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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
管理番号 1366071
異議申立番号 異議2018-701014  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-13 
確定日 2020-07-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6342510号発明「高吸水性樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6342510号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第6342510号の請求項1、3-6、9及び10に係る特許を維持する。 特許第6342510号の請求項2、7及び8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6342510号(請求項の数10。以下、「本件特許」という。)は、2014年(平成26年)12月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成25年12月13日、韓国)を国際出願日とする出願に係る特許であって、平成30年5月25日に設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は同年6月13日である。)。
その後、平成30年12月13日に、本件特許の請求項1?10に係る特許に対して、特許異議申立人である株式会社日本触媒(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。その後の経緯は、以下のとおりである。
平成31年 3月 7日付け取消理由通知書
令和 1年 6月 3日 意見書及び訂正請求書の提出
同年 6月20日 訂正請求があった旨の通知書(申立人)
同年 7月25日 意見書(申立人)の提出
同年 9月26日付け取消理由通知書(決定の予告)
同年12月26日 意見書及び訂正請求書の提出
令和 2年 3月 9日 訂正請求があった旨の通知書(申立人)
同年 4月10日 意見書(申立人)の提出

なお、令和1年12月26日の訂正請求により、同年6月3日の訂正請求はみなし取下げとなった(特許法第120条の5第7項)。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和1年12月26日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
請求項1の「高吸水性樹脂および」との記載を、「表面が架橋された高吸水性樹脂および」に訂正する。
(2)訂正事項2
請求項1の「高吸水性樹脂の表面」との記載を、「高吸水性樹脂の架橋された表面」に訂正する。
(3)訂正事項3
請求項1の「付着したものであり、」との記載を、「付着したものであり、前記水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂100重量部に対して、0.5?5重量部の含有量で含まれ、」に訂正する。
(4)訂正事項4
請求項1において、訂正事項3の「0.5?5重量部の含有量で含まれ、」の後に、「前記水酸化アルミニウムは、粒子の70重量%以上が前記高吸水性樹脂粒子の表面に固定され、高吸水性樹脂粒子と物理的に分離された状態で存在せず、」を追加する。
(5)訂正事項5
請求項1において、訂正事項4の「高吸水性樹脂粒子と物理的に分離された状態で存在せず、」の後に、「生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)が25g/g以上であり、」を追加する。
(6)訂正事項6
請求項1において、訂正事項5の「生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)が25g/g以上であり、」の後に、「生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能(AUP)が10g/g以上であり、」を追加する。
(7)訂正事項7
請求項1において、訂正事項6の「生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能(AUP)が10g/g以上であり、」の後に、「生理食塩水に対する自由膨潤ゲル層透過度(GBP、Free Swell Gel Bed Permeability)が10darcy以上であり、」を追加する。
(8)訂正事項8
請求項1において、訂正事項7の「生理食塩水に対する自由膨潤ゲル層透過度(GBP、Free Swell Gel Bed Permeability)が10darcy以上であり、」の後に、「吸水速度(vortex)が58秒以下であり、」を追加する。
(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3?6、9、10も同様に訂正されることになる。)
(9)訂正事項9
請求項2を削除する。
(10)訂正事項10
請求項3の「請求項1または2」との記載を、「請求項1」に訂正する。
(11)訂正事項11
請求項5の「請求項1?4」との記載を、「請求項1、3?4」に訂正する。
(12)訂正事項12
請求項6の「請求項1?5」との記載を、「請求項1、3?5」に訂正する。
(13)訂正事項13
請求項7を削除する。
(14)訂正事項14
請求項8を削除する。
(15)訂正事項15
請求項9の「請求項1?8」との記載を、「請求項1、3?6」に訂正する。
(16)訂正事項16
明細書の段落【0050】の「また、本発明の一実施形態によれば、水酸化アルミニウムを高吸水性樹脂に付着させる方法として、乾式混合のほか、多様な方法で適用可能である。例えば、表面処理液に分散する方法、ベースポリマーと乾式混合した後に表面処理する方法、表面処理液と同時に投入する方法、水酸化アルミニウムスラリーで処理する方法が全て可能である。高吸水性樹脂が少量の水と接触した時に発生する粘性によって固着するものであるため、様々な方法で全て実現が可能である。シリカも」との記載を、「また、本発明の一実施形態によれば、シリカも」に訂正する。

訂正前の請求項2?10は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあるから、訂正事項1?15に係る訂正は、一群の請求項〔1?10〕について請求されたものである。また、明細書に係る訂正事項16は、訂正前の請求項1?10を請求の対象とするから、一群の請求項〔1?10〕の全てについて請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1?4について
訂正事項1及び2は、本件明細書の段落【0046】及び【0047】等に基づき、訂正前の請求項1に記載された「高吸水性樹脂」の表面が架橋されたことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項3は、訂正前の請求項2に基づき、水酸化アルミニウムの含有量を限定するものであり、訂正事項4は、本件明細書の段落【0020】の記載に基づき、水酸化アルミニウムの高吸水性樹脂の表面における状態を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1?4は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項5?8について
訂正事項5は、請求項7?8、本件明細書の段落【0024】、【0028】等に基づき、訂正前の請求項1に記載された「高吸水性樹脂組成物」が「生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)が25g/g以上であ」ることを限定するものであり、訂正事項6は、請求項8、本件明細書の段落【0024】及び【0032】等に基づき、訂正前の請求項1に記載された「高吸水性樹脂組成物」が「生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能(AUP)が10g/g以上であ」ることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項7は、本件明細書の段落【0034】等に基づき、訂正前の請求項1に記載された「高吸水性樹脂組成物」が「生理食塩水に対する自由膨潤ゲル層透過度(GBP、Free Swell Gel Bed Permeability)が10darcy以上であ」ることを限定するものであり、訂正事項8は、本件明細書の段落【0038】等に基づき、訂正前の請求項1に記載された「高吸水性樹脂組成物」が「吸水速度(vortex)が58秒以下であ」ることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項5?8は、本件明細書の上記記載に基づくものであり、新規事項の追加に該当しないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項9、13及び14について
訂正事項9は請求項2の削除であり、訂正事項13は請求項7の削除であり、訂正事項14は請求項8の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項10?12について
訂正事項10?12は、訂正事項9により請求項2を削除するのに伴い、引用する請求項から請求項2を削除して、請求項3、5及び6の記載を明瞭にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項15について
訂正事項15は、訂正事項9、13、14により請求項2、7、8が削除されたことに伴い、引用する請求項から請求項2、7、8を除外するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)訂正事項16について
訂正事項16は、段落【0050】に、水酸化アルミニウムを高吸水性樹脂に付着させる方法として、乾式混合のほか、多様な方法で適用可能であることが記載されていたのを、訂正後は、この記載を削除して、実施例における乾式混合による方法のみを明細書に残すことで、水酸化アルミニウムを高吸水性樹脂に付着させる方法を明瞭にするものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するものであるから、結論のとおり、本件訂正を認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?10に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。また、本件特許の願書に添付した訂正後の明細書を「本件明細書」という。

「【請求項1】
表面が架橋された高吸水性樹脂および粒子状の水酸化アルミニウムを含み、前記水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂の架橋された表面に付着したものであり、
前記水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂100重量部に対して、0.5?5重量部の含有量で含まれ、
前記水酸化アルミニウムは、粒子の70重量%以上が前記高吸水性樹脂粒子の表面に固定され、高吸水性樹脂粒子と物理的に分離された状態で存在せず、
生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)が25g/g以上であり、
生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能(AUP)が10g/g以上であり、
生理食塩水に対する自由膨潤ゲル層透過度(GBP、Free Swell Gel Bed Permeability)が10darcy以上であり、
吸水速度(vortex)が58秒以下であり、
前記水酸化アルミニウムの平均粒子サイズは2μm?20μmである
高吸水性樹脂組成物。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記高吸水性樹脂は、酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を、炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた架橋重合体を含むものである請求項1に記載の高吸水性樹脂組成物。
【請求項4】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタアクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、または(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を含む請求項3に記載の高吸水性樹脂組成物。
【請求項5】
水酸化アルミニウムが高吸水性樹脂の表面に付着したものである高吸水性樹脂組成物100重量部に対して、シリカ0.1重量部以下が追加的に表面に付着したものである請求項1、3?4のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂組成物。
【請求項6】
粒子形態を有する請求項1、3?5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂組成物。
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】
請求項1、3?6のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂組成物を含む個人衛生吸収用品。
【請求項10】
前記高吸水性樹脂組成物、液体透過性上部シート、および防水性背面シートを含む請求項9に記載の個人衛生吸収用品。」

第4 異議申立ての取消理由と当審が通知した取消理由
1 特許異議申立ての取消理由
特許第6342510号の請求項1?10に係る発明は、下記(1)?(5)のとおりの取消理由があるから、本件特許の請求項1?10に係る特許は、特許法第113条第2号又は第4号に該当し、取り消されるべきものである。証拠方法として、下記(6)の甲第1号証?甲第12号証(以下、それぞれ「甲1」等という。)を提出する。

(1)取消理由1(サポート要件)
特許第6342510号の特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
ア 取消理由1-1:本件請求項1の「高吸水性樹脂の表面に付着した水酸化アルミニウムの平均粒子サイズは2μm?20μmである」は、高吸水性樹脂に混合する前の水酸化アルミニウムの平均粒子サイズと一致せず、本件明細書には請求項1に対応する実施例が存在しない。また、本件明細書には高吸水性樹脂の表面に付着した水酸化アルミニウムの平均粒子サイズが2μm?20μmであることに関する記載はない。(申立書23頁7行?24頁9行の(3)ア(a-1)、及び25頁25行?26頁1行の(3)ア(a-2))。
イ 取消理由1-2:実施例で得られる高吸水性樹脂組成物が、本件明細書(段落【0020】)にて定義される、高吸水性樹脂の表面に付着した水酸化アルミニウムの量に該当する量の水酸化アルミニウムを含むかが不明瞭である(申立書26頁2?末行の(3)ア(a-2))。
ウ 取消理由1-3:本件発明1の高吸水性樹脂組成物が水酸化アルミニウムのあらゆる量において本件特許の効果を示すとは考えられない(申立書27頁1行?28頁末行の(3)ア(b))

(2)取消理由2(実施可能要件)(申立書24頁10行?25頁24行の(3)ア(a-2))
特許第6342510号の明細書は、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
本件明細書には、高吸水性樹脂の表面に付着している水酸化アルミニウムの平均粒子サイズの測定方法や、請求項1で規定される平均粒子サイズの水酸化アルミニウムを高吸水性樹脂の表面に付着させる方法が記載されていない。

(3)取消理由3(明確性要件)(申立書29頁1?7行の(3)ア(c))
特許第6342510号の請求項5に記載の「シリカ0.1重量部以下が追加的に表面に付着した」に関して、「0.1重量部以下」には0も含まれ、請求項5に係る発明は、シリカを含むのかどうかが不明であるから、本件訂正前の請求項5は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。

(4)取消理由4(新規性)
ア 取消理由4-1:特許第6342510号の請求項1、2、4?7、9及び10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された甲1に記載された発明(甲8?12は参考文献)であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項1、2、4?7、9及び10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。(申立書29頁8行?35頁13行の(3)イ)
イ 取消理由4-2:特許第6342510号の請求項1?10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された甲2に記載された発明(甲1、甲3、甲8?甲10は参考文献)であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項1?10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。(申立書37頁8行?44頁17行の(3)イ(b))

(5)取消理由5(進歩性)
ア 取消理由5-1:特許第6342510号の請求項1?10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された甲1に記載された発明、甲1、甲2、甲7、甲11及び甲12に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項1?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(申立書35頁14行?37頁7行のイ(a)、49頁6行?50頁6行のウ(d))
イ 取消理由5-2:特許第6342510号の請求項1?10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された甲2に記載された発明、甲2、甲3及び甲7に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項1?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(申立書44頁18?20行のイ(b)、44頁21行?49行5行のウ(c)、49頁6行?50頁6行のウ(d))
ウ 取消理由5-3:特許第6342510号の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された甲3に記載された発明、甲3、甲11及び甲12に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(申立書50頁7?15行のウ(e))

(6)証拠方法
甲1:特開昭59-80459号公報
甲2:特開2004-261797号公報
甲3:特開昭61-257235号公報
甲4:化学大辞典編集委員会編、化学大辞典5、共立出版株式会社、昭和49年、18?19頁
甲5:”Particle Size Distribution Measurement from Millimeters to Nanometers and from Rods to Platelets”, Journal of Dispersion Science and Technology, Vol.23, No.5, pp.631-662,2002
甲6:株式会社日本触媒吸水性樹脂研究部松本智嗣が作成した特許6342510号(本件特許)の請求項1に記載の水酸化アルミニウムの使用量を追試した実験成績証明書
甲7:特表2012-530832号公報
甲8:特開昭63-270741号公報
甲9:特開昭64-56707号公報
甲10:特開平6-107846号公報
甲11:特開2005-97519号公報
甲12:特表2004-517728号公報

2 当審が平成31年3月7日付け取消理由通知書で通知した取消理由
特許第6342510号の請求項1?10に係る発明は、下記(1)?(3)のとおりの取消理由があるから、上記請求項1?10に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(1)取消理由6(明確性要件)
特許第6342510号の特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。
ア 取消理由6-1:請求項1に記載の「付着」の意味が不明確である。
イ 取消理由6-2:請求項1に記載の「平均粒子サイズ」の測定方法や定義が不明である。

(2)取消理由7(サポート要件)
特許第6342510号の特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
ア 取消理由7-1: 請求項1?10に係る発明は、高吸水性樹脂粒子の表面における水酸化アルミニウムの付着量が任意であっても、本件の課題を解決することができることを、当業者が明細書の記載から認識することはできない。
イ 取消理由7-2:請求項1?10に係る発明は、高吸水性樹脂組成物における水酸化アルミニウムの含有量が任意であっても、本件の課題を解決することができることを、当業者が明細書の記載から認識することはできない。

(3)取消理由8(実施可能要件)
特許第6342510号の明細書は、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
請求項1?10に係る発明は、表面架橋などの処理が施されたものであるかは任意であり、発明の詳細な説明には、例えば、乾式混合するだけなど、請求項1?10に係る発明を製造することができるように記載されていない。

3 当審が令和1年9月26日付け取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由
本件訂正前の請求項1、3?10に係る発明は、下記(1)のとおりの取消理由があるから、本件特許の請求項1、3?10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(1)取消理由9(進歩性)
請求項1、3?10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された甲3に記載された発明、甲1、甲3、甲11、甲12、当審が職権で調査した引用文献1?3に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
引用文献1:特開昭60-163956号公報
引用文献2:特表2010-502415号公報
引用文献3:特表2009-534483号公報

第5 当審の判断
以下に述べるように、当審が通知した取消理由6?9、及び、特許異議申立ての取消理由1?5によっては、本件発明1、3?6、9、10に係る特許は取り消すことはできない。

1 取消理由通知書に記載した取消理由について
(1)取消理由9(進歩性)について(令和1年9月26日付け取消理由通知(決定の予告))
ア 甲3に記載された事項及び甲3に記載された発明
甲3には、以下のとおりの記載がある。
(ア)「1.親水性および/または水溶性単量体からの水不溶性、親水性重合体粒子と多価金属の塩および/または水酸化物との混合物に水を付与させてなることを特徴とする改質された水不溶性吸水性樹脂組成物。」(特許請求の範囲第1項)

(イ)「本発明者等は特願昭56-140571号において親水性架橋重合体を分散媒に分散させた後、さらに架橋剤を該親水性架橋重合体の表面に架橋させることを提案した。この方法は吸水材料が水と接触した場合、接触部分だけでゲル化することなく、水の均一な浸透を促進するため、吸水速度を高めるために有効であるが、この方法によつても吸水速度の改良は、まだ十分満足できるものではなく、かつ非経済的な方法であつた。」(第2頁左下欄第15行?同頁右下欄第3行)

(ウ)「〔発明が解決しようとする問題点〕
本発明者らは吸水材料の吸水速度向上のためには従来の技術によつても十分解決され得ない問題点すなわちママコの解消を目的として鋭意研究を重ねた結果、重合体粒子に少量の多価金属の塩および/または水酸化物を混合しさらに少量の水を添加することにより、被吸収液が重合体粒子間の付着なしに各重合体粒子間を容易に通過出来ることを発見した。更に添加する水が多価金属塩の水溶液である場合はその効果が一段と優れることを発見し本発明に到つた。」(第2頁右下欄第9?19行)

(エ)「本発明において重合体粒子と混合される多価金属の塩または水酸化物は、多価金属としてMg,Ca,Ba,Zn,Feなどの二価金属およびAl,Feなどの三価金属など;これら金属のハロゲン化物、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩などの無機の正塩および複塩または修酸塩、醋酸塩などの低級有機酸塩など、および水酸化物であり;具体的な化合物としては塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化第1鉄、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第2鉄、硝酸鉄、硝酸カルシウム、硝酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸第1鉄、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウムカルシウム、修酸マグネシウム、修酸カルシウム、醋酸マグネシウム、醋酸カルシウム、醋酸アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどがあげられる。これら化合物は単独であるいは併用して用いても良い。これらのうち好ましいものは水に難溶性の化合物であり、特に好ましいものはリン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、修酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムである。
重合体粒子と混合される多価金属の塩および/または水酸化物の量は通常0.01?10重量%、好ましくは0.1?5重量%である。0.01重量%未満では効果が認められず、また10重量%より大きくしても特にその効果の向上は認められなく吸水能力の低下が起るため好ましくない。
重合体粒子と多価金属の塩および/または水酸化物との混合は乾式混合により行うが、乾式混合の装置としては、均一に混合し得るものであればとくに限定されず、通常V型混合機、ナウターミキサー、ボールミルなどが使用できる。」(第3頁左上欄16行?左下欄10行)

(オ)「本発明で使用される親水性および/または水溶性単量体からの水不溶性、親水性重合体としては(親水性および/または水溶性単量体)および/または(加水分解により親水性および/または水溶性となる単量体)(A)と多糖類(B)との重合体たとえばデンプン-アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、セルロース-アクリル酸グラフト共重合体およびその塩など;(A)と架橋剤(C)との重合体たとえばジビニル化合物(メチレンビスアクリルアミドなど)で架橋されたポリアクリルアミドおよびその部分加水分解物、架橋ポバール、特開昭52-14689号、特開昭52-27455号記載の架橋されたビニルエステル-不飽和カルボン酸共重合体ケン化物、架橋ポリエチレンオキシドなど;(A)と(B)と(C)とを必須成分として重合させ必要により加水分解を行うことにより得られる重合体たとえば特公昭53-46199号、特公昭53-46200号および特公昭55-4462号記載の架橋されたデンプン-アクリルアミドグラフト共重合体、架橋されたデンプン-アクリル酸グラフト共重合体およびその塩などがあげられる。これらの親水性架橋重合体は二種以上併用してもよい。
重合体粒子の粒度は通常5?5000μ以下、好ましくは20?500μである。
重合体粒子は通常60ml/g以上の吸水力を有するものである。
重合体粒子と多価金属の塩および/または水酸化物との混合物に対する水の量は通常0.05ないし50重量%、好ましくは0.5?10%である。水の量が0.05%未満では重合体粒子の表面の改質が不十分であり、50%を越えると加熱処理が必要となるとともに重合体粒子の表層の密度が高くなり過ぎ、かえつて吸収速度が低下する。」(第3頁右下欄13行?第4頁右上欄第5行)

(カ)「本発明の水不溶性吸水性樹脂組成物は吸水、保水剤として使用できる。この吸水、保水剤としては下記があげられる。
(i)吸水性物品用吸水、保水剤
使い捨ておむつ、生理用ナプキン、創傷包帯、失禁パツト、各種紙および繊維製品用吸水性向上剤、吸汗性付与剤など、例えば特願昭49-149090号、特開昭57-82566号等に記述されているもの。」(第4頁左下欄14行?同頁右下欄1行)

(キ)「実施例1?4
水不溶性、親水性重合体粒子(三洋化成工業社製 サンウエツト 1M-1000U;50μ以下の微粒子約15%含有)100部と水酸化アルミニウム1部をV型混合機で10分間混合した。この混合物40gを空気の吹き込み口およびその排気口を備え、かつ水のスプレーノズルを備えた装置(例えば、ヤマト科学株式会社製噴霧乾燥装置GA-21)のチャンバー(1.8l)内に入れ、風量0.2m^(3)/分で空気を吹き込みながら、混合物に水をそれぞれ0.1%,1%,5%,10%噴霧し、吸水性樹脂組成物〔A〕,〔B〕,〔C〕,〔D〕を得た。
・・・
実施例9
実施例1?8において得られた吸水性樹脂組成物の0.9%食塩水の吸収量および吸収速度を測定し、その結果を表-1に示した。なお吸収量の測定法は200メツシユのナイロン製不織布を袋状にし、これに樹脂組成物1gを封入して、30分間0.9%食塩水に浸漬した後、取り出して15分間水切りを行つた後増加重量を測定した。また吸収速度については小穴のあいた支持板の上に200メツシユのナイロン製不織布を置く。この上に0.1gの樹脂組成物を置き、下面より液体と接触させ2分間で樹脂組成物が0.9%食塩水を吸収する量を測定し、樹脂組成物1g当りの吸収量に換算した。」(第5頁左上欄第2行?右上欄10行)

(ク)「

」(第5頁左下欄)

(ケ)「〔発明の効果〕
本発明の吸水性樹脂組成物およびこれを含有する吸水、保水剤は水の均一な浸透性を促進し著しく高い吸水速度を有する吸水性樹脂組成物である。本発明による製品の特徴は、前述の吸水速度の向上のほか、湿度に対する安定性、すなわち本発明の吸水性樹脂組成物を高湿度下に放置しても、樹脂の粒子同志がブロッキング現象を起しにくいという特長、経日安定性、すなわち長期にわたる使用中の保水性、保形性維持の点でも優れている。更に粉体取扱い時の発塵発生が少ないという特長を有する。」(第5頁左下欄第2行?右下欄8行)

甲3には、実施例1?4として、水不溶性、親水性重合体粒子(三洋化成工業社製 サンウェット 1M-1000U;50μ以下の微粒子約15%含有)100重量部と水酸化アルミニウム1重量部を10分間混合した後、当該混合物を、水のスプレーノズルを備えた装置のチャンバー内に入れ、空気を吹き込みながら上記混合物に所定量の水を噴霧して得られた吸水性樹脂組成物が記載されている(上記(キ))。そして、実施例9として、上記組成物の0.9%食塩水の吸収量及び吸収速度を上記(キ)に記載のとおりに測定し、表-1の結果を得たことが記載されている。
そうすると、甲3には、実施例1?4に着目して、以下の発明が記載されているといえる。
.
「水不溶性、親水性重合体粒子100重量部と水酸化アルミニウム1重量部の混合物に0.1重量%の水を噴霧して得られた吸水性樹脂組成物であって、0.9%食塩水の吸収量が61g/gであり、吸収速度が30ml/gである吸水性樹脂組成物」(以下、「甲3発明」という。)

イ 甲1に記載された事項
甲1には、以下のとおりの記載がある。
(ア)「特許請求の範囲
(1)吸水性樹脂乾燥粉末に、含水二酸化ケイ素、含水酸化アルミニウム、含水酸化チタン、之等の無水物並びに之等を主成分として含有する無機物質から選ばれた少なくとも1種の粉末を混合したことを特徴とする吸水性樹脂粉末組成物。」(特許請求の範囲第1項)

(イ)「本発明組成物においては吸水性樹脂として従来公知の各種の吸水性樹脂をいずれも使用できるが、自重の約10倍以上の脱イオン水を吸収する能力を有する樹脂が好ましい。その代表例としては、澱粉-アクリルニトリルグラフト重合体の加水分解物、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸塩架橋物、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂等を例示できる。之等のうちでポリアクリル酸塩架橋物は好ましく、特に本発明者らが先に開発し、特許出願した前記方法により得られるポリアクリル酸塩架橋物は最適である。」(第2頁左下欄8行?同頁右下欄1行)

(ウ)「本発明組成物を構成する他方の必須成分とする無機質粉末は、含水二酸化ケイ素、含水酸化アルミニウム、含水酸化チタン、之等の無水物並びに之等を主成分として含有するものから選択される。上記各無機化合物は、その結晶系に制限はなく、例えば酸化アルミニウムではα型、β型、γ型のいずれも同様に有効に利用できる。また酸化チタンはTiO、Ti_(2)O_(3)、TiO_(2)のいずれであつてもよい。更に之等の含水物の含水量も特に限定はなく、例えば酸化アルミニウムではAl_(2)O_(3)・H_(2)O、Al_(2)O_(3)・2H_(2)O、Al_(2)O_(3)・3H_(2)Oが、酸化チタンではTiO_(2)・H_(2)O、TiO_(2)・2H_(2)O等が同様に用い得る。」(第4頁左下欄12行?同頁右下欄第5行)

(エ)「また上記無機質粉末は、通常入手される粉末形態のまま使用できるが、好ましくはその粉末粒子径は約10μm以下であるのがよい。」(第5頁左上欄7?10行)

(オ)「かくして得られる本発明組成物は、吸水性樹脂本来の吸水能は全く変化させることなく、その吸湿性(ブロツキング性)を顕著に改善されており、例えば生理用品、紙おむつ、使い捨てぞうきん等の衛生用品や農林園芸関係の保水剤、諸工業用脱水剤、汚泥凝固剤、増粘剤、建材の結露防止剤、更に各種薬剤のリリースコントロール剤等の各種用途に非常に有効に利用できる。」(第5頁左上欄第16行?同頁右上欄5行)

ウ 甲11に記載された事項
甲11には、以下のとおりの記載がある。
(ア)「【請求項1】
アクリル酸および/またはその塩を含む単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子を含む吸水性樹脂組成物であって、
該組成物の質量平均粒子径が100?600μmであり、水溶性多価金属塩粒子および表面架橋された吸水性樹脂粒子を含む、吸水性樹脂組成物。
・・・
【請求項4】
前記吸水性樹脂粒子が多価アルコールで表面架橋されたものである、請求項1から3までのいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。」

(イ)「【0020】
・・・
〔吸水性樹脂粒子〕
本発明で用いる吸水性樹脂粒子は、親水性単量体を重合して得ることができる水不溶性水膨潤性ヒドロゲル形成性重合体(以下、吸水性樹脂とも言う)の粒子であって、少なくとも生理食塩水の吸収倍率が10倍以上である、球形或いは不定形の粒子形状のものである。なお、本発明においては、吸水性樹脂粒子を単に吸水性樹脂と称することもある。
【0021】
水不溶性水膨潤性ヒドロゲル形成性重合体の具体例としては、部分中和架橋ポリアクリル酸重合体(米国特許第4625001号、米国特許第4654039号、米国特許第5250640号、米国特許第5275773号、欧州特許第456136号等)、架橋され部分的に中和された澱粉-アクリル酸グラフトポリマー(米国特許第4076663号)、イソブチレン-マレイン酸共重合体(米国特許第4389513号)、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体のケン化物(米国特許第4124748号)、アクリルアミド(共)重合体の加水分解物(米国特許第3959569号)、アクリロニトリル重合体の加水分解物(米国特許第3935099号)等が挙げられるが、本発明で用いる吸水性樹脂はアクリル酸および/またはその塩を含む単量体を重合して得られるポリアクリル酸(塩)系架橋重合体からなる吸水性樹脂であることが好ましい。本発明においてポリアクリル酸(塩)系架橋重合体とは、アクリル酸および/またはその塩を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む単量体を重合して得られる架橋重合体である。また、重合体中の酸基は、その50?90モル%が中和されていることが好ましく、60?80モル%が中和されていることがより好ましく、塩としてはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などを例示する事ができる。塩を形成させるための吸水性樹脂の中和は重合前に単量体の状態で行っても良いし、あるいは重合途中や重合後に重合体の状態で行っても良いし、それらを併用してもよい。」

(ウ)「【0026】
本発明で用いる吸水性樹脂は、その表面近傍が表面架橋剤でさらに架橋処理されたものが好ましい。
表面架橋処理に用いることの出来る表面架橋剤としては、吸水性樹脂の有する官能基、特に、カルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上有する有機表面架橋剤や多価金属化合物が挙げられる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2-ブテン-1,4-ジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン-オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;・・・等が挙げられる。これら表面架橋剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも多価アルコールは、安全性が高く、吸水性樹脂粒子表面の親水性を向上させることができる点で好ましい。また、多価アルコールを使用することで、吸水性樹脂粒子表面の多価金属粒子との馴染みが良くなり、多価アルコール残基と多価金属表面との相互作用により吸水性樹脂粒子表面に多価金属粒子をより均一に存在させることが可能となる。」

(エ)「【0040】
本発明の吸水性樹脂組成物は、無加圧下吸収倍率(CRC)が、好ましくは20(g/g)以上であり、より好ましくは22(g/g)以上、さらに好ましくは24(g/g)以上、さらに好ましくは25(g/g)以上、特に好ましくは27(g/g)以上である。無加圧下吸収倍率(CRC)が20(g/g)よりも低いと、おむつ等の衛生材料に使用する場合の吸収効率が悪くなる。
本発明の吸水性樹脂組成物は、加圧下吸収倍率(AAP)が、0.7psiの加圧下において、好ましくは16(g/g)以上であり、より好ましくは18(g/g)以上、さらに好ましくは20(g/g)以上、さらに好ましくは22(g/g)以上、特に好ましくは24(g/g)以上である。加圧下吸収倍率(AAP)が16(g/g)よりも低いと、おむつ等の衛生材料に使用する場合の吸収効率が悪くなる。
【0041】
・・・
本発明の吸水性樹脂組成物は、加圧下吸収倍率(AAP)が、水溶性多価金属塩粒子を添加する前の吸水性樹脂粒子の加圧下吸収倍率(AAP)(同一加圧下)と比較して低下が少ない事が望ましく、吸水性樹脂粒子の加圧下吸収倍率(AAP)と比較して、0.85倍以上を維持しているものが好ましく、より好ましくは0.90倍以上、さらに好ましくは0.95倍以上である。」

(オ)「【0063】
<無加圧下吸収倍率(CRC)>
吸水性樹脂または吸水性樹脂組成物0.20gを0.0001gのレベルまで正確に計り取り、不織布製(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP-22)の袋(85mm×60mmまたは60mm×60mm)に均一に入れてシールした。
1Lの容器に0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)1Lを投入し、1容器あたりに1つの評価サンプルを1時間浸漬した。なお、本発明はイオン移動の効果に着目する発明であるため、複数のサンプルを1つの容器に浸漬してはならない。
【0064】
1時間後、袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H-122)を用いて250Gの遠心力で3分間水切りを行った後、袋の質量W1(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂または吸水性樹脂組成物を用いずに行い、その時の質量W0(g)を測定した。そして、これらW1、W0から、下記の式に従って無加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
CRC(g/g)=[(W1(g)-W0(g))/吸水性樹脂または吸水性樹脂組成物の質量(g)]-1
<加圧下吸収倍率(AAP)>
AAPは下記のA法またはB法を用いて測定した。AAPはこれらのいずれの方法を用いて測定してもよく、その測定値は測定方法にほとんど影響されない。
【0065】
下記の参考例、実施例、比較例におけるAAPとして、表1に記載のAAPについてはA法を用いて測定したAAPであり、その他のAAPについてはB法を用いて測定したAAPである。
(A法)
図1の装置を用い、加圧下の吸収倍率(AAP)を測定した。
4.83kPa(0.7psi)の圧力になるように調整した荷重21を準備した。底に400メッシュ(目開き38μm)の金網18を貼着した直径60mmのプラスチック円筒19の金網上に吸水性樹脂組成物または吸水性樹脂約0.90g(Wp2)を散布し、その上に上記荷重21(0.7psi時)を載せた吸液器具を図1のガラスフィルター13上の濾紙17上に載置して、60分後に吸水性樹脂組成物または吸水性樹脂に吸収された生理食塩水(0.90質量%NaCl水溶液)の値(Wc)を測定した。以下の式を用いて加圧下の吸収倍率を求めた。
【0066】
AAP(g/g)=Wc/Wp2」

(カ)「〔参考例1〕
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、71.3モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5438g(単量体濃度39質量%)にポリエチレングリコールジアクリレート11.7g(0.10モル%)を溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、30分間脱気した。続いて、反応液に10質量%過硫酸ナトリウム水溶液29.34gおよび0.1質量%L-アスコルビン酸水溶液24.45gを攪拌しながら添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、20?95℃で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥した。このようにして、不定形で、容易に粉砕される粒子状や粉末状や粒子状乾燥物凝集体の吸水性樹脂(1)を得た。
【0081】
得られた吸水性樹脂(1)をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmJIS標準篩で分級した。次に、前記の操作で850μmを通過した粒子を目開き150μmのJIS標準篩で分級することで、目開き150μmのJIS標準篩を通過した吸水性樹脂(1aF)を除去した。このようにして粒子状の吸水性樹脂(1a)を得た。
得られた吸水性樹脂(1aF)を米国特許第6228930号に記載されたGranulation Example 1の方法に準じて造粒した。この造粒物を前記と同様の手順で粉砕、分級した。このようにして造粒された吸水性樹脂(1aA)を得た。
このようにして得られた吸水性樹脂(1a)90質量部と吸水性樹脂(1aA)10質量部を均一に混合し、吸水性樹脂(A)とした。
【0082】
また、同様に得られた吸水性樹脂(1)をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmJIS標準篩で分級した。次に、前記の操作で710μmを通過した粒子を目開き150μmのJIS標準篩で分級することで、目開き150μmのJIS標準篩を通過した吸水性樹脂粒子(1bF)を除去した。このようにして粒子状の吸水性樹脂(1b)を得た。
得られた吸水性樹脂(1bF)を米国特許第6228930号に記載されたGranulation Example 1の方法に準じて造粒した。この造粒物を前記と同様の手順で粉砕、分級した。このようにして造粒された吸水性樹脂(1bA)を得た。
【0083】
このようにして得られた吸水性樹脂(1b)85質量部と吸水性樹脂(1bA)15質量部を均一に混合し、吸水性樹脂(B)とした。
また、同様に得られた吸水性樹脂(1)をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmJIS標準篩で分級した。次に、前記の操作で600μmを通過した粒子を目開き150μmのJIS標準篩で分級することで、目開き150μmのJIS標準篩を通過した吸水性樹脂粒子(1cF)を除去した。このようにして粒子状の吸水性樹脂(1c)を得た。
得られた吸水性樹脂(1cF)を米国特許第6228930号に記載されたGranulation Example 1の方法に準じて造粒した。この造粒物を前記と同様の手順で粉砕、分級した。このようにして造粒された吸水性樹脂(1cA)を得た。
【0084】
このようにして得られた吸水性樹脂(1c)80質量部と吸水性樹脂(1cA)20質量部を均一に混合し、吸水性樹脂(C)とした。
〔参考例2〕
前記参考例1で得られた吸水性樹脂(C)100gに、1,4-ブタンジオール0.5g、プロピレングリコール1.0g、純水3.0gの混合液からなる表面処理剤を混合した後、混合物を210℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋処理された吸水性樹脂(C1)を得た。
【0085】
吸水性樹脂(C1)の諸物性を測定した結果を表1に示した。
〔参考例3〕
前記参考例1で得られた吸水性樹脂(A)100gに、2-エチルオキセタン0.1g、純水3.0g、24質量%の水酸化ナトリウム水溶液0.3gの混合液からなる表面処理剤を混合した後、混合物を200℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋処理された吸水性樹脂(A1)を得た。
吸水性樹脂(A1)の諸物性を測定した結果を表1に示した。
【0086】
〔参考例4〕
前記参考例1で得られた吸水性樹脂(B)100gに、2-オキサゾリジノン0.5g、プロピレングリコール1.0g、純水4.0gの混合液からなる表面処理剤を混合した後、混合物を190℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋処理された吸水性樹脂(B1)を得た。
吸水性樹脂(B1)の諸物性を測定した結果を表1に示した。
〔参考例5〕
前記参考例1で得られた吸水性樹脂(C)100gに、エチレンカーボネート0.5g、プロピレングリコール1.0g、純水4.0gの混合液からなる表面処理剤を混合した後、混合物を195℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋処理された吸水性樹脂(C2)を得た。
【0087】
吸水性樹脂(C2)の諸物性を測定した結果を表1に示した。
〔参考例6〕
前記参考例1で得られた吸水性樹脂(A)100gに、エチレンカーボネート0.5g、純水6.0g、硫酸アルミニウム14?18水塩(関東化学株式会社より入手)0.5gの混合液からなる表面処理剤を混合した後、混合物を195℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋処理された吸水性樹脂(A2)を得た。
吸水性樹脂(A2)の諸物性を測定した結果を表1に示した。
【0088】
〔参考例7〕
硫酸アルミニウム14?18水塩(関東化学株式会社より入手)を目開き600μmおよび目開き300μmおよび目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、実質150μm以下の粒子径を有する硫酸アルミニウム14?18水塩(1)、実質300?150μmの粒子径を有する硫酸アルミニウム14?18水塩(2)、実質600?300μmの粒子径を有する硫酸アルミニウム14?18水塩(3)を得た。硫酸アルミニウム14?18水塩(1)の質量平均粒子径は95μm、硫酸アルミニウム14?18水塩(2)の質量平均粒子径は203μm、硫酸アルミニウム14?18水塩(3)の質量平均粒子径は401μmであった。
【0089】
〔実施例1〕
参考例2で得られた吸水性樹脂(C1)100質量部に、硫酸アルミニウム水和物(13?14水和物、住友化学工業株式会社より入手、質量平均粒子径165μm、嵩比重0.86g/cm^(3)、0℃純水への溶解度46.4質量%)0.5質量部を均一に混合し、吸水性樹脂組成物(1)を得た。
得られた吸水性樹脂組成物(1)の諸物性を測定した結果を表1に示した。また、さらにCSFを測定した結果を表4に示した。
〔実施例2〕
参考例2で得られた吸水性樹脂(C1)100質量部に、硫酸アルミニウム14?18水塩(関東化学株式会社より入手、質量平均粒子径182μm、嵩比重0.60g/cm^(3))1.0質量部を均一に混合し、吸水性樹脂組成物(2)を得た。
【0090】
得られた吸水性樹脂組成物(2)の諸物性を測定した結果を表1に示した。また、さらに生理食塩水流れ誘導性(SFC)保持率を測定した結果を表2に、CSFを測定した結果を表4に示した。
〔実施例3〕
参考例3で得られた吸水性樹脂(A1)100質量部に、硫酸アルミニウム水和物(13?14水和物、住友化学工業株式会社より入手、質量平均粒子径165μm、嵩比重0.86g/cm^(3))1.0質量部を均一に混合し、吸水性樹脂組成物(3)を得た。
得られた吸水性樹脂組成物(3)の諸物性を測定した結果を表1に示した。
【0091】
〔実施例4〕
参考例4で得られた吸水性樹脂(B1)100質量部に、硫酸アルミニウム水和物(13?14水和物、住友化学工業株式会社より入手、質量平均粒子径165μm、嵩比重0.86g/cm^(3))0.1質量部を均一に混合し、吸水性樹脂組成物(4)を得た。
得られた吸水性樹脂組成物(4)の諸物性を測定した結果を表1に示した。
〔実施例5〕
参考例5で得られた吸水性樹脂(C2)100質量部に、硫酸アルミニウム水和物(13?14水和物、住友化学工業株式会社より入手、質量平均粒子径165μm、嵩比重0.86g/cm^(3))0.5質量部を均一に混合し、吸水性樹脂組成物(5)を得た。
【0092】
得られた吸水性樹脂組成物(5)の諸物性を測定した結果を表1に示した。
〔実施例6〕
参考例2で得られた吸水性樹脂(C1)100質量部に、参考例7で得られた硫酸アルミニウム14?18水塩(1)0.5質量部を均一に混合し、吸水性樹脂組成物(6)を得た。
得られた吸水性樹脂組成物(6)の諸物性を測定した結果を表1に示した。
〔実施例7〕
参考例2で得られた吸水性樹脂(C1)100質量部に、参考例7で得られた硫酸アルミニウム14?18水塩(2)0.5質量部を均一に混合し、吸水性樹脂組成物(7)を得た。
【0093】
得られた吸水性樹脂組成物(7)の諸物性を測定した結果を表1に示した。
〔実施例8〕
参考例2で得られた吸水性樹脂(C1)100質量部に、参考例7で得られた硫酸アルミニウム14?18水塩(3)0.5質量部を均一に混合し、吸水性樹脂組成物(8)を得た。
得られた吸水性樹脂組成物(8)の諸物性を測定した結果を表1に示した。
・・・
【0099】
【表1】



エ 甲12に記載された事項
甲12には、以下のとおりの記載がある。
(ア)「【請求項1】
表面が水不溶性金属燐酸塩と会合している水吸収性ポリマーの粒子を含む水吸収剤。
【請求項2】
水不溶性金属燐酸塩が式M_(4)P_(2)O_(7)、M_(2)HPO_(4)またはM_(3)PO_(4)〔式中、Mはカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、鉄、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、錫、セリウム、スカンジウム、イットリウムもしくはランタンまたはその混合物から選択された金属の当量を表わす〕で示される燐酸塩である、請求項1記載の水吸収剤。
・・・
【請求項5】
水吸収性ポリマーが表面後架橋されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の水吸収剤。」

(イ)「【0023】
水吸収性ポリマーは、有利に
- モノエチレン系不飽和酸およびその塩から選択された少なくとも1つのモノマーA49.9?99.9質量%、
- モノマーAとは異なる、非架橋作用を有する少なくとも1つのモノエチレン系不飽和モノマーB0?50質量%および
- 架橋作用を有する少なくとも1つのモノマーC0.001?20質量%、特に0.01?14質量%から形成されている。
【0024】
モノマーAには、3?25個、特に3?6個のC原子を有するモノエチレン系不飽和モノカルボン酸およびモノエチレン系不飽和ジカルボン酸が挙げられ、これらの酸は、塩または無水物の形で使用されてもよい。このための例は、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、α-クロルアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸およびフマル酸である。」

(ウ)「【0043】
モノマーAが中和されていない形で使用されている場合には、得られた酸性ポリマーは、酸基を有するモノマー単位に対して一般に少なくとも25モル%、特に少なくとも50モル%、有利に50?100モル%の望ましい中和度にもたらすことができる。また、中和度は、重合の前または間に、例えば混練機中で調節することができる。
・・・
【0046】
特に、得られた粒子状ポリマーは、引続き表面後架橋される。このために、ポリマーの酸性の官能基と架橋下に反応することができる化合物は、有利に含水溶液の形でポリマー粒子の表面にもたらされる。・・・
【0047】
適当な後架橋剤は、例えば次の通りである:
- ジグリシジル化合物またはポリグリシジル化合物、例えばホスホン酸ジグリシジルエーテルまたはエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールのビスクロルヒドリンエーテル、
・・・
- ポリオール、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、メチルトリグリコール、200?10000の平均分子量Mwを有するポリエチレングリコール、ジグリセリンおよびポリグリセリン、ペンタエリトリット、ソルビット、これらのポリオールのオキシエチラートならびにこれらとカルボン酸または炭酸とのエステル、例えばエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート、
・・・」

(エ)「【0058】
試験法の記載
1.遠心保持能(CRC:Centrifuge Retention Capacity)
この場合には、ヒドロゲルを形成するポリマーの自由膨潤可能性をティーバッグ中で測定する。CRCの測定のために、乾燥されたポリマー0.2000±0.0050g(粒子画分106?850μm)を60×85mmの大きさのティーバッグの袋の中に計量供給し、引続きこの袋を溶接する。このティーバッグの袋を30分間、0.9質量%の食塩溶液中に入れる(食塩溶液少なくとも0.83l/ポリマー粉末1g)。引続き、このティーバッグの袋を250Gで3分間、遠心分離し、その後に吸収された液体量を測定するために計量する。
【0059】
2.圧力下での吸収(AUL Absorbency Under Load 荷重下での吸収性)(0.7psi)
AUL 0.7psiの測定のための測定セルは、下側に36μmの目開きを有する接着された特殊鋼の篩床を備えた、60mmの内径および50mmの高さを有するプレキシガラス円筒体である。更に、この測定セルには、59mmの直径を有するプラスチック板およびこのプラスチック板と一緒に測定セル中に配列することができる重りが属する。プラスチック板の質量および重りは、一緒になって1345gである。AUL0.7psiの測定を実施するために、空のプレキシガラス円筒体の質量およびプラスチック板を測定し、W_(0)として記録する。次に、ヒドロゲルを形成するポリマー0.900±0.005g(粒径分布106?850μm)をプレキシガラス円筒体中に計量供給し、できるだけ均一に特殊鋼の篩床上に分布させる。引続き、プラスチック板を注意深くプレキシガラス円筒体中に入れ、全体のユニットを計量し;重さをW_(a)として記録する。次に、重りをプレキシガラス円筒体中のプラスチック板上に置く。200mmの直径および30mmの高さを有するペトリ皿の中心に、120mmの直径および多孔度0を有するセラミック濾板を置き、液体表面が濾板表面で終わる程度に0.9質量%の塩化ナトリウム溶液を注入し、この場合濾板の表面は覆われることはない。引続き、90mmの直径および20μm未満の孔径を有する円形の濾紙(Schleicher&SchuellのS&S589黒色テープ)をセラミック板上に置く。ヒドロゲルを形成するポリマーを含有するプレキシガラス円筒体をプラスチック板および重りと一緒に濾紙上に置き、そのまま60分間放置する。この時間の後、完全なユニットを濾紙のペトリ皿から取り出し、引続き重りをプレキシガラス円筒体から除去する。膨潤されたヒドロゲルを含有するプレキシガラス円筒体をプラスチック板と一緒に計量し、重さをW_(b)として記録する。
【0060】
圧力下での吸収力(AUL)を次のように計算する:
AUL0.7psi[g/g]=[W_(b)-W_(a)]/[W_(a)-W_(b)]」

(オ)「【0081】
例5
次の例は、表面後架橋の場合の水不溶性金属燐酸塩の施与を説明するものである。結果は、第5表中に記載されている(SFCを5回の測定の平均値として計算した)。
【0082】
製造例 ヒドロゲル
40 lのブラスチック製バケット中で、純粋なアクリル酸6.9kgを、希釈された苛性ソーダ液中への攪拌混入によって冷却下で熱交換体を用いて75モル%に中和し、水で30kgの反応質量に希釈した。この溶液に架橋剤としてポリエチレングリコール-400-ジアクリレート50gを攪拌しながら添加し、閉鎖されたバケットを窒素の導通によって不活性化した。次に、重合を過酸化水素400mgおよびアスコルビン酸200mgおよび過硫酸ナトリウム10gの添加によって開始した。反応の終結後、ゲルを機械的に微粉砕した。次に、微粉砕されたゲルを実験室用乾燥箱中で150℃で3時間乾燥させ、実験室用ロールミルを用いて粉砕し、最後に200?850μmで篩別した。これは、次の例で使用される基礎ポリマーであった。
【0083】
例5.1(比較)
基礎ポリマー1200gにレーディゲ(Loedige)鋤刃型実験室用混合装置中で二物質流ノズルを用いて次の組成:使用されたポリマーに対してそれぞれイソプロパノール1.5質量%、水3.5質量%、2-オキサゾリジノン0.12質量%を有する後架橋剤溶液を噴霧した。引続き、湿った生成物を175℃で60分間、空気循環乾燥箱中で温度処理した。引続き、乾燥された生成物を、団塊の除去のために850μmで篩別した。
【0084】
例5.2
基礎ポリマー1200gにレーディゲ(Loedige)鋤刃型実験室用混合装置中で次の組成:使用されたポリマーに対してそれぞれイソプロパノール1.5質量%、水3.5質量%、2-オキサゾリジノン0.12質量%、燐酸三カルシウム0.2質量%(型C13-09,SF)を有する架橋剤溶液を噴霧した。引続き、湿ったポリマーを175℃で60分間、空気循環乾燥箱中で温度処理した。引続き、乾燥された生成物を、団塊の除去のために850μmで篩別した。
【0085】
例5.3
基礎ポリマー1200gにレーディゲ(Loedige)鋤刃型実験室用混合装置中で次の組成:使用されたポリマーに対してそれぞれイソプロパノール1.5質量%、水3.5質量%、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.10質量%、燐酸三カルシウム0.2質量%(型C13-09,SF)を有する架橋剤溶液を噴霧した。引続き、湿ったポリマーを150℃で60分間、空気循環乾燥箱中で温度処理した。引続き、乾燥された生成物を、団塊の除去のために850μmで篩別した。
【0086】
例5.4
基礎ポリマー1200gにウェアリング(Waring)鋤刃型実験室用混合装置中で粉末状燐酸三カルシウム0.30質量%(型C13-09,SF)を最初に30分間混合し;さらに、次の組成:使用されたポリマーに対してそれぞれイソプロパノール1.5質量%、水3.5質量%、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.10質量%を有する架橋剤溶液を噴霧した。引続き、湿ったポリマーを150℃で60分間、空気循環乾燥箱中で温度処理した。引続き、乾燥された生成物を、団塊の除去のために850μmで篩別した。
【0087】
【表5】



オ 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下のとおりの記載がある。
(ア)「特許請求の範囲
1 カルボキシレートを有する単量体単位を重合体の構成成分として含有する吸水性樹脂および不活性な無機質粉末の存在下に、架橋剤および水を吸収せしめ、ついで撹拌下に加熱して架橋反応と水の留去とを行わせることを特徴とする改質された吸水性樹脂の製法。
2 前記吸水性樹脂が(メタ)アクリル酸重合体の架橋物、多糖類-(メタ)アクリル酸グラフト共重合体の架橋物、(メタ)アクリル酸-アクリルアミド-スルホン化アクリルアミド3元共重合体の架橋物およびこれらのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種である特許請求の範囲第1項記載の製法。
3 前記の不活性な無機質粉末が微粒子上シリカ、二酸化チタン粉末およびアルミナ粉末よりなる群から選ばれた少なくとも1種である特許請求の範囲第1項記載の製法。」

(イ)「本発明に用いる不活性な無機質粉末としては、たとえば含水二酸化ケイ素粉末、含水酸化アルミニウム粉末、含水酸化チタン粉末、これらの無水物またはこれらを主成分として含有するものの粉末などがあげられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。前記無機質粉末の結晶系には制限はなく、たとえば酸化アルミニウム粉末ではα型、β型、γ型のいずれも同様に有効に利用でき、酸化チタン粉末ではTiO、Ti_(2)O_(3)、TiO_(2)のいずれであってもよい。さらにこれらの含水物粉末の含水量にもとくに限定はなく、たとえば水酸化アルミニウム粉末ではAl_(2)O_(3)・H_(2)O粉末、Al_(2)O_(3)・2H_(2)O粉末、Al_(2)O_(3)・3H_(2)O粉末が、酸化チタン粉末ではTiO_(2)・H_(2)O粉末、TiO_(2)・2H_(2)O粉末などが同様に用いられる。また前記含水もしくは無水の無機質を主成分として含有する粉末としては、たとえばコロイダルシリカ、ホワイトカーボン、超微粒子状シリカなどの含水二酸化ケイ素および(または)無水二酸化ケイ素(以下、微粒子状シリカという)を主成分とするもの、板状水和アルミナ、繊維状水和アルミナのように含水および無水の酸化アルミニウムを主成分とするもの、ルチル型またはアナタース型の含水および無水酸化チタンを主成分として含有するものなどを例示することができる。これら不活性な無機質粉末のうちでは、微粒子上シリカ、二酸化チタン粉末およびアルミナ粉末などが好ましい。該無機質粉末の粒径としては、平均粒径が0.001?10μmのものが好ましく、0.005?1μmのものがさらに好ましく、吸水膨潤状態における吸水性樹脂粒子の相互間の分散性を向上させ、流動性を改善させるような特性を有するものが好ましい。」(第3頁左上欄19行?同頁左下欄第12行)

カ 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下のとおりの記載がある。
(ア)「【請求項1】
水溶性エチレン性不飽和モノマーを重合して得られ内部に架橋構造を有する吸水性樹脂粒子を必須とする吸水剤であって、加圧下平均隙間半径指数が140以上である吸水剤。
ただし、加圧下平均隙間半径指数は、荷重2.07kPaでの生理食塩水中での累積隙間水量割合の50%に相当する膨潤ゲル隙間半径の値(d50)である。
・・・
【請求項4】
前記吸水剤が粒子形状であって、4.83kPaにおける加圧下吸収倍率(AAP)が、10g/g以上である、請求項1?3の何れかに記載の吸水剤。
【請求項5】
前記吸水性樹脂粒子はその表面が架橋されている、請求項1から4の何れかに記載の吸水剤。
【請求項6】
さらに加圧下平均隙間半径指数向上剤を含む、請求項1,2,4,5の何れかに記載の吸水剤。」

(イ)「【0046】
(モノマー)
水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有水溶性モノマー、スルホン酸基含有水溶性モノマー、アミド基含有水溶性モノマーなどが挙げられ、好ましくは、カルボキシル基含有水溶性モノマー、特に好ましくはアクリル酸および/またはその塩である。
【0047】
本発明で用いることができる吸水性樹脂粒子は、アクリル酸および/またはその塩を含む単量体を重合して得られるポリアクリル酸(塩)系架橋重合体からなる吸水性樹脂粒子であることが好ましい。
【0048】
本発明においてポリアクリル酸(塩)系架橋重合体とは、アクリル酸および/またはその塩を好ましくは50?100モル%、より好ましくは70?100モル%、さらに好ましくは90?100モル%含む単量体を重合して得られる、内部に架橋構造を有する重合体である。また、重合体中の酸基は、その25?100モル%が中和されていることが好ましく、50?99モル%が中和されていることがより好ましく、55?80モル%が中和されていることがさらに好ましく、塩としてはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などの1種または2種以上を例示する事ができる。塩を形成させるための酸基の中和は、重合前に単量体の状態で行ってもよいし、あるいは重合途中や重合後に重合体の状態で行ってもよいし、それらを併用してもよい。
・・・
【0051】
他の単量体の具体例としては、重合方法で後述の米国特許ないし欧州特許に例示される単量体が挙げられ、具体的には例えば、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソブチレン、ラウリル(メタ)アクリレート等の水溶性または疎水性不飽和単量体等を共重合成分とするものも含まれる。」

(ウ)「【0106】
(表面架橋)
本発明において用いることができる吸水性樹脂粒子は、本発明の効果をより発揮するためには、その表面が架橋されたものが好ましい。
【0107】
吸水性樹脂粒子の表面を架橋し吸水性樹脂粒子を得る工程は、前述の加圧下平均隙間半径向上のための処理を施す工程の前、同時、および後から選ばれる少なくとも1つにおいて行うことが好ましい。
【0108】
表面架橋処理に用いることの出来る表面架橋剤としては、吸水性樹脂粒子の有する官能基、特に、カルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上有する有機表面架橋剤や多価金属化合物、ポリカチオンなどが挙げられ、好ましくは、これらが併用される。本願吸水剤を得るうえで、これら表面架橋剤の中では、有機表面架橋剤が使用され、その際、上記の加圧下平均隙間半径指数向上剤(特に無機加圧下平均隙間半径指数向上剤、さらに多価金属塩)が使用ないし併用される。
【0109】
例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2-ブテン-1,4-ジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン-オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;・・・等が挙げられる。
【0110】
これら表面架橋剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも多価アルコールは、安全性が高く、吸水性樹脂粒子表面の親水性を向上させることができる点で好ましい。また、多価アルコールを使用することで、吸水性樹脂粒子表面の多価金属粒子との馴染みが良くなり、多価アルコール残基と多価金属表面との相互作用により吸水性樹脂粒子表面に多価金属粒子をより均一に存在させることが可能となる。」

キ 引用文献3に記載された事項
引用文献3には、以下のとおりの記載がある。
(ア)「【請求項1】
超吸収体組成物であって、
構造表面を有する、少なくとも表面架橋した吸水性ポリマー構造体と、
前記構造表面上に少なくとも部分的に固定化された多量の微粒子と
を含む、超吸収体組成物。」

(イ)「【0003】
現在、市販されている超吸収体は、水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液でカルボキシル基が部分的に中和された、実質的に架橋されたポリアクリル酸または架橋されたでんぷん/アクリル酸グラフトポリマーである。これらは、適切な架橋剤の存在下で、モノマーのアクリル酸またはその塩をラジカル重合させることによって得ることができる。これに関連して、例えば、溶液重合、乳化重合、または懸濁重合などの様々な重合法が使用できる。150?850μmの範囲の粒径を有する微粒子型の吸水性ポリマーは、これらの様々な方法によって最終的に得られ、衛生用品に取り込まれる。
【0004】
特に圧負荷下における吸水性ポリマーの吸収性を向上するために、表面領域におけるカルボキシレート基は後架橋され、コアシェル構造が形成される。例えば、吸水性ポリマーを、ポリマーのカルボキシル基と反応できる炭酸アルキレンと反応させることが特許文献1から公知である。
・・・
【0007】
上述の表面後架橋は、確かに、圧負荷下における吸収性を向上させる効果を有する。それは、膨潤したポリマー粒子が互いにくっつき、それによって更なる液体の摂取が妨げられる公知の「ゲルブロッキング」現象は、後架橋によって妨げられるからである。しかしながら、表面後架橋自体は、液体の粒子間輸送における向上をもたらさず、したがって透水性の向上をもたらさない。
【0008】
透水性を向上するために、例えば特許文献2において説明されているように、例えば、カチオンの存在下において、特にアルミニウム塩水溶液の存在下において、表面後架橋を実施することが従来技術から公知である。特許文献3は、吸水性ポリマーの透水性を向上するために、表面後架橋結合中に、無機ゾル、例えばシリカゾルを添加することを提案している。」

(ウ)「【0018】
本発明に係る超吸収体組成物の好ましい実施形態において、これは、
(α1)20-99.999重量%、好ましくはは55-98.99重量%、および特に好ましくは70-98.79重量%の、酸性基あるいはその塩を有する重合されたエチレン性不飽和モノマー、または、プロトン化もしくは四級化された窒素を含有する重合されたエチレン性不飽和モノマー、あるいはそれらの混合物(特に好ましくは、少なくとも酸性基を含有するエチレン性不飽和モノマー、好ましくはアクリル酸を含む混合物)、
(α2)0-80重量%、好ましくは0-44.99重量%、および特に好ましくは0.1-44.89重量%の重合された(α1)と共重合可能な、モノエチレン性不飽和モノマー、
(α3)0.001-5重量%、好ましくは0.01-3重量%、および特に好ましくは、0.01-2.5重量%の1つ以上の架橋剤、
(α4)0?30重量%、好ましくは、0?5重量%、および特に好ましくは、0.1-5重量%の水溶性ポリマー、
(α5)0?20重量%、好ましくは、2.5?15重量%、および特に好ましくは、3?10重量%の水、ならびに
(α6)0?20重量%、特に0?10重量%、および特に好ましくは、0.1?8重量%の1つ以上の補助剤
に基づく吸水性ポリマー構造体を含み、(α1)から(α6)の総重量は100重量%である。
【0019】
酸性基を有するモノエチレン性不飽和モノマー(α1)は、部分的にまたは全体的に、好ましくは部分的に中和されていてもよい。酸性基を含有するモノエチレン性不飽和モノマーは、少なくとも25mol%まで、特に好ましくは少なくとも50mol%まで、更に好ましくは50?80mol%まで中和されることが好ましい。」

(エ)「【0051】
これらの化合物の中で、特に好ましい後架橋剤は、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、ポリグリセロール、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン-オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコール、ソルビトール、1,3-ジオキソラン-2-オン(炭酸エチレン)、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(炭酸プロピレン)、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、および4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オンなどの縮合架橋剤であり、1,3-ジオキソラン-2-オンが特に好ましい。」

(オ)「【0058】
本発明によれば、特に好ましい微粒子は、次の物質を含む群から選択される:アルミニウム塩(例えば、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、・・・二酸化ケイ素、特に焼成シリカ(例えば、Aerosil(登録商標)の商標名で入手可能なものなど)または沈降シリカ(例えば、Sipernat(登録商標)の商標名で市販されているものなど)、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム・・・
【0059】
最も好ましい微粒子は、AlCl_(3)・6H_(2)O、NaAl(SO_(4))_(2)・12H_(2)O、KAl(SO_(4))_(2)・12H_(2)O、Al_(2)(SO_(4))_(3)・14-18H_(2)O、乳酸アルミニウム、またはクエン酸アルミニウムを含む群から選択されるアルミニウム塩であり、更に、Al_(2)(SO_(4))_(3)・14-18H_(2)Oが特に好ましい。アルミニウム塩として解釈されるAl(O)OHは、更に好ましい化合物として言及できる。」

(カ)「【実施例】
【0101】
(1.表面が後架橋されたポリマー構造体の調製)
300.0gのアクリル酸、233.11gのNaOH(濃度50%)、442.75gの脱イオン水、1.180gのモノアリルポリエチレングリコール-750モノアクリル酸エステル、および0.577gのポリエチレングリコール-300ジアクリレートからなるモノマー溶液を、窒素を吹き込むことにより溶存酵素を取り除き、開始温度の4℃まで冷却した。開始温度に達した後、開始剤溶液(10.0gのH_(2)O中0.3gのペルオキシ二硫酸ナトリウム、10.0gのH_(2)O中0.07g、濃度35%の過酸化水素水溶液、および2.0gのH_(2)O中0.015gアスコルビン酸)を添加した。約86℃の最終温度に達した後、生成したゲルを粉砕し、150℃で120分間にわたって乾燥した。乾燥したポリマーを粗く砕き、SM100カッティングミルの中で、粒径が2,000μmより小さくなるまで磨り潰し、150?850μmの粒径を有する粉末になるまで篩過した。
【0102】
このようにして得られた100gのポリマー粒子を、実験室用ミキサーの中で、1gの炭酸エチレンおよび3gの水からなる総量が4gの水溶液と混合し、次に、この混合物を、180℃でオーブンの中で30分間にわたって加熱した。
【0103】
この吸水性ポリマー構造体の0.7psi(約4826Pa)の圧力下でのAAP値、CRC値、およびSFC値を測定した(結果は表1を参照)。
【0104】
(2.微粒子の固定化)
実施例1の調製において得られた100gのポリマーを、130℃で、乾燥棚の中で予熱した。
【0105】
遠心ミルの中でひき、粒径が300?400μmの範囲内になるまで篩過した10gのAl_(2)(SO_(4))_(3)・14H_(2)O、および、同様に遠心ミルの中でひき、粒径が300μmより小さくなるまで篩過した1.5gのポリエチレングリコール10,000(10,000g/molの分子量を有するポリエチレングリコール)の混合物を調製した。Al_(2)(SO_(4))_(3)・14H_(2)Oおよびポリエチレングリコール10,000の混合物1.15gを、Krupsミキサーの中で予熱した吸水性ポリマー構造体と、撹拌しながら混合した。
【0106】
この本発明に係る超吸収体組成物の0.7psi(約4826Pa)の圧力下におけるAAP値、CRC値、およびSFC値を、同様に測定した(結果は表1を参照)。
【0107】
表1



ク 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明を対比する。
甲3発明の「水不溶性、親水性重合体粒子」は、通常60ml/g以上の吸水力を有するものであるから(上記ア(オ))、本件発明1の「高吸水性樹脂」及び「高吸水性樹脂粒子」に相当し、甲3発明の「吸水性樹脂組成物」は本件発明1の「高吸水性樹脂組成物」に相当する。また、甲3発明における「水酸化アルミニウム1重量部」は、本件発明1の「高吸水性樹脂100重量部に対して、0.5?5重量部」と重複一致する。
また、甲3発明の「吸水性樹脂組成物」は、水酸化アルミニウムを重合体粒子100重量部に対して1重量部という微量で添加して「均一に混合」(上記ア(エ))されたものであり、「被吸収液が重合体粒子間の付着なしに各重合体粒子間を容易に通過出来る」(上記ア(ウ))ものであるから、水酸化アルミニウムは粒子の形態で添加されて広く分散しているものと解されるから、甲3発明の「水酸化アルミニウム」は、本件発明1の「粒子状の水酸化アルミニウム」に相当する。さらに、上記混合物に「水を噴霧」することにより、重合体粒子表面が改質されるとともに湿って水酸化アルミニウムの付着性が高まると解されるから、甲3発明の水酸化アルミニウムは重合体粒子の表面に付着し、本件発明1の「高吸水性樹脂の」「表面に付着したもの」である点でも一致するといえる。

そうすると、本件発明1と甲3発明は、「高吸水性樹脂および粒子状の水酸化アルミニウムを含み、前記水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂の表面に付着したものであり、前記水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂100重量部に対して、0.5?5重量部の含有量で含まれる高吸水性樹脂組成物」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本件発明1は、高吸水性樹脂の「表面が架橋された」ものであるのに対して、甲3発明は、重合体粒子の表面は改質されるものの、表面が架橋されたものではない点。
相違点2:本件発明1は、「前記水酸化アルミニウムは、粒子の70重量%以上が前記高吸水性樹脂粒子の表面に固定され、高吸水性樹脂粒子と物理的に分離された状態で存在せず」にあるのに対して、甲3発明は、そのように水酸化アルミニウムが重合性樹脂に固定されているかが不明である点。
相違点3:本件発明1では「水酸化アルミニウムの平均粒子サイズは2μm?20μmである」のに対して、甲3発明ではそれが不明である点。
相違点4′:本件発明1は、「生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)が25g/g以上であり、生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能(AUP)が10g/g以上であり、生理食塩水に対する自由膨潤ゲル層透過度(GBP、Free Swell Gel Bed Permeability)が10darcy以上であり、吸水速度(vortex)が58秒以下」(以下、「吸水性能」という。)であるのに対して、甲3発明は、0.9%食塩水の吸収量が0.9%食塩水の吸収量が61g/gであり、吸収速度が30ml/gであるものの、上記CRC、AUP、GBP及び吸水速度(vortex)の値が不明である点。

(イ)検討
事案に鑑みて、相違点4′から検討する。
甲3発明の「吸水性樹脂組成物」における「0.9%食塩水の吸収量」及び「吸収速度」は、上記1(1)ア(キ)に記載された方法で測定した値であり、本件発明1の上記CRC、AUP、GBP及び吸水速度(vortex)のいずれにも該当するものではなく、甲3の実施例以外の記載や、取消理由通知(決定の予告)で引用した甲1、甲11、甲12、引用文献1?3の記載を見ても、本件発明1の吸水性能を満たすものであるとはいえない。また、甲3発明において、本件発明1の上記吸水性能を満たすことが動機づけられるとはいえない。
そうすると、甲3発明において、上記吸水性能を満たすことは、甲1、甲3、甲11、甲12及び引用文献1?3に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たことであるとはいえず、相違点1?3について検討するまでもなく、本件発明1は当業者が容易に想到し得たものではない。

(ウ)本件発明1の効果
本件発明1は、上記吸水性能を示し、「保水能と加圧吸水能などの物性を低下することなく向上した通液性を有することができ、これと同時に、高温多湿環境においてケーキング防止特性を有して保管安定性に優れた高吸水性樹脂組成物を製造することができる」(本件明細書の段落【0056】)という格別顕著な効果を奏するものであり、甲1、甲3、甲11、甲12及び引用文献1?3に記載された事項から予測し得たものとはいえず、この効果は、本件明細書の実施例から具体的に確認することができる。

(エ)小括
本件発明1は、甲3に記載された発明、並びに、甲1、甲3、甲11、甲12及び引用文献1?3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ケ 本件発明3?6、9及び10について
本件発明3?6、9及び10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記クで述べたのと同じ理由により、甲3に記載された発明、並びに、甲1、甲3、甲11、甲12及び引用文献1?3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

コ まとめ
以上のとおり、本件発明1、3?6、9及び10は、甲3に記載された発明、並びに、甲3に記載された発明、並びに、甲1、甲3、甲11、甲12及び引用文献1?3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由9(進歩性)によっては、本件特許の請求項1、3?6、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。

(2)取消理由6(明確性要件)について(平成31年3月7日付け取消理由通知)
ア 本件発明
本件発明1、3?6、9及び10は、第3に記載したとおりのものである。

イ 取消理由6-1(本件発明1における、水酸化アルミニウムが高吸水性粒子の「表面に付着した」)について
本件訂正の訂正事項4により、本件発明1に「前記水酸化アルミニウムは、粒子の70重量%以上が前記高吸水性樹脂粒子の表面に固定され、高吸水性樹脂粒子と物理的に分離された状態で存在せず、」を追加する訂正がなされた。
そして、本件発明1は、高吸水性樹脂組成物において、水酸化アルミニウムが高吸水性樹脂の表面に付着した状態が明確になった。

ウ 取消理由6-2(本件発明1における「水酸化アルミニウムの平均粒子サイズ」)について
本件発明1及び本件明細書には、水酸化アルミニウムの平均粒子サイズに関する測定方法や定義は記載されていない。
しかしながら、発明特定事項の意味内容や技術的意味の解釈に当たっては、請求項の記載のみでなく、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識をも考慮すべきであり、本件発明1の「平均粒子サイズ」に関して、本件出願時に公知である種々の方法で測定又は算出される平均粒径のいずれか一に解釈する特段の事情がなければ、平均値及び平均粒径の技術常識といえる算術平均値を意味すると解釈するのが自然である。なお、算術平均値を算出するためのサンプル数などの具体的な条件は、使用する水酸化アルミニウム製品と所望する算出精度に応じて、当業者が適宜設定することである。
そうすると、本件発明1は明確であり、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとまではいえない。

エ まとめ
以上のとおり、本件発明1、及びこれを直接又は間接的に引用する本件発明3?6、9及び10は、明確であるから、取消理由6(明確性要件)によっては、本件特許の請求項1、3?6、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。

(3)取消理由7(サポート要件)について
ア 特許法第36条第6項第1号について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(平成17年(行ケ)第10042号、「偏光フィルムの製造法」事件)。そこで、この点について、以下に検討する。

イ 発明の詳細な説明に記載された事項
本件明細書の発明の詳細な説明には次の記載がある。
(ア)「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、長時間経過後にも加圧状態で水分がほとんど滲み出ない加圧吸水能(AUP)の低下なしに水の通液性を向上させると同時に、高温多湿環境においてケーキング防止特性を有して保管安定性に優れた高吸水性樹脂組成物およびこれを含む個人衛生吸収用品を提供する。
【0013】
本発明は、高吸水性樹脂および水酸化アルミニウムを含み、前記水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂の表面に付着したものである高吸水性樹脂組成物を提供する。
【0014】
本発明はまた、前記高吸水性樹脂組成物を含む個人衛生吸収用品を提供する。」

(イ)「【0035】
一方、本発明の高吸水性樹脂組成物は、高吸水性樹脂と共に、特定の粒子サイズを有する水酸化アルミニウム粒子を含むことを特徴とする。前記水酸化アルミニウムは、不溶性特徴を有し、高吸水性樹脂の表面に分散して固着しているため、高吸水性樹脂が互いに凝集されるのを防止してケーキング防止効果および通液性を向上させることができる。このような水酸化アルミニウムは、水に溶けず、高吸水性樹脂と反応しない無機物に相当する。特に、水酸化アルミニウムは、ケーキング防止剤として主に使用されるシリカ対比の比重が約40倍高く、平均粒度が大きくて表面をコーティングする程度が相対的に小さく、加圧下で吸水能の低下が最小化できる。
【0036】
前記水酸化アルミニウムの平均粒子サイズは、2μm?50μm、好ましくは5μm?40μm、より好ましくは7μm?20μmになってもよい。前記水酸化アルミニウム粒子は、加圧吸水能(AUP)の低下を最少化する側面から、5μm以上の平均粒子サイズを有するとよい。さらに、前記水酸化アルミニウム粒子は、高吸水性表面によく固着させて微粉の含有量の増加およびケーキング防止効果を与えるために、50μm以下の平均粒子サイズを有してもよい。
【0037】
また、本発明の高吸水性樹脂組成物は、水酸化アルミニウムを処理した高吸水性樹脂に追加的にシリカを極めて少量処理することによって、追加的な自由膨潤ゲル層透過度(GBP)の向上が可能である。前記水酸化アルミニウムが高吸水性樹脂の表面に付着したものである高吸水性樹脂組成物100重量部に対して、シリカ0.1重量部以下が追加的に表面に付着したものであってもよい。前記シリカは、好ましくは、水酸化アルミニウムを処理した高吸水性樹脂に、0.05重量部以下で表面にコーティング処理されてもよい。この時、前記高吸水性樹脂組成物の生理食塩水に対する自由膨潤ゲル層透過度(GBP)は、65darcy以上、好ましくは70darcy以上、好ましくは75darcy以上になってもよい。」

(ウ)「【0049】
本発明の高吸水性樹脂組成物は、上述のように、保水能と加圧吸水能などの物性を低下することなく向上した通液性を有することができ、これと同時に、高温多湿環境においてケーキング防止特性を有して保管安定性に優れた特性を有する。特に、代表的なケーキング防止剤として知られたシリカの場合、0.1%未満の極めて少ない量を添加時にも20%以上の加圧吸水能(AUP)の低下が現れ、工程上で比重の差による分離、極微粉の粉塵の発生によるフィルター吸着など、添加量が消失しながらケーキング防止効果が低減される問題がある。しかし、本発明により、水酸化アルミニウムを、例えば、3%以上添加時にも加圧吸水能(AUP)の低下は10%以内に限られ、工程上の消失の危険がなく、含有量の変化に対する性能が安定して高吸水性樹脂の製造が便利であり、高い品質安定性の確保が可能である。」

(エ)「【0060】
[実施例]
製造例:高吸水性樹脂の製造
まず、高吸水性樹脂は、次のような方法で製造した。アクリル酸100g、架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523)0.25?0.5g、50%苛性ソーダ(NaOH)83.3g、および水89.8gを混合して、単量体の濃度が45重量%のモノマー水溶液組成物比を有するように製造した。
【0061】
以降、前記モノマー水溶液810gを、まず、0.18%アスコルビン酸(ascorbic acid)溶液30.54gと、1%過硫酸ナトリウム溶液33gとを先に混合し、0.15%過酸化水素溶液30.45gと共に連続で重合しながらニーディング可能な重合器の供給部を通して投入して重合を実施した。この時、重合器の温度は80℃に維持し、重合の最高温度は110℃、重合時間は1分15秒である。以降、引き続きニーディングを実施して、20分間重合とニーディングを実施した。以降、生成された重合器の大きさは0.2cm以下で分布した。この時、最終形成された含水ゲル重合体の含水率は51重量%であった。
【0062】
次に、前記含水ゲル重合体に対して、180℃の温度の熱風乾燥機で30分間乾燥し、乾燥した含水ゲル重合体をピンミル紛砕機で粉砕した。その後、ふるい(sieve)を用いて、粒度(平均粒径サイズ)が150μm未満の重合体と、粒度150μm?850μmの重合体とを分級して、CRCが34g/gのベースポリマー(A)、CRCが40g/gのベースポリマー(B)を得た。
【0063】
実施例1
CRCが34g/gのベースポリマー(A)に、8μmの水酸化アルミニウム0.5重量%を乾式混合した後に、1,3-プロパンジオール5重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、180℃以上の温度で40分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0064】
実施例2
CRCが34g/gのベースポリマー(A)に、8μmの水酸化アルミニウム1.0重量%を乾式混合した後に、1.3-プロパンジオール5重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、180℃以上の温度で40分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0065】
実施例3
CRCが40g/gのベースポリマー(B)に、2μmの水酸化アルミニウム1.0重量%を乾式混合した後に、エチレングリコールジグリシジルエーテル3重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、120℃以上の温度で40分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0066】
実施例4
CRCが34g/gのベースポリマー(A)に、8μmの水酸化アルミニウム1.5重量%を乾式混合した後に、1.3-プロパンジオール5重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、180℃以上の温度で40分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0067】
実施例5
CRCが40g/gのベースポリマー(B)に、8μmの水酸化アルミニウム1.5重量%を乾式混合した後に、エチレングリコールジグリシジルエーテル3重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、120℃以上の温度で60分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0068】
実施例6
CRCが40g/gのベースポリマー(B)に、2μmの水酸化アルミニウム2.0重量%を乾式混合した後に、エチレングリコールジグリシジルエーテル3重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、120℃以上の温度で60分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0069】
実施例7
CRCが34g/gのベースポリマー(A)に、8μmの水酸化アルミニウム3.0重量%を乾式混合した後に、1.3-プロパンジオール5重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、180℃以上の温度で40分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0070】
実施例8
CRCが40g/gのベースポリマー(B)に、8μmの水酸化アルミニウム3.0重量%を乾式混合した後に、エチレングリコールジグリシジルエーテル3重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、120℃以上の温度で60分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0071】
実施例9
CRCが40gのベースポリマー(B)に、8μmの水酸化アルミニウム3.0重量%を乾式混合した後に、エチレングリコールジグリシジルエーテル3重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、120℃以上の温度で60分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。これにシリカ(Aerosil200)0.1%を乾式混合した。
【0072】
実施例10
CRCが40g/gのベースポリマー(B)に、8μmの水酸化アルミニウム5.0重量%を乾式混合した後に、エチレングリコールジグリシジルエーテル3重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、120℃以上の温度で60分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0073】
比較例1
CRCが34g/gのベースポリマー(A)に、1.3-プロパンジオール5重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、180℃以上の温度で40分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0074】
比較例2
CRCが40g/gのベースポリマー(B)に、エチレングリコールジグリシジルエーテル3重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、120℃以上の温度で60分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0075】
比較例3
比較例2で得られた製品に、平均粒子サイズ12nmのシリカ(Aerosil200)を0.1%乾式混合して、製品を製造した。
【0076】
比較例4
比較例1で得られた製品に、平均粒子サイズ12nmのシリカ(Aerosil200)を1.0%乾式混合して、製品を製造した。
【0077】
比較例5
比較例2で得られた製品に、平均粒子サイズ12nmのシリカ(Aerosil200)を1.0%乾式混合して、製品を製造した。
【0078】
試験例
実施例1?10および比較例1?5により製造された高吸水性樹脂組成物に対して次のような方法で物性評価を行い、測定された物性値は下記表1に示した通りである。
【0079】
a)CRC:WSP241.3.10に基づいて測定
b)AUP:WSP242.3.10に基づいて測定
c)GBP:大韓民国公開特許公報第10-2009-0123904号に記載の自由膨潤ゲル層透過度試験に基づいて測定された。
【0080】
d)A/C:高吸水性樹脂2g(W_(5))を直径10cmのフラスコ皿に均等に塗布した後、温度40±3℃、湿度70±3%の水準を維持する恒温恒湿チャンバー内で10分間維持させた後、フィルターペーパーにフラスコ皿をひっくり返して3回軽くタッピング(tapping)後、高吸水性樹脂の落ちる量(W_(6))を測定した。ケーキング防止(Anti-caking)効率(A/C、%)はW_(6)/W_(5)×100で計算し、数値が高いほど効率に優れる。
【0081】
e)ボルテックス(Vortex):50.0±1.0mLの0.9%NaCl溶液を100mLビーカーに添加した。シリンダ型撹拌バー(30x6mm)を添加し、前記塩類溶液を600rpmで撹拌プレート上で撹拌した。2.000±0.010gの水分吸収性重合体粒子をできるだけ速く前記ビーカーに添加し、添加を始めながらストップウォッチを始めた。前記ストップウォッチを、前記混合物の表面が「静止(still)」状態になれば止めたが、前記状態は表面が乱流を持たないことを意味するもので、この時、前記混合物は相変わらず回転するが、粒子の全体表面が1つの単位として回転することになる。前記ストップウォッチに表示された時間をボルテックス時間として記録した。
【0082】
【表1】

【0083】
また、図1および図2に、それぞれ実施例6および比較例5により水酸化アルミニウムおよびシリカを処理した高吸水性樹脂表面の写真を示した。図1に示しているように、実施例6により水酸化アルミニウムを2.0%処理した高吸水性樹脂の場合、水酸化アルミニウムが表面によく分散して固く固着していることを確認することができる。しかし、図2に示しているように、比較例5によりシリカを1%乾式混合処理した高吸水性樹脂は均一でない状態で互いに固まっており、ひいては高吸水性樹脂と分離されていることを確認することができる。このように分離されたシリカ粒子は、工程移送中に粉塵が発生する原因になる問題がある。
【0084】
前記表1に示しているように、本発明に係る実施例1?10の高吸水性樹脂組成物は、比較例1?2と比較して、高温多湿環境においてケーキング防止特性を有して保管安定性を向上させることができ、優れた通液性および吸水速度(Vortex)を示す。また、比較例3?5と比較して、実施例7?10は、高温多湿環境において同等以上のケーキング防止効果および通液性を有し、かつ、高い加圧吸水能(AUP)および優れた吸水速度(Vortex)が実現される。
【0085】
さらに、実施例1?9の高吸水性樹脂組成物は、150μm未満の粒度分布比率が水酸化アルミニウムを処理しなかった比較例1?2の高吸水性樹脂と同等または減少した水準で、水酸化アルミニウムがベースポリマーの高吸水樹脂に強く付着していることを確認することができる。しかし、シリカを1%乾式混合処理した比較例4?5の高吸水性樹脂は、150μm未満の粒度分布比率は、比較例1?2のベースポリマー高吸水性樹脂と比較して顕著に増加し、ケーキング防止性能が非常に良くないことが分かる。
【0086】
特に、シリカが処理された比較例3?4のようにシリカを乾式適用した時にケーキング防止効果に優れるが、少量添加時にも過度な加圧吸水能(AUP)の低下が現れた。また、図2と実施例4?5において、シリカの高吸水性樹脂との分離、150μm通過含有量の増加から明らかなように、高吸水性樹脂に単純に混合されている状態で製品移送時、比重の差による分離およびバックフィルター捕集によるシリカの消失および不均一な分布によって、ケーキング防止特性の低下が発生することがあり、粉塵が多量発生して作業環境を阻害するという欠点がある。さらに、高分子樹脂の表面に固着させるために、湿式処理時にケーキング防止特性が低下し、特に表面処理時に溶液に一部使用されるアルコール類のように使用時の効率が急激に低下する問題があることは公知の事実である。」

ウ 本件発明が解決しようとする課題
本件発明の課題は、「長時間経過後にも加圧状態で水分がほとんど滲み出ない加圧吸水能(AUP)の低下なしに水の通液性を向上させると同時に、高温多湿環境においてケーキング防止特性を有して保管安定性に優れた高吸水性樹脂組成物およびこれを含む個人衛生吸収用品を提供する」ことであると解される(上記イ(ア)の段落【0012】)。

エ 本件発明1について
(ア)取消理由7-1(水酸化アルミニウムの付着量)について
本件訂正により、本件発明1に、「前記水酸化アルミニウムは、粒子の70重量%以上が前記高吸水性樹脂粒子の表面に固定され、高吸水性樹脂粒子と物理的に分離された状態で存在せず、」を追加し、水酸化アルミニウムの70重量%以上が高吸水性樹脂の表面に固定されていることが特定された。
一方、発明の詳細な説明には、実施例における高吸水性樹脂組成物の「150μm未満の粒度分布比率」が、使用した高吸水性樹脂自体と同等またはそれ未満の値であったことが記載され、本件発明1のとおりに「水酸化アルミニウムは、粒子の70重量%以上が前記高吸水性樹脂の表面に固定され」ていることが示されているものと解される(上記イ(エ)の表1及び段落【0085】)。そして、同じく表1に示されたAUP(生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能)、GBP(生理食塩水に対する自由膨潤ゲル層透過度)、A/C(ケーキング防止効率)から上記課題を解決することを具体的に確認することができる。
そうすると、発明の詳細な説明は、本件発明1が上記課題を解決することを当業者が認識できるように記載されており、本件発明1は発明の詳細な説明に記載したものである。

(イ)取消理由7-2(水酸化アルミニウムの含有量)について(取消理由1-3と同旨)
本件訂正により、本件発明1に、「本件訂正により、本件発明1に「水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂100重量部に対して、0.5?5重量部の含有量で含まれ」を追加し、水酸化アルミニウムの含有量が特定された。
そして、発明の詳細な説明には、実施例1?10として、水酸化アルミニウムを0.5?5重量部の含有量で含む高吸水性樹脂組成物が記載されており(上記イ(エ))、表1に示されたAUP(生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能)、GBP(生理食塩水に対する自由膨潤ゲル層透過度)、A/C(ケーキング防止効率)から上記課題を解決することを具体的に確認することができる。
そうすると、発明の詳細な説明は、本件発明1が上記課題を解決することを当業者が認識できるように記載されており、本件発明1は発明の詳細な説明に記載したものである。

オ 本件発明3?6、9及び10について
本件発明3?6、9及び10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記エで本件発明1について述べたのと同じ理由により、発明の詳細な説明に記載したものである。

カ まとめ
以上のとおり、本件発明1、3?6、9及び10は発明の詳細な説明に記載したものであるから、取消理由7(サポート要件)によっては、本件特許の請求項1、3?6、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。

(4)取消理由8(実施可能要件)について
ア 特許法第36条第4項第1号について
特許法第36条第4項第1号は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」と定めている。
これは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が、明細書に記載した事項と出願時の技術常識とに基づき、その発明を実施することができる程度に、発明の詳細な説明を記載しなければならないことを意味するものである。そこで、この点について以下に検討する。

イ 本件発明1について
本件訂正の訂正事項1及び2により、本件発明1において、高吸水性樹脂は表面が「架橋された」ものであることが特定された。また、発明の詳細な説明は、訂正事項16により、単なる乾式混合を含む、水酸化アルミニウムを高吸水性樹脂に付着させる方法の記載が削除され、乾式混合後に表面架橋を行った実施例が記載されている。
そうすると、発明の詳細な説明には、本件発明1の高吸水性樹脂組成物を当業者が製造できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

ウ 本件発明3?6、9及び10について
本件発明3?6、9及び10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記イで本件発明1について述べたのと同じ理由により、発明の詳細な説明には、本件発明3?6、9及び10の高吸水性樹脂組成物を当業者が製造できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

エ まとめ
以上のとおり、本件発明1、3?6、9及び10は発明の詳細な説明に記載したものであるから、取消理由8(実施可能要件)によっては、本件特許の請求項1、3?6、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。

2 特許異議申立ての取消理由について
(1)取消理由1(サポート要件)について
ア 取消理由1-1について
(ア)本件発明1は、「表面が架橋された高吸水性樹脂および粒子状の水酸化アルミニウムを含み、前記水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂の架橋された表面に付着したものであり」、「前記水酸化アルミニウムの平均粒子サイズは2μm?20μmである」ことを特定事項の一部とした高吸水性樹脂組成物に係る発明であり、「粒子状の水酸化アルミニウム」の「平均粒子サイズは2μm?20μmである」ものである。
一方、発明の詳細な説明には、「本発明の高吸水性樹脂組成物は、高吸水性樹脂と共に、特定の粒子サイズを有する水酸化アルミニウム粒子を含むことを特徴とする。前記水酸化アルミニウムは、不溶性特徴を有し、高吸水性樹脂の表面に分散して固着しているため、高吸水性樹脂が互いに凝集されるのを防止してケーキング防止効果および通液性を向上させることができる。」(上記1(3)イ(イ)の段落【0035】)、「前記水酸化アルミニウムの平均粒子サイズは、2μm?50μm・・・より好ましくは7μm?20μmになってもよい。前記水酸化アルミニウム粒子は、加圧吸水能(AUP)の低下を最少化する側面から、5μm以上の平均粒子サイズを有するとよい。さらに、前記水酸化アルミニウム粒子は、高吸水性表面によく固着させて微粉の含有量の増加およびケーキング防止効果を与えるために、50μm以下の平均粒子サイズを有してもよい。」と記載され(上記1(3)イ(イ)の段落【0036】)、高吸水性樹脂組成物に含まれる水酸化アルミニウムの平均粒子サイズを上記範囲にすることにより、加圧吸水能(AUP)の低下を最小化し、微粉の増加やケーキングを防止できることが示されている。また、実施例1?10として、高吸水性樹脂に、8μm又は2μmの水酸化アルミニウムを乾式混合した後に、表面処理溶液を噴射して表面架橋した高吸水性樹脂組成物が記載されており(上記1(3)イ(エ))、GBPが9Darcyである実施例3を除き、本件発明1の具体例であると解される。
そうすると、発明の詳細な説明には、本願発明1が上記課題を解決することを当業者が認識できるように記載されているということができ、本件発明1、及びこれを引用する本件発明3?6、9及び10は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。

申立人は、水酸化アルミニウムが、混合時の機械的ダメージで破壊されたり、表面処理液や高吸水性樹脂中の水分で破壊、凝集又は溶解したりして、混合前後の平均粒子サイズが一致せず、実施例1?10において、高吸水性樹脂の表面に付着した水酸化アルミニウムの平均粒子サイズが2?20μmの範囲外になることが考えられる旨を主張する(申立書の(a-1))。
しかしながら、実施例1?10における乾式混合及び表面処理の後に、上記破壊等により、高吸水性樹脂に含まれる水酸化アルミニウムの平均粒子サイズが2μm?20μmの範囲外になることを示唆する本件出願時の技術常識は見当たらない。また、申立人は、実施例1?10の高吸水性樹脂組成物における水酸化アルミニウムの平均粒子サイズが2?20μmの範囲外であることを、証拠を提出するなどして具体的に説明していない。
そうすると、上記主張を採用することはできない。

イ 取消理由1-2について
本件訂正の訂正事項4により、本件発明1において、「水酸化アルミニウムは、粒子の70重量%以上が前記高吸水性樹脂の表面に固定され」ていることが特定された。
一方、発明の詳細な説明には、実施例及び比較例における「150μm未満の粒度分布比率(%)」が記載されており(上記(3)イ(エ)の表1)、実施例1?9の高吸水性樹脂組成物は「150μm未満の粒度分布比率が水酸化アルミニウムを処理しなかった比較例1?2の高吸水性樹脂と同等または減少した水準で、水酸化アルミニウムがベースポリマーの高吸水樹脂に強く付着していることを確認することができる」(上記(3)イ(エ)の段落【0085】)ものであって、「水酸化アルミニウムは、粒子の70重量%以上が前記高吸水性樹脂の表面に固定され」ていることが示されているものと解される。
そうすると、発明の詳細な説明は、本件発明1が上記課題を解決することを当業者が認識できるように記載されており、本件発明1は発明の詳細な説明に記載したものである。
本件発明3?6、9及び10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1と同様に、発明の詳細な説明に記載したものである。

ウ 取消理由1-3について
取消理由1-3は取消理由7-2と同旨であり、上記(3)ウ(イ)で述べたように、本件訂正の訂正事項3により、本件発明1に、「本件訂正により、本件発明1に「水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂100重量部に対して、0.5?5重量部の含有量で含まれ」を追加し、水酸化アルミニウムの含有量が特定された。
したがって、本件発明1、3?6、9及び10は、発明の詳細な説明に記載したものである。

エ まとめ
以上のとおり、本件発明1、3?6、9及び10は発明の詳細な説明に記載したものであるから、取消理由1(サポート要件)によっては、本件特許の請求項1、3?6、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。

(2)取消理由2(実施可能要件)について
上記(1)アで述べたように、発明の詳細な説明には、高吸水性樹脂組成物に含まれる水酸化アルミニウムの平均粒子サイズを所定の範囲にすることにより、加圧吸水能(AUP)の低下を最小化することができ、また、微粉の増加及びケーキングを防止できることが記載され、また、高吸水性樹脂に8μm及び2μmの水酸化アルミニウムを乾式混合し、表面架橋処理をした本件発明1の具体例である高吸水性樹脂組成物が記載されている。
そうすると、発明の詳細な説明には、本願発明1の高吸水性樹脂組成物を製造することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

申立人は、本件明細書には、高吸水性樹脂の表面に付着している水酸化アルミニウムの平均粒子サイズの測定方法や、請求項1で規定される平均粒子サイズの水酸化アルミニウムを高吸水性樹脂の表面に付着させる方法が記載されていない旨を主張する(申立書の(a-2))。
しかしながら、上記(1)アで述べたように、実施例1?10(実施例3は参考例)の高吸水性樹脂組成物において、水酸化アルミニウムの平均粒子サイズが2μm?20μmの範囲外になる合理的な根拠は示されていない。
そうすると、実施例1、2、4?10は本件発明1の具体例であって、発明の詳細な説明は、本件発明1、3?6、9及び10について、当業者が実施することができるように明確かつ十分に記載されているということができ、上記主張を採用することはできない。

(3)取消理由3(明確性要件)について
本件発明5は「シリカ0.1重量部以下が追加的に表面に付着したものである」と記載されており、シリカが高吸水性樹脂の表面に付着したものであることが明らかである。
また、発明の詳細な説明には、「本発明の高吸水性樹脂組成物は、水酸化アルミニウムを処理した高吸水性樹脂に追加的にシリカを極めて少量処理することによって、追加的な自由膨潤ゲル層透過度(GBP)の向上が可能である。前記水酸化アルミニウムが高吸水性樹脂の表面に付着したものである高吸水性樹脂組成物100重量部に対して、シリカ0.1重量部以下が追加的に表面に付着したものであってもよい。」(上記1(3)イ(イ)の段落【0037】と記載され、シリカ0.1重量部以下が表面に付着したものであると、GBPの改良成分であることが示されている。
そうすると、本件発明5は、シリカが表面に付着したものであることは明確であり、本件発明5は明確である。
また、本件発明6、9及び10は、本件発明5を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明5について述べたのと同じ理由により、明確である。
以上のとおり、本件発明5、6、9及び10は明確であるから、取消理由6(明確性要件)によっては、本件特許の請求項5、6、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。

(4)取消理由4(新規性)及び取消理由5(進歩性)について
ア 甲1を主引用文献とする取消理由4-1及び取消理由5-1
(ア)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
甲1には、上記1(1)イのとおりの事項が記載されており、上記1(1)イ(ア)の特許請求の範囲第1項に着目すると、次の発明が記載されている。

「吸水性樹脂乾燥粉末に、含水酸化アルミニウムの粉末を混合した吸水性樹脂粉末組成物」(以下、「甲1発明」という。)。

(イ)甲4に記載された事項
「すいさんかアルミニウム 水酸化??? [英aluminum hydroxide 独Aluminiumhydroxyd] Al(OH)_(3)=80.70. この式に相当するもののほか,水酸化アルミニウムとよぶものは一般に水和した酸化アルミニウムとしてAl_(2)O_(3)・xH_(2)Oで示すべきものである.」

(ウ)甲7に記載された事項
a 「【請求項1】
a)酸基の70?85質量%が中和されている、酸基を有する少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマー、
b)少なくとも1種の架橋剤、
c)少なくとも1種の開始剤、
d)任意に、a)に挙げたモノマーと共重合可能な1種又はそれ以上のエチレン系不飽和モノマー及び
e)任意に、1種又はそれ以上の水溶性ポリマーを含有するモノマー水溶液又は水性モノマー懸濁液を重合し、得られた水性ポリマーゲルの乾燥、粉砕、分級及び熱による表面後架橋を含む、吸水性ポリマー粒子の製造方法であって、
前記吸水性ポリマー粒子を、表面後架橋前、表面後架橋中又は表面後架橋後に、0.0001?0.25質量%の二酸化ケイ素及び少なくとも1.5×10^(-6)mol/gのアルミニウムカチオンでコーティングすることを特徴とする、
吸水性ポリマー粒子の製造方法。
・・・
【請求項9】
酸基を有する架橋ポリマーの吸水性ポリマー粒子であって、前記酸基は70?85mol%が中和されており、前記粒子は0.0001?0.25質量%の二酸化ケイ素及び少なくとも1.5×10^(-6)mol/gのアルミニウムカチオンを含有する、吸水性ポリマー粒子。
【請求項10】
吸水性ポリマー粒子が0.08?0.12質量%の二酸化ケイ素を含有する、請求項9記載のポリマー粒子。
【請求項11】
吸水性ポリマー粒子が4×10^(-6)?6×10^(-6)mol/gのアルミニウムカチオンを含有する、請求項9又は10記載のポリマー粒子。」

b 「【0009】
本発明の課題は、吸水性ポリマー粒子、特に低い固化傾向及び49.2g/cm^(2)の圧力下の高い吸収(AUL0.7psi)を有する吸水性ポリマー粒子を製造する改良法を提供することであった。」

c 「【0016】
本発明による方法において、吸水性ポリマー粒子は、アルミニウムカチオンでコーティングされる。対イオンとして、塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン及び好ましくはカルボン酸イオン、例えば酢酸イオン及び乳酸イオンが可能である。
【0017】
特に好ましくは、塩基性カルボン酸塩、例えば塩基性酢酸アルミニウムが使用される。極めて特に好ましいのは、モノ酢酸アルミニウム(CAS No. [7360-44-3])である。塩基性カルボン酸塩の場合には、塩を形成する塩基の、水溶液中でヒドロキシルアニオン(OH^(-))として脱離可能な全ての水酸化物基は、カルボン酸基により置き換えられていない。」

d 「【0022】
さらに、アルミニウムカチオン及び二酸化ケイ素が相乗的に作用するので、アルミニウムカチオンの存在下で、本質的により少量の二酸化ケイ素が固化傾向の十分な減少を生じさせることが見出された。」

(エ)甲8に記載された事項
a 「1.多価アルコールと水の存在下に、粉末状のポリアクリル酸系吸水性樹脂を、それと反応し得るアルミニウム化合物により処理することを特徴とするポリアクリル酸系吸水性樹脂の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)

b 「4.アルミニウム化合物が、水酸化アルミニウムである上記特許請求の範囲第3項記載のポリアクリル酸系吸水性樹脂の製造方法。」(特許請求の範囲第4項)

(オ)甲9に記載された事項
a 「1.多価アルコールおよび水の存在下に、カルボキシル基またはカルボキシレート基を有する粉末状吸水性樹脂を、該吸水性樹脂と反応し得るアルミニウム化合物および該吸水性樹脂と反応し得る2以上の官能基を有する架橋剤を用いて処理することを特徴とする吸水性樹脂の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)

b 「4.アルミニウム化合物が、水酸化アルミニウムである上記特許請求の範囲第1項記載の吸水性樹脂の製造方法。」(特許請求の範囲第4項)

(カ)甲10に記載された事項
a 「【請求項1】 吸水性樹脂およびポリ水酸化アルミニウムを含有してなる吸水性樹脂組成物。
・・・
【請求項3】 ポリ水酸化アルミニウムが一般式(1):[Al(OH)_(3)]_(n)・AlCl_(3)(式中、nは10?21である)で表される請求項1記載の吸水性樹脂組成物。」

b 「【0012】また、本発明におけるポリ水酸化アルミニウムの配合方法については、特に限定はされず、ポリ水酸化アルミニウムを水溶液の状態でいつでも配合することができる。たとえば、吸水性樹脂の製造時(モノマーを重合する際に、同時に配合してもよい)に配合しておく方法、吸水性樹脂製造後の表面架橋処理時もしくは表面架橋処理後に水溶液として添加もしくは噴霧する方法、または吸水性樹脂を水に膨潤させる際に配合する方法等のいずれの方法も採用できる。これら方法のなかでも、ポリ水酸化アルミニウムが吸水性樹脂に特に有効に作用すること、さらにはポリ水酸化アルミニウムを配合し易いことから、前記方法のなかでも吸水性樹脂製造後の表面架橋処理時もしくは表面架橋処理後にポリ水酸化アルミニウムを配合するのがよい。なお、吸水性樹脂の製造時(重合時)においてはポリ水酸化アルミニウムがモノマーに不溶となる場合があるので、界面活性剤を用いてエマルジョンの状態にしてから添加することが望ましい。」

(キ)本件発明1について
a 対比
甲1発明の「吸水性樹脂乾燥粉末」及び「吸水性樹脂粉末組成物」は、上記1(1)イ(イ)から、本件発明1の「高吸水性樹脂」及び「高吸水性樹脂組成物」に相当する。また、甲1発明の「含水酸化アルミニウム」は、上記1(1)イ(ウ)から、「Al_(2)O_(3)・H_(2)O、Al_(2)O_(3)・2H_(2)O、Al_(2)O_(3)・3H_(2)O」を指し、甲4の記載(上記(イ))から、本件発明1の「水酸化アルミニウム」に相当し、「粉末」は上記1(1)イ(エ)から、好ましい粉末粒子径が約10μm以下であり、本件発明1における「平均粒子サイズは2μm?20μm」と粒径オーダーが一致するから、本件発明1の「粒子状」に相当するといえる。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、「高吸水性樹脂および粒子状の水酸化アルミニウムを含む高吸水性樹脂組成物」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1a:本件発明1は、高吸水性樹脂の「表面が架橋された」ものであるのに対して、甲1発明は、表面が架橋されたものではない点。
相違点2a:本件発明1は、「前記水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂100重量部に対して、0.5?5重量部の含有量で含まれ」るのに対して、甲1発明は、含水酸化アルミニウムの含有量が不明である点。
相違点3a:本件発明1は、「前記水酸化アルミニウムは、粒子の70重量%以上が前記高吸水性樹脂粒子の表面に固定され、高吸水性樹脂粒子と物理的に分離された状態で存在せず」にあるのに対して、甲1発明は、そのように含水酸化アルミニウムが吸水性樹脂に固定されているかが不明である点。
相違点4a:本件発明1は、「生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)が25g/g以上であり、生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能(AUP)が10g/g以上であり、生理食塩水に対する自由膨潤ゲル層透過度(GBP、Free Swell Gel Bed Permeability)が10darcy以上であり、吸水速度(vortex)が58秒以下」(以下、「吸水性能」という。)であるのに対して、甲1発明は、上記CRC、AUP、GBP及び吸水速度(vortex)の値が不明である点。
相違点5a:本件発明1では「水酸化アルミニウムの平均粒子サイズは2μm?20μmである」のに対して、甲1発明ではそれが不明である点。

b 検討
事案に鑑みて、相違点4aから検討する。
甲1には、甲1発明における上記吸水性能の値は記載されておらず、甲1発明の具体例も記載されていない。
そうすると、相違点4aは実質的な相違点であり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。

また、甲1、甲2、甲7、甲11及び甲12の記載を見ても、甲1発明の上記吸水性能が動機づけられるとはいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲1及び甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

c 本件発明1の効果
本件発明1は、上記吸水性能を示し、「保水能と加圧吸水能などの物性を低下することなく向上した通液性を有することができ、これと同時に、高温多湿環境においてケーキング防止特性を有して保管安定性に優れた高吸水性樹脂組成物を製造することができる」(本件明細書の段落【0056】)という格別顕著な効果を奏するものであり、甲1、甲2、甲7、甲11及び甲12に記載された事項から予測し得たものとはいえず、この効果は、本件明細書の実施例から具体的に確認することができる。

(ク)本件発明3?6、9及び10について
本件発明3?6、9及び10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記クで述べたのと同じ理由により、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明、並びに、甲1、甲2、甲7、甲11及び甲12に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(ケ)まとめ
以上のとおり、請求項1、4?6、9及び10に係る発明は、甲1に記載された発明ではないから、取消理由4-1(甲1を主引用文献とする新規性)によっては、本件特許の請求項1、4?6、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。
また、請求項1、3?6、9及び10に係る発明は、甲1に記載された発明、甲1、甲2、甲7、甲11及び甲12に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由5-1(甲1を主引用文献とする進歩性)によっては、本件特許の請求項1、3?6、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。

イ 甲2を主引用文献とする取消理由4-2及び取消理由5-2
(ア)甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明
甲2には、次のとおりの事項がある。
a 「【請求項1】
アクリル酸および/またはその塩を含む単量体を架橋重合して得られた、不定形破砕状粒子の表面がさらに架橋処理されてなる吸水性樹脂粒子(α)および液透過性向上剤(β)を含む粒子状吸水剤であって、
該粒子状吸水剤の質量平均粒子径が234?394μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25?0.45、無加圧下吸収倍率が15g/g以上、水可溶成分が15質量%以下であり、
液透過性向上剤(β)の含有量が該吸水性樹脂粒子(α)100質量部に対して0.01?5質量部の範囲である、吸水剤。
・・・
【請求項7】
前記吸水剤の無加圧下吸収倍率が29g/g未満である、請求項1から6までのいずれかに記載の吸水剤。
【請求項8】
前記液透過性向上剤(β)が水不溶性親水性の無機微粒子および/または水溶性の多価金属塩である、請求項1から7までのいずれかに記載の吸水剤。」

b 「【0012】
前記特許文献1?22などの従来技術の吸水性樹脂および/または吸水剤は、液透過性が改良されているが、それと同時に毛管吸引力の低下という性能の低下を引き起こしている。これによって、衛材等などの構成材である吸水体中での拡散性・液透過性は改善されるものの、逆にドライ性や、液保持性が低下するという性能低下を引き起こしており、必ずしも満足すべきものではなかった。つまり、一方の性能を向上させても、もう一方の性能が低下するという問題が発生していた。この問題を解決するために、液透過性と毛管吸引力の両方の性能を併せ持つ、吸水剤の登場が期待されていた。
すなわち本発明は、毛管吸引力と液透過性の両方の性能を併せ持つ吸水剤を提供することを課題とする。」

c 「【0022】
これらの吸水性樹脂は、1種または混合物で用いられるが、中でも酸基含有の吸水性樹脂が好ましく、カルボン酸またはその塩であるカルボキシル基含有の吸水性樹脂の1種またはその混合物がより好ましく、典型的には、アクリル酸および/またはその塩(中和物)を主成分とする単量体を架橋重合することにより得られる重合体、すなわち、必要によりグラフト成分を含むポリアクリル酸(塩)架橋重合体が好ましく用いられる。
また、上記吸水性樹脂としては、水膨潤性水不溶性であることが必須であり、該吸水性樹脂中の水可溶性成分(水溶性高分子)は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらにより好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下のものが用いられる。
【0023】
上記アクリル酸塩としては、アクリル酸のナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩等を例示することができる。上記吸水性樹脂は、その構成単位としてアクリル酸0?50モル%およびアクリル酸塩100?50モル%(但し、両者の合計量は100モル%以下とする)の範囲にあるものが好ましく、アクリル酸10?40モル%およびアクリル酸塩90?60モル%(但し、両者の合計量は100モル%以下とする)の範囲にあるものがより好ましい。なお、この酸と塩とのモル比を中和率と呼ぶ。上記塩を形成させるための吸水性樹脂の中和は重合前に単量体の状態で行っても良いし、あるいは重合途中や重合後に重合体の状態で行っても良いし、それらを併用してもよい。
【0024】
本発明で用いる吸水性樹脂を得るための単量体は、必要に応じて上記アクリル酸(塩)以外の単量体を含有していてもよい。アクリル酸(塩)以外の単量体としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸等のアニオン性不飽和単量体及びその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、N-アクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン、N-ビニルアセトアミド等のノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びこれらの四級塩等のカチオン性不飽和単量体等が挙げられる。これら単量体は、単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。」

d 「【0039】
・・・
(3)吸水剤の製造方法
本発明に用いられる吸水剤は、好ましくは、前記方法により得られた吸水性樹脂粒子(a1)の表面を特定の表面架橋剤を用いて架橋処理し、液透過性向上剤(β)を添加することによって得られる。
【0040】
好ましくは、無加圧下吸収倍率(CRC)が15g/g以上、33g/g未満の範囲、および/または、加圧下吸収倍率(AAP)が15?29g/gの範囲まで表面架橋される。
本発明で好適に使用される表面架橋剤としては、吸水性樹脂中の官能基と反応しうる官能基(好ましくはカルボキシル基と脱水反応またはエステル交換反応する官能基)を、少なくとも2個有する化合物を例示することが出来る。吸水性樹脂中の官能基は、好ましくはアニオン性解離基であり、より好ましくはカルボキシル基である。
このような表面架橋剤としては例えば、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2-ブテン-1,4-ジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン-オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;・・・
等を挙げることができる。」

e 「【0045】
吸水性樹脂粒子(a1)と表面架橋剤とを混合した後、その混合物は、加熱処理および/あるいは光照射処理をおこなわれることにより、吸水性樹脂粒子(a1)の表面が架橋され、好ましくは、無加圧下吸収倍率(CRC)が15g/g以上、33g/g未満の範囲、および/または、加圧下吸収倍率(AAP)が15?29g/gの範囲まで表面架橋される。本発明で加熱処理を行う場合、処理時間は、1分?180分が好ましく、3分?120分がより好ましく、5分?100分がさらに好ましい。処理温度は60?250℃の範囲が好ましく、100?210℃の範囲がより好ましく、120?200℃の範囲がさらに好ましい。加熱温度が60℃未満では、加熱処理に時間がかかり生産性の低下を引き起こすのみならず、均一な架橋が達成されず、目的とする吸水剤が得られなくなるおそれがある。また処理温度が250℃を越えると、得られる表面が架橋処理されてなる吸水性樹脂粒子(α)がダメージを受け、吸収倍率に優れたものが得られにくいとことがある。」

f 「【0050】
本発明で使用される液透過性向上剤(β)が無機微粒子の場合、その粒子径は取扱い性や添加効果の点から、500μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。前記粒子径は、1次粒子の粒子径である場合と2次粒子(造粒物、凝集体)の粒子径である場合の両方の場合を含む。非凝集体(1次粒子)のシリカやアルミナなどのように粒子の硬度が高く、衝撃力で容易に壊れない化合物の粒子を使用する場合は、凝集体や造粒物の1次粒子の粒子径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.1μm以下である。
これら本発明で使用する液透過性向上剤(β)の具体例としては、例えば、タルク、カオリン、フラー土、ベントナイト、活性白土、重晶石、天然アスファルタム、ストロンチウム鉱石、イルメナイト、パーライトなどの鉱産物;硫酸アルミニウム14?18水塩(または無水物)、硫酸カリウムアルミニウム12水塩、硫酸ナトリウムアルミニウム12水塩、硫酸アンモニウムアルミニウム12水塩、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、酸化アルミニウムなどのアルミニウム化合物類;その他の多価金属塩、多価金属酸化物および多価金属水酸化物;親水性のアモルファスシリカ(例、乾式法:トクヤマ社 ReolosilQS-20、沈殿法:DEGUSSA社 Sipernat22S, Sipernat2200)類;酸化ケイ素・酸化アルミ・酸化マグネシウム複合体(例、ENGELHARD社 Attagel#50)、酸化ケイ素・酸化アルミニウム複合体、酸化ケイ素・酸化マグネシウム複合体などの酸化物複合体類;などを挙げる事が出来る。また、米国特許第5164459号公報、欧州特許第761241号公報などに例示されたものも使用可能である。これらの粒子の中から親水性の粒子(例えば、硫酸アルミニウム14?18水塩や親水性のアモルファスシリカ)を選択して使用するのが好ましいが、粒子の親水性が低い場合は、粒子表面を親水性化合物で処理して親水化したものを使用すれば良い。これらのものを単独で用いても良いし、2種以上使用してもよい。
【0051】
本発明で使用する液透過性向上剤(β)の混合方法としては、硫酸アルミニウム等の水溶性多価金属塩やカチオン性高分子化合物を水溶液として混合する方法やスラリー状として混合する方法、粉体として混合する方法などで混合されるが、好ましくは粉体として混合する方法である。また、吸水性樹脂粒子に対する添加量は、0.01?5質量%が好ましく、0.05?3質量%がより好ましい。添加量が5質量%より多くなると吸収倍率の低下を招き、0.01質量%より少ないと添加の効果が得られなくなる恐れがある。また、添加量を変えることで、吸水剤の液透過性および毛管吸引力を調整することが可能である。」

g 「【0054】
本発明の吸水剤は、吸水性樹脂中の官能基と反応しうる官能基(好ましくはカルボキシル基と脱水反応またはエステル交換反応する官能基)を、少なくとも2個有する化合物によって、表面を架橋処理されてなる粒子である。
本発明の吸水剤は、無加圧下での0.9質量%生理食塩水に対する無加圧下吸収倍率(CRC)が、15g/g以上であり、好ましくは15g/g以上、33g/g未満であり、より好ましくは17g/g以上、31g/g未満であり、さらに好ましくは19g/g以上、29g/g未満であり、最も好ましくは23g/g以上、28g/g未満である。CRCが15g/g未満となると吸収倍率が低すぎるため、吸水体などに用いられた場合十分な性能が得られないおそれがあるばかりか、経済的にも不利である。また、CRCが33g/g以上となると、ゲルの吸収倍率が高くなりすぎゲルの強度が低下するため、液透過性向上剤(β)による液透過性の向上(SFCの向上)が十分でなく、目的とする性能が得られないおそれがある。本発明の吸水剤に含まれる液透過性向上剤(β)は、CRCが33g/g未満で特に効果があり、CRCが29g/g未満で著しい効果がある。」

h 「【0066】
より好ましくは、前記吸水剤がさらに液透過性向上剤(β)を含み、その液透過性向上剤(β)の含有量が該吸水性樹脂粒子(α)100質量部に対して0.01?5質量部の範囲である。
したがって、本発明の吸水剤は液透過性と毛管吸引力を併せ持つので、おむつ中で優れた液拡散性を示すとともに液戻り量を低減させることができる。そして、本発明の吸水剤は、高濃度コアのおむつ中、特に、コア濃度が50質量%以上のおむつ中で前記特徴を発揮することができる。
本発明の吸水剤は、0.9質量%生理食塩水に対する4.83kPaで60分の加圧下吸収倍率(AAP)が、好ましくは15?29g/g、より好ましくは20?27g/gの範囲である。」

i 「【0070】
本発明の吸水剤は、吸水体に使用された場合、液透過性と毛管吸引力のバランスが良いため、液の取り込みが早く、また、吸水体表層の液の残存量が少ない、非常に優れた吸水体が得られる。
また、これらの優れた吸水特性を有しているため種々の用途の吸水保水剤として使用できる。例えば紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の吸収物品用吸水保水剤;水苔代替、土壌改質改良剤、保水剤、農薬効力持続剤等の農園芸用保水剤;内装壁材用結露防止剤、セメント添加剤等の建築用保水剤;リリースコントロール剤、保冷剤、使い捨てカイロ、汚泥凝固剤、食品用鮮度保持剤、イオン交換カラム材料、スラッジまたはオイルの脱水剤、乾燥剤、湿度調整材料等で使用できる。また、本発明で得られた吸水剤は紙おむつ、生理用ナプキンなどの、糞、尿または血液の吸収用衛生材料に特に好適に用いられる。
【0071】
吸水体は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に用いられる場合、(a)着用者の体に隣接して配置される液体透過性のトップシート、(b)着用者の身体から遠くに、着用者の衣類に隣接して配置される、液体に対して不透過性のバックシート、および(c)トップシートとバックシートの間に配置された吸水体を含んでなる構成で使用されることが好ましい。吸水体は二層以上であっても良いし、パルプ層などとともに用いても良い。
より好ましい構成では、吸水体中の吸水剤は、坪量が60g/m^(2)?1500g/m^(2)であることが好ましく、より好ましくは100g/m^(2)?1000g/m^(2)、さらに好ましくは200g/m^(2)?800g/m^(2)である。」

甲2には、請求項1を引用する請求項7を更に引用する請求項8に記載された発明に着目すると、次の発明が記載されている(上記(ア)a)。

「アクリル酸および/またはその塩を含む単量体を架橋重合して得られた、不定形破砕状粒子の表面がさらに架橋処理されてなる吸水性樹脂粒子(α)および液透過性向上剤(β)を含む粒子状吸水剤であって、
該粒子状吸水剤の質量平均粒子径が234?394μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25?0.45、無加圧下吸収倍率が15g/g以上29g/g未満、水可溶成分が15質量%以下であり、
液透過性向上剤(β)の含有量が該吸水性樹脂粒子(α)100質量部に対して0.01?5質量部の範囲であり、
前記液透過性向上剤(β)が水不溶性親水性の無機微粒子および/または水溶性の多価金属塩である、吸水剤」(以下、「甲2発明」という。)。

(イ)本件発明1について
a 対比
甲2発明の「吸水性樹脂粒子」及び「吸水剤」は、上記(ア)cから、本件発明1の「高吸水性樹脂」及び「高吸水性樹脂組成物」に相当する。また、甲2発明の「液透過性向上剤(β)」は「水不溶性親水性の無機微粒子」であり、甲2発明における「液透過性向上剤(β)」の粒子径は好ましくは10μm以下であり(上記(ア)f)、本件発明1における「平均粒子サイズは2μm?20μm」と範囲が重複するから、本件発明1の「粒子状」に相当するといえる。

そうすると、本件発明1と甲2発明は、「高吸水性樹脂および粒子状の物質を含む高吸水性樹脂組成物」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1b:本件発明1は、高吸水性樹脂の「表面が架橋された」ものであるのに対して、甲2発明は、表面が架橋されたものではない点。
相違点2b:上記粒子状の物質に関して、本件発明1は、「前記水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂100重量部に対して、0.5?5重量部の含有量で含まれ」るのに対して、甲1発明は、「液透過性向上剤(β)」である「水不溶性親水性の無機微粒子」を「吸水性樹脂粒子(α)100質量部に対して0.01?5質量部の範囲」で含有する点。
相違点3b:本件発明1は、「前記水酸化アルミニウムは、粒子の70重量%以上が前記高吸水性樹脂粒子の表面に固定され、高吸水性樹脂粒子と物理的に分離された状態で存在せず」にあるのに対して、甲2発明は、そのように「液透過性向上剤(β)」が「吸水性樹脂粒子」に固定されているかが不明である点。
相違点4b:本件発明1は、「生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)が25g/g以上であり、生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能(AUP)が10g/g以上であり、生理食塩水に対する自由膨潤ゲル層透過度(GBP、Free Swell Gel Bed Permeability)が10darcy以上であり、吸水速度(vortex)が58秒以下」(以下、「吸水性能」という。)であるのに対して、甲2発明は、上記CRC、AUP、GBP及び吸水速度(vortex)の値が不明である点。
相違点5b:本件発明1では「水酸化アルミニウムの平均粒子サイズは2μm?20μmである」のに対して、甲2発明では「液透過性向上剤(β)」の粒子径が不明である点。

b 検討
事案に鑑みて、相違点2bから検討する。
甲2には、甲2発明における「液透過性向上剤(β)」として、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物類が例示されているが(上記(ア)f)、水酸化アルミニウムは記載も示唆もされていない。
そうすると、相違点4bは実質的な相違点であり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2に記載された発明ではない。

また、甲2発明は、毛管吸引力、すなわちドライタッチ性や液保持性と、液透過性との両方の性能を併せ持つ吸水剤の提供を課題とするものであるが、甲3及び甲7にはそのような課題は記載されておらず、甲2発明と甲3及び甲7に記載された事項は課題が共通するとはいえないものである。
そうすると、甲2発明において、甲3及び甲7の記載に基づいて、「液透過性向上剤(β)」として水酸化アルミニウムを用いることが動機づけられるとはいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明、並びに甲2、甲3及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

c 本件発明1の効果
本件発明1は、上記吸水性能を示し、「保水能と加圧吸水能などの物性を低下することなく向上した通液性を有することができ、これと同時に、高温多湿環境においてケーキング防止特性を有して保管安定性に優れた高吸水性樹脂組成物を製造することができる」(本件明細書の段落【0056】)という格別顕著な効果を奏するものであり、甲2、甲3及び甲7に記載された事項から予測し得たものであるとはいえず、この効果は、本件明細書の実施例から具体的に確認することができる。

(ウ)本件発明3?6、9及び10について
本件発明3?6、9及び10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記(イ)で述べたのと同じ理由により、甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明、並びに、甲2、甲3及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(エ)まとめ
以上のとおり、請求項1、3?6、9及び10に係る発明は、甲2に記載された発明ではないから、取消理由4-2(甲2を主引用文献とする新規性)によっては、本件特許の請求項1、3?6、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。
また、請求項1、3?6、9及び10に係る発明は、甲2に記載された発明、甲2、甲3及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由5-2(甲2を主引用文献とする進歩性)によっては、本件特許の請求項1、3?6、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。

ウ 甲3を主引用文献とする取消理由5-3
取消理由5-3は、取消理由9と同旨であり、上記1(1)で述べたとおり、本件発明1は、甲3に記載された発明、甲3、甲11及び甲12に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。


3 令和2年4月10日提出の意見書における申立人の主張に対して
(1)明確性要件について
申立人は、本件訂正の訂正事項8による「吸水速度(vortex)が58秒以下であり」の規定は、本件明細書にその測定温度が記載されておらず、下記の参考資料1によると、測定対象である試料(高吸水性樹脂組成物)の温度が高くなるにつれて、吸水時間(vortex time test)が短くなることを、容易に理解することができるから、吸水速度(vortex)の測定温度を特定する必要があり、本件発明1?11は明確でない旨を主張する(意見書の1頁16行?4頁19行)。
参考文献1:Modern Superabsorbent Polymer Technology (1998), 199?200頁
しかしながら、Vortex法による吸水速度の試験は、標準温度(23℃±2℃)の室内で行われることは、本件出願時の技術常識であると解される(必要があれば、JIS K7224-1996を参照)。
そうすると、本件発明1は明確であり、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとまではいえない。

(2)進歩性について
申立人は、本件発明の効果は甲3の記載から予測し得るものであり、また、下記の参考資料2?7を提示して、本件発明1は当業者が容易に想到し得たものである旨を主張する(意見書の4頁20行?7頁11行)。
しかしながら、上記1(1)ク及びケで述べたように、本件発明の効果は、甲1、甲3、甲11、甲12及び引用文献1?3の記載から予測し得たものとはいえない。また、本件発明1の上記吸水性能は、高吸水性樹脂粒子組成物の構成成分や構造によって影響を受けるものと解され、参考資料2?7には、本件発明1の吸水性能であると解すべきデータは記載されていないし、参考資料2?7の記載に基いて、本件発明1、3?6、9及び10を当業者が容易に発明をすることができたともいえない。
参考資料2:特表2009-534483号公報
参考資料3:国際公開第2013/098045号
参考資料4:特表2013-503927号公報
参考資料5:特表2011-513040号公報
参考資料6:特表2012-505940号公報
参考資料7:特表2015-503645号公報

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1、3?6、9及び10に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
他に請求項1、3?6、9及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2、7及び8に係る特許は、上記のとおり、本件訂正の訂正事項9、13及び14により削除された。これにより、請求項2、7及び8に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
高吸水性樹脂組成物
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温多湿環境において優れたケーキング防止特性を有すると同時に、加圧下で高い吸水性および優れた通液性を有する高吸水性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百から1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発業者ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などとそれぞれ異なる名前で名付けている。このような高吸水性樹脂は、生理用品として実用化され始め、現在は、幼児用紙おむつなどの衛生用品のほか、園芸用土壌保水剤、土木・建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、およびシップ用などの材料に幅広く使用されている。
【0003】
このような高吸水性樹脂を製造する方法としては、逆相懸濁重合による方法、または水溶液重合による方法などが知られている。逆相懸濁重合については、例えば、日本国特開昭56-161408、特開昭57-158209、および特開昭57-198714などに開示されている。
【0004】
水溶液重合による方法としてはさらに、複数の軸を備えた捏和機内で重合ゲルを破断、冷却しながら重合する熱重合方法、および高濃度水溶液をベルト上で紫外線などを照射して重合と乾燥を同時に行う光重合方法などが知られている。
【0005】
このような重合反応を経て得られた含水ゲル状重合体は、一般に、乾燥工程を経て粉砕した後、粉末状の製品として市販される。
【0006】
高吸水性樹脂を用いた製品において、透過率(permeability)は、吸収される液体の流動性を測定する尺度である。透過率は、架橋結合された樹脂の粒子サイズ分布、粒子形状および粒子間の開口部の連結性、膨潤したゲルの表面改質などの特性に応じて異なる。高吸水性樹脂組成物の透過率に応じて、膨潤した粒子を通過する液体の流動性が異なる。透過率が低ければ、液体が高吸水性樹脂組成物を通して容易に流動できなくなる。
【0007】
高吸水性樹脂において透過率を増加させる一つの方法として、樹脂重合後に表面架橋反応を行う方法があり、この時、表面架橋剤と共にシリカ(silica)やクレー(clay)などを添加する方法が利用されてきた。例えば、米国特許第5,140,076号(特許文献1)および第4,734,478号(特許文献2)は、乾燥高吸水性樹脂粉末の表面架橋結合中のシリカの添加を開示している。
【0008】
しかし、前記シリカやクレーなどを添加するに伴って透過率は向上するが、これに比例して保水能または加圧吸水能の低下が現れ、移動時、外部の物理的衝撃によって高吸水性樹脂と分離されやすい問題がある。特に、シリカ(silica)やクレー(clay)などを湿式または乾式混合する場合にケーキング防止特性などが得られるものの、加圧下で吸水性能が顕著に低下し、実際におむつなどに適用時、速い吸水性能を実現しにくいという欠点がある。
【0009】
特に、シリカの場合、乾式混合しなければ、目標のケーキング防止効果を確保しにくく、少量の添加でも加圧下で吸水性能が過度に減少する副作用がある。また、乾式混合されたシリカは、ラインからの製品移送中、高吸水性樹脂と分離されたシリカ粉塵が発生するという欠点がある。
【0010】
したがって、おむつなどの個人衛生吸収用品において、迅速に排泄物を吸収し、その排泄物を溜めておいたり、またはその排泄物を分配または溜めるために隣接した物質に移動させ、これと同時に、優れたケーキング防止特性により、高温多湿環境下においても優れた保管安定性を示す高吸水性材料の開発に対する研究が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,140,076号明細書
【特許文献2】米国特許第4,734,478号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、長時間経過後にも加圧状態で水分がほとんど滲み出ない加圧吸水能(AUP)の低下なしに水の通液性を向上させると同時に、高温多湿環境においてケーキング防止特性を有して保管安定性に優れた高吸水性樹脂組成物およびこれを含む個人衛生吸収用品を提供する。
【0013】
本発明は、高吸水性樹脂および水酸化アルミニウムを含み、前記水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂の表面に付着したものである高吸水性樹脂組成物を提供する。
【0014】
本発明はまた、前記高吸水性樹脂組成物を含む個人衛生吸収用品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下、発明の具体的な実施形態により高吸水性樹脂組成物およびこれを含む個人衛生吸収用品についてより詳細に説明する。ただし、これは発明の一例として提示されるもので、これによって発明の権利範囲が限定されるものではなく、発明の権利範囲内で実施形態に対する多様な変形が可能であることは当業者に自明である。
【0016】
追加的に、本明細書全体において、特別な言及がない限り、「含む」または「含有する」とは、ある構成要素(または構成成分)を特別な制限なく含むことを指し示し、他の構成要素(または構成成分)の付加を除くと解釈されない。
【0017】
本発明者らは、初期吸水性に優れ、長時間経過後にも加圧状態で水分がほとんど滲み出ることなく吸水能に優れた高吸水性樹脂組成物および個人衛生吸収用品に対する研究を繰り返す過程で、所定の水酸化アルミニウム粉末を表面処理することによって、加圧下で吸水能(AUP)の低下が最小化され、かつ、優れた通液性およびケーキング防止特性を付与できることを確認し、本発明を完成した。
【0018】
そこで、発明の一実施形態によれば、加圧吸水能(AUP)の低下なしに水の通液性を向上させると同時に、高温多湿環境においてケーキング防止特性を有する高吸水性樹脂組成物が提供される。本発明の高吸水性樹脂組成物は、高吸水性樹脂および水酸化アルミニウムを含み、前記水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂の表面に付着したものである。
【0019】
特に、本発明の高吸水性樹脂組成物は、後述するように、特定の水酸化アルミニウム粒子を用いて高吸水性樹脂の表面をコーティングすることによって、ケーキング防止効果および透過性が向上し、かつ、加圧下で吸水能(AUP)の低下が最小化されることを特徴とするものである。
【0020】
以下の明細書において、水酸化アルミニウムが高吸水性樹脂の表面に「付着」しているとは、本発明の高吸水性樹脂組成物に含まれている水酸化アルミニウム粒子の約70重量%、あるいは約90重量%以上が、前記高吸水性樹脂粒子の表面に固定され、前記組成物中において高吸水性樹脂粒子と物理的に分離された状態で存在しないことを指すことができる。これは、水酸化アルミニウム粒子が高吸水性樹脂粒子と単純「混合」され、組成物中において水酸化アルミニウム粒子の大部分、例えば、約50重量%以上が高吸水性樹脂粒子と物理的に分離された状態で存在する状態と区分される。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記高吸水性樹脂組成物は、粒子形態を有するもので、特定の水酸化アルミニウム粉末と高分子樹脂粒子とを含むことができる。
【0022】
また、本発明の高吸水性樹脂組成物は、所定の粒子サイズを有する水酸化アルミニウム粒子を用いて、保水能と加圧吸水能などの物性を低下することなく向上した通液性を有することができ、これと同時に、高温多湿環境においてケーキング防止特性を有して保管安定性を向上させることができる。
【0023】
このような本発明の高吸水性樹脂組成物は、遠心分離保水能(CRC)、および加圧吸水能(AUP)を全て同時に最適化する複合的な物性の結合により、シナジー効果を提供することができる。これによって、本発明の高吸水性樹脂組成物は、優れた物性と心地よい着用感を誘導することができる。
【0024】
前記高吸水性樹脂組成物は、生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)が25g/g以上であり、生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能(AUP)が10g/g以上であってもよい。
【0025】
前記高吸水性樹脂組成物において、生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)は、下記計算式1により示すものになってもよい。
【0026】
【数1】

【0027】
前記計算式1において、W_(0)(g)は、吸水性樹脂組成物の重量(g)であり、W_(1)(g)は、吸水性樹脂組成物を使用せず、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に測定した装置の重量であり、W_(2)(g)は、常温で0.9質量%の生理食塩水に吸水性樹
脂組成物を30分間浸水後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に、吸水性樹脂組成物を含めて測定した装置の重量である。
【0028】
前記高吸水性樹脂組成物の生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)は、25g/g以上、好ましくは28g/g以上、より好ましくは30g/g以上になってもよい。
【0029】
また、本発明の高吸水性樹脂組成物において、前記生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能(AUP)は、下記計算式2で示すものであってもよい。
【0030】
【数2】

【0031】
前記計算式2において、W_(0)(g)は、吸水性樹脂組成物の重量(g)であり、W_(1)(g)は、吸水性樹脂組成物の重量および前記吸水性樹脂組成物に荷重を付与できる装置の重量の総和であり、W_(2)(g)は、荷重(0.7psi)下で1時間前記吸水性樹脂組成物
に水分を供給した後の水分が吸収された吸水性樹脂組成物の重量および前記吸水性樹脂組成物に荷重を付与できる装置の重量の総和である。
【0032】
前記高吸水性樹脂組成物の生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能(AUP)は、10g/g以上、好ましくは15g/g以上、より好ましくは20g/g以上になってもよい。
【0033】
本発明において、前記計算式1および2に記載のW_(0)(g)は、それぞれの物性値に適用した吸水性樹脂の重量(g)に相当するもので、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0034】
本発明において、前記高吸水性樹脂組成物の生理食塩水に対する自由膨潤ゲル層透過度(GBP、Free Swell Gel Bed Permeability)は、10darcy以上、好ましくは20darcy以上、より好ましくは25darcy以上になってもよい。ここで、1ダルシー(darcy)は、粘度が1センチポアズの1立方センチメートルの流体が、固体の2つの面の間の圧力差が1気圧の場合、1センチメートルの厚さおよび1平方センチメートルの断面積を通して、1秒で流れる固体の透過度である。また、1ダルシーは、約0.98692×10^(-12)m^(2)または約0.98692×10^(-8)cm^(2)と等しい。
【0035】
一方、本発明の高吸水性樹脂組成物は、高吸水性樹脂と共に、特定の粒子サイズを有する水酸化アルミニウム粒子を含むことを特徴とする。前記水酸化アルミニウムは、不溶性特徴を有し、高吸水性樹脂の表面に分散して固着しているため、高吸水性樹脂が互いに凝集されるのを防止してケーキング防止効果および通液性を向上させることができる。このような水酸化アルミニウムは、水に溶けず、高吸水性樹脂と反応しない無機物に相当する。特に、水酸化アルミニウムは、ケーキング防止剤として主に使用されるシリカ対比の比重が約40倍高く、平均粒度が大きくて表面をコーティングする程度が相対的に小さく、加圧下で吸水能の低下が最小化できる。
【0036】
前記水酸化アルミニウムの平均粒子サイズは、2μm?50μm、好ましくは5μm?40μm、より好ましくは7μm?20μmになってもよい。前記水酸化アルミニウム粒子は、加圧吸水能(AUP)の低下を最少化する側面から、5μm以上の平均粒子サイズを有するとよい。さらに、前記水酸化アルミニウム粒子は、高吸水性表面によく固着させて微粉の含有量の増加およびケーキング防止効果を与えるために、50μm以下の平均粒子サイズを有してもよい。
【0037】
また、本発明の高吸水性樹脂組成物は、水酸化アルミニウムを処理した高吸水性樹脂に追加的にシリカを極めて少量処理することによって、追加的な自由膨潤ゲル層透過度(GBP)の向上が可能である。前記水酸化アルミニウムが高吸水性樹脂の表面に付着したものである高吸水性樹脂組成物100重量部に対して、シリカ0.1重量部以下が追加的に表面に付着したものであってもよい。前記シリカは、好ましくは、水酸化アルミニウムを処理した高吸水性樹脂に、0.05重量部以下で表面にコーティング処理されてもよい。この時、前記高吸水性樹脂組成物の生理食塩水に対する自由膨潤ゲル層透過度(GBP)は、65darcy以上、好ましくは70darcy以上、好ましくは75darcy以上になってもよい。
【0038】
前記高吸水性樹脂組成物はさらに、優れた加圧吸水能(AUP)および通液性と共に、優れた吸水速度(vortex)を有する。前記高吸水性樹脂組成物の吸水速度(vortex)は、58秒以下または5秒?58秒、好ましくは53秒以下、より好ましくは50秒以下になってもよい。
【0039】
本発明の高吸水性樹脂組成物は、上述のように、長時間経過後にも加圧状態で水分がほとんど滲み出ない加圧吸水能(AUP)の低下なしに水の通液性および吸水速度(vortex)を向上させると同時に、優れたケーキング防止特性を有する。前記高吸水性樹脂組成物のケーキング防止効率(A/C、Anti-caking)は、下記計算式3で示すものであってもよい。
【0040】
【数3】

【0041】
前記計算式3において、W_(5)(g)は、高吸水性樹脂組成物の重量(g)であり、W_(6)(g)は、直径10cmのフラスコ皿に均等に塗布した後、温度40±3℃、湿度70±3%の水準を維持する恒温恒湿チャンバー内で10分間維持させた後、フィルターペーパーにフラスコ皿をひっくり返して3回軽くタッピング(tapping)後、高吸水性樹脂が落ちる吸水性樹脂組成物の重量である。
【0042】
前記高吸水性樹脂組成物のケーキング防止効率(A/C、Anti-caking)は、30%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上になってもよい。
【0043】
一方、本発明において、高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百から1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発企業ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などとそれぞれ異なる名前で名付けている。このような高吸水性樹脂は、生理用品として実用化され始め、現在は、幼児用紙おむつなどの衛生用品のほか、園芸用土壌保水剤、土木・建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、およびシップ用などの材料に幅広く使用されている。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、前記高吸水性樹脂は、遠心分離保水能(CRC)、および加圧吸水能(AUP)、通液性(GBP)を全て同時に最適化する複合的な物性の結合により、シナジー効果を提供することができる。ここで、前記高吸水性樹脂の遠心分離保水能(CRC)、および加圧吸水能(AUP)、通液性(GBP)は、前記組成物について上述のような同一またはそれを上回る程度を示すことができる。
【0045】
また、本発明の高吸水性樹脂組成物は、例えば、図1の走査電子顕微鏡(SEM)写真に示されているように、本発明によれば、水酸化アルミニウムはよく分散して高吸水樹脂の表面に固くくっついていることを確認することができる。反面、図2の走査電子顕微鏡(SEM)写真に示されているように、シリカを混合した場合は、シリカが塊の形態で一部が高吸水樹脂と分離された状態であることを観察することができる。このような側面から、本発明の高吸水性樹脂組成物は、150μm未満の粒度分布比率において、ベースポリマーの高吸水性樹脂と比較して同一または減少する特性を有する。
【0046】
前記高吸水性樹脂は、酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を、炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた架橋重合体を含むことができる。
【0047】
また、前記架橋重合体の架橋密度は、前記加圧吸水能(AUP)の数値に影響を及ぼす要素になり得ることから、本発明に係る方法によりベース樹脂を表面架橋させることが好ましい。
【0048】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタアクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)一ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、または(N,N)一ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0049】
本発明の高吸水性樹脂組成物は、上述のように、保水能と加圧吸水能などの物性を低下することなく向上した通液性を有することができ、これと同時に、高温多湿環境においてケーキング防止特性を有して保管安定性に優れた特性を有する。特に、代表的なケーキング防止剤として知られたシリカの場合、0.1%未満の極めて少ない量を添加時にも20%以上の加圧吸水能(AUP)の低下が現れ、工程上で比重の差による分離、極微粉の粉塵の発生によるフィルター吸着など、添加量が消失しながらケーキング防止効果が低減される問題がある。しかし、本発明により、水酸化アルミニウムを、例えば、3%以上添加時にも加圧吸水能(AUP)の低下は10%以内に限られ、工程上の消失の危険がなく、含有量の変化に対する性能が安定して高吸水性樹脂の製造が便利であり、高い品質安定性の確保が可能である。
【0050】
また、本発明の一実施形態によれば、シリカもすべての方法で処理が可能であり、乾式以外の方法で処理時には、ケーキング防止効果が低下し、特にメタノールのような低価アルコールと接触する組成および工程においてはケーキング防止効果が全く現れず、いずれの方法であれ、少量の添加でもAUPが過度に低下するという欠点がある。
【0051】
一方、発明の他の実施形態によれば、上述のような高吸水性樹脂組成物を含む個人衛生吸収用品が提供される。本発明の個人衛生吸収用品は、高吸水性樹脂組成物、液体透過性上部シート、および防水性背面シートを含むことができる。
【0052】
本発明に係る個人衛生吸収用品において、高吸水性樹脂組成物は、上述のような特性を有するもので、高吸水性樹脂および水酸化アルミニウムを含み、前記水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂の表面に付着したものである。
【0053】
前記液体透過性上部シートは、通常、感触が柔らかく、着用者の皮膚に刺激を与えないもので構成され、特に、上部シートは、液状の体分泌物が吸収体に速かに通過できる物性を有するものでなければならない。このような物性を有するものとして適した上部シートは、気孔プラスチックフィルム、天然繊維、合成繊維、または天然および合成繊維の混合物のような広範囲な物質から製造されて使用できる。
【0054】
また、防水性背面シートは、液体に対して不透過性であるので、吸収体に吸収されて含まれる体分泌物が、着用者の衣服やベッドシートなどのような、おむつと直接接触する製品を汚したり濡らさないようにする。前記背面シートは、液体に対しては不透過性であり、気体に対しては透過性であることが好ましい。このような物性を有するものとして、通常プラスチックフィルムが使用されてきており、最近は、ポリエチレンフィルムに不織布を接着した素材を用いることができる。
【0055】
本発明において、前記記載された内容以外の事項は、必要に応じて加減が可能なものであるので、本発明では特に限定しない。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、所定の水酸化アルミニウム粒子を用いて表面処理することによって、保水能と加圧吸水能などの物性を低下することなく向上した通液性を有することができ、これと同時に、高温多湿環境においてケーキング防止特性を有して保管安定性に優れた高吸水性樹脂組成物を製造することができる。
【0057】
特に、本発明の高吸水性樹脂組成物は、各種おむつ、排便訓練用パンツ、尿失禁用パッドなどにおいて物性の向上が可能であり、これによって、超薄型技術が適用された高吸水能の個人衛生吸収用品の製造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例6により水酸化アルミニウムで処理した高吸水性樹脂の表面を示す写真である。
【図2】本発明の比較例5によりシリカを処理した高吸水性樹脂の表面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるものではない。
【0060】
[実施例]
製造例:高吸水性樹脂の製造
まず、高吸水性樹脂は、次のような方法で製造した。アクリル酸100g、架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523)0.25?0.5g、50%苛性ソーダ(NaOH)83.3g、および水89.8gを混合して、単量体の濃度が45重量%のモノマー水溶液組成物比を有するように製造した。
【0061】
以降、前記モノマー水溶液810gを、まず、0.18%アスコルビン酸(ascorbic acid)溶液30.54gと、1%過硫酸ナトリウム溶液33gとを先に混合し、0.15%過酸化水素溶液30.45gと共に連続で重合しながらニーディング可能な重合器の供給部を通して投入して重合を実施した。この時、重合器の温度は80℃に維持し、重合の最高温度は110℃、重合時間は1分15秒である。以降、引き続きニーディングを実施して、20分間重合とニーディングを実施した。以降、生成された重合器の大きさは0.2cm以下で分布した。この時、最終形成された含水ゲル重合体の含水率は51重量%であった。
【0062】
次に、前記含水ゲル重合体に対して、180℃の温度の熱風乾燥機で30分間乾燥し、乾燥した含水ゲル重合体をピンミル紛砕機で粉砕した。その後、ふるい(sieve)を用いて、粒度(平均粒径サイズ)が150μm未満の重合体と、粒度150μm?850μmの重合体とを分級して、CRCが34g/gのベースポリマー(A)、CRCが40g/gのベースポリマー(B)を得た。
【0063】
実施例1
CRCが34g/gのベースポリマー(A)に、8μmの水酸化アルミニウム0.5重量%を乾式混合した後に、1,3-プロパンジオール5重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、180℃以上の温度で40分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0064】
実施例2
CRCが34g/gのベースポリマー(A)に、8μmの水酸化アルミニウム1.0重量%を乾式混合した後に、1.3-プロパンジオール5重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、180℃以上の温度で40分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0065】
実施例3
CRCが40g/gのベースポリマー(B)に、2μmの水酸化アルミニウム1.0重量%を乾式混合した後に、エチレングリコールジグリシジルエーテル3重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、120℃以上の温度で40分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0066】
実施例4
CRCが34g/gのベースポリマー(A)に、8μmの水酸化アルミニウム1.5重量%を乾式混合した後に、1.3-プロパンジオール5重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、180℃以上の温度で40分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0067】
実施例5
CRCが40g/gのベースポリマー(B)に、8μmの水酸化アルミニウム1.5重量%を乾式混合した後に、エチレングリコールジグリシジルエーテル3重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、120℃以上の温度で60分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0068】
実施例6
CRCが40g/gのベースポリマー(B)に、2μmの水酸化アルミニウム2.0重量%を乾式混合した後に、エチレングリコールジグリシジルエーテル3重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、120℃以上の温度で60分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0069】
実施例7
CRCが34g/gのベースポリマー(A)に、8μmの水酸化アルミニウム3.0重量%を乾式混合した後に、1.3-プロパンジオール5重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、180℃以上の温度で40分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0070】
実施例8
CRCが40g/gのベースポリマー(B)に、8μmの水酸化アルミニウム3.0重量%を乾式混合した後に、エチレングリコールジグリシジルエーテル3重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、120℃以上の温度で60分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0071】
実施例9
CRCが40gのベースポリマー(B)に、8μmの水酸化アルミニウム3.0重量%を乾式混合した後に、エチレングリコールジグリシジルエーテル3重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、120℃以上の温度で60分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。これにシリカ(Aerosil200)0.1%を乾式混合した。
【0072】
実施例10
CRCが40g/gのベースポリマー(B)に、8μmの水酸化アルミニウム5.0重量%を乾式混合した後に、エチレングリコールジグリシジルエーテル3重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、120℃以上の温度で60分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0073】
比較例1
CRCが34g/gのベースポリマー(A)に、1.3-プロパンジオール5重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、180℃以上の温度で40分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0074】
比較例2
CRCが40g/gのベースポリマー(B)に、エチレングリコールジグリシジルエーテル3重量%を含む表面処理溶液を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、120℃以上の温度で60分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0075】
比較例3
比較例2で得られた製品に、平均粒子サイズ12nmのシリカ(Aerosil200)を0.1%乾式混合して、製品を製造した。
【0076】
比較例4
比較例1で得られた製品に、平均粒子サイズ12nmのシリカ(Aerosil200)を1.0%乾式混合して、製品を製造した。
【0077】
比較例5
比較例2で得られた製品に、平均粒子サイズ12nmのシリカ(Aerosil200)を1.0%乾式混合して、製品を製造した。
【0078】
試験例
実施例1?10および比較例1?5により製造された高吸水性樹脂組成物に対して次のような方法で物性評価を行い、測定された物性値は下記表1に示した通りである。
【0079】
a)CRC:WSP241.3.10に基づいて測定
b)AUP:WSP242.3.10に基づいて測定
c)GBP:大韓民国公開特許公報第10-2009-0123904号に記載の自由膨潤ゲル層透過度試験に基づいて測定された。
【0080】
d)A/C:高吸水性樹脂2g(W_(5))を直径10cmのフラスコ皿に均等に塗布した後、温度40±3℃、湿度70±3%の水準を維持する恒温恒湿チャンバー内で10分間維持させた後、フィルターペーパーにフラスコ皿をひっくり返して3回軽くタッピング(tapping)後、高吸水性樹脂の落ちる量(W_(6))を測定した。ケーキング防止(Anti-caking)効率(A/C、%)はW_(6)/W_(5)×100で計算し、数値が高いほど効率に優れる。
【0081】
e)ボルテックス(Vortex):50.0±1.0mLの0.9%NaCl溶液を100mLビーカーに添加した。シリンダ型撹拌バー(30x6mm)を添加し、前記塩類溶液を600rpmで撹拌プレート上で撹拌した。2.000±0.010gの水分吸収性重合体粒子をできるだけ速く前記ビーカーに添加し、添加を始めながらストップウォッチを始めた。前記ストップウォッチを、前記混合物の表面が「静止(still)」状態になれば止めたが、前記状態は表面が乱流を持たないことを意味するもので、この時、前記混合物は相変わらず回転するが、粒子の全体表面が1つの単位として回転することになる。前記ストップウォッチに表示された時間をボルテックス時間として記録した。
【0082】
【表1】

【0083】
また、図1および図2に、それぞれ実施例6および比較例5により水酸化アルミニウムおよびシリカを処理した高吸水性樹脂表面の写真を示した。図1に示しているように、実施例6により水酸化アルミニウムを2.0%処理した高吸水性樹脂の場合、水酸化アルミニウムが表面によく分散して固く固着していることを確認することができる。しかし、図2に示しているように、比較例5によりシリカを1%乾式混合処理した高吸水性樹脂は均一でない状態で互いに固まっており、ひいては高吸水性樹脂と分離されていることを確認することができる。このように分離されたシリカ粒子は、工程移送中に粉塵が発生する原因になる問題がある。
【0084】
前記表1に示しているように、本発明に係る実施例1?10の高吸水性樹脂組成物は、比較例1?2と比較して、高温多湿環境においてケーキング防止特性を有して保管安定性を向上させることができ、優れた通液性および吸水速度(Vortex)を示す。また、比較例3?5と比較して、実施例7?10は、高温多湿環境において同等以上のケーキング防止効果および通液性を有し、かつ、高い加圧吸水能(AUP)および優れた吸水速度(Vortex)が実現される。
【0085】
さらに、実施例1?9の高吸水性樹脂組成物は、150μm未満の粒度分布比率が水酸化アルミニウムを処理しなかった比較例1?2の高吸水性樹脂と同等または減少した水準で、水酸化アルミニウムがベースポリマーの高吸水樹脂に強く付着していることを確認することができる。しかし、シリカを1%乾式混合処理した比較例4?5の高吸水性樹脂は、150μm未満の粒度分布比率は、比較例1?2のベースポリマー高吸水性樹脂と比較して顕著に増加し、ケーキング防止性能が非常に良くないことが分かる。
【0086】
特に、シリカが処理された比較例3?4のようにシリカを乾式適用した時にケーキング防止効果に優れるが、少量添加時にも過度な加圧吸水能(AUP)の低下が現れた。また、図2と実施例4?5において、シリカの高吸水性樹脂との分離、150μm通過含有量の増加から明らかなように、高吸水性樹脂に単純に混合されている状態で製品移送時、比重の差による分離およびバックフィルター捕集によるシリカの消失および不均一な分布によって、ケーキング防止特性の低下が発生することがあり、粉塵が多量発生して作業環境を阻害するという欠点がある。さらに、高分子樹脂の表面に固着させるために、湿式処理時にケーキング防止特性が低下し、特に表面処理時に溶液に一部使用されるアルコール類のように使用時の効率が急激に低下する問題があることは公知の事実である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が架橋された高吸水性樹脂および粒子状の水酸化アルミニウムを含み、前記水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂の架橋された表面に付着したものであり、
前記水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂100重量部に対して、0.5?5重量部の含有量で含まれ、
前記水酸化アルミニウムは、粒子の70重量%以上が前記高吸水性樹脂粒子の表面に固定され、高吸水性樹脂粒子と物理的に分離された状態で存在せず、
生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)が25g/g以上であり、
生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能(AUP)が10g/g以上であり、
生理食塩水に対する自由膨潤ゲル層透過度(GBP、Free Swell Gel Bed Permeability)が10darcy以上であり、
吸水速度(vortex)が58秒以下であり、
前記水酸化アルミニウムの平均粒子サイズは2μm?20μmである
高吸水性樹脂組成物。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記高吸水性樹脂は、酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を、炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた架橋重合体を含むものである請求項1に記載の高吸水性樹脂組成物。
【請求項4】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタアクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、または(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を含む請求項3に記載の高吸水性樹脂組成物。
【請求項5】
水酸化アルミニウムが高吸水性樹脂の表面に付着したものである高吸水性樹脂組成物100重量部に対して、シリカ0.1重量部以下が追加的に表面に付着したものである請求項1、3?4のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂組成物。
【請求項6】
粒子形態を有する請求項1、3?5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂組成物。
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】
請求項1、3?6のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂組成物を含む個人衛生吸収用品。
【請求項10】
前記高吸水性樹脂組成物、液体透過性上部シート、および防水性背面シートを含む請求項9に記載の個人衛生吸収用品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-07-13 
出願番号 特願2016-559137(P2016-559137)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08L)
P 1 651・ 121- YAA (C08L)
P 1 651・ 536- YAA (C08L)
P 1 651・ 113- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 海老原 えい子三原 健治  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 井上 猛
近野 光知
登録日 2018-05-25 
登録番号 特許第6342510号(P6342510)
権利者 エルジー・ケム・リミテッド
発明の名称 高吸水性樹脂組成物  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 特許業務法人池内アンドパートナーズ  
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