• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D
管理番号 1365580
審判番号 不服2020-1165  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-28 
確定日 2020-09-15 
事件の表示 特願2015-130079「吐出容器に装着される造形ヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月18日出願公開、特開2016- 26962、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年6月29日(優先権主張 平成26年6月30日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年11月 7日付け:拒絶理由通知書
平成31年 1月11日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 2月14日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和 元年 5月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年10月21日付け:令和元年5月20日の手続補正についての
補正の却下の決定、拒絶査定
令和 2年 1月28日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和元年10月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-9に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.米国特許第05813785号明細書
2.特開昭60-116433号公報
3.特開2002-320885号公報
4.特開昭62-160158号公報

第3 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、令和元年1月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
吐出容器の吐出孔内に連通する連通孔が形成され、前記吐出孔に装着される有底筒状の装着部と、
前記吐出孔から吐出された吐出物が各別に通過する複数の成形孔およびこれらの成形孔が開口する造形面を有し、前記複数の成形孔を各別に通過して成形された吐出物それぞれにより形成される複数の造形片を、前記造形面上で組み合わせて造形物を形成する造形部と、を備え、
前記造形部は、上側を向く面が前記造形面とされた本体部と、前記本体部から下方に向けて延び、前記装着部に径方向の外側から嵌合された操作筒部と、前記本体部から下方に向けて延び、前記装着部内に嵌合するシール筒部と、を備え、
前記装着部と前記造形部との間には、前記吐出孔から吐出された吐出物を、前記造形面に沿う径方向に拡散して前記複数の成形孔それぞれに供給する拡散室が設けられ、
前記拡散室には、前記連通孔を通して前記吐出孔に対向する規制部材が設けられ、
前記規制部材は、前記連通孔の開口周縁部にブリッジ部を介して連結され、
前記ブリッジ部は、前記連通孔の内周面から上方に延びて前記規制部材の下面に固定されていることを特徴とする造形ヘッド。
【請求項2】
前記吐出孔は、前記吐出容器の口部に上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムの内部に設けられ、
前記装着部は、前記ステムを介して前記吐出孔に装着されることを特徴とする請求項1記載の造形ヘッド。
【請求項3】
前記装着部は、前記ステムに、前記ステムの軸線回りに回転可能に装着され、前記ステムに対する回転移動に伴って下降させられることを特徴とする請求項2記載の造形ヘッド。
【請求項4】
前記装着部の前記ステムに対する回転動作を前記装着部の前記口部に対する下降動作に変換する変換機構を更に備え、
前記変換機構は、前記装着部が前記軸線回りの同一方向に回転するときに、前記ステムの上方付勢力に抗して前記装着部を下降させる下降状態と、前記ステムの上方付勢力により前記装着部を上昇させる上昇状態と、を交互に繰り返すことを特徴とする請求項3記載の造形ヘッド。
【請求項5】
前記複数の成形孔のうち、少なくとも一部は、長穴状に形成された成形長穴とされ、
前記成形長穴として、この成形長穴を画成する壁面において、この成形長穴が延びる方向に沿って延びる一対の側壁面のうち、一方の側壁面が、前記造形面に近づくに従い、他方の側壁面から離間するように傾斜する傾斜長穴が備えられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の造形ヘッド。
【請求項6】
前記拡散室のヘッド軸方向に沿う大きさは、1.5mm以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の造形ヘッド。
【請求項7】
前記複数の成形孔のうち、少なくとも一部は、長穴状に形成された成形長穴とされ、
前記成形長穴は、前記径方向に間隔をあけて複数配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の造形ヘッド。
【請求項8】
複数の前記成形長穴のうち、前記径方向の最も内側に位置する前記成形長穴の下端開口における幅は、2mm未満であることを特徴とする請求項7に記載の造形ヘッド。
【請求項9】
前記径方向に隣り合う前記成形長穴同士の前記径方向の間隔は、5mm未満であることを特徴とする請求項7または8に記載の造形ヘッド。」

第4 引用文献の記載事項
1.引用文献1
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、括弧内の訳文は、当審が作成した。)。

ア 第3欄第39-57行
「Referring to FIG. 1, there may be seen a packaging, dispensing and applicator device generally designated by the reference numeral 1, having an axis of symmetry X and comprising a generally cylindrical container 2 pressurized by means of a propellant gas and containing a liquid product P. This container carries at its upper end a cup 3 of a valve 4 fixed to the container by a crimped bead 5. In its upper portion, the valve 4 has a hollow actuating stem 6 on which a dispensing head 7 is fixed. This head 7 is constituted by a receptacle 8 which is fitted on the stem 6 via a hollow sleeve 8a. A slightly curved outwardly convex dome is mounted on the receptacle 8, and is made of a sintered, porous non-deformable material, in particular of polyethylene, with a porosity ranging from 1 to 300 μm. This dome 9, which constitutes the element for applying the product to the skin, is traversed by one or several ducts 10 which allow the product to emerge in the form of a foam or gel at the openings 10a on the application surface 9a. The dome 9 is fitted in the receptacle 8.」
(図1を参照すると、参照番号1によって全体的に示され、対称軸Xを有し、推進ガスによって加圧され液状内容物を含んだ概ね円筒形の容器2を備える包装・分配・塗布装置が記載されている。この容器は、その上端において、圧着された曲げ部によって容器に固定された弁4のカップ状部材3を支持する。その上部において、弁4は、分配ヘッド7が固定された中空の駆動ステム6を有する。このヘッド7は、中空のスリーブ8aによってステム6に取り付けられる受け具8から構成されている。僅かに湾曲した外方に凸のドームは、受け具8の上に取り付けられ、焼結され多孔質の変形しない1?300μmの多孔性を有した材料、特に、ポリエチレンからなる。肌に内容物を塗布する要素を構成するこのドーム9は、塗布面9aの開口部10aにおいて泡又はゲルの形状で内容物が吐出される1つ又はいくつかの穴10に貫通されている。ドーム9は受け具8内に取り付けられている。)

イ 第3欄第60-61行
「An expansion chamber 13 may be provided between the receptacle 8 and the dome 9.」
(膨張室13は、受け具8とドーム9との間に設けられてもよい。)

ウ 第4欄第1-3行
「The stem 6, the sleeve 8a and the perforated receptacle 8 define a dispensing duct for the product P, leading from the container to the dome 9.」
(ステム6、スリーブ8aと穴の開いた受け具8は、内容物Pを容器からドーム9に導く分配管を画定する。)

エ 第4欄第10-20行
「To use the device in accordance with the invention, after removing the protective cap 11, the user exerts a mechanical pressure F by pressing on the application surface 9a of the dome 9 outside the zones which comprise the openings 10a. The applicator element is thus depressed and, by depressing the stem 6 of the valve 4, causes the valve to open. The product emerges from the container via the stem 6, the sleeve 8a, then via the openings 10a, in the form of foam; it is accumulated on the surface of the dome 9. The foam is then applied to the skin, and the dome 9 is used as an applicator and as a means for spreading the foam on the skin.」
(本発明による装置を使用するために、保護キャップ11を取り外した後、使用者は、開口部10aを含む領域の外側の塗布面9aを押圧することで、機械的な力Fを加える。塗布要素は、このように押し下げられ、そして、弁4のステム6を押し下げることによって、弁4を開かせる。内容物が、ステム6、スリーブ8aそして開口部10aを通して、泡の形状で容器から吐出され、ドーム9の表面に溜められる。泡は、次に肌に塗布され、ドーム9は塗布手段として、また、泡を肌に広げる手段として用いられる。)

オ 第4欄第46-48行
「The product rises up the duct 10 and emerges in the vicinity of the free end of the pointed element 9.」
(内容物は穴10を上昇し、先の尖った要素9の自由端付近に吐出される。)

カ 第4欄第63行-第5欄第3行
「The FIGS. 4A-4H show various representations of the external surface 9a of the applicator element. The openings 10a have various shapes and dimensions. Being associated with one or the other shape of the applicator element of FIGS. 1 to 3, the openings permit the delivery of specifically foaming or self-foaming products in the form of spaghetti or bands.」
(図4A-4Hは、塗布要素の外表面9aの種々の例を示す。開口部10aは様々な形状や寸法を有する。図1-3の塗布要素のいずれかの形状に結合することで、開口部は、特に発泡させた又は自己発泡した内容物をスパゲッティや帯の形状で吐出することを可能にする。)

(2)上記記載及び図面から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
ステム6に吐出孔が形成されており、受け具8に形成されたスリーブ8a内周面が吐出孔内に連通する(ウ-エ)。
受け具8が有底筒状である(図1、図4A-4E)。
ドーム9は、上側を向く面が塗布面とされた本体部と、本体部から下方に向けて延び、受け具8に取り付けられる筒部とを備える(図1)。
膨張室13は、吐出孔から吐出された内容物Pを、塗布面9aに沿う径方向に膨張させて複数の穴10のそれぞれに供給する(イ、エ、図1)。

(3)上記(1)-(2)から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「容器の吐出孔内に連通するスリーブ8a内周面が形成され、ステム6に取り付けられる有底筒状の受け具8と、吐出孔から吐出された内容物Pが上昇するいくつかの穴10及びこれらの穴10が開口する塗布面9aを有し、複数の穴10を上昇して溜められた内容物Pによりスパゲティや帯の形状を形成するドーム9と、を備え、ドーム9は、上側を向く面が塗布面とされた本体部と、本体部から下方に延び、受け具8に取り付けられる筒部と、を備え、受け具8とドーム9との間には、吐出孔から吐出された内容物Pを、塗布面9aに沿う径方向に膨張させて複数の穴10のそれぞれに供給する膨張室13が設けられる分配ヘッド7。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2の第3ページ左上欄第6行-右上欄第5行、第3ページ右上欄第14-17行、第3ページ左下欄第19行-右下欄第9行、第4ページ左上欄第8行-右上欄第7行及び第1図の記載からみて、次の発明(以下「引用発明2」)が記載されていると認められる。
「ペースト状可塑性物1が各別に押し出される複数のノズル開口3およびこれらのノズル開口が開口するヘッド部分2a表面を有し、複数のノズル開口を格別に押し出されて成形された押出成形物6を、ヘッド部分2a表面上において切断成形装置で切断成形させることによって花状成形物11が形成されるシリンダー2。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明1における「容器」、「スリーブ8a内周面」、「受け具8」、「内容物P」、「穴10」、「膨張室13」は、本願発明1における「吐出容器」、「連通孔」、「装着部」、「吐出物」、「成形孔」、「拡散室」に相当する。
引用発明1において、受け具8はステム6に取り付けられているが、本願明細書の段落【0043】及び図1-2を参照すると、装着部は、吐出孔が設けられているステムに装着されているものであることを踏まえると、引用発明1において「受け具8」が「ステム6に取り付けられる」ことは、本願発明1において「装着部」が「吐出孔に装着される」ことに相当する。
引用発明1の「ドーム9」と本願発明1の「造形部」とは「吐出部」である点で共通し、同様に、「塗布面9a」と「造形面」とは「吐出面」である点で、「分配ヘッド7」と「造形ヘッド」とは「吐出ヘッド」である点で共通する。

以上のことから、本願発明1と引用発明1は、次の構成において一致する。
「吐出容器の吐出孔内に連通する連通孔が形成され、前記吐出孔に装着される有底筒状の装着部と、吐出部と、を備え、前記装着部と前記吐出部との間には、前記吐出孔から吐出された吐出物を、吐出面に沿う径方向に拡散して前記複数の成形孔それぞれに供給する拡散室が設けられる吐出ヘッド。」

また、本願発明1と引用発明1は、以下の点で相違する。
ア 相違点1
本願発明1は「造形ヘッド」であり、「前記吐出孔から吐出された吐出物が各別に通過する複数の成形孔およびこれらの成形孔が開口する造形面を有し、前記複数の成形孔を各別に通過して成形された吐出物それぞれにより形成される複数の造形片を、前記造形面上で組み合わせて造形物を形成する造形部」を備え、「前記造形部は、上側を向く面が前記造形面とされた本体部と、前記本体部から下方に向けて延び、前記装着部に径方向の外側から嵌合された操作筒部と、前記本体部から下方に向けて延び、前記装着部内に嵌合するシール筒部と、を備え」るのに対し、引用発明1は「分配ヘッド7」であり、「吐出孔から吐出された内容物Pが上昇するいくつかの穴10及びこれらの穴10が開口する塗布面9aを有し、複数の穴10を上昇して溜められた内容物Pによりスパゲティや帯の形状を形成するドーム9」を備え、「ドーム9は、上側を向く面が塗布面とされた本体部と、本体部から下方に延び、受け具8に取り付けられる筒部と、を備え」る点。

イ 相違点2
本願発明1は「前記拡散室には、前記連通孔を通して前記吐出孔に対向する規制部材が設けられ、前記規制部材は、前記連通孔の開口周縁部にブリッジ部を介して連結され、前記ブリッジ部は、前記連通孔の内周面から上方に延びて前記規制部材の下面に固定されている」のに対し、引用発明1はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
引用発明1は、内容物を泡又はゲルの形状で肌に塗布するために、内容物をドームの表面に溜めるものである(第4の1.(1)ア、エ)。
引用発明2は、重力により流動変形せず且つ適度の柔軟性及び粘着性を有する程度の硬さに調整されたペースト状可塑性物1を花状成形物11に形成するものである(引用文献2第3ページ右下欄第7-9行を参照)。
このように、引用発明1と引用発明2とでは技術分野が異なるのみならず、課題、作用、機能が共通せず、引用発明1と引用発明2とを組み合わせる動機付けがない。
仮に引用発明1に引用発明2を組み合わせることができたとしても、引用発明1において、ドームの表面に溜められた内容物は泡又はゲルの形状であるため、引用発明1におけるドーム9に溜められた内容物Pを、引用発明2のように切断成形装置で切断しても、当該内容物Pの造形物を形成することはできない。
そのため、当業者といえども、引用発明1-2から相違点1に係る本願発明1の「造形片」を「造形面上で組み合わせて造形物を形成する」構成を容易に想到することはできない。
また、相違点1に係る造形部と装着部との嵌合構造に関する相違についても、本願出願前において周知技術であるともいえず、さらには、単なる設計事項ということもできない。

したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても拒絶査定において引用された引用文献1-4に記載された発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-9について
本願発明2-9も、相違点1に係る発明特定事項を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-9は相違点1に係る発明特定事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に記載された発明に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-08-25 
出願番号 特願2015-130079(P2015-130079)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小川 悟史村山 美保  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 杉山 悟史
藤井 眞吾
発明の名称 吐出容器に装着される造形ヘッド  
代理人 鈴木 三義  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 仁内 宏紀  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ