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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1365929
審判番号 不服2019-16348  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-03 
確定日 2020-09-29 
事件の表示 特願2019-534994「多芯ケーブル用コア電線及び多芯ケーブル」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月12日国際公開,WO2019/171644,請求項の数(9)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2018年(平成30年)10月 5日(優先権主張 平成30年 3月 5日,日本国)を国際出願日とする出願であってその手続の経緯は以下のとおりである。

令和 1年 6月26日 :国内書面の提出
令和 1年 7月12日付け:拒絶理由通知書
令和 1年 8月21日 :意見書,補正書の提出
令和 1年 8月29日付け:拒絶査定
令和 1年12月 3日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和 1年 8月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1 本願請求項1,3-9に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由3 この出願は,発明の詳細な説明の記載が,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

引用文献1 特開2000-119456号公報

第3 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は,令和 1年 8月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-9は,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
複数の素線を撚り合わせた導体と,この導体の外周を被覆する絶縁層とを備える多芯ケーブル用コア電線であって,
上記絶縁層の主成分がポリエチレン系樹脂であり,
上記ポリエチレン系樹脂が,低密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン及び超低密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種であり,
絶縁層の25℃から-35℃までの線膨張係数C1と,-35℃での弾性率E1との積C1×E1が0.01MPaK^(-1)以上0.90MPaK^(-1)以下であり,
上記C1が1.0×10^(-5)K^(-1)以上2.5×10^(-4)K^(-1)以下であり,
上記E1が1000MPa以上3500MPa以下であり,
上記ポリエチレン系樹脂の融点が80℃以上130℃以下である多芯ケーブル用コア電線。
【請求項2】
複数の素線を撚り合わせた導体と,この導体の外周を被覆する絶縁層とを備える多芯ケーブル用コア電線であって,
上記絶縁層の主成分がポリエチレン系樹脂であり,
上記ポリエチレン系樹脂が,低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの組み合わせであり,
上記ポリエチレン系樹脂の合計含有量に対する高密度ポリエチレンの含有割合が10質量%以上50質量%以下であり,
絶縁層の25℃から-35℃までの線膨張係数C1と,-35℃での弾性率E1との積C1×E1が0.01MPaK^(-1)以上0.90MPaK^(-1)以下であり,
上記C1が1.0×10^(-5)K^(-1)以上2.5×10^(-4)K^(-1)以下であり,
上記E1が1000MPa以上3500MPa以下であり,
上記ポリエチレン系樹脂の融点が80℃以上130℃以下である多芯ケーブル用コア電線。
【請求項3】
上記絶縁層の25℃における弾性率E2が100MPa以上である請求項1又は請求項2に記載の多芯ケーブル用コア電線。
【請求項4】
上記絶縁層の25℃から80℃までの線膨張係数C2が5.0×10^(-4)K^(-1)以下である請求項1,請求項2又は請求項3に記載の多芯ケーブル用コア電線。
【請求項5】
上記導体の横断面における平均面積が1.0mm2以上3.0mm2以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の多芯ケーブル用コア電線。
【請求項6】
上記導体における複数の素線の平均径が40μm以上100μm以下,複数の素線が196本以上2450本以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の多芯ケーブル用コア電線。
【請求項7】
上記導体が,複数の素線を撚り合せた撚素線をさらに撚り合せたものである請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の多芯ケーブル用コア電線。
【請求項8】
複数のコア電線を撚り合わせた芯線と,この芯線の周囲に配設されるシース層とを備える多芯ケーブルであって,
上記複数のコア電線の少なくとも1本が請求項1又は請求項2に記載のものである多芯ケーブル。
【請求項9】
上記複数のコア電線の少なくとも1本が複数のコア電線を撚り合せたものである請求項8に記載の多芯ケーブル。」

第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様である。)

「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,上記の従来技術に係る欠点を解決する,すなわち,十分な電気絶縁性,耐熱性を有し,可撓性および皮むき性の改良された電気絶縁体用の樹脂および樹脂組成物,これらを含む電線用被覆材およびこの被覆材で被覆された電線,電力ケーブル,通信ケーブルを提供することを目的とする。」

「【0099】実施例1?11,比較例1?3
樹脂成分,ジクミルパーオキサイド,難燃剤,酸化防止剤をそれぞれ表3の実施例1?11に示すような重量比となるよう混合し,30mmφ2軸押出機で230℃で溶融混練して組成物とした。また,比較のため従来技術に係る被覆層を形成するものとして表3中比較例1,2に示すように軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物,及び架橋ポリエチエン用樹脂組成物を準備した。なお,表3中MFRはJIS・K7210に準拠して測定したメルトインデックス値を示す。
【0100】引張破断伸び,引張破断点強度,5%,10%弾性率は1mm厚の2号ダンベルを用いて,JIS K-7113プラスチックの引張試験方法に準じて求めた。表面硬度はJIS K-7215プラスチックのデュロメーター硬さ試験法に準じてタイプDのデュロメーター硬度をもとめた。MFRはJIS K-7210熱可塑性プラスチックの流れ試験方法に準じて測定した。測定温度200℃,試験荷重5kgfで行った。体積抵抗率はJIS・K6723に準拠して測定した。
【0101】これら実施例1?11及び比較例1?3の上記樹脂組成物からなる絶縁層を有する600Vビニルシースケーブル平型(サイズ2×1.6mm)を押出成形機を用いて作製した。このようにして得たケーブルに関し可撓性は上記ケーブルを手で屈曲させたときの感触を,また,皮むき性は600V電力ケーブル(平型)のケーブル端部から30mmの絶縁体をはさみを用いて皮むきしたときの感触を,それぞれ比較例1の軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなる絶縁層を有するケーブルおよび,比較例2の架橋ポリエチレン絶縁層を有するケーブルでの結果と比較し○,□,△,及び×の4段階評価を行った。すなわち,○は比較例1での感触に等しく良好なものを,□は○より若干劣るがほぼこれに準ずるものを△は比較例1での感触と比較例2での感触との中間的な感触を有するものおよび×は比較例2での感触に等しい,劣った感触を有するものを示す。これらの評価結果を表3に併せて記載する。」

「【0104】
【表3】



「【0105】表3において注1?注5は下記の通り。
注1:低密度ポリエチレン 日本ポリケム社製ノバテックLDZF33
注2:架橋ポリエチレン 日本ユニカー製NUCV9253
注3:軟質ポリ塩化ビニル系樹脂 軟質塩化ビニル(平均分子量1300)100重量部,DINP50重量部,炭酸カルシウム80重量部を混合したもの。
注4:キスマ5(協和化学工業社)
注5:Irganox1010(チバガイギー社)
-:未測定」

イ 上記アの,特に比較例3を参酌すると,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 電気絶縁体用の樹脂組成物を含む電線用被覆材で被覆された電線であって,
樹脂組成物として低密度ポリエチレンである,日本ポリケム社製ノバテックLDZF33を用いること。」

2 その他の文献について
ア 拒絶理由通知書において引用された引用文献2(国際公開第2017/056279号)には,図面とともに次の事項が記載されている。

「[0026]<絶縁層>
絶縁層3は,合成樹脂を主成分とする組成物により形成され,導体2の外周に積層されることで導体2を被覆する。絶縁層3の平均厚みとしては,特に限定されないが,例えば0.1mm以上5mm以下とされる。ここで「平均厚み」とは,任意の十点において測定した厚みの平均値をいう。なお,以下において他の部材等に対して「平均厚み」という場合にも同様に定義される。」

「[0074][コア電線の作成]
表1に示す配合で絶縁層形成組成物を調整し,平均径80μm,72本の軟銅の素線を撚った7本の撚素線をさらに撚った導体(平均径2.4mm)の外周に絶縁層形成組成物を押出して外径3mmの絶縁層を形成し,No.1?13のコア電線を得た。なお,絶縁層に60kGyで電子線照射を行い,樹脂成分を架橋させた。

[0075] なお,表1中,「EEA1」は,日本ポリエチレン株式会社の「レクスパール(登録商標)A1100」(アクリル酸エチル含有量10質量%),「EEA2」は,株式会社NUCの「DPDJ-6182」(アクリル酸エチル含有量15質量%),「EEA3」は,日本ポリエチレン株式会社の「レクスパール(登録商標)A4250」(アクリル酸エチル含有量25質量%),「EVA1」は,日本ポリエチレン株式会社の「ノバテック(登録商標)LV342」(酢酸ビニル含有量10質量%),「EVA2」は,旭化成株式会社の「サンテック(登録商標)EM6415」(酢酸ビニル含有量14質量%),「EVA3」は,宇部丸善ポリエチレン株式会社の「VZ732」(酢酸ビニル含有量25質量%),「EVA4」は,三井・デュポンポリケミカル株式会社の「エバフレックス(登録商標)EV45LX」(酢酸ビニル含有量46質量%),「HDPE(高密度ポリエチレン)」は,株式会社プライムポリマーの「ハイゼックス(登録商標)520MB」,「LLDPE(直鎖状短鎖分岐ポリエチレン)」は,住友化学株式会社の「スミカセン(登録商標)C215」である。

[0076] また,表1中,「難燃剤」は,水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社の「ハイジライト(登録商標)H-31」),「酸化防止剤」は,BASF社の「イルガノックス(登録商標)1010」である。

[0077][多芯ケーブルの作成]
平均径80μm,60本の銅合金の素線を撚った導体(平均径0.72mm)の外周に架橋難燃ポリオレフィンを押出して外径1.45mmの絶縁層を形成したコア電線を2本撚り合せて第2コア電線を得た。次に,同種の2本の上記コア電線と,上記第2コア電線とを撚り合せて芯線を形成し,この芯線の周囲にシース層を押出により被覆することで,No.1?13の多芯ケーブルを得た。シース層としては,架橋ポリオレフィンを主成分とし,最小厚さが0.45mm,平均外径が7.4mmの内側シース層と,難燃性の架橋ポリウレタンを主成分とし,平均厚さが0.5mm,平均外径が8.4mmの外側シース層とを有するものを形成した。なお,シース層の樹脂成分の架橋は,180kGyの電子線照射により行った。

[0078][線膨張係数及び弾性率]
No.1?13のコア電線の絶縁層について,JIS-K7244-4(1999)に記載の動的機械特性の試験方法に準拠し,粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製「DVA-220」)を用いて,引張モード,-100℃から200℃の温度範囲で,昇温速度5℃/分,周波数10Hz,歪0.05%の条件で,温度変化に対する薄板の寸法変化から,25℃から-35℃までの線膨張係数Cを算出した。また,JIS-K7244-4(1999)に記載の動的機械特性の試験方法に準拠し,粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製「DVA-220」)を用いて,引張モード,-100℃から200℃の温度範囲で,昇温速度5℃/分,周波数10Hz,歪0.05%の条件で測定した貯蔵弾性率から,-35℃における弾性率Eを求めた。その結果を表1に示す。」

「[0080]
[表1]


[0081] 表1に示すように,C×Eを0.9以下としたNo.2,3,5?7,10,12は,低温における断線までの屈曲回数が多く低温での耐屈曲性に優れる。一方,C×Eが0.9超のNo.1,4,8,9,11は低温での耐屈曲性が不十分である。」

イ 上記アの特に表1のNo.9を参酌すると,上記引用文献2には次の事項(以下,「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「 撚素線をさらに撚った導体の外周に絶縁層形成組成物を押出して絶縁層が形成されたコア電線であって,
絶縁層形成組成物の主成分が,LLDPE(直鎖状短鎖分岐ポリエチレン)であり,
この絶縁層の25℃から-35℃までの線膨張係数Cが3.9E-04K^(-1)であり,-35℃における弾性率Eが3900MPaであり,C×Eが1.5であり,
コア電線と第2コア電線とを撚り合せて芯線を形成し,この芯線の周囲にシース層を押出により被覆することで多芯ケーブルを形成すること。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明における「電線」が何らかの導体を有すること,及び,引用発明の「電線用被覆材」が該導体の外周を被覆していることは明らかである。
すると,引用発明の「電気絶縁体用の樹脂組成物を含む電線用被覆材」が,本願発明の「導体の外周を被覆する絶縁層」に対応する。
そして,引用発明の「電気絶縁体用の樹脂組成物を含む電線用被覆材で被覆された電線」は,本願発明1の「多芯ケーブル用コア電線」と,「導体と,この導体の外周を被覆する絶縁層と電線」である点で一致する。

イ 引用発明の電線用被覆に含まれる「樹脂組成物」は,低密度ポリエチレンであり,比較例3において,主成分として用いられていることは明らかである。
すると,引用発明の「樹脂組成物として低密度ポリエチレンである,日本ポリケム社製ノバテックLDZF33を用いること」は,本願発明1の「上記絶縁層の主成分がポリエチレン系樹脂であり,上記ポリエチレン系樹脂が,低密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン及び超低密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種であ」る点で一致する。

ウ したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「 導体と,この導体の外周を被覆する絶縁層とを備える電線であって,
上記絶縁層の主成分がポリエチレン系樹脂であり,
上記ポリエチレン系樹脂が,低密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン及び超低密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種である電線。」

(相違点)
(相違点1)導体に関して,本願発明1は,「複数の素線を撚り合わせた導体」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(相違点2)電線に関して,本願発明1は,「多芯ケーブル用コア電線」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(相違点3)絶縁層に関して,本願発明1は,「絶縁層の25℃から-35℃までの線膨張係数C1と,-35℃での弾性率E1との積C1×E1が0.01MPaK^(-1)以上0.90MPaK^(-1)以下であり,上記C1が1.0×10^(-5)K^(-1)以上2.5×10^(-4)K^(-1)以下であり,上記E1が1000MPa以上3500MPa以下」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(相違点4)ポリエチレン系樹脂の融点に関して,本願発明1は,「80℃以上130℃以下」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点3について
事案に鑑みて,相違点3について最初に検討する。
引用発明には,電気絶縁体用の樹脂組成物を含む電線用被覆材として,低密度ポリエチレンである,日本ポリケム社製ノバテックLDZF33を用いることが記載されているが,その電線用被覆材の絶縁層の25℃から-35℃までの線膨張係数C1や,-35℃での弾性率E1は,何ら特定されていない。
ここで,引用発明に用いられている樹脂組成物が,本願発明1の実施例のNo.5において用いられている樹脂である“ノバテックLD ZF33”と同じであったとしても,絶縁層としてはポリエチレン系樹脂以外の成分として,難燃剤等の添加物が含有されているのであるから,その主成分が同じであったとしても,絶縁層の25℃から-35℃までの線膨張係数C1や,-35℃での弾性率E1が同じであったとまではいえない。
また,引用文献2記載事項には,多芯ケーブル用コア電線における絶縁層形成組成物の主成分が,低密度ポリエチレンの一種であるLLDPEであるものが記載されているが,この絶縁層の25℃から-35℃までの線膨張係数Cは3.9E-04K^(-1)であり,-35℃における弾性率Eは3900MPaであり,C×Eは1.5であるから,引用発明に引用文献2記載事項を採用したとしても,相違点3に係る本願発明1の構成とすることはできない。

イ したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明3-9について
本願発明3-9も,上記相違点3に係る本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
1 理由1について
本願発明1,3-9は,上記「第5 対比・判断」の「1 本願発明1について」の「(1)対比」における相違点3に係る構成を有するものとなっており,拒絶査定において引用された引用文献1に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。

2 理由3について
本願明細書の表1のNo.10,11には,絶縁層の主成分であるポリエチレン系樹脂として,VLDPE1,VLDPE2を用いたものが記載されている。
そして,VLDPEが超低密度ポリエチレンを示すことは,本願出願当時の技術常識であるといえる。
ここで,本願明細書には,VLDPE1,VLDPE2の具体的な入手方法や製造方法は記載されていないが,周知の超低密度ポリエチレンを採用すればよく,単に入手方法や製造方法が記載されていないことをもって,請求項1,3-9に係る発明を実施することができないとまではいえない。

したがって,原査定の理由1,理由3を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-09-07 
出願番号 特願2019-534994(P2019-534994)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (H01B)
P 1 8・ 121- WY (H01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 西出 隆二
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 多芯ケーブル用コア電線及び多芯ケーブル  
代理人 天野 一規  

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