36条第6項第1号)を充たさないので,本件発明に係る特許は,第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきものである。
以上のことは,本件発明1についての無効理由が争点となった裁判において,その判決で認められたところでもある(甲第4号証)」
(審判請求書第62頁第21行?第63頁第10行)

4 証拠方法
請求人は,審判請求書に添付して甲第1号証の1,甲第1号証の2,甲第2ないし4号証を提出した。
甲第1号証の1: 米国特許公開第2002/0194106号公報
甲第1号証の2: 米国特許公開第2002/0194106号公報の訳文
甲第2号証 : 特開2002-183446号公報
甲第3号証 : 特開2013-137802号公報
甲第4号証 : 平成27年(ワ)第4461号判決


第3 被請求人の主張の概要

被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求めている。
被請求人の主張の概要は,次のとおりである。

1 無効理由1について
「第2 本件特許発明1(請求項1)に対する無効理由について
1 請求人の主張する相違点
(1)請求人は,本件特許発明1と甲1発明との相違点を「相違点1 本件発明1・・・『注文情報群』は,『前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報』を備えるのに対し,甲1発明の『注文情報群』は,『前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報』を備えない点」と主張する。
(2)しかしながら,後に詳述するとおり,甲1発明には,指値注文を繰り返すという構成しか開示されておらず,本件特許発明1の構成1E,1Fのように,1回目の新規注文を成行注文としつつ,2回目以降の新規注文を指値注文とする構成は開示されていない。したがって,本件特許発明1と甲1発明とは,請求人が指摘する相違点1のほか,構成要件1E,1Fの上記点において相違する。
2 甲1発明における注文の繰り返し
・・・(途中省略)・・・
(3)執行条件を変更することも開示されていない
ア 上記のとおり,甲1発明は注文情報19に基づく指値注文を繰り返す発明であり,最初のLOCK注文と2回目のLOCK注文とで新規注文(パート1)の執行条件を変更すること(変更できること)は,甲第1号証の2のどこにも記載も示唆もされていない。
イ むしろ甲第1号証の2の図6及び図7を見れば明らかなとおり,甲1発明では1回目のLOCK注文と2回目のLOCK注文とは,同じ情報19に基づき行われるのであり,1回目の新規注文と2回目以降の新規注文では,同じ執行条件を採用することが明記されているのである。
3 甲1発明と甲2発明との組合せ
(1)甲第2号証には,注文情報群の生成を繰り返すという構成すら開示されていないのであるから,当然,1回目と2回目とで注文の執行条件を変更するという構成もまた開示されていない。したがって,甲1発明と甲2発明とを組み合わせたところで,本件特許発明1のように,1回目の新規注文を成行で行い,2回目以降の新規注文を指値注文で行うという構成に至ることはない。
(2)また,甲1発明にも甲2発明にも,「逆指値注文を繰り返す」という構成は一切開示も示唆もされていないのであり,これらを組み合わせることにより,なぜ逆指値注文まで繰り返されることになるのか,全く明らかではない。
上述のとおり,逆指値注文は高く買った金融商品を安く売るという,当該取引からは損が発生してしまう取引である。
このような損を発生させる取引である逆指値注文を,注文を繰り返すことで利益を得ようとする甲1発明に採用することは,甲1発明の特徴を失わせるものであり,阻害要因があると言える。
(3)さらに,甲第1号証の2の図6を見ると明らかなように,甲1発明は新規注文の情報を基準として,決済注文が約定した場合の利益幅たるLOCK値を指定するものであり,決済注文に関して入力するのは,このLOCK値のみである。
このようなシステムの甲1発明では,2種類の決済注文を行なうことは全く予定されていないし(LOCK値のみでは2種類の決済注文を特定することもできない。),甲1発明には決済注文の執行条件を指定する構成も開示されていない(ましてや執行条件の異なる2種類の決済注文を行うことなど,全く予定されていない。)。
このような甲1発明に,執行条件の異なる2種類の決済注文を行う甲2発明とを組み合わせる動機付けは皆無である。」
(答弁書第5頁第21行?第10頁第25行)

2 無効理由2について
(1)「(2)分割前明細書には,発明が解決しようとする課題について,
い 「イフダンオーダーの指値注文に対応できないという問題」(【0005】)
ろ 「利用客が複数のイフダンオーダーを並行して行いたい場合には,それぞれのイフダンオーダーを個別に注文していかなければならず,顧客の注文手続が煩雑になるという問題」(【0005】)
は 「金融商品の相場が従来の相場よりも大きく変動してしまい当面回復の見込みがない場合には,当該金融商品を所持する取引者は,損害を最小限に留めるべく当該金融商品の売却を望む場合が多い」が,「利用客は,指値注文の買い注文によって取得した金融商品を将来の相場の状況に応じて自動的に売却することはできず,またイフダンオーダーを相場の状況に応じて自動的に中止させることができないという問題」(【0006】)
に 「成行注文でイフダンオーダーを行いたい場合に対応できないという問題」(【0007】)
があると指摘されている。
その上で,分割前明細書等に開示された発明は,
「本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり,金融商品の成行注文において,システム利用客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを行うことができ,また将来の相場の状況に応じてイフダンオーダーを自動的に中止させることができて,システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる金融商品取引管理装置を提供することを課題としている。」(【0008】)
とされている。
ここで,分割後の本件発明はまさに,上記ア,ウの構成により,1回目は成行で(課題「に」),2回目以降は指値注文で(課題「い」)イフダンオーダーを行うことができ,上記イの構成により,システム利用客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを行うことができ(課題「ろ」),さらに構成エにより,金融商品の相場が従来の相場よりも大きく変動してしまい当面回復の見込みがない場合に,当該金融商品を自動的に売却してしまうことができる(課題「は」)のであるから,まさに分割時明細書等に開示されている発明そのものであり,本件発明を前提として分割前明細書等を見た場合に,当業者であれば本件発明が開示されていることは極めて容易に理解できるのである。
(3)これに対して請求人は,分割時明細書等の【0044】,【0062】及び【図7】を根拠として,分割時明細書等に開示されているのは,2回目以降の指値の第一注文の価格を1回目の成行注文の約定価格とする態様(すなわち,分割前の原発明の構成)に限定されると主張する。
しかし,請求人が根拠として挙げる【0044】の記載は,【0039】に
「次に,本実施形態の金融商品取引管理システム1Aを用いて成行リピートイフダンオーダーを行うときの取引手順について説明する。」
とされているとおり,一実施形態(しかも分割前の原発明を説明することを主目的とした実施形態)を説明した記載の一部に過ぎないのであって,本件発明の指値の第一注文の価格を定義する記載とはなっていない4。(審決注:脚注4「【0078】には「上記実施形態は本発明の例示であり,本発明が上記実施の形態に限定されることを意味するものではないことは,いうまでもない。」と明記されている。)
また,【0044】の記載自体が,
「第二注文の指値価格は,価格自体を予め指定しても良いが,成行価格との比率または金額差が予め設定された値となるように自動的に決定することもできる。この第二注文の約定の後,指値の第一注文(このときの指値価格は一回目の成行注文での約定価格とする)と指値の第二注文とからなるイフダンが,複数回繰り返される。」
というものであって,指値の第一注文の価格を一回目の成行注文と同じ価格にすることを括弧書きで記載しているにすぎない。通常の日本語の用法として,括弧書きで説明されている内容は必須の事項を説明したものではなく,付加的な説明であることからすれば,当該記載は,その記載自体から,指値の第一注文の価格を成行注文での約定価格とする構成がそこで説明されている実施形態における付加的な説明に過ぎないことが明らかである。
この記載を,そのような付加的な説明である括弧書きを除いて理解すれば,「この第二注文の約定の後,指値の第一注文・・・と指値の第二注文とからなるイフダンが,複数回繰り返される。」というものであって,まさに,分割時明細書では,指値の第一注文の価格を特に指定しない態様が明記されていることになる。
また,請求人が指摘する【0062】の記載について見ても,ここでは
「第一注文51aに基づく成行注文が約定すると,約定情報生成部14はデータベース18中の対応するデータを書き換える。具体的には,注文テーブル181の当該成行注文に関する注文情報である,第一注文51aのデータが削除され,顧客口座情報テーブル182の“amnt”フィールド182aのデータが約定した価格分だけ増減される。ここで,本実施形態の第一注文は,一回目は成行注文で行われるが,二回目以降は指値注文で行われる。このため,約定情報生成部14は,当該成行注文の約定価格を,二回目以降の第一注文の指値価格に設定する。」
と記載されているのであり,これも【0059】における本実施形態の内容を説明したに過ぎない。かかる記載は,この実施形態ではそのように2回目以降の第一注文の指値価格に設定していることを意味しているに過ぎず,本件発明として,必ずこのような構成にしなければならないと限定しているものではない。この点は,請求人が指摘する【図7】も同様である。
(4)このように,請求人(また甲第4号証の判決)は,原発明の内容に引きずられることで,分割時明細書等に,あたかも実施形態に限定された発明しか開示されていないかのように,理解を誤っているのであり,そのような偏見なく,本件発明と分割時明細書等を比較してみれば,本件発明を前提とした時に,当業者であれば,分割時明細書に本件発明が開示されていると理解できることは,明らかである。」
(審判事件答弁書第14頁第8行?第17頁第9行)

(2)「(5)また請求人は,分割時明細書等には,
「2回目以降の指値の第一注文の価格をどのような価格にするのか,すなわち,1回目の成行注文の約定価格以外のどのような価格に設定するのかといった方法等は,一切開示されていない。」
と主張する。
しかし,分割時明細書を見れば,本件発明の第一注文,第二注文及び逆指値注文は,例えば第一注文が買い注文である場合であれば,
○第一注文で購入した金融商品を第二注文で売ることでその差額分の利益を得るのであるから,第二注文の方が第一注文よりも高値であり
○金融商品の相場が従来の相場よりも大きく変動してしまい当面回復の見込みがないような場合に逆指値注文で売ることで損害を最小限に留めるのであるから,逆指値注文が第一注文よりも安値である
すなわち,第一注文と第二注文と逆指値注文とが,
← 安値 高値 →
逆指値注文 < 第一注文 < 第二注文
という関係に立つこと(逆に言えば,そのような関係に立てば,上述した課題を解決できること)は当然に理解できるのである。
上記請求人が指摘する実施形態においては,本件原発明を説明することを主目的として,第一注文の価格について,1回目の成行注文の約定価格を2回目以降の指値注文の価格に用いるという態様を例示しているに過ぎないのであり,かかる記載により分割時明細書に開示された発明が限定的に解釈されるものではない。」
(審判事件答弁書第17頁第10行?第18頁第3行)

(3)被請求人は,平成29年8月9日付けの上申書に添付して,神戸大学准教授前田健の意見書を提出した。なお,被請求人は当該意見書を証拠としていないが,当審決においては乙第1号証として扱う。
当該意見書における主張の概要は次のとおりである。
「第3 本件事案のあるべき解決
1.本件発明3は,分割前の明細書等に記載された事項の範囲内か
(1)結論
以下に述べる通り,本件発明3は,分割前の明細書又は図面(本件明細書等2)の全ての記載を総合することにより導くことができる事項であり,したがって,本件明細書等2に記載された技術的事項に含まれる。すなわち,本件発明3の構成を所与としたとき,本件明細書等2には,その構成を再現する方法及びその構成が初期の課題を解決することを出願時の当業者が理解できるだけの記載がある。したがって,本件発明3に係る特許出願には分割要件違反はない。
(2)実施形態に記載された技術的思想
本件明細書等2には,従来技術(特許文献1)が抱えていた課題として,※1取引開始直後の注文が成行注文のイフダンオーダーを行えなかったこと(【0007】),※2複数のイフダンオーダーを繰り返し行いたい場合に顧客の注文手続が煩雑になること(【0005】),※3相場の状況に応じてイフダンオーダーを自動的に中止させることができなかったこと(【0006】)があったとの記載がある。
そして,「本発明」は,これら3つの課題を解決する金融商品取引管理装置を提供することを課題とする旨の記載がある(【0008】)。これに引き続いて,このような課題を達成するため,本件発明2の構成が記載されている。これらの記載からすると,少なくとも本件発明2は,これら3つの課題を解決すべき所期の課題とする発明であるといえる。
本件発明2に係る構成を再現する方法,及び,それが所期の課題を解決しうることは,本件明細書等2の【0023】以下の実施形態の記載において,説明されている。
すなわち,実施形態には,1回目のイフダンでは第1注文を成行で行い第2注文を指値で行う「成行リピートイフダン」の手法が記載されている。この手法を採用することで,取引開始直後の注文が成行注文である場合に対応でき,かつ,簡単にイフダンオーダーに対応できるようになることで,※1と※2の課題を解決している。このとき,実施形態においては「成行リピートイフダン」の具体的な実行方法として,2回目以降のイフダンの第1注文の指値価格が,1回目の成行注文の約定価格と同一となる構成が記載されている(【0044】【0062】)。この具体例においては,2回目以降のイフダンの第1注文の価格を「1回目の成行注文の約定価格」と同一の価格に固定することで(第2注文の価格も同様に適宜の価格に設定することで),イフダンオーダーを簡単に繰り返すことができ,※2の課題を解決するのである。
さらに,※3の課題を解決するために,「損切り」が可能となるよう同時に逆指値注文も2回目以降のイフダンの注文群に組み込んでいる。
(3)本件発明3は所期の課題を解決すると理解できる
(i)実施形態の記載が下位概念の発明に焦点を当てている点について
本件発明3の構成は,本件発明2の構成(あるいは,実施形態に明示的に記載されている構成)と,1つの点を除き基本的に同一である。そして,その違いは,本件発明2や実施形態では,第1注文の価格が成行注文の価格と同一でなければならないとされていたのに対し(構成要件2F),本件発明3では,そのような限定がない(上位概念化されている。構成要件3F-2)点である。
実施形態では,※2の課題を解決するため,第1注文価格=最初の成行注文の約定価格とし,それを中心に第2注文と逆指値注文の価格を決定して,2回目以降のすべてのイフダンで,同一の価格でそれを繰り返すことを想定していた。
しかし,実施形態に接した当業者であれば,※2の課題を解決するには,第1注文の指値価格と第2注文の指値価格と逆指値注文の逆指値文の順序であって,かつ,適宜の手法によりイフダンごとに価格の決定がなされれば十分であることを容易に理解することができる。すなわち,従来技術では複数のイフダンオーダーを繰り返し行いたいときに顧客が毎回個別に注文を出す必要があった。しかし,本件発明2では,2回目以降のイフダンオーダーを自動で複数回注文群を生成していく構成が採用されており,それが解決手段の核である。各注文の価格が具体的にどのような値に設定されるかというのは,課題の解決とは無関係であって解決手段の本質的な部分ではないことは容易に理解できる。重要なのは,注文群の価格が相互にどのような順序にあるのかということと,それが毎回のイフダンオーダーごとに自動的に決定される仕組みがあるということである。
実施形態で第1注文価格=最初の成行注文の約定価格としたのは,あくまで具体例としてそのようにしたにすぎない。このようにすることで,2回目以降のイフダンオーダーの第1注文の価格を決定するルールが単純明快であり,かつ,繰り返しの注文が約定しやすい価格に第1注文価格が設定されるという効果が発揮されるかもしれない(なお,この効果は第1注文価格=取引開始時の相場価格でも達成される)。しかし,別の任意の価格に設定したとしても,前記※1?※3の課題が同じように解決できることは,当業者であれば容易に理解できるのである。
実施形態又は本件発明2において特定された構成をとることで,発明が基本的に解決しようとする課題※1?※3にさらにプラスαで別の課題も解決するということはいえる。しかしながら,本件明細書等2には,このような付加的な効果も達成する下位概念の技術的思想も開示されているといえるが,同時に,その効果は達成しない上位概念の技術的思想も開示されているのである。
また,価格は任意で構わないのだから,本件発明2の構成が再現できるだけの記載はあることを前提にするなら,本件発明3の構成を再現できるだけの記載はあるといえる。そして,本件明細書等には,本件発明3の構成により,前記※1?※3の課題を解決できると当業者が理解できる記載は十分にある。」(なお,※1ないし※3は,丸付き数字を示す。)
(乙第1号証第17頁第1行?第19頁第4行)

(4)「(d-1)分割要件違反(無効理由2)について
本件特許に係る明細書の【発明を実施するための形態】の記載や図面の記載は,本件特許に係る特許出願(特願2014-230868)の出願時の【発明を実施するための形態】の記載や図面の記載と同一であり,また,本件特許に係る特許出願の【発明を実施するための形態】の記載や図面の記載は,原出願(特願2013-45238)の出願当初の【発明を実施するための形態】の記載や図面の記載と同一である。
したがって,…(途中省略)…訂正の根拠である明細書や図面の記載事項は,全て,原出願の出願当初の明細書や図面の記載の範囲内である。そして,訂正後発明1は,原出願の出願当初の明細書及び図面に記載された範囲内のものであることは明らかである。また,訂正後の請求項1を引用する衛生後の請求項2に係る発明,訂正後の請求項2を引用する請求項3乃至請求項5に係る発明,訂正後の請求項1乃至請求項5を引用する請求項5に係る発明も,原出願の出願当初明細書及び図面に記載された範囲内のものであることは明らかである。
ゆえに,訂正事項1-1に基づく,本件特許の訂正後の請求項1?請求項5に係る発明,及び訂正後の請求項7に係る発明は,原出願の明細書や平成30年2月26日付(発送日:平成30年3月8日)の「審決の予告」の「2」(1)で言及された,分割要件違反には該当せず,分割要件を満たしていることは明らかである。そして,本件特許の訂正後の請求項1?背一級甲5に係る発明,及び訂正後の請求項7に係る発明は,特許法第44条第2項の規定により,本件特許に係る特許出願(特願2014-230868)の原出願(特願2013-45238)の更に原出願(特願2008-332599)の出願日である平成20年12月26日を出願日とするものである。」
(訂正請求書第20頁第26行?第21頁第21行)

3 無効理由3について
(1)「サポート要件違反に関する請求人の主張は,結局のところ,分割要件違反に関する請求人の主張と同じであるから,上記「第5」で述べたところは,そのままサポート要件についても妥当する。
したがって,請求人の主張する無効理由3には理由がない。」
(審判事件答弁書第18頁第14頁?第18頁第17行)

(2)「(d-2)新規性(無効理由3)について
…(途中省略)…さらに,本件特許の訂正後の請求項1?請求項5に係る発明及び訂正後の請求項7に係る発明は,本件特許の明細書の【発明を実施するための形態】及び図面に記載されたものである。したがって,本件特許の訂正後の請求項1?請求項5に係る発明及び訂正後の請求項7に係る発明は,明細書及び図面に,発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載されているものであり,特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものである。」
(訂正請求書第21頁22行?第22頁第3行)

4 証拠方法
前記したように平成29年8月9日付けの上申書に添付された,神戸大学准教授前田健の意見書は乙第1号証として扱う。
乙第1号証: 神戸大学准教授前田健の意見書


第4 訂正請求について

1 訂正の内容
平成30年5月7日に提出された訂正請求書による訂正(以下,「本件訂正」という。)の内容は,特許第5826909号の明細書,特許請求の範囲を,本訂正請求書に添付した訂正明細書,特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを求めるものである。
訂正の内容は,次のとおりである。なお,下線は訂正箇所を示すものとして被請求人が付加したものである。
(1)訂正事項1
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に
「金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって,
前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,
該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,
該注文情報生成手段は,
一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,
売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文を有効とし,
前記成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記指値注文を有効とし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせることを特徴とする金融商品取引管理装置。」
と記載されているのを,
「金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって,
前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,
該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段と,
前記注文情報生成手段が生成した前記注文情報を記録する注文情報記録手段とを備え,
該注文情報生成手段は,
一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,
前記注文情報記録手段は,生成された前記注文情報群を記録し,
前記注文情報生成手段は,
売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし,
前記成行注文を決済する前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,次の前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく,前記成行注文の価格と同じ前記価格の前記指値注文を有効とし,
前記第一注文情報に基づく該指値注文が約定されたときに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文および前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文を有効にし,
以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせ,
前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,前記逆指値注文情報に基づく逆指値注文を停止し,
前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに,前記逆指値注文情報と同じ前記注文情報群に含まれる前記第二注文情報に基づく指値注文,及び,当該注文情報群の後に生成される予定の前記注文情報群の生成を停止することを特徴とする金融商品取引管理装置。」
に訂正する。

イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記注文情報生成手段が生成した前記注文情報を記録する注文情報記録手段と,
前記注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う約定情報生成手段とを備え,
前記約定情報生成手段は,前記注文情報記録手段に記録された個々の前記注文情報のうち,前記第一注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理と,前記第二注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理とを,予め定められた回数だけ繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の金融商品取引管理装置。」
と記載されているのを,
「前記注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う約定情報生成手段を備え,
前記約定情報生成手段は,前記注文情報記録手段に記録された個々の前記注文情報のうち,前記第一注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理と,前記第二注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理とを,予め定められた回数だけ繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の金融商品取引管理装置。」
に訂正する。

ウ 訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項6に
「金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理システムであって,
前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,
該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,
該注文情報生成手段は,
一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,
売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文を有効とし,
前記成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記指値注文を有効とし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせることを特徴とする金融商品取引管理システム。」
と記載されているのを,
「金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理システムであって,
前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,
該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段と,
前記注文情報生成手段が生成した前記注文情報を記録する注文情報記録手段とを備え,
該注文情報生成手段は,
一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,
前記注文情報記録手段は,生成された前記注文情報群を記録し,
前記注文情報生成手段は,
売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし,
前記成行注文を決済する前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,次の前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく,前記成行注文の価格と同じ前記価格の前記指値注文を有効とし,
前記第一注文情報に基づく該指値注文が約定されたときに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文および前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文を有効にし,
以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせ,
前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,前記逆指値注文情報に基づく逆指値注文を停止し,
前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに,前記逆指値注文情報と同じ前記注文情報群に含まれる前記第二注文情報に基づく指値注文,及び,当該注文情報群の後に生成される予定の前記注文情報群の生成を停止することを特徴とする金融商品取引管理システム。」
に訂正する。

(2)訂正事項2
ア 訂正事項2-1
明細書の段落【0009】に
「かかる課題を解決するため,請求項1に記載の発明は,金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって,前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,該注文情報生成手段は,一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文を有効とし,前記成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記指値注文を有効とし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は,請求項1に記載の構成に加え,前記注文情報生成手段が生成した前記注文情報を記録する注文情報記録手段と,前記注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う約定情報生成手段とを備え,前記約定情報生成手段は,前記注文情報記録手段に記録された個々の前記注文情報のうち,前記第一注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理と,前記第二注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理とを,予め定められた回数だけ繰り返すことを特徴とする。」
と記載されているのを,
「かかる課題を解決するため,請求項1に記載の発明は,金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって,前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段と,前記注文情報生成手段が生成した前記注文情報を記録する注文情報記録手段とを備え,該注文情報生成手段は,一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,前記注文情報記録手段は,生成された前記注文情報群を記録し,前記注文情報生成手段は,売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし,前記成行注文を決済する前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,次の前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく,前記成行注文の価格と同じ前記価格の前記指値注文を有効とし,前記第一注文情報に基づく該指値注文が約定されたときに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文および前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせ,前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,前記逆指値注文情報に基づく逆指値注文を停止し,前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに,前記逆指値注文情報と同じ前記注文情報群に含まれる前記第二注文情報に基づく指値注文,及び,当該注文情報群の後に生成される予定の前記注文情報群の生成を停止することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は,請求項1に記載の構成に加え,前記注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う約定情報生成手段を備え,前記約定情報生成手段は,前記注文情報記録手段に記録された個々の前記注文情報のうち,前記第一注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理と,前記第二注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理とを,予め定められた回数だけ繰り返すことを特徴とする。」
に訂正する。

イ 訂正事項2-2
明細書の段落【0013】に
「請求項6に記載の発明は,金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理システムであって,前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,該注文情報生成手段は,一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文を有効とし,前記成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記指値注文を有効とし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は,プログラムであって,コンピュータを請求項1乃至5の何れか一つに記載の金融商品取引管理装置として機能させることを特徴とする。」
と記載されているのを,
「請求項6に記載の発明は,金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理システムであって,前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段と,前記注文情報生成手段が生成した前記注文情報を記録する注文情報記録手段とを備え,該注文情報生成手段は,一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,前記注文情報記録手段は,生成された前記注文情報群を記録し,前記注文情報生成手段は,売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし,前記成行注文を決済する前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,次の前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく,前記成行注文の価格と同じ前記価格の前記指値注文を有効とし,前記第一注文情報に基づく該指値注文が約定されたときに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文および前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせ,前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,前記逆指値注文情報に基づく逆指値注文を停止し,前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに,前記逆指値注文情報と同じ前記注文情報群に含まれる前記第二注文情報に基づく指値注文,及び,当該注文情報群の後に生成される予定の前記注文情報群の生成を停止することを特徴とする。
請求項7に記載の発明は,プログラムであって,コンピュータを請求項1乃至5の何れか一つに記載の金融商品取引管理装置として機能させることを特徴とする。」
に訂正する。

(3)訂正事項3
ア 訂正事項3-1
明細書の段落【0014】に
「請求項1,請求項6に記載の発明によれば,金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,注文情報生成手段は,一の売買注文申込情報に基づいて,所定の金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,金融商品の売り注文または買い注文の他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文を有効とし,成行注文を決済する指値注文が約定されたとき,注文情報群の生成を行うと共に,生成された注文情報群の第一注文情報に基づく指値注文を有効とし,以後,第一注文情報に基づく指値注文の約定と,第一注文情報に基づく指値注文の約定が行われた後の第二注文情報に基づく指値注文の約定と,第二注文情報に基づく指値注文の約定が行われた後の,次の注文情報群の生成とを繰り返し行わせる。これにより,指値注文により金融商品の売買を行う顧客の利便性を向上させつつ,金融商品の指値注文において,システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを繰り返し行うことができて,システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる。」
と記載されているのを,
「請求項1,請求項6に記載の発明によれば,金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段と,注文情報生成手段が生成した注文情報を記録する注文情報記録手段とを備え,注文情報生成手段は,一の売買注文申込情報に基づいて,所定の金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,金融商品の売り注文または買い注文の他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文を有効とし,成行注文を決済する指値注文が約定されたとき,注文情報群の生成を行うと共に,生成された注文情報群の第一注文情報に基づく指値注文を有効とし,以後,第一注文情報に基づく指値注文の約定と,第一注文情報に基づく指値注文の約定が行われた後の第二注文情報に基づく指値注文の約定と,第二注文情報に基づく指値注文の約定が行われた後の,次の注文情報群の生成とを繰り返し行わせる。これにより,指値注文により金融商品の売買を行う顧客の利便性を向上させつつ,金融商品の指値注文において,システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを繰り返し行うことができて,システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる。」
に訂正する。

イ 訂正事項3-2
明細書の段落【0015】に
「請求項2に記載の発明によれば,注文情報生成手段が生成した注文情報を記録する注文情報記録手段と,注文情報に基づいて金融商品の約定を行う約定情報生成手段とを備え,第一注文情報,第二注文情報に基づいて金融商品の約定を行う約定情報生成手段を備え,約定情報生成手段は,注文情報記録手段に記録された個々の注文情報のうち第一注文情報に基づいて金融商品の約定を行う処理と第二注文情報に基づいて金融商品の約定を行う処理とを複数回繰り返し行う。これにより,金融商品の指値注文において,システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを行うことができ,また将来の相場の状況に応じてイフダンオーダーを自動的に中止させることができて,システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる。」
と記載されているのを,
「請求項2に記載の発明によれば,注文情報に基づいて金融商品の約定を行う約定情報生成手段とを備え,第一注文情報,第二注文情報に基づいて金融商品の約定を行う約定情報生成手段を備え,約定情報生成手段は,注文情報記録手段に記録された個々の注文情報のうち第一注文情報に基づいて金融商品の約定を行う処理と第二注文情報に基づいて金融商品の約定を行う処理とを複数回繰り返し行う。これにより,金融商品の指値注文において,システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを行うことができ,また将来の相場の状況に応じてイフダンオーダーを自動的に中止させることができて,システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる。」
に訂正する。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正拒絶理由通知書
本件訂正請求について,当審は平成30年10月22日付けで訂正拒絶理由を通知した。訂正拒絶理由の概要は次のとおりである。
「1 手続の経緯
(省略)
2 訂正の内容
(省略)
3 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1-1及び1-2について
訂正事項1-1及び1-2のうち,特に訂正事項1-1の「前記注文情報生成手段は,売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし」との訂正事項について検討する。
ア 当該訂正事項は,訂正前の「売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文を有効とし」との事項について,当該事項が「前記注文情報生成手段」によるものであり,さらに「該成行注文を決済するための指値注文」だけでなく,「前記成行注文を決済するための逆指値注文」についても有効とするとの事項を追加したものである。
イ 当該訂正事項が,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて,訂正請求書の6(3)イ(ア)c(c-3)には,「また,訂正後発明1の「前記注文情報生成手段は,売買取引開始時に,・・・(中略)・・・および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし」という構成は,本件特許に係る特許掲載公報に掲載された明細書及び図面のうち,段落【0059】の「本実施形態では,図7に示す通り,注文処理が完了した時点t1で,約定情報生成部14は当該ポジションの第一注文51aを約定させる処理を行う(ステップS21)。」という記載,段落【0061】の「次に,第一注文51aに基づく成行注文が約定すると,約定情報生成部14は,第一の注文情報群51Aにおける第二注文51bと逆指値注文51cとを無効な注文情報から有効な注文情報に変更する(ステップS22)。」という記載,及び【図1】【図4A】【図7】の記載等に基づく。」と記載されている。
そこで,当該訂正事項が,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かを検討する。
(ア)「注文情報生成手段」について,明細書には例えば以下のように記載されている。
「【0048】
ここで,この実施の形態においては,注文情報生成部16は,第一注文を新規の成行注文の注文情報として生成し,第二注文を決済の指値注文の注文情報として生成し,逆指値注文を決済の逆指値注文の注文情報として生成する。第二注文を決済の指値注文の注文情報として生成することにより,第一順位の注文情報によって生じた注文による利益を第二順位の注文情報によって逐次確定させ,注文手続や金融商品取引管理システム1A内における情報処理の煩雑化を防止できる。更に,逆指値注文を決済の逆指値注文の注文情報として生成することにより,逆指値注文を,真に逆指値注文が必要とされる,顧客が指値取引によって生ずる損害を最小限に留める為に決済手続を行う場面のみに限定できて,逆指値注文の乱用防止と金融商品取引管理システム1A内における情報処理の煩雑化を防止とを図ることができる。」
「【0052】
顧客が操作部21の操作により承認ボタン(図示せず)をクリックすると,金融商品取引管理装置1の注文情報生成部16はステップS1にて入力されたデータに基づいて注文情報を生成する(ステップS8)。具体的には,上記手順において入力された複数のデータを,注文価格を単位としてまとめ,各情報の単位に,シーケンス番号テーブル184に記録された注文にシーケンス番号を付与することで各注文情報を形成する。なおこのとき,シーケンス番号テーブル184には,注文情報に使用されたシーケンス番号を未使用の番号と識別するための情報が付与される。一回のステップS8の手順にて形成される複数の注文情報は,注文情報群(以下単に「注文情報群」と称する。)を形成する。」
「【0053】
注文情報生成部16は,生成された注文情報群を注文テーブル181に記録する(ステップS9)。・・・。」
「【0054】
注文処理が完了すると,注文情報生成部16はまず最初の注文情報群(以下「第一の注文情報群」と称する。)を生成する。なお,この生成された時点において,注文情報群に含まれる,第一注文は有効な注文情報(顧客から正式に依頼された注文のこと。本明細書において同じ。)として生成されているが,同じ注文情報群に含まれる,第二順位の注文情報としての第二注文情報は,無効な注文情報(すなわち,当該注文情報を用いた一連の処理が開始されていない注文情報。本明細書において同じ。)として生成されている。注文情報の有効/無効の設定を行うためには,例えば注文テーブル181に専用のフラグ(図示せず)を設ければよい。」
したがって,上記明細書の記載における「注文情報生成部16」が,「注文情報生成手段」に相当するものである。
(イ)訂正請求書において訂正の根拠として示された段落【0059】段落の「本実施形態では,図7に示す通り,注文処理が完了した時点t1で,約定情報生成部14は当該ポジションの第一注文51aを約定させる処理を行う(ステップS21)。」との記載では,「成行注文」である「第一注文51aを約定させる処理を行う(ステップS21)」のは「約定情報生成部14」であって,「注文情報生成手段」すなわち「注文情報生成部16」であるとの記載はない。
(ウ)また,訂正請求書において訂正の根拠として示された段落【0061】の「次に,第一注文51aに基づく成行注文が約定すると,約定情報生成部14は,第一の注文情報群51Aにおける第二注文51bと逆指値注文51cとを無効な注文情報から有効な注文情報に変更する(ステップS22)。」との記載では,成行注文を決済するための指値注文である「第二注文51b」及び該成行注文を決済するための逆指値注文である「逆指値注文51c」を,「無効な注文情報から有効な注文情報に変更する(ステップS22)」のは「約定情報生成部14」であって,「注文情報生成手段」すなわち「注文情報生成部16」であるとの記載はない。
(エ)また,【図1】には本件の金融商品取引管理システムにおけるシステム構成図及び金融商品取引管理装置の機能ブロック図が示されており,ここには「注文情報生成部16」及び「約定情報生成部14」が別個の機能ブロックとして示されており,また,【図4A】には金融商品取引管理装置におけるイフダンオーダーによる指値注文の成立後の処理手順を示すフローチャートが示されており,「第二注文と逆指値注文を無効から有効に変更」(S22)と記載されているものの,当該ステップが「注文情報生成手段」すなわち「注文情報生成部16」によるものであるとは記載がなく,また,【図7】には金融商品取引管理装置におけるイフダンオーダーによる指値注文に基づく約定処理を模式的に表したタイムチャートが示されているが,ここにも「注文情報生成手段」すなわち「注文情報生成部16」の処理を特定する記載はない。
(オ)さらに,請求項2には,「前記注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う約定情報生成手段」及び「前記約定情報生成手段は,前記注文情報記録手段に記録された個々の前記注文情報のうち,前記第一注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理と,前記第二注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理とを,予め定められた回数だけ繰り返す」と定義されており,当該「約定情報生成手段」が,上記明細書の段落【0059】及び【0061】の「約定情報生成部14」に相当するものであり,また,「注文情報生成手段」と「約定情報生成手段」は上記【図1】からも別個の機能ブロックであって,「注文情報生成手段」の一機能ブロックが「約定情報生成手段」であるとの記載も認められない。
(カ)以上(ア)乃至(オ)のとおり,当該訂正事項については,願書に最初に添付した明細書等に記載されておらず,また,願書に最初に添付した明細書等の記載から自明な事項であるともいえないものであり,願書に最初に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであるから,願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。
(2)訂正事項1-3について
前記2(3)における訂正事項のうち,特に「前記注文情報生成手段は,売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし」との訂正事項について検討する。
当該訂正事項は,前記(1)で検討した前記訂正事項1-1と同じ訂正事項であるから,同様の理由により,願書に最初に添付した明細書等に記載されておらず,また,願書に最初に添付した明細書等の記載から自明な事項であるともいえないものであり,願書に最初に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであるから,願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。
4 むすび
以上のとおり,訂正事項1-1,1-2及び1-3は,新規事項を追加するものであるから,本件訂正は,特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。」

(2)訂正拒絶理由通知に対する補正(平成30年11月26日付け手続補正書による補正)
訂正拒絶理由通知に対する補正(平成30年11月26日付け手続補正書による補正)は,本件訂正請求書に添付した全文訂正明細書についての補正であり,同日付けの意見書によれば次の補正を含むものである。
ア 補正1
全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ならびに請求項6に,「前記注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う約定情報生成手段と,」という構成を追加する。

イ 補正2
全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ならびに請求項6の「前記注文情報生成手段は,売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし」との記載を,「前記約定情報生成手段は,売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし」と補正する。

ウ 補正3
全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ならびに請求項6の「以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせ,」との記載を,「以後,前記約定情報生成手段が前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定を行うことと,前記約定情報生成手段が前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定を行うことと,前記約定情報生成手段が前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせ,」と補正する。

エ 補正4
全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ならびに請求項6の「前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,前記逆指値注文情報に基づく逆指値注文を停止し,」との記載を,「前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,前記約定情報生成手段が前記逆指値注文情報に基づく逆指値注文を停止し,」と補正する。

オ 補正5
全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ならびに請求項6の「前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに,前記逆指値注文情報と同じ前記注文情報群に含まれる前記第二注文情報に基づく指値注文,及び,当該注文情報群の後に生成される予定の前記注文情報群の生成を停止する」との記載を,「前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに,前記約定情報生成手段が前記逆指値注文情報と同じ前記注文情報群に含まれる前記第二注文情報に基づく指値注文,及び,当該注文情報群の後に生成される予定の前記注文情報群の生成を停止する」と補正する。

カ 補正6
全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項2の「前記注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う約定情報生成手段を備え,」との記載を削除する。

キ 補正7
全文訂正明細書の明細書の段落【0009】【0013】の【課題を解決する手段】の記載を,請求項1及び請求項6についての前記アないしオの補正に対応するように補正する。

ク 補正8
全文訂正明細書の明細書の段落【0010】の【課題を解決する手段】の記載を,請求項2についての前記カの補正に対応するように補正する。

ケ 補正9
全文訂正明細書の明細書の段落【0014】の【発明の効果】の記載を,請求項1及び請求項6についての前記アないしオの補正に対応するように補正する。

コ 補正10
全文訂正明細書の明細書の段落【0015】の【発明の効果】の記載を,請求項2についての前記カの補正に対応するように補正する。

(3)上記補正についての当審の判断
ア 訂正事項1-1及び1-3について
上記補正1は,本件訂正請求における上記訂正事項1-1及び1-3に対して,新たに「前記注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う約定情報生成手段と,」との事項を追加するものであり,訂正事項の削除,軽微な瑕疵の補正等に該当しないことは明らかであって,上記訂正事項1-1及び1-3を変更するものである。
また,上記補正2は,本件訂正請求における上記訂正事項1-1及び1-3における「前記注文情報生成手段は,売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし」との訂正事項を,「前記約定情報生成手段は,売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし」と補正するものであって,当該補正は「前記注文情報生成手段」が実行する処理であったものを,「前記約定情報生成手段」という異なる手段が実行する処理であると変更するものであり,訂正事項の削除,軽微な瑕疵の補正等に該当しないことは明らかであって,上記訂正事項1-1及び1-3を変更するものである。
また,補正3ないし5は,本件訂正請求における上記訂正事項1-1及び1-3に対して,どの手段による処理であるかの限定がないものについて,新たに「約定情報生成手段が」との事項を追加することにより,どの手段による処理であるかを限定するものであるが,当該補正も訂正事項の削除,軽微な瑕疵の補正等に該当しないことは明らかであって,上記訂正事項1-1及び1-3を変更するものである。

イ 訂正事項1-2について
上記補正6は,本件訂正請求における上記訂正事項1-2に対して,新たに「前記注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う約定情報生成手段を備え,」との記載を削除するものであり,当該補正は訂正事項の削除,軽微な瑕疵の補正等に該当しないことは明らかであって,上記訂正事項1-2を変更するものである。

ウ 訂正事項2-1及び2-2について
上記補正7及び8は,本件訂正請求における上記訂正事項2-1及び2-2に対して,上記補正1ないし6に対応した補正を行うものであり,上記ア及びイに記載したのと同様に,当該補正も訂正事項の削除,軽微な瑕疵の補正等に該当しないことは明らかであって,上記訂正事項2-1及び2-2を変更するものである。

エ 訂正事項3-1及び3-2について
上記補正9及び10は,本件訂正請求における上記訂正事項3-1及び3-2に対して,上記補正1ないし6に対応した補正を行うものであり,上記ア及びイに記載したのと同様に,当該補正も訂正事項の削除,軽微な瑕疵の補正等に該当しないことは明らかであって,上記訂正事項3-1及び3-2を変更するものである。

オ むすび
上記補正は,本件訂正請求書に添付した全文訂正明細書についての補正であり,訂正請求書自体の補正を行うものではないが,訂正請求書の請求の趣旨と訂正明細書等は一体のものであるから,全文訂正明細書に対しての上記補正にともない,実質的に訂正請求書も同様の補正がなされたといえる。
そして,上記アないしエで記載したように,上記補正1ないし10はいずれも訂正事項の削除,軽微な瑕疵の補正等に該当しないものであって,上記訂正事項を変更するものであるから,本件訂正請求書の要旨を変更するものである。
よって,上記補正1ないし10は,特許法第134条の2第9項において準用する特許法第131条の2第1項の規定に適合しないから認めることはできない。

(4)本件訂正請求についての当審の判断
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項1-1について
訂正後の請求項1は,訂正前の請求項1にはない「前記注文情報生成手段が生成した前記注文情報を記録する注文情報記録手段」及び「前記注文情報記録手段は,生成された前記注文情報群を記録し,」という構成が存在する発明に限定されるものであり,訂正前の請求項1を減縮するものである。
訂正後の請求項1は,訂正前の請求項1にはない「前記注文情報生成手段は,売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし,」という構成が存在し,売買取引開始時に,成行注文を決裁するために指値注文に加え,成行注文を決裁するための逆指値注文が有効となる発明に限定されるものであり,そのような限定のない訂正前の請求項1を減縮するものである。
訂正後の請求項1は,訂正前の請求項1にはない「前記成行注文を決済する前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,次の前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく,前記成行注文の価格と同じ前記価格の前記指値注文を有効とし,」という構成が存在し,第二注文情報に基づく指値注文の約定で売買取引開始時に行われた成行注文と同じ前記価格の指値注文が有効となる発明に限定されるものであり,そのような限定のない訂正前の請求項1を減縮するものである。
訂正後の請求項1は,訂正前の請求項1にはない「前記第一注文情報に基づく該指値注文が約定されたときに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文および前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文を有効にし,」という構成が存在し,注文情報群を構成する第一注文情報,第二注文情報,逆指値注文情報のうち,第一注文情報に基づいて逆指値注文が約定し,その注文情報の第二注文基づく指値注文,その注文情報群の逆指値注文情報に基づく逆指値注文が有効になるという,注文情報に基づく注文の約定とその約定後に有効とされる注文の種類と順序が限定される発明に限定されるものであり,そのような限定のない訂正前の請求項1を減縮するものである。
訂正後の請求項1は,訂正前の請求項1にはない「前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,前記逆指値注文情報に基づく逆指値注文を停止し,前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに,前記逆指値注文情報と同じ前記注文情報群に含まれる前記第二注文情報に基づく指値注文,及び,当該注文情報群の後に生成される予定の前記注文情報群の生成を停止する」という構成が存在し,第二注文情報に基づいて約定が行われた場合に停止される注文と,逆指値注文情報が約定された場合に停止される注文とが限定される発明に限定されるものであり,そのような限定のない訂正前の請求項1を減縮するものである。
以上より,訂正事項1-1で訂正する訂正後の請求項1は,訂正前の請求項1を減縮するものである。また,訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2?5及び7についても,それぞれ,訂正前の請求項2?5及び7を減縮するものである。
よって,訂正事項1-1は,特許法第134条の2第1項ただし書1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)訂正事項1-2について
訂正後の請求項2は,訂正前の請求項2に存在した「前記注文情報生成手段が生成した前記注文情報を記録する注文情報記録手段と,」を削除することで,当該構成は訂正後の請求項1に追加され,重複した構成となってしまう不合理を解消するためのものであり,明瞭にするものである。また,訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項3?5についても,それぞれ,訂正前の請求項3?5を明瞭にするものである。
よって,訂正事項1-2は,特許法第134条の2第1項ただし書3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(ウ)訂正事項1-3について
訂正事項1-1と同様に,訂正事項1-3で訂正する訂正後の請求項6は,訂正前の請求項6を減縮するものであるから,訂正事項1-3は,特許法第134条の2第1項ただし書1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(エ)訂正事項2及び訂正事項3について
訂正事項2及び訂正事項3は,訂正事項1-1ないし訂正事項1-3に対応する発明の詳細な説明を訂正するものである。
よって,訂正事項2及び訂正事項3は,特許法第134条の2第1項ただし書3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項及び請求項の範囲の実質拡張・変更について
(ア)本件明細書の記載事項
「【0001】
本発明は,外国為替等,金融商品の取引を管理,支援する技術に関する。」

「【0009】
かかる課題を解決するため,請求項1に記載の発明は,金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって,前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,該注文情報生成手段は,一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文を有効とし,前記成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記指値注文を有効とし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は,請求項1に記載の構成に加え,前記注文情報生成手段が生成した前記注文情報を記録する注文情報記録手段と,前記注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う約定情報生成手段とを備え,前記約定情報生成手段は,前記注文情報記録手段に記録された個々の前記注文情報のうち,前記第一注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理と,前記第二注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理とを,予め定められた回数だけ繰り返すことを特徴とする。」

「【0021】
以下,この発明の一の実施形態について図面を参照して説明する。」

「【0025】
図1に示す通り,金融商品取引管理装置1は,上述した各種プログラムとハードウェア資源とに基づいて実現される機能手段としてのデータ処理部10,及び,データ処理部10にて処理される各種データが記録されるデータベース18を有する。データ処理部10は金融商品取引管理装置1において用いる各種データの生成,加工等の処理を行うものであり,更に,同じく機能手段としてのフロントページ配信部11,注文入力受付部(注文入力受付手段)12,入出金情報生成部13,約定情報生成部(約定情報生成手段)14,口座情報生成部15,注文情報生成部(注文情報生成手段)16,データベース(DB)接続基底部17,価格情報受信管理部19を有している。」

「【0028】
注文情報生成部16は,注文入力受付部12が処理した情報に基づいて,成立した金融商品の注文に関する情報を生成する。ここでの注文には,いわゆる成行注文,指値注文,指値注文のイフダンオーダーに加え,成行注文のイフダンオーダーも含まれる。
【0029】
約定情報生成部14は,注文情報生成部16が生成した注文に基づく約定処理,及び,完了した約定処理に関する情報を顧客のクライアント端末2に送るための処理を行う。なお,ここでの「約定」とは,顧客の注文に基づいて金融商品の売買を成立されるための各種の手続並びに処理のことをいう。」

「【0048】
ここで,この実施の形態においては,注文情報生成部16は,第一注文を新規の成行注文の注文情報として生成し,第二注文を決済の指値注文の注文情報として生成し,逆指値注文を決済の逆指値注文の注文情報として生成する。…」

「【0053】
注文情報生成部16は,生成された注文情報群を注文テーブル181に記録する(ステップS9)。具体的には,図2Aに示す各フィールド名に対応させて,該当する注文情報(即ち“備考”カラム181aの項目に対応するデータ)が記録される。…以上の手順より,本実施の形態における注文処理は完了する。
【0054】
注文処理が完了すると,注文情報生成部16はまず最初の注文情報群(以下「第一の注文情報群」と称する。)を生成する。なお,この生成された時点において,注文情報群に含まれる,第一注文は有効な注文情報(顧客から正式に依頼された注文のこと。本明細書において同じ。)として生成されているが,同じ注文情報群に含まれる,第二順位の注文情報としての第二注文情報は,無効な注文情報(すなわち,当該注文情報を用いた一連の処理が開始されていない注文情報。本明細書において同じ。)として生成されている。注文情報の有効/無効の設定を行うためには,例えば注文テーブル181に専用のフラグ(図示せず)を設ければよい。」

「【0060】
第一注文51aに基づく成行注文が約定すると,約定情報生成部14はデータベース18中の対応するデータを書き換える。具体的には,注文テーブル181の当該成行注文に関する注文情報である,第一注文51aのデータが削除され,顧客口座情報テーブル182の“amnt”フィールド182aのデータが約定した価格分だけ増減される。ここで,本実施形態の第一注文は,一回目は成行注文で行われるが,二回目以降は指値注文で行われる。このため,約定情報生成部14は,当該成行注文の約定価格を,二回目以降の第一注文の指値価格に設定する。
【0061】
次に,第一注文51aに基づく成行注文が約定すると,約定情報生成部14は,第一の注文情報群51Aにおける第二注文51bと逆指値注文51cとを無効な注文情報から有効な注文情報に変更する(ステップS22)。」

「【0076】
上記実施形態は本発明の例示であり,本発明が上記実施の形態に限定されることを意味するものではないことは,いうまでもない。」

(イ)本件明細書の記載事項から把握できる事項
【0025】には,「本発明」の一の実施形態として,「各種データの生成,加工等の処理」を行う「データ処理部10」,「データベース18」,「フロントページ配信部11」,「注文入力受付部(注文入力受付手段)12」,「入出金情報生成部13」,「約定情報生成部(約定情報生成手段)14」,「口座情報生成部15」,「注文情報生成部(注文情報生成手段)16」,「データベース(DB)接続基底部17」及び「価格情報受信管理部19」を有する「金融取引装置1」の記載が記載されている。
また,【0028】【0048】【0053】【0054】の記載から,「注文情報生成部16」は,「注文入力受付部12が処理した情報」に基づいて,「注文情報群」を生成し,「生成された注文情報群」を「注文テーブル181」(図2A)に記録する処理を行うこと,「注文情報生成部16」は,「第一の注文情報群」の生成においては,例えば注文テーブル181に注文情報の有効/無効の設定を行う専用のフラグを設けることにより,その生成の時点において,「第一の注文情報群」に含まれる,「第一注文」は「有効な注文情報」として生成し,「第二注文情報」は,「無効な注文情報」として生成する処理を行うことを理解できる。
一方,【0029】【0060】【0061】の記載から,「約定情報生成部14」は,「注文情報生成部16が生成した注文に基づく約定処理」及び「完了した約定処理に関する情報を顧客のクライアント端末2に送るための処理」を行うこと,「約定情報生成部14」は,「第一の注文情報群51A」に含まれる,「第一注文51a」に基づく「成行注文」が約定すると, その「成行注文」を決済するための指値注文である「第二注文51b」及び「逆指値注文51c」を「無効な注文情報」から「有効な注文情報」に変更する処理を行うことを理解できる。
以上によれば,本件明細書には,「本発明」の「一の実施形態」として,「注文情報生成手段」である「注文情報生成部16」が,「第一の注文情報群」の生成をする際に,「第一の注文情報群」に含まれる「第一注文」及び「第二注文」についてそれぞれ有効及び無効の設定を行い,「約定情報生成手段」である「約定情報生成部14」が「第一の注文情報群」に含まれる「第一注文51a」に基づく「成行注文」の約定処理を行った時点で,その「成行注文」を決済するための「第二注文」(指値注文)及び「逆指値注文」を「無効」から「有効」に変更する処理を行うことの開示があることが認められる。
そうすると,本件明細書には,「注文情報生成手段」(「注文情報生成部16」)が,「第一の注文情報群」の生成をする際に,「第一の注文情報群」に含まれる注文情報の有効/無効の設定を行う技術的事項の開示があるものと認められる。
また,上記実施形態においては,「注文情報生成手段」(「注文情報生成部16」)が,「第一の注文情報群」に含まれる「第一注文51a」の「成行注文」を決済するための「第二注文」(指値注文)及び「逆指値注文」を「無効」から「有効」に変更する処理は,「約定情報生成手段」(「約定情報生成部14」)によって行われ,「注文情報生成手段」(「注文情報生成部16」)が行うものではないが,本件明細書【0076】の記載に照らすと,「本発明」は,「第一注文」の「成行注文」を決済するための「第二注文」(指値注文)及び「逆指値注文」を「無効」から「有効」に変更する処理は,「約定情報生成手段」(「約定情報生成部14」)が行う形態のものに限定されないことを理解できる。

(ウ)判断
本件訂正請求によると,訂正事項1-1により,本件訂正前の「売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文を有効とし」との事項について,「該成行注文を決済するための指値注文」だけでなく,「前記成行注文を決済するための逆指値注文」についても有効とするとの事項を追加したものであり本件訂正後の請求項1においては,「注文情報生成手段」が「売買取引開始時」に「成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし」とする処理を行うことを理解できる。
しかるところ,(a)本件訂正前の請求項1には,「注文情報生成手段」が「売買取引開始時」に「成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文を有効とし」との処理を行うことの記載があり,本件明細書の【0009】には,本件訂正前の請求項1と同内容の記載があること,(2)本件明細書には,「注文情報生成手段」(「注文情報生成部16」)が,「第一の注文情報群」の生成をする際に,「第一の注文情報群」に含まれる注文情報の有効/無効の設定を行う技術的事項の開示があること,(3)本件明細書に記載された「本発明」の「一の実施形態」では,「第一の注文情報群」に含まれる「第一注文51a」の「成行注文」を決済するための「第二注文」(指値注文)及び「逆指値注文」を「無効」から「有効」に変更する処理は,「約定情報生成手段」(「約定情報生成部14」)によって行われ,「注文情報生成手段」(「注文情報生成部16」)が行うものではないが,本件明細書の【0076】の記載に照らすと,「本発明」は,「第一注文」の「成行注文」を決済するための「第二注文」(指値注文)及び「逆指値注文」を「無効」から「有効」に変更する処理は,「約定情報生成手段」(「約定情報生成部14」)が行う形態のものに限定されないことを理解できることからすると,本件訂正後の請求項1の「前記注文情報生成手段」は「売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし」との構成は,本件出願の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面すべての記載事項を総合することにより導かれる技術的事項の関係において,新たな技術的事項を導入するものではないものと認められるから,訂正事項1-1は,本件出願の願書に添付した明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであって,新規事項の追加に当たらないものと認められる。
したがって,訂正事項1-1は特許法126条5項の要件に適合するものと認められる。さらに同旨の訂正をする訂正事項1-3,訂正事項1-1による訂正による請求項2の不合理を解消するための訂正事項1-2も新規事項の追加に当たらず同項の要件に適合するものと認められる。
さらに,訂正事項1-1?訂正事項1-3による訂正は,特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正でもないことは明らかであるから,特許法126条6項の要件に適合するものと認められる。

ウ むすび
訂正請求でする上記1の訂正は,上記ア及びイのとおり,特許請求の範囲の減縮又は明瞭でない記載の釈明を目的とし,新規事項の追加に該当せず,特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものでもないことから,訂正の要件を満たす。


第5 本件訂正発明

本件訂正請求により訂正された請求項1ないし7に係る発明(以下,請求項1に係る発明を「本件訂正発明1」といい,その他の請求項に係る発明も同様に称する。)は,平成30年5月7日付け訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであって,次のとおりのものである。

<本件訂正発明>
【請求項1】
金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって,
前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,
該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段と,
前記注文情報生成手段が生成した前記注文情報を記録する注文情報記録手段とを備え,
該注文情報生成手段は,
一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,
前記注文情報記録手段は,生成された前記注文情報群を記録し,
前記注文情報生成手段は,
売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし,
前記成行注文を決済する前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,次の前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく,前記成行注文の価格と同じ前記価格の前記指値注文を有効とし,
前記第一注文情報に基づく該指値注文が約定されたときに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文および前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文を有効にし,
以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせ,
前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,前記逆指値注文情報に基づく逆指値注文を停止し,
前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに,前記逆指値注文情報と同じ前記注文情報群に含まれる前記第二注文情報に基づく指値注文,及び,当該注文情報群の後に生成される予定の前記注文情報群の生成を停止する
ことを特徴とする金融商品取引管理装置。

【請求項2】
前記注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う約定情報生成手段を備え,
前記約定情報生成手段は,前記注文情報記録手段に記録された個々の前記注文情報のうち,前記第一注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理と,前記第二注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理とを,予め定められた回数だけ繰り返す
ことを特徴とする請求項1に記載の金融商品取引管理装置。

【請求項3】
前記注文情報生成手段は,前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに,前記第一注文情報に基づく指値注文および前記第二注文情報に基づく指値注文を停止し,
前記約定情報生成手段は,前記逆指値注文情報に基づいて約定を行った場合,該逆指値注文情報を生成した前記売買注文申込情報に対応して生成される前記第一注文情報および第二注文情報のうち,前記逆指値注文情報の生成時点で未生成である前記注文情報を,全て前記注文情報記録手段から消去するキャンセル処理を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の金融商品取引管理装置。

【請求項4】
前記約定情報生成手段は,一旦成立した前記金融商品の注文に対するキャンセル要求があった場合,該キャンセル要求のあった注文に対応する前記第一注文情報および/又は前記第二注文情報および/又は前記逆指値注文情報のうち,約定前の前記注文情報を全てキャンセル処理する
ことを特徴とする請求項2又は3の何れかに記載の金融商品取引管理装置。

【請求項5】
特定顧客の預金残高情報を記録する顧客口座情報記録手段を備え,
前記注文情報記録手段には,前記第一注文情報および前記第二注文情報の注文価格に基づく金額情報が属性情報として記録され,
前記注文情報生成手段は,前記注文価格に基づく金額情報を前記預金残高情報と比較し,該預金残高情報の値が前記注文価格に基づく金額情報の値以上である場合に,前記第一注文情報および第二注文情報を生成する
ことを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の金融商品取引管理装置。

【請求項6】
金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理システムであって,
前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,
該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段と,
前記注文情報生成手段が生成した前記注文情報を記録する注文情報記録手段とを備え,
該注文情報生成手段は,
一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,
前記注文情報記録手段は,生成された前記注文情報群を記録し,
前記注文情報生成手段は,
売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし,
前記成行注文を決済する前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,次の前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく,前記成行注文の価格と同じ前記価格の前記指値注文を有効とし,
前記第一注文情報に基づく該指値注文が約定されたときに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文および前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文を有効にし,
以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせ,
前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,前記逆指値注文情報に基づく逆指値注文を停止し,
前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに,前記逆指値注文情報と同じ前記注文情報群に含まれる前記第二注文情報に基づく指値注文,及び,当該注文情報群の後に生成される予定の前記注文情報群の生成を停止する
ことを特徴とする金融商品取引管理システム。

【請求項7】
コンピュータを請求項1乃至5の何れか一つに記載の金融商品取引管理装置として機能させる
ことを特徴とするプログラム。


第6 無効理由に対する当審の判断

1 無効理由1(進歩性欠如)について
(1)各甲号証の記載事項
(1-1)甲第1号証
甲第1号証の1には,次の事項が記載されている。なお,訳は甲第1号証の2を主に採用し,また,下線は当審において付加したものである。
ア 「[0004] This inventionapplies to buying and selling stocks, options, commodities, bonds, and mostforms of equities and securities. This invention has useful application for theindividual investor, the securities broker and others who trade securities.」
(訳:この発明は,株式,オプション,商品,債券,および大部分の型式の株式および有価証券の売買に適合する。この発明は,個人投資家,証券ブローカ,および証券をトレードするその他の人のための有用なアプリケーションを有する。)

イ 「[0024] FIG. 6 shows analternative embodiment of the LOCK method by adding options of number of cyclesand increments in price changes for each increment.」
(訳:図6は,サイクル回数,および,各インクリメントに関する価格変化におけるインクリメントのオプションを追加することによるLOCK方法の代替実施形態を図示する。)

ウ 「[0074] The LOCKmethod and invention comprises (A) an investor who invests in a securitiesmarket with an objective to make a profit; (B) a host securities broker (suchas E-Trade, Ameritrade, etc.) with a computer network, for handling theirtransaction. The host computer network includes a database server that providesan electronic security order template. With this template in place, the hostcomputer network can store and organize security transaction request so thatwhen an investor initiates a transaction, the network processes the request andsends it to a security exchange (such as New York Stock Exchange, NASDAQ,etc.); (C) individual computer workstations for each investor or broker. Eachcomputer workstation would include a video monitor, a means for the investor ofbroker to send user commands to the host computer network, and a means for theinvestor or broker to receive and display (on the video monitor) security ordertemplates and instructions transmitted from the host computer network; (D)a communications network electronically linking the investor's computerworkstation to the host computer network; (E) a two-part securities exchangeorder (referred to as the LOCK order) that the investor initiates and thatcontains specific instructions for the host computer network to transact thesecurity exchange. The LOCK order would include instructions and informationfor buying or selling a security, the name of the security, the quantity ofthat security, to buy the limit price or current market price at which totransact the security exchange and the increase or decrease in security priceto initiate part-two of the transaction (referred to as the LOCK profit);(F) a software module that allows the investor at the computer workstation tointeract with the host computer network. With this software the investor canselect security exchange options and transmit them to the host computer networkthen receive confirmation that was underway. (G) an additional softwaremodule (referred to as the LOCK management module) as part of the securitiesbroker host computer network. This software would link the host computernetwork to the security exchange markets and track and monitor the status ofthe investor's LOCK order. At the appropriate market price, the software wouldinitiate a two-part, sequenced securities exchange order to buy a stock at theinvestor's specified price, then add the specified desired profit price andplace a second order.」
(訳:LOCK方法および発明は,(A)利益を得るという目的で証券市場に投資する投資家と,(B)彼らのトランザクションを取り扱うために,コンピュータネットワークを備えた(E-Trade,Ameritrade等のような)ホスト証券ブローカと,を備える。ホストコンピュータネットワークは,電子証券注文テンプレートを提供するデータベースサーバを含む。このテンプレートで,ホストコンピュータネットワークは,証券トランザクション要求を記憶および体系化し,これによって,投資家がトランザクションを開始した場合に,このネットワークは,この要求を処理し,(ニューヨーク証券取引所,ナスダック等のような)証券取引所へ送信できる。(C)各投資家またはブローカのための個々のコンピュータワークステーション。各コンピュータワークステーションは,ビデオモニタと,ブローカの投資家が,ホストコンピュータネットワークへユーザコマンドを送るための手段と,投資家またはブローカが,ホストコンピュータネットワークから送信された指示と証券注文テンプレートとを受信し,(ビデオモニタ上に)表示するための手段と,を含むであろう。(D)投資家のコンピュータワークステーションをホストコンピュータネットワークへ電子的にリンクさせる通信ネットワーク。(E)投資家が開始し,ホストコンピュータネットワークが証券取引をトランザクトするための特有の指示を含む(LOCK注文とも称される)2パートの証券取引注文。LOCK注文は,証券取引をトランザクトする指値または現在の市場価格,および,トランザクションのパート2を開始するための証券価格における増加または減少(LOCK利益と称される)を受け入れるために,証券を買うかまたは売るかに関する指示および情報と,証券の名称と,その証券の量とを含むであろう。(F)投資家がコンピュータワークステーションにおいて,ホストコンピュータネットワークとインタラクトすることを可能にするソフトウェアモジュール。このソフトウェアを用いて,投資家は,証券取引オプションを選択し,ホストコンピュータネットワークにそれらを送信し,その後,それが進行中であることの確認を受け取る。(G)証券ブローカホストコンピュータネットワークの一部としての(LOCK管理モジュールと称される)追加のソフトウェアモジュール。このソフトウェアは,ホストコンピュータネットワークを,証券取引市場にリンクさせ,投資家のLOCK注文のステータスを追跡およびモニタするであろう。適切な市場価格において,ソフトウェアは,投資家の指定した価格で株式を買い,その後,指定された所望の利益価格を加え,第2の注文をするための,2パートのシーケンス化された証券取引注文を開始するであろう。)

エ 「[0080] FIG. 3 shows thelogic execution and conversion of the LOCK invention and process. FIG. 3'sright side represents the investor's input request that is used to execute Partone of the LOCK process. The buy/sell instruction 2 convert from part 1 frombuy to part 2 to sell 11. An example is if the order states to buy 100 XYZ,part 1 will buy then convert to a sell order in part 2. The order's time to bevalid box in part 1 can be specified as day or good to canceled 4. If part 1 onthe LOCK order is executed, this information will convert to a good tillcanceled order. An option for the investor is to see the status of his orderand request modification to the LOCK order or cancel the second half of theLOCK order if unexecuted. An example may be that the investor's LOCK order isexecuted and he now holds 100 shares of XYZ and is waiting for a LOCK pricemove of 2.00 before he sell. During this time the investor queries theelectronic investment company on the status of the LOCK order and sees thatpart one has been executed and now wished to cancel the #sell# order in part 2of the LOCK order. The investor submits a cancellation request and, if receivedin time, the LOCK order could be canceled and the investor would only have part1 of the LOCK order's results. Similarly, if the investor wished to cancel theentire LOCK order before part 1 has been executed, the order would be cancelledin a method similar to canceling traditional unexecuted orders.」
(訳:図3は,LOCK発明および処理のロジック実行および変換を示す。図3の右側は,LOCK処理のパート1を実行するために使用される投資家の入力要求を表す。買い/売り指示2は,パート1の買いから,パート2の売り11に切り替わる。例は,注文が,100 XYZを買うことを明示しているのであれば,パート1は,買い,その後,パート2において売り注文に切り替わるであろう。パート1において,有効なボックスとなるこの注文の時間は,デイまたはグッドトゥキャンセル4として指定され得る。LOCK注文におけるパート1が実行されると,この情報は,グッドティルキャンセル注文に切り替わるであろう。投資家のためのオプションは,注文のステータスを観察し,LOCK注文に対する修正を要求するか,または,実行されていないのであれば,LOCK注文の後半をキャンセルすることである。例は,投資家のLOCK注文が実行され,投資家が,XYZの100株を保持し,売る前に,2.00のLOCK価格変動を待つことであり得る。この時間中,投資家は,電子投資会社に対して,LOCK注文のステータスについて問い合わせを行い,パート1が実行され,現在,LOCK注文のパート2において,「売り」注文のキャンセルを望んでいる。投資家は,キャンセル要求を発行し,時間内に受信されれば,LOCK注文がキャンセルされ,投資家は,LOCK注文のパート1の結果しか得ないであろう。同様に,投資家が,パート1が実行される前にLOCK注文の全体のキャンセルを望んでいるのであれば,この注文は,従来の未実行注文のキャンセルと類似の方法でキャンセルされるであろう。)

オ 「[0081] The stocksymbol 5, and stock quantity 6, remains the same in part 1 and part 2.Alternate embodiment could change the quantity, such as selling half in part 2then cycling through part 2 again selling the second half a an increased price.The price selection for part 1 involves either a market order 7, which executes the trade at the prevailing market rate or a LimitOrder 8, which specifies a price. For the investor to execute a Limit Ordernormally he or she must check a box and enter the price at which to execute it or if market conditions permit, at a better price. The part 1 orderexecuted price in combination with information in the LOCK box 9, and the LOCKprice 10, will form the Limit Order execution price for the part 2 of the LOCKtransaction.」
(訳:株式銘柄5,また,株式の量6は,パート1およびパート2において同じままである。代替実施形態は,パート2において半分を売り,その後,パート2を繰り返し,増加された価格で後半を売るように,量を変え得る。パート1の価格選択は,市場相場でトレードを実行する成行注文7または価格を指定する指値注文8かの何れかを含む。投資家が指値注文を実行するためには通常,ボックスをチェックし,実行する価格を入力するか,または,市場状況が許すのであれば,よりよい価格を入力する。LOCKボックス9およびLOCK価格10における情報と組み合わされたパート1注文実行価格は,LOCKトランザクションのパート2の指値注文実行価格を形成するであろう。)

カ 「[0082] FIG. 4 shows theconventional electronic trading process requiring two orders to open and closea position. The process begins with the investor 17 placing a buy or sell order18 with an electronic trading company or organization 20. The electronictrading company 20 generates an electronic order 21 that is submitted 22 to asecurities exchange 23. The order 21 is presented in the trading pit 24 andwhen a buyer/seller accepts the order, the order is filled 25. Once the orderhas been executed or filled 25, the electronic trading company is notified andthe investor's account is documented 26 and the investor 17 is informed. Theinvestor 17 must now place another order 27 to close out his or her positionand make a profit. An example of this process would be if an investor 17initiated the process to buy 100 shares of stock XYZ at $50.00 a share 18,received notification that the order was fully executed 26 now the investor 17must resubmit an order 27 to sell 100 shares of XYZ at $52.00 to make a profit.The order 27 is submitted to the electronic trading company where a new orderis generated 28, order submitted 29, presented in the trading pit 30, filled, 31documented and the account is updated and the investor notified 32. Currentstate of-the-art methods require the investor or broker 17 to be involved inboth transactions.」
(訳:図4は,ポジションをオープンおよびクローズするために2つの注文を必要とする従来の電子トレード処理を図示する。この処理は,投資家17が,電子トレード会社または組織20を使って買い注文または売り注文18をすることで始まる。電子トレード会社20は,証券取引所23へ発行される22電子注文21を生成する。注文21は,トレードピット24において表され,買い手/売り手がこの注文を受諾すると,注文が満たされる25。注文が実行されたか満たされた25ならば,電子トレード会社に通知され,投資家の口座がドキュメント化され26,投資家17に通知される。投資家17は,ポジションをクローズアウトし,利益を得るために,別の注文27をしなければならない。この処理の一例は,投資家17が,1株あたり50.00ドルで株式XYZを100株買う処理を開始し18,この注文が完全に実行された26との通知を受信すると,投資家17は,利益を得るために,52.00ドルでXYZの100株を得る注文27を再発行しなければならない。この注文27は,電子トレード会社へ発行される。ここでは,新たな注文が生成され28,注文が発行され29,トレードピット30において表され,満たされ31,ドキュメント化され,口座が更新され,投資家に通知される32。現在の最先端の方法は,投資家またはブローカ17が,両トランザクションに含まれることを必要とする。)

キ 「[0083] FIG. 5 shows the main embodiment of the LOCK method, processand order flow sequence for opening and closing a LOCK order. The method beginswith the investor 17 submitting a LOCK order 19, which contains sufficientinformation as described in FIG. 3. The LOCK order 19 is submitted to theelectronic trading company 20 where the order is identified as a LOCK order andenters the LOCK management module process 12. The LOCK management module 12comprises the software interfaces that receive the LOCK order 19 document andgenerate a tracking record 33, record the LOCK increment 35, monitor thesubmission of the first part of the LOCK order submission 34, as the order 34enters the securities exchange 23 trading pit 36, and the order is filled 37,then record the first order being filled 38, generate the second part of theLOCK order 39, and submit the second part of the LOCK order 40. The second partof the LOCK order 40 is resubmitted to the trading pit 41 and once the secondorder is filled 42, the electronic trading company 20, records the accountbalance 43 and notifies the investor 17 that the LOCK transaction has beencompleted.」
(訳:図5は,LOCK注文をオープンおよびクローズするためのLOCK方法,処理,および注文フローシーケンスの主な実施形態を図示する。この方法は,投資家17が,LOCK注文19を発行することで始まる。これは,図3に記載されたような十分な情報を含む。LOCK注文19は,電子トレード会社20へ発行され,ここで,この注文は,LOCK注文として識別され,LOCK管理モジュール処理12に入力する。LOCK管理モジュール12は,ソフトウェアインターフェースを備える。このソフトウェアインターフェースは,LOCK注文19ドキュメントを受信し,追跡記録33を生成し,LOCKインクリメント35を記録し,LOCK注文発行34の前半の発行をモニタし,この注文34が,証券取引所23にトレードピット36を入力し,注文が満たされる37と,第1の注文が満たされたことを記録し38,LOCK注文の後半を生成し39,LOCK注文の後半を発行する40。LOCK注文の後半40がトレードピット41へ再発行され,第2の注文が満たされる42と,電子トレーディング会社20は,口座残高を記録43し,投資家17に,LOCKトランザクションが完了したことを通知する。)

ク 「[0085] Alternative embodiments include inserting the option toautomatically re-cycle through the process again and an additional optionto increase or decrease the buy/sell prices. FIG. 6 and FIG. 7 showsalternative embodiment of the LOCK method by adding a number of cycles andincrement options to the methodology. FIG. 6shows the additional information required to cycle through the process. FIG. 7shows the methodology for reentering the LOCK management module 12. Theaddition of #Number of Cycles# 44 would allow the investor to automaticallyreenter the LOCK process again in hopes of making more profit. An example of specifying two cycles would mean to buy 100 sharesof XYZ (with a LOCK price of $1) at $50 a share, sell at $51 a share, buy backat $50 and sell again at $51. This investment process would allow the individualinvestor to take advantage of daily small stock fluctuations.」
(訳:代替実施形態は,この処理を再度自動的に繰り返すオプションと,買値/売値を上げまたは下げる追加のオプションと,を挿入することを含む。図6および図7は,この方法に,サイクル数と,インクリメントオプションとを加えることによるLOCK方法の代替実施形態を図示する。図6は,処理を繰り返すために必要な追加情報を図示する。図7は,LOCK管理モジュール12に再入力するための方法を図示する。サイクル数44の追加によって,投資家は,より多くの利益を得ることを望んで,LOCK処理に自動的に再入力できるようになるであろう。2つのサイクルを指定する例は,1株あたり50ドルでXYZを100株(1ドルのロック価格で)買い,1株あたり51ドルで売り,50ドルで買い戻し,51ドルで再び売ることを意味するであろう。この投資処理によって,個人投資家は,毎日の小さな株価変動を活用することが可能となるであろう。)

ケ FIG6


コ FIG7


サ 前記アないしコによると,甲第1号証には,次の発明(以下,「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「証券市場に投資する投資家と,彼らのトランザクションを取り扱うために,コンピュータネットワークを備えた(E-Trade,Ameritrade等のような)ホスト証券ブローカを備え,ホストコンピュータネットワークは,電子証券注文テンプレートを提供するデータベースサーバを含み,このテンプレートで,ホストコンピュータネットワークは,証券トランザクション要求を記憶および体系化し,これによって,投資家がトランザクションを開始した場合に,このネットワークは,この要求を処理し,(ニューヨーク証券取引所,ナスダック等のような)証券取引所へ送信できるものであり,
各投資家またはブローカのための各コンピュータワークステーションは,ビデオモニタと,ブローカの投資家が,ホストコンピュータネットワークへユーザコマンドを送るための手段と,投資家またはブローカが,ホストコンピュータネットワークから送信された指示と証券注文テンプレートとを受信し,(ビデオモニタ上に)表示するための手段と,を含み,
証券ブローカホストコンピュータネットワークの一部としての(LOCK管理モジュールと称される)追加のソフトウェアモジュールであって,このソフトウェアは,ホストコンピュータネットワークを,証券取引市場にリンクさせ,投資家の指定した価格で株式を買い,その後,指定された所望の利益価格を加え,第2の注文をするための,2パートのシーケンス化された証券取引注文を開始するものであり,
LOCK処理のパート1を実行するために使用される投資家の入力要求を表す,買い/売り指示2は,パート1の買いから,パート2の売り11に切り替わるものであり,株式銘柄5,また,株式の量6は,パート1およびパート2において同じままであり,パート1の価格選択は,市場相場でトレードを実行する成行注文7または価格を指定する指値注文8かの何れかを含み,投資家が指値注文を実行するためには通常,ボックスをチェックし,実行する価格を入力するものであり,LOCKボックス9およびLOCK価格10における情報と組み合わされたパート1注文実行価格は,LOCKトランザクションのパート2の指値注文実行価格を形成し,
LOCK注文をオープンおよびクローズするためのLOCK処理は,投資家17が,LOCK注文19を発行することで始まり,この注文はLOCK注文として識別され,LOCK管理モジュール処理12に入力され,LOCK管理モジュール12は,ソフトウェアインターフェースを備え,このソフトウェアインターフェースは,LOCK注文19ドキュメントを受信し,追跡記録33を生成し,LOCKインクリメント35を記録し,LOCK注文発行34の前半の発行をモニタし,この注文34が,証券取引所23にトレードピット36を入力し,注文が満たされる37と,第1の注文が満たされたことを記録し38,LOCK注文の後半を生成し39,LOCK注文の後半を発行し40,LOCK注文の後半40がトレードピット41へ再発行され,第2の注文が満たされる42と,口座残高を記録43し,投資家17に,LOCKトランザクションが完了したことを通知するものであり,
代替実施形態は,この処理を再度自動的に繰り返すオプションを含み,LOCK管理モジュール12に再入力するために,サイクル数44の追加によって,投資家は,より多くの利益を得ることを望んで,LOCK処理に自動的に再入力できる,
ホスト証券ブローカ。」

(1-2)甲第2号証
甲第2号証には,次の事項が記載されている。
ア 「【0037】その後,商品価格の変動に応じて,委託者2が「差金決済」により取引を終了させる場合,委託者2は受託者3に対して転売または買戻しの「仕切注文」を指示する(ステップ(E))。新規注文の場合と同様に,この指示も受託者3のホームトレードサイトにアクセスすることにより行われ,仕切注文に関する注文レコードが注文管理データベース33に新規に追加される。ここで,「差金決済」とは,当初の売買契約の価格と,その後の転売買戻しによる価格との差金の受け払いだけで決済を行い,現物およびその代金の授受を伴わない決済方法をいう。また,「仕切注文」とは,買建玉を転売し,または売建玉を買い戻すといった取引を終了させる注文をいう。」

イ 「【0041】4.注文の種類
本トレーディングシステムの特徴の説明に先立ち,その導入事項として,商品先物で用いられる注文の種類について説明する。注文には,上述した「新規注文」と「仕切注文」という分類の仕方の他に,「成行注文」,「指値注文」および「逆指値注文」という別の分類の仕方もある。新規注文または仕切注文のどちらを行うにしても,必ず「成行注文」,「指値注文」または「逆指値注文」といった執行条件を指定しなければならない。ここで,「成行注文」とは,売買価格を指定しない注文をいい,「いくらの価格でもいいから買いたい,若しくは売りたい」といった状況,すなわち,値段に構わずとにかく売買の成立を優先させたい場合に利用される。ザラバ取引の場合,成行注文は指値注文よりも優先的に約定される(価格優先)。また,同じ成行注文であれば,先に出した注文が優先的に約定される(時間優先)。また,「指値注文」とは,指定価格,若しくはそれより有利な価格でのみ成立する注文をいい,「いくら以下なら買いたい,いくら以上なら売りたい」という条件が付された注文である。例えば,「東京金の2000年4月限を1,100円の指値で買い」という注文が成立する場合,必ず1,100円以下の約定価格で成立し,その取引価格が1,100円を上回っている間は成立しない。この注文を決済時に用いる場合は,主に利益確定の水準を設定する形になる。さらに,「逆指値注文」とは,指定価格,若しくはそれより不利な価格でのみ成立する注文をいい,「いくら以上なら買いたい,いくら以下なら売りたい」という条件が付された注文である。例えば,東京小豆を12,000円で買った顧客が,11,500円を割り込む価格がついたら小豆を損切りしようと考えた場合,11,490円の逆指値で売り注文を出しておけば,11,490円以下になった時点で注文が執行される。この注文を決済時に用いる場合は,主に損失確定の水準を設定する形になる。」

ウ 「【0081】これに対して,「成立前提連続ダブル仕切注文」を利用すれば,委託者2の負担を生じさせることなく,モデルケース4のような発注形態を容易に実現することができる。図22は,「成立前提連続ダブル仕切注文」を利用した発注形態の説明図である。まず,委託者2は,新規注文を入力する際,新規注文と,その新規注文が成立した場合に有効としたい2種類の仕切注文(指値注文および逆指値注文)とを一括して入力する。これを受けて,受託者3は,新規注文を発注する。2種類の仕切注文は,先に発注された新規注文が成立するまで発注されない。発注した新規注文が成立すると,それと同一の取引対象に係る保留されていた2種類の仕切注文(指値注文および逆指値注文)が有効となって自動的に発注される。その後,市場価格が条件に合致して,一方の仕切注文が成立した場合,他方の仕切注文は自動的に取り消される。図22からわかるように,「成立前提連続ダブル仕切注文」では,新規注文の入力時に,同一の取引対象に関する新規注文の入力と2種類の仕切注文の入力とを一括して行えるため,わずか1回のアクションでモデルケース4のような発注形態を実現することができる。また,新規注文が成立すれば,仕切注文が自動的に有効となるため,従来のホームトレードのように,市場の値動きと新規注文の成立状況とを随時チェックする必要がない。そのため,委託者2の利便性を著しく向上させることができる。」

エ 「【0082】つぎに,「成立前提連続ダブル仕切注文」におけるシステムの処理手順について説明する。図23は,委託者側のパーソナルコンピュータ21の表示装置に表示される「成立前提連続ダブル仕切注文」時における表示画面の説明図である。委託者2は,表示装置上に表示された入力画面48において,新規注文の内容に関する必要情報を順次入力し,すべての必要情報の入力が完了した後に,「続けてダブル仕切注文入力へ」ボタン48aを押す。このアクションによって,新規注文の取引対象と同一物に関するダブル仕切注文の入力画面49が表示される。委託者2は,この入力画面49において,指値・逆指値注文のそれぞれについて指値を設定する。ここで,新規注文入力時には,新規注文の成立価格(約定価格)は未定である。したがって,この新規注文の成立により発注される指値・逆指値注文の各執行条件としては,「新規注文成立価格より何円プラス(またはマイナス)した価格以上(または以下)」といった設定となる。委託者2は,すべての必要情報を入力した後に,「実行/送信」ボタン49aを押す。そして,このアクションによって表示された受付内容確認画面50で,新規注文の内容とそれに関する仕切注文(指値・逆指値注文)の内容とを確認した後に,再度「送信/実行」ボタン50aを押す。これにより,同一の取引対象に関する新規注文と仕切注文とが同時に受託者側システムへ送信される。」

オ 「【0083】図24は,「成立前提連続ダブル仕切注文」により発生する注文レコードの説明図である。「成立前提連続ダブル仕切注文」では,新規注文,仕切注文としての指値注文および逆指値注文の3つがセットになっており,それぞれの対応レコードである親A,子Aおよび子Bは,「RNO=001」によって関連付けられている。「成立前提連続注文」と同様に,この注文の受付時点において,新規注文は,必要情報のすべてが記述された完全な注文レコード(親A)として注文管理データベース33に追加される。これに対して,2つの仕切注文は準備レコード(子A,子B)として生成される。」

カ 前記アないしオによると,甲第2号証には次の発明(以下,「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲2発明>
「トレーディングシステムにおいて,
商品先物で用いられる注文の種類には,「新規注文」と「仕切注文」という分類があり,「仕切注文」とは,買建玉を転売し,または売建玉を買い戻すといった取引を終了させる注文をいい,また,他に「成行注文」,「指値注文」および「逆指値注文」という別の分類の仕方もあり,新規注文または仕切注文のどちらを行うにしても,必ず「成行注文」,「指値注文」または「逆指値注文」といった執行条件を指定しなければならないものであり,ここで,「成行注文」とは,売買価格を指定しない注文をいい,また,「指値注文」とは,指定価格,若しくはそれより有利な価格でのみ成立する注文をいい,さらに,「逆指値注文」とは,指定価格,若しくはそれより不利な価格でのみ成立する注文をいい,「いくら以上なら買いたい,いくら以下なら売りたい」という条件が付された注文であり,この注文を決済時に用いる場合は,主に損失確定の水準を設定する形になるものであり,
「成立前提連続ダブル仕切注文」を利用した発注形態では,委託者2は,新規注文を入力する際,新規注文と,その新規注文が成立した場合に有効としたい2種類の仕切注文(指値注文および逆指値注文)とを一括して入力し,これを受けて,受託者3は,新規注文を発注し,2種類の仕切注文は,先に発注された新規注文が成立するまで発注されないものであり,発注した新規注文が成立すると,それと同一の取引対象に係る保留されていた2種類の仕切注文(指値注文および逆指値注文)が有効となって自動的に発注され,その後,市場価格が条件に合致して,一方の仕切注文が成立した場合,他方の仕切注文は自動的に取り消される,
トレーディングシステム。」

(2)本件訂正発明1についての判断
(2-1)対比
本件訂正発明1と甲1発明を対比する。
ア 本件訂正発明1の「金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置」について
甲1発明における「ホスト証券ブローカ」は,「証券市場に投資する投資家と,彼らのトランザクションを取り扱うために,コンピュータネットワークを備えた(E-Trade,Ameritrade等のような)」ものであり,また,「ホストコンピュータネットワークは,電子証券注文テンプレートを提供するデータベースサーバを含み,このテンプレートで,ホストコンピュータネットワークは,証券トランザクション要求を記憶および体系化し,これによって,投資家がトランザクションを開始した場合に,このネットワークは,この要求を処理し,(ニューヨーク証券取引所,ナスダック等のような)証券取引所へ送信できるものであり」との事項から,当該「ホスト証券ブローカ」は実質的にコンピュータ装置であって,投資家からの証券トランザクション要求を記憶して処理し,証券市場へ送信するものであることから,金融商品の売買取引を管理する装置であることは明らかである。
そうすると,本件訂正発明1と甲1発明は,「金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置」である点で共通する。

イ 本件訂正発明1の「前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段」について
甲1発明では,各投資家またはブローカのための各コンピュータワークステーションは,ホストコンピュータネットワークへユーザコマンドを送るための手段を備えており,また,「LOCK処理のパート1を実行するために使用される投資家の入力要求を表す,買い/売り指示2は,パート1の買いから,パート2の売り11に切り替わるものであり,株式銘柄5,また,株式の量6は,パート1およびパート2において同じままであり,パート1の価格選択は,市場相場でトレードを実行する成行注文7または価格を指定する指値注文8かの何れかを含み,投資家が指値注文を実行するためには通常,ボックスをチェックし,実行する価格を入力するものであり」との事項から,売買の対象とする株式銘柄や量等の注文申込みの情報が入力され,そして,「LOCK注文をオープンおよびクローズするためのLOCK処理は,投資家17が,LOCK注文19を発行することで始まり,この注文はLOCK注文として識別され,LOCK管理モジュール処理12に入力され,LOCK管理モジュール12は,ソフトウェアインターフェースを備え,このソフトウェアインターフェースは,LOCK注文19ドキュメントを受信し」との事項から,注文ドキュメントを受信して当該注文を受け付けるものである。
そうすると,本件訂正発明1と甲1発明は,「前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段」を備える点で共通する。

ウ 本件訂正発明1の「該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段」について
甲1発明では上記イで示したように,投資家からの売買の対象とする株式銘柄や量等の注文申込みの情報を受け付けて,上記アで示したように,「ホストコンピュータネットワークは,証券トランザクション要求を記憶および体系化し,これによって,投資家がトランザクションを開始した場合に,このネットワークは,この要求を処理し,(ニューヨーク証券取引所,ナスダック等のような)証券取引所へ送信できる」ものであることから,受け付けた投資家からの株式売買の注文申込み情報に基づいて,証券取引所への株式の売買注文情報を生成し送信するものである。
そうすると,本件訂正発明1と甲1発明は,「該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段」を備える点で共通する。

エ 本件訂正発明1の「一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し」について
甲1発明の「LOCK注文」は,「投資家の指定した価格で株式を買い,その後,指定された所望の利益価格を加え,第2の注文をするための,2パートのシーケンス化された証券取引注文」である。
また,「LOCK注文」は,「LOCK処理のパート1を実行するために使用される投資家の入力要求を表す,買い/売り指示2は,パート1の買いから,パート2の売り11に切り替わるものであり,株式銘柄5,また,株式の量6は,パート1およびパート2において同じままであり,パート1の価格選択は,市場相場でトレードを実行する成行注文7または価格を指定する指値注文8かの何れかを含み,投資家が指値注文を実行するためには通常,ボックスをチェックし,実行する価格を入力するものであり,LOCKボックス9およびLOCK価格10における情報と組み合わされたパート1注文実行価格は,LOCKトランザクションのパート2の指値注文実行価格を形成し」との事項によれば,投資家により,買いまたは売りの指定,株式銘柄の入力,量の入力,成行注文の指定または指値注文の指定及び実行する価格の入力,及び,LOCK価格の入力が行われ,当該注文申込みの情報に基づいて,まずはパート1の注文として,買いまたは売り,株式銘柄,量,成り行き注文または指値注文による注文が生成実行され,その後,パート2の注文として,パート1の買いに対しての売りまたはパート1の売りに対しての買い,同じ株式銘柄,同じ量,パート1注文実行価格にLOCK価格を加算または減算した価格での注文が生成されるものである。
したがって,甲1発明における買いまたは売り,株式銘柄,量,成行注文または指値注文による注文からなるパート1の注文は,本件訂正発明1の「所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報」に相当する。
また,甲1発明におけるパート2の注文におけるパート1注文実行価格にLOCK価格を加算または減算した価格での注文は,すなわち指値注文であるから,パート1の買いに対しての売りまたはパート1の売りに対しての買い,同じ株式銘柄,同じ量,パート1注文実行価格にLOCK価格を加算または減算した価格でのパート2の注文は,本件訂正発明1の「該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報」に相当するものである。
そして,甲1発明におけるパート1の注文とパート2の注文はシーケンス化された1連の注文であることから,これらは注文情報群を形成しているといえ,さらに,甲1発明は「代替実施形態は,この処理を再度自動的に繰り返すオプションを含み,LOCK管理モジュール12に再入力するために,サイクル数44の追加によって,投資家は,より多くの利益を得ることを望んで,LOCK処理に自動的に再入力できる」ものであることから,パート1の注文とパート2の注文からなる注文情報群が,サイクル数で指定された回数繰り返し生成されることは明らかである。
そうすると,本件訂正発明1と甲1発明は,
「一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,を含む注文情報群を複数回生成し」の点で共通している。
しかしながら,本件訂正発明1と甲1発明は,甲1発明が,「前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報」を生成していない点で相違している。

オ 本件訂正発明1の「売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし,前記成行注文を決済する前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,次の前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく,前記成行注文の価格と同じ前記価格の前記指値注文を有効とし,前記第一注文情報に基づく該指値注文が約定されたときに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文および前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせ」について
甲1発明の「LOCK注文をオープンおよびクローズするためのLOCK処理は,投資家17が,LOCK注文19を発行することで始まり,この注文はLOCK注文として識別され,LOCK管理モジュール処理12に入力され,LOCK管理モジュール12は,ソフトウェアインターフェースを備え,このソフトウェアインターフェースは,LOCK注文19ドキュメントを受信し,追跡記録33を生成し,LOCKインクリメント35を記録し,LOCK注文発行34の前半の発行をモニタし,この注文34が,証券取引所23にトレードピット36を入力し,注文が満たされる37と,第1の注文が満たされたことを記録し38,LOCK注文の後半を生成し39,LOCK注文の後半を発行し40,LOCK注文の後半40がトレードピット41へ再発行され,第2の注文が満たされる42と,口座残高を記録43し,投資家17に,LOCKトランザクションが完了したことを通知する」との事項によれば,甲1発明の「LOCK注文」においても,成行注文を指定すれば,売買取引開始時に,パート1の注文として成行注文がなされ,当該注文が満たされるとパート2の注文である指値注文が生成されて発行され,当該注文が満たされると口座残高の記録とLOCKトランザクションが完了したことを通知するものである。
また,甲1発明の「代替実施形態は,この処理を再度自動的に繰り返すオプションを含み,LOCK管理モジュール12に再入力するために,サイクル数44の追加によって,投資家は,より多くの利益を得ることを望んで,LOCK処理に自動的に再入力できる」との事項によれば,甲1発明でも上記(エ)でも説明したように,パート1の注文とパート2の注文からなる注文情報群が,サイクル数で指定された回数繰り返し生成されるものである。
ところで,このサイクル数を指定するオプションは,上記「1.(1)ケ」のFIG6で示されるように「LOCK注文」の前記各種情報の入力時に指定される情報であり,上記「サイクル数44の追加によって,投資家は,より多くの利益を得ることを望んで,LOCK処理に自動的に再入力できる」との事項からして,投資家が改めて注文内容を入力することなく,当該「LOCK注文」として入力した注文内容を再入力できるというものであることから,当該「LOCK注文」として成行注文を指定した場合,2回目の「LOCK注文」として,1回目の「LOCK注文」と同じ注文内容が再入力される,つまり1回目と同じ成行注文が再入力されるとするのが相当である。
なお,この点について,上記「1.(1)ク」には「2つのサイクルを指定する例は,1株あたり50ドルでXYZを100株(1ドルのロック価格で)買い,1株あたり51ドルで売り,50ドルで買い戻し,51ドルで再び売ることを意味するであろう。この投資処理によって,個人投資家は,毎日の小さな株価変動を活用することが可能となるであろう。」との記載があり,これは1回目のパート1の注文が「1株あたり50ドルでXYZを100株(1ドルのロック価格で)買い」,パート2の注文が「1株あたり51ドルで売り」であって,2回目のパート1の注文が「50ドルで買い戻し」,パート2の注文が「51ドルで再び売る」という例であるが,この例の場合に投資家が成行注文を指定したのか,指値注文を指定したのかの記載がないが,1回目と2回目のパート1の注文に価格が指定されていることから,投資家が指値注文を行った場合であると考えられるし,上記注文が再入力されることとも矛盾しない。
そうすると,本件訂正発明1では「売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし,前記成行注文を決済する前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,次の前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく,前記成行注文の価格と同じ前記価格の前記指値注文を有効とし,前記第一注文情報に基づく該指値注文が約定されたときに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文および前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせ」るものであるのに対し,甲1発明では成行注文を指定した場合には,2回目以降も成り行き注文を繰り返し行わせる点で相違している。

以上アないしオによると,本件訂正発明1と甲1発明は,次の点で一致する。
<一致点>
「金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって,
前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,
該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,
該注文情報生成手段は,
一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,を含む注文情報群を複数回生成する金融商品取引管理装置。」

そして,本件訂正発明1と甲1発明は,次の点で相違する。
<相違点1>
本件訂正発明1の「注文情報生成手段」では,「前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報」も生成しているが,甲1発明ではそのような情報は生成していない点。

<相違点2>
本件訂正発明1は「前記注文情報生成手段が生成した前記注文情報を記録する注文情報記録手段」を備え,「前記注文情報記録手段は,生成された前記注文情報群を記録」するのに対し,甲1発明はそのような構成が明記されていない点。

<相違点3>
本件訂正発明1では「売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし,前記成行注文を決済する前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,次の前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく,前記成行注文の価格と同じ前記価格の前記指値注文を有効とし,前記第一注文情報に基づく該指値注文が約定されたときに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文および前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせ」,さらに「前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,前記逆指値注文情報に基づく逆指値注文を停止し,前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに,前記逆指値注文情報と同じ前記注文情報群に含まれる前記第二注文情報に基づく指値注文,及び,当該注文情報群の後に生成される予定の前記注文情報群の生成を停止する」ものであるのに対し,甲1発明ではそのようになっておらず,成行注文を指定した場合には,2回目以降も成行注文を繰り返し行わせる点。

(2-2)相違点についての判断
ア <相違点1,2>について
甲1発明は,上記(2-1)エのとおり,パート1の注文とパート2の注文からなる注文情報群が,サイクル数で指定された回数だけ繰り返し生成されることは明らかであるから,パート1の注文とパート2の注文からなる注文情報群を記録する手段を備えていることは明らかである。
また,甲2記載事項でも示されるように,いわゆる損切りのための「逆指値注文」自体はよく知られた技術である。
そして,甲2発明では,発注した新規注文が成立すると,それと同一の取引対象に係る保留されていた2種類の仕切注文である指値注文および逆指値注文が有効となって自動的に発注される技術が開示されており,当該新規注文と仕切り注文を自動的に繰り返すことについての記載はないものの,仕切り注文時には常に相場価格の想定外の変動リスクが伴うことは明らかである。
そして,甲1発明におけるパート2の注文は仕切り注文であり,常に相場価格の想定外の変動リスクが伴う注文であることから,顧客の損失の拡大を防ぐために甲2発明を適用し,仕切り注文であるパート2における指値注文の生成と共に,逆指値注文を繰り返し生成する構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。このとき,パート1の注文とパート2の注文からなる注文情報群と併せて逆指値注文情報を記録する構成とすることも,当業者が容易に想到し得たことである。

イ <相違点3>について
甲1発明は,「LOCK注文」においてサイクル数を指定することにより,パート1の注文とパート2の注文からなる注文情報群が,サイクル数で指定された回数繰り返し生成されるものであるが,甲第1号証には「LOCK注文」におけるパート1の注文として成行注文が指定された場合に,2回目の「LOCK注文」におけるパート1の注文を自動的に指値注文に変更することは,全く記載がないし,また,「2つのサイクルを指定する例は,1株あたり50ドルでXYZを100株(1ドルのロック価格で)買い,1株あたり51ドルで売り,50ドルで買い戻し,51ドルで再び売ることを意味するであろう。」との例は,「LOCK注文」におけるパート1の注文として指値注文が指定された場合としてその他の記載と矛盾しないものである。
また,一般に,成行注文を行った注文者が,常にその後に指値注文を行うわけではないし,成行注文後に指値注文を行う注文者が常に成行注文の約定価格を指値として注文をするわけでもないから,仮に,「LOCK注文」において成行注文が指定された場合に,2回目の「LOCK注文」における注文を自動的に指値注文にするようにシステムを変更しようとすれば,システムに入力指定されているのが成行注文であって指値注文でないにもかかわらず指値注文を行うとともに,その指値注文における指値が注文者の意志を反映したものとなるようにする必要がある。しかし,甲第1号証には,注文者が指値注文を指定していないにもかかわらず指値注文を行ったり,注文者が具体的に指定していない指値による指値注文を行うことを示唆する記載は見当たらない。甲1発明のシステムは,注文者からの成行注文か指値注文かの入力指定を受けて,注文者からの成行注文はそのまま成行注文として取り扱うものであり,これを注文者が成行注文を行ったにもかかわらず,注文者によって具体的に指定されていない指値での指値注文とみなすようなシステムへと変更することは困難である。
そうすると,甲1発明において,「LOCK注文」として成行注文が指定された場合の2回目のパート1の注文を自動的に指値注文とするようにシステムを変更する動機づけがあるとはいえないし,むしろ,そのようなシステムの変更は阻害されるものである。
なお,甲2発明は,そもそも新規注文と仕切り注文の注文群を繰り返し生成するものではなく,甲第2号証にも,成行注文に対する仕切り注文の約定後に,次の注文として,新規の指値注文とそれに対する仕切り注文を繰り返し行うという注文手法は記載されていない。
したがって,相違点3に係る構成は,当業者が容易に想到し得たものではない。

(2-3)まとめ
以上のとおりであるから,本件訂正発明1は,甲1発明及び甲2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2-4)請求人の主張について
上記相違点2に関連して,請求人は審判請求書において,以下のように主張している。
「甲第1号証の1の[0085]の「1株あたり50ドルでXYZを100株(1ドルのロック価格で)買い,1株あたり51ドルで売り,50ドルで買い戻し,51ドルで再び売ることを意味するであろう。」という記載の例は,パート1で成行注文が採用された場合,成行注文の約定価格が1株あたり50ドルであることを意味する。
そして,甲第1号証の1の[0085]の「・・・50ドルで買い戻し・・・」という記載は,先行する成行注文の約定価格(1株あたり50ドル)と同じ指値価格で買い戻すという意味に他ならない。このことは,パート2における指値注文の指値価格は,パート1の約定価格に基づいて決定されることから明らかなとおり,LOCK注文においては,(1回目の)パート1の約定価格がその後の注文の基礎となることからみて,明らかである。
仮に,当該例において,2サイクル目のパート1の買い注文で1サイクル目のパート1の買い注文と同じ成行注文を繰り返すのであれば,2サイクル目のパート1の成行注文の約定価格は,1サイクル目のパート2の指値注文の約定価格(1ドルあたり51ドル)と同じになってしまう。すなわち,2サイクル目のパート1の成行注文は,1サイクル目のパート2の指値注文で売った価格ですぐに買い戻すことになり,投資として意味がない行為であることから明らかである。また,そもそも「『50ドル』で買い戻し」という値段を指定した注文をしていることからみて,当該注文は,指値注文であることが明らかである。
c 以上から,甲第1号証の1には,LOCK注文において,最初のLOCK注文に関し,パート1の成行注文に続くパート2の指値注文が約定すると,次のLOCK注文のパート1及びパート2の注文に関する注文情報が生成され,パート1に関し,成行注文の約定価格と同じ指値価格の次の指値注文を有効にし,当該次の指値注文が約定すると,パート2に関し,成行注文に続く指値注文の指値価格と同じ指値価格の指値注文を有効にして,当該指値注文が約定するという注文を繰り返す点が開示されている。」
(前記「第2 1(2)ウ」を参照)
しかしながら,上記「(2-1)オ」で述べたように,甲1発明は「LOCK処理に自動的に再入力できる」(The addition of #Number of Cycles# 44 wouldallow the investor to automatically reenter the LOCK process again)というものであって,成行注文であればそれを再入力し,指値注文であればそれを再入力するものであり,また,「2つのサイクルを指定する例は,1株あたり50ドルでXYZを100株(1ドルのロック価格で)買い,1株あたり51ドルで売り,50ドルで買い戻し,51ドルで再び売ることを意味するであろう。」との記載は,2つの注文指定のうち指値注文の場合の例を示したものとするのが相当であり矛盾がない。
また,1回目のLOCK注文において,パート1で成行注文の場合に,2回目のLOCK注文が指値注文となるのであれば,注文の条件を変更した上での自動入力となるが,この点については記載も示唆も一切ないから,請求人の主張には根拠がない。
したがって,請求人の主張を採用することはできない。

(3)本件訂正発明2ないし5についての判断
本件訂正発明2ないし5は,本件訂正発明1をさらに限定したものであるので,本件訂正発明1と同様に,甲1発明及び甲2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(4)本件訂正発明6についての判断
本件訂正発明6は,本件訂正発明1の「金融商品取引管理装置」との語を,「金融商品取引管理システム」に置き換えたものであって,発明を特定する各手段は同一であるから,本件訂正発明1と同様に,甲1発明及び甲2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(5)本件訂正発明7についての判断
本件訂正発明7は「コンピュータを請求項1乃至5の何れか一つに記載の金融商品取引管理装置として機能させることを特徴とするプログラム。」であって,本件訂正発明1ないし5の「金融商品取引管理装置」で行われる情報処理を「プログラム」の発明として請求するものであるから,本件訂正発明1と同様に,甲1発明及び甲2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(6)無効理由1についてのまとめ
以上のとおり,本件訂正発明1ないし7は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではないから,請求人主張の無効理由1によって,本件訂正発明1ないし7についての特許を無効とすることはできない。

2 無効理由2(分割要件違反による新規性欠如)について
(1)分割要件違反について
(1-1)本件特許出願は,特願2008-332599号を親出願(以下,「最初の原出願」という。),特願2013-45238号を子出願とした場合の孫出願に相当するものであるところ,請求人の主張に鑑み,まず孫出願である本件特許出願が子出願である原出願に対し分割要件を満たすか,特に本件訂正発明1ないし7が,原出願(特願2013-45238号,以下,「直前の原出願」という。)の出願当初の明細書等及び分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内のものであるか否かについて検討する。

(1-2)直前の原出願と明細書等(甲第3号証)の記載事項について
直前の原出願について,直前の原出願の出願当初の明細書等から分割直前までに,補正により変更があった箇所は,【特許請求の範囲】,【0009】,【0011】,【0014】,【0016】,【0018】,【0020】段落であり,その他記載は出願当初より変更がない。
そして,直前の原出願の【0009】?【0015】は,「【課題を解決するための手段】」として特許請求の範囲の各請求項に対応する記載であり,【0016】?【0021】は「【発明の効果】」として,各請求項により奏する効果に関する記載である。

(1-3)直前の原出願の明細書に記載された事項と本件特許出願の出願当初の明細書に記載された事項の比較
上記(1-2)のとおり,直前の原出願の出願当初明細書と本件特許出願時の明細書とは,「【課題を解決するための手段】」及び「【発明の効果】」の記載が補正により変更されているものの,「【発明を実施するための形態】」の記載は補正されていない。
そして,本件特許出願の出願当初の明細書の「【発明を実施するための形態】」の記載は,直前の原出願の出願当初明細書及び本件特許出願時の明細書の「【発明を実施するための形態】」の記載と同一である。そして,本件特許出願の訂正された明細書に記載された「【課題を解決するための手段】」である【0009】?【0013】及び「【発明の効果】」である【0014】?【0019】の記載についても,直前の原出願の出願当初明細書及び本件特許出願時の明細書に記載された範囲内のものである。そして,本件特許出願の訂正された特許請求の範囲は,本件特許出願の訂正後の明細書の範囲内のものであるから,直前の原出願の出願当初明細書及び本件特許出願時の明細書の範囲内のものであることは,明らかである。

(1-4)分割要件違反についてのまとめ
以上のとおり,本件特許出願は,適法な分割出願であって,本件特許出願の出願日は,最初の原出願の原出願日に遡及するものと認められる。

(2)無効理由2についてのまとめ
以上によれば,本件特許出願は分割要件を満たしているから,本件特許出願が分割出願の要件を満たしていない不適法な分割出願であることを前提に,本件特許発明1ないし7は,本件出願前に頒布された刊行物である直前の原出願の公開特許公報(甲3)に記載された発明と同一の発明であるから,新規性を欠如する旨の請求人主張の無効理由2は,その前提を欠くものであって,当該無効理由2によって,本件訂正発明1ないし7についての特許を無効とすることはできない。

3 無効理由3(サポート要件違反)について
(1)本件訂正発明1について
ア 請求人は,訂正前の請求項1の構成1Eの「前記指値注文」は,その価格についての限定が何らない結果,任意の指値価格をその指値価格とする指値注文でありさえすればよいという構成である。そして,前述した本件原出願の出願当初明細書等の記載と一致するところの甲第3号証の【0044】,【0062】及び【図7】の記載は,本件特許に係る明細書等の【0044】,【0062】及び【図7】の記載と一致するところ,これらの記載からみて,2回目以降の指値の第一注文の価格を任意の価格に設定できることが形式的にも実質的にも記載されていない,と主張する。

イ また,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを比較し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否か,また,発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲ものであるか否かを検討して判断するのが相当である。

ウ 以上を踏まえて検討をする。
請求人の主張する上記構成については,上記第4の本件訂正により「前記成行注文を決済する前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,次の前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく,前記成行注文の価格と同じ前記価格の前記指値注文を有効とし,」(下線は,当審が付与した。)とされ,訂正前の請求項1の構成1Eの「前記指値注文」は,訂正により,前記成行注文の価格と同じ前記価格であることは明確化された。そして,本件訂正は上記第4 2(4)イのとおり,本件出願の願書に添付した明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。
そして,当該構成を採用することで,上記第4 1(3)アの訂正事項3-1のとおり,「指値注文により金融商品の売買を行う顧客の利便性を向上させつつ,金融商品の指値注文において,システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを繰り返し行うことができて,システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる。」ものであり,当該発明の課題を解決するものである。
よって,本件訂正発明1は,発明の詳細な説明に記載したものである。

(2)本件訂正発明2ないし7について
本件訂正発明2ないし5は,本件訂正発明1の発明特定事項を全て含むものであり,また,本件訂正発明6は本件訂正発明1の「金融商品取引管理装置」を「金融商品取引管理システム」とするものであり,本件訂正発明1と同じ「前記成行注文を決済する前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき,次の前記注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく,前記成行注文の価格と同じ前記価格の前記指値注文を有効とし,」との発明特定事項を含むものであり,また,本件訂正発明7は本件訂正発明1ないし5の金融商品取引管理装置としてコンピュータを機能させるプログラムであり,本件訂正発明1の発明特定事項を全て含むものであるから,本件訂正発明2ないし7についても本件訂正発明1と同様に発明の詳細な説明に記載したものである。

(3)無効理由3についてのまとめ
以上のとおり,本件訂正発明1ないし7は,本件特許に係る明細書等の発明の詳細な説明に記載したものであるから,請求人主張の無効理由3によって,本件訂正発明1ないし7についての特許を無効とすることはできない。



第7 むすび

以上のとおりであるから,本件訂正発明1ないし7についての特許は,無効審判請求書に記載された無効理由1ないし3によって,無効とすべきものでない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
金融商品取引管理装置、金融商品取引管理システムおよびプログラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、外国為替等、金融商品の取引を管理、支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
外国為替等の金融商品の取引方法としては、成行注文と指値注文とが知られている。成行注文とは、注文時の価格で取引を行う注文形態である。一方、指値注文とは、予め顧客から売買値段の指定を受けておき、その金融商品の価格が指定された価格になったときに取引を行う注文形態である。通常、指値注文の場合、金融商品の取扱業者は対象となる金融商品が指定された金額まで下がったときに当該金融商品の買い注文を行い、あるいは、指定された金額まで上がったときに当該金融商品の売り注文を行う。従来、この金融商品の指値注文をコンピュータシステムを用いて行う発明が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-99787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、金融商品の指値注文においては、イフダンオーダーが行われることも多い。本願明細書において、イフダンオーダーとは、順位のある2つの注文を同時に出し、第一順位の注文(以下「第一注文」と称する。)が成立したら、自動的に第二順位の注文(以下「第二注文」と称する。)が有効になる注文形式のことを言う。実際の金融商品取引においては、一の顧客が特定の金融商品について複数のイフダンオーダーを並行して行う場合もある。
【0005】
これに対して、特許文献1のシステムには、イフダンオーダーの指値注文に対応できないという問題がある。また、特許文献1のシステムには、利用客が複数のイフダンオーダーを並行して行いたい場合には、それぞれのイフダンオーダーを個別に注文していかなければならず、顧客の注文手続が煩雑になるという問題がある。
【0006】
一方、金融商品の相場が従来の相場よりも大きく変動してしまい当面回復の見込みがない場合には、当該金融商品を所持する取引者は、損害を最小限に留めるべく当該金融商品の売却を望む場合が多い。しかし、特許文献1のシステムでは、利用客は、指値注文の買い注文によって取得した金融商品を将来の相場の状況に応じて自動的に売却することはできず、またイフダンオーダーを相場の状況に応じて自動的に中止させることができないという問題がある。
【0007】
さらに、特許文献1のシステムには、成行注文でイフダンオーダーを行いたい場合に対応できないという問題もある。
【0008】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、金融商品の成行注文において、システム利用客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを行うことができ、また将来の相場の状況に応じてイフダンオーダーを自動的に中止させることができて、システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる金融商品取引管理装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって、前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と、該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段と、前記注文情報生成手段が生成した前記注文情報を記録する注文情報記録手段とを備え、該注文情報生成手段は、一の前記売買注文申込情報に基づいて、所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と、該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と、前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し、前記注文情報記録手段は、生成された前記注文情報群を記録し、前記注文情報生成手段は、売買取引開始時に、成行注文を行うとともに、該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし、前記成行注文を決済する前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき、次の前記注文情報群の生成を行うと共に、該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく、前記成行注文の価格と同じ前記価格の前記指値注文を有効とし、前記第一注文情報に基づく該指値注文が約定されたときに、当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文および前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文を有効にし、以後、前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と、前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と、前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の、次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせ、前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき、前記逆指値注文情報に基づく逆指値注文を停止し、前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに、前記逆指値注文情報と同じ前記注文情報群に含まれる前記第二注文情報に基づく指値注文、及び、当該注文情報群の後に生成される予定の前記注文情報群の生成を停止することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う約定情報生成手段を備え、前記約定情報生成手段は、前記注文情報記録手段に記録された個々の前記注文情報のうち、前記第一注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理と、前記第二注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理とを、予め定められた回数だけ繰り返すことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成に加え、前記注文情報生成手段は、前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに、前記第一注文情報に基づく指値注文および前記第二注文情報に基づく指値注文を停止し、前記約定情報生成手段は、前記逆指値注文情報に基づいて約定を行った場合、該逆指値注文情報を生成した前記売買注文申込情報に対応して生成される前記第一注文情報および第二注文情報のうち、前記逆指値注文情報の生成時点で未生成である前記注文情報を、全て前記注文情報記録手段から消去するキャンセル処理を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の構成に加え、前記約定情報生成手段は、一旦成立した前記金融商品の注文に対するキャンセル要求があった場合、該キャンセル要求のあった注文に対応する前記第一注文情報および/又は前記第二注文情報および/又は前記逆指値注文情報のうち、約定前の前記注文情報を全てキャンセル処理することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4の何れかに記載の構成に加え、特定顧客の預金残高情報を記録する顧客口座情報記録手段を備え、前記注文情報記録手段には、前記第一注文情報および前記第二注文情報の注文価格に基づく金額情報が属性情報として記録され、前記注文情報生成手段は、前記注文価格に基づく情報を前記預金残高情報と比較し、該預金残高情報の値が前記注文価格に基づく金額情報の値以上である場合に、前記第一注文情報および第二注文情報を生成することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理システムであって、前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と、該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段と、前記注文情報生成手段が生成した前記注文情報を記録する注文情報記録手段とを備え、該注文情報生成手段は、一の前記売買注文申込情報に基づいて、所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と、該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と、前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し、前記注文情報記録手段は、生成された前記注文情報群を記録し、前記注文情報生成手段は、売買取引開始時に、成行注文を行うとともに、該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし、前記成行注文を決済する前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき、次の前記注文情報群の生成を行うと共に、該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく、前記成行注文の価格と同じ前記価格の前記指値注文を有効とし、前記第一注文情報に基づく該指値注文が約定されたときに、当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文および前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文を有効にし、以後、前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と、前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と、前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の、次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせ、前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき、前記逆指値注文情報に基づく逆指値注文を停止し、前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに、前記逆指値注文情報と同じ前記注文情報群に含まれる前記第二注文情報に基づく指値注文、及び、当該注文情報群の後に生成される予定の前記注文情報群の生成を停止することを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、プログラムであって、コンピュータを請求項1乃至5の何れか一つに記載の金融商品取引管理装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、請求項6に記載の発明によれば、金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と、注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段と、注文情報生成手段が生成した注文情報を記録する注文情報記録手段とを備え、注文情報生成手段は、一の売買注文申込情報に基づいて、所定の金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と、金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と、金融商品の売り注文または買い注文の他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し、売買取引開始時に、成行注文を行うとともに、該成行注文を決済するための指値注文を有効とし、成行注文を決済する指値注文が約定されたとき、注文情報群の生成を行うと共に、生成された注文情報群の第一注文情報に基づく指値注文を有効とし、以後、第一注文情報に基づく指値注文の約定と、第一注文情報に基づく指値注文の約定が行われた後の第二注文情報に基づく指値注文の約定と、第二注文情報に基づく指値注文の約定が行われた後の、次の注文情報群の生成とを繰り返し行わせる。これにより、指値注文により金融商品の売買を行う顧客の利便性を向上させつつ、金融商品の指値注文において、システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを繰り返し行うことができて、システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、注文情報に基づいて金融商品の約定を行う約定情報生成手段とを備え、第一注文情報、第二注文情報に基づいて金融商品の約定を行う約定情報生成手段を備え、約定情報生成手段は、注文情報記録手段に記録された個々の注文情報のうち第一注文情報に基づいて金融商品の約定を行う処理と第二注文情報に基づいて金融商品の約定を行う処理とを複数回繰り返し行う。これにより、金融商品の指値注文において、システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを行うことができ、また将来の相場の状況に応じてイフダンオーダーを自動的に中止させることができて、システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、逆指値注文情報に基づく逆指値注文が約定されたときに、第一注文情報に基づく指値注文および第二注文情報に基づく指値注文を停止し、約定情報生成手段は、逆指値注文情報に基づいて約定を行った場合、逆指値注文情報を生成した売買注文申込情報に対応して生成される第一注文情報および第二注文情報のうち、逆指値注文情報の生成時点で未生成である注文情報を、全て注文情報記録手段から消去するキャンセル処理を行う。これにより、簡単な処理で、指値取引によって生ずる損害を最小限に留めることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、一旦成立した金融商品の注文に対するキャンセル要求があった場合、キャンセル要求のあった注文に対応する第一注文情報および/又は第二注文情報および/又は逆指値注文情報のうち、約定前の注文情報を全てキャンセル処理する。これにより、金融商品の相場が従来の相場よりも大きく変動してしまい当面回復の見込みがない場合等において、指値取引を行う顧客が被る損害を最小限に留めることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、特定顧客の預金残高情報を記録する顧客口座情報記録手段を備え、注文情報記録手段には第一注文情報および第二注文情報の注文価格に基づく金額情報が属性情報として記録され、注文情報生成手段は注文価格に基づく情報を預金残高情報と比較し、預金残高情報の値が注文価格に基づく金額情報の値以上である場合に、第一注文情報および第二注文情報を生成する。これにより、支払いが確実にできる場合にのみイフダンオーダーによる指値注文を受け付け、支払い不能による商取引上の支障が生ずることなくシステムを運用できる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、本発明の金融商品取引管理装置をプログラム化し、多様なコンピュータハードウェア上で実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の金融商品取引管理システムにおけるシステム構成図及び金融商品取引管理装置の機能ブロック図である。
【図2A】同上金融商品取引管理装置の注文テーブルのフィールド定義の模式図である。
【図2B】同上金融商品取引管理装置の顧客口座情報テーブルのフィールド定義の模式図である。
【図2C】同上金融商品取引管理装置の通貨ペア注文条件テーブルのフィールド定義の模式図である。
【図3】同上金融商品取引管理装置における、イフダンオーダーによる指値注文を成立させる際の処理手順を示すフローチャートである。
【図4A】同上金融商品取引管理装置における、イフダンオーダーによる指値注文の成立後の処理手順を示すフローチャートである。
【図4B】同上金融商品取引管理装置における、イフダンオーダーによる指値注文の成立後の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】クライアント端末の表示部に表示される第二の入力画面のイメージ図である。
【図6】同上金融商品取引管理装置がクライアント端末の表示部に表示させる注文情報群表示画面のイメージ図である。
【図7】同上金融商品取引管理装置における、イフダンオーダーによる指値注文に基づく約定処理を模式的に表したタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の一の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本実施形態の金融商品取引管理システムのシステム構成図及び機能ブロック図である。同図に示すとおり、金融商品取引管理システム1Aは、金融商品取引管理装置1と、n個(n≧1)のクライアント端末2_(1)?2_(n)とを備えており、金融商品取引管理装置1とクライアント端末2_(1)?2_(n)は、WAN(Wide Area Network)としてのインターネット3を介して相互に交信可能である。本実施形態の金融商品取引管理システム1Aは、金融商品として外国為替を取扱う。これにより、イフダンオーダーによって指値注文による取引を行う需要の高い金融商品について金融商品取引管理システム1Aを適用し、金融商品取引管理システム1Aを利用する顧客の利便性を一層高めることができる。
【0023】
金融商品取引管理装置1は、金融商品の取扱業者が管理し運用するサーバコンピュータであり、Webサーバ機能、大容量のデータを保存するデータベース機能を備えている。クライアント端末2_(1),・・・,2_(n)は、金融商品の売買を行う個人又は法人が所持し使用する、データ通信機能を有する通信端末であって、パーソナルコンピュータ、携帯電話端末等がこれに該当する。クライアント端末2_(1),・・・,2_(n)は、マウスやキーボード等各種指示を入力するために用いられる操作部21_(1),・・・,21_(n)、LCD(Liquid Crystal Display)等からなり操作部21_(1),・・・,21_(n)から入力された各種指示等や各種画像を表示する表示部22_(1),・・・,22_(n)を有している。なお、クライアント端末2_(1),・・・,2_(n)、操作部21_(1),・・・,21_(n)、表示部22_(1),・・・,22_(n)は同じ構成を持つので、以下、区別する必要がある場合を除き、クライアント端末2、操作部21、表示部22とする。
【0024】
図1には図示しないが、金融商品取引管理装置1は少なくとも1のCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)、及び、CPUの作業領域として機能するRAM(Random Access Memory)、起動用ブートプログラム等が記録されたROM(Read Only Memory)、各種プログラムやデータ等が記録されるハードディスク等の補助記憶装置、データの送受信に用いる通信インターフェース等が設けられている。補助記憶装置には、OS(Operating System)用プログラム、各種アプリケーションプログラム、データベースに記録されたデータ等が記録されており、これらのプログラムやデータはCPUの演算処理により、ハードウェア資源と協働して各種機能を実現する。
【0025】
図1に示す通り、金融商品取引管理装置1は、上述した各種プログラムとハードウェア資源とに基づいて実現される機能手段としてのデータ処理部10、及び、データ処理部10にて処理される各種データが記録されるデータベース18を有する。データ処理部10は金融商品取引管理装置1において用いる各種データの生成、加工等の処理を行うものであり、更に、同じく機能手段としてのフロントページ配信部11、注文入力受付部(注文入力受付手段)12、入出金情報生成部13、約定情報生成部(約定情報生成手段)14、口座情報生成部15、注文情報生成部(注文情報生成手段)16、データベース(DB)接続基底部17、価格情報受信管理部19を有している。
【0026】
注文入力受付部12は、クライアント端末2から入力された各種の注文に関するデータを受け付け、金融商品の注文を成立させるために必要な各種処理を行う。
【0027】
入出金情報生成部13は、クライアント端末2から入出金のリクエストを受け付け、リクエストに基づいて入出金の一覧表を作成する。
【0028】
注文情報生成部16は、注文入力受付部12が処理した情報に基づいて、成立した金融商品の注文に関する情報を生成する。ここでの注文には、いわゆる成行注文、指値注文、指値注文のイフダンオーダーに加え、成行注文のイフダンオーダーも含まれる。
【0029】
約定情報生成部14は、注文情報生成部16が生成した注文に基づく約定処理、及び、完了した約定処理に関する情報を顧客のクライアント端末2に送るための処理を行う。なお、ここでの「約定」とは、顧客の注文に基づいて金融商品の売買を成立されるための各種の手続並びに処理のことをいう。
【0030】
口座情報生成部15は、顧客の預金残高情報を生成し、預金残高情報を証拠金情報(即ち、注文の約定を実現できることを裏付けるための情報)として管理する機能を有する。なお、口座情報生成部15において生成される預金残高に関する情報は、現実の預金残高と整合性を取るために、銀行等の金融機関が提供する、顧客の現実の預金残高に関する情報と定期的に照合される。
【0031】
データベース接続基底部17は、データ処理部10において生成、加工処理されたデータとデータベース18にて記録されるデータとの変換(例えば論理的データ構造と物理的データ構造との相互変換)を行うと共に、データ処理部10とデータベース18との間でデータを交信するために必要な処理を行う。
【0032】
データベース18は、金融商品取引管理装置1にて用いられるデータを記録する。本実施形態におけるデータベース18はリレーショナルデータベースによって形成するが、例えばオブジェクトデータベース等、大量のデータの記録や書換えに適したものであればどのような形式を用いてもよい。データベース18には、「注文情報記録手段」としての注文テーブル181、「顧客口座情報記録手段」としての顧客口座情報テーブル182、通貨ペア注文条件テーブル183、シーケンス番号テーブル184が記録されている。シーケンス番号テーブル184には注文情報(後述)ごとに一意に付されるシーケンス番号が記録される。
【0033】
フロントページ配信部11は、クライアント端末2の表示部22にされる画像データを作成し、作成した画像データをクライアント端末2に送信する。
【0034】
価格情報受信管理部19は、金融商品取引管理装置1にて扱う金融商品の価格についての情報を取得して保存し、保存した情報に対し、データ処理部10にて用いるために必要な処理を行う。本実施形態においては、価格情報受信管理部19は外為の相場価格の情報を取得・保存する。
【0035】
図2Aは注文テーブル181のフィールド定義の模式図、図2Bは顧客口座情報テーブル182のフィールド定義の模式図、図2Cは通貨ペア注文条件テーブル183のフィールド定義の模式図である。これらの図に示す通り、各テーブル181,182,183は項目数分のフィールドを有し、フィールドの名称(フィールド名)、文字や数値や日時等のデータ型(型)、ビット長等のデータ長(長さ)、空欄不可指定(Not Null)、デフォルト値の有無(デフォルト値)、データの項目名(備考)等が規定される。
【0036】
上述の金融商品取引管理装置1においては、金融商品の指値取引が行われる際、一の予約注文によって、同一種類の複数の金融商品の指値注文を複数のイフダンオーダーによって行うことができる。
【0037】
次に、本実施形態の金融商品取引管理システム1Aを用いて成行リピートイフダンオーダーを行うときの取引手順について説明する。
【0038】
図3は、本実施形態の金融商品取引管理装置1における、成行リピートイフダンオーダーを行う際の処理手順を示すフローチャートである。以下、同図に基づいて注文時の処理手順を説明する。
【0039】
金融商品取引管理システム1Aを利用する顧客は、クライアント端末2を用いて金融商品取引管理装置1にアクセスする。金融商品取引管理装置1のフロントページ配信部11は、アクセスのあったクライアント端末2の表示部22に、第一の入力画面(図示せず)、及び図5にイメージ図を示す第二の入力画面40を表示させる。
【0040】
第一の入力画面(図示せず)には、取引可能な通貨ペアの選択ボタンと、売買形態の選択ボタンと、取引形態(成行注文、指値注文、イフダンオーダーの指値注文、イフダンオーダーの成行注文および逆指値注文)の選択ボタンと、注文の有効期限(特定の年、月、あるいは無期限、等)を選択する有効期限選択ボタンと、各選択ボタンによる選択内容を確定させるための「選択」ボタン(いずれも図示せず)が設けられている。顧客は、売買を希望する通貨ペア、例えば日本円と米国ドルの通貨ペアの選択ボタンをクリックし、希望する売買形態、例えば「買い」の新規注文(即ち、新しくポジション(外貨の持高)を持つための注文)を選択する選択ボタンをクリックし、イフダンオーダーの成行注文の選択ボタンをクリックし、注文の有効期限として「無期限」を選択し、更に「選択」ボタンをクリックすると、金融商品取引管理装置1のフロントページ配信部11は、クライアント端末2の表示部22に第二の入力画面を表示させる。
【0041】
図5に示す通り、第二の入力画面40には第一の入力画面(図示せず)において入力された事項、即ち、日本円と米国ドルの通貨ペアを示す表示41、注文の売り/買いの区別を示す表示42、注文形式が成行イフダンであることを示す表示43および有効期限が無期限であることの表示49に加えて、取引業者が提供するサービスの種類を入力する欄44、一注文における一ポジションごとの金額を入力するポジション金額入力欄45、一ポジションの第一注文が約定した後に一ポジションの第二注文が約定した際の利益額を指定するための利益額入力欄46、「逆指値注文情報」としての逆指値注文の約定価格を入力する逆指値注文価格入力欄47および注文形式としてリピートイフダンを指定するためのリピートイフダン入力欄48が表示される。顧客は、第二の入力画面40の各入力欄44?48によって、各種の指定を行う。
【0042】
ここで、成行リピートイフダンとは、リピートイフダンを成行注文に適用した注文方法である。即ち、通常のリピートイフダンでは、イフダンオーダー(第一注文として指値買い注文または指値売り注文の一方を行ったのち、第二注文として指値買い注文または指値売り注文の他方を行う取引方法)を、自動的に複数回繰り返す。これに対して、成行リピートイフダンでは、一回目のイフダンでは、第一注文で買い注文または売り注文の一方を成行で行ったのち、第二注文で買い注文または売り注文の他方を指値で行う。第二注文の指値は、予め指定することとしてもよいし、成行注文の価格等に応じて自動的に設定されることとしても良い。本実施形態では、第二注文は、第一注文とは反対の売買方向であり且つ同じ注文金額となるように、自動的に決定される。また、第二注文の指値価格は、価格自体を予め指定しても良いが、成行価格との比率または金額差が予め設定された値となるように自動的に決定することもできる。この第二注文の約定の後、指値の第一注文(このときの指値価格は一回目の成行注文での約定価格とする)と指値の第二注文とからなるイフダンが、複数回繰り返される。加えて、本実施形態では、逆指値注文も行われる。この逆指値注文も、第一注文とは反対の売買方向であり且つ同じ注文金額となるように指定される。逆指値注文の指値価格も、価格自体を予め指定しても良いが、成行価格との比率または金額差が予め設定された値となるように自動的に決定することもできる。
【0043】
なお、図5には示されていないが、第二の入力画面40には、成行リピートイフダンオーダーをキャンセルするための注文キャンセルボタン(図示せず)を設けることが望ましい。
【0044】
図5に示す状態で顧客が第二の入力画面40の注文確認ボタン(図示せず)をクリックすると、第一の入力画面(図示せず)、第二の入力画面40にそれぞれ入力された注文内容が金融商品取引管理装置1の注文入力受付部12に入力される(図3のステップS1)。
【0045】
ステップS1のあとで、注文入力受付部12は、入力された注文の内容を確認する。具体的には、第一の入力画面(図示せず)において選択された期限を確認し、さらに、入力されたデータの注文価格について検査を行う(ステップS2)。この実施形態では、第一注文の価格は成行注文によって決定されるので、第二注文の価格のみが設定される。第二注文の指値価格が予め指定されているときは、この価格を価格情報受信管理部19に受信された現在の為替相場価格と対比して、適正価格か否かが検査される。
【0046】
第二注文の価格が適正価格と判断された場合(ステップS3の“No”)、口座情報生成部15が顧客口座情報テーブル182の当該顧客の証拠金情報を取得する。具体的には、図2Bに示す“amnt”フィールド182aに対応して記録された数値データが証拠金情報として取得される。
【0047】
注文入力受付部12は、取得された証拠金情報と顧客の注文総額(即ち、各入力欄44?48に入力された内容に基づいて算出される注文総額)とを対比し、証拠金の額が注文総額以上であるか否かを確認する。注文情報生成部16は、証拠金の額が注文総額以上である場合(ステップS5の“No”)の場合にのみ、注文情報を生成する。これにより、顧客が確実に支払いができる場合にのみイフダンオーダーによる指値注文を受け付けることができる。
【0048】
ここで、この実施の形態においては、注文情報生成部16は、第一注文を新規の成行注文の注文情報として生成し、第二注文を決済の指値注文の注文情報として生成し、逆指値注文を決済の逆指値注文の注文情報として生成する。第二注文を決済の指値注文の注文情報として生成することにより、第一順位の注文情報によって生じた注文による利益を第二順位の注文情報によって逐次確定させ、注文手続や金融商品取引管理システム1A内における情報処理の煩雑化を防止できる。更に、逆指値注文を決済の逆指値注文の注文情報として生成することにより、逆指値注文を、真に逆指値注文が必要とされる、顧客が指値取引によって生ずる損害を最小限に留める為に決済手続を行う場面のみに限定できて、逆指値注文の乱用防止と金融商品取引管理システム1A内における情報処理の煩雑化を防止とを図ることができる。
【0049】
証拠金の額が注文総額以上である場合(ステップS5の“No”)、注文入力受付部12は、通貨ペア注文条件テーブル183に記録されたデータ等を元に、注文条件が上述したもの以外の成行注文の各種条件を満たしているか否かを確認する(ステップS6)。
【0050】
成行注文の各種条件を満たしていない場合(ステップS7の“Yes”)、注文入力受付部12は入力された注文をエラーとして扱い、注文の受付を拒絶する(ステップS10)。
【0051】
成行注文の各種条件を満たしている場合(ステップS7の“No”)、フロントページ配信部11は、クライアント端末2の表示部22に、確認画面(図示せず)を表示させる。確認画面(図示せず)には第二の入力画面40にて顧客によって入力、選択された注文条件が列記されており、列記された内容で間違いない場合にクリックする承認ボタン(図示せず)が設けられている。
【0052】
顧客が操作部21の操作により承認ボタン(図示せず)をクリックすると、金融商品取引管理装置1の注文情報生成部16はステップS1にて入力されたデータに基づいて注文情報を生成する(ステップS8)。具体的には、上記手順において入力された複数のデータを、注文価格を単位としてまとめ、各情報の単位に、シーケンス番号テーブル184に記録された注文にシーケンス番号を付与することで各注文情報を形成する。なおこのとき、シーケンス番号テーブル184には、注文情報に使用されたシーケンス番号を未使用の番号と識別するための情報が付与される。一回のステップS8の手順にて形成される複数の注文情報は、注文情報群(以下単に「注文情報群」と称する。)を形成する。
【0053】
注文情報生成部16は、生成された注文情報群を注文テーブル181に記録する(ステップS9)。具体的には、図2Aに示す各フィールド名に対応させて、該当する注文情報(即ち“備考”カラム181aの項目に対応するデータ)が記録される。例えば、ステップS8にて付与されたシーケンス番号は“ord_seq”フィールド181bに対応する。“cust_seq”フィールド181cは顧客ごとに一意に定められた顧客番号に“style_id”フィールド181dは商品名に、それぞれ対応する。“ccy_pair_id”フィールド181eは、通貨ペア毎に一意に定められたID番号に対応する。このID番号と通貨ペアとの組合わせは、データベース中に別途設けられたIDテーブル(図示せず)中に記録されている。“buy_sell_id”フィールド181fは売り注文、買い注文のいずれであるかを示すデータ、“ord_rate”フィールド181gは注文価格、“limit_time”フィールド181hには注文期限が対応する。“ord_cond”フィールド181iは注文種別(例えば、成行注文、指値注文、逆指値注文等の種別を識別するための識別情報)に対応する。“new_close”フィールド181jは新規注文、継続注文のいずれであるかを示すデータに対応する。“ifd_ord_seq”フィールド181kはイフダンオーダーのシーケンス番号に記録される。“repeat_flag”フィールド181mは、注文種別が成行リピートイフダンオーダーであることを識別するための識別情報が記録される。以上の手順より、本実施の形態における注文処理は完了する。
【0054】
注文処理が完了すると、注文情報生成部16はまず最初の注文情報群(以下「第一の注文情報群」と称する。)を生成する。なお、この生成された時点において、注文情報群に含まれる、第一注文は有効な注文情報(顧客から正式に依頼された注文のこと。本明細書において同じ。)として生成されているが、同じ注文情報群に含まれる、第二順位の注文情報としての第二注文情報は、無効な注文情報(すなわち、当該注文情報を用いた一連の処理が開始されていない注文情報。本明細書において同じ。)として生成されている。注文情報の有効/無効の設定を行うためには、例えば注文テーブル181に専用のフラグ(図示せず)を設ければよい。
【0055】
フロントページ配信部11は、クライアント端末2の表示部22に図6にイメージ図を示す注文情報群表示画面50を表示させる。同図に示す通り、注文情報群表示画面50には、生成された、第一の注文情報群50Aに含まれる「注文情報」のひとつである、「第一注文情報」としての第一注文51a、同じく第一の注文情報群50Aに含まれる「注文情報」のひとつである、「第二注文情報」としての第二注文51b、同じく第一の注文情報群50Aに含まれる「注文情報」のひとつである、「逆指値注文情報」としての逆指値注文51cが表形式で表示される。これらの注文51a,51b,51cは上述の第一の入力画面(図示せず)、第二の入力画面40(図5参照)において入力欄、選択欄に入力、選択された情報が表示されている。
【0056】
なお、ステップS3において第二注文の注文価格が不適正な価格と判断された場合(ステップS3の“Yes”)、又は、ステップS5において証拠金の額が注文総額未満であった場合(ステップS5の“Yes”)、注文入力受付部12は、入力された注文に対応した各注文情報を生成すること無しにエラー処理を行い(ステップS10)、処理を終了する。このエラー処理では、注文の受付が拒絶されたことを示す文字情報の表示等が行われる。
【0057】
図4A及び図4Bは、本実施形態の金融商品取引管理装置1における、イフダンオーダーによる指値注文の成立後の処理手順を示すフローチャートであり、図7は、本実施形態の金融商品取引管理装置1における、指値注文に基づく約定を模式的に表したタイムチャートである。以下、同図に基づいて処理手順を説明する。
【0058】
注文処理の完了後、金融商品取引管理装置1の価格情報受信管理部19は為替相場の情報取得を継続する。
【0059】
本実施形態では、図7に示す通り、注文処理が完了した時点t1で、約定情報生成部14は当該ポジションの第一注文51aを約定させる処理を行う(ステップS21)。この処理では、約定情報生成部14が、当該注文の約定が行われたことを内部に記憶する。この記憶は、例えば約定の成立/不成立を示すフラグを用いて行うことができる。そして、約定情報生成部14の命令により、口座情報生成部15が、当該約定の売買額に応じて、上述の証拠金情報を書き換える。さらに、約定情報生成部14は、入出金情報生成部13に、入出金の一覧表に入金や出金の状況を記載させる。その後、実際の売買が行われる。そして、約定情報生成部14は、クライアント端末2の表示部22に約定の成立を表示し、さらに、第一注文51aの属性情報を構成する注文価格情報51d(図6参照)に基づいてクライアント端末の銀行口座の入出金処理を行う。なお、後述の第二注文に係る約定処理(ステップS25参照)も、ステップS21の約定処理と同様である。
【0060】
第一注文51aに基づく成行注文が約定すると、約定情報生成部14はデータベース18中の対応するデータを書き換える。具体的には、注文テーブル181の当該成行注文に関する注文情報である、第一注文51aのデータが削除され、顧客口座情報テーブル182の“amnt”フィールド182aのデータが約定した価格分だけ増減される。ここで、本実施形態の第一注文は、一回目は成行注文で行われるが、二回目以降は指値注文で行われる。このため、約定情報生成部14は、当該成行注文の約定価格を、二回目以降の第一注文の指値価格に設定する。
【0061】
次に、第一注文51aに基づく成行注文が約定すると、約定情報生成部14は、第一の注文情報群51Aにおける第二注文51bと逆指値注文51cとを無効な注文情報から有効な注文情報に変更する(ステップS22)。
【0062】
この後、米国ドルの相場販売価格72が逆指値注文51cの約定価格まで下落することがなく(ステップS23の“No”)、図7に示すように、米国ドルの相場販売価格72が上昇し、特定時点t2において米国ドルの相場購入価格71が第二注文51bの約定価格と同じ価格になると(ステップS24の“Yes”)、約定情報生成部14は当該ポジションの第二注文51bに基づく指値注文を約定させると共に、逆指値注文51cをキャンセルする処理を行う(ステップS25)。そして、約定情報生成部14はデータベース18中の対応するデータを書き換える。これにより、顧客はt1時点の買い注文とt2時点の売り注文の差額分の利益を得られることになる。
【0063】
図7のt2時点においてステップS1での入力により生成された注文情報が全て約定していない場合には(ステップS26の“No”)、口座情報生成部15が再度顧客口座情報テーブル182の当該顧客の証拠金情報を取得する。そして、注文入力受付部12は、再度、取得された証拠金情報と顧客の注文総額とを対比し、証拠金の額が注文総額以上であるか否かを確認する(ステップS27)。証拠金の額が注文総額を下回る場合(ステップS28の“Yes”)には、注文総額以上になるまで処理は保留され、証拠金の額が注文総額以上である場合(ステップS28の“No”)、注文情報生成部16は新たな注文情報群(以下「第二の注文情報群」と称する。)を生成する(ステップS29)。注文情報生成部16は、ステップS9と同様に、生成された第二の注文情報群を注文テーブル181に記録する(ステップS30)。ステップS29において第二の注文情報群が生成されると、フロントページ配信部11は、クライアント端末2の表示部22に表示された注文情報群表示画面50に、第一の注文情報群に含まれる第一注文51a、第二注文51b、逆指値注文51cに代えて、新たに生成された第二の注文情報群(図示せず)に含まれる第一注文、第二注文、逆指値注文(いずれも図示せず)を表示させる。そして、ステップS21以降の処理が繰り返される。
【0064】
当該処理では、全てのポジションの個数分の注文情報群が形成される。また、当該処理は、ステップS21,S25の処理が、指示されたポジションの個数分の回数繰り返されるまで、継続する(ステップS26の“No”)。そして、ステップS21,S22の処理が上記入力されたポジションの個数分の回数繰り返された後(ステップS26の“Yes”)、全ての処理手順が終了する。
【0065】
なお、約定せずに注文期限が経過した指値注文は全てキャンセルされ、注文テーブル181から削除される。
【0066】
一方、ステップS22の処理ののち、米国ドルの相場販売価格72が逆指値注文51cの約定価格まで下落した場合(ステップS23の“Yes”)、約定情報生成部14は逆指値注文51cの約定を行う(ステップS31)。即ち、約定情報生成部14は、ステップS22で有効な注文情報に変更された第二注文51bに基づく指値注文を逆指値注文の約定価格で約定させて決済する処理を行う。これにより、金融商品の相場が従来の相場よりも大きく変動してしまい当面回復の見込みがない場合等において、指値取引を行う顧客が被る損害を最小限に留めることができる。
【0067】
そして、約定情報生成部14は、逆指値注文51cに基づいて約定を行った場合、現在有効で約定前の注文情報と、逆指値注文情報を生成した売買注文申込情報に基づいて生成される注文情報群のうち、逆指値注文情報の生成時点で未生成である注文情報群とを全てキャンセル処理する。具体的には、約定情報生成部14は、現在有効な第二注文(即ち第二注文51b)をキャンセル処理し(ステップS32)、さらに、イフダンオーダーの繰り返しのために指定・設定された注文情報群のうち未生成の注文情報群(即ちここでは第二の注文情報群以降の注文情報群)を全てキャンセル処理する(ステップS33)。このようにキャンセル処理を行うことで、一の逆指値注文に基づいて、特定時点以降におけるイフダンオーダー等の指値注文による売買を全て中止させることができる。これにより、金融商品の相場が従来の相場よりも大きく変動してしまい当面回復の見込みがない場合等において、指値取引を行う顧客が被る損害を最小限に留めることができる。本実施形態におけるキャンセル処理は、上述のエラー処理と同様であり、入力された注文に対応した各注文情報を生成すること無しに処理が停止される(ステップS10)。このキャンセル処理では、注文の受付がキャンセルされたことを示す文字情報の表示等が行われる。
【0068】
なお、本実施形態の金融商品取引管理装置1は、クライアント端末2から一度成立した指値注文の価格及び金額の変更の要求があった場合、当該要求が不正要求であるものとして入力エラー扱いで処理する。これにより、価格や金額の頻繁な要求で金融商品の売買元である銀行側の業務が過大になることを防止できる。
【0069】
一方、クライアント端末2の第三の入力画面(図示せず)において注文キャンセルボタン(図示せず)がクリックされる等、一度成立した注文のキャンセル要求があった場合、金融商品取引管理装置1の約定情報生成部14は、キャンセル要求のあったイフダンオーダーに含まれる注文情報群を抽出し、この注文情報群のうち約定未成立の第二注文や逆指値注文を全てキャンセルされたものとして処理する。例えば、図7におけるt2とt3の間の時点で、クライアント端末2の第三の入力画面(図示せず)からキャンセル要求が入力された場合、当該時点で有効だが約定未成立である、第二の注文情報群の第二注文51b及び逆指値注文51cはキャンセルされる。同様に、クライアント端末2から図7におけるt3とt4の間の時点でキャンセル要求が入力された場合、第一の注文情報群がキャンセルされる。キャンセルされた注文情報群のデータや注文情報のデータは、注文テーブル181から削除される。
【0070】
このように、一旦成立した金融商品の注文に対するキャンセル要求があった場合、キャンセル要求のあった注文に関する注文情報が含まれる注文情報群を抽出し、注文情報群に含まれる約定前の注文情報を全てキャンセル処理することにより、イフダンオーダーによる指値注文の取扱が煩雑化することを防止できる。
【0071】
なお、この実施の形態の上記構成に代えて、注文キャンセルボタン(図示せず)によるキャンセル要求により、更に、キャンセル要求のあった注文情報が含まれる注文情報群であって将来生成される予定の全ての注文情報群(例えば上記の例においては、時点t4と時点t5との間において未生成であって将来生成される予定である、第三の注文情報群以降の注文情報群)をキャンセル処理する構成としてもよい。
【0072】
なお、クライアント端末2から受けた注文が通常の成行注文である場合(すなわち、イフダンではない成行注文の場合)には、ステップS8にて注文情報が生成されると即座に約定情報生成部14が当該注文を約定させ、ステップS9の処理、及びステップS21以降の処理は行われない。
【0073】
以上示した通り、この実施の形態においては、金融商品取引管理装置1を利用する顧客が金融商品を売買する際、顧客がクライアント端末2側で一の注文手続きを行うことで、同一種類の複数価格の金融商品を複数のイフダンオーダーによって繰り返し注文することができ、かつ、当該顧客が将来的に所有する金融商品を逆指値注文によって売却することもできる。これにより、指値注文により金融商品の売買を行う顧客の利便性を向上させつつ、金融商品の指値注文において、金融商品取引管理システム1Aを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数の成行イフダンオーダーを行うことができ、また将来の相場の状況に応じて該成行イフダンオーダーを自動的に中止させることができて、金融商品取引管理システム1Aを利用する顧客の利便性を高めると共に成行イフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる。
【0074】
この実施の形態においては、注文情報に基づいて金融商品の約定を行う約定情報生成部14を備え、約定情報生成部14は、注文テーブル181に記録された注文情報群を形成する個々の注文情報のうち第一順位の注文情報に基づいて金融商品の約定を行い、約定と共に、第二順位の注文情報及び逆指値注文情報を無効から有効に変更する処理を複数回繰り返し行うことにより、クライアント端末2から受信されて注文テーブル181に記録された一の指示に基づいて、金融商品取引管理システム1A上で成行注文および複数のイフダンオーダーによる取引を実現でき、かつ、イフダンオーダーによる取引を逆指値注文によって中断させることを実現できる。これにより、金融商品の指値注文において、金融商品取引管理システム1Aを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを行うことができ、また将来の相場の状況に応じてイフダンオーダーを自動的に中止させることができて、金融商品取引管理システム1Aを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる。
【0075】
なお、上記実施形態の金融商品取引管理システム1Aは、金融商品として外国為替を取扱うものとしたが、これに限定されず、他の金融商品、例えば株式、債券を取扱う金融商品取引管理システムにおいても本発明を適用できる。
【0076】
上記実施形態は本発明の例示であり、本発明が上記実施の形態に限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。
【符号の説明】
【0077】
1A・・・金融商品取引管理システム
1・・・金融商品取引管理装置
2、2_(1)?2_(n)・・・クライアント端末
12・・・注文入力受付部(注文入力受付手段)
14・・・約定情報生成部(約定情報生成手段)
16・・・注文情報生成部(注文情報生成手段)
51a・・・第一注文(第一注文情報)
51b・・・第二注文(第二注文情報)
51c・・・逆指値注文(逆指値注文情報)
181・・・注文テーブル(注文情報記録手段)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって、
前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と、
該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段と、
前記注文情報生成手段が生成した前記注文情報を記録する注文情報記録手段とを備え、
該注文情報生成手段は、
一の前記売買注文申込情報に基づいて、所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と、該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と、前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し、
前記注文情報記録手段は、生成された前記注文情報群を記録し、
前記注文情報生成手段は、
売買取引開始時に、成行注文を行うとともに、該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし、
前記成行注文を決済する前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき、次の前記注文情報群の生成を行うと共に、該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく、前記成行注文の価格と同じ前記価格の前記指値注文を有効とし、
前記第一注文情報に基づく該指値注文が約定されたときに、当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文および前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文を有効にし、
以後、前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と、前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と、前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の、次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせ、
前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき、前記逆指値注文情報に基づく逆指値注文を停止し、
前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに、前記逆指値注文情報と同じ前記注文情報群に含まれる前記第二注文情報に基づく指値注文、及び、当該注文情報群の後に生成される予定の前記注文情報群の生成を停止することを特徴とする金融商品取引管理装置。
【請求項2】
前記注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う約定情報生成手段を備え、
前記約定情報生成手段は、前記注文情報記録手段に記録された個々の前記注文情報のうち、前記第一注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理と、前記第二注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理とを、予め定められた回数だけ繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の金融商品取引管理装置。
【請求項3】
前記注文情報生成手段は、前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに、前記第一注文情報に基づく指値注文および前記第二注文情報に基づく指値注文を停止し、
前記約定情報生成手段は、前記逆指値注文情報に基づいて約定を行った場合、該逆指値注文情報を生成した前記売買注文申込情報に対応して生成される前記第一注文情報および第二注文情報のうち、前記逆指値注文情報の生成時点で未生成である前記注文情報を、全て前記注文情報記録手段から消去するキャンセル処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の金融商品取引管理装置。
【請求項4】
前記約定情報生成手段は、一旦成立した前記金融商品の注文に対するキャンセル要求があった場合、該キャンセル要求のあった注文に対応する前記第一注文情報および/又は前記第二注文情報および/又は前記逆指値注文情報のうち、約定前の前記注文情報を全てキャンセル処理することを特徴とする請求項2又は3の何れかに記載の金融商品取引管理装置。
【請求項5】
特定顧客の預金残高情報を記録する顧客口座情報記録手段を備え、
前記注文情報記録手段には、前記第一注文情報および前記第二注文情報の注文価格に基づく金額情報が属性情報として記録され、
前記注文情報生成手段は、前記注文価格に基づく金額情報を前記預金残高情報と比較し、該預金残高情報の値が前記注文価格に基づく金額情報の値以上である場合に、前記第一注文情報および第二注文情報を生成することを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の金融商品取引管理装置。
【請求項6】
金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理システムであって、
前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と、
該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段と、
前記注文情報生成手段が生成した前記注文情報を記録する注文情報記録手段とを備え、
該注文情報生成手段は、
一の前記売買注文申込情報に基づいて、所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と、該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と、前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し、
前記注文情報記録手段は、生成された前記注文情報群を記録し、
前記注文情報生成手段は、
売買取引開始時に、成行注文を行うとともに、該成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための逆指値注文を有効とし、
前記成行注文を決済する前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき、次の前記注文情報群の生成を行うと共に、該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく、前記成行注文の価格と同じ前記価格の前記指値注文を有効とし、
前記第一注文情報に基づく該指値注文が約定されたときに、当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文および前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文を有効にし、
以後、前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と、前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と、前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の、次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせ、
前記第二注文情報に基づく前記指値注文が約定されたとき、前記逆指値注文情報に基づく逆指値注文を停止し、
前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに、前記逆指値注文情報と同じ前記注文情報群に含まれる前記第二注文情報に基づく指値注文、及び、当該注文情報群の後に生成される予定の前記注文情報群の生成を停止することを特徴とする金融商品取引管理システム。
【請求項7】
コンピュータを請求項1乃至5の何れか一つに記載の金融商品取引管理装置として機能させることを特徴とするプログラム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2020-05-21 
結審通知日 2020-05-26 
審決日 2020-06-11 
出願番号 特願2014-230868(P2014-230868)
審決分類 P 1 113・ 537- YAA (G06Q)
P 1 113・ 832- YAA (G06Q)
P 1 113・ 121- YAA (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 牧 裕子  
特許庁審判長 佐藤 聡史
特許庁審判官 松田 直也
野崎 大進
登録日 2015-10-23 
登録番号 特許第5826909号(P5826909)
発明の名称 金融商品取引管理装置、金融商品取引管理システムおよびプログラム  
代理人 佐野 弘  
代理人 丸田 憲和  
代理人 平井 佑希  
代理人 牧野 知彦  
代理人 伊藤 雅浩  
代理人 丸田 憲和  
代理人 溝田 宗司  
代理人 伊藤 真  
代理人 牧野 知彦  
代理人 和田 祐造  
代理人 石井 明夫  
代理人 平井 佑希  
代理人 伊藤 真  
代理人 関 裕治朗  
代理人 鮫島 正洋  
代理人 佐野 弘  
代理人 石井 明夫  

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