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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M |
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管理番号 | 1365500 |
審判番号 | 不服2018-3969 |
総通号数 | 250 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-03-20 |
確定日 | 2020-08-20 |
事件の表示 | 特願2015-511608「充填済み容器システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日国際公開、WO2013/184270、平成27年 7月 9日国内公表、特表2015-519125〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年(平成25年)5月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年(平成24年)5月7日(US)アメリカ合衆国、2013年(平成25年)3月14日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、その手続の経緯は概ね次のとおりである。 平成29年 3月13日付け:拒絶理由通知書 平成29年 6月21日 :意見書及び手続補正書の提出 平成29年11月16日付け:拒絶査定 平成30年 3月20日 :審判請求書及びそれと同時に手続補正書の提出 令和 1年 6月18日付け:拒絶理由通知書 令和 1年10月29日 :意見書及び手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明は、令和1年10月29日の手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。 「充填及び滅菌済みの注射器組立体100において、 ストッパ125を含むプランジャ110と、 開口した第1の端部180と反対側の第2の端部185とを有する外筒105において、前記開口した第1の端部180が前記プランジャ110を受け入れるように構成される前記外筒105と、 前記第2の端部185に取り外し可能に取り付けられる先端キャップ115とを備え、 前記ストッパ125と前記先端キャップ115との間で前記外筒105内にチャンバ230が形成され、前記チャンバ230が滅菌感受性物質を収容し、前記先端キャップ115が滅菌感受性物質に曝される第1の材料と、前記滅菌感受性物質に曝されない第2の材料とを含み、 前記滅菌感受性物質と接触する前記先端キャップ115の第1の材料がブチルゴムから構成されており、前記第2の材料がプラスチックから構成されており、前記外筒105は、前記滅菌感受性物質がEtO滅菌処置後にEtOガスにより変化しないように、前記滅菌感受性物質とEtO滅菌の目的で生成されたガスとの間にバリアを作り出すプラスチック材料で形成されることを特徴とする注射器組立体100。」 第3 拒絶の理由 令和1年6月18日付けの当審が通知した拒絶理由は、理由2として、次の理由を含むものである。 本願発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された引用文献2に記載された発明及び周知の技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献2:特開2006-271461号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献2には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同じ。)。 「【0010】 <実施例1> 医療用器具として薬剤が充填されているシリンジを例として説明する、以下、図面に基づいて本発明の好ましい実施の形態を説明する。図1の断面図に示されるように、既充填シリンジ1は、外筒2、キャップ3、ガスケット4、押子11を備える。外筒2の一端側5(図示の例では左側)にはノズル6が設けられ、外筒2の他端側7(図示の例では右側)は開放端8が形成される。そして、既充填シリンジ1は、外筒2の内部に薬液9が開放端8から充填された状態で、外筒2の一端側5のノズル6がキャップ3で封止され、開放端8がガスケット4で封止された構成を備えている。 【0011】 外筒2は、熱可塑性樹脂等プラスチック製である(ガラス製の場合もある)。ICタグ(RFID)10は、外筒2または押子11のフランジ部11aのいずれかまたは両方の任意の適所に、埋込み,貼付け等により設けられている。外筒2は、透明もしくは半透明材料により、好ましくは、酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料により形成されている。外筒2の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。ガスケット4の材料としては、従来からシリンジ用ガスケット に使用されている公知のものが使用できる。例えば、ゴム、エラストマー、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂が挙げられる。ゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、シリコーンゴムが好ましく、特に、加硫処理したものが好ましい。エラストマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー及びこれらの混合物が好ましい。上記ゴム、エラストマーの中でも、特に、スチレン-ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン系エラストマーが、好適な硬度、弾性特性を有し、高圧蒸気滅菌 が可能であることから好ましい。」 「【0013】 外筒2の一端側5に設けられたノズル6には、図示しない注射針が装着可能である。このため、ノズル6の外面には、注射針を装着するための、例えばネジ溝(不図示)などが形成されている場合もある。キャップ3およびガスケット4は、ゴムや弾性プラスチックなどの適当な弾性材料で構成される。ガスケット4の周面には、外筒2の内部に充填された薬液9を封止し、滅菌した後の密閉性を向上させるために、例えばリング状の溝などが形成されている場合もある。 【0014】 次に、この実施の形態における既充填シリンジ1は、以下に説明する製造方法によってなされる。 【0015】 図2のフローチャートに示すように、まず、シリンジ1を構成する外筒2及び/または押子5にICタグ10が設けられる(ステップS1)。この後、例えば高速の水噴射を受けて洗浄され、外筒2の内外表面に付着する発熱物質を含む汚染物質が除去される(好ましくは無菌室で行なわれる)。この後、蒸留水に浸漬する方法、蒸気に曝す方法、もしくは蒸留水に浸漬させた状態で蒸気滅菌する方法の何れかの方法によって濡れた状態にされる。外筒2を蒸気滅菌させるためには、コッホ殺菌釜、オートクレーブなどが好適に用いられる。オートクレーブの場合、所定条件、例えば、100?135℃、1?60分、圧力は、?2.8kgf/cm^(2)で滅菌される。また、EOG(エチレンオキサイドガス)で、所定条件、例えば、100?135℃、1?60分、圧力は、?1.5kgf/cm^(2)で滅菌(第1の滅菌)される(ステップS2)。 【0016】 シリンジ1を構成するキャップ3は、好ましくは、別途、蒸留水に浸漬された後、蒸気滅菌(第1の滅菌)される(ステップS2)。キャップ3の蒸気滅菌には、コッホ殺菌釜、オートクレーブ等が好適に用いられる。シリンジ1を構成するガスケット4は、好ましくは、蒸留水に浸漬された後、蒸気滅菌(第1の滅菌)される(ステップS2)。ガスケット4を備えた押子5の蒸気滅菌(第1の滅菌)にも、コッホ殺菌釜、オートクレーブ等が好適に用いられる。オートクレーブの場合、所定条件、例えば、100?135℃、1?60分、圧力は、?2.8kgf/cm^(2)で滅菌される。また、EOG(エチレンオキサイドガス)滅菌の場合、所定条件、例えば、100?135℃、1?60分、圧力は、?1.5kgf/cm^(2)で滅菌される。 【0017】 また、工程を簡略させる場合には、ガスケット4の表面は、蒸留水に浸漬する方法、蒸気に曝す方法、もしくは蒸留水に浸漬させた状態で蒸気滅菌する方法、の何れかの方法によって濡れた状態にされる。ガスケット4を蒸気滅菌(第1の滅菌)させるためには、コッホ殺菌釜、オートクレーブなどが好適に用いられる。オートクレーブの場合、所定条件、例えば、100?135℃、1?60分、圧力は、?2.8kgf/cm^(2)で滅菌される。また、EOG(エチレンオキサイドガス)滅菌の場合、所定条件、例えば、100?135℃、1?60分、圧力は、?1.5kgf/cm^(2)で滅菌される。 【0018】 そして、クリーンベンチ内等の無菌的条件下で、外筒2の一端側5に形成されているノズル6がキャップ3で封止される。外筒2の他端側7の開放端8から外筒2の内部に薬液9が充填された後(ステップS3)、通常は減圧下においてガスケット4が外筒2の開放端8から外筒2の内部に挿入され、外筒2の開放端8が封止される(ステップS4)。 【0019】 こうして薬液9の充填、密封が完了した既充填シリンジ1は、個包装パックで包囲され(ステップS5)た後、所定の条件で第2の滅菌として、高圧蒸気滅菌,エチレンオキサイドガス滅菌等に供される(ステップS5)。 【0020】 この工程における既充填シリンジ1の滅菌も、コッホ殺菌釜、オートクレーブなどを用いた蒸気滅菌とすることができる。また蒸気滅菌の条件は、外筒2の大きさ、キャップ3およびガスケット4の形状等により異なるが、例えば所定の条件、100?135℃、1?60分、圧力は、?2.8kgf/cm^(2)で滅菌される。なお、蒸気滅菌の際に高温となった薬液9の内圧によるガスケット4の抜け落ちを防ぐために、また、外筒2がプラスチック製である場合は、薬液9の内圧によって外筒2が変形しないように、滅菌室の内圧を適宜高めることが必要である。また、EOG(エチレンオキサイドガス)滅菌の場合、所定条件、例えば、100?135℃、1?60分、圧力は、?1.5kgf/cm^(2)で滅菌される。」 2 上記1の【0010】の記載とともに、下記の図1を参照すると、外筒2において開口端8とその反対側の開口端5が設けられていること、及び、ガスケット4とキャップ3との間で外筒2内に空間が形成され、薬剤9が収容されていることが看取できる。 「図1 」 3 上記1のとおり、引用文献2の【0019】の「こうして薬液9の充填、密封が完了した既充填シリンジ1は、個包装パックで包囲され(ステップS5)た後、所定の条件で第2の滅菌として、高圧蒸気滅菌,エチレンオキサイドガス滅菌等に供される」との記載及び同【0020】の「EOG(エチレンオキサイドガス)滅菌の場合、所定条件、例えば、100?135℃、1?60分、圧力は、?1.5kgf/cm^(2)で滅菌される。」との記載から、既充填シリンジ1は滅菌済みのものであることは明らかである。 また、引用文献2の【0010】の「ノズル6がキャップ3で封止され」について、医師等が既充填シリンジ1を使用する態様を踏まえれば、キャップ3がノズル6に対して取り外し可能に取り付けられるものであることは、技術常識からみて明らかである。 4 上記1の記載事項、同2の図示事項及び同3の認定事項から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「既充填及び滅菌済みのシリンジ1において、 ガスケット4を含む押子11と、 開口端8と反対側の開口端5とを有する外筒2において、前記開口端8が前記押子11を受け入れるように構成される前記外筒2と、 前記開口端5に取り外し可能に取り付けられるキャップ3とを備え、 前記ガスケット4と前記キャップ3との間で前記外筒2内に空間が形成され、前記空間が薬剤9を収容し、 前記薬剤9と接触する前記キャップ3の材料がゴムで構成されており、前記外筒2は、酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料であって、環状ポリオレフィンからなるプラスチックで形成される既充填シリンジ。」 第5 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明を対比するに、引用発明の「既充填及び滅菌済みのシリンジ1」は、その機能及び構造からみて、本願発明の「充填及び滅菌済みの注射器組立体100」に相当し、以下同様に、「ガスケット4」は「ストッパ125」に、「押子11」は「プランジャ110」に、「開口端8」は「開口した第1の端部180」に、「反対側の開口端5」は「反対側の第2の端部185」に、「外筒2」は「外筒105」に、「キャップ3」は「先端キャップ115」に、「空間」は「チャンバ230」に、「環状ポリオレフィンからなるプラスチック」は「プラスチック材料」に、それぞれ相当する。 また、本願発明の「滅菌感受性物質」と「薬剤」とは、物質である限りにおいて共通する。そして、本願発明の「ブチルゴム」はゴムの一種であることから、本願発明の「前記滅菌感受性物質と接触する前記先端キャップ115の第1の材料がブチルゴムから構成されて」いる態様と引用発明の「前記薬剤9と接触する前記キャップ3の材料がゴムで構成されて」いる態様とは、前記物質と接触する前記先端キャップ115がゴムを含む材料で構成されている限りにおいて共通する。 また、本願発明の「外筒15は、前記滅菌感受性物質がEtO滅菌処置後にEtOガスにより変化しないように、前記滅菌感受性物質とEtO滅菌の目的で生成されたガスとの間にバリアを作り出すプラスチック材料で形成される」態様と引用発明の「外筒2は酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料であって、環状ポリオレフィンからなるプラスチックで形成される」態様とは、外筒がガスバリア性を有するプラスチック材料で形成されているという限りにおいて共通する。 してみると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。 (1)一致点 「充填及び滅菌済みの注射器組立体100において、 ストッパ125を含むプランジャ110と、 開口した第1の端部180と反対側の第2の端部185とを有する外筒105において、前記開口した第1の端部180が前記プランジャ110を受け入れるように構成される前記外筒105と、 前記第2の端部185に取り外し可能に取り付けられる先端キャップ115とを備え、 前記ストッパ125と前記先端キャップ115との間で前記外筒105内にチャンバ230が形成され、前記チャンバ230が物質を収容し、 前記物質と接触する前記先端キャップ115がゴムを含む材料で構成されており、 前記外筒105は、ガスバリア性を有するプラスチック材料で形成される注射器組立体100。」 (2)相違点1 チャンバが収容する物質について、本願発明では、滅菌感受性物質であるのに対して、引用発明では、薬剤である点。 (3)相違点2 前記物質と接触する前記先端キャップがゴムを含む材料で構成されていることについて、本願発明では、滅菌感受性物質に曝される第1の材料と、前記滅菌感受性物質に曝されない第2の材料とを含み、前記滅菌感受性物質と接触する前記先端キャップ115の第1の材料がブチルゴムから構成されており、前記第2の材料がプラスチックから構成されているのに対して、引用発明では、ゴムで構成されるものである点。 (3)相違点3 ガスバリア性を有するプラスチック材料で形成された外筒について、本願発明では、前記滅菌感受性物質がEtO滅菌処置後にEtOガスにより変化しないように、前記滅菌感受性物質とEtO滅菌の目的で生成されたガスとの間にバリアを作り出すプラスチック材料で形成されるのに対して、引用発明では、酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料であって、環状ポリオレフィンからなるプラスチックで形成される点。 2 判断 (1)相違点1について検討する。本願発明の「滅菌感受性物質」とは、本願明細書の【0003】の「バイアルおよび注射器を含む容器に滅菌技術に対して感受性のある物質を予め充填することが知られている。例えば、IVフラッシュ、薬剤、ワクチンまたは他の物質は、滅菌にさらされたときに、組成または特性が変化する可能性がある。そのような変化は、例えば、EtO滅菌後のpHの望ましくない変化を含み得る。」との記載から、滅菌にさらされたときに、組成または特性が変化する可能性のある物質のことを指し、ワクチンなどが含まれる。ここで、ワクチン用のプレフィルド注射器は予防接種などにおいて慣用の技術であることから、引用発明の既充填シリンジの空間が収容する薬物としてワクチン、すなわち滅菌感受性物質を想起することは、当業者にとって何ら困難性はない。 (2)相違点2について検討する。上記第4の1のとおり、引用文献2の【0013】の「キャップ3およびガスケット4は、ゴムや弾性プラスチックなどの適当な弾性材料で構成される。」との記載から、引用発明の「キャップ3」をゴムで構成する場合に、ガスケットと同じ材料とすることを否定する積極的な理由はない。そして、引用文献2の【0011】の「ガスケット4の材料としては、・・・(略)・・・ブチルゴム・・・が、好適な硬度、弾性特性を有し高圧蒸気殺菌が可能となることから好ましい。」との記載から、ガスケット4の材料としてブチルゴムが好ましいという示唆を踏まえると、引用発明の「キャップ3」を構成するゴムとしてブチルゴムを採用することは、当業者にとって何ら困難性はない。 また、シリンジのバレル先端部のキャップとして、ブチルゴムからなる弾性素材とプラスチック素材からなる複合素材で形成し、当該弾性素材がバレル内の薬液と接触し、当該プラスチック素材がバレル内の薬液と接触しない構成とすることは周知の技術である(必要であれば、特開2007-125205公報の【0028】?【0030】、図4及び図5等を参照。)ことを踏まえると、キャップ3の構造全体をゴムだけで構成するのではなく、別の材料と組み合わせて構成する程度のことは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項にすぎず、何ら困難性はない。 (3)相違点3について検討する。引用発明は、上記第4の1のとおり、引用文献2の【0019】の「こうして薬液9の充填、密封が完了した既充填シリンジ1は、個包装パックで包囲され(ステップS5)た後、所定の条件で第2の滅菌として、高圧蒸気滅菌,エチレンオキサイドガス滅菌等に供される」との記載及び同【0020】の「EOG(エチレンオキサイドガス)滅菌の場合、所定条件、例えば、100?135℃、1?60分、圧力は、?1.5kgf/cm^(2)で滅菌される。」との記載から、薬剤が充填された後の既充填シリンジをエチレンオキサイド(EtO)ガスによって滅菌処置するものである。そして、当該滅菌処置によって充填されている薬剤が変質しないよう工夫することは、当業者であれば当然認識している技術的課題であるところ、引用発明の「外筒」を形成する「酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料であって、環状ポリオレフィンからなるプラスチック」として、エチレンオキサイドガス滅菌処置時において、充填された薬剤が変質しない程度の耐熱性を有し、エチレンオキサイドに対するガスバリア性を担保できる程度のものとすることは、当業者であれば配慮すべき設計事項であるから、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。 (4)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記の周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものであるということはできない。 (5)よって、本願発明は、引用発明及び上記の周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記の周知の技術に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-03-13 |
結審通知日 | 2020-03-17 |
審決日 | 2020-03-30 |
出願番号 | 特願2015-511608(P2015-511608) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A61M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 吉信、今関 雅子 |
特許庁審判長 |
高木 彰 |
特許庁審判官 |
莊司 英史 芦原 康裕 |
発明の名称 | 充填済み容器システム |
代理人 | 特許業務法人北青山インターナショナル |