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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K |
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管理番号 | 1366423 |
審判番号 | 不服2019-16242 |
総通号数 | 251 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-12-02 |
確定日 | 2020-10-06 |
事件の表示 | 特願2016- 74647「治具セット、加工装置及び加工方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月12日出願公開、特開2017-187866、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成28年4月1日の出願であって,平成31年4月25日付けで拒絶の理由が通知され,令和1年7月11日に意見書が提出され,同年8月27日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。謄本送達日同年9月3日。)がなされ,これに対して同年12月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,令和2年1月30日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和1年8月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1-10 ・引用文献 1-2 <拒絶の理由を発見しない請求項> 請求項(11-13)に係る発明については,現時点では,拒絶の理由を発見しない。 <引用文献等一覧> 1.特開2005-315653号公報 2.国際公開第2008/001529号(周知技術を示す文献) 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正(以下,「本件補正」という。)は,特許法17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「RFIC素子」につき,「前記第1治具と前記第2治具とを組み合わせたときの突き合わせ面を構成する前記第1治具の面に設けられて」いることを限定し,同「アンテナ素子」につき,「前記突き合わせ面を構成する前記第2治具の面に設けられている」ことを限定するものであって,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして,以下第4乃至第6に示すように,補正後の請求項1乃至12に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1乃至12に係る発明(以下「本願発明1」乃至「本願発明12」という。)は,令和1年12月2日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至12に記載された,次のとおりのものと認める。 「 【請求項1】 RFIC素子を備えた第1治具と、 前記第1治具と組をなす治具であって、前記第1治具と組み合わせたときに前記RFIC素子と電気的に接続可能なアンテナ素子を備えた第2治具と、 を備え、 前記RFIC素子は、前記第1治具と前記第2治具とを組み合わせたときの突き合わせ面を構成する前記第1治具の面に設けられており、 前記アンテナ素子は、前記突き合わせ面を構成する前記第2治具の面に設けられている、治具セット。 【請求項2】 前記第1治具と前記第2治具とは、複数の組み合わせパターンを有し、 前記複数の組み合わせパターンのうちの一つの組み合わせパターンの場合に、前記第1治具の前記RFIC素子と前記第2治具の前記アンテナ素子とが電気的に接続可能な、請求項1に記載の治具セット。 【請求項3】 前記第1治具と前記第2治具とは、互いに組み合わせられる回転対称性を有する形を有し、 前記第1治具の前記RFIC素子と前記第2治具の前記アンテナ素子とは、前記回転対称性を有する形の対応する一つの部分に設けられている、請求項2に記載の治具セット。 【請求項4】 前記第1治具と前記第2治具とは、互いに組み合わせられる正多角形の形状を有し、 前記第1治具の前記RFIC素子と前記第2治具の前記アンテナ素子とは、前記正多角形の対応する一つの辺に設けられている、請求項2に記載の治具セット。 【請求項5】 前記第1治具は、前記正多角形の複数の辺に設けられた複数のRFIC素子を備え、 前記第2治具は、前記第1治具の前記正多角形の複数の辺の対応する正多角形の複数の辺に設けられた複数のアンテナ素子を備える、請求項4に記載の治具セット。 【請求項6】 前記複数のRFIC素子は、それぞれが前記正多角形の辺の異なる位置に設けられ、 前記複数のアンテナ素子は、それぞれが前記正多角形の辺の異なる位置に設けられ、 対応する一対の前記RFIC素子と前記アンテナ素子とは、前記正多角形の対応する辺の対応する位置に設けられている、請求項5に記載の治具セット。 【請求項7】 前記第2治具に、RFIC素子が設けられており、 前記第1治具に、前記第2治具と組み合わせたときに前記第2治具のRFIC素子と電気的に接続可能なアンテナ素子が設けられている、請求項1から6のいずれか一項に記載の治具セット。 【請求項8】 前記第2治具のRFIC素子は、前記第1治具と前記第2治具とを組み合わせたときの突き合わせ面を構成する前記第2治具の面に設けられており、 前記第1治具のアンテナ素子は、前記突き合わせ面を構成する前記第1治具の面に設けられている、請求項7に記載の治具セット。 【請求項9】 前記第1治具と前記第2治具とは、複数の組み合わせパターンを有し、 前記複数の組み合わせパターンのうちの一つの組み合わせパターンの場合に、前記第1治具の前記アンテナ素子と前記第2治具の前記RFIC素子とが電気的に接続可能な、請求項8に記載の治具セット。 【請求項10】 第1識別情報を持つRFIC素子を備えた第1治具と、前記第1治具と組をなす治具であって、前記第1治具と組み合わせたときに前記RFIC素子と電気的に接続可能なアンテナ素子を備えた第2治具と、を備えた治具セットと、 前記第1治具と前記第2治具との間にセットしたワークを加工する加工具と、 前記RFIC素子と前記アンテナ素子との電気的接続によって構成されるRFIDタグとRFID通信を行って、前記RFIC素子の前記第1識別情報を取得するRFIDリーダと、 前記RFIC素子の前記第1識別情報を取得できた場合に、前記加工具に前記ワークの加工を指示するように前記RFIDリーダと前記加工具とを制御する制御部と、 を備えた、加工装置。 【請求項11】 第1識別情報を持つRFIC素子を備えた第1治具と、前記第1治具と組をなす治具であって、前記第1治具と組み合わせたときに前記RFIC素子と電気的に接続可能なアンテナ素子を備えた第2治具と、を備えた治具セットを用意し、 前記第1治具と前記第2治具との間に加工する対象のワークをセットして、前記第1治具と前記第2治具とを組み合わせ、 前記RFIC素子の前記第1識別情報を取得し、 前記RFIC素子の前記第1識別情報を読み取れたときに加工をスタートする、 ことを特徴とする加工方法。 【請求項12】 前記治具セットを用意するステップにおいて、さらに前記第2治具に第2識別情報を持つRFIC素子が設けられており、前記第1治具に前記第2治具と組み合わせたときに前記第2治具のRFIC素子と電気的に接続可能なアンテナ素子が設けられている治具セットを用意し、 前記第2治具のRFIC素子の前記第2識別情報を取得し、 前記第2治具のRFIC素子の前記第2識別情報を読み取れると共に、前記第1識別情報と前記第2識別情報との組合せが正しい組合せであるときに加工をスタートする、 請求項11に記載の加工方法。」 第5 引用例 1 引用例1に記載された事項及び引用発明 (ア)原査定の拒絶の理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2005-315653号公報(平成17年11月10日公開。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。) A 「【0003】 ところで、コネクタなどの接続検査を行う一つの手法としては、検査者が目視により接続をチェックする方法が考えられるが、コネクタが接続された状態にあるときは、コネクタの接続部分が外から見えない場合があり、十分にチェックすることができないという欠点があった。 また、上記特許文献1に開示されているコネクタ接続検査装置においては、コネクタの接続状態を確認するにあたって、専用の検査冶具などにコネクタをセットする必要があるため、検査が非常に面倒であるという欠点があった。 そこで、本発明は上記したような点を鑑みてなされたものであり、コネクタなどの実装状態をより簡単に検査することができる実装状態検査装置を提供することを目的とする。」 B 「【0008】 図3は、本発明の実施の形態とされる実装状態検査装置の概略構造を示した図である。 この図3(a)に示す本実施の形態とされる実装状態検査装置51は、リーダライタ100と、RFIDタグ200とにより構成されるが、この場合、RFIDタグ200は、被検査物61に取り付けられている。 被検査物61は、例えばコネクタなどのように2つのユニット61a、61bを組み合わせて使用されるものとされる。 …(中略)… そして、このような本実施の形態とされる実装状態検査装置51においては、RFIDタグ200が2つの回路ブロック201、202に分離されて被検査部61を構成している2つのユニット61a、61bに形成するようにしている。 この場合、回路ブロック201にはリーダライタ100から送信された信号の授受を行うループアンテナが形成され、回路ブロック202にはRFID200のループアンテナ以外の回路部が形成されている。そして、これら回路ブロック201と回路ブロック202との間には回路接離手段である回路接離部31が設けられている。 回路接離部31は、被検査物61を構成する2つのユニット61a、61bの実装が完成したとき、すなわち、被検査物61を構成する2つのユニット61a、61bが正常に組み合わされたときに、回路ブロック201と回路ブロック202とを接続してRFIDタグ200を正常に機能させるようにしている。 図3(b)は被検査部61に搭載された回路ブロック201、202の内部構成を示す図である。この例では回路ブロック201内においてループアンテナ201aの両端が端子a、bに接続され、回路ブロック202内においてIC回路202aのループアンテナを接続する端子が端子c、dに接続されている。そして各端子a、b、c、dが回路接離部31として構成されている。即ち、ユニット61a、61bが実装されていない場合は、各端子は離されてIC回路202aはループアンテナ201aが接続されていない状態なので動作しないが、ユニット61a、61bが実装されている場合は、各端子は接続されてIC回路202aはループアンテナ201aが接続された状態なので動作するようになる。」 C 「【0009】 …(中略)… また、これまでの説明では、本実施の形態の実装状態検査装置51によりコネクタ71の実装状態をチェックする場合を例に挙げたが、本実施の形態の実装状態検査装置51はコネクタ以外の接続状態を検査することも可能である。 【0010】 図5は、本発明の第2の実施例に係るRFIDタグが取り付けられる被検査物の他の例を示した図である。 この図5(a)(b)に示す被検査物は、ネジ81とネジ81を取り付け可能なネジ受部82との組み合わせにより構成される。ネジ81には回路ブロック201が設けられ、ネジ受部82には回路ブロック202が設けられている。この場合、ネジ81の回路ブロック201には、図5(c)に示すようなパッチ状の導体83、84が形成され、ネジ受部82の回路ブロック202には、図5(d)に示すような同心円状の導体85、86が形成されている。このとき、ネジ81の中心点x1から各導体83、84までの距離と、ネジ受部82の中心点x2から各導体85、86までの距離は同じとされる。 したがって、ネジ81をネジ受部82に取り付けることで、導体83と導体85、及び導体84と導体86とが、それぞれ電気的に接続されるようになっている。 したがって、このように構成すれば、本実施の形態の実装状態検査装置51により、ネジ81がネジ受部82に正常に接続さているかどうかを間接的にチェックすることも可能になる。なお、図5においては、回路ブロック201側の導体83、84の形状はパッチ状に限らず、同心円状に形成してもよいことは言うまでも無い。また、ネジ81に同心円状の導体を設け、ネジ受部82にパッチ状の導体を設けるようにしても良い。 もちろん、本実施の形態の実装状態検査装置51による実装状態の検査は、これに限らず、リベットなどの接続状態のチェックに適用することができる。 さらには、ビンの蓋が閉まっているかどうかの簡易的な検査や、図6に示すような開閉可能な蓋90が確実に閉まっているかどうかの検査なども行うことができる。例えば、一方の蓋にアンテナ90aを実装し、他方の蓋にIC回路90bを実装し、夫々の端子a、b、c、dが接離することにより蓋90が開閉状態を検知することができる。」 D 「 図3」 E 「 図5」 F 「 図6」 (イ)上記記載から,引用例1には次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 上記記載事項Aの「コネクタなどの接続検査を行う一つの手法としては、検査者が目視により接続をチェックする方法が考えられるが、コネクタが接続された状態にあるときは、コネクタの接続部分が外から見えない場合があり、十分にチェックすることができないという欠点があった」との記載,及び「コネクタなどの実装状態をより簡単に検査することができる実装状態検査装置を提供することを目的とする」との記載から,コネクタなどの接続検査を行う際,コネクタが接続された状態にあるとき,目視により接続をチェックする方法ではコネクタの接続部分が外から見えずに,十分にチェックすることができないことを課題とし,コネクタなどの実装状態をより簡単に検査することができるようにしたものであることを読み取ることができるから,引用例1には,“コネクタなどの接続検査を行う際,コネクタが接続された状態にあるとき,目視により接続をチェックする方法ではコネクタの接続部分が外から見えずに,十分にチェックすることができないことを課題とし,コネクタなどの実装状態をより簡単に検査することができるようにしたもの”であることが記載されているといえる。 b 上記記載事項Bの「RFIDタグ200は、被検査物61に取り付けられている」との記載,「被検査物61は、例えばコネクタなどのように2つのユニット61a、61bを組み合わせて使用されるものとされる」との記載から,引用例1には,“RFIDタグが,例えばコネクタなどのように2つのユニット61a,61bを組み合わせて使用される被検査物に取り付けられ”ていることが記載されているといえる。 c 上記記載事項Bの「RFIDタグ200が2つの回路ブロック201、202に分離されて被検査部61を構成している2つのユニット61a、61bに形成する…(中略)…回路ブロック201には…(中略)…ループアンテナが形成され、回路ブロック202にはRFID200のループアンテナ以外の回路部が形成されている。そして、これら回路ブロック201と回路ブロック202との間には…(中略)…回路接離部31が設けられている。」との記載,及び,「回路ブロック201内においてループアンテナ201aの両端が端子a、bに接続され、回路ブロック202内においてIC回路202aのループアンテナを接続する端子が端子c、dに接続されている」との記載から,RFIDタグが2つの回路ブロック201,202に分離されて被検査部を構成している2つのユニット61a,61bに形成されること,回路ブロック201にはループアンテナが形成されていること,及び,回路ブロック201と回路ブロック202との間には回路接離部が設けられていることを読取ることができる。 また,上記記載事項Bの「回路ブロック202にはRFID200のループアンテナ以外の回路部が形成されている。」との記載,及び「回路ブロック202内においてIC回路202aのループアンテナを接続する端子が端子c、dに接続されている」との記載から,回路ブロック202にはIC回路が形成されることを読取ることができる。 そして,記載事項Dの図3(a)の取付態様から,回路ブロック201はユニット61aに取付けられ,回路ブロック202はユニット61bに取付けられることを読取ることができるから,上記bの認定事項も踏まえ,引用例1には,“前記RFIDタグが2つの回路ブロック201,202に分離されて被検査部を構成している2つのユニット61a,61bに形成され,前記回路ブロック201にはループアンテナが形成され,前記回路ブロック202にはIC回路が形成され,前記回路ブロック201と前記回路ブロック202との間には回路接離部が設けられ,前記回路ブロック201は前記ユニット61aに取付けられ,前記回路ブロック202は前記ユニット61bに取付けられ”ることが記載されているといえる。 d 上記記載事項Bの「回路ブロック201内においてループアンテナ201aの両端が端子a、bに接続され、回路ブロック202内においてIC回路202aのループアンテナを接続する端子が端子c、eに接続されている。」の記載,及び,「各端子a、b、c、eが回路接離部31として構成され…(中略)…ユニット61a、61bが実装されている場合は、各端子は接続されてIC回路202aはループアンテナ201aが接続された状態なので動作する」との記載から,ループアンテナとIC回路とは電気的に接続可能なものであることを読取ることができるから,上記cの認定事項を踏まえ,引用例1には,“前記IC回路と前記ループアンテナとは電気的に接続可能”であることが記載されているといえる。 e 上記記載事項Bの「回路接離部31は、…(中略)…被検査物61を構成する2つのユニット61a、61bが正常に組み合わされたときに、回路ブロック201と回路ブロック202とを接続してRFIDタグ200を正常に機能させるようにしている」との記載から,上記b及びcの認定事項も踏まえ,引用例1には,“前記回路接離部は,前記被検査物を構成する2つのユニット61a,61bが正常に組み合わされたときに,前記回路ブロック201と前記回路ブロック202とを接続して前記RFIDタグを正常に機能させるようにして”いることが記載されているといえる。 f 上記記載事項Cの「コネクタ71の実装状態をチェックする場合を例に挙げたが、本実施の形態の実装状態検査装置51はコネクタ以外の接続状態を検査することも可能である」との記載,「図5(a)(b)に示す被検査物は、ネジ81とネジ81を取り付け可能なネジ受部82との組み合わせにより構成される」との記載,「実装状態の検査は、これに限らず、リベットなどの接続状態のチェックに適用することができる」との記載,「図6に示すような開閉可能な蓋90が確実に閉まっているかどうかの検査なども行うことができる」との記載,さらに,上記記載事項Dの図3,上記記載事項Eの図5,及び,上記記載事項Fの図6の態様から,被検査物は,2つのコネクタのセットのほか,ネジとネジ受け部のセット,リベットや蓋であってもよいことを読み取ることができるから,上記b乃至eの認定事項も踏まえ,引用例1には,“前記被検査物は,2つのコネクタのセットのほか,ネジとネジ受け部のセット,リベットや蓋であってもよい”ことが記載されているといえる。 g 上記b乃至eの認定事項から,引用例1には,“被検査物を構成する2つのユニット61a,61b”が記載されているといえる。 (ウ)上記(ア)及び(イ)より,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「コネクタなどの接続検査を行う際,コネクタが接続された状態にあるとき,目視により接続をチェックする方法ではコネクタの接続部分が外から見えずに,十分にチェックすることができないことを課題とし,コネクタなどの実装状態をより簡単に検査することができるようにしたものであって, RFIDタグが,例えばコネクタなどのように2つのユニット61a,61bを組み合わせて使用される被検査物に取り付けられ, 前記RFIDタグが2つの回路ブロック201,202に分離されて被検査部を構成している2つのユニット61a,61bに形成され,前記回路ブロック201にはループアンテナが形成され,前記回路ブロック202にはIC回路が形成され,前記回路ブロック201と前記回路ブロック202との間には回路接離部が設けられ,前記回路ブロック201は前記ユニット61aに取付けられ,前記回路ブロック202は前記ユニット61bに取付けられ,前記IC回路と前記ループアンテナとは電気的に接続可能であり, 前記回路接離部は,前記被検査物を構成する2つのユニット61a,61bが正常に組み合わされたときに,前記回路ブロック201と前記回路ブロック202とを接続して前記RFIDタグを正常に機能させるようにしており, 前記被検査物は,2つのコネクタのセットのほか,ネジとネジ受け部のセット,リベットや蓋であってもよい, 被検査物を構成する2つのユニット61a,61b。」 2 引用例2に記載された事項 (ア)原査定の拒絶の理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,国際公開第2008/001529号(2008年1月3日国際公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 G 「[0027] [第1実施形態] 図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態による金型データ管理装置10について説明する。図2は図1に示すプレス機械3の制御部11の構成を示している。 図2に示すように、この金型データ管理装置10は、金型搬送台車6に設置された金型9に取り付けられているRFIDタグ又はバーコードシンボルからこれに記憶されている金型データを読み取る読み取り装置12と、RFIDタグ又はバーコードシンボルに記憶した金型データと同一の金型データを記憶した記憶装置14と、読み取り装置12により読み取られた金型データと、記憶装置14に記憶された金型データを照合する照合装置15と、を備える。また、金型データ管理装置10は、照合装置15の照合により、金型データが同一であると確認されると、この金型データに基づいてプレス機械3の設定を調節するPLC(Programmable LogicController)などの制御装置17を備える。」 (イ)上記記載事項Gの「金型データ管理装置10は…(中略)…金型9に取り付けられているRFIDタグ…(中略)…からこれに記憶されている金型データを読み取る読み取り装置12…(中略)…を備える」との記載から,引用例2には, 「金型データ管理装置の読み取り装置が読取る金型データが記憶されているRFIDタグが金型に取り付けられていること」 が記載されているといえる。 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「回路ブロック201」には「ループアンテナが形成され」ているところ,当該「ループアンテナ」は,本願発明1の「アンテナ素子」に相当する。 また引用発明の「回路ブロック202」には「IC回路が形成され」ているところ,当該「IC回路」には,少なくとも本願発明1の「RFIC素子」に相当する素子が形成されることは明らかである。 そして,引用発明は,「前記RFIDタグが2つの回路ブロック201,202に分離されて被検査部を構成している2つのユニット61a,61bに形成され,前記回路ブロック201にはループアンテナが形成され,前記回路ブロック202にはIC回路が形成され,前記回路ブロック201と前記回路ブロック202との間には回路接離部が設けられ,前記回路ブロック201は前記ユニット61aに取付けられ,前記回路ブロック202は前記ユニット61bに取付けられ」るところ,引用発明の「IC回路が形成され」る「回路ブロック202」が取付けられる「ユニット61b」と,本願発明1の「RFIC素子を備えた第1治具」とは,“RFIC素子を備えた第1部材”である点で共通する。 イ 引用発明の「ループアンテナが形成され」る「回路ブロック201」が取付けられる「ユニット61a」と,本願発明1の「アンテナ素子を備えた第2治具」とは,“アンテナ素子を備えた第2部材”である点で共通する。 また,引用発明の「2つのユニット61a,61b」は,「コネクタなどのよう」な,「組み合わせて使用される被検査物」であり,上記アの認定を踏まえれば,「回路ブロック201」が取付けられる「ユニット61a」は,「回路ブロック202」が取付けられる「ユニット61b」と“組をなす部材”であるといえる。 また引用発明は,「回路接離部は,前記被検査物を構成する2つのユニット61a,61bが正常に組み合わされたときに,前記回路ブロック201と前記回路ブロック202とを接続して前記RFIDタグを正常に機能させるよう」にしたものであるところ,引用発明が「前記IC回路と前記ループアンテナとは電気的に接続可能」であることと,上記アの認定を踏まえれば,引用発明の,「ユニット61b」と組をなす部材であって,前記「ユニット61b」と組み合わせたときに,「ループアンテナが形成され」る「回路ブロック201」が取付けられる「ユニット61a」と,本願発明1の,「前記第1治具と組をなす治具であって、前記第1治具と組み合わせたときに前記RFIC素子と電気的に接続可能なアンテナ素子を備えた第2治具」とは,“前記第1部材と組をなす部材であって,前記第1部材と組み合わせたときに前記RFIC素子と電気的に接続可能なアンテナ素子を備えた第2部材”である点で一致するといえる。 ウ 上記ア及びイの認定を踏まえれば,引用発明の「2つのユニット61a,61b」と,本願発明1の「RFIC素子を備えた第1治具と、」「前記第1治具と組をなす治具であって、前記第1治具と組み合わせたときに前記RFIC素子と電気的に接続可能なアンテナ素子を備えた第2治具と、」「を備え」た「治具セット」とは,共に“部材セット”である点で共通するといえる。 エ 以上,ア乃至ウの検討から,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。 〈一致点〉 RFIC素子を備えた第1部材と, 前記第1部材と組をなす部材であって,前記第1部材と組み合わせたときに前記RFIC素子と電気的に接続可能なアンテナ素子を備えた第2部材と, を備えた部材セット。 〈相違点1〉 本願発明1の部材が「治具」であるのに対し,引用発明の部材は,「コネクタなどのよう」な「被検査物」を構成している「2つのユニット61a,61b」である点。 〈相違点2〉 本願発明1が,「前記RFIC素子は、前記第1治具と前記第2治具とを組み合わせたときの突き合わせ面を構成する前記第1治具の面に設けられており、」「前記アンテナ素子は、前記突き合わせ面を構成する前記第2治具の面に設けられている」ものであるのに対し,引用発明は,「RFIDタグが2つの回路ブロック201,202に分離されて被検査部を構成している2つのユニット61a,61bに形成され,前記回路ブロック201にはループアンテナが形成され,前記回路ブロック202にはIC回路が形成され」ているものの,当該「IC回路」及び「ループアンテナ」が「2つのユニット61a,61b」を組み合わせたときの突き合わせ面に設けられることが特定されていない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み,先に相違点2について検討する。 本願発明1において,「前記RFIC素子は、前記第1治具と前記第2治具とを組み合わせたときの突き合わせ面を構成する前記第1治具の面に設けられており」との構成,及び,「前記アンテナ素子は、前記突き合わせ面を構成する前記第2治具の面に設けられている」との構成について検討するに,本願明細書段落0034には,「この治具セット40では、RFIDタグをそのままの状態で含んでいるものではなく、RFIDタグを構成するRFIC素子20とアンテナ素子10とが分割された構造で各治具に配置されていることを特徴としている。つまり、「RFIC素子20」は、第1治具である治具1と第2治具であるケース2とを組み合わせたときの突き合わせ面を構成する治具1の面に設けられている。「アンテナ素子10」は、第1治具である治具1と第2治具であるケース2とを組み合わせたときの突き合わせ面を構成するケース2に設けられている。その結果、治具1とケース2とを正しく組み合わせた場合のみ治具1に設けられたRFIC素子20とケース2に設けられたアンテナ素子10とが電気的に接続可能となり、RFIDタグ30を構成し、RFID通信が可能となる。この場合、治具1とケース2との突き合わせ面が面内でずれた場合にもRFIC素子20とアンテナ素子10との相対位置がずれて、RFIDタグが構成されない。また、治具1とケース2との突き合わせ面がその法線方向に離れた場合にもRFIDタグが構成されない。つまり、この治具セット40では、治具1とケース2との突き合わせ面の互いに対向する面のそれぞれにRFIC素子20とアンテナ素子10とを配置している。これによって、突き合わせ面の面内及び法線方向のいずれの位置ずれの場合にもRFIDタグが構成されず、2次元的なずれだけでなく、3次元的な位置ずれも検出できる。」(下線は説明のために当審で付加。)と記載されていて,本願発明1の「RFIC素子」と「アンテナ素子」は,「第1治具」と「第2治具」が電気的に接続されてRFIDタグを構成するように,両治具の面,すなわち「前記第1治具と前記第2治具とを組み合わせたときの突き合わせ面を構成する前記第1治具の面」及び「前記突き合わせ面を構成する前記第2治具の面」に設けられることを特定するものと理解される。 一方,引用発明は,「前記被検査物を構成する2つのユニット61a,61bが正常に組み合わされたときに,前記回路ブロック201と前記回路ブロック202とを接続して前記RFIDタグを正常に機能させるようにして」いて,「2つのユニット61a,61bが正常に組み合わされ」る結果,「回路ブロック201」と「回路ブロック202」とが接続されて,「RFIDタグ」が「正常に機能」するものである。 そして,引用発明は,本願発明1の「第1治具」に対応する引用発明の「ユニット61b」と,本願発明1の「第2治具」に対応する引用発明の「ユニット61a」とが互いに接続されることによって,「回路ブロック201」と「回路ブロック202」とが接続するのであるから,当該「回路ブロック201」及び「回路ブロック202」にそれぞれ設けられる「ループアンテナ」及び「IC回路」を,接続確認のための「被検査部を構成している2つのユニット61a,61b」それ自体における接合面等に設置するよう設計変更することは,「コネクタなどの実装状態をより簡単に検査する」ために「被検査物を構成する2つのユニット61a,61bが正常に組み合わされたときに,前記回路ブロック201と前記回路ブロック202とを接続して前記RFIDタグを正常に機能させる」との解決手段を有する引用発明において,その動機付けを欠くものといわざるを得ない。 したがって,引用発明に基づいて相違点2に係る構成を導き出すことは当業者にとって容易とはいえず,また,相違点2に係る構成は,本願の出願前に周知な構成ともいえない。 さらに,上記第5 2(イ)に示した,引用例2に記載された技術的事項をもってしても,相違点2に係る構成を見いだすことはできず,したがって,上記その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2乃至9について 本願発明2乃至9は,本願発明1を直接または間接的に引用するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明10について 本願発明10は,本願発明1と同様,「RFIC素子を備えた第1治具と、」「前記第1治具と組をなす治具であって、前記第1治具と組み合わせたときに前記RFIC素子と電気的に接続可能なアンテナ素子を備えた第2治具と、」「を備え」る「治具セット」との特定事項を有するものであるが,上記第5 1及び2に示した引用例1及び引用例2には,とりわけ,「RFIC素子」が「第1識別情報を持つ」こと,及び,「前記RFIC素子の前記第1識別情報を取得できた場合に、前記加工具に前記ワークの加工を指示するように前記RFIDリーダと前記加工具とを制御する制御部」を有することが記載されておらず,原審判断のとおり,当業者であっても,引用例1及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4 本願発明11及び12について 本願発明11は,本願発明10とカテゴリーのみ異なるものであって,本願発明10と同様,当業者であっても,引用例1及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 また本願発明12は,本願発明11を引用するものであって,本願発明11と同様,当業者であっても,引用例1及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定について <特許法29条2項について> 審判請求時の補正により,本願発明1乃至9は「前記RFIC素子は、前記第1治具と前記第2治具とを組み合わせたときの突き合わせ面を構成する前記第1治具の面に設けられており、」及び「前記アンテナ素子は、前記突き合わせ面を構成する前記第2治具の面に設けられている、」という事項を有するものとなっており,上記第6 1に示したとおり,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1及び2に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。 また,本願発明10乃至12については,上記第6 3及び4に示したとおり,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1及び2に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。 したがって,原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-09-16 |
出願番号 | 特願2016-74647(P2016-74647) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06K)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 梅沢 俊 |
特許庁審判長 |
田中 秀人 |
特許庁審判官 |
山澤 宏 山崎 慎一 |
発明の名称 | 治具セット、加工装置及び加工方法 |
代理人 | 岡部 博史 |
代理人 | 山尾 憲人 |
代理人 | 稲葉 和久 |