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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C01B
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857  C01B
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  C01B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C01B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C01B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C01B
管理番号 1366062
異議申立番号 異議2019-700142  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-02-22 
確定日 2020-07-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6379324号発明「活性炭及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6379324号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?29〕について訂正することを認める。 特許第6379324号の請求項1?29に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯

本件特許第6379324号の請求項1?10に係る発明についての出願は、2017年(平成29年)12月7日(優先権主張 平成28年12月19日)を国際出願日とする出願であって、平成30年8月3日にその特許権の設定登録がされ、平成30年8月22日に特許掲載公報が発行された。その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

平成31年 2月22日付け:特許異議申立人真鍋直樹(以下、「特許異議申立人」という。)による請求項1?10に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 1年 6月12日付け:取消理由通知書
令和 1年 8月 9日付け:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 1年10月 7日付け:特許異議申立人による意見書の提出
令和 1年12月17日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和 2年 2月 6日 :面接審理(特許権者)
令和 2年 2月14日付け:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 2年 3月16日付け:特許異議申立人による上申書の提出
令和 2年 4月22日付け:特許異議申立人による意見書の提出

第2.訂正請求について

1.訂正の内容

令和2年2月14日付け訂正請求書における訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、この請求に係る訂正を「本件訂正」という。)は、次の訂正事項1?26からなる(下線部は訂正箇所)。
なお、令和1年8月9日付けの訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

訂正事項1
請求項1について、「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下である、活性炭。」との記載を「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、イットリウムを含む、活性炭であって、前記活性炭の総質量における、前記活性炭に含有されるイットリウム単体及びイットリウム化合物の質量の割合が0.01?5.0質量%である、活性炭。」に訂正する。

訂正事項2
請求項2について、「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下である、請求項1に記載の活性炭。」との記載を「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.20cc/g以上0.35cc/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下である、活性炭。」に訂正する。

訂正事項3
請求項3について、「前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.3?0.8である、請求項1又は2に記載の活性炭。」との記載を「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下であり、前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.41?0.8である、活性炭。」に訂正する。

訂正事項4
請求項4について、「比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下である、請求項1?3のいずれか1項に記載の活性炭。」との記載を「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.5nm以上の細孔径の細孔容積が0.01cc/g以下であり、比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下である、活性炭。」に訂正する。

訂正事項5
請求項5について、「単位比表面積あたりのジクロロメタン平衡吸着量が0.045質量%・g/m^(2)以上である、請求項1?4のいずれか1項に記載の活性炭。」との記載を「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.00cc/gであり、単位比表面積あたりのジクロロメタン平衡吸着量が0.045質量%・g/m^(2)以上である、活性炭。」に訂正する。

訂正事項6
請求項6について、「前記活性炭が繊維状活性炭である、請求項1?5のいずれか1項に記載の活性炭。」との記載を「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、前記活性炭が繊維状活性炭である、活性炭。」に訂正する。

訂正事項7
「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下であり、前記活性炭が繊維状活性炭である、活性炭。」を請求項11として追加する。

訂正事項8
「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が0.01cc/g以上0.05cc/g以下であり、比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下であり、前記活性炭が繊維状活性炭である、活性炭。」を請求項12として追加する。

訂正事項9
「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下であり、単位比表面積あたりのジクロロメタン平衡吸着量が0.045質量%・g/m^(2)以上であり、前記活性炭が繊維状活性炭である、活性炭。」を請求項13として追加する。

訂正事項10
「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下である、請求項4に記載の活性炭。」を請求項14として追加する。

訂正事項11
「前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.3?0.8である、請求項4または14に記載の活性炭。」を請求項15として追加する。

訂正事項12
「ピッチに由来する、請求項5に記載の活性炭。」を請求項16として追加する。

訂正事項13
「前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.3?0.8である、請求項5または16に記載の活性炭。」を請求項17として追加する。

訂正事項14
「比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下である、請求項5、16、又は17に記載の活性炭。」を請求項18として追加する。

訂正事項15
「前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.3?0.8である、請求項6に記載の活性炭。」を請求項19として追加する。

訂正事項16
「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下である、請求項19に記載の活性炭。」を請求項20として追加する。

訂正事項17
「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下である、請求項12に記載の活性炭。」を請求項21として追加する。

訂正事項18
「前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.3?0.8である、請求項12または21に記載の活性炭。」を請求項22として追加する。

訂正事項19
「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下である、請求項13に記載の活性炭。」を請求項23として追加する。

訂正事項20
「前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.3?0.8である、請求項13または23に記載の活性炭。」を請求項24として追加する。

訂正事項21
「比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下である、請求項13、23または24に記載の活性炭。」を請求項25として追加する。

訂正事項22
「気相中のジクロロメタンを吸着させるために用いられる、請求項11?25のいずれか1項に記載の活性炭。」を請求項26として追加する。

訂正事項23
「請求項11?25に記載の活性炭の製造方法であって、イットリウム化合物を含む活性炭前駆体を、CO_(2)濃度が90容積%以上の雰囲気下、温度600?1200℃で賦活する工程を含み、前記活性炭前駆体のイットリウムの含有量が0.01?5.0質量%である、活性炭の製造方法。」を請求項27として追加する。

訂正事項24
「請求項11?25のいずれかに記載の活性炭を含む、ジクロロメタンの吸着剤。」を請求項28として追加する。

訂正事項25
「請求項11?25のいずれかに記載の活性炭を用いる、ジクロロメタンの吸着除去方法。」を請求項29として追加する

訂正事項26
請求項8について、「請求項1?6に記載の活性炭の製造方法であって、イットリウム化合物を含む活性炭前駆体を、CO_(2)濃度が90容積%以上の雰囲気下、温度600?1200℃で賦活化する工程を含む、活性炭の製造方法。」との記載を「請求項1?6に記載の活性炭の製造方法であって、イットリウム化合物を含む活性炭前駆体を、CO_(2)濃度が90容積%以上の雰囲気下、温度600?1200℃で賦活化する工程を含み、前記活性炭前駆体のイットリウムの含有量が0.01?5.0質量%である、活性炭の製造方法。」に訂正する。

一群の請求項について
訂正前の請求項1?6の記載を訂正前の請求項7?10が引用する関係にあるから、訂正前の請求項1?10に係る発明は一群の請求項である。
そして、訂正事項7?9は訂正前の請求項6に関するものであり、訂正事項10?21は訂正前の請求項4?6に関するものであり、訂正事項22?26は訂正前の請求項7?10に関するものである。さらに、他の請求項の記載を引用しないものとする訂正が訂正事項2?25でなされたが、訂正後の請求項7?10は訂正後の請求項1?6を引用し、訂正後の請求項26?29は訂正後の請求項4?6及び11?25を直接又は間接的に引用するものであり、訂正後の請求項1?6の記載を訂正後の請求項7?10が引用し、訂正後の請求項4?6の記載を訂正後の請求項7?10、26?29が引用する関係にあるから、訂正後の請求項1?29に係る発明は一群の請求項である。
したがって、本件訂正請求は、一群の請求項1?29について請求したものと認められる。

2.訂正の判断

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に記載された「活性炭」の発明において、「イットリウムを含む」こと、及び「前記活性炭の総重量における、前記活性炭に含有されるイットリウム単体及びイットリウム化合物の質量の割合が0.01?5.0質量%である」ことを導入して活性炭をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、活性炭がイットリウムを含むことについては、本件明細書の段落0027に「本発明の活性炭は、上記特定の細孔径分布とするために、活性炭前駆体としてイットリウム化合物を含むものを用いる。そして、本発明の活性炭は、活性炭前駆体に含まれるイットリウム化合物に由来するイットリウム単体及び/又はイットリウム化合物を含むものであってもよい。本発明の活性炭の総重量における、該活性炭に含有されるイットリウム単体及びイットリウム化合物の質量の割合(合計)としては、例えば、0.01?5.0質量%が挙げられ、0.05?3.0質量%が好ましく挙げられ、0.05?0.3質量%が特に好ましく挙げられる。」と記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項1を引用していた請求項2を独立形式に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。さらに、請求項2に記載された「活性炭」の発明において、細孔容積Bの下限を0.15cc/gから0.20cc/gに訂正して活性炭をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、請求項1を引用していた請求項2は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであり、さらに、細孔容積Bの下限が0.20cc/gであることは、本件明細書の段落0019に「本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、単位比表面積あたりのジクロロメタン吸着性能をより優れたものとする観点から、0.20cc/g以上0.35cc/g以下が好ましく、0.30cc/g以上0.35cc/g以下がより好ましい。」と記載されているから、訂正事項2は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項2は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項1を引用していた請求項3を独立形式に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。さらに、請求項3に記載された「活性炭」の発明において「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下」であることを追加し、また細孔容積B/細孔容積Aの値の下限を0.3から0.41に訂正して活性炭をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、請求項1を引用していた請求項3は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであり、さらに、「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下」であることは、訂正前の特許請求の範囲の請求項2に記載されているものであり、細孔容積B/細孔容積Aの値の下限が0.41であることは、本件明細書の段落0062の表1に実施例4として記載されている活性炭の細孔容積B/細孔容積Aの値が0.41であることから、訂正事項3は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項3は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項1を引用していた請求項4を独立形式に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。さらに、請求項4に記載された「活性炭」の発明において「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.5nm以上の細孔径の細孔容積が0.01cc/g以下」であることを追加して活性炭をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、請求項1を引用していた請求項4は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであり、さらに、「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.5nm以上の細孔径の細孔容積が0.01cc/g以下」であることは、本件明細書の段落0021に「同様の観点から、本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、・・・また、2.5nm以上の範囲の細孔径の細孔容積が0.03cc/g以下が好ましい。」と記載されており、また段落0062の表1に実施例1?4として記載されている活性炭の細孔径2.5nm以上の細孔容積が0.01cc/g又は0.00cc/gであることから、訂正事項4は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項4は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、請求項1を引用していた請求項5を独立形式に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。さらに、請求項5に記載された「活性炭」の発明において「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.00cc/g」であることを追加して活性炭をより限定するものであるから、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、請求項1を引用していた請求項5は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであり、さらに、「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.00cc/g」であることは、本件明細書の段落0062の表1に実施例1?4として記載されている活性炭の3.0nm以上の細孔容積が0.00cc/gであることから、訂正事項5は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項5は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項6について
訂正事項6は、請求項1を引用していた請求項6を独立形式に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。さらに、請求項6に記載された「活性炭」の発明において「比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下」であることを追加して活性炭をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、請求項1を引用していた請求項6は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであり、さらに、「比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下」であることは、本件明細書の段落0024に「本発明の活性炭は、活性炭の比表面積(窒素を被吸着物質として用いたBET法(1点法)により測定される値)としては、1000?2000m^(2)/g程度、好ましくは1300?2000m^(2)/g程度、より好ましくは1400?1800m^(2)/g程度、特に好ましくは1600?1800m^(2)/g程度が挙げられる。」と記載されていることから、訂正事項6は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項6は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)訂正事項7について
訂正事項7は、請求項2を引用していた請求項6を独立させて請求項11とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、請求項2を引用していた請求項6は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであることから、訂正事項7は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項7は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(8)訂正事項8について
訂正事項8は、請求項4(請求項1を引用したもの)を引用していた請求項6を独立させて請求項12とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。さらに、請求項6に記載された「活性炭」の発明において「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が0.01cc/g以上0.05cc/g以下」であることを追加して活性炭をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、請求項4(請求項1を引用したもの)を引用していた請求項6は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであり、さらに、「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が0.01cc/g以上0.05cc/g以下」であることは、本件明細書の段落0021に「同様の観点から、本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、・・・また、2.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が0.01cc/g以上0.05cc/g以下が好ましい。」と記載されていることから、訂正事項8は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項8は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(9)訂正事項9について
訂正事項9は、請求項5(請求項1を引用したもの)を引用していた請求項6を独立させて請求項13とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。さらに、請求項6に記載された「活性炭」の発明において「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下」であることを追加して活性炭をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、請求項5(請求項1を引用したもの)を引用していた請求項6は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであり、さらに、「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下」であることは、本件明細書の段落0024に「また、QSDFT法によって算出される活性炭の全細孔容積としては0.45?1.50cc/g程度、より好ましくは0.50?0.8cc/g程度が挙げられる。」と記載されていることから、訂正事項9は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項9は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(10)訂正事項10について
訂正事項10は、請求項2(請求項1を引用したもの)を引用していた請求項4を独立させて請求項14とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。ここで、訂正前の請求項1を引用していた訂正前の請求項4は、上記訂正事項4により請求項4となっていて、訂正後の請求項14は請求項4を引用したものとなっており、上記訂正事項4は上記(4)のとおり特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるから、訂正事項10は特許請求の範囲の減縮を目的としたものでもある。
そして、請求項2(請求項1を引用したもの)を引用していた請求項4は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであることから、訂正事項10は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項10は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(11)訂正事項11について
訂正事項11は、請求項3(請求項1及び2を引用したもの)を引用していた請求項4を独立させて請求項15とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。ここで、訂正前の請求項1及び2を引用していた訂正前の請求項4は、上記訂正事項4及び10により請求項4及び14となっていて、訂正後の請求項15は請求項4及び14を引用したものとなっており、上記訂正事項4及び10は上記(4)及び(10)のとおり特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるから、訂正事項11は特許請求の範囲の減縮を目的としたものでもある。
そして、請求項3(請求項1及び2を引用したもの)を引用していた請求項4は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであることから、訂正事項11は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項11は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(12)訂正事項12について
訂正事項12は、請求項2を引用していた請求項5を独立させて請求項16とし、訂正事項5と同様の限定をした「活性炭」の発明において「ピッチに由来する」ことを追加して活性炭をより限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、請求項1を引用していた請求項5は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであり、さらに、「ピッチに由来する」ことは、本件明細書の段落0026に「後述の通り、本発明の製造方法において、活性炭前駆体の主原料(すなわち、本発明の活性炭の由来となる原料)としては、特に制限されず、例えば、・・・ポリアクリロニトリル、ピッチ、ポリビニルアルコール、セルロース等が挙げられる。これらの中でも、本発明の活性炭は、ピッチに由来することが好ましく、石炭ピッチに由来することがより好ましい。」と記載されていることから、訂正事項12は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項12は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(13)訂正事項13について
訂正事項13は、請求項3(請求項1を引用したもの)を引用していた請求項5を独立させて請求項17とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。ここで、訂正前の請求項1を引用していた訂正前の請求項5は、上記訂正事項5及び12により請求項5及び16となっていて、訂正後の請求項17は請求項5及び16を引用したものとなっており、上記訂正事項5及び12は上記(5)及び(12)のとおり特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるから、訂正事項13は特許請求の範囲の減縮を目的としたものでもある。
そして、請求項3(請求項1を引用したもの)を引用していた請求項5は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであることから、訂正事項13は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項13は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(14)訂正事項14について
訂正事項14は、請求項4(請求項1及び3を引用したもの)を引用していた請求項5を独立させて請求項18とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。ここで、訂正前の請求項1及び3を引用していた訂正前の請求項5は、上記訂正事項5、12及び13により請求項5、16及び17となっていて、訂正後の請求項18は請求項5、16及び17を引用したものとなっており、上記訂正事項5、12及び13は上記(5)、(12)及び(13)のとおり特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるから、訂正事項14は特許請求の範囲の減縮を目的としたものでもある。
そして、請求項4(請求項1及び3を引用したもの)を引用していた請求項5は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであることから、訂正事項14は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項14は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(15)訂正事項15について
訂正事項15は、請求項3(請求項1を引用したもの)を引用していた請求項6を独立させて請求項19とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。ここで、訂正前の請求項1を引用していた訂正前の請求項6は、上記訂正事項6により請求項6となっていて、訂正後の請求項19は請求項6を引用したものとなっており、上記訂正事項6は上記(6)のとおり特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるから、訂正事項15は特許請求の範囲の減縮を目的としたものでもある。
そして、請求項3(請求項1を引用したもの)を引用していた請求項6は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであることから、訂正事項15は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項15は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(16)訂正事項16について
訂正事項16は、請求項3(請求項2を引用したもの)を引用していた請求項6を独立させて請求項20とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。ここで、訂正前の請求項2は訂正前の請求項1を引用していたものであり、訂正前の請求項3(請求項1を引用したもの)を引用していた訂正前の請求項6は、上記訂正事項15により請求項19となっていて、訂正後の請求項20は請求項19を引用したものとなっており、上記訂正事項15は上記(15)のとおり特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるから、訂正事項16は特許請求の範囲の減縮を目的としたものでもある。
そして、請求項3(請求項2を引用したもの)を引用していた請求項6は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであることから、訂正事項16は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項16は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(17)訂正事項17について
訂正事項17は、請求項4(請求項2を引用したもの)を引用していた請求項6を独立させて請求項21とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。ここで、訂正前の請求項2は訂正前の請求項1を引用していたものであり、訂正前の請求項4(請求項1を引用したもの)を引用していた訂正前の請求項6は、上記訂正事項8により請求項12となっていて、訂正後の請求項21は請求項12を引用したものとなっており、上記訂正事項8は上記(8)のとおり特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるから、訂正事項17は特許請求の範囲の減縮を目的としたものでもある。
そして、請求項4(請求項2を引用したもの)を引用していた請求項6は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであることから、訂正事項17は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項17は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(18)訂正事項18について
訂正事項18は、請求項4(請求項3を引用したもの)を引用していた請求項6を独立させて請求項22とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。ここで、訂正前の請求項3は訂正前の請求項1及び2を引用していたものであり、訂正前の請求項4(請求項1を引用したもの及び請求項2を引用したもの)を引用していた訂正前の請求項6は、上記訂正事項8及び17により請求項12及び21となっていて、訂正後の請求項22は請求項12及び21を引用したものとなっており、上記訂正事項8及び17は上記(8)及び(17)のとおり特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるから、訂正事項18は特許請求の範囲の減縮を目的としたものでもある。
そして、請求項4(請求項3を引用したもの)を引用していた請求項6は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであることから、訂正事項18は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項18は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(19)訂正事項19について
訂正事項19は、請求項5(請求項2を引用したもの)を引用していた請求項6を独立させて請求項23とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。ここで、訂正前の請求項2は訂正前の請求項1を引用していたものであり、訂正前の請求項5(請求項1を引用したもの)を引用していた訂正前の請求項6は、上記訂正事項9により請求項13となっていて、訂正後の請求項23は請求項13を引用したものとなっており、上記訂正事項9は上記(9)のとおり特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるから、訂正事項19は特許請求の範囲の減縮を目的としたものでもある。
そして、請求項5(請求項2を引用したもの)を引用していた請求項6は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであることから、訂正事項19は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項19は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(20)訂正事項20について
訂正事項20は、請求項5(請求項3を引用したもの)を引用していた請求項6を独立させて請求項24とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。ここで、訂正前の請求項3は訂正前の請求項1及び2を引用していたものであり、訂正前の請求項5(請求項1を引用したもの及び請求項2を引用したもの)を引用していた訂正前の請求項6は、上記訂正事項9及び19により請求項13及び23となっていて、訂正後の請求項24は請求項13及び23を引用したものとなっており、上記訂正事項9及び19は上記(9)及び(19)のとおり特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるから、訂正事項20は特許請求の範囲の減縮を目的としたものでもある。
そして、請求項5(請求項3を引用したもの)を引用していた請求項6は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであることから、訂正事項20は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項20は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(21)訂正事項21について
訂正事項21は、請求項5(請求項4を引用したもの)を引用していた請求項6を独立させて請求項27とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。ここで、訂正前の請求項4は訂正前の請求項1?3を引用していたものであり、訂正前の請求項5(請求項1を引用したもの、請求項2を引用したもの及び請求項3を引用したもの)を引用していた訂正前の請求項6は、上記訂正事項9、19及び20により請求項13、23及び24となっていて、訂正後の請求項25は請求項13、23及び24を引用したものとなっており、上記訂正事項9、19及び20は上記(9)、(19)及び(20)のとおり特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるから、訂正事項21は特許請求の範囲の減縮を目的としたものでもある。
そして、請求項5(請求項4を引用したもの)を引用していた請求項6は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであることから、訂正事項21は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項21は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(22)訂正事項22について
訂正事項22は、訂正前の請求項7が引用する請求項1?6のうち上記訂正事項2?6によって独立形式に訂正した訂正後の請求項2?6に係る発明との引用関係を解消し、当該訂正後の請求項2?6に含まれなくなった発明のうち上記訂正事項7?21によって新たに請求項となった訂正後の請求項11?25を引用して独立させた請求項26とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。さらに、請求項12?25に対する訂正事項である訂正事項8?21は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正事項22も特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、請求項1?6を引用していた請求項7は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであることから、訂正事項22は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項22は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(23)訂正事項23について
訂正事項23は、訂正前の請求項8が引用する請求項1?6のうち上記訂正事項2?6によって独立形式に訂正した訂正後の請求項2?6に係る発明との引用関係を解消し、当該訂正後の請求項2?6に含まれなくなった発明のうち上記訂正事項7?21によって新たに請求項となった訂正後の請求項11?25を引用して独立させた請求項27とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。さらに、「前記活性炭前駆体のイットリウムの含有量が0.01?5.0質量%である」ことを導入して活性炭をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、請求項12?25に対する訂正事項である訂正事項8?21は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正事項23も特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、請求項1?6を引用していた請求項8は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであり、さらに、活性炭前駆体がイットリウムを含むことについては、本件明細書の段落0035に「本発明の製造方法において、活性炭前駆体のイットリウムの含有量としては、好ましくは0.01?5.0質量%、より好ましくは0.05?1.0質量%、さらに好ましくは0.05?0.5質量%が挙げられる。」と記載されているから、訂正事項23は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項23は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(24)訂正事項24について
訂正事項24は、訂正前の請求項9が引用する請求項1?6のうち上記訂正事項2?6によって独立形式に訂正した訂正後の請求項2?6に係る発明との引用関係を解消し、当該訂正後の請求項2?6に含まれなくなった発明のうち上記訂正事項7?21によって新たに請求項となった訂正後の請求項11?25を引用して独立させた請求項28とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。さらに、請求項12?25に対する訂正事項である訂正事項8?21は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正事項24も特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、請求項1?6を引用していた請求項9は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであることから、訂正事項24は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項24は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(25)訂正事項25について
訂正事項25は、訂正前の請求項10が引用する請求項1?6のうち上記訂正事項2?6によって独立形式に訂正した訂正後の請求項2?6に係る発明との引用関係を解消し、当該訂正後の請求項2?6に含まれなくなった発明のうち上記訂正事項7?21によって新たに請求項となった訂正後の請求項11?25を引用して独立させた請求項29とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。さらに、請求項12?25に対する訂正事項である訂正事項8?21は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正事項25も特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、請求項1?6を引用していた請求項10は、願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたものであることから、訂正事項25は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項25は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(26)訂正事項26について
訂正事項26は、請求項8に記載された「活性炭の製造方法」の発明において、「前記活性炭前駆体のイットリウムの含有量が0.01?5.0質量%である」ことを導入して活性炭の製造方法をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、活性炭前駆体がイットリウムを含むことについては、本件明細書の段落0035に「本発明の製造方法において、活性炭前駆体のイットリウムの含有量としては、好ましくは0.01?5.0質量%、より好ましくは0.05?1.0質量%、さらに好ましくは0.05?0.5質量%が挙げられる。」と記載されているから、訂正事項26は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項26は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、さらに、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(27)独立特許要件について
特許異議申立ては、訂正前の全ての請求項1?10についてされているので、訂正前の請求項1?10に係る訂正事項1?26に関して、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3.まとめ

以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1?29について訂正することを認める。

第3.本件発明について

本件特許の請求項1?29に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明29」という。)は、訂正特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものであると認める(下線部は訂正箇所)。

「【請求項1】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、
イットリウムを含む、活性炭であって、
前記活性炭の総質量における、前記活性炭に含有されるイットリウム単体及びイットリウム化合物の質量の割合が0.01?5.0質量%である、活性炭。

【請求項2】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.20cc/g以上0.35cc/g以下であり、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下である、活性炭。

【請求項3】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下であり、
前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.41?0.8である、活性炭。

【請求項4】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.5nm以上の細孔径の細孔容積が0.01cc/g以下であり、
比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下である、活性炭。

【請求項5】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.00cc/gであり、
単位比表面積あたりのジクロロメタン平衡吸着量が0.045質量%・g/m^(2)以上である、活性炭。

【請求項6】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、
前記活性炭が繊維状活性炭である、活性炭。

【請求項7】
気相中のジクロロメタンを吸着させるために用いられる、請求項1?6のいずれか1項に記載の活性炭。

【請求項8】
請求項1?6に記載の活性炭の製造方法であって、イットリウム化合物を含む活性炭前駆体を、CO_(2)濃度が90容積%以上の雰囲気下、温度600?1200℃で賦活する工程を含み、前記活性炭前駆体のイットリウム含有量が0.01?5.0質量%である、活性炭の製造方法。

【請求項9】
請求項1?7のいずれかに記載の活性炭を含む、ジクロロメタンの吸着剤。

【請求項10】
請求項1?7のいずれかに記載の活性炭を用いる、ジクロロメタンの吸着除去方法。

【請求項11】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下であり、
前記活性炭が繊維状活性炭である、活性炭。

【請求項12】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が0.01cc/g以上0.05cc/g以下であり、
比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下であり、
前記活性炭が繊維状活性炭である、活性炭。

【請求項13】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下であり、
単位比表面積あたりのジクロロメタン平衡吸着量が0.045質量%・g/m^(2)以上であり、
前記活性炭が繊維状活性炭である、活性炭。

【請求項14】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下である、請求項4に記載の活性炭。

【請求項15】
前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.3?0.8である、請求項4または14に記載の活性炭。

【請求項16】
ピッチに由来する、請求項5に記載の活性炭。

【請求項17】
前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.3?0.8である、請求項5または16に記載の活性炭。

【請求項18】
比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下である、請求項5、16、又は17に記載の活性炭。

【請求項19】
前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.3?0.8である、請求項6に記載の活性炭。

【請求項20】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下である、請求項19に記載の活性炭。

【請求項21】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下である、請求項12に記載の活性炭。

【請求項22】
前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.3?0.8である、請求項12または21に記載の活性炭。

【請求項23】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下である、請求項13に記載の活性炭。

【請求項24】
前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.3?0.8である、請求項13または23に記載の活性炭。

【請求項25】
比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下である、請求項13、23または24に記載の活性炭。

【請求項26】
気相中のジクロロメタンを吸着させるために用いられる、請求項11?25のいずれか1項に記載の活性炭。

【請求項27】
請求項11?25に記載の活性炭の製造方法であって、イットリウム化合物を含む活性炭前駆体を、CO_(2)濃度が90容積%以上の雰囲気下、温度600?1200℃で賦活する工程を含み、前記活性炭前駆体のイットリウム含有量が0.01?5.0質量%である、活性炭の製造方法。

【請求項28】
請求項11?25のいずれかに記載の活性炭を含む、ジクロロメタンの吸着剤。

【請求項29】
請求項11?25のいずれかに記載の活性炭を用いる、ジクロロメタンの吸着除去方法。」

第4.取消理由について

1.取消理由(決定の予告)の概要

本件特許の取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。

理由1(明確性)
令和1年8月9日付け訂正請求に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、イットリウムを含む、活性炭。」であるが、イットリウムの含有量については記載されていないため、不純物レベルでイットリウムを含有する場合を包含するものであるか否かが不明であるから、本件発明1は明確でない。
また、本件発明8、27及び本件発明1を引用する本件発明7、9、10についても同様である。
よって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

理由2(新規性)
本件の令和1年8月9日付け訂正請求に係る請求項4、6、14、15、19に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項の規定に違反して特許されたものである。

理由3(進歩性)
令和1年8月9日付け訂正請求に係る請求項7、9、10、26、28、29に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証又は甲第2号証、甲第5号証、甲第6号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。

引用文献
甲第1号証:J Romanos他,"Nanospace engineering of KOH activated carbon",Nanotechnology,Vol.23,015401,2012
甲第2号証:HE JING MING,"ADSORPTION EVAPORATIVE EMISSION CONTROL SYSTEM FOR VEHICLES",A THESIS SUBMITTED FOR THE DEGREE OF PHILOSOPHY DEPARTMENT OF MECHANICAL ENGINEERING NATIONAL UNIVERITY OF SINGAPORE Chapter2, Chapter3 and Appendix A,2009
甲第5号証:特開2010-131497号公報
甲第6号証:特開2011-106051号公報

2.取消理由に対する当審の判断

(1)理由1(明確性)について

本件発明1は、本件訂正により、「イットリウムを含む」こと、及び「前記活性炭の総重量における、前記活性炭に含有されるイットリウム単体及びイットリウム化合物の質量の割合が0.01?5.0質量%である」ことが限定されたものとなったため、理由1は理由がない。
また、本件発明8、27は、本件訂正により、「前記活性炭前駆体のイットリウム含有量が0.01?5.0質量%である」ことが限定されたものとなったため、理由1は理由がない。

(2)理由2(新規性)、理由3(進歩性)について

ア.本件発明4、7、9、10、14、15、26、28、29について

(ア)本件発明

本件発明4、7、9、10、14、15、26、28、29は、前記第3のとおりであると認める。

(イ)引用文献の記載事項

a.甲第1号証

甲第1号証には、以下の記載がある(和訳は、特許異議申立人が提出した抄訳を参考にして、当審が作成した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)。

(a1)
「1. Introduction
Activated carbon is a class of adsorbent materials with applications ranging from water treatment, gas and chemical purification, and medical poisoning treatment to gas storage and sequestration [1-5]」.(第1頁左欄40行?同欄第45行)
(和訳)1.緒言
活性炭は吸着物質の一種であり、水処理、ガス及び化学精製、医療中毒治療からガス貯蔵及び隔離に渡る範囲に適用される。

(a2)
「2.1. Sample preparation
AC samples are prepared in a multi-step activation process from corncob biomass waste feedstock. During phosphoric acid activation, corncob is soaked with phosphoric acid for 12 h in an oven at 45℃. The mixture is charred at 480℃ in a nitrogen environment. Charred carbon is then washed with hot water until neutralized (pH=7). Activation of the resulting carbon with KOH solution is performed at selected temperature and KOH concentration for 1 h. The resulting material is washed with water (pH=7) and dried to form the final product.」(第2頁右欄第45行-同欄最終行)
(和訳)2.1.試料調製
ACサンプルはコーンコブバイオマス廃棄物供給材料を用いて、多段階賦活工程により調製される。リン酸賦活中に、コーンコブは45℃のオーブン中で12時間、リン酸に曝される。混合物はチッ素雰囲気中480℃で炭化される。炭化された炭素は、中和されるまで、温水で洗浄される。得られた炭素は、所定の温度及び濃度のKOH水溶液により1時間賦活化される。その結果生じる物質を、水(pH=7)で洗浄し、最終生産部を形成するために乾燥される。

(a3)「2.2. Sub-critical nitrogen adsorption
Sub-critical nitrogen isotherms at 77K are performed on an Autosorb-1C (Quantachrome Instruments), which is periodically calibrated by using a surface area reference material SARM 2012 (768 m^(2)g^(-1)) provided by Quantachrome. Specific surface areas (Σ) are determined from sub-critical nitrogen isotherms using Brunauer-Emmett-Teller (BET) theory in the pressure range of 0.01-0.03 P/P_(0), suitable for microporous materials. Surface areas larger 1000 m^(2)g^(-1) were rounded to the nearest hundred.」(第3頁左欄第1行?同欄第11行)
(和訳)2.2.亜臨界窒素吸着
77Kの亜臨界窒素等温線は、Quantachromeによって提供される表面積標準物質SARM 2012(798m^(2)g^(-1))を使用して定期的に較正されたAutosorb-1C(Quantachrome Instruments)により得られる。比表面積(Σ)は、マイクロ孔に適した相対圧0.01-0.03P/P_(0)の範囲でBrunauer-Emmett-Teller(BET)理論を用いて、亜臨界窒素等温線から決定される。1000m^(2)g^(-1)より大きな表面積は、100単位で丸められる。

(a4)
「Quenched solid density functional theory (QSDFT) for infinite slit shaped pores is used for calculating pore size distribution」(第3頁左欄第25行?同欄第27行)
(和訳)細孔径の分布をQSDFT法によって算出する。

(a5)
「Figure 6 shows that the BET surface area increases with increasing activation temperature and the KOH:C weight ratio.」(第5頁左欄第26行?同欄第28行)
(和訳)BET比表面積がKOH:C重量比と賦活化温度に比例することを図6は示している。

(a6)
「Figure 7 shows the effect on the bimodal pore size distribution. Three graphs in figure 7 show the effect of increasing the KOH:C weight ratio for constant activation temperature of 700, 800 and 900℃」(第5頁左欄第41行?同欄第44行)
(和訳)図7は、二峰性の細孔分布に対する効果を示す。図7中の3つのグラフは、700、800、900℃の各温度で賦活した各活性炭のKOH:Cの重量比を増加させた場合の効果を示す。

(a7)


」(第5頁右欄)

(a8)


」(第6頁図7右上)

そして、甲第1号証に記載された、KOH:Cの重量比が2.5であって、賦活温度が700℃である活性炭は、上記(a7)で提示した図6からそのBET比表面積が1500m^(2)であり、QSDFT法によって算出された上記(a8)で示した図の細孔径分布から、細孔径1.0nm、2.5nm及び3.0nmにおける累積細孔容積を読み取ると、それぞれ0.47cm^(3)/g、0.60cm^(3)/g及び0.62cm^(3)/gであり、グラフで示されている最大値である細孔径約34.5nm(345Å)程度における累積細孔容積は0.63cm^(3)/gである。ここで、累積細孔容積の単位の「cm^(3)/g」は「cc/g」と同義である。
また、本件明細書の段落0042によれば、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積は細孔径3.0nm以下の細孔容積から細孔径1.0nm以下の細孔容積を減ずることで求めることができるから、同様の計算方法で1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積を求めると、0.15cc/gとなる。
そうすると、甲第1号証には、
「BET比表面積が1500m^(2)/gであり、QSDFT法によって算出された細孔径1.0nmにおける累積細孔容積が0.47cc/g、QSDFT法によって算出された1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が0.15cc/g、QSDFT法によって算出された細孔径2.5nmにおける累積細孔容積が0.60cc/g、QSDFT法によって算出された細孔径約34.5nm程度における累積細孔容積が0.63cc/gである活性炭」の発明(以下、「甲1-1発明」という。)が記載されていると認められる。

(ウ)対比・判断

a.本件発明4について

本件発明4と甲1-1発明を対比する。
甲1-1発明における「QSDFT法によって算出された細孔径1.0nmにおける累積細孔容積が0.47cc/g」であること、「QSDFT法によって算出された1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が0.15cc/g」、及び「比表面積が1500m^(2)/g」であることは、本件発明4でいう「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上」であること、「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下」であること、及び「比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下」であることをそれぞれ満足する。
そして、上記(a8)で提示した図の窒素吸着等温線からみて、KOH:Cの重量比が2.5であって、賦活温度が700℃である甲1-1発明の活性炭の累積細孔容積値は細孔径34.5nmでほぼ収束しており、それ以上の細孔径における累積細孔容積値の増加は極めて小さいものと推測され、細孔径34.5nmにおける累積細孔容積が全細孔容積の近似値であるといえるから、甲1-1発明における全細孔容積は0.63cc/gであり、このことは本件発明4でいう「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下」であることを満足する。
また、本件明細書の段落0042によれば、2.5nm以上の細孔容積は全細孔容積から2.5nm以下の細孔容積を減ずることで求めることができ、全細孔容積は上記のとおり0.63cc/gであり、細孔径2.5nmにおける累積細孔容積が0.60cc/gであるから、2.5nm以上の細孔容積は0.03cc/gである。
したがって、本件発明4と甲1-1発明とは、「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下である、活性炭。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点
本件発明4が、「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.5nm以上の細孔径の細孔容積が0.01cc/g以下」であるのに対し、甲1-1発明は、2.5nm以上の細孔容積は0.03cc/gである点。

すると、本件発明4と甲1-1発明との間には、上記相違点が存在することから、本件発明4は甲第1号証に記載された発明ではない。
そして、上記相違点について検討すると、上記(a8)で摘示した図においては、賦活化温度により活性炭の細孔分布が変化することは理解できるが、甲1-1発明においては、2.5nm以上の細孔径の細孔容積のみを小さくする動機を認められず、また、甲第1号証は、高比表面積、多孔度、1nm未満のサブナノメートルの細孔容積及び1?5nmの超ナノメートルの細孔容積は、KOH濃度と活性化温度の組み合わせによって定量的に制御されることを示した文献であり、甲1-1発明において2.5nm以上の細孔径の細孔容積のみを小さくすることに関する示唆も認められないから、甲1-1発明において2.5nm以上の細孔容積は0.03cc/gから0.01cc/g以下にすることは、当業者が容易に想到することができたものではない。

よって、本件発明4は、甲第1号証に記載されている技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

b.本件発明7、9、10、14、15、26、28、29について

本件発明7、9、10、14、15、26、28、29は、本件発明4の上記相違点に係る発明特定事項を少なくとも有するものであるから、本件発明4と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証に記載されている技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ.本件発明6、7、9、10、19、27、28、29について

(ア)本件発明

本件発明6、7、9、10、19、27、28、29は、前記第3のとおりであると認める。

(イ)引用文献の記載事項

a.甲第2号証

甲第2号証には、以下の記載がある(和訳は、特許異議申立人が提出した抄訳を参考にして、当審が作成した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)。

(a1)
「(4)ACF-1500 is an activated carbon fiber felt made by Nantong Tonghui Industrial & Trading Co., Ltd, China. The average particle diameter is 17-20 μm.」(第3章第29頁第2行?第3行)
(和訳)(4)ACF-1500はNantong Tonghui Industrial & Tradigng Co. Ltdによって製造された繊維状活性炭フェルトである。平均径は17?20μmである。

(a2)
「3.3.1 Nitrogen Adsorption Measurement for surface CharacteristicsThe AUTOSORB-1 MP microspore analyzer, manufactured by Quantachrome Instruments, Boynton Beach, Florida USA, is used to measure the nitrogen adsorption/desorption isotherms at liquid nitrogen temperature of 77.4K. Experiments were conducted in the pressure range of 0.001-760 torr or relative pressure from 10^(-6) to 1. High purity (99.99%) nitrogen was used.」(第3章第29頁第24行?第30頁第3行)
(和訳)3.3.1 表面特性決定のための窒素吸着測定
77.4Kの液体温度での窒素吸着/脱着等温線を測定するために、Quantachrome製のミクロポアアナライザー AUTOSORB-1 MPを用いた。実験は、圧力0.001-760torr または相対圧10^(-6)から1の範囲で、高純度窒素(99.99%)を使用して行った。

(a3)


」(第3章第41頁)
(和訳)表3.11 4種の炭素径吸着材のBET表面積
アイテム 単位 Maxsorb-III PAC-1 GAC-1 ACF-1500
BET比表面積 m^(2)/g 3,151 2,054 1,584 1,346
全体の細孔容積 cm^(3)/g 1.73 1.54 1.37 0.92
平均細孔半径 nm 1.10 1.48 1.67 1.36

(a4)


」(第3章第42頁下図)

(a5)
「The distribution of pore volume with respect to pore size is called pore size distribution (PSD). Description of the pore structure in terms of PSD is useful for predicting the absorbability of adsorbents. The definition of pore size follows the recommendation of IUPAC[31]: micropore (0nm-2nm diameter), mesopore (2nm-50nm diameter), macropore (>50 nm diameter). Micropores can be divided into ultra-micropores (<0.7 nm) and super-micropores (0.7-2nm) 」(第2章第13頁第14行?第19行、下線は当審が付与したものである。)
(和訳)細孔径に対する細孔容積の分布はいわゆる細孔径分布(PSD)である。PSDによる孔構造の解釈は吸着剤の吸着性の予測に有用である。細孔径の定義はIUPACの定義に従う:ミクロポア(直径0-2nm)、メソポア(直径2-50nm)及びマクロポア(50nm以上)。ミクロポアはウルトラミクロポア(<0.7nm)及びスーパーミクロポア(0.7-2nm)に分けることができる。

そして、甲第2号証に記載された繊維状活性炭であるACF-1500は、上記(a3)で提示した表3.1からBET比表面積が1346m^(2)/g、総細孔容積が0.92cm^(3)/gであり、QSDFT法によって算出された上記(a4)で提示した(b)の図の細孔径分布から、細孔径1.0nm及び3.0nmにおける累積細孔容積を読み取ると、当該(b)の図の横軸は「Pore Radius」(細孔半径)であることから、細孔径1.0nm及び3.0nmにおける累積細孔径は、横軸の0.5nm及び1.5nmの累積細孔径を読み取ることによってそれぞれ0.26cm^(3)/g、0.58cm^(3)/gである。ここで、累積細孔容積の単位の「cm^(3)/g」は「cc/g」と同義である。さらに、上記ア.(イ)a.の甲1-1発明の場合と同様の方法で1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積を求めると、0.32cc/gとなる。
そうすると、甲第2号証には、
「BET比表面積が1346m^(2)/g、総細孔容積が0.92cm^(3)/gであり、QSDFT法によって算出された細孔径1.0nmにおける累積細孔容積が0.26cc/g、QSDFT法によって算出された1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が0.32cc/gである繊維状活性炭」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

(ウ)対比・判断

a.本件発明6について

本件発明6と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「「QSDFT法によって算出された1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が0.32cc/g」であること、及び「BET比表面積が1346m^(2)/g」であることは、本件発明6でいう「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下」、「比表面積が1300cm^(2)/g以上2000m^(2)/g以下」であることをそれぞれ満足し、甲2発明における「繊維状活性炭」は、本件発明6でいう「活性炭が繊維状活性炭である」ことに相当する。
したがって、本件発明6と甲2発明とは、「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、前記活性炭が繊維状活性炭である、活性炭。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点
本件発明6が、「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上」であるのに対し、甲2発明は、1.0nm以下の細孔容積は0.26cc/gである点。

すると、本件発明6と甲2発明との間には、上記相違点が存在することから、本件発明6は甲第2号証に記載された発明ではない。
そして、上記相違点について検討すると、甲2発明は、市販の活性炭ACF-1500であるため、1.0nm以下の細孔径の細孔容積のみを大きくする動機を認められず、また1.0nm以下の細孔径の細孔容積のみを大きくすることに関する示唆も認められないから、甲2発明において1.0nm以下の細孔径の細孔容積0.26cc/gから0.35cc/g以上にすることは、当業者が容易に想到することができたものではない。

よって、本件発明6は、甲第2号証に記載されている技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

b.本件発明7、9、10、19、26、28、29について

本件発明7、9、10、19、26、28、29は、本件発明6の上記相違点に係る発明特定事項を少なくとも有するものであるから、本件発明6と同じ理由により、甲第2号証に記載された発明ではなく、また甲第2号証に記載されている技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ.まとめ

本件発明4、6、7、9、10、14、15、19、26、28、29に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではなく、本件発明4、6、7、9、10、14、15、19、26、28、29に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでもない。

3.令和1年6月12日付け取消理由通知書における甲第3号証及び甲第4号証を証拠方法とする新規性進歩性の理由について

甲第3号証:M.widmaier他,"Carbon as Quasi-Reference Electrode in Unconventional Lithium-Salt Containing Electrolytes for Hybrid battery/Supercapacitor Devices",Journal of The Electrochemical Society,Vol.163,No.14,A2956-A2964,2016
甲第4号証:N.Jackel他,"Anomalous or regular capacitance? The influence of pore size dispersity on double-layer formation",Journal of Power Sources,Vol.326,p660-671,2016年3月30日

(1)甲第3号証を証拠方法とする取消理由について

ア.概要

上記取消理由通知書における甲第3号証を証拠方法とする取消理由は、本件訂正前の請求項1、3?5に係る発明は、甲第3号証に記載されているサンプル「AC1-V」と同一であり、活性炭を気相中のジクロロメタンを吸着することは周知慣用技術である(例えば甲第5号証の請求項1-7、甲第6号証の請求項3、段落0019、0041参照)ため、本件訂正前の請求項7、9、10に係る発明は、甲第3号証及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたというものである。

イ.当審の判断
甲第3号証には、サンプル「AC1-V」が、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積Aが0.365cc/gであること、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.183cc/gであること、細孔容積B/細孔容積Aが0.50であること、比表面積が1419m^(2)/gであること、及び全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/gである蓋然性が高いことが記載されているが、本件発明1におけるイットリウムの含有量が0.01?5.0質量%であること、本件発明2、3、5、16?18における3.0nm以上の細孔容積が0.01cc/g以下又は0.00cc/gであること、本件発明4、14、15における2.5nm以上の細孔容積が0.01cc/gであること、本件発明6、11?13、19?25における活性炭が繊維状活性炭であることは記載されておらず、甲第3号証には、サンプル「AC1-V」にイットリウムを含有させること、細孔容積を変更すること、又は繊維状活性炭とすることは示唆されていない。
したがって、本件発明1?6、11?25は、甲第3号証に記載されている発明ではなく、また甲第3号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。さらに、本件発明7?10、26?29の活性炭は、本件発明1?6、11?25のいずれかの活性炭であるため、本件発明7?10、26?29も、甲第3号証及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)甲第4号証を証拠方法とする取消理由について

ア.概要

上記取消理由通知書における甲第4号証を証拠方法とする取消理由は、本件訂正前の請求項1、3?5に係る発明は、甲第4号証に記載されているサンプル「CDC1000」と同一であり、活性炭を気相中のジクロロメタンを吸着することは周知慣用技術であるため、本件訂正前の請求項7、9、10に係る発明は、甲第4号証及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたというものである。

イ.当審の判断
甲第4号証には、サンプル「CDC1000」が、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積Aが0.392cc/gであること、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.304cc/gであること、細孔容積B/細孔容積Aが0.55であること、比表面積が1598m^(2)/gであること、及び全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/gである蓋然性が高いことが記載されているが、本件発明1におけるイットリウムの含有量が0.01?5.0質量%であること、本件発明2、3、5、16?18における3.0nm以上の細孔容積が0.01cc/g以下又は0.00cc/gであること、本件発明4、14、15における2.5nm以上の細孔容積が0.01cc/gであること、本件発明6、11?13、19?25における活性炭が繊維状活性炭であることは記載されておらず、甲第4号証には、サンプル「CDC1000」にイットリウムを含有させること、細孔容積を変更すること、又は繊維状活性炭とすることは示唆されていない。
したがって、本件発明1?6、11?25は、甲第4号証に記載されている発明ではなく、また甲第4号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。さらに、本件発明7?10、26?29の活性炭は、本件発明1?6、11?25のいずれかの活性炭であるため、本件発明7?10、26?29も、甲第4号証及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.特許異議申立人の主張について

特許異議申立人の甲第3号証及び甲第4号証を証拠方法として主張する理由は、上記3.で検討した理由に係るものと同じであるため、ここでは、甲第1号証及び甲第2号証を証拠方法とする主張について、検討する。

(1)甲第1号証を証拠方法として主張する理由について

ア.概要

特許異議申立人の甲第1号証を証拠方法として主張する理由は、本件訂正前の請求項1、3?5に係る発明は、甲第1号証に記載されているKOH:C重量比=2.5、700℃賦活活性炭(以下「700℃賦活活性炭」という。)又はKOH:C重量比=2.5、800℃賦活活性炭(以下「800℃賦活活性炭」という。)と同一であり、活性炭を気相中のジクロロメタンを吸着することは周知慣用技術であるため、本件訂正前の請求項7、9、10に係る発明は、甲第1号証及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたというものである。

イ.当審の判断

(ア)700℃賦活活性炭について

甲第1号証には、700℃賦活活性炭が、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積Aが0.47cc/gであること、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/gであること、3.0nm以上の細孔容積が0.01cc/gであること、細孔容積B/細孔容積Aが0.32であること、比表面積が1500m^(2)/gであること、及び全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/gである蓋然性が高いことが記載されているが、本件発明1におけるイットリウムの含有量が0.01?5.0質量%であること、本件発明2における細孔容積Bが0.20cc/g以上0.35cc/g以下であること、本件発明3における細孔容積B/細孔容積Aが0.41?0.8であること、本件発明4、14、15における2.5nm以上の細孔容積が0.01cc/gであること、本件発明5、16?18における3.0nm以上の細孔容積が0.00cc/gであること、本件発明6、11?13、19?25における活性炭が繊維状活性炭であることは記載されておらず、甲第1号証には、700℃賦活活性炭にイットリウムを含有させること、細孔容積を変更すること、又は繊維状活性炭とすることは示唆されていない。
したがって、本件発明1?6、11?25は、甲第1号証に記載されている発明ではなく、また甲第1号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。さらに、本件発明7?10、26?29の活性炭は、本件発明1?6、11?25のいずれかの活性炭であるため、本件発明7?10、26?29も、甲第1号証及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)800℃賦活活性炭について

甲第1号証には、800℃賦活活性炭が、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積Aが0.47cc/gであること、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.3cc/gであること、細孔容積B/細孔容積Aが0.64であること、及び比表面積が1800m^(2)/gであることが記載されているが、本件発明1におけるイットリウムの含有量が0.01?5.0質量%であること、本件発明2における細孔容積Bが0.20cc/g以上0.35cc/g以下であること、本件発明3における細孔容積B/細孔容積Aが0.41?0.8であること、本件発明4、14、15における2.5nm以上の細孔容積が0.01cc/gであること、本件発明5、16?18における3.0nm以上の細孔容積が0.00cc/gであること、本件発明6、11?13、19?25における活性炭が繊維状活性炭であることは記載されておらず、甲第1号証には、700℃賦活活性炭にイットリウムを含有させること、細孔容積を変更すること、又は繊維状活性炭とすることは示唆されていない。
したがって、本件発明1?6、11?25は、甲第1号証に記載されている発明ではなく、また甲第1号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。さらに、本件発明7?10、26?29の活性炭は、本件発明1?6、11?25のいずれかの活性炭であるため、本件発明7?10、26?29も、甲第1号証及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)甲第2号証を証拠方法として主張する理由について

ア.概要

特許異議申立人の甲第2号証を証拠方法として主張する理由は、本件訂正前の請求項1、3?5に係る発明は、甲第1号証に記載されているサンプル「ACF-1500」と同一であり、活性炭を気相中のジクロロメタンを吸着することは周知慣用技術であるため、本件訂正前の請求項7、9、10に係る発明は、甲第2号証及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたというものである。

イ.当審の判断
甲第2号証には、サンプル「ACF-1500」が、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積Aが0.26cc/gであること、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.32cc/gであること、細孔容積B/細孔容積Aが1.23であること、比表面積が1346m^(2)/gであること、及び全細孔容積が0.92cc/gであることが記載されているが、本件発明1?6、11?25における細孔容積Aが0.35cc/g以上であることは記載されておらず、甲第1号証には、サンプル「ACF-1500」の細孔容積を変更することは示唆されていない。
したがって、本件発明1?6、11?25は、甲第2号証に記載されている発明ではなく、また甲第2号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。さらに、本件発明7?10、26?29の活性炭は、本件発明1?6、11?25のいずれかの活性炭であるため、本件発明7?10、26?29も、甲第2号証及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲第2号証の「図3.12のグラフには細孔分布がradius(半径)と記載されている。しかしながら、この記載は直径の誤記または直径を意図して記載されている可能性が高い」ため、「図3.12のグラフに関して、細孔径は、直径による細孔径分布であるとして取り扱う」(第15頁第12行?第14行、第16頁第2行?第3行)と主張している。これに対して、令和2年2月14日付け特許権者の意見書において、「甲第2号証において、Table3.1のBET比表面積及び全細孔容積の値から、平均細孔半径を計算すると、Table3.1の平均細孔半径とほぼ同じ値が算出されることから、Figure 3.2の横軸「Pore Radius(nm)」は、その記載のとおり「半径」を意味していると解される。」。」(第6頁第6行?第10行、なお、「Figure 3.2」は「Figure 3.12」の誤記と認められる。)と主張しており、Table3.1のBET比表面積及び全細孔容積の値から、平均細孔半径を計算した結果は特許権者の主張するとおりであり、当該特許権者の主張は妥当なものであるため、図3.12の横軸は細孔半径であると認められ、特許異議申立人の上記主張は採用しない。

5.まとめ

本件発明1?29に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではなく、本件発明1?29に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでもない。

第5.令和2年4月22日付け意見書における特許異議申立人の主張について

令和2年4月22日付け意見書においては、特許異議申立人は、本件発明が、特許法第36条第6項第2号(明確性)及び同法第36条第4項第1号(実施可能要件)を満足していないことを主張しているため、当該主張について検討する。
なお、同意見書においては、特許異議申立人は、新規性及び進歩性については主張していない。

1.明確性について

上記意見書において、特許異議申立人は、「本件特許発明2の記載は、イットリウムの含有を排除する記載にもなっておらず、またイットリウムがどの程度まで低減されたのかも記載されていないため、イットリウムにして最大で5質量%を超えるイットリウム化合物を含む場合(活性炭A)と、洗浄によりイットリウム化合物を除去した場合(活性炭B)の両方を含むこととなり、請求項2に記載の数値範囲は不明確なものとなります。」(第5頁第1行?第6行)、「その場合、本件特許発明2は、単に活性炭が所定の細孔径?細孔容積分布を有することを記載するだけであって、どの状態で使用されるべきものであるかを定義していないため、例えば、当業者は、活性炭Bとして「QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/gより大きい活性炭」を製造することを目的とし、製造工程における中間生成物として、本件特許発明2の細孔径-細孔容積分布を有する活性炭Aを製造し、これを一定時間保持する場合、その行為が侵害に当たることを懸念せざるを得なくなります。他方、特許権者は、最終製品としての細孔径-細孔容積分布が本件特許発明2の記載範囲外となる活性炭に対しても、結果的に排他的な権利を得ることになります。」(同第15行?第23行)及び「つまり、請求項2の記載は、その記載の範囲内となる最終製品にかかる発明と、その記載の範囲外となる最終製品を得るための中間製品にかかる発明という、異なる二つの発明を記載するものであり、一の請求項に記載された事項に基づいて、特許発明2を一の発明として把握し得るものとはいえず、明確なものではありません。」(同第24行?第27行)と主張している。
しかしながら、活性炭は細孔内に物質を吸着することによりその効果を発揮するものであるから、本件発明が解決しようとする課題である「単位比表面積あたりのジクロロメタン吸着性に優れる活性炭」(本件明細書段落0006参照のこと。)は、本件発明2に係る特定の細孔径-細孔容積分布を有することにより得られるものであって、イットリウムの含有の有無により課題を解決するものではない。してみると、本件発明2は、イットリウムとの関係で二つの発明が把握されるものではなく、特定の細孔径-細孔容積分布を有する活性炭として一つの発明が把握されるものであるから、本件発明2に係る活性炭は「一の発明として把握」し得るものである。
また、本件発明3?29に係る請求項3?29の記載についても同様である。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

2.実施可能要件について

上記意見書において、特許異議申立人は、本件発明2?29に関して、同意見書に添付された下記参考資料Bにより、活性炭中に形成される酸化イットリウム(Y_(2)O_(3))は、水に対して不溶性の物質であること(第2頁「9 物理的及び化学的性質」参照。)を示したうえで、どのような溶媒を用いれば、Y_(2)O_(3)を洗浄除去し得るかは何ら記載されておらず、細孔径-細孔容積分布の有意な変化を抑制しながら、Y_(2)O_(3)を洗浄除去する方法は何ら開示されていない旨を主張している。

参考資料B


」(第1頁及び第2頁)

しかし、活性炭中のY_(2)O_(3)がそのまま水中に移動し、活性炭中から除去されることが想定され、水洗により除去されるのは水に可溶な物質のみではない。また、上記参考資料Bの第2頁「9 物理的及び化学的性質」には、Y_(2)O_(3)が酸に可溶なことが示されていることから、酸によりY_(2)O_(3)を除去することは、当業者が理解可能なことである。そして、洗浄の際に細孔径-細孔容積分布が変化しても、洗浄後の細孔径-細孔容積分布が本件発明2の範囲内にあればよいものであって、洗浄の際の溶媒の選択や洗浄方法・条件は、当該点を考慮して、当業者が適宜選択すればよいものであるから、本件発明2?29は実施することができるものである。
したがって、本件発明2?29を当業者が実施することができないとは認められない。

3.まとめ

以上より、上記意見書における特許異議申立人の特許法第36条第6項第2号(明確性)及び同法第36条第4項第1号(実施可能要件)に関する主張は採用しない。

第6.特許異議申立理由について

1.取消理由で採用しなかった特許異議申立理由の概要

取消理由で採用しなかった特許異議申立理由の概要は、以下のとおりである。

理由(明確性)
本件訂正前の本件明細書における請求項5には、「単位比表面積あたりのジクロロメタン平衡吸着量が0.045質量%・g/m^(2)以上である」ことが記載されているが、単位比表面積あたりのジクロロメタン平衡吸着量は、比表面積で割ることにより、どのような値にも変化し得るため、単に下限だけを示す請求項5に係る発明が不明確である。

2.当審の判断

本件明細書の段落0028には、本件発明におけるジクロロメタンの吸着性能の測定方法として、以下の記載がある。
「活性炭サンプルを110℃の乾燥機で12時間乾燥し、デシケーターで冷却後、速やかに0.5gを量りとりU字管に充填する。次に、28℃の恒温槽中でジクロロメタン(試薬特級、安定剤にメタノール0.5%を含む)に乾燥空気を500ml/minの流速で吹き込み、U字管に導入することで吸着操作を行う。活性炭の質量増加が止まった時点を平衡状態とし、平衡吸着量を下記式により算出される。
平衡吸着量(質量%)=質量増加分/活性炭質量×100」
そして、段落0024には、比表面積をBET法により測定することが記載されており、さらに、段落0029には、
「本発明において、活性炭の単位比表面積あたりのジクロロメタン平衡吸着量は、前記したように求めたジクロロメタン吸着性能を、当該活性炭の比表面積(m^(2)/g)で除することにより算出される。」
と記載されており、ジクロロメタン平衡吸着量及び比表面積は、被測定物である活性炭に固有のものであるから、特許異議申立人が主張するように、「単位比表面積あたりのジクロロメタン平衡吸着量は、比表面積で割ることにより、どのような値にも変化し得る」ものではない。
また、所定の値以上の単位比表面積あたりのジクロロメタン吸着能を有する活性炭は、単位比表面積あたりのジクロロメタン吸着性能に優れる活性炭であることは自明であることから、単位比表面積あたりのジクロロメタン平衡吸着量の下限のみを記載することにより、本件発明の活性炭が不明確になるとは認められない。
したがって、特許異議申立人の主張する理由は、採用しない。

3.まとめ

本件発明5、7?10、13、23?29に係る請求項5、7?10、13、23?29の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満足するものである。

第7.むすび

以上のとおり、請求項1?29に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでもなく、さらに請求項1?29に係る特許は、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第2号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第2号及び第4号に該当しない。
よって、請求項1?29に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。また、他に請求項1?29に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、
イットリウムを含む、活性炭。
【請求項2】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.20cc/g以上0.35cc/g以下であり、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下である、活性炭。
【請求項3】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下であり、
前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.41?0.8である、活性炭。
【請求項4】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.5nm以上の細孔径の細孔容積が0.03cc/g以下であり、
比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下である、活性炭。
【請求項5】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.00cc/gであり、
単位比表面積あたりのジクロロメタン平衡吸着量が0.045質量%・g/m^(2)以上である、活性炭。
【請求項6】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、
比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、
前記活性炭が繊維状活性炭である、活性炭。
【請求項7】
気相中のジクロロメタンを吸着させるために用いられる、請求項1?6のいずれか1項に記載の活性炭。
【請求項8】
請求項1?6に記載の活性炭の製造方法であって、イットリウム化合物を含む活性炭前駆体を、CO_(2)濃度が90容積%以上の雰囲気下、温度600?1200℃で賦活する工程を含む、活性炭の製造方法。
【請求項9】
請求項1?7のいずれかに記載の活性炭を含む、ジクロロメタンの吸着剤。
【請求項10】
請求項1?7のいずれかに記載の活性炭を用いる、ジクロロメタンの吸着除去方法。
【請求項11】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下であり、
前記活性炭が繊維状活性炭である、活性炭。
【請求項12】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が0.01cc/g以上0.05cc/g以下であり、
比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下であり、
前記活性炭が繊維状活性炭である、活性炭。
【請求項13】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.35cc/g以上であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上3.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g以上0.35cc/g以下であり、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下であり、
単位比表面積あたりのジクロロメタン平衡吸着量が0.045質量%・g/m^(2)以上であり、
前記活性炭が繊維状活性炭である、活性炭。
【請求項14】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下である、請求項4に記載の活性炭。
【請求項15】
前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.3?0.8である、請求項4または14に記載の活性炭。
【請求項16】
ピッチに由来する、請求項5に記載の活性炭。
【請求項17】
前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.3?0.8である、請求項5または16に記載の活性炭。
【請求項18】
比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下である、請求項5、16、又は17に記載の活性炭。
【請求項19】
前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.3?0.8である、請求項6に記載の活性炭。
【請求項20】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下である、請求項19に記載の活性炭。
【請求項21】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下である、請求項12に記載の活性炭。
【請求項22】
前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.3?0.8である、請求項12または21に記載の活性炭。
【請求項23】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、3.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.01cc/g以下である、請求項13に記載の活性炭。
【請求項24】
前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.3?0.8である、請求項13または23に記載の活性炭。
【請求項25】
比表面積が1300m^(2)/g以上2000m^(2)/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.5cc/g以上0.8cc/g以下である、請求項13、23または24に記載の活性炭。
【請求項26】
気相中のジクロロメタンを吸着させるために用いられる、請求項11?25のいずれか1項に記載の活性炭。
【請求項27】
請求項11?25に記載の活性炭の製造方法であって、イットリウム化合物を含む活性炭前駆体を、CO_(2)濃度が90容積%以上の雰囲気下、温度600?1200℃で賦活する工程を含む、活性炭の製造方法。
【請求項28】
請求項11?25のいずれかに記載の活性炭を含む、ジクロロメタンの吸着剤。
【請求項29】
請求項11?25のいずれかに記載の活性炭を用いる、ジクロロメタンの吸着除去方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-07-14 
出願番号 特願2018-525487(P2018-525487)
審決分類 P 1 651・ 851- YAA (C01B)
P 1 651・ 537- YAA (C01B)
P 1 651・ 857- YAA (C01B)
P 1 651・ 121- YAA (C01B)
P 1 651・ 536- YAA (C01B)
P 1 651・ 113- YAA (C01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 神▲崎▼ 賢一  
特許庁審判長 菊地 則義
特許庁審判官 後藤 政博
川村 裕二
登録日 2018-08-03 
登録番号 特許第6379324号(P6379324)
権利者 大阪ガスケミカル株式会社 ユニチカ株式会社 株式会社アドール
発明の名称 活性炭及びその製造方法  
代理人 田中 順也  
代理人 迫田 恭子  
代理人 迫田 恭子  
代理人 田中 順也  
代理人 水谷 馨也  
代理人 水谷 馨也  
代理人 水谷 馨也  
代理人 田中 順也  
代理人 水谷 馨也  
代理人 迫田 恭子  
代理人 迫田 恭子  
代理人 田中 順也  
代理人 田中 順也  
代理人 水谷 馨也  
代理人 田中 順也  
代理人 水谷 馨也  

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