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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09K |
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管理番号 | 1366770 |
審判番号 | 不服2019-8429 |
総通号数 | 251 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-06-25 |
確定日 | 2020-10-02 |
事件の表示 | 特願2015-517088「横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を有する基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月20日国際公開、WO2014/185412〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年5月13日(優先権主張 平成25年5月13日 (JP)日本国)を国際出願日とする出願であって、平成30年6月18日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年10月19日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年3月20日付けで拒絶査定され、これに対し、令和元年6月25日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、令和2年3月26日付けで当審から拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和2年5月25日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし9に係る発明は、令和2年5月25日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「 【請求項1】 (A)所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子、 (B)ポリイミド及びその前駆体からなる群より選択される少なくとも一種の重合体、 及び (C)有機溶媒 を含有し、 前記(A)成分が、光架橋、光異性化、または光フリース転移を起こす感光性側鎖を有し、かつ、(A)成分が、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド又はノルボルネンであるラジカル重合性基およびシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種から構成された主鎖と、下記式(2)からなる側鎖とを有する、重合体組成物。 【化1】 (式中、A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH_(2)-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す; Sは、炭素数1?12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい; Tは、単結合または炭素数1?12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい; Y_(2)は、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5?8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO_(2)、-CN、-CH=C(CN)_(2)、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1?5のアルキル基、又は炭素数1?5のアルキルオキシ基で置換されても良い; Rは、ヒドロキシ基、炭素数1?6のアルコキシ基を表すか、又はY_(1)と同じ定義を表す; Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい; P及びQは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5?8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基である;ただし、Xが-CH=CH-CO-O-、-O-CO-CH=CH-である場合、-CH=CH-が結合する側のP又はQは芳香環であり、Pの数が2以上となるときは、P同士は同一でも異なっていてもよく、Qの数が2以上となるときは、Q同士は同一でも異なっていてもよい; l1は0または1である; l2は0?2の整数である; l1とl2がともに0であるときは、Tが単結合であるときはAも単結合を表す; l1が1であるときは、Tが単結合であるときはBも単結合を表す)。」 第3 令和2年3月26日付けの当審拒絶理由の内容 当審において通知した拒絶理由は次のとおりである。 (サポート要件)本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 第4 当審の判断 1.サポート要件の適否判断の観点 一般に『特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許出願人(…)が証明責任を負うと解するのが相当である。…当然のことながら,その数式の示す範囲が単なる憶測ではなく,実験結果に裏付けられたものであることを明らかにしなければならないという趣旨を含むものである。』とされている〔平成17年(行ケ)10042号判決参照。〕。 また、一般に『特許請求の範囲に発明として記載して特許を受けるためには,明細書の発明の詳細な説明に,当該発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載しなければならない。そして,本件訂正発明におけるメソゲン化合物a,a1,a2を定義する式IないしI’は,請求項によってその具体的内容を多少異にするものの,いずれも当該式を構成する重合性基P,スペーサー基Sp,結合基X,メソゲン基MG,末端基Rといった基本骨格部分において非常に多くの化合物を含む表現である上,これらに結合する置換基の選択肢も考慮すれば,その組み合わせによって膨大な数の化合物を表現し得るものとなっている。このような場合に,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するためには,発明の詳細な説明は,上記式が示す範囲と得られる効果との関係の技術的な意味が,特許出願時において,具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載するか,又は,特許出願時の技術常識を参酌して,当該式が示す範囲内であれば,所望の効果が得られると当業者において認識できる程度に,具体例を開示して記載することを要するものと解するのが相当である。』とされている〔平成30年(行ケ)第10034号判決参照。〕。 2.本願発明の解決しようとする課題 本願発明の課題は、本願明細書の【0016】の記載からみて、高効率で配向制御能が付与され、焼き付き特性に優れた、横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を有する基板及び該基板を有する横電界駆動型液晶表示素子を提供し、液晶配向膜における良好な液晶の配向性を実現できる紫外線照射の照射量のマージン領域を拡大することができる液晶配向膜およびそれを有する基板の製造方法を提供することにあると認められる。 3.本願明細書の記載について 【実施例】 【0219】 実施例で使用する略号は以下のとおりである。 <メタクリルモノマー> 【0220】 【化36】 【0221】 MA1は特許文献(WO2011-084546)に記載の合成法にて合成した。 MA2は特許文献(特開平9-118717)に記載の合成法にて合成した。 【0222】 <テトラカルボン酸二無水物> CBDA:1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物 PMDA:ピロメリット酸二無水物 BODA:ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無 水物 【0223】 <ジアミン> DDE:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル DDM:4,4’-ジアミノジフェニルメタン DA-3MG:1,3-ビス(4-アミノフェニルオキシ)プロパン 【0224】 <有機溶媒> THF:テトラヒドロフラン NMP:N-メチル-2-ピロリドン BC:ブチルセロソルブ CH2Cl2:ジクロロメタン 【0225】 <重合開始剤> AIBN:2,2’-アゾビスイソブチロニトリル 【0226】 [ポリアミック酸およびポリイミドの合成例] <合成例1: ポリアミック酸> MA1(9.97g、30.0mmol)をTHF(92.0g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行なった後、AIBNを(0.246g、1.5mmol)を加え再び脱気を行なった。この後50℃で30時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をジエチルエーテル(1000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をジエチルエーテルで洗浄し、40℃のオーブン中で減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末を得た。 得られた粉末6.0gにNMP54.0gを加え、室温で3時間攪拌した。固形分濃度が10.0wt%、のメタクリレートポリマー溶液(M1)を得た。攪拌終了時点でポリマーは完全に溶解していた。 【0227】 <合成例2: ポリアミック酸> 上記合成例1と同様の方法を用いてMA1(1.99g、6.0mmol)とMA2(7.35g、24.0mmol)をAIBN(0.14g),THF(85.45g)で、合成例2のメタクリレートのポリマー溶液(M2)を得た。 【0228】 <合成例3: ポリアミック酸> テトラカルボン酸二無水物成分として、CBDAを1.82g、ジアミン成分として、DDEを2.00gを用い、NMP34.43g中、室温で18時間反応させポリアミック酸(PAA-1)の濃度10wt%の溶液を得た。 【0229】 <合成例4?7: ポリアミック酸> 下記表1に示す組成で、上記ポリアミック酸の合成例3と同様の方法を用いて合成例4?7のポリアミック酸溶液を合成した。 【0230】 【表1】 【0231】 <合成例8: ポリイミド> 合成例5で得られたポリアミック酸溶液(PAA-3)10.0gに、NMPを6.7g加えて希釈し、濃度6wt%のポリアミック酸溶液を調製した。このポリアミック酸溶液に無水酢酸2.2gとピリジン1.0gを加え、50℃で3時間反応させてイミド化した。得られたポリイミド溶液を室温程度まで冷却後、メタノール70g中に投入し、沈殿した固形物を回収した。さらに、この固形物をメタノールで2回洗浄した後、100℃で減圧乾燥して、ポリイミドの黄土色粉末を得た。得られた粉末3.0gをNMP27.0g室温で3時間攪拌した。固形分濃度が10.0wt%、のポリイミド溶液(SPI-1)を得た。攪拌終了時点でポリマーは完全に溶解していた。 【0232】 (実施例1) 上記合成例1にて得られたメタクリル酸ポリマー(M1)1.2gに、ポリアミック酸溶液(PAA-1)を4.8g加え室温で1時間攪拌した。さらにこの溶液にBCS4.0gを加え、室温で1時間攪拌し、固形分濃度が6.0wt%、のポリマー溶液(A1)を得た。このポリマー溶液は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤となる。 【0233】 (実施例2?8、比較例1?2) 下記表2に示す組成で、実施例1と同様の方法を用いて実施例2?10のポリマー溶液を得た。また比較例1?2も同様の方法で調整した。 【0234】 【表2】 【0235】 [液晶セルの作製] 実施例1得られた液晶配向剤(A1)を用いて下記に示すような手順で液晶セルの作製を行った。基板は、30mm×40mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板であり、ITO膜をパターニングして形成された櫛歯状の画素電極が配置されたものを用いた。画素電極は、中央部分が屈曲したくの字形状の電極要素を複数配列して構成された櫛歯状の形状を有する。各電極要素の短手方向の幅は10μmであり、電極要素間の間隔は20μmであった。各画素を形成する画素電極が、中央部分の屈曲したくの字形状の電極要素を複数配列して構成されているため、各画素の形状は長方形状ではなく、電極要素と同様に中央部分で屈曲する、太字のくの字に似た形状を備えていた。そして、各画素は、その中央の屈曲部分を境にして上下に分割され、屈曲部分の上側の第1領域と下側の第2領域を有した。各画素の第1領域と第2領域とを比較すると、それらを構成する画素電極の電極要素の形成方向が異なるものとなっていた。すなわち、後述する液晶配向膜の配向処理方向を基準とした場合、画素の第1領域では画素電極の電極要素が+15°の角度(時計回り)をなすように形成され、画素の第2領域では画素電極の電極要素が-15°の角度(時計回り)をなすように形成されていた。すなわち、各画素の第1領域と第2領域とでは、画素電極と対向電極との間の電圧印加によって誘起される液晶の、基板面内での回転動作(インプレーン・スイッチング)の方向が互いに逆方向となるように構成されていた。 合成例1で得られた液晶配向剤(A1)を、準備された上記電極付き基板にスピンコートした。次いで、70℃のホットプレートで90秒間乾燥し、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。次いで、塗膜面に偏光板を介して313nmの紫外線を1mJ/cm^(2)照射した後に150℃のホットプレートで10分間加熱し(1次焼成)、室温まで除冷した基板を再度150℃のホットプレートで10分間加熱(2次焼成)することで液晶配向膜付き基板を得た。同様にして、紫外線の照射量が、1mJ/cm^(2)?10mJ/cm^(2)では1mJ/cm^(2)間隔で、10mJ/cm^(2)?100mJ/cm^(2)では10mJ/cm^(2)間隔で、100mJ/cm^(2)以上では50mJ/cm2間隔で、それぞれ異なる基板を作成した。また、対向基板として電極が形成されていない高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板にも、同様に塗膜を形成させ、配向処理を施した。一方の基板の液晶配向膜上にシール剤(協立化学製XN-1500T)を印刷した。次いで、もう一方の基板を、液晶配向膜面が向き合い配向方向が0°になるようにして張り合わせた後、シール剤を熱硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC-2041(メルク株式会社製)を注入し、注入口を封止して、IPS(In-Planes Switching)モード液晶表示素子の構成を備えた液晶セルを得た。 【0236】 実施例2?9で得られた液晶配向剤(A2?A9)に関しても、A1と同様の方法を用いて液晶セルを作成した。 【0237】 (配向性観察) 上記の方法にて液晶セルを作製した。その後、120℃のオーブンで60分間再配向処理を行なった。その後、偏光板をクロスニコル状態にした偏光顕微鏡を通して観察した。液晶セルを回転し黒表示状態にしたときに輝点や配向不良が無い状態を良好とした。紫外線の照射量が、上記の通りそれぞれ異なる基板について配向性を観察した結果、配向性良好な照射量マージンについて表3に示す。 【0238】 (電圧保持率(VHR)評価) VHRの評価は、得られた液晶セルに、70℃の温度下で5Vの電圧を60μs間印加し、1667ms後の電圧を測定し、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率として計算した。 なお、電圧保持率の測定には、東陽テクニカ社製の電圧保持率測定装置VHR-1を使用した。 【0239】 比較例1で得られた液晶配向剤(B1)および比較例2で得られた液晶配向剤(B2)を用い、上述の液晶配向剤(A1)を用いた場合と同様に液晶セルの製造を行い、同様の方法で、VHRを評価した。 【0240】 結果は下記表3に示されるとおりであった。 【0241】 【表3】 【0242】 表3に示されているように、本発明に従う実施例1?5は、(A)成分が共通で、(B)成分を含まない比較例1に比べて、照射量領域(照射マージン)が広がっており、より広い照射領域で所望の効果を奏することができることが判明した。実施例6?10と比較例2との比較においても、同じことが言えることが判明した。」 4.対比・判断 明細書のサポート要件に適合するか否かについて「特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か」を以下に検討する。 本願発明の「(A)所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子・・・ 前記(A)成分が、光架橋、光異性化、または光フリース転移を起こす感光性側鎖を有し、かつ、(A)成分が、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド又はノルボルネンであるラジカル重合性基およびシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種から構成された主鎖と、下記式(2)からなる側鎖とを有する、重合体組成物」は、その式(2)と主鎖の組み合わせによって膨大な数の「側鎖型高分子の組成物」を表現し得るものとなっている。 これに対して、本願明細書の発明の詳細な説明には、その段落0226及び0227の「合成例1」及び「合成例2」の具体例(メタクリルモノマーMA1を反応させて得られたメタクリルポリマー溶液M1及びM2)のみが上記側鎖型高分子の具体例として記載されているにすぎない。 すなわち、本願発明の「 」で表される「式(2)」は、 その「A」と「B」と「D」の連結基として「A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH_(2)-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、 その「S」の連結基として「Sは、炭素数1?12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、 その「T」の連結基として「Tは、単結合または炭素数1?12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、 その「Y_(2)」の連結基として「Y_(2)は、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5?8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO_(2)、-CN、-CH=C(CN)_(2)、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1?5のアルキル基、又は炭素数1?5のアルキルオキシ基で置換されても良い;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、 その「R」の末端基として「Rは、ヒドロキシ基、炭素数1?6のアルコキシ基を表すか、又はY_(1)と同じ定義を表す;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっているとともに、その「Y_(1)」の定義がなされておらず、 その「X」の連結基として「Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、 その「P」と「Q」の連結基として「P及びQは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5?8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基である;ただし、Xが-CH=CH-CO-O-、-O-CO-CH=CH-である場合、-CH=CH-が結合する側のP又はQは芳香環であり、Pの数が2以上となるときは、P同士は同一でも異なっていてもよく、Qの数が2以上となるときは、Q同士は同一でも異なっていてもよい;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、 これらの組み合わせは膨大なものであるが、本願明細書の実施例では、本願発明の要件を満たす「側鎖型高分子」として具体例(メタクリルモノマーMA1を反応させて得られたメタクリルポリマー溶液M1及びM2)のみが記載されているにすぎない。 なお、本願明細書の実施例1?10で用いられている「MA1」のモノマーは、(A)成分が、光架橋を起こす感光性側鎖を有し、かつ、(A)成分が、(メタ)アクリレートから構成された主鎖と、式(2)からからなる側鎖とを有する、重合体組成物であるもの(式中、Aは、単結合、Dは、-O-を表す; Sは、炭素数6のアルキレン基であり; Tは、単結合であり; Y_(2)は、2価のベンゼン環を表す; Rは、ヒドロキシ基を表す; l1は0である; l2は0である; l1とl2がともに0であるときは、Tが単結合であるときはAも単結合を表す)ものに該当する。 そして、多数の選択肢間において相互に類似した化学構造を有するといえる合理的な根拠は見当たらず、これら多数の選択肢の各々が相互に同等の特性や有用性を示し得るといえる「試験結果」や「作用機序」の説明なども本願明細書の発明の詳細な説明の記載に見当たらないので、本願出願時の「技術常識」を参酌しても、本願明細書の実施例1?10等で用いられた「メタクリルモノマーMA1を反応させて得られたメタクリルポリマー」という「側鎖型高分子」と、他の選択肢の「側鎖型高分子」の全てが、同様の特性や有用性を組成物に付与できると認識することはできない。 したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、その(A)成分の「側鎖型高分子」の範囲について「式が示す範囲と得られる効果との関係の技術的な意味」が「具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度」に記載されているとはいえず、特許出願時の技術常識を参酌して「当該式が示す範囲内であれば,所望の効果が得られると当業者において認識できる程度」に十分な数の具体例が開示されているものでもないので、本願請求項1及びその従属項の全てが、上記『高効率で配向制御能が付与され、焼き付き特性に優れ、向上した電圧保持率を有し、向上した密着性を有する横電界駆動型液晶素子及び該素子のための液晶配向膜の提供』という課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。 5.審判請求人の主張について 令和2年5月25日付けの意見書において、審判請求人は『ご指摘のなかで、サポートされているとご認定いただいている(A)成分がMA1であるものに近づける限定として、(A)成分である「側鎖型高分子」における「側鎖」を、式(2)のものに限定する補正をこの度行いました。これにより側鎖型高分子における側鎖を、特定の構造のものに限定しておりますので、補正後の本発明は実施例等を含む明細書の発明の詳細な説明の記載に支持されたものとなっており、当業者であれば課題解決を認識できる範囲になったものと思料いたします。』と主張している。 しかしながら、本願明細書の実施例1?10等で用いられた「メタクリルモノマーMAを反応させて得られたメタクリルポリマー」という「側鎖型高分子」で得られた結果を、本願発明の膨大な数の化合物を表現し得るものとなっている「側鎖型高分子」の全ての選択肢にまで、特許を受けようとする発明を拡張ないし一般化できるといえる具体的な根拠は見当たらないので、上記主張は採用できない。 6.サポート要件のまとめ 以上総括するに、本願発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められないので、本願発明の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 よって、結論のとおり審決する。 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審理終結日 | 2020-07-28 |
結審通知日 | 2020-08-03 |
審決日 | 2020-08-18 |
出願番号 | 特願2015-517088(P2015-517088) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(C09K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 磯貝 香苗 |
特許庁審判長 |
蔵野 雅昭 |
特許庁審判官 |
瀬下 浩一 木村 敏康 |
発明の名称 | 横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を有する基板の製造方法 |
代理人 | 井波 実 |
代理人 | 伊藤 武泰 |
代理人 | 紺野 昭男 |
代理人 | 紺野 昭男 |
代理人 | 井波 実 |
代理人 | 田村 慶政 |
代理人 | 伊藤 武泰 |
代理人 | 田村 慶政 |
代理人 | 吉澤 敬夫 |
代理人 | 吉澤 敬夫 |