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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05B
管理番号 1365698
審判番号 不服2019-5147  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-18 
確定日 2020-09-03 
事件の表示 特願2014-178549「有機電界発光素子」拒絶査定不服審判事件〔平成28年4月14日出願公開、特開2016-54027〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2014-178549号(以下「本件出願」という。)は,平成26年9月2日を出願日とする特許出願であって,その手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成30年 6月11日付け:拒絶理由通知書
平成30年 8月15日提出:意見書
平成30年 8月15日提出:手続補正書
平成31年 1月15日付け:拒絶査定
平成31年 4月18日提出:審判請求書
平成31年 4月18日提出:手続補正書
令和 元年10月10日提出:上申書
令和 2年 3月11日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 5月15日提出:意見書

2 本願発明
本件出願の請求項1に係る発明は,平成31年4月18日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりの,次のものである。
「陽極と,基板上に形成された陰極との間に複数の層が積層された構造を有する有機電界発光素子であって,
該有機電界発光素子は,陰極と発光層との間に第1の金属酸化物層を有し,陽極と発光層との間に第2の金属酸化物層を有し,水蒸気透過度が10^(-7)?10^(-4)g/m^(2)・dayであって,酸素透過度が10^(-2)cc/m^(2)・day・atm以上である封止がされたものである
ことを特徴とする有機電界発光素子。」

3 当合議体が通知した拒絶の理由
令和2年3月11日付けで当合議体が通知した拒絶の理由は,[A]本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない,[B]あるいは,本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由を含むものである。
引用文献1:Hirohiko Fukagawa 他6名,「Highly efficient and air-stable inverted organic light-emitting diode composed of inert materials」,Applied Physics Express,The Japan Society of Applied Physics,2014年7月25日,7,082104,082104-1?082104-4頁(Hirohiko Fukagawa et al 2014 Appl. Phys. Express 7 82104)

第2 当合議体の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1) 引用文献1の記載
当合議体が通知した拒絶の理由で引用された引用文献1は,本件出願の出願前に日本国内又は外国において,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ,そこには,以下の記載がある。なお,参考訳に付した下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や判断に活用した箇所を示す。
ア タイトル
「Highly efficient and air-stable inverted organic light-emitting diode composed of inert materials」
(参考訳:不活性材料からなり高効率かつ空気に対して安定性がある逆構造有機発光ダイオード)

イ 要約
「 The feasibility of a highly efficient and air-stable organic light-emitting diode (OLED) was examined. A phosphorescent OLED not containing an air-sensitive material was fabricated by employing an inverted structure with an air-stable electron injection layer. Efficient electron injection from the bottom cathode to the emitting layer was demonstrated from the fact that the device characteristics of the inverted OLED were almost the same as those of a conventional OLED. No dark spot formation was observed after 250 days in the inverted OLED encapsulated by a barrier film with a water vapor transmission rate of 10^(-4)gm^(-2)day^(-1).」
(参考訳:高効率かつ空気に対して安定性がある,有機発光ダイオード(OLED)の実現可能性が検討された。空気に対して安定性がある電子注入層を備えた反転構造を採用することによって,空気に対して敏感な材料を含まない燐光発光OLEDが作製された。逆構造OLEDのデバイス特性が,従来型のOLEDのものとほぼ同じであったことから,底部の陰極から発光層への,効率的な電子注入が可能であることが示された。逆構造OLEDは,水蒸気透過率が10^(-4)gm^(-2)day^(-1)であるバリアフィルムによって封止され,250日間経過した後であっても,ダークスポットの発生が観察されなかった。)

ウ 図1及びその説明


Fig.1. Multilayer structures of conventional OLED and iOLED. The molecular structures of the emitting materials and PEI are also shown.」
(図1の説明の参考訳:図1は,従来のOLEDとiOLEDの多層構造を示している。図1には,併せて,発光材料とPEIの分子構造も示している。)

エ 082104-1頁右欄下から10行?082104-2頁左欄下から6行
「 Figure 1 shows the structures of the conventional OLED and the iOLED. The OLEDs were fabricated on a glass substrate coated with a 150-nm-thick ITO layer. The device configuration of the conventional OLED is ITO/PEDOT:PSS (35 nm)/α-NPD (40 nm)/Bebq_(2):Ir(piq)_(3)(6wt%, 35nm)/ TPBi(40nm)/LiF(1nm)/Al(100nm), where Ir(piq)_(3) is tris[1-phenylisoquinolinato-C^(2),N]iridium(III) and TPBi is 1,3,5-tris(N-phenylbenzimidazol-2-yl)benzene.…(省略)…The device configuration of the fabricated iOLED is ITO/ZnO(10nm)/PEI(ultrathin film)/Bebq_(2):Ir(piq)_(3)(6wt%, 35nm)/α-NPD(40nm)/MoO_(3)(10nm)/Au(50nm). Both OLEDs, whose device characteristics were measured, were encapsulated using a UV-epoxy resin and a glass cover in nitrogen atmosphere after the formation of the upper electrode.」
(参考訳:図1は,従来のOLEDと逆構造OLEDの構造を示している。OLEDは,厚さ150nmのITO層が被覆されたガラス基板上に作製された。従来のOLEDの素子構造は,ITO/PEDOT:PSS(35nm)/α-NPD(40nm)/Bebq_(2):Ir(piq)_(3)(6wt%,35nm)/TPBi(40nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)であり,ここで,Ir(piq)_(3)は,トリス[1-フェニルイソキノリアートC^(2),N]イリジウム(III)であり,TPBiは,1,3,5-トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼンである。…(省略)…作製された逆構造OLEDの素子構造は,ITO/ZnO(10nm)/PEI(超薄膜)/Bebq_(2):Ir(piq)_(3)(6wt%,35nm)/α-NPD(40nm)/MoO_(3)(10nm)/Au(50nm)である。素子特性が測定されたOLEDは,いずれも,上部の電極が形成された後,窒素雰囲気中において紫外線硬化型エポキシ樹脂及びガラスカバーによって封止されたものである。)

オ 図3及びその説明


Fig. 3. (a) Schematic view of encapsulation method using a barrier film. The UV epoxy resin is used for adhesion between the glass substrate, the glass frame, and the barrier film. (b) Picture of the glass-capped iOLED and film-capped iOLED.」
(図3の説明の参考訳:図3(a)は,バリアフィルムを用いた封止方法の模式図である。紫外線硬化型エポキシ樹脂が,ガラス基板,ガラスフレーム及びバリアフィルム間の接着に使用された。図3(b)は,ガラスによって封止された逆構造OLEDと,フィルムによって封止された逆構造OLEDの写真である。)

カ 082104-3頁左欄11?18行
「 The long-term storage stability of the conventional OLED and iOLED in air was examined by the encapsulation method, as illustrated in Figs. 3(a) and 3(b). Both the conventional OLED and the iOLED were encapsulated using a glass frame, a barrier film, and a UV-epoxy resin in nitrogen atmosphere. The barrier film that we used in the encapsulation has a WVTR of 3 × 10^(-4)gm^(-2)day^(-1)(supplied by OIKE).」
(参考訳:従来のOLEDと逆構造OLEDの空気中での長期保存安定性を,図3(a)及び図3(b)に示すような封止方法によって調べた。従来のOLED及びiOLEDは,ともに,ガラスフレーム,バリアフィルム及び紫外線硬化型エポキシ樹脂を使用して,窒素雰囲気で封止された。封止に使用したバリアフィルムのWVTRは3×10^(-4)gm^(-2)day^(-1)である(OIKEから入手)。)
(当合議体注:082104-1頁の左欄10行に「water vapor transmission rate(WVTR)」と記載があるとおり,「WVTR」は,「Water Vapor Transmission Rate」(水蒸気透過率)の略号である。)

キ 082104-4頁左欄下から10?5行
「These results indicate that highly efficient and air-stable OLEDs can be realized by employing an inverted structure with a suitable EIL. Such an air-stable OLED not only simplifies the encapsulation of glass-based OLEDs but also makes flexible/stretchable OLEDs practical.」
(参考訳:これらの結果は,適切な電子注入層を備えた反転構造を採用することにより,高効率かつ空気に対して安定性のあるOLEDを実現できることを示している。このような空気に対して安定性を有するOLEDは,ガラスベースのOLEDの封止を簡素化するだけでなく,フレキシブル性や伸縮性を備えたOLEDの実用化をもたらすものである。)

(2) 引用発明
引用文献1のFig.1及びその説明からみて,引用文献1には,次の「逆構造有機発光ダイオード」が記載されている(以下「引用発明」という。)
「 ガラス基板上に,順に,厚さ150nmのITO層(陰極),厚さ10nmのZnO層,PEIの超薄膜,6重量%のIr(piq)_(3)がドープされた厚さ35nmのBebq_(2)層,厚さ40nmのα-NPD層,厚さ10nmのMoO_(3)層,厚さ50nmのAu層(陽極)が形成されてなる,
逆構造有機発光ダイオード。」

2 対比及び判断
(1) 対比
本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
ア 有機電界発光素子
引用発明の「逆構造有機発光ダイオード」は,「ガラス基板上に,順に,厚さ150nmのITO層(陰極),厚さ10nmのZnO層,PEIの超薄膜,6重量%のIr(piq)_(3)がドープされた厚さ35nmのBebq_(2)層,厚さ40nmのα-NPD層,厚さ10nmのMoO_(3)層,Au層(陽極)が形成されてなる」。
ここで,引用発明の「逆構造有機発光ダイオード」は,「有機発光ダイオード」という文言から理解されるとおり,有機電界発光素子である。また,引用発明の「逆構造有機発光ダイオード」は,上記の構造を具備するから,陽極としての役割を果たす「Au層」と,「ガラス基板上」に形成され,陰極としての役割を果たす「ITO層」との間に,「ZnO層」から「MoO_(3)層」までの,複数の層が積層された構造を有する。
そうしてみると,引用発明の「Au層」,「ITO層」及び「逆構造有機発光ダイオード」は,それぞれ本願発明の「陽極」,「陰極」及び「有機電界発光素子」に相当する。また,引用発明の「逆構造有機発光ダイオード」は,本願発明の「有機電界発光素子」における,「陽極と,基板上に形成された陰極との間に複数の層が積層された構造を有する」との構成を具備する。

イ 金属酸化物層
引用発明の「6重量%のIr(piq)_(3)がドープされた厚さ35nmのBebq_(2)層」は,技術的にみて,発光層である。また,引用発明の「逆構造有機発光ダイオード」は,上記アで述べた構造からみて,陰極(ITO層)と発光層との間に,金属酸化物層である「ZnO層」を有し,加えて,陽極(Au層)と発光層との間にも,金属酸化物層である「MoO_(3)層」を有するといえる。さらに,「ZnO層」及び「NoO_(3)層」に,それぞれ序数詞(第1,第2)を付して「第1の金属酸化物層」及び「第2の金属酸化物層」と称することは,当業者の随意である。
そうしてみると,引用発明の「ZnO層」及び「MoO_(3)層」は,それぞれ本願発明の「第1の金属酸化物層」及び「第2の金属酸化物層」に相当する。また,引用発明の「逆構造有機発光ダイオード」は,本願発明の「有機電界発光素子」における,「陰極と発光層との間に第1の金属酸化物層を有し,陽極と発光層との間に第2の金属酸化物層を有し」との構成を具備する。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明と引用発明は,次の構成で一致する。
「陽極と,基板上に形成された陰極との間に複数の層が積層された構造を有する有機電界発光素子であって,
該有機電界発光素子は,陰極と発光層との間に第1の金属酸化物層を有し,陽極と発光層との間に第2の金属酸化物層を有する,
有機電界発光素子。」

イ 相違点
本願発明と引用発明は,次の点で相違する,又は,一応相違する。
(相違点1)
「有機電界発光素子」が,本願発明は,「水蒸気透過度が10^(-7)?10^(-4)g/m^(2)・dayであって,酸素透過度が10^(-2)cc/m^(2)・day・atm以上である封止がされたものである」のに対して,引用発明は,これが明らかではない点。

(3) 判断
前記1(1)エの記載からみて,引用発明の「逆構造有機発光ダイオード」は,素子特性の測定に際しては,「窒素雰囲気中において紫外線硬化型エポキシ樹脂及びガラスカバーによって封止されたもの」である。
しかしながら,実用を考える当業者からしてみれば,引用文献1の要約(前記1(1)イ)並びに図3及びその説明(前記1(1)オ及びカ)等の記載から理解されるとおり,引用発明の「逆構造有機発光ダイオード」は,通常よりも低い(厳密でない)ガスバリア性の封止に適したものである。また,上記箇所には,具体的な水蒸気透過度として,10^(-4)g/m^(2)・dayが示されている。そして,当業者ならば,引用発明の構成及び上記記載等から,酸素透過度についても,引用発明の「逆構造有機発光ダイオード」は,通常より低い(厳密でない)ガスバリア性のもので構わないと理解することができる。
(当合議体注:前記1(1)カにおいて用いられている「バリアフィルム」は,その水蒸気透過率,入手先,及び本願発明と引用発明の研究グループが同一であることからみて,本願発明の具体的な実施態様と理解される実施例2(【0149】の[5])において使用されている封止フィルムと同じものと解するのが自然である。)
そうしてみると,引用発明の「逆構造有機発光ダイオード」を,「水蒸気透過度が10^(-7)?10^(-4)g/m^(2)・dayであって,酸素透過度が10^(-2)cc/m^(2)・day・atm以上である封止がされたものである」とすることは,引用文献1において実質的に開示されているに等しい事項といえる。
仮にそうでないとしても,引用発明の「逆構造有機発光ダイオード」を,「水蒸気透過度が10^(-7)?10^(-4)g/m^(2)・dayであって,酸素透過度が10^(-2)cc/m^(2)・day・atm以上である封止がされたもの」とすることは,フレキシブル性(前記1(1)キ)を求める当業者が試みる範囲内の事項にすぎない。

(4) 発明の効果について
本願発明の効果に関して,本件出願の明細書の【0136】には,「本発明の有機電界発光素子は,上述の構成よりなり,従来の有機電界発光素子のような厳密な封止を必要とせずに良好な連続駆動寿命,及び,保存安定性を有するものである。」及び「発光層の材料や素子の層構成を上述した好ましい構成とすることで,更に発光特性等に優れたものとすることができることから,表示装置や照明装置の材料等に好適に用いることができる。」と記載されている。
ここで,本願発明は,発光層の材料を特定するものではないから,本願発明の効果は,「本発明の有機電界発光素子は,上述の構成よりなり,従来の有機電界発光素子のような厳密な封止を必要とせずに良好な連続駆動寿命,及び,保存安定性を有するものである。」と理解される。
しかしながら,このような効果は,引用発明から予測可能な範囲を超えないものである。

(5) 請求人の主張について
請求人は,令和2年5月15日提出の意見書において,「当業者が引用文献1の記載から,逆構造の有機電界発光素子に対して酸素透過度が高い簡易な封止を使用するとしても,せいぜい水蒸気透過度と同程度のオーダーの酸素透過度を有する封止材料を用いる程度のはずであり,酸素透過度が10^(-2)cc/m^(2)・day・atm以上のような,水蒸気透過度と透過度が2桁以上違う酸素透過度の材料を用いることまで動機付けられるとはいえません。」と主張する。
しかしながら,水蒸気透過度の単位が「g/m^(2)・day」であるのに対して,酸素透過度の単位は「cc/m^(2)・day・atm」であるから,当業者ならば,両者のオーダーを同一視することはないと考えられる。そして,当業者ならば,水蒸気透過度と酸素透過度のそれぞれについて,最適な程度を試行錯誤すると考えられる。

念のために,技術常識を考慮する。
国際公開第2006/075490号の[0047]には,「セラミックス膜より弾性率の低い層」に関して,「水蒸気透過係数は1×10^(-4)g・m/m^(2)/day?1×10^(-3)g・m/m^(2)/day」及び「酸素透過係数は1×10^(-2)cm^(3)・m/m^(2)/day?1×10^(-1)cm^(3)・m/m^(2)/day」との記載がある。また,特開2007-66601号公報の【0029】には,「可撓性基板101を保護する層」に関して,「その酸素透過率が,10^(-2)cc/m^(2)/day以下,水蒸気透過率が,10^(-5)cc/m^(2)/day以下であることが好ましい。」と記載されている。加えて,特表2005-528250号公報の【0004】には,「OLEDのような環境に敏感なディスプレイデバイスを用いる特定のディスプレイ用途は,典型的には10^(-4)?10^(-2)cc/m^(2)/日の最大酸素透過速度,及び10^(-5)?10^(-6)cc/m^(2)/日の最大水蒸気透過速度を有する封入を必要とする。」と記載されている(当合議体注:「10^(-5)?10^(-6)cc/m^(2)/日」は,その前の記載と書きぶりを揃えるならば,「10^(-6)?10^(-5)cc/m^(2)/日」である)。
これら文献の記載内容からみても,当業者は,単位の異なる水蒸気透過度及び酸素透過度のオーダーを同一視することはなく,各々に最適値があることを心得ていると考えられる。
仮に,請求人が主張するとおり,単位の違いを無視してオーダーで比較するとしても,上記文献には,酸素透過度の値として,水蒸気透過度の値よりも数オーダー大きなものが示されている。
したがって,せいぜい水蒸気透過度と同程度のオーダーの酸素透過度を有する封止材料を用いる程度のはずであるという請求人の主張は,採用できない。

第3 まとめ
以上のとおり,本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,引用文献1に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない。あるいは,本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-06-26 
結審通知日 2020-06-30 
審決日 2020-07-17 
出願番号 特願2014-178549(P2014-178549)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩井 好子  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 樋口 信宏
河原 正
発明の名称 有機電界発光素子  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  

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