ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N |
---|---|
管理番号 | 1366799 |
審判番号 | 不服2020-6757 |
総通号数 | 251 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-05-18 |
確定日 | 2020-10-27 |
事件の表示 | 特願2015-220579「耐スポーリング性試験装置及び耐スポーリング性評価方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月25日出願公開、特開2017- 90251、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年11月10日の出願であって、令和元年7月31日付けで拒絶理由が通知され、同年9月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年2月14日付けで拒絶査定(原査定)がされたところ、これに対し、同年5月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和2年2月14日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1、2、4及び5に係る発明は、以下の引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開平04-208840号公報 2.特開平07-020031号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2013-083605号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2014-035251号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願の請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、令和2年5月18日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1及び4は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 耐火物試験片を上下方向に一軸上に拘束する拘束手段と、 前記耐火物試験片の上下方向に一軸上に配置され、前記拘束手段による拘束荷重を測定する荷重測定手段と、 前記拘束手段により拘束された耐火物試験片のうちの一面である加熱面を加熱する加熱手段と、 前記加熱手段により加熱された前記耐火物試験片の前記加熱面以外の面であって前記加熱面と直交する直接加熱されない側面である撮影面を加熱中又は冷却中に撮影可能な撮影手段と、 を備えた耐スポーリング性試験装置。」 「【請求項4】 耐火物試験片を上下方向に一軸上に拘束する拘束工程と、 拘束された耐火物試験片のうちの一面である加熱面を加熱又は冷却する加熱冷却工程と、を含み、 前記加熱冷却工程中に、前記耐火物試験片の上下方向に一軸上に配置された荷重測定手段によって前記耐火物試験片の拘束荷重を測定する荷重測定工程と、前記耐火物試験片の前記加熱面以外の面であって前記加熱面と直交する直接加熱されない側面である撮影面を撮影する撮影工程と、を含み、 さらに、あらかじめ撮影された前記撮影面の初期画像及び前記撮影工程で撮影された前記撮影面の画像並びに前記拘束荷重から耐スポーリング性を評価する評価工程と、を含む耐スポーリング性評価方法。」 なお、本願発明2及び3は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明5ないし7は、本願発明4を減縮した発明である。 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審において付加した。引用文献の記載において以下同様。)。 (引1-ア)第1ページ右下欄6行?第2ページ左下欄11行 「 (産業上の利用分野) 本発明は溶融金属を収容する各種の炉、容器の内張り構造体の耐スポール性、耐食性等の耐用性を実験室的に評価する方法及び装置に関するものである。 (従来の技術) 溶融金属を収容する高炉・転炉・溶融還元炉・電気炉・混銑炉等の各種の炉、真空脱ガス装置、取鍋等の容器等においては、一般に内面に耐火煉瓦による内張り構造体が構築されている。 この内張り構造体を形成する耐火煉瓦の稼働面側は、流動する溶融金属、溶融スラグと接触して物理的、化学的に侵食を受けるほか、溶融金属の受湯→収容→溶融金属・溶融スラグ排出後放冷→受湯の繰返しにより熱衝撃を受け、更にはスラグの浸透による構造スポールを受けて損耗、脱落することが知られており、このような耐火煉瓦の損耗、脱落の進行を抑制し、内張り構造体の耐用寿命を延長するための研究が続けられいる(当審注:「続けられいる」は「続けられている」の誤記と認める。)。 そしてこの研究の場においては、耐火煉瓦の耐用性評価は不可欠である。一般に、耐火煉瓦の耐用性の評価は、実験室的に行われており、例えば転炉における耐食性(耐溶損性)構造スポールに影響を与えるスラグ浸透性の評価については、第5図に示すような小型高周波炉Fを用い、この高周波炉に小サイズの耐火煉瓦Bを内張りして、溶融金属・溶融スラグを生成し、ランスLから酸素を吹込みながら、流動接触させ、所定時間経過後、耐火煉瓦を取外し、破断面を検査することによって行っていた。 また、耐熱衝撃性(耐スポール性)の評価は、第6図に示すような加熱冷却装置Hを用いて、小サイズの耐火煉瓦Bの片面に対して加熱、冷却を繰返しAE(アコウスティク・エミッション)検査装置等を用いて耐火煉瓦の亀裂発生の有無、発生の位置、度合、限界亀裂発生加熱冷却速度等を検査することにより行っていた。 しかし、これら従来の評価に供される耐火煉瓦は、実用サイズよりはかなり小サイズで、しかも単体で配置され、拘束条件も実用状態の場合と明らかに異なっている。また実用状態においては、溶融金属、溶融スラグと接触しており、高温にさらされ、物理的、化学的侵食とスラグの浸透による構造スポール作用を受けると同時に、熱衝撃の繰返し、つまり熱スポール作用を受け、さらに熱膨張による圧縮作用等を複合的に受けることになるが、前記従来の評価においてはこのような複合条件を同時に得ることができない。 従って従来の評価は、実用状態とかけ離れた条件下で行われていることになり、その耐用性評価精度が充分でないという欠点を有している。(参考技術 特開昭55-142239、特開昭62-133337) (発明が解決しようとする課題) 本発明は、複数個の実用サイズの耐火煉瓦を内張り構造体の一部として構築し、これを拘束状態にして、実用状態に近づけて、耐食性(耐溶損性)耐構造スポール性、耐熱スポール性等の耐用性を同時に評価できる評価精度の高い内張り構造体の評価方法及び装置を提供するものである。」 (引1-イ)第3頁左上欄17行?第4頁左上欄11行 「 以下本発明について説明する。 第1図は、本発明の装置例を概要的に示す一部切欠側面説明図であり、1は内張り構造体の拘束装置、2はバーナーで、溶射によって溶融金属、溶融スラグを生成する主バーナー3と内張り構造体17に対する冷却速度を制御するための補助バーナー4を備えている。これらのバーナーは火炎、空気(酸素)のみの噴射が可能である。 このバーナーは、内張り構造体の拘束装置に対して進退自在な台車5上に設けられた該進退方向と直交方向に移動自在な摺動台5-1上の回転テーブル6に昇降装置7を介して取り付けられており、旋回、昇降、俯仰角可変である。 主バーナーには、溶融金属と溶融スラグを生成するための粉末供給装置8と火炎を生成するためのガス供給装置と空気(酸素)供給装置9が接続されており、補助バーナー4には燃焼ガス生成用のガス供給装置と空気(酸素)供給装置10が接続され、またバーナー2の先端部には密閉構造形成用遮蔽カバーが設けられている。 内張り構造体の拘束台1は第2図、第3図に示すように、扇形の基台11とこの基台に取付けられた鉄皮12とガイド板13間に固設された支持体14に設けられた拘束力付与装置(拘束力制御装置を具備)15と、この拘束力付与装置によって鉄皮とガイド板13間を摺動自在な拘束力伝達板16と、この伝達板からの拘束力を(当審注:前後の文脈から、「拘束力を」は「拘束力で」の誤記と認める。)荷重計(第3図19)を介して、内張り構造体17を押圧、拘束する摺動自在な冷却構造を有する拘拘束板18(当審注:「拘拘束板18」は「拘束板18」の誤記と認める。)とこの拘束板I8と内張り構造体17間な(当審注:「間な」は「間に」の誤記と認める。)介在させる膨張吸収材20とによって内張り構造体の拘束機構が形成されている。そして、内張り構造体の収納スペース21の上部には伸縮自在な屋根板22か設けられ、また収納スペース21の側部には、冷却構造を有する遮蔽壁23が設けられている。 また、収納スペース21内に構築された複数の耐火煉瓦により構築された内張り構造体17の稼動面側の基台11上に耐火物24により、溶融金属、溶融スラグの収容プール25が設けられており、この収容プール25の排出樋26の下方には可搬式の鍋27が配置されている。なお、図中28は鉄皮12の補強体、Tは輻射温度計である。 次に耐用性の評価について説明する。 耐用性を評価する場合は、評価対象となる耐火煉瓦を実用サイズにして、これを複数個用意し実用される炉、例えば転炉の内張り構造体と近似の内張り構造体の一部と(当審注:「一部と」は「一部を」の誤記と認める。)内張り構造体拘束装置の内張り構造体収納スペース内に構築し、拘束付与装置により該内張り構造体17を側面側から、押圧して、荷重計19により実炉と近似の拘束力が付与されるように拘束する。 そして台車5を移動し摺動台5-1、回転テーブル6、昇降装置7を操作して、バーナーの先端を所定の位置に調整する。この時、バーナー側の遮蔽カバーC、内張り構造体拘束装置1側の遮蔽壁23、屋根板22によつて略密閉空間が形成される。一方あらかじめ、この内張り構造体に流動接触させる溶鋼及び溶融スラグ生成に必要な金属粉末、スラグ組成物粉末を調整したものを所望量用意すると共に、これらを溶融し所定の温度を確保するためのバーナーにおける溶射条件をあらかじめ設定しておく。また実用条件に近似の条件を得るための溶射、溶射中断、溶射再開、冷却、あるいは加熱条件、タイミング等のスケジュールも併せて設定しておき、評価のための操作は自動化するのが好ましい。」 (引1-ウ)第4頁右下欄17行?第5頁左上欄10行 「 (発明の効果) 本発明は、実用サイズの複数個の耐火煉瓦を実用される内張り構造体の一部として構築し、これに実用条件と近似の拘束力を付与した状態でしかもバーナーという簡易手段によって溶融金属、溶融スラグの生成、広範囲の雰囲気温度の生成等、広範囲の実用条件に近似の化学的、物理的条件が容易にかつ同時に付与でき、より実際的な条件下での精度の高い耐用性評価ができる。従って、耐火煉瓦の実用レヘルでの耐用性を高精度で推定することができ、特に耐火煉瓦の開発、操業度、管理等のために寄与するところ大である。」 (引1-エ)第1図 「 」 (引1-オ)第2図 「 」 (引1-カ)第3図 「 」 (2)引用文献1に記載された発明 ア 引用文献1の記載において、「内張り構造体の拘束装置」、「内張り構造体の拘束台1」及び「内張り構造体拘束装置1」は、同じものを表していると認められることから、以下、「内張り構造体拘束装置1」に記載を統一する。 イ 引用文献1の記載において、「拘束力付与装置」及び「拘束付与装置」は、同じものを表していると認められることから、以下、「拘束力付与装置」に記載を統一する。 ウ 上記ア及びイを踏まえると、上記(引1-ア)ないし(引1-カ)の記載から、引用文献1には、 「 溶融金属を収容する各種の炉、容器の内張り構造体の耐スポール性、耐食性等の耐用性を実験室的に評価する装置であって、 内張り構造体拘束装置1とバーナー2を備え、 バーナー2は、 溶射によって溶融金属、溶融スラグを生成する主バーナー3と内張り構造体17に対する冷却速度を制御するための補助バーナー4を備え、 内張り構造体拘束装置1に対して進退自在な台車5上に設けられた該進退方向と直交方向に移動自在な摺動台5-1上の回転テーブル6に昇降装置7を介して取り付けられており、旋回、昇降、俯仰角可変であり、 内張り構造体拘束装置1は、 扇形の基台11とこの基台11に取付けられた鉄皮12とガイド板13間に固設された支持体14に設けられた拘束力付与装置(拘束力制御装置を具備)15と、この拘束力付与装置15によって鉄皮12とガイド板13間を摺動自在な拘束力伝達板16と、この拘束力伝達板16からの拘束力で荷重計19を介して、内張り構造体17を押圧、拘束する摺動自在な冷却構造を有する拘束板18と、この拘束板I8と内張り構造体17間に介在させる膨張吸収材20とによって内張り構造体の拘束機構が形成され、 内張り構造体の収納スペース21の上部には伸縮自在な屋根板22か設けられ、また収納スペース21の側部には、冷却構造を有する遮蔽壁23が設けられており、 収納スペース21内に構築された複数の耐火煉瓦により構築された内張り構造体17の稼動面側の基台11上に耐火物24により、溶融金属、溶融スラグの収容プール25が設けられており、この収容プール25の排出樋26の下方には可搬式の鍋27が配置されており、 耐用性を評価する場合は、 評価対象となる耐火煉瓦を実用サイズにして、これを複数個用意し実用される炉の内張り構造体と近似の内張り構造体の一部を内張り構造体拘束装置1の内張り構造体の収納スペース21内に構築し、拘束力付与装置15により該内張り構造体17を側面側から、押圧して、荷重計19により実炉と近似の拘束力が付与されるように拘束し、 台車5を移動し摺動台5-1、回転テーブル6、昇降装置7を操作して、バーナー2の先端を所定の位置に調整し、バーナー2により溶射する、 装置。」 の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 2 引用文献2について (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2には、以下の記載がある。 (引2-ア)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は金属、セラミックス等の材料、特に軽金属材料の耐熱疲労性の評価に利用することが可能な簡易な熱疲労試験方法および熱疲労試験装置に関する。」 (引2-イ)「【0021】 【具体化した発明3】前記第1発明の熱疲労試験方法を実施するための熱疲労試験装置は例えば図1に示すような装置を用いて行う。本熱疲労試験装置は、熱疲労試験片1と、熱疲労試験片1を拘束するホルダ2と、赤外線加熱炉等からなる加熱手段3と、エアーノズル等からなる冷却手段4と、熱疲労試験片の熱ひずみ量および熱応力を測定するために熱疲労試験片に取付けたひずみゲージ(図示せず)と、熱疲労試験片の可視光による像を取り出すためのシリコンウエハからなるミラー5と、取り出した像を外部へ導くためのミラー(6、7、8)、レンズ(9、10)からなる光路手段と、冷熱サイクル数を表示するカウンタ11と、VTRカメラ等からなる試料観察手段12と、VTRカメラ、炉の温度、エアーノズル等を冷熱サイクルパターンにしたがって制御する制御手段13、熱疲労試験片の像を表示するためのビデオモニター等からなる表示手段14とから構成される。 【0022】ここで、加熱および冷却手段としては赤外線加熱炉およびエアーノズルがあるが、熱疲労試験片とホルダを加熱・冷却できるものであれば、それらに限定されないが、実用上、数分/サイクルの冷熱サイクルが可能な加熱および冷却手段であることが望ましい。 【0023】また、光路手段であるミラーとレンズの組み合わせと配置は、加熱手段や冷却手段、および装置全体の構成によって変更可能である。また、熱疲労試験片の拘束は、通常以下のようにして行う。すなわち熱膨張係数が熱疲労試験片と異なる材料からなり両端にV字形の刃等を有する2枚のホルダで熱疲労試験片を挟み、油圧プレス等の圧縮装置によって、ホルダの両端のV字形の刃を試験片の両端の平坦部に圧入する。このときの圧入荷重は、試験片中央の平行部に塑性ひずみが生じない大きさとするのが望ましい。また、ホルダを構成する材料の熱膨張係数は、試験を行いたいひずみ範囲によって自由に選択できる。圧入後、圧入部が緩まないようにばねを介してボルト・ナット等の結合手段で結合する。 【0024】前記ホルダのV字形の刃の先端角は熱疲労試験片への圧入し易さの点で小さな方がよいが、刃先の強度の点では大きな方がよく、50?75°程度が望ましい。V字形の刃は、刃先が滑らない程度まで食い込むことが必要であり、深さは0.1mm程度あれば十分である。このとき、V字形の刃の谷底形状はRや平坦であってもよい。V字形の刃のピッチは、圧入したときの試験片の圧入されていない部分とホルダV字刃谷部との隙間(試験中にこの分だけ食い込みが進む可能性がある)を小さくするために、できるだけ細かいほうが望ましいが、深さを0.1mm以上にするため、約0.1mm以上が望ましい。 【0025】また、本熱疲労試験装置で用いる熱疲労試験片とホルダの熱膨張係数は、試験条件を把握しやすいという理由で10×10^(-6)/℃程度以上異なっていることが望ましい。また、本熱疲労試験装置では、シリコンウエハを用いて試験片の可視光による像を取りだし、冷熱サイクルパターンに合わせて、一定の周期で破損状態を自動記録することもできる。」 (引2-ウ)【図1】 「 」 (引2-エ)【図3】 「 」 (2)引用文献2に記載された発明 ア 上記(引2-エ)の【図3】の記載から、ホルダ2は上下両端で熱疲労試験片1の上下両端を拘束することが見て取れる。 イ 上記アを踏まえると、上記(引2-ア)ないし(引2-エ)の記載から、引用文献2には、 「 金属、セラミックス等の材料の耐熱疲労性の評価に利用することが可能な簡易な熱疲労試験装置であって、 熱疲労試験片1と、熱疲労試験片1を拘束するホルダ2と、赤外線加熱炉等からなる加熱手段3と、エアーノズル等からなる冷却手段4と、熱疲労試験片の熱ひずみ量及び熱応力を測定するために熱疲労試験片に取付けたひずみゲージと、熱疲労試験片の可視光による像を取り出すためのシリコンウエハからなるミラー5と、取り出した像を外部へ導くためのミラー6、7、8、レンズ9、10からなる光路手段と、冷熱サイクル数を表示するカウンタ11と、VTRカメラ等からなる試料観察手段12と、VTRカメラ、炉の温度、エアーノズル等を冷熱サイクルパターンにしたがって制御する制御手段13、熱疲労試験片の像を表示するためのビデオモニター等からなる表示手段14とから構成され、 熱疲労試験片1の拘束は、熱膨張係数が熱疲労試験片1と異なる材料からなり上下両端にV字形の刃等を有する2枚のホルダ2で熱疲労試験片1を挟み、油圧プレス等の圧縮装置によって、ホルダ2の上下両端のV字形の刃を熱疲労試験片1の上下両端の平坦部に圧入し、圧入部が緩まないようにばねを介してボルト・ナット等の結合手段で結合することにより行う、 装置。」 の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 3 引用文献3について (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献3には、以下の記載がある。 (引3-ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、赤熱状態にある測定対象物の変位を計測する変位計測装置、変位計測方法及びプログラムに関する。なお、赤熱状態とは測定対象物の種類によっても変化するが、概ね700℃以上の状態をいう。」 (引3-イ)「【0016】 図1は、本発明の一実施形態による変位計測装置の構成を示すブロック図である。図1に示す変位計測装置は、測定対象物1を撮影するデジタルカメラ2と、デジタルカメラ2で撮影した画像データを処理するコンピュータ3とから構成される。 【0017】 コンピュータ3は、メモリ手段3a、画像成分決定手段3b、画像変換手段3c、変位演算手段3d及びフィルタ手段3eを備える。 【0018】 メモリ手段3aは、デジタルカメラ2で撮影した画像データを保存する。 【0019】 画像成分決定手段3bは、赤熱前後の測定対象物1をデジタルカメラ2で撮影した画像データをそれぞれRGB成分に分離して、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定する。赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定する方法としては、例えば、各成分について赤熱前後で赤熱領域(赤熱前では赤熱後の赤熱領域に対応する領域)の輝度値の平均値を演算し、赤熱前後の輝度値の平均値の差が最も小さい領域を求める方法を採用できる。赤熱前後の赤熱領域の輝度値の変化を求める際には、赤熱領域全体の輝度値の平均値を使用できるほか、赤熱領域を一ピクセル単位あるいは複数のピクセル単位に区分して、そのピクセル単位毎の輝度値の平均値を使用できる。赤熱領域をピクセル単位に区分する場合、赤熱前後で対応するピクセル単位毎に赤熱前後の輝度値の変化を求め、その変化の平均値が最も小さい成分を、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分とすることができる。 【0020】 なお、本発明において、画像成分決定手段3bは、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定するもので、その決定方法は上述の方法に限定されず、例えば上述の方法のほかに、カラー画像で十分に赤熱していると判断された領域を定義し、RGBの各画像について、その領域内における輝度値の標準偏差を計算し、標準偏差の大きい成分を選択する方法を採用することもできる。 【0021】 また、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分の決定は、画像成分決定手段3bによる演算によらず、目視で決定することもできる。 【0022】 画像変換手段3cは、変形前後の測定対象物1をデジタルカメラ2で撮影した画像データを、画像成分決定手段3bにより決定された成分の画像データに変換する。 【0023】 変位演算手段3dは、画像変換手段3cにより変換された変形前後の測定対象物1の画像データを使用して、パターンマッチング処理により変位を演算する。 【0024】 フィルタ手段3eは、赤熱において発光輝度が高い長波長側の光(具体的には例えば400nm以上の波長)をカットする。本実施形態では、フィルタ手段3eで赤熱による発光をカットした画像データがメモリ手段3aに保存され、その画像データが、上述の画像成分決定手段3b、画像変換手段3c及び変位演算手段3dに供される。 【0025 】 これらの画像成分決定手段3b、画像変換手段3c、変位演算手段3d及びフィルタ手段はCPUで構成することができ、コンピュータ3にインストールされたプログラムに従い機能する。 【0026】 以下、図2及び図3を参照して、図1の変位計測装置による変位計測方法を説明する。図2は、図1の変位計測装置による変位計測方法において、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定する手順を示すフローチャート、図3は、図1の変位計測装置による変位計測の手順を示すフローチャートである。 【0027】 本実施形態では、予め、図2の手順により赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分、すなわち赤熱の影響を最も受けなかった成分を決定する。 【0028】 具体的には、まず、赤熱前と赤熱後の測定対象物1をデジタルカメラ2で撮影し、それぞれの画像データから赤熱による発光をフィルタ手段3eでカットした上で、各画像データ(赤熱前後の画像データ)をメモリ手段3aに保存する。次に、画像成分決定手段3bが、メモリ手段3aから赤熱前後の画像データを読み出し、これをRGB成分に分離して、R成分、G成分及びB成分のそれぞれについて赤熱領域における輝度値の平均値を演算し、赤熱前後の輝度値の平均値の差が最も小さい成分を決定する。 【0029】 以下、図3を参照して図1の変位計測装置による変位計測の手順を説明する。 【0030】 まず、変形中(変形前後を含む)の測定対象物1をデジタルカメラ2で連続的に撮影し、その画像データから赤熱による発光をフィルタ手段3eでカットした上で、当該画像データをメモリ手段3aに保存する。 【0031】 一方、画像変換手段3c及び変位演算手段3dは、画像データの処理に先立ち、メモリ手段3aに別途保存されているパラメータを読み込む。具体的には、画像変換手段3cは、画像変換に必要なパラメータとして、予め図2の手順で決定された、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分の種類を読み込む。また、変位演算手段3dは、変位の演算に必要なパラメータとして、パターンマッチング処理の際のテンプレート画像の大きさ、検索領域の大きさ、更にはサブピクセル処理の種類とそのパラメータを読み込む。 【0032】 次に、画像変換手段3cが、メモリ手段3aから変形中の画像データを読み出し、上述のパラメータに基づき、その画像データをR成分、G成分又はB成分の画像データに変換する。 【0033】 この変換された画像データを使用して、変位演算手段3dがパターンマッチング処理により変位を演算する。具体的には、変位演算手段3dは、まず、メモリ手段3aから変形前画像データと変形後画像データを選択して読み出す。ここで、変形前画像データとはデジタルカメラ2で連続的に撮影した画像データのうち先に撮影した画像データのことをいい、変形後画像データとは後に撮影した画像データのことをいう。 【0034】 次に、変位演算手段3dは、上述のパラメータに基づき、処理領域としてテンプレート画像の大きさと位置を決定し、変形前画像データからテンプレート画像を、変形後画像データから検索領域の画像を作成する。すなわち、変位演算手段3dは、処理領域として変形前画像データをテンプレート画像の大きさで分割して、そのうちの一つをテンプレート画像として選択し上で、変形後画像データから検索領域の画像を作成する。そして、変位演算手段3dは、テンプレート画像と検索領域の画像をパターンマッチング処理し、ピクセルレベルでの変位を演算する。パターンマッチング処理によるピクセルレベルでの変位を演算する手法は、画像相関法において周知であるので、詳細な説明は省略する。 【0035】 次に、変位演算手段3dは、上述のパラメータに基づきサブピクセル処理を行ってサブピクセルレベルでの変位を算出し、これをピクセルレベルの変位に加算する。サブピクセル処理の手法は、画像相関法において周知であり、類似度補間法又は相違度補間法、画像補間法、勾配法、2次元DFT(DiscreteFourierTransform)法をそれぞれ単独で又は組み合わせて適用できる。本実施形態では、類似度補間法と画像補間法を組み合わせて適用した。 【0036】 変位演算手段3dは、以上の処理を全ての分割領域の処理が完了するまで繰り返し、全ての分割領域の処理が完了したら、選択した変形前後の画像データにおける変位の演算結果を出力する。変位演算手段3dは、変形前後の画像データを順次選択して処理を行い、全ての画像データの処理が完了したら、処理を終了する。 【0037】 なお、以上の実施形態では、画像成分決定手段3bを使用して、図2の手順により、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定するようにしたが、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分が明確である場合には、画像成分決定手段3bによる図2の処理を省略し、図3の手順において、単にパラメータとして、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分の種類を読み込むようにしてもよい。また、サブピクセル処理も省略することができる。 【実施例】 【0038】 (実施例1) 図4に示す要領で耐火物製の測定対象物1のスポーリング試験を行い、測定対象物1の変位を計測した。すなわち、実施例1では、図4に示すように、ベースれんが4に保持された測定対象物1の一端(一側面)をガスバーナ5で加熱し、その一端を含む領域を上方からデジタルカメラ2で撮影し、その画像データを図1で説明したコンピュータ3で処理した。なお、実施例1では、フィルタ手段3eは使用しなかった。」 (引3-ウ)【図1】 「 」 (引3-エ)【図4】 「 」 (2)上記(引3-ア)ないし(引3-エ)の記載から、引用文献3には、 「 赤熱状態にある測定対象物の変位を計測する変位計測装置であって、 耐火物製の測定対象物1のスポーリング試験を行うことができ、 測定対象物1を撮影するデジタルカメラ2、デジタルカメラ2で撮影した画像データを処理するコンピュータ3、ベースれんが4及びガスバーナ5を備え、 ベースれんが4に保持された測定対象物1の一端(一側面)をガスバーナ5で加熱し、その一端を含む領域を上方からデジタルカメラ2で撮影し、その画像データをコンピュータ3で処理するものであり、 コンピュータ3は、メモリ手段3a、画像成分決定手段3b、画像変換手段3c、変位演算手段3d及びフィルタ手段3eを備え、 画像成分決定手段3bは、赤熱前後の測定対象物1をデジタルカメラ2で撮影した画像データをそれぞれRGB成分に分離して、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定し、 画像変換手段3cは、変形前後の測定対象物1をデジタルカメラ2で撮影した画像データを、画像成分決定手段3bにより決定された成分の画像データに変換し、 変位演算手段3dは、画像変換手段3cにより変換された変形前後の測定対象物1の画像データを使用して、パターンマッチング処理により変位を演算し、 フィルタ手段3eは、赤熱において発光輝度が高い長波長側の光をカットし、フィルタ手段3eで赤熱による発光をカットした画像データがメモリ手段3aに保存され、その画像データが、上述の画像成分決定手段3b、画像変換手段3c及び変位演算手段3dに供される、 装置。」 の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。 4 引用文献4について (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献4には、以下の記載がある。 (引4-ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、高温下における耐火物の熱膨張量を非接触にて精度良く計測することができる熱膨張量計測装置および耐火物試験装置に関するものである。」 (引4-イ)「【0022】 以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。 【0023】 [1]熱膨張量計測装置の構成 図1において、不焼成耐火物からなる試験片Sの熱膨張量を計測する熱膨張量計測装置1は、試験片Sを収納するための加熱炉2と、試験片Sの頂部に載置される標点用ヘッド(ヘッド部)3と、試験片Sを支持するためのテーブル(テーブル部)4とを備えている。 【0024】 上記試験片Sは、例えば高さ40mm、直径20mmの円柱形に成形されている。標点用ヘッド3及びテーブル4はカーボン製またはタングステン製であり、それぞれ試験片Sの直径よりも大径の円板、円柱状部材で構成されている。 【0025】 上記加熱炉2は、箱状に形成されたステンレス製のケース5から構成されており、試験片Sを出し入れするための開閉蓋(図示しない)が備えられ、対向する内側側壁に石英ガラス6が設けられ、その石英ガラス6の内側に断熱材7が貼着されている。 【0026】 ケース5には水平方向に対をなす窓部が上下に2カ所設けられており、上側の窓部8a、8bは、試験片S上面と接触する標点用ヘッド3の下端部と対向し、下側の窓部9a、9bは、試験片S下面を支持しているテーブル4の上端部と対向している。 【0027】 なお、上記各窓部8a、8b及び9a、9bは、上記ケース5および上記断熱材7の一部を切り抜き、石英ガラス6のみを露出させることによって形成されている。 【0028】 上側窓部8aに向けてCCDイメージセンサを内蔵した第1カメラ10が配置され、上記窓部8bに向けて第1光源11が配置されている。 【0029】 一方、下側窓部9aに向けて同じくCCDイメージセンサを内蔵した第2カメラ12が配置され、上記窓部9bに向けて第2光源13が配置されている。 【0030】 各光源11、13は例えばハロゲンランプからなり、試験片Sをその背部から照明し、第1カメラ10及び第2カメラ12のCCDイメージセンサ上に標点用ヘッド3の影、テーブル4の影をそれぞれ形成させるようになっている。 【0031】 詳しくは、図1(b)のA-A矢視図である図1(a)において、第2光源13からの光は、試験片Sを支持しているテーブル4の外周縁部を第2測点Cとして照らし、その第2測点Cを第2カメラ12で撮影するようになっている。 【0032】 一方、第1光源11は、図1(b)に示すように、試験片Sと接触している標点用ヘッド3の外周縁部(第1測点D)を照らし、その第1測点Dを第1カメラ10で撮影するようになっている。 【0033】 上記第1カメラ10及び第2カメラ12は、標点用ヘッド3とテーブル4に設定された二つの標点の標点間距離を光学的に計測する計測部として機能する。 【0034】 なお、図1(a)の符号14、15は、加熱炉2内に配置された面状の加熱用ヒータである。」 (引4-ウ)「【0043】 [2]耐火物試験装置の構成 図4(a)は、本発明に係る耐火物試験装置の要部平面図、同図(b)は耐火物試験装置の構成を示す正面図である。なお、図4において図1と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。 【0044】 図4において、耐火物試験装置20は、加熱炉2と、この加熱炉2内に進入し試験片Sの上面を押圧する押圧用シャフト(ヘッド部)21と、テーブル(テーブル部)4と、押圧用シャフト21を介して荷重を加えるクロスヘッド22と、クロスヘッド22と押圧用シャフト21との間に介設され、試験片Sの膨張、収縮にともなって発生する反力を検出するロードセル23とを備えている。 【0045】 押圧用シャフト21及びテーブル4は、カーボン製またはタングステン製であり、それぞれ試験片Sの直径よりも大径の円柱状部材で構成されている。 【0046】 図5は図4(b)のB-B矢視側面図である。 【0047】 図5において、Eは第1カメラ10によって撮影される画像を示し、Fは第2カメラ12によって撮影される画像を示している。 【0048】 画像Eでは押圧用シャフト21の下端外周縁部が標点として撮影Dされ、画像Fではテーブル4の上端外周縁部が標点Cとして撮影されている。 【0049】 図4に戻って説明する。 【0050】 同図に示す耐火物試験装置20は、図1に示した標点用ヘッド3に代えて押圧用シャフト21を試験片Sの頂部に当接させ、クロスヘッド22を下降させることによりその押圧用シャフト21を介して試験片Sに荷重を加えるようになっている。 【0051】 押圧用シャフト21とクロスヘッド22との間にはロードセル23が介設されており、そのロードセル23によって検出される反力は、マイクロコンピュータから構成されるクロスヘッド制御部24に与えられ、クロスヘッド制御部24はその応力を監視しながらクロスヘッド駆動用のモータ25の回転を制御し、クロスヘッド22を昇降させるようになっている。 【0052】 例えば、ロードセル23によって検出された応力が、試験片Sの断面積×0.03N/mm^(2)(しきい値)以下となるように、押圧用シャフト21をクロスヘッド22によって制御すれば、試験片Sを自由膨張させることができるため、その押圧用シャフト21の移動量から熱膨張量を得ることができる。 【0053】 また、上記しきい値を高く設定すれば、JIS R 2207-2に規定されている荷重下の熱膨張試験に移行させることも可能になる。因に、上記荷重下とは圧縮応力の設定が0.1MPa,0.2MPa,0.5MPaなどであることを意味する。 【0054】 また、実炉における耐火物が目地を介して構築されていることを耐火物試験装置で再現すべく、試験片Sを自由膨張させた後、クロスヘッドの昇降動作を停止させてクロスヘッド22の移動量を一定量に規制すれば、目地代を吸収した後に試験片Sに発生する熱応力を計測することも可能になる。それにより、炉内における耐火物の挙動を、耐火物試験装置で評価することが可能になる。」 (引4-エ)【図4】 「 」 (2)引用文献4に記載された発明 ア 上記(引4-ア)の段落【0025】の「加熱炉2は、箱状に形成されたステンレス製のケース5から構成されており」との記載を踏まえると、上記(引4-エ)の【図4】の記載から、加熱用ヒータ14、15は、ケース5の窓部が設けられた面と直交する両側面側に配置されていることが理解できる。 イ 上記アを踏まえると、上記(引4-ア)ないし(引4-エ)の記載から、引用文献4には、 「 加熱炉2と、この加熱炉2内に進入し試験片Sの上面を押圧する押圧用シャフト21と、テーブル4と、押圧用シャフト21を介して荷重を加えるクロスヘッド22と、クロスヘッド22と押圧用シャフト21との間に介設され、試験片Sの膨張、収縮にともなって発生する反力を検出するロードセル23とを備えている耐火物試験装置20であって、 加熱炉2は、箱状に形成されたステンレス製のケース5から構成されており、試験片Sを出し入れするための開閉蓋が備えられ、対向する内側側壁に石英ガラス6が設けられ、その石英ガラス6の内側に断熱材7が貼着されており、 ケース5には水平方向に対をなす窓部が上下に2カ所設けられており、上側の窓部8a、8bは、試験片S上面と接触する押圧用シャフト21の下端部と対向し、下側の窓部9a、9bは、試験片S下面を支持しているテーブル4の上端部と対向しており、 上側窓部8aに向けてCCDイメージセンサを内蔵した第1カメラ10が配置され、上側窓部8bに向けて第1光源11が配置されており、 下側窓部9aに向けて同じくCCDイメージセンサを内蔵した第2カメラ12が配置され、下側窓部9bに向けて第2光源13が配置されており、 第1カメラ10及び第2カメラ12は、押圧用シャフト21とテーブル4に設定された二つの標点の標点間距離を光学的に計測する計測部として機能し、 ケース5の窓部が設けられた面と直交する両側面側の加熱炉2内には、面状の加熱用ヒータ14、15が配置されており、 ロードセル23によって検出される反力は、マイクロコンピュータから構成されるクロスヘッド制御部24に与えられ、クロスヘッド制御部24はその応力を監視しながらクロスヘッド駆動用のモータ25の回転を制御し、クロスヘッド22を昇降させ、 ロードセル23によって検出された応力が、試験片Sの断面積×0.03N/mm^(2)(しきい値)以下となるように、押圧用シャフト21をクロスヘッド22によって制御して試験片Sを自由膨張させて押圧用シャフト21の移動量から熱膨張量を得ることができ、 しきい値を高く設定すれば、JIS R 2207-2に規定されている荷重下の熱膨張試験に移行させることも可能であり、 実炉における耐火物が目地を介して構築されていることを耐火物試験装置で再現すべく、試験片Sを自由膨張させた後、クロスヘッドの昇降動作を停止させてクロスヘッド22の移動量を一定量に規制すれば、目地代を吸収した後に試験片Sに発生する熱応力を計測することも可能であり、それにより、炉内における耐火物の挙動を評価することが可能である、 装置。」 の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)本願発明1と引用発明1とを対比する。 ア 拘束手段について (ア)引用発明1の「評価対象となる耐火煉瓦を実用サイズにして、これを複数個用意し実用される炉の内張り構造体と近似の内張り構造体の一部」として「構築」された「内張り構造体17」と、本願発明1の「耐火物試験片」とは、「耐火物試験体」で共通する。 (イ)引用発明1の「扇形の基台11とこの基台11に取付けられた鉄皮12とガイド板13間に固設された支持体14に設けられた拘束力付与装置(拘束力制御装置を具備)15と、この拘束力付与装置15によって鉄皮12とガイド板13間を摺動自在な拘束力伝達板16と、この拘束力伝達板16からの拘束力で荷重計19を介して、内張り構造体17を押圧、拘束する摺動自在な冷却構造を有する拘束板18と、この拘束板I8と内張り構造体17間に介在させる膨張吸収材20とによって」「形成され」た「内張り構造体の拘束機構」は、基台11で内張り構造体17の「底面」、鉄皮12で内張り構造体17の「背面」、拘束力付与装置15、拘束力伝達板16、拘束板18及び膨張吸収材20で内張り構造体17の「両側面」を拘束するものと認められる。 (ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明1の「扇形の基台11とこの基台11に取付けられた鉄皮12とガイド板13間に固設された支持体14に設けられた拘束力付与装置(拘束力制御装置を具備)15と、この拘束力付与装置15によって鉄皮12とガイド板13間を摺動自在な拘束力伝達板16と、この拘束力伝達板16からの拘束力で荷重計19を介して、内張り構造体17を押圧、拘束する摺動自在な冷却構造を有する拘束板18と、この拘束板I8と内張り構造体17間に介在させる膨張吸収材20とによって」「形成され」た「内張り構造体の拘束機構」と、本願発明1の「耐火物試験片を上下方向に一軸上に拘束する拘束手段」とは、「耐火物試験体を拘束する拘束手段」で共通する。 イ 荷重測定手段について (ア)引用発明1は、「拘束力付与装置15により該内張り構造体17を側面側から、押圧して、荷重計19により実炉と近似の拘束力が付与されるように拘束」するものであるから、引用発明の「荷重計19」は、「内張り構造体の拘束機構」の「拘束力付与装置15によ」る「拘束力」を計測するものであるといえる。 よって、引用発明1の「拘束力付与装置15により該内張り構造体17を側面側から、押圧して、荷重計19により実炉と近似の拘束力が付与されるように拘束」するところの「荷重計19」は、本願発明1の「前記拘束手段による拘束荷重を測定する荷重測定手段」に相当する。 (イ)引用発明1は、「拘束力付与装置15によって鉄皮12とガイド板13間を摺動自在な拘束力伝達板16と、この拘束力伝達板16からの拘束力で荷重計19を介して、内張り構造体17を押圧、拘束する摺動自在な冷却構造を有する拘束板18」を有するものであるところ、「荷重計19」は、「内張り構造体17」に対する「拘束力付与装置15」による拘束力の伝達方向上に設けられているといえる。 また、本願発明1の「拘束手段」は「耐火物試験片を上下方向に一軸上に拘束する」ものであるから、「荷重測定手段」が「前記耐火物試験片の上下方向に一軸上に配置され」ていることは、「荷重測定手段」が「耐火物試験片」に対する「拘束手段による拘束荷重」の伝達方向上に配置されているといえる。 (ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明1の「荷重計19」と、本願発明1の「前記耐火物試験片の上下方向に一軸上に配置され、前記拘束手段による拘束荷重を測定する荷重測定手段」とは、「前記耐火物試験体に対する拘束手段による拘束荷重の伝達方向上に配置され、前記拘束手段による拘束荷重を測定する荷重測定手段」で共通する。 ウ 加熱手段について (ア)引用発明1において、「バーナー2」は、「内張り構造体拘束装置1に対して進退自在な台車5上に」「取り付けられており」、「バーナー2」に対向する面を「溶射」しているから、引用発明1の「バーナー2により溶射する」ことは、「内張り構造体拘束装置1の内張り構造体の収納スペース21内に構築し、拘束力付与装置15により」「側面側から、押圧」されて「拘束」された「内張り構造体17」の「バーナー2」に対向する面を加熱することであるといえる。 (イ)上記(ア)を踏まえると、引用発明1の「バーナー2」と、本願発明1の「前記拘束手段により拘束された耐火物試験片のうちの一面である加熱面を加熱する加熱手段」とは、「前記拘束手段により拘束された耐火物試験体のうちの一面である加熱面を加熱する加熱手段」で共通する。 エ 撮影手段について 引用発明1は、本願発明1の撮影手段のような、評価に用いるための情報を取得する手段を備えることは特定されていない。 オ 耐スポーリング性試験装置について 引用発明1の「溶融金属を収容する各種の炉、容器の内張り構造体の耐スポール性、耐食性等の耐用性を実験室的に評価する装置」は、「耐スポール性」を評価する耐用性の1つとしているから、本願発明1の「耐スポーリング性試験装置」に含まれる。 (2)そうすると、本願発明1と引用発明1とは、 「 耐火物試験体を拘束する拘束手段と、 前記耐火物試験体に対する拘束手段による拘束荷重の伝達方向上に配置され、前記拘束手段による拘束荷重を測定する荷重測定手段と、 前記拘束手段により拘束された耐火物試験体のうちの一面である加熱面を加熱する加熱手段と、 を備えた耐スポーリング性試験装置。」 の発明である点で一致し、次の3点において相違する。 (相違点1) 拘束手段による耐火物試験体の拘束及び荷重測定手段の配置について、本願発明1においては、「耐火物試験体」が「耐火物試験片」であり、それを「拘束手段」が「上下方向に一軸上に」拘束するものであって、それに伴い「荷重測定手段」が「前記耐火物試験片の上下方向に一軸上に配置され」るのに対し、引用発明1においては、「耐火物試験体」が「評価対象となる耐火煉瓦を実用サイズにして、これを複数個用意し実用される炉の内張り構造体と近似の内張り構造体の一部」として「構築」された「内張り構造体17」であり、それを「内張り構造体の拘束機構」が、基台11で「底面」、鉄皮12で「背面」、拘束力付与装置15、拘束力伝達板16、拘束板18及び膨張吸収材20で「両側面」を拘束するものであって、それに伴い「荷重計19」が「内張り構造体17」の側面側である「拘束力伝達板16」と「拘束板18」の間に配置されている点。 (相違点2) 本願発明1においては、「前記加熱手段により加熱された前記耐火物試験片の前記加熱面以外の面であって前記加熱面と直交する直接加熱されない側面である撮影面を加熱中又は冷却中に撮影可能な撮影手段」を備えているのに対し、引用発明1においては、撮影手段のような、評価に用いるための情報を取得する手段を備えることは特定されていない点。 (3)判断 ア 上記相違点1について検討する。 (ア)引用発明2における熱疲労試験片1の拘束は、上下両端にV字形の刃等を有する2枚のホルダ2で熱疲労試験片1を挟み、油圧プレス等の圧縮装置によって、ホルダ2の上下両端のV字形の刃を熱疲労試験片1の上下両端の平坦部に圧入し、圧入部が緩まないようにばねを介してボルト・ナット等の結合手段で結合することにより行うことから、引用発明2のホルダ2は、本願発明1の「耐火物試験片を上下方向に一軸上に拘束する拘束手段」に相当するといえる。 (イ)引用発明4の試験片Sの上面を押圧する押圧用シャフト21と試験片S下面を支持しているテーブル4は、合わせて本願発明1の「耐火物試験片を上下方向に一軸上に拘束する拘束手段」に相当するといえる。 (ウ)しかしながら、上記(引1-ア)の記載によれば、引用発明1は、「従来の評価に供される耐火煉瓦は、実用サイズよりはかなり小サイズで、しかも単体で配置され、拘束条件も実用状態の場合と明らかに異なって」おり、「従来の評価は、実用状態とかけ離れた条件下で行われて」いたという背景の下、「複数個の実用サイズの耐火煉瓦を内張り構造体の一部として構築し、これを拘束状態にして、実用状態に近づけて、耐食性(耐溶損性)耐構造スポール性、耐熱スポール性等の耐用性を同時に評価できる評価精度の高い内張り構造体の評価」「装置を提供する」ことをその解決しようとする課題とし、「扇形の基台11とこの基台11に取付けられた鉄皮12とガイド板13間に固設された支持体14に設けられた拘束力付与装置(拘束力制御装置を具備)15と、この拘束力付与装置15によって鉄皮12とガイド板13間を摺動自在な拘束力伝達板16と、この拘束力伝達板16からの拘束力で荷重計19を介して、内張り構造体17を押圧、拘束する摺動自在な冷却構造を有する拘束板18と、この拘束板I8と内張り構造体17間に介在させる膨張吸収材20とによって内張り構造体の拘束機構が形成され」る「内張り構造体拘束装置1」を採用したものである。 (エ)そうすると、引用発明1において、引用発明2のホルダ2又は引用発明4の押圧用シャフト21及びテーブル4を採用し、単体の耐火煉瓦を上下方向に一軸上に拘束するようにすることを動機付ける事情があるとは認められず、むしろ阻害要因があるといえる。 (オ)なお、引用発明3は、本願発明1の「耐火物試験片を上下方向に一軸上に拘束する拘束手段」に相当する手段を備えたものではない。 (カ)したがって、引用文献1ないし4に接した当業者といえども、引用発明1を上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を備えたものとすることは、容易に想到し得たとはいえない。 イ 上記相違点2について検討する。 (ア)引用発明3の「デジタルカメラ2」は、「ベースれんが4に保持され」、「一端(一側面)をガスバーナ5で加熱」された「耐火物製の測定対象物1」を、「その一端を含む領域を上方から」「撮影」するものであるから、本願発明1の「前記加熱手段により加熱された前記耐火物試験片の前記加熱面以外の面であって前記加熱面と直交する直接加熱されない側面である撮影面を加熱中又は冷却中に撮影可能な撮影手段」と、「前記加熱手段により加熱された前記耐火物試験片の前記加熱面以外の面であって前記加熱面と直交する直接加熱されない面である撮影面を加熱中又は冷却中に撮影可能な撮影手段」で共通するといえる。 (イ)そこで、引用発明1に引用発明3のデジタルカメラ2を採用した場合について検討するに、デジタルカメラ2の撮影面は内張り構造体17の上面となり、本願発明1の「側面」とはならない。 また、引用発明1の内張り構造体17の側面は、内張り構造体拘束装置1の膨張吸収材20により覆われており、デジタルカメラ2で撮影することはできない。 (ウ)なお、引用発明2において、熱疲労試験片1は赤外線加熱炉等からなる加熱手段3内に配置されることから、VTRカメラ等からなる試料観察手段12により撮影される熱疲労試験片1の面は、加熱手段3により直接加熱されない面であるとはいえない。 また、引用発明4の第1カメラ10及び第2カメラ12は、押圧用シャフト21とテーブル4に設定された二つの標点の標点間距離を光学的に計測する計測部として機能するものであり、試験片Sの側面を撮影するものではない。 (エ)したがって、引用文献1ないし4に接した当業者といえども、引用発明1を上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を備えたものとすることは、容易に想到し得たとはいえない。 ウ よって、本願発明1は、引用発明1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2及び3について 本願発明2及び3も、本願発明1の「耐火物試験片を上下方向に一軸上に拘束する拘束手段」及び「前記加熱手段により加熱された前記耐火物試験片の前記加熱面以外の面であって前記加熱面と直交する直接加熱されない側面である撮影面を加熱中又は冷却中に撮影可能な撮影手段」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 本願発明4ないし7について 本願発明4ないし7は、本願発明1を用いた耐スポーリング性評価方法に係る発明であり、本願発明1の「耐火物試験片を上下方向に一軸上に拘束する」及び「前記加熱手段により加熱された前記耐火物試験片の前記加熱面以外の面であって前記加熱面と直交する直接加熱されない側面である撮影面を加熱中又は冷却中に撮影」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 原査定について 審判請求時の補正により、本願発明1、2,4及び5は、「耐火物試験片を上下方向に一軸上に拘束する」及び「前記加熱手段により加熱された前記耐火物試験片の前記加熱面以外の面であって前記加熱面と直交する直接加熱されない側面である撮影面を加熱中又は冷却中に撮影」するものであるという事項を有するものとなっている。 そして、これらの事項については、上記第5で検討したとおりであるから、本願発明1、2,4及び5は、当業者であっても、原査定において引用された引用文献1ないし4に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-10-12 |
出願番号 | 特願2015-220579(P2015-220579) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01N)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 野田 華代 |
特許庁審判長 |
福島 浩司 |
特許庁審判官 |
渡戸 正義 磯野 光司 |
発明の名称 | 耐スポーリング性試験装置及び耐スポーリング性評価方法 |
代理人 | 特許業務法人英和特許事務所 |