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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1366874
審判番号 不服2019-7145  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-31 
確定日 2020-10-29 
事件の表示 特願2016-527832「実装装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月17日国際公開、WO2015/190496、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2015年6月9日(優先権主張2014年6月11日,日本国)を国際出願日とする出願であって,平成30年10月29日付けで拒絶理由通知がされ,平成31年2月7日付けで手続補正がされ,平成31年3月1日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和元年5月31日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,令和2年4月17日付けで拒絶理由通知がされ,令和2年6月17日付けで手続補正がされ,令和2年7月9日付けで最後の拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がされ,令和2年8月26日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成31年3月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1,2に係る発明は,以下の引用文献A,Bに基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2003-229442号公報
B.特開2008-041712号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1.(明確性要件)この出願は,請求項1の「加圧方向の接合精度」の定義が明らかでないから,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2.(新規事項)令和2年6月17日付け手続補正書でした補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められない「加圧方向の接合精度3μm以下で」,及び,「第2の加圧手段の加圧方向の変位量を検出する変位検出手段」を,請求項1に追加するものであるから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
3.(実施可能要件)この出願は,実装装置の加圧方向の接合精度を3μm以下とすることに,当業者は過度の試行錯誤を要するから,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
4.(進歩性)この出願の請求項1,2に係る発明は,以下の引用文献1-5に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2003-229442号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2010-34095号公報(当審において新たに引用した文献)
3.特開2005-19957号公報(当審において新たに引用した文献)
4.特開平7-209126号公報(当審において新たに引用した文献)
5.特開2013-53985号公報(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願請求項1,2に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」,「本願発明2」という。)は,令和2年8月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1,2は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
被接合物同士を接合する実装装置であって,
一方の被接合物を保持する保持手段と,
該保持手段を被接合物の接合方向に5N以下の低加圧力をもって加圧可能なシリンダー機構からなる第1の加圧手段と,
前記第1の加圧手段を形成するシリンダー上面に,前記保持手段を介して伝達される加圧力を検出する圧力検出手段を介して接合方向に連結された,50N以上の高加圧力をもって加圧可能な第2の加圧手段と,
前記第1の加圧手段と,前記第2の加圧手段との間に前記保持手段を介して伝達される加圧力を検出する圧力検出手段とを備え,
前記圧力検出手段が,500Nの加圧力での機械的変形が0.1μm以下である,水晶圧電素子からなる圧力検出器である実装装置。
【請求項2】
請求項1の発明において,水晶圧電素子からなる圧力検出器を実装装置の加圧軸を中心に等距離で複数個配置した実装装置。」

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
令和2年7月9日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付加した。以下同じ。)
「【請求項1】 被接合物同士を接合する実装装置であって,一方の被接合物を保持する手段と,該保持手段を被接合物の接合方向に低加圧力をもって加圧可能な低摺動抵抗シリンダ手段と,該低摺動抵抗シリンダ手段のピストンを介して伝達される加圧力を検知可能な圧力検知手段と,前記低摺動抵抗シリンダ手段を介して前記保持手段を被接合物の接合方向に送るとともに高加圧力をもって加圧可能な送り機構とを,この順に直列に配置したことを特徴とする実装装置。
【請求項2】 前記保持手段,低摺動抵抗シリンダ手段,圧力検知手段,送り機構が同軸上に配置されている,請求項1の実装装置。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,被接合物同士を接合する実装装置およびその制御方法に関し,とくに,低加圧力領域から高加圧力領域まで精度よく所望の加圧力を制御することが可能な実装装置およびその制御方法に関する。」

「【0010】上記低摺動抵抗シリンダ手段としては,たとえば,ピストン摺動部にエアスライドガイドを備えたエアベアリングシリンダを用いることができる。また,上記圧力検知手段としては,たとえば,ロードセルを用いることができる。低加圧力領域では低摺動抵抗シリンダ手段で制御できるので,高加圧力領域制御用に用いるロードセルとしては,比較的高圧仕様のものを選定すればよい。」

「【0018】
【発明の実施の形態】以下に,本発明の望ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は,本発明の一実施態様に係る実装装置1を示している。図1においては,被接合物として,一方はチップ2で他方は基板3である場合を例示している。チップ2は,被接合物保持手段としての,ヘッド部4の下部に設けられた,ヒータを内蔵したヒートツール5の下面に保持されており,基板3はステージ6上に保持されている。本実施態様では,ステージ6はX,Y方向(水平方向)および/または回転方向(θ方向)に位置調整できるようになっており,ヒートツール5はZ方向(上下方向)に位置調整できるようになっており,これら調整により,接合前に両被接合物の平行度等を含む相対位置関係が調整,制御されるようになっている。ヘッド部4には,ヒートツール5に保持されたチップ2とステージ6に保持された基板3との間の平行度を調整可能な機構が組み込まれていてもよい。
【0019】なお,上記において,チップ2とは,たとえば,ICチップ,半導体チップ,光素子,表面実装部品,ウエハーなど,種類や大きさに関係なく,基板3と接合させる側の全てのものをいう。また,基板3とは,たとえば,樹脂基板,ガラス基板,フィルム基板,チップ,ウエハーなど,種類や大きさに関係なく,チップ2と接合される側の全てのものを指す。
【0020】また,上記のようなステージ6,ヒートツール5は,一般には,平行移動および/または回転自在に装着されるが,必要に応じて,それらと昇降とを組み合わせた形態に装着してもよい。さらに,チップ2と基板3の位置合わせに関して,チップ2と基板3の位置合わせ後にツール5を下降させる装置形態であってもよい。
【0021】ヘッド部4には,該ヘッド部4をチップ接合方向に低加圧力をもって加圧可能な低摺動抵抗シリンダ手段としてのエアベアリングシリンダ7が連結されている。エアベアリングシリンダ7には,ピストン8に対し加圧側のエア圧を供給する加圧ポート9と,ピストン8に上昇側(バランス側)のエア圧を供給するバランスポート10が設けられているとともに,ピストン8を空気の静圧により極めて低い摺動抵抗にて摺動方向に案内するエアスライドガイド11が設けられている。このエアベアリングシリンダ7は,エアスライドガイド11による極めて低い摺動抵抗(実質的に零抵抗)にて,加圧ポート9とバランスポート10からのエア圧制御により,低加圧力領域において精度よく加圧力を制御できるようになっている。
【0022】エアベアリングシリンダ7の上端は,スライドボール機構等からなり回転(自転)が阻止された高精度ガイド12のスライドメンバー13の下端に連結されており,高精度ガイド12は,ボールネジ軸14とそれに螺合するナット15を備えた送り機構16に接続されている。スライドメンバー13の下端には,圧力検知手段としての圧力センサ17(たとえば,比較的高圧検知用のロードセル)が設けられている。エアベアリングシリンダ7のピストン8の上端は,この圧力センサ17に対して離間,当接可能に配置されており,当接した場合には,送り機構16,高精度ガイド12を介して伝達されてきた加圧力を,ピストン8を介してヘッド部4に伝達できるように構成されている。この加圧力伝達時には,圧力センサ17により直接的に伝達加圧力が検知される。
【0023】送り機構16のボールネジ軸14の上部は,スラスト荷重を受けることが可能な軸受18に回転自在に支持されている。ボールネジ軸14の上端部には,カップリング19を介して,ボールネジ軸14回転用の駆動源20の出力軸が連結されており,本実施態様では,駆動源20はサーボモータから構成されている。駆動源20の制御により,送り機構16を介してヘッド部4の上下方向(Z軸方向)の位置が制御される。また,上述の如く,エアベアリングシリンダ7のピストン8の上端と圧力センサ17とが当接されている場合には(あるいはピストン8がシリンダ内の一定の位置に固定されている場合には),駆動源20の制御により,送り機構16,高精度ガイド12,圧力センサ17,エアベアリングシリンダ7を介してヘッド部4へと加圧力を伝達できるようになっている。
【0024】本実施態様では,駆動源15,送り機構16,高精度ガイド12,圧力センサ17,エアベアリングシリンダ7,ヘッド部4が同軸21上に配置されている。とくに,実質的に,送り機構16,圧力センサ17,エアベアリングシリンダ7,ヘッド部4は,この順に同軸21上に直列に配置されている。
【0025】このように構成された本実施態様に係る実装装置1においては,低加圧力領域においては,低摺動抵抗シリンダ手段としてのエアベアリングシリンダ7のピストン8と圧力センサ17との間に隙間を保ち,エアベアリングシリンダ7のみによりヘッド部4に所定の低加圧力を付与できる。これにより,ヒートツール5に保持されたチップ2に対し,基板3への極めて低い微小加圧力まで精度よく制御できる。とくに空気の静圧を利用したエアスライドガイド11でピストン8の摺動部を支持しているから,実質的に零に近い低摺動抵抗とすることができ,加圧ポート9,バランスポート10への供給エア圧を電空変換レギュレータ等で制御することにより,加圧力としては,たとえば5×10^(-2)N?5N程度の低加圧力領域で±1×10^(-2)Nと極めて高精度に制御可能となる。
【0026】一方,高加圧力領域(たとえば,5N?2.5×10^(3)Nの範囲)においては,バランスポート10から高エア圧を供給することにより,あるいは,送り機構16によりヘッド部4を下降させ,チップ2が基板3に当接した状態でさらにある一定量Z軸方向に下降させることにより,エアベアリングシリンダ7のピストン8の上端を圧力センサ17に当接させた状態に保持できる。この状態で,駆動源15を,たとえばトルク制御することにより,駆動源15からの加圧力を,送り機構16,高精度ガイド12,圧力センサ17を介して,エアベアリングシリンダ7のピストン8に伝達し,該ピストン8を介して,ヘッド部4,さらにはヒートツール5に保持されているチップ2へと伝達することができる。また,ピストン8と圧力センサ17を近接させた状態で駆動源15を位置制御からトルク制御へ切り替えれば自然と圧力センサ17が設定圧力になるまでZ軸は下降し,ピストン8と圧力センサ17が当接される。この場合,シリンダ加圧力に駆動源15のトルク制御圧がプラスされる状態となり,トルク制御圧を増加させていけば,低加圧力領域からのリニアな圧力制御が可能となる。」

「【0029】
また,上記低加圧力領域から高加圧力領域までの制御特性として,たとえば図2に示すようなリニアな特性を持たせれば,特に低加圧力領域における制御特性と高加圧力領域における制御特性を連続的に接続した特性とすれば,微小加圧力から高加圧力までの広い範囲にわたって,一層精度よく目標とする加圧力に制御することが可能となる。また,このようなリニアな制御特性により,たとえば,同一の装置で,実装の仕様や被接合物の種類等に応じて加圧力の設定を変更する場合においても,容易に条件変更でき,かつ,いずれの設定条件においても,高精度の加圧力制御を確保できる。」











そうすると,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「被接合物同士を接合する実装装置であって,
一方の被接合物であるチップ2を保持する保持手段としての,ヘッド部4の下部に設けられた,ヒータを内蔵したヒートツール5と,
該保持手段を被接合物の接合方向に,加圧力としては,たとえば5×10^(-2)N?5N程度の低加圧力領域で±1×10^(-2)Nと極めて高精度に制御可能な加圧可能な低摺動抵抗シリンダ手段と,
該低摺動抵抗シリンダ手段のピストンを介して伝達される加圧力を検知可能な圧力検知手段を介して接合方向に連結された,高加圧力領域(たとえば,5N?2.5×10^(3) Nの範囲)において加圧可能な送り機構と,
低摺動抵抗シリンダ手段と,送り機構との間に前記保持手段を介して伝達される加圧力を検出する圧力検出手段であって,たとえば,ロードセルを用いることができる圧力検知手段とを備えた実装装置。」

2 引用文献2?5について
ア 引用文献2には,以下の記載がある。
「【0055】
又,ロードセルとしては,水晶ロードセル,圧電素子(PZT)ロードセル,ストレンゲージ(ひずみゲージ)ロードセル,半導体ロードセルがあげられる。」

イ 引用文献3には,以下の記載がある。
「【0002】
従来から,バンプ付半導体ベアチップ等の電子部品を基板に装着する際,電子部品に荷重を加えてバンプを基板上の電極に押し付けて接合する方法が採られている。この方法によれば,各バンプに加えられる荷重値を一定の範囲内に管理する必要があるため,ロードセル等の荷重センサを用いて,電子部品に加えられている荷重を測定しながら電子部品の装着が行われている。」

「【0056】
次に,荷重センサ30用の圧電素子に適する材料について説明する。表1は,圧電素子の材料と諸定数との関係を示す。
・・・
【0058】
例えば水晶の場合,誘電率および圧電歪定数が低く,感度が低いものの,キュリー点が高く,安定性に優れる。従って,図11に示す場合のようにヒータを用いて接合が行われ,かつ,測定精度が要求される場合には,水晶を用いることが好ましい。・・・以上のことから,荷重センサ30として要求される精度,応答性,コスト等に応じて,水晶および圧電セラミックスの中から最適なものが適宜選択される。」

「【0064】
圧電素子を用いた荷重センサは,ストレインゲージを用いたロードセルよりも荷重測定可能な範囲が広い。また,圧電素子の材料である水晶および圧電セラミックスは共に,ロードセルを構成する金属の弾性体よりも剛性が高くかつ変形量も小さいため,弾性変形のヒステリシスはほとんどない。このため,電子部品1に加えられる荷重をさらに精度良く測定することができる。さらに,圧電素子を用いた荷重センサは,ロードセルを用いる場合に比べて応答速度も速いため,電子部品1と基板2との接触をより精度良く検出することができ,また,高速で電子部品の装着を行う場合にも電子部品1に加えられる荷重を精度良く測定することができる。したがって,荷重センサ30として圧電素子31?33を用いることによって,より汎用性の高い電子部品装着装置10を実現することができる。」

ウ 引用文献4には,以下の記載がある。
「【0004】
【課題を解決するための手段】人工水晶の結晶学的軸X,YおよびZの3軸のうちX,Yの2軸については電気的軸と呼ばれZは光学的軸と呼ばれている。水晶は与えられた物理的な力もしくは圧力に対しそれ自体が有する圧電効果により電荷を発生するが具体的に述べれば結晶のY軸に対しX軸の方向に力を加わえればY軸の両面に電荷を発生(縦軸効果)し,同じくX軸に対しY軸の方向に力を加わえればX軸の両面に電荷を発生(横軸効果)する。図1および図2は縦軸効果用にカット(X-cut)された水晶圧電素子1に対して力または圧力Fの加わる方向と水晶圧電素子上に発生する電荷qの極性を示している。すなわち図1は力または圧力Fが水晶圧電素子1に対して圧縮力として作用した場合を示す。図1においては力または圧力が圧縮方向に加わるため+Fで示されている。図2は力または圧力Fが逆に引っ張り方向に作用した場合に水晶圧電素子上に発生する電荷qの極性を示している。図2においては力または圧力が引っ張り方向に作用するため-Fで示されている。点線は水晶素子に力または圧力が作用する前の状態,実線は力または圧力が作用して素子が変形した状態を示している。ちなみに水晶圧電素子の機械的剛性は極めて高くKN/μmである。縦軸効果における公称感度は2.31pC/Nである。すなわち縦軸効果においては,作用した力もしくは圧力の合計に直接比例して負荷が作用した水晶素子の表面に電荷qが現れ,その量は水晶素子大きさや形状に無関係で,1ニュートン当たり2.31ピコクーロンの電荷が現れる。」

エ 引用文献5には,以下の記載がある。










第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

引用発明における
「一方の被接合物であるチップ2を保持する保持手段としての,ヘッド部4の下部に設けられた,ヒータを内蔵したヒートツール5」,
「該保持手段を被接合物の接合方向に,加圧力としては,たとえば5×10^(-2)N?5N程度の低加圧力領域で±1×10^(-2)Nと極めて高精度に制御可能な加圧可能な低摺動抵抗シリンダ手段」,
「高加圧力領域(たとえば,5N?2.5×10^(3) Nの範囲)において加圧可能な送り機構」,及び
「低摺動抵抗シリンダ手段と,送り機構との間に前記保持手段を介して伝達される加圧力を検出する圧力検出手段であって,たとえば,ロードセルを用いることができる圧力検知手段」は,
それぞれ,本願発明1における
「一方の被接合物を保持する保持手段」,
「該保持手段を被接合物の接合方向に5N以下の低加圧力をもって加圧可能なシリンダー機構からなる第1の加圧手段」,
「50N以上の高加圧力をもって加圧可能な第2の加圧手段」,及び
「前記第1の加圧手段と,前記第2の加圧手段との間に前記保持手段を介して伝達される加圧力を検出する圧力検出手段」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

<一致点>
「被接合物同士を接合する実装装置であって,
一方の被接合物を保持する保持手段と,
該保持手段を被接合物の接合方向に5N以下の低加圧力をもって加圧可能なシリンダー機構からなる第1の加圧手段と,
50N以上の高加圧力をもって加圧可能な第2の加圧手段と,
前記第1の加圧手段と,前記第2の加圧手段との間に前記保持手段を介して伝達される加圧力を検出する圧力検出手段とを備える実装装置。」

<相違点>
・相違点1:第2の加圧手段が,本願発明1では,「前記第1の加圧手段を形成するシリンダー上面に,前記保持手段を介して伝達される加圧力を検出する圧力検出手段を介して接合方向に連結された」ものであるのに対して,引用発明では,「該低摺動抵抗シリンダ手段のピストンを介して伝達される加圧力を検知可能な圧力検知手段を介して接合方向に連結された」ものである点。

・相違点2:圧力検出手段が,本願発明1では,「前記圧力検出手段が,500Nの加圧力での機械的変形が0.1μm以下である,水晶圧電素子からなる圧力検出器」であるのに対して,引用発明では,「たとえば,ロードセルを用いることができる圧力検知手段」とされている点。

(2)相違点についての判断
相違点1に係る本願発明1の,第2の加圧手段が「前記第1の加圧手段を形成するシリンダー上面に,前記保持手段を介して伝達される加圧力を検出する圧力検出手段を介して接合方向に連結された」という構成は,上記引用文献2ないし5には記載されておらず,本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用文献2ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2も,本願発明1の,第2の加圧手段が「前記第1の加圧手段を形成するシリンダー上面に,前記保持手段を介して伝達される加圧力を検出する圧力検出手段を介して接合方向に連結された」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
令和2年8月26日付けの補正により,補正後の請求項1,2は,第2の加圧手段が「前記第1の加圧手段を形成するシリンダー上面に,前記保持手段を介して伝達される加圧力を検出する圧力検出手段を介して接合方向に連結された」という技術的事項を有するものとなった。当該第2の加圧手段が「前記第1の加圧手段を形成するシリンダー上面に,前記保持手段を介して伝達される加圧力を検出する圧力検出手段を介して接合方向に連結された」という技術的事項は,原査定における引用文献A,Bには記載されておらず,本願優先日前における周知技術でもないので,本願発明1,2は,当業者であっても,原査定における引用文献A,Bに基づいて容易に発明できたものではない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第2号について
当審では,請求項1の「加圧方向の接合精度」の定義が明らかでないから発明が明確ではないとの拒絶の理由を通知しているが,令和2年8月26日付けの補正において,請求項1から「加圧方向の接合精度」との用語を削除する補正がされた結果,この拒絶の理由は解消した。

2 特許法第17条の2第3項について
当審では,「加圧方向の接合精度3μm以下で」,及び,「第2の加圧手段の加圧方向の変位量を検出する変位検出手段」を,請求項1に追加する補正は新規事項の追加であるとの拒絶の理由を通知しているが,令和2年8月26日付けの補正において,請求項1から「加圧方向の接合精度3μm以下で」,及び,「第2の加圧手段の加圧方向の変位量を検出する変位検出手段」を削除する補正がされた結果,この拒絶の理由は解消した。

3 特許法第36条第4項第1号について
当審では,実装装置の加圧方向の接合精度を3μm以下とすることに,当業者は過度の試行錯誤を要するとの拒絶の理由を通知しているが,令和2年8月26日付けの補正において,請求項1から,「加圧方向の接合精度を3μm以下」とする構成を削除する補正がされた結果,この拒絶の理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-10-14 
出願番号 特願2016-527832(P2016-527832)
審決分類 P 1 8・ 55- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 536- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 土谷 慎吾  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 加藤 浩一
西出 隆二
発明の名称 実装装置  

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