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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F25C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25C
管理番号 1365293
審判番号 不服2019-10589  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-08 
確定日 2020-08-11 
事件の表示 特願2017- 6259「結晶雪の降雪システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月26日出願公開、特開2018-115794〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年1月17日の出願であって、平成30年11月1日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年12月19日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和1年5月14日付け(発送日:令和1年5月16日)で拒絶査定がなされ、それに対して、令和1年8月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和1年8月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年8月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年12月19日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
水平方向に延びる仕切りにより上下に仕切られたスペース内において、上部には結晶雪製造部が、下部には結晶雪降雪部が設けられ、
前記結晶雪製造部は、少なくとも一方が回転駆動可能な上ローラーと下ローラーとの間で、無端状に掛け渡されたメッシュ状膜体を備えた回転通気膜装置と、前記下ローラーの近傍で、先端縁が前記メッシュ状膜体の外表面に対して離間する結晶雪脱落体とを有し、氷点下で、氷飽和以上の水蒸気を含む湿り空気により、メッシュ状膜体の外表面に結晶雪を生成し、
前記結晶雪降雪部は、前記結晶雪製造部により製造された結晶雪の降雪中に、結晶雪を湿雪化する湿雪化装置と、前記結晶雪降雪部のスペース内の温湿度を調整する温湿度調整装置とを有し、
前記仕切りは、互いに平行に外周面を対向させて所定間隔を隔てて配置され、上方から隣接するローラーの間の最狭部に向かう向きに回転可能である複数のローラーであって、前記最狭部より上のスペースに、脱落する結晶雪を受けることが可能なように配置された複数のローラーであり、
それぞれのローラーは、前記外周面に植毛された回転ブラシ体を構成し、隣接するローラーの間の最狭部において、結晶雪を圧密化することなしに、互いのブラシが重なり合うことにより、仕切りが形成される、
ことを特徴とする結晶雪の降雪システム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。
「【請求項1】
水平方向に延びる仕切りにより上下に仕切られたスペース内において、上部には結晶雪製造部が、下部には結晶雪降雪部が設けられ、
前記結晶雪製造部は、少なくとも一方が回転駆動可能な上ローラーと下ローラーとの間で、無端状に掛け渡されたメッシュ状膜体を備えた回転通気膜装置と、前記下ローラーの近傍で、先端縁が前記メッシュ状膜体の外表面に対して離間する結晶雪脱落体とを有し、氷点下で、氷飽和以上の水蒸気を含む湿り空気により、メッシュ状膜体の外表面に結晶雪を生成し、
前記結晶雪降雪部は、前記結晶雪製造部により製造された結晶雪の降雪中に、結晶雪を湿雪化する湿雪化装置と、前記結晶雪降雪部のスペース内の温湿度を調整する温湿度調整装置とを有し、
前記仕切りは、互いに平行に外周面を対向させて所定間隔を隔てて配置され、上方から隣接するローラーの間の最狭部に向かう向きに回転可能である複数のローラーであって、前記最狭部より上のスペースに、脱落する結晶雪を受けることが可能なように配置された複数のローラーであり、
それぞれのローラーは、前記外周面に植毛された回転ブラシ体を構成し、隣接するローラーの間の最狭部において、結晶雪を圧密化することなしに、互いのブラシが重なり合うことにより、仕切りが形成され、
前記複数のローラーそれぞれの回転数は、前記対応する最狭部より上のスペースにおいて、対応する前記回転通気膜装置の前記結晶雪脱落体により脱落した結晶雪に対して、対応する前記回転通気膜装置が一回転して、新たな結晶雪が互いの樹枝同士が絡み合うことにより、大雪片化しないように、設定される、
ことを特徴とする結晶雪の降雪システム。」
(下線部は、補正箇所である。)

2 補正の適否について
2-1 補正の目的について
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数のローラー」に関して、「前記複数のローラーそれぞれの回転数は、前記対応する最狭部より上のスペースにおいて、対応する前記回転通気膜装置の前記結晶雪脱落体により脱落した結晶雪に対して、対応する前記回転通気膜装置が一回転して、新たな結晶雪が互いの樹枝同士が絡み合うことにより、大雪片化しないように、設定される」と補正するものである。
しかしながら、上記補正における「対応する前記回転通気膜装置が一回転して、新たな結晶雪が互いの樹枝同士が絡み合うことにより、大雪片化しないように、設定される」との記載において、「回転通気膜装置が一回転する」ことと「新たな結晶雪が互いの樹脂同士が絡み合うこと」との関係が不明であるため、請求項1に記載した発明としても技術内容が不明確である。
よって、上記補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、又は明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものともいえない。
請求人は、審判請求書において、本件補正が、いわゆる限定的減縮を目的とする旨を主張する。
しかし、補正が特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)を目的とするものといえるためには、補正前後の特許請求の範囲の広狭を論じる前提として、補正前後の特許請求の範囲の記載がそれぞれ技術的に明確であることが必要である。しかるに、上記のとおり、補正後の請求項1に記載した発明は技術内容が不明確であり、上記前提を欠いているから、上記請求人の主張は採用できない。

2-2 新規事項の有無について
上記(1)で検討したように、「対応する前記回転通気膜装置が一回転して、新たな結晶雪が互いの樹枝同士が絡み合うことにより、大雪片化しないように、設定される」との記載において、「回転通気膜装置が一回転する」ことと「新たな結晶雪が互いの樹脂同士が絡み合うこと」との関係が不明であるが、先に脱落した結晶雪に対し、回転通気膜装置が一回転してから脱落する新たな結晶雪が絡み合うことを意味するものとして、以下検討する。
願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)の段落【0032】には、「複数のローラー306の回転数は、たとえば、回転ブラシ314径が50φないし60φであれば、1RPMないし2RPMに設定し、回転ブラシ314の上に落下した結晶雪の上に、同じ回転通気膜装置10から次の結晶雪が落下し、結晶雪の樹枝同士が絡み合い、大雪片化するのを防止してもよい。」と記載されている。
すなわち、当初明細書等には、複数のローラーの回転数を設定して、回転ブラシ314の上に落下した結晶雪の上に、同じ回転通気膜装置10から次の結晶雪が落下し、結晶雪の樹枝同士が絡み合い、大雪片化するのを防止することが記載されているが、上記補正における「複数のローラーの回転数」が「対応する前記回転通気膜装置が一回転して、新たな結晶雪が互いの樹枝同士が絡み合うことにより、大雪片化しないように、設定される」点は記載されておらず、この点は当初明細書等の記載から自明な事項ともいえない。
請求人は、審判請求書において、「上記記載において、『回転ブラシ314の上に落下した結晶雪の上に、同じ回転通気膜装置10から次の結晶雪が落下』について、回転通気膜装置10が回転して、下ローラーの近傍に設けられた結晶雪脱落体を通過することにより、膜表面に生成された結晶雪が脱落され、1回転する間に膜表面に結晶雪が生成され、結晶雪脱落体により再び脱落されて、新たな結晶雪がすでに落下した結晶雪の上に落下することを意味するのは自明である。」と主張する。
しかし、本願の【図2】にも示されるように、回転通気膜装置10のメッシュ状膜体12の表面には霜Mが次々と生成され、これが落下して雪Sとなるのであるから、回転通気膜装置10が一回転するまでもなく、次々と雪Sが落下すると認められる。そうすると、段落【0032】の「回転ブラシ314の上に落下した結晶雪の上に、同じ回転通気膜装置10から次の結晶雪が落下し」は、回転通気膜装置が一回転するまでもなく、メッシュ状膜体12から次々と雪Sが落下することを意味すると解されるのであり、先に脱落した結晶雪に対し、回転通気膜装置が一回転してから新たな結晶雪が脱落することを意味するとは解せないから、上記請求人の主張は採用できない。
したがって、本件補正は、当初明細書等のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

2-3 独立特許要件について
仮に本件補正が特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する(下線は当審にて付した。以下同様。)。

(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2016-6362号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1-a)「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、造雪した雪粒を雪片化することにより、雪質を所望に変えることが可能な雪片の生成方法を提供することにある。
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、雪を利用した環境試験において、既存の試験室に設置可能であり、試験室における試験条件の融通性を向上した雪片の生成装置を提供することにある。
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、造雪工程と降雪工程とを分離し、その間で、造雪工程により造雪された雪粒を雪片化し、生成された雪片を所望に降雪することが可能な雪片の生成方法を提供する。」

(1-b)「【0019】
以下に本発明の環境試験方法および環境試験装置の第1実施形態について、図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
まず、雪環境試験システムについて説明すれば、図1に示すように、雪環境試験システム10は、氷粒からなる人工雪を利用し、人工雪により試験供試体である車両Vに対して降雪を模擬するように構成され、そのために、雪環境試験システム10は、人工雪を造る造雪部と、造雪した雪粒を搬送する搬送部と、搬送される雪粒を拡散させる拡散部と、拡散した雪粒から雪片を生成する雪片生成部と、生成した雪片を降雪させる降雪部とを有し、このうち、搬送部の一部と、拡散部と、雪片生成部と、降雪部とが、車両Vが配置される試験室内に配置され、造雪部と搬送部とが試験室外に配置される。」

(1-c)「【0024】
造雪部においてフレーク状の氷片を破砕して氷粒にするのに用いる砕氷機(図示せず)は、主に、上部に配置されたロータリーフィーダー(図示せず)と、下部に配置された一対の砕氷ドラム(図示せず)とからなり、供給された氷片をロータリーフィーダーにより分量化して一対の砕氷ドラムに供給し、一対の砕氷ドラムにより砕氷して、所定粒径の氷粒として雪供給管40に供給するようにしている。
【0025】
拡散部において、人工雪の拡散装置34について説明すれば、人工雪の拡散装置34は、搬送される氷粒を所望拡散範囲に亘って拡散するのに用いられる。」

(1-d)「【0036】
なお、最狭部304において、隣接するローラー306同士は、凹凸310を介して噛み合っており、実質的に、複数のローラー306により、試験室308の上部スペースと下部スペースとは仕切られていることから、従来においては、試験室308の上部において、人工雪を製造するのに零度以下に試験室308内の温度を維持する必要があり、上下スペースが連通することに起因して、試験室308の下部において、降雪部のスペースも同様な温度となっていたことから、たとえば、降雪部において、雪片を湿雪化することが技術的に困難であった点を克服している。
なお、生成した雪片をローラーから剥離して降雪を模擬するのに、剥離手段として、別途ローラーを加振することでもよいし、エアをそれぞれのローラー306の内部から貫通穴316を通じて噴出して、生成した雪片を担体手段の表面から剥離させてもよい。
【0037】
変形例としては、図11および図12に示すように、複数のローラー306は、試験室308内の上方において、試験室308を仕切るように配置され、それぞれのローラー306は、外周面312に植毛された回転ブラシ314を構成し、外周面312には、多数の貫通穴316が設けられ、剥離手段は、エアをそれぞれのローラー306の内部から貫通穴316を通じて噴出するのでもよい。
回転ブラシ314は、たとえば、樹脂製の柔軟性を有する材質からなり、ゴムローラー306の場合と異なり、その先端が、対向するローラー306の外周面312に接触する長さを有してもよく、回転ブラシ314の径および回転ブラシ314のローラー306の外周面312上の密度は、回転ブラシ314を除くローラー306の外周面312上に雪粒が付着し得る面積の観点から適宜定めればよい。
エアの噴出は、パルス的に噴出するのでもよく、エアの温度を-1℃以下の冷風とすることにより、試験室308内の温度が零度以上であっても、この雰囲気が回転ブラシ314及びローラー306に直接接触しないようにし、以って生成された雪片が溶解するのを防止することが可能である。エアの貫通穴316の密度は、このような観点から定めればよい。
【0038】
なお、ゴムローラー306の場合には、隣接するローラー306の最狭部304において、付着した雪粒を圧密化することから、硬化した雪片を模擬するのに適し、回転ブラシ314付きローラー306の場合には、ゴムローラー306とは異なり、付着した雪粒を圧密化しないことから、結晶雪を回転ブラシ314によりローラー306から剥離し、降雪を模擬するのに適するが、いずれにせよ、ゴムローラー306の場合も、回転ブラシ314付きローラー306の場合も、特に、回転ブラシ314を高密度にして、対向するローラー306の外周面312まで及ぶ長さとすることにより、ローラー306を水平方向に整列配置することにより、試験室308内を仕切ることが可能であり、試験室308内において、造雪スペースと降雪スペースとを互いに独立の温度領域とし、たとえば、試験室308の上部スペースを零下として造雪スペースとして利用し、一方試験室308の下部スペースを降雪スペースとして利用し、造雪され、生成された雪片を用いて、降雪模擬する場合に、降雪スペースを零度以上として、降雪中に湿雪化することも可能となる。
図13に示すように、さらなる変形例として、複数のゴムローラー306と、回転ブラシ314付きローラー306とを組み合わせ、回転ブラシ314付きローラー306を複数のゴムローラー306より上側に配置して、まず、回転ブラシ314付きローラー306により、雪粒から雪片を生成し、さらに、複数のゴムローラー306により圧密化してもよい。
加えて、担体手段としてのローラー306について、帯電可能な材質から構成し、担体であるローラー306に向かって搬送される帯電した雪粒を静電気力による吸引するのでもよく、この場合には、雪粒は、担体に向かって搬送される間に、粒の大きさに応じてプラス電荷またはマイナス電荷に帯電され、それにより、担体手段において、粒径の異なる雪粒が混在した雪片として形成し、雪質を変えることが可能となる。
【0039】
以上の構成を有する雪環境試験システム10について、雪片の生成方法を含め、その作用を以下に説明する。
まず、担体が配置される試験室308内の温度および/湿度を所定に設定するとともに、複数のローラー306を連続的に回転させておく。回転数は、たとえば、10RPMである。
次いで、リーマ式製氷機22により、氷片を製造し、砕氷機26により、氷片を破砕し、氷粒を生成し、雪供給管40を通じて拡散装置34に圧送し、拡散プレート74と協働して、雪粒をゴムローラー306の上面320に向けて下方に拡散する(図9のA参照)。
次いで、拡散装置により拡散した雪粒が、複数のローラー306の上部に積もる。
次いで、積もった雪粒は、隣接するローラー306間の最狭部304において、圧密化されることにより、多数の雪粒同士が付着して、不定形だが、たとえば3mm辺から10mm辺に雪片化される。すなわち、最狭部304において、隣接するローラー306の一方の凹部と他方の凸部とにより、雪粒同士を圧密化するようにしている。
【0040】
次いで、隣接するローラー306間において、1つおきに、下方への送り出しが行われ、生成された雪片は、ローラー306の回転により下方に送り出され、そのまま下方に落下し、降雪を模擬し、試験体である車両Vの上部に積雪する(図9のB参照)。
なお、複数のローラー306による雪片の生成段階と、拡散装置34による雪粒の拡散段階とは、バッチ的に行ってもよい。すなわち、拡散装置による雪粒の拡散する際、駆動ローラー306を停止しておき、複数のローラー306を回転しない状態としておき、それにより、拡散する雪粒が複数のローラー306の上部に積雪する。次いで、所望高さまで積雪した段階で、駆動ローラー306を駆動し、複数のローラー306を回転させ、複数のローラー306の上部の積雪層がなくなるまで、雪片を生成して、降雪を模擬してもよい。
【0041】
以上の構成を有する雪片の生成方法によれば、造雪した雪粒をそのまま利用せずに、担体が配置される周囲温度および/周囲湿度を所定に設定したうえで、予め造雪された雪粒を担体に向かって搬送し、搬送された雪粒を担体の表面で捕捉して、雪粒同士を担体表面上で付着成長させることにより、雪片を生成し、生成した雪片を担体表面から剥離することにより、造雪した雪粒の雪片化を通じて、たとえば、担体表面から剥離する雪片を降雪させる場合において、降雪する雪粒の大きさを変えたり、造雪工程と降雪工程とを分離することにより、造雪環境と異なる環境(温度条件、湿度条件)で降雪させ、降雪中に湿雪化することも可能であり、総じて、雪質を所望に変えることが可能である。
また、造雪工程と降雪工程とを分離することが可能であるので、造雪工程において造雪した人工雪をいったん貯雪し、試験を行う際、貯雪中の雪を搬送して、降雪に利用することが可能である。」

(1-e)「【0047】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、本実施形態において、降雪を模擬する雪として、氷片を破砕することにより形成される人工雪であるものとして説明したが、それに限定されることなく、自然雪であったり、あるいは所定湿度および所定温度の冷風を利用して生成される人工結晶雪であってもよく、これらは湿雪でなくてもよい。
たとえば、本実施形態において、雪片を生成する態様として、雪粒を捕捉する担体手段として、第1実施形態ないし第5実施形態それぞれにおいて、複数のローラー、可動式金網、ブラインド構造、回転ベルト式通気膜を単一の担体手段としてそれぞれ利用するものとして説明したが、それに限定されることなく、たとえば、試験室内において、複数のローラーと可動式金網とを採用する領域を区分けする等、適宜、担体手段を任意に組み合わせて用いてもよい。」

(1-f)「【図11】



(1-g)図11には、複数のローラ306は、互いに平行に外周面を対向させて所定間隔を隔てて配置され、上方から隣接するローラーの間の最狭部に向かう向きに回転可能である複数のローラーであって、前記最狭部より上のスペースに、脱落する雪を受けることが可能なように配置された点が示されている。

上記(1-a)?(1-g)の事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。

「氷粒からなる人工雪を利用し、人工雪により降雪を模擬するように構成された雪環境試験システム10において、
人工雪を造る造雪部と、造雪した雪粒を搬送する搬送部と、搬送される雪粒を拡散させる拡散部と、拡散した雪粒から雪片を生成する雪片生成部と、生成した雪片を降雪させる降雪部とを有し、このうち、搬送部の一部と、拡散部と、雪片生成部と、降雪部とが、試験室308内に配置され、造雪部と搬送部とが試験室308外に配置され、
複数のローラー306が、試験室308内の上方において、試験室308を仕切るように配置され、それぞれのローラー306は、外周面312に植毛された回転ブラシ314を構成し、
回転ブラシ314付きローラー306は、ゴムローラー306とは異なり、付着した雪粒を圧密化しないものであり、
回転ブラシ314を高密度にして、対向するローラー306の外周面312まで及ぶ長さとし、ローラー306を水平方向に整列配置することにより、試験室308内を仕切ることが可能であり、
複数のローラー306は、互いに平行に外周面を対向させて所定間隔を隔てて配置され、上方から隣接するローラーの間の最狭部に向かう向きに回転可能である複数のローラーであって、前記最狭部より上のスペースに、脱落する雪を受けることが可能なように配置され、
試験室308内において、造雪スペースと降雪スペースとを互いに独立の温度領域とし、試験室308の上部スペースを零下として造雪スペースとして利用し、一方試験室308の下部スペースを降雪スペースとして利用し、造雪され、生成された雪片を用いて、降雪模擬する場合に、降雪スペースを零度以上として、降雪中に湿雪化することが可能であり、
造雪工程と降雪工程とを分離することにより、造雪環境と異なる環境(温度条件、湿度条件)で降雪させる雪環境試験システム10。」

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開平9-329380号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(2-a)「【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は上記問題点を解決するため、単一結晶の結晶雪を連続的に広域に大量に造雪し、降らせることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明の人工結晶雪製造装置は、所定氷点下の温度をつくる冷却器、その冷風を循環させる送風装置、氷飽和以上の飽和雰囲気をつくり出す加湿装置、膜体が細かいメッシュの織物状で、所定間隔で設置された多数の回転通気膜装置、その膜体の一端に設けた霜除去装置を備えるとともに加湿装置が低水温の蒸発による低温加湿パンを多段に配設したものとし、加湿パンは蒸発面以外を断熱した流水式とした構造のものとしてある。」

(2-b)「【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1の人工降雪装置は、断熱された造雪機械室1内に設置された冷却器2により、所定温度に冷却された空気を送風機3により加湿装置4に送る。
【0015】加湿装置では、低湿度の空気を霜が成長できるように氷飽和以上の空気湿度にするために水蒸気の供給を行う。この条件に最も適している加湿装置は加湿パンで、特に水温を通常の空調に利用するような沸騰型の加湿ではなく、低温度の水温、特に40℃以下の水温設定をした低温加湿パンである。
【0016】また、流路全体を均一に氷飽和以上にするためには、流路全体に少しずつ加湿するよう図4のように加湿パン5を多段に設け、タンク7の水をポンプPにて送りヘッダ6aから各加湿パンへ給水し、加湿パンからの水は戻りヘッダ6bよりタンク7に戻されるようにする。
【0017】さらに重要なのは加湿水温を一定に保つことである。加湿水温は空気の顕熱上昇にもなるため、水温を一定にしておかないと、空気温度にも分布むらができて温度の違う条件の霜が成長してしまうからである。そのため加湿器は、図4のシステムに示すように流水型の加湿パン5とし、加湿水温の制御はタンク7に配したヒータ8により行う。なお、加湿器の加湿面以外の面も空気の顕熱負荷になるため、その面も断熱することが必要である。
【0018】その他の加湿方法でも上記のように氷飽和以上の条件をつくることができれば採用できる。例えば超音波加湿器である。超音波加湿器においても、上記に示したように流路に均一に加湿するように配置することが必要であることはいうまでもない。加湿装置からの空気は送りダクトD1 から造雪ユニット内へ送り込まれる。
【0019】造雪ユニットは、下部が開口する造雪室9内に所定間隔に設けられた回転通気膜装置10で構成してある。同装置10は、上下一対の回転体11a、11bへ通気膜体12を掛け渡したものとしてあり、上下いずれかの回転体を駆動用とし、他は従動用としてある。
【0020】膜体はなるべくフラットな膜が好ましく、その膜の密度はなるべく細かい方がよい。例えば合成樹脂繊維の平織り膜で、通気用の網目が5?300メッシュ程度のものが好ましい。また、膜の回転数は霜の成長時間にあわせて決められるが、0.2?5rph位が好適である。
【0021】膜体の最下部に当たる箇所には霜Mを除去する装置13を設けてあり、霜Mを膜体から落下させ、その落下霜が降下雪Sとなる。霜除去装置13には種々の手段のものがあるので、特に限定はしないが、例えばスクレーパ、回転ブラシなどの機械的なものでもよく、あるいはエアを吹き付けて霜を吹き飛ばすものでもよい。
【0022】膜体12表面の霜は霜除去装置13を通過した後に成長を始め、膜体12の回転により上方へ移動し、回転体11aに達し、さらに回転体11bまで下降する。膜体が回転する間に霜Mは加湿空気から常に氷飽和以上の水蒸気が供給されて次第に成長し、再下段に達して最も大きく成長した状態で霜除去装置13により落下させられる。」

上記(2-a)、(2-b)の事項を総合すると、引用例2には、以下の事項が記載されていると認められる(以下「引用例2記載の事項」という。)。

「所定氷点下の温度をつくる冷却器2により、所定温度に冷却された空気を送風機3により加湿装置4に送り、加湿装置4からの空気は送りダクトD1 から造雪ユニット内へ送り込まれ、
造雪ユニットは、下部が開口する造雪室9内に所定間隔に設けられた回転通気膜装置10で構成してあり、同装置10は、上下一対の回転体11a、11bへ通気膜体12を掛け渡したものであり、
前記通気膜体12はなるべくフラットな膜が好ましく、合成樹脂繊維の平織り膜で、通気用の網目が5?300メッシュ程度のものであり、
前記通気膜体12の最下部に当たる箇所には霜Mを除去する装置13を設けてあり、
前記通気膜体12が回転する間に霜Mは加湿空気から常に氷飽和以上の水蒸気が供給されて次第に成長し、再下段に達して最も大きく成長した状態で霜除去装置13により落下させられる人工結晶雪製造装置。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明は、「ローラー306を水平方向に整列配置することにより、試験室308内を仕切ることが可能であり」、「試験室308内において、造雪スペースと降雪スペースとを互いに独立の温度領域とし、試験室308の上部スペースを零下として造雪スペースとして利用し、一方試験室308の下部スペースを降雪スペースとして利用」するものであるから、試験室308を上下に仕切られているといえる。
よって、引用発明の上記構成と、本願補正発明の「水平方向に延びる仕切りにより上下に仕切られたスペース内において、上部には結晶雪製造部が、下部には結晶雪降雪部が設けられ」る点とは、「水平方向に延びる仕切りにより上下に仕切られたスペース内において、上部には造雪部が、下部には降雪部が設けられ」る点で共通する。

イ 引用発明は、「試験室308の下部スペースを降雪スペースとして利用し、造雪され、生成された雪片を用いて、降雪模擬する場合に、降雪スペースを零度以上として、降雪中に湿雪化することが可能」であり、「造雪工程と降雪工程とを分離することにより、造雪環境と異なる環境(温度条件、湿度条件)で降雪させる」から、降雪を湿雪化する装置と、温湿度を調整する装置とを有しているといえる。
よって、引用発明の上記構成と、本願補正発明の「結晶雪降雪部は、結晶雪製造部により製造された結晶雪の降雪中に、結晶雪を湿雪化する湿雪化装置と、前記結晶雪降雪部のスペース内の温湿度を調整する温湿度調整装置とを有」する点は、「降雪部は、造雪部により製造された雪の降雪中に、雪を湿雪化する湿雪化装置と、前記降雪部のスペース内の温湿度を調整する温湿度調整装置とを有」する点で共通する。

ウ 引用発明の「複数のローラ306は、互いに平行に外周面を対向させて所定間隔を隔てて配置され、上方から隣接するローラーの間の最狭部に向かう向きに回転可能である複数のローラーであって、前記最狭部より上のスペースに、脱落する雪を受けることが可能なように配置され」る点と、本願補正発明の「仕切りは、互いに平行に外周面を対向させて所定間隔を隔てて配置され、上方から隣接するローラーの間の最狭部に向かう向きに回転可能である複数のローラーであって、前記最狭部より上のスペースに、脱落する結晶雪を受けることが可能なように配置された複数のローラーであ」る点とは、「仕切りは、互いに平行に外周面を対向させて所定間隔を隔てて配置され、上方から隣接するローラーの間の最狭部に向かう向きに回転可能である複数のローラーであって、前記最狭部より上のスペースに、脱落する雪を受けることが可能なように配置された複数のローラーであ」る点で共通する。

エ 引用発明の「それぞれのローラー306は、外周面312に植毛された回転ブラシ314を構成」し、「回転ブラシ314を高密度にして、対向するローラー306の外周面312まで及ぶ長さとし、ローラー306を水平方向に整列配置することにより、試験室308内を仕切ることが可能であり」、「回転ブラシ314付きローラー306は、ゴムローラー306とは異なり、付着した雪粒を圧密化しないものであ」る点と、本願補正発明の「それぞれのローラーは、外周面に植毛された回転ブラシ体を構成し、隣接するローラーの間の最狭部において、結晶雪を圧密化することなしに、互いのブラシが重なり合うことにより、仕切りが形成され」る点とは、「それぞれのローラーは、外周面に植毛された回転ブラシ体を構成し、隣接するローラーの間の最狭部において、雪を圧密化することなしに、互いのブラシが重なり合うことにより、仕切りが形成され」る点で共通する。

オ 引用発明の「降雪させる雪環境試験システム10」と、本願補正発明の「結晶雪の降雪システム」とは、「降雪システム」である点で共通する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「水平方向に延びる仕切りにより上下に仕切られたスペース内において、上部には造雪部が、下部には降雪部が設けられ、
前記降雪部は、前記造雪部により製造された雪の降雪中に、雪を湿雪化する湿雪化装置と、前記降雪部のスペース内の温湿度を調整する温湿度調整装置とを有し、
前記仕切りは、互いに平行に外周面を対向させて所定間隔を隔てて配置され、上方から隣接するローラーの間の最狭部に向かう向きに回転可能である複数のローラーであって、前記最狭部より上のスペースに、脱落する雪を受けることが可能なように配置された複数のローラーであり、
それぞれのローラーは、前記外周面に植毛された回転ブラシ体を構成し、隣接するローラーの間の最狭部において、雪を圧密化することなしに、互いのブラシが重なり合うことにより、仕切りが形成される降雪システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
「造雪部」、「降雪部」及び「雪」に関して、本願補正発明は、「結晶雪製造部」、「結晶雪降雪部」及び「結晶雪」であるとともに、「結晶雪製造部は、少なくとも一方が回転駆動可能な上ローラーと下ローラーとの間で、無端状に掛け渡されたメッシュ状膜体を備えた回転通気膜装置と、前記下ローラーの近傍で、先端縁が前記メッシュ状膜体の外表面に対して離間する結晶雪脱落体とを有し、氷点下で、氷飽和以上の水蒸気を含む湿り空気により、メッシュ状膜体の外表面に結晶雪を生成」するとの構成を有するのに対し、引用発明は、「造雪スペース」、「降雪スペース」及び雪粒から生成される「雪片」であるとともに、本願補正発明のような結晶雪製造部の構成を有していない点。

[相違点2]
本願補正発明が、「複数のローラーそれぞれの回転数は、対応する最狭部より上のスペースにおいて、対応する回転通気膜装置の結晶雪脱落体により脱落した結晶雪に対して、対応する前記回転通気膜装置が一回転して、新たな結晶雪が互いの樹枝同士が絡み合うことにより、大雪片化しないように、設定される」のに対し、引用発明は、複数のローラーそれぞれの回転数は特定されていない点。

(4)判断
ア 上記[相違点1]について検討する。
引用例1の段落【0047】には、「本実施形態において、降雪を模擬する雪として、氷片を破砕することにより形成される人工雪であるものとして説明したが、それに限定されることなく、自然雪であったり、あるいは所定湿度および所定温度の冷風を利用して生成される人工結晶雪であってもよく」と記載されており、この記載は、引用発明において雪粒から生成される「雪片」に代えて「結晶雪」を用いてもよいことを示唆している。
一方、引用例2記載の事項は、上記相違点2に係る本願発明の構成である「結晶雪製造部は、少なくとも一方が回転駆動可能な上ローラーと下ローラーとの間で、無端状に掛け渡されたメッシュ状膜体を備えた回転通気膜装置と、前記下ローラーの近傍で、先端縁が前記メッシュ状膜体の外表面に対して離間する結晶雪脱落体とを有し、氷点下で、氷飽和以上の水蒸気を含む湿り空気により、メッシュ状膜体の外表面に結晶雪を生成」する構成に相当する。
よって、上記引用例1の示唆を踏まえると、引用発明に引用例2記載の事項を適用し、「造雪スペース」及び「降雪スペース」を「結晶雪製造部」及び「結晶雪降雪部」として構成し、「結晶雪製造部」を本願補正発明のような構成として「結晶雪」を製造することは当業者であれば容易になし得たことである。

イ 上記[相違点2]について検討する。
上記相違点2に係る本願補正発明の構成を、上記「2-2 新規事項の有無について」で検討した、本願明細書の段落【0032】及び【図2】から把握される技術内容を意味するものとして検討を進める。
引用発明において、「複数のローラ306」は、「互いに平行に外周面を対向させて所定間隔を隔てて配置され、上方から隣接するローラーの間の最狭部に向かう向きに回転可能である複数のローラーであって、前記最狭部より上のスペースに、脱落する雪を受けることが可能なように配置され」ており、ローラーを回転させて下部の降雪スペースに降雪させるためには、所定の回転数を設定してローラを回転させることは当然のことであり、そして、ローラーが回転していれば、ローラーの回転ブラシ314において、既に造雪された雪と新たに造雪された雪との落下位置がずれることは明らかであり、ローラーの回転数をきわめて小さく設定しなければ、落下した雪が重なることはない。
そして、引用例1には、回転ブラシ314付きローラー306は、付着した雪粒を圧密化しないことから、結晶雪を回転ブラシ314によりローラー306から剥離し、降雪を模擬するのに適すること(【0038】)、降雪する雪粒の大きさを変えたり、雪質を所望に変えること(【0041】)が記載されており、一方、引用例2記載の事項においては、通気膜体12上で成長した結晶雪は、結晶雪の樹枝同士が絡み合うことなく落下(降雪)するものである。
そうすると、引用発明に引用例2記載の事項の回転通気膜装置を有する人工結晶雪製造装置を適用して、結晶雪の降雪を模擬する場合、引用発明の複数のローラー306の回転速度を、結晶雪の互いの樹枝同士が絡み合うほどに遅く設定することは考えにくいといえる。また、大雪片化した雪を所望しないのであれば、ローラー306の回転数を、落下した雪が重ならない程度に設定することは、当業者が当然に考慮すべき設計事項ともいえる。
加えて、本願明細書にはローラー306の回転数の具体例として「1RPMないし2RPM」が記載されている(【0032】)のに対し、引用例1には、ゴムローラー306の例であってローラー径も不明ではあるものの、「10RPM」とする例が記載されている(【0039】)ことから、本願補正発明のローラーの回転数は、特に大きく設定されたものとはいえない。
そうすると、引用発明において、複数のローラーの回転数を、新たな結晶雪が互いの樹枝同士が絡み合うことにより、大雪片化しないように設定することは、当業者が格別の創意工夫を要することなく容易に想到し得たことである。
なお、仮に、上記相違点2に係る本願補正発明の構成の、「回転通気膜装置が一回転する」ことと「新たな結晶雪が互いの樹脂同士が絡み合うこと」との関係が、先に脱落した結晶雪に対し、回転通気膜装置が一回転してから脱落する新たな結晶雪が絡み合うことを意味するものとしても、ローラーの回転数の下限値が、上記で検討した場合よりも小さくなるだけであるから、上記検討結果は左右されない。

ウ 本願補正発明が奏する効果について
本願補正発明が奏する効果は、当業者が引用発明及び引用例2記載の事項から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

エ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「引用文献1には、結晶雪製造部と結晶雪降雪部と仕切る結晶雪の降雪システムが開示され、引用文献2には、結晶雪製造部の具体化として、霜除去装置13がスクレ?パである点が開示されているが、仕切りとしての複数のロ-ラーの回転数について、結晶雪が回転通気膜装置の回転により製造することに起因する大雪片化を防止する観点から設定する点は、引用文献1ないし3いずれにも開示はおろか示唆すらされていない。」(6頁21行?同頁末行)と主張する。
しかしながら、上記イで検討したとおり、引用発明において、複数のローラーの回転数を、新たな結晶雪が互いの樹枝同士が絡み合うことにより、大雪片化しないように設定することは、当業者が格別の創意工夫を要することなく容易に想到し得たことである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(5)まとめ
以上のように、本願補正発明は、引用発明及び引用例2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号ないし第4号のいずれを目的とするものでもなく、しかも、特許法第17条の2第3項の規定に違反し、また、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。
よって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成30年12月19日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2[理由]1(1)」に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次のとおりである。
(1)この出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)この出願の請求項3、4に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2016-6362号公報
引用文献2:特開平9-329380号公報
引用文献3:実願昭63-30686号(実開平2-13959号)のマイクロフィルム

3 引用文献
引用文献1、2及びその記載事項は、前記「第2[理由]2-3(1)」、「第2[理由]2-3(2)」に記載した引用例1、2及びその記載事項と同じである。

4 対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]2-3」で検討した本願補正発明から「前記複数のローラーそれぞれの回転数は、前記対応する最狭部より上のスペースにおいて、対応する前記回転通気膜装置の前記結晶雪脱落体により脱落した結晶雪に対して、対応する前記回転通気膜装置が一回転して、新たな結晶雪が互いの樹枝同士が絡み合うことにより、大雪片化しないように、設定される」との事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2[理由]2-3(3)」における相違点1と同様の点で相違するから、上記「第2[理由]2-3(4)」で検討したのと同様の理由で、本願発明は、引用発明及び引用例2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-06-12 
結審通知日 2020-06-15 
審決日 2020-06-26 
出願番号 特願2017-6259(P2017-6259)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25C)
P 1 8・ 561- Z (F25C)
P 1 8・ 575- Z (F25C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 平城 俊雅
槙原 進
発明の名称 結晶雪の降雪システム  
代理人 岡 潔  

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