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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1366373
審判番号 不服2019-7465  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-05 
確定日 2020-09-17 
事件の表示 特願2013-250315「硬化膜付きタッチパネル用基材の製造方法、感光性樹脂組成物、感光性エレメント及びタッチパネル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月11日出願公開、特開2015-108881〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は平成25年12月3日に出願した特願2013-250315号であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 7月25日付け 拒絶理由通知
平成29年 9月29日 意見書の提出
平成29年12月 8日付け 拒絶理由通知
平成30年 4月16日 意見書、手続補正書の提出
平成30年 7月11日付け 拒絶理由通知(最後)
平成30年 9月18日 意見書、手続補正書の提出
平成31年 2月21日付け 拒絶査定
令和 元年 6月 5日 手続補正書、審判請求書の提出
令和 元年11月28日 上申書の提出

第2 補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

令和 元年 6月 5日にされた手続補正を却下する。

[補正却下の理由]

1.手続補正の内容

令和 元年 6月 5日の手続補正(以下、「本件補正」という)により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、本件補正前の(1)のとおりの記載から、本件補正後の(2)のとおりの記載に補正された(下線は補正により変更された部分を示す)。

(1)本件補正前の請求項1(平成30年9月18日の手続補正書)
【請求項1】
銅を含む電極を有するタッチパネル用基材上に、カルボキシル基を有し、かつ酸価が80?100mgKOH/gであり、重量平均分子量が30000?200000であるバインダポリマと、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物からなる感光層を設け、該感光層の所定部分を活性光線の照射により硬化させた後に前記感光層の前記所定部分以外を除去し、前記基材の前記電極の一部又は全部を被覆する前記感光層の前記所定部分の硬化膜を形成する、硬化膜付きタッチパネル用基材の製造方法。

(2)本件補正後の請求項1
【請求項1】
銅を含む電極を有するタッチパネル用基材上に、カルボキシル基を有し、かつ酸価が80?100mgKOH/gであり、重量平均分子量が30000?200000であるバインダポリマと、ジトリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含む光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物からなる感光層を設け、該感光層の所定部分を活性光線の照射により硬化させた後に前記感光層の前記所定部分以外を除去し、前記基材の前記電極の一部又は全部を被覆する前記感光層の前記所定部分の硬化膜を形成する、硬化膜付きタッチパネル用基材の製造方法。

2.補正の適否

(1)本件補正の目的

この補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「光重合性化合物」について、「ジトリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含む」と限定するものであって、その本件補正の前後で、請求項1に記載の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定された特許出願の際独立して特許を受けられるものであるか否かについて以下検討する。

(2)独立特許要件についての判断

ア 本件補正発明

本件補正発明は、上記1.(2)の記載により特定されるとおりのものである。

イ 引用発明

原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2013-76821号公報(以下、「引用文献1」という)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。以下同様。)。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物およびそれを用いた保護膜およびタッチパネル部材に関する。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献4のように耐湿熱性の重要性は知られていたものの、硬化膜の外観変化が生じるか否かを評価する程度であり、試験前後で保護した下地金属がどのように変化するかという観点では検討されていなかった。
【0007】
本発明者らは、下地金属の腐食を抑えるという観点における耐湿熱性に着目したが、以上のように、高硬度、高透明、高耐熱であり、かつ下地金属の腐食を抑える高い耐湿熱性を備え、アルカリ現像液にてパターン加工可能なネガ型感光性透明材料については、これまでその技術は確立されていなかった。
【0008】
本発明は、高硬度、高透明、高耐熱であり、かつ下地金属の腐食を抑える高い耐湿熱性を備える硬化膜を与える、アルカリ現像可能なネガ型感光性樹脂組成物を提供することを課題とするものである。」

「【0018】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有アクリル樹脂、(B)光重合開始剤、(C)多官能モノマー、(D)芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合が3つ以上ある4級炭素を有する多官能エポキシ化合物および(E)イソシアネート化合物を含有する。
【0019】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有アクリル樹脂を含有する。カルボキシル基を含有することにより、アルカリ水溶液での現像が可能となる。該アクリル樹脂のカルボン酸当量に特に制限は無いが、好ましくは200g/mol以上、1400g/mol以下であり、さらに好ましくは300g/mol以上、1200g/mol以下であり、さらに好ましくは400g/mol以上、800g/mol以下である。カルボン酸当量とは、カルボキシル基1mol量を得るのに必要な樹脂の重量を表し、単位はg/molである。カルボン酸当量がかかる範囲にあることで、ネガ型感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液での現像後の残さを抑制するとともに露光部の膜減りを抑えられ、良好なパターンを形成することできる。」

「【0030】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(B)光重合開始剤を含有する。(B)光重合開始剤は、光(紫外線、電子線を含む)により分解および/または反応し、ラジカルを発生させるものが好ましい。」

「【0035】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(C)多官能モノマーを含有する。光照射により上記(B)光重合開始剤によって(C)多官能モノマーの重合が進行し、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の露光部がアルカリ水溶液に対して不溶化し、ネガ型のパターンを形成することができる。多官能モノマーとは、分子中に少なくとも2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物をいい、特に限定するわけでないが、ラジカル重合のしやすい(メタ)アクリル基を有する多官能モノマーが好ましい。
【0036】
(C)多官能モノマーとしてはたとえばジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1、3-ブタンジオールジアクリレート、1、3-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1、4-ブタンジオールジアクリレート、1、4-ブタンジオールジメタクリレート、1、6-ヘキサンジオールジアクリレート、1、9-ノナンジオールジメタクリレート、1、10-デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、テトラペンタエリスリトールノナアクリレート、テトラペンタエリスリトールデカアクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカアクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカアクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタメタクリレート、トリペンタエリスリトールオクタメタクリレート、テトラペンタエリスリトールノナメタクリレート、テトラペンタエリスリトールデカメタクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカメタクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9、9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9、9-ビス[4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9、9-ビス[4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、(2-アクリロイルオキシプロポキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9、9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)-3、5-ジメチルフェニル]フルオレン、9、9-ビス[4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)-3、5-ジメチルフェニル]フルオレン、などが挙げられる。」

「【0070】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜は、タッチパネル用保護膜、各種ハードコート材、TFT用平坦化膜、カラーフィルター用オーバーコート、反射防止フィルム、パッシベーション膜などの各種保護膜および、光学フィルター、タッチパネル用絶縁膜、TFT用絶縁膜、カラーフィルター用フォトスペーサーなどに用いることができる。これらの中でも、高い硬度、透明性、耐熱性を有することから、タッチパネル用保護膜として好適に用いることができる。タッチパネルの方式としては、抵抗膜式、光学式、電磁誘導式、静電容量式などが挙げられる。静電容量式タッチパネルは特に高い硬度が求められることから、本発明の硬化膜を好適に用いることができる。
【0071】
さらに、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜は、高い耐湿熱性を有することから、金属配線保護膜として好適に用いることができる。金属配線上に形成することにより、金属の腐食等による劣化(導電性の低下など)を防ぐことが出来る。保護する金属に特に制限はないが、たとえば、銅、銀、アルミニウム、クロム、モリブデン、チタン、ITO、IZO(酸化インジウム亜鉛)、AZO(アルミニウム添加酸化亜鉛)、ZnO_(2)などが挙げられる。」
【実施例】
【0072】
以下に本発明をその実施例を用いて説明するが、本発明の様態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0073】
合成例1 アクリル樹脂溶液(A)の合成
500mlのフラスコに2、2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を1g、PGMEA(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)を50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を23.0g、ベンジルメタクリレートを31.5g、トリシクロ[5.2.1.02、6]デカン-8-イルメタクリレートを32.8g仕込み、室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを12.7g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、アクリル樹脂溶液(A)を得た。得られたアクリル樹脂溶液(A)に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加えた。アクリル樹脂の重量平均分子量は30000、カルボン酸当量は560g/molであった。」

「【0084】
(3)耐湿熱性
(3)-1 PCT(プレッシャークッカーテスト)を用いた下地金属腐食抑制評価
下地金属としてモリブデン/アルミニウム/モリブデン積層膜(MAM)を具備するガラス上に、前記(1)記載の方法で硬化膜を作製した後、温度121℃、湿度100%、気圧=2atmのオーブン(エスペック株式会社、「HASTCHAMBERE EHS-221MD(商品名)」)内に20時間放置する試験を行った後、硬化膜下のMAMが腐食によって変色する欠点の占有面積割合を目視によって評価した。7以上を合格とした。
10:硬化膜下のMAMの変色面積割合が0%。硬化膜自体の外観変化なし。
9:硬化膜下のMAMの変色面積割合が1%?3%。硬化膜自体の外観変化なし。
8:硬化膜下のMAMの変色面積割合が4%?6%。硬化膜自体の外観変化なし。
7:硬化膜下のMAMの変色面積割合が7%?9%。硬化膜自体の外観変化なし。
6:硬化膜下のMAMの変色面積割合が10%?15%。硬化膜自体の外観変化なし。
5:硬化膜下のMAMの変色面積割合が16%?20%。硬化膜自体の外観変化なし。
4:硬化膜下のMAMの変色面積割合が21%?30%。硬化膜自体の外観変化なし。
3:硬化膜下のMAMの変色面積割合が31%?50%。硬化膜自体の外観変化なし。
2:硬化膜下のMAMの変色面積割合が51%?70%。硬化膜自体の外観変化なし。
1:硬化膜下のMAMの変色面積割合が71%?100%。硬化膜自体の外観変化なし。
0:硬化膜下のMAMの変色面積割合が100%かつ、硬化膜自体に変色、クラック等が発生
(3)-2 人工汗耐性試験を用いた下地金属腐食抑制評価
下地金属としてMAMを具備するガラス上に、前記(1)記載の方法で硬化膜を作製した後、人工汗(NaCl=1g、乳酸=0.1g、リン酸水素ナトリウム12水和物=0.25g、ヒスチジン塩酸塩=0.025gを100gの水に溶解させた水溶液)を基板上に直径3mmとなるように滴下し、温度60℃、湿度90%、気圧=1atmのオーブン(エスペック株式会社、「EX-111(商品名)」)内に24日間放置する試験を行った後、硬化膜下のMAMが人工汗滴下部位を中心に同心円上に腐食によって退色した部分の面積(ただし、人工汗滴下部位を除く)を評価した。面積は退色部の半径を定規で測定の上、算出した。また、楕円状に広がった場合は長径と短径を測定の上、算出した。
円状の場合:退色面積=π×r^(2)-π×1.5^(2)
楕円状の場合:退色面積=π×r_(a)×r_(b)-π×1.5^(2)(rは円の半径を表す。π×1.5^(2)は人工汗滴下面積を表す。r_(a)は楕円の長径を表す。r_(b)は楕円の短径を表す)
(4)パターン加工性
(a)感度 ネガ型感光性樹脂組成物をシリコンウエハにスピンコーター(ミカサ(株)製「1H-360S(商品名)」)を用いて500rpmで10秒回転した後、1000rpmで4秒回転してスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製「SCW-636(商品名)」)を用いて90℃で2分間プリベークし、膜厚2μmのプリベーク膜を作製した。得られたプリベーク膜に、PLAを用いて超高圧水銀灯を光源として、感度測定用のグレースケールマスクを介して100μmのギャップで露光した。その後、自動現像装置(「AD-2000(商品名)」、滝沢産業(株)製)を用いて、0.4wt%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液で90秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスした。」

「【0087】
(5)接着性の評価
(中略)
実施例1 黄色灯下にて1、2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](「イルガキュアOXE-01(商品名)」チバスペシャリティケミカル製)0.278g、4-メトキシフェノール0.017g、多官能エポキシ化合物「テクモア VG3101L (商品名)」((株)プリンテック製、式(1)のR^(1)=R^(2)=R^(3)=R^(4)=R^(5)=R^(6)=Hに相当)0.139gをDAA(ジアセトンアルコール)2.827g、PGMEA4.020gに溶解させ、シリコーン系界面活性剤である「BYK-333(商品名)」(ビックケミージャパン(株)製)のPGMEA1wt%溶液0.2000g(濃度100ppmに相当)を加え、撹拌した。そこへ、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(「”カヤラッド(登録商標)”DPHA(商品名)」、新日本化薬製)のPGMEA50重量%溶液5.564g、アクリル樹脂溶液(A)6.955gを加えて、撹拌した。次いで0.45μmのフィルターでろ過を行い、ネガ型感光性樹脂組成物(A-1)を得た。得られたネガ型感光性樹脂組成物(A-1)について、前記方法で透過率、硬度、耐湿熱性、パターン加工性を評価した。脂組成物(A-16)を用いて、実施例1と同様にして評価を行った。

「【0103】
実施例17 以下の手順に従い、タッチパネル部材を作製した。
【0104】
(1)ITOの作製
厚み約1mmのガラス基板にスパッタリング装置HSR-521A((株)島津製作所製)を用いて、RFパワー1.4kW、真空度6.65×10^(-1)Paで12.5分間スパッタリングすることにより、膜厚が150nmで、表面抵抗が15Ω/□のITOを成膜し、ポジ型フォトレジスト(東京応化工業(株)製「OFPR-800」)を塗布し、80℃で20分間プリベークして膜厚1.1μmのレジスト膜を得た。PLAを用いて、得られた膜に超高圧水銀灯をマスクを介してパターン露光した後、自動現像装置を用いて2.38wt%TMAH水溶液で90秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスした。その後、40℃のHCl/HNO_(3)/H_(2)O=18/4.5/77.5(重量比)混合溶液に80秒浸すことでITOをエッチングし、50℃の剥離液(ナガセケムテックス(株)製「N-300」)で120秒処理することでフォトレジストを除去し、膜厚150nmのパターン加工されたITO(図1および図2の符号2)を有するガラス基板を作製した(図1のaに相当)。
【0105】
(2)透明絶縁膜の作製 得られたガラス基板上にネガ型感光性樹脂組成物(A-1)を用い、上述の評価の方法の手順に従い透明絶縁膜(図1および図2の符号3)を作製した(図1のbに相当)。
【0106】
(3)MAM配線の作製
得られたガラス基板上に、ターゲットとしてモリブデンおよびアルミニウムを用い、エッチング液としてH_(3)PO_(4)4/HNO_(3)/CH_(3)COOH/H_(2)O=65/3/5/27(重量比)混合溶液を用いる以外は(1)と同様の手順によりMAM配線(図1および図2の符号4)を作製した(図1のcに相当)。
【0107】
(4)透明保護膜の作製 得られたガラス基板上にネガ型感光性樹脂組成物(A-1)を用い、上述の評価の方法の手順に従い透明保護膜を作製した。テスターを用いて接続部の導通テスト実施したところ、電流の導通が確認された(図2に相当)。」

「【符号の説明】
【0112】
a:透明電極形成後の上面図
b:絶縁膜形成後の上面図
c:金属配線形成後の上面図
1:ガラス基板
2:透明電極
3:透明絶縁膜
4:配線電極
5:透明保護膜」

「【図2】



よって、引用文献1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が、記載されている。

「ネガ型感光性樹脂組成物およびそれを用いた保護膜およびタッチパネル部材を製造する方法において、
高硬度、高透明、高耐熱で、かつ下地金属の腐食を抑える高い耐湿熱性を備える硬化膜を与える、アルカリ現像可能なネガ型感光性樹脂組成物を提供することを課題として、

ネガ型感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有アクリル樹脂を含有し、アクリル樹脂のカルボン酸当量に特に制限は無いが、好ましくは400g/mol以上であり、カルボン酸当量とは、カルボキシル基1mol量を得るのに必要な樹脂の重量を表し、単位はg/molであり、カルボン酸当量がかかる範囲にあることで、ネガ型感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液での現像後の残さを抑制するとともに露光部の膜減りを抑えられ、良好なパターンを形成することでき、

ネガ型感光性樹脂組成物は、光重合開始剤と、多官能モノマーを含有し、光照射により上記(B)光重合開始剤によって、多官能モノマーの重合が進行し、多官能モノマーとしてはたとえばトリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられ、

ネガ型感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜は、高い硬度、透明性、耐熱性を有することから、タッチパネル用保護膜として好適に用いることができ、さらに、高い耐湿熱性を有することから、金属配線保護膜として好適に用いることができ、金属配線上に形成することにより、金属の腐食等による劣化(導電性の低下など)を防ぐことができ、保護する金属として、たとえば、銅などが挙げられ、

アクリル樹脂溶液(A)において、例えば、アクリル樹脂の重量平均分子量を30000、カルボン酸当量を560g/molとして合成し、
パターン加工性の評価において、ネガ型感光性樹脂組成物をプリベークし、得られたプリベーク膜に、超甲水銀灯を高原として、グレースケールマスクを介して露光し、その後、自動現像装置を用いて現像し、次いでリンスし、
接着性の評価において、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、上記アクリル樹脂溶液(A)を加えて、ネガ型感光性樹脂組成物を得て、

タッチパネル部材の作製では、
ガラス基板上に、配線を作製し、
得られたガラス基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて上述の評価方法の手順に従い透明保護膜が作成される(図2に相当)、

タッチパネル部材の作製方法。」


ウ 出願当時の技術水準について

(ア)周知例1
a 引用文献2
本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2013-155246号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。

「【0013】
次に、本発明の紫外線硬化性透明樹脂組成物について説明する。本発明の紫外線硬化性透明樹脂組成物は、(A)(メタ)アクリル系モノマー、(B)光重合開始剤、(C)ポリエステル樹脂を含有するものであり、上記各成分は、以下の通りである。
【0014】
(A)(メタ)アクリル系モノマー(メタ)アクリル系モノマーは、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フェノキシエチルメタクリレート、ジエチレングルコールジメタクリレート、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピルアクリルレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、フェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールPO変性(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、エトキシ化(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化O-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリ
コール(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ビシフェノールF EO変性ジ(メタ)アクリレート、9、9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、イソシアヌル酸変性ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。」

「【0044】
次に、上記した本発明の紫外線硬化性透明樹脂組成物の塗工方法について説明する。ここでは、フレキシブル基板上に本発明の紫外線硬化性透明樹脂組成物を塗工して皮膜を形成する方法、より具体的には、銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するフレキシブル配線板上に、本発明の紫外線硬化性透明樹脂組成物を塗工して、ソルダーレジスト膜を形成する方法を例にとって説明する。銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するフレキシブル配線板上に、上記のように製造した紫外線硬化性透明樹脂組成物をスクリーン印刷法、スプレーコート法等の方法を用いて所望の厚さに塗布する。
【0045】
その後、塗布した紫外線硬化性透明樹脂組成物上から紫外線を照射させることにより、フレキシブル配線板上に目的とする硬化塗膜を形成させることができる。」

「【0062】
本発明の紫外線硬化性透明樹脂組成物では、耐折曲性等の機械的特性や透明性を損なうことなく、PET密着性に優れた硬化物を得ることができるので、例えば、配線基板の絶縁被膜やソルダーレジスト膜、タッチパネル用保護膜等の分野で利用価値が高い。」

よって、引用文献2には、下記の技術が記載されている。

「紫外線硬化性透明樹脂組成物において、
(A)(メタ)アクリル系モノマー、(B)光重合開始剤、(C)ポリエステル樹脂を含有し、
(A)(メタ)アクリル系モノマーとして、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよく、
紫外線硬化性透明樹脂組成物の塗工において、銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するフレキシブル配線板上に、紫外線硬化性透明樹脂組成物を塗布し、
塗布した紫外線硬化性透明樹脂組成物上から紫外線を照射させることにより、フレキシブル配線板上に目的とする硬化塗膜を形成させることができ、
上記の紫外線硬化性透明樹脂組成物では、耐折曲性等の機械的特性や透明性を損なうことなく、PET密着性に優れた硬化物を得ることができるので、例えば、配線基板の絶縁被膜やソルダーレジスト膜、タッチパネル用保護膜等の分野で利用価値が高い、
紫外線硬化性透明樹脂組成物。」

b 周知技術
引用文献2において、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどは、紫外線照射により重合する化合物として一般的によく知られているから、「光重合性化合物」であるといえる。また、上記保護膜が保護する回路をタッチパネルで用いた場合に、当該回路が「電極」として用いられることは明らかである。

以上より、引用文献2には、銅を含む電極を有する配線板上に、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート化合物を含む紫外線硬化性透明樹脂組成物を含有する保護膜を設けたタッチパネルが記載されており、このような技術は、本願の出願日前から、周知の技術であったといえる。

(イ)周知例2
a 引用文献3
本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2013-123825号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。

「【0035】
図1のハードコートフィルム1は、基材層2と、表面側ハードコート層3と、裏面側ハードコート層4(第三ハードコート層に相当)と、高屈折率層5とを有している。」

「【0056】
(表面側ハードコート層3)表面側ハードコート層3は、第一ハードコート層6と第二ハードコート層7とを有している。」

「【0088】
第二ハードコート層7を形成する樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂や、活性エネルギー線硬化樹脂等が挙げられる。
第二ハードコート層7は、例えば、活性エネルギー線硬化樹脂の重合性モノマー又は重合性オリゴマーを含む塗布組成物を第一ハードコート層6の一方の面上に塗布し、重合性モノマーや重合性オリゴマーを架橋反応及び/又は重合反応させることにより形成することができる。上記塗布組成物としては、具体的には、重合性モノマー、重合性オリゴマー、光重合開始剤、光開始助剤等を含むものである。
【0089】
上記活性エネルギー線硬化樹脂の重合性モノマー又は重合性オリゴマーとしては、例えば1分子中に少なくとも1個以上の二重結合を有する化合物が挙げられ、アクリレートを主成分とする重合性モノマー又は重合性オリゴマーが好適に用いられる。かかるアクリレートとしては、特に限定されないが、透明導電層が積層される際の温度に耐え、透明性を維持できる樹脂が好ましい。特に、第二ハードコート層7の硬化後の機械特性及び透明性、耐薬品性、耐熱性、並びに塗布加工時の低粘度化等を満たすためには、3次元架橋を期待できる3官能以上のアクリレートを主成分とする重合性モノマー又は重合性オリゴマーを架橋してなる紫外線硬化性樹脂が好ましい。3官能以上のアクリレートとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ポリエステルアクリレートが好ましく、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート又はポリエステルアクリレートが特に好ましい。」

「【0113】
(透明導電層12)
透明導電層12は、高屈折率層5の他方の面に積層される。透明導電層12の形成材料としては、透明性と導電性とを有する導電性材料であれば特に限定されないが、無機系金属や有機導電高分子が挙げられる。無機系金属としては、例えば金、銀、銅、白金、ニッケル、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)が挙げられる。」

「【0120】
[第三実施形態]〈タッチパネル21〉図3のタッチパネル21は、静電容量方式のタッチパネルとして形成されている。タッチパネル21は、透明導電性積層体11と、粘着層22と、ガラス基板23とを有している。本実施形態における透明導電性積層体11は、図2の透明導電性積層体11と同様のため、同一番号を付して説明を省略する。
【0121】
透明導電性積層体11は、粘着層22を介してガラス基板23に積層されている。粘着層22としては、特に限定されないが、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の公知の粘着性樹脂を用いた粘着層が挙げられる。タッチパネル21は、ハードコートフィルム1が透明導電層12の表面側(視認者側)になるように配設されている。
【0122】
当該タッチパネル21は、当該ハードコートフィルム1を有しているので、当該ハードコートフィルム1の耐熱性を向上させることができ、ひいては寸法安定性を向上させることができる。当該タッチパネル21は、当該ハードコートフィルム1を有しているので、当該ハードコートフィルム1の硬度を高めると共に、カールの発生を防止することができる。当該タッチパネル21は、当該ハードコートフィルム1が高屈折率層5を有しているので、透明導電層12に形成される電極パターンの視認性を低下させることができる。」

よって、引用文献3には、以下の技術が記載されている。

「タッチパネルのハードコートフィルム1が、基材層2と、表面側ハードコート層3を有し、
表面側ハードコート層3は、第一ハードコート層6と第二ハードコート層7とを有し、
第二ハードコート層7を形成する樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂や、活性エネルギー線硬化樹脂等が挙げられ、
第二ハードコート層7は、例えば、活性エネルギー線硬化樹脂の重合性モノマーを含み、
上記活性エネルギー線硬化樹脂の重合性モノマーとしては、例えば1分子中に少なくとも1個以上の二重結合を有する化合物が挙げられ、アクリレートを主成分とする重合性モノマーが好適に用いられ、かかるアクリレートとしては、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどが特に好ましく、かかるアクリレートとしては、特に限定されないが、透明導電層が積層される際の温度に耐え、透明性を維持できる樹脂が好ましく、特に、第二ハードコート層7の硬化後の機械特性及び透明性、耐薬品性、耐熱性、並びに塗布加工時の低粘度化等を満たすためには、3次元架橋を期待できる3官能以上のアクリレートを主成分とする重合性モノマーを架橋してなる紫外線硬化性樹脂が好ましく、
透明導電層12の形成材料としては、透明性と導電性とを有する導電性材料であれば特に限定されないが、無機系金属や有機導電高分子が挙げられ、無機系金属としては、例えば銅などが挙げられ、
タッチパネル21は、透明導電性積層体11と、粘着層22と、ガラス基板23とを有し、透明導電性積層体11は、粘着層22を介してガラス基板23に積層され、ハードコートフィルム1が透明導電層12の表面側(視認者側)になるように配設されることにより、透明導電層12に形成される電極パターンの視認性を低下させる、タッチパネル。」

b 周知技術
タッチパネルにおける透明導電層における金属が電極の役割を担うことは技術常識であるから、当該電極が、上記のような「銅」などの透明導電層12の形成材料で構成されることは、明らかである。また、活性エネルギー線硬化樹脂の重合性モノマーは、光に反応して重合する化合物であるから、光重合性化合物といえるものである。
よって、引用文献3には、銅を含む電極を有する基材上に、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを含む光重合性化合物を含有する紫外線硬化性樹脂からなるハードコート層を設けたタッチパネルの技術が記載されており、このような技術は、本願の出願日前から周知の技術であったといえる。

(ア)引用文献4

a 本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2011-167848号公報(以下、「引用文献4」という。)には、以下の記載がある。

「【請求項1】
基材の少なくとも片面に、基材側から、線状構造体からなる導電成分を含む導電層、保護層の順に積層した導電積層体であって、該保護層が下記(i)及び(ii)を満たす導電積層体。
(i)保護層の表面について、純水の接触角が80°以上、且つ、オレイン酸の接触角が13°以上。
(ii)保護層が、S元素、P元素、金属元素、金属イオンおよび官能基を構成するN元素をいずれも含まない高分子化合物からなる。」

「【請求項8】
タッチパネル用に用いられる請求項1?7のいずれかに記載の導電積層体。」

「【0033】
本発明における保護層は、S元素、P元素、金属元素、金属イオン及び官能基を構成するN元素をいずれも含まない高分子化合物からなる必要がある。S元素、P元素、N元素はその電子軌道状態からその他元素と結合しない電子対を有することがあったり、金属イオンとイオン結合を有する官能基(例えば、-ONa、-COONa、-SO_(3)Naなど)を形成したりし、また金属元素は配位結合を形成することがある。それらその他元素と結合しない電子対、イオン結合、配位結合は、除去剤中の除去成分である酸もしくは塩基成分と容易に作用してしまい、S元素、P元素、金属元素、金属イオン及び官能基を構成するN元素のいずれかがもともと結合していた元素との結合を容易に切断・開裂してしまい、結果、除去剤中の除去成分である酸もしくは塩基成分が保護層に浸透しやすくさせてしまい、ひいてはパターンの太りや不均一化が発生し、微細化が困難となる。またさらに、前記イオン結合を有する官能基は親水性を付与しやすくなるため、前記純水の接触角を小さくする傾向にあり、純水の接触角を80°以上にするには不向きである。一方、これらS元素、P元素、金属元素、金属イオンおよび官能基を構成するN元素をいずれも含まない高分子化合物を用いると、容易に前記純水の接触角を80°以上にすることができることに加え、除去剤中の除去成分である酸もしくは塩基成分の浸透する速度を遅くすることができ、結果、導電成分である線状構造体を選択的に除去することで、除去剤の洗浄工程後も保護層の剥離・溶解を抑制することができるため、パターンの太りや不均一化が無く、微細化が可能となる。保護層の成分としては、有機または無機系の高分子化合物などが挙げられる。」

「【0035】
有機系高分子化合物としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などが挙げられ、可視光透過性、基材の耐熱性、ガラス転移点および膜硬度などの観点から、適宜選択することができる。これら樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、フェノール系樹脂、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等の塩素元素(Cl元素)を含有する樹脂、フッ素元素(F元素)を含有する樹脂(例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等の樹脂の構造内にフッ素元素(F元素)を含有する樹脂)、シリコーン系樹脂(直鎖シリコーン系樹脂、シリコーンレジン系樹脂、直鎖シリコーン系樹脂やシリコーンレジン系樹脂とその他樹脂との共重合体やグラフト構造の共重合体、前記直鎖シリコーン系樹脂・前記シリコーンレジン系樹脂・前記その他樹脂との共重合体やグラフト構造の共重合体のシリコーンの分子鎖末端、分子鎖中、分岐鎖中など構造内に各種官能基を導入した変性シリコーン系樹脂)、等が挙げられ、これらを要求する特性や生産性等をふまえ少なくとも1種類を任意に選択し、またこれらを2種以上混合しても良く、特にこれらに限定されるものではないが、前記各接触角を特定の範囲にすることが容易という観点からは、フッ素元素(F元素)を含有する樹脂、シリコーン系樹脂、が好ましく、さらには、透明性等の光学特性に加え後述する理由から多官能アクリル系高分子化合物、もしくは多官能メタクリル系高分子化合物が好ましく使用することができる。
【0036】
またさらに本発明においては、前記高分子化合物が架橋構造を有していると、除去剤中の除去成分である酸もしくは塩基成分の浸透する速度を遅くし、導電成分である線状構造体を選択的に除去することで、除去剤の洗浄工程後も保護層の剥離・溶解を抑制し、パターンの太りや不均一化が無く、さらに微細化がしやすくなるため特に好ましい。本発明における架橋構造とは保護層を形成する成分の結合が3次元的につながった状態であり、架橋構造をとることで保護層を構成する成分の結合が緻密になり保護層の自由空間(自由体積)が小さくなった結果、保護層への除去剤からの酸もしくは塩基成分の浸透を抑制することができると推定している。この架橋構造による効果は、有機系高分子化合物であっても、また、無機系高分子化合物であっても同様であるが、有機系高分子化合物に比べ無機系高分子化合物が架橋構造をとると柔軟性や屈曲性が低下し保護層が脆くなり、生産時の取り扱い方法等では脆性破壊しやすくなる可能性があるため、有機系高分子化合物の架橋構造体が最も好ましい。」

「【0037】
有機系高分子化合物を架橋構造とする方法としては、多官能モノマーや多官能オリゴマーを加熱硬化したり、紫外光、可視光、電子線等の活性電子線を照射して光硬化させる方法がある。熱硬化の場合は熱エネルギーが硬化反応のドライビングフォースであるため、モノマーやオリゴマーをより多官能にすると反応性に時間を要し硬化時間が長くする等の対処が必要な場合がある、一方、光硬化の場合は、後述するような光開始剤を含有し、そこに前記活性電子線を照射することで発生する開始種によって連鎖的に容易に反応が進行するため、硬化時間が短い等の理由からより好ましい。本発明の多官能アクリル系高分子化合物、もしくは多官能メタクリル系高分子化合物を形成する多官能モノマーや多官能オリゴマーとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、等が挙げられ、これらを要求する特性や生産性等をふまえ少なくとも1種類を任意に選択し、またこれらを2種以上混合しても良く、さらには添加剤としてイソホロンジイソシアネート(IPDI)等のイソシアネート系化合物を混合して官能基とは異なり骨格構造内にN元素を含有するウレタンアクリレート骨格を一部有していても良く、特にこれらに限定されるものではない。」

よって、引用文献4には、下記の技術が記載されている。

「基材の少なくとも片面に、基材側から、線状構造体からなる導電成分を含む導電層、保護層の順に積層し、タッチパネル用に用いられるた導電積層体であって、
保護層の成分として、有機系高分子化合物などが挙げられ、有機系高分子化合物は、光硬化性樹脂で架橋構造を有していることが好ましく、
有機系高分子化合物を架橋構造とする方法として、多官能モノマーなどを紫外光照射して光硬化させる方法があり、
前記多官能モノマーとして、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられ、少なくとも1種類を任意に選択し、また2種以上混合しても良く、
導電層には、銅ナノワイヤーを形成する、
導電積層体」

b 周知技術
引用文献4における「有機系高分子化合物」は光硬化性樹脂で架橋構造を有したものであり、このような化合物は、紫外光により光硬化する際に、重合反応するものとして一般的に知られているものであるから、上記「有機系高分子化合物」は、光重合性化合物といえるものである。また、タッチパネルにおいて、導電層に含まれる銅などの金属が電極に相当することは、明らかである。
よって、引用文献4には、銅を含む電極を有する基材上に、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを含む光重合性化合物を含有する紫外線硬化性樹脂からなる保護層を設けたタッチパネルの技術が記載されており、このような技術は、本願の出願日前から周知の技術であったといえる。

エ 対比

本件補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「タッチパネル部材」は、本件補正発明の「タッチパネル用基材」に対応し、引用発明の「タッチパネル部材」において、「ガラス基板上に、配線が作製」されるが、当該「配線」は、図2を参照すると「透明電極」を指すものであり、また、「配線」の例として、銅などが挙げられ」ていることから、引用発明の「タッチパネル部材」と本件補正発明の「タッチパネル用基材」は、銅を含む電極を有する点で共通する。

(2)引用発明の「ネガ型感光脂組成物」は、「カルボキシル基含有アクリル樹脂を含有」し、当該「アクリル樹脂」の「カルボン酸当量は、好ましくは400g/mol以上であ」る。ここで、「酸価」の定義は、バインダポリマ1g中に存在する遊離酸を中和するのに必要な、水酸化カリウムのmg数(単位:mgKOH/g)であり、カルボン酸当量の定義は、カルボキシル基1mol量を得るのに必要なバインダポリマの重量(単位:g/mol)であるから、水酸化カリウムの分子量を56(g/mol)とし、酸価をX(mgKOH/g)とし、カルボン酸当量をY(g/mol)とすると、
X=56/Y×1000
の換算式が導出される。そして、上記の式に、Y=400g/molを当てはめると、
X=56/800×1000=140(mgKOH/g)
となる。
つまり、引用発明において、「カルボン酸当量」が「400g/mol以上」であることは、「酸価」が140(mgKOH/g)以下であることに等しく、引用発明の「酸価」と本件補正発明の「酸価」は、「80?100mgKOH/g」の範囲で共通する。
また、引用発明のカルボキシル基含有アクリル樹脂において、アクリル樹脂の重量平均分子量は30000であることが示されている。
よって、引用発明の「カルボキシル基含有アクリル樹脂」は、「カルボキシル基を有し、かつ酸価が80?100mgKOH/gであり、重量平均分子量が30000である」点で、本件補正発明の「バインダポリマ」に共通する。

(3)引用発明の「ネガ型感光脂組成物」において、「多官能モノマーを含有し、多官能モノマーとしてはたとえばトリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられ」るものであり、また、「多官能モノマー」は、「光照射により光重合開始剤によって」、「重合が進行する」ものであるから、引用発明の「多官能モノマー」は、本件補正発明の「光重合性化合物」に対応する。

(4)引用発明の「ネガ型感光脂組成物」は、以上のように、タッチパネル用基材に、光重合性化合物を含有し、さらに、光重合開始剤を含有するものであるから、下記の相違点を除いて「感光性樹脂組成物」に対応する。

(5)引用発明の「タッチパネル部材の作製」において、「ガラス基板上に、配線(透明電極)を作製し、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて」、「ネガ型感光性樹脂組成物をプリベークし、得られたプリベーク膜に、超高水銀灯を光源として、グレースケールマスクを介して露光し、その後、自動現像装置を用いて現像し、次いでリンス」するものであり、透明電極上にネガ型感光性樹脂組成物がプリベークされることにより得られた「プリベーク膜」は、露光で反応する層であるといえるから、本件補正発明の「感光層」に対応する。

(6)引用発明の「タッチパネル部材の作製」において、上記「プリベーク膜」に「超高水銀灯を光源として」、露光(活性光線を照射)するが、これにより「プリベーク膜」は、硬化される。その後、「プリベーク膜」を「現像」して「リンス」するが、「グレースケールマスク」でマスキングされていない部分のみ硬化することは明らかであるから、マスキングされている部分(所定部分以外)を「現像」し「リンス」(除去)しているといえる。
また、このように、「ネガ型感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜」は、「タッチパネル用保護膜」として、「配線(電極)上に形成」されるものであるから、「タッチパネル用保護膜」は、電極の一部又は全部を被覆する「プリベーク膜」の所定部分の硬化膜を形成しているといえる。よって、引用発明の「タッチパネル用保護膜」は、本件補正発明の「硬化膜」に、下記の相違点を除いて、対応する。

(7)以上より、引用発明の「タッチパネル用保護膜」を用いた「タッチパネル部材の作製方法」は、下記の相違点を除いて、本件補正発明の「硬化膜付きタッチパネル用基材の製造方法」に対応する。

したがって、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
銅を含む電極を有するタッチパネル用基材上に、カルボキシル基を有し、かつ酸価が80?100mgKOH/gであり、重量平均分子量が30000?200000であるバインダポリマと、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物からなる感光層を設け、該感光層の所定部分を活性光線の照射により硬化させた後に前記感光層の前記所定部分以外を除去し、前記基材の前記電極の一部又は全部を被覆する前記感光層の前記所定部分の硬化膜を形成する、硬化膜付きタッチパネル用基材の製造方法。

[相違点]
本件補正発明の光重合性化合物がジトリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含むのに対し、引用発明の多官能モノマーは、そのような構成が特定されていない点。

オ 相違点についての判断

上記相違点について検討する

銅を含む電極を有する基材に、光重合性化合物を含有する樹脂からなる層を設けたタッチパネルの技術は、例えば上記「第2 2(2)ウ」で述べたとおり、本願の出願日前から周知であったと認められ、また、引用発明に周知技術を用いることに阻害要因があるとはいえない。
よって、引用発明のタッチパネル用基材の光重合性化合物においても、上記周知技術を用いて、光重合性化合物にジトリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含む重合性モノマー(光重合性化合物)を含むよう構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4)審判請求書における請求人の主張について

審判請求書において、請求人は、下記のとおり主張している(下線部及び「主張点1」?「主張点5」は、当審で付記した。)。

「引用文献1では、下地金属の金属材料として、アルミニウムやモリブデンと並列的に銅が記載されているものの(段落[0071])、段落[0012]において、「本発明の目的は、上記のネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜を具備し、該硬化膜によりモリブデン含有金属配線が保護されているタッチパネル部材により達成される。」と記載されているとおり、当該文献に係る発明の具体例を示す実施例において、モリブデン/アルミニウム/モリブデン積層膜が用いられているに過ぎず(段落[0084]、[0106])、銅は下地金属の金属材料として形式的に記載されているに過ぎません。そのため、引用文献1には、銅を含む電極を有するタッチパネル用基材上に硬化膜を形成することについて何ら具体的に記載されておらず(主張点1)、「カルボキシル基を有し、かつ酸価が80?100mgKOH/gであり、重量平均分子量が30000?200000であるバインダポリマと、ジトリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含む光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する」感光性樹脂組成物を用いて、銅を含む電極を有するタッチパネル用基材上に硬化膜を形成することについて何ら記載されておりません。そして、引用文献1では、当該文献の先行技術文献である特許文献4(特開2007-233184号公報)について、「特許文献4のように耐湿熱性の重要性は知られていたものの、硬化膜の外観変化が生じるか否かを評価する程度であり、試験前後で保護した下地金属がどのように変化するかという観点では検討されていなかった。」と記載され(段落[0006])、下地金属の変化は、実際に確認することを要することが示唆されております。ここで、引用文献1の保護対象であるモリブデンは、銅に比べて錆びにくい材料であることが知られていること(例えば、特開2012-146134号公報の段落[0049]参照)、及び、上述のとおり、下地金属の変化は実際に確認することを要することからすれば、引用文献1の実施例においてモリブデンに対する保護効果が確認されているとしても、モリブデン以外に段落[0071]に列挙された各種金属を用いた場合にもモリブデンと同様の効果が期待されると直ちに判断し得るものではありません。(主張点2)
また、銅を含む電極を有するタッチパネル用基材上に硬化膜を形成することについて何ら具体的に記載されていない引用文献1では、「ジトリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物と、銅を含む電極の防錆性との関係」について何ら認識されておりません。(主張点3)さらに、引用文献1では、当該文献に係る発明の具体例を示す実施例における(A)カルボキシル基含有アクリル樹脂の合成例1において、カルボン酸当量の数値に基づき導出される酸価として、偶発的に本願の範囲に包含される酸価100mgKOH/gを有するバインダポリマが示されているものの(段落[0073])、バインダポリマのカルボン酸当量と、銅を含む電極の防錆性との関係について何ら認識がなく(段落[0019]等参照)、当然ながら、「バインダポリマの酸価と、銅を含む電極の防錆性との関係」について何ら認識がありません。(主張点4)なお、そもそも、酸価がカルボン酸当量の数値に基づき導出されるとしても、酸価とカルボン酸当量とは互いに異なる化学的物性であり、引用文献1においてバインダポリマの酸価が何ら記載されていないことからしても、引用文献1では、「バインダポリマの酸価と、銅を含む電極の防錆性との関係」について何ら認識がありません。
したがって、以上のとおりの引用文献1に基づき、下地金属の金属材料として銅を選択した上で、光重合性化合物として、ジトリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物が、銅を含む電極の防錆性に有効であること等に着想することにより、優れた透明性、現像性及び防錆性(銅を含む電極の防錆性)を両立する観点から、銅を含む電極を有するタッチパネル用基材上に硬化膜を形成するに際して、「カルボキシル基を有し、かつ酸価が80?100mgKOH/gであり、重量平均分子量が30000?200000であるバインダポリマと、ジトリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含む光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する」感光性樹脂組成物を用いることは当業者といえども困難です。」(主張点5)


イ 当審における検討・判断
上記主張点について検討を行う。

(ア)主張点1について
引用発明は、「ネガ型感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜は、高い硬度、透明性、耐熱性を有することから、タッチパネル用保護膜として好適に用いることができ、さらに、高い耐湿熱性を有することから、金属配線保護膜として好適に用いることができ、金属配線上に形成することにより、金属の腐食等による劣化(導電性の低下など)を防ぐことができ、保護する金属として、たとえば、銅などが挙げられ」ることが明示されている(「第2 2(2)イ 引用発明」を参照されたい)。
よって、「感光性樹脂組成物を用いて、銅を含む電極を有するタッチパネル用基材上に硬化膜を形成すること」について、引用発明に開示されていないとはいえない。

(イ)主張点2について
引用発明の硬化膜について、「銅に対する保護効果」が確認されていないことが、請求人の主張するとおりであるとしても、当該硬化膜の「銅に対する保護効果」が否定されているというような記載や示唆があるとは認められず、また、銅を排除する合理的な理由も無いから、引用発明には、その開示内容のとおり、「感光性樹脂組成物を用いて、銅を含む電極を有するタッチパネル用基材上に硬化膜を形成する」技術が示されていると解するのが妥当である。
なお、「銅に対する保護効果」は、本件補正発明における発明特定事項であるとはいえない。ゆえに、この点で、引用発明と本件補正発明の格別の差異があるとは認められず、また、請求人の主張が、発明特定事項に基づくものであるとも認められない。

(ウ)主張点3について
引用発明において、「ジトリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物と、銅を含む電極の防錆性との関係」について認識されていない点は請求人の主張するとおりであるが、「ジトリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物と、銅を含む電極」の組み合わせが本願の出願日前から周知であり、また、引用発明の電極に銅が含まれるからといって、それが、引用発明の硬化膜に「ジトリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物」という周知技術を用いるに際の阻害要因となるとはいえないから、引用発明のカルボキシル基含有アクリル樹脂が「ジトリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物」を含むことは、当業者が容易に想到し得たことであったと認められる。

(エ)主張点4について
バインダポリマのカルボン酸当量及びバインダポリマの酸価と、銅を含む電極の防錆性との関係について、引用発明に具体的に開示されていない点は、請求人の主張するとおりであるとしても、引用発明には、カルボキシル基含有アクリル樹脂のカルボン酸当量又はバインダポリマの酸価を本件補正発明と同様の構成とすることが明示されており、このような構成を引用発明から排除すべき特別な事情があるともいえない。よって、この点で、引用発明と本件補正発明の特段の差異があるとは認められない。

(オ)主張点5について
引用発明において、「高透明で、下地金属の腐食を抑える、ネガ型感光性透明材料」を提供することを発明の課題とし、カルボキシル基含有アクリル樹脂の酸価を所定の範囲とすることで「現像後の残さを抑制」することが明示されているから、「優れた透明性、現像性及び防錆性(銅を含む電極の防錆性)を両立する観点」という本件補正発明の課題について、引用発明においても、認識されていたと認められる。
そして、引用発明における上記の課題や構成から見ても、上記「第2 2(2)オ 判断」で示したとおり、引用発明に周知技術を適用することについて、何ら阻害要因があったとはいえない。
よって、引用発明に基づき、下地金属の金属材料を銅として、銅を含む電極を有するタッチパネル用基材上に硬化膜を形成する際に、「カルボキシル基を有し、かつ酸価が80?100mgKOH/gであり、重量平均分子量が30000などであるバインダポリマと、ジトリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含む光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する」感光性樹脂組成物を用いることは、当業者が容易になし得たことであると認められる。

また、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものということはできない。

以上より、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


(5)小活
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願発明

上述のとおり、令和元年6月5日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年9月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-16の記載により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記第2の1(1)に記載されたとおりのものである。

2.刊行物に記載された発明

引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記第2の2(2)「イ 引用発明」に記載したとおりである。

3.本願発明と引用発明との対比・判断

本願発明は、上記第2の2(1)で述べたように、本件補正発明から、「光重合性化合物」について、「ジトリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含む」との限定を省いたものであるから、本願発明と引用発明とは、上記限定を省いた構成について、上記第2の2(2)「エ 対比」と同様に対比でき、本願発明と引用発明との一致点は、上記第2の2(2)「エ 対比」[一致点]で述べた本件補正発明と引用発明との一致点と同じものであり、本願発明と引用発明との相違点は、認められない。


第4 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号及び第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。




 
審理終結日 2020-06-30 
結審通知日 2020-07-07 
審決日 2020-07-28 
出願番号 特願2013-250315(P2013-250315)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 若林 治男桜井 茂行間野 裕一  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 永野 志保
小田 浩
発明の名称 硬化膜付きタッチパネル用基材の製造方法、感光性樹脂組成物、感光性エレメント及びタッチパネル  
代理人 阿部 寛  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 平野 裕之  
代理人 古下 智也  
代理人 吉住 和之  
代理人 清水 義憲  
代理人 酒巻 順一郎  

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