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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1365288
審判番号 不服2019-3697  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-19 
確定日 2020-08-11 
事件の表示 特願2017-505712「ゲームコントローラ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月22日国際公開、WO2015/158727、平成29年 4月20日国内公表、特表2017-511240〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成27年4月14日(パリ条約による優先権主張外国受理2014年4月14日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年12月15日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年6月5日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年11月13日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成31年3月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

2 審判請求時の補正について
(1)補正の内容
平成31年3月19日に審判の請求と同時になされた補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含むものであり、本件補正前の平成30年6月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載と、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。)。

(本件補正前)
「【請求項1】
ゲームプログラムなどのコンピュータプログラムに使用者の入力を供給するためのコントローラであって、ゲームプログラムを制御するためのコントローラにおいて、
ケースと、
前記コントローラの前方端部及び上部に位置した複数の制御部と、
を備え、
前記コントローラは、使用者の両手内に保持されるように形成されており、それによって、使用者の親指は、前記コントローラの前記上部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、且つ、使用者の人差し指は、前記コントローラの前記前方端部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、
前記コントローラは、ベース部分と少なくとも1つの第1の追加制御部とを備え、前記少なくとも1つの第1の追加制御部は、使用者の中指、薬指、又は小指で操作可能な位置で、前記コントローラのベース部分の底部に位置し、
前記少なくとも1つの第1の追加制御部は第1の細長い部材を備え、前記第1の細長い部材は本質的に弾性であり、且つ可撓性を有しており、それによって、前記第1の細長い部材は、制御機能を作動させるために使用者によって十分に変位されることができ、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、前記コントローラの外側表面に近接して配置された内側面を前記コントローラの上側に備え、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、前記内側面と反対側の外側面を前記コントローラのベース側に備え、
前記外側面は、前記第1の細長い部材が搭載される前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面の一部分と平行ではないように構成され、且つ配置される、コントローラ。」

(本件補正後)
「【請求項1】
ゲームプログラムなどのコンピュータプログラムに使用者の入力を供給するためのコントローラであって、ゲームプログラムを制御するためのコントローラにおいて、
ケースと、
前記コントローラの前方端部及び上部に位置した複数の制御部と、
を備え、
前記コントローラは、使用者の両手内に保持されるように形成されており、それによって、使用者の親指は、前記コントローラの前記上部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、且つ、使用者の人差し指は、前記コントローラの前記前方端部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、
前記コントローラは、ベース部分と少なくとも1つの第1の追加制御部とを備え、前記少なくとも1つの第1の追加制御部は、使用者の中指、薬指、又は小指で操作可能な位置で、前記コントローラのベース部分の底部に位置し、
前記少なくとも1つの第1の追加制御部は第1の細長い部材を備え、前記第1の細長い部材は本質的に弾性であり、且つ可撓性を有しており、それによって、前記第1の細長い部材は、制御機能を作動させるために使用者によって十分に変位されることができ、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、内側面を備え、前記内側面は、前記コントローラの外側表面に近接して配置され、且つ前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面に向けて面しており、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、外側面を備え、前記外側面は、前記内側面と反対側であり、且つ前記コントローラの前記ベース部分の前記底部の前記外側表面と反対側に面しており、
前記外側面は、前記第1の細長い部材が搭載される前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面の一部分と平行ではないように構成され、且つ配置される、コントローラ。」

(2)補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材」が「備え」る「前記コントローラの外側表面に近接して配置された内側面」について、「前記コントローラの上側に」備えるものから、「前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面に向けて面して」備えるものへと変更し、また、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材」が「備え」る「前記内側面と反対側の外側面」について、「前記コントローラのベース側に」備えるものから、「前記コントローラの前記ベース部分の前記底部の前記外側表面と反対側に面して」備えるものへと変更する補正を含むものである。
そして、「前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面に向けて面して」備えることは、「前記コントローラの上側に」備えることを限定したものということはできず、また、「前記コントローラの前記ベース部分の前記底部の前記外側表面と反対側に面して」備えることも、「前記コントローラのベース側に」備えることを限定したものということはできず、これらの補正は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当しない。

そこで、本件補正の他の目的について検討するに、平成30年11月13日付けの拒絶査定には、次のような付記がある。

(拒絶査定に付記された事項の抜粋)
「1.請求項1には、「内側面を前記コントローラの上側に備え」との記載があるが、当該「上」とは請求項1における「上部」と同じ意味で用いているのか否か判然としない。
仮に同じ意味で用いている場合、上記「内側面を前記コントローラの上側に備え」とは、コントローラ「上部」に「内側面」が露出しているという意味か?それともそれとは異なる意味(例えば「細長い部材」において「上部」方向側に「内側面」が存在するという意味)なのか、判然としない。
また、仮に同じ意味で用いていない場合、上記「内側面を前記コントローラの上側に備え」とは、コントローラの「前方端部」側に「内側面」があるという意味か、それともそれとは異なる意味なのか、判然としない。またこの場合、「コントローラのベース側」とはどの位置になるのか判然としない。
いずれにしても、「上側」、「コントローラのベース側」について明確に位置が特定できるような記載とされたい。なお、明確に位置が特定される記載となったところで、本願発明のゲームコントローラの技術思想については、引用文献1及び/又は引用文献2により開示されているものと認められる。」

上記記載に基づけば、本件補正は、請求項1の「内側面を前記コントローラの上側に」備えるとの記載及び「前記コントローラのベース側」に備えるとの記載についての明確性違反の指摘に対して、それぞれ、「前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面に向けて面して」備える、及び「前記コントローラの前記ベース部分の前記底部の前記外側表面と反対側に面して」備えると補正して、明りょうにしたものとみることができるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りようでない記載の釈明を目的とするものということができる。
また、本件補正は、本願の願書の最初に添付した明細書の段落【0045】【0047】及び【0048】並びに図6及び図9A?図9G等の記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第5項の要件を満たす適法な補正である。

3 本願発明
本願の請求項1?28に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?28に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記2(1)の(本件補正後)に記載したとおりである。

ここで、請求項1の「ベース部分」に関して、発明の詳細な説明には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。

「【0046】
パドルレバー11A、11B、11C、11Dは、コントローラ10のベースに位置した第1のハンドル部分H1と第2のハンドル部分H2との間に搭載されており、コントローラの本体の外側表面に近接して配置される。
【0047】
パドルレバー11A、11B、11C、11Dが既存のコントローラ10にフィットされることができることは想定される。そのような実施形態において、パドルレバーは、コントローラの本体の外側表面に搭載されるだろう。図示された実施形態において、パドルレバーはねじ機構によって固定される。雄ねじのねじ山を有するねじ15は、パドルレバー11A、11B、11C、11Dのそれぞれに設けられた一対の孔のそれぞれ内に受容される。ねじ15を受容するための孔は、パドルレバー11A、11B、11C、11Dの一方の端部に設けられる。これは、固定端部である。この方法において、パドルレバー11A、11B、11C、11Dは一時的に屈曲されることができる、又は一時的に変形されることができる。パドルレバー11A、11B、11C、11Dの本質的な弾力性は、解放された場合にパドルレバー11A、11B、11C、11Dをそれらの開始位置に実質的に戻し、スイッチ機構が同じことを行うことを可能にする。ねじ15は、雌ねじのねじ山を有する各孔内でコントローラ10のベースで受容されている。雌ねじのねじ山が、コントローラの本体のベース部分において事前にねじ切られることができること、又は、例えばセルフタッピンねじ15を使用することによって、コントローラの本体のベース部分内でねじ15を駆動させる場合に雌ねじのねじ山が形成されることは、想定される。雌ねじのねじ山がコントローラの本体のベース部分を形成している材料に直接的に設けられてもよいこと、又は、雌ねじのねじ山がコントローラの本体に固定された別個のインサート又はナット或いは当該本体内に固定された別個のインサート又はナット内に設けられてもよいことも想定される。代替的な実施形態において、他の固定手段は想定されており、例えばパドルレバー11A、11B、11C、11Dはコントローラの本体に接着されてもよく、又は接着剤で固定されてもよい。他の実施形態において、パドルレバー11A、11B、11C、11Dは、コントローラの本体に位置した受容部と係合されるための戻り止め(detent)又はかえし等の、一体的に形成されたクリップ又は固定手段を備えてもよい。さらなる実施形態において、パドルレバー11A、11B、11C、11Dは、それに限定するわけではないが、バッテリーハッチ等のコントローラのカバーパネル又は後方パネルのカバー部分と一体的に形成されてもよい。
【0048】
任意選択的には、図4に最も良く示されるように、コントローラ10のベースには、4つのチャネル13A、13B、13C、13Dが設けられる。各チャネル13A、13B、13C、13Dは、パドルレバー11A、11B、11C、11Dの各1つを受容する。図示した実施形態において、チャネル13A、13B、13C、13Dは、パドルレバー11A、11B、11C、11Dの端部分を受容するように配置される。このことは、チャネル13A、13B、13C、13Dが先細になっているように、一方の端部に向けてチャネル13A、13B、13C、13Dの深さをゼロに減少させることによって達成される。このことは、図6に最も良く示されるように、パドルレバー11A、11B、11C、11Dの一方の端部がコントローラ10のベースを跨いで立設されている(stands proud of)ことを提供する。この方法において、使用者は、パドルレバー11A、11B、11C、11Dと容易に係合することができる。チャネル13A、13B、13C、13Dは、パドルレバー11A、11B、11C、11Dに安定性を提供する。このことは、パドルレバーの耐久性及び固定手段の耐久性を増加させる。
【0049】
チャネル13A、13B、13C、13Dは、移動可能な端部と係合した場合に、固定端部に関して回転するパドルレバー11A、11B、11C、11Dの可能性を減少させる。チャネルは、図7における矢印D1の方向によって指し示されるように、コントローラのベースに対して略垂直な方向におけるパドルレバー11A、11B、11C、11Dの移動を制限するのに役立つ。」

「【0053】
ハンドル部H1、H2は、図7及び図8に最も良く示されるように、内側表面SHを備える。内側表面SHは、使用者の両手の中指、薬指、及び小指によって係合される。薬指及び小指は、パドルレバー11A、11B、11C、11Dを作動させるために中指を採用する場合にコントローラのグリップのためにますます重要である。各ハンドル部H1、H2の内側表面SHは、パドルレバー11A、11B、11C、11Dが搭載されるコントローラ10のベースの領域の内側表面SBと接触する。内側表面SHは、コントローラのベースの内側表面SBに対して急な角度θ(図7に最も良く示される)で傾斜される。この角度は、45度に等しく又は45度より大きい。任意選択的には、この角度は約50度と約60度の間であってもよい。ハンドル部H1、H2は、略平坦な上側部分Tを有す
る。略平坦な上側部分Tは、内側の角部又は縁部を規定するために、内側表面SBと接触する。この角部又は縁部は鋭角であり、すなわち、角部又は縁部は小さな曲率半径を有する。この方法において、ハンドル部H1、H2は、使用者の手の薬指及び小指によって把持されるための人間工学的な形状を提供する。」

上記記載及び図4ないし図8から、「ベース部分」とは、コントローラの背面から見てハンドルH1、H2の間に位置する部分と解するのが相当である。

4 原査定の拒絶の理由
原査定の理由のうち、請求項1に係る拒絶の理由は、概略、以下の理由を含むものである。

(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・米国特許出願公開第2012/322553号明細書(以下「引用文献1」という。)
・[CES 2014]「Steam Controller」ファーストインプレッション。肝心要の左右トラックパッドは使いやすい?,4Gamer.net,2014年4月3日,平成29年12月14日検索,URL,http://www.4gamer.net/games/038/G003821/20140108041/(以下「引用文献2」という。)

なお、原審の拒絶理由通知とともに請求人に送付された引用文献2の末尾に添付したとおり、ウェイバックマシンにより、引用文献2について摘示したURLにおいて2014年4月3日に参照できた内容として、審決の引用文献2において摘示した記載事項と同一の内容の記載が確認できることから、引用文献2において摘示した記載事項は、遅くとも本件出願の優先日前の2014年4月3日には、電気通信回線を通じて公衆に利用可能であったものと認められるものである。

5 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1について
引用文献1には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。当審による日本語訳を丸括弧内に記す)。

「[0006] The present invention provides a hand held controller for a video game console having a hard outer case and a plurality of controls located on the front and top edge of the controller. The controller is shaped to be held in both hands of the user such that the user's thumbs are positioned to operate controls located on the front of the controller and the user's index fingers are positioned to operate controls located on the top edge of the controller. The controller further includes one or more additional controls located on the back of the controller in a position to be operated by the user's other fingers.」
(【0006】 本発明は、硬い外側ケースと、コントローラの正面及び上端に位置した複数の制御部を有するビデオゲーム機のための手持ち式コントローラを提供する。コントローラは、使用者の両手内に保持されるように形成されており、それによって、使用者の親指は、コントローラの正面に位置した複数の制御部を操作するために位置づけられており、且つ、使用者の人差し指は、コントローラの上端に位置した複数の制御部を操作するために位置づけられている。コントローラはさらに、使用者の他の指によって操作される位置でコントローラの背面に位置した少なくとも1つの追加制御部を備える。)

「[0009] Preferably, each elongate member comprises an outermost surface which is disposed in close proximity to the outermost surface of the controller such that the user's finger may be received in said respective recess.」
(【0009】好ましくは、各細長部材は、使用者の指が前記凹部に受容され得るように、コントローラの外側表面に近接して配置された外側面を備える。)

「[0015] The controller of the present invention is particularly advantageous over controllers according to the prior art as it comprisesone or more additional controls located on the back of the controller in a position to be operated by middle fingers of a user.」
(【0015】 本発明のコントローラは、使用者の中指で操作される位置で、コントローラの背面に位置する少なくとも1つの追加制御部を備えるから、従来技術によるコントローラよりも特に有利である。)

「[0024] The particular embodiment described below and illustrated by FIGS.2 and 3 serves to further illustrate the invention, to provide those ofordinary skill in the art with a complete disclosure and description of the devices claimed herein, and is not intended to limit the scope of the invention. For example, the additional controls are described below as two paddle levers but the term“control”as used in the claims, unless otherwise made clear in the claim, refers to paddle levers as well as other controls such as buttons, analogue control sticks, bumpers, and triggers.」
(【0024】 特定の実施形態は、本発明をさらに説明するために、以下に記載され、図2及び3により示され、特許請求される装置の完全な開示および説明を当業者に提供するものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。例えば、追加制御部は、2つのパドルレバーとして後述されるが、請求項で用いられる制御部という用語は、請求項において他に明示されなければ、パドルレバーだけでなく、ボタン、アナログ制御スティック、バンパー及びトリガー等の他の制御部も示す。)

「[0026] Game controller 10 differs from the conventional controller 1 in that it additionally comprises two paddle levers 11 locatedon the back of the controller. The paddle levers 11 are vertically orientated with respect to the controller 10 and are positioned to be operated by the middle fingers of a user 12, as shown in FIG.3.」
(【0026】 ゲームコントローラ10はさらに、コントローラの背面に位置する2本のパドルレバー11を備えるという点で従来のコントローラ1とは異なる。図3に示されるように、パドルレバー11はコントローラ10に対して垂直方向に方向付けされて、利用者12の中指によって操作されるように配置されている。)

「[0027] In one embodiment the paddles 11 are formed from a thin flexible material such as a plastics material for example polyethylene. Preferably, the paddles 11 are less than 10 mm thick, but may beless than 5 mm thick, and more preferably are 3 mm thick or less.」
(【0027】 一実施形態では、パドル11は、例えばポリエチレンのようなプラスチック材料のような薄い可撓性材料から形成されている。好ましくは、パドル11は、厚さが10mm未満であるが、5mm未満の厚さであり、より好ましくは、厚さが3mm以下である。)

「[0028] The paddles 11 are inherently resilient, which means that they return to an unbiased position when not under load. A user may displace or depress either of the paddles 11 by engaging an outer surface thereof; such displacement causes the paddle 11 to activate a switch mechanism mounted within the body of the controller 10. The paddles 11 are mounted within recesses located on the case of the controller 10; and are disposed in close proximity to the outer surface of the controller body. In this way a user may engage the paddles 11 with the tips of the fingers,preferably the middle fingers, without compromising the user's grip on the controller 10. While the example shows the paddles 11 engaged by the middle fingers, they could also be engaged by the index, ring, or little fingers. The index fingers may also engage trigger style controls mounted on the top edge of the controller 10 while the thumbs may be used to activate controls on the front of the controller 10.」
(【0028】 パドル11は、本質的に弾性であり、すなわち、負荷がない場合に、パドルレバーは付勢されない位置に戻る。使用者は、それらの外側表面を係合することによって、パドル11のいずれかを変位させる又は押し下げることができる。そのような変位は、作動されたパドル11が、コントローラ10の本体内に搭載されるスイッチ機構を作動させる。パドル11は、コントローラ10のケースに配置された凹部に搭載されており、コントローラの本体の外側表面に近接して配置されている。このようにして、使用者は、コントローラ10上の使用者のグリップを損なうことなく、パドルレバー11を指の先端、好ましくは中指と係合することができる。例として、中指と係合されるパドル11を示したが、人差し指、薬指、又は小指と係合されるようにすることもできる。また、親指は、コントローラ10の正面に搭載された複数の制御部を作動させるために使用することができ、人差し指はコントローラ10の上端に搭載された複数のトリガ型制御部と係合することができる。)

「[0029] The paddles 11 are elongate in shape and substantially extend in a direction from the top edge to bottom edge of the controller 10. In one embodiment the paddles are orientated parallel with each other. In analternative embodiment the paddles are orientated such that they converge towards the top edge with respect to each other. This elongate shape allows a user to engage the paddles with any of the middle, ring, or little finger;it also provides that different users having different size hands can engage with the paddles in a comfortable position thereby reducing the effects of prolonged or repeated use such as repetitive strain injury.」
(【0029】 複数のパドル11は、細長い形状であり、コントローラ10の上端から後方端部の方向に延びる。一実施形態では、複数のパドルは互いに対して平行に方向付けられる。別の実施形態では、複数のパドルは、互いに対して上端に向けて集まるように方向付けられる。この細長い形状は、使用者が中指、薬指又は小指のいずれかとパドルを係合することを可能にさせる。それはまた、異なるサイズの手を有する複数の使用者が快適な位置でパドルと係合することができることも提供し、それにより、反復運動過多損傷などの長期使用または反復使用の影響を減少させる。)

「[0031] It is envisaged that the paddles 11 could be fitted to an existing controller 10. In such embodiments the paddles would be mounted on the outer surface of the controller body by means of a mechanical fixing such as a screw or bolt or alternatively bonded or welded to the controller body by adhesive or other suitable means. A switch mechanism would be mounted withinthe controller in vertical registry with a portion of each paddle. A portion of the switch mechanism may extend through the controller body and be disposed in close proximity or in contact with an innermost surface of the paddle 11.」
(【0031】 なお、パドル11は、既存のコントローラ10に組み込まれても良い。このような実施形態では、パドルは、ねじまたはボルトなどの機械的固定手段又は接着や溶接や他の適切な手段により、コントローラ本体に搭載される。スイッチ機構は、各パドルの一部分と垂直方向において位置合わせされて、コントローラの中に設けられている。スイッチ機構の一部分は、コントローラ本体を貫通して延び、パドル11の内側面と近接又は接触して配置される。)

(認定事項)
図2から、コントローラの背面から見て、左右ハンドルと本体中央部分との間に、追加制御部としてのパドルレバー11が搭載される部分が存在することが見て取れる。



以上の記載事項及び認定事項から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「ビデオゲーム機のためのコントローラにおいて、
ケースと、
前記コントローラの上端及び正面に位置した複数の制御部と、
を備え、
前記コントローラは、使用者の両手内に保持されるように形成されており、それによって、使用者の親指は、前記コントローラの前記正面に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、且つ、使用者の人差し指は、前記コントローラの前記上端に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、
前記コントローラは、追加制御部と、背面から見て、左右のハンドルと本体中央部分との間に、前記追加制御部が搭載される部分を備え、前記追加制御部は、使用者の中指、薬指又は小指で操作される位置で、前記コントローラの背面に位置し、
前記追加制御部は細長い部材を備え、前記細長い部材は本質的に弾性であり、且つ可撓性を有しており、それによって、前記細長い部材は、制御機能としてのスイッチ機構を作動させるために使用者によって変位されることができ、
前記細長い部材は前記コントローラの本体内に搭載される前記スイッチ機構の一部分と近接又は接触する内側面を備え、
前記細長い部材は、コントローラの外側表面に近接して配置された外側面を備える、
コントローラ。」

(2)引用文献2について
引用文献2には、次の事項が記載されている。


(認定事項)
上記図面から、本体の背面から見て、両側のグリップ部と、両側のグリップ部に挟まれた本体中央部分との間に、各々、前記本体中央部分の表面と平行でなく、内側を向いて傾斜した表面を有する細長状の背面ボタンが見て取れる。

以上の記載事項及び認定事項から、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「両側のグリップ部と、前記両側のグリップ部に挟まれた本体中央部分とからなる本体と、
本体の背面から見て、前記両側のグリップ部と、前記両側のグリップ部に挟まれた本体中央部分との間に、各々、前記本体中央部分の表面と平行でなく、内側を向いて傾斜した表面を有する細長状の背面ボタンと、を備え、
グリップ感を確保しながら、破綻なく背面ボタンを押せるように手を配置すると、手のひらが気持ち上方向を向くような持ち方になる
ゲームコントローラ。」

6 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。

(1)技術的にみて、引用発明1において、「コントローラ」が「使用者」によって「操作」されると「ビデオゲーム機」に「使用者」の入力を供給し、「ビデオゲーム機」を制御することは明らかである。
したがって、引用発明1の「ビデオゲーム機のためのコントローラ」と、本願発明の「ゲームプログラムなどのコンピュータプログラムに使用者の入力を供給するためのコントローラであって、ゲームプログラムを制御するためのコントローラ」とは、「ゲーム」のために「使用者の入力を供給するためのコントローラであって、ゲーム」「を制御するためのコントローラ」の限りにおいて共通する。

(2)引用発明1の「ケース」は、本願発明の「ケース」に相当する。

(3)引用発明1の「前記コントローラの上端及び正面に位置した複数の制御部」は、本願発明の「前記コントローラの前方端部及び上部に位置した複数の制御部」に相当する。

(4)引用発明1の「前記コントローラは、使用者の両手内に保持されるように形成されており、それによって、使用者の親指は、前記コントローラの前記正面に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、且つ、使用者の人差し指は、前記コントローラの前記上端に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられて」いることは、本願発明の「前記コントローラは、使用者の両手内に保持されるように形成されており、それによって、使用者の親指は、前記コントローラの前記上部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、且つ、使用者の人差し指は、前記コントローラの前記前方端部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられて」いることに相当する。

(5)上記3の「ベース部分」の解釈に基づけば、引用発明1の「背面から見て、左右のハンドルの間に」「備え」られた「前記追加制御部が搭載される部分」と「本体中央部分」は、本願発明の「ベース部分」に相当する。
そうすると、引用発明1においても、追加制御部が、コントローラのベース部分に位置するといえる。
また、このことは、平成30年6月5日の意見書の〔4〕(A)において、「引用文献1の図2及び3に示されたコントローラの背面におけるパドル11の位置は、コントローラ10のベース部内です」として、請求人も自認するものである。
したがって、引用発明1の「前記コントローラは、追加制御部と、背面から見て、左右のハンドルと本体中央部分との間に、前記追加制御部が搭載される部分を備え、前記追加制御部は、使用者の中指、薬指又は小指で操作される位置で、前記コントローラの背面に位置」することは、本願発明の「前記コントローラは、ベース部分と少なくとも1つの第1の追加制御部とを備え、前記少なくとも1つの第1の追加制御部は、使用者の中指、薬指、又は小指で操作可能な位置で、前記コントローラのベース部分の底部に位置」することに相当する。

(6)引用発明1の「前記追加制御部は細長い部材を備え、前記細長い部材は本質的に弾性であり、且つ可撓性を有しており、それによって、前記細長い部材は、制御機能としてのスイッチを作動させるために使用者によって変位されることができ」ることは、本願発明の「前記少なくとも1つの第1の追加制御部は第1の細長い部材を備え、前記第1の細長い部材は本質的に弾性であり、且つ可撓性を有しており、それによって、前記第1の細長い部材は、制御機能を作動させるために使用者によって十分に変位されることができ」ることに相当する。

(7)引用発明1において、「前記追加制御部」が「前記コントローラの背面に位置し」、「前記細長い部材」が「前記コントローラの本体内に搭載される前記スイッチ機構の一部分と近接又は接触する内側面を備え」ることから、追加制御部が備える細長い部材の内側面が、コントローラの外側表面に近接して配置され、且つコントローラのベース部分の背面の外側表面に向けて面していることは明らかである。
したがって、引用発明1は、本願発明の「前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、内側面を備え、前記内側面は、前記コントローラの外側表面に近接して配置され、且つ前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面に向けて面して」いることに相当する構成を有する。

(8)引用発明1において、「前記追加制御部」が「前記コントローラの背面に位置し」、「前記細長い部材」が「前記コントローラの本体内に搭載される前記スイッチ機構の一部分と近接又は接触する内側面を備え」、「前記細長い部材」が「コントローラの外側表面に近接して配置された外側面を備える」ことから、細長い部材の外側面が、内側面と反対側であり、且つコントローラのベース部分の背面の外側表面と反対側に面していることは明らかである。
したがって、引用発明1は、本願発明の「前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、外側面を備え、前記外側面は、前記内側面と反対側であり、且つ前記コントローラの前記ベース部分の前記底部の前記外側表面と反対側に面して」いることに相当する構成を有する。

してみると、本願発明と引用発明1とは、
「ゲームのために使用者の入力を供給するためのコントローラであって、ゲームを制御するためのコントローラにおいて、
ケースと、
前記コントローラの前方端部及び上部に位置した複数の制御部と、
を備え、
前記コントローラは、使用者の両手内に保持されるように形成されており、それによって、使用者の親指は、前記コントローラの前記上部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、且つ、使用者の人差し指は、前記コントローラの前記前方端部に位置した複数の制御部を操作するために位置付けられており、
前記コントローラは、ベース部分と少なくとも1つの第1の追加制御部とを備え、前記少なくとも1つの第1の追加制御部は、使用者の中指、薬指、又は小指で操作可能な位置で、前記コントローラのベース部分の底部に位置し、
前記少なくとも1つの第1の追加制御部は第1の細長い部材を備え、前記第1の細長い部材は本質的に弾性であり、且つ可撓性を有しており、それによって、前記第1の細長い部材は、制御機能を作動させるために使用者によって十分に変位されることができ、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、内側面を備え、前記内側面は、前記コントローラの外側表面に近接して配置され、且つ前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面に向けて面しており、
前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、外側面を備え、前記外側面は、前記内側面と反対側であり、且つ前記コントローラの前記ベース部分の前記底部の前記外側表面と反対側に面している、
コントローラ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
コントローラにより使用者の入力を供給する対象及びコントローラにより制御する対象は、それぞれ本願発明では「ゲームプログラムなどのコンピュータプログラム」及び「ゲームプログラム」であるのに対し、引用発明1はその点が明示されていない点。

(相違点2)
本願発明は「前記外側面は、前記第1の細長い部材が搭載される前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面の一部分と平行ではないように構成され、且つ配置される」のに対し、引用発明1はそのようなものか否か明らかでない点。

7 判断
(相違点1について)
ビデオゲーム機がゲームプログラムなどのコンピュータプログラムにより制御されるという技術常識に照らせば、相違点1は実質的な相違点ではない。仮に実質的な相違点であったとしても、前記技術常識に基づく当業者の設計的事項にすぎない。

(相違点2について)
引用発明2は、ゲームコントローラにおいて、本体の背面から見て、両側のグリップ部と、両側のグリップ部に挟まれた本体中央部分との間に、前記本体中央部分の表面と平行でなく、内側を向いて傾斜した表面を有する細長状の背面ボタンを備える構成が開示されている。ここで、細長状の背面ボタンの表面を内側に向けて傾斜させることによって、グリップ感を確保しながら、破綻なく背面ボタンを押せる作用効果を奏することは、中指、薬指又は小指が掌側に曲げられるという人間工学的な見地からみて明らかである。
してみると、引用発明2に接した当業者であれば、グリップ感を確保しながら破綻なく背面ボタンを押せるように、引用発明2を引用発明1に適用して、細長い部材の外側面を内側に向けて傾斜させることによって、細長い部材の外側面が、コントローラの凹部に挟まれた本体中央部分の外側表面と平行ではないように構成され、配置されるものとすることは容易になし得たことである。

(効果について)
本願発明の奏する作用効果は、引用発明1及び引用発明2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(請求人の主張について)
請求人は、審判請求書において、引用文献1には、本願発明の「前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、内側面を備え、前記内側面は、前記コントローラの外側表面に近接して配置され、且つ前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面に向けて面しており、前記第1の細長い部材又は各第1の細長い部材は、外側面を備え、前記外側面は、前記内側面と反対側であり、且つ前記コントローラの前記ベース部分の前記底部の前記外側表面と反対側に面しており、前記外側面は、前記第1の細長い部材が搭載される前記コントローラの前記ベース部分の底部の外側表面の一部分と平行ではないように構成され、且つ配置される」との構成、つまり、コントローラ本体の背面に最も近い第1の面と、第1の面の外側表面の反対側の第2の面であって、第2の面が、細長部材が取り付けられているケースの背面の外側表面に対して平行ではない第2の面とを有するそのような細長い部材の構成が開示及び示唆されていない旨主張する。

しかしながら、上記(相違点2について)で検討したように、引用発明2に接した当業者であれば、グリップ感を確保しながら破綻なく背面ボタンを押せるように、引用発明2を引用発明1に適用して、細長い部材の外側面を内側に向けて傾斜させて、凹部に挟まれた本体中央部分の外側表面と平行ではないように構成され、配置されるものとすることは容易になし得たことである。

(まとめ)
したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

8 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項については検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-03-13 
結審通知日 2020-03-16 
審決日 2020-03-27 
出願番号 特願2017-505712(P2017-505712)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 比嘉 翔一  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤田 年彦
塚本 丈二
発明の名称 ゲームコントローラ  
代理人 阿部 達彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  

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