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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61J
管理番号 1365856
審判番号 不服2018-13655  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-12 
確定日 2020-09-09 
事件の表示 特願2016-158096「容器アセンブリ用の混合要素」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月 4日出願公開、特開2016-187733〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)10月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年(平成23年)10月20日 米国(US))を国際出願日とする特願2014-537229号の一部を平成28年8月10日に新たな特許出願としたものであって、平成29年12月1日付けで拒絶理由が通知され、平成30年3月12日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、平成30年6月5日付けで、平成30年3月12日の手続補正についての補正の却下の決定がなされ、その決定と同時に拒絶査定がされ、平成30年10月12日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正がされた。その後、当審において令和元年10月30日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、令和2年3月5日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲に記載された発明は、令和2年3月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明であるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
第1の端部、第2の端部、および前記第1の端部と前記第2の端部の間に延び、容器内部を画定する側壁を有する容器であり、容器縦軸を定める容器と、
前記容器の前記第1の端部を密封する第1の閉鎖体と、
前記容器の前記第2の端部を密封する第2の閉鎖体と、
前記容器が前記容器縦軸を軸に回転したときに渦を発生させる混合要素であり、前記渦が、前記容器内部に提供された第1の物質と前記容器内部に提供された第2の物質の混合を達成する、前記容器の側壁に直接成形され前記容器に突き出た混合要素と
を備え、
前記混合要素の縦軸は前記容器の縦軸に沿ってまたは平行に延伸し、
前記第1の端部から前記物質が提供され、前記第1の端部の近くに前記混合要素が位置し、
前記混合要素は、実質的に平坦な頂部面と、実質的に平坦な底部面と、前記底部面から前記頂部面へ延びる内部混合面と、前記内部混合面に対して第1の角度で前記底部面から前記頂部面まで延びる第1の外部混合面と、前記内部混合面に対し第2の角度で前記底部面から前記頂部面まで延びる第2の外部混合面とを含み、
前記第1の外部混合面および前記第2の外部混合面はそれぞれの延伸した面が容器内で交わる
ことを特徴とする容器アセンブリ。」

第3 拒絶の理由
当審が通知した拒絶理由は、次の理由を含むものである。
本願発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2010-85125号公報

第4 引用文献及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
(1-1)上記引用文献1には、次の記載がある(下線は、当審が付与したものである。以下同様。)。
ア.「【0002】
従来、検体と試薬とを反応容器に分注し、反応容器内で起こった血液凝集反応を観察して検体を分析する血液分析方法が用いられている。この血液分析方法では、検体と試薬とが反応容器内に分注された後、インキュベーションして反応させ、反応後の血液凝集パターンを確認して検体の分析を行っている。
【0003】
ところで、検体と試薬とを反応させて分析する分析方法では、検体と試薬との反応の精度が重要となる。従来の反応促進方法として、たとえば、反応容器を載置するターンテーブルを公転させて、ターンテーブルと接続された自転ギアが自転することで各反応容器が回転し、容器内の反応液を撹拌する撹拌方法が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。」
イ.「【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、反応容器内に分注された検体と試薬との血液凝集反応を促進させる撹拌装置において、前記反応容器または該反応容器を収納する容器ホルダは、外周側面に、前記反応容器または前記容器ホルダの長手方向の軸中心に前記反応容器または前記容器ホルダを回転駆動させる動力を受けて伝達する1以上の伝達部が形成され、前記動力を1つの前記伝達部に伝達する駆動機構を備えたことを特徴とする。」
ウ.「【0027】
ここで、反応容器2の変形例1である反応容器を、図6,7を参照して説明する。図6は、反応容器2の側面図であり、図7は、反応容器2を上方から見た平面図である。図6,7に示す反応容器2は、ポリスチレン等の合成樹脂で形成されており、反応液を収容する反応液収容部20と検体の分析を行う検体分析部23とを有する。反応液収容部20は円柱状であって、底部は、底部側が凸になる略円錐状に形成されている。また、検体分析部23は、上端部が反応液収容部20底部と同軸同径であって、開口面に平行な方向の任意の断面(横断面)のなす円の径は、開口面から底部に行くにしたがって小さくなり、底部が略円錐状に形成される。なお、検体分析部23内部には担体Sが収容されており、検体と試薬とを反応させた凝集反応の程度によって、遠心処理後の担体S中の反応物の位置が異なり、この担体S中の反応物の位置によって検体の分析を行う。また、反応液収容部20は、上部外周側面に開口面から円柱状に形成される伝達部21が設けられ、内部側面に撹拌を促進する凸部22を有することが好ましい。
【0028】
なお、検体分析部23内部に収容する担体Sは、ゲル粒子であってもよく、ガラスビーズまたはプラスチックビーズでもよい。使用する検体及び試薬によって収容する担体Sは任意に選択可能である。また、担体Sにゲル粒子を用いる場合は、検体分析部23内に担体Sと、担体Sの乾燥を防止する溶液とを収容する。さらに、収容した担体S及び溶液の漏れを防ぐために、反応液収容部20開口面にシール材等で蓋をすることが好ましい。」
エ.「


オ.「



(1-2)上記(1-1)ア.?オ.の記載事項から、引用文献1には、反応容器に関し、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a 反応容器2は、検体と試薬とを分注し、長手方向の軸中心に回転させて容器内の検体と試薬とを撹拌するものである。(【0002】、【0003】、【0007】)

b 反応容器2は、検体分析部23と反応液収容部20とを有し、検体分析部23は、底部が形成され、反応液収容部20は、開口面にシール材等の蓋を有し、内部側面に撹拌を促進する凸部22を有している。(【0027】、【0028】)

c 図6、7より、反応容器2は、その回転の中心である長手方向の軸(【0007】)が縦に延びており、反応液収容部20が検体分析部23の上側に連なっていて、反応液収容部20の開口面が容器の上端部である点、当該上端部の近くに凸部22が位置しており、該凸部22の縦軸は反応容器2の長手方向の軸に沿って延伸する点が看取される。そして、反応容器2に対し当該開口面を通して検体や試薬が注入されることは明らかといえる。

d 図7より、凸部22は、その側部に2つの面を有し、それらの面は反応容器2内で交わる点が看取される。

(1-3)上記(1-1)、(1-2)を踏まえると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「検体と試薬とを分注し、長手方向の軸中心に回転させて容器内の検体と試薬とを撹拌する反応容器2であって、
回転の中心である当該長手方向の軸が縦に延びており、
反応液収容部20と検体分析部23とを有し、
検体分析部23は、底部が形成され、
反応液収容部20が検体分析部23の上側に連なっていて、反応液収容部20の開口面が容器の上端部であり、
反応液収容部20は、当該開口面にシール材等の蓋を有し、当該上端部の近くの内部側面に撹拌を促進する凸部22を有し、
凸部22の縦軸は反応容器2の長手方向の軸に沿って延伸し、
当該開口面を通して検体や試薬が注入されるものであり、
凸部22の側部の2つの面が反応容器2内で交わる
反応容器2。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「反応容器2」は、その機能または構造からみて、本願発明の「容器」及び「容器アセンブリ」に相当する。
引用発明の反応容器2の「底部」は、その構造からみて、本願発明の容器アセンブリの「第2の端部」及び「容器の第2の端部を密封する第2の閉鎖体」に相当するといえる。
引用発明の「回転の中心である当該長手方向の軸が縦に延びており、反応液収容部20と検体分析部23とを有し、検体分析部23は、底部が形成され、反応液収容部20が検体分析部23の上側に連なっていて、反応液収容部20の開口面が容器の上端部であ」る「反応容器2」は、その「回転の中心である長手方向の軸」及び「上端部」が本願発明の「容器縦軸」及び「第1の端部」にそれぞれ相当することから、全体として、本願発明の「第1の端部、第2の端部、および前記第1の端部と前記第2の端部の間に延び、容器内部を画定する側壁を有する容器であり、容器縦軸を定める容器」に相当する。
引用発明の反応容器2の「上端部」である開口面に有する「シール材等の蓋」は、本願発明の「容器の第1の端部を密封する第1の閉鎖体」に相当する。
引用発明が「反応液収容部20」「の内部側面に」有する「凸部22」は、本願発明の「容器の側壁に直接成形され前記容器に突き出た混合要素」に相当する。そして、引用発明の当該「凸部22」は、反応容器2が「長手方向の軸中心に回転」して「容器内の検体と試薬とを撹拌する」に当たって「撹拌を促進する」ものであって、当該撹拌の際に容器内に渦を発生させること、そして、この渦が、反応容器2内部に注入された検体と試薬との混合を達成することは、技術常識からみて明らかであるから、そのような機能を備えた引用発明の「凸部22」は、本願発明の「容器が前記容器縦軸を軸に回転したときに渦を発生させ」、「渦が、前記容器内部に提供された第1の物質と前記容器内部に提供された第2の物質の混合を達成する」「混合要素」に相当するといえる。また、混合要素の具体的構成について、引用発明の凸部22がその側部に有する、「反応容器2内で交わる」「2つの面」は、その機能または構造からみて、本願発明の混合要素の「第1の外部混合面」及び「第2の外部混合面」に相当するといえる。
また、引用発明の「凸部22の縦軸は反応容器2の長手方向の軸に沿って延伸」する点は、本願発明の「混合要素の縦軸は前記容器の縦軸に沿ってまたは平行に延伸」する点に相当し、同様に、引用発明の反応容器2の、「開口面を通して検体や試薬が注入される」点は、本願発明の容器アセンブリの、「第1の端部から前記物質が提供され」る点に、「上端部の近く」に「凸部22を有」する点は、「第1の端部の近くに前記混合要素が位置」する点に、それぞれ相当する。

そうすると、両者は、
「第1の端部、第2の端部、および前記第1の端部と前記第2の端部の間に延び、容器内部を画定する側壁を有する容器であり、容器縦軸を定める容器と、
前記容器の前記第1の端部を密封する第1の閉鎖体と、
前記容器の前記第2の端部を密封する第2の閉鎖体と、
前記容器が前記容器縦軸を軸に回転したときに渦を発生させる混合要素であり、前記渦が、前記容器内部に提供された第1の物質と前記容器内部に提供された第2の物質の混合を達成する、前記容器の側壁に直接成形され前記容器に突き出た混合要素と
を備え、
前記混合要素の縦軸は前記容器の縦軸に沿ってまたは平行に延伸し、
前記第1の端部から前記物質が提供され、前記第1の端部の近くに前記混合要素が位置し、
前記混合要素は、第1の外部混合面と第2の外部混合面とを含む、
容器アセンブリ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
混合要素の具体的構成について、本願発明では、混合要素は、実質的に平坦な頂部面と、実質的に平坦な底部面と、前記底部面から前記頂部面へ延びる内部混合面と、前記内部混合面に対して第1の角度で前記底部面から前記頂部面まで延びる第1の外部混合面と、前記内部混合面に対し第2の角度で前記底部面から前記頂部面まで延びる第2の外部混合面とを含み、前記第1の外部混合面および前記第2の外部混合面はそれぞれの延伸した面が容器内で交わるのに対して、引用発明では、凸部22は、当該「第1の外部混合面」及び「第2の外部混合面」に相当する「2つの面」を有するものの、上記「内部混合面」に相当する構成を有せず、また、上記「頂部面」及び「底部面」については、有するか否か明らかでない点。

第6 判断
上記相違点について検討する。
引用文献1の図6を参照すると、引用発明の凸部22は、本願発明の「混合要素」における「実質的に平坦な頂部面」と「実質的に平坦な底部面」とにそれぞれ相当する部位を有しているか否か、必ずしも明らかではない。しかし、引用発明の凸部22に対し、実質的に平坦な頂部面と実質的に平坦な底部面とを設けることは、凸部22における該当する部位の面形状を単に平坦な形状とすることに留まるから、凸部22が反応液を撹拌する機能を有する限りにおいて当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項にすぎない。
また、引用発明の凸部22は、その「側部の2つの面」として、本願発明の「混合要素」の「第1の外部混合面」と「第2の外部混合面」とにそれぞれ相当する部位を有し、かつそれらの面が反応容器2内で交わっているものである。そして、当該「第1の外部混合面」と「第2の外部混合面」との間の「底部面から頂部面へ延びる内部混合面」については、引用発明の凸部22はこれを有しないが、製造上、部品形状として面取りを施すことが慣用されていること等を踏まえれば、引用発明において、凸部22を、内部混合面を有する形状とし、かつ「2つの面」のそれぞれの延伸した面が反応容器2内で交わる構成とする程度のことは、凸部22が反応液を撹拌する機能を有する限りにおいて当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。
したがって、引用発明に対して適宜の設計変更を施すことにより、引用発明について、上記相違点における本願発明に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことといえる。
そして、上記相違点を勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
してみると、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

よって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-03-30 
結審通知日 2020-03-31 
審決日 2020-04-16 
出願番号 特願2016-158096(P2016-158096)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増山 慎也  
特許庁審判長 内藤 真徳
特許庁審判官 栗山 卓也
関谷 一夫
発明の名称 容器アセンブリ用の混合要素  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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