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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62H |
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管理番号 | 1366424 |
審判番号 | 不服2018-900 |
総通号数 | 251 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-01-23 |
確定日 | 2020-09-25 |
事件の表示 | 特願2013-153910号「走行練習用自転車」拒絶査定不服審判事件〔平成27年2月5日出願公開、特開2015-24686号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年7月24日の出願であって、平成29年1月26日付けで拒絶理由が通知され、同年4月3日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月29日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年8月21日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月29日付けで補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、同年1月23日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 平成30年1月23日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年1月23日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 平成30年1月23日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであって、請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。 なお、本件補正前になされた平成29年8月21日付けの手続補正は、同年9月29日付けの補正の却下の決定により却下されたため、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、平成29年4月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載である。 (1)補正前の請求項1 「 【請求項1】 前輪及び後輪が装着され、前記前輪と前記後輪との間に本体接続部が設けられている二輪車体と、前記本体接続部に着脱可能に接続されるユニット接続部を備えたペダルユニットとを含み、前記本体接続部に前記ユニット接続部が接続されることでペダルで駆動する自転車において、 前記ペダルユニットは、前記ユニット接続部と、このユニット接続部における前記本体接続部と反対側に設けられた軸部と、この軸部の軸端上に設けられたチェーンホイール及び前記ペダルを備えた2本のクランクとを含み、 前記ユニット接続部及び前記本体接続部は、それぞれ前記自転車の進行方向にボルトに貫通される孔が形成され、前記本体接続部及び前記ユニット接続部の一方が他方に前記孔の位置を合わせながら挿入され、前記ボルトで接続される、 ことを特徴とする自転車。」 (2)補正後の請求項1 「 【請求項1】 前輪及び後輪が装着され、前記前輪と前記後輪との間に、サドル部が上方に設けられた本体接続部が中段下方に設けられている二輪車体と、前記本体接続部に着脱可能に接続されるユニット接続部を備えたペダルユニットとを含み、前記本体接続部に前記ユニット接続部が接続されることでペダルで駆動する自転車において、 前記ペダルユニットは、前記ユニット接続部と、このユニット接続部における前記本体接続部と反対側に設けられた軸部と、この軸部の軸端上に設けられたチェーンホイール及び前記ペダルを備えた2本のクランクとを含み、 前記ユニット接続部及び前記本体接続部は、それぞれ前記自転車の進行方向にボルトに貫通される孔が形成され、前記本体接続部及び前記ユニット接続部の一方が他方に前記孔の位置を合わせながら挿入され、前記ボルトで接続され、 前記孔は、前記二輪車体の中段下方且つ側面視における前記ペダルの駆動領域の内側に位置する、 ことを特徴とする自転車。」 2 補正の適否 本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「本体接続部」に関して、上記のとおり、「サドル部が上方に設けられた」という限定事項を付加し、「本体接続部が設けられている二輪車体」に関し、上記のとおり、本体接続部が「中段下方に」設けられている二輪車体という限定事項を付加し、「前記自転車の進行方向にボルトに貫通される孔」に関し、上記のとおり、「前記孔は、前記二輪車体の中段下方且つ側面視における前記ペダルの駆動領域の内側に位置する」という限定事項を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献 引用文献1:登録実用新案第3093576号公報 引用文献2:登録実用新案第3141550号公報 (2-1)引用文献1について ア 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由で引用され本願の出願日前に頒布された、上記引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審が加筆した。以下、同様である。)。 (1a) 「【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 車体と、接続部品と、ペダルユニットとが組み合わされて構成されている走行練習用の自転車であり、前記車体中段の下方に固設されており、収納空間が成形されている接続部と、前記接続部品に成形されており、前記車体上の接続部内の収納空間に対応しているとともに、前記収納空間内に設置されている固定ロッドと、固定ロッドの下方に固設されている枢設軸と、チェーンホイールと2本のクランクとで構成され、前記接続部品に枢設されている枢設端上に対応しており、前記接続部品の固定ロッドが前記収納空間内に設置されることにより、取り外しと装着との2種類のモードが可能となっているペダルユニットとを備えていることを特徴とする、走行練習用の自転車。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本考案に係る走行練習用の自転車の分解図である。 【図2】 本考案に係る走行練習用の自転車の一部拡大図である。 【図3】 本考案に係る走行練習用の自転車の組合せ図である。 【符号の説明】 10 車体 11 接続部 12 収納空間 13 貫通孔 20 接続部品 21 固定ロッド 22 貫通孔 23 固定ネジ 24 枢設軸 30 ペダルユニット 31 チェーンホイール 32 クランク ・・・ 【0001】 【考案の属する技術分野】 本考案は走行練習用の自転車に関するものであり、特に車体と、接続部品と、ペダルユニットなどの部材が組み合わされて構成されており、ペダルユニットを車体から取り外すことが可能である自転車に関するものであり、子供が自転車の走行練習する際には、先ず両足を利用してバランス感覚と操作コントロールとを練習することにより、練習時間が短縮される。 ・・・ 【0003】 【考案の目的】 本考案の第一の目的は、操作コントロールとバランス感覚を養う上で支援となる自転車を提供することであり、本考案の第二の目的は、走行練習の期間を短縮させる自転車を提供することである。」 (1b) 「 【0006】 図1から図3に示されている通り、本考案は車体(10)、接続部品(20)とペダルユニット(30)などの部材が組み合わされて構成されている。 前記車体(10)の中段下方には接続部(11)が固設されており、前記接続部(11)内には収納空間(12)が成形されており、前記接続部(11)の両側にはそれぞれ2か所の貫通孔(13)が成形されている。 前記接続部品(20)には固定ロッド(21)が成形されており、前記固定ロッド(21)は前記車体(10)上の接続部(11)内の収納空間(12)に対応しており、前記固定ロッド(21)上には2か所の貫通孔(22)が成形されており、前記貫通孔(22)は前記車体(10)上の接続部(11)の貫通孔(13)に対応しているとともに、2本の固定ネジ(23)が前記接続部(11)と前記接続部品(20)上の貫通孔(13)、(22)を貫設することにより、前記固定ロッド(21)が前記収納空間(12)内に固設される。また、前記ロッド(21)の下方には枢設端(24)が固設されている。 前記ペダルユニット(30)は、チェーンホイール(31)と2か所のクランク(32)とで構成されており、前記ペダルユニット(30)は前記接続部品(20)の枢設端(24)に対応しているとともに、前記接続部品(20)の枢設端(24)上に枢設されている。以上が、本考案の各関連部材の相互関係位置とその構造についての記述である。 【0007】 本考案のその他の作動方式と効果についてより明確に説明するため、別の適正実施例を挙げ、以下の通り詳細に説明する。 子供が自転車の走行練習を行なう際には、一度に操作コントロール、バランス感覚やペダル踏みなど数種類の動作について配慮することは難しく、その中では自転車のバランスを図ることが練習上での難関である。従って本考案では、前記接続部品(20)を車体(10)上の接続部(11)の収納空間(12)内から取り外し、前記ペダルユニット(30)を車体(10)上から分離させることにより、子供が自転車の走行練習を実施する際には、習慣的な動作に基づき両足をついて前進することができるようになっており、前進時に自転車の操作コントロールを習得する形式となっている。このように、先ず自転車走行のバランス感覚と操作コントロールの習得を図るのであり、その際に足がペダルにぶつかって傷を負うことはない。 【0008】 子供がどのようにして自転車のバランスを図り、操作コントロールするのかを習得した後には、改めてペダルユニット(30)が枢設されている接続部品(20)を前記車体(10)上の接続部(11)の収納空間(12)内に固設すると、本考案は一般の自転車モードとなるため、子供はペダルを踏む動作を練習することとなる。比較的困難なバランス感覚と操作コントロールがすでに習得されているため、それに合わせてペダルを踏んで前進することの習得は非常に容易であり、走行練習の時間は短縮される。」 (1c) 図1?3は、以下のとおりである。 イ 引用文献1に記載された発明 以下、摘記した記載以外は、各符号の「( )」を省略して記載する。 (ア) 摘記(1a)と図1?3を併せて参照すると、摘記(1a)の「走行練習用の自転車」は、車体と、接続部品と、ペダルユニットとを含んでいることが、明らかである。 (イ) 図1?3及び摘記(1b)の段落【0006】の記載から、車体10は、前輪及び後輪が装着され、前輪と後輪との間に、サドル部が上方に設けられた接続部11が中段下方に固設されている車体10であることが、明らかである。 (ウ) 摘記(1b)について、段落【0007】の「取り外し」ないし「分離させる」という記載等を参照すると、段落【0006】の「前記固定ロッド(21)が前記収納空間(12)内に固設される」及び段落【0008】の「ペダルユニット(30)が枢設されている接続部品(20)を前記車体(10)上の接続部(11)の収納空間(12)内に固設する」という記載の「固設」は、いずれも、着脱可能に「固設」されていることが明らかである。 (エ) 摘記(1b)について、段落【0006】の「接続部品(20)には固定ロッド(21)が成形され」及び「ペダルユニット(30)は前記接続部品(20)の枢設端(24)に対応しているとともに、前記接続部品(20)の枢設端(24)上に枢設されている」という記載と図1?3とを併せて参照すると、段落【0008】の「ペダルユニット(30)が枢設されている接続部品(20)」は、固定ロッド21が形成されペダルユニット30が枢設端24上に枢設されている接続部品20を意味しており、当該固定ロッド21が形成されペダルユニット30が枢設端24上に枢設されている接続部品20は、固定ロッド21と、枢設端24と、ペダルユニット30とを含んでいることが、明らかである。 (オ) 図2を参照すると、摘記(1b)の段落【0006】の「前記ロッド(21)の下方には枢設端(24)が固設されている」という記載の「ロッド(21)の下方」は、固定ロッド21における接続部11と反対側の固定ロッド21の下方であることが、明らかである。 (カ) 摘記(1b)の段落【0006】の「前記固定ロッド(21)上には2か所の貫通孔(22)が成形されており、前記貫通孔(22)は前記車体(10)上の接続部(11)の貫通孔(13)に対応しているとともに、2本の固定ネジ(23)が前記接続部(11)と前記接続部品(20)上の貫通孔(13)、(22)を貫設することにより、前記固定ロッド(21)が前記収納空間(12)内に固設される。」という記載と図1?3とを併せて参照すると、固定ロッド21は、走行練習用の自転車の左右方向に固定ネジ23が貫設する貫通孔22が形成され、接続部11は、走行練習用の自転車の左右方向に前記固定ネジ23が貫設する貫通孔13が形成され、前記固定ネジ23が接続部11に形成された貫通孔13と固定ロッド21に形成された貫通孔22とを貫設することにより、固定ロッド21が接続部11内の収納空間12内に固設されていることが、明らかである。 (キ) 上記(カ)の接続部11に形成された貫通孔13と固定ロッド21に形成された貫通孔22について、図2?3を参照すると、接続部11に形成された貫通孔13及び固定ロッド21に形成された貫通孔22は、車体10の中段下方且つ側面視におけるペダルの駆動領域の内側に位置することが、明らかである。 (ク) 摘記(1a)?(1c)及び上記(ア)?(キ)を総合し、本件補正発明の発明特定事項に倣うと、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 [引用発明] 「前輪及び後輪が装着され、前輪と後輪との間に、サドル部が上方に設けられた接続部11が中段下方に固設されている車体10と、固定ロッド21が形成されペダルユニット30が枢設端24上に枢設されている接続部品20とを含み、固定ロッド21が接続部11内の収納空間12内に着脱可能に固設され、固定ロッド21が形成されペダルユニット30が枢設端24上に枢設されている接続部品20を、車体10上の接続部11の収納空間12内に固設すると、一般の自転車モードとなり、ペダルを踏んで前進する走行練習用の自転車において、 固定ロッド21が形成されペダルユニット30が枢設端24上に枢設されている接続部品20は、固定ロッド21と、固定ロッド21における接続部11と反対側の固定ロッド21の下方に、固設されている枢設端24と、枢設端24上に枢設されている、チェーンホイール31とペダルを備えた2カ所のクランク32とで構成されているペダルユニット30とを含み、 固定ロッド21は、走行練習用の自転車の左右方向に固定ネジ23が貫設する貫通孔22が形成され、接続部11は、走行練習用の自転車の左右方向に前記固定ネジ23が貫設する貫通孔13が形成され、前記固定ネジ23が接続部11に形成された貫通孔13と固定ロッド21に形成された貫通孔22とを貫設することにより、固定ロッド21が接続部11内の収納空間12内に固設され、 接続部11に形成された貫通孔13及び固定ロッド21に形成された貫通孔22は、車体10の中段下方且つ側面視におけるペダルの駆動領域の内側に位置する、 走行練習用の自転車。」 (2-2)引用文献2について 原査定の拒絶の理由で引用され本願の出願日前に頒布された、上記引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (2a) 「【0010】 この考案は、組み立てが簡単で、強度を具えた自転車のフレームを提供することを課題とする。」 (2b) 「【0027】 該端縁部は、一端縁部の側面に垂直な方向に管体22が設けられる。・・・」 (2c) 「【0037】 よって、図4に開示するように、結合部13の側面の凸部131と接続部21の側面の凹溝211とが互いに嵌合する。 【0038】 また、図4Aに開示するように、該結合部13と接続部21とが互いに嵌合するため、ネジ30を接続部21のネジ孔214と、結合部13のネジ孔132とに貫通させて螺接することができ、外方向に縮小した凸部131と、内方向に縮小した凹溝211とが自動的に緊密に接続される。」 (2d) 図1?6は、以下のとおりである。 (3)対比 ア 対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア) a 引用発明の「接続部11」、「固設」及び「固定ロッド21」は、それぞれ、本件補正発明の「本体接続部」、「接続」及び「ユニット接続部」に相当する。 b 引用発明の「車体10」は、「走行練習用の自転車」の車体であり、「前輪及び後輪が装着され、前輪と前記後輪との間に、サドル部が上方に設けられた接続部11が中段下方に固設されている」ことから、前輪、後輪及びサドル部を有している二輪の車体であることが明らかであり、引用発明の「車体10」は、本件補正発明の「二輪車体」に相当する。 このことと上記aを踏まえると、引用発明の「前輪及び後輪が装着され、前輪と前記後輪との間に、サドル部が上方に設けられた接続部11が中段下方に固設されている車体10」は、本件補正発明の「前輪及び後輪が装着され、前記前輪と前記後輪との間に、サドル部が上方に設けられた本体接続部が中段下方に設けられている二輪車体」に相当する。 c 引用発明の「固定ロッド21が形成されペダルユニット30が枢設端24上に枢設されている接続部品20」は、各部品から構成され全体でユニットとなっているものであるから、本件補正発明の「ペダルユニット」に相当する。 また、引用発明の「固定ロッド21が形成されペダルユニット30が枢設端24上に枢設されている接続部品20」は、「固定ロッド21が接続部11内の収納空間12内に着脱可能に固設され」ることから、「接続部11」「に着脱可能に固設される」「固定ロッド21」を備えた、すなわち、上記aを踏まえると、「本体接続部」「に着脱可能に接続される」「ユニット接続部」を備えたものである。 したがって、引用発明の「固定ロッド21が形成されペダルユニット30が枢設端24上に枢設されている接続部品20」は、本件補正発明の「前記本体接続部に着脱可能に接続されるユニット接続部を備えたペダルユニット」に相当する。 d 上記cを踏まえると、引用発明の「固定ロッド21が形成されペダルユニット30が枢設端24上に枢設されている接続部品20を、車体10上の接続部11の収納空間12内に固設する」構成は、本件補正発明の「前記本体接続部に前記ユニット接続部が接続される」構成に相当する。 また、引用発明の「一般の自転車モードとなり、ペダルを踏んで前進する走行練習用の自転車」は、本件補正発明の「ペダルで駆動する自転車」に相当する。 したがって、引用発明の「固定ロッド21が形成されペダルユニット30が枢設端24上に枢設されている接続部品20を、車体10上の接続部11の収納空間12内に固設すると、一般の自転車モードとなり、ペダルを踏んで前進する走行練習用の自転車」は、本件補正発明の「前記本体接続部に前記ユニット接続部が接続されることでペダルで駆動する自転車」に相当する。 e 上記a?dを踏まえると、引用発明の「前輪及び後輪が装着され、前輪と前記後輪との間に、サドル部が上方に設けられた接続部11が中段下方に固設されている車体10と、固定ロッド21が形成されペダルユニット30が枢設端24上に枢設されている接続部品20とを含み、固定ロッド21が接続部11内の収納空間12内に着脱可能に固設され、固定ロッド21が形成されペダルユニット30が枢設端24上に枢設されている接続部品20を、車体10上の接続部11の収納空間12内に固設すると、一般の自転車モードとなり、ペダルを踏んで前進する走行練習用の自転車」は、本件補正発明の「前輪及び後輪が装着され、前記前輪と前記後輪との間に、サドル部が上方に設けられた本体接続部が中段下方に設けられている二輪車体と、前記本体接続部に着脱可能に接続されるユニット接続部を備えたペダルユニットとを含み、前記本体接続部に前記ユニット接続部が接続されることでペダルで駆動する自転車」に相当する。 (イ) a 摘記(1a)の実用新案登録請求の範囲の「固定ロッドの下方に固設されている枢設軸」、符号の説明の「24 枢設軸」及び図2を参照すると、引用発明の「枢設端24」が枢設軸を意味していることは明らかである。 そうすると、引用発明の「枢設端24」は、本件補正発明の「軸部」に相当する。 したがって、上記(ア)aを踏まえると、引用発明の「この固定ロッド21における接続部11と反対側の固定ロッド21の下方に、固設されている枢設端24」は、本件補正発明の「このユニット接続部における前記本体接続部と反対側に設けられた軸部」に相当する。 b 引用発明の「この枢設端24上に枢設されている、チェーンホイール31とペダルを備えた2カ所のクランク32とで構成されているペダルユニット30」の構成は、枢設端24すなわち軸部(上記a)の軸端上に設けられたチェーンホイール31及びペダルを備えた2カ所のクランク32の構成であると理解でき(図1?3も参照)、当該「ペダル」が上記(ア)dのペダルを示すことも明らかであるから、引用発明の当該構成は、本件補正発明の「この軸部の軸端上に設けられたチェーンホイール及び前記ペダルを備えた2本のクランク」の構成に相当する。 c 上記a、b及び(ア)cを踏まえると、引用発明の「固定ロッド21が形成されペダルユニット30が枢設端24上に枢設されている接続部品20は、固定ロッド21と、この固定ロッド21における接続部11と反対側の固定ロッド21の下方に、固設されている枢設端24と、この枢設端24上に枢設されている、チェーンホイール31と前記ペダルを備えた2カ所のクランク32とで構成されているペダルユニット30とを含」む構成は、本件補正発明の「前記ペダルユニットは、前記ユニット接続部と、このユニット接続部における前記本体接続部と反対側に設けられた軸部と、この軸部の軸端上に設けられたチェーンホイール及び前記ペダルを備えた2本のクランクとを含」む構成に相当する。 (ウ) a 引用発明の「固定ネジ23」は、本件補正発明の「ボルト」に相当する。 このことから、引用発明の「固定ロッド21」に「形成され」た「走行練習用の自転車の左右方向に固定ネジ23が貫設する貫通孔22」、及び、引用発明の「接続部11」に「形成され」た「走行練習用の自転車の左右方向に前記固定ネジ23が貫設する貫通孔13」は、いずれも、「固定ネジ23」に「貫通」される「孔」、すなわち、ボルトに貫通される孔であることが理解できる。 b 上記aを踏まえると、引用発明の「固定ロッド21は、走行練習用の自転車の左右方向に固定ネジ23が貫設する貫通孔22が形成され、接続部11は、走行練習用の自転車の左右方向に前記固定ネジ23が貫設する貫通孔13が形成され」る構成と、本件補正発明の「前記ユニット接続部及び前記本体接続部は、それぞれ前記自転車の進行方向にボルトに貫通される孔が形成され」る構成とは、固定ネジ23すなわちボルトが貫通する方向に関しては相違するものの、いずれも、ボルトに貫通される孔が形成されている構成であるといえる。 したがって、引用発明の上記構成と本件補正発明の上記構成とは、「前記ユニット接続部及び前記本体接続部は、それぞれボルトに貫通される孔が形成され」る構成の限りで共通している。 c 引用発明において、「前記固定ネジ23が接続部11に形成された貫通孔13と固定ロッド21に形成された貫通孔22とを貫設することにより、固定ロッド21が接続部11内の収納空間12内に固設され」る構造は、「固定ロッド21が」、「接続部11内の収納空間12内に」、「接続部11に形成された貫通孔13」と「固定ロッド21に形成された貫通孔22」との位置を合わせながら挿入されることで、「前記固定ネジ23」で「固設され」る構造であることが理解できる。 d 上記a?c及び(ア)から、引用発明の「固定ロッド21は、走行練習用の自転車の左右方向に固定ネジ23が貫設する貫通孔22が形成され、接続部11は、走行練習用の自転車の左右方向に前記固定ネジ23が貫設する貫通孔13が形成され、前記固定ネジ23が接続部11に形成された貫通孔13と固定ロッド21に形成された貫通孔22とを貫設することにより、固定ロッド21が接続部11内の収納空間12内に固設され」る構成と、本件補正発明の「前記ユニット接続部及び前記本体接続部は、それぞれ前記自転車の進行方向にボルトに貫通される孔が形成され、前記本体接続部及び前記ユニット接続部の一方が他方に前記孔の位置を合わせながら挿入され、前記ボルトで接続され」る構成とは、「前記ユニット接続部及び前記本体接続部は、それぞれボルトに貫通される孔が形成され、前記本体接続部及び前記ユニット接続部の一方が他方に前記孔の位置を合わせながら挿入され、前記ボルトで接続され」る構成の限りで共通している。 イ 一致点及び相違点 以上を総合すると、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「前輪及び後輪が装着され、前記前輪と前記後輪との間に、サドル部が上方に設けられた本体接続部が中段下方に設けられている二輪車体と、前記本体接続部に着脱可能に接続されるユニット接続部を備えたペダルユニットとを含み、前記本体接続部に前記ユニット接続部が接続されることでペダルで駆動する自転車において、 前記ペダルユニットは、前記ユニット接続部と、このユニット接続部における前記本体接続部と反対側に設けられた軸部と、この軸部の軸端上に設けられたチェーンホイール及び前記ペダルを備えた2本のクランクとを含み、 前記ユニット接続部及び前記本体接続部は、それぞれボルトに貫通される孔が形成され、前記本体接続部及び前記ユニット接続部の一方が他方に前記孔の位置を合わせながら挿入され、前記ボルトで接続される、 自転車。」 <相違点> 「前記ユニット接続部及び前記本体接続部は、それぞれボルトに貫通される孔が形成される」構成に関して、本件補正発明は、前記ユニット接続部及び前記本体接続部は、それぞれ「前記自転車の進行方向に」ボルトに貫通される孔が形成される構成であり、さらに、その孔に関して、「前記孔は、前記二輪車体の中段下方且つ側面視における前記ペダルの駆動領域の内側に位置する」構成であるのに対して、引用発明は、「固定ロッド21は、走行練習用の自転車の左右方向に固定ネジ23が貫設する貫通孔22が形成され、接続部11は、走行練習用の自転車の左右方向に前記固定ネジ23が貫設する貫通孔13が形成され、前記固定ネジ23が接続部11に形成された貫通孔13と固定ロッド21に形成された貫通孔22とを貫設することにより、固定ロッド21が接続部11内の収納空間12内に固設され、接続部11に形成された貫通孔13及び固定ロッド21に形成された貫通孔22は、車体10の中段下方且つ側面視におけるペダルの駆動領域の内側に位置する」構成である点。 (4)判断 ア 相違点についての検討 以下、相違点について検討する。 (ア) a 上記相違点に係る本件補正発明の構成は、「前記ユニット接続部及び前記本体接続部は、それぞれ前記自転車の進行方向にボルトに貫通される孔が形成され」る構成を備えている。 引用発明の「固定ロッド21は、走行練習用の自転車の左右方向に固定ネジ23が貫設する貫通孔22が形成され、接続部11は、走行練習用の自転車の左右方向に前記固定ネジ23が貫設する貫通孔13が形成され」る構成は、本件補正発明の用語を用いると(上記(3)ア(ウ)b等参照)、「前記ユニット接続部及び前記本体接続部は、それぞれ前記自転車の左右方向にボルトに貫通される孔が形成され」る構成である。 要するに、各孔に係る構成に関して、本件補正発明は、進行方向に形成された各貫通孔に、進行方向にボルトが貫通されるものであるに対して、引用発明は、左右方向に形成された各貫通孔に、左右方向にボルトが貫通されるものである点で、実質的に両者は相違しているといえる。 b 引用発明の「接続部11に形成された貫通孔13及び固定ロッド21に形成された貫通孔22」及び「車体10」は、上記(3)ア(ウ)a及び上記(3)ア(ア)bを踏まえると、それぞれ、本件補正発明の「ボルトに貫通される孔」及び「二輪車体」であり、引用発明の「接続部11に形成された貫通孔13及び固定ロッド21に形成された貫通孔22は、車体10の中段下方且つ側面視におけるペダルの駆動領域の内側に位置する」構成は、本件補正発明の用語を用いると、「ボルトに貫通される孔は、二輪車体の中段下方且つ側面視における前記ペダルの駆動領域の内側に位置する」構成であるといえる。 (イ) a ボルトとナットとを用いる接合では、応力の方向を考慮することは、技術分野を問わず、技術常識である。 また、2つの部材のそれぞれに貫通孔を設け、それぞれの貫通孔にボルトを貫通させて、貫通させたボルトにナットを締めることで、2つの部材(例えば、2つの板状の部材)を固定する場合、ボルト貫通方向と直交する方向では貫通孔同士がずれてしまいガタツクことが有り得るのに対して、ナットを締めることで、ボルト貫通方向は2つの部材が強固に固定され、ボルト貫通方向から受ける応力に強く抵抗できること、すなわち、ボルト貫通方向は、その方向の応力に対して強く抵抗できることも、技術常識である。 b さらに、自転車を走行させる場合、自転車の車体には、進行方向の軸(仮想の軸)を中心とした回転力すなわちローリングないし操舵等による左右方向の応力や、左右方向の軸(仮想の軸)を中心としたピッチングないし踏み込み動作やブレーキ制動等による前後方向の応力が発生することも、技術常識である。 (ウ) a 引用文献2(摘記(2b)及び図1、4、6等参照)において、直接記載はされていないものの、管体22部分にペダルユニットが取り付けられることは、自明な事項である。 引用文献2に記載された自転車のフレームは、「該結合部13と接続部21とが互いに嵌合するため、ネジ30を接続部21のネジ孔214と、結合部13のネジ孔132とに貫通させて螺接することができ、外方向に縮小した凸部131と、内方向に縮小した凹溝211とが自動的に緊密に接続される」構造(摘記(2c))を有しており、図1、4、6と上記の自明な事項を併せて参照すると、引用文献2には、自転車のフレームにおいて、ペダルユニット備える部品を固定する際に、凸部と凹部との嵌合部分に前後方向にボルトを貫通させることで、左右方向でも前後方向でもガタツキを無くし、緊密に接続される、すなわち、強固に固定され、ボルト貫通方向から受ける応力にも強く抵抗できる構造が開示されているといえる。 b このように、自転車のフレーム構造において、ペダルユニットが取り付けられるフレームと他のフレ-ムとを固定する際に、固定する部分に向きが自転車の進行方向になるようにボルトを設け、当該ボルトを用いて固定すること、すなわち、自転車の進行方向にボルトに貫通される孔が形成されて固定されることは、周知技術である。 (エ) a 以上を総合すると(特に、上記(イ)で述べた技術常識を踏まえることで)、引用発明において、「固定ネジ23」すなわちボルトにより、「固定ロッド21が接続部11内の収納空間12内に固設され」る固定を行う際に、その固定部分に関して強度を高める必要がある方向を検討しつつ(具体的には、ピッチングないし踏み込み動作やブレーキ制動等による前後方向の応力の影響を考慮するのであれば、強度を高める必要がある方向を、前後方向とすることなどを検討しつつ)、自転車を走行させた場合の発生する応力(その接合部分に発生する応力)に対応できるように、ボルトを貫通させる方向を必要に応じて決定することは、当業者であれば適宜になし得たことであるし、さらに、上記の前後方向に、ボルトを設けること(すなわち、自転車の進行方向になるようにボルトを設け、当該ボルトに貫通される孔が形成されて固定されること)は、周知技術である。 b したがって、引用発明において、左右方向に形成された各貫通孔に、左右方向にボルトが貫通される構成に限ることなく、自転車を走行させた場合に発生する応力に対応して、強度を高めるために、進行方向に形成された各貫通孔に、進行方向にボルトが貫通されるように構成すること(上記(ウ)bの周知技術も参照)で、上記相違点に係る本件補正発明の「前記ユニット接続部及び前記本体接続部は、それぞれ前記自転車の進行方向にボルトに貫通される孔が形成される」構成を想到し、それに伴って、上記(ア)bで述べた構成を、「前記ボルトに貫通される孔は、前記二輪車体の中段下方且つ側面視における前記ペダルの駆動領域の内側に位置する」構成とすることで、上記相違点に係る本件補正発明の構成を想到することは、当業者が容易になし得たものである。 イ 審判請求人の主張について (ア) 審判請求書において審判請求人は、本件補正発明は「本体接続部及びユニット接続部の一方が他方に挿入され、ボルトで接続される方式のペダルユニットの、二輪車体の中段下方且つ側面視におけるペダルの駆動領域の内側において、ユニット接続部及び本体接続部のそれぞれに、自転車の進行方向にボルトに貫通される孔が形成されている」構成を備え、当該構成は「いずれの先行文献にも開示がされていない」旨主張する。 そして、上記の「・・・において、」までの構成(以下「前提となる構成」という。)も含めて相違点とすべきである旨主張している。 (イ) 上記の前提となる構成は、実質的に、引用発明が備えている構成であり(上記(3)ア(ウ)d及び上記ア(ア)bを参照)、本件補正発明と引用発明とを比較すると、実質的に、単にボルトの挿入方向が相違しているだけであるといえる。 したがって、前提となる構成を全て含めて相違点とすることは妥当でないと考えられるところ、本審決では、上記(ア)の主張などを含めた審判請求人の主張(本件補正発明の「ボルト」や「孔」に係る主張など)を充分に踏まえ、対比・判断を行っている(上記(3)イ及び上記ア等も参照。)。 各引用文献には、審判請求人が主張する上記(ア)の全ての構成が直接開示されていないとしても(当該構成が開示されているのであれば、本件補正発明と実質的に同一の発明が開示されているともいえるが)、上記アで述べたとおり(特に技術常識を踏まえると)、引用発明において、自転車の進行方向にボルトに貫通される孔を設ける構成を想到することは当業者が適宜になし得た程度のことであって、上記(3)イの相違点に係る本件補正発明の構成は当業者が容易に想到し得たものである。 そして、仮に、審判請求人が主張するとおり相違点を認定したとしても、上記の前提となる構成は引用発明が実質的に備えているものであるから、同様に、当該相違点に係る本件補正発明の構成も、引用発明、技術常識及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。 したがって、上記主張は採用できない。 ウ 小括 したがって、本件補正発明は、引用発明、技術常識及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)本件補正についてのむすび 本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成30年1月23日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年4月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(1)に記載のとおりのものである。 2 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、3およびその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「サドル部が上方に設けられた本体接続部が中段下方に設けられている二輪車体」に関し、「サドル部が上方に設けられた」及び「中段下方に」という限定事項を省き、「前記自転車の進行方向にボルトに貫通される孔」に関し、「前記孔は、前記二輪車体の中段下方且つ側面視における前記ペダルの駆動領域の内側に位置する」という限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、技術常識及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、技術常識及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-03-29 |
結審通知日 | 2019-04-09 |
審決日 | 2019-04-26 |
出願番号 | 特願2013-153910(P2013-153910) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B62H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岸 智章 |
特許庁審判長 |
島田 信一 |
特許庁審判官 |
出口 昌哉 仁木 学 |
発明の名称 | 走行練習用自転車 |
復代理人 | ▲高▼野 芳徳 |
代理人 | 鮫島 正洋 |