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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04L |
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管理番号 | 1365789 |
審判番号 | 不服2018-14767 |
総通号数 | 250 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-06 |
確定日 | 2020-09-29 |
事件の表示 | 特願2014-114445「中継装置およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月17日出願公開、特開2015-228629、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年6月2日の出願であって、平成30年2月16日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年4月25日に手続補正がされ、平成30年5月9日付けで拒絶理由通知(最後)がされ、平成30年7月13日に手続補正がされ、平成30年7月27日付けで平成30年7月13日付けの補正の却下が決定されるとともに拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年11月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、その後、令和2年1月23日付けで当審より拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和2年3月23日に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成30年7月27日付け拒絶査定)の概要は、平成30年5月15日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきというものであり、当該理由は次のとおりである。 本願請求項1-13に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献一覧 1.特開2012-194631号公報 2.特開2013-131948号公報 3.特開2011-217342号公報 第3 当審拒絶理由の概要 令和2年1月23日付け拒絶理由の概要は次のとおりである。 1 (サポート要件)本願の特許請求の範囲の請求項1ないし13の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2 (明確性)本願の特許請求の範囲の請求項1ないし13の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 3 (進歩性)本願請求項1-13に係る発明は以下の引用文献1ないし7に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献一覧 1.特開2012-194631号公報 2.特開2011-217342号公報 3.特開2006-222808号公報 4.特開2013-137793号公報 5.特表2005-535042号公報 6.特表2009-543167号公報 7.特表2004-516712号公報 第4 本願発明 本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、令和2年3月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 LANとWANとの間のパケットの中継を行うルータにおいて、 前記LANにおける各中継装置の接続関係および前記各中継装置に接続される端末装置の接続関係であるネットワークトポロジを表すネットワークトポロジデータを取得するネットワークトポロジデータ取得手段と、 予め定められた通信プロトコルにしたがって前記LANにおける各端末装置と通信することで各端末装置にサービスを提供するサービス提供手段と、 前記LANにおける各中継装置および前記各中継装置に接続される端末装置についての詳細情報を前記通信プロトコルにしたがった通信を利用して取得する詳細情報取得手段と、 前記ネットワークトポロジデータ取得手段により取得されたネットワークトポロジデータの表すネットワークトポロジの画像として、前記LANに含まれる各中継装置をノードに対応させた木構造の画像を表示装置に表示させる表示制御手段と、を備え、 前記詳細情報には、メーカ名、機種名、オペレーティングシステムの種類或いは名称を表す文字列情報が含まれ、 前記ルータおよび前記各中継装置は、他の通信装置を接続するためのポートを複数有するとともに、1または複数の中継装置を介してまたは中継装置を介さずに端末装置が接続されているポートのポート番号に対応付けて当該端末装置のMACアドレスが書き込まれたMACアドレステーブルを有し、 前記ネットワークトポロジデータ取得手段は、 前記各中継装置から収集したMACアドレステーブルと前記ルータのMACアドレステーブルとから、前記ルータの下流側の各中継装置の接続関係および前記ルータの下流側の各中継装置に接続される端末装置の接続関係を特定して前記ネットワークトポロジデータを生成し、 前記サービスの利用開始を通知するために前記各端末装置から送信される通信メッセージには、前記各端末装置の詳細情報が書き込まれるオプション領域が設けられており、 前記詳細情報取得手段は、 前記通信メッセージのオプション領域から前記詳細情報を読み出して取得し、 前記表示制御手段は、 前記LANに含まれる中継装置のうちの予め指定されたものに対応するノードとその直下のノードまでを描画対象として前記木構造の画像を前記表示装置に表示させるとともに、前記指定されたノードの直下の中継装置および端末装置についての前記詳細情報のリスト画像を前記木構造の画像とを並べて前記表示装置に表示させ、描画対象に含まれている何れかのノードに対する展開指示を与えられたことを契機として、前記展開指示を与えられたノードの直下のノードまでを新たな描画対象として前記表示装置の表示内容を更新する ことを特徴とするルータ。 【請求項2】 前記ネットワークトポロジは、前記LANにおける各中継装置の論理的な接続関係および前記各中継装置に接続される端末装置の論理的な接続関係である論理トポロジであることを特徴とする請求項1に記載のルータ。 【請求項3】 前記表示制御手段は、前記ネットワークトポロジデータ取得手段により取得されたネットワークトポロジデータの表すネットワークトポロジの画像として、木構造におけるノードとリーフを夫々異なるアイコンで表した画像を前記表示装置に表示させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のルータ。 【請求項4】 前記ネットワークトポロジデータ取得手段は、 ユーザの指示に応じて、または定期的に、または何れかの中継装置に対する他の中継装置または端末装置の接続若しくは切断の検出を契機として、ネットワークトポロジデータを取得することを特徴とする請求項1?3の何れか1項に記載のルータ。 【請求項5】 前記LANについての基準となる基準トポロジデータを1または複数記憶する記憶手段と、 前記ネットワークトポロジデータ取得手段により取得されたネットワークトポロジデータの表すネットワークトポロジと前記1または複数の基準トポロジデータのうちのユーザにより指定されたものの表すネットワークトポロジとを比較する比較手段と、 前記ネットワークトポロジデータ取得手段により取得されたネットワークトポロジデータの表すネットワークトポロジと基準トポロジデータの表すネットワークトポロジとに差異があるとの比較結果が前記比較手段により得られた場合に当該差異を報知する報知手段と、 を有することを特徴とする請求項1?4の何れか1項に記載のルータ。 【請求項6】 前記ネットワークトポロジデータ取得手段により取得されたネットワークトポロジデータをユーザの指示に応じて前記基準トポロジデータとして前記記憶手段に書き込むスナップショット手段を更に有することを特徴とする請求項5に記載のルータ。 【請求項7】 前記比較手段は、前記LANに含まれる端末装置のうちの予め指定された端末装置を除外して前記ネットワークトポロジデータ取得手段により取得されたネットワークトポロジデータの表すネットワークトポロジと基準トポロジデータの表すネットワークトポロジとを比較することを特徴とする請求項5または請求項6に記載のルータ。 【請求項8】 前記LANに含まれる端末装置には無線端末装置が含まれ、前記予め指定された端末装置は無線端末装置であることを特徴とする請求項7に記載のルータ。 【請求項9】 LANに含まれるスイッチングハブにおいて、 前記LANにおいて前記スイッチングハブよりも下流側の各中継装置の接続関係および前記各中継装置に接続される端末装置の接続関係であるネットワークトポロジを表すネットワークトポロジデータを取得するネットワークトポロジデータ取得手段と、 予め定められた通信プロトコルにしたがって前記各端末装置と通信することで前記各端末装置にサービスを提供するサービス提供手段と、 前記スイッチングハブよりも下流側の各中継装置および前記スイッチングハブよりも下流側の各中継装置に接続される端末装置についての詳細情報を前記通信プロトコルにしたがった通信を利用して取得する詳細情報取得手段と、 前記ネットワークトポロジデータ取得手段により取得されたネットワークトポロジデータの表すネットワークトポロジの画像として、前記スイッチングハブよりも下流側の各中継装置をノードに対応させた木構造の画像を表示装置に表示させる表示制御手段と、を備え、 前記詳細情報には、メーカ名、機種名、オペレーティングシステムの種類或いは名称を表す文字列情報が含まれ、 前記スイッチングハブおよび前記各中継装置は、他の通信装置を接続するためのポートを複数有するとともに、1または複数の中継装置を介してまたは中継装置を介さずに端末装置が接続されているポートのポート番号に対応付けて当該端末装置のMACアドレスが書き込まれたMACアドレステーブルを有し、 前記ネットワークトポロジデータ取得手段は、 前記各中継装置から収集したMACアドレステーブルと前記スイッチングハブのMACアドレステーブルとから、前記スイッチングハブの下流側の中継装置の接続関係および前記スイッチングハブの下流側の各中継装置に接続される端末装置の接続関係を特定して前記ネットワークトポロジデータを生成し、 前記サービスの利用開始を通知するために前記各端末装置から送信される通信メッセージには、前記各端末装置の詳細情報が書き込まれるオプション領域が設けられており、 前記詳細情報取得手段は、 前記通信メッセージのオプション領域から前記詳細情報を読み出して取得し、 前記表示制御手段は、 前記スイッチングハブよりも下流側の各中継装置のうちの予め指定されたものに対応するノードとその直下のノードまでを描画対象として前記木構造の画像を前記表示装置に表示させるとともに、前記指定されたノードの直下の中継装置および端末装置についての前記詳細情報のリスト画像を前記木構造の画像とを並べて前記表示装置に表示させ、描画対象に含まれている何れかのノードに対する展開指示を与えられたことを契機として、前記展開指示を与えられたノードの直下のノードまでを新たな描画対象として前記表示装置の表示内容を更新する ことを特徴とするスイッチングハブ。 【請求項10】 無線LANに含まれる無線アクセスポイント装置において、 前記無線LANにおいて前記無線アクセスポイント装置よりも下流側の各中継装置の接続関係および前記各中継装置に接続される端末装置の接続関係であるネットワークトポロジを表すネットワークトポロジデータを取得するネットワークトポロジデータ取得手段と、 予め定められた通信プロトコルにしたがって前記各端末装置と通信することで前記各端末装置にサービスを提供するサービス提供手段と、 前記無線アクセスポイント装置よりも下流側の各中継装置および前記無線アクセスポイント装置よりも下流側の各中継装置に接続される端末装置についての詳細情報を前記通信プロトコルにしたがった通信を利用して取得する詳細情報取得手段と、 前記ネットワークトポロジデータ取得手段により取得されたネットワークトポロジデータの表すネットワークトポロジの画像として、前記無線LANにおいて前記無線アクセスポイント装置よりも下流側の各中継装置をノードに対応させた木構造の画像を表示装置に表示させる表示制御手段と、を備え、 前記無線アクセスポイント装置および前記各中継装置は、他の通信装置を接続するためのポートを複数有するとともに、1または複数の中継装置を介してまたは中継装置を介さずに端末装置が接続されているポートのポート番号に対応付けて当該端末装置のMACアドレスが書き込まれたMACアドレステーブルを有し、 前記ネットワークトポロジデータ取得手段は、 前記各中継装置から収集したMACアドレステーブルと前記無線アクセスポイント装置のMACアドレステーブルとから、前記無線アクセスポイント装置の下流側の中継装置の接続関係および前記無線アクセスポイント装置の下流側の各中継装置に接続される端末装置の接続関係を特定して前記ネットワークトポロジデータを生成し、 前記サービスの利用開始を通知するために前記各端末装置から送信される通信メッセージには、前記各端末装置の詳細情報が書き込まれるオプション領域が設けられており、前記詳細情報取得手段は、 前記通信メッセージのオプション領域から前記詳細情報を読み出して取得し、 前記表示制御手段は、 前記無線LANにおいて前記無線アクセスポイント装置よりも下流側の各中継装置のうちの予め指定されたものに対応するノードとその直下のノードまでを描画対象として前記木構造の画像を前記表示装置に表示させるとともに、前記指定されたノードの直下の中継装置および端末装置についての前記詳細情報のリスト画像を前記木構造の画像とを並べて前記表示装置に表示させ、描画対象に含まれている何れかのノードに対する展開指示を与えられたことを契機として、前記展開指示を与えられたノードの直下のノードまでを新たな描画対象として前記表示装置の表示内容を更新する ことを特徴とする無線アクセスポイント装置。 【請求項11】 コンピュータを、 LANとWANとの間のパケットの中継を行うルータとして機能させるとともに、 前記LANにおける各中継装置の接続関係および前記各中継装置に接続される端末装置の接続関係であるネットワークトポロジを表すネットワークトポロジデータを取得するネットワークトポロジデータ取得手段と、 予め定められた通信プロトコルにしたがって前記各端末装置と通信することで前記各端末装置にサービスを提供するサービス提供手段と、 前記コンピュータよりも下流側の各中継装置および前記コンピュータよりも下流側の各中継装置に接続される端末装置についての詳細情報を前記通信プロトコルにしたがった通信を利用して取得する詳細情報取得手段と、 前記ネットワークトポロジデータ取得手段により取得されたネットワークトポロジデータの表すネットワークトポロジの画像として、前記LANに含まれる各中継装置をノードに対応させた木構造の画像を表示装置に表示させる表示制御手段であって、前記LANに含まれる中継装置のうちの予め指定されたものに対応するノードとその直下のノードまでを描画対象として前記木構造の画像を前記表示装置に表示させるとともに、前記指定されたノードの直下の中継装置および端末装置についての前記詳細情報のリスト画像を前記木構造の画像とを並べて前記表示装置に表示させ、描画対象に含まれている何れかのノードに対する展開指示を与えられたことを契機として、前記展開指示を与えられたノードの直下のノードまでを新たな描画対象として前記表示装置の表示内容を更新する表示制御手段として機能させるプログラムであって、 前記コンピュータおよび前記各中継装置は、他の通信装置を接続するためのポートを複数有するとともに、1または複数の中継装置を介してまたは中継装置を介さずに端末装置が接続されているポートのポート番号に対応付けて当該端末装置のMACアドレスが書き込まれたMACアドレステーブルを有し、 前記ネットワークトポロジデータ取得手段は、 前記各中継装置から収集したMACアドレステーブルと前記コンピュータのMACアドレステーブルとから、前記コンピュータの下流側の中継装置の接続関係および前記無線アクセスポイント装置の下流側の各中継装置に接続される端末装置の接続関係を特定して前記ネットワークトポロジデータを生成し、 前記サービスの利用開始を通知するために前記各端末装置から送信される通信メッセージには、前記各端末装置の詳細情報が書き込まれるオプション領域が設けられており、前記詳細情報取得手段は、 前記通信メッセージのオプション領域から前記詳細情報を読み出して取得し、 ことを特徴とするプログラム。」 第5 引用文献、引用発明 1.引用文献1について 当審拒絶理由に引用された引用文献1(特開2012-194631号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審が付与したものである。以下同様。)。 (1)段落【0022】-【0023】 「【0022】 (ネットワークシステムの構成) まず、図2を用いて産業用ネットワークシステムの構成例を示す。本図において、産業用ネットワークシステム100は、マスター装置200(PLC:Programmable Logic Controller)と複数のスレーブ装置300とが、ケーブル400や装置に備わるI/Oユニット(内部バス)500、ハブ装置700を介して直接的又は間接的に接続されることにより形成される。スレーブ装置300には、電源ユニット,モータユニット,カウンタユニット,画像ユニット,通信ユニット,I/Oユニット等がある。マスター装置200には、ユーザがマスター装置200の動作設定、産業用ネットワークシステム100の動作状態の表示、ネットワークの設計など行うための管理装置600が接続されることもある。管理装置600は設計支援ツールや管理ツールがインストールされたパーソナルコンピュータなどにより構成される。 【0023】 ハブ装置700は、マスター装置側を上流としたときに、上流側に接続するINポートと下流側に接続するOUTポートの他、複数の分岐ポートX1,X2を有している。ユーザは各装置をケーブルやハブ装置を用いて順序や分岐を設定しながら接続することにより、所望のトポロジを作ることができる。分岐構造は、ハブ装置だけではなく、スレーブ装置が下流側に複数のスレーブ装置を接続することによっても作ることができる。なお、ハブ装置もスレーブ装置の一種であるため、以下では特に区別する必要のない限り、まとめてスレーブ装置と呼ぶ。」 (2)段落【0027】 「【0027】 ノードアドレスモードは、マスター装置200が各スレーブ装置300に割り当てるノードアドレスを用いてマスター-スレーブ間通信を行うものである。各スレーブ装置300には、ユーザによって予めアドレス値が設定されており、このアドレス値はスレーブ装置内の不揮発性メモリに保持されている。マスター装置200は、ネットワークの起動時に各スレーブ装置300からアドレス値を読み取り、原則、そのアドレス値と同じ値のノードアドレスを各スレーブ装置300に割り当てる。なお、スレーブ装置に設定されている設定値としてのアドレス値を、スレーブ装置に割り当てられ通信に利用されるノードアドレスのアドレス値と明確に区別するため、設定値としてのアドレス値を以下「エイリアス」と称する。」 (3)段落【0032】 「【0032】 記憶部51は、設計支援装置50において作成された設計上のネットワーク構成の情報(「設計情報」と呼ぶ。)を記憶する機能(設計情報記憶手段)である。設計情報は、ネットワークシステムを構成する各スレーブ装置のプロファイル情報、スレーブ接続情報、アドレス情報などが記述されているデータである。ここで、プロファイル情報とは、スレーブ装置の機種を識別するための情報であって、例えば、スレーブ装置のプロダクトコード、ベンダID、リビジョン番号などを含んでいる。また、スレーブ接続情報とは、スレーブ装置の接続構成(トポロジ)を理解するための情報であって、例えば、スレーブ装置の接続先の装置とポートを特定する情報などを含んでいる。また、アドレス情報とは、スレーブ装置に割り当てられるノードアドレスの値を示す情報である。なお、記憶部51には、このような設計情報の他、スレーブ装置の機種毎の固有情報が記述されたスレーブ情報ファイルも格納されている。スレーブ情報ファイルには、例えば、プロダクトコード、ベンダID、リビジョン番号、ポートの数、ポートの種別などの情報が含まれている。」 (4)段落【0037】-【0040】 「【0037】 (1)スレーブ情報の収集 図4は、スレーブ情報収集処理(ネットワークスキャン処理)の流れを示すフローチャートである。 【0038】 まず、マスター装置は、ネットワーク上に存在するスレーブ装置の数を確認する(ステップS100)。例えば、マスター装置から送出されたデータ(初期値=0)を各スレーブ装置でカウントアップし、結果をマスター装置に返送することで、スレーブ装置の総数を取得可能である。この処理はポジションアドレスモードで実行される。図2の例では、スレーブ数は「6」となる。 【0039】 次に、マスター装置は、各々のスレーブ装置から、プロファイル情報とスレーブ接続情報を読み出す(ステップS101)。また、マスター装置は、各々のスレーブ装置から、スレーブ装置内に設定されているエイリアスを読み出す(ステップS102)。ステップS101、S102の処理もポジションアドレスモードで実行される。 【0040】 ステップS101、S102の処理をすべてのスレーブ装置に対して実行することで収集されたデータは、設計支援装置50(管理装置)に送られる。そして、設計支援装置50の実構成情報生成部52は、これらのデータに基づいて、当該ネットワークシステムのネットワーク構成を表す実構成情報を作成する(ステップS103)。以上の処理によって、図3(B)に示すような実構成情報が得られる。なお、本実施形態では設計支援装置50の実構成情報生成部52にて実構成情報を作成するとしたが、マスター装置において実構成情報を作成し、実構成情報生成部52はマスター装置からそのデータを受け取るだけでも構わない。」 (5)段落【0049】-【0053】 「【0049】 (3)比較画面の表示 図6は、設計支援装置50の画面生成出力部54により生成し出力される比較画面の一例である。 比較画面には、左側から順に、設計上のネットワーク構成の表示部10、実機のネットワーク構成の表示部20、比較結果の表示部30が設けられている。 【0050】 図6に示すように、表示部10には、設計情報とスレーブ情報ファイルに基づき生成された、設計上のネットワーク構成のトポロジツリーがGUI表示される。トポロジツリーでは、マスター装置11及びスレーブ装置12a?12fなどのデバイスがそれぞれアイコン部品で表示され、各アイコン部品がケーブル若しくは内部バスを表すライン13で結ばれている。このとき、ケーブル接続か内部バス接続かでライン13の色や太さを異ならせてもよい。また、ハブ装置であるスレーブ装置12bの場合は、分岐用のポートX1、X2もアイコン部品で表示するとよい。 【0051】 トポロジツリーでは、1つの行につき1つのデバイスが表示されるように(すなわち、複数のデバイスが水平方向で重ならないように)、各アイコン部品が配置されている。そして、各行に、当該スレーブ装置に割り当てられたノードアドレスの値と、スレーブ装置のプロファイル情報とがテキスト表示されている。また、トポロジツリーにおいては、トポロジの階層が直感的に理解できるように、デイジーチェーン接続による直列的な関係にあるデバイスのアイコン部品は同じ列に配置し、内部バスや分岐ポートによってトポロジが分岐した場合には、列を変えて配置する。このような行及び列の配置の工夫により、ユーザがネットワークシステムにおけるスレーブ装置の親子関係、すなわち接続順序を容易に把握できるようにしている。 【0052】 実機のネットワーク構成の表示部20においても、表示部10と同じように、実機のネットワーク構成のトポロジツリー(マスター装置21、スレーブ装置22a?22f)がGUI表示される。このように、2つのトポロジツリーを並べて表示することで、ユーザは、設計上のネットワーク構成と実機のネットワーク構成の異同をグラフィカルに把握することができる。例えば図6の例では、スレーブ装置12cとスレーブ装置22eの部分で接続順序が相違していること、ノードアドレスに相違があることなどが見て取れる。 【0053】 さらにユーザの理解を助けるため、比較画面の表示部30には、比較部53による比較結果も表示される。表示部30を見れば、設計上のネットワーク構成と実機のネットワーク構成の間の一致点、相違点(追加/削除/移動)が一目で把握できる。」 (6)段落【0056】 「【0056】 2つ目の方法は、全反映ボタン41を押すというものである。全反映41を押すと、マージ処理部55は、実機のネットワーク構成と完全同一となるように、設計情報を修正する。図9は、全反映した後の比較画面の例を示している。トポロジツリーが同じであり、比較結果もすべて「一致」を示していることが分かる。」 (7)したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「産業用ネットワークシステム100は、マスター装置200と複数のスレーブ装置300とが、ハブ装置700を介して直接的又は間接的に接続されることにより形成され、 スレーブ装置300には、電源ユニット,モータユニット,カウンタユニット,画像ユニット,通信ユニット,I/Oユニット等があり、 ハブ装置もスレーブ装置の一種であり、 スレーブ装置に設定されている設定値としてのアドレス値を「エイリアス」と称し、 設計情報は、ネットワークシステムを構成する各スレーブ装置のプロファイル情報、スレーブ接続情報、アドレス情報などが記述されているデータであり、 プロファイル情報とは、スレーブ装置の機種を識別するための情報であって、例えば、スレーブ装置のプロダクトコード、ベンダID、リビジョン番号などを含んでおり、 スレーブ接続情報とは、スレーブ装置の接続構成(トポロジ)を理解するための情報であって、スレーブ装置の接続先の装置とポートを特定する情報などを含んでおり、 マスター装置は、各々のスレーブ装置から、プロファイル情報とスレーブ接続情報を読み出し、 また、スレーブ装置内に設定されているエイリアスを読み出し、 すべてのスレーブ装置に対して実行することで収集されたデータは、設計支援装置50(管理装置)に送られ、 そして、設計支援装置50の実構成情報生成部52は、これらのデータに基づいて、当該ネットワークシステムのネットワーク構成を表す実構成情報を作成し、 マスター装置において実構成情報を作成し、実構成情報生成部52はマスター装置からそのデータを受け取るだけでも構わず、 設計支援装置50の画面生成出力部54により生成し出力される比較画面には、左側から順に、設計上のネットワーク構成の表示部10、実機のネットワーク構成の表示部20、比較結果の表示部30が設けられ、 表示部10には、設計情報とスレーブ情報ファイルに基づき生成された、設計上のネットワーク構成のトポロジツリーがGUI表示され、 各行に、当該スレーブ装置に割り当てられたノードアドレスの値と、スレーブ装置のプロファイル情報とがテキスト表示され、 実機のネットワーク構成の表示部20においても、表示部10と同じように、実機のネットワーク構成のトポロジツリー(マスター装置21、スレーブ装置22a?22f)がGUI表示され、 比較画面の表示部30には、比較部53による比較結果も表示され、 全反映41を押すと、マージ処理部55は、実機のネットワーク構成と完全同一となるように、設計情報を修正する 産業用ネットワークシステム100。」 2.引用文献2について 当審拒絶理由において引用された引用文献2(特開2011-217342号公報)には、図面とともに、以下の記載がある。 (1)段落【0017】 「【0017】 ルータ60は、ネットワーク層においてデータ通信を中継する通信装置である。例えば、IP網から受信したパケットの送信先IPアドレスが通信端末40A、40Bおよび40Cの何れかのものであれば、ルータ60はそのパケットを配下のLAN1へと転送し、その送信先IPアドレスが通信端末40A、40Bおよび40Cの何れのものでもない場合にはルーティングテーブルの格納内容にしたがって他のルータへ転送する処理を行う。」 (2)段落【0031】 「【0031】 図7は、接続関係管理テーブルのテーブルフォーマットの一例を示す図である。図7に示すように、接続関係管理テーブルには、LAN番号と、1段下のポートを示す情報(或いは、1段下のポートを示す情報と2段下のポートを示す情報)と、ホストアドレスと、タイマ値とを含むレコードが格納される。この接続関係管理テーブルに格納される各レコードは、そのレコードに含まれているホストアドレスを有する通信端末40がスイッチングハブ50の何れのポートに接続されているのか、さらに、そのスイッチングハブ50はルータ60の何れのポートに接続されているのか(すなわち、通信端末40からルータ60に到る通信路上の各通信装置の接続関係)を表す。」 (3)段落【0053】-【0055】 「【0053】 一方、ルータ60のルーティングエンジン部620は、通信I/F部610を介してフレームを受信すると、記憶部630に記憶されているファームウェアにしたがってパケット転送制御処理を実行する。図8は、パケット転送制御処理の流れを示すフローチャートである。図8に示すように、ルーティングエンジン部620は、まず、通信I/F部610を介して受信したフレームに内包されているパケットが処理対象パケットであるか否かを判定する(ステップRA100)。このステップRA100の判定結果が“Yes”であれば、ルーティングエンジン部620はステップRA110以降の処理を実行する。逆に、ステップRA100の判定結果が“No”であれば、ルーティングエンジン部620は、ステップRA130の処理を実行する。本動作例においてスイッチングハブ50Aから転送されてくるフレームにはARP1が内包されているから、ステップRA100の判定結果は“Yes”になり、ステップRA110以降の処理が実行される。 【0054】 ステップRA110は、通信I/F部610により受信したフレームの所定領域に書き込まれているタグ情報と、そのフレームの送信元MACアドレスと、そのフレームを受信した通信I/F部610のポートのポート識別子と、タイマ値の初期値(MACレコードの寿命に応じた値、例えば、300)とを対応付けて新たなレコードを生成し、接続関係管理テーブルに書き込む処理である。より詳細に説明すると、ルーティングエンジン部620は、上記ポート識別子を「LAN番号」として、上記送信元MACアドレスを「ホストアドレス」として新たなレコードを生成する。そして、上記受信したフレームの所定領域に書き込まれているタグ情報については、ルーティングエンジン部620は以下の要領で当該レコードに書き込む。すなわち、上記所定領域に書き込まれているタグ情報が1つだけの場合には、ルーティングエンジン部620は、そのタグ情報を当該レコードの「1段下のポート情報」に書き込み、上記所定領域にタグ情報が2つ書き込まれていた場合には、最外のタグ情報を「1段下のポート情報」に、他方を「2段下のポート情報」に各々書き込む。 【0055】 次いで、ルーティングエンジン部620は、上記受信したフレームからタグ情報を削除し(ステップRA120)、そのフレームに内包されているパケットに応じた処理を実行する(ステップRA130)。例えば、上記パケットが、IP網に接続されている通信装置へ宛てて送信されたものである場合には、そのパケットの送信先IPアドレスとルーティングテーブルの格納内容とに基づいて転送先のルータを特定しそのルータへ当該パケットを転送する。また、上記パケットがルータ60に対して何らかの処理の実行を要求するものであれば、その要求に応じた処理を実行する、といった具合である。本動作例においては、通信端末40Aから送信されたARP1を受信するのであるから、ルーティングエンジン部620は応答パケットを返信する処理を実行する。 以上がARP1の転送動作である。」 (4)段落【0071】 「【0071】 (C:変形) 以上、本発明の実施形態について説明したが、この実施形態を以下のように変形しても勿論良い。 (1)上述した実施形態では、ルータ60のMACアドレスを取得するためのARPパケットを処理対象パケットとした。しかし、本発明における処理対象パケットは、ARPパケットに限定されるものではなく、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)によるIPアドレスの割り当てを要求するパケットやWindows(登録商標)等におけるファイル共有のためのパケットであっても良い。要は、スイッチングハブ50にポートの接続状態を示す情報を取得させることができる種類のパケットであって、通信端末の電源が投入された直後、または通信端末が通信ネットワークに接続された直後に送信される可能性の高いパケットであれば良い。このような種類のパケットを処理対象パケットとして定めておけば、通信端末の電源投入(または通信端末の通信ネットワークへの接続)から時間をおかずに迅速にその通信端末とルータとの間の通信路についての接続関係を示すデータを生成することができるからである。また、処理対象パケットとしてDHCPによるIPアドレスの割り当てを要求するパケットやWindows(登録商標)等におけるファイル共有のためのパケットを用いる態様においては各通信装置を識別するための識別子として人間にとって識別が容易なIPアドレスやコンピュータ名をMACアドレスの代わりに用いることができる、といった利点もある。」 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明の「産業用ネットワークシステム100」は、工場内の装置等を接続するネットワークであり、本願発明1の「LAN」に相当する。 イ 引用発明の「ハブ装置700」は、本願発明1の「中継装置」に相当する。 また引用発明の「電源ユニット,モータユニット,カウンタユニット,画像ユニット,通信ユニット,I/Oユニット等」は、本願発明1の「端末装置」に相当する。 そして引用発明の「スレーブ装置」は、引用発明の「ハブ装置」及び、「電源ユニット,モータユニット,カウンタユニット,画像ユニット,通信ユニット,I/Oユニット等」を指すため、引用発明の「スレーブ装置」は、本願発明1の「中継装置」及び「端末装置」に相当する。 また、引用発明の「スレーブ装置の接続構成(トポロジ)を理解するための情報」は、本願発明1の「各中継装置の接続関係」を表す情報に相当し、引用発明の「スレーブ装置の接続先の装置とポートを特定する情報」は、本願発明1の「各中継装置に接続される端末装置の接続関係」の情報に相当することから、引用発明の「スレーブ装置の接続構成(トポロジ)を理解するための情報であって、スレーブ装置の接続先の装置とポートを特定する情報などを含」む「スレーブ接続情報」は、本願発明1の「LANにおける各中継装置の接続関係および前記各中継装置に接続される端末装置の接続関係であるネットワークトポロジを表すネットワークトポロジデータ」の情報に対応する。 したがって、引用発明の「スレーブ接続情報」を「読み出」す「マスター装置」は、本願発明1の「LANにおける各中継装置の接続関係および前記各中継装置に接続される端末装置の接続関係であるネットワークトポロジを表すネットワークトポロジデータを取得するネットワークトポロジデータ取得手段」に相当する。 ウ 本願発明1には、「予め定められた通信プロトコルにしたがって前記LANにおける各端末装置と通信することで各端末装置にサービスを提供するサービス提供手段」が備えられているが、引用発明には「サービス提供手段」が特定されていない。 エ 本願発明1には、「前記LANにおける各中継装置および前記各中継装置に接続される端末装置についての詳細情報を前記通信プロトコルにしたがった通信を利用して取得する詳細情報取得手段」が備えられているが、引用発明には「詳細情報取得手段」が特定されていない。 オ 引用発明の「画面生成出力部54」は、本願発明1の「表示装置」に相当する。引用発明の「設計支援装置50」は、「マスター装置」から送られる「実構成情報」に基づき「実機のネットワーク構成のトポロジツリー(マスター装置21、スレーブ装置22a?22f)がGUI表示される」「画面」を「生成」して「画面生成出力部54」により「出力」することから、本願発明1の「前記ネットワークトポロジデータ取得手段により取得されたネットワークトポロジデータの表すネットワークトポロジの画像として、前記LANに含まれる各中継装置をノードに対応させた木構造の画像を表示装置に表示させる表示制御手段」に相当する。 カ 本願発明1には、「メーカ名、機種名、オペレーティングシステムの種類或いは名称を表す文字列情報が含まれ」る「詳細情報」が用いられているが、引用発明には「詳細情報」が特定されていない。 キ 引用発明の「エイリアス」は、引用発明の「産業用ネットワークシステム100」における「設定値としてのアドレス値」であるから、本願発明1の「アドレス」に対応する。 また、引用発明の「スレーブ接続情報」は「スレーブ装置の接続先の装置とポートを特定する情報」を含むから、引用発明の「スレーブ装置の接続先の装置」を特定する情報としての「エイリアス」と、「スレーブ接続情報」とは、本願発明1の「前記ルータおよび前記各中継装置は、他の通信装置を接続するためのポートを複数有するとともに、1または複数の中継装置を介してまたは中継装置を介さずに端末装置が接続されているポートのポート番号に対応付けて当該端末装置のMACアドレスが書き込まれたMACアドレステーブルを有」する点と、「各中継装置」が「他の通信装置を接続するためのポートを複数有するとともに、1または複数の中継装置を介してまたは中継装置を介さずに端末装置が接続されているポートのポート番号」と「当該端末装置のアドレスを有」する点で共通するといえる。 ク 引用発明の「マスター装置」は、「各々のスレーブ装置」から「スレーブ接続情報」と「エイリアス」を読み出し「ネットワークシステムのネットワーク構成を表す実構成情報を作成」している。 したがって、引用発明において、「マスター装置」が、「各々のスレーブ装置」から「スレーブ接続情報」と「エイリアス」を読み出し「ネットワークシステムのネットワーク構成を表す実構成情報を作成」する動作は、本願発明1の「前記ネットワークトポロジデータ取得手段は」、「前記各中継装置から収集したMACアドレステーブルと前記ルータのMACアドレステーブルとから、前記ルータの下流側の各中継装置の接続関係および前記ルータの下流側の各中継装置に接続される端末装置の接続関係を特定して前記ネットワークトポロジデータを生成」する動作と、「前記ネットワークトポロジデータ取得手段は」、「前記各中継装置から収集した」情報から、「前記各中継装置から収集した各中継装置の接続関係および各中継装置に接続される端末装置の接続関係を特定して前記ネットワークトポロジデータを生成」する動作である点で共通するといえる。 ケ 本願発明1の、「前記サービスの利用開始を通知するために前記各端末装置から送信される通信メッセージには、前記各端末装置の詳細情報が書き込まれるオプション領域が設けられて」いるが、引用発明には「サービスの利用開始を通知する」「通信メッセージ」が特定されていないため、「オプション領域」についても特定されていない。 コ 本願発明1の「詳細情報取得手段」は、「通信メッセージのオプション領域から前記詳細情報を読み出して取得し」ているが、引用発明には「詳細情報取得手段」が特定されていないため、「通信メッセージのオプション領域から前記詳細情報を読み出して取得」することも特定されていない。 サ 引用発明の「設計支援装置50」が、「実機のネットワーク構成のトポロジツリー(マスター装置21、スレーブ装置22a?22f)がGUI表示」すること、及び、「各行に、当該スレーブ装置に割り当てられたノードアドレスの値と、スレーブ装置のプロファイル情報とがテキスト表示」することは、本願発明1の「前記LANに含まれる中継装置のうちの予め指定されたものに対応するノードとその直下のノードまでを描画対象として前記木構造の画像を前記表示装置に表示させるとともに、前記指定されたノードの直下の中継装置および端末装置についての前記詳細情報のリスト画像を前記木構造の画像とを並べて前記表示装置に表示させ、描画対象に含まれている何れかのノードに対する展開指示を与えられたことを契機として、前記展開指示を与えられたノードの直下のノードまでを新たな描画対象として前記表示装置の表示内容を更新する」ことと、「前記LANに含まれる中継装置を描画対象として前記木構造の画像を前記表示装置に表示させるとともに、中継装置についての前記詳細情報のリスト画像を前記木構造の画像とを並べて前記表示装置に表示」することで共通するといえる。 シ 本願発明1は、「ルータ」が各構成を備える発明であるが、引用発明には「ルータ」について特定されていない。 したがって、本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「LANにおける各中継装置の接続関係および前記各中継装置に接続される端末装置の接続関係であるネットワークトポロジを表すネットワークトポロジデータを取得するネットワークトポロジデータ取得手段と、 前記ネットワークトポロジデータ取得手段により取得されたネットワークトポロジデータの表すネットワークトポロジの画像として、前記LANに含まれる各中継装置をノードに対応させた木構造の画像を表示装置に表示させる表示制御手段と、を備え 各中継装置が、他の通信装置を接続するためのポートを複数有するとともに、1または複数の中継装置を介してまたは中継装置を介さずに端末装置が接続されているポートのポート番号と当該端末装置のアドレスを有し、 ネットワークトポロジデータ取得手段は、 前記各中継装置から収集した各中継装置の接続関係および各中継装置に接続される端末装置の接続関係を特定して前記ネットワークトポロジデータを生成し、 前記表示制御手段は、 前記LANに含まれる中継装置を描画対象として前記木構造の画像を前記表示装置に表示させるとともに、中継装置についての前記詳細情報のリスト画像を前記木構造の画像とを並べて前記表示装置に表示する ことを特徴とする装置。」 [相違点1] 本願発明1は「LANとWANとの間のパケットの中継を行うルータに」備えられた発明であるのに対し、引用発明では、「産業用ネットワークシステム100」における「マスター装置200」及び「設計支援装置50」に備えられており、「ルータ」に備えられることが特定されていない点。 [相違点2] 本願発明1は「予め定められた通信プロトコルにしたがって前記LANにおける各端末装置と通信することで各端末装置にサービスを提供するサービス提供手段」を備えているのに対し、引用発明では、そのような「サービス提供手段」について特定されていない点。 [相違点3] 本願発明1は「前記LANにおける各中継装置および前記各中継装置に接続される端末装置についての詳細情報を前記通信プロトコルにしたがった通信を利用して取得する詳細情報取得手段」を備えているのに対し、引用発明では、そのような「詳細情報取得手段」について特定されていない点。 [相違点4] 本願発明1は「メーカ名、機種名、オペレーティングシステムの種類或いは名称を表す文字列情報が含まれ」る「詳細情報」をルータが取得しているのに対し、引用発明では、そのような「詳細情報」について特定されていない点。 [相違点5] 本願発明1は「前記ルータおよび前記各中継装置は、他の通信装置を接続するためのポートを複数有するとともに、1または複数の中継装置を介してまたは中継装置を介さずに端末装置が接続されているポートのポート番号に対応付けて当該端末装置のMACアドレスが書き込まれたMACアドレステーブルを有し」ているのに対し、引用発明では、「端末装置が接続されているポートのポート番号と当該端末装置のアドレス」は有しているが、「ポート番号に対応付けて」「MACアドレスが書き込まれたMACアドレステーブル」について特定されていない点。 [相違点6] 本願発明1は「各中継装置から収集したMACアドレステーブルと前記ルータのMACアドレステーブルとから、」ネットワークトポロジデータを取得しているのに対し、引用発明では、「MACアドレステーブル」について特定されていない点。 [相違点7] 本願発明1は「前記ルータの下流側の各中継装置の接続関係および前記ルータの下流側の各中継装置に接続される端末装置の接続関係を特定して前記ネットワークトポロジデータを生成し」ているのに対し、引用発明では、「ルータ」が特定されていないため、その「下流側」という「ルータ」と「各中継装置」の位置関係も特定されていない点。 [相違点8] 本願発明1において、「前記サービスの利用開始を通知するために前記各端末装置から送信される通信メッセージには、前記各端末装置の詳細情報が書き込まれるオプション領域が設けられて」いるのに対し、引用発明では「サービス提供手段」について特定されていないので、「前記サービスの利用開始を通知するために前記各端末装置から送信される通信メッセージ」も特定されていない点。 [相違点9] 本願発明1は「詳細情報取得手段」が「前記通信メッセージのオプション領域から前記詳細情報を読み出して取得し」ているのに対し、引用発明では、そのような「詳細情報取得手段」について特定されていない点。 [相違点10] 本願発明1は「前記LANに含まれる中継装置のうちの予め指定されたものに対応するノードとその直下のノードまでを描画対象として前記木構造の画像を前記表示装置に表示させるとともに、前記指定されたノードの直下の中継装置および端末装置についての前記詳細情報のリスト画像を前記木構造の画像とを並べて前記表示装置に表示させ、描画対象に含まれている何れかのノードに対する展開指示を与えられたことを契機として、前記展開指示を与えられたノードの直下のノードまでを新たな描画対象として前記表示装置の表示内容を更新する」のに対し、引用発明では、「前記LANに含まれる中継装置を描画対象として前記木構造の画像を前記表示装置に表示」し、「中継装置についての前記詳細情報のリスト画像を前記木構造の画像とを並べて前記表示装置に表示する」のみで、「描画対象に含まれている何れかのノードに対する展開指示を与えられた」際のことについて特定されていない点。 [相違点11] 本願発明1は、各構成を備える「ことを特徴とするルータ」の発明であるのに対し、引用発明では、「産業用ネットワークシステム100」における「マスター装置200」及び「設計支援装置50」に備えられており、「ルータ」に備えられることが特定されていない点。 (2)判断 事案に鑑みて、「詳細情報」に関して互いに関連する相違点である、相違点4,8,9について先に検討する。 引用文献2(段落【0017】、【0031】、【0053】-【0055】、【0071】)には、IP網とLANとの間のパケットの中継を行うルータにおいて、下流に存在する各中継装置に接続される端末の接続関係を収集する技術、端末装置が接続されているポートのポート番号に対応付けて当該端末装置のMACアドレスが書き込まれたMACアドレステーブルの技術、DHCP(本願発明における「サービス」に相当する。)パケット(本願発明における「通信プロトコルにしたがった通信」に相当する。)を用いて、通信装置を識別するための情報を取得する技術、が記載されている。 しかしながら、DHCPパケットの「オプション領域」に「詳細情報」として「メーカ名、機種名、オペレーティングシステムの種類或いは名称を表す文字列情報が含まれ」、「詳細情報取得手段」が「前記通信メッセージのオプション領域から前記詳細情報を読み出して取得」する構成については、引用文献2を含む、当審拒絶理由で引用された引用文献2-7のいずれにも記載されていない。 また、仮に引用発明に引用文献2記載の技術を適用したとしても、IPアドレス及びMACアドレスを使用しない引用発明の「産業用ネットワークシステム100」において、DHCPパケットの「オプション領域」に「詳細情報」として「メーカ名、機種名、オペレーティングシステムの種類或いは名称を表す文字列情報が含」み、さらに「オプション領域から前記詳細情報を読み出して取得」する構成は、当業者であっても容易に発明できたものであるとはいえない。 よって、当業者といえども、引用発明及び当審拒絶理由で引用された引用文献2-7に基づいて、相違点8に係る「前記サービスの利用開始を通知するために前記各端末装置から送信される通信メッセージには、前記各端末装置の詳細情報が書き込まれるオプション領域が設けられ」る構成、相違点4に係る「メーカ名、機種名、オペレーティングシステムの種類或いは名称を表す文字列情報が含まれ」る「詳細情報」を取得する構成、相違点9に係る「詳細情報取得手段」が「前記通信メッセージのオプション領域から前記詳細情報を読み出して取得」する構成、を容易に想到することはできない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び当審拒絶理由で引用された引用文献2-7に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 (3)本願発明2-8について 本願発明2-8は、本願発明1を減縮した発明であって、本願発明2-8も、本願発明1の上記相違点8に係る「前記サービスの利用開始を通知するために前記各端末装置から送信される通信メッセージには、前記各端末装置の詳細情報が書き込まれるオプション領域が設けられ」る構成、上記相違点4に係る「メーカ名、機種名、オペレーティングシステムの種類或いは名称を表す文字列情報が含まれ」る「詳細情報」を取得する構成、上記相違点9に係る「詳細情報取得手段」が「前記通信メッセージのオプション領域から前記詳細情報を読み出して取得」する構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び当審拒絶理由で引用された引用文献2-7に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 (4)本願発明9-11について 本願発明9-11は、本願発明1に対応する「スイッチングハブ」、「無線アクセスポイント装置」、「プログラム」の発明であり、本願発明1の上記相違点8に係る「前記サービスの利用開始を通知するために前記各端末装置から送信される通信メッセージには、前記各端末装置の詳細情報が書き込まれるオプション領域が設けられ」る構成、上記相違点4に係る「メーカ名、機種名、オペレーティングシステムの種類或いは名称を表す文字列情報が含まれ」る「詳細情報」を取得する構成、上記相違点9に係る「詳細情報取得手段」が「前記通信メッセージのオプション領域から前記詳細情報を読み出して取得」する構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び当審拒絶理由で引用された引用文献2-7に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第7 原査定についての判断 令和2年3月23日付けの補正により、本願発明1-11は「前記サービスの利用開始を通知するために前記各端末装置から送信される通信メッセージには、前記各端末装置の詳細情報が書き込まれるオプション領域が設けられ」る構成、「メーカ名、機種名、オペレーティングシステムの種類或いは名称を表す文字列情報が含まれ」る「詳細情報」を取得する構成、「詳細情報取得手段」が「前記通信メッセージのオプション領域から前記詳細情報を読み出して取得」する構成を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-3に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 当審拒絶理由(特許法第36条第6項第1号)について 当審では、請求項1(及び請求項2-13)について「MACアドレステーブル」から、「ルータの下流側の中継装置を特定」する具体的な方法が、本願明細書に記載されていない旨の拒絶の理由を通知しているが、令和2年3月23日付けの補正において、補正後の請求項1(及び請求項2-11)について「前記各中継装置から収集したMACアドレステーブルと前記ルータのMACアドレステーブルとから、前記ルータの下流側の各中継装置の接続関係および前記ルータの下流側の各中継装置に接続される端末装置の接続関係を特定して前記ネットワークトポロジデータを生成し、」と補正された結果、本願発明は発明の詳細な説明に記載したものとなり、当審拒絶理由(特許法第36条第6項第1号)は解消した。 第9 当審拒絶理由(特許法第36条第6項第2号)について 当審では、請求項1(及び請求項2-13)について「ルータ」が、どこから「ネットワークトポロジデータ」を「取得」しているのか不明である、という旨の拒絶の理由を通知しているが、令和2年3月23日付けの補正において、補正後の請求項1(及び請求項2-11)について、「ネットワークトポロジデータを生成し」と補正された結果、当審拒絶理由(特許法第36条第6項第2号)は解消した。 第10 むすび したがって、原査定の拒絶理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-09-08 |
出願番号 | 特願2014-114445(P2014-114445) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04L)
P 1 8・ 537- WY (H04L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 上田 翔太、松崎 孝大、菊地 陽一 |
特許庁審判長 |
稲葉 和生 |
特許庁審判官 |
岩田 玲彦 小田 浩 |
発明の名称 | 中継装置およびプログラム |
代理人 | 松本 隆 |