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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1366749
審判番号 不服2020-298  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-09 
確定日 2020-10-26 
事件の表示 特願2016-565652「ポータブル多目的ワイヤレスデバイスのスモールセルアクティブ化制御」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月12日国際公開、WO2015/171294、平成29年 6月29日国内公表、特表2017-517953、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2015年(平成27年)4月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年5月6日 米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

平成30年 4月 3日 :手続補正書の提出
平成31年 1月 9日付け:拒絶理由通知書
平成31年 4月16日 :意見書,手続補正書の提出
令和 1年 9月 6日付け:拒絶査定
令和 2年 1月 9日 :拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提

令和 2年 4月 8日 :上申書の提出
令和 2年 5月25日 :上申書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の請求項1ないし4,6ないし7,12ないし15に係る発明は,引用文献2及び3に記載された発明に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また,上記請求項4を引用する請求項5に係る発明は,上記引用文献2及び3に記載された発明並びに引用文献4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また,上記請求項1を引用する請求項8ないし11に係る発明は,上記引用文献2及び3に記載された発明並びに引用文献5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
2.特開2010-114744号公報
3.特表2012-513162号公報
4.特表2013-538519号公報
5.国際公開第2014/034255号

第3 審判請求時の補正について
1.補正前の請求項1について
審判請求時の補正は,補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記3つ以上の異なる状態のうち現在の状態を制御するステップ」について,「前記3つ以上の異なる状態のうち前記現在の状態を前記制御するステップが,前記ワイヤレスデバイスが,前記ワイヤレス通信ネットワークにおけるフィンガープリントまたは全地球測位システム(GPS)座標のうちの少なくとも1つを使用して定義されたホーム領域内に位置するかどうかにさらに基づく」との事項を付加するものであり,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,請求項1の補正は,特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1ないし13に係る発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから,特許法第17条の2第6項で準用する特許法第126条第7項の規定にも適合する。
また,補正によって付加された上記事項は,出願当初の明細書の段落0033及び特許請求の範囲の請求項6に記載されているから,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
さらに,特許法第17条の2第4項の規定に違反するところもない。

2.補正前の請求項6ないし15について
審判請求時の補正は,補正前の請求項6,7を削除し,それに整合するように,補正前の請求項8ないし15の項番及び補正前の請求項14及び15が引用する請求項の項番を変更するものであるから,請求項6ないし15の補正は,特許法17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。
また,特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するところもない。

3.まとめ
以上のとおりであるから,審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合する。

第4 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明13」という。)は,令和2年1月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
ワイヤレス通信ネットワークのサービスに加入しているポータブル多目的ワイヤレスデバイスのスモールセル動作のアクティブ化または非アクティブ化を制御するための方法であって,前記方法は,
3つ以上の異なる状態のスモールセル動作が可能なポータブル多目的ワイヤレスデバイスの地理的ロケーションを決定するステップであって,前記3つ以上の異なる状態がアクティブ状態,非アクティブ状態,および潜伏状態を少なくとも含む,ステップと,
前記地理的ロケーションに少なくとも部分的に基づいて,前記ポータブル多目的ワイヤレスデバイスの前記スモールセル動作の前記3つ以上の異なる状態のうち現在の状態を制御するステップと
を含み,
前記3つ以上の異なる状態のうち前記現在の状態を前記制御するステップが,前記ワイヤレスデバイスが,前記ワイヤレス通信ネットワークにおけるフィンガープリントまたは全地球測位システム(GPS)座標のうちの少なくとも1つを使用して定義されたホーム領域内に位置するかどうかにさらに基づく,方法。
【請求項2】
前記3つ以上の異なる状態のうち前記現在の状態を前記制御するステップが,前記スモールセル動作を,前記ワイヤレスデバイスがスモールセルとして動作する,前記アクティブ状態にするステップを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記3つ以上の異なる状態のうち前記現在の状態を前記制御するステップが,前記スモールセル動作を,前記ワイヤレスデバイスがいずれのスモールセル機能も実行しない,前記非アクティブ状態にするステップ,あるいは前記ワイヤレスデバイスに,前記アクティブ状態から前記非アクティブ状態に,または前記非アクティブ状態から前記アクティブ状態に変更させるステップのうちの少なくとも1つを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記3つ以上の異なる状態のうち前記現在の状態を前記制御するステップが,前記スモールセル動作を,前記ワイヤレスデバイスがスモールセルとして動作せず,かつアクティブ化信号をリッスンする,前記潜伏状態にするステップ,あるいは前記ワイヤレスデバイスに,前記アクティブ状態または前記非アクティブ状態のうちの1つから前記潜伏状態に,または前記潜伏状態から前記非アクティブ状態または前記アクティブ状態のうちの1つに変更させるステップのうちの少なくとも1つを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ワイヤレスデバイスが,前記潜伏状態にあるとき,モバイルエンティティによる検出のために,または前記ワイヤレス通信ネットワークに報告するために,オーバヘッド信号をスパースに送信するステップ,帯域外(OOB)シグナリングを使用して,その存在をアドバタイズメントするステップ,前記OOBシグナリングをリッスンするステップ,またはアクティブ化要求をリッスンするステップのうちの少なくとも1つを実行する,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記3つ以上の異なる状態のうち前記現在の状態を前記制御するステップが,前記ワイヤレス通信ネットワークの需要または負荷要素のうちの少なくとも1つにさらに基づく,請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記3つ以上の異なる状態のうち前記現在の状態を前記制御するステップが,3つ以上の異なる状態のスモールセル動作が可能な少なくとも1つの追加のポータブル多目的ワイヤレスデバイスの1つまたは複数のロケーションにさらに基づく,請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記3つ以上の異なる状態のうち前記現在の状態を前記制御するステップが,前記ワイヤレスデバイスおよび3つ以上の異なる状態のスモールセル動作が可能な少なくとも1つの追加のポータブル多目的ワイヤレスデバイスの少なくとも1つの電源の状態にさらに基づく,請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記3つ以上の異なる状態のうち前記現在の状態を前記制御するステップが,前記ワイヤレスデバイスおよび3つ以上の異なる状態のスモールセル動作が可能な少なくとも1つの追加のポータブル多目的ワイヤレスデバイスの利用可能な無線アクセス技術,バックホール可用性,またはバックホール品質のうちの少なくとも1つにさらに基づく,請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記3つ以上の異なる状態のうち前記現在の状態を前記制御するステップが,前記ワイヤレスデバイスの無線範囲内の少なくとも1つのモバイルエンティティの少なくとも1つのワイヤレス機能にさらに基づく,請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記3つ以上の異なる状態のうち前記現在の状態を前記制御するステップが,1つまたは複数のモバイルエンティティからのアップリンクシグナリングにさらに基づく,請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アップリンクシグナリングが,非復号アップリンクトラフィック,または前記ワイヤレスデバイスの前記スモールセル動作をアクティブ化する要求のうちの少なくとも1つを含む,請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ワイヤレス通信ネットワーク内でポータブル多目的ワイヤレスデバイスのスモールセル動作のアクティブ化または非アクティブ化を制御するための装置であって,請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成される手段を含む,装置。」

第5 引用文献,引用発明等
1.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,次の事項が記載されている。なお,下線は当審において付与した。

(1)「【0013】
図1に示すように,携帯電話機1は,移動体通信網2を構成する基地局2aとの間で信号を送受信することで移動体通信網2と通信することが可能である。また,携帯電話機1は無線LAN3を構成する基地局3aとの間で信号を送受信することで無線LAN3と通信することも可能である。ここで,無線LAN3は移動体通信網2とは異なる通信網である。移動体通信網2及び無線LAN3はそれぞれ基幹ネットワーク4と接続している。」

(2)「【0014】
携帯電話機1は,デジタルカメラ(他の通信端末)5とネットワークとの間で伝送されるデータを中継するアクセスポイント機能を備えている。デジタルカメラ5は無線LAN機能を搭載している。」

(3)「【0015】
携帯電話機1は,機能的構成要素として第1受信部11,第1判定部12,SSIDリスト記憶部(記憶手段)13,第2受信部14,第2判定部15,中継部(中継手段)16,及び中継制御部(変更手段)17を備えている。」

(4)「【0018】
第1判定部12は,移動体通信網2の基地局2aからの信号の受信状況に基づいて,移動体通信網2における携帯電話機1の在圏状態を判定する部分である。例えば,第1判定部12は,第1受信部11が報知情報を受信した場合には携帯電話機1が移動体通信網2の圏内に存在すると判定し,そうでない場合には携帯電話機1は移動体通信網2の圏外に存在すると判定する。第1判定部12は判定結果を第1在圏情報として中継制御部17に出力する。第1在圏情報は,携帯電話機1が移動体通信網2に在圏しているか否かを示す情報であり,上述したように,移動体通信網2の基地局2aからの報知情報の受信状況に基づいて導出される。」

(5)「【0021】
第2判定部15は,無線LAN3の基地局3aからの信号の受信状況に基づいて,無線LAN3における携帯電話機1の在圏状態を判定する部分である。例えば,第2判定部15は,第2受信部14がビーコンを受信した場合には携帯電話機1が無線LAN3の圏内に存在すると判定し,そうでない場合には携帯電話機1は無線LAN3の圏外に存在すると判定する。そして,第2判定部15は判定結果を第2在圏情報として中継制御部17に出力する。第2在圏情報は,携帯電話機1が無線LAN3に在圏しているか否かを示す情報であり,上述したように,無線LAN3の基地局3aからのビーコンの受信状況に基づいて導出される。」

(6)「【0027】
まず,携帯電話機1及びデジタルカメラ5が地点P1に位置しているときの処理を説明する。この場合,中継制御部17は,移動体通信網の圏外であることを示す第1在圏情報と,無線LANの圏外である(三つの無線LANエリアのいずれにも位置していない)ことを示す第2在圏情報とに基づいて,中継部16を停止すると決定する。そして,中継制御部17は,中継部16にビーコンを送信させないための制御信号を生成して中継部16に出力する。これにより,中継部16はビーコンの送信を停止するか,または停止状態を維持する。その結果,携帯電話機1のアクセスポイント機能は停止し,デジタルカメラ5はネットワーク接続できない。」

(7)「【0028】
携帯電話機1及びデジタルカメラ5が地点P2に位置している場合には,中継制御部17は,エリアMA内であることを示す第1在圏情報と,無線LANの圏外であることを示す第2在圏情報とに基づいて,中継部16を起動すると決定する。そして,中継制御部17は,中継部16にビーコンを送信させるための制御信号を生成して中継部16に出力する。これにより,中継部16はビーコンの送信を開始する。その結果,携帯電話機1のアクセスポイント機能が起動し,デジタルカメラ5はネットワークに接続可能となる。」

(8)「【0043】
以上説明したように,本実施形態によれば,移動体通信網2及び無線LAN3のそれぞれにおける携帯電話機1の在圏状態に基づいて,アクセスポイントとして機能する中継部16の稼働状態が変更されるので,携帯電話機1の消費電力を抑えつつアクセスポイント機能を実行することが可能になる。また,本実施形態によれば,アクセスポイント機能が自動的に起動又は停止されるので,利便性が向上する。」

そして,上記(1)ないし(8)の記載から,引用文献2には,次の事項が記載されているといえる。

ア. (1)の記載によれば,携帯電話機は,移動体通信網及び無線LANと通信可能である。
また,(2)の記載によれば,携帯電話機はアクセスポイント機能を備えており,アクセスポイント機能は,無線LAN機能を搭載しているデジタルカメラのデータを中継する機能である。
更に,(8)の記載によれば,携帯電話機のアクセスポイント機能の稼働状態は,起動された状態と停止された状態を含み,携帯電話機の在圏状態に基づいて,携帯電話機のアクセスポイント機能を起動又は停止する。
よって,引用文献2には,「移動体通信網及び無線LANと通信可能な携帯電話機のアクセスポイント機能の稼働状態は,起動された状態と停止された状態を含み,携帯電話機の在圏状態に基づいて,携帯電話機のアクセスポイント機能を起動又は停止する方法」,及び,「アクセスポイント機能は,無線LAN機能を搭載しているデジタルカメラのデータを中継する機能であること」が記載されている。

イ. (3)及び(4)の記載によれば,携帯電話機の第1判定部は,移動体通信網における携帯電話機の在圏状態を判定し,携帯電話機が移動体通信網に在圏しているか否かを示す第1在圏情報を中継制御部に出力する。
また,(3)及び(5)の記載によれば,携帯電話機の第2判定部は,無線LANにおける携帯電話機の在圏状態を判定し,携帯電話機が無線LANに在圏しているか否かを示す第2在圏情報を中継制御部に出力する。
よって,引用文献2には,「移動体通信網における携帯電話機の在圏状態を判定し,携帯電話機が移動体通信網に在圏しているか否かを示す第1在圏情報を出力し,更に,無線LANにおける携帯電話機の在圏状態を判定し,携帯電話機が無線LANに在圏しているか否かを示す第2在圏情報を出力すること」が記載されている。

ウ. (6)の記載によれば,第1在圏情報と第2在圏情報に基づいて,携帯電話機のアクセスポイント機能を停止し,(7)の記載によれば,第1在圏情報と第2在圏情報に基づいて,携帯電話機のアクセスポイント機能を起動する。
よって,引用文献2には,「第1在圏情報と第2在圏情報に基づいて,携帯電話機のアクセスポイント機能を停止又は起動すること」が記載されている。

以上を総合すると,引用文献2には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「移動体通信網及び無線LANと通信可能な携帯電話機のアクセスポイント機能の稼働状態は,起動された状態と停止された状態を含み,携帯電話機の在圏状態に基づいて,携帯電話機のアクセスポイント機能を起動又は停止する方法であって,
ここで,アクセスポイント機能は,無線LAN機能を搭載しているデジタルカメラのデータを中継する機能であり,
移動体通信網における携帯電話機の在圏状態を判定し,携帯電話機が移動体通信網に在圏しているか否かを示す第1在圏情報を出力し,更に,無線LANにおける携帯電話機の在圏状態を判定し,携帯電話機が無線LANに在圏しているか否かを示す第2在圏情報を出力すること,
第1在圏情報と第2在圏情報に基づいて,携帯電話機のアクセスポイント機能を停止又は起動すること,
を含む方法。」

2.引用文献3について
引用文献3には,【0020】,【0023】によれば,ラップトップコンピュータ上で提供される無線アクセスポイントの動作状態は,無線アクセスポイントがアクティブに信号を送信するアクティブ状態,アクティブに信号を送信せずに且つ装置からの通信をリスンしない非アクティブ状態,及びアクティブに信号を送信せずに装置からの通信をリスンするサイレント状態を有することが記載されている。

3.引用文献4について
引用文献4には,【0019】によれば,低電力の無線通信を提供するために,フェムトセル・アクセス・ポイントのOOBインタフェースを用いることが記載されている。

4.引用文献5について
引用文献5には,[0032],[0035],[0039]ないし[0041]によれば,ネットワーキング制御ノードが,ダイナミックAPの位置,電池残量,バックホールリンクを有するか否か,などの条件に基づいてアクセスポイントとして動作するダイナミックAPを選択することが記載されている。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア. 引用発明の「移動体通信網及び無線LAN」は,本願発明1の「ワイヤレス通信ネットワーク」に含まれる。また,引用発明の「携帯電話機」が,無線通信を介して音声通話やデータ通信などの多くの目的に利用可能な携帯端末装置,すなわちポータブルデバイスであることは明らかである。そして,引用発明の「携帯電話機」は,移動体通信網及び無線LANと通信可能なものであるから,移動体通信網及び無線LANのサービスに加入していることは自明である。
よって,引用発明の「移動体通信網及び無線LANと通信可能な携帯電話機」は,本願発明1の「ワイヤレス通信ネットワークのサービスに加入しているポータブル多目的ワイヤレスデバイス」に含まれる。

更に,引用発明の「アクセスポイント機能」による動作と,本願発明1の「スモールセル動作」は,双方とも無線通信の動作である点で一致する。また,引用発明において,「アクセスポイント機能」を「起動」すると,「アクセスポイント機能」による動作がアクティブ化され,「アクセスポイント機能」を「停止」すると,「アクセスポイント機能」による動作が非アクティブ化されるように制御していることは自明である。
そうすると,本願発明1と引用発明は,「ワイヤレス通信ネットワークのサービスに加入しているポータブル多目的ワイヤレスデバイスの無線通信の動作のアクティブ化または非アクティブ化を制御するための方法」である点で共通する。
ただし,アクティブ化または非アクティブ化を制御される動作について,本願発明1は,「ワイヤレス通信ネットワークのサービスに加入しているポータブル多目的ワイヤレスデバイスのスモールセル動作」であるのに対して,引用発明は「アクセスポイント機能」による動作である点で相違する。

イ. 引用発明は「携帯電話機のアクセスポイント機能の稼働状態は,起動された状態と停止された状態を含」むものであるから,引用発明の「携帯電話機」は,複数の異なる状態の無線通信の動作が可能なものである。
そうすると,本願発明1の「3つ以上の異なる状態のスモールセル動作が可能なポータブル多目的ワイヤレスデバイス」と,引用発明の「携帯電話機」は,「複数の異なる状態の無線通信の動作が可能なポータブル多目的ワイヤレスデバイス」である点で共通する。

また,引用発明の「第1在圏情報」と「第2在圏情報」は,「携帯電話機」の位置に関する情報であるから,本願発明1の「地理的ロケーション」に関する情報に含まれる。そうすると,引用発明の「携帯電話機が移動体通信網に在圏しているか否かを示す第1在圏情報を出力」すること,及び「携帯電話機が無線LANに在圏しているか否かを示す第2在圏情報を出力する」ことは,本願発明1の「地理的ロケーションを決定する」ことに含まれる。

更に,本願発明1の「前記3つ以上の異なる状態がアクティブ状態,非アクティブ状態,および潜伏状態を少なくとも含む」ことと,引用発明の「アクセスポイント機能の稼働状態は,起動された状態と停止された状態を含」むことは,「複数の異なる状態が,アクティブ状態,及び非アクティブ状態を少なくとも含む」点で共通する。

よって,本願発明1の「3つ以上の異なる状態のスモールセル動作が可能なポータブル多目的ワイヤレスデバイスの地理的ロケーションを決定するステップであって,前記3つ以上の異なる状態がアクティブ状態,非アクティブ状態,および潜伏状態を少なくとも含む」と,引用発明の「携帯電話機のアクセスポイント機能の稼働状態は,起動された状態と停止された状態を含み」,及び,「移動体通信網における携帯電話機の在圏状態を判定し,携帯電話機が移動体通信網に在圏しているか否かを示す第1在圏情報を出力し,更に,無線LANにおける携帯電話機の在圏状態を判定し,携帯電話機が無線LANに在圏しているか否かを示す第2在圏情報を出力すること」は,「複数の異なる状態の無線通信の動作が可能なポータブル多目的ワイヤレスデバイスの地理的ロケーションを決定するステップであって,複数の異なる状態が,アクティブ状態,及び非アクティブ状態を少なくとも含む」点で共通する。
ただし,「複数の異なる状態」について,本願発明1は「3つ以上の異なる状態」であり,当該「3つ以上の異なる状態」が「アクティブ状態,非アクティブ状態,および潜伏状態を少なくとも含む」ものであるのに対し,引用発明は「起動された状態と停止された状態を含」むものである点で相違する。

ウ. 引用発明の「第1在圏情報と第2在圏情報に基づいて,携帯電話機のアクセスポイント機能を停止又は起動すること」について,第1在圏情報と第2在圏情報が得られた現在の時点の状態を制御していることは自明である。
よって,本願発明1の「前記地理的ロケーションに少なくとも部分的に基づいて,前記ポータブル多目的ワイヤレスデバイスの前記スモールセル動作の前記3つ以上の異なる状態のうち現在の状態を制御するステップ」と,引用発明の「第1在圏情報と第2在圏情報に基づいて,携帯電話機のアクセスポイント機能を停止又は起動すること」は,「地理的ロケーションに少なくとも部分的に基づいて,ポータブル多目的ワイヤレスデバイスの無線通信の動作の複数の異なる状態のうち現在の状態を制御するステップ」である点で共通する。
ただし,本願発明1は「前記3つ以上の異なる状態のうち前記現在の状態を前記制御するステップが,前記ワイヤレスデバイスが,前記ワイヤレス通信ネットワークにおけるフィンガープリントまたは全地球測位システム(GPS)座標のうちの少なくとも1つを使用して定義されたホーム領域内に位置するかどうかにさらに基づく」ものであるのに対して,引用発明はその旨の特定がなされていない点で相違する。

以上を総合すると,本願発明1と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。

(一致点)
「ワイヤレス通信ネットワークのサービスに加入しているポータブル多目的ワイヤレスデバイスの無線通信の動作のアクティブ化または非アクティブ化を制御するための方法であって,
複数の異なる状態の無線通信の動作が可能なポータブル多目的ワイヤレスデバイスの地理的ロケーションを決定するステップであって,複数の異なる状態が,アクティブ状態,及び非アクティブ状態を少なくとも含む,ステップと,
地理的ロケーションに少なくとも部分的に基づいて,ポータブル多目的ワイヤレスデバイスの無線通信の動作の複数の異なる状態のうち現在の状態を制御するステップと,
を含む方法。」

(相違点1)
「アクティブ化または非アクティブ化を制御」される動作について,本願発明1は,「ワイヤレス通信ネットワークのサービスに加入しているポータブル多目的ワイヤレスデバイスのスモールセル動作」であるのに対して,引用発明は「アクセスポイント機能」による動作である点で相違する。

(相違点2)
「複数の異なる状態」について,本願発明1は「3つ以上の異なる状態」であり,当該「3つ以上の異なる状態」が「アクティブ状態,非アクティブ状態,および潜伏状態を少なくとも含む」ものであるのに対し,引用発明は「起動された状態と停止された状態を含」むものである点。

(相違点3)
「複数の異なる状態のうち現在の状態を制御するステップ」について,本願発明1は「前記3つ以上の異なる状態のうち前記現在の状態を前記制御するステップが,前記ワイヤレスデバイスが,前記ワイヤレス通信ネットワークにおけるフィンガープリントまたは全地球測位システム(GPS)座標のうちの少なくとも1つを使用して定義されたホーム領域内に位置するかどうかにさらに基づく」ものであるのに対して,引用発明はその旨の特定がなされていない点。

(2)相違点についての判断
まず,上記相違点1について検討すると,相違点1に係る本願発明1の「ワイヤレス通信ネットワークのサービスに加入しているポータブル多目的ワイヤレスデバイスのスモールセル動作」に関連して,上記第5の2.において説示したとおり,引用文献3にはラップトップコンピュータ上で提供される無線アクセスポイントの動作状態について記載されているものの,「スモールセル動作」については記載も示唆もされていない。
また,上記第5の3.において説示したとおり,引用文献4には「フェムトセル・アクセス・ポイント」が記載されている。しかしながら,引用文献4には,基地局あるいはアクセスポイントとして動作するための専用の装置を用いる技術的事項が記載されているのであって「ワイヤレス通信ネットワークのサービスに加入しているポータブル多目的ワイヤレスデバイスのスモールセル動作」については,何ら記載されていない。更に,上記第5の4.において説示したとおり,引用文献5には,「スモールセル動作」について記載も示唆もされていない。
したがって,上記相違点2及び相違点3について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び引用文献3ないし引用文献5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし12について
本願発明2ないし12は,本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献3ないし引用文献5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明13について
本願発明13は,「…請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成される手段を含む,装置。」であり,本願発明1の発明特定事項に対応する構成を全て備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献3ないし引用文献5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
本願発明1ないし13は,上記「第6 対比・判断」で説示したように,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献2に記載された発明,及び引用文献3ないし引用文献5に記載された技術的事項に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-10-07 
出願番号 特願2016-565652(P2016-565652)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 桑原 聡一  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 相澤 祐介
本郷 彰
発明の名称 ポータブル多目的ワイヤレスデバイスのスモールセルアクティブ化制御  
代理人 黒田 晋平  
代理人 村山 靖彦  

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