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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A63F
管理番号 1366099
異議申立番号 異議2020-700401  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-06-10 
確定日 2020-09-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第6619780号発明「遊技機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6619780号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第6619780号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成29年8月25日に特願2017-162431号として特許出願されたものであって、令和1年11月6日付けで特許査定がされるとともに令和1年11月22日に特許権の設定登録がされ、令和1年12月11日に特許掲載公報が発行された。その後令和2年6月10日にその特許に対し、特許異議申立人である日本電動式遊技機特許株式会社より特許異議の申立てがされたものである。


2 本件特許の請求項1に係る発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(A?Fは、当審で付与した。)。

(本件発明)
「【請求項1】
A 遊技を実行可能な遊技機であって、
B 特定態様に変化する所定表示を表示可能な所定表示手段と、
C 複数種類の態様のうちいずれかを所定表示の態様として決定可能な態様決定手段と、
D 所定表示が前記特定態様に変化したときに複数種類の特定演出のうちいずれかを実行可能な特定演出実行手段と、を備え、
E 前記態様決定手段は、
E1 一の所定表示の態様を決定した場合、該決定結果にもとづいて該一の所定表示とは異なる他の所定表示の態様を決定可能であり、
E2 所定表示が表示されてから前記特定態様に変化するまでの期間を所定表示の態様として決定可能であり、一の所定表示の態様よりも他の所定表示の態様の方が短い期間を決定しやすい
F ことを特徴とする遊技機。」

3 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、特許異議申立書において、証拠方法として甲第1号証を提出し、本件発明は甲第1号証に記載の発明であり、本件特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号の規定に該当し、本件特許は取り消すべきものである(以下、「理由1」という。)旨を主張するとともに、本件発明は甲第1号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号の規定に該当し、本件特許は取り消すべきものである(以下、「理由2」という。)旨を主張する。
また、特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件発明は明確でなく、本件特許は同法第36条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第4号の規定に該当し、本件特許は取り消すべきものである(以下、「理由3」という。)旨を主張する。

(証拠方法)
甲第1号証:特開2016-202414号公報

4 甲第1号証に記載の発明
これに対して、甲第1号証には、「遊技機」の発明に関し、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した)。

(1)「【0011】
図1は、ぱちんこ遊技機の前面側における基本的な構造を示す。ぱちんこ遊技機100は、主に遊技機枠と遊技盤で構成される。・・・
・・・
【0013】
遊技盤80は、レール82により区画された遊技領域81上に、第1始動口11、第2始動口12、大入賞口20、第1作動口31、第2作動口32、一般入賞口33、アウト口34、演出表示装置60、センター飾り64を含む。・・・」

(2)「【0043】
図3は、ぱちんこ遊技機100の機能ブロックを示す。ぱちんこ遊技機100は、遊技の基本動作や遊技の進行を制御する主制御装置としてのメイン基板200と、演出的な動作や処理を制御する副制御装置としてのサブ基板300とに機能を分担させた形態で構成される。
・・・
【0087】
図9は、サブ基板の構成を示すブロック図である。サブ基板300は、図柄態様決定手段301、パターン記憶手段302、演出決定手段303、演出制御手段304を備える。
・・・
【0098】
演出制御手段304は、第1抽選手段211または第2抽選手段212による当否抽選の判定結果として、選択された変動演出パターンデータにしたがって演出表示装置60へ装飾図柄61を含む演出画像を変動表示させる。・・・」

(3)「【0192】
つづいて、本実施例の特徴的な構成について説明する。本実施例においては、通常遊技中に実行される演出において、当否判定の結果が大当りである期待度が高いことを示唆する期待度示唆演出のうち特定の期待度示唆演出が実行される場合、特定の期待度示唆演出の表示開始タイミングを示唆する時間示唆演出(以下、「タイマー演出」という)を実行可能である。本実施例では、タイマー演出において、特定の期待度示唆演出の表示が開始されるまでの残り時間が表示され、残り時間がゼロになったタイミングを契機として特定の期待度示唆演出が開始される。別の例では、残り時間が所定時間になったタイミングを契機として特定の期待度示唆演出が開始されてもよい。
【0193】
期待度示唆演出は、前提技術において説明した予告演出、群予告演出、ステップアップ予告演出、スーパーリーチ演出やノーマルリーチ演出などのリーチ演出、リーチ演出の終了直前などに表示されるカットイン演出、リーチ煽り演出中などに実行される背景予告演出、1回の図柄変動において擬似的に複数回の図柄変動が実行されるように見せる擬似連続変動演出など、実行された場合に当否判定の結果が大当りとなって特別遊技が実行される可能性があることが示唆されるような各種の演出である。それぞれの期待度示唆演出により示唆される期待度は、期待度示唆演出の種類に応じて異なりうる。例えば、演出決定手段303が抽選により演出を決定する場合、期待度示唆演出が実行されたときに当否判定の結果が大当りとなる確率が期待度示唆演出の種類に応じて異なるように、当否判定の結果、又は、変動パターン決定手段により決定された変動パターンの種類ごとに、異なる抽選値の範囲がそれぞれの期待度示唆演出に対して割り当てられた抽選テーブルが設けられる。演出決定手段303は、当否判定の結果又は変動パターンに応じた抽選テーブルを参照し、演出を決定するための抽選値に基づいて、複数の期待度示唆演出を含む複数の演出の中から実行すべき演出を決定する。このように、いずれかの期待度示唆演出が実行された場合の方が、いずれの期待度示唆演出も実行されない場合より、期待度示唆演出が実行された図柄の変動表示に対応する当否判定の結果が大当りとなって特別遊技に移行する期待度が高い。タイマー演出においては、特別遊技移行期待度を示唆する期待度示唆演出の中でも相対的に期待度が高い特定の期待度示唆演出、又は、変動パターン決定手段により特定の変動パターンが選択されたときにしか実行されない、若しくは、特定の変動パターンが選択されたときの方が選択されなかったときよりも実行される確率が高い特定の期待度示唆演出が表示されるタイミングが示唆される。
【0194】
・・・以降、タイマー演出により発生タイミングが示唆される特定の期待度示唆演出も、単に「期待度示唆演出」と呼ぶ。・・・
・・・
【0196】
図26(a)は、図柄の変動表示の開始直後に演出表示装置60に表示される演出画像の例を示す。演出表示装置60には、装飾図柄510が変動表示されており、さらに、表示予定の期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間を示唆する残り時間示唆情報500、502が表示されている。残り時間示唆情報500、502は、複数の矩形から構成されており、左側の大きい矩形は、それぞれ10秒間に対応しており、その右側の中程度の矩形は、それぞれ5秒間に対応しており、さらに右側の小さい矩形は、それぞれ2.5秒間に対応している。したがって、残り時間示唆情報500では、全ての矩形が表示されているので、60秒後に期待度示唆演出が開始されることが示唆され、残り時間示唆情報502では、30秒後に期待度示唆演出が開始されることが示唆される。
【0197】
残り時間示唆情報により示唆される残り時間は、タイマー演出中に単に実時間の経過とともにカウントダウンされるだけでなく、実時間とは異なる増減又は一時停止されることが可能である。すなわち、タイマー演出において残り時間示唆情報により示唆される期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間は、実際の残り時間をもとに決定された演出上の見かけの残り時間であり、実際の残り時間と一致するとは限らない。実際の残り時間とは異なる見かけの残り時間を示唆する残り時間示唆情報が演出表示装置60に表示される場合は、期待度示唆演出が開始されるときに見かけの残り時間がゼロになるように、タイマー演出の実行中に見かけの残り時間が調整され、見かけの残り時間がゼロになったときに、期待度示唆演出が開始される。別の例では、見かけの残り時間が所定時間となったときに、期待度示唆演出が開始されてもよい。また、タイマー演出において、見かけの残り時間が到達すべき目標時間が遊技者に報知され、見かけの残り時間が目標時間に到達したときに期待度示唆演出が開始されてもよい。同様に、残り時間示唆情報としてタイムスライダーやメーターなどが表示される場合に、その目盛りなどが到達すべき目標の位置や数などが遊技者に報知され、目盛りなどが目標の位置や数などに到達したときに期待度示唆演出が開始されてもよい。なお、見かけの残り時間がゼロ又は所定時間になるタイミングと、期待度示唆演出が開始されるタイミングは、完全に同期していなくてもよく、例えば、見かけの残り時間がゼロ又は所定時間になったときに、「発生!」などの表示がなされ、期待度示唆演出が開始されることが報知された後に、期待度示唆演出が開始されてもよい。」

【図26】


(4)「【0202】
本実施例では、見かけの残り時間が長いほど、示唆される期待度が高い期待度示唆演出が実行される可能性が高い。例えば、本図の例では、示唆される期待度が非常に高いバトル演出に対応する残り時間示唆情報500により示唆される見かけの残り時間の方が、示唆される期待度がバトル演出よりは低い予告演出に対応する残り時間示唆情報502により示唆される見かけの残り時間よりも長い。一般に、期待度の高い演出は演出時間が相対的に長く、また、演出時間の前半よりも後半に期待感を煽る演出が実行されることが多いので、演出表示装置60に表示された残り時間示唆情報により示唆される見かけの残り時間が長いほど、示唆される期待度が高い期待度示唆演出が実行される可能性が高い。したがって、残り時間示唆情報が演出表示装置60に表示された時点で、実行されるであろう演出の期待度を遊技者にある程度推測させることができるので、遊技者の期待感を高めることができる。また、単に見かけの残り時間を実時間の経過に伴ってカウントダウンしていくだけでなく、見かけの残り時間を増減させたり、見かけの残り時間のカウントダウンを停止させたりすることにより、タイマー演出の途中にも、実行されるであろう演出の期待度を増減させることができる。これにより、遊技者の期待感を効果的に煽ることができる。示唆される見かけの残り時間が長いほど、大当りとなる可能性が高いようにされてもよい。
【0203】
本図の例では、演出表示装置60に表示された2つの残り時間示唆情報500、502は、それぞれ、スーパーリーチ演出のバトル演出、予告演出という異なる期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間をそれぞれ示唆している。すなわち、演出において複数の期待度示唆演出のうちの2以上が実行される場合、実行される2以上の期待度示唆演出が開始されるまでの実際の残り時間をもとにそれぞれ決定された見かけの残り時間を示唆する2以上の残り時間示唆情報が演出表示装置60に表示可能である。
【0204】
別の例では、複数の残り時間示唆情報が演出表示装置60に表示された場合に、表示されている複数の残り時間示唆情報のそれぞれにより示唆される見かけの残り時間の合計が期待度示唆演出が開始されるまでの見かけの残り時間を示唆してもよい。すなわち、残り時間示唆情報500により示唆される60秒の残り時間と、残り時間示唆情報502により示唆される30秒の残り時間の合計である90秒が、1つの期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間であることが示唆されてもよい。
【0205】
複数の残り時間示唆情報が表示された場合に、それぞれが別個の期待度示唆演出が開始されるまでの見かけの残り時間を示唆する場合と、複数の残り時間示唆情報により示唆される見かけの残り時間の合計が1つの期待度示唆演出が開始されるまでの見かけの残り時間を示唆する場合との双方が設けられてもよい。この場合、いずれの場合であるのかが遊技者に分かるような態様で残り時間示唆情報を表示してもよいし、複数の残り時間示唆情報が表示された時点ではいずれの場合であるのかが遊技者に分からないような態様で残り時間示唆情報を表示してもよい。いずれの場合であるのかが遊技者に分からないような態様で残り時間示唆情報を表示する場合、複数の期待度示唆演出が実行される可能性と、合計されたより長い残り時間の後に1つの期待度示唆演出が実行される可能性の双方を示唆することができるので、遊技者の期待感を効果的に煽ることができる。期待度示唆演出が実行されるまでに、いずれの場合であるのかを遊技者に報知する演出が実行されてもよい。
【0206】
図27は、演出パターンの例を示す。変動パターン決定手段により選択可能な複数の変動パターンのそれぞれに対応する複数の演出パターンが設けられる。また、特定の期待度示唆演出を実行する演出パターンについては、期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間を示唆するタイマー演出のタイマーパターンが対応づけられる。演出決定手段303は、変動パターン決定手段により決定された変動パターンに応じて、抽選により演出パターンを決定する。また、決定した演出パターンが特定の期待度示唆演出を実行する演出パターンである場合は、抽選によりタイマー演出を実行するか否かを決定し、実行すると決定した場合は、更に抽選によりタイマーパターンを決定する。
・・・
【0208】
タイマーパターン(1a)とタイマーパターン(1b)は、いずれもノーマルリーチ演出(1)のリーチ煽り演出が開始されるまでの残り時間を示唆するタイマー演出のタイマーパターンであり、実際の残り時間は同一であるが、実際の残り時間よりも短い見かけの残り時間を示唆する残り時間示唆情報が表示された後に見かけの残り時間が延長されて期待度示唆演出が実行されるタイマーパターン(1b)が実行された場合の方が、実際の残り時間と同じ長さの見かけの残り時間を示唆する残り時間示唆情報が表示された後に見かけの残り時間が調整されずに期待度示唆演出が実行されるタイマーパターン(1a)が実行された場合よりも、当否判定の結果が大当りとなる確率が高くなるように、タイマーパターンを決定するために用いられる抽選値の範囲が設定されている。すなわち、タイマーパターン(1b)の方が、タイマーパターン(1a)よりも、示唆される特別遊技実行可能性が高い演出である。見かけの残り時間が調整されないタイマーパターン(1a)の方が、見かけの残り時間が調整されるタイマーパターン(1b)よりも、出現頻度が高くなるように、タイマーパターンを決定するために用いられる抽選値の範囲が設定されている。このことは、他のタイマーパターンについても同様である。」

そして、上記記載事項(1)?(4)を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(a?fは、本件発明のA?Fに対応させて当審にて付与した。また、丸括弧内に示された段落番号は、引用文献における引用箇所を示す。)。

(甲1発明)
「a 遊技の基本動作や遊技の進行を制御する主制御装置としてのメイン基板200と、演出的な動作や処理を制御する副制御装置としてのサブ基板300とで構成される、ぱちんこ遊技機100であり(【0043】)、

b 主に遊技機枠と遊技盤で構成され(【0011】)、
遊技盤80は、演出表示装置60を含み(【0013】)、
当否判定の結果が大当りである期待度が高いことを示唆する期待度示唆演出のうち特定の期待度示唆演出が実行される場合、特定の期待度示唆演出の表示開始タイミングを示唆するタイマー演出を実行可能であり(【0192】)、
演出表示装置60には、表示予定の特定の期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間を示唆する残り時間示唆情報500、502が表示され(【0196】、図26(a))、
残り時間示唆情報が演出表示装置60に表示される場合は、特定の期待度示唆演出が開始されるときに見かけの残り時間がゼロになるように、タイマー演出の実行中に見かけの残り時間が調整され、見かけの残り時間は、実際の残り時間と一致するとは限らず(【0197】)、

c サブ基板300は、演出決定手段303を備え(【0087】)、
特定の期待度示唆演出を実行する演出パターンについては、期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間を示唆するタイマー演出のタイマーパターンが対応づけられ、演出決定手段303は、抽選により演出パターンを決定し、決定した演出パターンが特定の期待度示唆演出を実行する演出パターンである場合は、抽選によりタイマー演出を実行するか否かを決定し、実行すると決定した場合は、更に抽選によりタイマーパターンを決定し(【0206】)、
実際の残り時間は同一であるが、実際の残り時間よりも短い見かけの残り時間を示唆する残り時間示唆情報が表示された後に見かけの残り時間が延長されて期待度示唆演出が実行されるタイマーパターンが実行された場合の方が、実際の残り時間と同じ長さの見かけの残り時間を示唆する残り時間示唆情報が表示された後に見かけの残り時間が調整されずに期待度示唆演出が実行されるタイマーパターンが実行された場合よりも、当否判定の結果が大当りとなる確率が高くなるように、タイマーパターンを決定するために用いられる抽選値の範囲が設定され(【0208】)、

d サブ基板300は、演出制御手段304を備え(【0087】)、
演出制御手段304は、演出表示装置60へ装飾図柄61を含む演出画像を変動表示させ(【0098】)、
タイマー演出において、特定の期待度示唆演出の表示が開始されるまでの残り時間が表示され、残り時間がゼロになったタイミングを契機として特定の期待度示唆演出が開始され(【0192】)、
期待度示唆演出は、予告演出、群予告演出、ステップアップ予告演出、スーパーリーチ演出やノーマルリーチ演出などのリーチ演出、リーチ演出の終了直前などに表示されるカットイン演出、リーチ煽り演出中などに実行される背景予告演出、1回の図柄変動において擬似的に複数回の図柄変動が実行されるように見せる擬似連続変動演出など、実行された場合に当否判定の結果が大当りとなって特別遊技が実行される可能性があることが示唆されるような各種の演出であり(【0193】)、
演出決定手段303は、演出を決定するための抽選値に基づいて、複数の期待度示唆演出を含む複数の演出の中から実行すべき演出を決定し(【0193】)、
タイマー演出においては、特別遊技移行期待度を示唆する期待度示唆演出の中でも相対的に期待度が高い特定の期待度示唆演出が表示されるタイミングが示唆され(【0193】)、

e1 演出表示装置60に表示された2つの残り時間示唆情報500、502は、それぞれ、異なる期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間をそれぞれ示唆し、演出において複数の期待度示唆演出のうちの2以上が実行される場合、実行される2以上の期待度示唆演出が開始されるまでの実際の残り時間をもとにそれぞれ決定された見かけの残り時間を示唆する2以上の残り時間示唆情報が演出表示装置60に表示可能であり(【0203】)、
残り時間示唆情報500により示唆される残り時間と、残り時間示唆情報502により示唆される残り時間の合計が、1つの期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間であることが示唆されてもよく(【0204】)、
複数の残り時間示唆情報が表示された場合に、それぞれが別個の期待度示唆演出が開始されるまでの見かけの残り時間を示唆する場合と、複数の残り時間示唆情報により示唆される見かけの残り時間の合計が1つの期待度示唆演出が開始されるまでの見かけの残り時間を示唆する場合との双方が設けられ(【0205】)、

e2 演出表示装置60に表示された残り時間示唆情報により示唆される見かけの残り時間が長いほど、示唆される期待度が高い期待度示唆演出が実行される可能性が高く(【0202】)、
示唆される期待度が非常に高い演出に対応する残り時間示唆情報500により示唆される見かけの残り時間の方が、示唆される期待度が低い演出に対応する残り時間示唆情報502により示唆される見かけの残り時間よりも長い(【0202】)、

f ぱちんこ遊技機100(【0011】)。」

5 対比
本件発明と甲1発明とを、分説に従い対比する(対比の見出しとしての(a)?(f)は、甲1発明の分説構成と対応させた。)。

(a) 甲1発明の構成aの「ぱちんこ遊技機100」は、本件発明の構成Aの「遊技を実行可能な遊技機」に相当する。
してみると、甲1発明の構成aは本件発明の構成Aに相当するものである。

(b) 甲1発明の構成bの「表示予定の期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間を示唆する残り時間示唆情報500、502」、及び「演出表示装置60」はそれぞれ本件発明の「所定表示」、及び「所定表示手段」に相当する。
また、甲1発明の構成bの「見かけの残り時間がゼロになる」ことは、本件発明の構成Bの「特定態様に変化する」ことに相当する。
そして、甲1発明の構成bの「演出表示装置60」(所定表示手段)は「遊技盤80」に含まれるものであり、当該「遊技盤80」は「ぱちんこ遊技機100」(遊技機)を「構成」するものであるから、甲1発明の構成bの「演出表示装置60」(所定表示手段)は「ぱちんこ遊技機100」(遊技機)が備えるものである。
してみると、甲1発明の構成bは本件発明の構成Bに相当するものである。

(c) 甲1発明の構成cの「実際の残り時間よりも短い見かけの残り時間を示唆する残り時間示唆情報が表示された後に見かけの残り時間が延長されて期待度示唆演出が実行されるタイマーパターン」及び「実際の残り時間と同じ長さの見かけの残り時間を示唆する残り時間示唆情報が表示された後に見かけの残り時間が調整されずに期待度示唆演出が実行されるタイマーパターン」はいずれも本件発明の構成Cの「複数種類の態様」に相当する。
また、甲1発明の構成cの「抽選によりタイマーパターンを決定」すること、及び「演出決定手段303」は、本件発明の構成Cの「複数種類の態様のうちいずれかを所定表示の態様として決定」すること、及び「態様決定手段」に相当する。
そして、甲1発明の構成cの「演出決定手段303」(態様決定手段)は、「サブ基板300」が「備え」るものであり、当該「サブ基板300」は、甲1発明の構成aによれば、「ぱちんこ遊技機100」を「構成」するものであるから、甲1発明の構成cの「演出決定手段303」(態様決定手段)は、「ぱちんこ遊技機100」(遊技機)が「備え」るものである。
してみると、甲1発明の構成cは本件発明の構成Cに相当するものである。

(d) 甲1発明の構成dの「予告演出、群予告演出、ステップアップ予告演出、スーパーリーチ演出やノーマルリーチ演出などのリーチ演出、リーチ演出の終了直前などに表示されるカットイン演出、リーチ煽り演出中などに実行される背景予告演出、1回の図柄変動において擬似的に複数回の図柄変動が実行されるように見せる擬似連続変動演出など、実行された場合に当否判定の結果が大当りとなって特別遊技が実行される可能性があることが示唆されるような各種の演出」である「期待度示唆演出」は、本件発明の構成Dの「複数種類の特定演出」に相当するとともに、甲1発明の構成dの「期待度示唆演出の中でも相対的に期待度が高い特定の期待度示唆演出」は本件発明の構成Dの「複数種類の特定演出のうちいずれか」に相当する。
そして、甲1発明の構成dの「タイマー演出において、特定の期待度示唆演出の表示が開始されるまでの残り時間が表示され、残り時間がゼロになったタイミングを契機として特定の期待度示唆演出が開始され」ることは、本件発明の構成Dの「所定表示が前記特定態様に変化したときに複数種類の特定演出のうちいずれかを実行」することに相当する。
また、甲1発明の構成dの「演出制御手段304」は、「演出表示装置60」の「演出画像を変動表示させ」るのだから、「タイマー演出において、特定の期待度示唆演出の表示が開始されるまでの残り時間が表示され、残り時間がゼロになったタイミングを契機として特定の期待度示唆演出が開始され」ること(所定表示が前記特定態様に変化したときに複数種類の特定演出のうちいずれかを実行すること)を行っているものといえ、甲1発明の構成dの「演出制御手段304」は本件発明の構成Dの「特定演出実行手段」に相当する。
そして、甲1発明の構成dの「演出制御手段304」(特定演出実行手段)は、「サブ基板300」が「備え」るものであり、当該「サブ基板300」は、甲1発明の構成aによれば、「ぱちんこ遊技機100」を「構成」するものであるから、甲1発明の構成dの「演出制御手段304」(特定演出実行手段)は、「ぱちんこ遊技機100」(遊技機)が「備え」るものである。
してみると、甲1発明の構成dは本件発明の構成Dに相当するものである。

(e1) 甲1発明の構成e1の「演出表示装置60に表示された」「残り時間示唆情報500」及び「演出表示装置60に表示された」「残り時間示唆情報502」は、それぞれ本件発明の構成E1の「一の所定表示の態様」及び「該一の所定表示とは異なる他の所定表示の態様」に相当する。
そして、甲1発明の構成cによれば、「演出決定手段303」(態様決定手段)は、「抽選によりタイマー演出を実行するか否かを決定し、実行すると決定した場合は、更に抽選によりタイマーパターンを決定」するのだから、甲1発明の構成e1の「演出表示装置60に表示された」「残り時間示唆情報500」(一の所定表示の態様)及び「演出表示装置60に表示された」「残り時間示唆情報502」(他の所定表示の態様)は、「演出決定手段303」(態様決定手段)が決定するものといえる。
また、甲1発明の構成e1の「残り時間示唆情報500により示唆される残り時間と、残り時間示唆情報502により示唆される残り時間の合計が、1つの期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間であること」が「設けられ」ることは、本件発明の構成E1の「一の所定表示の態様を決定した場合、該決定結果にもとづいて該一の所定表示とは異なる他の所定表示の態様を決定可能であ」ることと、「一の所定表示の態様」と「該一の所定表示とは異なる他の所定表示の態様を決定」する点で共通する。
してみると、甲1発明の構成e1は本件発明の構成E、E1と
「前記態様決定手段は、
一の所定表示の態様」と「該一の所定表示とは異なる他の所定表示の態様を決定」する点で共通する。

(e2) 甲1発明の構成e2の「残り時間示唆情報により示唆される」「残り時間」は、本件発明の「所定表示が表示されてから前記特定態様に変化するまでの期間」に相当するものであるが、甲1発明の構成bによれば、「見かけの残り時間は、実際の残り時間と一致するとは限ら」ないのだから、甲1発明の構成e2の「残り時間示唆情報により示唆される見かけの残り時間」は、「期間」ではあるものの、本件発明の構成E2の「所定表示が表示されてから前記特定態様に変化するまでの期間」に相当するものではない。

また、甲1発明の構成e2の「演出表示装置60に表示された残り時間示唆情報により示唆される見かけの残り時間が長いほど、示唆される期待度が高い期待度示唆演出が実行される可能性が高」いことは、「期待度示唆演出」の期待度が高いほど、「演出表示装置60に表示された残り時間示唆情報により示唆される見かけの残り時間」(所定表示が表示されてから前記特定態様に変化するまでの期間)が長くなることであり、当該事項は本件発明の構成E2の「期間を所定表示の態様として決定可能であ」ることに相当する。

ここで、甲1発明の構成e2は、「残り時間示唆情報500」が「期待度が非常に高い演出に対応」し、「残り時間示唆情報502」が「期待度が低い演出に対応」するとしたものであり、
同構成e2の「示唆される期待度が非常に高い演出に対応する残り時間示唆情報500により示唆される見かけの残り時間の方が、示唆される期待度が低い演出に対応する残り時間示唆情報502により示唆される見かけの残り時間よりも長い」との構成が記載された甲第1号証の【0202】、及び同構成e1の、「残り時間示唆情報500により示唆される残り時間と、残り時間示唆情報502により示唆される残り時間の合計が、1つの期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間であることが示唆されてもよく(【0204】)、
複数の残り時間示唆情報が表示された場合に、それぞれが別個の期待度示唆演出が開始されるまでの見かけの残り時間を示唆する場合と、複数の残り時間示唆情報により示唆される見かけの残り時間の合計が1つの期待度示唆演出が開始されるまでの見かけの残り時間を示唆する場合との双方が設けられ(【0205】)、」との構成が記載された甲第1号証の【0204】及び【0205】を参照すると、【0202】には、
「本実施例では、・・・例えば、本図の例では、示唆される期待度が非常に高いバトル演出に対応する残り時間示唆情報500により示唆される見かけの残り時間の方が、示唆される期待度がバトル演出よりは低い予告演出に対応する残り時間示唆情報502により示唆される見かけの残り時間よりも長い。一般に、期待度の高い演出は演出時間が相対的に長く、また、演出時間の前半よりも後半に期待感を煽る演出が実行されることが多いので、演出表示装置60に表示された残り時間示唆情報により示唆される見かけの残り時間が長いほど、示唆される期待度が高い期待度示唆演出が実行される可能性が高い。」
と記載され、【0204】及び【0205】には、
「【0204】
別の例では、複数の残り時間示唆情報が演出表示装置60に表示された場合に、表示されている複数の残り時間示唆情報のそれぞれにより示唆される見かけの残り時間の合計が期待度示唆演出が開始されるまでの見かけの残り時間を示唆してもよい。すなわち、残り時間示唆情報500により示唆される60秒の残り時間と、残り時間示唆情報502により示唆される30秒の残り時間の合計である90秒が、1つの期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間であることが示唆されてもよい。
【0205】
複数の残り時間示唆情報が表示された場合に、それぞれが別個の期待度示唆演出が開始されるまでの見かけの残り時間を示唆する場合と、複数の残り時間示唆情報により示唆される見かけの残り時間の合計が1つの期待度示唆演出が開始されるまでの見かけの残り時間を示唆する場合との双方が設けられてもよい。」
と記載されている。
そうすると、甲1発明の構成e2の「示唆される期待度が非常に高い演出に対応する残り時間示唆情報500により示唆される見かけの残り時間の方が、示唆される期待度が低い演出に対応する残り時間示唆情報502により示唆される見かけの残り時間よりも長い」との構成は、甲1発明の構成e1の「演出表示装置60に表示された2つの残り時間示唆情報500、502は、それぞれ、異なる期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間をそれぞれ示唆」するケースに対応する事項であって、「複数の残り時間示唆情報が表示された場合に、それぞれが別個の期待度示唆演出が開始されるまでの見かけの残り時間を示唆する場合」に対応する事項であるということができる。

一方、甲1発明の構成e1における「複数の残り時間示唆情報が表示された場合」におけるもうひとつの「場合」である「複数の残り時間示唆情報により示唆される見かけの残り時間の合計が1つの期待度示唆演出が開始されるまでの見かけの残り時間を示唆する場合」である、「複数の残り時間示唆情報が演出表示装置60に表示された場合に、表示されている複数の残り時間示唆情報のそれぞれにより示唆される見かけの残り時間の合計が期待度示唆演出が開始されるまでの見かけの残り時間を示唆し、残り時間示唆情報500により示唆される残り時間と、残り時間示唆情報502により示唆される残り時間の合計が、1つの期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間であることが示唆され」、「複数の残り時間示唆情報により示唆される見かけの残り時間の合計が1つの期待度示唆演出が開始されるまでの見かけの残り時間を示唆する場合」における、「残り時間示唆情報500により示唆される見かけの残り時間」(一の所定表示の態様)及び「残り時間示唆情報502により示唆される見かけの残り時間」(他の所定表示の態様)の長短の関係は、甲1発明の構成e2は特定していない。
してみると、甲1発明全体では、「残り時間示唆情報500により示唆される見かけの残り時間」(一の所定表示の態様)及び「残り時間示唆情報502により示唆される見かけの残り時間」(他の所定表示の態様)の長短の関係は不明である。
してみると、甲1発明の構成e2は本件発明の構成E2と、「期間を所定表示の態様として決定可能であ」る点で共通する。

(f) 甲1発明の構成fの「ぱちんこ遊技機100」は、本件発明の構成Fの「遊技機」に相当する。
してみると、甲1発明の構成fは本件発明の構成Fに相当するものである。

そうすると、本件発明と甲1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
(一致点)
A 遊技を実行可能な遊技機であって、
B 特定態様に変化する所定表示を表示可能な所定表示手段と、
C 複数種類の態様のうちいずれかを所定表示の態様として決定可能な態様決定手段と、
D 所定表示が前記特定態様に変化したときに複数種類の特定演出のうちいずれかを実行可能な特定演出実行手段と、を備え、
E 前記態様決定手段は、
E1′ 一の所定表示の態様を決定した場合、該一の所定表示とは異なる他の所定表示の態様を決定可能であり、
E2′ 期間を所定表示の態様として決定可能である
F 遊技機。」

(相違点1)(構成E1)
本件発明は、「一の所定表示の態様を決定した場合、該決定結果にもとづいて該一の所定表示とは異なる他の所定表示の態様を決定可能であ」るのに対し、甲1発明は、単に「残り時間示唆情報500により示唆される残り時間」(一の所定表示の態様)と「残り時間示唆情報502により示唆される残り時間」(該一の所定表示とは異なる他の所定表示の態様)を決定することが特定される点。

(相違点2)(構成E2)
本件発明は、「所定表示が表示されてから前記特定態様に変化するまでの期間を所定表示の態様として決定可能であり、一の所定表示の態様よりも他の所定表示の態様の方が短い期間を決定しやすい」のに対し、甲1発明では、「所定表示が表示されてから前記特定態様に変化するまでの期間を所定表示の態様として決定可能」かどうか不明であるとともに、「残り時間示唆情報500により示唆される見かけの残り時間」(一の所定表示の態様)よりも「残り時間示唆情報502により示唆される見かけの残り時間」(他の所定表示の態様)が短い時間を決定しやすいかどうか不明である点。

6 理由1及び2についての当審の判断
上記相違点について検討する。

(相違点1について)
甲1発明の構成e1の「残り時間示唆情報500により示唆される残り時間と、残り時間示唆情報502により示唆される残り時間の合計が、1つの期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間であること」は、「残り時間示唆情報500により示唆される残り時間」(一の所定表示の態様)と「残り時間示唆情報502により示唆される残り時間」(他の所定表示の態様)の合計が、「1つの期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間であ」るからといって「残り時間示唆情報500により示唆される残り時間」(一の所定表示の態様)を決定した場合、該決定結果にもとづいて「演出決定手段303」(態様決定手段)が「残り時間示唆情報502により示唆される残り時間」(他の所定表示の態様)を決定するという手順で「残り時間示唆情報502により示唆される残り時間」(他の所定表示の態様)を決定可能とすることが容易想到であるとする証拠はない。また、上記相違点1に係る構成が、本件特許の出願時において周知の構成であったとする事情もない。
そして、本件発明は、上記構成E1を採用することによって、「演出効果を高めることができる」(明細書【0362】、【0367】等を参照。)との作用効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人は、相違点1に関連して以下のとおり主張している。
「甲第1号証の段落0204には、「・・・すなわち、残り時間示唆情報500により示唆される60秒の残り時間と、残り時間示唆情報502により示唆される30秒の残り時間の合計である90秒が、1つの期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間であることが示唆されてもよい。」と記載されている。この記載によれば、甲1発明は、1の期待度示唆演出が開始されるまでの残り時間が90秒であるときに、「残り時間示唆情報500により示唆される60秒に決定した場合、該決定結果にもとづいて該残り時間示唆情報500とは異なる他の残り時間示唆情報502を30秒に決定可能である」ことにほかならない。そうすると、甲1発明には「一の所定表示の態様を決定した場合、該決定結果にもとづいて該一の所定表示とは異なる他の所定表示の態様を決定可能であり、」が記載されているといえる(特許異議申立書20?21ページ参照。)。」
しかし、甲第1号証の【0204】の記載から、「演出決定手段303」(態様決定手段)が、「残り時間示唆情報500により示唆される60秒の残り時間」と「合計である90秒」を決定し、該決定結果に基づいて、「演出決定手段303」(態様決定手段)が、「残り時間示唆情報502」の表示を、90(秒)-60(秒)=30(秒)との手法での決定(該決定結果にもとづいて該一の所定表示とは異なる他の所定表示の態様の決定)を行うことが記載されているとは認められず、また記載されているに等しい事項と認める事情もないから、特許異議申立人のかかる主張には理由がない。

(相違点2について)
甲1発明の構成bの「見かけの残り時間は、実際の残り時間と一致するとは限ら」ないとの構成は、「見かけの残り時間」が「実際の残り時間と一致する」ことは可能としつつ、「見かけの残り時間は、実際の残り時間と一致するとは限ら」ないとしたものといえる。そうすると、甲1発明の構成e2の「残り時間示唆情報により示唆される見かけの残り時間」を、「実際の残り時間」(特定態様に変化するまでの期間)とし、「実際の残り時間」(特定態様に変化するまでの期間)を「所定表示の態様として決定可能」とすることは、当業者が容易に想到することである。
一方、甲1発明の構成e2において、「残り時間示唆情報500により示唆される見かけの残り時間」(一の所定表示の態様)よりも「残り時間示唆情報502により示唆される見かけの残り時間」(他の所定表示の態様)が短い時間を決定しやすいとすることが容易想到であるとする証拠はなく、また甲1発明の構成e2において、「残り時間示唆情報500により示唆される見かけの残り時間」(一の所定表示の態様)よりも「残り時間示唆情報502により示唆される見かけの残り時間」(他の所定表示の態様)が短い時間を決定しやすいとする構成が、本件特許の出願時において周知の構成であったとする事情もない。

してみれば、本件発明は甲1発明ではないから、本件特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。また、本件発明は甲第1号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

7 理由3についての当審の判断

理由3の概要は、本件発明は
「所定表示が表示されてから前記特定態様に変化するまでの期間を所定表示の態様として決定可能であり、一の所定表示の態様よりも他の所定表示の態様の方が短い期間を決定しやすい」(本件発明の構成E2)という構成を備えているが、「決定しやすい」という表現は一般に極めて曖昧な表現であり、発明の構成を特定する表現としては不適切である。「決定しやすい」は「決定する」ことが「やすい」ということであるが、「やすい」は辞書などで確認すると、「1 簡単で大した手間はかからない。安易だ。やさしい。2 動詞の連用形の下に付く。ア とかくそうなる傾向がある、そうなりがちだ、などの意を表す。イ ・・・するのが容易だ、・・・するのが簡単だ、などの意を表す。」とある。この場合、「決定する」が動詞であることから、「やすい」は、「とかくそうなる傾向がある、そうなりがちだ、などの意」となる。そうすると「決定しやすい」は一般に「とかく決定する傾向にある」、「決定しがちだ」ということである。
しかしながら、発明特定事項は発明の範囲を決める上で重要な事項であるから、「とかく・・・傾向にある」とか「そうなりがち」という曖昧な表現は排除されるべきである。
よって、「決定しやすい」を含む本件特許発明の構成E2、Fは不明確であると言わざるを得ない。したがって、本件特許発明は、発明を特定する事項に不明確な事項を含んでいるため、本件特許発明は、明確性要件を満たしていない、というものである(特許異議申立書20?21ページ参照。)。

そこで、特許異議申立人の上記主張の対象となった本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載を確認すると、
「前記態様決定手段は、」
「所定表示が表示されてから前記特定態様に変化するまでの期間を所定表示の態様として決定可能であり、一の所定表示の態様よりも他の所定表示の態様の方が短い期間を決定しやすい」
と記載されている。
上記記載中の「一の所定表示の態様よりも他の所定表示の態様の方が短い期間を決定しやすい」との記載は、「一の所定表示の態様」と「他の所定表示の態様」を二者を比較して、両者のうち「他の所定表示の態様の方」が「短い期間を決定しやすい」とするものであって、上記記載中の「短い時間を決定しやすい」が絶対的な決定の割合や程度を示したものではなく、比較対象を前記二者に特定したうえで、そのうち「短い期間を決定しやすい」のが「他の所定表示の態様の方」であるとしたものであることが明確であるから、上記記載は明確である。
さらに、「短い時間を決定」するのが、構成Eの「前記態様決定手段」であることもまた明確である。
してみると、本件特許の特許請求の範囲の請求項1の
「前記態様決定手段は、」
「所定表示が表示されてから前記特定態様に変化するまでの期間を所定表示の態様として決定可能であり、一の所定表示の態様よりも他の所定表示の態様の方が短い期間を決定しやすい」との記載に不明確な点は存在せず、本件発明は明確であって、特許請求の範囲の記載は特許法36条6項第2号の規定に適合するものである。

8 むすび
以上のことから、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2020-09-02 
出願番号 特願2017-162431(P2017-162431)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A63F)
P 1 651・ 537- Y (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 堀 圭史  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 石井 哲
井海田 隆
登録日 2019-11-22 
登録番号 特許第6619780号(P6619780)
権利者 株式会社三共
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人 武和国際特許事務所  
代理人 塩川 誠人  
代理人 井伊 正幸  
代理人 眞野 修二  
代理人 岩壁 冬樹  

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